The IPSN Quarterly 東京都千代田区丸の内1-7-12サピアタワー10階 Tel:03-5288-5401 知的財産戦略ネットワーク株式会社 ニュースレター 2015年夏(第22号) Intellectual Property Strategy Network, Inc. (IPSN) 「実用化に向けたP-DIRECTアカデミア 創薬シーズ発表会」を開催しました ■CONTENTS■■■ 於:日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区) 「実用化に向けたP-DIRECTアカデミア 創薬シーズ発表会」を開催しました。 1 【寄稿】 一般財団法人バイオインダストリー協会 (JBA)の産学連携活動について バイオインダストリー協会 専務理事 塚本 芳昭 3 一つの視点 「馬鹿げた訴訟(Frivolous Lawsuit)」 7 第12回IPSN講演会開催のご案内 9 Bio Japan2015に出展します 10 東京都関連事業受託 10 INFORMATION 11 IPSNは、平成24年度から次世代がん研究シーズ戦 略的育成プログラム(P-DIRECT)に対して、知財戦 略相談ならびに成果導出仲介の支援を行っている。 このたび、P-DIRECTから創薬シーズとして実用化が 期待される研究成果が数多く創出されたことから、実 用化のパートナーとなる産業界の皆様に成果情報を ご紹介するため、 8月19日、P-DIRECTと共同で本発 表会を企画し開催した。本発表会は、IPSNが三井不 動産㈱と連合体を組んで推進してきている東京都イ ンキュベーションHUB推進プロジェクト「ライフサイエ ンス・健康産業分野におけるインキュベーション HUB」(HUB事業)活動の一環としての開催でもあり、 内外の製薬企業・ライフサイエンス系ベンチャー等に 対して広く参加を呼びかけ、人材の育成・交流の場と してもご活用して頂いた(秋元閉会の辞より抜粋)。 発表会冒頭では、P-DIRECTプログラムリーダーの野田哲生先生がP-DIRECTの取組について紹介さ れました。 P-DIRECTはがん研究の更なる強化を図るため、基礎研究の優れた成果の医療への応用を加速させ、 革新的な診断や治療法など次世代がん医療の実現を目指すために平成23年度から実施され、現在 140を超える先進的な研究課題について、約500名の研究者で取り組んでいる我が国最大級のがん研 究プロジェクトである。平成27年4月からは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構によって運営・ 管理されている。今年度は本プログラムの最終年度であり、創薬シーズとしての実用化が期待される研 究成果が多数創出されてきたので、本発表会では、 その中から選ばれた創薬シーズ8テーマを発表 する(野田氏開会挨拶より)。 P-DIRECTの取組みについて講演(野田哲生先生) 1 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 「実用化に向けたP-DIRECTアカデミア創薬シーズ発表会」 紹介されたシーズの8テーマは以下の通りです。参加者からは、 P-DIRECTの研究は非常に興味深い 内容が含まれていた、大変有意義な時間を過ごすことができた、等のコメントをいただいております。 ■発表シーズと発表者(敬称略) ①NAD依存的脱アセチル化酵素SIRT2阻害による新規がん治療薬 理化学研究所 吉田化学遺伝学研究室 伊藤 昭博 ②脳腫瘍幹細胞に対する新規核酸医薬 名古屋市立大学大学院医学研究科 近藤 ③TGF-βおよび低酸素の応答シグナルを標的とした新規がん治療薬 京都大学大学院薬学研究科 掛谷 秀昭 ④オートファジー細胞死を標的とした新規がん治療薬 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 清水 重臣 ⑤がん抑制遺伝子p53の機能喪失を防止する新規がん治療薬 国立がん研究センター 研究所難治がん研究分野 江成 政人 ⑥血小板の相互作用を抑制する新規がん治療薬 (公財)がん研究会 がん化学療法センター 藤田 直也 ⑦ナンセンスmRNA分解経路を標的とした新規がん治療薬 横浜市立大学大学院医学研究科 大野 茂男 ⑧Rac活性化機能を標的とした新規がん治療薬 九州大学 生体防御医学研究所 福井 宣親 豊 来年1月にも同様の発表会の開催を検討中でございますので、ご期待頂ければ幸甚です。 今回の発表会について、質問等がございましたら、下記にお問い合わせください。 ◇発表内容と連携に関すること D-DIRECT事務局:jisedaigan.admin@jfcr.or.jp Tel:03-3570-0404 ◇連携支援に関すること IPSN社担当窓口:konno-yoko@ipcn.co.jp Tel:03-5288-5401 (金野陽子) 発表会の様子 2 閉会挨拶(秋元浩) The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 寄 稿 一般財団法人バイオインダストリー協会(JBA)の 産学連携活動について 一般財団法人バイオインダストリー協会 専務理事 塚本 芳昭 1.JBAとは JBAは企業会員214社、公共会員(大学、地方自治体、大使館等)103組織、個人会員(大学・企業研 究者)約700人からなる組織で、産官学連携によりバイオインダストリー発展のための基盤作りを行い、 人々のくらしの向上に貢献することをミッションとしている。発足は1942年に遡り、活動は70年以上に及 んでいる。現在約40人の組織体で活動を実施しているが、その活動の多くはJBA単独で実施するだけ ではなく、外部の関係機関との連携により実施している。主要事業の一つであるBioJapanも例外ではな く、日本製薬工業協会、(一社)再生医療イノベーションフォーラムはじめ9つのバイオ関係団体の共同 の主催で、かつ実際の運営は(株)ICSコンベンションデザインに委託することにより、少ないスタッフなが らも大きな効果を生む取り組みをしている。組織体制としては、会長を京都大学清水昌名誉教授、理事 長を中外製薬(株)代表取締役会長、専務理事を経済産業省OBの塚本が勤め、理事会も産業界出身 者と学界出身者から構成(約40名)するなど、産官学のネットワークを最大限活用することを意図した体 制となっている。 2.JBAの5つのアクション JBAでは、今日①政策提言・政策対話、②先端バイオ情報提供、③オープンイノベーション推進、④ 国際ネットワーク形成、⑤発展基盤の整備の5つの活動を展開している。 ①政策提言・政策対話に関しては、その時々の政権に対しバイオ産業発展を推進する政策の展開や、 競争力を低下させる可能性のある規制の合理化を求める活動を行っている。バイオインダストリーの発 展には生物遺伝資源の活用が重要であり、国境を越えて移動する生物遺伝資源の利用から生じる利 益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書が2014年10月に発効し、日本政府でも議定書批准 に向けての検討が行われている。JBAとしては、利益配分自体は生物資源提供国の法律に基づき生 物資源の提供者と利用者の当事者間で適正に進めるべきとの立場であるが、拙速な対応により過剰 で不合理な規制が導入され、大学・民間企業等における生物遺伝資源を活用した研究自体が委縮す ることがないよう、関係閣僚(環境大臣、外務大臣、経済産業大臣他)にも直接要望を申し入れている。 また政策を立案し推進する官庁の責任者を招き、政策情報セミナーを実施している。参考までに最近 のセミナーの事例を表1に示す。今後も各省の政策動向を注視し、随時政策責任者との対話を進めて いく。 表1:政策情報セミナーの事例 開催年月日 担当省 セミナータイトル 2014年6月 文部科学省 革新的イノベーション創出プログラムについて 2014年6月 経済産業省 遺伝子検査ビジネスに関する施策について 2014年9月 内閣府 科学技術イノベーション綜合戦略2014 2014年9月 厚生労働省 先駆けパッケージ戦略について 2015年1月 経済産業省 社会保障財政の健全化と医薬品産業の発展に向けて 2015年3月 厚生労働省 海外医薬品マーケット動向について 2015年4月 経済産業省 今後のバイオ産業政策の在り方について (次ページに続く) 3 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 ② 先端バイオ情報提供に関しては、国内外におけるバイオに関する最先端技術情報の収集、新規産 業につながる技術シーズの発掘紹介を目的に各種講演会、セミナーを年間70回程度開催している (表2参照)。分野としては医薬・医療、環境・ものづくり、食料・健康食品、ヘルスケア等バイオの出口 分野全域をカバーしている。最近では注目度の高いバイオの応用分野である機能性食品、ヘルスケ ア、植物バイオの3つの分野での産産連携の実践、産学連携プロジェクトの提案、政策提言を目指し た研究会(参加会員はそれぞれ30社~50社)を立ち上げ、関係行政機関や会員間での情報交換を 実施している。なお、過去の活動の成果として多くのナショナルプロジェクトに関する提言も行い、形成 されたナショナルプロジェクトのサポート活動も多く実施している(2015年現在バイオマスエネルギー、 ゲノムデザイン技術、再生医療、抗体医薬品製造技術、機能性食品に関する5つのナショナルプロ ジェクトに参画)。 ③ オープンイノベーション推進に関しては、BioJapan、全 国のバイオ関係者会議、バイオベンチャー支援、バイオビ ジネスセミナー等を実施している。BioJapanは近年、国内 外の大学、バイオベンチャー、製薬・食品・化学等のバイ オ関連大手企業等が一堂に会しビジネスマッチングを行 うアジア最大のイベントに成長しており、2015年はビジネ スマッチング・展示に参加する企業・大学は国内外30ヶ国 で750社に達し、ミーティングも8,000件程度が行われる予 定となっている(表3参照)。また年2回各地方のバイオ推 進機関からなる全国バイオ関係者会議を開催し各機関の 連携活動について協議をおこなっているが、それが日本 全国から大学やバイオベンチャーがBioJapanに集まること にもつながっている。加えてバイオベンチャーのビジネス を加速する観点からバイオベンチャーダイレクトリーを作 成・公表するとともに、年数回はバイオベンチャーとともに 海外にミッションを派遣し、国外の企業との連携加速も進 めている。また、最近注目を集めているのはバイオビジネ スセミナーである。昨年からスタートした試みであり、年10 回程度大手企業からビジネス戦略、求める技術等を他の 会員企業に紹介し、産産連携を加速する取り組みを実施 している。毎回満員御礼で、一部は企業間の連携の話し 合いにつながっている。 4 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 ④ 国際ネットワークの形成活動に関しては、公共会員として参加している米国、英国、ドイツ、フランス をはじめとして約30の在日の大使館、州政府事務所との関係が基本となっている(図1参照)。バイオ 先進国は頻繁に大学研究者、バイオ関係企業等のミッションを日本に派遣しているが、JBA会員であ る大使館、州政府事務所がJBAにパートナー探しのサポートを求めることが多い。JBAはこうした機会 に国際連携セミナー等を開催し、JBA会員と海外の研究機関の連携のサポートを推進している。こうし た活動を受けて、多くの世界的クラスターがJBAとの協力協定締結を求めてきており、最近ではSan DiegoのBioCom、フランスのアルザスバイオクラスター等とも協力協定を締結したところである。なお、 こうした国際ネットワーク形成活動がBioJapanへの海外からの参加の増加に大きく寄与している。 図1JBA公共会員の在日大使館および協力協定を有する海外バイオ団体 ⑤発展基盤の整備活動に関しては、企業の若手 研究者向けのバイオリーダーズ研修やバイオイ ンダストリーの発展に貢献する科学および社会・ 人文科学分野の研究奨励を実施している。バイ オリーダーズ研修はJBAの活動の中でも人気の 高いプログラムで、会員企業の若手研究者を毎 年30名程集め、3日間にわたるグループワーク で研究シーズをビジネス化するための企画作り を学ぶ研修を行っている(写真1参照)。若手研 究者のビジネス化の能力を高めると同時に他の 企業の研究者との共同作業の体験により、若手 のネットワーク形成を目指すものとなっている。 研究奨励に関しては毎年10名程度の表彰をし ており、バイオインダストリー協会賞100万円、研 究奨励賞30万円の授与をおこなっている。過去 の受賞者の多くは様々な重要分野で研究リー ダーになっている事例も多く、今後も表彰を通じ てバイオ分野の研究振興に貢献することとして いる。 5 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 研究奨励に関しては毎年10名程度の表彰をしており、バイオインダストリー協会賞100万円、研究奨 励賞30万円の授与をおこなっている。過去の受賞者の多くは様々な重要分野で研究リーダーになって いる事例も多く、今後も表彰を通じてバイオ分野の研究振興に貢献することとしている。 3.これからの活動方針 本稿ではJBAの活動の一端を紹介し、バイオインダストリーの発展に関する活動に関しては、大学の 教育、研究の奨励、大学から民間企業への技術移転の促進等も含め幅広く活動しており、その詳細 はwebページを参照願いたい(http://www.jba.or.jp/)。 バイオインダストリーの課題として、大学のバイオ関係学部の希望者の減少、バイオ関係のポスドク の行き場がない等々の問題も生じているが、研究の進展の状況に比べビジネスの発展が追い付いて いないというところに大きな原因があるように感じている。このため、JBAの年間活動やBioJapanをビジ ネスの発展につなげるという点に重点を置いて展開していく方針である。また新しい産業を生むという 視点で、バイオベンチャーの役割は大きい。現時点で多くの有力バイオベンチャーが次々と育ってい るという状況にはないが、中長期的視点でバイオベンチャーの育成活動も強化していきたいと考えて いる。今後も多くの関係機関との連携によりバイオインダストリー発展に大きく寄与したいと考えており、 JBAの各種活動についてのご協力をお願いして、本稿の締めくくりとしたい。 筆者略歴:塚本 芳昭(つかもと よしあき) 1955年3月生まれ 1979年3月名古屋大学大学院修士課程修了(化学工学専攻) 1979年4月通商産業省入省 1998年4月東京工業大学フロンティア創造共同研究センター教授 2005年9月四国経済産業局長 2007年7月財団法人バイオインダストリー協会専務理事 2011年4月一般財団法人バイオインダストリー協会業務執行理事専務理事 6 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 一つの視点・ ≪馬鹿げた訴訟(Frivolous Lawsuit)≫ 知的財産戦略ネットワーク株式会社 顧問 長井省三 週刊新潮2015年6月4日号【連載 変見自在 高山正之】に大変興味深い記事がありました。『米国に はFrivolous Lawsuitと言う言葉があり、「馬鹿げた訴訟」と訳されている。武田薬品工業は糖尿病薬アク トスで「癌になった」と一万件近い訴訟が起こされた。この訴訟も、米国の訴訟システム独特の「馬鹿げ た訴訟」と言えるのではないか』との指摘である。この指摘に関連する情報を検討してみました。この結 果を「一つの視点」として報告します。 糖尿病薬アクトスは、累積売上高が3兆円を超 える正にブロックバスターである。2010年に米食 品医薬品局(FDA)が「アクトスを長期間服用する と、膀胱癌の危険性が高まる」と発表したことから、 2011年以降、米国で集団訴訟などが相次いだ。 しかし、膀胱癌との因果関係は具体的には何等 証明されていないにも拘わらず、ルイジアナ州で 患者一人に60億ドル(7,200億円)の懲罰的損害 賠償が命じられた。TPP交渉の最中でもあり、米 政府の指図(?)で99.5%引きの約30億円に減額 された。そして5月末に、武田薬品は約9千の訴 訟について、大半の原告側と和解に合意したとし 和解金や訴訟関連費用など27億ドル(約3,241億 円)を引当金として2015年3月期決算に計上する と発表した。 こんな因果関係が具体的に証明されていない医 療訴訟は「馬鹿げた訴訟」であるとして多くの日本 人は眉を顰める。しかし、朝日新聞は少し違って、 自虐史観以上にお気に召した様で、下記の様な 情報を発信し訴訟するように誘導したが、何れも 日本では敗訴となった。 ①インフルエンザ特効薬タミフルで「熱譫妄が起 きる」と医学知識ゼロの情報を出し、訴えを起こ させたが、結果は皆敗訴であった。 ②肺癌特効薬イレッサでも「死者続々」との情報を 出し、治った患者にまで原告席に座らせて製薬 会社に対し訴えを起こさせたがこれも敗訴で あった。 そもそも「馬鹿げた訴訟」は米国固有の訴訟シス テムに基づくものであり、その代表例は、アルバカ イキーであった「ホットコーヒー」訴訟である。当時 79歳のステラ・リーベックが車の後部座席に座りマ クドナルドのコーヒーの蓋を取ろうとしてこぼした。 コーヒーは股間に流れ、局所に3度の熱傷を負っ た。そして、彼女は「家庭のコーヒーメーカーより 10度高い温度設定が問題」と訴えた。これに対し マクドナルドは「自分の過失を他人に擦りつける な」と反論した。弱者の味方の陪審員は、マクドナ ルドに270万ドル(3億2,400万円)の懲罰的損害賠 償を評決し、裁判官によって48万ドル(5,760万 円)に減額され、最終的にはマクナルドに対し補 償的賠償16万ドルを加えた合計64万ドルの賠償 金支払いを命じる判決が下された。この事件は、 現実に皮膚移植が必要なほどの重症で治療に1 万ドル以上かかった様であり、同様の苦情が10年 間に700件あったにも関わらずマクドナルドが無視 していたこと、家庭用のコーヒーメーカーのコー ヒーが72度程度であるの対し、マクドナルドのコー ヒーは85度と10度以上高かったことに加え、マクド ナルド側の示談交渉における不手際、判事による 調停拒否があり、陪審員は顧客の安全対策を軽 視しているとして陪審員の評議の結果、マクドナ ルドは80%、原告は20%の過失があったとした。最 終的には5,000万円の和解金で決着した。ニュー ヨークタイムズはこの事件の真実を伝える動画を 公開している。 しかし、この事件は「コーヒーを零して火傷を負 い訴訟を起こした結果数億円の賠償金を得て大 金持ちになった」と言う都市伝説めいたストーリー でマスコミに取り上げられた。しかし、この事件の 裁判はあくまでも「治療費の請求」であったにも拘 わらず、この点に触れない報道がなされた結果、 米国の訴訟システムが生み出す弊害の一例とし ての「都市伝説」が定着してしまった。 (次ページに続く) 7 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 日本でも2012年3月にNHK BS放送で放映さ れた。ホットコーヒーが熱いのは当たり前で、これ をこぼし熱傷を負っても自己責任であるとすること は日本を始めとして世界の常識である。しかし、 NHKはこの様な常識的な内容ではなく、都市伝 説に添った内容で放映し、更にその他の類似例 を挙げ、大企業の策略があったかの如き放映で あった様である。なお、番組では、コーヒー2日分 の売り上げを懲罰的損害賠償として算出したとし て、懲罰的損害賠償が2億円と高額になった理由 を挙げているが、根拠になっているとは思えず、 正当な根拠があったとは言い難いようである。 かかる「80歳で得たアメリカンドリーム」はアメリカ 社会の底辺を活気づけ、より「馬鹿げた訴訟」を誘 引することとなった様である。米国でかかる「馬鹿 げた訴訟」が頻発していることは、「馬鹿げた訴 訟」を調査し、その年の「ステラ賞」として、2002年 以降毎年賞が与えられていることでも明らかであ る。 この様な「馬鹿げた訴訟」は製造物責任法であ る「PL法」があることと米国では弁護士が多いから である。そして、かかる「馬鹿げた訴訟」は米国で はビジネス(産業)になっている。この背景には、 「成功報酬型訴訟」がある。即ち、訴訟費用は一 切不要で、成功した場合の賠償金の一部を報酬 として弁護士が取る訴訟である。この「成功報酬 型訴訟」及び「弱者の味方の陪審員」は米国固有 の訴訟システムであり、古くはコンシュマー訴訟、 レメルソン訴訟が著名である。物を作るわけでは なく、加工するわけでもなく、流通させるわけでも ない訴訟がビジネス(産業)となり、社会の優秀な 人材が大量にそこに流れ込むことは、不健全であ り、社会の活力を減衰することに繋がりかねないと 思われる。(了) 筆者略歴: 【長井 省三】(知的財産戦略ネットワーク㈱顧問) 1968年 北海道大学薬学部薬学科卒 1982年 弁理士登録 山之内製薬入社後、一貫して医薬品の特許業務に従事、国内外医薬品・バイオ等の特許出願、権利 化、特許係争、ライセンス交渉業務など多数経験、特許部部長を経て2004年定年退職後も同社特許 部顧問を勤め、2005年に日本製薬工業協会知的財産部長に就任、2009年知的財産戦略ネットワー ク(株)取締役就任、2013年同社顧問に就任、現在に至る。 8 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 第12回IPSN講演会のお知らせ インキュベーションファンドの重要性 ~ 国立大学投資事業とプレ-トランスレーショナルリサーチ(Pre-TR) ■日 時 2015年10月16日(金)13:30~15:00 パシフィコ横浜 アネックスホールF202号(横浜市西区みなとみらい) ■参加費 無料 ■会 場 ■定 員 120名 プログラム (8月現在・敬称略) 開会挨拶 (モデレータ)知的財産戦略ネットワーク㈱ 代表取締役社長 秋元 浩 13:30~13:40【東京都 ライフサイエンス分野における創業支援施策の紹介】 東京都 産業労働局 商工部 技術連携担当課長 内田 聡 13:40~14:05【アカデミアシーズの社会実装に向けて(仮題) 】 内閣官房副長官補室 内閣参事官 木村 直人 14:05~14:30【アカデミアでの技術移転活動の新たな動き:京大イノベーションキャピタル】 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 代表取締役 樋口 修司 14:30~14:55【インキュベーションファンドを成功に導く産業界の役割】 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社 知財グループ パートナー 松本 一則 14:55~15:00 閉会挨拶 国立大学等のアカデミアには新しい社会的価値の創出につながる創造的な素晴らしい研究が多数存在する。 これらの研究成果を事業化に結び付けるためには、研究の初期段階(Pre-TR)から事業化計画を創設すると 共に、事業化計画に沿った知財戦略の立案も必須である。このような背景から、最近、国は4国立大学に投資 事業を認め、大学自らがファンドを組成してベンチャーに資金投入する仕組みを構築した。 本講演会では、産学官の代表者にご登壇頂き、アカデミアシーズをPre-TRから事業化まで効率的に育てあ げていくためのインキュベーションファンドの重要性とその成功に向けたご提言についてお話していただく。 また、講演会冒頭では、東京都が実施している「インキュベーションHUB推進プロジェクト」の取組みにつ いてご紹介頂く。 ■お申込み方法: バイオジャパン2015ウェブサイトよりお申込みくだ さい。 http://www.ics-expo.jp/biojapan/main/ ※9月上旬お申込み受付開始 ※講演会に参加するためには、バイオジャパン2015の ご来場登録が必要となります。ご登録後、ご来場者専 用ページ「マイページ」からお申し込み下さい。 ■お問い合わせ先 金野 陽子(こんの ようこ) 知的財産戦略ネットワーク㈱ Tel: 03-5288-5401 Fax: 03-3215-1103 Email: konno-yoko@ipsn.co.jp 9 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 Bio Japan 2015に出展します 2015年10月14日(水)から16日(金)まで、パシフィコ横浜にて開催される「Bio Japan 2015」に ブース出展します。知財コンサルティングやマッチング相談などを承ります。また、今回も昨年度に続き、 東京都「ライフサイエンス・健康産業分野におけるインキュベーションHUB」についてご紹介させて頂き ます。 10月16日には同会場にて第12回IPSN講演会も開催します。(前ページご参照)。 皆様のご来場を心よりお待ちしております。 開催展名: Bio Japan 2015 –World Business Forum 会 期: 2015年10月14日(水)-16日(金) 10:00~17:00 会 場: パシフィコ横浜 展示ホールC・D IPSNブース小間番号:A-11 ■Bio Japan 2015 公式サイト http://www.ics-expo.jp/biojapan/main/ 東京都関連事業受託 ■東京都から「ライフサイエンスベンチャー商談会支援事業」を受託しました。 東京都は、都内に集積するライフサイエンス産業分野のベンチャー企業等の成長を後押しするため、 展示会への出席及び商談参加への支援を実施しています。 今年度は、BioJapan2015への出展・商談会参加を希望する医薬品/創薬、創薬支援/受託サービス、 診断、介護機器等の分野に取り組んでいる都内の中小企業を対象に支援を行っています。 IPSNは、東京都からこれら企業に対してBioJapan2015における商談会に向けたコンサルティング及 び展示会当日のサポート業務を受託しました。展示会及び商談会においてベンチャーと企業とのマッ チングが達成できるよう、サポートさせていただきます。 ■東京都中小企業振興公社から「ライフサイエンス分野に係る中小企業からの知的財産 関連の相談業務」を受託しました。 公益財団法人東京都中小企業振興公社の1部門である「東京都知的財産総合センター」は、中小企 業の知的財産の創造・保護・活用の促進を目的に、東京都が設立した機関です。主な事業として、相談 事業、普及啓発事業、助成事業を実施しております。 IPSNは、同社からライフサイエンス分野に係る中小企業からの知的財産関連の相談業務」を受託し 中小企業の皆さまの抱える知的財産に関する問題についてご相談を受け、問題点を整理しながら実践 的・総合的にアドバイスします。 10 The IPSN Quarterly 2015, Summer, No.22 INFORMATION ■主な活動報告(2015年6月~8月) 6月25日 第22回優先会員向けゼロ次情報提供 6月26日 第21回賛助会員向けノンコン情報提供 8月19日 「実用化に向けたP-DIRECTアカデミア創薬シーズ発表会」開催 ■主な活動予定(2015年9月~11月) 9月下旬 第23回優先会員向けゼロ次情報提供 9月下旬 第22回賛助会員向けノンコン情報提供 10月14日~16日 バイオジャパン2015出展 10月16日 第12回IPSN講演会(Bio Japan 2015会場) ■寄稿のお願い IPSNでは、皆様から産官学連携推進、先端技術分野の知財を巡る問題や課題について幅広いご意見、 論文をお寄せ頂き、かかる問題を考える場として本ニュースの紙面を活用しています。 ご意見、論文がございましたら弊社までお寄せください。 編集後記 今年の夏は猛暑続きでエアコンが欠かせない毎日が続いていましたが、このニュースレターを編集している8月終 わりには日の光も和らぎ、肌寒くも感じるようになりました。日の暮れも早くなり、秋の気配を感じる今日このごろです。 弊社総務部では、これからバイオジャパン出展とIPSN講演会の本格的な準備が始まります。会場で皆様とお会い できることを楽しみにしながら、準備を進めてまいります。 (金野陽子) 本書の内容を無断で複写・転載することを禁じます。 2015年8月発行 The IPSN Quarterly (第22号・夏) 〒100-0005 千代田区丸の内1-7-12サピアタワー10階 電話:03-5288-5401 ファクシミリ:03-3215-1103 URL: http://www.ipsn.co.jp/ Email: info@ipsn.co.jp 11
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