3.個別機器のエネルギー消費効率 3.1 目的 住宅内のエネルギー需要および消費構造を正確に把握するためには、空調機器や冷蔵庫をはじめと する家電製品、給湯および厨房で用いられている機器の熱効率を明らかにする必要がある。空調機器 および冷蔵庫をはじめとするエネルギー機器に関しては省エネルギーセンター等を中心に、規格化さ れた性能表示が義務づけられている。しかしながら、性能表示はある限られた条件で実現可能な理想 的ともいえる値であり、実際の住宅内に置かれた機器は、設置された環境の気流、温度、湿度条件の 違いなどから、性能表示通りに一定の熱効率で運転されているとは考えられない。そこで、本プロジ ェクトでは、機器効率として下記の3項目に関して検討を進めることを目的とする。 ① 温度や湿度の違いによって空調機および冷蔵庫の効率がどのように変化するか ② 設置環境およびフィルターおよび熱交換器の汚れ等の影響 ③ 気流条件の制約などの機器への影響 さらに、実際の家庭においては、様々な年式の家電製品が使われており、下記の3点についてまと める必要がある。 ④ 機器効率の変遷 ⑤ 経年変化による機器効率の変化、 ⑥ 現時点において使われている機器のストック統計 3.1.1 平成13年度 空調機器および冷蔵庫をはじめとする家電機器の統計資料および背景となる情報の収集を行った。 3.1.2 平成14年度 住宅内エネルギー消費機器の実際の効率に関して、下記の空調機器、冷蔵庫、厨房、そして給湯の 4種類の機器に関して、そのエネルギー効率評価方法を明らかにして、実際の測定を始めることを平 成14年度の目的とする。 ・ 空調機器については、住宅内に設置されたときの実際の効率をどのように評価すべきか、その手 法を明らかにする。そのための予備的実験を開始する。モニター家庭での詳細測定データの解析 と併せて実際の効率に関する検討を行う。 ・ 冷蔵庫に関しては、空調機器と同様に、住宅内に設置されたときの実際の効率をどのように評価 すべきか、その手法を明らかにする。そのための予備的実験を開始する。外気温と冷蔵庫の消費 エネルギーが比較的簡単な関係で表されるという報告もあり、モニター家庭の詳細データの解析 と併せて、その検証を行いながら実際の効率に関する検討を行う。 ・ 厨房のエネルギー消費については、IH クッキングヒータおよびガスコンロによる2種類の厨房 を想定し、そこでのエネルギー消費に関する検討をおこなう。 ・ 給湯に関しては、二酸化炭素を作動流体とする給湯器(エコキュート)をふくめたモニター家庭 の詳細データの解析から、エネルギー消費に関する検討を行う。 3.1.3 平成15年度 平成14年度に引き続いて、文献調査研究ならびに測定を実施し、さらにモニター家庭の詳細デ −43− ータの解析を行うことから空調機器、冷蔵庫、厨房、そして給湯の4種類の機器に関して、その実際 のエネルギー効率を明らかにすることを目的とする。 ・ 空調機器については、住宅内に設置されたときの実際の効率を明らかにする。工業会やメーカー から情報を提供してもらい、慶應義塾大学においてその検証を行い、さらに、モニター家庭での 詳細測定データの解析と併せて、実際の機器効率を明らかにしたい。 ・ 冷蔵庫に関しても、空調機器と同様に、工業会やメーカーから情報を提供してもらい、慶應義塾 大学においてその検証を行い、さらに、モニター家庭での詳細測定データの解析と併せて、実際 の機器効率を明らかにしたい。さらに、外気温と冷蔵庫の消費エネルギーが比較的簡単な関係で 表されるという報告の検証も予定している。 ・ 厨房のエネルギー消費については、IH クッキングヒータおよびガスコンロによる2種類の厨房 を想定し、料理に必要なエネルギー消費、厨房環境維持のために必要なエネルギー消費に関して 明らかにしたいと考えている。 ・ 給湯に関しては、二酸化炭素を作動流体とする給湯器(エコキュート)をふくめたモニター家庭 の詳細データの解析から、エネルギー消費の実態を明らかにしたい。 3.2 概要 本年度は、日本国内の家電製品利用に関する実態把握として、エネルギー消費の大きな割合を占め るルームエアコンディショナ、冷蔵庫、厨房機器、給湯機器を主対象として、省エネルギーセンター ( http://www.eccj.or.jp/sub_06.html ) お よ び 家 電 製 品 協 会 の ハ ン ド ブ ッ ク や ホ ー ム ペ ー ジ (http://www.shouene-kaden.net/shouene/data/data.htm)等を参考に下記の統計をまとめた。 ① ② ③ ④ 3.3 家電産業の現状 機器別普及率の推移と現状 機器別国内出荷・輸出入数量の推移と現状 機器別ストック台数およびストックのエネルギー消費量 家電機器の普及に関する調査 3.3.1 家電産業の現状 21世紀を迎えて、わが国における家電産業の生産に関する現状は、AV機器の一般家庭への普及 などにより伸長したのをはじめ、電気機器の堅調な国内需要と97年頃から急激に増加した欧米を中 心とした輸出により年々伸長している。 また、機械工業会生産総額に占める家電産業の比率は10%を超え、その水準は中長期的に安定し て推移している。家電製品は98年6月の「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下「省エネ 法」と記載する)の一部改正によりトップランナー方式が導入され、その後国内では年々より高効率 機器の普及が促進されている。 輸入は円高や内需拡大の中、低価格・小型製品を中心に増加傾向で あり、過去最高を記録している。輸出は90年代に入り円高のため大幅な減少であったが、2000 年から再び増加に転じている。 技術的には、液晶やプラズマテレビの普及が始まり、パーソナルコンピュータとテレビに関して新 たな時代が始まろうとしているように思われる。また、成層圏オゾン層破壊の原因であるCFCの生 産が、1995年12 月末までに終了し、家庭用冷蔵庫にはHFCが冷媒として使われ、一方では、 地球温暖化の観点からHFCも影響が大きいという理由で、本年度には炭化水素を利用した冷蔵庫の 販売も始まっている。そして、2020年まで使用が許されているHCFCを用いていた空調機に関 −44− しても、HFC冷媒製品がそのほとんどを占めている状況であり,さらに、CFCを発泡剤として生 産されていた断熱材の発泡材料もシクロペンタンなど代替品が少しずつ出回ってきている。本年度か らはエコキュートと呼ばれる二酸化炭素を作動流体とする給湯用のヒートポンプの販売も開始される など、家電製品はIT化と環境負荷低減の世界的な背景の中で大きな変革期にあるといっても過言で はない状況にある。 3.3.2 定義 ① 世帯普及率および保有状況(機器台数普及数)の調査 (a) ルームエアコン・・・冷暖兼用型 (b) 温風ヒーター・・・・電気、ガス、石油ヒーターの合計 (c) 石油ストーブ (d) 電気温水器 (e) 電気冷蔵庫 ② 国内出荷数量(生産、輸入、輸出) (a) ルームエアコン・・・冷暖兼用型 (b) 電気冷蔵庫・・・・・定格内容積別 (c) 暖房機器(給湯含む) 3.3.3 機器別普及率の推移と現状 下記の資料により機器別普及率の推移と現状についてまとめる。 ・家電製品の 100 世帯あたりの保有台数、「家電産業ハンドブック」家電製品協会、(2001): 図 3.3.1 ・家電製品の世帯普及率、「家電産業ハンドブック」家電製品協会、(2001): 図 3.3.2 (1) ルームエアコン ①保有状況 (図 3.3.1 100世帯あたりの保有台数) 1980年からの20年で急増している。80年では約半数程度の普及率であるが、88年には約 100%に達した。100世帯あたりの台数で説明すると、90年には110台を上回り99年には 200台を上回った。2001年3月には217台となり増加傾向である。20年前と比較し、平均 では1世帯あたり約1/2台から2台まで増加したといえる。 次に機能別に比較してみると、70年以降冷暖房兼用のヒートポンプが普及されたが、90年頃ま で冷房専用タイプが半数以上を占めている。しかし、92年にはほぼ同数となり、93年には冷暖房 兼用タイプが逆転した。98年以降、冷暖房兼用タイプが2/3以上を占め、現在に至る。 ②世帯普及率 (図 3.3.2 世帯普及率) 80年までは40%に満たない普及率であった。85年に約50%となり98年には80%を上回り、 1世帯あたり1台以上普及している傾向にある。機能別では冷房専用の普及率については、約20年 間40%前後からの変動がない。冷暖房兼用は80年前半までは20%に満たないが、90年から急 増し、98年では65%となり2001年現在も増加傾向である。世帯購入率は、複数保有化が進む 中でも買替需要の割合が増加している。 −45− (台/100世帯) 250 200 150 100 50 0 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 (年) ルームエアコン ルームエアコン 冷房専用 ルームエアコン 冷暖房兼用 温風ヒーター 温風ヒーター ファンヒーター 石油ストーブ 温水器 電気冷蔵庫 電気冷蔵庫 300㍑未満 電気冷蔵庫 300㍑以上 出所;「家電産業ハンドブック」2001(家電製品協会) 図 3.3.1 家電製品の100世帯あたりの保有台数 (%) 120 100 80 60 40 20 0 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 (年) ルームエアコン ルームエアコン 冷房専用 ルームエアコン 冷暖房兼用 温風ヒーター 温風ヒーター ファンヒーター 石油ストーブ 温水器 ガス瞬間湯沸かし器 電気冷蔵庫 電気冷蔵庫 300㍑未満 電気冷蔵庫 300㍑以上 出所;「家電産業ハンドブック」2001(家電製品協会) 図 3.3.2 家電製品の世帯普及率 −46− (2) 温風ヒーター ①保有状況(図 3.3.1 100世帯あたりの保有台数) 85年から100世帯あたり半数の世帯に普及し始め、97年までは冷暖房兼用ヒートポンプエアコ ンを上回っている。98年には冷暖房兼用に比べ100世帯あたり5台少ない程度であったが、20 01年3月には温風ヒーターの方が30台以上も少なく差が開いてきている。普及率は90年頃まで は著しく増加しているが、それ以降は年2∼3台ずつ増加している。 ②世帯普及率 (図 3.3.2 世帯普及率) 90年頃から50%を上回り98年では67.8%となる。世帯普及率においては、90年前半ま では冷暖房兼用ヒートポンプに比べ2倍程度の普及率であったが、90年後半から冷暖房兼用エアコ ンの普及に伴い同率程度の普及率である。 (3) 石油ストーブ ①保有状況 (図 3.3.1 100世帯あたりの保有台数) 80年以前から100世帯あたりの台数が約170台に普及しており、主たる暖房機器であったが、 他の機器とは反対に年々減少傾向にある。90年には約150台、98年には110台を下回り、2 001年3月現在101台である。 ②世帯普及率 (図 3.3.2 世帯普及率) 82年までは約90%普及しているが、年々減少し90年頃から80%を下回っている。98年に は60%強の普及率である。購入率については、暖冬か厳冬の寒暖の差が大きく影響する。温暖化の 影響か、年々購入率は減少傾向である。 (4) 電気温水器 ①保有状況 (図 3.3.1 100世帯あたりの保有台数) 80年頃から普及しはじめ、88年には100世帯あたりの台数が30台を上回った。91年に約 40台まで増加したが、92年に30台まで減少し、その後はほぼ一定である。 ②世帯普及率 (図 3.3.2 世帯普及率) 台数普及率とほぼ同割合である。91年の37%をピークに減少傾向であり、その後はほぼ一定で 98年は32%である。 (5) 電気冷蔵庫 ①保有状況 (図 3.3.1 100世帯あたりの保有台数) 80年以前から100世帯あたりの台数が110∼120台まで普及している。97年には120 台を上回ったが、その後はほぼ横這いである。定格内容積別に比較すると、92年までは300リッ トル未満の小型タイプが半数以上を占めているが、93年以降は逆転し、2001年現在では2/3 が300リットル以上のものを保有しており、中型以上の物が増加している。 ②世帯普及率 (図 3.3.2 世帯普及率) 80年以前から現在まで97%後半から99%前半というほぼ全世帯に近い普及率である。80年 頃からモーターとコンプレッサーの高効率化や断熱材の使用、および放熱性の向上から省エネルギー 性能が重視され高効率機種が開発されたことも普及の増加要因と思われる。定格内容積別の普及推移 は保有状況と同様、現在は300リットル以上のものが2/3を占めている。 −47− 3.3.4 機器別国内出荷数量の推移と現状 (1) ルームエアコン(冷凍年度10月∼9月) ・・・冷暖兼用型 80年代から90年代にかけて急増したが、93年は冷夏により冷房需要が減少したが翌年には前 年を上回り、96年の猛暑の影響で過去最高値を記録した。90年代までは冷房需要が大きく影響し ているといえる。 97年から冷夏が続き国内出荷量は7000台を下回っていたが、2000年冷凍年度の国内出荷 は3年ぶりの夏の本格的な猛暑の影響や、順調な買替需要により市場が活性化され、数量では増加し たものの価格低下により単価は下がっている。 機能別に比較すると、冷房専用は94年の増加以降6年連続の減少傾向に対し、冷暖房兼用は97 年の冷夏の影響による減少以降は増加傾向に転じている。2001年冷凍年度に入っても引き続き好 調に推移しており、97年からの生産数量の減少に伴い在庫の減少の影響と暖房機器としての需要拡 大がうかがえる。 また、消費者の省エネルギー意識および環境負荷低減へのニーズの高まりから、新冷媒採用・省エ ネ対応などの高付加価値タイプと、使用環境に合わせた普及タイプの2種ともに増加傾向にある。 輸出は、円高と海外生産シフトの進行の影響により、92年以降減少傾向に転じた。 生産は、輸出の減少の影響により95年、96年は前年比10%ずつ縮小に転じ、2001年現在 5年連続減少し、その後はほぼ一定に推移している。 (2) 電気冷蔵庫・・・・・定格内容積別 2001年1月∼3月は家電リサイクル法施行前の駆け込み需要が高伸長した要因と思われる。 2000年の国内出荷は猛暑による需要促進もあり、4年ぶりに増加傾向に転じ、500万台を上 回った。定格内容積別の数量で比較すると、93年頃までは140リットル以下の小型機種と400 リットル以上(中型以上)の機種の出荷台数が同数程度普及されていたが、94年から逆転し、中型 機種が大半を占めている。90年代半ばから定格内容積400リットル前後で省エネルギー型のもの の開発が進んでおり、出荷台数の変化の要因と思われる。 また、(財)省エネルギーセンターの性能カタログで比較した結果、98年の省エネ法一部改正に よる家電製品のトップランナー方式導入の効果で省エネルギー性能の優れた製品が各社から発売され ている。さらに、外形サイズは同一のまま定格内容積だけが増量したタイプが主流となってきており 好調な伸びが窺える。 輸出は、80年代半ばは他の年代と比較すると100万台を超えるという約5倍以上も多い台数だ が、90年代に入るとまた70年代と同数の40万台∼45万台程度に減少している。95年から2 0万台代と減少傾向にあり、今後はさらに減少していくと思われる。 輸入は、堅調な国内需要を反映して年々増加傾向であり、96年から急激に増加しており、200 0年には約150万台まで増加している。 −48− (台) 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 電気冷蔵庫 ルームエアコン 5,000 石油ファンヒータ 石油給湯器 4,000 ガスストーブ ガス 3,000 ガス給湯器 ガス風呂釜 2,000 1,000 0 85 88 89 90 91 92 93 図 3.3.3 94 95 96 97 98 99 00 (年度) 家電製品の生産数量 出所;「家電産業ハンドブック」2001(家電製品協会) (台) 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 電気冷蔵庫 ∼140L 4,000 141L∼400L 401L∼ 3,000 ルームエアコン(前年10月∼当年9月) 冷房専用 冷暖房兼用 2,000 1,000 0 85 88 89 90 91 92 図 3.3.4 93 94 95 96 97 98 99 00 (年度) ルームエアコン・冷蔵庫の国内出荷台数 出所;「家電産業ハンドブック」2001(家電製品協会) −49− (台) 1,000,000 900,000 800,000 700,000 ガス温水給湯暖房機 ガス温風暖房機 石油温風暖房機 石油温水給湯暖房機 放熱器 太陽熱温水器 太陽熱集熱器 電気温水器 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 (年) 00 出所;「冷凍空調機器データブック 2002」(日本冷凍空調工業会) 図 3.3.5 暖房・給湯機器の国内出荷台数 輸入数量 輸出数量 (台) (台) 電気冷蔵庫 電気冷蔵庫 ルームエアコン ルームエアコン 1,600 2,500 1,400 2,000 1,200 1,000 1,500 800 1,000 600 400 500 200 0 暦年 75 80 85 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 0 (年) 暦年 出 所 75 80 ; 85 財 89 90 務 91 省 92 「 93 94 貿 95 易 96 97 統 98 99 計 出所;財務省「貿易統計」 図 3.3.6 ルームエアコン・冷蔵庫の輸出入台数 (3) 暖房機器(給湯含む) 石油温水給湯暖房機以外の機器については、80年代後半から2000年現在まで約5万台以上の 大きな増減はない。その中で、ガス温風暖房機は年々増加傾向であり、石油温風暖房機は減少傾向で ある。 給湯機器では、93年頃から急激に増加したが97年頃減少し、2000年現在では90年代前半 −50− (年) 」 と同数程度である。96年の厳冬の影響が増加の主な要因と思われる。 3.3.5 機器別ストック台数およびストックエネルギー効率 家庭用機器のエネルギー効率が将来どのように推移していくかを推測するには、その時間的変化を 記述するモデルが必要である。一般的に高効率の機器が発売されても、それ以前に購入された機器も 使用されているため、社会全体としての機器効率は急激には向上しないと思われる。機器全体のエネ ルギー消費を把握するために、所得の向上等に起因して機器の保有台数が増大していくことも考慮す る必要がある。今回は図 3.3.7 のモデルを基に検討した。 (1) ワイブルモデル 新規購入した機器は、故障などにより使用されなくなる。機器別ストックのモデル化にはワイブル 分布を用いた。 [参考文献:中村剛「日本の CO2 排出削減可能性の推移」1998 年度慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科論文] 【Y=exp(−αtβ)】 Y:残存率 t:経過年数 α:平均耐用年数より求められるパラメータ β:曲線の形状を示すパラメータ このワイブルモデルからストック台数にあたり、機器の世帯保有台数を年度ごとに入力し、 機器ごとの平均耐用年数と形状パラメータを仮定して算出した。 <平均耐用年数(年)>※1 エアコン 冷蔵庫 <形状パラメータ(β)>※2 9.8 3.5 10.9 3.5 ※1出所;経済企画庁(現、内閣府)「消費動向調査1998年3月版」 ※2出所;日本エネルギー経済研究所資料 台数(千台) 160,000 140,000 エアコン 120,000 100,000 80,000 冷蔵庫 60,000 40,000 20,000 0 70 73 76 79 82 85 88 91 94 97 2000 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 (年度) 図 3.3.7 ワイブ分布を用いた冷蔵庫とエアコンのストック台数の推定 1970 年以前のデータを利用していないため、平均寿命から見ると 1980 年以前の推計は信頼性に欠ける。 −51− ① エアコン 図 3.3.8 のエアコン残存率に示すように経過年数7年で▲20%の残存率であり、10年経過する と半数以上に減少する。図 3.3.7 でモデリングした結果、機器の急増する普及に伴い今後6年ごとに 約2千万台ずつストック台数が増加していくと想定できる。経年劣化に対する実験に使用する旧型機 器は、82年前後のものと87年前後のものが適当である。 残存率 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 経過年数 図 3.3.8 エアコン残存率 ② 冷蔵庫 図 3.3.9 の冷蔵庫残存率に示すように経過年数8年で▲20%の残存率であり、11年経過すると 半数以上に減少する。図 3.3.7 でモデリングした結果、10年で約50万台ずつ増加していく傾向で あると想定できる。経年劣化に対する実験に使用する旧型機器は、80年前後のものと85年前後の ものが適当である。 残存率 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 経過年数 図 3.3.9 冷蔵庫残存率 −52− (COP) 3.5 暖房COP 3 2.5 冷房COP 2 1.5 1 0.5 0 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 (年) 出所;「家庭用エネルギーハンドブック 1999」(省エネルギーセンター) 図 3.3.10 エアコンのCOPの推移(住環境計画研究所による) 3.3.6 ストックのエアコンの効率(推計) 図 3.3.10 は、エアコンの省エネルギー性能の推移を出荷した機器効率の平均の推計により比較した ものである。80年代前半のエアコンの普及率が急激に増加したこと伴い、暖房、冷房共に83年ま ではCOP値は2を下回っており、その機器効率の改善がなされた。その結果、暖房性能は93年か らCOP数値3を上回り、冷房性能は94年にCOP数値2.5を上回った。 特に暖房COPは約20年間でCOP数値が2倍以上の高効率なものへ開発がなされている。 また、96年にトップランナー方式が導入され、気温にあわせて効率よく運転するインバーター機 種等の普及により年々エアコンの機器効率は向上している。90年代に入り、効率の良い機種のスト ック効率(推計)伸び率は低下傾向にあったが、96年を境に増加傾向に転じている。先にも記載し たが、一般的に高効率の機器が発売されても、その年にはそれ以前に購入された機器も使用されてい るため、ストック効率はすぐには上昇しないと思われる。 3.3.7 ストックの冷蔵庫の消費電力量(推計) 図 3.3.11 は、冷蔵庫のストック消費電力量が年度平均でどのように推移したかを示したものである。 平均の消費電力量については、70年代後半から急激に高効率機器への開発が進み、90年を70年 と比較すると約1/3であり、冷蔵庫の普及に伴い20年間で大きく改善されていることがわかる。 90年以降、伸び率が減少しているのは、ライフサイクルの変化等から家庭での使用機種が大型化さ れてきたことが要因と思われる。冷蔵庫は、200リットル以下の小型機種から、500リットル以 上の大型機種まで様々であり、大きさによって消費電力量に差があるため、図 3.3.11 はおおよその目 安である。図 3.3.2 の普及率でもわかるように、90年代半ばから400リットルクラス(中型)の ものの普及に伴い、そのクラスに省エネ性能の優れた機種が多く開発されている。 −53− (k W 160 140 120 100 80 60 40 20 0 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 (年) 出所;「家庭用エネルギーハンドブック 1999」(省エネルギーセンター) 図 3.3.11 ストックの冷蔵庫の消費電力量(住環境計画研究所による) 3.4 まとめ 以上、本年度は文献調査を行い、これまでに家電製品に関して得られている情報の把握を行った。 具体的には、空調機器および冷蔵庫に関する普及率の推移、ストック量の把握、ストックによるエネ ルギー消費量、空調機器の冷房及び暖房 COP の時系列的推移などを簡単にまとめた。これらの調査結 果を踏まえ,次年度は、下記の項目について研究を進める予定である。 (1) 家電機器のエネルギー消費量の測定 下記の個別機器について、住宅環境ならびに実験室環境で実使用時のエネルギー効率を測定 する。特に下記の①,②については、主に効率の評価 ③,④については、環境負荷も考慮した システム的評価を実施する。 ①冷蔵庫(CFC,HFC,自然冷媒等) ②ルームエアコンディショナ(室内機・室外機) ③IHクッキングヒーター・ガスコンロ(キッチンの複合的な評価) ④給湯機器(セントラルガス給湯器・自然冷媒給湯機 等) (2)家電製品の効率評価 個別機器の実効率について、過去に行われた研究に関する調査を行い,できる限りそのデー タを入手する。また、住宅環境ならびに実験室環境での実測を行い、JIS等で規格化された 性能表示と、経年変化や室外機および室内機の置かれている環境条件をファクターとした実際 の効率との関係を明らかにすることを目指す。 (3)省エネ性能の検証 住宅内において、省エネルギーが実現されるための個別機器の使用上の注意項目についても 検討を進める。省エネルギー効果を数値で示す具体的指針の作成も目指す。 個別機器の単体の性能だけでなく、その機器が熱負荷などの住宅環境負荷として他の機器に 与える影響を含めたシステム的な検討も進める。 −54−
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