No. 127 August 2006 ■ 第 1 回 KMU 研究推進セミナー 総合医学研究所 市民公開セミナー〈予告〉 ■学事 平成 19 年度医学部入学試験要項 名誉教授の称号授与 第 36 回教育懇談会 □学生のページ 早期臨床体験実習記 □附属看護専門学校 第 19 回戴帽式 ■学術 金沢医科大学医学会 第 42 回学術集会 第 48 回日本老年医学会学術集会 第 31 回日本外科系連合学会学術集会 平成 18 年度 科学研究費補助金交付決定 産学官連携 ■病院 21 世紀集学的医療センター みんなの健康づくりセミナー2006 ■管理・運営 学校法人金沢医科大学 平成 17 年度決算 ■随想・報告 UCLA 留学記 UCSF 留学記 腎移植例からの三つ子の成長記録 ■同窓会・後援会 金沢医科大学北辰同窓会 金沢医科大学後援会橘会総会 ■本学スタッフ新刊著書 内灘に咲く月見草 金 沢 医 科 大 学 2 金沢医科大学 第1回 KMU 研究推進セミナー 日時 平成 18 年 6 月 20 日(火) 場所 病院新館 12 階大会議室 特別講演 ゲノム情報と医療への応用 油谷 浩幸 教授(東京大学先端科学技術研究センター・ゲノムサイエンス分野) 技術セミナー DNA マイクロアレイシステム( Affymetrix )について 石垣 靖人 講師(金沢医科大学総合医学研究所共同利用部門 RI センター) ゲノム医療とトランスレーショナル・リサーチの現状について 木場 崇剛 助教授(金沢医科大学腫瘍治療学) 特別講演の油谷浩幸教授 第 1 回 KMU 研究推進セミナーが、平成 18 年 6 月 20 て、昨年度本学に導入された機器の中で最も期待され 日(火)に学内外から 105 名の参加者のもと、本学病 る Affymetrix 社の「 DNA マイクロアレイ装置」につ 院新館 12 階大会議室で開催された。本セミナーは本 いて原理を含め詳しい紹介があった。機器の管理者お 学における研究の活性化を目指し研究推進会議が中心 よび利用者としての具体的な話であり、それを聞いて となり企画し、集学的がん治療センターの共催で具体 いる方々が機器を使用してみたくなるような分かりや 化したものである。内容は、昨年度本学に新規導入さ すく、魅力ある内容であった。 れた共同利用機器の研究・診療への応用を目的に、技 続いて、木場崇剛助教授(腫瘍治療学)から「ゲノ 術セミナーおよび特別講演とした。特別講演では、東 ム医療とトランスレーショナル・リサーチの現状につ 京大学先端科学技術研究センター・ゲノムサイエンス いて」と題して、その現状および問題点について話題 分野・教授の油谷浩幸先生に「ゲノム情報と医療への が提供された。各個人の SNP(一塩基多型)のパタ 応用」と題して講演していただき、活発な質疑応答が ーンを調べることによりヒトの体質がわかる可能性、 あり盛況であった。 例えば、がんになる前にがんになりやすいヒトを見つ 前半は技術セミナーを主眼としたもので、最初に石 けて、適切な予防や早期診断を行ったり、薬の投与 垣靖人講師(総合医学研究所)から、「 DNA マイク 前に副作用の出やすさを予測することにより、薬の選 ロアレイシステム( Affymetrix )について」と題し 択ができるようになるという、いわゆる「オーダーメ 第 127 号/ 2006.8 石垣靖人講師 金 沢 医 科 大 学 3 木場崇剛助教授 イド医療」にもふれられた。また、大学やバイオベン イを用いて明らかにした変異プロファイル(がんの個 チャー等の研究機関の基礎研究から派生してくる有望 性)により異なる治療法の選択が可能となることも強 な技術シーズや新規物質を発掘して、医薬品などの評 調された。さらに、本講演においてはゲノムの多様性 価・承認に必要な臨床試験を行いながら、基礎理論を が治療応答性の個人差をもたらす可能性並びにゲノム 臨床の場で実証し、事業化をめざす「トランスレーシ 情報に基づいた医療の個別化の現状と今後の展開につ ョナル リサーチ」についても紹介された。 いて大変分かりやすく講演された。油谷先生には、活 休憩後、油谷浩幸教授(東京大学)による「ゲノム 発に行われた質疑にも快く応えていただき、基礎研究 情報と医療への応用」と題した特別講演が行われた。 と臨床とのつながりを具体例をもって示していただい 2003 年にヒトゲノム配列が決定され、SNP に代表さ た。 れるゲノム多様性と疾患の関連解析も進められている ホテル日航金沢で開催された懇親会には、小田島粛 一方、ゲノムコピー数変異の多様性も解明されつつあ 夫理事長、山本 達学長、山田裕一副学長はじめ多数 ること、しかし他方で、ヒトゲノムにコードされた情 の方々が出席され、今後の本学における基礎研究、臨 報は塩基配列のみならず、DNA メチル化やヒストン 床診療の面へのゲノム医療活用へさらなる展開を期待 修飾などのエピゲノム情報により調節されており、疾 させるセミナーとなった。本研究推進セミナー開催に 病との関連についてはさらなる解析が待たれるところ ご協力いただいた関係者各位に感謝したい。 である点などが指摘された。また、ゲノムプロジェク なお、都合により出席できなかった方のためにイン トから生み出される成果への期待の一つとして「ゲノ トラネットでビデオ配信が行われているのでご覧いた ム創薬」の可能性が提唱され、現在、抗体医薬を含め、 だければ幸いである。(配信ビデオ掲載箇所:本学イ いくつかの分子標的医薬が臨床の現場へも提供されつ ンターネットホームページのトップページ「ライブ・ つあり、体細胞においてゲノムおよびエピゲノム変異 VOD 」) が蓄積した「がん」に対しては、DNA マイクロアレ (研究推進会議副委員長 竹上 勉記) 金 沢 医 科 大 学 <予告> 4 第 18 回 総合医学研究所 市民公開セミナー ゲノムと病気 がん、生活習慣病、遺伝病の克服に向けて 日時: 平成 18 年 10 月 21 日(土)13: 00 ∼ 15: 30 場所: 金沢市文化ホール 講演 1. ゲノム事始め 竹上 勉 教授 (金沢医科大学総合医学研究所分子腫瘍学研究部門) 2. 遺伝子解析が拓く先端医療 石垣 靖人 講師 (金沢医科大学総合医学研究所共同利用部門 RI センター) 3. みらい型ヘルスケアの展望―プロテオミクス技術を用いて 友杉 直久 助教授 (金沢医科大学総合医学研究所先進医療研究部門) 特別講演 ゲノム医療時代の遺伝カウンセリングの役割 千代 豪昭 (お茶の水女子大学大学院教授・遺伝カウンセリングコース) 本学総合医学研究所による市民公開セミナーは毎 ノム医療そしてオーダーメイド医療といった範疇の 年行われ、医療現場の状況、臨床と基礎研究のつな 取り組みが始まろうとしている。例えば、がん治療 がり等について話題のテーマを掲げ、分かりやすい においての個人個人に合った適切な薬剤選択が可能 講演を心がけてきた。今回で 18 回目を迎えている。 となるだろうといわれている。しかし、ゲノムの塩 今年の市民公開セミナーのテーマは「ゲノムと病 基配列が決まったからといって遺伝子、蛋白機能等 気」を掲げ、副題を「がん、生活習慣病、遺伝病の が全て分かったわけではない。分からないことが山 克服に向けて」としている。 ほどあるのだ。遺伝情報の発現様式を含め、多くの ゲノムとは何だろう? こうした思いは一般には 未知な部分の解析が今行われようとしている。ゲノ まだまだ多いのではないだろうか。その生物の構造、 ム解読完了によってそれらの研究がスタートしたと 機能の情報の全てを包含しているものがゲノムと言 いってもよいであろう。オーダーメイド医療といっ える。人のゲノムは約 30 億対の塩基の配列から成 ても十分な活用に至る道は長い。他方では遺伝子情 り立っている。単純な塩基 4 文字( A、G、C、T ) 報の活用に対して人々には不安感も多くみられる。 の組み合わせが多様な生物、また異なる性質、個人 こうした遺伝子を取り巻く現状の問題、今後の展 差に至る、ということは事実ではあるが、不思議な 開について「市民公開セミナー」の場で、分かりや 感を一般の方々は持つと思われる。30 億対の塩基 すく伝えることは大変重要であろう。また、科学技 からなるヒトゲノムを全て解読しようとする壮大な 術の成果を社会に還元することが問われる時代にあ プロジェクトがスタートしてから多くの国、研究者 っては、こうした試みは大学、研究所としての責務 がしのぎを削り、ついに 2003 年にヒトゲノム解読 でもある。 がほぼ終了した。これからの医学の世界においても このゲノム情報を使うことで新たな医療、それはゲ 本公開セミナーへの多くの方々のご参加を期待し ている。 (総合医学研究所副所長 竹上 勉記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 5 学 事 平成 19 年度 医学部入学試験要項 ■ 一般選抜入学試験 一般入試は第 1 次試験で学力試験が行われ、合 格者(募集人員の 5 倍程度)に第 2 次試験として面 接試験を課して最終判定が行われる。 業見込みの者またはそれと同等以上の学力が あると認めた者 ( 3 )合格した場合には必ず入学することを確約 できる者 1. 募集人員: 約 65 名 3. 出願要件(次のいずれかに該当する者) 2. 出願期間 ( 1 )本学卒業後、出身地の地域医療の発展、向 平成 18 年 12 月 4 日(月)から 平成 19 年 1 月 9 日(火)まで 3. 試験期日 上に貢献する意志の強固な者 ( 2 )本学卒業及び本学大学院修了後、本学で教育、 研究、診療に従事し、本学の発展に貢献する 第 1 次試験: 平成 19 年 1 月 16 日(火) 第 2 次試験: 平成 19 年 1 月 24 日(水)、 25 日(木)のうち希望する日 4. 試験科目 意欲の旺盛な者 ( 3 )本学卒業後、発展途上国への医療援助など 国際医療援助活動に貢献する意欲の旺盛な者 ( 4 )上記以外の出願動機で、それが本学の建学 第 1 次試験: 外国語(英語)・数学・小論文・ 選択科目(物理・化学・生物 から 2 科目選択) 第 2 次試験: 面接(グループ面接) 5. 試験会場 第 1 次試験: 本学/金沢医科大学 東京/TOCビル 大阪/天満研修センター の精神に合致していると本学が特に認めた者 4. 出願期間 平成 18 年 9 月 1 日(金)から 平成 18 年 9 月 8 日(金)まで 5. 試験期日及び試験科目 第 1 次選考: 書類選考 第 2 次選考: 平成 18 年 10 月 22 日(日) 基礎学力テスト、グループ面接、 名古屋/名古屋クレストンホテル 仙台/仙台ガーデンパレス 福岡/福岡ガーデンパレス 第 2 次試験: 本学/金沢医科大学 6. 合格者発表日 第1次試験: 平成 19 年 1 月 19 日(金) 第2次試験: 平成 19 年 1 月 30 日(火) 個人面接 6. 合格者発表日 第 1 次選考:平成 18 年 9 月 28 日(木) 第 2 次選考:平成 18 年 10 月 26 日(木) ■ 推薦入学試験 本学の推薦入試は、医学に対する目的意識が明 ■ 特別推薦( AO )入学試験 学力を中心とした入学試験では評価が困難な学 習意欲、使命感、人間性の評価に重点を置いて選 考が行われる。将来への目標が明確であり、かつ 確で、人間性豊かな人物を選抜することを目的と して実施している。 学力試験のみの選抜ではなく、面接を重視し、 例えば高等学校で指導的役割を果たした実績(ク その目標が本学の求めるものと合致する者につい ラス代表等) 、クラブ活動においてよい成績を修め て、書類選考や面接に十分な時間をかけ、人物本 た実績など、学力以外の面でも医師としての資質 位で選抜を行っている。 を備えた人材を見極めるよう努力がなされている。 1. 募集人員: 約 10 名 1. 募集人員: 2. 出願資格(次の条件を満たす者) 2. 出願期間 約 20 名 ( 1 )平成 18 年 4 月 1 日現在、25 歳以下の者 平成 18 年 11 月 1 日(水)から ( 2 )高等学校を卒業した者及び平成 19 年 3 月卒 平成 18 年 11 月 7 日(火)まで 【学事】 金 沢 医 科 大 学 6 3. 試験期日: 平成 18 年 11 月 12 日(日) 4. 試験科目: 基礎学力テスト、小論文、 面接(グループ面接) 5. 合格者発表日: 平成 18 年 11 月 24 日(金) ■ 編入学試験 編入学制度は、医学部以外の分野の大学教育を 既に修学した者に医学を学ぶ道を開くために実施 している。第 2 学年に編入学し、既に履修してい る教養科目の重複履修を省いて効率的に医学の専 門教育を実施し、医学研究及び医療の実践に貢献 する有為な人材を育成することが目的である。 平成 19 年度「大学案内」と「入試ガイド」 1. 募集人員: 約 5 名 2. 出願期間 お問い合わせ及び入試要項請求は下記へ 平成 18 年 11 月 1 日(水)から 平成 18 年 11 月 7 日(火)まで 3. 試験期日: 平成 18 年 11 月 19 日(日) 4. 試験科目: 英語、小論文、面接(グループ面接) 5. 合格者発表日: 平成 18 年 11 月 24 日(金) 〒 920-0293 石川県河北郡内灘町大学 1 − 1 金沢医科大学入学センター 電話:(代表)076-286-2211(内線 2532 ∼ 2534 ) FAX: 076-286-6279 E-mail: nyusi@kanazawa-med.ac.jp ホームページ: http://www.kanazawa-med.ac.jp/ 平成 19 年度 大学院医学研究科選抜試験要項(抜粋) 1.募集人員: 35 名 5.試験科目: 筆記試験(外国語)、面接試験 2.出願資格: 6.合格者発表日: 平成 18 年11 月27 日(月) ・大学の医学部又は歯学部を卒業した者及び 平成 19 年 3 月卒業見込みの者 ・外国において、学校教育における 18 年の課 なお、募集人員に満たない場合に、追加募集を 実施することがある。 程(最終の課程は医学又は歯学)を修了し た者及び平成 19 年 3 月修了見込みの者 ・文部科学大臣の指定した者 ・本大学院が大学の医学部又は歯学部を卒業 した者と同等以上の学力があると認めた者 3.出願期間: 平成 18 年10 月 23 日(月) から 平成 18 年11 月 2 日(木) まで 4.試験期日: 平成 18 年11 月 13 日(月) お問い合わせ及び入試要項請求は下記へ 〒 920-0293 石川県河北郡内灘町大学 1 − 1 金沢医科大学大学院課 電話:(代表)076-286-2211(内線 2522 ∼ 2523 ) FAX: 076-286-6054 E-mail: d-gakuin@kanazawa-med.ac.jp 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 7 名誉教授の称号授与 石川 勳、小野田法彦 両氏へ 平成 18 年 6 月 12 日(月)本部棟 2 階会議室において、 小田島粛夫理事長から本年 3 月 31 日付けをもって教授 職を定年退職された先生方に、金沢医科大学名誉教授 の称号が授与された。 名誉教授の選考は、去る 4 月 25 日開催の名誉教授選 考委員会において行われ、山本 達学長の推薦に基づ き、4 月 27 日開催の第 750 回医学部教授会で承認され た。 (庶務課 中居重光記) 称号授与された方々は次のとおり。 第 63 号 石川 勲 前 腎機能治療学(腎臓内科学)教授 第 64 号 小野田法彦 前 生理機能制御学(生理学)教授 第 36 回教育懇談会 アドバンスト OSCE について ―米国とカナダの流れ― としての OSCE を今後導入する方向で検討している ことが紹介された。厚生労働省科学研究班では国家試 験を念頭に置いた標準化 OSCE のトライアルが、着々 と準備され実施されている。 この国家試験を視野に入れたアドバンスト OSCE は 、1 )あたかも外来診察室で患者さんと出会ったよ 講師: 伴 信太郎教授(名古屋大学医学部附属病院 総合診療部) うな場面での診察手順、臨床推論、医療記録の作成を 日時: 平成 18 年 6 月 9 日(金)午後 4 時 試験よりもハイレベルの診察手技、検査手技、処置手 会場: 病院本館 4 階 C41 講義室 技などを問う個別課題ステーションで構成される。課 含む医療面接を課題としたステーションと、2 )共用 題例は、頭痛、咽頭痛、動悸、呼吸困難、腹痛、足の しびれ、高血圧、体重減少と喉の渇き、けいれん(小児)、 平 成 18 年 6 月 9 日 午 後4時から病院本館4 禁煙支援、ガウンテクニック・縫合、緊急度の高い動 階 C41 講 義 室 に お い 悸・心停止などである。すでに国家試験に OSCE が て、名古屋大学医学部 導入されているカナダの MCCQE( Medical Council 附属病院総合診療部の of Canada Qualifying Examination )は 1992 年から 伴 信太郎教授を招いて 開始され、改善を重ねて現在の MCCQE II に至って 第 36 回教育懇談会を開 いる。米国の USMLE( The United States Medical 催 し た。2 年 前 か ら 毎 Licensing Examination )は Step 1、Step 2、Step 3 年講演に来ていただき からなり、知識のみならず実技も評価する試験である。 今回は 3 度目の来学で このような紹介のあと、実際の試験現場のビデオが供 ある。 覧され、今後国家試験における OSCE を念頭におい 伴教授は、本邦にお ける OSCE( Objective て臨床実習をさらに充実していく必要があることが強 伴 信太郎教授 Structured Clinical Examination )による臨床能力 評価の第一人者で、今回は今後実施される可能性が高 い国家試験レベルの OSCE について講演をお願いし た。 講演では医師国家試験改善検討委員会が、実技試験 調された。 講演後には活発な質疑応答があり、参加者にとって 非常に意義深い懇談会であった。 (医学教育センター 鈴木孝治記) 【学事】 金 沢 医 科 大 学 8 第 20 回 医学教育に関するワークショップ テーマ 学長メッセージ 電子シラバスを活用した 自己学習の推進 主催 医学教育センター・教務部 日時 平成 18 年8月 4 日(金)・5 日(土) 場所 金沢都ホテル 1990 年にはじまり 20 回目を迎えた今年度の医学教 育ワークショップは、計 27 名の参加者(一般教育系 1名、基礎系8名、臨床系 18 名)を得て 1 泊 2 日の日 程で開催された。上記テーマに沿って 10 時間、4 つの グループが熱い討論を行い、ワークショップの最終プ ロダクトとなる授業デザイン案を作成した。具体的な プログラムを下記に示す。 まず、山本学長からは 4 つのキーコンセプト、すな わち①学生と教員における情報の共有、②情報の双方 向性、③学生における予習と復習の徹底、④評価の効 率性および有効な利用が提示された。また、大原教務 部長からは、学生にとって分かりやすい授業を行なう という教員自身の意識の統一と教科書の位置づけを課 題として、本ワークショップでは電子シラバスの内容 について多面的な議論が行われることを期待するとい 山本 達 医師の生涯学習が強調されている現在、卒前教育で は学生の自己学習を推進することが重要な課題であり ます。自学自習の姿勢を育成するためには、学習すべ き内容を教員のみが保有し授業でそれを一方的に伝え るという知識伝授型教育に代わって、授業前に学生と 教員が学習内容の 情報を共有 している必要があり ます。しかも授業後にはいつでも質問できるように、 その情報は 双方向性 のものでなければなりません。 つまり、教師と学生が一体となって学習を進めるとい う姿勢が基本となります。本学が開発中の電子シラバ スシスはまさにこれを具現化する手段として位置づけ られ、このシステムを使って学生は自己学習を効率的 に行うことができるようになります。したがって、教 員にとっても今まで以上に余裕のある、内容の濃い授 業が可能になります。さらに、このシステムを利用し た効果的な総括評価および形成評価を行うことにより 教育効果の倍増が期待されます。医学教育の先進国米 国の経験から、電子シラバスに必要なことは、授業の 詳細な内容を全て掲載すること、その内容は学生にと って有益なものであること、自習のためのリンクが分 かりやすく豊富であることなどですが、現在、このシ ステムが十分に活用されるよう学内の支援体制の整備 を考えています。 うメッセージが伝えられた。 〈プログラム〉 総合司会:安田幸雄 医学教育センター副センター長 【 8 月 4 日(金)10 : 00 ∼ 21 : 00 】 10 : 00 10 : 10 10 : 20 11 : 10 11 : 40 12 : 30 13 : 30 14 : 00 15 : 10 15 : 45 開会挨拶:山本 達学長・大原義朗教務部長 オリエンテーション グループ討議:効果的な講義とは 発表と討論 モデル授業 1 )東 伸明講師(分子細胞形態科学) 2 )鈴木孝治教授(泌尿生殖器治療学) 昼食 ミニレクチャー1 ):医師のための画像処理 中嶋秀夫副技師長(情報管理課) ミニレクチャー2 ):シラバスとは 堀 有行助教授(医学教育センター) レクチャー1 ):現代の医学部教育 安田幸雄教授(医学教育センター) グループ討議:学習に役立つ電子シラバスとは 発表と討論 レクチャー2 ):予習の意味 安田幸雄教授 レクチャー3 ):新電子シラバスシステムの概要 黒田尚宏助手(医学教育センター) 16 : 30 グループ作業: 電子シラバスを活用した講義の デザインとサンプル作成 18 : 00 発表と討論 18 : 30 報告:バーモント大学の E- ラーニング 勝田省吾教授(病理病態学) 19 : 00 夕食 ミニレクチャー3 ):電子シラバスの掲示板・アン ケート・レポート提出機能 黒田尚宏助手 19 : 40 グループ作業:電子シラバスを活用した講義の デザインとサンプル作成(続き) 21 : 00 懇親会 【 8 月 5 日(土)8 : 30 ∼ 11 : 45 】 8 : 30 グループ作業:電子シラバスを活用した講義のデ ザインとサンプル作成(発表準備) 10 : 00 プロダクト発表と討論、全体討論 11 : 30 閉会挨拶:鈴木孝治 医学教育センター長 11 : 45 終了 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 グループに分かれての討議 9 鈴木教授によるモデル授業 今回のワークショップは 1 つの大会場を使用して、 3 種類のグループ作業、発表と討論、6 つのレクチャ ラバスを活用した講義内容案 の作成に向かってグル ープ作業が開始され、夕食前に勝田教授からバーモン ー、2 つのモデル授業、全体討論が系統的に配置され ト大学における E- ラーニングの紹介があった。夕食 た。まず、最初のグループ作業ではいわゆる伝統的な 時には、ヨシダ印刷株式会社の村中 豊取締役から金 講義手法の問題点と改善すべき点が 50 分間討論され、 沢大学・福井大学・富山大学・青山学院大学における その後各グループの内容が発表され、全員がそれを議 電子シラバスシステムの紹介、次いで黒田助手から計 論した。使い方は個人差があるものの講義ツールとし 画中の電子シラバス付帯機能についてのミニレクチャ ては板書とパワーポイントスライドが主体で、各々の ーがあり、再び 3 時間半のグループ作業が継続された。 長所と短所があげられ、同時に各教室の設備改善の要 各グループの途中経過が発表された後、1 時間ほどの 望があった。また、講義内容をどの能力レベルの学生 懇親会で 1 日目は終了となった。 に合わせるのが適切か、どのような内容の配付資料が 2 日目は 1 時間半のグループ作業の後、各グループ 学習に役立つのかといった基本的な課題も同時に提起 は 15 分ずつの最終発表を行った。グループ 1 では「腫 された。次いで、学生の人気が絶大だった 2 学年を対 瘍総論」 、グループ 2 では「良性腫瘍と悪性腫瘍」 、グ 象とした東講師による解剖学(筋学)のモデル講義、 ループ 3 では「視覚系」 、グループ 4 では「絞扼性抹消 6 学年対象の鈴木教授による尿路結石症についてのモ 神経障害」がサンプルのシラバスとして使用され、各々 デル講義が実施された。これらは板書主体、パワーポ の理想的な講義内容が提案された。各発表後の討論で イント主体と各講義の特徴が存分に発揮されており、 は、配付資料の内容と配付予告、シラバスに使用され 終了後は教科書との関連、配布資料の内容、学生を引 る教材の版権と個人情報、システム上の問題、予習の きつける講義のコツなど、多くの質問が出た。昼食時 量、講義時間に行われる小テスト、アップされた教材 間には、画像作成時の具体的な留意点について中嶋副 の更新方法などが論じられた。最後の総合討論では、 技師長が、シラバスの基本的概念について堀助教授が 電子シラバス上にアップすべき共通内容は何か、電子 ミニレクチャーを行った。午後は、安田教授から「現 シラバス活用に必須となる学生の自主性をどのように 在の医学部教育」についての概説があり、午前に引き 育成すべきかなど、システム上および教育上の基本的 続き 2 回目のグループ討論として、どのような電子シ 課題が提起された。 ラバスが学習に役立つのかが話し合われた。討論内容 最後に閉会の辞として鈴木医学教育センター長か の発表にはシラバスの現状と今後、電子シラバスの意 ら、電子シラバス評価委員会の必要性が強調された。 義と課題などが含まれ、シラバス自体の評価が必要で (医学教育センター 相野田紀子記) あることが提起された。安田教授による予習について の講義、黒田助手による新電子シラバスの概要につい ての説明の後、ワークショップのプロダクト 電子シ 専門分野別参加者人数 一般教育 分野 グループ 1(6 名) 1 グループ 2(6 名) 0 グループ 3(8 名) 0 グループ 4(7 名) 0 基礎医学 臨床医学 分野 分野 3 2 2 4 1 7 3 4 中嶋副技師長による昼食時のミニレクチャー 【学事】 金 沢 医 科 大 学 平成 18 年度 臨床教授(学外)委嘱状授与式並びに 学外臨床実習に係る懇談会 10 に、学外臨床施設を代表して南砺市民病院院長倉知 圓先生が挨拶を述べられ、盛会裡に終了した。 本学では、平成 7 年度から学生が医療チームの一員 となり、スチューデントドクターとして行動すること を目的とした Clinical Clerkship (CCS) を導入し、平 平成 18 年 6 月 15 日(木)午後 7 時からホテル日航金 成 11 年度からは、大学病院では得られない体験実習 沢において、学外臨床施設の医師 22 名を招き、山本 を経験させるため、学外の医療機関において臨床実習 達学長をはじめ 11 名の教職員が出席して、金沢医科 を行っている。また、平成 12 年度から、受入施設の 大学臨床教授(学外)委嘱状授与式並びに学外臨床実 指導医師の方々に対し臨床教授(学外)等に委嘱して 習に係る懇談会が開催された。 おり、被委嘱者数は、当初の 13 名から、学外臨床実 はじめに、山本学長から新任の臨床教授(学外)に 委嘱状が渡され、引き続き懇親会が行われた。途中、 習の充実とともに増加し、今年度は 44 名の方々が臨 床教授(学外)に委嘱された。 大原義朗教務部長により、液晶プロジェクターを使っ 今年度、臨床教授(学外)に委嘱された先生方は次 て「新カリキュラムにおける臨床実習」について説明 の方々で、任期は平成 18 年 4 月 1 日から平成 19 年 3 月 があり、和やかな中で活発な意見交換が行われ、最後 31 日までとなっている。 西野 知一(千木病院院長) 山口 成良(松原愛育会松原病院院長) 宮崎 誠示(南ケ丘病院院長) 岡部美根子(岡部病院院長) 佐々木 誠(金沢赤十字病院院長) 絈野 謙介(カセノ内科医院院長) 勝見 哲郎(国立病院機構医王病院院長) 倉知 圓(南砺市民病院院長) 東福 要平(石川県済生会金沢病院院長) 浜田 重雄(二ッ屋病院院長) 竹下八洲男(金沢社会保険病院病院長) 波佐谷兼綱(珠洲市総合病院院長) 山田 燦(サンクリニックやまだ院長) 勝木 建一(やわたメディカルセンター病院長) 川西 徹郎(金沢リハビリテーション病院院長) 村山 和夫(北陸中央病院医務局長) 北田 博久(らいふクリニック院長) 川崎 英(金沢西病院院長) 駒井杜詩夫(厚生連高岡病院院長) 藤井 博之(博洋会 藤井脳神経外科病院理事長) 上田 博(辰口芳珠記念病院院長) 上野 敏男(浅ノ川総合病院院長) 倉田 孝一(県立高松病院院長) 打林 忠雄(公立南砺中央病院院長) 前田 敏男(映寿会みらい病院院長) 小森 和俊(公立宇出津総合病院院長) 佐藤 秀次(金沢脳神経外科病院院長) 宮谷 信行(町立富来病院院長) 京井 優典(国民健康保険志雄病院院長) 横井 克己(公立穴水総合病院病院長) 南部 澄(なんぶこども医院院長) 髙田 充彦(医療法人社団 宇野気医院理事長) 伊藤 順(伊藤病院院長) 大島 譲二(医療法人 久保島診療所理事長) 近藤 邦夫(近藤クリニック院長) 的場 宗敏(的場病院病院長) 藤井 久丈(藤聖会 八尾総合病院理事長) 神野 正博(董仙会 恵寿総合病院理事長) 中藤 秀明(中藤クリニック院長) 轟 清二(とどろき医院院長) 竹内 尚人(木島病院院長) 魚谷 知佳(予防医学クリニック院長) 丸岡 達也(まるおかクリニック理事長) 佐原 博之(さはらファミリークリニック院長) (卒業年度順、敬称略) (庶務課 中居重光記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 平成 18 年度 新任教員オリエンテーション 11 ター長から「教員評価」と題して、教員評価の必要性、 本学の教員評価の経緯と問題点、教授会に提案された 改定案について説明があった。 改定案では教育、研究、診療の 3 領域でそれぞれ客 観的評価を主体とする評価項目とそれらの重み付けの 概略的解説があり、続いて堀 有行 PBL 実施委員会副 委員長から「 PBL テュートリアル」と題して、本学 の授業として組み込まれている少人数グループ学習 ( PBL テュートリアル)の解説があった。PBL テュー トリアルは、医師になって遭遇すると考えられる臨床 例から学ぶべきことを自ら見いだし、解決する過程で 構造化した学習を引き出す教育法で、医師になっても 常に自己を見つめながら学んでゆく医師( reflective practitioner )の足掛かりとなるものであり、医学部 卒業時の最終目標 outcome を達成するために、患者 平成 18 年度新任教員オリエンテーションが平成 18 の臨床の事例を提示して、それを解決するために自己 年 6 月 14 日(水)午後 4 時 30 分から、病院本館 4 階会 決定学習をするというものであることが強調された。 議室で行われた。 限られた時間のなかで、参加者には PBL テュートリ 第 1 部は採用者を対象としたもので、20 名が参加し アルの目指すものや教員評価の意義について理解して た。鈴木孝治医学教育センター長(副学長)の開会の いただけるとともに、本学が「良医の育成」を建学の 挨拶のあと、大原義朗教務部長から「医学教育の現状」 精神に掲げ、教育を第一に考える大学であることを感 と題して、第 100 回医師国家試験の結果が、本学学生 じ取ってもらえたのではないかと思われる。 の健闘ぶりとともに報告された。 (医学教育センター 安田幸雄記) 第 2 部は採用者と昇任者を対象として、合計 41 名が 出席した。はじめに安田幸雄医学教育センター副セン 第 34 回 解剖学実習解剖体 納棺式 細胞形態科学の教職員および 実習を修了した第 2 学年生が 参列し、厳粛に執り行われた。 篠原治道教授(分子細胞形 態科学)が式辞を述べたあと、 実習に供された 19 柱の御霊 に、平井圭一教授(分子細胞 形態科学)、篠原教授、学生、 教職員が献花をした。学生の 献花では、各班がそれぞれ、 ご遺体一体一体に花束を手向 感謝の言葉を述べる 学生代表の松金 愛さん け、謝意を表するとともに故人のご冥福をお祈りした。 最後に、学生代表の松金 愛さんが「感謝の言葉」 を述べ、献体に深いご理解とご協力を賜った故人なら びにご遺族の皆様方のご厚志に報いるためにも、責任 と自覚を持ち、今後一層努力を惜しむことなく良医へ の道を邁進することを誓った。 (教学課 土田壮一記) 第 34 回納棺式が、平成 18 年 6 月 30 日(金)午前 10 時からアナトミーセンター2 階実習室において、分子 【学事】 金 沢 医 科 大 学 12 の交流をさらに深めるため協定を結ぶことになった。 バーモント大学医学部と 交換協定締結 2.協定内容 本協定は両大学の教育および研究領域に関する学術 交流と協力を推進することで合意している。 1 )互いの自主への敬意と相互利益の原則に基づき、 本学と米国バーモント大学医学部( University of 下記の事業を行う。 Vermont College of Medicine )の間で、本年 6 月 1 日 ( 1 )教員および研究者の交換 にはじまる学生と教員相互交換に関する協定が締結さ ( 2 )研修中の医師の交換 れた。 ( 3 )学生の交換 1.協定締結に至る経過の概要 ( 4 )科学資料、刊行物、その他情報の交換 両大学の交流は本学総合医学研究所の石川義麿教授 ( 5 )共同で行う研究、講演等の協力活動 がバーモント大学医学部病理学の木田正俊助教授(本 2 )上記の事業を実行するため、両大学の協議を経て、 学出身)と親交があったことより、2001 年夏期休暇に 特定の事例ごとに詳細な計画が立てられなければ 4、5 年生の学生 5 名が 2 週間医学研修したことに始ま る。2004 年から正式の海外研修プログラムとなり両大 学の教員の相互訪問も行われ、相互理解が進められた。 また、今年 3 月にはバーモント大学から初めて留学生 を受け入れ、交流が着実に発展してきた。今回、両校 ならない。 3 )本協定は、いずれの大学にも経済的義務を課さ ない。 4 )協定期間は 2006 年 6 月 1 日より 3 年間、以後、中 止の意思表示がない限り継続する。 最後に、これまで本 学の学生を親身にご指 導、お世話くださり、 また、協定締結にご尽 力いただいた木田先生 に心より感謝申し上げ たい。 (国際交流委員長 勝田省吾記) 本学で調印する山本 達学長(右)と勝田国際交流 委員長 バーモント大学で調印する医学部長 Dr. Evans(左) と病理学主任教授 Dr. Bovill 第 3 回 白衣・聴診器授与式 第 3 回白衣・聴診器授与式が、平成 18 年 4 月 10 日 (月)11 時から本部棟 4 階講堂で厳粛な雰囲気の中で 執り行われた。診察実習など、学習の場が診療現場に 直結するようになる第 3 学年に、白衣と聴診器を贈る ことにより、医学生としての自覚を促し勉学へのさら なる動機付けを目指すものである。授与されたイニシ ャル入りの聴診器は金沢医科大学後援会橘会から寄贈 されたものである。 白衣を着用する学生代表の宮元良和君 授与式には金沢医科大学第 3 学年生 105 名が参加し、 学生を代表して宮元良和君が山本 達学長から白衣と 義朗教務部長から挨拶があり、来賓の姫野洋一橘会副 聴診器を授与された。壇上に上がった宮元君が白衣を 会長から祝辞が贈られた。学生を代表して宇藤早和さ 着用し学長から聴診器を首にかけてもらうと、全員か んが謝辞を述べ、最後に全員でジュネーブ宣言を朗読 ら大きな拍手がおこった。続いて学長から式辞、大原 して誓いの言葉とした。 (第 3 学年主任 栂 博久記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 平成 18 年度第 1 学年 早期臨床体験実習 13 んの様子は異なるが、いずれの場面でも医師を目指す 1 年生という学生の立場を考慮され、大変好意的に対 応していただいた。受け入れて下さる側はいわば足手 まといの若者がいつも側にいて、さぞ日常業務が遂行 しづらかったと思うが、それにもかかわらず温かくか 実習期間: 平成 18 年 5 月 22 日(月)∼ 26 日(金) 〈体験実習でお世話になった施設〉 金 沢 市/ひろびろ福祉会、石川療育センター、 医王病院、千木病院、千木町ケアセンター 七尾方面/鶴友苑、青山彩光苑、和光苑、 エレガンテなぎの浦 小 松 市/小松療育園、陽光園 能 美 市/芳珠記念病院 野々市町/金沢脳神経外科病院 内 灘 町/内灘温泉病院 つ厳しくご指導いただき感謝の気持ちでいっぱいであ る。 学内実習では次の 3 つのメニューに取り組んだ。① 福祉講演会:ひろびろ福祉会理事長の野間比南子先生 による講演 ② 映画「奇跡の人」鑑賞:ヘレンケラ ーとサリバン先生の壮絶な教育実践シーンで話題にな った名画 ③福祉に関するグループ学習:自主的にテ ーマを決定し、テーマに沿った種々の情報を文章にま とめる作業。 以上の実習で気がついたことが 2 つあった。1 つは、 前半で学内の研修を行ってから後半に学外施設に出か 将来医師になることを目的として医学部に入学して けるパターンが、その逆よりも実習の成果が大きいよ きた 1 年生に、まず、身体の不自由なお年寄りや障害 うに思われたことである。いきなり学外の施設に出向 を持った子どもたちの介護の中で「医療の原点」を見 くと適応に時間を要する学生がおり、このことは今後 てもらいたいと企画しているのが、この第 1 学年早期 の反省点として残った。もう 1 つは、一部の学生から 臨床体験実習である。まるでそれが天職のように振る 出た要望であるが、実習に行く施設を自主選択制にし まう者もいれば、年寄りは汚いから話すのも触るのも てほしいというものである。この点は、大変難しい課 嫌だとそっぽを向く学生もいる。医師を目指す学生と 題で、今のところ改善策はないが、どこに行っても勉 しての自覚、動機づけ、姿勢は決して一様ではない。 強になるわけで、ボランティアと実習の違いを理解し だからこそ大きな手間ひまをかけて、毎年、早期臨床 てもらうほかはなさそうである。 体験実習を行う意味があるのだと思っている。 いずれ学生のレポート集をまとめ、その成果のほど 今年も例年どおり 5 月 22 日から 26 日の 5 日間、他の を皆様に公開する予定になっている。また、このレポ 講義をすべて中断して集中的に実習を行った。この時 ート集は感謝の意とともに各施設にも送られる。今年 期はまた新入生にとっては大学生活にも慣れ、部活動 も無事に実習を終了することができた。実習に際して などで友人が増え集中力に少しかげりが見られる時期 お世話になった各施設の方々、野間先生、オリエンテ でもあるといえる。したがって医学生としてのモチベ ーションでご指導いただいた小児外科の小沼講師、学 ーションをもう一度考える貴重な 1 週間であるともい 生保健室の中島保健師、教学課の皆様に心よりお礼申 える。実習は昨年と同様に、全学年を学内実習と学外 し上げたい。 (第 1 学年主任・生命科学 堀 功記) 実習の2組に分けて、それぞれ2日間ずつ実施した。 学外実習の各組はさらに小グループに分かれ、各 グループは割り当てられた施設へ出向いてオリエンテ ーションを受けた後、実習を開始した。実習先は上記 の 14 か所であり、実習場所によって入所者や患者さ 人物往来 □ Peter A. Bleed 博士/アメリカ合衆国 University of Nebraska 人類学教授/平成 18 年 6 月、国際交流 基金により、日本の旧石器・縄文時代文化の比較研究のために来日、北海道から中部地方にかけての関連 遺跡・遺物を見学/7 月 16 日に来県、7 月 17 日に本学に立ち寄ったあと、平口哲夫教授の案内で能登町の 真脇遺跡縄文館などを見学、7 月 18 日に石川県埋蔵文化財センターなどを見学/(人間科学) 【学事】 金 沢 医 科 大 学 14 学生のページ 平成 18 年度早期臨床体験実習レポートから 平成 18 年度第 1 学年早期臨床体験実習が、5 月 22 日(月)から 26 日(金)までの 5 日間にわたり、学内、学外 の各施設で実施された。学内実習では福祉講演会、グループ学習などが行われ、学外実習は、ひろびろ福祉会 ほか県内の 14 施設で行われた(前頁に関連記事)。体験実習レポートの中から以下の 2 件を掲載する。 (編集部) いた最大かつ最低のイメージである。当然のことなが 早期臨床体験実習記 ら、このイメージも軽々とはじけ飛んでしまった。彼 実習先: 小松療育園(重度心身障害児施設) おおさか やすひろ 大阪 康宏(第 1 学年) らは少しばかり、表現の仕方が我々より複雑で時間が かかるのであろう。 はじめのうちは彼らの感情を理解できなくても、実 習が進むにつれ、彼らが感じていることをなんとなく 【ぶっ壊されたイメージ】 感じることができた気がした。また、彼らは日常生活 実習先が小松療育園である の中でいろいろなことを必要とする。これを家族だけ と決まったとき、私自身は特に でこなすというのは不可能なのだろうと感じた。それ 何もイメージすることはなかっ と同時に、彼らが私より恵まれているのではないかと た。「重度心身障害児施設」こ 思った点もある。それは、実の家族とは別に、もうひ の言葉を聞いても、恥ずかしな とつの家族を持っているのではないかという点であ がらどういう所か具体的には分からなかった。しかし る。施設の医師はお父さんかもしれない。看護師はお その後、同級生や上級生からいろいろな情報が入って 母さんかもしれない。もしかしたらお姉さんかもしれ きた。それらを総合的に判断すると、どうも私の実習 ないし、兄貴かもしれない。利用者同士も、兄弟かも 先は『はずれ』であるらしい。つまり、きつくて大変 しれない。こんなふうに感じるほど、療育園の中には であるということだ。この時、私の中にイメージがで 家族的な愛情が満ち溢れているような気がした。それ き上がった。コミュニケーションの取れない子供が多 に加えて、私のような珍客がたまにやってくる。 くいて、薄暗く、臭いが強烈で、場合によっては噛み 付かれるかもしれない。考える時間があるというのは、 時として良くない場合がある。いろいろ考えはじめる と、実習に行くまでにそのイメージはどんどん悪いも のへ変っていった。 たかだか二日間の実習である。時間にすれば二十 時間ほどだ。 このように先入観を壊すことはできたが、当然疑問 は残っている。 たかだか二日間の実習である。時間にすれば二十 時間ほどだ。 百聞は一見にしかずだ。確かに経験するというこ とで、多くのことを得ることができた。しかし、経験 した内容があまりにも強烈であったがゆえに、多くの そんな短時間で、いったい何が変わるというのだろ ことが美化されてしまっているような気がしてならな うか。だが、実際にこの目で見てそのイメージはひっく い。様々なことを見聞きし、感じたような気がしてい り返った。半月ほどかけて作り上げられた、否、もしか るが、たかだか二日間しか見ていないのである。こん すると今までの人生をかけて形成されたイメージはい な短時間ですべて理解できるほど私は賢くなければ、 とも簡単に壊されたのだ。薄暗くなんかまったくない。 そんなに簡単な問題ではないはずである。また、そん スタッフは底抜けに明るく、利用者さんも最高に面白 な簡単に分かってしまっても面白くはない。あくまで い人がいっぱいいた。利用者さんにどつかれることも 考えるきっかけを得たにすぎないと思う。しかし、そ あったが、それはひとつの表現方法かもしれない。 のきっかけは非常にいいものであったと思う。なぜ 失礼なことかもしれないがあえて書く。利用者の方 なら、いやな思い出など無く、本当に面白くて、多く は非常にかわいそうであると思っていた。そのような のパワーを得ることのできた二日間であったからであ 障害を持ってしまったという点からではない。私は勝 る。 手に勘違いしていた。彼らは社会から取り残され、家 族からも見放されていると。これは、今回私の抱いて 何もできませんが、また、遊びに行きます。 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 15 学生のページ を受けずにはいられなかった。男の私でも、いきなり 早期臨床体験実習記 実習先: 千木町ケアセンター(介護老人保健 施設) し ば た しゅん 柴田 俊(第 1 学年) 他人の服を脱がして頭から性器まですべてを洗えと言 われたら戸惑うところを、その介護士さんは慣れた手 つきで次々と介助していたからだ。しかし、はじめは 戸惑っていた私も介助を手伝ううちに慣れてきて、一 人で介助できるまでになったのである。はじめはオム 実習前、 「千木町ケアセンター」 ツひとつ着けるにしても実際に行ってみると、見てい での臨床体験実習ということに るよりはるかに難しく、いちいち教えてもらわないと 対して特に不安はなく、むしろ 全くできない状態だったが、慣れてくると、介助しな 気持ちの余裕を持っていた。と がら入所者の様子を見る余裕もでてきた。いずれにせ いうのは、私の実家が一般診療 よ、すべてが初体験で自分の甘さを初日で思い知った の他にリハビリテーション、在 し、改めて介護士さんたちの凄さやタフさを思い知ら 宅ケア、老人介護などの施設やシステムを備えた病院 された。 ということもあり、介護老人保健施設という場所を身 2 日目は、前日の実習で少し施設の雰囲気に慣れて 近に感じていたからだと思う。しかしこの予想とは正 きたこともあり、1 日目よりリラックスして介助に臨 反対に、今回の実習は失敗と反省の連続であった。 めた気がする。この日は 2 人の入所者の方の誕生会が 1 日目、看護師長さんのガイダンスの後で、仲間の あった。誕生会では、地元のボランティアの方がフラ 同級生とは別々に 1 フロアに 1 人ずつ振り分けられた。 ダンスを披露した。フラダンスを見て、1 人の男性入 はじめに入所者の方々の前に立って部屋を一望した時 所者の方が涙を流して喜んでいた。私は認知症の方々 は、まだ気持ち的にも余裕があり、周りの介護士さん は喜怒哀楽をあまり感じないのではという先入観を持 を感心させてやろうと意気込んでいたのを覚えてい っていたので、この光景を見た時はとても驚いた。フ る。私の指導を担当してくださる介護士さんを紹介し ラダンスを踊りに来てくれただけで、そこまで感動し てもらった後、早速実習に入ったのだが、 「どこでも たり、感謝するものとは思わなかったからだ。実は、 いいから好きな席に座って、入所者の方たちとお話し 入所者の方たちの方が健康な私たちよりも「健康な心 てください」と言われた。着いたばかりでまだ施設の と感性」を持っているのかもしれないと思った。この 環境にも慣れないうちに、そう言われて非常に戸惑っ ように感じたのは、その時だけではなかった。食事介 てしまい、いきなり壁にぶち当たってしまった。人見 助でも入浴介助でも、また単にコミュニケーションす 知りの性格が多少ある私にとって、その時の状況は何 る時でさえ、私が心から接していないと見抜かれてし ともやり辛いものがあったし、会話をする相手が軽度 まうのではないかと思うくらいに、ストレートな感情 であれ認知症を持った高齢者の方となると、私の口の をその人の表情や言葉に感じることが多くあった。 紐は堅くなるばかりであった。指導者から手助けをし 別れが近づいてくると、入所者の方々に挨拶して回 ていただいて、入所者の方と少しは会話できるように った。その時、1 人の方が何度も、 「ありがとう。が なったが、認知症の人と会話するのは難しくて面食ら んばっていいお医者さんになってね。良かったらまた った。何度も同じことを繰り返さなければいけないし、 私に会いに来てください」と言ってくださった。その 名前すら忘れられてしまうこともあって、どう接した 方も認知症で、同じことを何度も繰り返し言っていた らいいかわからなくなってしまい、妙なストレスを感 のだが、初日に来た時の印象とは違い、私は嬉しさと じた。 感謝といろいろな気持ちで胸がいっぱいになりなが 初日は他に食事介助なども体験したが、なんと言っ ら、その方の言葉を一言一言噛みしめて聞いていた。 ても入浴介助には圧倒された。私が体験したのは機械 結局、最後までどうしてよいかわからないこともた 浴の入浴介助で、服やオムツを脱がすことから、体を くさんあったが、全体としてはほかで体験できない多 洗って、オムツと服を着せるまですべてを介助しなけ くのことを経験し、いろいろな勉強ができたと思う。 ればならなかった。はじめは介護士さんの模擬介助を 真似ることもできないような介護士さんの介助ぶりや 見ていたのだが、その介護士さんは私と同年代くらい 入所者への気配り、ボランティアの方たちと入所者の の女性で、その方が平然と男性入所者のオムツを脱が つながり、介護士と入所者との関係などの中に、私は、 せ、全身をごしごし洗う姿を見てカルチャーショック 人間愛のこもった真の人間関係を見たという印象を持 【学事】 金 沢 医 科 大 学 16 学生のページ った。介護というものは、病院内の看護とはまた違っ ればならないことであると思う。今回の実習では、自 た面を持っていると思った。そして、ふだん忘れかけ 分にとって実に貴重で有意義な時間をおくることがで てしまうような人間愛、本来あるべき人の助け合いや きた。千木町ケアセンターの介護士さんをはじめスタ 思いやりの気持ちなど、多くのことをリアルに感じる ッフの方々、入所者の方々に、心から感謝している。 ことができた。病気を診るだけでなく、病気を持って いる人の環境や行動を見て、その人を看る。私が今後 医師を目指す上で大切なことであるし、考え続けなけ 紹 介 4 年田中 緑がこのプロジェクトの企画・運営を行っ た。 ボランティアサークル“ AIR ”発足 亀井 千裕(第 6 学年) 様々なボランティア活動に参加する機会を重ねる 5.IFMSA-JAPAN(国際学生連盟 - 日本支部)の 活動 世界 80 カ国、日本国内で 44 校の医学部が加盟し ている WHO、世界医師会公認の国連ボランティ につれ、私たちは個人的にではなく組織として活動 ア NGO。今年 10 月の日本総会は最大のイベントで する必要性を感じはじめて、今春 AIR ( Activities 全国から 300 人以上の医学生が集まる予定。去年は and Introduction with Responsibility の 略 ) と い 本学から 6 人参加し、亀井が日本大学、山梨大学の うボランティア活動を行うためのサークルを立ち上 ACLS チームとともに BLS(一次救命措置)を指導、 げることにした。私たちの活動を知っていただくた 高多が金沢大学の学生らとともに SCORA( 2 参照) め、サークル開設前から行ってきた活動を紹介する。 の性教育ワークショップを行った。 1.ぬいぐるみ病院 6.北陸合同合宿 ぬいぐるみを使ったお医者さんごっこを通して、 金沢大学の KURE、福井大学の FEAL、富山大 幼児に健康教育をするプロジェクト。金沢大学ボラ 学のボランティアサークル、そして私たち AIR の ンティアサークル KURE の行ったイベントでは、 メンバーが集い、お互いのボランティア活動を紹介 6 年亀井千裕、4 年高多佑佳、3 年大関舞子、井上悠 し、討論するための合宿。今年はすでに 6 月に行い、 希らが参加して、来場した子供たちに健康教育を行 合計 50 人以上の学生が参加した。 以上、様々な活動を行っているので、興味をお持 った。 2.SCORA 金沢の活動 ちの方は遠慮なく問い合わせていただきたい。 Peer education(仲間、同世代による教育) という手法で、高校生らを対象に性教育を行い、 STD(性感染症)予防の啓蒙や性行動の自己決 定を促す活動。金沢大学の学生とともに 4 年の 高多、3 年の大関らが現在活動中。 3.タイの希望の家におけるボランティア活動 タイ「希望の家」 ( AIDS で親をなくした子ど もたちの施設)を訪ね、公衆衛生指導を行う活 動。この春に、4 年吉田和可、2 年山本 愛、藤 井揚子らが参加した。 4.ガバルドン・プロジェクト フィリピンのガバルドンにて、水質調査や公 衆衛生指導を行う活動。他大学医学生とともに 北陸合同合宿に参加のメンバー 問い合わせ:nuigurumi_kmu-owner@yahoogroups.jp AIR ホームページ:http://geocities.yahoo.co.jp/gl/air06kmu 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 17 学生のページ に対して先生の詳しい解説を聞きながらの回診でし 先輩を訪ねてメディカルホームステイ を体験 佐藤 智美(第 5 学年) た。今まであまり詳しく勉強できなかった疾患や教科 書を読むだけでは理解できなかった疾患についても見 ることができました。リハビリテーション科の見学で は、場の雰囲気に驚きました。普通リハビリテーショ ンと聞くと暗くて辛いイメージが持たれがちですが、 ここでは窓とフロアーが大きくて自然光が入りとても 明るく、また景色も良く、何より患者さんの雰囲気が 暗くないことが大きな発見でした。景色がよいのでリ ハビリを楽しみにされている方もいると聞きました。 週に1回看護師さんを対象に行われている午後のミ ニレクチャーは、入院患者さんの疾患を中心として、 神経解剖を踏まえた神経内科の分りやすい講義でし た。講義を聞いてから実際の患者さんに会うことで、 疾患に対する理解がより深まるように思います。 2 日目の外来見学では、大学病院での外来と異なっ てんかん て、癲癇の患者さんの多いのに気づきました。また、 片岡先生(後列右)と神経内科の診察室で撮影(前列左から芳 賀真奈美さん、筆者、和田真沙美さん) 医療面接の際、患者さんの性格に合わせて、より優し 私は、平成 18 年 7 月 13 日(木)から 16 日(日)ま ことを実感しました。たとえ初診の患者さんであって での 4 日間、広島の中国労災病院ならびに特別養護老 も、言動などから性格を見抜くことは大切だと先生も 人ホームサンシャイン南蟹屋を見学させていただきま 仰っていました。合同カンファレンスでは、高齢者の した。 髄膜腫の症例について話し合い、手術適応の有無など 中国労災病院神経内科部長は、私の所属している陸 上競技部の前顧問の片岡敏先生で、私が陸上部に入部 い言葉をかけ、時には厳しい言い方をする必要がある についても論議が交わされました。カンファレンス中、 「自分の家族もしくは自分自身がこの疾患だったらど した当時から公私ともに大変お世話になっている大先 うするか?」といった言葉がたびたび聞かれました。 輩であります。神経内科は大変複雑な分野であり苦手 常に自分に置き換えて考える姿勢は、医療者として重 意識もありましたが、今回研修させてくださいと願い 出たところ、即座に嬉しいお返事をいただいたので希 望が実現することになりました。 中国労災病院は、JR 呉線に乗り新広駅で降りると 目の前に病院があるというアクセスに非常に便利な場 所に位置しています。造船が盛んな呉市に程近く、病 室からは綺麗な海と船舶を眺めることができます。 滞在中の主な日程は以下のような充実した内容でし た。 初 日:院内見学、病棟回診参加、リハビリテーシ ョン科見学、ミニレクチャー 2日目:外来見学、脳神経外科との合同カンファレ ンスに参加 3日目:広島脳血管障害研究会に出席 4日目:特別養護老人ホームサンシャイン南蟹屋の 見学 実習内容をかいつまんで紹介したいと思います。初 日は,病棟回診から始まりました。一つひとつの疾患 片岡先生と病院の前で 【学事】 金 沢 医 科 大 学 18 学生のページ 要であると思う場面でした。 ちにすべきこと、今後の進路を決めるにあたって重要 最終日は、片岡先生のご家族が経営に携わっている なこと、さらには陸上部の話しなども聞くことができ 特別養護老人ホームを見学させていただきました。4 ました。偉大な先輩に負けないように努力を重ねなけ 階建てで、全室個室という大変整った環境で,折り紙 ればならないと強く思った研修でした。最後になりま やポスター、写真などで飾られた施設内は明るく、入 したが、今回快く研修をさせてくださった片岡先生や 所者の皆さんも笑顔が絶えないといった様子でした。 労災病院スタッフの皆様をはじめ、奥様やご家族の皆 今回の研修では片岡先生からたくさんのアドバイス 様にはたいへんお世話になりました。心よりお礼申し をいただきました。医師として必要なこと、学生のう 私は平成 17 年 7 月に赴任し、当初は私一人で週 3 メディカルホームステイ受け入れにあたって 日 30 名の外来診療を行いながら 5 ∼ 10 名の入院患 近況報告と病院の紹介 者診療をしていましたが、今年の 4 月からは 2 名(そ 中国労災病院神経内科部長 前金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学)講師・昭和 54 年卒 片岡 上げます。 敏 れぞれ神経内科専門医、内科認定医)が増員となり、 3 名で毎日 1、2 診の外来診療と 15 ∼ 20 名の入院患 者診療を行っています。入院患者数は昨年度 40 名 程度でしたが現在は年間 100 ∼ 120 名に急増し、外 独立行政法人労働者健康福祉機構中国労災病院 来および入院診療は充実してきています。MRI と は、昭和 30 年 3 月に旧労働福祉事業団と地方自治 CT が各々2 台あり神経画像検査は随時可能ですし、 体により開設された病院で、現在は勤労者脳・循 神経電気生理検査(脳波、末梢神経伝導速度、誘 環センター、勤労者リハビリテーションセンター、 発電位など)も速やかに検査可能です。当院では 産業保健総合診療センターなどのセンター機能を 脳卒中はいままで主に脳神経外科で診療されてい 持ち、平成 14 年に増改築されて、現在は 410 床、 ましたが、昨年からは神経内科、脳神経外科、脳 20 診療科を擁する大きな病院です。医師数も約 100 卒中科が連携して診療にあたっています。血栓溶 名を数え、呉市の主要病院として成長しています。 解剤である t-PA が認可されこともあり、脳梗塞の 外来受診患者総数は一日平均約 1,200 名、入院患者 超急性期診療連携を構築するために神経内科と脳 の平均在院日数は 17.8 日で、全国の労災病院の中 神経外科が中心となって地域住民の啓蒙などを行 でも上位の業績を上げています。神経内科は平成 8 いつつ、近隣の医療機関、医師会や救急搬送機関 年から診療が開始され、主に外来患者診療のみが などに加わってもらい、地域完結型の脳卒中診療 行われていました。 体制作りを試みています。卒後初期臨床研修制度 による研修は、毎年度 6 名程度の研修医が 院内でローテーションしており、19 年度 から 2 年次全研修医に神経内科は 1 カ月間 の必修となります(本院のホームページ にその詳細が記載されています)。 現在、当病院には金沢医科大学卒業生 が 2 名おられます。平松武先生(平成 10 年卒)は整形外科で、桐谷玲子先生(平 成 11 年卒)は泌尿器科で活躍されていま す。また、近隣には福岡卓実先生、福岡 幸恵先生ご夫妻(昭和 56 年卒、62 年卒) 、 菅田宗樹先生(平成 7 年卒)が開業されて おられ大変心強い限りです。 中国労災病院 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 19 学生のページ クラブ活 動: 動:ゴルフ部 こうえん あきひろ 医科大オープン・親睦ゴルフ大会 ゴルフ部主催の医科大オープンが平成 18 年 6 月 1 日 (木・開学記念日)ゴルフ倶楽部金沢リンクスにおい て開催された。例年どおり人事厚生課、教学課、ゴル フ部が共同で準備を進め、互助会ゴルフ大会と協同開 催された。 今年度は、学生 39 名、職員 31 名の参加があり大盛 況であった。 【結果】 優 勝 高圓 瑛博(第 1 学年) 準優勝 柴田 健雄(第 4 学年) 第3位 中嶋 和仙(第 2 学年) 〈優勝者 高圓 瑛博さん のコメント〉 今回医科大オープンで優勝でき て非常にうれしいです。 中学、高校とゴルフをやってい ましたが、2年間のブランクがあっ たので今回うまくコースをまわれ るか不安でした。しかし、一緒に まわった先輩方の助けもありリラ ックスしてまわれました。とても 感謝しています。 これからも練習を重ねさらに上 を目指していきます。また、医学 部学生として一生懸命勉学に励み、3年後の共用試験、5年後 の国家試験を突破したいと思います。 《本学スタッフ新刊著書》 炭山嘉伸、門田守人、跡見 裕 編集 これだけは知っておきたい 外科 Q&A −研修医からの質問 528 − 分担執筆: 高島茂樹、吉谷新一郎 (Ⅲ. 症状・病態・疾患, 170-176 頁) 総合医学社 A5 判、539 頁 定価(本体 6,200 円 + 税) 2006 年 4 月 6 日発行 ISBN4-88378-178-X 本書は臨床研修医がごく普通に臨床の現場で遭遇す る様々な疑問点について分かりやすく質問形式で書か れた本である。528 の疑問点についてその分野の権威 のある先生方が図や表、写真を豊富に使って分かりや すく解説されている。また、新臨床研修ガイドライン にそってまとめられており臨床の現場でも携帯できる ようにハンディサイズとなっている。 この本は、外科系の研修医のみならず若手医師、看 護師、さらには医学部学生にも便利な一冊になると思 う。 (消化器外科治療学 吉谷新一郎記) 栂 博久 監修、高橋昌克 編集 睡眠呼吸障害 診療のポイント メディカルビュー社 B5 判、111 頁 定価(本体 3,500 円 + 税) 2006 年 5 月 20 日発行 ISBN4-7583-0326-6 C3047 睡眠時無呼吸症候群( SAS )は、いまや一般的な 疾患として認識されており、死の四重奏などの合併症 を引き起こす疾患である。各科にわたる知識が必要と されている睡眠呼吸障害について、合併症までを含め て分かりやすく解説されており、はじめて学ぶ医師、 コメディカルスタッフに最適と考える。 この本は、当呼吸器内科だけでなく耳鼻咽喉科、歯 科、循環器科、内分泌代謝科、神経内科の先生方が協 力して、金沢医科大学のスタッフだけで書き上げたも のである。開学以来 30 年以上、諸先輩、大学関係者 の方々が医療界において多くの業績を積み上げてこら れた実績のおかげで実現できたものと思っている。 関係者の方々に心より感謝申し上げたい。 (呼吸機能治療学 高橋昌克記) 【学事・学術】 金 沢 医 科 大 学 20 附属看護専門学校 かな幅広い教養と優 れた技術を身につけ た、患者さんから信 頼される看護師とな られるよう期待して 第 19 回 戴帽式 います」との祝辞 が贈られ、戴帽生の 出身高校の恩師を代 表して金沢向陽高等 平成 18 年 6 月 16 日(金)第 19 回戴帽式が本部棟 4 学校吉本與彦校長か 階講堂において行われた。病院での実習に入る 2 年生 ら「尊い生命をあず 39 名が戴帽し志を新たにした。 かる看護師として、 分火したキャンドルを手に新たな志を 松原純一学校長が一人ひとりにナースキャップをか 日進月歩の医療の世界で、知識と技術の習得のみなら ぶせ、戴帽生はキャンドルを手にナイチンゲール誓詞 ず、豊かな人間性も併せて身につけるよう精進してほ を声高く読み上げた。松原学校長から「患者さんに接 しい」との祝辞が贈られた。これに対して戴帽生代表 するのに戸惑ってしまった時は、患者さんの痛み、苦 の石田奈菜恵さんが「未来の看護師として、一人の人 しみ、辛いことを聞いてあげることで道が開ける。看 間として医療に対する倫理観を育み、誠実に任務を果 護は心から始まる。また、学生という字は、学びつつ たせるよう努力します」と誓いの言葉を述べた。 生きる、と書きます。しっかり力をつけて 1 年半後に は、素敵な看護師になって巣立ってほしい」との式辞 式後には出席された出身高校の恩師と学生との交流 がもたれ、和やかなひとときを過ごした。 (看護専門学校事務課 高田結子記) が述べられた。続いて高島茂樹病院長から「人間性豊 附属看護専門学校 平成 18 年度 学生寮防火訓練・消火器取扱訓練 看護専門学校学生寮の防火訓練が、平成 18 年 6 月 22 日(木)・23 日(金)の両日にかけて、通学生も加 わり実施された。この訓練は、寮生に学生寮の火災発 生時の消防活動と消火器具使用方法を理解させること を目的としている。 消火器取り扱いの説明を受ける看護学生(本学グラウンド) 〔 6 月 22 日 16:30∼〕 実施前説明会 理室が火事」と大声で連呼、火災報知器のボタンを押 ①ビデオ「わたしたちの防火」供覧 す。1 階宿直室に本部が設置され、臨床研究棟の防災 防火知識の意義を分かりやすく解説し全体を 5 部構 センターに通報するとともに構内放送をする。4 階で 成で編成したもので、効果的に防火について学んだ。 は消火器による消火、消火栓の放水により消火活動を ②防火訓練実施要領、役割分担の説明 開始。各階から消火器が運ばれ消火を行うが、延焼の 〔 6 月 23 日 16:30∼〕 防火訓練(通報・消火・避難) 学生寮 A 棟 4 階の調理室から出火、初期の消火活動 にもかかわらず延焼の恐れがあり、避難を要するとの 想定で防火訓練が行われた。 4 階調理室で発炎筒が点火され、近くの寮生が「調 恐れがあり、各自素早く非常階段から本校駐車場に避 難。まもなく内灘町消防隊が到着、鎮火となった。 最後に内灘消防署から「この訓練を機会に防火意識 を高めてほしい」との講評があった。 引き続き全員で消火器の操作訓練を行い防火訓練を 終了した。 (看護専門学校 加須屋美華記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 21 学 術 病院新館 12 階大会議室に 金沢医科大学医学会 第 42 回 おいて開催され、70 名の 学術集会 参加があった。 山本 達会長の挨拶の 後、東 光太郎理事(庶務 金沢医科大学医学会第 32 回総会並びに第 42 回学術 集会が、平成 18 年 7 月 15 日(土)午後 1 時 30 分から、 会計担当)から、平成 17 年度の事業および決算、 平成 18 年度の役員、事業 予定および予算について 報 告 が な さ れ た。 次 に、 過 去 1 年 間( 平 成 17 年 1 特別講演:米倉秀人教授 月∼12 月)に公表された英文論文に対する論文表彰 が行われ、下記の 6 名に賞状と副賞が授与された。 学術集会においては、米倉秀人教授(ゲノム医科学) の特別講演「血管で働く新しいしくみと遺伝子を探る」 をはじめ、平成 17 年度学長賞受賞者、波多野栄重助手、 福井清数助手の講演および一般口演 15 題の計 18 題が 発表され、各発表ごとに活発な質疑応答が行われた。 論文表彰を授与された 6 名の皆さん (医学会集会担当・高齢医学 森本茂人記) ◇論文表彰 大塚俊美〈消化器内科医員〉 対象論文: Use of serum carbohydrate-deficient transferrin values to exclude alcoholic hepatitis from nonalcoholic steatohepatitis: a pilot study:Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 29: 236S-239S, 2005. 村上 学〈総合医学研究所分子腫瘍学研究部門助手〉 対象論文: Inhibitory effect of RNAi on Japanese encephalitis virus replication in vitro and in vivo: Microbiology and Immunology, 49: 1047-1056, 2005. 佐藤勝明〈病理病態学(病理学Ⅱ)講師〉 対象論文: Hepatocellular carcinoma and nonalcoholic steatohepatitis developing during long-term administration of valproic acid:Virchows Archiv : an international journal of pathology, 447: 996-999, 2005. 市堰 徹〈運動機能病態学(整形外科学)助手〉 対象論文: DNA oxidation injury in bone early after steroid administration is involved in the pathogenesis of steroid-induced osteonecrosis:Rheumatology (Oxford), 44: 456-460, 2005. 森山 学〈泌尿生殖器治療学(泌尿器科学)講師〉 対象論文: Effects of oxalate exposure on Madin-Darby canine kidney (MDCK) cells in culture : A renal prothrombin fragment-1(RPTF-1) mRNA expression:Urological Research, 33: 470-475, 2005. 髙橋 孝〈総合内科学(総合診療科)講師〉 対象論文: Inhibition of cyclooxygenase-2 enhances myocardial damage in a mouse model of viral myocarditis: Life Sciences, 78: 195-204, 2005. 〈一般口演〉 齊藤峰輝助教授 淺倉慶子(学生) 鶴岡直樹助手 岩井邦充助教授 崔 森大学院生 郭 建飛短期研究員 【学術】 金 沢 医 科 大 学 22 金沢医科大学医学会第 42 回学術集会プログラム(平成 18 年 7 月 15 日(土)13:30 ∼ 17:00 ) ○第 2 群 ◇特別講演 座長:竹上 勉教授 血管で働く新しいしくみと遺伝子を探る ゲノム医科学(生化学)教授 米倉秀人 ◇学長賞受賞講演 座長:東 光太郎教授 1. ヒト腰椎椎間板ヘルニア組織における ADAMTS-4 ( aggrecanase-1 )の発現 運動機能病態学(整形外科学)助手 波多野栄重 2. ステロイド投与家兎大腿骨髄の観察:微小脂肪塞 栓の存在について−走査型電子顕微鏡を用いたス テロイド性骨壊死発生機序に関する研究 − 運動機能病態学(整形外科学)助手 福井清数 ◇一般口演 ○第 1 群 座長:上田善道教授 1. HTLV-1 関連脊髄症( HAM/TSP )の発症に関与す るウイルス因子・宿主因子の相互作用( H2006-7 ) 生体感染防御学(微生物学)助教授 齊藤峰輝 2. タイラーウイルス L 蛋白欠失組換えウイルスの作 製( H2006-7 ) (生体感染防御学)医学部第 4 学年学生 淺倉慶子 3. 培養骨芽細胞に対するコラーゲントリペプチドの 生理作用の解析( S2004-15 ) ゲノム医科学(生化学)助手 鶴岡直樹 4. 心血管系細胞肥大過程における核骨格とクロマチン DNAとの相互作用について:プロテオーム解析を 用いて 高齢医学(老年病学)助教授 岩井邦充 5. マウスのアナフィラキシー低血圧における肝血行 動態( C2005-1 ) 生理機能制御学(生理学)大学院生 崔 森 〈学長賞受賞講演〉 波多野栄重助手 福田正道講師 座長:森本茂人教授 6. Assessment of tumor angiogenesis in lung adenocarcinoma using FDG PET imaging( C2005-2 ) 放射線診断治療学(放射線医学)短期研究員 郭 建飛 7. 早期胃癌に対する粘膜剥離術 (ESD) の経験 消化器機能治療学(消化器内科学)助手 白枝久和 8. 当科における頭頚部がん治療の現状 感覚機能病態学(耳鼻咽喉科学)助教授 辻 裕之 9. 人工膝関節置換術における最近の知見(海外留学) 運動機能病態学(整形外科学)助手 杉森端三 10. ジェネリック点眼薬における安全性評価 感覚機能病態学(眼科学)講師 福田正道 ○第 3 群 座長:佐川元保教授 11. Expression of VEGF in Alveolar Type I and Type Ⅱ cell(海外留学) 呼吸機能治療学(呼吸器内科学)助手 戸部勇保 12. Rad38 遺 伝 子 異 常 に よ っ て 起 き る 肺 病 変 の 検 討 (S2005-9) 呼吸機能治療学(呼吸器内科学)助教授 長内和弘 13. Azoxymethane (AOM) 誘 発 db マ ウ ス 大 腸 発 癌 における柑橘類化合物の発癌抑制効果について ( C2005-3 ) 消化器外科治療学(消化器外科学)大学院生 林 圭 14. NASH 動物モデルにおける酸化ストレスとミトコ ンドリアの遺伝子変異に関する検討( H2005-8 ) 消化器機能治療学(消化器内科学)助教授 川原 弘 15. 遺伝疾患原因遺伝子の探索( S2005-6 ) 総合医学研究所(共同利用部門)講師 石垣靖人 〈一般口演〉 福井清数助手 戸部勇保助手 長内和弘助教授 白枝久和助手 辻 裕之助教授 杉森端三助手 林 圭大学院生 川原 弘助教授 石垣靖人講師 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 23 ご協力、ご支援の賜物とこの 第 48 回 場を借りて篤くお礼申し上げ 日本老年医学会学術集会 ます。 さ て、 わ が 国 は 世 界 に 先 駆けて超高齢社会を迎えよう 会長: 高齢医学 松本正幸教授 としており、今後の日本社会 日時: 平成 18 年 6 月 7 日(水)∼ 9 日(金) は高齢者の叡智を社会に還元 会場: 石川県立音楽堂、ホテル日航金沢、 し、より成熟した社会へ進む 金沢全日空ホテル、金沢市アートホール、 ことが求められる。高齢化社 金沢市もてなしドーム地下広場 会に必要な社会的基盤の整備 会長講演の松本正幸教授 はもちろん、心身ともに生き 生きと暮らせる高齢者の健康に貢献し得る医療を目指 し、今回のテーマを「老年医学の発展とそのストラテ ジー」とした。 招聘講演として米国から Jerome L. Fleg 教授( National Heart, Lung, & Blood Institute, Bethesda, USA )が、また、日韓合同シンポジウムにおいてはYoungSoo Lee 教 授( University of Ulsan, Korea ) が、 さ らには若手企画シンポジウムではイギリスから Jesus Gil 博士( MRC Clinical Sciences Centre, UK )らが 来沢し、最新老年医学の国際色あふれる話題を提供し ていただいた。特別講演には神野正博恵寿総合病院院 長が「地域社会における老年医療」と題し高齢者との 平成 18 年 6 月 7 日(水)、8 日(木)、9 日(金)の 3 日間、 金沢市において第 48 回日本老年医学会学術集会を開 催した。 本学会は毎年、日本老年医学会の会員を中心とし、 共生やボランタリーな心の醸成が大切とのお話を、ま た上島弘嗣滋賀医科大学教授からは科学的な見地から 「日本人の食生活と高齢者疾病構造」についてのお話 を、それぞれいただいた。 医師をはじめ薬剤師、看護師、ケアマネージャー、リ シンポジウムでは、老年医療として関心の高い「高 ハビリ療法士、栄養士など多職種が集まる全国学会で 齢者における生活習慣病」、 「認知症の早期発見と治療」 ある。今年も老年医学の最新動向が発表され、高齢者 および「高齢者の循環器疾患」を、また消化器、泌尿器、 医療に情熱を注ぐ全国の会員の方々はもとより地域の 看護、麻酔、脳神経外科、僻地医療などを紹介する「専 医師、医療関係者、関連機関、コメディカル、各メデ 門領域における老年医学」を、Aging Science Forum ィアの方々を含め 1,500 名余が集い、盛会のうちに終 では高齢者先端医療としての各臓器の再生医療の動向 了することができた。これもひとえに本学の皆様方の を伝える「高齢医学における未来医療」が企画され包 次頁下段へ 市民参加でにぎわった市民公開シンポジウム(金沢駅もてなし ドーム地下広場にて) 会長講演前のブレイクにコンサート 【学術】 金 沢 医 科 大 学 24 第 21 回 日本脊髄外科学会 会長: 脳脊髄神経治療学 飯塚秀明教授 日時: 平成 18 年 5 月 25 日(木)、26 日(金) 会場: 石川県立音楽堂、金沢全日空ホテル 特別講演の中川 洋名誉教授 招待講演の Resnick 先生 本学会は、角家 暁本学名誉教授が平成 3 年に第 6 回 を金沢で開催して以来、約 15 年ぶりの本学での主催 招 待 講 演 に は、 米 国 Wisconsin 大 学 の Resnick 先 となった。脳神経外科における脊髄・脊椎手術は増加 生 を お 招 き し「 Evidence-based guideline for C1-2 傾向にあるが、その治療成績を今一度振り返る時期に fixation techniques 」の題で米国の現状についてお話 来ているのではないかと考え、1 )髄内病変に対する いただいた。 治療戦略、2 )頸椎変性疾患の長期成績と反省の 2 つ 一般演題はすべてプレナリー形式で参加者が一同に を主題として掲げた。例年以上の 270 題の演題応募が 会したこともあり、いずれの演題にも有意義な討論が あり、401 名の参加者があった。口演は 1 会場にてプ 展開された。ポスター発表においても活発な討論が行 レナリー形式で行ったため、主題 13 題、一般口演 57 題、 われ、優秀ポスターとして 3 題の演題が選出された。 ポスター200 題となった。 また、口演発表からは本学会誌である「脊髄外科」に 特別講演は、日本脊髄外科学会理事会制度の発足 推薦論文が選出された。本学会は、参加者が自らの治 に伴って、初代理事長に就任された愛知医科大学名 療成績を振り返るとともに、最新の治療・診断技術に 誉教授の中川 洋先生にお願いし、「 Development of ついての情報を得るよい機会となった。会員が、より modern spinal neurosurgery through my career 」 質の高い医療を社会に還元することの一助となるもの の題のもと、これからこの領域で活躍する先生方へメ と期待される。 ッセージを添えて脊髄外科の発展をかえりみられた。 また、コムル代表の辻本好子氏には、 「患者が医療に 望むこと」の題で、患者の立場から治療側への期待を 本会開催にあたりご支援をいただいた大学、橘会、 関連病院および関係者各位に厚くお礼申し上げます。 (脳脊髄神経治療学 赤井卓也記) 含めたお話をいただいた。 前頁から 括的な討論が行われた。パネルディスカッションでは、 ま役に立つような工夫も行われた。その他、ジャーナ 「高齢者医療における超音波診断」 、寝たきり、転倒、 リスト企画セッションの「老年医療と介護の問題点と 嚥下性肺炎、認知症などの老年症候群の原因となる「脳 展望」の発表では、未来の老年医療のあり方について 皮質下虚血病変の臨床的意義」につき活発な議論が展 厳しいご意見も頂戴した。 開された。 期間中は市民公開シンポジウム、「老年栄養士との Meet the Expert(教育企画)では、高齢医学の専 共同企画:高齢者の健康と食」 、「幸せな高齢社会をつ 門家 24 名による高齢者臨床の最新の話題を提供して くる」 、「石川県薬剤師会との共同企画」 、「介護保険 いただくとともに、老年医療における Controversy と 2006 金沢・介護保険制度改革と介護予防の展望」を して「高齢者医療・介護の行方」 、「高齢者睡眠時無呼 開催し、多くの市民の方々が参加された。 吸( SAS )の治療」、「高齢者糖尿病の治療」が各対 超高齢化が社会問題となっている現在、このような 立する意見のお二人によってディベートの形で討議さ 「老い」をタ−ゲットとした学会が、当地で開催され れ、興味深い進展となった。 たことはたいへん意義深いことである。本学術集会が 実践的教育企画では、「高齢者の下がらない血圧に 様々な分野における研究推進の原動力に、また有益な どう対処するか」など日常臨床で遭遇する症例に対し 情報交換の場になったであろうと確信し 、 今後の研究 て具体的なアプローチの仕方を老年医学会会員のみな 成果につなげていきたいと思う。 らず、石川県地域医療に携わる先生方に対しても臨床 専門家に解説していただき、明日からの診療にそのま (高齢医学 森本茂人記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 25 第 10 回 日本神経ウイルス研究会 学術集会 会長: 生体感染防御学 大原義朗教授 日時: 平成 18 年 6 月 8 日(木)∼ 10 日(土) 会場: いこいの村 能登半島 特別講演の渡邊俊樹教授 第 10 回日本神経ウイルス研究会学術集会が、平成 18 年 6 月 8 日(木)から 10 日(土)にわたって、いこいの 村能登半島で開催された。 神経ウイルス研究会は「神経系に感染する病原体と 神経組織・機能との相互作用を研究し、その知見に基 づいた技術開発により医療・神経科学に貢献する」こ とを目的として平成 9 年に創立され、今年が記念すべき 10 年目であった。全国より多数の参加があり、一般演 題発表に加えて 2 題の特別講演が行われた。自然豊かな 地でカジュアルな雰囲気の中で行われた本学会は、参 加者全員が同所に宿泊したため、時間に拘束されるこ となく、自由で活発な討論がなされた。 2 日目午前に行われた特別講演Ⅰでは、東京大学大学 院・新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻の渡 邊俊樹教授が「ヒト白血病ウイルス HTLV-1 の病原性 発現機構」について、これまでの知見を整理し、現在 進行中のデータまで含めた、分子レベルから臨床的な 第 18 回 花粉症研究会総会 会長: 代替基礎医学 山口宣夫教授 日時: 平成 18 年 6 月 11 日(日)13:00∼16:00 会場: 金沢市保健所・駅西福祉健康センター3 階 第 18 回花粉症研究会総会およ び 学 術 集 会 が、 平 成 18 年 6 月 11 日(日)に金沢市駅西健康ホー ル「すこやか」において開催さ れた。 花粉症研究会は花粉症につい て疫学的、病態生理学的に調査 研究し、花粉症の治療および予 防対策確立を目的に設立された。 毎 年、 研 究 発 表 集 会 を 開 催 し、 特別講演の 山口宣夫教授 臨床医ならびに基礎医学者、植 物学者、農林関係技術者、それに花粉症の研究を志向 するすべての人の意見交換を目的として進めている。 特別講演の倉根一郎先生 症状の説明へつながる興味深いお話を講演いただいた。 また、その日の最終演題として、国立感染症研究所ウ イルス第一部・倉根一郎部長による「節足動物媒介性 ウイルス脳炎の現状と今後」と題した特別講演Ⅱをい ただいた。感染後のウイルスの動態については誰もが 研究の対象とするが、今回の話はウイルスを媒介する 媒体(蚊やダニ等の節足動物)と感染にスポットをあ てた内容で、貴重な講演であった。 初日・2 日目とも講演終了後の時間は参加者全員によ る会食または懇親会にあてられ、ここでも、発表時に論 じきれなかった話題について熱い議論が重ねられ、また、 研究者どうし親睦を深める有意義な時間となった。3 日 目も一般演題の発表が行われ成功のうちに閉会した。 本学術集会開催にあたり、ご支援いただきました本 学および学外の関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。 (生体感染防御学 谷浦直子記) 本研究会は富山大学医学部公衆衛生学教室に本部を おき、毎日空中花粉検索を行い、春はスギ花粉飛散状 況を中心に情報の収集や提供を行っている。全国規模 の研究会であるが、今年は北陸 3 県からの演題が多かっ た。また、毎回著名な学者が特別講演を担当し、ユニ ークな講演をされている。過去には IgE の発見者で免疫 血清学にはかり知れない貢献をなされた石坂公成先生 (ラホイヤ・アレルギー免疫研究所)の特別講演も開催 されている。一般演題は各大学の他、林業技術センター、 開業医の先生からの演題があり、多彩な分野から活発 な質問や応答が交わされた。 本学からは、感覚機能病態学(耳鼻咽喉科学)の楊 寧大学院生のスギ花粉症における風と飛散数の関連性 について、新しい知見を発表されたほか、当教室から は北陸産スギ花粉によるモデル動物の作成と種々の動 物モデルとの比較検討を行った結果について報告した。 特別講演では、会長の本学山口宣夫教授から「花粉 症に対する代替医療的対策について」と題した講演を いただいた。 最後に、本研究会総会および学術集会開催にあたり ご支援をいただいた本学および関係者各位に厚くお礼 申しあげます。 (代替基礎医学 松野栄雄記) 【学術】 金 沢 医 科 大 学 26 第31回日本外科系連合学会 学術集会 会長: 消化器外科治療学 高島茂樹教授 日時: 平成 18 年 6 月 22 日(木)、23 日(金) 会場: ホテル日航金沢、石川県立音楽堂、 金沢市アートホール 第 31 回日本外科系連合学会学術集会が平成 18 年 6 月 22 日 ( 木 )、23 日 ( 金 ) の両日に、ホテル日航金沢、 石川県立音楽堂および金沢市アートホールの 3 会場に おいて開催された。 本学術集会は会則にうたわれているように、専門を 異にする外科系診療各科が一堂に会し、それぞれの視 点に立って英知を結集し、外科系の医療の向上を第一 左から比企教授、高島、特別講演をお願いした H. Bauer 教授、 大谷先生 に、種々の問題点や課題に取り組んでいくことを目的 としている。 現在医療環境の変化、外科系に厳しい新初期臨床研 修医制度の導入、従来の外科手術と鏡視下手術などの 9 演題が集まりグローバルな空気を感じつつ活発な討 論が行われ、留学生にとって研究への励みになったと 考えてる。 minimally invasive surgery の選択、癌手術では、進 シンポジウムには「思い出の他科協同手術」をは 行度に応じたきめ細かな術式の選択など、外科診療科 じめ、各チャプター委員長にお願いして、できるだけ 全体がこれから真正面から向き合い、克服していかな テーマが広く多岐にわたるよう 14 テーマを、パネル ければならない課題が山積している。そこで本学会の ディスカッションには 5 テーマ、ワークショップには 目的をふまえ今回は「外科、これから」をメインテー 6 テーマを設け、要望演題として「外科に役立つ良い マに掲げて種々の企画を設定した。 画像とは」など 13 テーマを企画した。シンポジウム、 まず、新初期臨床研修医制度がスタートして 3 年目 パネルディスカッションにはすべてその領域のエキス を迎えたことから、研修を終えた医師を対象にその体 パートの先生に特別発言をお願いし、要望演題にはコ 験に基づいて意見を述べてもらうという「新臨床研修 メンテーターを置いて討論に加わっていただいたが、 医制度を終えて」と題するシンポジウムを組んだ。引 どの会場も非常に活発で質の高い討論が行われたよう き続いて厚生労働省中島正治健康局長に「我が国の医 に思われる。 療の課題と医師の責務」と題した特別講演をいただい 以上の学術集会に加え、これまで私がライフワーク た。このシンポジウムでは、シンポジスト全員が一致 としてきた「がん」について少しでも一般市民の方々 して新研修制度での研修が良かったとする見解を示し にお役に立てればと考え、 「がんとたたかう」という たことは、私どもにとっては驚きであった。また、中 タイトルで石川県成人病予防センター前理事長の西正 島局長からは新研修医制度を含め現在の医療の課題と 美先生の司会のもと、市民公開講座を開かせていただ これからの日本の医療の方向性が示され考えさせられ いた。 る点が多く意義深いものであった。 本学会の開催に際し、学会役員各位のご指導、ご支 特別講演としては、本学会が連携している Royal 援、会員の皆様のご協力により、演題数もビデオシン Australasian College of Surgeons 会長の Russell Stitz ポジウム 32 題、シンポジウム 74 題、パネルディスカ 教授を招聘するとともに、ドイツからはドイツ外科学 ッション 33 題、ワークショップ 41 題を含め、演題数 会の重鎮である Hartwig Bauer 教授を、また、中国か は計 546 題の多数に達し、また、学会参加者も 800 名 らは Yi-long Wu 先生をお招きしてご講演いただいた。 を超え、盛会裡に終了させていただいた。関係各位に また、本学会の特徴の一つであった外国留学生を対 象にインターナショナルセッションを復活させたが、 心から感謝申し上げたい。 (消化器外科治療学 高島茂樹記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 27 行為を包括し一日あたり定額で保険請求する。DPC 第 246 回 制度が従来の出来高払制度と異なるのは、単に保険請 日本病院管理学会例会 求計算方式だけでなく、医療費用に対する収益の向上 策すなわち質の高い医療を効率よく安全に提供する方 策が各病院に委ねられているところにある。そして、 日時: 平成 18 年 6 月 24 日(土)13:30∼17:30 病院が DPC 制度を活用し経営改革を図るためには、 会場: ホテルイン金沢 医療の「費用対収益」を測定評価できるコスト管理シ ステムが不可欠となるのである。 司会: 松田芳郎(健康管理センター教授) 大石勝昭(広報監理室参与) 講師: 亀田俊忠先生 (医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 理事長) 山口治紀 先生(健康保険医療情報総合研究所 代表取締役社長) 大野木辰也 氏(本学理事長室室長) シンポジウムでは、はじめに病院経営改革の実務 分野で先駆的な実績をあげている亀田俊忠先生が「病 院経営の戦略デザイン」について講演され、次いで DPC のシステム開発・データ分析を全国で指導して いる山口治紀先生が「病院の経営情報システムおよび コスト管理システムの必要性」に関する方法論を展開 されたあと、大野木辰也室長が「金沢医科大学病院経 営分析システムの開発事例」を紹介した。討論では倉 知圓先生(南砺市民病院長)ほかの方々から会場発言 があり、講師との間で活発な質疑応答が交わされた。 講演と討論は、①病院が組織的かつ継続的に改善し ていくためには経営戦略デザインが必要である。②経 営戦略はデータウェアハウス(データ分析ツール)を利用 して診療活動の PDCA( Plan-Do-Check-Action )サイ クルを回すことにより推進される。③ DPC 導入病院 は診療損益の実績を自院の戦略目標や他院の指標に照 らして評価することにより、診療業務の抜本的な改善 を図ることができるといった論点を軸に展開された。 シンポジウムで講演する亀田俊忠先生 司会席から最先端病院の企業的経営管理手法を確認 して感じたことは、DPC 導入病院が各業務システム を整備し採算経営を実現するまでの過程は容易ではな いということである。診療活動から発生するコストを 各部門の診療管理目標に合わせて把握できるようなデ ータウェアハウスを構築するためには、医事会計、オ ーダリング、電子カルテ、物流、財務会計などの業務 システムを稼働し、戦略デザインに合わせてデータを 統合しなければならないことになるが、それを実現し ている病院はまだ少ない。そういう実状と関わりなく、 DPC 制度は医療制度改革の一環としてスタートした シンポジストの亀田俊忠先生(右)、山口治紀先生、大野木辰也室長 のである。 (広報監理室 大石勝昭記) 第 246 回日本病院管理学会例会が、本学松田芳郎教 授の担当のもとに、平成 18 年 6 月 24 日(土)ホテル イン金沢で開催された。例会のテーマは「 DPC 制度 下の病院情報システムと病院コスト管理システム」と いう難解なものであったにもかかわらず、22 都道府 県から 177 名(半数が石川県外)の参加者があった。 例会責任者の松田教授がこのテーマを選んだ趣旨は 次のとおりである。すなわち、DPC(診断群分類別 包括評価制度)導入病院は、厚労省の疾患分類で診療 司会を担当した松田芳郎教授(左) 、大石勝昭参与 【学術】 金 沢 医 科 大 学 28 となる。 第9回 総会では、講演 2 題、シンポジウム 2 件、一般演題 27 日本医学英語教育学会総会 題が行われた。初日には、中国医学外国語学会長白 永 権( Bai Yonquan )教授により、中国で医学英語教育 を時代の変化の中でどう充実してきたかについて興味 会長: 人間科学科目(外国語) 大瀧祥子教授 日時: 平成 18 年 7 月 15 日(土)、16 日(日) 会場: 石川厚生年金会館 深い講演があった。 シンポジウム「米国留学準備教育」では、東邦大学 松井秀親教授による医学部としての留学システム、日 本大学大石 実助教授による実践的な準備教育などに ついて意見が交わされた。また、西日本医科薬科学生 ESS 連盟の学生によるスピーチ等の実演があり、会員 から温かい助言や激励がよせられた。 2 日 目 に は、NHK 教 育 テ レビでおなじみの投野由紀夫 明海大学教授の講演があり、 医学英語教育へのコーパス応 用の有効性について認識を新 たにした。シンポジウム「医 学英語学習能力の開発」では、 本学会名誉理事長植村研一先 生による脳の構造からみた効 果的な教授法、東京女子医科 学会会場 大学吉村俊正教授による臨床 日本医学英語教育学会( JASMEE )第 9 回総会は、 特別講演の投野由紀夫明 海大学教授 英語会話能力開発のためのカ 平成 18 年 7 月 15 日(土) ・16 日(日)に石川厚生年金会 リキュラムの創造など、これからの教育実践のための 館において開催された。本学会は、国際的な視野と能 多くの示唆を得た。全国から熱心な会員等 121 名が参集 力を備えて活躍できる医療人を育成するために、医学 して互いの教育・研究の成果を分かち合い、活発な討論 英語に関する研究を推進し、医学英語教育の向上を図 を交えて、盛会のうちに幕を閉じた。 ることを目的とし、医師、医療従事者ならびに英語教 本学会開催に際して多大のご支援をいただいた大学 育者などを会員としている。総会は、毎年夏に主に東 および(財)橘勝会ほか関係者各位に厚くお礼を申し上 京で開催されており、地方では二度目、日本海側で初 げたい。 (人間科学科目 大瀧祥子記) 《本学スタッフ新刊著書》 丁 宗鐵,佐竹元吉 編集 今日のサプリメント(薬局別冊) 分担執筆:平井圭一、島田ひ ろき、島村英理子、橋本梧郎 (南米、アマゾン原産のハーブ、 スパイス、361-372 頁) 南山堂 B5 判、498 頁 定価(本体 5,000 円 + 税) 2006 年 1 月 30 日発行 ISSN0044-0035 欧米でいうサプリメントは健康食品と訳されるが、 日本ではこれに近い概念は長らく民間薬と呼ばれてき た。民間薬といっても「薬」である以上、医薬の専門 家の指導やアドバイスも必要である。しかしながら、 いまや健康食品は医療資格や研修を経ていない業者に よって扱われており、本書はこのような最近の傾向に 警鐘を鳴らすものである。 本書はサプリメントについての疾患編、成分編にわ けて構成されている。「疾患編」では病気の概論、サ プリメントの役割や安全性、医薬品との関連性(相互 作用)を、また「成分編」では成分の特徴・作用・摂 取時の注意点・医薬品との関連性(相互作用)を中心 に解説してある。付録として、特定保健用食品、主な サプリメントの商品データ一覧表を掲載してある。 (分子細胞形態科学 島村英理子記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 29 大学院医学研究セミナー ウイルス発癌において高発癌性 と低発癌性を決める分子機構 双極性障害の分子病態 講 師 加藤忠史先生(理化学研究所 脳科学 講 師 藤井雅寛先生(新潟大学大学院医歯学 総合研究科ウイルス学分野教授) 総合研究センター 精神疾患動態研究 チーム) 日 時 平成 18 年 6 月 16 日(金)16:00 ∼ 17:30 日 時 平成 18 年 6 月 16 日(金)18:00 ∼ 19:30 場 所 基礎研究棟 3 階セミナー室 D2・3 場 所 病院本館 4 階 C41 講義室 担 当 生体感染防御学 大原義朗教授 担 当 精神神経科学 地引逸亀教授 〔講師略歴〕 藤井先生は昭和57年に熊本大 学医学部をご卒業後、京都大学大 学院(ウイルス研究所、日沼頼 夫教授)で学位を取得され、米 国ソーク研究所留学、金沢大学 がん研究所助手、東京医科歯科 大学助教授を経て平成9年から新 潟大学教授を務められています。 〔主な研究分野〕 先生はヒトではじめて発見されたレトロウイルスで あるヒト T 細胞白血病ウイルス( HTLV-1 )をご専門 とされ、HTLV-1 感染者の一部に発症し、最も難治性 の白血病の一つである成人 T 細胞白血病( ATL )の 発症機構の解析を精力的に進めておられます。 〔セミナーの内容〕 まず、HTLV-1 とは何かおよび ATL の疫学と臨床像 について概説された。次に ATL を起こす HTLV-1 と 起こさない HTLV-2 が存在すること、両ウイルスの病 原性の相違がウイルス遺伝子にコードされた Tax 蛋 白の構造の違いに起因するという教室でのご発見に ついて、詳細なデータを示されながら分かりやすく 解説された。具体的には、HTLV-1 の Tax( Tax1 )と HTLV-2 の Tax( Tax2 )では、線維芽細胞を用いた軟 寒天コロニー形成能に顕著な違いがあり、変異体を用 いた解析から、Tax1 にのみ存在する C 末端の PDZ ド メインと言うモチーフがこの機能に必須であり、ここ には癌抑制遺伝子である Dlg を含む複数の蛋白が結合 することなどを明解に示された。HTLV-1 の持続感染、 ATL 発症機構に対するこのモチーフの役割がさらに 解明されれば、発症予防と治療法の開発につながるも のと期待される。 〔セミナーの成果〕 ご講演終了後、藤井先生も驚いておられたくらい実 に多くの質問がフロアーから出され、活発な議論が行 われた。本学の研究者の熱意が講師の先生にも伝わり、 非常に有意義な研究セミナーであったと思う。 (生体感染防御学 齊藤峰輝記) 〔講師略歴〕 加藤先生は昭和 63 年東京大学医学部卒業後、東大 病院精神神経科にて臨床研修の後、滋賀医科大学精神 神経科助手を経て、平成 11 年東京大学精神神経科講 師となり、平成 13 年より理化学研究所脳科学総合研 究センター老化・精神疾患研究グループおよび精神 疾患動態研究チームのチームリーダーを務められてい る。 〔主な研究分野〕 専門は躁うつ病の脳科学。 〔セミナーの内容〕 まず前半は、躁うつ病の臨床的特徴について述べら れ、続いて、躁うつ病の病因仮説について、モノアミ ン系、細胞内情報伝達異常、ミトコンドリア機能障害、 グルタミン酸、BDNF などがあり、このうちミトコ ンドリア機能障害の evidence について 31P-MRS(磁 気共鳴スペクトロスコピー)を用いた研究を説明され た。31P はエネルギー関連物質( ATP, クレアチンリン 酸)で躁うつ病の寛解期には細胞内 pH が低下し、う つ病相ではクレアチンリン酸低下を認め、特に後者で はミトコンドリア病と同様であるという。後半は、平 成 15 年 Nature Genetics に掲載され注目された躁う つ病不一致双生児を用いた XBP1、ER ストレス反応 について説明され、ミトコンドリア Ca2 + 制御障害に より神経可塑性変化が躁うつ病の再発脆弱性を示す病 態仮説を提示された。 〔セミナーの成果〕 加藤先生は現在でも東大病院で外来勤務をされてお り、一人の精神科医から研究者となった経緯も交え、 実際の臨床から最新の研究までわかりやすくに講演し ていただき、大学院生ばかりでなく本学教室員にとっ て大変有意義であった。 (精神神経科学 廣保 究記) 【学術】 金 沢 医 科 大 学 30 大学院医学研究セミナー 腫瘍椎骨全摘出術とその基礎的 バックグラウンド 講 師 川原範夫先生 (金沢大学整形外科・ 金沢大学附属病院リハビリテーション部 助教授) 日 時 平成 18 年 6 月 20 日(火)18:00 ∼ 19:30 高血圧の分子生物学 講 師 荻原俊男先生 (大阪大学大学院医学 系研究科 老年・腎臓内科教授) 日 時 平成 18 年 6 月 29 日(木)18:00 ∼ 19:30 場 所 病院本館 4 階 C41 講義室 場 所 病院本館 4 階 C41 講義室 担 当 運動機能病態学 松本忠美教授 担 当 高齢医学 松本正幸教授 〔講師紹介〕 川原先生は昭和 58 年に金沢大学 医学部を卒業後、同大学整形外科 教室に入局された。平成 2 年から 米国ミネソタ大学整形外科脊椎部 門に留学され、脊椎脊髄外科の研 鑽を積まれた。平成 4 年に金沢大 学整形外科講師、平成 15 年からは 金沢大学付属病院リハビリテーシ ョン部助教授に就任。今年の 7 月 1 日付けで、新設の金沢大学附属病 院脊髄・脊髄診療科の科長を併任されている。 〔主な研究分野〕 専門は脊椎脊髄外科で、中でも、脊椎悪性腫瘍や脊椎 変形に対する手術で世界的に有名である。また日本脊椎 脊髄病学会の評議員も務められ、日本の脊椎脊髄外科の 発展を担っている一人でもある。 〔セミナーの内容〕 今回は、脊椎全摘手術とその基礎的背景についてご講 演いただいた。脊椎全摘手術は、金沢大学の富田勝郎教 授が考案した術式で、脊椎悪性腫瘍を根治的に切除する という術式である。川原助教授は、本術式の開発に深く 携わり、術式の確立のために、富田教授とともにいろい ろなアイデアを出し合いながら、時には十数時間に及ぶ 本手術の助手を務めてこられた。 この術式は、今でこそ、脊椎悪性腫瘍に対する術式と しては、欧米の教科書にまで記載される標準術式に至っ ているが、最初に報告した時には驚嘆の声とともに、い くつかの疑問が投げかけられた。例えば、本術式の根 治性は? 脊椎全摘出後の再建は? 脊髄に対する安全性 は? などである。これらの疑問に対して、一つ一つ丁寧 に基礎的実験を重ねながら答えを見い出し、また、技術 的な問題をも克服してきたその地道な研究過程が本講演 で述べられた。以下、簡単に要約すると、脊椎には腫瘍 進展に対してバリアーとなる組織が存在すること、腫瘍 摘出後の再建には、後方からの脊椎 instrumentation の 併用で十分な固定性が得られること、脊髄は、脊椎全摘 術による血流低下の影響はほとんど受けないこと、など の事実を、実験データを基に明らかにし、本術式の正当 性を証明した。 〔セミナーの成果〕 今回の講演を通して、手術は、ユニークな発想と技術 だけで成り立つものではなく、理論的な背景に立脚した ものでなければいけないという強いメッセージを伝えて いただき、我々整形外科医ばかりか、今後の外科医療の 発展を担う若手医師にとって非常に有意義なものとなっ た。 (運動機能病態学 藤田拓也記) 〔講師紹介〕 荻原先生は昭和 43 年に大阪大学 医学部を卒業、昭和 49 年には米国 アリゾナ大学内科研究員、昭和 63 年大阪大学老年病医学講座(第四 内科)教授、平成 10 年大阪大学大 学院医学系研究科加齢医学講座教 授、平成 16 年 4 月より大阪大学医 学部附属病院長として現在に至る。 〔主な研究分野〕 高血圧の成因・治療に関する研究を一貫として行い、 特にレニン・アンジオテンシン系を中心に、分子生物学 的手法を導入、高血圧・糖尿病・老年病などの遺伝子解析、 循環器疾患の遺伝子治療を教室のテーマとして精力的に 行う他、老年者高血圧のガイドライン作成など老年病の 分野でも活躍中である。 〔セミナーの内容〕 荻原俊男教授による高血圧の分子生物学のセミナーは 毎年、恒例となっているが、本年度は高齢者高血圧の基 盤となる動脈硬化の発症機序につき、教室の成績を中心 に話された。内容としては 1) 新規アポトーシス関連蛋白 Apop-1 を発見され、本因子は従来のアポトーシス関連蛋 白、Bcl-2 ファミリーとは全く異なる構造を持ち、ミトコ ンドリアに局在し、サイクロフィリン D 依存性の酸化ス トレスに関与する血管細胞アポトーシスに介在すること、 2) 老化関連蛋白 Klotho はともに血管内皮細胞のミトコ ンドリア依存性(内因性)アポトーシスを抑制し、各種 酸化ストレスを顕著に抑制すること、3) Klotho は、脂 肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を促進し、脂肪細胞の 代謝だけでなく、分化にも関与している可能性があるこ と、4) 細胞寿命に関わるテロメア短縮を延長するテロメ ラーゼの老化血管内皮細胞に対する遺伝子導入により、 一酸化窒素産制能、単球接着数を指標とした老化を抑 制すること、5) Tissue inhibitor of metalloproteinase-3 ( TIMP3 )は matrix metalloproteinase( MMP )の 触 媒 部位に存在する亜鉛結合部位に結合し、その活性を阻害 することにより線維化促進など動脈硬化促進作用を示す 因子であること。さらに 6) NFκB、ets-1 のキメラデコイ を用いた大動脈瘤進展抑制などの成果につき紹介された。 (高齢医学 大黒正志記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 31 大学院医学研究セミナー 活性酸素、抗酸化剤と臨床 パーキンソン病に対する薬物治療の 現状及び展望と代替医療の可能性 講 師 丹羽耕三先生(丹羽免疫研究所所長、 講 師 光本泰秀先生(北陸大学薬学部代替医 医学博士) 療薬学教授) 日 時 平成 18 年 7 月 10 日(月)18:00 ∼ 19:30 日 時 平成 18 年 7 月 21 日(金)18:00∼19:30 場 所 病院本館 4 階 C42 講義室 場 所 病院本館 4 階 C42 講義室 担 当 分子細胞形態科学 平井圭一教授 担 当 代替基礎医学 山口宣夫教授 〔講師略歴〕 丹羽先生はは昭和 31 年京都大 学医学部卒業、大阪赤十字病院 皮 膚 科 医 師 を 経 て、 昭 和 49 年 に土佐清水病院と丹羽免疫研究 所を開設し、現在も臨床と活発 な研究活動を進めておられる。 Biochemical Pharmacology の 論文審査員も勤め、活性酸素研 究の草分けの一人。国際会議の 招待講演、特別講演、教育講演など多数あり、平成 14 年ヨーロッパ皮膚科学会議の唯一の日本人 Plenary Lecturer を務められた。 〔主な研究分野〕 近年多くの環境汚染物質が oxygen intermediates ( OI )を大量に発生させ、人体を攻撃して、発癌、膠 原病やアトピー性皮膚炎をはじめ多くの難病の増加、 重症化の原因となっており、先生は OI による疾病の 発生と、その治療方法に関して研究を進めておられる。 〔セミナーの内容〕 はじめに、ベーチェット病や SLE、RA(関節液) などの末梢好中球の OI 産生能亢進と、培養臍帯静脈 内皮細胞を target とした組織障害試験から、好中球に よる auto-oxidative damage について解説された。ま た、OI 亢進と酸素毒性に対する保護機構としての誘 導型 SOD の重要性 について説明された。正常な状態 では老人と青壮年との間に SOD 活性に差はみられな いが、生体の OI や過酸化脂質の上昇があるとき、老 齢化によって SOD 誘導が弱まるというデータを示さ れた。 〔セミナーの成果〕 最後に 20 年間行ってこられた抗酸化剤による臨床 効果も紹介され、高分子抗酸化剤はリポソームに封入 することによって効果が上がったこと、また天然の低 分子抗酸化物質の活性化や利用方法についても解説さ れ、多くの臨床系の大学院生が真剣に拝聴し、熱のこ もった大いに有意義な講演であった。 (分子細胞形態科学 島村英理子記) 〔講師略歴〕 光本先生は、昭和 56 年に帝京 大学薬学部を卒業後、北陸大学 大学院修士課程を修了され、カ ナダ・トロント大学小児病院研 究所細胞生物学部門へ留学され た。大塚製薬(株)主任研究員 を経て、平成 17 年から北陸大学 薬学部代替医療薬学教室教授を 務められている。 〔主な研究分野〕 脳神経障害の分子機構並びに防御因子に関する神経 化学的研究を専門とされ、神経変性疾患治療薬の創薬 研究の発展に大きく寄与されている。 〔セミナーの内容〕 パーキンソン病は老年期に発症する運動性神経変性 疾患である。高齢化社会を迎えたわが国において、そ の罹患率は増大しつつあり、本疾患に対する新しい治 療法および新規薬剤の開発が強く望まれている。 講演は、パーキンソン病の病因と病態生理にはじま り、疫学的環境危険因子などによる発症病理について 薬理学的背景をもとに平易に解説がなされた。特に、 薬物療法としてドパミン神経終末における各種薬物の 作用機序を詳細に示され、内科的治療とその問題点が 明らかにされた。さらに障害ミトコンドリア機能保 護・改善作用を有する補酵素Q 10 が MPTP 毒性から ドパミン神経を保護できることを示された。これはパ ーキンソン病のミトコンドリア機能異常仮説を支持す る成果であり、将来的にも現行の対症療法からドパミ ン神経の保護と機能回復を目ざす根本的治療法を研究 開発する新しい視点として興味がもたれた。 〔セミナーの成果〕 MPTP とパーキンソニズムは特に最近のトピック スであり、おびただしい量の情報の山の中から有用な 最新情報を自験のデータを交えながら紹介いただき、 参加者にとり有意義な講演であった。 (代替基礎医学 清水昌寿記) 【学術】 金 沢 医 科 大 学 32 平成 18 年度 科学研究費補助金の交付決定 採択件数、金額ともに躍進! 研究推進委員会委員長 伊達 孝保 今年 4 月中旬に平成 18 年度科学研究費補助金の交付内定があり、申請(新規+継続)251 件に対し、54 件が採 択され、金額では 8,550 万円となった(新規採択率 9.6%、新+継採択率 21.5% [ 全国;新規採択率 21.6%、新+ 継採択率 39.5% ] )。この数値は、前年度に比べ、件数では 8 件(対前年度比 17.4%増 )、 金額では 2,720 万円(対 前年度比 46.7%増 ) といずれも増となっている。その後、他機関からの転入者が 4 件 710 万円、交付内定後の退職、 異動による辞退、転出が 4 件 420 万円あり、その結果、以下のような交付内容となった。今年度は、高額の基盤 研究( B )の採択が 3 件あり、これが全体の交付額の増額に寄与した。過去 10 年採択実績が低下の傾向にあった 本学もこの 2 年、採択件数も交付金額も上昇に転じ、明るい兆しがみえてきた。しかし、依然、全国の医科大学、 医学部では最下位か、それに近いところに位置しており、引き続き各教員の努力が求められる。 研究推進会議は、一昨年の小野田推進委員長の時から、科研費の申請に際しよりよい申請書にするため申請書 内容のチェック制度を設け、採択率アップに努めてきた。昨年は、その制度に加え、毎年採択されている 2 名の 方にこれまであまり科研費をとっていない教員を対象にした「採択される科研費申請書の書き方」に関する講演 会も実施した。こうした科研費対策と教職員の努力が一部功を奏して全体のアップにつながったものと思われる。 しかしながら、若手研究( B )の採択件数がわずか 2 件(新規採択率 4.4%、新+継採択率 15.7%)と全国平均(新 規採択率 28.7%、新+継採択率 47.3%)に比べ極端に少なく、研究推進会議としても力を入れた領域だけに、こ の結果は大変残念であった。若手の活動は大学の活力のバロメーターでもあり、特に若手の多い臨床教室におい て、多忙な診療活動の中で、どのように研究心のある若手を育てていくかが今後の大きな課題であろう。 民間からの助成金については、昨年度は 46 件の申請のうち採択されたのは 8 件 1,290 万円である。最近は、産 学連携にむけた研究・開発にも国や公的機関からの補助があり、昨年度は 2 件の申請があったが残念ながら採択 までには至らなかった。自分の研究内容が産業用に応用・発展できそうな可能性をもっている教員には、こうし た補助金にもぜひ目を向けていただきたい。 科研費や外部資金の獲得実績は大学評価の大きな指標であること、さらに研究活動は学生教育にも多大な影響 を与えることから、各教員においては研究活性化のための一層のご協力をお願いしたい。 平成 18 年度科学研究費補助金交付決定状況(文部科学省・日本学術振興会) (単位:千円) 件 数 金 額 ① 基盤研究(B) 研究科目名 3 1 8 ,6 0 0 ② 基盤研究(C) 38 5 2 ,1 0 0 ③ 萌芽研究 4 5 ,4 0 0 ④ 若手研究(B) 9 1 2 ,3 0 0 54 8 8 ,4 0 0 合 計 (H18.6.30 現在、転入・転出・辞退を含む) 〈研究種目、課題番号順〉 種目名 基盤研究(B) 一般 堀 有行 助教授 医学教育学 研 究 課 題 等 金額 医学教育における情報ネットワークを利用した学外臨床教育支援 システムの開発 2,700 三浦克之 助教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 各種循環器疾患危険因子の長期変化に関わる栄養学的要因 8,900 中川秀昭 教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) タイ王国汚染地域におけるカドミウム暴露と動脈硬化に関する研 究 7,000 岩淵邦芳 助教授 ゲノム医科学 (生化学) 放射線誘発 DNA 損傷に対する、G1 期特異的な新規修復経 路の全容解明 2,000 疑ウエルナー症候群の病態解明 1,800 海外学術調査 基盤研究(C) 一般 (単位:千円) 氏名・職名・所属名 石垣靖人 講師 総医研・共同利用部門 RI センター 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 33 (単位:千円) 種目名 基盤研究(C) 一般 氏名・職名・所属名 研 究 課 題 等 金額 倉田康孝 助教授 生理機能制御学 (生理学) 分岐理論に基づく心室筋自動能発生機序の解析とバイオペース メーカーシステム設計 1,200 西尾眞友 教授 生体情報薬理学 (薬理学) 動脈硬化予防・治療創薬へ向けての平滑筋細胞内 Caイオンと 一酸化窒素の機能解析 2,200 米倉秀人 教授 ゲノム医科学 (生化学) 血管新生・糖尿病血管症罹患感受性を制御する選択的 mRNAスプライシングの新機構 1,200 上田善道 教授 病理病態学 (病理学Ⅱ) 肺癌進展に関わる癌細胞・宿主相互応答遺伝子発現解析 パネルの開発と応用 1,100 流行するフラビウイルスの急所は何か:NS4a 蛋白及びゲノム 3'UTR の役割 1,800 2,000 竹上 勉 教授 総医研・分子腫瘍学 研究部門 西条旨子 助教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) ダイオキシン胎内暴露の脳神経発達に及ぼす影響 −大脳辺縁系を中心に− 山田裕一 教授 社会環境保健医学 (衛生学) 日本人健常男性における飲酒と喫煙の血圧、腎機能に与え る影響 山川淳一 助手 総合内科学 (総合診療科) 防已黄耆湯のメタボリックシンドロームに対する効果の解析 1,200 前田雅代 助手 生命科学科目 (自然科学) Caspase-1 により切断された LyGDI による転移抑制機構 の解析 1,700 アンジオテンシンⅡ 1 型受容体阻害薬のインバースアゴニスト活性に ついて 1,300 赤澤純代 助手 生活習慣病センター 600 神田享勉 教授 総合内科学 (総合診療科) 心筋内アディポネクチンによる心筋再生機構と治療応用 800 長内和弘 助教授 呼吸機能治療学 (呼吸器内科学) 末梢気道上皮に特異的発現を示す Rab38Gタンパク質の間質 性肺疾患への関与の解明 700 松井 大 講師 脳脊髄神経治療学 (神経内科学) 大脳白質病変形成の分子機序解明 700 齊藤峰輝 助教授 生体感染防御学 HAM 発症関連遺伝子作用機構の解析と無症候性感染者に (微生物学・医動物学) おける発症リスク評価の試み 1,800 古家大祐 教授 内分泌代謝制御学 (内分泌内科学) 抗老化遺伝子 SIRT1 の機能解明とその成果の糖尿病性腎 症に対する応用 1,400 正木康史 講師 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) 自己免疫性リンパ球増殖性多臓器疾患−新しい疾患単位の 可能性 1,200 田中真生 講師 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) 新規リウマチ関節炎抑制因子 FRP のシグナル伝達と免疫システムに 対する作用の解析 2,100 世界中のどこからでも容易に依頼可能な有機酸代謝異常 症の出生前診断法の検討 800 井上義人 講師 総医研・人類遺伝学 研究部門生化学 地引逸亀 教授 精神神経科学 (神経精神医学) fMRI によるてんかん患者の記憶機能の優位半球側方性に 関する研究 900 窪田 孝 助教授 精神神経科学 (神経精神医学) てんかん精神病の発現機序の研究 800 榎戸芙佐子 助教授 精神神経科学 (神経精神医学) 近赤外線酸素モニターによる COMT 多型と前頭葉機能の関連 -ADHD での比較 - 2,300 東光太郎 教授 放射線診断治療学 (放射線医学) FDG PET による肺癌分子標的治療の関連遺伝子発現の 評価と治療効果予測 800 利波久雄 教授 放射線診断治療学 (放射線医学) 拡散強調画像とダイナミックMRシアログラフィーによるシェーグレン症候群 の病態解析 600 的場宗孝 助教授 放射線診断治療学 (放射線医学) 担癌動物に対する集学的治療後の治療効果判定における 高分解能 MRI の検討 500 佐川元保 教授 呼吸機能治療学 (呼吸器外科) 仮想および極細径気管支鏡による肺野微小肺癌・前癌病変 の遺伝子診断と発癌過程解析 500 佐久間勉 教授 呼吸機能治療学 (呼吸器外科) 肺胞水分蛋白再吸収機序の活性化による肺傷害治療法の 開発 1,100 立花 修 講師 脳脊髄神経治療学 (脳神経外科学) ヒト髄膜腫に対するゴナドトロピン放出ホルモン受容体を標的とした 治療の基礎的研究 1,300 関 純彦 助教授 侵襲制御学 (麻酔学) 正常および敗血症ラットの微小腸間膜動脈運動に及ぼす 鎮静薬の影響 2,600 芝本利重 教授 生理機能制御学 (生理学) 循環ショックにおける肝臓の微小血管圧の測定法の確立 2,700 宮澤克人 助教授 泌尿生殖器治療学 (泌尿器科学) 尿路結石症における Annexins の発現と機能解析の研究 500 【学術】 金 沢 医 科 大 学 34 (単位:千円) 種目名 基盤研究(C) 一般 萌芽研究 若手研究(B) 氏名・職名・所属名 研 究 課 題 等 金額 牧野田 知 教授 生殖周産期医学 (産科婦人科学) 卵巣機能における G-CSF、IL-6 などサイトカインの作用解明と 臨床応用について 河野美幸 助教授 臓器機能再建学 (小児外科学) 排便運動における骨盤神経叢直腸枝の働きに関する 実験的研究 1,800 島田ひろき 講師 分子細胞形態科学 (解剖学) パラコート急性毒性機構に関わる NADH-キノンオキシドリダクターゼm の研究 1,200 田中卓二 教授 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) 舌解毒酵素陽性病変のメチル化異常と舌前がん病変としての 意義に関する研究 2,700 瀬上夏樹 教授 顎口腔機能病態学 (口腔科学) 顎関節疾患の MR 画像における滲出液像の本態解明と 診断的意義の確立 1,400 高橋基浩 助手 顎口腔機能病態学 (口腔科学) 顎関節症の病因解明の試み;滑液中の蛋白修飾糖類の解析 による糖鎖異常の検討 1,900 松井 真 教授 脳脊髄神経治療学 (神経内科学) ガレクチン9 抗体を利用した多発性硬化症モデル動物における アレルギー反応機序の解析 1,300 岩井邦充 助教授 高齢医学 (老年病学) 精神的ストレスの単球・マクロファージを介する急性冠症候群発症 への関与 1,500 梅原久範 教授 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) 新規抗癌剤開発のためのリピッドラフト解析 1,600 前田寿美子 助手 呼吸機能治療学 (呼吸器外科) 経気道的肺胞マクロファージ移植法の確立 1,000 下川 隆 助教授 分子細胞形態科学 (解剖学) 培養骨格筋細胞を用いた筋再生に関する研究 2,000 佐藤勝明 助手 病理病態学 (病理学Ⅱ) 神経細胞におけるアミロイドβ蛋白標的因子の固定と細胞障害 機序の解明 佐藤仁志 助手 発生発達医学 (小児科学) 水痘−帯状疱疹ウイルス感染における糖タンパクによる免疫修飾能 の検討 黒田尚宏 助手 医学教育学 携帯電話システムの医学教育への応用 900 500 1,700 800 中西恵美 助手 脳脊髄神経治療学 (神経内科学) 自己免疫性脳脊髄炎における新規治療薬の開発 1,600 小林あずさ 助手 発生発達医学 (小児科学) 超音波装置を用いた超低出生体重児に対するカテーテルコイル 塞栓術開発の研究 廣保 究 助手 精神神経科学 (神経精神医学) ドーパミンD2 遺伝子多型と非定型抗精神病薬による治療予測 2,400 森田礼時 助手 機能再建外科学 (形成外科学) 血管系腫瘍(苺状血管腫・血管肉腫)の発病進展に関与する 血管新生因子及び遺伝子変異 1,400 金山景錫 講師 顎口腔機能病態学 (口腔科学) 破骨細胞を介した変形性顎関節症の病態機構の解明 1,000 900 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 35 平成 17 年度 各種助成金等受託状況(文部科学省・日本学術振興会代表者分、学会賞を除く) ※研究助成センター事務課で事務委任を受けたもの以外は、教育学術情報管理システムから引用 (所属・職名は、採択(受託)時のもの) 【文部科学省・日本学術振興会】 氏名・職名・所属名 中川秀昭 教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 利波久雄 教授 放射線診断治療学 (放射線医学) (単位:千円) 種目名 科学研究費補助金分担研究 (基盤研究 B・海外) 文部科学省 ITプログラム研究開発 委託事業 研 究 課 題 等 スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境の 実現(医療分野における分野横断的循環器 疾患診断診療支援システムの検証) 【厚生労働省】 2,000 460 (単位:千円) 氏名・職名・所属名 吉村 弘 助教授 金額 ベトナムにおけるダイオキシン類の異性体比率に 基づく環境汚染の探索に関する研究 種目名 研 究 課 題 等 金額 顎口腔機能病態学 (口腔科学) 高齢医学 (老年病学) 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) 厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 がん研究助成金 老人性痴呆症・アルツハイマー病の予防および治療 を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発 老年症候群に関与する脳皮質下虚血病変の 危険因子解明に関する縦断研究 個体レベルでの発がん予知と予防に関する 基盤的研究 7,070 甲野裕之 助教授 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) がん研究助成金 ヒトがん発生に係わる環境要因及び感受性 要因に関する研究 1,700 東光太郎 教授 放射線診断治療学 (放射線医学) がん研究助成金 画像診断に基づく消化器がん、肺がん、 乳がんの clinical staging の確立と治療法 選択に関する研究 1,000 呼吸機能治療学 (呼吸器外科) 久原とみ子 教授 総医研・人類遺伝学 研究部門生化学 がん研究助成金 がん検診の適切な方法とその評価法の確立 に関する研究 わが国の 21 世紀における新生児マススクリーニング のあり方に関する研究 三浦克之 助教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 厚生労働科学研究費補助金子ども 家庭総合研究推進事業 若い女性の食生活はこのままで良いのか? 次世代の健康を考慮に入れた栄養学・ 予防医学的検討 5,000 中川秀昭 教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 厚生科学研究費補助金健康科学 総合研究事業 青・壮年者を対象とした生活習慣病予防の ための長期介入研究 5,500 中川秀昭 教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 厚生科学研究費補助金健康科学 総合研究事業 働き盛りの農村住民、都市住民、大企業 勤務者男性の循環器疾患発症リスクとそれを 規定する生活習慣要因、 ヘルスプロモーションサービス に関する比較研究 1,687 松本忠美 教授 運動機能病態学 (整形外科学) 脳脊髄神経治療学 (神経内科学) 厚生労働科学研究費補助金難治性 疾患克服研究事業 厚生労働科学研究費補助金難治性 疾患克服研究事業 特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準 化を目的とした総合研究 免疫性神経疾患に関する調査研究 900 免疫性神経疾患に関する調査研究 900 森本茂人 教授 田中卓二 教授 佐川元保 助教授 松井 真 教授 大原義朗 教授 杉江茂幸 教授 田中卓二 教授 中島日出夫 講師 田中卓二 教授 森本茂人 教授 古家大祐 教授 厚生労働科学研究費補助金子ども 家庭総合研究推進事業 生体感染防御学 厚生労働科学研究費補助金難治性 (微生物学・医動物学)疾患克服研究事業 1,500 2,400 500 150 800 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) 厚生労働科学研究費補助金 第 3 次対がん総合戦略研究事業 厚生労働科学研究費補助金 第3次対がん総合戦略研究事業 疾患モデルを用いた発がんの分子機構及び 感受性要因の解明とその臨床応用 がん化学予防剤の開発に関する基礎及び 臨床研究 5,000 腫瘍治療学 国立長寿医療センター長寿医療 研究委託事業 加齢に伴う免疫力低下による疾患の発生 機序の解明と臨床応用に関する研究(自然 免疫系の低下による老化関連疾患発症機序 の解明と免疫系の賦活化による克服) 2,000 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) 高齢医学 (老年病学) 厚生労働科学研究費補助金食品の 安全性高度化推進研究事業 厚生労働科学研究費補助金萌芽的 先端医療技術推進研究事業 反復投与毒性や発がん性試験等の実施によ る既存添加物の安全性に関する研究 遺伝子多型検索による高血圧個別化診療の 確立に関する研究 16,000 内分泌代謝制御学 (内分泌内科学) 厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等総合研究事業 糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療に よる集約的治療 5,500 3,500 1,500 【学術】 金 沢 医 科 大 学 36 【その他公的機関】 (単位:千円) 氏名・職名・所属名 中川秀昭 教授 種目名 健康増進予防医学 (公衆衛生学) (独)環境再生保全機構研究事業 (環境省委託事業費) 生殖周産期医学 (産科婦人科学) 佐々木一之 環境原性視覚病態 名誉教授・客員教授 研究部門 (独)科学技術振興機構 FS 委託 研究(可能性試験) (財) テレコム先端技術研究支援センター 委託事業 境原三津夫 助手 小川法良 助教授 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) 友田幸一 教授 感覚機能病態学 (耳鼻咽喉科学) アメリカ国立衛生研究所(NIH) 研究助成 研 究 課 題 等 金額 重金属等による健康影響に関する総合研究 (カドミウム汚染地域住民の追跡調査報告 (梯川流域) ) 妊婦における胎児産生 AFP の免疫抑制機構 1,000 に関する研究 ミリ波による眼球への影響評価に関する研究 28,000 シェーグレン症候群の国際診断基準の作成 11,082 (独)産業技術総合研究所共同研究 内視鏡下鼻内手術手技研修用患者モデルに − 関する研究 【その他】 (単位:千円) 氏名・職名・所属名 石垣靖人 講師 2,000 種目名 金額 (財)北国がん研究振興財団 北国がん基金研究助成金 がん化細胞における遺伝情報の品質管理 機構制御 廣保 究 大学院生 精神神経科学 (神経精神医学) (公)松原三郎記念事業松原記念 奨励賞 てんかん原因遺伝子 KCNQ のマウスホモログの cloning 及び新たな splice variant の同定 中川秀昭 教授 健康増進予防医学 (公衆衛生学) 総医研・共同利用 部門 RI センター (公)日本動脈硬化予防研究基金 職業・生活習慣要因と長期循環器疾患発症 に関する大規模職域コホート研究 最初の翻訳は細胞のどこで起こるのか? 4,000 呼吸機能治療学 (呼吸器外科) 総医研・共同利用 部門 RI センター (社)日本損害保険協会研究助成金 交通事故誘発肺傷害における肺胞上皮細胞 マーカー変動に関する研究 (財)武田科学振興財団薬学系 劣性遺伝疾患原因遺伝子探索システムの構築 研究奨励金 1,000 石垣靖人 講師 佐久間勉 教授 石垣靖人講師 元雄良治 教授 梅原久範 教授 総医研・共同利用 部門 RI センター 研 究 課 題 等 腫瘍治療学 (財)住友財団研究助成金 日本漢方生薬製剤協会研究助成金 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) (財)上原記念生命科学財団研究 助成金 慢性肝炎の抗ウイルス療法の副作用軽減をめざ した漢方生薬製剤の新しい応用 : ランダム化比 較研究と薬剤経済学的解析 細胞膜リピッドラフト制御による新規免疫抑制 剤の開発 平成 17年度各種助成金等のまとめ 種 目 分 類 文部科学省・日本学術振興会(科学研究費補助金 / 代表者分) 〃 (科学研究費補助金 / 分担者分) 文部科学省(科学研究費補助金以外) 厚生労働省(がん研究助成金、厚生労働科学研究費補助金、等) 400 1,000 2,000 300 5,000 (単位:千円) 件 数 55 金 額 7 5 ,2 0 9 1 2 ,0 0 0 1 460 19 6 2 ,6 0 7 その他公的機関(環境省、総務省、関係団体等) 5 4 2 ,0 8 2 その他(民間助成団体、等) 8 1 4 ,7 0 0 89 1 9 7 ,0 5 8 合 計 1,000 平成 18 年度 金沢医科大学共同研究・奨励研究 本学では、若手研究者の育成を目的とした奨励研究や、学部、大学院、総合医学研究所、他大学等との有機的連携を 目指す共同研究を展開することで研究の活性化を進めており、今年度も昨年に引き続き学内公募し、審査の結果、採択 者を表①②のとおり決定した。 今年度は、従来の実績や業績にとらわれず将来性のある研究に積極的な助成をするため、奨励研究の審査区分として の「萌芽的研究」に科学研究費補助金の申請要件を免除し、年齢制限( 40 歳未満)を設けて若手研究者が採択される よう配慮されている。 (研究助成センター事務課 上田正博記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 表① 平成 18 年度共同研究・奨励研究採択概要 区 分 共同研究 (単位;千円) 申請件数 3 採択件数 継 続 3 6 ,5 0 0 新 規 11 3 9 ,0 0 0 14 6 1 5 ,5 0 0 28 6 7 ,2 0 0 7 4 2 ,3 0 0 35 49 10 16 9 ,5 0 0 2 5 ,0 0 0 共同研究計 新 規 奨励研究 37 新 規(萌芽) 奨励研究計 合 計 配 付 額 表② 平成 18 年度共同研究・奨励研究採択一覧 【共同研究・継続】 氏名・職名・所属名 研究番号 研 究 課 題 等 備考 梅原久範 教授 血液免疫制御学 (血液免疫内科学) C2006-1 細胞膜リピッドラフト制御による新規抗癌剤および免疫抑制剤の開発 継続 瀬上夏樹 教授 顎口腔機能病態学 (口腔科学) C2006-2 分子生物学的手法による顎関節症の発症メカニズム解明と新規治療法開発 〃 杉江茂幸 教授 腫瘍病理学 (病理学Ⅰ) C2006-3 モデル動物を利用した肥満・高脂血症の発がんへの関与とその阻止に 関する研究 〃 【共同研究・新規】 研究番号 研 究 課 題 等 備考 米倉秀人 教授 氏名・職名・所属名 ゲノム医科学 (生化学) C2006-4 神経−血管関連からの血管および神経細胞機能の新しい調節メカニズム の解明 新規 加藤伸郎 教授 生理機能制御学 (生理学) 内分泌代謝制御学 (内分泌内科学) C2006-5 治療的電撃けいれん(ECS)の神経生理学的機序 〃 C2006-6 糖尿病腎症の発症・進展に関わる新規診断法の確立 〃 古家大祐 教授 【奨励研究・新規】 氏名・職名・所属名 齊藤峰輝 助教授 石垣靖人 講師 佐藤勝明 講師 生体感染防御学 (微生物学) 総医研・共同利用 部門 RI センター 病理病態学 (病理学Ⅱ) 河合康幸 助手 循環制御学 (循環器内科学) 松井 大 講師 脳脊髄神経治療学 (神経内科学) 倉田康孝 助教授 生理機能制御学 (生理学) 研究番号 研 究 課 題 等 備考 S2006-1 ヒト成人 T 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-1)関連脊髄症(HAM)発症 機構の解明 新規 S2006-2 遺伝疾患原因遺伝子の探索 〃 S2006-3 腱鞘巨細胞腫における特異的融合遺伝子の検討 〃 S2006-4 デオキシリボ核酸分解酵素 I(Dnase I)による急性冠症候群の迅速診断 〃 S2006-5 能登地方における遺伝性神経疾患の特徴について 〃 S2006-6 心室筋における異常自動能の発生機序バイオペースメーカーシステム設計に 関する非線形力学的解析 〃 【奨励研究・新規〈萌芽〉 】 氏名・職名・所属名 研究番号 鶴岡直樹 助手 ゲノム医科学 (生化学) 髙野博充 助手 生理機能制御学 S2006-8 (生理学) 総医研・共同利用 S2006-9 部門ハイテクリサーチ センター 安井由美子 研究員 島崎猛夫 助手 腫瘍治療学 S2006-7 S2006-10 研 究 課 題 等 血管新生を制御する可溶型 VEGF 受容体の mRNA 選択的スプラ イシング機構の解明 備考 新規 マウス敗血症・エンドトキシンショック病態の細動脈膜電位への影響 〃 共役リノール酸異性体によるラット大腸発がん抑制効果とその機構解析 〃 新規抗癌剤探索をめざした薬剤感受性検査システムの開発 〃 【学術】 金 沢 医 科 大 学 38 に、平成 18 年 5 月には「医と薬とバイオサミット」に 産学官連携 本学でも始動、活性化が望まれる 参画し、新たな連携も開始されつつある。本年 10 月 には「第 2 回 FIT ネット商談会」、「しんきんビジネス フェア『北陸ビジネス街道 2006 』」の 2 つのビジネス フェアにも研究シーズを出展する準備を進めており、 さらなる連携が期待されている。また、連携の具体的 大学を取り巻く環境があわただしく変わる中、我が な事例として、本学と金沢工業大学との医工連携や小 国経済の活性化と研究機関に活力を与える観点から、 松精練等との産学連携、さらには石川県産業創出支援 大学に対しては従来の「教育」、「研究」に加え、第三 機構が中核となっている知的クラスター創成事業への の使命として技術移転を通じた「社会貢献」が求めら 本格的な参画も検討中である。 れている。現代の、科学と社会との関係においては、 研究成果を学会や論文発表を通し社会に公表して産業 今後の課題の一つに、大学全体そして本学教職員の 意識改革があげられるが、その試みとして、本年 3 月 界等に広める方法と、研究成果を知的財産として、積 に発明協会主催の個別大学セミナーを実施し、6 月に 極的に産業界との連携を求め社会に活用してもらう道 は金沢大学の文部科学省派遣産学官連携コーディネー を探る方法がある。本学の研究推進会議では、社会貢 ターによる啓発セミナーを実施した。今後も継続的な 献につながる産学官連携は研究の活性化を図る上でも 啓発セミナーが必要と考えている。もう一つの課題は、 重要な施策とし、平成 15 年度からこれを推進するべ 産学官連携を推進する上で基盤となる学内の知的財産 き検討を重ねている。昨年の産学官連携に関する本学 管理体制の問題である。特に本学における知的財産ポ 関係者のアンケート調査結果をみてみると、その意識 リシーをはじめとする諸規程や組織体制を早急に整備 は高まってきている。 することが望まれており、関係各位のさらなる協力と 本学では、研究成果を社会に還元する手段の一つと 支援をお願いしたい。 して、平成 17 年 3 月の「北陸バイオシーズ発表会」を (外部資金導入委員会委員長 竹上 勉記) 契機として各種ビジネスフェア等に積極的に参画して いる。同年 10 月には「きんしんビジネスフェア 2005 」 〈本学の産学官連携活動の最近の動き〉 ① 北陸発バイオシーズ発表会 平成 17 年 3 月 11 日(愛知芸術文化センター) 特定非営利法人( NPO )バイオものづくり中部が主催し、本学から 4 名の研究者が参加 ② ’ 05 石川・金沢シンポジウム「石川・金沢からのメッセージ」 平成 17 年 5 月 27 日(日経ホール) 山下副理事長が日本経済新聞社の主催による「産学官連携の動向と大学」と題したシンポジウムに出席 ③ きんしんビジネスフェア 2005 平成 17 年 10 月 12 日(石川県産業展示館) 金沢信用金庫が初めて主催するビジネスフェアに 6 部門の研究シーズを出展 ④ 個別大学セミナー 平成 18 年 3 月 8 日(本学病院新館 12 階大会議室) 発明協会が主催した知財啓発セミナー(富山大学知的財産管理アドバイザー・丞村宏客員教授が講演)に 教職員 36 名が参加 ⑤ 2006 医と薬とバイオのサミット in 金沢 平成 18 年 5 月 12 日(ホテル日航金沢) 北陸銀行が初めて主催し、本学から 3 部門の研究シーズを出展 ⑥ 産学官連携支援セミナー 平成 18 年 6 月 28 日(本学基礎研究棟 2 階会議室) 文部科学省派遣産学官連携コーディネーター(金沢大学共同研究センター・平野武嗣客員教授)による知 財啓発セミナーに研究推進会議等の関係者 16 名が出席 ⑦ 第 2 回 FIT ネット商談会 平成 18 年 10 月 3 日予定(サンドーム福井) 福井銀行、北國銀行、富山第一銀行が主催するビジネスフェアに本学から 6 部門の研究シーズを出展予定 ⑧ しんきんビジネスフェア「北陸ビジネス街道 2006 」 平成 18 年 10 月 11 日予定(石川県産業展示館) 北陸地区信用金庫協会が主催するビジネスフェアに本学から 6 部門の研究シーズを出展予定 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 金沢医科大学発バイオベンチャー企業 エムシープロット・バイオテクノロジー ㈱ 設立にあたって 金沢医科大学総合医学研究所先進医療研究部門 プロテオミクス研究分野・腎機能治療学(併任)助教授 株式会社エムシープロット・バイオテクノロジー代表取締役 友 杉 直 久 このたび、金沢医科大学総合 医学研究所先進医療研究部門プ ロテオミクス研究分野でのプロ テオミクス解析技術を基に、金 沢医科大学発のバイオベンチャ ー企業「株式会社エムシープロ ット・バイオテクノロジー」を 8 月 1 日に設立させていただきまし た。設立にあたりましては、弊 社研究所を総合医学研究所内に置かせていただくな ど、小田島粛夫理事長、山本達学長、松井忍所長をは じめ、金沢医科大学の皆様のご理解と惜しみないご援 助をいただき深く感謝いたしております。 ヒトの全ゲノムが解読されたポストゲノム時代に おいて、蛋白質/ペプチドの発現・機能解析手段とし てプロテオミクス技術の重要性はますます大きくな っており、これにより疾患特異マーカーを捉え、早期 診断を行い、さらに個々を対象とした個別化治療へ の展開が期待されています。特に、米国食品医薬品 局 FDA は 2004 年にクリティカル・パス・イニシアチ ブを提言して以来、様々なガイダンスを発表し、より 早くより低コストでより安全な医薬品の開発を目指 していますが、その手段として従来の「ファーマコ・ ゲノミクスの利用」に加え、本年は「ファーマコ・プ ロテオミクスの利用」に関する新たな提言を行い、プ ロテオミクス技術による疾患マーカーの探索とそれ による疾患のモニタリングを重要課題として挙げて 39 います。 このような状況において、われわれは幸い にも、昨年 5 月一滴の涙に含まれる蛋白質のプロテオ ミクス解析により、初めてシェーグレン症候群の診断 を可能にしました。また本年4月には、鉄代謝を制御 する血清ホルモン「ヘプシジン」を初めてプロテオミ クス技術で検出するなど成果を挙げることができま した。このヘプシジンは、多方面から注目されており、 血液透析患者や炎症性疾患に伴う貧血の評価や抗癌 剤投与に伴う副作用としての骨髄機能低下、さらに骨 髄移植時の骨髄機能評価など、すでに臨床応用段階に 入っています。また最近は、膵癌や前立腺癌、アルツ ハイマー病に発現する疾患候補蛋白質/ペプチドも 見つかり、その同定研究を進めています。 このような世界のプロテオミクス研究の動きの中 で、われわれのプロテオミクス研究システムを、疾患 の診断のみならず、個別化医療やヘルスケア・システ ムの構築などに応用することにより幅広いビジネス が展開できると判断してこのたび企業化に踏み切り ました。金沢医科大学総合医学研究所と弊社との共同 研究で、液相二次元電気泳動装置(ベックマン)とプ ロテインチップ・システム(サイファージェン)、質 量分析装置(島津)を組み合わせて血清、尿、涙、髄 液などに含まれる蛋白質/ペプチドを網羅的に、かつ 短時間で測定・解析する技術の開発を続け、この成果 に基づく臨床への技術利用を弊社のビジネスの中心 に置く予定でおります。今後は、癌、虚血性血管疾患、 老化の解析を主な研究対象として、健康診断や人間ド ッグと連携したヘルスケア・システムを早急に作り あげたいと考えています。 金沢医科大学での研究成果の事業化にむけて、と りあえず第一歩を踏み出すことができました。大学発 ベンチャーにとりましては、大学の研究成果が命で す。今後は、金沢医科大学の先進医療研究を担う一員 として、その名に恥じぬよう研鑽を積み、さらにベン チャーとして開発を進め、その成果を社会に還元して いくことを使命と考えております。今後ともご指導 ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。 「 2006 医と薬とバイオのサミット in 金沢」に 研究シーズ出展 平成 18 年 5 月 12 日(金)午前 10 時から午後 5 時ま れ、中でも金沢大学共同研究センター平野武嗣客員教 で、ホテル日航金沢において開催された「 2006 医と 授(産学官連携コーディネーター)から「文部科学省 薬とバイオのサミット in 金沢」に、本学から皮膚真 の方針で産学官連携コーディネーターは、コーディネ 菌学研究部門、分子腫瘍学研究部門および共同利用部 ーターがいない大学(本学)に対しても産学連携を支 門の 3 部門が出展した。これは医薬バイオ分野の技術 援するよう指導されている」とのことで、本学への協 交流を目的に北陸銀行が初めて企画したもので、全体 力・支援をしていただけることになり事務局としても の来場者は北陸 3 県を中心に約 3,200 名であった。本 収穫があった一日であった。 学のブースでも研究内容の説明や活発な意見交換が行 われた。また、企業だけでなく他大学との交流も行わ (研究助成センター事務課 上田正博記) 金 沢 医 科 大 学 40 病 院 いてから、喫煙や受動喫煙による健康影響に関するデ 21 世紀集学的医療センター ータなどを示しながら、 「たばこと健康」についてお みんなの健康づくりセミナー2006 話をし、さらに禁煙の方法や禁煙治療の実際について 〈第 1 回〉 たばこと健康 説明した。 会場には禁煙に関するパンフレットのほか、呼気中 一酸化炭素濃度測定器、ニコチンパッチ、ニコチンガ ムも準備し、医師や保健師などによる禁煙指導も行い、 参加者が体験しながらの勉強セミナーであった。 講師: 中西由美子先生(生活習慣病センター講師) 日時: 平成 18 年5月 27 日(土)午前 10 時 30 分 場所: 病院新館 12 階大会議室 非喫煙者、元喫煙者、喫煙者といろいろな人が参加 しておられたが、セミナー終了後の意見交換では、実 際に禁煙された人から、禁煙によって「人生を楽しん でいる」 、「食事がおいしく感じられるようになり、食 事を存分に楽しんでいる」、「肌が綺麗になった」 、「お 金が貯まるようになった」などすばらしい貴重な体験 談も披露され、禁煙達成後の晴れ晴れとした生活の様 子がうかがわれた。禁煙された人の体験談がよい刺激 となって、後日、参加者の中から禁煙を始めた人が数 名あり、またこのような会を開いてほしいという参加 者からの言葉もいただき、和気あいあいとしたセミナ ーであった。 松井忍センター長から紹介される中西講師 21 世紀集学的医療センターでは、地域の皆様に対 して健康づくりのための啓蒙活動を進めており、 「自 分の体は自分で守りましょう=セルフケア」(自分の 健康を保つために、自分の体を自分で点検しましょ う)という視点に立った みんなの健康づくりセミナ ー2006 を企画し、その 1 回目として、生活習慣病セ ンター中西由美子講師による「たばこと健康」と題し たセミナーを開催した。 まず、たばこクイズをして予備知識を持っていただ (生活習慣病センター 中西由美子記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 41 21 世紀集学的医療センター みんなの健康づくりセミナー2006 〈第 2 回〉 1960 万人が危ない! メタボリック症候群 皆さんに忍び寄る 講師: 木越俊和先生(生活習慣病センター教授) 日時: 平成 18 年 7 月 22 日(土)午前 10 時 30 分 場所: 病院新館 12 階大会議室 〔Q&A〕 講演をする木越教授 平成 18 年 7 月 22 日(土)に金沢医科大学病院新館 12 階大会議室において、第 2 回 みんなの健康づくり セミナー2006 が開催された。 「 1960 万人が危ない! メタボリック症候群が皆さんに忍び寄る」と題した木 越俊和教授の講演があり、通院患者、内灘町福祉セン ター職員、報道関係者、教職員・スタッフなど 50 名 を超える参加者が集まった。 セミナーでは、自分でチェックできる数値基準や、 バランスのとれた食事の写真、治療の実態、推移統計 データーなどを示しながらわかりやすい解説がなされ た。また、会場には自己管理するための体脂肪計や血 圧計が準備され、「セルフチェックができて良かった」 との参加者からの声が聴かれるなど充実したセミナー であった。 セミナー終了後の質疑応答では、勉強熱心な参加者 から多数の質問があった。 ( 21 世紀集学的医療センター事務課 濱中 豊記) Q1:体重がなかなか減らないのですが、どうすれば よいのでしょうか? 数年かけて減量に努めた結果、10kg は体重を落と すことができたが、BMI 値からするともう少し減量し たいと思っています。しかし、なかなか体重を減らす ことができません。どうしたら良いのでしょうか。 A:一定レベルまでの減量は意外とスムーズなので すが、それを超える減量は数倍のエネルギーがいりま す。ご自分だけでなく、家族の協力と支援が必要とな ります。食事の量、カロリー、間食などをもう少し見 直す必要があります。 Q2:お酒と肥満の関係はあるのでしょうか? 飲んで もよいお酒、悪いお酒はあるんですか? 生活習慣病センターに受診中ですが、過度の飲酒 (アルコール)が良くないのは分かっているのですが、 酒類(ビールや焼酎、ウイスキー、ワイン)によって、 良い酒、悪い酒があるのでしょうか。 A:研究レベルでもアルコールとメタボリック症候 群には、はっきりした因果関係は解明できていないと 言われています。過度のアルコール摂取は脂肪の集積 を増長するといわれていますので、酒類にかかわらず 適量をとり、野菜などを含んだバランスの良い食事を 摂ることが大切です。 【病院】 金 沢 医 科 大 学 平成 18 年度 看護学生のための 就職情報交換会 42 毎年開催されている。 当日は、約 200 名の看護学生と 45 の医療機関が参 加し、本学からは、飯塚秀明副院長、荒木きみ枝看護 部副部長、福島大貴看護師(平成 17 年 4 月採用、本館 8 階病棟勤務)、浅加真衣看護師(平成 18 年 4 月採用、 新館 9 階東病棟勤務) 、職員課職員 2 名が出席した。 会場では、医療機関ごとにブースが設置され、看護 職員の確保と定着のため、看護学生に対し、各医療機 関の担当者が病院と看護部の理念などについて、パワ ーポイントや色彩豊かな掲示物を利用しながら懸命に アピールしていた。 本学病院のブースでは、飯塚副院長が病院の理念と 基本方針、荒木副部長が看護部の教育と勤務体制、2 名の看護師は先輩の立場で就職後の現況について説明 本学病院のブースに集まった看護学生たち を行い、集まった看護学生は関心を持って熱心に聞き 入っていた。 平成 18 年 6 月 24 日(土)午後 2 時から石川県地場産 本年 4 月の診療報酬改定により、急性期入院医療の 業振興センターにおいて、石川県看護協会主催、石川 評価が行われる中、今後、熾烈な看護師の争奪戦が始 県病院協会後援による「看護学生のための就職情報交 まると言われている。本学でも、看護職員の確保のた 換会」が開催された。 め、今回のような就職情報交換会、8 月の夏休み期間 この交換会は、来年 3 月卒業予定の県内の看護学生 を利用した病院説明会、中部・北陸地方以外の学校訪 が進路選択のため、県内の医療機関の卒後教育、福利 問など、特色ある募集活動を展開する予定であり、職 厚生などの情報を面接しながら入手することにより、 員の皆様方のご協力をお願いしたい。 各医療機関に関する理解を深めることを目的として、 (職員課 井上善博記) 金沢医科大学病院 DMAT 誕生 DMAT( Disaster Medical Assistance Team )とは、 大地震や航空機事故、列車事故などの災害発生直後に 被災地で救急医療活動する医療チームをいう。わが国 でも昨年より厚生労働省が全国の災害拠点病院と救 命救急センター、国立病院機構の医療機関に 190 チー ム(医師・看護師・調整員の 5 人一組)を目標に整備 を進めている。金沢医科大学病院は、災害拠点病院や 救命救急センターではないが、これまでわが国の災害 医学へ貢献してきたことが厚生労働省に評価され、特 本学病院チーム 例として参画が認められた。このたび救命救急科から 行機を使った広域医療搬送計画を担うことを主な目的 和藤、岩井、真柴各医師、ハートセンターから石丸師 として整備されているが、本学病院 DMAT は大災害 長、管理課から坂元主任でチームをつくり、立川の災 時だけでなく、日常の事故現場などにも積極的に医療 害医療センターと陸上自衛隊立川基地でトリアージ、 を提供するなど独自の運用を考えている。今回、研修 CSM( Confined Space Medicine:倒壊した建物や潰 に参加した人だけでなく、興味・熱意のある人には院 れた車に挟まれた人に輸液、気管挿管、四肢切断など 内でも研修を行うとともに、今後、立川のほか神戸で の医療を行う) 、航空機内での医療活動など 4 日間の 開催される研修にも参加して DMAT 隊員登録者にな 研修を受け、本学病院も DMAT 施設として登録され っていただきたい。後日、研修報告会、継続的に行う た。この日本 DMAT は、近隣の災害現場での活動や、 災害医療の院内研修会の案内をいたしますのでご協力 現在懸念されている首都直下型地震と東海大地震の飛 をお願いしたい。 (救急医学 和藤幸弘記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 43 52 名の申し込みがあり、60 歳以上の受講者が全体の 8 平成 18 年度 石川県民大学校 割を占めている。中でも、お互いの健康管理に役立て 「健康管理講座」開講 ようと、夫妻での受講が 6 組あり昨年度より増加した。 また、毎年欠かさず受講する参加者も数多くみられ、 県民大学校の人気講座の一つとなっている。 生涯学習センターからの協力要請により、毎年行わ 開講式に引き続き、「生活習慣と心臓病」と題した れている石川県民大学校能力開発コース(クリエイテ 第一回講座が、生活習慣病センターの松井 忍センタ ィブライフ講座)「健康管理講座」が、7 月 1 日(土) 、 ー長により行われ、心臓病の恐さについて知識を深め 病院新館 12 階大会議室において開講された。 た。 (管理課 島 幸枝記) 17 年目を迎えた本年度の開講式は、午後 1 時 30 分 から、松井 忍副院長の出席のもとに行われた。今年は、 平成 18 年度 健康管理講座日程表 月 7 9 10 日 1 時 間 13:30∼14:00 開講式 授 業 科 目 講 師 14:00∼17:00 生活習慣と心臓病 生活習慣病センターセンター長 松井 忍 29 13:30∼16:30 老化と脳の病気 脳脊髄神経治療学教授 松井 真 2 13:30∼16:30 健康で生きるための極意 総合内科学教授 神田 享勉 9 13:30∼16:30 糖尿病と合併症を発症しないためには 内分泌代謝制御学教授 古家 大祐 30 13:30∼16:30 手軽にできる運動 生命科学科目教授 田村 暢熙 13:30∼16:30 メタボリックシンドローム(代謝症候群)の 予防と治療 生活習慣病センターセンター長 松井 16:30∼17:00 閉講式 7 忍 また、高齢者における誤嚥性肺炎の 金沢医科大学病院 平成 18 年度 病態・臨床像と治療、嚥下のリハビ 第2回 CPC ことができた。 リに関する要点の絞れた勉強をする 今年度から新たに始まったこの CPC は、病院 CPC 実施委員会の主 平成 18 年 6 月 21 日(水)に第 2 回 催によるものであり、地域連携室か CPC「嘔吐とむせの後に急性呼吸不 ら関連医療機関にも案内を出してい 全をきたした 1 例」を開催し、臨床 る。全学的な CPC を開催している 医、臨床研修医、教員、医学部学生、 大学は少なく、いまだ試行錯誤の段 看護師、看護学生、コメディカル、 階だが、今後とも実りあるものにし 病理医など 113 名の様々な立場の方 ていきたいと思っている。次回も多 の参加を得た。司会は高橋 孝講師 くの方々に参加していただけるよ (総合診療科)・安田幸雄教授(医学 う、よろしくお願い申し上げたい。 教育学)、臨床経過は中川 研助手(呼 また、本 CPC とは別に、研修医の 吸器内科) ・永井康太助手(眼科) ・釘抜康明講師(放 ための CPC は奇数月の第 3 水曜日に開催しているの 射線科) ・戸田秀之看護師、剖検は佐藤勝明講師(病 で、参加いただきたい。 (病態診断医学 野島孝之記) 理病態学)、嚥下に関連するミニレクチャーを森本茂 人教授(高齢医学科) ・經田香織言語聴覚士(リハビ リテーションセンター)に担当していただいた。 今回も第 1 回目と同じく呼吸器内科から依頼のあっ た剖検症例となったが、複数科が関わった症例で、そ れぞれの臨床科や看護の立場から検討が加えられた。 〈平成 18 年度第 3 回 CPC 開催予定〉 日 時: 10 月 18 日(第 3 水曜日)17:30∼ 会 場: 金沢医科大学病院本館 4 階 C41 講義室 主 催: 金沢医科大学病院 CPC 実行委員会 連絡先: 病院病理部 【病院】 金 沢 医 科 大 学 44 看護週間企画 2006 ふれあい看護体験 5 月 12 日は、ナイチンゲールの生誕を記念して「看護 の日」と制定されており、この日の前後 1 週間は「看護 週間」として、「看護」への理解を深め、また広く知っ ていただくための趣向を凝らした様々な企画が実施さ れる。 県内では今年度、 「訪問看護ステーション 1 日所長」、 「ふれあい看護体験・親子で参加」に親子で参加 「ふれあい看護体験」 、「ふれあい看護体験・親子で参 加」 、 「プチナース・ふれあい訪問」 、「ふれあい看護フ 験をして、看護師になるという思いをより強めたと語っ ェア」が開催された。 ていた。私たちにとってとてもうれしい一言だった。 本学病院では、平成 18 年 5 月 10 日(水)に高校生 4 また、訪問看護師である母親は、命の大切さを学ぶ 名が「ふれあい看護体験」に、また 5 月 13 日(土)に きっかけになってほしいと「ふれあい看護体験・親子 は親子 2 組が「ふれあい看護体験・親子で参加」に参加 で参加」に参加した。この母親の思いを受けた 2 人の し、病院での看護を体験した。ともに白衣に着替えて、 小学生の姉妹は、児心音聴取、沐浴見学、オムツ交換、 病院本館 4 階会議室で高島茂樹病院長から「 1 日看護師」 授乳などを体験し「看護師の大変さや命の大切さがわ の辞令を受けたあと、宮本孝子看護部長より金沢医科 かってよかった」と答えていた。これらの両日のことは、 大学病院の概況について説明を受けた。その後病棟へ 新聞にも掲載された。 移動し、患者さまの清拭、手・足浴、洗髪、搬送など を体験した。 今回参加した 1 名の男子高校生は、本院で 5 年間の入 退院を繰り返した患者体験者で、今回逆の立場からの体 今後ともこのような機会をとおして「命の大切さ」や 「看護・医療」の現状を、広く地域の皆様に理解してい ただくための役割を果たしていきたいと思っている。 (看護部 高田昌美記) 研修医の頁 「研修医のための 臨床研修指定病院合同セミナー」 東京ビッグサイトで開催 平成 18 年 7 月 16 日(日)、初期臨床研修先を探す医 学生と指定病院を結びつけるセミナーが、お台場の東 京ビッグサイト会場で開かれ、石川県内の 10 病院( 2 大学病院、8 臨床研修指定病院)が初めて合同で参加 した。県独自のコーナーの中に設けた各病院のブース では、県内に研修医が集まらなくなっている現状を打 開するため、未来の担い手に各病院の魅力を熱っぽく アピールした。 本学の出展ブース 生 31 名ほか 3 名の計 34 名(昨年は 15 名)が訪れた。 セミナーには 270 病院が参加し、約 1,300 名の学生 来る 8 月 27 日(日)には、北陸出身者・在住者を中 が集まった。石川県のコーナーでは、観光ガイドブッ 心に対応する金沢セミナーが開かれる。北陸在住の医 ク、ペンライト、あぶらとり紙や輪島塗の箸が配られ、 師の流出を抑えることに全力を挙げ、同時に北陸以外 約 300 名が立ち寄った。本学病院ブースには飯塚秀明 の医師の流入を図らなければならない。 臨床研修管理委員長、斎藤人志臨床研修センター部長、 望月 隆同副部長、研修医 3 名が対応にあたり、5 学年 (臨床研修センター 山田克己記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 45 研修医の頁 金沢医科大学病院 平成 19 年度 臨床研修医募集要項 1. 募集人員:56 名 2. 募集方法:マッチング方式による 3. 応募必要書類 ( 1 )応募時必要書類 ①臨床研修医採用願 ②履歴書 ③学業成績証明書 ( 2 )採用時必要書類(採用が内定した後に 提出する書面) ①身元保証書 ②誓約書 ③健康診断書 4. 応募資格 平成 19 年医師国家試験合格予定の者 第 98 回日本医師国家試験以降の合格者で 臨床研修未実施の者 5. 研修期間:2 年間 6. 研修方法:管理型 7. 選 考:書類選考・面接 8. 応募締切 一次募集 平成 18 年 7 月 14 日(金)消印有効 二次募集 平成 18 年 9 月 21 日(木)消印有効 9. 説明会 平成 18 年 6 月 6 日(火)12 時 病院 C41 講義室 10. 面 接 一次募集 平成 18 年 7 月 30 日(日) 集合場所 病院 C41 講義室 集合時間 9 時 二次募集 平成 18 年 9 月 28 日(木) 11. 処 遇 ( 1 )給与:月額 30 万円程度を予定(その他 手当含む) ( 2 )社会保険:健康保険、厚生年金(私学 共済事業団)等加入 ( 3 )宿舎:なし ( 4 )休日:土曜(隔週) 、日曜、祝日、有給 休暇有り 【お問い合わせ・申し込み先】 〒 920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1 金沢医科大学病院 臨床研修センター(職員課) TEL 076-286-3511(代)内線 5482・5483 メール c-kensyu@kanazawa-med.ac.jp 臨床研修医のための CPC(臨床病理検討会) 〈報告〉 第 12 回 CPC 平成 18 年 5 月 17 日(水)午後 5 時 症例 1 骨髄異形成症の一例 56 歳 男 臨床提示 羽柴奈穂美 臨床研修センター研修医 岩井邦充 高齢医学(老年病学)助教授 病理提示 佐藤勝明 病理病態学(病理学Ⅱ)講師 司 会 者 谷口 充 放射線診断治療学(放射線医学)講師 副司会者 長田ひろみ 臨床研修センター研修医 第 14 回 臨床病理検討会〈予告〉 日 時 平成 1 8 年 9 月 20 日(水) 午後 5 時から 場 所 病院本 館 4 階 C41 講義室 第 13 回 CPC 平成 18 年 7 月 19 日(水)午後 5 時 症例 1 肺梗塞の一例 60 歳 男 臨床提示 西澤永晃 心血管外科学(胸部外科学)講師 病理提示 中島章夫 臨床研修センター研修医 黒瀬 望 病態診断医学(臨床病理学)助手 司 会 者 長内和弘 呼吸機能治療学(呼吸器内科学)助教授 副司会者 三上直宣 臨床研修センター研修医 症例 2 肺癌一例 76 歳 男 臨床提示 山岡祐子 臨床研修センター研修医 佐久間勉 呼吸機能治療学(呼吸器外科)教授 病理提示 上田善道 病理病態学(病理学Ⅱ)教授 司 会 者 望月 隆 環境皮膚科学(皮膚科学)教授 副司会者 山本純平 臨床研修センター研修医 第 14 回 CPC は、9 月 20 日(水)午後 5 時 から病院本館 4 階 C41 講義室で行われる。 研修医には出席が義務づけられているが、 それ以外の先生方、学生諸君にも広く開か れているので、ふるって出席いただきたい。 (病態診断医学 黒瀬 望記) 金 沢 医 科 大 学 46 管理・運営 千万円下回ったものの資産運用収入で前年度を 2 億 8 学校法人金沢医科大学 千万円上回ったこと等により、帰属収入合計は前年度 平成 17 年度決算 比約 1 億円減の 240 億 6 千万円となりました。また支 出面では人件費が前年度比 1 億 1 千万円の減、医療経 費が前年度比 5 億 4 千万円の減となったこと等により、 学校法人金沢医科大学の平成 17 年度決算が、去る 支出合計が前年度を 4 億 8 千万円下回る 235 億円とな 5 月 30 日(火)開催の第 183 回理事会及び第 95 回評議 りましたので、帰属収支差額(正味財産増加額)は 5 員会において承認されました。その概要及び収支等の 億 6 千万円の収入超過という結果になりました。 状況は、次のとおりです。 2.消費収支計算書の状況 【主な収入】 (1) 学生生徒等納付金 1.概 要 私学を取り巻く厳しい経営環境が続く中、平成 17 医学部学生数の増加等により、前年比 1 億 2 千万円 年度は大学及び病院の将来の発展につながる事業に積 増の 43 億 6 千 8 百万円となりました。学生数は、医学 極的に取り組みました。教育面では医学教育センター 部生 641 名、大学院生 68 名、看護学校生 180 名の合計 を設置し、専任教員を配置するとともに教育環境の整 889 名です。 備を行いました。研究面では総合医学研究所の移転及 (2) 寄付金 び共同利用研究機器の導入により、研究環境の基盤整 備を行いました。診療面では病院本館に 21 世紀集学 的医療センターを展開し、患者中心医療の拠点を整備 しました。また、病院機能評価受審に対する環境整備 を推進するとともに、病院第二期整備計画の一環とし 寄 付 金 総 額 は、 前 年 比 5 千 1 百 万 円 減 の 9 億 2 千 8 百万円となりました。 特別寄付金は、寄附講座への寄付金その他で 3 千万 円となりました。 一般寄付金は、17 年度入学生からの教育振興資金 寄付金が 4 億 5 千 5 百万円、学術振興基金制度による ての第 2 新館建設に着手しました。 そのほか、海外交流事業や医学部奨学事業の推進の ための積立てや、将来の退職金債務に備えるための資 ものが 4 億 3 千 3 百万円の合計 8 億 8 千 8 百万円でした。 現物寄付金は、科学研究費補助金で購入した研究機 器の受入れ及び後援会橘会からの救命艇の受贈等で 1 金確保についても予定額の積立を行いました。 その結果、収入面では医療収入が前年度を 4 億 7 千万円となりました。 消費収支 計 算 書 (自)平成17年4月 1日 (至)平成18年3月31日 消 費 科 目 収 入 の 部 金 額 消 前年比 学生生徒等納付金 手数料 寄付金 補助金 資産運用収入 事業収入 医療収入 雑収入 4,368 161 928 1,247 396 201 16,676 86 120 38 ▼51 ▼2 283 17 ▼475 ▼28 帰属収入合計 24,063 ▼98 △590 ▼534 23,473 ▼632 基本金組入額 消費収入の部合計 (単位:百万円) 費 支 出 科 目 人件費 教育研究経費 医療経費 管理経費 借入金等利息 減価償却額及び 資産処分差額等 の 部 金 額 前年比 11,188 1,398 7,983 471 0 2,459 ▼114 101 ▼545 57 0 16 消費支出の部合計 23,499 ▼485 (正味財産増加額) 消費収支差額 基本金取崩額 (564) △26 541 (387) ▼147 541 (注)△は計算書式上のマイナス表示、▼は比較上のマイナスを表示(以下同じ)。 前年比は平成16年度決算との比較です。 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 (3) 補助金 47 9 百万円、役員報酬は前年度とほぼ同額の 7 千万円、 補助金総額は、前年度とほぼ同額の 12 億 4 千 7 百万 退職給与引当金繰入額及び退職金は前年比 1 億 7 千 6 百万円減の 6 億 8 百万円となり、人件費総額では前年 円となりました。 そのうち、私立大学等経常費補助金は前年比 4 千 2 百万円減の 10 億 4 千万円となり、また、文部科学省 比 1 億 1 千 4 百万円減となる 111 億 8 千 8 百万円となり ました。 なお、人件費の帰属収入に占める割合は 46.5%(前 研究施設・設備補助金は前年比 8 千 8 百万円増の 9 千 3 百万円となりました。そのほか臨床研修費補助金 7 年度 46.8%)となりました。 千 9 百万円及び地方公共団体ほかからの補助金 3 千 5 (2) 教育研究経費 事業計画に基づく教育研究事業を実施した結果、教 百万円が交付されました。 (4) 医療収入 育研究経費は前年比 1 億 1 百万円増の 13 億 9 千 8 百万 医療収入総額は、前年比 4 億 7 千 5 百万円減の 166 億 円となりました。 (3) 医療経費 7 千 6 百万円となりました。 入院収入は、入院診療単価及び病床利用率は前年 医療経費は、前年比 5 億 4 千 5 百万円減の 79 億 8 千 3 度を若干上回ったものの、実稼働病床数を前年度よ 百万円となりました。これは、院外処方箋発行率が高 り 59 床休床としたことにより入院延患者数が 5.7%減 くなったことや実稼働病床の休床に伴い薬品費等の材 少したため、前年比 4 億 5 千 7 百万円減の 126 億 2 千 7 料費が 3 億 4 千 3 百万円減少したこと及びその他の医 百万円となりました。 療経費で 2 億 2 百万円減少したためです。 一方、外来収入は、外来延患者数が 2.4%減少した なお、医療経費の医療収入に占める割合は 47.9%(前 ものの外来診療単価の増等により、前年比 1 千 8 百万 年度 49.7%)、また、帰属収入に占める割合は 33.2%(同 円減の 40 億 4 千 9 百万円となりました。 35.3%)となりました。 なお、医療収入の帰属収入に占める割合は 69.3%(前 (4) 減価償却額及び処分差額等 年度 71.0%)となりました。 減価償却額及び資産処分差額の合計額は、前年比 1 【主な費用】 千 6 百万円増の 24 億 5 千 9 百万円となりました。この (1) 人件費 うち、病院部門の減価償却額及び資産処分差額等は、 教員人件費は前年度とほぼ同額の 33 億 5 千 1 百万 円、 職 員 人 件 費 は 前 年 比 6 千 2 百 万 円 増 の 71 億 5 千 病院新館の建物・医療機器等の償却額を含め、前年比 9 千 1 百万円増の 16 億 5 千 1 百万円となりました。 平成 17 年度消費収支の科目別構成比 帰属収入構成比 消費支出構成比(対帰属収入比) 雑収入 0.4% 減価償却額等 10.2% 寄付金 3.9% 学納金 18.2% 補助金 5.2% 手数料 0.7% 医療収入 69.3% 収支差額 2.3% 人件費 46.5% 医療経費 33.2% 資産運用収入 1.6% 事業収入 0.7% 管理経費 2.0% 帰属収入 24,063 百万円 教育研究経費 5.8% 消費支出 23,499 百万円 【管理・運営】 金 沢 医 科 大 学 3.資金収支計算書の状況 48 の合計 6 億 5 千万円を積立てました。 【主な資金収入・支出】 4.貸借対照表の状況 ※消費収支計算書で説明した項目については割愛させ 【主な増減】 (1) 資産の部 ていただきます。 (1) 借入金等収入 資産総額は、前年比 2 億 6 千 9 百万円増の 574 億 4 千 学校債により 5 億 6 千 1 百万円の資金調達を行いま した。 9 百万円となりました。 退職給与引当特定資産は、積立分が増加し 46 億 3 千 (2) 借入金等返済支出 8 百万円となりました。これは、退職給与引当金残高 学校債の定期償還及び繰上償還等で、5 億 2 千万円 の償還を実施しました。 の 62.3%に相当します。 医学教育海外交流引当特定資産は、積立分が増加し (3) 施設・設備関係支出 1 億円となりました。 施設関係では、病院本館と新館をつなぐ連絡廊下 建設工事に 3 億 6 千 2 百万円、総合医学研究所移転改 修工事に 1 億 1 千 6 百万円、21 世紀集学的医療センタ また、新たに医学部奨学事業引当特定資産を設け、 1 億円を積立てました。 流動資産のうち、現金預金は 1 億 4 千万円減の 52 億 ー設置工事に 1 億円及び病院第 2 新館建設工事着手金 8 千 6 百万円となりました。 に 8 億 2 千 3 百万円ほかで、合計 15 億 1 千 2 百万円、設 (2) 負債の部 備関係では、細胞培養イメージングシステムを含む教 育研究用機器 1 億 3 千 7 百万円(うち、補助金交付額 2 千万円)、結石破砕波治療器を含む病院医療用機器 4 負 債 総 額 は、 前 年 比 2 億 9 千 5 百 万 円 減 の 184 億 8 百万円となりました。 退職給与引当金は、取崩しと繰入れを行った結果、 億 5 千 4 百万円、図書整備費 1 千万円及び病院バス更 前年比 2 億 8 百万円増の 74 億 4 千 4 百万円となりまし 新費 1 千 3 百万円ほかで、合計 6 億 1 千 7 百万円を支出 た。 しました。 (3) 正味財産は、前年比 5 億 6 千 4 百万円増の 390 億 4 (4) 資産運用支出 千 1 百万円となりました。この結果、資産総額に対す 将来の退職金債務に対する財源を確保するため退職 給与引当特定資産に 5 億円、前年度から積立てを開始 る正味財産の割合は 68.0%(前年度 67.3%)となり、 前年度より 0.7%増加しました。私立医大平均( 16 年 した医学教育海外交流引当特定資産に 5 千万円、また、 度末の単科医大 11 校平均値)は 69.2%であり、これ 新たに設定した医学部奨学事業引当特定資産に 1 億円 に対しては 1.2 ポイント下回る結果となっております。 資金収支計 算 書 (自)平成17年4月 1日 (至)平成18年3月31日 収 入 科 目 の 部 金 額 (単位:百万円) 支 前年比 学生生徒等納付金収入 手数料収入 寄付金収入 補助金収入 資産運用収入 資産売却収入 事業収入 医療収入 雑収入 借入金等収入 前受金収入 その他の収入 資金収入調整勘定 前年度繰越支払資金 4,368 161 918 1,247 396 5 201 16,676 86 561 4,255 3,145 △7,113 5,426 120 38 ▼47 ▼2 283 2 17 ▼475 ▼28 31 40 ▼331 ▼141 194 収入の部合計 30,332 ▼299 科 目 人件費支出 教育研究経費支出 医療経費支出 管理経費支出 借入金等利息支出 借入金等返済支出 施設関係支出 設備関係支出 資産運用支出 その他の支出 資金支出調整勘定 次年度繰越支払資金 支出の部合計 出 の 部 金 額 前年比 10,980 1,398 7,991 472 0 592 1,512 617 650 3,087 ▼89 101 ▼557 59 0 76 1,432 6 ▼2,400 682 △2,253 5,286 531 ▼140 30,332 ▼299 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 49 し て い ま す。( http://www.kanazawa-med.ac.jp「 平 なお、情報公開の一環として、平成 17 年度財務関 成 17 年度事業報告及び決算について」) 係書類(財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報 告書及び監査報告書)を本学のホームページ上に掲載 貸 借 対 照 表 平成18年3月31日現在 (単位:百万円) 資 産 科 目 固定資産 土地 の 部 負 金 額 前年比 49,077 356 3,098 0 23,448 80 教育研究用機器備品他 4,797 ▼384 図書 1,196 10 退職給与引当特定資産 4,638 500 減価償却引当特定資産 9,200 施設拡充引当特定資産 2,500 海外交流引当特定資産 100 50 奨学事業引当特定資産 100 100 8,372 ▼87 5,286 ▼140 2,868 32 218 21 57,449 269 建物、構築物他 流動資産 現金預金 未収入金 貯蔵品他 資産の部合計 債 科 目 固定負債 の 部 金 額 前年比 11,407 347 3,963 139 長期借入金、学校債 退職給与引当金 7,444 208 7,001 ▼642 0 短期借入金、学校債 未払金 前受金他 185 2,252 4,564 ▼171 ▼531 60 0 負債の部合計 18,408 ▼295 流動負債 正 味 財 産 の 部 科 目 基本金 金 額 前年比 58,116 49 △19,075 515 正味財産の部合計 39,041 564 負債の部及び 正味財産の部合計 57,449 269 消費収支差額 (注)減価償却額の累計額は26,247百万円です。 退職給与引当金の額は、期末要支給額7,444百万円の100%を計上しています。 価実績、職種および部下からの評価など多面的に審議 平成 17 年度 人事評価 され、同日審議結果を理事長に答申し承認された。 この人事評価の結果を生かして、評価が良好であっ た職員に対して、今年は 32 名(昨年度 31 名)につい 平成 17 年度人事評価が、教育職を除いた事務職、 て最高 10 万円の奨励金を夏期期末手当に加算して支 技術職、看護職および技能職の 991 名の職員を対象と 給することになり、6 月 29 日(木)に奨励金贈呈伝達 して実施された。 式が行われた。 評価の結果は、平成 18 年 6 月 20 日(火)開催の第 7 評価結果が不良であった者 66 名(昨年度 53 名)に 回人事評価委員会においてまとめられたうえ、理事長 ついては、職員人事委員会が該当者個々につき検討し、 に報告された。 もっとも適切と思われる方法によって指導することに また、6 月 26 日(月)に開催された第 45 回職員人 事委員会において、評価結果を基礎として、過去の評 なる。 (人事厚生課 田川俊範記) 【管理・運営】 金 沢 医 科 大 学 50 とする施工業者などの関係者約 40 名が出席し、神官 金沢医科大学 による祝詞奏上、代表者による鍬入・玉串奉奠などが 看護学部棟起工式 行われた。公務で出張中の小田島粛夫理事長にかわっ て山下副理事長から列席者各位に対して次のような施 主挨拶がなされた。 金沢医科大学では、開学の翌年の昭和 48 年に「金 沢医科大学附属看護学校 」( 3 年制)を開設し、昭和 63 年に専修学校専門課程を設けた「金沢医科大学附 属看護専門学校」( 3 年制)と発展させて、豊かな人 間性を備え、患者さまの立場にたって看護ができる有 能な看護師の育成に大きな努力を注いできており、現 在までの 33 年間に 1,700 名にのぼる看護師を世に送り 出してきている。今般、多様化、個別化している健康 ニーズにさらに的確に対応できる質の高い看護職の育 成をめざして、新たに 4 年制大学の看護学部看護学科 として出発するため目下設置認可申請中であり、この 看護学部棟は、その中枢部分が入居する建物である。 平成 18 年 7 月 13 日(木)午前 11 時 30 分から旧看護 今回の工事は、旧看護師宿舎 D 棟跡地に、鉄骨造地 師宿舎 D 棟解体撤去後の建設地において、看護学部棟 上 4 階建、1 階:事務室、ラウンジ、更衣室、2 階:実 建設工事の起工式(地鎮祭)が、石川県健康福祉部長 習室、在宅介護実習室、3 階:教員室、ラウンジ、4 階: 木村博承氏、内灘町長八十出泰成氏、河北郡市医師会 学部長室、教員室、保健室、会議室の構成で、延床面 長紺谷一浩氏ほか多数の来賓を迎えて執り行われた。 積 2,357 ㎡の校舎を建設するもので、工期は平成 18 年 式典は、山下公一副理事長、山本 達学長ほか大学 7 月から 8 カ月間を見込み、平成 19 年 2 月末の竣工を 関係職員、中島建築 ㈱ならびに真柄建設 ㈱をはじめ 予定している。 (施設整備計画課) 互 助 会 第 16 回 互助会ゴルフ大会 恒例の互助会主催のゴルフ大会が、本学の創立記念 日にあたる 6 月 1 日(木)に、ゴルフ倶楽部金沢リン クスで会員 31 名、学生 39 名の計 70 名が参加して開催 された。 小田島粛夫互助会会長の挨拶に続き始球式が行わ れ、OUT、IN に別れ晴天の空へボ−ルを飛ばした。 競技は終始和やかな雰囲気の中で進行し、随所で「ナ イスショット!」の声が聞かれた。スコアはさておき、 爽やかな初夏の空のもと、職員と学生との親睦が図ら れた一日となった。 (人事厚生課 石田豊司記) ネットの部とグロスの部優勝の殿田伸一郎さん(左) 成績は次のとおり。 【互助会員】 〈ネットの部〉 優 勝 殿田伸一郎(中央放射線部) 準優勝 中居 重光(庶務課) 第 3 位 内田 健三(内分泌代謝制御学) 〈グロスの部〉 優 勝 殿田伸一郎(中央放射線部) 準優勝 中橋 毅(高齢医学) 第 3 位 岡田 正人(運動機能病態学) 72.8 73.6 73.8 86 86 91 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 互 助 会 51 夏のバス旅行 宝塚歌劇「月組公演」観劇 平成 18 年度の第 1 回目のバス旅行として、開学記念日の 6 月 1 日(木)、宝 塚市の宝塚歌劇「月組公演」の観劇バス旅行が実施された。この企画は以前 から要望のあったもので、職員家族 45 名が参加した。 当日は早朝 6 時に大学を出発し、経路の名神高速道路が工事中のため若狭方 面経由で宝塚市へ向かった。このため開演時間に間に合うかどうか気がかり であったが無事、開演 10 分前に劇場に到着した。参加者は月組の演じるオペ ラ「暁のローマ」やレビューを十分に満喫し帰路についた。 参加者に対するアンケートの結果、回答者全員から来年度も同様の企画を 実施してほしいとの要望があった。 (人事厚生課 大戸和雄記) 京都祇園祭見学 平成 18 年度の第 2 回目のバス旅行として、海の日の 7 月 17 日(月)京都の祇園祭見学バス旅行が実施された。この 川床料理を味わう参加者たち 企画は個人では出かけにくい遠方の祭見学を企画 してほしいとの会員からの要望にこたえ企画した もので、当初 40 名の参加希望者を見込んだが希望 者が 70 名を超え、急遽バス 1 台を増発して実施し た。 当日は、空模様を気にしながら、一路京都に向 かうが、やはり天気予報どおりで、雨中での祭り 見学となった。祭は豪壮な山鉾巡行が次々と続き、 雨に濡れながらも参加者らは熱心に見学していた。 祭りを堪能してから、場所を高雄に移し川床料 理をゆっくり味わい帰路についた。 雨に降られて散々な旅行であったと思ったが、8 割以上の人から、来年度もこの企画を実施してほ しいという希望があった。 (人事厚生課 大戸和雄記) 祇園祭 金 沢 医 科 大 学 52 随想・報告 カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学記 機能再建外科学(形成外科学)講師 吉田 純 留学の概要 平 成 17 年 2 月、 カ リ フ ォ ル ニ ア 大 学 ロ サ ンゼルス校( UCLA )形成外科への留学が 実現した。実験研究が目的ではなく、同科の Clinical Professor でかつ頭蓋顔面外科部門 の Director でもある、世界的な craniofacial surgeon の Dr. Henry K. Kawamoto Jr.( 以 下 Dr. K ) の International Fellow と し て、 彼の行なう全ての手術と外来業務に参加し、 治療に関する考え方や技術について学ぶとい う臨床留学であった。どうせなら英語力も身 につけたいと思い 1 年という期間を設定した。 渡米後は仕事上の知り合いであるロサンゼル ス在住の T 氏の協力のもと、とりあえず生活 できる環境を整え、UCLA での事務手続きも Dr. K のオフォスにて。左から Dr. K、ペルーから見学にきた Dr.、筆者、ア ルゼンチンの友人(右)、 一段落させ、いよいよ本格的な留学生活のスタートと meningioma、血管奇形などの腫瘍性病変、さらに外 なった。 傷後の重度の頭蓋顔面変形に対する手術など、全米、 具体的な研修内容は、UCLA およびロサンゼルス 全世界から多くの患者が集まるため種類、数ともに非 市内の関連病院において行われる頭蓋顎顔面外科手 常に豊富であった。美容外科手術はフェイスリフトや 術の見学あるいは助手としての参加である。また、 上下眼瞼形成術のほか鼻形成術、おとがい形成術など Dr. K の美容外科クリニックでの手術にも助手として が多数を占めていた。月曜日から金曜日までほとんど 参加した。手術は頭蓋縫合早期癒合症に対する頭蓋 朝から晩まで手術と外来診察とカンファレンスの繰り 形成術、種々の顎変形症に対する顎骨移動術のほか、 返しであったが、その合間を縫って全米規模の二つの 口唇口蓋裂や Treacher-Collins 症候群をはじめとす 学会に参加したり、前述の T 氏の計らいで他の大学病 る顔面裂、また頭蓋顔面領域の fibrous dysplasia や 院や美容外科施設での手術見学、医療機器メーカーの UCLA の Center of Health Science。中央手術室、病棟のほか 研究施設、教育施設などがある Vennice Beach から Santa Monica 方面を望む。海岸線はさらに Malibu Beach へと続く 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 53 たせいで、外国人留学生が一人でトラブルなく、心安 らかに手術見学や外来見学を行うためのあらゆるノウ ハウが身についてしまった。このことは小さな遺恨と なって僕の心の奥底にへばりついている。 ラテンの友人 さて、何とか快適に過ごせるようになって来たこ ろ、突然イタリアからの見学者がやってきた。彼は若 い矯正歯科医で、かの Dr. Rickets の後継者の一人で ある。Dr. K に頼まれていろいろと彼の世話をしてい るうちにすぐに親しくなった。ホテルのバーに飲みに AAPS の年次総会( Scottsdale, Arizona )での Dinner Party。 右端が筆者、その隣は Dr. K 行ったり、早朝のサンタモニカをサイクリングしたり、 Hooters に女性店員を見に行ったり(彼のたってのリ クエストで)、毎日のように夕食を共にしていろいろ 本社工場見学、さらに休暇をとってイエローストーン なことを話し合った。下手な英語でも適当に話すクセ 公園を訪れたりもした。年が明けてからは米国の顎顔 と自信がついた。3 週間の滞在を終え、次の見学先に 面外科学会主催の講習会に参加し、またフランスから 向かう前に彼が言った。 「君とは生まれた国も文化も 高名な Dr. Marchac が UCLA に来るというので帰国 違うし、会ってからまだ間もないけど、間違いなく僕 予定日を延期して、彼の講演とカンファレンスにも参 の数少ない親友の一人だ」。この陽気なイタリア人が 加した。帰国後約半年が過ぎて完全に以前の生活に戻 去ってから数週間後、今度はアルゼンチンから 7ヵ月 ってしまい、最近では留学中のことをあまり思い出さ 間の滞在予定で若い形成外科医がやってきた。彼は奥 なくなってきているが、こうやって改めて振り返ると、 さんと 3 歳の息子を連れてきており、ぼくと同様 Dr. 非常に充実した一年を送ることができたのだなと感慨 K の International Fellow であった。イタリアの友人 深いものがある。しかし本当に僕の心に強く残ってい とは違って彼はかなり英語が達者だったが、スペイン るものは実は他にあるのだ。 訛りの早口だったので聞き取れるようになるまでに 1 小さな遺恨 さまよ 行った当初の 2ヵ月ほどは、まるで迷路の中を彷徨 カ月近くを要した。彼に例の手術見学のためのノウハ ウを伝授するたびに、 「こんなこと絶対に一人じゃわ っているかのような毎日だった。何かしようとすると かんねぇよ!お前がいなかったら俺は野垂れ死にさ」 すぐに壁にぶつかる、それを解決しようにも何をどう と言ってくれて、これで僕の怨恨も少しは晴れた。彼 すればいいのかさっぱりわからないという状態だ。も は自国では CIVIC に乗り、TOTO(彼は日本の企業 ちろん文化もシステムも異なる土地なので覚悟はして だとは知らなか いたのだが、一番の問題は「最初に教えてもらわなけ った)のウォッ れば到底わかるわけがないような手順や決まりについ シュレットを愛 ての事前の説明が一切ない」ということなのである。 用していて実は まさに全てがセルフサービスであった。もしそこに他 結構日本通? な の留学生でもいれば、あらかじめいろいろな情報を得 のだが、ロサン ることで、もっと快適に無駄なく行動できていたにち ゼルスに来てか がいないが、日本人に限らず留学生というものが周囲 らはとんかつと に一人もいなかったのだ。おかげで僕はこれらを全て 茶碗蒸しと抹茶 自分一人で、イチから、いやゼロから解決していくほ ミルク(無理や かなかった。どこを通って手術室に入るのか、どうや り飲ませた)も ってロッカールームに入るのか、術衣はどこでどうや 好 物 に な っ た。 って手に入れるのか、こんなことでさえ実際にやって 僕が帰国する直 みると各病院で全く異なっている上に想像以上に複雑 前には奥さんも で、その手順を把握するのに大変な労力と時間を要し いっしょにディ た。何かを尋ねても長時間たらいまわしにされた末に ズニーホールで ようやく(多くは偶然に)解決する、万事がこんな感 のクラシックコ じの毎日であった。こういうことを数ヵ月も続けてい ンサートに出か UCLA の手術室ではたまに誰かがこの ような切り抜きを持ってくる。Dr. K の 顔 を し た ヨ ー ダ( 映 画 STAR WARS ) が戦っているものもあった 【随想・報告】 金 沢 医 科 大 学 54 イプの発想が身に染み付いてしまい、それ以外の考え 方は間違っているように感じることがある。この 1 年 間はそういう固定してしまいそうな思考をリセット し、何事にもオープンな態度で Dr. K の数々の優れた 仕事を見るよう心がけた。そうすることで、それまで は何かにつけ「通常はこうである」あるいは「こうあ らねばならぬ」的なものを求めて多くの文献や書物を 渉猟することが多かったのだが、今回改めて考え方や 正解は一つではないこと、またある程度の常識を持っ て全体を眺めてみれば、自然な論理展開から至って簡 単に結論は導き出せるものであるということを実感し Dr. K 主催の New Year Party。左からアルゼンチンの友人、Dr. K、筆者 た。月並みな言葉ではあるが、留学とは単に何かをま ねるためではなく、それによって今までの自分と何か けたりもした。とにかく彼と過ごした最後の数ヵ月間 を得て変わった自分とを aufheben させるようなもの は、実によくしゃべり、よく笑った。この二人とは今 であるべきだと思うのである。 でも事あるごとにメールで連絡を取り合っているが、 最後に、Kawamoto、川上重彦両教授をはじめ、留 本当に良い友人を得ることができたと感謝している。 学に際しお世話になったすべての方々に心からの感謝 私の留学考 の意を表してこの稿を終える。 さて、僕にとってこの留学は何であったのか。今や アメリカも日本も技術的には差はないように思う。学 ぶべき点は医療技術ではなく思考方法である。同じ場 所で長く医者をやっていると、どうしてもステレオタ 《本学スタッフ新刊著書》 (財)日本鯨類研究所・日本捕鯨協会 編 第 4 回 日本伝統捕鯨地域サミット 開催の記録 分担執筆:平口哲夫 (近代捕鯨の先駆者と加賀・能登 捕鯨の伝統、125-131 頁) 下関市・(財)日本鯨類研究所 A5 判、137 頁 2006 年 3 月 15 日発行、非売品 〈英語版〉 Report and Proceedings The 4th Summit of Japanese Traditional Whaling Communities Editor: The Institute of Cetacean Research and Japan Whaling Association Publisher: Shimonoseki City and the Institute of Cetacean Research Tetsuo Hiraguchi: Pioneers of Modern Whal-ing and Traditional Whale Hunts of Kaga and Noto( 125-131 頁) A5 判、137 頁 2006 年 3 月 31 日発行、非売品 平成 17 年 5 月 14 日に山口県下関市で開催された第 4 回日本伝統捕鯨地域サミットの記録集(日本語版と英 語版)。筆者論文「近代捕鯨の先駆者と加賀・能登捕 鯨の伝統」のほか、小島孝夫「伝統捕鯨の近代化と産 業化:南氷洋捕鯨前史」、岸本充弘「鯨産業史の中で の下関の役割」 、大隈清治「何故日本が南氷洋捕鯨に 生き残れたか?」 、飯野靖夫「国際的な南氷洋捕鯨管 理の舞台裏(覚書) 」、荒木智資「有川鯨組と南氷洋捕 鯨」、田中省吾「南氷洋捕鯨の回想‐捕鯨オリンピッ クの中の日本の捕鯨‐」 、林良博「南氷洋捕鯨におけ る捕鯨技術革新の舞台裏」、森田勝沼「海洋資源開発 史のなかの南極」など、計 14 編を収録。非売品(全 国主要図書館等に贈呈予定、本学図書館にも収蔵)。 なお、第 5 回サミットは、平成 18 年 4 月 23 日に和歌 山県太地町で開催された。 (人間科学科目 平口哲夫記) 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 55 カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学記 呼吸機能治療学(呼吸器内科学)助手 戸部 勇保 2004 年 10 月 よ り 2005 年 9 月 ま で 約 1 年 間、 アメリカ合衆国サンフランシスコ市にあるカ リフォルニア州立大学サンフランシスコ校、 心血管研究所に留学する機会を得ました。 サンフランシスコは、アメリカ合衆国西海 岸のカリフォルニア州北部にあります。 日本でも人気の観光スポットでさまざまな 観光雑誌に紹介され、映画やコマーシャルの ロケ地にもなっており、その名前を知らない 方はいないと思います。ロサンゼルスと共に カリフォルニア経済、金融、工業の中心地と なっています。人口は約 75 万人ですが、サン フランシスコ湾対岸のオークランド、南岸の サンノゼ(シリコンバレー)を含めた都市圏 人口は約 700 万人にも上り、全米で 5 番目の Dobbs 教授のご自宅で教授の手料理をいただきながら記念撮影。後列左が 教授、横が筆者、前列左が家内、その横が教授夫人。 規模を誇っています。 民族構成はさまざまで、公共施設の案内板は、英語、 気候は温暖で、夏に降雨が少なく、1 月の最低平均 スペイン語、中国語で書かれています。さまざまなアジ 気温は8℃、最高平均気温は 14℃、8 月の最低平均気 アの食文化もあり、まさに多様な文化が融合し自由な空 温は 13℃、最高平均気温は 22℃と 1 年を通して過ごし 気に包まれている印象があります。スポーツにおいて やすい気候です。 は、フットボールチームのサンフランシスコ・フォーテ サンフランシスコは、霧の街としても有名です。1 年のうち春からの数カ月以外は朝夕に霧が出ます。こ れは、サンフランシスコ湾内にカリフォルニア海流(寒 ィーナイナーズ、メジャーリーグのサンフランシスコ・ ジャイアンツの本拠地としても知られています。 サンフランシスコの名前の由来はキリスト教の宣教 流)が流れ込み、湾外の太平洋(カリフォルニア沖) 師「聖フランシス」で、1770 年代にサンディエゴから には、南から流れるメキシコ海流(暖流)が流れてい 陸路を北上してきたスペイン探検隊が天然の良港であ るためです。これらの海流の影響(おかげ)で、一年 った湾と海峡を発見し、カトリック伝道所を設けたこ 中気温の差があまりなく、住みやすい街となっている とがサンフランシスコの始まりです。1821 年に対メキ のです。 シコ、アジア貿易の拠点、捕鯨基地として発展、1848 7 月、8 月の時期にはサンフランシスコ湾対岸の気 年、シエラネバダ山脈で金鉱脈の発見後、ゴールドラ 温が上がってくるため、気温の差が大きくなり、霧が ッシュによって急成長しました。60 年代後半には大 さらにひどくなります。このため、この時期に快晴の 陸横断鉄道が開通し陸海の交通の重要な中継拠点とし サンフランシスコ湾対岸よりゴールデンゲートブリッ て発達しました。1906 年にはマグニチュード 7.6 の大 ジを渡りサンフランシスコ市内に入ってくると、あた 地震が市街地を襲い壊滅的な打撃を受けましたが復興 かも霧で包まれた別世界に入っていくような幻想的な し、1914 年にはパナマ運河の開通により拠点性を増 感覚を感じます。 大させ、1937 年には市のシンボルでもあるゴールデ また、急峻な丘陵地や窪地が多く、急な坂が多いこ ンゲートブリッジが完成しています。1960 年代ころ とでも有名です。坂の多い土地柄を背景に、1873 年 から主要産業であった製造業に陰りが見え始めました にはケーブルカーの営業が開始され、今日でも市民の が、サンノゼ一帯のシリコンバレーの発展により多く 重要な足となっており、多くの観光客を惹き付ける魅 の IT 関連企業を誕生させ、今日に至っています。 力の一つにもなっています。このような丘に発達した また、サンフランシスコは第二次世界大戦以来の戦 都市はアメリカ国内でも少なく、驚いたことにアメリ 争状態を終結させるために、1951 年(昭和 26 )9 月 8 カ国内からの観光者も多く目にしました。 日に日本が連合諸国と調印した講和条約が行われた土 【随想・報告】 金 沢 医 科 大 学 晴天のサンフランシスコ。写真左が Lab のある建物。 56 霧のサンフランシスコ。左写真と同日の朝の風景。霧のでる季節 はこれくらいの濃霧が続く。 地でもあります。その調印式が行なわれた建物は会議 いよう生命科学の研究専門地区を造る計画です。大学 場として現在も残っており、私もこの建物を訪れその キャンパスと民間企業のオフィスビルのみだけではな 時代に思いをはせました。 く、一般住居、商業施設、コミュニティセンター、消 UCSF について 防署、警察署、公立学校等との一体を目指した複合的 UCSF( University of California, San Francisco: な職住接近型の都市再開発計画となっています。歴史 カリフォルニア大学サンフランシスコ校 ) は、① Berkeley もあり観光地としてイメージが定着している街にこの ( UC Berkeley )、 ② Davis( UC Davis )、 ③ Irvine 様なことを計画してしまうアメリカの合理主義とそれ ( UCI )、 ④ Los Angeles( UCLA )、 ⑤ Riverside を可能にしてしまうアメリカの気質に驚きとエネルギ ( UCR )、⑥ San Diego( UCSD )、⑦ San Francisco ーの凄さを感じました。 ( UCSF )、 ⑧ Santa Barbara( UCSB )、 ⑨ Santa 私のボス Dobbs 教授と留学までの経緯 Cruz( UCSC )の 9 つからなる、カリフォルニア州 立大学( UC )の分校の 1 つです。 私のボス Leland G. Dobbs 教授は小児科の教授で 肺の発生発育について研究されており、肺胞上皮細胞 UC Berkeley は、カリフォルニア州立大学の本校 の研究で著名な方です。肺の組織をエラスターゼで処 であり、多くのノーベル賞受賞者を輩出し、学生運動 理し、肺胞上皮細胞を単離する方法を確立され、その 等でも有名でニュースにもしばしば登場します。また 手法は Dobbs の方法として、我々肺胞上皮細胞の研 UCLA は、その大学マーク入りのシャツやバッグで、 究を行う者に知られています。私が彼の名前を特別 日本でも良く知られています。これらの大学に比べる に感じるようになったのは私の学位研究のころからで と、UCSF は規模も小さく日本での知名度は高くない す。私の学位テーマは、LPS(エンドトキシン)を投 かも知れませんが、医学部、歯学部、薬学部、看護学 与して作成したラットの傷害肺の II 型肺胞上皮細胞 部および多数の附属病院と研究所からなり、メディカ に iNOS(誘導型 NO 合成酵素)の発現することを調 ルセンターとして、独自の地位を築いています。多く べるものでした。単離した II 型肺胞上皮細胞での発 の助成金により、癌、心臓病、アルツハイマー病、パ 現を確かめる時、彼の単離方法を使用しました。今思 ーキンソン病、HIV、小児疾患、糖尿病、その他の自 えば、この時から彼の名は私にとって特別のものとな 己免疫不全症などの分野における研究活動が促進さ りはじめていました。次に 1997 年 5 月、サンフランシ れ、シェーグレン症候群の研究では金沢医科大学とも スコで主催されたアメリカ胸部疾患会議で結果を発表 提携しており、UCSF の名前をご存知の方も意外と多 し た 時、UCSF の Michael A. Matthay 教 授 の Lab を いと思います。私が行った年には、カリフォルニア州 見学するため大学キャンパスを皆で訪れる機会があり の幹細胞の主要研究施設に指定され、調印式にシュワ ました。この時、偶然にも廊下に Dobbs 教授の研究 ルツネッガー知事が来るということで、大学内の警備 発表のポスターが貼ってあり、それを見て異常に感動 が厳しいときもありました。 したことを覚えています。この時は英語が大の苦手で また現在、市内にあるキャンパスが手狭になったた ある私にとって留学はしてみたいが、やっぱり怖いし、 め、ジャイアンツ球場の近くにある、旧鉄道操車場跡 そんなチャンスもない、大体喋れないのだから無理と 地に、巨額のお金を投資し移転させる計画が進められ いった感じで現実性のないものでした。しかし、全く ています。これは、 「ミッションベイ・プロジェクト」 予期せず留学の機会を得ることとなりました。それは、 と呼ばれ、UCSF の研究と民間企業の連携が図りやす 2003 年 10 月、日本で行われた学会のシンポジストに 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 57 Dobbs 教授が出席され、学会終了後本学に来られたこ りご高齢でした とです。そしてこの時栂教授から「戸部君、きみ地元 が、今もなお週 の出身だから金沢詳しいよね、Dobbs 教授を観光案 2 回は実験もさ 内にお連れしてくれない?」と指名されたことです。 れ、週に 1 回行 今までであれば、英語に自信がないので他の先生にお わ れ る Lab の 願いしますと逃避していましたが、今回は自分にとっ 共同ミーティン ては特別に思っていたあの Dobbs 教授です。案内も グも必ず出席さ したいけど、英語もできないし…と躊躇しました。教 れ、Lab のご意 授一人でなく奥様もご一緒で、そうなると家内にも 見番のような存 頼まないといけないか? ということになり、帰宅後、 在でした。Lab さっそく相談したら以外にも家内は大丈夫、何とかな るよ! といった返事でした。 帰国前、サーファクタントの発見者 Dr. Clements 先生と記念撮影。 こうして Dobbs 教授夫妻と私達 2 人が一緒に市内観 光することとなりました。 僕の担当した市内の見学は 1 日の予定でしたが、夕 方には大学での講義もあったので、兼六園、金沢城、 忍者寺など短時間で廻れるお決まりのコースでした。 のスタッフから とても尊敬さ れ て お り、 こ の た め 皆 は 彼 を Professor Clements で は な く、Dr. Clements と呼んでいました。また日本通で私より歌 舞伎のことをよくご存知でした。 私はここでラットの肺胞上皮細胞に VEGF(血管内 教授は漆器に興味があるということで昼食後、片町近 皮増殖因子)が発現することを調べるテーマをいただ 辺で漆器のお店に立ち寄るなど工夫もしました。昼食 き、蛍光抗体法による 2 重、3 重免疫組織染色を中心 後には、会話もはずみ、立ち寄った喫茶店では互いの にその発現を調べる仕事をしました。肺組織上で発現 家族の話もするようになっていました。驚いたことに を確認後、肺胞上皮細胞を単離して、肺胞上皮細胞の 共通することが多く、共に犬好きで 2 頭ずつ飼ってい Ⅰ型細胞、Ⅱ型細胞の各細胞に VEGF が発現するこ ることも共通していました。 とを調べました。初めはとても順調に進んでいました 愛犬の話や携帯している犬の写真の見せ合いをして が、肺より肺胞上皮細胞を単離して発現を調べる段階 いるうちに、留学する気はないの? うちの Lab に来 に入ると、Dobbs 教授から OK がでるまで約 3 カ月間 る? でも君の英語力ではちょっと無理だな? とジョ もかかってしまいました。特にⅠ型細胞の単離はデリ ークもでるようになっていました。教授がアメリカに ケートで、すぐに細胞膜表面に傷害ができてしまい、 もどられたあと、日本ではなかなか手に入らない犬の 幾度も単離のやり直しをしました。同僚は Dobbs 教 グッズを送っていただき、お礼の手紙やメールのやり 授は完璧主義だから仕方がないよと私のことをよくな とりをしているうち、2004 年の 2 月ころには留学の受 ぐさめてくれましたが、Dobbs 教授が私の単離に満 け入れが可能であるとのメールもいただきました。本 足するようになるころには、帰国の準備にとりかかっ 当に留学できるの? と半信半疑のまま英会話の教室 ており、当初予定していた傷害肺モデルでの発現を検 に通い、慌ただしい準備のあと 2004 年 9 月 27 日には 討するまでには至りませんでした。 家内と 2 頭の愛犬とともに成田よりサンフランシスコ Dobbs 教授は何をやっても怒ったり、怒鳴ったり 行の飛行機に乗り込んだのでした。 しない紳士な人でしたが、仕事に対するこだわりはと 研究室について ても強く、実験に対する姿勢も勉強となりました。 丘の上に位置する UCSF のメインキャンパスは敷 40 歳を過ぎネガティブに物事をとらえる傾向にな 地も狭く、Lab の多くはサンフランシスコ市内に点在 っていましたが、日本を離れいろいろな人と触れ合う しています。私の所属した Lab はメインキャンパスよ 機会を得、チャレンジ精神を持って物事を考えること りダウンタウンに近い住宅地の中にあります。建物に や社会の中で自分を向上させるため一生懸命になるこ は小児科、看護学部の施設と我々の Lab、会議室、講 との尊さを再認識しました。 堂があり、大学の会議に使われることも多く、警察官 稿を終えるにあたり、このような機会を与えてくだ に建物の中でチェックされることもたびたびありまし さった小田島粛夫理事長、栂博久教授、留学中にご迷 た。Lab は 4 つのグループより成り立っており、それ 惑をおかけした呼吸器内科医局の先生方、そして、私 ぞれのグループにボス(教授)がいて、機材を共同で を受け入れてくださった Dobbs 教授と Lab のスタッ 使用していました。UCSF は肺の研究の盛んな大学の フに心より感謝いたします。 一つで、ここの Lab にはサーファクタントの発見者、 Dr. Clements も現役で実験をされていました。かな 【随想・報告】 金 沢 医 科 大 学 58 腎移植例からの三つ子の成長記録 名誉教授 津 川 龍 三 三つ子の誕生: 1985 年 29 歳の女性が 本学泌尿器科外来を訪れた。 主訴には「腎移植を受けて子供を生みた い」とある。それまでに「腎移植希望」と いう主訴の患者さんは何人もあり、出産例 も経験したが、主目的が「子供を生みたい」 というのは初めてで、驚いたものである。 ご存知と思うが、女性の透析患者さんは、 無月経とか不順、妊娠出産の回数は少なく、 流早産、未熟児出産の頻度が高い。 彼女の病歴は 17 歳( 1973 )で慢性糸球 体腎炎と診断され、29 歳時母親の左腎を移 植( 1985.6.7 )した。術後経過中は軽度の 拒絶反応 2 回のみで、85 日目に退院した。 術後 18 カ月目に妊娠、経過順調で 39 週目 に、女児( 3,185g )を帝王切開で出産した。 三つ子の入学式。右はその姉 その後 19 カ月目再び妊娠、しかも三つ子と 判明した。三つ子出産の頻度は出産 6,400 回に 1 回で ある。 移植腎だけの機能で三つ子は胎内で育つだろうか? をされた桑原教授らのお力で、4 人の生命の誕生と成 長をみることができたのは、移植手術担当の泌尿器科 (現鈴木教授)の一員としてありがたいことであり、 大きくなってくる子宮に圧迫されても移植腎や尿管は 腎移植に対しての本学挙げての変わらぬご協力に感謝 大丈夫か? これはもう誰にもわからない。医師らの している。 意見は、1.「上にもう女児がいるのだから、1 人でい 腎移植を受けて社会に復帰した方、お父さんになっ いではないか、あとは母体のことを考えて中絶したら た方、お母さんになった方、残念ながら移植腎が拒絶 どうか」2.「神の思し召しに従おう」と別れたが、母 反応のため機能を失い元の透析に戻った方、いろいろ 親の出産への意志は強く、結局「上のお嬢さんのこ おられる。しかし本例のように予想以上の結果を得る とも考えないといけませんし、もしも母体に危険が生 ことができた方もおられる。はっきり言えるのは、移 じたら我々医師の判断にまかせてください」で、2. と 植をやらなければ、このような結果も起こらなかった なり、早めに入院してもらった。33 週目、( 1989.11 ) ことである。 帝王切開で三つ子の男児( 1,686g、1,954g、2,118g ) 千人近い聴衆を前に「私は人から臓器をもらってま を出産、母子共に経過順調で約 1 カ月で退院した。退 で生きようとは思いません」と講演する医事評論家が 院後、お母様(受腎者)から子供たちの成長ぶりのス いるが、この元気な子供たちや母親を目前にしたら、 ナップ写真を送っていただいていたので紹介させてい どう声をかけるのだろう。 「ご苦労なことをなさいま ただく。今ではすっかり大きくなった。3 人ともスポ したね」か「おめでとうございます。私も今迄の考え ーツ好きで、1 人は 2004 年、両国国技館での全国中学 を検討し直します」どちらだろう。 校相撲大会に出場した。ちなみに同様の三つ子出産例 腎移植と私: 私が「腎移植をやろう」と思った のは、金沢大学卒業 3 年目の夏に、同級生が慢性腎不 は世界で 3 例目であった。( 1990 年調べ) 思えば、移植、妊娠から今日まで母親の腎機能管理 全で死亡したことや、海外や国内で臨床例も行われる 担当の初代篠田教授、石川教授ら、手際よく帝王切開 ようになったのに北陸ではまだできなかったからであ 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 59 る。金大泌尿器科では犬の腎移植を開始し、技術 が安定したころの 1971 年 2 月、臨床例実施のチャ ンスがきた。ところが法医学の老教授が病院長に、 「君たちの手術の結果には弁護はできないよ」と 釘を刺したことで中止になってしまった。極めて 残念であった。しかしこの残念の期間は無駄では なかった。組織適合性検査が進歩普及したのであ る。その検査法により、相性の良い提供者と受腎 者を選ぶことができた。すなわち、もし術後拒絶 反応が発生しても軽くてすむことを予測できるよ うになったのであった。今振り返ると「時」を与 えてくれた出来事であったと思われる。 1974 年、新設の金沢医科大学に赴任した。法 スナップ写真からも子供たちの成長ぶりがうかがわれる 医学の若き教授は「移植賛成」であった。1975 年 3 月、能登に住む慢性腎不全患者に弟さんの左腎を ば( 5 年生着率では生体 92%、献腎による死体腎移植 移植した。その方は 30 年を超えて今も元気で家業に 85%)、腎不全患者は透析生活から解放され普通の生 励んでいる。前述のように三つ子の誕生は 1989 年の 活に戻ることができる。あとは定期的検査と免疫抑制 こと、今は 2006 年である。この例で、私は 1. 生命力 剤だけとなり、透析に比べ医療費は大きく節減される。 の強さ 2. 生もうとする意志の強さ 3. いのちを育て そればかりか逆に納税者ともなる。将来、日本が透析 る女性の力に感動し元気をいただいている。そして 4. 大国( 25 万人)の名を返上し、国を挙げて移植を進 移植医療の素晴らしさ を実感している。 める世紀としたいものである。 腎移植は、初期には本例のような生体腎移植が多か (なおこの三つ子出産の腎移植例については本学報 221 ったが、家族のうちの誰かが腎を提供せねばならず、 号と本学出版局 RV 選書 2「腎移植と共に」と重複する また倫理的にも献腎移植を推進すべきである。 ことをお許し願いたい。原著は、津川龍三他:生体腎 現在腎移植を含め臓器移植は、県単位のコーディネ 移植後の 3 つ子出産例 . 腎移植・血管外科 .2:205 ∼ 208、 ーターと県内各病院の院内コーディネーターとの連携 1990. である。また、山田博之著:「黄色い羽根ひろがれ」、 で少しずつ動き出してきた。毎年開かれる北陸三県の 健友館、2003. でも取り上げられている。なお、腎臓内科 連絡協議会での報告では、提供者がわずかながら増加 の初代篠田教授は 1994 年 1 月に逝去され、帝王切開を執 している。しかし年間の提供は現在、1 県 5 例にも満 刀された桑原教授は、2006 年 1 月に急逝された。ご冥福 たないが進みそうだ。 をお祈りする。2006 年 3 月記) なお、当病院では本年 3 月 24 日、臓器移植委員会メ ンバーら 27 名が厚生労働省の基準に沿って脳死判定 とそれに伴う臓 器提供の確認シ ミュレーション を実施、関係者 120 人 が 出 席 し た。準備は進め られている。夜 明けも近いよう だ。 読者の方にも 重ねて「臓器提 供 PR 」 な ど 移 植医療に深いご 理解をお願いし たい。生着すれ スポーツ好きの 3 人のうち 1 人が全国中 学校相撲大会に出場 金 沢 医 科 大 学 60 図書館 新着図書の紹介( 2006.4 ∼ 6 ) 書名/発行所/刊年/分類の順で記載 学生用指定図書 (和書) ドイツ暮らしの法律 Q&A/三修社/2003/322.934 化学の基礎 77 講/東京大学出版会/2004/430 10 年使える有機スペクトル解析/三共出版/2005/433.9 機器分析化学/朝倉書店/2005/433 生化学の基礎(生命科学のための有機化学 :2 )/東京大学出 版会/2004/437 有機化学の基礎(生命科学のための有機化学 :1 )/東京大学 出版会/2004/437 生命科学資料集/東京大学出版会/2003/460.7 植物の生命科学入門/培風館/2005/471 独検過去問題集 2006 年版/郁文堂/2006/840 独検 4 級突破/三修社/2005/840 ドイツ語チャレンジブック/三修社/2005/840 記憶する心臓 : ある心臓移植患者の手記/角川書店/1998/ 936 ギャノング生理学/丸善/2006/QT104 カッツング・コア薬理学/丸善/2006/QV4 パラサイト学 : カラー写真とデータでみる : 感染症対策を含 めて/メディカグローブ/2005/QX4 標準病理学 第 3 版( Standard textbook )/医学書院/2006 /QZ4 産業保健マニュアル 改訂 5 版/南山堂/2006/WA400 ハリソン内科学 第 2 版 1/メディカル・サイエンス・インタ ーナショナル/2006/WB115 ハリソン内科学 第 2 版 2/メディカル・サイエンス・インタ ーナショナル/2006/WB115 内科學 第 8 版/朝倉書店/2003/WB115 消化器がん化学療法 2006/日本メディカルセンター/2006 /WI149 膵癌・胆道癌の診断と治療 : 最新の研究動向(日本臨牀 : 64 巻増刊号 1(通巻第 886 号)/日本臨牀社/2006/WI810 症例で学ぶ画像診断トレーニング 胸部/中外医学社/2005 /WN180 症例で学ぶ画像診断トレーニング 腹部/中外医学社/2005 /WN180 画像診断クイックマスター : CD-ROM による読影トレーニン グ/日本医事新報社/2001/WN180 創傷の治療 : 最近の進歩 第 2 版(形成外科 ADVANCE シリー ズ :1-3 )/克誠堂出版/2005/WO600 臨床検査 第 5 版(系統看護学講座 : 別巻 6 )/医学書院/2006 /WY5 一般教養図書 (和書) 情念の哲学/東信堂/1992/130.4 心のケアのためのカウンセリング大事典/培風館/2005/ 146.3 政府開発援助( ODA )白書 2005 年版/外務省 / 財務省印刷 局/2005/333.8 日本国勢図会 2006/07 年版/日本評論社/2006/351 子どもを大切にする国・しない国 : 戦後 60 年・日本の子ども たちの今(子ども白書 :2005 )/草土文化/2005/369.4 北陸大学三十年史/北陸大学/2005/377.28 細胞死・アポトーシス集中マスター(バイオ研究マスターシ リーズ)/羊土社/2006/463 遺伝学事典/朝倉書店/2005/467.033 人口減少と環境 / 環境問題の原点 : 水俣病の 50 年(環境白書 : 平成 18 年版 総説 1-2 )/ぎょうせい/2006/519 新編生活科学 訂正版/東京教学社/2005/590 基礎医学図書 (和書) 筋骨格系 学生版 3(ネッター医学図譜)/丸善/2005/QS17 生理学(コメディカルのための専門基礎分野テキスト)/中 外医学社/2006/QT104 病気を理解するための病態生化学 第 2 版/丸善/2006/QU4 イラスト薬理学/丸善/2006/QV4 日本薬局方 : 条文と注釈 第 15 改正 [1] /廣川書店/2006/ QV783 日本薬局方 : 条文と注釈 第 15 改正 [2] /廣川書店/2006/ QV783 痛みの治療薬 : その基礎から臨床まで/エルゼビア・ジャパ ン/2005/QV95 基礎病原微生物学/廣川書店/2005/QW4 微生物感染学 : 新しい感染の科学/南山堂/2005/QW4 予防接種の手びき 第 10 版/近代出版/2005//QW806 臨床検査のガイドライン 2005/2006 症候編・疾患編・検査編 /日本臨床検査医学会/2005/QY4 厚生労働省がん研究助成金による研究報告集 平成 16 年度/ 国立がんセンター/2005/QZ200 癌化学療法 update/中外医学社/2005/QZ267 臨床医学図書 (和書) 医療保険・診療報酬制度(講座医療経済・政策学 : 第 2 巻)/ 勁草書房/2005/W100 21 世紀初頭の医療と介護 : 幻想の「抜本改革」を超えて/勁 草書房/2002/W100 福祉社会における医療と政治 : 診療報酬をめぐる関係団体の 動き/本の泉社/2004/W100 医師国家試験問題解説 第 100 回/医学教育出版社/2006/ W18 医師国家試験問題解説書 第 100 回/医学評論社/2006/W18 語彙の充実と読解力の向上 1(講義録医学英語 :1 )/メジカ ルビュー社/2005/W18 厚生労働省国際医療協力研究委託費研究報告集 平成 16 年度 /国立国際医療センター/2005/W20.5 医療六法 平成 18 年版/中央法規出版/2006/W32 基本医療六法 平成 18 年版/中央法規出版/2005/W32 司法精神医学概論(司法精神医学 :1 )/中山書店/2006/ W740 ドクター・グリフィスの患者指導/エルゼビア・ジャパン/ 2005/W85 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 : 法 令・ 通 知・ 関 係 資 料 3 訂 版 / 中 央 法 規 出 版 /2005/ WA33 Annual Review 血液 2006/中外医学社/2006/WB115 内科 : 病気の原因診断と治療 改訂版/新興医学出版社/2005 /WB115 内 部 障 害 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン( リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン MOOK:14 )/金原出版/2006/WB320 NST 完全ガイド : 栄養療法の基礎と実践/照林社/2005/ WB410 理学療法のクリティカルパス : 症例から学ぶグローバルスタ ンダード 上巻 : 上肢・脊椎/エルゼビア・ジャパン/2004 /WB460 グローバル時代の感染症( G-SEC eyes )/慶應義塾大学出 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 版会/2004/WC100 食中毒・感染症の基礎知識 : これだけは知っておきたい/中 央法規出版/2004/WC268 運動学(コメディカルのための専門基礎分野テキスト)/中 外医学社/2004/WE103 関節可動域・筋長検査法/医歯薬出版/2005/WE103 整形外科学テキスト 改訂第 2 版/南江堂/2006/WE168 MINIMAX 骨折治療 : AO マスターズケースコレクション : 下 肢・足関節・偽関節・骨移植/医学書院/2005/WE180 講義録呼吸器学/メジカルビュー社/2004/WF100 呼吸の事典/朝倉書店/2006/WF102 呼吸器感染症診療ガイダンス/メジカルビュー社/2005/ WF140 呼吸器感染症(呼吸器診療のコツと落とし穴 :1 )/中山書店 /2005/WF140 閉塞性肺疾患・呼吸不全(呼吸器診療のコツと落とし穴 :2 ) /中山書店/2005/WF140 びまん性肺疾患・肺腫瘍(呼吸器診療のコツと落とし穴 :3 ) /中山書店/2006/WF140 経験すべき循環器診療 : 臨床研修医必携/メジカルビュー社 /2005/WG100 高血圧(新目でみる循環器病シリーズ :8 )/メジカルビュー 社/2006/WG100 心不全 : 診断・治療・管理(新目でみる循環器病シリーズ :9 ) /メジカルビュー社/2006/WG100 心電図で診る・治す(新・心臓病診療プラクティス :7 )/文 光堂/2006/WG100 ECC(救急心血管治療)ハンドブック/American Heart Association/ 中山書店(発売)/2005/WG39 大腸癌取扱い規約 第 7 版/金原出版/2006/WI435 透析ハンドブック : よりよいセルフケアのために 第 3 版/医 学書院/2005/WJ378 糖尿病フットケアガイド : 診断・治療・ケアの指針/医歯薬 出版/2004/WK835 糖尿病患者の大血管障害予防ガイダンス : 血糖値だけを診て いては危ない/メジカルビュー社/2005/WK835 神経症候学 改訂第 2 版 1/文光堂/2006/WL100 慢性頭痛の診療ガイドライン/北里大学医学部神経内科/ 2005/WL342 精 神 科 : 専 門 医 に き く 最 新 の 臨 床 / 中 外 医 学 社 /2005/ WM100 睡眠障害診療のコツと落とし穴/中山書店/2006/WM188 精神科( WM 臨床研修サバイバルガイド)/メディカル・サ イエンス・インターナショナル/2005/WM34 MRI データブック/メジカルビュー社/2006/WN185 外科( WM 臨床研修サバイバルガイド)/メディカル・サイ エンス・インターナショナル 2005/WO39 徹底読影 266(手にとるようにわかるマンモグラフィ:2 )/ ベクトル・コア/2005/WP815 薬疹を極める(皮膚科診療プラクティス)/文光堂/2006/ WR100 日本皮膚科白書 : 皮膚疾患の社会的インパクトと皮膚科学・ 診療の貢献 第 2 版/日本皮膚科学会/2005/WR100 爪真菌症診療マニュアル/南江堂/2005/WR475 人間発達学(コメディカルのための専門基礎分野テキスト) /中外医学社/2005/WS103 小児科( WM 臨床研修サバイバルガイド)/メディカル・サ イエンス・インターナショナル 2005/WS39 高齢者に多い疾患の診療の実際(日常診療に活かす老年病ガ イドブック :6 )/メジカルビュー社/2006/WT100 高齢者への包括的アプローチとリハビリテーション(日常診 療に活かす老年病ガイドブック :7 )/メジカルビュー社/ 2006/WT100 老化防止研究委員会記事 No.64-No.71/老化防止研究委員会 /2005/WT20 講義録眼・視覚学/メジカルビュー社/2006/WW100 61 医療機関のためのマンガでわかる「個人情報保護法」対策/ 日本医療企画/2005/WX173 看護記録用語事典 : 訴えからアセスメントへ 改訂版/中央法 規出版/2005/WY100.5 保健師・看護師のための介護予防の知識と技術/中央法規出 版/2005/WY152 写真でわかる急変時の看護 : 心肺蘇生法を中心に…処置の 流れとポイントを徹底理解/インターメディカ/2005/ WY154 系統別看護師国家試験問題解答と解説 2007 年版/医学書院 /2006/WY18 看護のための生命倫理/ナカニシヤ出版/2006/WY85 看護教育 [ 第 36 回 ](日本看護学会論文集 : 第 29 回 - 第 36 回) /日本看護協会出版会/2005/WY9 小児看護 [ 第 36 回 ](日本看護学会論文集 : 第 29 回 - 第 36 回) /日本看護協会出版会/2006/WY9 精神看護 [ 第 36 回 ](日本看護学会論文集 : 第 35 回 - 第 36 回) /日本看護協会出版会/2006/WY9 老年看護 [ 第 36 回 ](日本看護学会論文集 : 第 33 回 - 第 36 回) /日本看護協会出版会/2006/WY9 本学教職員著書 (和書) 海の力(日本海学の新世紀 :6 )(平口哲夫著)/角川学芸出 版 / 角川書店(発売)/2006/292 日本伝統捕鯨地域サミット : 開催の記録 第 4 回(平口哲夫著) /日本鯨類研究所/2006/664.96 新呼吸器外科問題集(佐久間 勉著)/金沢医科大学出版局・ 紀伊國屋書店(発売)/2005/WF18.2 運動後急性腎不全( ALPE )(石川 勲著)/金沢医科大学出 版局/2006/WJ342 多嚢胞化萎縮腎と腎癌 : 長期透析合併症(石川 勲著)/金沢 医科大学出版局/2006/WJ358 《本学スタッフ新刊著書》 蒲生俊敬・竹内 章 編 日本海学の新世紀 6 海の力 分担執筆:平口哲夫 エッセイ「鯨と共生する日本海、 230-235 頁) 株式会社角川学芸出版 A5 判、289 頁 定価:本体 1,300 円+税 2006 年 3 月 31 日発行 富山県国際・日本海政策課/日本海学推進機構 の企画による刊行物。 「 2005 年度日本海学シンポ ジウム 海との共生」 、「鼎談 沖縄から見た日本海」、 「Ⅰ 日本海とはどのような海か」、 「Ⅱ 可能性の海」、 「Ⅲ 共生・循環の海」という構成がとられており、 筆者執筆のエッセイは「Ⅱ 可能性の海」に収録。 巻頭のグラビアには、日本海を遊泳するツチクジ ラの群れを撮った迫力あるカラー写真が掲載され ている。 (人間科学科目 平口哲夫記) 金 沢 医 科 大 学 62 資 料 理事会 第 183 回 平成 18 年 5 月 30 日(火) 議案 1 平成 17 年度決算について 2 平成 17 年度事業報告について 3 看護学部開設認可申請に伴う寄附行為の変更について 4 看護学部開設認可申請に伴う学則の改正について 5 看護学部開設認可申請書について 報告事項 1 ユニバーシティ・ガバナンスの確立について 2 がん診療連携拠点病院等について 第 184 回 平成 18 年 6 月 23 日(金) 議案 1 寄附行為変更認可申請に係る看護学部創設費の財源措 置について 報告事項 1 「ユニバーシティ・ガバナンスの概念とその確立のた めに」について 金沢医科大学病院診療科長・中央診療部門部長等任用規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 金沢医科大学病院規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 金沢医科大学病院部科長会規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 金沢医科大学病院病院連絡会規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 学校法人金沢医科大学保安規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 金沢医科大学病院診療運営検討委員会規程 (平成 18 年 4 月 1 日制定) 金沢医科大学病院院内感染対策委員会規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 学校法人金沢医科大学内部監査規程 (平成 18 年 4 月 1 日制定) 金沢医科大学病院新生児集中治療センター運営委員会規程 (平成 18 年 4 月 1 日制定) 金沢医科大学病院個人情報管理委員会規程 (平成 18 年 4 月 1 日制定) 金沢医科大学病院広報委員会規程 (平成 18 年 4 月 1 日制定) 金沢医科大学放射線障害予防規程 (平成 18 年 5 月 1 日改正) 金沢医科大学病院クリニカルパス実施委員会規程 (平成 18 年 6 月 1 日改正) 学校法人金沢医科大学セカンドライフ支援制度規程 (平成 18 年 6 月 1 日制定) 評議員会 第 95 回 平成 18 年 5 月 30 日(火) 議案 1 平成 17 年度決算について 2 平成 17 年度事業報告について 3 看護学部開設認可申請に伴う寄附行為の変更について 報告事項 1 ユニバーシティ・ガバナンスの確立について 2 がん診療連携拠点病院等について 第 96 回 平成 18 年 6 月 23 日(金) 議案 1 寄附行為変更認可申請に係る看護学部創設費の財源措 置について 報告事項 1 「ユニバーシティ・ガバナンスの概念とその確立のた めに」について 規程の改正・制定・廃止 金沢医科大学病院放射線障害予防規程 (平成 17 年 6 月 1 日改正) 金沢医科大学病院保険指導委員会規程 (平成 18 年 1 月 6 日改正) 金沢医科大学病院回復期リハビリテーション病棟運営規程 (平成 18 年 2 月 1 日改正) 金沢医科大学病院回復期リハビリテーション病棟運営委員会 規程 (平成 18 年 2 月 1 日制定) 金沢医科大学病院臨床検査適正化委員会規程 (平成 18 年 2 月 14 日改正) 金沢医科大学病院外来診療運営委員会規程 (平成 18 年 3 月 31 日廃止) 金沢医科大学病院入院診療運営委員会規程 (平成 18 年 3 月 31 日廃止) 金沢医科大学事務規程 (平成 18 年 4 月 1 日改正) 新規程の制定 職員が定年前に自らの意思により退職を希望し、それが認 められた職員に対し、退職手当を優遇し、退職後の生活設計 を経済的に支援するセカンドライフ支援制度規程が次のよう に制定された。 (人事厚生課 田川俊範記) 学校法人金沢医科大学セカンドライフ支援制度規程 (目的) 第1条 この規程は、学校法人金沢医科大学に勤務する職員 の生活設計の多様化を支援するセカンドライフ支援制度に 関する事項を定める。 (定義) 第2条 この規程において「セカンドライフ支援制度」とは、 定年前に職員が自らの意思により、退職することを希望し、 理事長がそれを認めた職員に対し、退職手当を優遇し、退 職後の生活設計を経済的に支援する制度をいう。 (対象者) 第3条 この制度の適用を受けられる職員は、退職時の勤続 年数及び年齢等が、原則として次の各号に該当する者とす る。ただし、期間を定めて雇用されている者には、適用し ない。 ( 1 )教育職員及び看護職員を除く全ての職員 ( 2 )勤続年数 20 年以上の者 ( 3 )満 55 歳から満 60 歳までの者 (退職希望日) 第4条 退職希望日は、各月の末日とする。 (退職手続き) 第5条 この制度の適用を受けて退職を希望する職員は、原 則として退職希望日の3カ月前までに、セカンドライフ支 援制度適用申請書(様式1)により、総務部長を経て理事 長に申し出るものとする。 2 理事長は、申し出に対して、総合的に判断し、承認の可 否を決定する。 3 前項により承認された職員は、特段の事情がない限り、 申し出を撤回することはできない。 4 申し出が承認されなかった場合でも、その後の就労条件 等において不利益を生ずるものではない。 第 127 号/ 2006.8 金 沢 医 科 大 学 (退職手当の額) 第6条 この制度の適用を受けて退職する職員に支給する退 職手当の額は、次の各号で得られた額を加算した金額とす る。 ( 1 )基本額 学校法人金沢医科大学職員退職手当規則第4条に定め る、退職日までの勤続年数に応じた退職の事由を定年と した場合に得られる額 ( 2 )特別加算額 前号の基本額に、下記の年齢区分に応じた加算率を乗 じて得られる額 年齢区分 加 算率 満 55 歳∼満 56 歳 50% 満 57 歳 40% 満 58 歳 30% 満 59 歳 20% 満 60 歳 10% (退職手当の計算等) 第7条 前条の退職手当の計算及び支給は、学校法人金沢医 科大学職員退職手当規則による。 2 前条の規定によって退職手当を受給した職員には、学校 法人金沢医科大学職員退職手当規則による退職手当は支 給しない。 (再雇用) 第8条 この制度の適用を受けて退職する職員を、必要に応 じて嘱託又はパートタイマーとして、再雇用することが ある。 (その他) 第9条 この規程に定めのない事項が生じた場合は、その都 度理事長が決定する。 (改廃) 第10条 この規程の改廃は、理事長が行う。 附 則 この規程は、平成18年6月1日から施行する。 医学部教授会 第 749 回 平成 18 年 4 月 13 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前々回(第 747 回)及び前回(第 748 回)議事録確認 について 2 短期研究員の受入れについて 3 平成 18 年度各委員会委員について 4 その他 〈報告〉 1 教員採用について 2 医学部学内講師委嘱について 3 辞職について 4 外国出張について 5 非常勤講師委嘱について 6 協力研究員委嘱について 7 休職期間延長について 8 非常勤講師併任について 9 非常勤講師派遣について 10 その他 教学関連議題 1 退学願提出学生の取り扱いについて 2 復学願提出学生の取り扱いについて 63 3 平成 18 年度特別聴講生の選考について 4 その他 報告事項 1 平成 18 年度入学者について 2 平成 18 年度入学試験判定委員の公表について 3 平成 17 年度成績審査委員及び卒業判定委員の公表につ いて 4 平成 18 年度学生数について 5 第 100 回医師国家試験結果について 6 教務部からの報告について 7 平成 17 年度教授会会費決算の監査役の選出について 8 その他 第 750 回 平成 18 年 4 月 27 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前回(第 749 回)議事録確認について 2 名誉教授の推薦について 3 「金沢医大後援会橘会賞」候補者の推薦について 4 その他 〈報告〉 1 学生部長の選考について 2 教員採用について 3 辞職について 4 外国出張について 5 移籍について 6 併任について 7 非常勤講師派遣について 8 その他 教学関連議題 1 「介護と在宅医療(実習)」の履修免除について 2 その他 報告事項 1 バーモント大学説明会およびハワイ大学・マーサー大 学交換留学報告会の開催について 2 平成 18 年度科学研究費補助金の交付内定について 3 平成 18 年度金沢医科大学共同研究並びに奨励研究の公 募について 4 平成 17 年度教授会費の決算報告について 5 その他 第 751 回 平成 18 年 5 月 11 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前回(第 750 回)議事録確認について 2 その他 〈報告〉 1 辞職について 2 外国出張について 3 出向について 4 非常勤講師派遣について 5 その他 教学関連議題 1 平成 19 年度入学試験日程等(案)について 2 平成 19 年度入学者選抜方法等(案)について 3 平成 19 年度学力検査実施教科・科目(案)について 4 平成 18 年度第 1∼4 学年ユニット試験の方針及び受験 資格について 5 その他 報告事項 1 平成 18 年度第 2 学年副主任の変更について 2 教務部からの報告について 3 その他 第 752 回 平成 18 年 5 月 25 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前回(第 751 回)議事録確認について 2 「金沢医科大学学則」の一部改正について 3 その他 〈報告〉 1 臨床教授候補者について 2 教員採用について 【資料】 金 沢 医 科 大 学 3 辞職について 4 外国出張について 5 非常勤講師委嘱について 6 移籍について 7 併任について 8 その他 教学関連議題 1 その他 報告事項 1 バーモント大学医学部との協定書調印について 2 教育学術情報管理システムの登録について 3 その他 協議事項 1 教員評価について 第 753 回 平成 18 年 6 月 8 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前回(第 752 回)議事録確認について 2 その他 〈報告〉 1 教員採用について 2 辞職について 3 外国出張について 4 外国出張期間延長について 5 その他 教学関連議題 1 金沢医科大学アドミッションポリシーについて 2 平成 19 年度入学試験要項について 3 その他 報告事項 1 入試説明会及びオープンキャンパスの開催日程について 2 第 1 回 KMU 研究推進セミナーの開催について 3 その他 第 754 回 平成 18 年 6 月 22 日(木) 人事関連等 〈議題〉 1 前回(第 753 回)議事録確認について 2 その他 〈報告〉 1 出向について 2 外国出張について 3 非常勤講師委嘱について 4 その他 教学関連議題 1 その他 報告事項 1 教務部からの報告について 2 解剖研修の実施について 3 平成 18 年度金沢医科大学共同研究・奨励研究について 4 平成18年度金沢医科大学・中国姉妹校プロジェクト 研究および外国人短期研究員の募集について 5 その他 協議事項 1 第 100 回医師国家試験結果について 大学院医学研究科教授会 第 350 回 平成 18 年 5 月 11 日(木) 議題 1 前回(第 349 回)議事録確認について 〈報告事項〉 1 平成 18 年度大学院医学研究科入学者について 2 平成 18 年度授業科目履修について 3 生命医科学専攻担当教員の追加申請について 4 平成 18 年度非常勤講師の委嘱について 第 351 回 平成 18 年 6 月 22 日(木) 議題 1 前回(第 350 回)議事録確認について 2 3 64 平成 19 年度大学院医学研究科学生募集について 第 34 回論文博士外国語試験実施要項について 総合医学研究所教授会 第 198 回 平成 18 年 4 月 20 日(木) 議題 1 前回(第 197 回)議事録確認の件 2 外国出張について 3 外国出張の取り下げについて 4 短期研究員の期間短縮について 5 平成 18 年度市民公開セミナー&研究セミナーについて 〈報告事項〉 1 平成 18 年度各実験室の使用申請について 2 平成 18 年度総合医学研究所関連委員会委員について 3 寄附研究部門及び特別研究部門の部門責任者について 4 総医研研究費(所長裁量政策的経費)の使途変更につ いて 5 平成 18 年度科学研究費補助金の内定状況について 6 次回開催日について 7 その他 ○臨床研究棟 8 階№ 816 号室(旧 FT-NMR 室)の使途 について ○金沢医科大学作業環境測定士の交代について ○実験室鍵の管理について ○毒物・劇物の管理について ○人類遺伝学研究部門受託検査実績について 第 199 回(書面付議) 平成 18 年 4 月 26 日(水) 議題 1 移籍について 2 併任について 第 200 回 平成 18 年 5 月 18 日(木) 議題 1 前々回(第 198 回)議事録確認の件 2 外国出張について 3 非常勤講師の派遣について 4 寄附研究部門及び特別研究部門からの報告について 5 友杉助教授の研究費配分について 〈報告事項〉 1 寄附研究部門及び特別研究部門の部門責任者について 2 毒物・劇物の保管管理者について 3 第 7 回総医研勉強会の開催について 4 次回開催日について 5 その他 ○ HRC 使用許可申請について ○本学医学会総会の開催について ○技術セミナー等の開催について ○共有研究室の使用について ○正面玄関扉の改修について 第 201 回 平成 18 年 6 月 15 日(木) 議題 1 前回(第 200 回)議事録確認の件 2 外国出張について 3 平成 18 年度市民公開セミナー実施(案)について 〈報告事項〉 1 正面玄関扉の改修について 2 放射線障害予防規程の改正について 3 RI 教育訓練の実施について 4 RI 施設点検及び書類審査の実施について 5 紀要編集委員会からの報告 6 特定動物飼養・保管許可申請について 7 第 7 回総医研勉強会の開催結果について 8 平成 14 年度 HRC 整備事業実行委員会からの報告 9 次回開催日について 第 202 回(書面付議) 平成 18 年 6 月 24 日(月) 議題 1 外国出張について 金 沢 医 科 大 学 66 同窓会・後援会 平成 18 年度 金沢医科大学北辰同窓会 第 3 号議案 役員の改選について 第 4 号議案 その他 第 3 号議案において坂本会長の再任並びに副会長以 評議員会・総会 、全国支部長会 下の役員の選出が行われた。 ご挨拶をいただき、山下公一副理事長(北辰同窓会顧 総会終了後、山本 達学長から大学の近況を含めた 平成 18 年度北辰同窓会評議員会・総会および支部 問)から新任教授 8 名の紹介が行われ、出席された米 長会が、7 月 8 日(土)午後 3 時 30 分から金沢都ホテ 倉秀人ゲノム医科学(生化学)教授、加藤伸郎生理機 ルにおいて、全国から会員約 80 名が参加して開催さ 能制御学(生理学)教授からは一言づつ抱負が述べら れた。 れた。その後、芝本利重学生部長から「学生生活、課 総会に先立ち開催された支部長会では、全国 28 支 部 1 ブロックの中から 18 支部の支部長および副支部長 22 名が出席し、各支部の活動状況の報告と現状にお 外活動を支援」 、大原義朗教務部長から「第 100 回医 師国家試験」について報告が行われた。 続いて「北辰同窓会賞」と「北辰同窓会研究助成」 ける問題点について話し合いが行われ、北辰同窓会の の授与式が行われ、山下公一選考委員長から「研究助 活性化について活発に意見が出された。 成については今回の推薦応募は少なかった。今後はよ 午後 5 時から、大会議室において平成 18 年度北辰同 り多くの応募を期待したい」とのコメントがあり、坂 窓会評議員会と総会が同時に開催された。審議に先立 本 滋会長からそれぞれ賞状・副賞、助成金が手渡さ ち過去 1 年間に亡くなられた会員 4 名のご芳名が読み れた。 上げられ、全員で黙祷を捧げた。その後、坂本 滋会 総会終了後、会場を移して懇親会が開催された。久 長の挨拶があり、新たに選出された宮崎 巨副会長が しぶりの再会で参加者一同話が弾み盛り上がった。午 議長となり以下のとおり審議が進められた。 後 8 時 15 分、再会を期して閉会となった。 第 1 号議案 平成 17 年度事業報告、収支決算報告 (教育研究事業推進室 堀 愉記) 第 2 号議案 平成 18 年度事業計画(案)収支予算(案) 評議員会・総会 支部長会における坂本会長(中)、大島・宮崎両副会長 懇親会:斎藤人志副会長の発声で乾杯 第 127 号/ 2006.8 〔新役員〕 顧 問 小田島粛夫 竹越 襄 会 長 坂本 滋 副会長 大島譲二 堀 有行 監 事 三治秀哉 常任理事 赤澤純代 稲田章夫 大久保信司 小畑貴司 小西啓子 鈴木孝治 堤 幹宏 沼田知明 松田健志 山田奏子 金 沢 医 科 大 学 67 で、受賞者は毎年若干名となっている。今回の受賞者 山本 達 東田紀彦 山下公一 宮崎 巨 正木康史 山田裕一 井浦俊彦 井本敏弘 大西仙泰 大山充徳 佐藤雅典 高島茂樹 中西由美子 東 伸明 松本忠美 吉田勝明 斎藤人志 は下記の 2 名。 池田龍介先生(赤羽中央総合病院副院長、昭和 54 年卒業) 藤井隆広先生(藤井隆広クリニック院長、昭和 58 年卒業) 〔北辰同窓会研究助成〕 伊藤 透 岩崎真三 大原義朗 神田亨勉 芝本利重 玉村裕保 中山治樹 平川博之 宮澤克人 研究助成は、会員がそれぞれの学術研究の分野に おいて学内・学外で顕著な業績をあげたもので、卒 後 10 年以内の会員等の若い研究者を対象としている。 対象者は原則として 5 名以内となっており、今回は下 記の 2 名に授与された。 〔北辰同窓会賞〕 北辰同窓会賞は、優秀な学術的功績を顕した会員ま たは社会的に功績のあった会員に対し授与されるもの 上原啓吾助手 鴨田佐知子助手 上原啓吾(内分泌代謝制御学助手、平成 14 年卒業) 研 究 テ ー マ:Glucagon-like peptide-1( GLP-1 ) の示すインスリン分泌促進作用における迷走神経 の役割に関する研究 鴨田佐知子(精神神経科学助手、平成 13 年卒業) 研究テーマ:Functional MRI( f-MRI )を用い た統合失調症に対するアリピプラゾール治療効果 池田龍介先生 藤井隆広先生 の検討 平成 18 年度 金沢医科大学後援会 橘会総会 平成 18 年 6 月 11 日(日)午前 10 時から、ホテルイ ン金沢において、平成 18 年度金沢医大後援会橘会の 総会、懇親会が開催された。 姫野洋一副会長が議長となり、議事が進められた。 総会終了後「橘会賞」の授与式が行われ、鈴木孝治 副学長による選考経過説明の後、久藤豊治会長から生 殖周産期医学(産科婦人科学)助教授の井浦俊彦先生 久藤会長から橘会賞授与の井浦先生(右)、宮澤先生(中) と泌尿生殖器治療学(泌尿器科学)助教授の宮澤克人 先生の 2 名に賞状と副賞が授与された。 引き続き「大学の概況説明」が行われ、山本 達学 長の挨拶の後、芝本利重学生部長から「学生生活、課 外活動を支援」について、大原義朗教務部長から「医 【同窓会・後援会】 金 沢 医 科 大 学 総会 懇親会 学教育の現況、二つの国家試験」について、それぞれ 説明があり、その後質疑応答が交わされた。 12 時 15 分からは懇親会が開催された。大学から小 田島理事長をはじめ多数の教職員が出席し、橘会会員 と和やかな歓談が交わされ午後 1 時 30 分に終了した。 その後、今年で 2 回目となる父兄面談会が行われた。 教務部長をはじめ各学年主任、副主任、指導教員が面 談にあたり、1 年生から 6 年生まで 72 組の学生、ご父 母が参加した。 68 (教育研究事業推進室 堀 愉記) 〔金沢医科大学橘会賞〕 井浦 俊彦 生殖周産期医学(産科婦人科学)助教授 論文名: Analysis of renal artery hemodynamics in normal fetuses using the color Doppler method 発表雑誌:Fetal Diagn Ther, 20:86-90, 2005 宮澤 克人 泌尿生殖器治療学(泌尿器科学)助教授 論文名: Apoptosis and its related genes in renal epithelial cells of the stone-forming rat 発表雑誌:Urol Res, 33:31-38,2005 員の協力に対して感 金沢医科大学後援協力会 謝の言葉が述べられ た。その後横山会長 幹事会、総会 および 懇親会開催 が議長となり、議案 に沿って審議が進め られた。 平成 18 年 4 月 18 日(火)午後 4 時 30 分から金沢都 ホテルにおいて、第 35 回金沢医科大学後援協力会幹 総 会 終 了 後、5 時 事会、総会および懇親会が開催された。総会に先立ち 40 分から同会場にて 幹事会が開催され、議案が審議され、総会に諮られる NHK 金 沢 放 送 局 局 ことになった。 長山本哲也氏の講演 が 行 わ れ、「 放 送 界 総会には 166 社の会員が出席し、横山隆昭会長から 昨年 1 年間の大学の活動状況について報告があり、会 山本哲也 NHK 金沢放送局局長の 講演 の舞台裏―放送は地 域にどのようにかか わるのか―」と題し約 50 分間にわたり興味深いお話 しがあった。講演会には、大学職員も多数参加し 200 名を超える出席者となった。 続いて 6 時 40 分から 7 階の「鳳凰の間」に会場を移 し懇親会が開催された。横山会長の挨拶の後、来賓を 代表し、小田島粛夫理事長の挨拶があり、山本 達学 長の乾杯の発声で和やかに懇親会の宴が開始された。 昨年よりも参加者が多く大いに盛りあがった。午後 7 時 55 分石黒傳六副会長の万歳三唱で閉会となった。 (教育研究事業推進室 堀 愉記) 第 127 号/ 2006.8 69 金 沢 医 科 大 学 金沢医科大学学術振興基金募金について 金沢医科大学学術振興基金募集趣意書 本学は、日本海側では初めての私立医科大学として、昭和 47 年に設立され、倫理に徹した人間性豊かな良医を育成する こと、医学の深奥をきわめ優れた医療技術を開拓すること、人類社会の医療と福祉に貢献することを建学の精神として掲 げて着実に歩み続けてまいりました。 大学、特に医科大学は国の内外を問わず日進月歩の医学・医療をリードする大切な役割を担っていることは皆様充分に ご承知のことであります。本学でも最高の教育・研究設備に加えて、先進医療機器の充実に意を尽くすとともに、基礎・ 臨床医学講座並びに総合医学研究所の各部門において、医学の進歩に貢献できる人材の育成と研究の推進に日夜努力いた しております。 教育面では、教育スタッフとしてすぐれた人材を配し、学生の教育に専念しており、昭和 53 年に第 1 回の卒業生が誕生 して以来、数多くの医師を世に送り出し、それぞれ国内国外の医学・医療の最先端で活躍しております。 研究面では、平成元年に従来の人類遺伝学研究所、熱帯医学研究所及び共同研究室を母体とし、難病治療など医療の先 端的な分野の開拓を目的とした総合医学研究所を設置し、臓器置換・難治疾患・癌・人類遺伝学・熱帯医学・基礎医学・ 共同研究の各部門を中心にプロジェクト研究の推進を図っております。また、国際舞台においても躍進を続けており、欧 米の一流大学や研究所との研究員の交流、海外からの研究員・留学生の受け入れなどを通じて国際レベルの学術環境の整 備にも意を尽くしております。 診療面では、金沢医科大学病院は日本海側随一の規模を誇るまでに成長し、最新の医療機器を整備し、医学教育のみな らず、文字どおり地域医療の基幹病院として順調に発展し、地域社会の要請に応えるべく最新レベルの医療サービスを提 供することにも十分な配慮をしてまいりました。 また、国際医療協力隊の派遣、世界各地域の種々の難病に対する国際医療協力に早くから取り組み、わが国の医科大学 の中ではトップクラスの実績を持っております。 しかしながら、この様な積極的な教育、学術及び医療活動を維持継続していくためには巨額の資金が必要で、学納金、 国庫補助金、附属病院の医療収入などの収入だけでは健全な経営は不可能であり、教育、研究、診療活動を萎縮させる恐 れがあります。 このために、本学では文部科学省の許可を得て学術振興基金の募集を行っており、広く本学教職員、卒業生、学生の父 兄をはじめ、民間企業、篤志家の多くの皆様のご支援をお願い申し上げる次第であります。 日進月歩の医学の進歩に即応した最新の教育、研究及び診療環境を維持するにとどまらず、未来に向けてさらなる貢献 と飛躍を目指して、全学を挙げて努力いたし、社会的使命を果たし得たいと念願しております。 本趣旨にご理解、ご賛同を頂き、ご協力を賜りますれば誠に幸甚に存じます。 学校法人金沢医科大学 理事長 小田島 粛夫 募集要項 学術振興基金は次の要領で広く一般の方々からご協力をお願いしております。 1. 目 的: 金沢医科大学の教育・研究の振興と医 療の充実のため活用させていただきます。 2. 目標額: 10 億円 3. 募集先: 在学生、同窓生及びその父兄、教職員、 一般有志者並びに医学研究機関及び医療関係企 業・団体等 4. 学術振興基金へのご寄付は、 「特定公益増進法人寄 付金(個人のご寄付)」及び「受配者指定寄付金(法 人のご寄付) 」による所得税、法人税の優遇措置を 受けることが出来ます。 5. 応募方法: 寄付申込書等を本学教育研究事業推 進室あてにご請求ください。折り返し、手続方法、 税務に関することなどについてご説明いたします。 TEL 076-286-2211 内線 2720 ∼ 2724 FAX 076-286-8214 金沢医科大学学術振興基金への寄付者ご芳名(過去 1 年間の分、敬称略) 大山 充徳(群馬県) 梅田 俊彦(石川県) 安威 正樹(京都府) 仲里 博彦(沖縄県) ㈲ 八田物産(石川県) ㈱ アクト (石川県) 西納 二郎(大阪府) 笹川 眞人(新潟県) 湊 浩志(石川県) 新井 三郎(北海道) 小嶋昭次郎(岐阜県) 板垣 和夫(東京都) 花田 紘一(福岡県) 中島 哲夫(石川県) 丸文通商 ㈱(石川県) 池田 正(富山県) 織田 清(京都府) 佐々木真一(京都府) 岡田 温(京都府) 石坂 龍典(富山県) 石坂 裕子(富山県) 鈴木 比佐(大阪府) 大島 譲二(埼玉県) 辻 外幸(富山県) 鈴鹿 正剛(奈良県) 武藤 敏徳(東京都) 医療法人社団 沖野会(石川県) 三治 秀哉(石川県) 小西 秀男(富山県) 小西 啓子(富山県) 高 医療法人社団 ほしの医院(新潟県) 糸田川誠也(徳島県) 牧 生夫(岡山県) 佐々本 博(兵庫県) 大西 林吉(兵庫県) 大 加藤 裕(愛知県) 貞就(新潟県) 一郎(京都府) 第 127 号/ 2006.8 70 金 沢 医 科 大 学 学報 127 号全目次 第 1 回 KMU 研究推進セミナー …………………………… 2 第 18 回 総合医学研究所市民公開セミナー ……………… 4 ■学事 平成 19 年度 医学部入学試験要項 ………………………… 5 平成 19 年度 大学院医学研究科選抜試験要項(抜粋) … 6 名誉教授の称号授与(石川、小野田)…………………… 7 第 36 回 教育懇談会(伴)…………………………………… 7 第 20 回 医学教育に関するワークショップ ……………… 8 平成 18 年度 臨床教授(学外)委嘱状授与式並びに 学外臨床実習に係る懇談会………………………………10 平成 18 年度新任教員オリエンテーション ………………11 第 34 回 解剖学実習解剖体納棺式 …………………………11 バーモント大学医学部と交換協定締結……………………12 第 3 回 白衣・聴診器授与式 ………………………………12 平成 18 年度 第 1 学年早期臨床体験実習 …………………13 □学生のページ 早期臨床体験実習記…………………………………………14 紹介:ボランティアサークル AIR 発足 ……………16 先輩を訪ねてメディカルホームステイを体験……………17 メディカルホームステイ受け入れにあたって 近況報告と病院の紹介 …………………………………18 クラブ活動:ゴルフ部医科大オープン・親睦ゴルフ大会 ……19 □附属看護専門学校 第 19 回戴帽式 ………………………………………………20 平成 18 年度 学生寮防火訓練・消火器取扱訓練 …………20 ■学術 金沢医科大学医学会 第 42 回学術集会 ……………………21 第 48 回 日本老年医学会学術集会 …………………………23 第 21 回 日本脊髄外科学会 …………………………………24 第 10 回 日本神経ウイルス研究会学術集会 ………………25 第 18 回 花粉症研究会総会 …………………………………25 第 31 回 日本外科系連合学会学術集会 ……………………26 第 246 回 日本病院管理学会例会……………………………27 第 9 回 日本医学英語教育学会総会…………………………28 大学院医学研究セミナー……………………………………29 (藤井、加藤、川原、荻原、丹羽、光本) 平成 18 年度 科学研究費補助金の交付決定 ………………32 平成 17 年度 各種助成金等受託状況 ………………………35 平成 18 年度 金沢医科大学共同研究・奨励研究 …………36 産学官連携−本学でも始動、活性化が望まれる…………38 エムシープロット・バイオテクノロジー㈱ 設立にあたって ……39 「 2006 医と薬とバイオのサミット in 金沢」に出展 ………39 ■病院 21 世紀集学的医療センター みんなの健康づくりセミナー2006 ……………………40 平成 18 年度 看護学生のための就職情報交換会 …………42 金沢医科大学病院 DMAT 誕生 ……………………………42 平成 18 年度 石川県民大学校「健康管理講座」開講 ……43 金沢医科大学病院 平成 18 年度第 2 回 CPC ………………43 看護週間企画 2006 ふれあい看護体験 ……………………44 □研修医の頁 「研修医のための臨床研修指定病院同合セミナー」 ……44 金沢医科大学病院 平成 19 年度 臨床研修医募集要項 ……45 臨床研修医のための CPC(臨床病理検討会)…………… 45 ■管理・運営 学校法人金沢医科大学 平成 17 年度決算 …………………46 平成 17 年度 人事評価 ………………………………………49 金沢医科大学看護学部棟起工式……………………………50 互助会 第 16 回互助会ゴルフ大会 …………………………50 互助会 夏のバス旅行 ………………………………………51 ■随想・報告 カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学記(吉田)……52 カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学記(戸部)……55 腎移植例からの三つ子の成長記録(津川)………………58 ■図書館:新着図書の紹介 ………………………………60 ■資料 理事会、評議員会、規程の改正・制定・廃止………………62 教授会 ………………………………………………………63 人事……………………………………………………………65 ■同窓会・後援会 平成 18 年度 金沢医科大学北辰同窓会 評議員会・総会ほか …66 平成 18 年度 金沢医科大学後援会 橘会総会 ………………67 金沢医科大学後援協力会 幹事会、総会ほか ……………68 ■本学スタッフ新刊著書 これだけは知っておきたい 外科 Q & A(高島ほか)……19 睡眠呼吸障害 診療のポイント(栂ほか)…………………19 今日のサプリメント(平井ほか)…………………………28 第 4 回日本伝統捕鯨地域サミット(平口) ………………54 日本海学の新世紀 6 海の力(平口)………………………61 Scientist His Imperial Highness Prince Hitachi in Kanazawa(平井ほか)…………………………………65 □金沢医科大学学術振興基金 募金 ………………………69 表紙写真 金沢医科大学報 第 127 号 内灘に咲く月見草 平成 18 年 8 月 1 日発行 中谷 渉 夏の夕方、浜辺や河原に黄色い可憐な花を開くこの 発行者 金沢医科大学理事長 小田島 粛 夫 編 集 金沢医科大学概要・学報編集委員会 花を一般に「月見草」と呼んでいる。詩にも歌にも詠 山下公一 米倉秀人 原 亮 鈴鹿有子 坂井輝夫 高田昌美 笠間孝一 丸谷 良 中川美枝子 まれ、だれにも好かれる盛夏を彩る風物詩の一つであ る。本来のツキミソウは白い花を咲かせる別種のもの とのこと。 乳色の空気の中の月見草 高浜虚子 (たかはま・きょし:1872-1959、俳人・小説家。松山市出身。子 規に師事、自然を詠んで余韻のある俳句を多く作った。 「ホトト ギス」を引き継ぎ、夏目漱石の「吾輩は猫である」などを掲載。 日本俳句作家協会長、文化勲章受章。) 國府克己 元雄良治 相野田紀子 辻口徹子 木村晴夫 中谷 渉 森 茂樹 中嶋秀夫 平井圭一 佐久間勉 太田隆英 大石勝昭 小平俊行 野沢幸雄 松本順治 森 秀男 発行所 金沢医科大学出版局 〒 920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1 TEL 076(286)2211 金沢医科大学ホームページ http://www.kanazawa-med.ac.jp/ 印刷 能登印刷株式会社
© Copyright 2024 Paperzz