IASB プレスリリース 2003 年 7 月 31 日 国際会計基準審議会(IASB)、保険契約の会計処理に関する提案を公表 国際会計基準審議会(IASB)は、本日、透明性を高めるための提案を公表することに より保険会計の実務を改善するための第一歩を築いた。この提案は、公開草案第 5 号「保 険契約」に示されている。本公開草案は、2005 年に国際財務報告基準(IFRS)に準拠す る予定の保険会社に対するガイダンスを提案している。現在、保険契約を扱う IFRS はな く、保険契約は、本来なら適用があるはずの、いくつかの現行基準の適用範囲から除外さ れている。さらに、保険契約の会計処理は世界中で非常にまちまちであり、他の産業の会 計実務と整合していないことが多い。 公開草案第 5 号を開発するにあたり、IASB は、国際基準にガイダンスを導入すること に対するニーズと、綿密で包括的なアプローチについて世界的な合意に至るためには広範 囲の協議が必要であるという認識とをバランスさせようとした。その協議は、欧州連合 (EU)や他の国・地域で設定された 2005 年の開始日までに完了することができなかった。 このような状況に照らして、公開草案第 5 号は、保険プロジェクトのフェーズ I を印すの みとしている。本公開草案は、保険契約に関する開示の改善を目的としている。さらに、 この提案は、IASB がこのプロジェクトのフェーズ II を完成する際に内容を逆転させる必 要が生じるかもしれないような大幅な変更を求めることなく、認識及び測定の実務に対す る適度の改善を導入することを意図している。 IASB は、フェーズ II において、保険会計に関連する、より広い概念上および実務上の 論点を取り扱う予定である。これらの論点が、2003 年の第 4 四半期に再開する IASB の審 議と利害関係者との協議のテーマとなる。 公開草案の公表にあたり、IASB 議長 David Tweedie 卿は、次のように述べた。 「保険会計の多くの複雑な実務上および概念上の問題を取り扱う、広く受け入れら れる会計基準を開発することは、引き続き IASB の優先事項である。しかしながら、 これらの論点について結論に達するには、すべての論点および観点を慎重に検討す る必要があり、それは IASB をしばらくの間忙殺することになり、多くの国・地域 の設定した 2005 年という期限までに完了できそうにない。規制当局及び業界から の要請に応じて、IASB は公開草案第 5 号において提案を公表し、より包括的なプ ロジェクトの終了の前に保険業界に多大なコストを課さずに、現行の保険会計の実 務を明確化する方法を示した。」 IASB は、この公開草案に対するコメントを 2003 年 10 月 31 日まで募集する。 公開草案第 5 号「保険契約」(ISBN 1-904230-27-X)(三部構成)は、送料込み£15(24 ユーロ / US$23)にて、下記から入手できる。 IASCF Publication Department 1st Floor, 30 Cannon Street, London EC4M6XH, United Kingdom Tel: +44 (0)20 7332 2730 Fax: +44 (0)20 7332 2749 E-mail: publications@iasb.org.uk Web: www.iasb.org.uk IASB の包括購読サービスの加入者は、IASB のウェブサイトのオンライン・サービス・ エリアから公開草案第 5 号を閲覧できる。8 月 11 日から、公開草案の全文がウェブサイト から無料で入手できるようになる。 問い合わせ先: Sir David Tweedie, Chairman, IASB Telephone: +44(0)20 7246 6420, email: dtweedie@iasb.org.uk Kevin Stevenson, Director of Technical Activities, IASB Telephone: +44 (0)20 7246 6460, email: kstevenson@iasb.org.uk Wayne Upton, Director of Research, IASB Telephone: +44 (0)20 7246 6449, email: wupton@iasb.org.uk Peter Clark, Project Manager, IASB Telephone: +44 (0)20 7246 6451, email: pclark@iasb.org.uk 編集者への注釈 公開草案第 5 号について 1 公開草案第 5 号の目的は以下のとおりである。 (a) 保険契約に関する会計実務に対して、IASB がプロジェクトのフェーズ II を完 成する際に内容を逆転させる必要が生じるかもしれないような大幅な変更を要 求せずに、限定的な改善を行うこと。 (b) 保険契約を発行する企業(保険者)に対し、保険契約に関する情報の開示を求 めること。 2 公開草案第 5 号の提案は、企業が発行するすべての保険契約(再保険契約を含む) 及び企業が保有する再保険契約に適用される。ただし、他の基準書の対象となって いる特定の契約は除かれる。本公開草案の提案は、IAS 第 39 号「金融商品:認識 及び測定」の範囲に含まれる金融資産や金融負債のような、保険者の他の資産及び 負債には適用されない。さらに、本公開草案の提案は、保険契約者の会計処理は取 り扱っていない。 3 本公開草案の提案は、保険者に対し、他の基準書により設定されたいくつかの先例 及び IASB のフレームワークの適用を一時的に(すなわち 2007 年 1 月 1 日より前 に開始する会計期間について)免除することになる。しかし、本公開草案の提案は 以下のことを提案している。 (a) 異常危険準備金及び平衡準備金を排除する。 (b) 保険者の既存の会計方針において損失認識テストが存在しない場合、当該テス トを強制する。 (c) 保険者に対し、保険負債から解放されるか、保険契約が解約されるか又は満期 になるまで、保険負債を貸借対照表に計上し、保険負債を関連する再保険資産 と相殺せずに表示することを強制する。 4 本公開草案の提案は、財務諸表が提供する情報の目的適合性と信頼性が高まること となる場合に限り、会計方針の変更を認める。特に、保険者は、以下のどれかを含 む新規の会計方針を採用することはできない。ただし、これらを含んだ既存の会計 方針を引き続き使用することは認められる。 (a) 保険負債を現在価値に割り引かずに測定すること。 (b) 保険負債を過度の保守性に基づき測定すること。 (c) 保険負債の測定にあたり将来投資マージンを反映させること。 (d) 将来の投資管理費用に係る契約上の権利を、類似サービスに対して他の市場参 加者が課す手数料との比較により推定される公正価値を超える金額で間接的に 測定する手法を使用すること。 (e) 子会社の保険負債(および、もしあれば関連する繰延契約費)について、不統 一な会計方針を使用すること。 5 保険者が保険負債に関する会計方針を変更する場合、公開草案第 5 号は金融資産の 全部又は一部を公正価値で測定する区分に再指定し、その公正価値の変動を損益計 算書で認識することを容認している。 6 本公開草案はまた、以下の項目について提案している。 (a) 組込デリバティブが保険契約の定義を満たす場合に、組込デリバティブを分離 して公正価値で測定する会計処理を、保険者に対して免除すること。 (b) 保険者に対し、貸借対照表に資産及び負債が計上されないことを防ぐために、 いくつかの保険契約について、積立金要素をアンバンドリングする(すなわち、 分離して別々に会計処理を行う)ことを要求すること。 (c) 保険者が再保険契約した場合の変則的な処理を制限すること。 (d) 企業結合又はポートフォリオの譲渡により取得した保険契約に対する拡張した 表示を容認すること。 (e) 保険契約又は金融商品に含まれる裁量のある有配当部分の制限的な側面につい て扱うこと。 7 本公開草案の提案は、以下の項目について開示を要求している。 (a) 保険者の財務諸表に含まれる、保険契約から生じた金額。 (b) 保険契約から生じる将来キャッシュ・フローの見積額、時期及び不確実性。こ の部分の提案は、保険者が晒されているリスクについての開示を扱っており、 保証年金オプションのような組込デリバティブにおける金利リスク又は市場リ スクへの重要なエクスポージャーを強調している。 (c) 8 保険者の保険負債及び保険資産の公正価値。 本公開草案の提案は 2005 年 1 月 1 日以降に開始する期間について有効となるが、 早期適用を奨励する。保険負債及び保険資産の公正価値の開示要求は、2006 年 12 月 31 日から適用される。 9 公開草案第 5 号で公表された IFRS 案には、二冊の別冊が添付されている。一冊目 は結論の根拠であり、IASB の提案の背景にある論拠を示している。二冊目の内容 は適用指針のドラフトである。 プロジェクトのフェーズ II 10 IASB は、そのスタッフに対し、保険契約より生じる契約上の権利及び義務を公正 価値で測定することを企業に要求するアプローチを研究するよう指示した。IASB は 2003 年の後半にフェーズ II についての研究及び議論を再開するつもりである。 IASB は、探求されているアプローチが、IASB のフレームワークと整合し、実務 において実行可能なものかどうかを検討する。 IASB について 11 ロンドンに本拠を置く IASB は、2001 年に活動を開始した。IASB は、世界中の主 要な会計事務所、民間金融機関及び事業会社、中央銀行及び開発銀行、その他国際 的専門家団体からの拠出金で運営されている。14 人の IASB 理事(うち 12 人は常 勤)は 9 ヶ国に居住し、さまざまな専門的経歴を有している。IASB は、公共の利 益のために、一般目的の財務諸表において透明で比較可能な情報を要求する、高品 質で全世界的な単一の会計基準のセットを開発することを公約している。この目的 を追求するため、IASB は、全世界の会計基準の収斂を達成するために各国の会計 基準設定主体と協力している。 12 現時点で、およそ 35 ヶ国がすべての国内上場企業に対して国際基準の使用を要求 し、6 ヶ国は一部の企業に対して国際基準の使用を要求している。また、多くの 国々は国内の会計実務の基礎を国際基準に置いている。2002 年に、オーストラリ ア、欧州連合(EU)およびロシアを含むいくつかの国・地域は、2005 年 1 月 1 日 又はそれ以前に国際基準の使用を要求することを発表した。
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