プレスリリース/2012.5.13 「村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する」展/関連プログラム 中野成樹+フランケンズ 「現在に『スカートをはいたネロ』を試演する」 2012年7月16日[月・祝] 世田谷美術館 講堂 本企画は、村山知義の代表的な戯曲『スカートをはいたネロ』を取り上げ、村山の演劇人としての側面をフ ォーカスするものです。 1924年の築地劇場における『朝から夜中まで』の舞台装置で好評価を得た村山は、1925年にマヴォを脱退 後、歌舞伎役者の河原崎長十郎らと劇団「心座」を立ち上げ、演劇人としての活動を本格的に始動させ、ま たプロレタリア文化活動に傾倒していきます。この戯曲は、その渦中にある1927(昭和2)年に書かれた人形芝 居で、26歳の村山が「心座」5作目として作・演出・装置を手がけました。物語は、18世紀後半のロシア帝国の 女帝エカチェリーナ2世(戯曲では「カザリン2世」)を主人公に、冷酷無慈悲の女帝を描くことで、身分制社会 の構造を批判する内容になっています。 本企画は、「現在に〜試演する」とタイトルに示したように、村山が生きた時代の表現活動の根底にあった問 い=「いま(コンテンポラリー)の表現とは何か」を、同じ精神で現代演劇に切り込んでいる演出家・中野成樹 (なかのしげき)によって浮かび上がらせる試みです。 中野は、中世・近代の"名作翻訳劇"を「誤意訳」という独自の戯曲解釈と、現代のリアルな身体で現代演劇 として再生し、注目を集めています。今回は、自らのカンパニー「中野成樹+フランケンズ」を率いて試演しま す。中野の演劇は、台本を忠実に用いながらも、それを現代の日本を生きている日常の身体や感覚で捉え 直すものです。音楽性あふれる構成とシンプルな美術により、エレガントにしてポップに仕立て上げ、多くの 演劇ファンを魅了しています。 本企画は、85年前に書かれた『スカートをはいたネロ』を現在の目から解体・再構築し、音楽と人形を用いて 上演することで、「社会に対する物語」をいまの身体に甦らせます。本展で展示される村山知義の膨大な資料 と合わせて、いま、わたしたちの生きている社会や現実との接点を見つけるきっかけとして、日本版「誤意訳」 の体験をお楽しみください。 世田谷美術館 実施要項 日時 2012 年 7 月 16 日(月・祝) 13:00/15:00/17:00 開演 開場は開演の 15 分前(上演時間 45 分を予定しています) 会場 世田谷美術館 講堂(各回定員:150 名) 料金・定員 ★ホームページ限定予約:展覧会+公演チケット 1,300 円 ★当日:1,000 円 開催形態 ★当日の展覧会チケットをお持ちの方:500 円 主催:世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団) 企画協力:NPO 法人 Offsite Dance Project http://www.setagayaartmuseum.or.jp/ チケット予約/ 世田谷美術館 詳細問合せ 担当:塚田美紀 TEL.03-3415-6011/FAX.03-3415‐6413 E-mail: m-tsukada@samuseum.gr.jp プレスリリース/2012.5.13 上演作品について 中野成樹+フランケンズ 「現在に『スカートをはいたネロ』を試演する」 構成・演出:中野成樹 出演:村上聡一、福田毅、竹田英司、田中佑弥、洪雄大、野島真理、石橋志保、斎藤淳子、小泉真希、北川麗 企画担当:塚田美紀(世田谷美術館) キュレーション:岡崎松恵(NPO法人Offsite Dance Project) ■戯曲「スカートをはいたネロ」について 1927(昭和2)年5 月、村山が26歳の時に、河原崎長十郎と立ち上げた劇団「心座」が朝日新聞大講堂と帝国ホテ ル演藝場で上演した作品。村山が作・演出・装置を手がけ、プロレタリア文化活動への傾倒をうかがわせる代表作。 人形芝居として書かれた戯曲で、1991年千田是也演出で人形劇団プークにより上演されている。(『村山知義戯曲 集』に収録) 時は1788年、主人公はロシア帝政時代の女帝カザリン二世(正式には「エカチェリーナ二世」という)。生涯に多数 の愛人を抱えたとの伝説もある女帝に寵愛されたランスコイを軸に、暴君・皇帝ネロに重ね合わせて、民衆を弾圧し、 冷酷無慈悲な女帝として描かれている。全十幕、ト書きには「特種な演出でなければ、人間の俳優には移せない」 との記述がある。 ■アーティスト・コメント 今回は「人形芝居」にチャレンジしたいと思います。この戯曲執筆当時の村山が、人形芝 居を意識した理由の一つには、低コストがあったと思われます。同じ人形劇芝居である 『やっぱり奴隷だ』の冒頭にも「ごく簡単で費用もかからないこの技法・形式に着目せよ」と いった趣旨のことが書かれています。停滞を排除し絶えぬ活動を行うためのアイディアだ ったのでしょう。そしてそれは、プロレタリアの、その芸術家の誠実なる態度であったかもし れません。正直、我々はいま人形劇のいろはをわかってはいません。しかし停滞をおそれ る気持ちはわかります。そしてそれから逃げ切るための低コストも。 本作では特殊な演出は行いません。簡素な舞台に、戯曲の指示通り「すべて舞台を人形 に比して非常に大きく」つくってもみます。そして、何よりも忘れてならないのは、村山が感 じていたであろう世界を思い、彼の言葉を大きな声でそこに響かせること。彼の言葉は、い まにどう響くのでしょう? ■アーティスト紹介 中野成樹+フランケンズ http://frankens.net/ 中野成樹(なかのしげき)は、1973年東京生まれの演出家。有明 教育芸術短期大学講師。既存の海外戯曲を、原作のストーリーを 守りつつも自由に脚色し、音楽性あふれる構成、シンプルな美術 により上演。その手法を、意訳のうえに誤訳でもある「誤意訳(ごい やく)」と呼び、翻訳劇の可能性を切りひらく。2003年「中野成樹+ フランケンズ」を結成。主なレパートリー作家は、シェイクスピア、モ リエール、チェーホフ、ワイルダー、ブレヒトなど。2010年にはチェ ーホフの『かもめ』をラップ化し、CDをリリース。大きな反響をよん だ。中野は欧米の古典・近代劇を得意としながらも、2009・2010年 には川崎市アートセンターにて『忠臣蔵フェア』を開催。また2011 年には串田和美氏とともに、瀬川如皐『与話情浮横櫛』を脚色した 『ヨサブロゥ』を上演するなど、活動の幅をひろげている。 写真:中野成樹+フランケンズ『スピードの中身』より 於:所沢航空発祥記念館
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