目 次 2 まえがき 4 編集にあたって 5 会社概要 1 6 14 15 20 22 企業の責任 持続可能性 ポリシー 体制 戦略 中国 目標と方策 2.5 84 86 87 88 89 3 環境レポート 2003/2004 Partners in Responsibility 2003年12月 本レポートは無塩素漂白紙を使用してい ます。 Art. No.: 415.1240.01.70 フォルクスワーゲン環境レポート 2003/2004 VOLKSWAGEN AG Environment and Industrial Safety P.O. Box 011/17743 38436 Wolfsburg Germany 2 環境 2.1 環境ポリシーとマネージメント 環境戦略 気候政策 ライフサイクルアセスメント 従業員 28 32 33 35 2.2 製品 38 当社のモデル 2.3 44 50 51 54 57 研究開発 燃料戦略 1リッターカー 自動車と環境 代替駆動システム リサイクル 58 60 61 69 74 75 76 生産と生産拠点 目標と見通し サプライヤー 生産拠点 南アフリカ 国際監査 労働安全衛生 主要な指標 2.4 www.mobility-and-sustainability.com パートナーと市場 サービス部門での環境保護 VCDとエコトレンド 持続可能なモビリティ2030 使用済み自動車の回収 エコドライビング 社会的責任 90 雇用モデル 94 人材育成 98 社会的利益 4 ファイナンス 102 コーポレートガバナンス 105 経済的付加価値 5 グループ 108 概要 109 戦略 112 主要な指標 120 お問い合わせ先と用語集 122 日本における取り組み 目 次 2 まえがき 4 編集にあたって 5 会社概要 1 6 14 15 20 22 企業の責任 持続可能性 ポリシー 体制 戦略 中国 目標と方策 2.5 84 86 87 88 89 3 環境レポート 2003/2004 Partners in Responsibility 2003年12月 本レポートは無塩素漂白紙を使用してい ます。 Art. No.: 415.1240.01.70 フォルクスワーゲン環境レポート 2003/2004 VOLKSWAGEN AG Environment and Industrial Safety P.O. Box 011/17743 38436 Wolfsburg Germany 2 環境 2.1 環境ポリシーとマネージメント 環境戦略 気候政策 ライフサイクルアセスメント 従業員 28 32 33 35 2.2 製品 38 当社のモデル 2.3 44 50 51 54 57 研究開発 燃料戦略 1リッターカー 自動車と環境 代替駆動システム リサイクル 58 60 61 69 74 75 76 生産と生産拠点 目標と見通し サプライヤー 生産拠点 南アフリカ 国際監査 労働安全衛生 主要な指標 2.4 www.mobility-and-sustainability.com パートナーと市場 サービス部門での環境保護 VCDとエコトレンド 持続可能なモビリティ2030 使用済み自動車の回収 エコドライビング 社会的責任 90 雇用モデル 94 人材育成 98 社会的利益 4 ファイナンス 102 コーポレートガバナンス 105 経済的付加価値 5 グループ 108 概要 109 戦略 112 主要な指標 120 お問い合わせ先と用語集 122 日本における取り組み 1 未来への架け橋 世界最大の成長市場、中国では、パーソナルモビリテ ィに対する需要が拡大しています。すでに過去25年間、 Page 20 中国の経済的パートナーとして活動してきたフォルク スワーゲンは、人と環境に対する責任を認識し、クリ ーンで経済性に優れたディーゼルエンジンと、より品 質の高い燃料の開発に力を入れています。燃料タンク を太陽の恵みで満たす試みとも言えるバイオマスを原 料とした合成燃料により、新たな展望が開けてきます。 2.2 牽引力を発揮し続ける ゴルフはこれまで約 30 年間コンパクトクラスの基準と なってきました。5 世代目のゴルフも例外ではありま Page 41 せん。その発表にあわせて一時的に「ゴルフスブルグ」 と名付けられたフォルクスワーゲンの本拠地ウォルフ スブルグには、ドイツロック界の伝説的スター、ウー ド リンデンベルクが出演、15 万人が来場しました。 フォルクスワーゲンの他のモデルと同様、新型ゴルフ は技術開発部門の 7 つの環境目標に沿って設計されて います。 2.4 人が第一 南アフリカ共和国は現在もアパルトヘイト政策の負の 遺産に苦しみ、エイズ拡大によるダメージも受けてい Page 69 ます。特に東ケープ州では失業率が高く、問題はさら に深刻になっています。ポート エリザベス周辺地域に おける最大の雇用主として、フォルクスワーゲンはこ れら 3 つの問題の解決に取り組むと同時に、環境保護 にも目を配っています。 3 時間のハンドルを切る 女性の積極的登用は、フォルクスワーゲンの人事政策 の中核となるものです。インフォ・デー、開発セミナ Page 100 ー、メンター制度といった人材発掘のさまざまな試み は、より多くの女性を技術専門職に登用し、社内で主 導的な役割を果たしてもらうために採用されたもので す。 イノベーションで成長の壁に挑む フォルクスワーゲンはその発展において、自社の製品という枠 これに密接に関連しているのが、革新的で持続可 を超え、常に社会的責任も視野に入れて事業活動を行ってきま 能な燃料戦略を策定する試みです。天然ガスから した。この姿勢は他のどんな企業よりも強いものです。長期に 精製した燃料(シンフューエル)やバイオマスを わたって経済的な成功を維持し続けるには社会にも環境にも配 原料とする燃料(サンフューエル)を使えば、環 慮しなければなりません。そのことはリオデジャネイロで地球 境面で大きなメリットがあります。さらに私たち サミットが開催される以前から明白でした。 は、革新的な燃費コンセプトを構築することで、 すでに自動車のベンチマークを達成しています。 長年にわたり私たちの製品を支持してくれている顧客の存在は、 3 リッター ルポは 4 年連続して、エコトレンド 持続可能な発展への道のりにおけるフォルクスワーゲンの成果 環境研究所( を証明する最も顕著で説得力のあるものかもしれません。グロ に最もやさしいクルマ」の総合 1 位に選ばれまし ーバルに事業展開する自動車メーカーとして、また雇用主とし た。また、2002 年 4 月に発表した 1 リッター て、私たちは製品や事業活動が社会に与える影響の大きさを認 カーは、現在の最先端技術の展望を可能にするも 識しています。パーソナルモビリティを確保するうえで私たち のです。私たちは現在、3 リッターカーや 1 リッ に求められていることは、工業国の都市圏から新興国の交通イ ターカーで蓄積した経験を、2006 年に市場投 ンフラに至るまで対応し、幅広い地域性を念頭に入れたうえで、 入する予定の新しい低燃費車の開発に生かそうと 環境にやさしい製品を作ることです。 しています。 私たちの長期的な企業方針と持続可能な発展に関する事業分野 フォルクスワーゲンは、社会的責任について常に は密接に関連しています。これは中国における事業活動によく 広範な見地に立ってきました。そのため、サステ 表れています。私たちは 1978 年に中国で操業を始めて以来、 イナビリティ戦略を環境という枠組みに限定して 徐々に投資を拡大し、知識と技術を蓄積してきました。その結 きませんでした。実行可能なあらゆるサステイナ 果、成長を続ける中国市場は私たちにとって販売台数ベースで ビリティモデルにおいて、製品が市場で受け入れ ドイツに次ぐ大きな市場となりました。同時に私たちは、中国 られることも、労使双方の友好な関係と同じぐら 政財界のパートナーと対話しつつ、中国での持続可能なモビリ い重要です。私たちは、フォルクスワーゲンが長 ティの実現に貢献しようと努めています。 年にわたって環境保護の先頭に立ってきたこと、 )が発表する「環境 そして革新的な雇用モデルによって絶えず企業の 自動車メーカーとして持続可能な発展のために私たちにまずで 枠を超えて方向性を示すベンチマークとなってき きることは、製品を通した貢献です。5 世代目のゴルフの開発は たことを誇りに思います。 その代表例です。現在もなおそのクラスにおける代名詞となっ ているこのモデルは、技術開発部門の 7 つの環境目標に沿って設 計されました。2004 年からゴルフのディーゼルモデルには燃 料添加剤不要のパティキュレートフィルターを装着することも できます。さらに、私たちの排気ガス低減戦略は微粒子物質だ ウォルフスブルグ、2003年12月 けでなく排気ガスに含まれるあらゆる物質を対象にしています。 Dr. ベルント ピシェツリーダー フォルクスワーゲンが開発した TDI 技術は、クリーンなディーゼ フォルクスワーゲンAG取締役会会長 ルエンジンの典型となり、欧州排出ガス規制 Euro 4 への対応を 前倒しする上で中心的な役割を果たしました。 持続可能な発展、それは「未来への礎」 発展のためのよりよい基盤を将来の世代に残すこと ―― それ 企業、環境、社会の相互の影響力を考慮すること が、持続可能性という、非常に多岐にわたる要請の意味すると が持続可能性には欠かせません。そのためフォル ころです。資源を保護して、生態系上のバランスを保つことだ クスワーゲンの世界従業員協議会は、「未来のた けを表しているのではありません。将来のあらゆる問題を予見 めの 1 時間」というモットーのもと、ストリート し、それに配慮した発展を目指すという意味です。持続可能な チルドレンを援助するプロジェクトに支援の手を 発展は、それ自体が原則であると同時に目標でもあります。そ 差しのべています。この活動は社会的責任を担う れはグローバル化という状況にあって特に重要な意味を持ちま グローバル化の手本となり、持続可能性を「未来 す。なぜならグローバル化の局面においては、生態系の維持、 への礎」の象徴として簡潔に示しています。一般 事業としての効率性、社会的責任という 3つの要素がからみ合い、 社会の多くの人々がフォルクスワーゲンの名を聞 そのバランスをうまくとって初めて発展のための安定した基盤 けば、こうした行動原則を想起するという喜ばし が得られるからです。多国間で事業を営む企業として、フォル い事実を心に留めておきたいと思います。 クスワーゲンはグローバル化の「媒体」であると同時に、持続 可能な発展の推進力でもあります。これらの活動にあたって、 フォルクスワーゲンは共同決定と従業員代表制を重視し、そこ に生じる責任を負わなければなりません。 このように考えると、共同決定と従業員代表制は、創造や変革 クラウス フォルカート の原動力であり、フォルクスワーゲンの発展と環境面での進歩 フォルクスワーゲングループ を不可分のものにしています。そのため、従業員協議会のイニ 世界従業員協議会議長 シアチブで年次開催している生産拠点と雇用の確保に関する研 究開発シンポジウムでも、環境問題が重視されるのです。持続 可能な環境でなければ、雇用拡大の確かな見通しを立てること などできないからです。社会的な持続可能性についても同じこ とが言えます。「週 4 日労働制」「5000 × 5000」「アウトヴィ ジョン」などのモデルやプロジェクトも、すべて当社の社会的 発展の基盤を維持し改善するための戦略に基づいて行われてい ます。従業員の解雇を避け、かつての失業者の持続可能なエン プロイアビリティ(雇用適性)を確保するために生涯学習を導 入することもこの一環です。とはいえ、社会的な持続可能性は、 決して国内に限られた問題ではありません。欧州従業員協議会、 世界従業員協議会とともに、私たちは対話の場を用意しました。 これによって、社会的責任に基づく競争のルールが定められる とともに、革新的な雇用政策構想を、各国の事情に合わせて実 施することができました。そこでいま焦点となっているのは、 柔軟な就業時間のモデルづくりです。しかしながら、社会的な 持続可能性は、事業としての効率性と切り離して考えられるも のではありません。雇用の維持と企業競争力の維持を同等の目 標としてみなさなければなりません。 2 3 編集にあたって 読者の皆さまへ 「責任を共有するパートナーシップ」―― これは、今回の環境レ 今回のレポートで一つ重要な変更点は、フォルク ポートの中心となるテーマです。これをテーマに据えたのは、 スワーゲン グループ全体の活動について報告す 分業の進んだ社会では責任はどこか 1 カ所だけにあるのではな る章を設けたことです。レポートそのものは、主 く、常に共有されるものであるからです。私たちはこうした認 にフォルクスワーゲン AG とフォルクスワーゲン 識を持っていたお陰で、さまざまな局面、特に環境保護の面で ブランドの製品、関連子会社、生産拠点に焦点を 大きな成功を収めてきました。こうした成果は外部のパートナ あてていますが、グループ全体に関する章で記載 ーの協力なしには決して実現し得なかったものだということを、 している環境パフォーマンスは、グループ全ブラ 私たちは常にはっきりと認識してきました。 ンドの連結データです。また、アウディ、セアト、 シュコダは、それぞれ独自の環境レポートも発行 サステイナビリティレポートの発行とはいえ、現時点ではまだ、 しています。 重点をおいているのは環境面についての報告です。しかしもち ろん、国連環境計画(UNEP)やグローバル・レポーティン もうひとつ、今回のレポートでこれまでにない点 グ・イニシアチブ(GRI)のガイドラインとの整合をはかりなが は、環境レポートを発行するようになって初めて ら、他の組織と協力して持続可能性に関する報告のあり方を探 外部監査を受けることなく終えることができたこ っています。 とです。過去の活動から、当社の環境マネージメ ントシステムや主要な指標を記録するためのモニ この環境レポートではパートナーの一部を写真とともに紹介し タリングは非常に正確でデータの信頼性も高いこ ています。例えば、3 リッター ルポを購入した女性。おそらく とがわかってきたからです。複雑な持続可能性の 私たちの最も重要なパートナーと言えるでしょう。あるいは、 実態を記録する普遍的な方法がまだ確立されてい 環境関連機関で日頃から戦略立案や問題解決にあたり共に奮闘 ないことも考慮しました。 しているパートナー。そして技術革新を通して持続可能なモビ リティの実現を支えてくれるサプライヤー。さらに、数々のプ これまでどおり、この環境レポートはフォルクス ロジェクトへの参加を通して、私たちの社会的な活動を支えて ワーゲンとの対話に読者の皆さまをご招待するも くれる人たちもいます。 のです。これまでにお寄せいただいたさまざまな ご提案や忌憚のないご意見に感謝しております。 当レポートをできるだけコンパクトなものにするため、関連情 今回も皆さまからのご意見をお待ちしておりま 報をウェブサイト www.mobility-and-sustainability.comに掲載 す。 しています。 フォルクスワーゲン環境レポート 編集チーム 会社概要 フォルクスワーゲン グループは、欧州最大の自動車メーカーで おり、こちらはスポーティな価値を重視していま す。2002 年の世界市場シェアは 12.1 %で、世界第 4 位の規模 す。各ブランドとも独立採算での運営です。その です。2002年12 月 31 日現在の従業員数は 32 万 4,892人で、 他、フォルクスワーゲン商用車、フォルクスワー このうち 16 万 7,005 人がドイツ国内の事業所で働いています。 ゲン ファイナンシャルサービス、ユーロップカ 2002 年には、グループ全体の売上高は 869 億 4,800 万ユー ーなどの関連企業もフォルクスワーゲン グルー ロ、税引後利益では 25 億 9,700 万ユーロを記録しました。ま プに属しています。 た同年、502 万 3,000 台の自動車を生産し、499 万 6,000 台 を販売しました。前年比年間販売台数の増加率が最も高かった フォルクスワーゲンの生産拠点は、欧州 11 カ国 のは、アジア・太平洋地域でした。 とアフリカ、アメリカ、アジア地域の 7 カ国にあ ります。グループ全体では 45 カ所の生産拠点が フォルクスワーゲン グループは、フォルクスワーゲンとアウデ あり、それを欧州/その他の市場、北アメリカ、 ィという 2 つのブランドグループに分かれます。フォルクスワー 南アメリカ/南アフリカ、アジア・太平洋地域の ゲン ブランドグループは、伝統的な価値を重視しており、フォ 4 地域に分けて統括しています。ファイナンシャ ルクスワーゲン、シュコダ、ベントレー、ブガッティの各ブラ ルサービスとユーロップカーは、ファイナンシャ ンドから構成されています。またアウディ ブランドグループは、 ルサービス部門の管轄です。フォルクスワーゲン アウディ、セアト、ランボルギーニの各ブランドで構成されて AG 本体は、ウォルフスブルグ(本社所在地)、 ブラウンシュヴァイク、ハノーバー、カッセル、 エムデン、ザルツギッターのフォルクスワーゲン 各工場で構成されており、親会社としてフォルク スワーゲン グループ全社を代表しています。 詳細については、下記のウェブサイトをご覧ください。 www.volkswagen.de www.volkswagen-ag.com ウォルフスブルグの本社 4 5 1 企業の責任 持続可能性 ポリシー バック・トゥ・ザ・フューチャー フォルクスワーゲンと持続可能な発展 未来をどう形作っていくか、そのための責任と意義ある方法について、この地球上の どこかで誰かが語り合わない日はありません。「持続可能性」が流行語になり、現代 社会のキーワードにさえなったことには疑いの余地がありません。しかし、いったい 持続可能性とは何を意味するのでしょうか。持続可能性という言葉はそもそも 18 世 紀、木材の需要が高まるなか、森林のより慎重な管理手法を説明するためにすでに使 われていました。この場合の持続可能性とは、森林の成長量以上の木材を伐採しない、 という意味でした。1987 年に国連のブルントラント委員会はその報告書の中で持 続可能性という言葉を採用し、長期にわたり継続できる社会発展の原則という意味に 格上げしたのです。 持続可能な発展とは、現代のニーズを満たしながら、将来の世代のニーズを犠牲にし ないような形で発展することを意味します。 バック・トゥ・ザ・フューチャー 企業の責任 持続可能性 ペーター ツォリンガー 「SustainAbility Ltd.(サステイナビリティ社)は 1987 年か ら、持続可能な発展という考え方に基づき、有力企業が社会的 な価値に対する意識を高め、責任を負い、将来に適したビジネ スモデルを展開するための支援を行ってきました。フォルクス ワーゲンはここ 3 年来、私たちの「エンゲージング・ステーク ホルダー・プログラム」にパートナーとして参加しています。 このプログラムの目的は、経済・社会・環境側面の取り組みの 成果と課題を一貫した手法で報告することで、説明責任を果た し、信頼を生むことです。フォルクスワーゲンは、他のパート ナー同様、持続可能性という課題を社内でどう展開するかにつ いて、定期的に率直なフィードバックや提案を受けています。 私たちの共同プロジェクトの根底にあるビジョンは、企業はグ ローバルな事業活動にどのようなチャンスと課題が存在するか を理解し、これに応じて活動すべきだというものです」 ペーター ツォリンガー(38)は、スイス・チューリッヒにあるサステイナ ビリティ社のエグゼクティブ・ダイレクターです。 6 7 ブルントラント報告書、そして 1992 年にブラジルのリオデジ 国際的に事業を展開する他の主要企業と同 ャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)の結果、 じように、フォルクスワーゲンはこの課題 持続可能な発展の原則は行動規範として世界中に広がりました。 に一から取り組んできました。例えば目標 そして、この行動規範は社会や政治だけでなく、企業にも責任 値を設定し、自社製品の燃料消費量を削減 ある行動を求めるものでした。今日、持続可能性という考え方 するという自主規制を掲げました。こうし は環境保護だけにとどまらず、長期的社会・経済政策の目標と た活動は企業に、自らの責任により独自性 されるようになっています。 を持って新たな道に踏み出す機会をもたら します。フォルクスワーゲン、アウディは 企業にとって持続可能性の実現は、内外にわたり取り組むべき それぞれの 3 リッターカー開発で推進力を 課題となりました。何よりも消費者や環境団体といった社会的 発揮し、国の規制に先駆けて、最高の燃料 組織の力、また加えて政治的影響力も働き、企業には国内レベ 効率を持つ新たな製品の選択肢を市場に提 ルでも国際的なレベルでも高い基準が課せられています。その 供することになりました。 結果、グローバルにブランド展開している大企業は、かつてな いほど公の目にさらされるようになってきています。 1 企業の責任 持続可能性 ポリシー フォルクスワーゲンは、社会、環境両方の側面が企業方針に反 映されて初めて、長期的に利益をあげることができると確信し ています。このような 3 次元的なとらえ方は従来からある「トリ プルボトムライン」と呼ばれる概念を反映しています。 企業は経済的な視点にたって行動せざるを得ません。企業の根 本的な役割は、経済的価値を生み出し、顧客のニーズに応える ことにあります。しかし長期的にこうした活動を続けるには、 企業は事業活動が社会や環境に与える影響についても認識し、 それらをあらかじめ考慮して方針を策定しなければなりません。 フォルクスワーゲンは持続可能な発展に対する取り組みを将来 への投資ととらえています。短期的なコストは、株主やステー クホルダーへの中長期の利益で相殺されます。こうした戦略的 な方向性は、生産部門でのモジュール戦略(16 ページ参照)や、 TDI や FSI といった高効率エンジン技術の開発、アルミニウムを 使った軽量設計における専門知識などに見て取ることができま 「社会的権利および労使関係に関する宣言」の署名 式。(左から)フォルクスワーゲン AG 取締役会会 長 Dr. ベルント ピシェツリーダー、フォルクスワ ーゲン AG 人事担当取締役 Dr. ペーター ハルツ、 国際金属産業労働組合連合(IMF)会長クラウス ツヴィッケル、フォルクスワーゲングループ世界従 業員協議会事務局長ハンス ユルゲン ウール、フォ ルクスワーゲングループ世界従業員協議会議長クラ ウス フォルカート す。また、ファイナンシャルサービスや業務用車両管理、レン タカーといった、パーソナルモビリティの向上をはかるための 自動車関連サービスもあります。 グローバル化がもたらす課題 フォルクスワーゲンにおける 持続可能性をめぐる議論が進むにつれ、「グローバル化」という 持続可能性実現のキーワード キーワードはますますホットなテーマになってきました。世界 資本、従業員、技術、原材料、知識、顧客 市場へ進出することにはリスクとチャンスの両方があり、国際 間や一般社会における評判などあらゆる資 貿易上の新たな課題が生まれることは間違いありません。特に 産を獲得し、これらを長期的に守ること 先進国の企業には、その事業拠点において、環境と社会の両面 ――フォルクスワーゲンでは、持続可能な で模範的な役割を果たすことが求められています。フォルクス 事業活動をこうとらえています。製品を生 ワーゲンはこうした期待に応えるよう鋭意努力しています。 産しサービスを提供するにあたり、企業は 天然資源を使います。これらの天然資源に こうした考え方に基づいて、例えば社会的な活動を推進するこ 対する責任あるアプローチは、持続可能性 と、法の基準より厳しい環境面、社会面の基準を自主的に設定 の実現において基本となるものです。社会 することなどによって、私たちは地域に貢献しています。フォ 的側面においては、企業は有能な従業員や ルクスワーゲン AG 取締役の Dr. ペーター ハルツは「社会的権 信頼できる法体系、有能な研究・学術団体 利および労使関係に関する宣言」に署名するにあたり、「業界を などに依存しています。従って企業は、労 リードするグローバル企業がしっかりとした倫理的価値観を持 働の機会を提供し税金を支払うだけでな っていれば、欧州と北米、中南米で従業員に対し異なった扱い く、社会的な責任も担っているのです。そ 方をできるはずがない」と、述べています。 れは例えば「アウトヴィジョン」(93 ペー ジ参照)のように、経済・地域開発に関す る方策の場合もあれば、ドイツ政府に助言 を行ったハルツ委員会の例のように、政界 に提言を行う場合もあります。 バック・トゥ・ザ・フューチャー 企業の責任 持続可能性 企業をとりまくステークホルダー 一般市民 フォルクスワーゲンにおける持続可能性実現に向けた メディア 取り組みの柱は次の通りです。 • エボリューション(継続的発展) • インテグレーション(総合的アプローチ) (潜在的な)顧客 NGO 競合 大学・研究機関 • イノベーション(革新) • コミュニケーション 販売店 政府 • ラーニング(学習) 従業員 政治家 サプライヤー エボリューション(継続的発展) 私たちは、持続可能性を継続的な発展のプロセスとと 地域住民 らえています。言い換えれば、フォルクスワーゲンの 債権者 土地所有者 ビジネスパートナー 伝統や企業文化、事業環境に基づき、独自の持続可能 株主 性への道を進んでいるということです。長期的配慮、 保険会社 天然資源の慎重な扱い、従業員や、社会におけるその 他のパートナーに対する社会的責任 ―― これは、長 年にわたりフォルクスワーゲンの事業活動の特徴と 資料:フォルクスワーゲンAG なっています。 せん。私たちにとってこれは、社会に対し インテグレーション(総合的アプローチ) て重要な情報を信頼できる方法で自主的に 問題解決や決断の際には、総合的な視野に立つことが何よりも 提供することを意味します。ゴルフやルポ 重要であるとフォルクスワーゲンは考えます。例えば、新しい などの車種で実施したライフサイクルアセ 施設の建設計画といったビジネス戦略を検討する際には、環境 スメントは、製品に使われる原料やエネル 面や社会面も常に考慮しています。こうした方針は、生産活動 ギーに関する情報を提供しています。環境 において「世界的な環境保護基準」を考慮することや、環境保 レポートでは、環境保護や持続可能な発展 護や人事施策に関して議論する際に当初から専門家に参加して に対する取り組みの包括的な情報を定期的 もらう点などによく表れています。 に発信しています。また、インターネット ではフォルクスワーゲンにおける最新の環 イノベーション(革新) 境対策関連情報を常にお届けしています。 このような包括的な物の見方、また外部のステークホルダーか ら向けられる関心が、常に事業成果を厳しい目で精査する原動 相手に対する敬意、理解しようという気持 力となっています。その一環として、ステークホルダーグルー ち、批判に正しく対応できる能力なしには プとの活発な対話があります。このようにしてフォルクスワー 公正な対話は成り立ちません。フォルクス ゲンにおける持続可能性の文化は、新たな革新への可能性を生 ワーゲンにとって対話姿勢とは、話し合い み、これが「ブリージングカンパニー(呼吸する企業)」「労働 への呼びかけを歓迎するだけでなく、さま 時間積立証書」(92 ページ参照)、そして世界初の 1 リッターカ ざまな利益団体と直接接触する機会を積極 ー(50 ページ参照)といった新しいアイディアにつながるので 的に求めるということです。このように、 す。 対話を通じた受容と信頼の基盤づくりと、 相互学習を私たちは目指しています。今回 コミュニケーション&ラーニング(学習) の環境レポートでは、フォルクスワーゲン 有権者やその代表、企業、各種活動組織、各種機関などの社会 にとって最も特徴的なパートナーや批評家 的な利益団体は、持続可能な発展についての期待や要求、そし の方々の意見を「サステイナビリティ・パ て実現のためのそれぞれの役割について合意しなければなりま ートナー」あるいは「チャレンジャー・ス 8 9 1 企業の責任 持続可能性 ポリシー テートメント」という形で紹介する場を設けました。このよう ために、自動車メーカー、石油会社、自動 な、両者に利益をもたらす建設的なコミュニケーション文化の 車部品メーカーが連携して活動していま 例は、ドイツ自然保護連盟(NABU)や (エコ・イ す。またフォルクスワーゲンは、国連環境 ンスティトゥート:応用エコロジー機構)との環境活動の連携に 計画(UNEP)が設置したモビリティフォ も見ることができます。さらに、さまざまな団体や活動も互い ーラムでも、国際的に事業展開する他の自 に学習することのできる有益な意見交換の場となっています。 動車メーカーと協力してグローバルな環境 保護や持続可能な発展への取り組みを進め フォルクスワーゲンは、持続可能な発展のための世界経済人会 ています。現在、モビリティフォーラムは、 議(WBCSD)の発起人です。WBCSD の「持続可能なモビリ グローバル・レポーティング・イニシアチ ティ」プロジェクトは自動車業界の主要な共同プロジェクトと ブ(GRI)のガイドラインを補足すること なっています。このプロジェクトでは、2030 年のグローバル を念頭に、企業活動を外部に報告するため なモビリティに関する共通の構想(87 ページ参照)を策定する の自動車業界独自の指標を確立することに フォルクスワーゲンとグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI) グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)は、 ために業界ごとの指標の策定を行っています。これらの指 1997 年に米国ボストンで、持続可能性の報告について 標は GRI の発行する一般的ガイドラインを補足するものと 世界共通のガイドラインを作ることを目的に設立されまし なっています。 た。これには NGO、民間企業、コンサルタント、監査法 人、組合、その他さまざまなステークホルダーのグループ 自動車業界向けの各分野の補足事項に関する議論は、 が参加しています。GRI は、進捗状況に応じてガイドライ 2002 年 5 月に始まりました。2003 年末までにその結 ンを発行し、サステイナビリティレポート作成にあたって 論が出されテスト版が完成する予定です。フォルクスワー の方向性を示しています。最新のガイドラインは 2002 ゲンは、コミュニケーション活動のなかで、テスト版を試 年に発行されており、グローバリゼーションとコーポレー 験的に活用していく予定ですが、今回の環境レポート発行 トガバナンス(企業統治)、アカウンタビリティ(説明責 には間に合わなかったため、一部のテーマや指標を参考す 任)とシチズンシップ(市民性)といった時代のキーワー るにとどまりました。私たちは GRI ガイドラインだけを遵 ドにより配慮したものとなっています。GRI にとって、ガ 守し、これに完璧に沿ったものにすることだけがサステイ イドラインの発行は活動の中心となるものです。ガイドラ ナビリティレポート作成の方法ではないと考えています。 インには、分野ごとの補足事項や技術的な測定規定、テー もちろん、検証可能な基準があれば、報告書間の比較がし マに沿った手引きなども盛り込まれています。 やすくなり、報告内容がより明確になるという利点はあり www.globalreporting.org ますが、企業によって事業形態や構造、プロセスが違うた め、企業間の数値データなどを直接比較するのは非常に難 フォルクスワーゲンは、すでに環境レポート 2001 / しくなっています。従って、持続可能性のための取り組み 2002 年で多くの GRI の指標を考慮しましたが、今回の を報告する際、各企業にある程度の裁量を残しておくこと レポートではさらに一歩進め、レポートの構成を変え、持 は重要です。特に、持続可能性という考え方の複雑さを考 続可能性の 3 つの側面により焦点を当てています。さらに えるなら、基準が厳格すぎると、各企業の重要な個別の開 「戦略」というページを設け、ここでも環境、社会、経済 発プロセスが見落とされがちになり、それぞれに最も有効 の各テーマを具体的に取り上げています。GRI の示す種々 なめりはりを付けた建設的な活動が抑制されてしまう恐れ の指標に対するフォルクスワーゲンの現時点での達成度 があります。そこで、今回の環境レポートでは、ステーク は、インターネットポータルでご覧いただけます。 ホルダー、ビジネスパートナーからの率直な意見や外部か www.mobility-and-sustainability.com らの批判に耳を傾け、第三者的な研究所、格付け機関、コ ンサルタント会社などが発行しているガイドラインや基準 UNEP のモビリティフォーラムでは、フォルクスワーゲ も充分に検討し、積極的に取り入れました。また、これを ンは他の自動車メーカー、GRI、環境・経済・社会分野の 繁栄してウェブサイトも刷新しました。 国際的なステークホルダーとともに、持続可能性の報告の バック・トゥ・ザ・フューチャー 力を注いでいます(前ページ参照)。 企業の責任 持続可能性 盟(BDI)の呼びかけにより、2000 年夏 にベルリンで設立されました(85 ページ フォルクスワーゲンは、欧州産業界で誕生した CSR ヨーロッパ (企業の社会的責任)の活動に 1995 年から参加しています。 参照) 。 www.econsense.de CSR ヨーロッパの目的は、より高い収益性、持続可能な成長と 社会発展の融合に努める企業を支援することにあります。 フォルクスワーゲンの持続可能な発展モデル www.csreurope.org 2002 年にヨハネスブルクで開催された持 またドイツ国内では、econsense(エコンセンス)の「持続可 続可能な開発に関する世界サミットのグロ 能なモビリティフォーラム」で積極的に活動しています。エコ ーバルコンパクトミーティングで、フォル ンセンスは、持続可能な発展のビジョンを企業戦略に取り入れ クスワーゲンは持続可能な発展モデルを発 ている主要ドイツ企業や団体による活動組織で、ドイツ産業連 表しました。 フォルクスワーゲンの持続可能な発展モデル • フォルクスワーゲンにとって、持続可能な発展のモデル は、経済的な課題だけでなく、環境・社会面の課題にも 利、個人の能力開発、社会保障、経済活動への参加、こ れらは企業方針の核となる要素である。 真剣に取り組むという長期的な企業方針の基準となる。 • 協力とパートナーシップの企業文化は、労使間の協働を • ビジネス上の成功、長期的な環境保護、社会的能力の 3 つの要素が、フォルクスワーゲン グループのグローバ 成功させる基礎となる。ドイツでも、欧州でも、さらに は世界のどこにあってもこれは同じである。 ルな競争力を高める。 • フォルクスワーゲンにとってグローバル化は、国際競争 • フォルクスワーゲン グループは、顧客のニーズに応え 力を確保し自社の将来に備えるうえで決定的な要素とな るために、パーソナルモビリティに関する魅力的な提案 る。グローバル化と環境や社会への配慮を調和させるこ ができるよう、世界的規模で自動車の開発、製造、マー とは、現代の責任ある企業の責務である。この方針は、 ケティングを展開し、併せてサービスの提供と向上に努 フォルクスワーゲンの顧客や株主、従業員、ビジネスパ める。 ートナーに対しても長期的な利益をもたらす。グローバ ル化は、搾取のうえに成り立っていてはならない。 • 環境保護や社会受容性に配慮した先進技術を世界中に展 開することがフォルクスワーゲンの目標である。 • フォルクスワーゲンは、サプライヤーに対しても、環境 や社会に適合したアプローチを積極的に推進する。 • フォルクスワーゲンの企業方針で重要なのは、経済的な 成功を収めると同時に、製品の環境受容性を高め、天然 資源の使用量を削減することである。 • フォルクスワーゲンは、すべての生産拠点において、そ の地域の社会的、政治的パートナーであると考える。 • フォルクスワーゲンはドイツで誕生し、欧州の価値観を 持ち、地球規模の責任を負った企業である。従業員の権 このモデルは、私たちの環境・社会分野の原則に反映されてい 1995 年 5 月に発表した環境ポリシーの宣 ます。グローバルに事業展開する大企業にとって、ビジョンや 言の中で、環境保護の一般原則を打ち出し 原則は特に重要です。地域により事業環境や文化が違うため、 ました。これは世界共通の原則で、グルー より強い統合力が求められるからです。フォルクスワーゲンは プの各ブランドや地域に適した形に調整さ 10 11 1 企業の責任 持続可能性 ポリシー れています。この環境ポリシーによって、フォルクスワーゲン は 1995 年という早い時期に「社会や政界と手を取り合って、 社会・環境両面を配慮した持続可能な発展プロセスを構築して いく」という姿勢を示しました。 1998 年、第 1 回フォルクスワーゲン グループ環境会議の結果 を受けて、フォルクスワーゲンは生産部門の環境保護基準を定 めた世界共通のガイドラインを発表しました。このガイドライ 第 2 回グループ環境会議で講演する、フォルクスワ ーゲン環境戦略部門責任者Dr. ホルスト ミンテ ンは全工場の生産工程で平均レベル以上の統一した最低基準を 守ることを目的としており、工場内の設備の新設・更新時に留 意すべき点も定めています。同時にフォルクスワーゲン ブラン グローバルコンパクト さまざまなガイドラインや規制、イニシア チブに見られるように、国際的なレベルで は企業に多くのことが期待されています。 これらの原則を尊重するかどうかは企業の 自主性に任されていますが、フォルクスワ ーゲンのような企業にとって、こうした原 則は強力な指針となるものです。 南アフリカで世界サミットが開催されて以 来、フォルクスワーゲン グループは、国 連グローバルコンパクトの活動を支持して きました。 www.unglobal-compact.org 2002年の第2回グループ環境会議で展示された1リッターカー グローバルコンパクトとは、国連のコフ ィ・ A. アナン事務総長が 1999 年にダボ ドの「環境保護に関する合意」が経営層と従業員協議会の間で スで開催された世界経済フォーラムで提唱 締結され、 「優良な環境対策実践のルール」が打ち出されました。 した取り組みです。グローバルコンパクト のもとでは、企業は人権、労働基準、環境 フォルクスワーゲンは 2002 年の「社会的権利および労使関係 の各分野について全世界で統一的に適用さ に関する宣言」により、自動車業界で初めて、世界共通の労使 れる原則を遵守します。フォルクスワーゲ 関係の基準を従業員協議会および国際金属産業労働組合連合 ンもこれに賛同し、Dr. ベルント ピシェツ (IMF)と締結しました。 リーダー取締役会会長からアナン事務総長 に宛てた手紙の中で原則を積極的に遵守し さらに詳しい情報は、下記をご覧ください。 www.mobility-and-sustainability.com www.vw-personal.de ていくことを表明しています。 グローバルコンパクトは、9 つの原則を打 ち出しています。環境に関する原則の中で は、企業は環境問題に対して予防的アプロ ーチを取り、環境に配慮した技術を促進し、 積極的に環境に対する責任を果たすと明記 バック・トゥ・ザ・フューチャー 企業の責任 持続可能性 されています。主な目的は、国連と多国籍 に最も高いレベルでグローバルコンパクト 企業とが協力して、発展途上国の生活水準 を遵守しています。グローバルコンパクト 向上をはかることです。9 つの原則の本文は に参画する組織間の情報交換の場であるグ 下記の通りです。 ローバルコンパクト・ラーニングフォーラ ムにはフォルクスワーゲンも出席し、例え 人権 ば 2002 年 12 月にベルリンで開催された • 企業はその影響の及ぶ範囲内で国際的に宣言されている人権の 同フォーラムでは、「世界従業員協議会と 平和的紛争解決」について発表をしました。 擁護を支持し、尊重する。 • 人権侵害に荷担しない。 OECDガイドライン 2000年6月に経済協力開発機構(OECD) 労働基準 は「多国籍企業ガイドライン」を発行しま • 組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものにする。 • あらゆる種類の強制労働を排除する。 • 児童労働を実効的に廃止する。 した。これは今日までに政府レベルで承認 された、企業の行動規範に関する唯一の包 括的なガイドラインであり、フォルクスワ ーゲンのグローバルな活動の指針となって います。 • 雇用と職業に関する差別を排除する。 環境 www.oecd.org 同ガイドラインは企業に対して、人権、 • 環境問題の予防的なアプローチを支持する。 団結権、環境保護、消費者保護、汚職防止 に関する国際的な合意の遵守を求めていま • 環境に対して一層の責任を担うためのイニシアチブをとる。 • 環境を守るための技術の開発と普及を促進する。 す。児童労働や強制労働は、所属グループ や人種による採用や賃金面での差別と同 様、厳しく禁じられています。さらに企業 は従業員に対する職能開発プログラムの推 フォルクスワーゲンは企業環境ポリシー(1995 年)と「社会 進と、重要な投資決定に関する事前告知を 的権利および労使関係に関する宣言」(2002 年)により、すで 求められています。 「我々は選択しなければなりません。短期的な利益の計算だけによって動かされるグローバル市場 か、それとも人の顔を持ったグローバル市場か。人口の 4 分の 1 が餓えや貧困に苦しむ世界か、そ れとも良好な環境で、誰にでも、少なくとも繁栄のチャンスの与えられた世界か。敗者の運命を無 視する自分勝手な者ばかりの乱世か、それとも強者や成功者が自らの責任を引き受け、グローバル なビジョンとリーダーシップを発揮する未来か。 企業の側でも、この複雑で、時に厳しいグローバル経済のなかで成功しようと思えば、我々の世界 を変えつつある社会や環境の動向、また課題に対応しなければならないことがわかってきていま す。」 コフィ・A. アナン国連事務総長 他のステートメントは www.mobility-and-sustainability.com でご覧いただけます。 12 13 1 企業の責任 持続可能性 体制 WBCSDとエコンセンス たものにするなどの活動を行います。エコ WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)と econ- ンセンスの名のもとに協力し合う会員企業 sense(エコンセンス)の会員として、フォルクスワーゲンは は、能力、自発性、革新力を発揮し、持続 これらの組織の原則や行動原理を支援しています。WBCSD の 可能な発展を実現するために積極的に活動 目的は、持続可能な発展の実現に向けて産業界の影響力を行使 しています。 するだけでなく、環境効率や革新、ビジネスに対して責任ある アプローチをすることです。一方、ドイツ産業界が立ち上げた フォルクスワーゲンは 1991 年から、国際 エコンセンスの目的は、ビジネスでの成功に基づき、環境、社 商業会議所(ICC)の「持続可能な発展の 会の適合性が優れている製品やサービスを提供し、持続可能な ための産業界憲章」を支持しています。 事業活動を実践、継続することです。会員企業は、持続可能性 ICC の憲章は、環境マネージメントの 16 の原則に沿った方法で資源を取り扱うとともに、透明性や対話 の原則から成るものです。 の推進に努め、事業活動を国内外の持続可能性の原則に適合し www.icc-deutschland.de 構想と実践 フォルクスワーゲンにおける持続可能性への取り組み体制 フォルクスワーゲンでは、持続可能性への取り組みを総合的に とは、フォルクスワーゲンの持続可能性の とらえています。持続可能な発展に関する基本的なガイドライ 目標を各部署と話し合い、事業やプロジェ ンは、部門を越えて、サステイナビリティ推進グループが定め クトに織り込んでいくということです。本 ます。このグループは、コーポレート・ガバンメント・リレー レポートの2章(環境)と5章(グループ) ションズ、環境保護(製品・生産関連)、人事、財務、コミュニ で打ち出されている部署ごとの指標は、こ ケーション、法務の各部署の代表で構成されています。2002 の点で重要なツールといえます。 年と 2003 年にこの推進グループが行った具体的な活動のひと つは、南アフリカで開催された持続可能な開発に関する世界サ 月次の情報サービスと研究を通して、社内 ミットのために、フォルクスワーゲン グループによる活動の準 の関連グループには、環境、輸送、持続可 備を行うことでした。 能性に関する政治・科学・社会面での最新 情報が提供されます。持続可能性に関する フォルクスワーゲン グループ内の各ブランドや地域の組織には、 外部とのコミュニケーションは、対象とな それぞれの事情に合わせて最適化した問題解決やコンセプト開 るグループそれぞれに適した媒体を使って行 発のため、ある程度の自由裁量が与えられています。グループ っています。環境レポートやグローバルコン 統括環境関連タスクフォース(GTFE)、人事担当会議、地域会 パクトレポート、政治関連ニュースp:news、 議といったグループ共通のガイドラインや国際組織は、共通の 環境関連情報のインターネットポータル 基盤づくりに役立ちます(30 ページ参照) 。 www.volkswagen-environment.de、その 他「家庭と仕事」「フォルクスワーゲンの 各部署間の調整や戦略に関するコンサルティングについては、 燃料戦略」といったテーマでの公開討論な コーポレート・ガバンメント・リレーションズと環境・労災防 どがその例です。 止の 2 つの部署が責任を負っています。調整とコンサルティング 果敢であれ 企業の責任 持続可能性 サステイナビリティ・マネージメントの効果は、究極的にはそ ゲンの戦略の方向性を認め、フォルクスワ の結果でしか計ることができません。持続可能な発展という観 ーゲンの近年の活動を「模範的である」と 点から企業評価を行う独立した格付け機関は、フォルクスワー 評価しています(104ページ参照)。 フォルクスワーゲンによる持続可能な発展に対する戦略的貢献 シェアホルダーバリューの向上 グループ環境ポリシー 国際的な環境マネージメント 環境に配慮した製品の導入 透明性の高い環境コミュニケーション 外部との協力 環境 社会的権利および労使関係に関する宣言 より柔軟な労働条件 全世界グループ従業員協議会 ダイナミックな報酬体系 グローバルコンパクトの支持 社会 経済 顧客満足 自動車開発におけるモジュール戦略 モビリティサービス フレキシブルな生産 地域の構造的発展:アウトヴィジョン 資料:フォルクスワーゲンAG 果敢であれ グローバルな基準 フォルクスワーゲンでは、環境、社会、財務に関する戦略的な ります。環境や社会の基準は、企業が自社 決断が下される際、持続可能性が行動の枠組みを決める重要な の生産や製品に対してどれだけ高い目標を 原則となります。これは長期的に計画を立てている多国籍企業 設定しているかにほかなりません。自動車 という自己認識から生まれたものです。この原則を適用するこ のように高品質で複雑な製品には、生産工 とで、環境への取り組みや事業方針について全世界共通の枠組 程や従業員の資格の面で、長期にわたって みが生まれると同時に、世界各地の事業所で平均以上の基準が 適切な環境・社会面の取り組み水準を満た 満たされることが保証されます。また、その地域の経済や環境、 すことが求められるのです。この点では、 社会の水準に対する新しい起爆剤ともなっています。 企業の経済・環境・社会面での目標は一致 します。 しかし、グローバルな基準を導入することで、企業にはどんな メリットがあるのでしょうか。ひとつにはリスクの軽減があり ます。企画・経営面でも環境・品質管理システムや技術は一度 構築してしまえば、世界中の事業所に展開できるメリットがあ 14 15 1 企業の責任 持続可能性 戦略 しかし、短期的、中期的には各目標が一致しないこともありま 単位でも工場間でも可能です。「ターンテ す。競争の激しい状況のもとでは、早期に実施すべき環境保護 ーブル コンセプト」の導入で、製品への 活動に対して常に充分な財政的余裕があるわけではありません。 需要の高まりに柔軟かつ迅速に対応できる そのような場合には、段階的な実施が求められます。また時に ようになり、各工場のキャパシティを低く は自治体のインフラ事情により、環境保護活動の範囲が制限さ 抑えられるようになりました。 れてしまう場合もあります。この場合は地元自治体との密接な 技術力 連携が必要となります。 パーソナルモビリティを長期的に確保する しかしフォルクスワーゲンが根本的に配慮するべきであると考 技術力は、フォルクスワーゲンによる持続 えているのは、国際的な最低基準を満たすことだけではありま 可能性への取り組みの中核となっていま せん。もうひとつ重要なことは、2.4 章で紹介しているように、 す。これを長期的に保証するうえで何より 各地域で模範的な役割を果たし、先進的な製品や生産技術を地 も重要なのは、革新的な技術を搭載した製 域に移転することです。 品を開発することです。フォルクスワーゲ ンは駆動系技術分野において、すでに ® 経済的付加価値(EVA ) 1970 年代から電気自動車とハイブリッド フォルクスワーゲンの財務戦略は、シェアホルダーバリューを 車の開発に取り組んできました。電気自動 持続可能な形で高めていくことを目標としています。キーとな 車のボーラ エレクトリックや燃料電池で ® るツールは EVA (経済的付加価値)です。自動車部門を構成す 動くボーラ ハイモーション(55 ページ参 る部署や企業の、グループ全体の収益に対する貢献の評価基準 照)などのプロトタイプにより、開発は新 として適用されています。さらに導入前および導入段階におい たな段階を迎えています。アルミニウムを てもプロセス、プロジェクトや製品が、フォルクスワーゲンの 使った軽量自動車の開発において、フォル シェアホルダーバリューを長期的に維持し、向上させるもので クスワーゲンは 1994 年から先導的な役 あるかを確認します(105 ページ参照) 。 割を果たしてきました。また100 kmを3 リッターで走る世界初の 3 リッターカー、 製品と生産に関する柔軟な戦略 ルポ 3L TDIの発売により、高効率の駆動 数多くの車種や派生モデルを扱いながら顧客の具体的な要望や 系技術を量産モデルにも適用できることを モデルサイクルに関連する需要の波に対応しなければならない 示してきました。さらに 2002 年 4 月にデ メーカーにとって、柔軟な製品・生産戦略をとることは競争力 ビューをした 1 リッターカーでは、先進的 を高めるうえでの重要な要素です。フォルクスワーゲンは特に、 な軽量設計と駆動系技術でどんなことが実 さまざまな車種でモジュールを共用する戦略を採用することで、 現可能かを提示したのです(50 ページ参 技術、経済両面で製品についての相乗効果をあげています。つ 照)。 まり仕様が似ているモデルの場合、モジュールを共用すること です。これによって顧客のニーズにより細かく応じられるよう 燃料電池やハイブリッドといった革新的な になり、幅広い製品ラインアップを競争力のある価格で提供す 駆動技術もありますが、既存のガソリンや ることができ、開発サイクルも短縮することが可能になります。 ディーゼルエンジンは、この先少なくとも 生産部門に関して、フォルクスワーゲンは「ターンテーブル コ 短・中期的には主流として存在し続けてい ンセプト」という生産方法を開発しました。複数の車種を生産 くでしょう。燃料電池車が重要な役割を果 する工場では、各車種の生産台数をすばやく、そして比較的簡 たすようになるのは、まだだいぶ先のこと 単に実際の需要に合わせることができます。この調整は、工場 になりそうです(55ページ参照) 。 果敢であれ 企業の責任 持続可能性 持続可能なモビリティ 持続可能なモビリティ戦略は、異なる時間軸を考慮しなければ なりません。まず、将来の交通やモビリティの技術のために長 期的な戦略を立てる必要があります。しかしもう一方では、現 実を考慮し、既存技術を最大限に生かすべきです。 そこでフォルクスワーゲンは、次の2つの目標を掲げました。 • 既存の量産技術による環境保護の可能性を最大に生かし、最 も効率の高い革新的な自動車を開発する(革新による効果) • 環境効率の高い技術を大量生産の際に活用できるようにする (量的効果) (左から)グローバルコンパクト担当オフィサー Dr. コルニス ファン・デ・ルヒト、Dr. ペーター ハル ツ、クラウス フォルカート。ヨハネスブルクの持 続可能な開発に関する世界サミットにて 持続可能なモビリティを確実なものにするには、個々の問題か らシステム的な問題へと視野を広げる必要があります。自動車 このサミットでの私たちの活動の最大の目 は主要な移動手段としてパーソナルモビリティへのニーズを満 的は、グローバルコンパクトに関するフォ たしています。異なる輸送手段との効果的な連携(インターモ ルクスワーゲン グループとしての取り組 ーダルトランスポート)や充分なインフラの確保は、フォルク みを紹介することにありました(12 ペー スワーゲンだけでなく自動車業界全体にとっての課題であり、 ジ参照)。グローバルコンパクト担当オフ 今後ますます重要になると考えられます。それに備えて「持続 ィサーDr. コルニス ファン・デ・ルヒトが 可能なモビリティ」プロジェクトは、インターモーダルトラン 見守るなか、フォルクスワーゲン AG 人事 スポートの推進と交通インフラ全般の改善案を作り上げていま 担当取締役Dr. ペーター ハルツとグループ す(87 ページ参照) 。 世界従業員協議会議長クラウス フォルカ ートは、グローバルコンパクトへの支持を 持続可能なモビリティのためにはまた、燃料という別の側面も 再び強調しました。「フォルクスワーゲン 重要です。フォルクスワーゲンは 2001 年に発表した燃料戦略 が持続可能性を戦略的方針としてあげたこ を通じて、燃料や駆動系技術のそれぞれの時間軸を全体図に組 とは、何よりもまず、学び続ける意思と能 み込み、未来への掛け橋を築いています(44ページ参照) 。 力を保証することです。成果を常に疑問に 思い評価していれば、革新のための新たな 持続可能な開発に関する世界サミット(2002年) 可能性が生まれます。こうした姿勢なしに 1992 年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミ は、『ブリージングカンパニー(呼吸する ットへの参加に続き、フォルクスワーゲンは、2002 年にヨハ 企業)』も『労働時間積立証書』も、そし ネスブルクで開催された持続可能な開発に関する世界サミット て『社会的権利および労使関係に関する宣 にも参加しました。このサミットで企業は、持続可能な発展の 言』も、1 リッターカーも生まれなかった 推進者としての重要な役割を任命されました。特に国連のアナ でしょう」。Dr. ハルツはこう述べて、フ ン事務総長は、企業に政治の決断を待たず、行動を起こすよう ォルクスワーゲンの持続可能な発展への取 呼びかけ、産業界こそが持続可能な発展を実現するための重要 り組みを強調しました。 な推進力であると述べました。 また、フォルクスワーゲンのコンファレン スセンターにおいて技術展示会を開催しま した。来場者にはルポ 3L TDIとアウディ 16 17 1 企業の責任 持続可能性 戦略 A2 TDI といった 3 リッターカーに試乗したり、燃料電池車ボー 好事例です」と述べ、terre des hommes ラ ハイパワーのボンネットを開けて中を見たりする機会があり が企業と共催した最大のイベントであるこ ました。フォルクスワーゲンによる革新技術はさらに、燃料戦 とを強調しました。 略/サンフューエル(44 ページ参照)、スケルトンモデルの 3 リッター ルポ(写真)とアウディ A2 のアルミニウム製のスペ UNEPの技術産業経済局 (www.uneptie.org) ースフレームという軽量設計が紹介されました。しかし、展示 の働きかけにより、世界サミットを記念し 最大のトピックスは、やはり世界初の 1リッターカーでした。 て「持続可能な発展のパートナーとしての 産業」というテーマ で、22 の産業分野 に関する報告書が作 られました。自動車 業界に関する報告書 は、国際的な自動車 メーカーと、ACEA (欧州自動車工業会) や JAMA(日本自動 車工業会)などの自 フォルクスワーゲン環境戦略担当 Dr. イナ トゥルンと「レポーター」のアヤンダ タベーデ(左)、ネオ マトーぺ。ヨハネスブルクで開催したフォルクスワーゲン技術展示会にて 動車関連の団体によ って UNEP モビリテ ィフォーラムにおいて作成されたもので、 さらにマルチメディアターミナルと掲示パネル、ショートフィ フォルクスワーゲンも参加しています。 ルムにより、来場者に対してフォルクスワーゲンの持続可能な 「ベストプラクティス」と題した章では、 発展に向けた取り組みが紹介されました。このなかにはフォル フォルクスワーゲンとアウディそれぞれの クスワーゲン コミュニティ トラストが主催する、南アフリカで 3 リッターカーや労働時間積立証書(92 の地域活動も含まれています。展示内容の詳細は専用ウェブサ ページ参照) 、フォルクスワーゲンの中国市 イトでも紹介しました。南アフリカの高校生が現地レポーター 場での取り組みなどが取り上げられていま を務める日々のニュースや対話フォーラムなどを掲載し、将来 す。 世代に対する責任を果たすために、特に若い世代に向けて世界 サミットに関する情報を発信しました。国連環境計画(UNEP) ヨハネスブルクの世界サミットでは、持続 事務局長 Prof. クラウス テプファーなどとのインタビューを行 可能な発展は世界政治のグローバルな指針 いました。 であると確認されました。そして政府、政 治的・社会的組織、企業には、世界サミッ ドイツ産業連盟(BDI)が開催した「ドイツ・ビジネスデー」で トでの合意事項を各自の意思決定プロセス は、フォルクスワーゲンの役員が持続可能な発展にともなうグ や活動に組み込むという課題が与えられま ローバルな課題に関するディスカッションに参加しました。フ した。サミットの直後、フォルクスワーゲ ォルクスワーゲンと児童救済団体 terre des hommes(人間の ンでは、どの事業活動によってサミットで 大地)ドイツが共催した「未来のための 1 時間」と題したイベン の合意事項を推進できるかを検討し、次の トが terre des hommes のマネージングダイレクターのペータ 分野に決定しました。 ー ムッケより紹介され、その中でムッケは「このキャンペーン は、世界サミットのような場で話し合われた社会的な問題を、 立場の異なるプレーヤーがいかに連携して解決できるかを示す 力を合わせて 企業の責任 持続可能性 • サプライヤーのパフォーマンス フォルクスワーゲンは現在、持続可能性へ • 水の使用管理 の取り組みの一環として、世界各地で展開 • 資源消費の最適化 している既存の活動をさらに推進していく • 再生可能なエネルギー ために最適な戦略的目標を作成中です。 • 従業員教育 力を合わせて フォルクスワーゲンのサステイナビリティ・パートナー フォルクスワーゲンは持続可能な付加価値向上のため、世界中 イナビリティ・パートナーを紹介する場を で各分野のリーダーであるさまざまなパートナーと日常から協 設けています。 力しています。今回の環境レポートでは、各章の冒頭でサステ 18 19 Dr. ペトラ ボクスラー(terre des hommes) 「従業員協議会と従業員が子供たちのことを真剣 に考え、恵まれない子供たちの支援に実績のあ るパートナーと力を合わせれば、状況は大きく 変わってくるでしょう」 Dr. ボード マックス ヴォルフ (コーレンインダストリーズ社) 「化石燃料は有限です。この事実は自動車業界に 特に関係することです。現在ある技術のなかで持 続可能性を実現するには、太陽エネルギーを使っ たバイオマスのような燃料、風力、水力などを使 うしかありません」 インゴ シェーンハイト(イームック社) 「私たちイームック社は、フォルクスワーゲンと の間に特別な絆があると感じています。なぜなら、 研究の分野や、特にコンサルティングにおいては、 『いいことを考える』よりも『実行する』ことの ほうがはるかに重要だからです」 コメント全文、および他のサステイナビリティ・パートナーについては www.mobility-and-sustainability.com をご覧ください。 1 企業の責任 持続可能性 中国 アジアの夜明け 中国とフォルクスワーゲン ―― 持続可能なモビリティに向けたパートナーシップ 現在、中華人民共和国は世界の自動車市場で最も成長を遂げている国です。2002 年の自動車生産台数は 120 万台でした。今後年間 7 〜 7.5%の経済成長率が続いた 場合、生産台数は 2008 年までに 450 万台に達する見込みです。このような市場の 成長を加速させたのが 2001 年末の WTO(世界貿易機関)加盟以降、中国の消費者 にとって自家用車が求めやすくなったことと、北京が 2008 年のオリンピック開催 地に選ばれたことによる景気の上昇です。こうした発展を背景に 2010 年には、革 新と成長のシンボル、中国史上初の万国博覧会(EXPO 2010)が上海で開催され ます。 フォルクスワーゲンは国際的な自動車メーカーとして、中国とのパートナーシップに 先鞭をつけました。フォルクスワーゲングループは、1978 年に交渉を開始してか ら現在にいたるまで、中国経済の発展のために資本とノウハウを提供し続けてきまし た。自動車製造のための最初の合弁会社、上海フォルクスワーゲン汽車有限公司は 1985 年に設立され、その後 1991 年には長春に一汽フォルクスワーゲン汽車有限 公司、2001 年に上海フォルクスワーゲン トランスミッション有限公司がそれぞれ 設立されました。フォルクスワーゲンにとって中国は今、ドイツに次ぐ規模の一大市 場となっています。私たちはこうした過去の実績を踏まえ、責任を持って環境に配慮 しながら効率的な方法で、拡大の一途をたどる中国でのモビリティに対するニーズに 応えていきたいと考えています。 1日65万リッターの燃料を削減するには フォルクスワーゲンは、燃費の向上、そして排出ガスや CO2 排出量の削減を目指し て自動車の開発を進めています。その昔から世界的に認められていたディーゼルエン ジンは、今日、最新の噴射技術の導入により、あらゆる量産型エンジンと比較しても 燃費や CO2 排出量の面で最も優れたものとなっています。ディーゼルエンジンの可 能性は簡単な計算で説明することができます。北京のタクシーを例にとってみましょ う。市内を走るタクシー 60,000 台の 1 日の走行距離を台あたり平均 300 km とし て、現在使われているガソリンエンジン車をすべて最新のディーゼルエンジン車に取 り替えると、毎日約 65 万リッターのガソリンが節約でき、また年間の CO2 排出量は 最大 45%削減されます。タクシー会社にとってもコスト削減になるため経済的なメ 上海スカイライン リットがあります。フォルクスワーゲンは現在、中国市場におけるディーゼルエンジ ン車の普及に取り組んでいます。 フォルクスワーゲンの技術革新を進める上で要となるのが、中国における燃料品質の 向上です。燃料戦略の将来的な方向性はさておき、中国市場で販売されているフォル クスワーゲン車はすべて 2004 年から 2005 年までの国内排出基準を満たしており、 なかには 2008 年に施行される予定の基準を現段階で満たしているモデルもありま す。責任あるモビリティへの重要なステップと考えられるのが、最適化されたいわゆ る「デザイナーフューエル」を中国市場に投入することです。中国では天然ガスの埋 蔵量が豊富なため、合成ガスで作る合成燃料(シンフューエル)(46 ページ参照) アジアの夜明け 企業の責任 持続可能性 の生産、使用にうってつけです。またフォルクスワー ゲンが「サンフューエル」と名づけたバイオ燃料を生 産、使用すれば、中国は輸入原油に対する依存を抑え ることができます。中国は現在、原油使用量の約2割 を輸入に頼っています。化石燃料の一部をバイオマス で代替すれば、中国の農業にとっても新たなビジネス チャンスが生まれることになります。一方で、シンフ ューエルやサンフューエルを導入しても、燃料輸送イ ンフラにはほとんど影響がありません。 基準づくりに関するアドバイス 長年にわたって中国とのパートナーシップを築いて きた結果、フォルクスワーゲンは中国の経済政策立 案に参画する機会を与えられるようになりました。 例えばフォルクスワーゲンは国家環境保護総局 (SEPA)(www.sepa.gov.cn)にディーゼルエンジ ンの新しい技術基準に関するアドバイスを行ってい ます(29 ページ参照) 。 中国での乗用車販売 公共機関 35% 2 0 0 1 年 タクシー 25% 個人 40% 公共機関 17% 2 0 0 6 年 ︵ 予 測 ︶ タクシー 18% 個人 65% 個 人 向 け 需 要 の 増 加 資料:フォルクスワーゲンAG また、フォルクスワーゲンはさきに排出基準素案の策 定に参画することを内容とする中国政府との契約に調 印しました。さらにフォルクスワーゲンは全国自動車 標準化技術委員会の委員に任命された最初の外国企業 でもあります。私たちは持続可能なモビリティを中国 にしっかりと根付かせるため、引き続き対話の機会を 求めていくつもりです。 20 21 1 企業の責任 持続可能性 目標と方策 目標達成の第一歩は、 目標を明らかにすること 前回の環境レポートには、45 の主要戦略目標とその達成のための方策を記載しました。以下に示した一覧表は、 企業の持続可能な発展のための、私たちの新たな目標です。前回のレポートで掲げた目標の達成状況も紹介して います。前回と同様、詳しい目標値については各工場の環境宣言をご覧ください。 新たな目標 持続可能性および社会的責任 ・WBCSD「持続可能なモビリティ2030」プロジェクト最終報告書(シナリオを含む)を2004年第1四半期に発行 ・持続可能なモビリティのシナリオを作成 ・国際的な持続可能性イニシアチブに積極的に参加 ・世界中で持続可能性指標をリードする存在であり続ける ・サステイナビリティ・マネージメントの強化 ・今後も持続可能性・環境に関するレポーティングを高いレベルで維持 ・サプライヤーの選択基準に環境・社会的要素を取り入れる研究プロジェクトの実施 ・グローバルコンパクトへの積極的な参加 − グローバルコンパクト主催のラーニングフォーラムへの定期的な参加 −「ドイツ・グローバルコンパクト友の会」ネットワークへの参加 − フォルクスワーゲンのグローバルコンパクトに関する活動を企業広報刊行物(年次報告書、環境レポート、インターネット、 p:news、グローバルコンパクトのパンフレット)に掲載する − 2002年世界サミットの結果を踏まえた戦略目標の設定 ・ステークホルダーとの対話および協力の継続 ・地域ごとのパフォーマンス指標を全社レベルの持続可能性指標へ組み込む ・GRIの自動車業界向けガイドラインを持続可能性コミュニケーションに組み込む ・持続可能な発展に関する項目を従業員と管理職の研修内容に引き続き取り入れる ・アウトヴィジョン社のコンセプトを他の工場へ拡大 ・従業員年金制度の継続の保証 ・「ジョブ・ファミリー・ディベロップメント」に基づく持続可能な能力水準の保証 ・自動車分門でROI(投資利益率)の9%を達成 環境マネージメント ・北米、南米/南アフリカ、アジア・太平洋の各地域で第1回地域環境会議を開催 ・車両、コンポーネント、生産工程のライフサイクルアセスメントの継続 ・ライフサイクルアセスメントの部分的な自動作成のためのコンピュータープログラム開発 ・報告期間中のポズナン工場での初期認証 ・世界各地の工場でのEMAS とISO14001 の認証取得 購買および生産 ・各工場での消火用水取り扱い基準の策定 ・洪水の危険性が高い生産拠点での追加的な防止策の策定 ・空気中の汚染物質拡散に関する予測手法改善策の導入 目標を達成する第一歩は、目標を明らかにすること 企業の責任 持続可能性 ・ 2005 年までにウォルフスブルグ近郊のアラー川とケーストルフとヴァルメナウ間に位置するアラー草原の自然景観を復元する ・騒音源をより簡単で確実に特定できるようGPSトランスポンダー新技術を採用 製品,・研究・開発 ・ドイツ国内において、VDA(ドイツ自動車工業会)の自主規制目標の達成に貢献し、1990 年から 2005 年までの間に販売され た新規登録された車両の燃費を25%削減する ・ ACEA(欧州自動車工業会)が欧州委員会と合意した、欧州における新車の CO2 排出量を 2008 年までに平均 140g / km に削 減するという目標の実現に向けて貢献する ・未来指向の駆動システムの開発を促進 ・すべてのガソリンエンジンファミリーにFSI技術を展開 ・燃料室改良だけでEuro 4の排出規制が達成できない車種では、ディーゼルパティキュレートフィルターを順次標準装備する ・ディーゼルパティキュレートフィルターがなくてもEuro 4に適合する車種では、フィルターをオプションで提供する ・ CO2 ニュートラルな燃料(サンフューエルなど)の導入という中期目標を掲げ、石油メーカーと共同で最適化された燃料の開発に 引き続き取り組む ・Euro 4規制をディーゼル車において前倒しで達成できるよう努力する ・ 1980 年来、90%以上削減してきたディーゼル車の粒子状物質排出量を、Euro 4 が導入される 2005 年までに、さらにその 50%削減する ・最新技術を車両に搭載して、土壌や水質の汚染原因となる車両からの液類漏出を防止する ・新規開発モデルでは、日常使用における車外の騒音レベルを最低限に抑えることを社内目標とする ・欧州域内においてEU廃車指令で規定する特定の重金属の使用禁止を遵守する体制を整える ・自動車内装からの有害物質や悪臭の発生量を最小限に抑えることを重視し、環境にやさしい材料の車両への採用を促進する ・インターナショナル・マテリアル・データ・システム(IMDS)を徹底的に活用し、その改善に努める ・自動車の開発において未来型の環境に配慮した製造方法の導入を目指す ・解体・リサイクルしやすい製品づくりと、経済的で環境にやさしい使用済み自動車の廃棄に引き続き努める マーケティングとリサイクル ・コストを最適化したシュレッダーダスト処理技術を用いた施設の計画 ・独自の解体研究所の設立 ・解体効率をあげるための新型ツールの開発 ・リサイクル型式承認に用いるリサイクルデータベースのデータを使い、シュレッダーダストの量を計算する新しいソフトの開発 ・ドイツ国内で認可を受けた使用済み自動車解体業者とのネットワークを80〜100社に拡大 ・EU加盟国と加盟候補国内の輸入業者に対し、EU廃車指令の各国内における実施のための支援をする ・信頼できる起爆式コンポーネントの無害化技術の確立 ・ 2010 年の実用化を目指し、道路交通の効率・安全性を向上させるための INVENT(高度交通システムとユーザー・フレンドリ ー・テクノロジー)を開発 ・ミーターモビール(Mietermobil:カーシェアリング)の追加システムコンポーネントのテスト ・交通渋滞の改善や交通の安全性向上に役立つ車両間通信システムの標準化 22 23 1 企業の責任 持続可能性 目標と方策 環境レポート2001/2002年で設定された目標の実施状況 環境レポート2001/2002年で設定された目標 所 見 状況 持続可能性と社会的な責任 社内でのシナリオ作成に加え、「持続可能なモビリティ 2030」プロジェク トのパートナーとして米国バークレーの GBN(グローバルビジネス・ネッ トワーク)と共同で 2030 年に向けたシナリオ作業に取り組んだ。これらの シナリオはステークホルダー・ワークショップやダボスで行われた世界経済 フォーラムで紹介された。さらに「持続可能なモビリティ 2030」プロジェ クトの最終報告書でも紹介される予定。 + 国際的な持続可能性イニシアチブへの積極 的な参加 WBCSD のグローバルな取り組みである「持続可能なモビリティ 2030」や 「UNEP モビリティフォーラム」、GRI ダイアログの持続可能性に関する分野 別報告の自動車業界の部などに参加。 + 2002 年ヨハネスブルクにおける持続可能 な開発に関する世界サミットへの参加 フォルクスワーゲングループとして独自の展示を現地で開催し、国や業界ご との活動に参加。グローバルコンパクトの原則に責任をもって関わることを 表明した。 + ステークホルダーとの対話および協力の拡 大 さまざまなレベルで組織的な枠組みの構築と進展がみられた。例:ハノーバ ー工場における近隣地域との対話スキーム(地域レベル)、NABU(ドイツ 自然保護連盟)との協力(国内レベル)、グローバルコンパクト、UNEP モ ビリティフォーラム、GRIダイアログへの参加(国際レベル) 。 + 持続可能なモビリティのシナリオ作成 世界的に持続可能性指標をリードする存在 であり続ける 持続可能性指向のマネージメントシステム とツールのさらなる開発 DJSI World、DJSI STOXX、Ethibel Sustainability Index (ESI)、FTSE4Goodの各インデックスにランクイン。 + 持続可能性バランススコアカードのパイロットプロジェクトが完了。しかし 自動車業界と持続可能性の複雑さを適切にモデル化することはできなかっ た。 − 技術開発部が環境配慮型の製品概要を作成し一部で導入。 + マテリアルフロー管理と主要実績インジケーターである経済的付加価値 (EVA®)をリンク。 + 失業者削減のための地域プロジェクト アウトヴィジョン社でウォルフスブルグに 4,800 人分の新たな雇用を創出。 + 高齢者向け扶助の革新的アプローチをさら に検討・導入 2001年に年金基金を導入。繰延給与に関する法規制を遵守。 + 環境および持続可能性に関するレポートに おける高い品質基準の維持 現行のレポートでGRIガイドラインなどの国際基準への適合を強化。 + 国際的に通用する、社会規範に関する宣言 の準備 2002 年 6 月に、「社会的権利および労使関係に関する宣言」が取締役会と 全世界グループ従業員協議会、国際金属産業労働組合連合の間で正式に成分 化され、最低限の社会的基準とフォルクスワーゲンの生産拠点での平等を保 障。 + ブラチスラバ、マルティン、タウバテ、長春の工場での ISO14001 認証取 得、ブリュッセル工場での EMAS 認証取得が完了。報告対象期間に、ブラジ ルのレセンデ工場とポーランドのポズナン鋳造工場でも ISO14001 の認証 を取得。 + 環境マネージメント ブラチスラバ、マルティン、タウバテおよ び長春の工場は ISO14001、ブリュッセ ル工場は EMAS および ISO14001 の認証 取得 目標達成状況:+ 達成された目標 ○ 継続中 − 達成されていない目標 目標を達成する第一歩は、目標を明らかにすること 環境レポート2001/2002年で設定された目標 所 企業の責任 見 持続可能性 状況 欧州以外の生産拠点からの環境データの計 画的な入手と編集 世界の全工場で統一的な電子記録化と環境データの評価を行うためのソフト ウェアを開発。 + フォルクスワーゲンの環境活動に携わる従 業員間における国際的なネットワークを拡 充するとともに、環境保護・労働安全衛生 に関するイントラネットの役割を強化 2002年6月に第2回グループ環境会議を開催。 海外工場の従業員にドイツ語と英語での研修プログラムを継続的に実施。 イントラネットを通して世界中から関連文書へのアクセスが可能になった。 + インターネット上で環境保護関連ページを 拡充 インターネットへのレポート掲載を拡大。 + 持続可能性に関するインターネット上の情 報システムを構築 2002年世界サミットを機にサステイナビリティポータル www.vw-injohannesburg.de を開設。 + 車両およびコンポーネントのライフサイク ル・インベントリーを継続 内装コンポーネント、燃料タンク、カーボンファイバーファブリックなどに ついてコンポーネントのライフサイクル・インベントリーを実施。 " 従業員およびパートナー企業それぞれの職 種に応じた研修機会を増やす(例:サプラ イヤー向けワークショップ「プライオリテ ィA」の実施拡大) 2003 年 6 月に、第 100 回「プライオリティ A」ワークショップを開催。 1997 年以来、合計で 1,100 のサプライヤー生産工場から 1,200 人以上が 世界各地で同様のワークショップに参加。 + 「アウトヴィジョン」コンセプトを他の工場 にも拡大 カッセル(1999 年)、エムデン(2000 年)、ユイテンヘーグ(2001 年) の各工場にもプロジェクトを拡大。 + 自動車業界のインターナショナル・マテリ アル・データ・システム(IMDS)を社内 の業務に導入 技術開発部門(マテリアル・コントローリング・チーム)の業務に IMDS を 導入。 + 新しい騒音緩和技術の試験: GPS データの 入手および3Dノイズのマッピング GPS はまだ組み込まれていないものの、騒音源を測定するためにモーゼル 工場とザルツギッター工場でパイロットプロジェクトを実施。 " 環境認証手順をさらに改善する(大学やサ プライヤーとのパイロットプロジェクトを 含む) 「サプライチェーンの持続可能性」をテーマにした研究プロジェクトをオル デンブルク大学と共同で実施(2004年前半に終了予定) 。 + 2002 年までにハノーバーの砂型鋳造部門 で防臭バインダーシステムを開発する 国が推進する研究プログラムの一環として新しいバインダーシステムを試 作。プログラムは運用試験などを含め継続中。 " ソーラー廃水テクノロジー開発の促進 改良型リアクターのテストが終了。設備技術の工業適合性のための調整を引 き続き実施。 " 購買および生産 ブラジル・タウバテ工場:フィラーとトップコートにエアウォッシャー利 用、ドライヤーにアフターバーナー利用。 ドイツおよび海外生産拠点にて低排出の塗 装技術の開発を促進する ウォルフスブルグ工場:バンパー塗装工程で充填剤を溶剤から水溶性に切り 替え。 " メキシコ・プエブラ工場:トップコート塗装工程で充填剤を溶剤から水溶性 に切り替え。 フォルクスワーゲンの基準に基づき、水質 汚染のおそれのある物質のリストを改訂し、 海外工場に導入する 継続中 + 生産工場における飲料水の消費を削減する フォルクスワーゲン デ メヒコで削減を達成 継続中 " 目標達成状況:+ 達成された目標 ○ 継続中 − 達成されていない目標 24 25 1 企業の責任 持続可能性 目標と方策 環境レポート2001/2002年で設定された目標 所 見 状況 廃棄物ロジスティックスを向上させるのためのトランスポンダーシステム導 入は、ドイツ国内の工場ではほぼ完了。いくつかの海外工場では廃棄物の移 動を詳しく追跡するトランスポンダーの導入を現在検討中。 + ドイツ国内において、ドイツ自動車工業会 (VDA)の自主規制目標の達成に貢献し、 1990 年から 2005 年までの間に新規登録 された車両の平均燃費を25%向上する 継続中 + 欧州においては、欧州自動車工業会 (ACEA)が欧州委員会と合意した、新車の CO2 排出量を 2008 年までに平均 140g / km に削減するという目標の実現に向けて努 力する 継続中 + ディーゼル車でEuro 4排ガス基準を前倒し 達成するよう努力する ドイツで販売されているフォルクスワーゲンディーゼル車の 6 割以上が既に D4およびEuro 4排ガス基準に適合しており、さらにこの割合は増大する見 込み(2003年第3四半期現在)。 + 代替駆動システムを搭載したプロトタイプ を開発する 2002 年 2 月に燃料電池車ボーラ ハイパワーがスイス−イタリア間のシン プロン峠を走行。チューリッヒのパウルシェラー研究所と共同で、ボーラに 超高性能のスーパーキャパシタを採用した低コストの水素燃料電池を搭載。 全く新しい燃料電池システムを気温零度以下、急傾斜という条件で走行テス トすることが目的。 " 2005 年までにすべてのガソリンエンジン ファミリーにFSI技術を展開する 継続中 + 低硫黄燃料の早急な導入を目指し引き続き 積極的に活動する(硫黄含有量 10 ppm 未 満) シェルOptimax(燃料)の導入でシェルと提携。 + フォルクスワーゲンは 1980 年以降、ディ ーゼル車の粒子状物質排出量を 90%以上削 減してきたが、この数値を、Euro 4が導入 される 2005 年までに、さらにその 50% 削減する。 継続中 " 新しい接合技術の開発が完了。 + 接合システムの最適化と導入が進行中。小規模バッチ生産から適用。 " 達成 + 廃棄物のロジスティックスを向上させるた めトランスポンダーシステムを導入する 製品、研究、開発 車両組み立て作業をより環境に適合したも のにするため、新しい接合技術、特に低温 接合技術を開発し、適用する 新規開発モデルでは日常使用における車外 の騒音レベルを最低限に抑えることを社内 目標とする 目標達成状況:+ 達成された目標 ○ 継続中 − 達成されていない目標 目標を達成する第一歩は、目標を明らかにすること 環境レポート2001/2002年で設定された目標 所 企業の責任 見 持続可能性 状況 マーケティングとリサイクル 交通の効率および道路の安全性を向上させ るための INVENT(高度交通システムとユ ーザー・フレンドリー・テクノロジー)研 究プログラム 継続中 " ダイアル・ア・バス(Dial-a-Bus)システム の計画的・実践的導入を引き続き推進する ウォルフスブルグとニーダーンヴェーレンでのダイアル・ア・バス・プロジ ェクトの立ち上げを支援。 + ミーターモビール(Mietermobil :カーシ ェアリング)プロジェクトのための新しい アプリケーションおよびシステムコンポー ネント技術の開発 新たな技術コンポーネントを用いて、ハノーバーでミーターモービル プロジ ェクトを開始。 + 2005 年までに新車のリサイクル率を 95%まで引き上げることを目指す リサイクル型式承認が発効するまでに達成予定。 + 当社独自の解体研究所の設立 継続中 " 解体効率をあげるため新しいタイプのツー ルを開発する 継続中 " 廃車のバーチャルリサイクル用ソフトウェ アの開発 新しいリサイクルデータベースを構築、運用中。 + ドイツの使用済み自動車リサイクルネット ワークを約200 業者を目標に拡充 継続中。現在71業者まで拡充。 " 欧州の輸入業者が各国レベルで EU 廃車指 令に対応するためサポートをする 継続中 + 目標達成状況:+ 達成された目標 ○ 継続中 − 達成されていない目標 26 27 2 環境 環境戦略 ネバーエンディングストーリー フォルクスワーゲンと環境保護 フォルクスワーゲン ブランドの環境戦略は全社的なサステイナビリティ戦略 の一部分であり、このレポートの第 5 章に説明するフォルクスワーゲン グル ープの戦略の基本ともなっています。フォルクスワーゲン グループは 1995 年に、それまでの環境ガイドラインに代わり新しいグループ環境ポリシーを 打ち出しました。これをもとに、グループの各ブランドや世界各地の子会社 は、それぞれのブランドや企業風土にあった独自の方針を構築しました。環 境ガイドラインと環境ポリシーはいずれも、1970 年代初頭に初の環境部を 立ち上げてからの一連の取り組みの成果として生まれたものです。詳細につ いては最近出版されたフォルクスワーゲンの「Wasser, Boden, Luft(水、 土、そして大気 ― フォルクスワーゲン歴史シリーズ第 5 号)」(ドイツ語)に 述べられています。現在フォルクスワーゲンの環境戦略は、さまざまな生産 拠点で実施されている活動や 3 リッター ルポのような燃料効率の高い自動車 の開発にとどまらず、気候保全、燃料戦略、代替駆動システムなどの幅広い 分野に反映されています。本レポートではその詳細について説明します。 ネバーエンディングストーリー 環境ポリシーとマネジメント ルオ イー 「近年、中国では経済成長と生活水準の向上によって自動車が増 え、その結果大気汚染が悪化しています。SEPA とフォルクス ワーゲンは 1999 年以降、特にディーゼル車による排出ガスを 低減するための共同開発を行っています。私たちは協力して、 環境にやさしい技術やクリーンなディーゼル燃料、そして最先 端のテスト方法を開発するために努力を重ねています。こうし た共同活動をもとに、私たちはディーゼル車の排ガス削減のた めの技術ガイドラインを作成しました。これは中国の自動車開 発の歴史においてひとつの指標を示したと言えるでしょう。私 たちはこれからもフォルクスワーゲンと手を携えて、中国にお ける革新的なディーゼル技術の開発を推進し、環境保護に努め ていきます。中国の人々が将来もクリーンな環境を犠牲にする ことなく技術の発達から恩恵を受けられるようにすることを目 指しています」 ルオ イー(48)は中国国家環境保護総局(SEPA) (中華人民共和国・北京) 技術ガイドライン局次長である 28 29 フォルクスワーゲンのグループ環境ポリシーと環境保護対策は 物や廃棄物の取り扱いに関するルールが定 「環境保護に関する事業所内合意」で補完されています。この合 められています。環境保護に関連するすべ 意は環境保護対策の適用範囲を定義し、グループ内のそれぞれ ての事項が環境マネージメントシステムで の会社や工場レベルの規 規定されているのです。 制を示すほか、「環境適 正実施規則」を定めてい フォルクスワーゲンの環境ポリシー、環境 ます。これは従業員全員 保護に関する事業所内合意、およびフォル に義務づけられる原則を クスワーゲンの環境保護の歴史についての まとめたもので、職場で 詳しい情報は下記のウェブサイトでご覧い の行動規範はもとよりエ ただけます。 ネルギー(63 ページ参 照)、原材料、水(31 ペ ージのインタビュー記事 参照)など資源や、残留 www.mobility-and-sustainability.com 2.1 環境ポリシーと マネージメント 環境戦略 一貫性のあるアプローチ グローバルに実施されている環境保護活動をさらに効果的に連 査(74 ページ参照)や地域会議(下記参 携させるために、フォルクスワーゲンでは「グループ統括環境 照)を利用することにより、どの程度の相 関連タスクフォース(GTFE)」を設立しました。GTFE はフォ 乗効果やコスト削減が可能になるのかを明 ルクスワーゲン グループとブランドの環境戦略、目標、および 確にしながら、同時に賠償責任リスクを最 対策を立案し、地域レベルでこうした活動の調整を図っていま 小限に抑える努力をしています。 す。またフォルクスワーゲンは、情報交換強化のために国際監 フォルクスワーゲン環境マネージメントシステム GTFE* ブランドグループ環境委員会(EBGC) フォルクスワーゲン ブランド 環境マネージメント 代表責任者 研 究 開 発 担 当 取 締 役 グ ル ー プ 研 究 部 門 統 括 責 任 者 グ ル ー プ 研 究 部 門 代 表 製品部門 環境マネージメント 責任者 生産部門 環境マネージメント 責任者 販売部門 環境マネージメント 責任者 環境・労災防止 生産/工場の 環境プランニ ング 労働環境 ビジネスプロ セスにおける 環境戦略 リサイクルおよ びライフサイク ルアセスメント モビリティ 環境プロジェクト監視 ルポ ポロ ゴルフ ニュー ビートル パサート その他の モデル ハノーバー モーゼル パンプロー ナ その他の 工場 工場環境責任者 ウォルフ スブルグ エムデン 環境および消費者保護 ディストリビューター ディーラー インポーター *GTFE とは Group Task Force - Environment(グループ統括環境関連タスクフォース)の略です。GTFE は戦略、目標、手順などを作成 します。STEP(Strategic Task Force for Environmental Protection :環境保護のための戦略タスクフォース)の後継組織です。 資料: フォルクスワーゲン AG 地域会議 「フォルクスワーゲンは世界 に拡大しており、今では世 GTFE 界中に 45 の工場がありま す。従って、環境保護活動 地域会議 ・ 地域の代表者 ・ 工場長 ・ 環境マネージメント代表者 調整: 環境目標、方策、報告、監査など 資料: フォルクスワーゲン AG 結果 前進 評価 比較 でより歩調を合わせ、その グループの目標と戦略 ネットワーク化を進めてい ・製品 ・工場 ・方針 ・コミュニケーション ・… くことが必要です。私たち は国際的に協調し、同じ過ちを 2 度繰り返 さないように気をつけていかなければなら ないのです」 ギュンター ザーガー フォルクスワーゲン 環境マネージメント代表責任者 「節水できる場所ならどこでも」 環境ポリシーとマネージメント 水質保全担当責任者 クラウス パールマン(51) 、フォルクスワーゲンにおける水 の取り扱いについて環境レポート編集チームのマルティン ゲアハルトと語る。 「節水できる場所ならどこでも」 クラウス パールマンさん、ヨハネスブルクサミットでの水問題に キャンペーンの記事を参照) 水を使わなくても 関する決議はフォルクスワーゲンにとって重要な意味のあるもの 済むプロセスでは一切水を使いませんし、水が でしたか? 必要不可欠な場合は、使用後の水は再生処理を 初めてフォルクスワーゲンの工場が建設されて以来、私たちは常に節水 してから循環システムに戻すようにしています。 の方法を模索してきました。工場における水の使用は、当初より循環型 また、高品質の水を必要としない生産工程にお の考え方に基づいています。例えばメキシコの工場では、国際監査の一 いてはぜひ雨水などを利用したいとも考えてい 環として今後 3 年間に飲料水の取水量を 25 〜 30%削減するという環 ます。 境アクションプランが策定されました。しかしこれは、当社がさまざま な生産拠点で進めている取り組みのほんの一例にすぎません。 ドイツの最先端技術はそれほど簡単にすべての 拠点で使用できるのでしょうか? 国連は 2003 年を「国際淡水年」(水の年 2003)と定めましたが、こ もちろん、1 つの技術を別の生産拠点に導入す のことはフォルクスワーゲンにも影響を与えましたか? る前には、どの程度まで転用可能かを調査しま フォルクスワーゲンは「国際淡水年」の一環として、ここウォルフスブ す。そうしたなか、効果的な転用の実例もいく ルグのドイツ下水道協会の全国および地方会議の開催に携わりました。 つかすでにあります。例えばスペインで成果の ドイツ下水道協会は、洪水防止から飲料水取水や廃水処理に至るまで水 得られた技術があれば、それを今度はブラジル に関するさまざまな問題に技術面および組織面で取り組む関係者を結び へ、といった形で極力新規プロジェクトに活用 付けることを目的とした団体です。そのほかにもフォルクスワーゲンは していくようにしています。もちろんこれは技 節水や水質汚染防止に取り組み、「国際淡水年」に沿った活動を進めて 術を地域のプロセスに組み込めるかどうかによ います。 ります。例えば、南アフリカにおいては技術的 に適合しないという理由で最新のろ過技術が導 欧州全体での節水対策は? 入できない場合もあるのです。 例えばウォルフスブルグにおいては、取水から実際に工場外に排水され るまでに 1 滴の水が水循環システムを 6 〜 7 回通過している計算です。 さらに雨水も積極的に利用しています。このような戦略は、ウォルフス ブルグに限らず、欧州の他の工場においても実施されています。 フォルクスワーゲンの今後の水戦略はどのように展開されるのでしょ う? 現時点では、世界中にある事業拠点の環境アクションプランを作成中で す。このアクションプランには資源保護のための技術的、組織的な取り 組みが盛り込まれます。また現在 11 ある世界環境基準のうち 3 つは水 資源の保護に直接関連し、別の 1 つは水の循環システムや残留物のリサ イクルなどを取り扱い、間接的に関連しています。 しかし、地域によって違いはないのでしょうか?先進国では発展途上国 とは異なるアプローチが求められるのでは? 私たちはドイツの最先端技術をドイツ以外の国でも活用していますが、 長い目で見て環境にやさしい行動パターンを確立するためには、地域の 従業員の姿勢を変えるきっかけを作ってあげることが必要不可欠です。 従業員一人ひとりが職場での節水の大切さを理解しなければならないの です。私たちは基本的に節水できる場所ならどこであっても節水するよ う努力しています。 (62 ページ「ウォッチング・ザ・ウォーターライン」 このインタビューの全文を下記ウェブサイトでご覧 になれます。 www.mobility-and-sustainability.com 30 31 2.1 環境ポリシーと マネージメント 気候政策 大気をめぐる特別な気運 フォルクスワーゲンと京都議定書 2012 年までの間に全世界から排出される 気候変動は温室効果ガス、水蒸気、太陽活動などを原因とする この 6 種類のガスの量は 1990 年のレベ 地球のエネルギーバランス(日照、熱損失など)の変化をきっ ルから少なくとも 5%削減されることにな かけに進行しています。 りました。また欧州連合(EU)では同じ 期間に最低 8%、ドイツでは 21%削減す 地球上のどこかで誰かが木、石炭、油、天然ガスなどを燃やせ ることに合意しています。現在のところ、 ば、自然な排出ガスから気候に影響するガスが発生します。そ 気候に最も大きな影響を与えると言われる のため 1997 年に開催された国連地球温暖化防止京都会議を受 CO2 の全世界排出量のうち約 4.5%は人為 けて、国際社会は人間の活動に起因する 6 種類の温室効果ガス 的排出によりますが、この数値は増大しつ である二酸化炭素(CO 2 )、メタン(CH 4 )、一酸化二窒素 つあります。 (N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカ ーボン(PFC)、および六フッ化硫黄(SF6)の排出量を削減す モビリティ需要の拡大 るという目標を設定しました。これにより、2008 年から 経済協力開発機構(OECD)は「環境アウ トルック 2001」の中で、人為的 CO 2 排 出量のうちの 5.5%が自動車関連であると 世界の CO2 排出量 説明しています。この数値は、主に新興国 自然排出量 95.5% 人為的排出量 4.5% におけるモビリティ需要の急激な上昇傾向 と先進国におけるライフスタイルの変化の 結果、これからも世界規模で増大するので うち 化石燃料の燃焼 土地利用や耕作などの変化 はないかとフォルクスワーゲンは考えてい 3.5% ます。一方、先進国のなかにはすでに排出 ガスの削減である程度成功を収めた国もあ 1.0% ります。例えばドイツでは、自動車台数の 増加にもかかわらず、道路交通からの 化石燃料を原因とする全世界の年間 CO2 排出量 CO2 排出量はこの数年間減少し続けていま 単位:メガトンカーボン す。(51 ページ参照) 全世界の CO2 排出 7,000 量のうち自動車からの排出量が占める割合 6,000 はわずかですが、燃料消費量と CO 2 排出 5,000 量の低減は新しい自動車を開発するうえで 4,000 重要な目標です。こうした目標はフォルク 3,000 スワーゲンの駆動システム戦略や燃料戦略 2,000 に反映されています(44 ページ参照) 。 1,000 1957 1967 1977 1987 1997 排出権取引 気候温暖化防止政策のためにはどのような 期 間 平均年間上昇率 1957-1997 2.7% 1970-1997 1.8% 1980-1997 1.3% 1990-1997 1.1% 資料:Marland/Boden/Andres 著「世界、地域別、および国別 の化石燃料による CO2 排出量(2001 年) 」 手段が考えられるでしょうか。現在のとこ ろ、行政手段、環境税、自主規制などに依 存していますが、欧州では 2005 年から 温暖化防止の新たな切り札が登場します。 それが排出権取引制度です。この制度の基 本的な考え方は極めて単純です。まず企業 算定からスタート 環境ポリシーとマネージメント には CO 2 排出許容枠が割り当てられます。合意の得られた この政策議論に参加し、WBCSD(持続可 CO2 削減目標値に従ってこの許容枠は毎年削減されます。CO2 能な発展のための世界経済人会議)と を排出できるのは許容枠を割り当てられている会社だけであり、 WRI(世界資源研究所)が共同で作成した 新たに許容枠が必要になった場合には市場で購入しなければな 温室効果ガスプロトコルなどの原案づくり りません。また許容枠に余裕がある場合、企業はその余った分 に協力した理由はそこにあります。そうし を必要としている企業に販売することもできます。この排出権 たなかでフォルクスワーゲンではすでに排 取引は理論的には極めて単純に思われますが、実際には細かい 出権取引の準備が整い、特にエネルギー生 問題が山積みしています。フォルクスワーゲンが早い段階から 産事業で対応できる態勢にあります。 算定からスタート 自動車のトータルライフ 今日、環境にやさしい製品を開発する際には、その製品のライ 32 33 フサイクル全体を考慮に入れ、実際の製品の使用段階だけでな く生産や廃棄のプロセスも環境にやさしいものにしなければな りません。一方で顧客が購入できないような価格になるほど環 境のためにコストをかけることはできません。環境に配慮した 製品の開発に必要なもの、それは製品がそのライフサイクル全 体において環境におよぼす影響を算出するツールです。 ライフサイクルアセスメントがもたらす透明性 ライフサイクルアセスメントはこうした目的に役立つ、製品が 環境に与える影響を評価することができる手段です。ライフサ イクルアセスメントの第 1 ステップでは、自動車の生産(燃料 産出、原材料の調達、車両製造)から、使用、修理、メンテナ ンス、そして廃車処理に至るまでのあらゆる段階で発生するイ ンプット科目(資源、エネルギー源)とアウトプット科目(製 品、廃棄物、廃水、排出ガス、廃熱)のインベントリーを作成 します。そして次の影響評価のステップでは、科目毎に環境に およぼす影響を整理します。しかしここで念頭におく必要があ シュレッダーダストの処理装置 るのは、環境におよぼすあらゆる影響について必ずしも科学的 に信頼性が高いと認められた算出モデルが入手できるわけでは ないということです。さらに、一般に公表される環境アセスメ こうして集めたデータをもとに、製品が環 ントのために、環境におよぼすさまざまな影響を単純に計算し 境に与える影響を最低限に抑えるための対 て全体をひとつの数字で表すこともあまり役に立ちません。こ 策が練られます。ライフサイクルアセスメ のようなアプローチは恣意的で客観性の乏しいものとなるでし ントによる情報がなければ、目標を絞った ょう。 計画、方策、改善案などを生み出すことは できません。 2.1 環境ポリシーと マネージメント ライフサイクルアセスメント 製品ライフサイクルの全体像を示す ライフサイクルアセスメントの長所は、製品や生産プロセスの 環境面での特徴を全体像としてとらえることができるという点 にあります。製品寿命のある特定の段階だけでなく、ライフサ イクル全体、言うなれば「ゆりかごから墓場まで」がすべて示 されるのです。このように総合的な視点を持つことによって、 製品寿命のある段階で発生した問題が先の段階にそのまま持ち 越されてしまうことがなくなります。 自動車に総合的なライフサイクルアセスメントを実施すると、 製造からユーザーの手に渡り最終廃棄段階に至るまでの、あら ゆる環境要因を映し出した詳細な全体像が見えてきます。フォ ルクスワーゲンは 90 年代初めからライフサイクルアセスメン トに着手、1996 年に初めて一車両全体のライフサイクルイン ベントリーを発表しました。ゴルフ 4 のライフサイクルインベ ントリーは下記ウェブサイトからダウンロードできます。 www.mobility-and-sustainability.com ELV 破砕装置 使用済み自動車のリサイクルではこのアセスメントが特に役に 立ちます。ライフサイクルアセスメントがリサイクル処理方法 が判明しました。この成果は、優れた分別 の開発に組みこまれているからです。これによりさまざまな処 技術により破砕したものをほぼ 100%加 理方法を用いた場合の環境負荷を非常に早い段階で比較できま 工して再利用に回せるからこそ達成できる す。ゴルフ 4 を例に挙げてみましょう。 のです。 EU 廃車指令により、欧州では 2015 年までに車両重量の 95% 最近では自動車の部品やコンポーネントの (うちマテリアルリサイクル 85%以上、エネルギー回収 10% 多くが外注であるため、ライフサイクルア 以内)をリサイクルできるようにしなければなりません(88 セスメントの精度を高めるためには、サプ ページ参照)。これをゴルフ 4 で達成するには金属だけでなく他 ライヤーと緊密な協調関係を築くことがま の材料もリサイクルする必要があります。方法はいろいろあり すます重要になっています。フォルクスワ ますが、フォルクスワーゲンはライフサイクルアセスメントに ーゲンがサプライヤーに対してライフサイ 基づいて 2 種類のシナリオを比較してみました。まず、コンポ クルアセスメントの定期研修を実施してい ーネントを解体し材料をリサイクルする方法、そしてもうひと る理由はそこにあります(60 ページ参照) 。 つは、若干のパーツを取り外した後残る材料を破砕、それを分 また、ライフサイクルアセスメントのデー 別、処理し、原材料として再利用する「フォルクスワーゲン タを収集する作業は複雑になりがちです。 SiCon プロセス」という方法です(57 ページ参照)。 そこでフォルクスワーゲンはドイツ自動車 工業会(VDA)に所属する他の自動車メ インテリジェントな分別技術 ーカーと協力して、データ収集をしやくす ライフサイクルアセスメントの結果、コンポーネントを解体し るための指示書づくりを行い、サプライヤ てマテリアルリサイクルするよりもフォルクスワーゲン SiCon ーとの対話に役立てています。 処理の方が温室効果ガス排出量が 9 〜 16%少ないということ アイディアで成果を引き出す 環境ポリシーとマネージメント アイディアで成果を引き出す 従業員の環境への取り組み サステイナビリティ戦略を貫くということは、絶えず新たな課 こうした目的からフォルクスワーゲンは、 題が生まれることを意味します。世界を舞台に活躍する企業が セミナーやワークショップを幅広く取り入 そうした課題を解決していくためには、従業員の協力が欠かせ れ、情報交換や研修などのイベントを定期 ません。従業員のパワーとやる気がなければ、環境問題と持続 的に開催しています。また職位に関係なく、 可能性のゴールにたどり着くことは決してできないのです。 従業員一人ひとりの自発的な取り組みを奨 励しています。最近設立された AutoUni フォルクスワーゲンが、従業員の意欲を高め、確かな知識を身 (アウトウニ:自動車大学)(96 ページ参 につけさせることを最優先に考えている理由はそこにあります。 照)も、企業として持続可能な発展を遂げ 社内における学習プロセスを促進し、環境問題と持続可能性に るための独創性に富んだ人材育成の取り組 取り組むためのフォルクスワーゲンに合った新しい管理ツール みの一環といえるでしょう。 を開発していくつもりです。 人材開発と環境問題コミュニケーションプログラム 環境保護セミナーと研修コース イニシアチブ/プロジェクト 情報/モチベーション 34 35 経営陣向けセミナー: 1997 年から 2001 年の間、経営陣 905 名のうち 224 名がフォルクスワー ゲンのドイツ国内工場において半日セミ ナーを受講 マイスター研修: 2002 年末までにフォルクスワーゲン のマイスター 1,963 名のうち、839 名が 2 日間のワークショップ研修に参 加 リサイクリング・イニシアチブ「グリーンチーム」 (36 ページ参照) 社内報「アウトグラム」(月刊) 環境レポート(隔年発行) 「社内環境賞」コンペ(36 ページ参照) 環境宣言(環境監査にともない定期発行) 環境サービスセンター(ESC) (37 ページ参照) Umweltbrief(月刊) 「OFF」キャンペーン(63 ページ参照) 環境ニュースレター(隔月発行) 「再生紙」イニシアチブ (36 ページ参照) ポスターキャンペーン 情報イベント/講演 地域会議(30 ページ参照) 環境保護スペシャリスト: 1990 年から 2002 年末までの間に、 スペシャリスト 659 名がマイスターと 環境保護責任者の連携役、また同僚への 連絡担当者として研修に参加 経営会議 グループ環境会議(12 ページ参照) オープンデー 欧州以外の工場の環境保護スタッフを 対象とした研修 「レベル 5」(95 ページ参照) アウト 5000 での従業員研修: 2002 年に従業員 92 名が受講 資源管理者: フォルクスワーゲンのドイツ国内工場で 実施されている環境監査の一環として 2001 年以降 508 名の経営陣が受講 「緑の工場見学」 イントラネット 業務ローテーション インターネット すべての工場の環境保護責任者間の 情報交換 アイディアマネージメント 実習生のための「緑の工場ラリー」 AutoUni(アウトウニ:自動車大学) (96 ページ参照) 環境センター(ハノーバー工場など) 環境をテーマとした映画 2.1 環境ポリシーと マネージメント 従業員 「再生紙」イニシアチブ 社内報「アウトグラム」の協力で開催される全社コンペでは、年内に社内オーダーシステムへ注文した紙 のうち再生紙の率が最も高かった部署に賞が授与されます。今年はドイツ・エムデン工場の車両組立部門 がその栄誉を手に入れました。環境保護スペシャリストのアルベルト レックと同僚オイゲン ユリフスが 同部門のスタッフ 12 名を代表して受賞し、エコ・セーフティ・ドライバートレーニングの無料受講が全 員にプレゼントされました。再生紙の使用率は前年の 2 倍となりましたが、さらに高い成果を目指してこ のコンペは続けられます。 社内環境賞 ウォルフスブルグ工場の組み立てラインの従業員ズィルケ ファイルのアイディアにより、1 年間に 40,000 ユーロものエネルギーコストの削減ができるようになりました。彼女は努力の末、検査工程に配 置された複数の高圧ポンプのスイッチをソフトウェアの調整で自動的に切断されるようにすることが環境 にやさしいだけでなく経済的だということをトップに提案し、コンピューターの専門家にも納得させたの です。この功績により、彼女は 2003 年社内環境賞の受賞者に選ばれました。この賞は、環境保護のため の方策を提案・実行した従業員の功績を讃えて贈られるものです。 2003 年はハノーバー工場の 2 名の実習生アーグネス シュトックマンとアンドレアス ウェーバーにも環 境賞が授与されています。2 人は機械に使う潤滑油の量を最小限に抑えることで冷却潤滑材の量を削減し、 さらにその潤滑油を植物ベースのものに段階的に切り替えることによって、経済的で環境にもよいだけで なく、健康面でのリスクの低減も実現しています。3 人目の受賞者はセントラルサービスのゲルハルト ケ ンプファーです。ケンプファーは環境にやさしいオフィス用品の使用を促進するため数年来運動を続けて きました。再生紙の使用を促進しようと訴えたこの運動に対して、社内環境賞が贈られています。 リサイクリング・イニシアチブ「グリーンチーム」 ノルベルト レーパー率いる環境グループは「Work2Work」(100 ページ参照)に発展的に統合され、そ こでもまた、環境保護と利潤追求は共存できるということを改めて実証しました。障害を持つ従業員の仕 事を創出・確保していくことが、経済的にも意義があると証明したのです。 このリサイクリング・イニシアチブでは、不用になった梱包材を回収し、必要があれば適切な大きさに裁 断し、それをサプライヤーに有料で引き取ってもらったり、リサイクル業者に販売したりしています。 2002 年 9 月、作業のためチームに 3 台の新しい段ボール裁断機が配置され、顧客の希望する寸法通りに 正確に裁断できるようになりました。また使用済みプラスチックコンポーネント用には光電子式分別装置 も配置されました。 最新機器への投資はこのイニシアチブがいかに成功しているかを表しています。成果として廃棄物の量を 削減できただけでなく、リサイクル可能な梱包材の販売金額が 2002 年で総額 160 万ユーロにものぼり ました。ここ数年段ボールのリサイクルに力が注がれてきたのは、スタッフの人数はそのままで、より高 い収益が得られるようになったためです。 アイディアで成果を引き出す 環境ポリシーとマネージメント リサイクリング・イニシアチブ「グリーンチーム」(2002 年結果) リサイクル可能な梱包材の販売または材料需要の抑制によ るコスト削減 自動車 1 台あたりのコスト削減額 プラスチック 58 万ユーロ 1996 0.09 ユーロ ダンボール 97 万ユーロ 1997 0.14 ユーロ 5 万ユーロ 1998 1.23 ユーロ 160 万ユーロ 1999 2.33 ユーロ 2000 1.96 ユーロ 2001 2.63 ユーロ 2002 3.10 ユーロ ナパフォーム 合 計 廃棄物削減量 ダンボール 607,522 kg プラスチック 97,571 kg ナパフォーム 10,449 kg 合 計 715,542 kg 36 37 環境サービスセンター 環境保護は黙っていても達成されるわけではありません。他の 授業では、持続可能性、環境監査、モビリ 多くの問題と同様、学習する必要があるのです。そのためフォ ティといった内容のほか、エネルギーの利 ルクスワーゲンは研修カリキュラムにおいても環境保護をテー 用と保全、そしてフォルクスワーゲンの環 マとして取り上げています。毎年、ウォルフスブルグ工場の営 境ポリシーなども取り扱っています。また 業職、生産/技術職の実習生 550 名ほどが 1 年目のカリキュラ 環境保護の実践面についても講義が行われ ムの一環として環境サービスセンターでの研修の第 1 講に参加 ます。例えば、廃水センターを訪問したり、 します。2003 年夏以降、環境保護のクラスでは、参加者それ 専門の部署から依頼を受けて環境関連のプ ぞれのビジネスや作業プロセスと密接に関連した内容が取り上 ロジェクト(過去に廃棄物を埋め立ててい げられています。ただし研修の最初の 1 週間は、全員が一般的 た場所における地下水の汚染状況の測定な な環境問題について学ぶことになっています。 ど)を実施したりします。このように講義 の手法も多彩なため、研修生は普段ならあ まり興味のわかない科目にも関心を抱くよ うになり、楽しみながら学習できます。 研修の第 2 講は専門分野から講師を招いて の授業になります。ここで取り上げられる テーマは研修生の日々の仕事に関連した具 体的な問題ばかりです。環境保護や労働安 全が毎日の仕事に当たり前に取り入れられ るようにすることがその狙いです。 2.2 製品 当社のモデル 進化という伝統 環境のための技術革新 この章では前回の環境レポートと同様、読者のご要望にお応えして当社のモデルが持 つ環境面の特長を紹介します。今回の主役は 2003 年 9 月にデビューした 5 世代目 のゴルフです。ゴルフは現在に至るベストセラー車であり、低燃費で排出ガスの少な い自動車の開発においてフォルクスワーゲンを代表する車です。もちろん、そのほか にもフォルクスワーゲンの全車種に関して、エンジン性能から燃費、排出ガス、材料、 リサイクル性、技術的特徴に至るまで、あらゆる情報をウェブサイトで定期的に更新 しています。 www.mobility-and-sustainability.com 軽量イコール低燃費イコール排出ガス、というのは軽量設計の方程式とも言えます。 しかしもちろん、これはそれほど簡単なことではありません。実際、ほとんどの自動 車で軽量化は進んでいません。燃費を向上し、排出ガスを抑えることだけでなく、よ り安全で快適な車へのニーズも高まっているからです。電気的、電子的な支援機能が 進化という伝統 製品 ビルテ ハウス 「現代は、環境のために自分ができることから実践することが、 ますます大切な時代です。子供たちのために、そして私たちが この世を去ったずっと後にここに住む子孫たちのためにも。 1999 年、夫と私はルポ 3L TDI を最初に注文した人のなかに いました。そして感動しました。燃費の良さは言うまでもなく、 5 年間の免税、軽快な走り、そしてとても重要なことですが、 環境のために何かをしているという満足感です。3 リッター ル ポは実際のところ安い買い物ではないですが、その価格は進歩 の証です。4 人乗りには小さすぎるという人もいますが、街乗 りには完璧な車です。私たちは今 3 台目の 3 リッタールポに乗 っていますが、残念なことにこのモデルの人気は落ちているよ うです。でも、政府が燃費に見合った課税を導入すれば、状況 は変わるはずです。そうすれば、自動車開発における燃費向上 の動きもさらに促進されるのではないでしょうか。1 リッター カー、2 リッターカーが手に入るまであとどのくらいかかるの でしょう」 ビルテ ハウス(36)はインテリアデコレーター、二児の母でもある。ドイ ツ在住。 38 39 数多く採用され、コンポーネントの数が増加するなかで、この 軽量素材を体系的に使用することで達成で 目標を達成するためには、軽量素材の使用がますます重要にな きるものは何か ―― それを初めて実証し ってきています。 たのがルポ 3L TDI であり、これをさらに はっきりと示したのが 1 リッターカーのプ フォルクスワーゲンには軽量設計の長い伝統があります。例え ロトタイプです(50 ページ参照)。ルポは ばビートルは軽量化の点で時代を大きく先取りしており、自動 3 リッターのディーゼル燃料で 100 km 車製造において軽合金やプラスチックが一般的に使われ始める の走行が可能です。常に新しいスタンダー かなり前からマグネシウムを使用していました。しかし今日に ドを作り続けるという決意のもと、現在フ 至るまで、この分野での進歩は極めて緩やかなものでした。解 ォルクスワーゲンは新素材に関する徹底的 決すべき細かい問題が多数あるだけでなく、量産に入る前に製 な研究開発を行っています。アルミニウム、 造工程でも考慮すべき特殊事情があるのです。例えば、新しい チタン、マグネシウム、ファイバーで強化 素材には新しい接合方法や塗装技術が必要になるケースがほと した高性能プラスチックはいずれも自動車 んどです。こうした背景から、軽量材料の加工、最適な組み合 の軽量化、そして環境負荷の軽減に大きな わせ、そして組みつけ方法が自動車製造のカギを握る技術とな 役割を果たす切り札です。 りました。 2.2 製品 当社のモデル ここからは各モデルの環境面での主な特長について説明します。 アコンを使用する必要があり、余分な燃料 を消費することとなったのです。 ルポ ルポ FSI は環境にやさしいガソリン直噴システム(環境レポー ニュービートル ト 2001 / 2002 年版を参照)を搭載したフォルクスワーゲン ニュービートル カブリオレのソフトトッ 初のモデルであり、超軽量チタンバルブ製スプリングを採用し プは 3 層構造で、塩化ビニール(PVC) た世界初の量産モデルでもあります。ガソリンエンジン車とし はほとんど含まれていません。また、ラバ ては極めて高効率の 4.9 リッター/ 100 km という燃費を達成 ーコーティングを施してあるため防水加工 、ドイツの交通環境協会(VCD) し(CO2 排出量= 118 g/km) は不要です。ソフトトップのフレームにア による「車と環境」ランキング(2003 / 2004 年)では、前 ルミニウムとスチールの合金構造を用いた 回に引き続きトップの座を獲得しました(86 ページ参照) 。 ことにより、高剛性と軽量(およそ 26 kg)の両方を理想的に兼ね備えています。 ポロ ドアミラーに内蔵された印象的なサイドタ ポロの標準モデルが実現した驚異的な燃費は、2003 年 8 月、 ーンシグナルには、従来の電球に代わって オーストリア人ジャーナリスト、ゲルハルト プラットナーによ 省エネで長寿の LED を使用しています。 る「100 ユーロで行くエコツアー」で立証されました。長距離 ドライブのスペシャリストであるプラットナーは、4 日間 3,129 km におよぶ行程を平均 3.95 リッター/ 100 km とい う低燃費で走行したのです。1.9 リッター・最高出力 74 kW の TDI エンジンが消費したディーゼル燃料は合計 123.6 リッタ ー、標準的な車の燃料消費量よりも約 20%少なく、また燃料代 もわずか 90.89 ユーロでした。日中 35 ℃以上の熱波の中での 走行でなければ、ポロはもっとたやすく、そしてさらに優れた 数字をはじき出したことでしょう。しかし実際にはこの高温環 境下となったため、プラットナーは全行程のほぼ 3 分の 1 でエ ポール マッカートニーは彼の最近のコンサートツア ーを訪れた 200 万人目のファン、ローラ アンドリュ ーにニュービートル カブリオレをプレゼント ウィーンを走るエコ ツアー中のポロ 進化という伝統 製品 ゴルフ フォルクスワーゲンは 2003 年 6 月までに 4 世代にわたるゴル フ 2,240 万台を販売しました。全く新しい自動車のクラスを作 り出したゴルフは、他のいかなるドイツ車よりも多い生産台数 を誇っています。2003 年 10 月にドイツで発売となったゴル Dr. ベルント ピシェツリーダー、新型ゴルフを発表 フ 5 にも大きな期待がかかっています。この新型モデルは 2003 年 9 月にドイツのウォルフスブルグ工場で一般公開さ したゴルフ 2.0 TDI が発売される予定で れ、15 万人を超える来場者の注目を集めました。公開にいた す。このフィルターはエンジンと近接し、 るまでに新型ゴルフの開発エンジニアは多くのハードルを越え 新しいタイプの触媒コーティングが施され てきましたが、なかでも環境面ではそれまでのゴルフを超える ているため、酸化触媒や燃料添加剤の必要 性能が期待されていたことから、その設計は、技術開発部門の がありません。この先駆的なシステムはメ 7 つの環境目標に忠実に則って行われました。7 つの環境目標 ンテナンスの必要がなく、自動車が廃車と とは社内の環境負荷記録に文書化されたものです。そのなかか なるまでそのまま使い続けられます。最高 らいくつかの環境に関連した開発事項を紹介します。 の信頼性と最小限の複雑さ、その結果最小 限に抑えたコスト ―― これがフォルクス 2004 年からはディーゼルパティキュレートフィルターを搭載 ワーゲンの新技術の特長です。 40 41 新型ゴルフと技術開発部門 7 つの環境目標一覧表 排出物 材料 アンチモン、アスベスト、鉛、および カドミウムを使用しないブレーキライ ニング パワステオイル不要の電動パワーステアリ ングを採用する 燃費 コットンファイバーマットを用いたフ ロアの断熱 電動パワーステアリングにより燃費を 0.2 リッター/ 100 km 低減 カーペット裏材にコットンを使用 アンダーボディパネルと最適なホイール アーチライニングを使用することで、ア ンダーシーリングの PVC 使用量を低減 タイマー付リヤウィンドー ヒーター 転がり抵抗を最小限に抑えたタイヤの使用 製造 最高の空力が得られるよう設計されたアン ダーボディパネル 塗装工程の最適化により溶剤使用量を 低減 ドライ加工技術の導入により切削油剤 を不要とする アルミニウム製ベアリングブラケット は塗装不要 リサイクル クランプ付の解体しやすい燃料タンク アンダーボディパネルを使用すること で PVC 排出量を最低限に抑える 土壌と水質汚染 ガソリンエンジンおよびディーゼルエ ンジンのいずれもオイル交換とサービ ス点検の間隔を最大 2 年に拡大 パワステオイル不要の電動パワーステ アリングを採用する 騒音 低摩擦オイルの使用 PVC を使用しないアンダーシール 塗装工程での廃水量を低減 全エンジン欧州排ガス規制 Euro 4 遵守 A ピラーと B ピラー、そしてリヤアクスル サブフレームに高張力鋼板を使用 車内ドアパネルにテーラードブランクを採用 ステアリングホイールの芯材にマグネシウ ムを使用 アルミニウム製のブレーキキャリパーと遮 熱板 スペアタイヤが修理キットに 軽量ファイバーマットのリヤホイールアー チライニング 最適重量のダンパーおよび防音パッケ ージ 低騒音ファン 2.2 製品 当社のモデル ボーラ パサート ボーラおよびボーラ バリアントには、身体の不自由な方向けの 中級クラスのパサートには、2 種類の新型 特別装着品や運転支援ツールを用意しています。例えば、腕を 6 気筒 TDI エンジンが搭載されています。 使わないで運転できる装置、特製のスターター、前方に折りた いずれのエンジンにも標準仕様として 6 速 たむことのできる助手席、フロアの高さを上げることのできる マニュアルトランスミッションが装備さ フットプレート、義足ガード付きアクセルペダル、手動式のア れ、欧州排ガス規制 Euro 4 に適合してい クセルやブレーキ、回転ノブ付ハンドル、操作の非常に軽いパ るため、2005 年までドイツでは道路利用 ワーステアリングシステムなどです。多機能赤外線リモコンも 税の免税対象となります。また最先端技術 装備できるため、ドライバーはハンドルから手を離すことなく により、高排気量エンジンでの低燃費を実 サイドターンシグナル、ホーン、ワイパー、ライトを操作する 現しました。120 kW エンジンの 100 ことができます。これらはもちろん他のフォルクスワーゲンの km あたりのディーゼル燃料消費量は平均 モデルでも装備可能です。フォルクスワーゲンでは身体の不自 6.8 リッター、132 kW エンジンでは 7.6 由な方が新車を購入する際には 15%の特別補助を適用します。 リッターに抑えられています。2003 年以 降、パサート 2.0 TDI エンジンにはディー トゥーラン ゼルパティキュレートフィルターが装着さ フォルクスワーゲンは現在、既存のシャランと新世代マルチバ れています。 ンに 2003 年 3 月デビューの小型ミニバン トゥーランを加え た 3 車種の MPV モデルを販売しています。トゥーランは 5 世 シャラン 代目のゴルフのプラットフォームを基本構造とし、新しく開発 フォルクスワーゲンのミニバンであるシャ されたすべてのフォルクスワーゲンモデルと同様、技術開発部 ランは、1995 年からポルトガルのパルメ 門の 7 つの環境目標に沿って設計されています。例えば「騒音」 ラ工場で生産されています。再生可能な自 の項目に関しては、最適重量のダンパーと防音パッケージを採 然素材、例えばコットンファイバーを用い 用、またエンジンには静粛性の高いピストンと高剛性シリンダ た断熱マットなどがすべてのシャランの構 ーヘッドを使用し、走行中の車外・車内のノイズを最低限に抑 造に使用されています。またドアやサイド えました。FSI エンジンでは 2 段階噴射による改良燃焼プロセ トリムには約 11 kg の木質繊維材料を使 スがノイズを低減し、TDI ディーゼルエンジンもポンプインジ 用しています。 ェクター搭載で噴射ノイズを低減しています。 フェートン フェートンはフォルクスワーゲンのラグジ ュアリークラスのモデルであり、エンジニ アリングとスタイリングのすばらしい融合 の成果です。その技術革新のひとつには優 れた空力設計があげられます。フェートン の 0.32 という優れた Cd 値は、流線型の オーバーハング、ボンネット格納型フロン トワイパー、極めて狭いパネル間のスキ、 滑らかなアンダーボディ、V 型ノーズ、そ して空気抵抗の少ないボディによって実現 しました。新型エアサスペンションシステ ムは高速走行中の車体の浮き上がりを自動 的に抑制し、さらにサンルーフのエアディ どんな用途にもぴったり、トゥーランは 7 人乗り 進化という伝統 製品 ラスチックの使用でさらに軽量化され、ボ ディには、従来のラダーフレームの代わり に車両全長にわたってサイドメンバーを採 用しています。ボディのフロントとリヤに は、厚さとグレードがそれぞれ異なる最適 重量のテーラードブランク溶接された材料 を採用しています。 マルチバン ゴルフと同様、全く新しいクラスを作り出 フェートンを降りるユニセフ大使ニーナ ロジェ すという役割を担ったのがマルチバンで、 フレクターは走行速度とサンルーフの位置に応じて電気制御す ることによって、乱気流の発生を防止します。革新的なソーラ ースライディングルーフには 28 個の単結晶シリコン太陽電池 が搭載され、環境に負担をかけずに 37 ワットの発電をします。 42 43 この電気エネルギーによって作動するフレッシュエアファンは、 駐車中の車内温度を最大 20 ℃下げることができます。 トゥアレグ トゥアレグは、ラフロード、オンロードの両環境に対応したハ サンフューエルの給油(2003 年 IAA において) イテクエンジニアリングとラグジュアリークラスセダンの快適 さとを兼ね備えています。燃費向上と CO2 排出量低減のため、 現在 5 世代目となりました。このフォルク トゥアレグには軽量設計が幅広く取り入れられています。例え スワーゲン初の量産ミニバンは、オランダ ば、トランスミッションコンポーネント、フロントとリヤのサ 人ベン ポンのアイディアを土台に、 スペンションアーム、V10 TDI エンジンのクランクケース、直 1950 年、市場に登場しました。そして現 列 5 気筒エンジンや V8 エンジンのシリンダーブロック、およ 在、社内で T5 と呼ばれる 5 世代目のマル びボンネットにはアルミニウムが使用されています。また V8 チバンが脚光を浴びています。軽量商用車 エンジンでは、可変インテークマニホールドやシリンダーヘッ の用途は貨物の輸送から人間の輸送までと ドカバーにマグネシウムが用いられています。フェンダーもプ 幅広いため、通常は目に入らない部分、つ まりアンダーボディの耐食保護が特に大切 です。新しいマルチバンには従来の吹付け 式アンダーシーリングの代わりに複数のパ ーツから成るプラスチックパネルが使用さ れています。フラッシュサーフェスな 2 枚 のスライディングドアは滑らかで、前輪が まきあげた水滴や石がドアの部分にはね返 ることがありません。そのためワックスに よるアンダーシーリングが不要なだけでな く、この部分から発するノイズが大幅に低 減されるという二次的効果があります。 トゥアレグの牽引力は 3.5 トン 2.3 研究開発 燃料戦略 太陽を突破口に バイオ燃料の時代が始まった 人間は学習の早い動物である ―― この紛れもなく優れた特徴は、数え切れないほど の事例によって証明されています。人は学んだことを迅速に実行に移し、自分自身あ るいは社会全体のために壮大なことを成し遂げることができます。ところが、特定の 問題に関する知識をもとに有効な結論を引き出すまでに、非常に時間がかかる場合も あります。 今日、石油が利用できる年月は限られていると言われています。石油を生産できるの はおそらくあと 50 年間程度でしょう。そのうえ、石油の優れた特性と化学的な組成 を考えると、燃料として使うにはあまりにも貴重な資源です。200 年前に全世界の 1 年間のエネルギー需要をまかなっていた化石燃料の量は、世界人口が劇的に増えた 今日では 1 日分にすらなりません。石油の燃焼により発生する大気汚染を取り巻く議 論も激化しています。排出されるガスが気候に与える影響について気候学者の見解は さまざまですが、多くの研究者は CO2 が温室効果の原因であり、地球温暖化を引き 起こしていると考えています。人類が排出する CO2 は毎年 2,500 万トン弱ずつ増加 太陽を突破口に 研究開発 マーク ゲーンズボロー 「持続可能な方法で人・モノの輸送エネルギーの需要増に応える こと、それは私たちにとって将来の重要な課題のひとつです。 シェルは新しい燃料の開発に専念し、バイオ燃料、ガスから製 造される合成燃料(GTL 天然ガス液化技術)、水素技術を積極 的に開発しています。よりクリーンで効率の高い自動車技術と 燃料を導入し続けるために、今後も主要な自動車メーカーとエ ネルギー企業との間にさらなる積極的な協力関係が生まれると 私は考えています。これは、シェルとフォルクスワーゲンが WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の「持続 可能なモビリティ」プロジェクトで共同研究を実施する理由の ひとつでもあります。さらに、シェルとフォルクスワーゲンは、 昔から新しい燃料の開発に目を向けてきました。最近の共同事 業はベルリンでフォルクスワーゲン車両を用いて実施したシェ ルの非常にクリーンな GTL ディーゼル燃料のテストでした」 マーク ゲーンズボロー(44)はシェル インターナショナル(イギリス・ロ ンドン)の燃料部門担当バイスプレジデント 44 45 し、大気を汚染しています。大気汚染が気候や地球上の生活環 が発生し、持続可能な発展は実現できなく 境におよぼす影響が明らかになるのを待っていては、新しいエ なります。 ネルギー戦略を立てるのに手遅れになりかねません。私たちは いま予防的アプローチを取り、行動を起こさなければならない 特に多くの産油国の不安定な政情を考慮す のです。 ると、エネルギーを長期間確実に供給する には、燃料の使用量をできる限り抑制する 再生可能エネルギーこそが唯一の代替エネルギー だけでなく、中長期的な代替エネルギーの こうした状況を招いた要因のひとつに、有害物質の排出と乗用 利用も不可欠となるでしょう。この点で最 車によるエネルギー消費があります。世界中で 7 億 5,000 万台 も重要な役割を果たすのが、CO 2 ニュー ほどの車が走っている事実を見ても、従来の燃料に代わるもの トラルな再生可能エネルギーです。長期的 が大量かつ緊急に必要となることは明らかです。世界の需要を には、水素を動力源とする燃料電池車は、 満たすにはまず技術の確立が不可欠です。その一方で再生可能 コスト、サイズ、重量という課題さえ解決 な量を上回る量のエネルギーを消費しないようにしなければな できれば、主流の駆動システムになるでし りません。さもなければ、代替燃料にも従来の燃料と同じ問題 ょう。しかし、このようなシステムが量産 2.3 研究開発 燃料戦略 されるまで、今後最低 20 年の間、中心的な役割を担うのは合 ゲンが開発した複合燃焼システム CCS 成液体燃料でしょう。合成液体燃料はさまざまな原料から作る (Combined Combustion System)を ことができ、非常に高品質で高純度という特徴があるうえ、既 始めとする未来型エンジンが求める要件も 存の内燃機関に使えます。 満たしています。CCS の燃焼プロセスは ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの ディーゼルエンジンにおける合成燃料 有害物質濃度の比較(%)(ディーゼルエンジンを 100%とする) 長所を併せ持っています。CCS を搭載し たパワーユニットは、従来の内燃機関より も排出ガスが少なく効率が高いという特徴 100 があります。 90 −55% 80 バイオマス燃料 70 60 合成燃料は、化石燃料ではなくバイオマス 50 から作るときにはさらに意義のある選択肢 40 となります。木、わら、堆肥などを原料と 30 して使用すると、精製される燃料は CO 2 20 ニュートラルになります。バイオマスが燃 10 焼中に排出する CO 2 の量が、光合成の過 HC NO x CO Particle 1,500 rpm/22 Nm 2,000 rpm/94 Nm rpm = エンジン回転数/分 Nm = トルク(ニュートンメーター) 資料:フォルクスワーゲン AG 程で植物が吸収する CO 2 量に相当するた めです。フォルクスワーゲンがこうした燃 料を「SunFuel® サンフューエル」と呼ぶ 理由はそこにあります。シンフューエルも サンフューエルも既存の燃料供給インフラ で補給できます。サンフューエルの環境コ ストと利益の全体像をとらえるために、フ ォルクスワーゲンは現在その精製と使用に ついてのライフサイクルアセスメントを実 よりクリーンな合成燃料 施しています。 合成燃料とはいったい何でしょう。基本的には、芳香族や硫黄 分を含まないディーゼル燃料のことで、燃焼による有害物質の サンフューエルとシンフューエルは炭化水 排出の少ないものです。フォルクスワーゲンはこの燃料を 素中心から水素中心の燃料供給への過渡期 ® 「SynFuel シンフューエル」と呼んでいます。シンフューエル において、最も有効な方法です。この 2 種 は、天然ガスなどを原料として精製されます。天然ガスは原油 類の燃料は互いを見事に補い合っていま よりもかなり潤沢に存在し、炭素含有量が少ない分、排出ガス す。バイオ GTL 精製の際に再生可能エネ 中の CO2 量も少ないものです。さらにシンフューエルを用いた ルギーで生成した水素を加えると、効率が 場合は、従来のディーゼル燃料よりも粒子状物質で 55%、窒 倍増します。GTL(Gas to Liquids 天然 素酸化物(NOx)で 10%削減することができ、有害物質の濃 ガス液化技術)とは、すなわち天然ガスか 度が大幅に低減することが実験により明らかになっています。 らシンフューエルを精製する工程を指しま す。合成ガスを作る際、天然ガス改質器の フィッシャー トロプシュ合成に基づいた化学的精製工程は極め 代わりにバイオマス・ガス化ユニットを使 て柔軟性に富んでいるため、さまざまな目的に応じた燃料を開 った場合、この工程はバイオ GTL、正確 発することができます。こうした合成燃料は、フォルクスワー には BTL(Biomass to Liquids バイオ 太陽を突破口に 研究開発 などの慈善団体や福祉団体に提供されまし た。ベルリン工科大学の技術支援により実 施された試験走行では、合成燃料が日常使 用にまったく問題ないことが証明されまし サンフューエル た。 フォルクスワーゲンとシェルの共同研究で バイオマス はさらに、TDI ディーゼルエンジン技術を 燃料精製 マス液化技術)と呼ばれます。バイオ GTL の最初の工程を利用 して水素を生産することもできます。こうした技術は、将来的 46 47 な燃料電池システムや水素燃料が現代の内燃機関を競合できる ほど成熟するまで、時間的な猶予を与えてくれるものです。 しかし、フォルクスワーゲン単独では持続可能なモビリティの 実現に必要な目標は達成することはできません。そのためフォ ルクスワーゲンは、多くの有望なパートナーの力を借りていま ドイツのゲアハルト シュレーダー首相、シンフュ ーエルの試験走行を開始 す。すみやかに進歩を遂げるには、学界や政界のほか、自動車 業界や燃料メーカーとも相互に責任を持って協力する必要があ ベースにした将来の CCS 燃焼プロセスに ります。そこで、フォルクスワーゲンは多くの企業や機関と共 最適な燃料を開発することにも焦点を当て 同で事業を行っています。 ています。燃焼プロセスと燃料の同時開発 によって、これまでには考えられなかった シェルとの提携 ことも可能になってきます。このような相 フォルクスワーゲンはロイヤル・ダッチ/シェルグループと緊 乗効果は、合成ガスから開発された高品質 密な協力体制を敷いて事業を進めています。シェルは 1990 年 のシンフューエルだからこそ可能なので 代前半より、マレーシア・ビントゥルの同社工場で合成ガスか す。 ら高品質の燃料を生産しています。最適な燃料仕様は、フォル クスワーゲン研究部門のエンジンテストベンチで総合的に評価 詳しい情報は下記ウェブサイトをご覧くだ を行って設定されました。その後 5 カ月にわたり、「持続可能な さい。 未来への道」をテーマに、高純度・非混合のシンフューエルを 使用した 25 台のゴルフ TDI で試験走行がベルリン市内で行わ れました。走行開始のセレモニーでは、ドイツのゲアハルト シ ュレーダー首相によってシンフューエルが量産モデルのゴルフ に給油された後、ベルリーナー ターフェル(食料配給ボランテ ィア団体)、リウマチ性疾患ベルリン支部協会、ドイツ自然保護 連盟(NABU)、キンダー クンスト ミュージアム(子供美術館) www.sunfuel.de 2.3 研究開発 燃料戦略 コーレンインダストリーズとの提携 す。フォルクスワーゲンとダイムラー・ク ドイツ・ザクセン州フライベルクの Choren Industries ライスラーは、燃料電池自動車やそのため GmbH(コーレンインダストリーズ社)は旧東ドイツ(ドイツ の水素供給インフラが導入されるまでには 民主共和国)屈指の石炭ガス化企業で、バイオマスのガス化プ まだ時間がかかるため、それまでは積極的 ロセスを開発しました。フォルクスワーゲンの要望に合わせて、 に資源保全に貢献しなければならないとい 同社はそれまでのガス化のプロセスに合成プロセスを追加した う共通認識を得ました。その結果として、 のです。シンフューエルとサンフューエルの精製工程で異なる 両社で欧州市場へのサンフューエルの導入 点は、合成ガスの生成方法だけです。シンフューエルではメタ を促進しています。また、精製方法のさら ンを H2 や CO に転換するのに対し、サンフューエルでは木材、 なる開発を支援しており、多くの企業や機 わら、エネルギー作物などさまざまなバイオ原料からバイオマ 関、例えば Choren Industries GmbH ス・ガス化ユニットを使用して H2 と CO を生成します。燃料製 (コーレンインダストリーズ社)(フライベ 造の他の工程は同じなので、サンフューエルとシンフューエル ルク)、Clausthaler Umwelttechnik- の差は一次原料だけなのです。精製される燃料の化学的性質も Institut GmbH(クラウスターラー・ウ 全く同じです。 ンヴェルトテヒニック・インスティトゥー ト 社 )( ク ラ ウ ス タ ー ル )、 GmbH(Dr. ミューレン社)(ヘルテン)、 Energy Research Centre of the Netherlands(オランダ・エネルギー研 究センター)、Fraunhofer Institute for Environmental, Safety and Energy Technology(フラウエンホーファー環境・安 全・エネルギー技術研究所)(オーバーハ ウゼン)、VER GmbH(ファウエーエル社) (ライヒシュテット)、Forschungszentrum Karlsruhe(フォルシュングスツェ 2003 年 10 月、新プラントの第 1 段階が操業開始 ントゥルム・カールスルーエ:カールスル ーエ総合研究機構)などと提携しています。 現在コーレンインダストリーズ社が稼動させている 1 MW パイ 温室効果だけでなく環境全体におよぼす影 ロットプラントでは、1 時間あたり約 100 リットルの適正品質 響という観点から、関連プロセスを分析し の燃料が精製されています。また、1 日に約 40,000 リットル 最適化するためです。 の燃料を精製できる工場を現在建設中です。フォルクスワーゲ ンはこのような事業を支援し、サンフューエルの仕様について バイオマスの栽培に向けた提携 も助言しています。また新たな投資家を惹きつけるために、サ サンフューエルを幅広く導入するには、莫 ンフューエル精製のための安定した経済環境づくりを推進して 大な量のバイオマスが必要になります。サ います。免税が適用されているためにフライベルクでのサンフ ンフューエルはどんな種類の植物からも生 ューエル精製はすでに採算が取れる状態にあり、さらに別の工 産できるため、農家に新たな挑戦の場を与 場への投資も有望です。 えることになりました。問題になるのは量 だけで、植物の質は関係ありません。これ ダイムラー・クライスラーとの提携 は土壌や地下水を保全しつつ高い収穫量を 必要な政治・経済的基盤を作るためには、ステークホルダーや 達成できる可能性をきりひらくものとなり 政治家に対して自動車業界が連携して戦略を示すことが重要で ます。すでにドイツ・カッセル大学が最初 未来のための基盤を築く 研究開発 の試みとして、ウォルフスブルグ近くの試験用地で環境にやさ 長期的に見て、サンフューエルは持続可能 しいエネルギー作物の栽培方法の開発に着手しています。 なモビリティに寄与するだけでなく、農家 にも付加価値を生む機会を与えてくれま もうひとつの課題は、バイオマスをどうやって生産工場に供給 す。EU が拡大し、東欧の新規加盟国では するかということです。充分な供給量を常に確保するためには、 広大な農地が利用できることを考えると、 きめ細かな物流システムが必要になるでしょう。ドイツのブラ サンフューエルは農家への助成金給付を止 ンデンブルク州やニーダーザクセン州は、できるだけ早く確実 める方法のひとつとなり得ます。助成金支 に採算の取れる生産量を確保することや必要な技術を推進する 給対象となる休耕中の土地(約 110 万ヘ ことを視野に入れて、フォルクスワーゲンと契約を結びました。 クタール)と減反対象となった農地をエネ 最優先事項は、その地域における環境条件の研究、植物の選定、 ルギー作物の栽培に充てれば、サンフュー 作付け順序の決定などですが、収穫や穀物の出荷準備・輸送も エルはドイツの乗用車向けディーゼル燃料 検討することになっています。 のほぼ半分をまかなえると考えられます。 未来のための基盤を築く 「近年、環境保護に関する議論は、企業とそ ス(DSG)、ドライブトレインのインテリジェ の製品の持続可能性という角度に広がりを見 ント化、硫黄と芳香族の低減による化石燃料の せています。その焦点も有害物質の排出を防 最適化などが挙げられます。 止するといった一面的な見地から、企業の活 動が環境、経済、社会におよぼす影響につい 一つだけはっきりしていることがあります。そ て全般的にとらえる方向に変化しています。 れは、新しい技術やエネルギー供給インフラへ このような観点から、フォルクスワーゲン全 の変更は、経済全体に関わるため、しかるべき 社員はパーソナルモビリティの持続可能な発 段階を踏んで初めて達成できるということです。 展に取り組むべきと考えています。気候変動 必要なことは、欧州の企業と政治家との間で幅 に関する論議を背景に、フォルクスワーゲン 広い同意を得ることなのです」 製品の CO2 排出量をさらに削減することがフ ォルクスワーゲンの研究開発の重要な目的な のです。 代替駆動システム、燃料、エネルギー資源に関して現在交わされている 議論には、未確定な要素がまだ多く残されています。フォルクスワーゲ ンも、再生水素で駆動する燃料電池は、環境にやさしいモビリティを持 続可能なものにするという課題への答えになると見ています。しかし、 この技術の普及を阻む技術的、経済的障壁も依然存在しています。 そのため、当面の課題はこの目標に至るまでの最善の方法を検討するこ とにあります。フォルクスワーゲンは、そのシンフューエルとサンフュ ーエルを基本とした燃料戦略によって、水素に移行するための過渡期に 効果的な橋をかけつつあります。水素中心の燃料供給への移行戦略のな かで、短期間での効果が期待される措置として、既存のディーゼルエン ジンとガソリンエンジンの徹底的な最適化と技術集約、直噴エンジンを 用いた革新的な駆動システムの開発、ダイレクト・シフト・ギヤボック Prof. ヴィルフリート ボッケルマン フォルクスワーゲンブランド技術開発担当取締役 48 49 2.3 研究開発 1 リッターカー 技術的可能性の限界に挑む 1 リッターカーによる新天地の開拓 る Dr. ベルント ピシェツリーダーは、わず かなり前から予告されてはいたものの、フォルクスワーゲンの か 1 リッターの燃料で 100 km を走行す 1 リッターカーが実際 2002 年 4 月 15 日にデビューを果たし ることができる世界初の自動車を披露した たとき、世界は驚きに包まれました。当時のフォルクスワーゲ のです。(フォルクスワーゲン環境レポー ン AG 取締役会長 Dr. フェルディナンド ピエヒとその後任とな ト 2001 / 2002 年版も参照)任期の最 後を飾るため Dr. ピエヒは自らプロトタイ 技術データ プのハンドルを握り、ウォルフスブルグか エンジン らハンブルクまでの道のりを 100 km あ タイプ 1 気筒自然吸気式ポンプインジェ クション付ディーゼルエンジン 排気量 299 cm3 内径×行程 69 mm x 80 mm 圧縮比 16.5 : 1 バルブ数 3 バルブギア DOHC エンジン乾燥重量 26 kg 最高出力 6.3 kW (8.5 PS)/4,000 rpm 最大トルク 18.4 Nm/2,000 rpm トランスミッション 6 速セミオートマチックギアボックス 行しました。この 2 シーターの 1 リッター スターター インパルススターター/オルタネーター カーは自動車デザインの最高傑作であり、 たり平均 0.89 リッターという低燃費で走 この記録はフォルクスワーゲンの技術が業 性能/燃費 最高速度 120 km/h 界をリードするものであることを裏付けま 燃費 0.99 リッター/ 100 km した。この車はカーボンファイバー製の流 線型ボディ(Cd 値 0.159)で、重さはわ ボディ/ホイール/タイヤ諸元 全長/全幅/全高 3,646mm/1,248 mm/1,110 mm ホイールベース 2,205 mm トレッド前/後 1,000 mm/810 mm 燃料タンク容量 6.5 リッター 車両重量 290 kg トランク容量 80 リッター 空力 Cd 値/表面 0.159/1.0 m2 タイヤサイズ フロント/リヤ 95/80 R 16 115/70 R 16 ずか 290 kg です。さらに、マグネシウム 製のスペースフレームシャシ、カーボンフ ァイバー複合材のボディ構造、ブレーキシ ステム、アクスル構造、ホイールなどに技 術的な特徴があります。車高は 1,110 mm と極めて低く、1 気筒ディーゼルエン ジンを搭載し、最高出力は 6.3 kW です。 詳しい情報は下記ウェブサイトをご覧くだ さい。 www.mobility-and-sustainability.com 目標に照準を合わせ続ける 研究開発 目標に照準を合わせ続ける 乗用車の排出ガス量は低下の一途 新基準適用 1 年前の時点では、ドイツで販 排出ガスの量は自動車のエンジン開発において、過去 30 年以 売されるフォルクスワーゲン車の 9 割以上 上にわたり、性能と同じぐらい重要な要素と見なされてきまし が Euro 4 に適合しています。 た。EC(欧州共同体)ではすでに 1970 年、初の大気汚染管 理指令によりガソリンエンジンからの一酸化炭素(CO)と炭 測定とシミュレーション 化水素(HC)の排出量が制限されました。そして 1977 年に ドイツ連邦環境庁(UBA)の指示で作成 は窒素酸化物(NOx)排出量にも排出基準が設けられました。 された排出ガス予測モデル(下記グラフを これらの規制は 1984 年以降ディーゼルエンジンにも適用さ 参照)は、ドイツにおける乗用車からの排 れ、4 年後にはディーゼルエンジンの粒子状物質にも規制が設 出ガス量の推移を示しています。この予測 けられました。こうした段階を踏んで 1992 年に導入されたの モデルは、保有車両構成の変化などによる が「欧州排出ガス規制 Euro 1」です。ガソリンエンジンは三 現在と今後の影響や、クリーンな燃料の導 元触媒コンバーター無しには規制をクリアすることができなく 入、交通量についての最新の予測などが反 なりました。 映されるよう、定期的に更新されています。 グラフでは、排出ガスの少ないエンジンの その後導入された Euro 2(1996 年)、Euro 3(2000 年)、 導入により、法規制の対象となる排出ガス そして 2005 年から適用される Euro 4 と、段階的な規制レベ 中の物質が大幅に減少したことがわかりま ルの引き上げは、排出ガスレベルの大幅な低下を促すものとな す。また燃費が向上した結果、走行距離の ります。Euro 4 の排出基準値は Euro 1 と比較して、約 90% 増加に伴う CO2 排出量増加はありません も低く設定されています。フォルクスワーゲンのガソリンエン でした。 ジンとディーゼルエンジンのなかには、規制が適用される 6 年 前に、すでにこうした厳しい基準をクリアしたものもあります。 2020 年までのドイツにおける自動車排出ガスの推移 8,000 億 km /年 1,400 kt /年 7,000 億 km /年 1,200 kt /年 6,000 億 km /年 1,000 kt /年 5,000 億 km /年 800 kt /年 4,000 億 km /年 600 kt /年 3,000 億 km /年 400 kt /年 2,000 億 km /年 1,000 億 km /年 200 kt /年 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 CO(kt/10) HC(kt) 粒子状物質(kt x 10)* CO2(kt/100) NOx(kt) 走行距離(億 km) 2015 2020 * ディーゼル 資料: IFEU(エネルギー環境研究所)/ UBA(連邦環境庁) (TREMOD 3.0 シミュレーションモデル) 50 51 2.3 研究開発 自動車と環境 エンジンがクリーンになるにつれ、自動車の排出ガスによる大気 ディーゼルエンジンの粒子状物質 汚染レベルが着実に低下していることが測定値から確認できます。 技術の進歩にもかかわらず、ディーゼルエ ドイツやオーストリアの主要都市で沿道モニタリングを行い大気 ンジンの排出ガスに含まれる粒子状物質は 中の粒子状物質の濃度を測定したところ、煤(すす)の量には全 いまだに論議の的となっています。問題に 般的に減少が認められました。こうした数値を分析する場合には、 なっているのは粒子の大きさと数です。現 測定地点の大気は産業活動や家庭用暖房からの排出ガスでも汚染 在ディーゼルエンジンには、燃料を効果的 されていることを考慮する必要があります(下記グラフを参照) 。 に霧化するために高圧噴射システムが使わ れています。このシステムで排出される粒 フォルクスワーゲンは、PTV Planung Transport Verkehr AG 子はより微小であるため呼吸器により入り (プラーヌング・トランスポルト・フェルケール社) 、およびオー やすいという説がありますが、これは科学 ストリア・グラーツ工科大学と連携して、排出ガスのシミュレー 的に立証されていません。フォルクスワー ションモデルを開発しました。このモデルを使って、自動車一台 ゲンの測定(次ページ上部のグラフを参照) 一台について、特に都心部における排出ガスの状態をシミュレー では、 (排出ガス規定レベルまで)粒子の質 ションできます。排出ガス分布モデルとこのプログラムを連動さ 量を小さくすると、粒子数も減ることが明 せると、空間と時間の両観点から高精度の大気汚染状況を算出で らかになっています。従って、一部の EU 加 きます。このモデルの目的は、法で定められた排出ガス規制値を 盟国が求めた粒子の数に基づく追加規制は、 超えた場合に建設的なソリューションを策定するのに役立てるこ 義務付けられた車検の費用に大きく響くだ とです。さらにフォルクスワーゲンは、排出ガス対策で培った経 けで、無意味であると考えています。 験を騒音の軽減に生かす取り組みも率先して進めています。詳し 発明から 100 年間経った今もなお、ディー い情報は下記ウェブサイトをご覧ください。 ゼルエンジンは最高の燃焼効率を誇る内燃 www.mobility-and-sustainability.com ドイツの沿道モニタリング地点における粒子状物質濃度(年間平均) 単位:μg/m3 14 12 10 8 6 4 2 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 ベルリン・カールマルクス通り ベルリン・シュマルゲンドルフ デュッセルドルフ・メルゼンブロイヒ ベルリン・ヴェディング ベルリン・ノイケルン、ナンゼン通り デュッセルドルフ・コルネリウス通り ベルリン・シャルロッテンブルク ベルリン・フリードリヒスハイン 1998 年 7 月 1 日連邦大気汚染 管理指令基準値 資料:ウィーン工科大学 目標に照準を合わせ続ける 粒子の大きさの分布 研究開発 改良型燃料 (Euro 1 から Euro 4 までの適合エンジン)1 km あたりの走行で排出される粒子数 より良い燃料を使うことも排出ガス量の削 5×10 12 4×10 12 3×10 12 2×10 12 1×10 12 減につながります。そのため、Euro 4 適用 国で販売されるディーゼル燃料の硫黄含有 量は 10 ppm(100 万分の 1)以下に抑え られていなければなりません。そこで新時 代の燃料として注目されるのが、シンフュ 10 100 ーエルやサンフューエルといった新しい合 1,000nm 車両 1(欧州排ガス規制 Euro 1) 車両 3(欧州排ガス規制 Euro 3) 車両 2(欧州排ガス規制 Euro 2) 車両 4(欧州排ガス規制 Euro 4) 成燃料です(46 ページ参照)。新しい自動 車技術は市場に普及して初めて排出ガス削 減に効果をもたらしますが、対照的に改良 nm =ナノメートル 資料:フォルクスワーゲン AG 型燃料は排出ガス削減や大気汚染の改善と いう点で即時に効果が得られます。 機関です。フォルクスワーゲンはディーゼルエンジンの開発にあ たって、発生した汚染物質を後から手間をかけて取り除くのでは 燃費を最適化し CO 2 排出量を削減するに なく、初めから有害物質を排出させないことに焦点を当てていま は、先進的なディーゼルエンジンが必要不 す。その結果、現在ドイツで販売されているフォルクスワーゲン 可欠です。ACEA(欧州自動車工業会)は のディーゼルエンジンのうち約 60%が、パティキュレートフィル 2008 年までに新規車両の平均 CO 2 排出 ターを装着しなくても厳しい Euro 4 規制に適合するようになりま 量を、1995 年の 25%減の 140 g/km した。規制への適合率は今も伸び続けています。 にするという自主規制を設定しました。こ の目標が達成される見通しは明るいと考え 2003 年のフランクフルトモーターショー(IAA)で、フォルク られます(下記グラフを参照)。フォルク スワーゲンは 2 種類のパティキュレートフィルターを発表しまし スワーゲンもその一翼を担っています。 た。2003 年秋以降、パサート 2.0 TDI にはエンジンから離れた 1995 年以降、フォルクスワーゲンは自社 ところにパティキュレートフィルターをオプション装着していま の車両からの CO2 排出量をすでに 14%削 す。メンテナンスの回数が少なくユーザーが使いやすい点で、こ 減しました。 のフィルターは、現時点で市場にある添加剤タイプ のパティキュレートフィルターのなかでもっとも優 燃費向上による CO2 排出量の削減 れているといえます。 単位: g/km 200 2004 年には、添加剤不要のパティキュレートフ ィルターがゴルフ 2.0 TDI に搭載される予定です。 180 この新しいフィルターは革新的な酸化コーティング を特徴とし、エンジン近くに装備されるため、酸化 160 触媒も燃料添加剤も必要としません。この先駆的な システムは車両の寿命が尽きるまでメンテナンスフ リーです。信頼性を高め、複雑さを最低限に抑え、 2008 年目標値 140 g/km 140 1995 2000 2005 低コストを実現 ―― これがフォルクスワーゲンの ACEA の CO2 削減自主規制 この新しい技術の特徴なのです。 ACEA 加盟企業の現状 フォルクスワーゲン 資料:フォルクスワーゲン AG 2010 52 53 2.3 研究開発 代替駆動システム 羽ばたけ E モーション ゼロエミッション・ドライブトレインへの道のり しテストの結果、実用化のためにはバッテ フォルクスワーゲンの代替駆動自動車に関する戦略は燃料戦略 リー技術の点でさらに改良する必要がある と密接に関連しており、従来の自動車やドライブトレインの開 ことがわかっています。 発状況に照らし合わせて常に検討されています。技術的な側面 のほか、市場ニーズや顧客の嗜好、法規制という 3 つの重要な ボーラ エレクトリックは、フォルクスワ 要素があります。例えば、電気自動車(バッテリー駆動式)の ーゲンの最新型電気自動車です。走行距離 開発は過去数年間、カリフォルニア州法の規定を満たすために 160 km、停車状態から時速 100 km へ 進められてきました。これはメーカーに対して、州内で販売す の加速は 10 秒という走行性能は魅力的で る自動車のラインアップに ZEV(ゼロエミッションビークル) はありますが、この車が市販されることは を加えるよう義務付けるものです。このための技術開発は、ハ ありません。リチウムイオン電池に関して イブリッドや燃料電池自動車のドライブトレインへの道を開き 解決すべき課題が残っており、生産コスト ました。 も高いため、市場での成功のチャンスが大 きいとはいえないからです。 フォルクスワーゲンにおける代替ドライブトレインの開発は、 従来の限界を超えて有害物質や燃料消費量削減の可能性を示す パラレル・ハイブリッド・ドライブト ことを狙いとしています。長期的な目標は、燃料戦略に基づき、 レイン CO2 ニュートラルなエネルギー使用を実現することです。現在、 現在利用できるさまざまなハイブリッド・ 代替ドライブトレインの開発について、次のような 3 つのコン ドライブトレイン(シリーズ、ミックス、 セプトに従い開発を進めています。 パラレル)のうち、フォルクスワーゲンが • バッテリー駆動式ドライブトレイン 最も有望視しているのがシングルシャフ • シングルシャフト・パラレル・ハイブリッド・ドライブトレイン ト・パラレル・ハイブリッドです。システ • 燃料電池式ドライブトレイン ム開発の目指すところは、満足の行く性能 と快適さを維持しつつ、目標コストの範囲 内で燃料消費量と排出ガスを削減すること バッテリー駆動式ドライブトレイン です。こうした要件を確実に満たすための バッテリー駆動式自動車は、使用地域のゼロエミッションを実 主軸に据えられているのが、次の 4 つの指 現できる方法のひとつとして、市街地での配達などに適してい 標です。 ます。しかし飛躍的な技術の進歩にもかかわらず、従来の自動 • 自動スタート/ストップ機能:自動車 車の市場シェアを奪うことはできません。主な理由は、バッテ を駆動する必要のない時には内燃機関 リーの技術水準にあります。現在使われているバッテリーでは が停止し、走行するときには速やかに 走行距離が 100 km 程度で、充電に約 6 時間かかり、比較的価 電気モーターによって始動します。 格が高いのです。従って電気自動車はおそらくニッチ市場向け • エネルギー回生(減速時):減速中 製品にとどまることでしょう。政府が優遇政策をとらなければ、 (エンジンのオーバーラン時や制動時) 電気自動車は市場競争に勝てません。しかし最新技術を示し、 は、電気モーターが発電モードに切り コンポーネントの性能(特にバッテリー性能)を検討するため 替わり、自動車の運動エネルギーで充 に、今後もコンセプトカーの開発は継続されていきます。 電します。 • フレキシブルオペレーションモード選 ひとつの例が、ニッケル水素(NiMH)電池を搭載したゴルフ 択:例えば内燃機関が得意としていな です。最高出力は 100 kW 以上あります。フォルクスワーゲン い部分負荷運転には電気モーターを使 では、電気自動車の受容性を検証するためにこの車を使用して 用し、高出力を必要とする領域ではエ います。性能は従来の自動車に匹敵し、評判も上々です。しか ンジン単独での走行に切り替えます。 羽ばたけ E モーション 研究開発 また充電量が少ない場合は、エンジン作動の効率が上がるよ を生成した場合、大気中の CO 2 濃度に与 うにその負荷を上げ、余剰エネルギーでバッテリーを充電す える影響は事実上ゼロ、つまり CO 2 ニュ ることも可能です。 ートラルになります。フォルクスワーゲン • テレマティックスとルート情報:電子データで受信した情報 の燃料電池コンセプトカーでは、ドライブ を使い、交差点で信号が赤の場合や車が渋滞の最後尾に近づ トレインは電気自動車のもの、高性能電池 いた場合には、エンジンを自動的に停止できます。同様に、 やシステム全体のエネルギーマネージメン ダイナミックかつ経済的な運転をするため、上り坂や下り坂 トはパラレル・ハイブリッド駆動のコンセ にたどり着く前に適正レベルまで充電することができます。 プトを採用しています(54 ページ参照)。 この相乗的な活用により、燃料電池システ フォルクスワーゲンは 1986 年、ゴルフを使用してシングルシ ムの新しいコンポーネントの開発に集中す ャフト・パラレル・ハイブリッドの駆動システムを初めてテス ることができます。技術評価のために、フ トしました。現在のハイブリッド車は、高性能モーターと大幅 ォルクスワーゲンではいくつかの燃料電池 に進化した電池システム、そして先進的なメカトロニクス・ハ 自動車のプロトタイプを作りました。 ードウェアやソフトウェアを特徴としています。しかしシング ルシャフト・パラレル・ハイブリッド駆動の基本原理は 1986 ボーラ ハイモーションは極低温水素(温 年以来同じです。現在のシステムで違うのは、外部充電仕様に 度− 253 ℃の液体水素)を燃料とし、出 なっていないことだけです。道路走行用のプロトタイプを製作 力 30 kW の燃料電池を搭載しています。 し、現在は運転・操作方法を最適化するために広範なテストを 高性能ニッケル水素(NiMH)電池を併用 実施しています。その目指すところは燃費と排出ガスの面でハ すると、最高出力は 75 kW となります。 イブリッド車に期待される長所を具体化して、自動車全体の生 この設計では、最高時速 140 km に到達 産コストを決定することです。 可能(停車状態から時速 100 km への加 速は 12.6 秒)ですが、燃料の極低温水素 燃料電池式ドライブトレイン に関する問題があります。特に液化プロセ 燃料電池は長期的に見ると、既存の内燃機関に代わる最も将来 スでの蒸発とエネルギーロスの問題が普及 性のある駆動システムです。そのなかでも魅力的な選択肢は水 の妨げになっています。 素燃料電池です。風力などの再生可能エネルギーを使って水素 代替駆動システム戦略 短期的〜中期的 (燃料戦略の一環) ハイブリッド車 バッ テ エネ リーシ ルギ ス ーマ テムと ネー ジメ ント 車両コントロールシステム 補助電源 ニッチ市場での解決法 ・地域 ・特定の顧客グループ イン トレ ブ ライ 電気自動車 資料:フォルクスワーゲン AG ド 燃料電池車 (ハイブリッド) 長期的 水素自動車 (燃料戦略の一環) 54 55 2.3 研究開発 代替駆動システム このほかの燃料電池車に、ボーラ ハイパワーがあります。チュ 量産への道はまだ遠い ーリッヒにあるスイス連邦工科大学(ETH)のパウルシェラー 第 1 回目のテストで燃料電池システムの技 研究所の協力を得てフォルクスワーゲンが開発したものです。 術的な実現可能性が立証された今、私たち この自動車は圧縮水素(圧力 320 バール)を燃料とし、40 は実現段階まで開発を継続しなければなり kW の燃料電池システムを搭載しています。出力の増幅とエネ ません。燃料電池車の大規模な市場投入が ルギーの回生には 60 kW のスーパーキャパシターシステムを 可能となるまでは、特定のユーザーととも 使用します。最高出力はボーラ ハイモーション同様 75 kW で に実証試験を実施する必要があるでしょ す。ボーラ ハイパワーは真冬の気候条件下でシンプロン峠を越 う。燃料電池車が現在の車との競争に打ち えるというテスト走行で良好な結果を収めましたが、これは単 勝つためにはまだまだたくさんの壁がある に燃料電池やスーパーキャパシターシステム全体をテストする ことが、プロトタイプのテストから明らか ためのプロトタイプです。 になっています。コスト、サイズ、重量の ほかに、高温と低温、ほこりっぽい環境で の耐久性や信頼性など、通常、自動車が直 面する問題です。こうした問題を克服する ために、特定の課題に対する技術の劇的な 進歩、専門の研究開発、新しい材料や生産 工程の活用などがいずれも必要不可欠で す。 水素生成に必要なエネルギーの供給から自 動車の燃料補給に至るまで、燃料生産とサ プライチェーンに関する開発のすべての段 階において、さまざまな組織間の前向きな 協力が必要です。さらに、自動車燃料とし ての水素の可能性を社会的、政治的に認知 させることが、フォルクスワーゲンの燃料 戦略上、その導入を進めるためのひとつの 重要な要素です。 2.3 章「研究開発」に関連する次の項目に ついての詳細は下記ウェブサイトをご覧く ださい。 研究資金 エレクトロニクス INVENT シンプロン峠でテストするボーラ ハイパワー www.mobility-and-sustainability.com 循環の輪を完成させる 研究開発 循環の輪を完成させる 使用済み自動車の環境にやさしいリサイクル 製手法や廃棄物処理の手法をもとに開発さ 使用済み自動車は、捨ててしまうにはあまりに惜しいほどの価 れました。 値があるものです。このため欧州連合(EU)は、欧州の自動車 メーカーに対して使用済み自動車を回収するよう求めています その結果、プラスチック、ゴム、繊維など、 (88 ページ参照)。 将来、使用済み自動車に要求されるリサイ 破砕したすべての材料を再利用できるリサ クル率は極めて高くなるため、フォルクスワーゲンはかなり早 イクル工程が誕生しました。このように、 い時期から解体の研究を通じてリサイクル性の高い車両構造開 環境に適合した方法で使用済み自動車の再 発に努めてきました。 利用率やリサイクル率の法規制値を達成す ることは可能であり、複雑で労働集約型の しかし、これはフォルクスワーゲンによる取り組みの全体像の 解体作業も必要ありません。さらに詳しい 一部にすぎません。使用済み自動車のリサイクルは、環境に適 情報は下記ウェブサイトをご覧ください。 合した方法で行われ、経済的にも採算が取れて初めて持続可能 なものとなるからです。そこでフォルクスワーゲンは、2 種類 www.mobility-and-sustainability.com の異なるリサイクル工程についてライフサイクルアセスメント を実施しました(33 ページ参照) 。 それによって、フォルクス フォルクスワーゲンとパートナーの間で建 ワーゲンが SiCon 社と共同開発したリサイクル工程は、従来の 設的な協力体制が奏功した例は、新たなリ 解体、リサイクル、破砕、埋め立てなどの処理よりも明らかに サイクル法の規制への取り組みにみること 優れているという結果が得られました。そのわけはリサイクル ができます。EU 廃車指令(2000/53 工程で回収された材料が再び既存の生産工程で使用され、天然 /EC)により、2003 年 7 月 1 日以降、 資源の代わりを果たすからです。 登録される新車には重金属の鉛、カドミウ ム、水銀、および六価クロムの使用がほぼ 例外なく禁止されることになりました。フ ォルクスワーゲンにおいてこの規制の遵守 を担当するのは、すでにあったマテリアル マネージメント(主に産業安全衛生および 品質保証を基準とした代替物質検査を担 当)に加え新たに設置された「マテリアル コントローリングチーム」です。フォルク スワーゲンはすべてのビジネスパートナー に対して、新たな法的要請に合致した取引 条件や製品仕様の採用、適合性説明書の提 出、システム開発企業やサプライヤー向け のセミナーやワークショップの継続実施な どを通じ、これらの規制が確実に遵守され るよう推進しています。禁止された重金属 の代替材料が必要となったのに対し、フォ フォルクスワーゲンはどのようにこの問題に取り組んだのでし ルクスワーゲンの技術開発、品質保証部門 ょう。フォルクスワーゲンでは主に破砕した材料の再利用に焦 およびサプライヤーは、早い段階でその開 点を絞りました。複数の破砕工程に加え、密度、粒子形状、磁 発に着手したため、規制導入時点では準備 性、伝導性、光学的特性などの物理的基準に基づいて、再利用 が整っていました。 できる材料を分別します。これらの工程は、既存の原材料の精 56 57 2.4 生産と生産拠点 目標と見通し グローバルな思考、ローカルな行動 生産と生産拠点 2002 年にヨハネスブルクで開催された持続可能な開発に関する世界サミットでは、 具体的な成果はほとんどあげられませんでした。しかし、ひとつ重要な認識に至りま した。一国の力だけでは新興国や発展途上国の生活環境は改善できないという事実で す。世界規模で活動する企業が経済、環境、社会の発展に対して果たすべき責任は、 今後さらに重くなるでしょう。そして、そのような取り組みを実現できるのは、どこ よりもその企業が事業活動を行っている生産拠点なのです。 そのカギを握っているのは何でしょう。まず教育の機会や職を生み出すと同時に、職 場の安全基準を高いレベルに保つことです。また地域の資源を大切に使用することで す。なかでも特に、長期的な飲料水確保の重要性は高まっています。さらにすべての 計画や実行過程に環境への配慮を取り入れるため、長期的な環境マネージメントシス テムを導入することです。 グローバルな思考、ローカルな行動 生産と生産拠点 ハルトムート ミュラー 「持続可能性とは、経済的側面にもきちんと目を向けながら、将 来を考え、長期的責任に配慮し、人類と環境の利益につながる 営みを行うことであると考えています。フォルクスワーゲンや ボッシュは、多国籍企業として世界的に持続可能な発展のため の責任の一端を担っています。製品における環境保護の一環と して、私たちは 3 リッターカーと1リッターカーを共同開発し ました。製品のライフサイクルの全段階でさらに資源消費量を 削減するという未来像も共有しています。私たちが直面してい る大きな課題のひとつは、急速に成長している中国市場です。 フォルクスワーゲンとボッシュは中国市場ですでに合弁企業な どの形ですばらしいパートナーシップを形成しています。共同 で市場にアプローチし、密接に協力し合い、それぞれのニーズ を尊重することによって、私たちは、排ガスと資源消費量の削 減や自動車走行の安全性向上を目指す長期プロジェクトを着実 に推し進めています」 ハルトムート ミュラー(60)はロバート・ボッシュ(ドイツ・シュトゥッ トガルト)環境・防火防災予防統括責任者。フォルクスワーゲンはボッシュ に 1999 年フォルクスワーゲン環境賞を贈呈。 58 59 しかしこれらの目標は、継続的に知識を伝えて初めて達成され とつは、今後数年間かけてフォルクスワー るものです。そのために重要なことは、定期的に経験を伝えあ ゲンの環境マネージメントにサプライヤー い、技術上の環境基準を統一し、世界規模のネットワークを通 やビジネスパートナーをより徹底的に巻き して計画的にコミュニケーションすることなのです。 込む必要があると認識されたことです。 フォルクスワーゲン グループ環境会議は、こうしたネットワー フォルクスワーゲンは、世界全体で並行し クを促進する上で重要です。1998 年、フォルクスワーゲン グル て環境活動を進めるうえで、自社の環境ポ ープ傘下の各ブランドを代表する 200 人の専門家が第1回フォ リシーや環境基準などの枠組みを遵守する ルクスワーゲン グループ環境会議に集まりました。その目的は、 だけでなく、各地域の統括マネージャーの 21 世紀の環境保護のために共通のガイドラインと基本方針を 理解と協力を充分に得ることを大切にして 策定すること、そして各ブランドと生産拠点との協力体制をさ います。そこで、基本的な情報を収集し、 らに強化することでした。この会議は 2002 年 6 月にドイツ・ 充分に意見を交換したうえで、ひとつの合 インゴルシュタットで開催された第2回フォルクスワーゲン グ 意目標・方策に到達できるよう、地域会議 ループ環境会議に引き継がれました。同会議の大きな成果のひ を設置しました。第1回北米地域会議は 2-4 生産と生産拠点 サプライヤー 2003 年 11 月にメキシコのプエブラ工場で開催され、成功裏 ラジル)とアジア・太平洋地域でも会議を に終了しました。今後数年のうちに南米/南アフリカ地域(ブ 実施する予定です。 共通の目標に向かって サプライヤーとの対話 2003 年 6 月 25 日、フォルクスワーゲン コーチング社はフォ ルクスワーゲンと「プライオリティ A −環境のためのパートナ ー」プログラムに参加しているビジネスパートナー向けに、第 100 回環境ワークショップを開催しました。このプログラムの 目的は、フォルクスワーゲンの環境ポリシーや環境基準につい てサプライヤーの理解を得るとともに、それをいかにサプライ チェーンにおいて、状況に合わせたかたちで活用しているかに ついて充分な議論を尽くすことにありました。ワークショップ は、環境規制が改正され課題が浮上した際に、すべてのサプラ に環境賞を贈っています。2003 年は、ボ ディ製造工程において環境、コストの両面 で優れた鋼材の採用を実現したウォルフス ブルグの GmbH(ティッセン・フューゲテヒニッ ク・ノルト社)にこの賞が贈られました。 同社はテーラードブランクの使用によって 車両重量の削減と機能の最適化に成功して います。 イヤーに迅速に対処してもらうための容易な手段でもあります。 1997 年の第 1 回開催以来、すでに 1,100 カ所にのぼるサプ ライヤーの工場から 1,200 名がこのワークショップに参加して います。そこで 100 回目のワークショップでは、過去 5 年間の 功績を振り返ると同時に、これから歩む道に焦点をあてました。 また過去のワークショップの講演者全員が招待され、参加者か らの質問や批判と向き合い、提案に耳をかたむけました。フォ ルクスワーゲンのニュースレター「環境レーダー」、ハノーバー 工場の近隣住民とのダイアログ、1 リッターカー、そしてフォ ルクスワーゲンの燃料戦略ほかさまざまなテーマが取り上げら れました。参加者からは、これらのテーマについてより詳しく 知りたいという声も多くありました。この要望に応え、いくつ かのテーマは、2004 年のワークショップでさらに深く取り上 2003 年フォルクスワーゲン グループアワード: フォルクスワーゲン AG 全権代理人 Dr. フランツ・ ヨーゼフ ペフゲン、ティッセンクルップ シュター ル AG 取締役 Dr. ウルリヒ ヤローニ、フォルクス ワーゲン AG 取締役会会長 Dr. ベルント ピシェツ リーダー、フォルクスワーゲン AG 購買担当取締役 フランシスコ・ハビエル ガルシア・サンツ(左か ら) げられる予定です。 「プライオリティ A」プログラムの一環として、フォルクスワー ゲンはさらに規模のより大きいシンポジウムも定期的に開催し、 書面や環境専用ウェブサイトを通じて、サプライヤーに最新の 開発情報を継続的に知らせています。またあるサプライヤーの 活動がフォルクスワーゲンの環境ポリシーに適合していない場 合には、速やかにそのサプライヤーに通知します。サプライヤ ーも自社の環境活動を常にフォルクスワーゲンに報告していま す。さらに、フォルクスワーゲンは毎年、革新的なアイディア で製品や生産工程の環境負荷低減に最も貢献したサプライヤー フォルクスワーゲンコ ミュニケーション部門 統括責任者 ディルク グ ローセ・レーゲ。サプ ライヤー向けの第 100 回環境ワークショップ にて 遠く離れても密接に 生産と生産拠点 遠く離れても密接に フォルクスワーゲンの生産拠点 ケムニッツ工場 フォルクスワーゲンの生産拠点は今や世界中にあります。工場 他の工場同様、フォルクスワーゲンのケム は 4 つの大陸にまで広がりましたが、そのどれをとっても 1 つ ニッツ工場ではプランニング段階から環境 として同じものはありません。ここからのページでは各生産拠 保護の推進に取り組んでいます。特にプロ 点の代表的な環境活動を紹介しますが、技術面だけではなく、 セスエンジニアリング面でのさまざまな改 従業員の貢献がきっかけとなって始動したプロジェクトやイニ 善は目に見える成果をあげています。改善 シアチブについても詳しく説明します。全生産拠点の詳細やこ の一例はフィルターシステムの採用です。 こで紹介できなかったプロジェクトについての情報は下記のウ この新型高性能フィルターは品質に優れ、 ェブサイトをご覧ください。 入手も簡単なうえ、製品寿命も長いという 利点があります。また、乳化形油剤ミスト www.mobility-and-sustainability.com による中央排気設備の電気フィルターの汚 染も大幅に軽減されました。このほかにも 環境保護と同時に、各生産拠点にとって持続可能な発展も重要 ケムニッツ工場では、増設した熱回収シス な課題です。第 3 章「社会的責任」では 3 つのプロジェクトを テムで外気を予熱することで工場内の熱消 代表的な例として紹介します (93 ページ、98 〜 99 ページ参照)。 費量を減らし、46,700 ユーロのコスト削 減に成功しています。 ドイツ国内 エムデン工場 ブラウンシュヴァイク工場 エムデンの地域環境センター、 ブラウンシュヴァイク工場では全部で 164 カ所ある記録を残す (社団法人エコヴェルク)では、幼稚園、 義務のない廃棄物の処理ポイントに、トランスポンダーシステ 学校、協会、そして自然を愛するすべての ムを採用しています(下写真参照)。このトランスポンダーと読 人に、環境についての知識を深め、自然を 取装置を用いて処理ポイントごとに収集されたデータを自動的 さまざまなかたちで身近に体験する機会を に分析します。これによってそれぞれの廃棄物コンテナの交換 提供しています。またエコヴェルクはフォ 回数を記録したり、廃棄物の分別が正しく行われているかどう ルクスワーゲンのエムデン工場の環境教育 かをチェックしたりできるようになりました。評価制度が導入 にも協力しています。センターの活動を体 され、コンテナ交換時に中に入っている廃棄物の純度が 1(ク 験することをマイスター研修コースの一環 リーン)から 5(有害危険物と危険物質が混入し汚染されたも として取り入れているほか、工場の環境保 の)までの点数で評価されます。 護専門家がセンターで定期的に意見交換を しています。そして実際フォルクスワーゲ ンの採光用吹き抜けを従業員の休憩ゾーン に変える際どのようにするのが最適か、エ コヴェルクから専門的なアドバイスを受け ています。フォルクスワーゲンはそうした 協力に対し、エコヴェルクの新しいネット ワークパートナーの開拓に協力して運営を 助けています。 60 61 2.4 生産と生産拠点 生産拠点 ハノーバー工場 ザルツギッター工場 商用車工場であるハノーバー工場では 2001 年に「ウォッチン フォルクスワーゲンは顕微鏡なしでは見え グ・ザ・ウォーターライン」キャンペーンが行われ、環境保護 ないくらい小さい「スタッフ」を使ってい への取り組みが示されました。この従業員イニシアチブの目的 ます。それは微生物です。ザルツギッター は、工場での水の消費量と汚染の両方を低減することです。取 工場では現在、外部企業が使用する敷地の り組みは水の消費量が高い部門で重点的に行われ、なかでも鋳 清浄に微生物が貢献しています。これは新 物工場では年間約 60,000 m もの水の節約につながっていま しいパイプラインの掘削作業中に土壌から す。全従業員が個人レベルで行える数多くの活動もこのキャン 廃油が発見されたためです。高圧電線、天 ペーンの成功に貢献しました。そ 然ガスパイプライン、飲料水管が通ってい の結果として、2002 年の水の消 るこの敷地では、充分な安全対策を取らな 費量は前年比で平均 15%減、最 い限り汚染された土壌までたどり着くこと 大で 35%減を達成することがで ができなかったため、土壌を掘り出すこと きました。この成功を受けて なく、その場で浄化する、効果的で低コス 2003 年に再開されたキャンペー トな代替方法が採用されました。そこで登 ンでは、「ホールディング・ザ・ 場したのが小さな救助隊です。彼ら微生物 ウォーターライン」を合言葉に 2 の仕事は鉱油を生物学的に分解し、そのプ 年前のキャンペーンでの優れたア ロセスにおいて CO 2 、水、そしてバイオ イディアが新しい形で再び取り入 マスを生成することにあります。彼らの仕 れられています。 事がさらに効率的なものとなるよう、土壌 3 中に大気を定期的に補充し、窒素を含んだ カッセル工場 栄養物を補給します。このために、エアイ フォルクスワーゲンのカッセル工場(バウナタール)では ンジェクション ウェルズ(空気注入井戸) 2003 年 6 月に第 1 回環境デーが開催されました。そのときフ とバキュームランスと呼ばれる特別装置シ ォーラムでは環境保護部門のスタッフが他の部門の経営陣やス ステムが敷設されました。この働き者の タッフのほか、政財界や地方行政当局に対してフォルクスワー 「スタッフ」のお陰で、2 年以内に最高 4 ゲンによる環境保護活動全般を説明しました。省エネ、水質汚 トンの鉱油が環境にやさしい方法で処理さ 染物質の取り扱い、汚染の低減、廃棄物管理、廃水処理など幅 れる予定です。 広いテーマで有意義なプレゼンテーションが行われました。今 後も環境デーは定期的に開催される予定です。 フォルクスワーゲン クラフトヴェルク社 エネルギー供給企業のフォルクスワーゲン クラフトヴェルク社は、ウォルフスブルグ、 カッセル、ハノーバー、およびエムデンな どドイツ各地の生産拠点のほか、チェコ共 和国の当社工場でも一部合弁事業として発 電施設を稼動させています。基本的にこれ らの工場は、現在技術的にも環境的にも最 も燃料効率が高いコージェネレーションシ ステムによって発電を行っています。また、 電力、熱、水、天然ガス、および圧縮空気 の供給だけでなく、ウォルフスブルグ工場 カッセル工場の第 1 回環境デー で冷却空気も供給しています。このように 遠く離れても密接に 生産と生産拠点 エネルギー生産プロセスは冷房設備としての機能も併せ持って います。その結果、コージェネレーションシステムは夏も継続 稼動が可能になり、元々充分に高い燃料効率はさらにアップし て 70%を超え、環境保護や天然資源保護に直接貢献していま す。詳しい情報については下記ウェブサイト(ドイツ語)をご 覧ください。 おり、イントラネットでの特別プログラム www.vw-kraftwerk.de を介してフォルクスワーゲンのすべての工 場でも着手されました。 モーゼル工場 モーゼル工場にはこの地域で最も進んだ廃 水処理工場があります。工場自体から出る 工業廃水や一般廃水だけでなく、近隣の企 業やコミュニティなどからのすべての廃水 を優れた方法で処理しています。この最先 端技術による廃水処理施設はモーゼル工場 を建設した 1992 年に併設され、近隣コ ミュニティの協力を得て、地域の廃水問題 の緩和に大きく貢献してきました。95% を超える浄化効率のおかげで川の支流地域 であるツヴィッカウアー・ムルデの水質は 大幅に改善されました。現在も投資が行わ ウォルフスブルグ工場 れているため、モーゼル工場では最先端の ウォルフスブルグ工場では 2003 年 5 月、「OFF」キャンペー 廃水処理技術が維持されています。 ンを導入しました。従業員全員に対して、職場でも自宅に居る ときと同じようにエネルギーの使い方に責任感を持ってもらう ためです。これはコスト削減だけでなく天然資源の保護にも役 立っています。またポスターキャンペーンやアイディアマネー ジメントコンペティションを行い、例えば部屋を離れる際に電 気を消したか、水道の蛇口を閉じたか、また夕方帰宅する際に コンピューターとモニターの両方の電源を切ったかを確認する ことで、従業員全員に貢献を促しています。ウォルフスブルグ 工場の年間エネルギー消費量の規模を単純な比較から見てみる と、この工場での熱エネルギー消費量が一般家庭 24,000 世帯 の 1 年間のエネルギー消費量に相当することがわかります。そ こで、オフィスや生産工場内の暖房時の温度設定を 1 ℃下げる だけで、1 年に 130 万ユーロの節約になります。このように、 ちょっとした工夫でエネルギーを節約し、資源を保護すること ができるのです。この「OFF」キャンペーンは社内の持続可能 な発展モデルにおいて模範的なイニシアチブとして実施されて 62 63 2.4 生産と生産拠点 生産拠点 欧州地域 ブラチスラバ工場 ブラチスラバに位置するフォルクスワーゲン スロバキアの基幹 工場でも現在、2003 年 10 月に認証を取得した国際環境規格 ISO14001 に沿った環境マネージメントシステムが運用され ています。システムの導入状況を社内的に調査するため総合的 な社内監査が実施され、その準備段階では環境問題の定義・評 価のための新しいシステムが初めて使用されました。このシス テムは同様の目的を持つフォルクスワーゲン グループの SEBU システムと互換性があります。さらに従業員に対して Environmental Information System(EIS 環境情報システム) これは地下水から汚染物質が検出されなく やイントラネットを利用して、環境情報を提供できるようにな なるまで継続されます。 りました。EIS はフォルクスワーゲン グループのドイツ国内工 場すべてで採用されていますが、国外ではブラチスラバ工場で マルティン工場 初めて採用されました。従業員はいつでも EIS を利用して、環 新しい Environmental Management System(EMS 環境マネージメントシス テム)を理解させるには、教育が重要です。 そこでフォルクスワーゲン スロバキアの マルティン工場では従業員全員に対し、 EMS への取り組み方について集中トレー ニングが実施されました。2002 年 9 月 にマルティン工場は ISO14001 認証を取 得しています。その際社外監査機関は、ブ ラチスラバの基幹工場についても特に目を 境についての詳しい情報を入手することができます。ここでは、 向けました。(上記参照) 関連部署すべて 工場のあらゆる環境関連のデータ、現在の環境ポリシー、環境 の協力のお陰で、マルティン工場は 2003 マネージメントハンドブックが利用可能です。 年にも再び認証を取得しています。 ブリュッセル工場 ブリュッセル工場内の新しい製造施設の建設に先立って土壌検 査を実施したところ、過去の土地所有者が土壌と地下水の汚染 を放置していたことが明らかになりました。特に鉱油、重金属、 アンモニアが測定されたため、迅速かつ効果的な対応が求めら れました。フォルクスワーゲンはブリュッセルの環境当局に相 談し、費用をかけて浄化作業を行い 8,000 トンの土壌を入れ替 えました。土壌汚染が引き起こしたもうひとつの問題は地下水 の汚染です。完全な地下水浄化は今日や明日実現するというも のではないことから、長期的計画を立てる必要がありました。 そこで新しい製造所の床下にポンプを配置し、汚れた水を活性 炭フィルターで 2 度ろ過してから水路に流すようにしました。 遠く離れても密接に 生産と生産拠点 パルメラ工場 ポルコヴィッツェ工場 パルメラ工場の塗装ブースからの排気はウェットウォッシュ工 2002 年以降、ポーランドのポルコヴィッ 程を経て浄化されます。この工程ではこれまで塗料と溶剤で汚 ツェ工場で実施されている環境プロセスは 染された乳状の液体が発生するため、蒸留によって不純物を取 すべて「エネルギータスクフォース」が調 り除く処理を施さなければなりませんでした。しかしそれには 大量のエネルギーを必要とするうえ、処理工場への輸送に排出 ガスが発生することから、今までの方法に代わる環境的にも経 済的にもより効率のよい方法が採用されることになりました。 新しい方法では特別な凝固剤を使用して塗料粒子を確実に沈殿 させ、循環水に含まれる汚染物質を絶えず除去することができ ます。このシステムでは以前は有害廃棄物として焼却処理され ていた洗浄用水の残留物も同時に処理できます。フォルクスワ ーゲンでは現在、この新しいプロセスによって年間 7,000 m3 以 上の真水を節約し、塗料廃棄物を半分以下に低減させています。 整しています。このタスクフォースは各部 署代表の従業員で構成され、環境にやさし い生産工程の実施、従業員の環境問題に対 する意識の向上、貴重な資源の節約などを 目的に活動しています。なかでも特に重要 なのは飲料水の問題です。ポーランドには 自由に利用できる地表水がほとんどないた めです。ポルコヴィッツェ工場は雨水の貯 水池を作ることで、飲料水の使用量の削減 を達成しました。従業員から提出される環 境保護のためのアイディアも、エネルギー タスクフォースの活動を大きく支えていま パンプローナ工場 す。ポルコヴィッツェ工場ではアイディア フォルクスワーゲンは国外の工場においても、環境マネージメ マネージメントシステムにより、環境保護 ントで独立監査機関の認証を取得できるよう、長年取り組んで や資源保護の問題について従業員からの提 きました。スペイン・ナバーラ州パンプローナにあるフォルク 案が歓迎されています。 スワーゲンの工場もその一例です。パンプローナ工場は EC 環 境監査規定と ISO14001 の両方の監査を受けた初の工場とな ポズナン工場 りました。またそれをきっかけにパンプローナ工場の 45 社の アルミニウム鋳造部品生産工程では、鋳造 サプライヤーでも、フォルクスワーゲン ナバーラの協力のもと、 時に生じた微細な穴や亀裂をシーリングす 自発的に独自の環境マネージメントシステムを構築しようとい るために樹脂が使用されます。この工程か う気運が起こりました。その結果、フォルクスワーゲン ナバー らの廃水は硫酸塩による汚染が激しく、水 ラと州政府の共同プロジェクト、PROYMA - Proveedores y 質汚染の指標である化学的酸素要求量の数 Medio Ambiente(サプライヤーと環境)がスタートし、遅く 値はかなり高くなっています。そこでポー とも 2005 年までには ISO14001 に沿った環境マネージメン ランドのポズナン工場では最新式の自動含 トシステムを各サプライヤーで導入できるようになります。 浸システムを導入し、すべての部品の洗浄 64 65 2.4 生産と生産拠点 生産拠点 をひとつの循環システムの中で行うようにしました。過剰な樹 コルドバ工場 脂は部品表面から洗浄水で洗い落とされ、そこで発生する硫酸 アルゼンチンのコルドバ工場では 2002 塩を含んだ廃水は蒸発装置で浄化されてから再び洗浄水として 年 1 月から新しいマグネシウム製ギアボッ 戻されます。プロセスの残留物は無害な添加材料としてリサイ クスケースに低真空状態で熱処理を施して クルが可能です。 います。以前はこの熱処理に(メタン)ガ ス加熱式の炉を使用していたことを考える 北米地域 と、現在の電熱式真空炉の採用は特筆すべ プエブラ工場 「廃水分離とリサイクル」と名付けたエコロジープログラムのも と、メキシコのプエブラ工場では貴重な飲料水の節約が進めら れています。他の資源のリサイクルと同様、工場からの廃水は 再利用される用途に応じて分類され、リサイクルシステムによ り、用途にあう水質が確保されるよう浄化されます。トイレの 廃水は微生物を使って有機成分が分解され、工業廃水は物理化 学的に処理されます。また雨水は直接貯水槽に引き込まれてろ 過装置により飲料水や用水に精製されています。このようなウ ォーターマネージメントによって、プエブラ工場では 1999 年 以来毎日 700 m3 の飲料水の節約に成功しています。 きことです。なぜならこれ以上メタンを使 用しないということは地域への排出ガスも 発生しないことを意味するからです。また 南米地域 真空の状態では予熱時間が短くて済むた め、炉をさまざまな工程に使用することが アンシエッタ工場 でき、不要時にはすぐにスイッチを切るこ 塗料スラッジは以前はセメント工場で焼却されていましたが、 とも可能になりました。もうひとつの利点 現在アンシエッタ工場ではリサイクルされてこの工場で生産さ は、これまで表面硬化処理に必要とされて れる自動車の防振マットに利用されています。これによって輸 いたアンモニアを含んだプロセスガスが不 送費用が低減したうえ、焼却にかかるコストは完全に不要とな 要となったことです。これにより人体や環 りました。それだけではなく、この方法で製造された防振マッ 境などへの危険性も排除されました。ギア トの価格は従来のものより 4%も安くなりました。フォルクス ボックスの洗浄も必要ないので、油分を含 ワーゲン ド ブラジルの従業員が社外パートナーとの協力の上 んだ廃水も発生しなくなりました。 に開発したこの方法は、環境面・経済面の利点が評価され、フ ォルクスワーゲン ド ブラジルの社内評価プログラムによって クリチバ工場 環境賞に選出されました。 ブラジルのクリチバ工場では 2002 年に 導入された複数の方策によって、発生する 産業廃棄物や有害廃棄物の量が劇的に低減 しています。特に、塗装工場での洗浄作業 に必要な溶剤量が大幅に減少したほか、最 新のろ過プレスを使用して塗料スラッジか ら効率的に水分を取り除くことで、廃棄さ 遠く離れても密接に 生産と生産拠点 れるスラッジ量が大幅に削減されるようになりました。さらに、 クリチバ工場では新しいリサイクルパートナーに溶剤、ポリス チレン、木材などの廃棄物のリサイクルを依頼し、埋立廃棄物 を 2001 年比 90%低減させました。 パチェコ工場 アルゼンチン東部のパンパは世界で最も広大な草原地帯のひと つですが、残念なことに最も自然破壊が危ぶまれている地域で もあります。そこでパチェコ工場は、独特の景観と絶滅の危機 組みを呼びかけようというもので、従業員 に瀕した数多くの生物の生息地を守るため、特別なアイディア とその家族を始め、500 人の児童や地方 当局職員の前で上演されました。 サン カルロス工場 2003 年 6 月、ブラジルのサン カルロス にラテンアメリカで最も広大で最も進んだ 鳥類飼育場が誕生しました。これを可能に したのがフォルクスワーゲンのエンジン工 場とエコロジーパーク「Dr. アントニオ テ イシェイラ ヴィアンナ」のパートナーシ ップです。この 450m2 のケージは絶滅の 危機に瀕した数多くの鳥たちの新たな生息 場所となっており、エキゾチックな種類の 鳥が大好きな人にとってここはパラダイス です。訪れた人は吊歩道から暗色ガラスの 向こうに珍しい鳥類を間近で観察すること ができます。欧州以外の生産工場として初 を思いつきました。新しく建設するトラック工場のための掘削 めて ISO14001 認証を取得したサン カ 作業でできた穴を一部だけ埋めて、残りは雨水を貯めることに ルロス工場は、1996 年からこのエコロジ 決めたのです。貯水池の水は緊急時の消火活動に利用できます。 ーパークを支援しています。フォルクスワ 池の周りには木が植えられ、それが育って稀少な植物や動物に ーゲンは 900 名の児童をこのエコロジー 新しい生息地を提供しています。 レセンデ工場 ブラジル・レセンデ工場で働くフォルクスワーゲン従業員は、 環境保護に取り組む熱意だけでなく、演劇の才能も発揮してい ます。ここでは全部署の代表から成る環境委員会が環境をテー マとしたイベントを定期的に開催しています。その一環として 2001 年と 2002 年には環境週間を実施しました。ハイライト は従業員自身が環境をテーマに製作・演出した演劇の上演です。 この演劇はユニークかつ独創的なかたちで観客に環境への取り 66 67 2.4 生産と生産拠点 生産拠点 パークに招待して子供たちの環境教育に協力しているほか、ケ アジア・太平洋地域 ージの増設に資金援助を行っています。 長春工場 タウバテ工場 工場の調理場や従業員食堂で揚げ物やロー 水は自動車産業にとって貴重な資源です。フォルクスワーゲン ストを作ると油分を多く含んだ煙を大量に のブラジル・タウバテ工場だけで 1 カ月に平均 10 万 m の水を 排出します。これらは嫌な匂いを発するだ 使用しており、このうちの 70%はラテンアメリカで最大の廃 けでなく、健康に悪影響をおよぼす恐れも 水処理施設からの水です。この量はおよそ 1,400 世帯の一般家 あります。その対策として、中国・長春の 庭が使用する水の量と同じです。この廃水処理施設はフォルク 一汽フォルクスワーゲン汽車有限公司の社 スワーゲンの委託により、Hidrogesp(イドロゲスプ社)が建 員食堂には排出ガスの処理システムが設置 築し、当初の 5 年間が経過した後はフォルクスワーゲンに引き されました。これらの多層静電フィルター 渡されることになっています。それまでは主に塗装工場で使用 はメンテナンスの必要性がほとんどないう するためのリサイクル水を以前よりもずっと安い価格で購入し え、90%を超える高い浄化レベルを誇っ ます。 ています。 3 上海工場 中国の上海フォルクスワーゲン汽車有限公 司の EMS 環境マネージメントシステムを めぐるサクセスストーリーは 1997 年にさ かのぼります。フォルクスワーゲンは中国 環境省の崋山監査本部から EMS の ISO14001 認証を取得した中国初の自動 車メーカーです。それからまもなく上海工 場は再び賞賛の的となりました。2002 年 6 月、上海市の 2000 / 2001 年の環境 レポートで上海工場は「先進的な環境集団」 として紹介されたのです。そしてその年の 後半には、工場での取り組みが国の環境保 護プロジェクトの上位 100 件のひとつに 選ばれました。それ以来、上海工場の持つ 経験は、さらに地域のサプライヤーにもワ ークショップを通じて伝えられています。 その結果、上海でフォルクスワーゲンの仕 事に携わる多くのサプライヤーが環境マネ ージメントシステムで ISO14001 認証を 取得するに至ったのです。 喜望峰 生産と生産拠点 喜望峰 南アフリカの近代化に真剣に取り組むフォルクスワーゲン エド リチャードソン 1980 年代から 90 年代にかけての約 20 年間、南アフリカは経済制裁により世界貿易市場から締め出されていました。その ため、ヨハネスブルクとその周辺地域に経済活動を集中せざるを得ませんでした。フォルクスワーゲンのユイテンヘーグ工場 がある東ケープ州は南アフリカでも最も貧しい地方で、失業率は 40%を超えています。 68 69 フォルクスワーゲン オブ サウス アフリカは、東ケープ州最大 ンの業績や能力の基準を下げるわけにはい の民間企業です。ユイテンヘーグ工場の従業員数は現在 5,000 きません。ですから、差別をなくすために 人を超え、工場のサプライヤーや関連業者に数千を超える仕事 は誰を管理職にしてもいい、というわけに を提供しています。1970 年代にフォルクスワーゲンは、黒人 はいかないのです」 による労働組合結成を率先して認めた初の南アフリカ企業のひ とつとなりました。続いて 1990 年代の初めには、初めて黒人 教育を変えなければ の自動車機械工に研修を行いました。今日では、かつては差別 このような理由からフォルクスワーゲン されていた黒人、アジア人、女性などの管理職を育てるため、 は、地域の学校教育を積極的に支援してい さまざまなプログラムを実施しています。「たとえ政治が変わっ ます。ユイテンヘーグ工場のコミュニティ ても、従来通り白人が経済を握っていては何の意味もありませ リレーションズ マネージャー、ウェザ モ ん」フォルクスワーゲン オブ サウス アフリカ人事取締役、ブ スは「優れた教育は成功へのカギである」 ライアン スミスはこう言います。「しかしこうした状況を変え と説明します。さまざまな学校プロジェク ることは簡単ではないのです。高いスキルを身につけた労働力 トのための資金は、フォルクスワーゲンと は不足しています。競争の激しい国際市場でフォルクスワーゲ その従業員が設立したフォルクスワーゲン 2.4 生産と生産拠点 南アフリカ コミュニティトラストによって管理されています。スミス人事 自立を支援する 取締役は自らの信念を次のように語っています。「フォルクスワ フォルクスワーゲン コミュニティトラスト ーゲンでは人種や肌の色に関係なく、優れた人材のそのすべて は、学校教育プロジェクトだけでなく「自 にポジションが与えられると考えています。バランスを取るこ 立するカヤマンディ女性」など数多くの支 とは難しいことではありますが、2004 年には、組合と合意し 援プロジェクトに携わっています。このプ た目標通りに、全管理職の 4 分の 1 がかつて被差別的な立場に ロジェクトでは、コミュニティトラストの おかれていた人々からの登用となるでしょう」 支援を受けて 16 名の女性が煉瓦製作機を フォルクスワーゲン オブ サウス アフリカ常務、ハンス・クリ 購入しました。さらに野菜を栽培してポー スチャン メルグナーは、企業を存続させることと、社会的責任 トエリザベスで露天商に売ったりしていま に真摯に取り組むこととは矛盾しないと考えています。「フォル す。プロジェクトを指揮するテムベカ ムシ クスワーゲンの投資戦略上、13%以上の投資利益率が見込まれ ツャナは、「この収入で母親は子供たちの なければ投資は行いません」 制服を買い、学費を支払うことができるの です」と話します。 その戦略のもとでフォスクスワーゲンは、南アフリカ工場への 投資を続けています。過去 2 年の国内販売において市場首位に 最大の脅威、エイズ 立ち、また、中国、次いで西欧の市場へ輸出を開始することに 南アフリカはエイズの発症率が世界で最も より、南アフリカの世界市場への進出に貢献しました。現在で 高い国です。国としての夢や目標さえもが は年間 30,000 台のゴルフ 4、そしてポロがアジア太平洋地域 HIV ウイルスの脅威にさらされています。 に向けて出荷されています。 人文科学調査評議会のダイレクター、Dr. オリーブ シサーナは、「ここでは 1 日に 喜望峰 生産と生産拠点 1,000 人を超える人々がエイズで亡くなっています」と説明し 通して南アフリカへ寄付しています(99 ます。そこで小学生から高校生までの子どもたちに対する啓蒙 ページ参照)。 プログラムが考案されました。エイズの脅威に焦点をあて、こ の病から身を守る方法についてアドバイスを与えるものです。 フォルクスワーゲンはエイズで親を亡くした孤児たちの支援も 行っています。「未来のための 1 時間」キャンペーンで寄せられ た資金を、児童救済団体 terre des hommes(人間の大地)を シヤセータ・エージェンシーのオーナー、エド リ チャードソン(47)。ポートエリザベス在住。エド はフリーのジャーナリストで、「オートモーティブ パーチェシング ニュース」など向けに記事を書い ている。 70 71 「自分達なりの方法を見つけなければ」 問題の多い東ケープ州で社会的な取り組みの優先順位が高いのはもちろんですが、フォル クスワーゲンは環境面でも模範を示しています。ユイテンヘーグ工場は、環境管理の国際 規格 ISO14001 の認証を南アフリカで初めて取得しました。「サプライヤーにも国際的な 環境基準を満たしてもらう必要があります。目標は、来年までに 8 割のサプライヤーが ISO14001 の認証を取得することです」とフォルクスワーゲン オブ サウス アフリカ広 報責任者、マット ゲンリッヒは話します。 ユイテンヘーグ工場では第三者による環境監査を定期的に行っています。工場の環境責任 者サイモン レラカ(30)は、生産工程での環境配慮を徹底するため 20 名のパート従業員 と共に活動しています。この南アフリカの子会社の環境活動を強化するため、フォルクス ワーゲンは 2003 年中旬に特別な措置を取りました。ドイツ・ウォルフスブルグのグルー プ統括環境プランニング部から、ハンス・ハインリッヒ プレール(41)が自身の経験を 伝えるためにユイテンヘーグ工場に3カ月間派遣され、同時にサイモン レラカがウォルフ 2.4 生産と生産拠点 南アフリカ スブルグを訪問して数週間にわたりウォルフスブルグでの取り組みを学びました。2 人の環境のエキスパートは、相互の国や文 化の印象を次のようにマット ゲンリッヒに語っています。 サイモン レラカさん、あなたは初めてのドイツ訪問から戻ったばかり 言葉を別としてほかに違う点はありますか? 特 ですね。母国、南アフリカとの主な違いは何でしたか? に環境保護に関する点はどうですか? 明らかに多くの違いがあります。まずウォルフスブルグ工場で驚いたこ ドイツにあるような環境保護基準の存在しない とは、従業員の意識が非常に高いことでした。それから、すべてがとて 地域だとは了解していました。私は、比較的取 も清潔で驚きました。 り組みやすくコストもかからない環境保護活動 環境保護という意味 で「清潔」とおっし ゃっているのです ね? それもあります。ウ ォルフスブルグでは 生産のあらゆる段階 で環境保護に対する 非常に強い責任意識 が存在します。例え ば、ウォルフスブル グ工場には独自の廃 棄物処理施設があり ます。またリサイク ルも重視されていま す。浄水施設も見学 しました。すべてが 大変印象的でした。 ウォルフスブルグの発電所の前に立つサイモン レラカ を推進する、という目標を設定しました。ここ で必要とされているのは、簡単かつ速やかに効 ハンス・ハインリッヒ プレールさん、初めての南アフリカ訪問の感想は? 果をもたらす手段なのです。 他の国でこれほど親しみ深く歓迎されたことはありませんでした。ユイ テンヘーグ工場では、一緒に働くマネージャーや監査員を一人ひとり紹 サイモン レラカさん、現在のユイテンヘーグ工 介してもらえたので、どの工程でもすぐに溶け込むことができました。 場での環境保護をあなたはどう評価しますか? もちろんウォルフスブルグと多くの点で異なっています。特に言葉の違 良い、満足している、または不満であるのうち いは大きい。しかし言葉の問題は、やるかやらないか、二者択一です。 どれでしょう? 私は挑戦することにしたのです。 私たちはこれまでにたくさんのことを成し遂げ てきました。ですからまず間違いなく満足して います。もちろん、まだ改善の余地はあります ので、そのために一生懸命がんばります。 「自分たちなりの方法を見つけなければ」 生産と生産拠点 ドイツで見てきたことのなかで具体的に導入したいことはありますか? サイモン レラカさん、南アフリカに帰ってきた ドイツで私が見たことの多くが技術的にとても高度なことは明らかで 今、まず初めに導入したい活動は主に何です す。そのような高い技術を要する取り組みを南アフリカに導入するのは、 か? 経済的な事情だけをとっても難しいでしょう。ですから、それを南アフ 環境負荷物質の保管と取り扱いについて改善した リカの条件に合わせて変えていく必要があります。環境保護の基本理念 いと考えています。そして、環境保護に関する行 は共有しつつも、ユイテンヘーグ工場では自分たちなりの方法を見つけ 動計画をまとめ、全従業員向けのガイドラインと なければならないのです。 して規定を明確に示したいと考えています。 そしてハンス・ハインリッヒ プレールさん、ド イツに帰ってからあなたが成し遂げたい主な取 り組みとは? 私は工場設備と環境技術の面でユイテンヘーグと協 力体制を継続できたらと願っています。 72 73 ハンス・ハインリッヒ プレールさん、工業先進国と発展途上国とで異 なる環境基準を持つことに危険性を感じていますか? 世界共通の基準はいずれにせよ必要で、ユイテンヘーグでもそうした基 準を守るべきです。しかし私は、そのために高度な技術をドイツからユ イテンヘーグに単純に移行するのにはあまり意味がないとするサイモン の意見に全く同感です。それではうまくいきません。ここで必要とされ ハンス・ハインリッヒ プレール、マット ゲンリッ ヒ、サイモン レラカ(左から) るのは実用的な取り組みなのです。 ユイテンヘーグで直面した問題は具体的にどのようなことでしたか? 具体的なプランはありますか? 幸いにもあまり多くはありませんでした。タンクで建設関連の事故が発 情報によると、南アフリカの環境法は今後厳し 生し、かなり大規模の漏出が起こりました。その被害への迅速な対応が くなるため、その対応が必要となります。おそ 必要とされたため、漏れ出した物質を除去し、土壌を入れ替えました。 らく廃水処理基準も厳しくなると思われるので、 また、今後この設備から環境に二度と負荷を与えないよう、排水システ ユイテンヘーグの廃水処理工場を改善する必要 ムを設置しました。 があるでしょう。 ユイテンヘーグ工場で学んだことのなかで、ウォルフスブルグでも参考 になることはありましたか? 従業員同士協力することの大切さを学びました。ユイテンヘーグ工場で は働く者同士がとても親密であり、管理職へ、あるいは従業員間で情報 が伝わる速度が欧州より確実に速いのです。ですから、物事に対する非 常に迅速な対応が可能になります。 2.4 生産と生産拠点 国際監査 学び続ける 環境についての意見交換 ん増加する傾向にあることを目の当たりに フォルクスワーゲンはすでに多くの工場で独自の国際監査を実 しました(31 ページ参照) 。 施してきました。環境管理の国際規格 ISO14001 の認証取得 に取り組むにあたり、この監査はとても意味のあることだとわ かりました。国際監査の実施により、グループ全体で環境基準 が徹底され、専門知識が普及したからです。成功のカギは、各 環境チームがそれぞれ違った経験を積む多国籍なメンバーで構 成されていることに加え、その全員が積極的に知識を交換し、 互いから学び、また工場での環境改善提案といった高い意欲を 持っていることにあります。 そこでフォルクスワーゲンの取締役会は、北米、南米/南アフ リカ、アジア・太平洋の各地域における定期的な国際監査の実 施を正式に決定しました。 2003 年 6 月 30 日から 7 月 4 日にかけて、メキシコのプエブ ウォルフスブルグにあるフォルクスワーゲ ラ工場(北米地域)で監査が行われました。目的は、減り続け ン AG からは環境、化学、建築、プロセス る天然資源を保全するため、生産工程で、あるいは従業員が使 エンジニアリングの各分野における専門家 う飲料水の量をできるだけ減らすことです。フォルクスワーゲ が集まり、フォルクスワーゲン デ メヒコ ン デ メヒコはこの取り組みにより、国内の水使用量がどんど の社員とともに、水を節約するためのあら ゆる方法を検証しました。工場内の作業工 程における水の使用を見直し、水使用に関 する従業員の意識向上を図ることに加え、 雨水の利用と浄化された廃水の再利用が決 まりました。 国際的な内部監査チームの 1 週間にわたる 調査・検討の結果、自動車生産 1 台あたり の飲料水使用量を 25%削減する計画がで きあがりました。また、リサイクルされた 水をより多くの用途に使えるよう、廃水の 浄化もさらに強化されます。今後の国際監 査では地域の課題に応じて、工場施設だけ でなく製品、従業員、公共性などにも焦点 がおかれることになるでしょう。フォルク スワーゲンの環境ポリシーはこのようにし て具現化されていくのです。 安全と共に 生産と生産拠点 安全とともに 労働安全衛生の継続的な改善 フォルクスワーゲンは全工場で同じように従業員の安全を重視 しています。なかでも第一の課題は従業員の健康維持です。ま た労働安全衛生は経済的な理由からも重要な要素になりました。 結果的に従業員が健康ならば欠勤による損失時間が少なくなる からです。 労働安全衛生面で、フォルクスワーゲンはすでにかなり前から 大きな成果をあげています。ドイツ国内の工場における労働災 害を過去 30 年間で 95%も減少させたのです。それでもまだ改 善の余地はあります。残る労働災害の 3 分の 2 以上は不注意な どの行動が原因で、こうした労働災害は簡単に防ぐことができ フォルクスワーゲン AG 生産担当取締役 Dr. フォル カー ヴァイスゲルバー(左)、ハノーバー工場労働 衛生・安全担当 ラインハルト キントラインに 2003 年労働安全衛生カップを授与。 るからです。 職場における「自己確認」 喚起するため、各工場に 12 種類のポスタ これを受けてフォルクスワーゲンは 2002 年に従業員の行動に ーを掲示しました。 焦点を当てた「自己確認」プロジェクトに着手しました。プロ ジェクト名の「自己確認」には 2 つの意味があります。まず、 騒音対策 一人ひとりの従業員が危険を伴う可能性がある作業に対し特別 住宅地に隣接した生産工場で騒音が発生す な注意を払い、自身の安全に対する意識を高めるべきであると ると、近隣住民とのトラブルになりやすく、 いう意味です。もうひとつは、各人が自信を持って同僚の危険 そこから訴訟、近隣からの苦情、操業制限 やミスを指摘すべきであるという意味です。 といった事態にも発展しかねません。 2002 年 5 月、フォルクスワーゲン AG 生産担当取締役 Dr. フ こうしたリスクもフォルクスワーゲンでは ォルカー ヴァイスゲルバーと労働協議会労働安全衛生・健康・ 徹底的な環境マネージメントにより回避さ 環境委員会議長ウーヴェ バルテルスによって、「自己確認」プ れました。長期的な計画に基づき最新の騒 ロジェクトが開始されました。このプロジェクトはポルトガル 音低減技術を生産工場に導入した結果、以 のパルメラ工場を皮切りに、フォルクスワーゲンのドイツ国内 下の成果があがりました。 全工場でもその直後に導入されました。従業員には、解説ビデ • 新しい低騒音型製造装置を用いること オ、小冊子、スライドなどを用いて管理者から詳しい説明があ で、公的介入を必要とせず騒音低減技 りました。またこのキャンペーンについて従業員の注意を常に 術の法規制を高いレベルで遵守してい ます。 • 将来工場の拡張が必要となったときに 示すことのできる、建築法規を踏まえ た適正な騒音基準値をすでに確立しま した。 • 地方当局、地域住民と工場管理者の対 話を進めることによって、住民からの 苦情が発生し難くなりました。 74 75 2.4 生産と生産拠点 主要な指標 こうしたアプローチによりフォルクスワーゲンは地方当局にも 認められています。ブラウンシュヴァイク、エムデン、ザルツ ギッター、ウォルフスブルグの生産拠点では、フォルクスワー ゲン、地域住民、地方当局それぞれの利益を充分に配慮した取 プレス工場で排出されるオイルミスト り決めが、当局とフォルクスワーゲンの間で合意されました。 量の低減 フォルクスワーゲンは他の工場でも同様の取り組みを進める予 プレス工場で使用される引抜油は従業員に 定です。 も環境にも悪影響をおよぼします。そこで 組み込み型オイル分離器を搭載した新しい フォルクスワーゲンは騒音マップと呼ばれるものを作成し、各 装置を導入し、オイルミストやオイル煙霧 工場の敷地全体を対象に計測した騒音のレベルを示しています。 の濃度を 90%以上削減しました。これは 例えば上記のマップは、ウォルフスブルグの工場敷地内や近隣 原料使用量や廃棄物処理費の削減にもつな 住宅地における夜間の騒音レベルを色分けして画面に表示した がっています。 ものです。 データで見ると フォルクスワーゲンの環境関連データ 環境保護や持続可能性について考える際、普通は全体的な目標 ルフロー、排出物について正確なデータが や方策が焦点になります。しかし、ある生産工場のやり方が本 必要です。こうしたデータをもとに個々の 当に環境や資源の保全に配慮したものであるかどうかは、どの 工場、国、地域の傾向を推定したり環境目 ように確かめればよいのでしょうか。持続可能性とは測定でき 標を設定しその実行性を確認したりするこ るものなのでしょうか。測定できるならば、カギとなるパラメ とができます。また弱点を明らかにし、改 ーターは何でしょうか。 善の可能性を示すのにも役立ちます。 企業の環境・持続可能性ポリシーが持つ本来的な特性をただの フォルクスワーゲンは 1997 年以降、生 数値だけで示すことは無理だとしても、信頼の高い方法で収集 産工場の環境データの一部(データは されたデータは多くのステークホルダーにとって重要な基本情 1994 年までさかのぼる)を公表してきま 報となります。データがあって初めて官公庁、メディア、経済 した。当初はドイツ国内の工場についてだ 団体、監査員だけでなく、フォルクスワーゲンも、持続可能性 けの公表でしたが、環境レポート への取り組みの成果を厳密かつ客観的に評価することができる 1999 / 2000 年では初めて、欧州にあ のです。またこうした情報は消費者との重要なコミュニケーシ るフォルクスワーゲン全工場の環境データ ョン手段ともなります。EC 環境監査規定の認証を取得した欧州 を掲載しました。そして今回のレポートで 内のフォルクスワーゲン各工場は、こうしたデータを環境宣言 は、欧州以外の工場についても正確で検証 の中に盛り込み、公表しています。 可能な環境データ(2001 年・ 2002 年 分)を掲載することになりました。データ 保険会社、投資機関、資産管理者なども、投資先や保険料を決 収集方法は徐々に改善され、今では世界中 める際、特に環境関連データを参考にしています。環境面や損 の生産拠点のデータが集められるようにな 害賠償のリスクが世界的に増大しているため、企業が自社のリ りました。 スクを把握し最低限に抑えるには、資源や原料使用、マテリア データで見ると 生産と生産拠点 環境データの収集方法 全体的に見た改善 会社全体の環境データがボタンひとつでいつでも呼び出せるよ 統計が一般的にそうであるように、ここで うになったらどんなに簡単でしょう。残念ながら私たちはまだ 示す環境データも誤って解釈される可能性 その段階には達していません。ここに示す環境データは一般的 があります。例えば 1998 年から 2002 に、グループ全体のデータ収集を担当する部署に各工場から毎 年にかけて、パルメラ工場、ポルコヴィッ 年提出されるさまざまな情報や数値をまとめたものです。こう ツェ工場、マルティン工場で次々に操業が したデータはフォルクスワーゲン グループ基準 98 000(操業 開始されました。この結果、他の工場では 上の環境指標)に規定されている定義付けや方法に沿って収集 技術的進歩によって相当な削減を達成した されます。 にもかかわらず、トータルで見ると資源の 消費量だけでなく、排出ガス量や廃棄物量 も増大したことになりました。 主要な指標 取水量と排水量 取水量には、公共および民間からの配水、井戸水、水源からの 排水量は、排水の流量を測定して決定して 取水に加え、雨水や地表水などが含まれます。ドイツおよび欧 います。蒸発、漏出、または浸透などによ 州の工場において、2002 年の取水量の最も大きな割合を占め る水消失量は計測されていません。2001 ているのがウォルフスブルグ工場で、ここだけで 730 万 m に 年と比べて 2002 年は欧州以外の工場で のぼります。2000 年、2001 年、2002 年の夏の豪雨により、 の取水量が減少していますが、これはブラ 生産活動の規模とはかかわりなく、この地域の取水量が増大し ジルで導入した水の節約のための特別プロ たのです。 グラムの成果によるものです。 3 取水量と排水量 フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) 1998 8.92 1998 11.32 1999 8.85 10.00 1999 12.13 2000 2001 2002 10.11 8.11 7.02 9.54 2000 6.80 13.81 9.61 10.43 2001 7.21 14.10 9.89 28.18 21.18 10.75 2002 7.33 13.98 9.84 26.97 20.28 取水量(単位: 100 万 m3 /年) ドイツ ドイツを含む欧州全体 全世界 資料:フォルクスワーゲン AG 排水量(単位: 100 万 m3 /年) 76 77 2.4 生産と生産拠点 主要な指標 廃棄物 産業廃棄物 廃棄物は各国で施行されている法令に準拠してさまざまな方法 産業廃棄物とは、人間および環境への脅威 で分類されています。このためフォルクスワーゲンでは統計の がわずかだと認められる廃棄物のことで 簡略化を目指して、全世界で有効な定義を導入することにしま す。 した。 有害廃棄物 生産工程から発生する廃棄物の量をグラフに正確に反映させる 有害廃棄物は人間と環境に相当の脅威を与 ため、建設作業から発生する廃棄物(建築物のがれき、土壌掘 える廃棄物です。従って細心の注意を払っ 削など)はここには含まれていません。また金属くずも商品価 て処理するか、特別な基準に基づき埋め立 値のあるものとして分類されるため統計データには含まれてい てる必要があります。 ません。 産業廃棄物 有害廃棄物 フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) 1998 49,148 1998 56,945 59,256 1999 51,629 1999 2001 2002 2000 47,333 64,359 56,989 44,785 2001 45,505 49,563 65,172 53,662 106,893 65,558 40,982 2002 49,693 99,278 52,828 有害廃棄物(リサイクル)(単位: t /年) 27.324 1998 22,712 1999 19,883 2000 2002 21,849 23,611 40,240 30,455 2001 21,392 35,871 29,862 2000 19,053 32,024 33,185 1999 43,055 71,175 産業廃棄物(リサイクル)(単位: t /年) 1998 47,302 51,743 62,712 2000 55,226 2001 18,944 33,081 35,192 66,218 47,851 18,221 2002 24,587 26,948 34,583 67,252 51,414 産業廃棄物(廃棄処分用)(単位: t /年) 有害廃棄物(廃棄処分)(単位: t /年) ドイツ ドイツ ドイツを含む欧州全体 ドイツを含む欧州全体 全世界 * 全世界 * 資料:フォルクスワーゲン AG * 廃棄物の分類法がまだ明確でないため、上海およびクリチバ工場 のデータは含んでいない。 資料:フォルクスワーゲン AG データで見ると 揮発性有機物質 揮発性有機物質(VOC)は地表付近のオゾン形成に影響をおよ ぼすなどの光化学作用を発生させるため、環境にとって無視で 揮発性有機化合物(VOC) フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) 1998 4,608 1999 4,365 2000 4,054 きません。主な VOC の排出源は塗装施設です。 8,196 8,459 1998 年から 2002 年にかけて、ドイツにおける VOC の排出 量は着実に減少しました。欧州では当初増えていましたが、そ の後激減しています。こうした前進は、弱溶剤型塗料の使用拡 8,676 2001 3,358 大、塗装技術の改良、最新の排気処理施設の導入から得られた 6,873 ものです。例えば 2001 年にはウォルフスブルグ工場とブリュ 13,506 ッセル工場にて、余剰塗料を独自の循環ラインにより必ず塗装 工程に戻す、いわゆる「ピッグシステム」を導入した結果、溶 剤排出量が大幅に減少しました。またブラチスラバに塗装工場 が新設されたことも溶剤排出量の低減に貢献しています。 生産と生産拠点 2002 3,019 6,222 13,302 VOC 排出量(単位: t /年) ドイツ ドイツを含む欧州全体 全世界 資料:フォルクスワーゲン AG 社内エネルギー生産による CO2 直接排出量 社内エネルギー生産による CO2 排出量 フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) ここで示されている社内エネルギー生産に 1998 323,301 よって発生する CO 2 量とは、天然ガスや 444,013 石炭などの燃焼によって工場から直接排出 1999 299,514 される CO 2 量のことです。このような燃 461,036 2000 2001 298,553 焼プロセスの行われる代表的な設備として 468,068 は、塗装工場のサーマル式後処理装置、硬 302,275 化工程の熱処理装置、および熱生産のため 506,538 の社内ボイラー工場などがあげられます。 903,648 2002 303,340 510,354 CO2 は工場内のこうした燃焼プロセスで直 905,962 接排出されるか、電力調達や地域暖房によ CO2 排出量(単位: t /年) って間接的に排出されます。CO2 はその排 ドイツ 出量がエネルギー消費といまだに大きく関 ドイツを含む欧州全体 連しているため、京都議定書で取り扱われ 全世界 た 6 種類の温室ガスのなかでも最も重要で 資料:フォルクスワーゲン AG す。一般的に工業プロセスはエネルギー集 約型であり、生産能力と生産量の向上に伴 い CO 2 排出量も増大します。CO 2 排出量 の低減の可能性は、太陽光、水力、風力な どの再生可能エネルギー源や、最新の高効 率エネルギー技術の導入による省エネはも 78 79 2.4 生産と生産拠点 主要な指標 ちろんのこと、炭素含有量の少ない一次エネルギー資源への移 の他の投入エネルギー源としては石炭とプ 行(例えば石炭から天然ガスへの移行など)にかかっています。 ロパンが挙げられます。 図表には社外の電力生産や地域暖房で発生した間接 CO2 排出量 エネルギーの総消費量は、工場の燃料投入 は含まれていません。これらについては、幅広く認められた統 量と社外の発電所からのエネルギー量(電 一的な計算方法が今のところ存在しないからです。 力および地域暖房)とを合計して算出して います。エネルギーの総消費量のうち電気 工場の燃料投入量とエネルギー総消費量 が相当の割合を占めています(欧州の工場 工場の燃料投入量を示す数値には、固定された燃焼プロセスに ではおよそ 46%、欧州以外の工場ではお 必要な一次エネルギー資源がすべて(ほとんどは化石燃料)含 よそ 40%) 。 まれています。これに該当するのは主に、生産工程および処理 用室内暖房のためにボイラー工場で使用する天然ガスです。そ 燃料総投入量とエネルギー総消費量 フォルクスワーゲン ブランド(乗用車および商用車) 1998 1.89 1998 1999 1.82 1999 1.70 2000 2001 2002 5.88 7.41 2.38 1.82 5.91 7.32 2.35 2000 6.01 7.19 2.23 2001 5.94 2.62 7.82 4.26 11.63 1.76 2002 5.85 2.54 7.74 4.19 11.61 燃料投入量(単位: 100 万 MWh /年) ドイツ ドイツを含む欧州全体 全世界 資料:フォルクスワーゲン AG エネルギー総消費量(単位: 100 万 MWh /年) データで見ると 生産と生産拠点 2002 年環境保護関連の投資額 フォルクスワーゲン ブランドの欧州工場(単位: 100 万ユーロ) 環境保護関連の投資額 (単位: 100 万ユーロ) 14.8 2000 27 ハノーバー 8.6 2001 33 ブラウンシュヴァイク 1.6 2002 32 カッセル 5.7 ザルツギッター 1.5 エムデン 0.1 ウォルフスブルグ、ブラウンシュヴァイク、 カッセル、エムデン、ザルツギッター工場 ケムニッツ 4.7 その他の欧州工場 モーゼル 0.4 合計 ブリュッセル 0.1 ブラチスラバ 0.7 パンプローナ 3.2 ポズナン 3.7 ポルコヴィッツェ 0.3 パルメラ 1.4 ウォルフスブルグ 15 47 2002 年にはフォルクスワーゲン ブランドのその他の欧 州工場の環境投資額が初めて環境レポートに記載された。 資料:フォルクスワーゲン AG 環境保護関連の投資額には、生産工程から発生する悪影響防止の ための目的にのみ、または主としてその目的に使用される資産、 工場、装置への投資が含まれる。これらは製品または生産工程に 関する方策を指すこともある。 80 81 資料:フォルクスワーゲン AG 2002 年の環境保護関連の運用コスト フォルクスワーゲン ブランドの欧州各工場(単位: 100 万ユーロ) 環境保護関連の運用コスト (単位: 100 万ユーロ) ウォルフスブルグ 63.7 2000 190 ハノーバー 32.0 2001 191 ブラウンシュヴァイク 16.1 2002 186 カッセル 36.3 ザルツギッター 28.0 エムデン 10.4 ケムニッツ モーゼル 4.4 50 236 ウォルフスブルグ、ブラウンシュヴァイク、 カッセル、エムデン、ザルツギッター工場 その他の欧州工場 11.9 合計 ブリュッセル 5.4 ブラチスラバ 5.2 パンプローナ 8.4 ポズナン 5.5 ポルコヴィッツェ 1.0 パルメラ 7.8 環境保護関連の運用コストには、環境保護のために導入したシステム、 工場、または方法の運用から発生したすべてのコストが含まれている。 これらは生産工程に関する方策のみを指す。 資料:フォルクスワーゲン AG フォルクスワーゲン ブランドの欧州各工場では、共通の指 標システムに従ってその運用コストを算出している。統合 的な環境対策が幅広く普及した結果、環境関連の運用コス トを個々に表示することはますます困難になりつつある。 資料:フォルクスワーゲン AG 2.4 生産と生産拠点 主要な指標 2001 / 2002 年事故指標 AG 全体の事故重大性指数は 2001 年から 事故指標からは、各工場における事故の頻度や重大性に関して 2002 年にかけて 13.7%から 10.9%に 比較的信頼性の高い正確な情報を知ることができます。今年初 (前年比およそ 20.4%)低下しています。 めてこの指標を取り入れたため、フォルクスワーゲン ブランド の 2001 年および 2002 年の数値だけの発表となりました。 ここで 2 つの生産拠点に注目してみましょ 労働安全衛生はフォルクスワーゲンにおいては環境部門に統合 う。まずハノーバー工場は 2002 年、労 されているため、事故の数値は「社会指標」という見出しのも 働安全衛生分野における特に優れた功績に とには記載されていません。 よって、今回で 2 度目となる取締役会労働 安全衛生カップを受賞しました。この工場 フォルクスワーゲン AG の事故重大性指数は 2001 年から では 2000 年から 2002 年にかけて事故 2002 年にかけて 8.4%から 6.9%に(前年比およそ 18%) 重大性指数が 31%低下しました。また労 低下しました。この数値は長期間にわたる確実な進歩があった 働安全衛生マネージメントを最も徹底して ことを示します。特筆すべき点として、ハノーバー工場、ブラ いる部署としてエムデン工場の自動車仕上 ウンシュヴァイク工場、ザルツギッター工場の事故重大性指数 げ担当チームにもこのカップが贈られまし が激減したことがあげられます。 た。 同様に欧州内のフォルクスワーゲン ブランド企業のほとんどが 1985 年にスタートした労働安全衛生カッ 良好な成果をあげています。特にパルメラの生産拠点にある プは、この分野において優れた業績を収め Autoeuropa(アウトエウローパ社)とパンプローナの生産拠 たフォルクスワーゲン AG のドイツ国内工 点にあるフォルクスワーゲン ナバーラですばらしいデータが報 場と事業部隊にそれぞれ 1 つずつ贈呈され 告されました。こうした欧州の企業を含めフォルクスワーゲン ています。 フォルクスワーゲン AG における労働安全衛生の状況 労災事故件数 719 577 通勤中の事故件数 513 427 労災事故による欠勤件数 9,103 7,520 通勤中事故による欠勤件数 8.653 6,109 死亡労災件数 0 0 通勤中死亡事故件数 6 5 2001 2002 上記のフォルクスワーゲン AG の数値はウォルフスブルグ、ハノーバー、ブラウンシュヴァイク、カッセル、エムデン、 ザルツギッター各工場を説明している。 資料:フォルクスワーゲン AG データで見ると 生産と生産拠点 フォルクスワーゲン ブランドの欧州各工場における事故傾向 8.4 フォルクスワーゲン AG 5.3 6.9 6.9 6.7 ウォルフスブルグ 4.9 5.9 9.4 ハノーバー 6.2 5.3 6.9 12.4 ブラウンシュヴァイク カッセル 7.6 エムデン 5.9 6.4 8.7 8.7 5.4 9.1 10.2 ザルツギッター 8.3 フォルクスワーゲン AG (子会社を含む) 8.8 VW ザクセン 4.9 6.2 6.9 13.7 10.9 6.3 32.2 VW ブリュッセル 22.7 60.3 19.9 11.2 VW スロバキア 7.6 15.3 11.5 VW ナバーラ 6.7 VW パルメラ 5.2 3.9 6.3 12.0 4.8 2.8 18.4 12.0 VW ポルコヴィッツェ 14.4 21.5 49.0 21.7 VW ポズナン 13.6 30.1 事故の重大性 事故重大性指数 6.5 5.2 7.9 60.6 5.2 4.3 6.1 8.2 6.7 事故頻度 2001 2001 2002 2002 事故頻度指数 欠勤日数合計× 100 万 事故件数合計× 100 万 延べ労働時間 合計× 10 延べ労働時間 合計 上記のフォルクスワーゲン AG の数値はウォルフスブルグ、ハノーバー、ブラウンシュヴァイク、カッセル、エムデン、ザルツギッ ター各工場についてのものである。 上記のフォルクスワーゲン AG(子会社を含む)の数値はフォルクスワーゲン AG、フォルクスワーゲン ザクセン、フォルクスワー ゲン ブリュッセル、フォルクスワーゲン スロバキア、フォルクスワーゲン ナバーラ、アウトエウローパ(パルメラ) 、フォルクス ワーゲン モーター ポルスカ(ポルコヴィッツェ) 、およびフォルクスワーゲン ポズナン各社についてのものである。 資料:フォルクスワーゲン AG 82 83 2.5 パートナーと市場 サービス部門での環境保護 信頼のおける存在 環境保護についてディーラーへアドバイス フォルクスワーゲンは、自社の製品や生産工程だけでなく、販売部門に至るまで環境 保護を徹底しています。ディーラーが店舗の環境保護について、極力素早く容易に情 報を得ることができるよう、フォルクスワーゲンはカスタマーサービス部門のサービ スネットワークの一環として、電子情報システム「環境保護サービス」を立ち上げま した。 1992 年にはディーラー向けに「フォルクスワーゲン/アウディ環境アドバイザリ ーサービス」を開始しました。これはパートナーである DEKRA Umwelt GmbH (デクラ・ウンヴェルト社)、LUEG Umweltschutz GmbH(リューク・ウンヴェ ルトシュッツ社)、T V(テュフ社)により現場で実施されている自主的なアドバイ ザリー・監査プログラムで、このプログラムを修了したディーラーは環境保護認証を 取得することができます。 信頼の置ける存在 パートナーと市場 Prof. ヴィルヘルム ズィムゾン 「持続可能な発展とは、まだ達成できていない目標です。それは単 に法律で社会に強制できるものではなく、革新を必要とするもの です。しかし、革新は新しい結果を受け入れられる環境でしか実 現できません。エコンセンスは政界、学術界、経済界、そして市 民との対話を通じて、産業界の問題解決能力への信頼性を高め、 持続可能性への取り組みを一層説得力あるものとすることを狙い としています。持続可能な発展への道のりにおいて、改革の推進 と実行に必要な技術やリソースの活用を通じ、産業界は重要な役 割を果たしています。フォルクスワーゲンはエコンセンス評議会 に代表を送っています。産業界が日々の経営において極めて現実 的な方法で示しているように、持続可能な発展は実現できるので す。すべての解決策が白紙の状態から創案されなければならない というわけではありません。すでに企業の中で実行されている取 り組みもあります。研修制度や革新的な労働時間モデル、新しい 環境技術などはそのほんの一例です」 Prof. ヴィルヘルム ズィムゾン(65)はドイツ・ミュンヘンのエコンセンス評 議会のスポークスマンです。 84 85 カスタマーサービス部門はそれぞれのフォルクスワーゲン サー フォルクスワーゲンはすでに販売した自動 ビスセンターにおける環境保護や社内廃棄物の管理のための構 車についても、徐々に厳しくなっている排 造的な施策導入にも携わっています。このような業務は法規定、 ガス規制を確実に遵守するためのテストを 経済性、顧客のニーズに基づいて行われています。ディーラー 行っています。このテストでは、車の排出 における廃棄物管理はディーラー建築コンサルティングと呼ば ガス量が走行距離に応じていかに変化する れるものの一環として取り扱われますが、これはフォルクスワ かが調査されます。 ーゲン サービスセンターの建物自体が効率的な廃棄物管理を実 現するものでなくてはならないからです。 テストが行われているのは、カリフォルニ ア州ウェストレイク ヴィレッジに常設さ ディーラーでの廃棄物管理は、分別、回収、保管、廃棄などの れた施設と、欧州の自動車排出ガス測定セ 段階に分けられます。このうち分別と回収は作業場と部品倉庫 ンターの 2 カ所の排出ガス実験室です。テ で行い、保管と廃棄は廃棄物処理場で一括して実施します。改 ストの結果は新しい排出ガス抑制技術の開 築が必要なディーラーには、フォルクスワーゲン サービスセン 発に取り入れられ、既存の設計で修正の必 ターの設計と実施とマスタープランに関する環境保護ガイドラ 要な点が明確になります。 インを参考にすることができます。 2.5 パートナーと市場 VCD とエコトレンド 真の勝者 VCD「車と環境」ランキング(2003 / 2004 年) フォルクスワーゲン ルポ 1.4 FSI 7.87 (得点) ルポ 1.4 FSI とルポ 3L TDI ―― ドイツの「環境に最もやさしいクルマ」 ルポ 1.4 FSI は前年に引き続き、ドイツ交通環境協会(VCD)の 「車と環境」ランキング 2003 / 2004 年で第 1 位の座を獲得し ました。このルポは直噴ガソリンエンジンを搭載し、100 km あ フォルクスワーゲン ルポ 1.4 FSI 7.87(得点) ダイハツ Cuore 1.0 Plus(ミラの輸出名) 7.79(得点) トヨタ Yaris 1.0 linea eco (ヴィッツの輸出名) 7.63(得点) たりの燃料消費量は平均 4.9 リッターです。ドイツ国内の計 364 スズキ アルト 7.43(得点) 台の自動車が評価され、総合評価のほか、コンパクトカー、ファ トヨタ プリウス(ハイブリッド) 7.40(得点) ミリーカー、MPV といったカテゴリー別の評価も実施されました。 ここでもフォルクスワーゲンの複数のモデルが、カテゴリー別の 上位に挙げられています。評点の内訳は、40%が燃料消費量 、40%が有害物質排出量、残る 20%が騒音となっ (CO2 排出量) ています。この評価方法は 1997 年にエネルギー環境研究所 (IFEU)が作成したレポートに基づくものです。VCD としてはこ のランキングが自動車購入の一助として活用され、また環境に配 慮した製品開発をメーカーに促したり、政策上の意思決定に影響 コンパクトカー トップ 5 トヨタ プリウス(ハイブリッド) 7.40(得点) アウディ A2 1.2 TDI 3L 7.07(得点) トヨタ Yaris Verso 1.3 C (ファンカーゴの輸出名) 6.76(得点) アウディアウディ A2 1.4 6.67(得点) フォード フォーカス 1.8 CNG 6.60(得点) ファミリーカー トップ 5 オペル アストラ 1.6 CNG Caravan 7.02(得点) フォード フォーカス C-MAX 16 TDCI 6.97(得点) フォード フォーカス 1.8 CNG Turnier 6.60(得点) ンキングにおいても第 1 位を獲得しました。今回はガソリンエ フォルクスワーゲン ゴルフ 2.0 バリアント バイフューエル 6.54(得点) ンジンの FSI ではなく、ディーゼルエンジンの 3L TDI モデル セアト コルドバ 1.2 12V 6.53(得点) を与えたりする材料になればと考えています。www.vcd.org ルポはドイツのエコトレンド環境研究所( )のラ での 1 位獲得です。この 3 リッターカーでの 1 位獲得はこれで MVP トップ 5 4 回連続となり、ドイツでナンバーワンの環境適合車との評価 オペル ザフィーラ 1.6 CNG 6.03(得点) を得ています。総合評価では同じくフォルクスワーゲン グルー フィアット ムルティプラ Bipower 5.56(得点) プのアウディ A2 1.2 TDI が第 2 位を獲得しましたが、搭載さ オペル ザフィーラ 1.6 エコテック 5.16(得点) れているエンジンはルポ 3L と同じものです。またポロ 1.4 フォルクスワーゲン トゥーラン 1.6 FSI 5.16(得点) オペル ザフィーラ 1.8 エコテック 4.94(得点) FSI が第 5 位、ゴルフ 1.6 FSI が第 8 位にランクされました。 www.oeko-trend.de 資料: VCD エコトレンド環境研究所のランキングでは燃料消費量、有害物 質、騒音に加えて、生産、調達、物流における資源保護も考慮 されています。さらにはリサイクルや環境マネージメントなど も評価の対象です。この研究所がランキングを発表する目的は、 主として環境に適合した自動車の購入をフリート業者に奨励す ることにあります。 これらのランキングから、環境に適合した量産車種の開発では、 ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのどちらにおいてもフ ォルクスワーゲンが業界で主導的役割を果たしていることが明 らかです。自動車同様、メーカーを評価するランキングでも、 フォルクスワーゲンはエコトレンド研究所のランキングで第 2 位、 VCD ランキングで第 3 位と、いずれも上位を獲得しています。 ルポ FSI、VCD ランキング第 1 位を獲得 前進し続ける パートナーと市場 前進し続ける 未来の交通のためのビジョン この先数年間で旅客・貨物輸送の新たなコンセプトが構築されな ければ、都市によっては交通渋滞の脅威が行く手を大きく阻むこ とになります。明るい話ではないのですが、実はこれは自動車業 界がマサチューセッツ工科大学(MIT)に委託した研究の結論な ステークホルダーとの対話 のです。サンパウロやメキシコの現状を見れば、その意味がわか 持続可能なモビリティのイニシアチブで るでしょう。モビリティとは本来移動を意味するのに、実際には は、環境団体、研究所、公的機関など全世 まったく流れていません。その結果は火を見るよりも明らかです。 界のステークホルダー(9 ページ参照)が 戦略決定に参加しています。ステークホル 一方、多くの農村地域、特にインフラが充分に整備されていな ダーグループとの対話を進めていく過程 い貧困諸国(新興国)では逆に、人口のほとんどが交通手段を で、持続可能なモビリティへの道筋に沿っ 利用する機会がないため、発展の機会が断たれています。 て次のような課題や方策が明らかになりま した。 大企業の集結 こうした問題を解決し、長期にわたる持続可能なモビリティを実 • 地域や個人のニーズへの自動車の適合 (発展途上国・新興国) 現するために、フォルクスワーゲンを始めとして、BP、ダイムラ • 排出ガスの削減 ー・クライスラー、フォード、ゼネラルモーターズ、ホンダ、日 • 特に新興国の農村地域でのモビリティ 産、ミシュラン、ノルスクハイドロ、ルノー、シェル、トヨタな ど、エネルギー業界や自動車業界の世界最大手が力を結集して、 共同のプロジェクトを立ち上げました。参加企業は皆、自社の存 の提供 • 旅客・貨物輸送へのインフラや資源の 投下バランス調整 続は持続可能なモビリティを達成できるかどうかにかかっている • 交通渋滞の緩和 という認識のもとに活動しています。この共同イニシアチブ「持 • 交通計画とモビリティ需要との調整 続可能なモビリティ 2030」は持続可能な発展のための世界経済 • 制度やネットワークの構築と拡大 人会議(WBCSD)の一環として実施されており、フォルクスワ • 開発を推進する、ニーズに応じた交通 ーゲンはその WBCSD 設立メンバーの一社です。参加企業は、持 システムの実現 続可能性と企業の成功という 2 つの要素は今後さらに不可分の関 係になる、という共通の確信を得ています(105 ページ参照) 。 こうした多岐にわたる課題を解決するため に、企業の枠を超えたワーキンググループ • 企業のステークホルダーバリューは、その企業の存続を左右 する決定的な要因である。 が設立されました。課題のなかにはさらに 深刻化しているものもありますが、ワーキ • 付加価値の創出を持続可能にするためには、企業は政治や社 ンググループでは需要と供給の両面からさ 会の動向を長期的視野でとらえ、そこから得られた結論を事 まざまなテーマを扱い、課題への適切なア 業活動に一貫して取り入れていかなければならない。 プローチを検討しています。 • 付加価値の創出、環境保護、そして社会の進歩の追及はすべ て両立させることができる。 例えば「指標」についてのワーキンググルー プは、持続可能なモビリティの核となる要素 従って、私たちにとっての持続可能なモビリティとは、目的地 を示す次のようなリストを作成しました。 への到達、コミュニケーション、ビジネス、関係の構築といっ • モビリティへのアクセス た、移動の自由に対する人間のニーズを、現在や将来の世代が • 利用コスト 発展していく可能性を犠牲にすることなく実現することなのです。 • 移動に要する時間 • 信頼性と快適性 86 87 2.5 パートナーと市場 使用済み自動車の回収 ワーキンググループとイニシアチブのテーマ 供 • 交通の安全性 • 個人の安全性 給 需 要 WS 1 :指標 WS 2 :車両技術 WS 3 :燃料 • 温室効果ガスの排出 WS 4 :インフラストラクチャー • 環境と健康への影響 WS 5/6 :旅客輸送・貨物輸送 • 資源の消費 WS 7 :政策 WS 8/9 :都市部および長距離交通 • 公共交通機関の範囲 • マイノリティに配慮したモビリティ • 収益性 持続可能性 WS 10 :シナリオとビジョン 2002 年 3 月 2002 年 6 月 2002 年 10 月 2003 年 6 月 2003 年 12 月 WS :ワークストリーム 資料:フォルクスワーゲン AG 多国間戦略 私たちの目指す成果は、工業国と新興国それぞれの事情に合わ 者は相互に依存しています。行政や一般社 せた、環境にやさしいモビリティを、現地の人々が利用可能な 会の支援がなければ、企業単独ではもちろ 形で提供することです。そこで、業界の枠を越え、さまざまな んのこと、あるいは業界単独でも解決案を 企業が共同で輸送に伴う排出ガスや温室効果ガスを削減するた 実行することはできません。 めの、長期的な戦略を立てています。バイオ燃料などの過渡期 の戦略を取り入れながら、燃料電池というゴールを目指してひ 「持続可能なモビリティ 2030」という共 た走っているのです。このような戦略には供給サイドに必要と 同イニシアチブは、2003 年 12 月に一旦 なる技術革新に加えて、需要サイドへのインセンティブなどの 正式に完了しました。2004 年初めには最 政策も必要です。また、ドライバー向けの燃料節約法の講習も、 終報告書が発表されますが、この報告書を 燃料消費や排出ガスに対する意識を高めるのに役立ちます(89 もって問題が解決したわけではありませ ページ参照)。そして、今後公共交通の調整や協力をさらに強く ん。私たちは、吟味された方法と活動に基 すれば、新たな可能性が生まれます。 づき、発展途上国と新興国で取り組みの成 果を実行に移さなければならないと考えて しかしこのようなアプローチはいずれも過程が複雑で、各当事 おかえりなさい 使用済み自動車の回収に関する法律 EU 廃車指令により、フォルクスワーゲンにも他の自動車メーカ ーと同様、2002 年 7 月 1 日以降ドイツで登録されたすべての 新車を回収する義務が生じます。加えて 2007 年 1 月 1 日以降 は、この規定が使用済み自動車すべてに適用されます。フォル クスワーゲンがドイツ国内に持つ回収ネットワークでは、最終 所有者が地域の回収拠点に使用済み自動車を引き渡す仕組みを 作っています。引渡し後、使用済み自動車は国内法やフォルク スワーゲンが規定する追加要件に従い、リサイクル業者によっ います。www.sustainablemobility.org なめらかな運転を パートナーと市場 て処理されます。解体された部品や回収された材料は適切なリ 輸入業者がそれぞれの国の法規制を遵守で サイクル工程に回されます。 きるよう、助言や支援をする責任がありま す。それぞれの市場の特別な状況に合わせ、 ドイツだけでなく、EU 加盟または加盟候補諸国でも、EU 廃車 各国内の自動車協会や組織などとも連携し 指令を国内法として法制化することが求められています。これ て助言や支援を行っています。 は域内での自動車メーカーの責任が、その国の輸入業者に引き 継がれることを意味します。そのためフォルクスワーゲンには、 なめらかな運転を 安全は環境にもやさしい フォルクスワーゲンは自動車を製造するだけでなく、できるだ け安全にそして環境に配慮しながら運転する方法を提示してい 88 89 ます。このために Deutsche Verkehrswacht(ドイツ交通管 理局)、Driving-Know-how(ドライビング・ノウハウ社)、 Deutsche BKK(ドイツ企業健康保険組合)と共同で開発した 画期的な安全運転プログラムが「セービング・セーフティー・ トレーニング」です。参加者は日常的な状況下での安全で予見 体の不自由な方であっても問題なく研修コ 的な運転技術を学ぶだけでなく、インストラクターの監視のも ースを受講できます。このプログラムは、 とで緊急時の状況を安全に体験することもできます。安全性の 障害を持つドライバーと一般のドライバー 向上だけでなく、燃料を節約できるドライビング法も学びます。 とが一緒に参加できるようにというコンセ そうした運転を心がけるだけで、同じ平均速度でも燃料消費量 プトなのです。危険な状況を共に疑似体験 を 20%以上削減できるのですから、環境にも家計にもやさし することにより、運転技術の向上を図るだ いというわけです。 けでなく互いの偏見や気後れする気持ちを 克服することも目的としています。 参加者は小グループで研修を受けるため、運転技術を改善する 方法を一歩ずつ学ぶことができます。基礎コースでは、理論的 研修コースは、あらゆる車両クラスに習熟 な原理だけでなく、正しいブレーキのかけかたと回避行動の取 したドライビングインストラクターが担当 り方を学びます。また安全運転を極めたいと考える人にはさら しています。そのひとり、イェルク ハッ に「エルクテスト(緊急回避テスト)」を取り入れた集中コース ケは最近、ザクセンリンク サーキット場 も用意されています。このコースではあらゆる危険な状況での で障害者支援組織 VDK ザクセンの 19 名 運転を繰り返し練習します。両コースともに「エコドライビン のドライバーに安全運転講習を行いまし グ」課程を取り入れ、走行中の燃料節約のキーポイントを説明 た。インストラクターチームの活動範囲は しています。そして各コースの最後は要点を総括するディスカ ドイツ全土に及びます。「安全とは南のバ ッションで締めくくられます。 イエルン地方から北は海岸線まで、共通の テーマです」とハッケは強調します。安全、 www.sparsicherheitstraining.de 社会的統合、環境保護を一度に実現できれ ば、それは本当にすばらしいことです。 3 社会的責任 雇用モデル 人材あっての企業 「フォルクスワーゲンは、社会的責任とはどのようなものかを新たに定義しました。それは単な る社会的な支援活動をはるかに超えるものです。企業は社会的責任を果たすために、従業員の エンプロイアビリティ(職務能力の継続的な向上)をはかり、定年退職に至るまで雇用の可能 性が開かれるようにしなければなりません。また、フォルクスワーゲンは、事業を営む地域社 会においてパートナーとしての役割を果たそうとしています」 フォルクスワーゲン AG 人事担当取締役 Dr. ペーター ハルツ グローバル化は世界中にある情報、商品、サービスのやりとりの本質を変え、政治、 経済、社会にとって大きな課題となりました。その結果、国際ビジネスに携わる企業 の状況は劇的に変化したのです。社会の厳しい目にさらされるのは、もはやビジネス における成功だけではありません。今日、こうした国際企業に求められるのは、社会 や政治の場においてより積極的な役割を果たすことです。政治や社会は、企業のこと をグローバル化のプロセスで活躍する立役者と見なしており、グローバル企業には環 境面でも、また社会的にも地域の垣根を超えて手本となることが期待されています。 人材あっての企業 社会的責任 ディーター オーベラート 「TransFair(トランスフェア)は公正に取引された商品に認証 シールを発行している独立機関です。フェアトレード(公正な 取引)は、発展途上国の生産者の生計を支え、こうした生産者 が自分たちの力で人としてふさわしい生活を送れるようになる ための手助けとなります。生産者はフェアトレードを通じて生 活や労働条件を向上させ、環境を守ることができるのと同時に、 製品の品質を高めることもできるのです。フォルクスワーゲン はドイツにある 6 カ所の工場の社員食堂とセルフサービス式直 営店で、"TransFair"のシールが貼られたコーヒー、お茶、オレ ンジジュース、クッキーなどを販売しており、最近ブリュッセ ル工場にもこうしたサービスを広げました。2001 年 1 月以降、 93,000 パックを超えるコーヒーと 31,000 パックを超えるオ レンジジュースが売れています。このフォルクスワーゲンの取 り組みは模範的な事例となってくれました。こうした貢献のお かげで、他の大企業も私たちの活動に対し門戸を開き、生産者 に対する社会的責任という感覚を育む効果がもたらされたので す」 ディーター オーベラート(48)は TransFair e. V./RUGMARK(社団法 人トランスフェア/ルーグマルク)(ドイツ・ケルン)社長である。 90 91 フォルクスワーゲンの社会的責任には 3 大原則があります。 主に国際的事業の拡大によるものです。特 • 既存の仕事の確保と新たな雇用の創出 に Autoeuropa(アウトエウローパ社)、 • エンプロイアビリティ フォルクスワーゲン モーター ポルスカ、 • 従業員参加の実現 ポズナンの商用車工場の設立のほか、ブラ チスラバ工場やギュアー工場、そして中国 フォルクスワーゲンではこれに関連して「ワークホルダーバリ におけるジョイントベンチャーでの新規事 ュー」という用語を作りました。企業においての仕事の価値は、 業の立ち上げなどがあげられます。ドイツ 従業員が今後もその会社で働き続ける見通しを持てるかどうか 国内においても、アウディやフォルクスワ にかかっています。私たちは社会的責任を一貫して果たし続け ーゲン ザクセンの新規事業立ち上げ、 ることによって「ワークホルダーバリュー」を長期的に高めて Auto 5000 GmbH(アウト 5000 社) いるのです。 や Automobilmanufaktur Dresden(ア ウトモビール マヌファクトゥア ドレスデ フォルクスワーゲンの雇用主としての魅力と市場における成功 ン社, 通称ガラスの工場)の設立などの結 は、従業員数の推移にも反映されています。フォルクスワーゲ 果、従業員は 21,000 人増加しています。 ン グループは、2002 年度末時点で 32 万 5,000 人(生産工 また同じ時期にサービス事業部門の拡大も 場の従業員 29 万 8,000 人を含む)もの従業員を雇用していま あり、この部門でも 14,000 人もの新規 す。1994 年と比べればおよそ 82,000 人の増加です。これは 雇用を実現しました。 3 社会的責任 人材育成 革新的な雇用モデルによる雇用の確保と創造 フォルクスワーゲンは、雇用の確保や創出のため人事方針に革 新的な方法を数多く取り入れています。ここでカギとなるのは 労働時間の編成です。「ブリージングファクトリー(呼吸する工 場)」というコンセプトは、従業員の労働時間の要求に柔軟に適 応させ、その一方でできる限り余剰労働者のリストラを避ける という考え方を基盤としています。こうしてフォルクスワーゲ ンでは、雇用の安定を確保し、蓄積されたノウハウを守りなが アウト 5000 :トゥーランの生産工程 ら、顧客の要望に応えています。生物が活動のレベルに応じて 酸素摂取量を増減させるのと同じように、フォルクスワーゲン に運用されています。所得税や社会保険料 の労働時間と生産量は、受注量が多い場合には増大し、少ない は投資資産の払い戻しを受ける際に初めて 場合は減少します。 引き落とされます。積み立てた労働時間資 産を利用して、早期退職することも可能で 1993 年には「ブリージングファクトリー」の基礎となった週 す。フォルクスワーゲンの人事に関する詳 4 日労働制が導入されました。当時、自動車業界は危機に見舞 しい情報については下記のウェブサイトを われ、フォルクスワーゲンでは 30,000 人もの余剰人員を抱え ご覧ください。 ていることが明らかになりました。しかし労働時間を短縮し、 給与を調整することによってリストラを回避することができた www.vw-personal.de のです。このような雇用の安定確保の手法はドイツにおいては フォルクスワーゲンが草分け的存在であり、それ以降グループ 工業立国ドイツにおける雇用モデル の他の生産拠点でも採用され、成功を収めています。こうした フォルクスワーゲンは、ドイツのような高 方法によって 1998 年にはブラジル、そして 2003 年にはス 賃金国でも新たな雇用を生み出すことが可 ペインのパンプローナ工場で雇用の安定が確保されています。 能であるということを立証しました。代表 また最近もメキシコの子会社で、2,000 人の解雇を避けること 的な例はプロジェクト「5000 × 5000」 を目的とした、労働時間の短縮に関する合意が得られました。 から生まれたアウト 5000 の新設です。こ のプロジェクトの目標は、失業者 5,000 労働時間が短縮されたことで、このほかにも労働時間の積み立 人に仕事を提供し、1 人あたり月給 5,000 てという柔軟性に富んだ制度を生み出すことができました。こ ド イ ツ マ ル ク ( 当 時 )、 現 在 の 通 貨 で うした制度の導入によりフォルクスワーゲンは週に 4 〜 6 日の 2,556 ユーロの給料を支払うことでした。 労働で自動車を生産することができるようになったのです。団 体交渉による合意で規定された時間数を超過して働いた場合は、 アウト 5000 のこうした革新的な協約は、 労働時間を積み立てることができます。逆に、景気の状況によ 労働時間モデルの新天地を開くことにもな って労働時間を短縮せざるを得ない場合、この積み立ては再び りました。この協約では、従業員は毎日の 減少することになります。フォルクスワーゲンでは現在、国内 生産目標に基づいてフレキシブルな時間で 法に照らして適用可能なほとんどの工場で労働時間の積み立て 働くことができます。さらに 1 人あたり 1 制度を導入しています。 週間に平均 3 時間の研修時間が 1 年間にわ たって与えられています(96 ページ参照) 。 また、フォルクスワーゲンの「労働時間積立証書制度」は、生 この制度のもと、現在、約 3,500 人の従 涯の労働時間をフレキシブルにコントロールすることのできる 業員がウォルフスブルグ工場でコンパクト 特別な方法です。従業員は積み立てた労働時間資産に加えて、 ミニバン、トゥーランを生産しているほか、 総収入の一部をこの計画に投資することもできます。そうして ハノーバー工場ではマイクロバス生産のた 積み立てられた資産は株式市場において利付きの特別ファンド め新たに 1,500 人を採用する計画も立て 人材あっての企業 社会的責任 られています。詳しい情報については下記ウェブサイトをご覧 ください。 www.auto5000.de 地域に対する責任 AutoVision GmbH(アウトヴィジョン社)は、フォルクスワ ーゲンとウォルフスブルグ市が失業者数の半減を目指して アウトヴィジョン(ウォルフスブルグ) 1998 年に共同で設立した企業です。そこに住む人たち自らの 力で地域経済を活性化させることを狙いとしています。この計 しています。現在 90 社を超えるサプライ 画を実行に移すため、1999 年には官民連携による Wolfsburg ヤーがこの地域での事業拠点設立を果た AG(ウォルフスブルグ社)が設立されました。ウォルフスブル し、新たに 160 社の企業が設立されまし グ社の事業部門は下記のとおりです。 た。詳細については下記ウェブサイトをご • サプライヤー誘致 ― 当地域での事業拠点設立を望むフォル 覧ください。 クスワーゲンのサプライヤー企業を支援します。 • イノベーション・キャンパス ― それぞれの目的に合わせた www.wolfsburg-ag.de 事業施設とコンサルタント業務を提供し、起業をサポートし ます。 ウォルフスブルグだけでなく、カッセル • エアレープニス・ヴェルト(体験ワールド) ― 余暇産業の (1999 年)、エムデン(2000 年)の両 拡充によりウォルフスブルグを小旅行向け観光スポットとし 生産拠点でも同様のプロジェクトがスター て開発します。 トしました。またドイツ以外の国でも順次 • 人材サービスエージェンシー ― 地域の労働市場と直接の連 携をはかります。 導入され、それぞれの地域に合った方法を 取り入れ、成果を収めています。例えば南 アフリカでは 2001 年にユイテンヘーグ 2002 年 12 月までにアウトヴィジョンだけで 4,800 人を超え において地域開発がスタートし、翌年には る雇用が新たに創出されました。失業者を半減させるという当 新規事業の立ち上げのための最初のコンペ 初の目標を達成するだけでなく、地域の労働市場に大きく貢献 が実施されました。アウトヴィジョン社に ついての詳しい情報は下記ウェブサイトを 廃棄物リサイクルプロジェクト(コルドバ工場) フォルクスワーゲンの ご覧ください。 www.autovision-gmbh.com コルドバ工場では、他 の工場と同様、廃棄物 を収集、分別して、リ エンプロイアビリティと「ジョブファ サイクルしています。 ミリー」の展開 ―― 成功のカギ コルドバ工場のリサイ クル活動の特別な点は、 2003 年以来、リサイ 従業員が持つ知識と能力は、その企業の問 題解決能力と開発能力を反映します。従業 クル可能な廃棄物の売上金を市の小児科病院に寄付していることで 員の職務能力を高めることによって、フォ す。その病院はスペインの経済恐慌によって特に大きな打撃を受け ルクスワーゲンは競争力を保ち、長期にわ ました。このプロジェクトはコルドバ工場の従業員たちの発案によ たって雇用を安定させることができるので るものですが、以来彼らは自発的にその病院向けの薬品やその他の 医療品の購入と配達を担当するようになっています。彼らは患者で ある子供たちやその家族とも連絡を取り合っています。 す。従ってエンプロイアビリティとはフォ ルクスワーゲンの将来を守るためのカギと 言えます。 92 93 3 社会的責任 人材育成 作業プロセスやビジネスプロセスの変化はその速度を上げてい ムを支援しています。このシステムは有能 ます。そのため、従業員のエンプロイアビリティを長期にわた な人材の安定供給のためにあり、長期的に って維持・向上するには生涯学習が必要不可欠です。過去にい 質の高い労働力を約束します。フォルクス くら実務資格や専門的資格を取得していても、もう安全確実な ワーゲンの GAB 職業訓練プログラムでは、 長期雇用の保証とはなり得ないからです。 特定の職種の業務プロセスに焦点を当てた フォルクスワーゲンが「ジョブファミリー」のコンセプトを立 ち上げたのはこのためです。「ジョブファミリー」コンセプトで は、従業員が自分の仕事に近い業務分野から新しいスキルを身 につけることに重点がおかれています。これにより、戦略的に 資格を身につけるだけでなく、キャリアプランづくりにも役立 てることができます。このコンセプトは、製品の製造、加工、 そしてマーケティングに至るまでの付加価値創出のさまざまな 段階に組み込まれています。 フォルクスワーゲンが推進しているのは知識の習得だけではあ りません。知識というものは、実際に利用し、そしていつでも 利用できる状態になって初めて価値のあるものとなります。そ 研修を受けながら、同時にオプションとし のためフォルクスワーゲンでは画期的なナレッジマネージメン て学校で資格を取得することも可能です。 トシステムを導入して、一部で得られた知識をグループ全体で このプログラムに参加することで、早い段 共用することを目指しています。ナレッジのデータベース化や 階から実際の職場での業務について学ぶこ ネットワーク化、また活用のための分かりやすいガイダンスを とができます。 示すことにより、全世界で私たちの専門知識が効果的に利用で きるように努力を重ねています。 2002 年末の時点で、フォルクスワーゲン には 27 の職種にわたり合計 4,163 人の フォルクスワーゲンの職業訓練 職業訓練生が在籍しています。研修ではス 持続可能な若手人材の育成という観点から、フォルクスワーゲ ペシャリストとしての能力だけでなく、社 ンは、ドイツではすでに普及しているデュアル職業訓練システ 会的スキルと自発的に取り組む姿勢を確立 することに重点がおかれます。 フォルクスワーゲンの企業文化にとって社 会的スキルと自発性が重要であることは、 1996 年 7 月に締結された社内合意「職場 におけるパートナーシップ」が現在もフォ ルクスワーゲンの研修にしっかりと根付い ているという事実が物語っています。この ほかにもフォルクスワーゲンでは指導員向 けの研修プログラムも実施しています。最 終実務試験に合格した研修生は通常フォル クスワーゲンに正式に雇用されます。 人材あっての企業 教育の機会を生み出す新たな方法 失業は人々に傷あとを残します。ことに若い人の場合、生涯に 社会的責任 レベル 5 ―― 誰でも使えるインターネット わたりその影響が残ることも珍しくありません。従って、若者 国際的な経験だけが重要な要素ではありま 向けに職業訓練を実施し、仕事を与えることはとても大切なこ せん。現代の通信・IT を自由に操る能力も となのです。 また、将来のために不可欠な技能です。フ ォルクスワーゲンの「レベル 5」キャンペ これが、フォルクスワーゲンがウォルフスブルグで開始した実 ーンに参加することで、従業員はインター 験的プロジェクト ready4work(レディ・フォー・ワーク)の ネットと電子メールを使いこなせるように 目的です。このプロジェクトでは、実務資格がなく学習のチャ なります。このキャンペーン修了後には、 ンスを求めている若者を支援し、そうした若者に地域の研修ネ レベル 5 というインターネットパスポート ットワークが求人先を探し出してくれます。若者の失業問題へ が配布され、自宅で 1 カ月に 10 時間まで の取り組みでこのようなネットワークが成果を上げていること 無料ネットサーフィンをすることができま は、このプロジェクトが正しい方向に歩んでいることを裏付け す。フォルクスワーゲンではすでに ています。これまでの経験から、資格取得時に研修を受けてい 65,000 人を超える従業員がこのパスポー た企業にそのまま就職する若者が非常に多いことが明らかにな トを手にしました。 っています。プロジェクトはまた、職業訓練事業のための新た な資金調達の方法として、地方行政機関や職業紹介所に加えて、 新たな資格は新たな仕事を生む 企業や個人もこれに貢献できる形態をとっています。 長期間失業している間に資格が時代遅れに なり、新たなスキルを取得することもない 人材育成 ―― 将来への投資 と、エンプロイアビリティが損なわれて再 企業が世界市場での競争力向上を願うのであれば、若い人材を 就職が困難になるというリスクに直面しま 育成しなければなりません。教育市場はますますグローバル化 す。フォルクスワーゲンは、アウトヴィジ し、トップクラスの有能な人材の獲得競争は日増しに激化して ョンの一部門である人材サービスエージェ いるため、学習は人材育成に欠かせない重要な要素となってい ンシー(PSA)を通じてこうした傾向へ ます。 の対策に取り組んでいます。この革新的な サービスエージェンシーは、長期失業者に こうした状況に対応するため、フォルクスワーゲンはグループ 臨時の雇用機会を提供したり、正社員とし すべての生産拠点において従業員を対象に一貫した教育を行っ ての職務を紹介したりすることによって、 ています。フォルクスワーゲン コーチングはドイツ国内の 6 カ 長期失業者を労働市場の本流に戻すことを 所すべてのフォルクスワーゲンの生産拠点で研修を担当し、重 目的としています。この事業では主に、社 要な役割を果たしています。2002 年だけでも 4,100 回の育 外のパートナー企業と共に準備した教育コ 成コースが実施され、参加者はおよそ36,000人にのぼります。 ースで長期失業者を再教育し、新たな資格 を取得させることに力を注いでいます。 フォルクスワーゲン コーチングは国際管理職研修プログラムに も携わっています。このプログラムでは、能力があり、将来管 企業もまた PSA から恩恵を受けています。 理職として活躍が期待される若手社員を募集、育成しています。 PSA は、最も多忙な時期に迅速かつ費用 15 カ月にわたるプログラムで会社全体についての理解を深め 効果の高い方法で資格を持った人材を送り た後は、ドイツ国外に配置されて国際経験を積みます。フォル 込むことができるからです。このようにし クスワーゲン コーチングについては下記ウェブサイトをご覧く て確保した臨時従業員には、後に正社員と ださい。 して採用される可能性もあります。 www.vw-coaching.de 94 95 3 社会的責任 人材育成 研修受講時間 ―― アウト 5000 の業務の一環として アウト 5000 の資格プログラムの基本理念として、段階的な学 習があります。従業員にとっては、画期的な報酬システムだけ でなく、ほかでは得られないような資格取得の機会に恵まれて いることもまた利点です。雇用契約には、各従業員が平均 3 時 間の研修を受けて、受講時間の半分に対しては給与も支払われ ることが定められています。フォルクスワーゲンは「人材から 自動車製造のプロへ」というスローガンのもと、アウト 5000 向けに失業者を採用し、自動車製造に関連する職務経験や正規 の資格を持っていない人々にもチャンスを与えました。3 段階 の採用手続きで応募者に求められたものは、ただ必要な知識を 習得したいという意思と、そうした知識を習得する能力です。 インターネットで行なわれた第 1 次採用試験には約 47,500 名 アウト 5000 :トゥーランの組み立て が受験しました。 アウトウニ(自動車大学) ―― 知識はカギ 初期研修と段階的学習 AutoUni(アウトウニ)は、フォルクスワ 資格レベル ーゲンの人事政策の一環として 2002 年に 資格を有する整備士 (商工会議所認定) 設立されました。アウトウニでは、企業と の緊密で実践的な関係を築きながら、高い 自動車整備士としての 適正 学問的水準への到達を目指しており、モッ トーは「知識はカギ」です。設立の狙いは 業界への適正 フォルクスワーゲンにおける人材育成と能 力開発に大きく貢献することにあります。 時間 資料:フォルクスワーゲン AG ここでのカリキュラムは、国際的で分野を 越えた物事のとらえ方に価値をおいていま 最終的に、ウォルフスブルグのアウト 5000 では 3,500 人以 す。さまざまな観点から見るグローバルな 上が採用されました。研修生はまず職業紹介所によって行なわ 思考こそが、持続可能性の理解に基づいた れる 3 カ月の予備研修で、一般的にビジネスで必要な知識や技 教育戦略において必要不可欠な、核となる 能を身につけます。この研修では、特定の業務プロセスとは関 スキルだからです。 係なく、どのような専門的資格が求められるのかが伝えられま す。予備研修が終わると、次はアウト 5000 で 6 カ月の基礎研 アウトウニではすでに授業が開始されてお 修です。この段階では研修者は実際に製造部門の現場で働きな り、最初のプログラムでは経済的付加価値 がら、自動車の生産プロセスで自分に必要な資格を取得します。 や自動車電子工学の授業に加え、いくつか この合計 9 カ月にわたる 2 つの研修段階を終えると、研修者は の社内イベントが行われました。また第 1 正社員として雇用され、新たに編成された業務プロセスの一員 回目のサマースクールが 2003 年 9 月、 として働くことになります。アウト 5000 で 2 年間働いた後は、 シュコダの協力のもとにプラハで開催さ 自動車の組立工として商工会議所の発行する正式資格を取得す れ、「持続可能なモビリティ」についての ることができます。 授業が行われました。これは 2004 〜 2005 年の冬に始まる修士課程の本コース のために、試験的に実施された特別授業で 人材あっての企業 社会的責任 フォルクスワーゲンの従業員に対する社会 的責任は、従業員が退職した後も終わるこ とはありません。ドイツで義務付けられて アウトウニの模型 いる年金の支給に加えて、フォルクスワー ゲンには会社独自の年金計画があります。 そのため世界中の数多くの事業所で働いて す。アウトウニの受講生は、世界中から集まった、フォルクス いる従業員は企業年金も受け取ることがで ワーゲン グループのさまざまな部署に所属する従業員です。 きます。さらに従業員は、年収から企業年 金に自発的に掛け金を支払って年金額を増 新しい大学院課程である「持続可能なモビリティ」は、パーソ やし、定年後にさらに高額の企業年金を受 ナルモビリティを長期にわたり守っていくというフォルクスワ け取ることもできるのです。 ーゲン グループの戦略の方向性に深い関わりがあります。この 修士課程では、持続可能性が社会において大きな意味を持つ、 従業員とともにあるフォルクスワーゲ 未来に向けた目標であるということを考え、サービスとしての ンの現在と未来 モビリティについて理解を深めることを目的としています。詳 フォルクスワーゲンにおける管理職、従業 しい情報は下記ウェブサイトをご覧ください。 員協議会、そして労働組合の三者の関係は、 www.autouni.de 以前から協力の精神に基づいています。私 たちはもともと協調的な対立解決方法とし て機能していた協力を、現在と未来のフォ 従業員から共同経営者へ ルクスワーゲン像を共に描く仕組みにまで フォルクスワーゲンは従業員が自分の会社に一体感を抱くこと 発展させました。革新的なアイディアは協 ができるよう、従業員の立場からも会社の発展に積極的に参加 力をもってしか実現できません。そのため、 することを奨励し、さまざまな方法を数多く採用しています。 こうしたアプローチが会社のこれからの発 展の礎となるのです。従業員の協議会が極 フォルクスワーゲン グループは全世界の事業所にアイディアマ めて早い段階からさまざまな立案プロセス ネージメントシステムを取り入れ、従業員の創造力と知識を育 に参加すれば、衝突を未然に防ぐことがで んできました。これまでに、このプログラムはすばらしい成功 きます。フォルクスワーゲンの未来図を描 を収めています。2002 年だけでも、従業員が提案した改善に くための戦略は、こうして形作られるので よって、フォルクスワーゲンではおよそ 1 億 2,600 万ユーロの す。ドイツでの成功を踏まえて、フォルク コストが削減されました。こうしてもたらされた利益は会社だ スワーゲン グループ全体の国際的な労使 けでなく従業員にも還元されます。改善案に対して支払われた 関係にもこうしたアプローチが採用されま ボーナスは合計 2,300 万ユーロを上回ります。 した。2 年間の試験段階を経て、1992 年 には欧州従業員協議会の合意が締結されま フォルクスワーゲンのストックオプションプランもまた、従業 した。1996 年に欧州委員会(EC)で同 員が会社の成功に参加するもうひとつの方法です。1999 年以 様の指令が制定されるよりもかなり前の話 降、フォルクスワーゲンの全従業員に自社株の購入権が与えら です。 れ、従業員はシェアホルダーバリューの上昇によって直接利益 を享受できるようになりました。結果的に、従業員は仕事を通 じてこうしたシェアホルダーバリューの上昇に自ら大きく貢献 しているのです。さらにフォルクスワーゲンは毎年、利益還元 のためのボーナスも支払っています。 96 97 3 社会的責任 社会的利益 フォルクスワーゲン拠点における 最低限の社会的基準 2002 年 6 月、取締役会、世界従業員協議 会、そして国際金属産業労働組合連合 (IMF)の最終合意によって、すでにフォル クスワーゲン グループの現場で実践されて いた事柄が正式の文書により規定されまし た。「社会的権利および労使関係に関する 宣言」は、フォルクスワーゲン グループ世 界従業員協議会に代表者を送り込んでいる エムデンで開催された世界従業員協議会会議(2003 年 6 月) すべての国と地域における最低限の社会的 基準と待遇の平等を保証しています。この 1999 年 5 月、フォルクスワーゲンは自動車業界で初めてグルー 宣言は組織活動の自由と差別の防止を保証 プ全体を包括する世界従業員協議会を設立しました。この協議会 するだけでなく、児童労働やあらゆる強制 は少なくとも年に 1 度、取締役会と人事管理担当者の間で会議を 労働を禁じています。さらには補償、労働 開き、グループの重要課題についての協議を行っています。世界 時間、そして職場の安全・衛生についての 従業員協議会は世界中のフォルクスワーゲン グループ事業所に勤 規定も盛り込まれています。これらは国際 務する従業員の代表者と労働組合員で構成されています。 労働機関(ILO)の核をなす労働基準に基 づいています。 FORMARE プロジェクト(レセンデ工場) FORMARE(フォルマ レ:ポルトガル語で この宣言は、世界従業員協議会の年次会議 で必ず取り上げられる議題となっていま す。フォルクスワーゲンは、こうした議会 『研修すること』の意) を設置することで、世界全体で自社が果た とは、ブラジルのレセ さなければならない社会的責任を文書化し ンデ工場で実施されて 監視している数少ない多国籍企業のひとつ いるプロジェクトの名 称です。ここではトラ です。 ックとバスの生産工場も積極的に役割を果たしています。プロジ ェクトの目的は、社会的に弱い立場にある家庭の子供や若者が仕 事をスタートする上での足がかりをつかめるよう支援することに あります。毎年このプロジェクトの一環としてフォルクスワーゲ ンの従業員が 17 歳の若者 14 人に 12 カ月間の研修を施していま す。このボランティア人員はそれぞれ毎週 1 時間半の授業を実施 「グローバルコンパクト」のパートナ ーとしてのフォルクスワーゲン 1999 年 1 月、コフィー アナン国連事務 総長が多国籍企業に対して、環境と社会に し、環境保護、自動化、コミュニケーション、英語、製図、そし 配慮したグローバル化への取り組みの強化 て組み立て技術などの分野について講義を行います。生徒たちに を唱えたことから「グローバルコンパクト」 は「コンソルシオ モデュラル フォルクスワーゲン レセンデ」か が誕生しました。 ら日々の食事、給与、送迎サービス、歯科治療、制服、社会保障、 学習教材などが提供されます。現在までにこのプロジェクトに参 加した若者の 80%以上が研修終了直後に就職を果たし、そのほ アナン事務総長の提唱するイニシアチブ とんどがフォルクスワーゲンに雇用されました。 は、企業に自発的に国際基準を導入しても らうという試みです。 人材あっての企業 「トゥ・サラリオ・ソリダリオ」(パンプローナ工場) 社会的責任 未来のための 1 時間 「未来のための 1 時間」は、フォルクスワ フォルクスワーゲン ナ バーラの従業員が始め たキャンペーンは、た ーゲン グループのグループ労働協議会が 1999 年末にスタートした活動です。フォ とえそれが小さな行動 ルクスワーゲンの従業員はストリートチル でも大きな変化をもた ドレンを救うために最低 1 時間分の賃金を らすことができるとい 寄付しています。これは世界各地のフォル うことを証明してくれ ました。1998 年、「トゥ・サラリオ・ソリダリオ(あなたとの クスワーゲン生産拠点で行われている救済 連帯のための給料)」という名の団体が設立されました。その背景 プログラムを支援するものです。これまで にある基本的な考え方は極めて明快です。任意でこの団体に加盟 に集められた寄付金はおよそ 380 万ユー したフォルクスワーゲン ナバーラの従業員は、1 日分の給与に相 ロにのぼります。また、メキシコとブラジ 当する金額を寄付します。集まった寄付金は、例えば治療のため にモーリタニアからパンプローナの病院に 2 人の子どもを飛行機 で搬送するなど、慈善目的に使用されます。それほど大掛かりな ルのフォルクスワーゲン従業員もこのイニ シアチブに参加しています。このほかにも 運動には思えないかもしれませんが、2003 年中ごろまでに、追 2003 年 7 月からは自発的な活動として、 加の寄付金を含めて、総額 11 万 6,000 ユーロにもなります。世 管理職とスタッフが毎月給与明細の 1 ユー 界各地の 15 の慈善プロジェクトにその寄付金が活かされました。 ロ未満の小銭を貧困のなかに暮らす子供た このキャンペーンの参加従業員の数は 1998 年には 271 人でし たが、2003 年には 589 人に増えており、従業員全体の 12%以 上となっています。 ちのために寄付しています。この寄付金は 主として、この活動のパートナーである児 童救済団体 terre des hommes(人間の大 地)とフォルクスワーゲンが共同で選んだ 6 つのプロジェクトへの長期的資金援助に充 てられます。プエブラ、サンパウロ、およ 関連する国際基準は下記のとおりです。 びユイテンヘーグなどの生産拠点では、子 • 世界人権宣言(1948 年) 供たちの自立をサポートするという方針に • 労働の基本原則および権利に関する ILO 宣言(1998 年) 重点がおかれています。こうした子供たち • 環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言およびアジェンダ や若者には食事や宿泊施設のほか、よりよ 21(1992 年) い将来に向けチャンスをつかめるよう、教 育を受けるための援助が行われています。 グローバルコンパクトは人権、労働基準、および環境保護に関 する 9 原則に基づいています(13 ページ参照)。フォルクスワ 障害者の社会参加 ーゲンはグローバルコンパクトの原則を支持し、世界の最大手 ストリートチルドレンと同様に、障害者も の自動車メーカーのひとつとして、それぞれの基準を確実に遵 社会的な不利益を被ることが珍しくありま 守するよう努力しています。詳しい情報は、フォルクスワーゲ せん。しかし障害者は、適切な雇用の機会 ンが制作したグローバルコンパクトについてのパンフレットに があればバリューチェーンの中で貴重な役 記載されています。 割を果たすことができます。 このパンフレットは www.unglobalcompact.org および下記ウェ フォルクスワーゲンでは、長年にわたり障 ブサイトで入手することができます。 害者も作業プロセスに参加してきました。 www.mobility-and-sustainability.com 2002 年末の時点では、全従業員のうち重 度の障害者の占める割合は 6%にのぼって います。また障害者の施設と契約を結ぶこ とで、雇用の安定をはかっています。 98 99 3 社会的責任 人材育成 2002 年だけでも、こうした契約で発注された仕事は 1,200 万 ユーロに相当します。 2003 年、従業員協議会と取締役会は、フォルクスワーゲンで 働く障害者の労働参加条件の改善に関する協定を結びました。 重度障害者に適切で能力の活かせる雇用の機会を提供するため です。これにより、障害者にも同等の評価、待遇が保障されま す。もちろん各人に必要なケアも充分に考慮されています。フ ォルクスワーゲンでは、営利・非営利の団体や機関と緊密に協力 し、体の不自由な従業員それぞれの能力や障害の程度に合わせ て職場が確実に対応できるようになりました。 さらにフォルクスワーゲンは、欧州委員会のパートナー企業と して「2003 年欧州障害者年(EYPD)」キャンペーンにも参 加しています。この取り組みは、障害者のニーズに対して社会 が注意を払い、平等な待遇を促進することを目的としています。 こうした目的を社会に呼びかけるため「ピープルズ マーチ」と 呼ばれるキャンペーンがあります。これは EYPD のツアーバス でがすべての EU 加盟国を回り、各地で活動を紹介するもので、 フォルクスワーゲンもこのキャンペーンに賛同し、2003 年秋 にはウォルフスブルグにこのツアーバスを招きました。 Work2Work プログラムで働く従業員 Work2Work(ワーク・トゥ・ワーク) フォルクスワーゲンは、障害を負った結果それまで担ってきた 女性の昇進・雇用機会促進 業務を遂行できなくなった従業員にも雇用を保証しています。 女性はこれまであらゆる分野でその実力を Work2Work は、ウォルフスブルグ本社で働く障害者がバリュ 発揮し、成功を収めてきました。それにも ーチェーンの一翼を担い続けるためのプログラムです。 かかわらず、ほとんどの多国籍企業におい て経営トップに占める女性の数がいまだに 比較的少ないことは驚くべき事実です。女 性の活用促進がフォルクスワーゲンでは大 変重視されており、当社の人事政策上の基 本でもあります。 フォルクスワーゲンがグループ従業員協議 会と共に設立した委員会では、女性の権利 を代表する責任者と、現場の女性リーダー このプログラムは社内の職業紹介所のような機能を持ち、それ が中心になって、全管理職における女性の ぞれの障害に応じ、能力を活かせる仕事を提供しています。現 占める割合を増大させるための活動をして 在ウォルフスブルグ本社で Work2Work プログラムに従って勤 います。具体的には、メンター制度、昇進 務している従業員は約 600 人になりますが、そのうちの半数は セミナー、そして産休後の復職プログラム 重度障害を持っています。 などが実施されています。 人材あっての企業 社会的責任 フォルクスワーゲンで行われる健康管理シ ステムは単に労働災害や職業病を予防する ことにとどまりません。仕事の充実感を保 証し、能力を向上させることまでも包括し ています。 このシステムはモジュール構造になってい ます。「医療アドバイスとサポート」「ワー クプレイス・デザイン」そして「情報とコ ミュニケーション」といった基本的なモジ ュールのほかに、自己責任も重要な課題で す。ここでは、全従業員が自ら健康に責任 を持つという原則が基本となっています。 健康管理の目的 • 健康の維持、増進 • 能力の活用、開発 • 出勤率の向上、安定 • 品質の向上 • 顧客との最良な関係構築 • 業績向上 国際的にもフォルクスワーゲンは健康管理 また、若い女性に技術職に興味を持ってもらえるよう、定期的 の責任を負っています。例えばブラジルや に情報イベントを開催しています。特に女子学生を対象とした 南アフリカなど、エイズ感染率の深刻な 「ガールズデー」は、これまで男性の仕事とされていた分野を紹 国々においてはエイズ撲滅プログラムを開 介することで、視野を広げてもらうことを目的としたイベント 始しました。南アフリカのユイテンヘーグ です。2003 年だけでもドイツ国内で 11 歳から 16 歳の学生 工場に勤務する感染者およびその家族には 6,000 人がこのイベントに参加しました。 医療サポート、外来/往診診療、そしてソ ーシャルワーカー、心理学者、栄養士など 健康管理 健康の管理と増進は企業の社会的責任であり、経済的にも必須 であるとフォルクスワーゲンは考えています。当社の経営規範 には、従業員の健康を守り増進させて初めて、高い業績が期待 できると明記されています。従ってフォルクスワーゲンの健康 管理システムが目指すところは、従業員のやる気を起こし、実 力を発揮させることにあります。 の支援といった便宜がはかられています (69 ページ参照)。 100 101 4 ファイナンス コーポレートガバナンス 舞台裏を覗く 経営の透明性向上を目指す 「透明性」は 2000 年の企業経営のキーワードとなりました。その背景には金融危機 や経営破綻が企業、銀行、さらには企業監査のプロをも動揺させ、投資家から寄せら れている信頼を揺るがしたことがあります。企業にとって事業の透明性は持続可能な 発展に必要不可欠な条件です。透明性があってこそ、ビジネスパートナーとの対話が より価値のあるものになります。同時に、金融市場が持続可能な発展の推進にあたっ て果たしている役割が議論の対象となっています。それに従って、「ソーシャリー・ レスポンシブル・インベストメント(社会的に責任のある投資)」の重要性が確実に 高まりつつあります。 コーポレートガバナンス 「コーポレートガバナンス(企業統治)」とは企業を経営・監督するうえでの責任ある 姿勢を意味し、その目的は長期にわたるシェアホルダーバリューの増大です。コーポ レートガバナンスが資本市場において確実に重要性を高めつつあることを受けて、ド 舞台裏を覗く ファイナンス Dr. アストリッド ツヴィック 「アリアンツにとって持続可能性とは、競争力を維持しつつ、価 値ある未来に貢献することを意味します。それが、私たちが環 境と社会への強い責任感を持ちながら長期的なビジネス上の目 標を追求している理由なのです。当社はフォルクスワーゲンと 手を携えて、ヨーロピアン ビジネススクールにおけるリサーチ プロジェクト『金融市場における透明性』に取り組んでいます。 私たちの共通の目標は、持続可能性の実績を評価する能力を向 上させ、プロセスの透明性をさらに高めることにあります。対 話を進めながら、持続可能な発展に向けてのそれぞれの役割と 責任を探求し、そのなかでさまざまな立場の限界を可能性と共 にさぐりたいと考えているのです」 Dr. アストリッド ツヴィック(40)はアリアンツグループ・サステイナビリ ティオフィス(ドイツ・ミュンヘン近郊イズマニンク)の所長である。 102 103 イツ政府のドイツ・コーポレートガバナンス・コーデックス委 ある企業経営の基準として国内外で認めら 員会は企業に対してひとつのコーデックス(規格基準)を作成、 れた数多くの事項が、推奨や提案という形 発表しました。ここでは、これまで批判を受けてきたドイツに 式で詳しく記載されています。2002 年に おけるコーポレートガバナンスの大きな問題点をすべて取り上 は「ドイツ株式法」第 161 条に基づき、 げています。 コーデックスに記された推奨事項をどれだ け遵守しているかを公表し、まだ遵守でき • 株主利益に対する配慮の欠如 ていない事項を列挙することが上場企業に • 取締役会と監査役会の二重構造体系 初めて義務付けられました。この政策は、 • ドイツ特有の企業経営の不透明性 ドイツ国内外の投資家、顧客、従業員、一 • ドイツ特有の監査役会の非独立性 般市民に対し、ドイツの上場企業における • 年度末監査の独立性の不徹底 経営・監督の信頼性を高めることを狙いと しています。 このコーデックスではドイツ上場企業の経営や監督において重 要となる法的要件が定められています。さらに、適正かつ責任 4 ファイナンス コーポレートガバナンス フォルクスワーゲンの取締役会はこのコーデックスを細かく分 て製品とサービスという点で国内経済に貢 析しました。幸いにも、これまでフォルクスワーゲンで実践さ 献したことが分かります。フォルクスワー れてきた活動の大部分は、コーデックスで定められた推奨や提 ゲン グループが創出した付加価値の詳細 案に準拠しています。例えば取締役会と監査役会は、コーデッ については報告書の第 5 章に記載してい クスが定める以上の充分な情報伝達を行ってきました。また何 ます。 年も前から取締役会と監査役会を管理する社内規範が機能して きました。実際に取締役会に適用されている社内規範には、監 業界トップクラスの持続可能性指数 査役会による承認を義務付けた項目の詳細なリストが記載され ダウジョーンズ・サステイナビリティ・ワ ています。 ールド・インデックス(DJSI World)の 設立以来、フォルクスワーゲンはその構成 企業に選ばれています。またスイスの企業 格付け機関 SAM も常にフォルクスワーゲ ンを自動車業界でトップクラスに位置付け ています。DJSI は SAM グループが定め る基準をクリアした企業の業績を評価した 初のグローバルインデックスです。評価基 準は技術面でのリーダーシップ、社会・環 境面での適合性、そして生産性などですが、 2003 年フォルクスワーゲン年次株主総会(於:ハンブルク) フォルクスワーゲンがアナリストから特に コーデックスの遵守の一環として、フォルクスワーゲンは今後 インターネットを通じて企業情報をより積極的に公表していく つもりです。すでにファイナンス関連の主要な報告書や年次株 主総会の情報は当社の投資家向けウェブサイトで見られます。 また株主は年次株主総会の議決権行使も利用できます。詳しい 情報は下記ウェブサイトをご覧ください。 www.volkswagen-ir.com 2002 年 11 月 15 日、フォルクスワーゲンの取締役会と監査 高く評価されている点は、その燃料戦略と 役会はドイツ政府委員会発行「ドイツ・コーポレートガバナン 労働市場に関する革新的な考え方にありま ス・コーデックス」の推奨事項の遵守を宣言しました。さらに す。こうした総合的な分析や、DJSI と従 2003 年 4 月 24 日に開催された年次株主総会では、フォルク 来のダウジョーンズ・インデックスとの比 スワーゲン AG の監査役会役員および会長の報酬に関する条項 較を行うと、持続可能性を目指した経営が を追加することが議決されました。 効果的な戦略であることがわかります。 付加価値の追求 さらに、フォルクスワーゲンは、英国のイ 付加価値計算書は、報告期間におけるある企業が生み出した付 ンデックス FTSE4Good にもその創設以 加価値を国内総生産(GDP)に対する貢献として示します。こ 来取り上げられており、またミュンヘンを の数年間の当社の年次報告書を見ると、当社が自助努力によっ 拠点とした oekom(エーコム社)や CSR 単に金銭の問題ではない ファイナンス ヨーロッパなどの独立機関からも平均以上の評価を得ています。 によれば、持続可能性への取り組みと株価 また、社会的責任や持続可能性を投資尺度とした多くのファン との間に長期的な関連性があると回答した ドにも、フォルクスワーゲンは含まれています。こうしたファ 企業は全体の 75%を超えています。フォ ンドは市場ではまだ目立った存在ではありませんが、人気は着 ルクスワーゲンも自社の長期的な企業戦略 実に高まってきています。 と金融市場の持続可能性目標とは良い形で 関連性があることを認識しています。当社 しかしフォルクスワーゲンは単にこうした国際的な持続可能性 の持続可能性に対して平均を大きく上回る 評価にその名前を登場させるだけではなく、企業の持続可能性 評価が与えられたということは、シェアホ への取り組み実績とその株価との関連性を調査するリサーチプ ルダーバリューとはステークホルダーバリ ロジェクトにも参加しています。ヨーロピアン・ビジネススク ューの観点と相反するものではなく、かえ ールの持続可能なビジネス研究機関による「金融市場における ってその観点を補強するものであることを 透明性」などのプロジェクトはその一例です。 示しています。企業の付加価値向上は、世 www.susta inable-investment.org 界中のあらゆるステークホルダーへの配慮 この研究機関がドイツ株式研究機関と実施した最新の共同調査 のうえに成り立っているのです。 104 105 コストは問題ではない 経済的付加価値 90 年代初頭にはこうした姿勢に根本的な かつて環境保護はコストのかかる道楽だと考えられていました。 変化が起こりました。環境保護は必ずしも そのため、企業が積極的に環境イニシアチブを実施するという コストのかかるものではないということが より、環境活動家や政治家の圧力があって初めて実施されるこ 企業にもわかってきたのです。環境効率と とが多かったのです。このようなイニシアチブはわずかに法的 いう概念によって、先進的企業の認識は改 責任を限定したり、長期の汚染に関連する問題を事前回避した められ、環境効率が高ければ実際に経済的 りする程度の目的で、予防手段として実施されていたに過ぎま な収益につながりうると考えるようになっ せん。 てきています。 EVA®* 算出 税引き後営業利益 価値の増加 税引き後営業利益 資本費用 価値の減少 資本費用 税引き後営業利益 資本費用 価値の増加 価値の維持 価値の減少 株主資本の全額と借入金のほかその他の 支出を上回る利益を得ている。 最低必要利益に達し、資本費用をまかなう だけの利益を得ている。 資本費用をまかなうだけの利益を得て いない。 * スターン スチュワート社の登録商標 4 ファイナンス 経済的付加価値 フォルクスワーゲンは、価値に基づく指標「経済的付加価値 ® 例えば新たな総合塗装システムの開発に先 (EVA )」を用いて業績を評価しています。これを用いてグル がけてマテリアルフロー分析と EVA® を ープ各社や自動車部門の関連企業の業績を包括的にも製品・プ 実施した場合、ポリプロピレン(PP)製 ロジェクト毎にも評価し、収益目標と投下資本のバランスがと のパネル材を代用することによってコスト れているか見るのです。プロセス、プロジェクト、あるいは製 のかかる PVC 製アンダーシーリングをや 品は導入前後にわたりチェックされ、それらが長期にわたって めることができます。すると、排出ガス量 持続可能な方法で企業価値の維持、向上に貢献しているかが評 とエネルギー消費量は大きく削減され 価されます。投資や業務プロセスの改善によって増大した利益 (107 ページの上の図を参照)、同時に EU が、そのために発生した資本投下額を上回って初めて付加価値 廃車指令が求めている環境に適合した使用 が創出されるのです。 済み自動車の廃棄も達成できるという具合 です。塗装工場から PVC 製アンダーシー もう一つ、環境効率の算出に決定的ともいえる大きな貢献をし リングをなくし PP 製パネルを取り入れる たのがマテリアルフロー管理です。フォルクスワーゲンではグ 作業プロセスの変更によって、環境負荷が ループ内部に投入されている生産技術の全体図把握にこの分析 軽減されると同時に、生産にかかる時間も が使用されています。この分析で複雑に絡み合う材料の因果関 短縮されます。これにより人件費も下がり、 係が解明され、こうした関係をどのようにすれば最適化できる 使わない塗装用ロボットを他の場所で活用 かが明らかになります。マテリアルフロー分析は自動車生産工 することができるようになります。経済的 程を環境面から評価するための基盤となっています。 な面からも、プロセスに必要な設備費が減 少し、資本費用が削減されたことを意味し ® EVA とマテリアルフロー管理という 2 種類の方法を組み合わ ます。EVA® に基づいて取り組みを経済的 せることによって、フォルクスワーゲンでは意思決定プロセス に分析する際には、コストの影響と投下資 に経済的指標と環境的指標を取り入れることに成功していま 本の両方が考慮されます。価値レバレッジ す。新製品が計画されると環境への負荷を軽減するための取り を示すツリー図(107 ページの下の図を 組みが始動しますが、同時にその取り組みの経済効果について 参照)は PP 製パネルを使用することによ も初めて評価できるようになりました。 って得られた経済効果をはっきりと示して います。 PP 製パネル使用による車両ライフサイクル全体の変化分析(コンポーネント毎の差の考察) 環境影響の変化を%値で示す 環境指標 −0.1% エネルギー −0.1% 温室効果 −3.2% 廃棄物 排出ガス量 資料:フォルクスワーゲン AG 0.069% 単に金銭の問題ではない ファイナンス 導入したアンダーボディ塗装コンセプトに基づく個々の施策の た分析では、資本投資の有効性だけでなく、 結果は、この投資が正しい判断であったことを証明するもので 環境への影響が少ない新技術の導入も重視 なくてはなりません。それはフォルクスワーゲンが環境に配慮 されます。 しながらも市場でこれからも生き残っていくためです。こうし PP 製パネル使用による資源投下量と排出ガス量の削減 エネルギー (MJ) 60.3 28.3 排出ガス (m3) 4.7 廃棄物 (kg) 0.2 溶剤 (kg) 0.301 1.4 0.022 0.033 0.01 0.1 1 10 100 PVC製アンダーボディプロテクション 106 107 PP製組み立てパネル 資料:フォルクスワーゲン AG 価値レバレッジを示すツリー図による経済効果分析 税引き前 営業利益 価値レバレッジ: 売上高/費用 税引き後 営業利益 税金 EVA® 投下資本平均 資本費用 資本コスト (単位 %) 資料:フォルクスワーゲン AG 価値レバレッジ: 固定資産/運転資本 5 グループ 概要 フォルクスワーゲン グループ フォルクスワーゲン グループは自動車部門とファイナンシャルサービス部門の事業に力を注いでおり、バ リューチェーン全体にわたり自動車ビジネスを支える幅広いサービスを提供しています。 フォルクスワーゲン グループ 部門/区分 自動車部門 ファイナンシャルサービス部門 ビジネスライン フォルクスワーゲン ブランドグループ アウディ ブランドグループ 製品ライン/ビジネス 分野 VW 乗用車 アウディ 商用車 その他の会社 ファイナンシャル サービス 財務 サービス ディーラーと顧 客融資 ユーロップカー レンタルビジネス セアト リース シュコダ ランボルギーニ 保険 ベントレー フリートビジネス ブガッティ グループの部門別の報告には、販売台数、売上高、および営業利益を前年の値とともに記載しています。 売上高と営業利益についてはさらに透明性を高めるために、市場ごとに欧州/その他地域、北米、南米/ 南アフリカ、およびアジア・太平洋の各地域に分け、地域別の販売台数分析に基づいて記載しています。 ビジネスライン別の主な数値 (単位:販売台数= 1,000 台、売上高・営業利益= 100 万ユーロ) 販売台数 * 2001 売上高 2002 営業利益 2001 2002 2001 2002 フォルクスワーゲン ブランドグループ 3,606 3,539 49,370 46,711 3,004 2,463 アウディ ブランドグループ 1,205 1,191 25,044 25,439 1,456 1,359 296 267 5,029 4,884 340 156 8,574 9,459 552 721 523 455 72 62 88,540 86,948 5,424 4,761 商用車 ファイナンシャルサービス/ユーロップカー その他の会社 ** フォルクスワーゲン グループ全体 5,107 4,996 * 個々の数値は端数を四捨五入しているため、合算するとわずかに誤差が生じる可能性がある。 ** 主にコーディネーションセンター フォルクスワーゲン S.A.、フォルクスワーゲン インターナショナルファイナンス N.V.、 フォルクスワーゲン インヴェストメント Ltd.、フォルクスワーゲン トランスポート GmbH & Co. OHQ、フォルクスワーゲ ン クラフトヴェルク GmbH、ヴォーテックス GmbH、フォルクスワーゲン インモビーリエン、ゲダス・グループ、フォル クスワーゲンフェルズィッヒャルングスフェルミットルンク GmbH、フォルクスワーゲン ベタイリグンゲス ゲゼルシャフト mbH 資料:フォルクスワーゲン AG 環境戦略 グループ 市場別の主な数値 (単位: 100 万ユーロ) 売上高 営業利益 2001 2002 2001 2002 欧州/その他地域 60,346 60,239 3,398 3,365 北米 17,832 17,277 1,664 1,287 南米/南アフリカ 5,626 4,284 -45 -359 アジア・太平洋 * 4,736 5,148 407 469 88,540 86,948 5,424 4,761 フォルクスワーゲン グループ全体 * * 中国の合弁企業は同等の出資比率でで成り立っているため、その売上高と営業利益についてはグ ループ全体およびアジア・太平洋地域に含めない。これらの中国合弁企業は営業利益 5 億 5,000 万(比例配分 5 億 2,100 万)ユーロを達成した。 資料:フォルクスワーゲン AG フォルクスワーゲン グループと各ブランドについての詳しい情 報は、最新の年次報告書および下記のウェブサイトでご覧にな れます。 www.volkswagen-ir.com 108 109 環境戦略 フォルクスワーゲン グループは、特に環境面で自動車の新しい の解決策を捜し求めてもあまり意味があり ベンチマークを確立したいと強く願っています。「3 リッターカ ません。このようなアプローチでは、ある ー」および「1 リッターカー」はこうした努力が最も顕著に表 領域での前進が別の領域での進歩を遅らせ れた例です。フォルクスワーゲンはこれからも主導的な役割を るという恐れもあります。重要なのはすべ 果たし続けるために、活動の指針となる戦略的な基本理念に沿 ての段階で環境への影響を最小限に抑える った努力を続けてまいります。 ことなのです。これは原材料の選択から生 産プロセス、使用、そして廃棄に至るまで 一丸となって の自動車のトータルライフにあてはまりま 新しいベンチマーク確立のためには新しいアプローチが必要で す。長年にわたってフォルクスワーゲン す。「エンドオブパイプ」とも呼ばれる対処療法的な環境保護に グループがライフサイクルアセスメント は限界があります。もちろん今後も廃水処理工場や触媒コンバ (33 ページ参照)を実施してきた理由は ーターは必要ですが、私たちが目指すゴールは環境への負荷を ここにあります。このライフサイクルアセ あらかじめかけないようにすることなのです。それには始めか スメントは単に自動車や特定のコンポーネ ら優れた解決法を見つけなければなりません。フォルクスワー ントだけでなく、燃料も対象としています。 ゲンにおいてその課題に取り組むのは環境部門だけではありま フォルクスワーゲン グループのメーカー せん。すべての部門、部署、そして従業員全員が一丸となって としての責任は、材料が工場に納入される 取り組んでいます。 前から始まり、自動車が出荷された後もず っと続きます。例えば私たちはユーザー向 自動車のライフサイクル全体を考慮 けに、燃料消費量を最大 20%削減するた フォルクスワーゲンでは自動車のライフサイクルのあらゆる段 めの情報や研修コースを提供しています 階に配慮しています。自動車のライフサイクルのある段階だけ (89 ページ参照)。政治家や社会全体にも 5 グループ 戦略 製品のライフサイクル ―― 自動車 埋め立て または熱回収 供給産業 生産 ディーラー 顧客 原材料産業 破砕 最終所有者 パーツ販売 およびリビルト 解体センター ロジスティックス ディーラー 資料:フォルクスワーゲン AG 環境保護に対して総合的なアプローチをとることが期待されま 任を生み出します。ある地域では成功して す。自動車から排出される CO2 量の数値だけをみて、新しい燃 も、それが自動的に別の地域でも正しい解 料や改良された駆動システムの良し悪しを判断するのでは不十 決策になるというわけではありません。例 分なのです(44 ページ参照) 。 えば西欧の農村地域が直面している状況 は、産業新興国の大都市の状況とは大きく 市場に見合った解決策 異なるでしょう。 顧客はフォルクスワーゲンの環境戦略においてもっとも大切な 存在です。なぜならせっかくの「エコカー」でも購入者がいな 長期的展望 くては私たちにとっても環境にとっても役に立たないからです。 環境保護は短期間で片付く問題ではなく、 環境保護への社会的要請や環境意識の宣言があっても、それだ 持続的な取り組みを必要としています。最 けでは市場を創出できないことは一般に広く認識されるように 近では環境問題が新聞の見出しに登場する なってきました。3 リッターカー(ルポ 3L TDI およびアウデ 機会がめっきり減ってしまいましたが、先 ィ A2 1.2 TDI)に対する私たちの慎重な販売計画台数も、残 進国で自動車からの排ガス量が減るなどの 念ながらその現実を裏付けています。しかし私たちは課題に正 成功例があるとはいえ、取り組むべき課題 面から立ち向かい、最善を尽くして環境に配慮した魅力的な製 はまだ山積しています。 品を提供できるよう努力を重ねています。そのプロセスにおい て、フォルクスワーゲン グループは専門技術、特に TDI エンジ 持続可能性をめぐって ンと FSI エンジンの技術に絶対の自信をもって臨んでいます。 その場限りの環境対策を講じても、経済や かつては環境保護が自己犠牲や将来への不安と結び付けられ、 社会への影響を充分に考慮しなければ致命 自動車業界だけでなくさまざまな業界で多くの顧客が離れてい 的な失敗となってしまいます。フォルクス ってしまいました。しかし環境を保護することは楽しいことに ワーゲンがさまざまな分野の持続可能性に もなり得るのです。 取り組んでいるのはそのためです(6 ペー ジ参照)。WBCSD の持続可能なモビリテ 地域ごとの対策を ィプロジェクトの一環として、モビリティ フォルクスワーゲン グループのように世界を舞台に活躍する企 と持続可能性というテーマで、私たちは 業は、さまざまな条件に合わせて環境対策に取り組んでいかな 2030 年に向けてすでに動き出しています ければなりません。環境保護は国や地域ごとに異なる課題や責 (87 ページ参照)。 環境戦略 グループ 新しい塗装工場(右)が併設されたムラダボレスラフのシュコダ工場。 フォルクスワーゲン グループの生産ネットワーク を考慮しています。なかでも重要なコーデ フォルクスワーゲンでは、グループ全体にわたる環境保護活動 ックスは、OECD の多国籍企業ガイドラ の相乗効果を活用する一方で、会社のビジョンに沿ってそれぞ イン(2000 年)、国連グローバルコンパ れのブランド独自の環境問題への解決策を見出そうと努力して クト(2002 年)、ICC(国際商業会議所) います。 持 続 可 能 な 発 展 の カ ル タ ( 1 9 9 2 年 )、 フォルクスワーゲン グループのチェコブランド、シュコダを例 UNEP(国連環境計画)モビリティフォー にあげて、生産拠点独自の活動を見てみましょう。チェコ共和 ラム(2002 年)、そしてフォルクスワー 国が EU に加盟するかなり前から、クバシニとムラダ ボレスラ ゲングループの環境ポリシー(1995 年) フの新しい塗装工場を作るための認可取得の手続きはすでに最 および社会的権利および労使関係に関する も進んだ EU 基準に則ったものでした。この EU 基準には塗装プ 宣言(2002 年)です(第 1 章を参照)。 ロセスからの溶剤排出量に対する厳しい上限値がありますが、 持続可能性の達成に向けてのプロセスを上 シュコダで採用されているプロセスはこの基準値を大きく下回 手にまとめることは、ブランドグループ環 っています。さらに認可取得において、シュコダは大気への排 境委員会や環境担当グループタスクフォー 出ガスの量だけでなく環境全体への影響を最低限に抑えている スなどのブランドや部門を越えた運営グル ことが確認されました。こうした総合的なアプローチが、あら ープの仕事です(30 ページ参照) 。 ゆる分野において最適な環境保護を達成するのに役立つのです。 多種多様な環境問題に対し、フォルクスワ 私たちはグループ全体の活動を管理・監視するために多彩な手 ーゲンの各ブランドは解決のためそれぞれ 段を用いています。グループ統括環境関連タスクフォース 独自のアプローチをとっています。フォル (GTFE)は、部門間の情報交換やさまざまな取り組みを調整し クスワーゲン、アウディ、セアト、そして ています。さらには国際監査を実施したり、地域会議を開催し シュコダは自らの出版物で定期的に詳細情 て地方の状況とグループ全体の高い基準の両方を考慮に入れた 報をお届けしています。 解決策を策定しています。 持続可能性戦略に関する議論 フォルクスワーゲン グループの戦略設定は、社外で作成された ガイドラインのほか、社外のイニシアチブや組織、ガイドライ ンから大きな刺激を受けます。またそうした議論には自らの経 験を生かす努力もしています。持続可能性や世界経済全般の問 題は複雑化しているため、こうした戦略に関する議論によって、 持続可能な発展の達成に向けての目標を立てることができるの です。また同時に、人々がグローバル企業に求めていることも 明確になってきます。 戦略を立てるにあたっては、これまで通りさまざまなイニシア チブとの連携に努めるとともに、現在では複数のコーデックス 110 111 5 グループ 主要な指標 持続可能性インジケーター フォルクスワーゲン グループ生産拠点の環境データ の多くの工場では何年も前から、フォルク 今回のレポートでは初めてグループ全体の環境データも発表し スワーゲン グループ基準 98 000 に沿っ ます。各ブランドは責任をもって自らのデータ収集に当たって たデータ収集システムを採用してきまし います。国際監査の実施回数が増えたことと、従業員向け環境 た。しかし全世界のすべての生産工場から 保護研修や工場相互訪問の結果としてネットワーク内の従業員 有効なデータが入手できるようになったの の結びつきが強まったことにより、環境データ収集の必要性に は 2001 年になってからです。こうして 関する意識を高めることができました。基本的に、工場レベル 得られた数値から、フォルクスワーゲンブ でのデータ収集やデータの質については、各生産拠点の工場環 ランドは生産台数が多いために、資源消費 境責任者とそのチームが責任を負うことになっています。生産 量、排出ガス量、廃棄物量なども最大規模 拠点の環境データは工場環境責任者から各ブランドの環境責任 であることが明らかになっています。 者へ、さらにグループ本部の担当部署へと送られます。欧州内 取水量と排水量 2001 2002 14.08 2001 11.29 − − 2.31 1.83 2.25 1.43 2.78 1.82 14.10 9.89 35.51 26.27 12.98 2002 10.44 0.19 0.13 2.39 1.86 2.44 1.48 2.75 1.82 13.98 9.84 34.73 25.57 取水量(単位:100万m3/年) VW(欧州以外) アウディ ベントレー VW(欧州) シュコダ 合計* セアト 資料:フォルクスワーゲン AG 排水量(単位:100万m3/年) 持続可能性インジケーター グループ 産業廃棄物 41,721 2001 2001 33,136 − − 3,070 14,280 2,733 9,567 33,833 3,490 65,172 33,081 146,528 93,555 28,103 2002 2002 40,303 568 455 3,868 11,579 2,376 8,455 34,005 2,848 71,175 26,948 140,095 90,588 産業廃棄物(リサイクル用)(単位:t/年) VW(欧州以外)* アウディ ベントレー VW(欧州) シュコダ 合計* 産業廃棄物(廃棄用)(単位:t/年) 112 113 セアト 資料:フォルクスワーゲン AG 有害廃棄物 2001 2002 11,897 2001 12,659 − − 3,794 12,824 2,307 333 9,711 18,754 53,662 35,192 81,370 79,762 3,135 2002 16,831 297 474 3,193 11,054 1,955 664 8,630 19,907 49,693 34,583 66,605 83,039 有害廃棄物(リサイクル)(単位:t/年) VW(欧州以外)* アウディ ベントレー VW(欧州) シュコダ 合計* 有害廃棄物(廃棄処分)(単位:t/年) セアト * 廃棄物の分類法がまだ明確でないため、上海およびクリチバのデータは含んでいない。 資料:フォルクスワーゲン AG 5 グループ 主要な指標 揮発性有機化合物(VOC) 2001 2002 社内エネルギー生産による CO2 直接排出量 6,632 2001 397,110 − − 1,477 38,908 2,731 67,320 1,662 181,630 6,873 506,538 19,376 1,191,506 7,080 2002 395,608 54 4,180 1,489 44,718 2,471 70,899 1,564 176,855 6,222 510,354 1,202,614 18,881 CO2排出量(単位:t/年) VOC排出量(単位:t/年) VW(欧州以外) アウディ VW(欧州以外) アウディ ベントレー VW(欧州) ベントレー VW(欧州) シュコダ 合計 シュコダ 合計 セアト セアト 資料:フォルクスワーゲン AG 資料:フォルクスワーゲン AG 燃料総使用量およびエネルギー総消費量 2001 2002 1.65 2001 3.81 − − 0.20 1.09 0.20 0.85 0.86 2.04 2.62 7.82 5.53 15.61 1.65 2002 3.87 0.09 0.12 0.24 1.10 0.22 0.88 0.80 2.10 2.54 7.74 5.53 15.80 燃料使用量(単位:100万MWh/年) VW(欧州以外)* アウディ ベントレー VW(欧州) シュコダ 合計* セアト 資料:フォルクスワーゲン AG 総エネルギー消費量(単位:100万MWh/年) 持続可能性インジケーター グループ 認証取得工場 に 1 度は検査されます。監査を実施するこ 環境監査を実施するのは、フォルクスワーゲンのすべての生産 とで、環境プログラムで設定した目標の達 拠点における環境効率を継続的に向上していくためです。基準 成度が明らかになります。 への到達度は独立監査機関や認証機関によって少なくとも 3 年 フォルクスワーゲン工場 EMAS ブラウンシュヴァイク ISO14001 取得年 ISO14001 取得年 シュコダ ○ 1996 クバシニ ○ 2001 エムデン ○ 1995 ムラダボレスラフ ○ 2001 カッセル ○ 1998 ブルチラビ ○ 2001 ザルツギッター ○ 1996 ベントレー ウォルフスブルグ ○ 1997 クルー ○ 1999 ハノーバー ○ 2000 アウディ カッセル(VWK)* ○ 1998 インゴルシュタット ○ ○ 1997 ウォルフスブルグ(VWK)* ○ 1996 ネッカースウルム ○ 1995 ツヴィッカウ/モーゼル ○ 1996 ギュアー ○ 1999 ケムニッツ ○ 1999 コスワース ドレスデン 中期的に取得予定 ブリュッセル ○ ポズナン 2004 年取得予定 2002 EMAS 114 115 ノーサンプトン ○ ○ 2001 ウェリンボロー ○ ○ 2001 ウスター ○ ○ 2001 準備中 ○ 2003 ○ 2001 ポルコヴィッツェ ○ 2000 ノバイ マルティン ○ 2001 セアト ブラチスラバ ○ 2003 マルトレル ○ 1997 ギアボックス・デル・プラト パルメラ ○ 1998 プラト プエブラ ○ 2000 サン カルロス ○ 1997 レセンデ ○ 2001 タウバテ ○ 2001 コルドバ ○ 2000 長春 ○ 2002 上海 ○ 1997 ユイテンヘーグ ○ 2000 パンプローナ ○ アンシエッタ 準備中 クリチバ 準備中 パチェコ 準備中 *VWK =フォルクスワーゲン クラフトヴェルク GmbH 資料:フォルクスワーゲン AG 5 グループ 主要な指標 サービス工場での廃棄物管理 年に「サービス工場の廃棄物管理」プロジ ドイツでは循環型経済および廃棄物に関する法律(1996 年) ェクトを開始しました。そして今ではドイ によりメーカーや流通業者に製造物責任が課されることになり ツ国内の 99%を超えるサービス工場が当 ました。そのためフォルクスワーゲンは製品がディーラーに到 然の業務としてこのプロジェクトを採用し 着してからその寿命を終えて処分されるまで、環境に適合した ています。現在このシステムでは年間 廃棄物処理を顧客やディーラーに約束することを自らの課題と 47,000 トンを超える廃棄物を取り扱って とらえています。 いますが、この量は小さな町から発生する 家庭ごみの総量に相当します。 この課題をクリアするために、フォルクスワーゲンでは 1998 ドイツ国内のサービス工場における廃棄物取扱量(グループ全体) フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、シュコダ(2003 年予測値を含む) 226 1998 1999 2000 2002 615 3,398 2,638 7,794 9,711 12,874 16,647 23,532 30,371 4,259 2001 10,402 3,611 3,944 11,780 11,958 16,457 16,673 36,107 42,977 14,457 2003 15,800 3,841 3,850 12,622 12,700 16,561 16,600 47,481 48,950 取扱量(単位:t/年) 包装材料 自動車部品 廃液 取扱量合計 使用済みタイヤ 資料:フォルクスワーゲン AG 労働安全衛生 後も数多くの活動とプロジェクトによって 2002 年 6 月、フォルクスワーゲン AG 取締役会会長 Dr. ベル 継続的に推進されるでしょう。本レポート ント ピシェツリーダーと、フォルクスワーゲングループ世界従 で取り上げた例として「自己確認」プログ 業員協議会議長クラウス フォルカートは「社会的権利および労 ラムがありますが、このプログラムは、フ 使関係に関する宣言」に署名しました。この宣言により、労働 ォルクスワーゲンのドイツ国内工場で導入 安全衛生に関する問題は、世界中のフォルクスワーゲン グルー されて成功を収めたことから世界的な注目 プの生産拠点において、より優先順位の高い課題となりました。 を集めました(75 ページ参照) 。 工場における労働の安全性の問題とともに、労働安全衛生は今 持続可能性インジケーター グループ 労働安全衛生の問題に関し、ドイツの自動車メーカーは経験を持 評価を受けてきました。私たちは、グルー ち寄り意見交換の場を設けています。そこでは専門的なテーマに プの全生産拠点で一様に高い水準を達成す ついて話し合われるだけでなく、報告義務のある労働災害の発生 ることを目標としています。こうした取り 件数に基づいて算出される、事故の頻度指標の比較も行われてい 組みは、技術面や個人レベルでのノウハウ ます。ここでもフォルクスワーゲンの取り組みは長年平均以上の の伝達によって支えられています。 フォルクスワーゲン AG* およびアウディ AG** の事故頻度比較 (ドイツ自動車メーカーの平均値も併記) 1995 13.1 12.5 17.3 1996 10.4 9.6 13.3 1997 10.2 7.6 116 117 11.8 1998 8.7 7.0 10.8 1999 7.3 6.0 9.6 2000 6.1 5.6 8.3 2001 6.3 4.6 8.3 2002 5.1 4.5 7.8 事故頻度指標 VW アウディ ドイツ自動車メーカーの平均値 報告が必要な事故の発生件数× 100 万 事故頻度指数= 労働時間数 * フォルクスワーゲン AG(ウォルフスブルグ、ハノーバー、ブラウンシュヴァイク、 カッセル、エムデン、およびザルツギッター工場) ** アウディ AG(インゴルシュタットおよびネッカースウルム工場) 資料:フォルクスワーゲン AG 5 グループ 主要な指標 付加価値 付加価値会計は、あらゆる商業会計プロセスの重要な構成要素 このように数値を細かく分析することによ となっています。付加価値会計によって、企業が生み出した付 って、私たちは特に社会的責任や財務の面 加価値を特定し数字で表すことができるだけでなく、ある期間 での持続可能性についての透明性を大きく における価値の内訳を知ることができます。 向上させています。フォルクスワーゲン グ ループは 2002 年、合計 197 億 5,700 万 以下の「資金の財源」の欄は、売上高とその他の収入との合計 ユーロ、従業員 1 人あたり 66,000 ユーロ から支出を差し引いた金額を示しています。結果として算出さ の付加価値を生み出しました。 れた付加価値は企業のステークホルダーである、従業員、株主、 債権者、および国に割り当てられます。 フォルクスワーゲン グループの付加価値 資金の財源(単位: 100 万ユーロ) 2001 売上高 88,540 86,948 8,568 8,605 − 76,774 − 75,796 20,334 19,757 その他の収入 支出 付加価値 資金の配分(単位: 100 万ユーロ) 2002 2001 % 2002 % 496 2.4 505 2.5 13,213 65.0 13,313 67.4 国(税金、徴収) 1,505 7.4 1,573 8.0 債権者(利息) 2,690 13.2 2,275 11.5 会社(準備金) 2,430 12.0 2,091 10.6 20,334 100.0 19,757 100 株主(配当金) 従業員(賃金、給料、付加給付金) 付加価値合計 資料:フォルクスワーゲン AG フォルクスワーゲン グループ従業員数(合計) 1994* 242,200 2001 322,000 期末値 * 週 4 日労働制を導入 資料:フォルクスワーゲン AG 2002 324,900 持続可能性インジケーター グループ 国別フォルクスワーゲン グループ従業員数(生産工場) (単位:千人) 1994* 2001 2002 140.2 156.6 157.0 ブラジル 23.9 25.6 24.6 スペイン 19.8 21.3 22.6 チェコ共和国 16.0 22.5 22.3 16.8 18.8 14.0 16.0 14.1 スロバキア共和国 0.8 7.4 8.9 ベルギー 5.8 6.0 5.8 南アフリカ 7.3 5.3 5.0 ハンガリー 0.2 4.8 4.8 ポーランド 3.8 4.2 ポルトガル 3.5 3.3 イギリス 3.4 3.3 3.2 2.5 0.5 0.6 296.7 297.8 ドイツ 中国 メキシコ 3.9 アルゼンチン イタリア 231.9 合計 期末値 * 週 4 日労働制を導入 資料:フォルクスワーゲン AG フォルクスワーゲン グループ従業員に関する情報(生産工場) (単位:%) 2001 2000 2002 11.0 11.1 11.4 研修生の割合 ** 3.9 4.0 4.1 人事異動 2.4 2.3 2.6 健康指数 96.7 96.7 96.7 女性従業員の割合 * * 全世界(中国を除く) ** ドイツ 資料:フォルクスワーゲン AG 118 119 お問い合わせ先と用語集 Volkswagen AG Volkswagen AG Mobility Investor Relations Klaus Rieck Gillian-Ruth Karran Volkswagen AG P.O. Box 011/17741 P.O. Box 011/18490 Environmental Strategy, Business Processes 38436 Wolfsburg, Germany 38436 Wolfsburg, Germany Dr. Ulrich Menzel Tel: +49 5361 972801 Tel: +44 5361 949843 38463 Wolfsburg, Germany Volkswagen AG Volkswagen AG Tel: +49 5361 972804 Energy Conversion Communications Fax: +49 5361 972960 Dr. Wolfgang Steiger Harthmuth Hoffmann e-mail: ulrich.menzel@volkswagen.de P.O. Box 011/17780 P.O. Box 011/19710 38436 Wolfsburg, Germany 38436 Wolfsburg, Germany Tel: +49 5361 928592 Tel: +49 5361 928699 Volkswagen AG Volkswagen AG Volkswagen of South Africa Group Research Environmental Protection - Procurement Communications Matthias Rabe Wolfgang Gädicke Matt Gennrich P.O. Box 011/17750 P.O. Box 011/17743 P.O. Box 80 38436 Wolfsburg, Germany 38436 Wolfsburg, Germany Uitenhage, 6230 Tel: +49 5361 926670 Tel: +49 5361 923807 South Africa Volkswagen AG Volkswagen AG Environment and Industrial Safety Environmental Management Officer - Güter Sager Product P.O. Box 011/18960 Dieter Pundt 38436 Wolfsburg, Germany P.O. Box 011/17680 Tel: +49 5361 923248 38436 Wolfsburg, Germany 環境保護や環境レポートに関する一般的な ご質問は下記までお問い合わせください。 P.O. Box 011/17743 専門的なご質問は下記の関連部門までお問 い合わせください。 Tel: +27 41 9944607 Tel: +49 5361 976800 Volkswagen AG Environmental Strategy, Business Processes Volkswagen AG Dr. Horst Minte Service Engineering P.O. Box 011/17743 Manfred Fischer 38436 Wolfsburg, Germany P.O. Box 011/19470 Tel: +49 5361 978428 38436 Wolfsburg, Germany Tel: +49 5361 928063 Volkswagen AG Environmental Planning, Production/Plants Volkswagen AG Ulrich Sollmann Corporate Government Relations P.O. Box 011/18970 Reinhold Kopp 38436 Wolfsburg, Germany P.O. Box 011/18820 Tel: +49 5361 928066 38436 Wolfsburg, Germany Tel: +49 5361 978622 Volkswagen AG Industrial Safety (Work Environment) Volkswagen AG Jörg Nothdurft Government Relations, Science and P.O. Box 011/14260 Technology 38436 Wolfsburg, Germany Dr. Hans-Jürgen Schäfer Tel: +49 5361 925991 P.O. Box 011/18820 Volkswagen AG 38436 Wolfsburg, Germany Glossary(用語集) Tel: +49 5361 972859 環境レポート中に記載された重要 Life Cycle Assessments and Recycling な用語の定義、および総合的な説 Axel Riemann Volkswagen AG P.O. Box 011/17741 Central Personnel Dept. 明と追加用語を掲載した用語集が 38436 Wolfsburg, Germany Dr. Josef-Fidelis Senn 定期的に更新されています。 Tel: +49 5361 926314 P.O. Box 011/18990 38436 Wolfsburg, Germany 下記ウェブサイトをご覧ください。 Tel: +49 5361 973310 www.mobility-and-sustainability.com フォルクスワーゲンの各工場で実施されている環境 詳しい情報について、また環境レポートをご要望の 保護についてのご質問は、それぞれの工場の環境責 場合のお申し込み用紙は下記ウェブサイトに掲載し 任者にお問い合わせください(工場の環境宣言を参 ています。 照)。 www.mobility-and-sustainability.com e-mail: info@mobility-and-sustainability.com 常にいっそうの努力を 環境オンライン大賞 ドイツ最優秀環境レポート 2002 インターネットポータル www.volkswagenenviron-ment.de 近年、フォルクスワーゲンの環境レポート作成チームはベ は 2002 年 4 月、「今月のウェブサイト」として環境オン ルリンのドイツ公認会計士委員会(WPK)と良好な関係を ライン大賞金賞を受賞しました。ドイツ環境大臣の後援の 築いています。フォルクスワーゲンは WPK 主催のドイツ もと、ドイツ環境保護協会 B.A.U.M.が毎月最も優れている 環境レポート大賞(DURA)で毎回徐々に順位を上げなが 環境ウェブサイトに賞を授与しています。B.A.U.M.は欧州 ら、今回で 3 度目の受賞を果たしています。2002 年には、 最大の産業界環境イニシアチブであり、参加企業は 500 社 環境問題への取り組みについての卓越した記述と、社内の を超えています。 環境ポリシーの重要性についての一般向けの分かりやすい 説明が評価され「最優秀環境レポート」カテゴリーで第 1 グローバル・レポーターズ 2002 位を獲得しました。さまざまな課題にモビリティの観点か フォルクスワーゲンは自動車業界で第 1 位の座を獲得 ―― ら焦点を当てたレポートのアプローチは審査員から高く評 これは 2002 年 11 月、国連環境計画(UNEP)からの委 価されました。1998 年に創設されたこのドイツ環境レポ 託により、ロンドンを拠点とするコンサルタント会社 ート大賞は、企業の環境や持続可能性についてのレポート SustainAbility Ltd.(サステイナビリティ社)が持続可能 作成を推進し、優秀なレポートを世間に知らしめることを 性の報告について行った第 2 回国際比較研究の結果です。 目的としています。 同社の研究「グローバル・レポーターズ 2002」では、持 続可能性の達成状況、管理体制、目標などを記載したサス テイナビリティレポートを出版している企業を世界規模で 比較しています。評価対象となった「フォルクスワーゲン 環境レポート 2001 / 2002 年 ―― モビリティと持続可 能性」では、環境パフォーマンスを報告するだけでなく、 社会面・財政面の情報も記載しています。フォルクスワー ゲンは総合トップ 100 位ランキングで 12 位、また 94 ポ イントを獲得して自動車業界の総合評価ではトップの座に 輝きました。 DURA ドイツ環境レポート大賞受賞式:フォルクスワーゲン環 境レポート プロジェクトマネージャー Dr. ウルリヒ メンツェ ル、ドイツ公認会計士委員会会長フーベルト フォン・トロイベ ルク、環境・労災防止統括責任者 ギュンター ザーガー(左か ら右へ) 120 121 日本における取り組み フォルクスワーゲングループジャパン株式会社に おける環境への取り組み フォルクスワーゲングループジャパン株式会社は、1989 年に設立さ れたドイツ・フォルクスワーゲン AG100 %出資による輸入・卸売り 会社です。愛知県豊橋市にある本社敷地内において、世界各国で生産 されたフォルクスワーゲングループの車両を陸揚げし、日本全国の正 規ディーラーにデリバリーする前の最終検査を行っています。また、 全国レベルで展開するフォルクスワーゲン正規ディーラーに対し、セ ールス、技術、アフターセールス等に関する専門的なトレーニングを 行い、高度な知識と豊富な経験を持つスタッフを養成し、お客様に質 の高いサービスを提供しています。 輸入車業界において日本最大規模の設備、専門スタッフを擁するフォ ルクスワーゲングループジャパン株式会社車両整備センターは、厳し い品質・環境管理が評価され、2000 年 ISO14001 を取得。さらに たゆまない努力により、2003 年に認証の更新が認められました。ま た、2004 年 7 月には輸送車両のガードワックスを全廃し、リサイク ル可能なフルボディカバーに切り替えることで、環境保護のパフォー マンスを一気に高めました。このことは、ドイツの ISO 認証機関であ るテュフマネジメントサービス(T V Management Service GmbH)からも高い評価を受けております。 フォルクスワーゲンの環境活動ならびに持続可能性への取り組みを伝 える、「フォルクスワーゲン環境レポート 2001 / 2002 年」(日本 語訳版)は、(財)地球・人間環境フォーラム、(社)全国環境保全推進 連合会主催、環境省などが後援する「第 7 回環境レポート大賞」の環 境報告書部門において、応募総数 328 点の環境レポートの中から、 「持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)」を受 賞しております。 これからもフォルクスワーゲングループジャパン株式会社は、ドイ ツ・フォルクスワーゲン AG の環境ポリシーに基づき、日本法人とし てできる最大限の取り組みを推し進め、引き続き模範的な社会的責任 を果たせるインポーターとして、あらゆる局面での環境保全への配慮 と実行、そして環境情報の開示に努めてまいります。 本件に関するお問い合わせ先: フォルクスワーゲン カスタマーセンター フリーフォン 0070-800-551133 フォルクスワーゲン環境レポート ドイツ語版初版 2003 年 12 月 Copyright 2003: Volkswagen AG Environment and Industrial Safety 企画/編集: Volkswagen AG, Wolfsburg crossrelations, D sseldorf レイアウト/グラフィックデザイン: crossrelations, D sseldorf 日本語訳: 株式会社ダイナワード 日本語版監修: フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 写真: Wolfgang Kaehler (corbis, D sseldorf) China Tourism Press (Getty Images Deutschland, Munich) Tim Wegner (Frankfurt am Main) Mark Lewis (Scarborough, South Africa) dpa/AFP Volkswagen AG (Wolfsburg) DIN EN ISO 9001 : 2000 年認証取得(品質管理) EC 環境監査規定 761 / 2001 年認証取得(環境管理) 印刷: マス株式会社 環境レポートの入手先 フォルクスワーゲン環境レポートをご希望の方は www.mobility-and-sustainability.com からダウンロード、 または下記へご依頼ください。 カスタマーセンター: 0070-800-551133(フリーフォン) フォルクスワーゲン AG は常にモデル改良に努めているため、設計、装備 品、および技術仕様は随時変更されます。従って、本レポートのデータ、 写真、および説明を損害賠償などの請求の根拠とすることはできません。 版権所有:フォルクスワーゲン AG(ウォルフスブルグ) 全体、部分を問わず、無断複写・複製・転載を禁じます。当社の事前許可 を得たうえで、出典を明示してください。 Article No.: 415.1240.01.70 目 次 2 まえがき 4 編集にあたって 5 会社概要 1 6 14 15 20 22 企業の責任 持続可能性 ポリシー 体制 戦略 中国 目標と方策 2.5 84 86 87 88 89 3 環境レポート 2003/2004 Partners in Responsibility 2003年12月 本レポートは無塩素漂白紙を使用してい ます。 Art. No.: 415.1240.01.70 フォルクスワーゲン環境レポート 2003/2004 VOLKSWAGEN AG Environment and Industrial Safety P.O. Box 011/17743 38436 Wolfsburg Germany 2 環境 2.1 環境ポリシーとマネージメント 環境戦略 気候政策 ライフサイクルアセスメント 従業員 28 32 33 35 2.2 製品 38 当社のモデル 2.3 44 50 51 54 57 研究開発 燃料戦略 1リッターカー 自動車と環境 代替駆動システム リサイクル 58 60 61 69 74 75 76 生産と生産拠点 目標と見通し サプライヤー 生産拠点 南アフリカ 国際監査 労働安全衛生 主要な指標 2.4 www.mobility-and-sustainability.com パートナーと市場 サービス部門での環境保護 VCDとエコトレンド 持続可能なモビリティ2030 使用済み自動車の回収 エコドライビング 社会的責任 90 雇用モデル 94 人材育成 98 社会的利益 4 ファイナンス 102 コーポレートガバナンス 105 経済的付加価値 5 グループ 108 概要 109 戦略 112 主要な指標 120 お問い合わせ先と用語集 122 日本における取り組み
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