K INEMA JUNPO R ESEARCH 興行分析 2 月度レポート < 2 0 1 2 年 3 月 1 5 日> 2 月は多少持ちなおすも、 前年比維持にとどまる 大作で幅広い観客を呼び込み、 中規模ヒット作の連打が市場を持ち上げる I NSTITUTE K INEMA JUNPO R ESEARCH I NSTITUTE 興行分析 2 月度レポート 【首都圏ロードショー館の前年同月比は、興収 115.0%、動員 116.2%】 2 月の興行は、東京ロードショー劇場 79 館の集計では、総動員数が 64 万 3889 人、総興収が 8 億 6775 万円となり、前年同月(80 館)比で動員 116.2%、興収 115.0%(ただし、丸の内ピカデリー 2 は未着券などを含んだ成績であり、同館を除くと動員 101.3%、興収 103.3%)。1 月の前年比 が動員 92.7%、興収 92.3%であったことを考えれば多少持ち直してはいるものの、前年並みで は昨年の年間興収 1800 億円強の維持に過ぎない。厳しい見方をすれば、先々のラインナップを 見渡しても 100 億円クラスのビッグヒットは期待が薄く、全体を底上げするような何らかの施策 の必要性を感じる。 【月前半は、「ドラゴン・タトゥーの女」が 20 億円を目指し好スタート では、2 月に封切られた新作はどのようなスタートを切ったか。まず、1 週目の週末に公開され た作品は、「ペントハウス」 (東宝東和)、「日本列島いきものたちの物語」 (東宝)、「荒川アンダー ザブリッジ THE MOVIE」 (ソニー)など。「ペントハウス」は、215 スクリーン、初日 3 日間で動 員 8 万 6108 人、興収 1 億 793 万円と、このクラスのコメディとしてはまずまずのスタートとなっ た。 「日本列島 いきものたちの物語」は、276 スクリーン、初日 2 日間で動員 6 万 8228 人、興収 8021 万円。 「アース」 「オーシャンズ」のようなネイチャードキュメンタリーの流れを汲む日本製 作版で、相葉雅紀、長澤まさみなど人気俳優がナレーションを務めている。テレビ番組内での露 出はかなり多かった多かったが、やはりドキュメンタリーとなると公開規模とのバランスが難し いところだ。「荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE」は 172 スクリーン、初日 2 日間で動員約 4 万 3000 人、興収 5800 万円強。テレビドラマ版と同時製作でコストを抑えたサブカル作品と考 えれば、それなりの結果と捉えるべきだろう。 2 週目には、デヴィッド・フィンチャー監督の話題作「ドラゴン・タトゥーの女」 (ソニー)、「は やぶさ 遥かなる帰還」 (東映) 、 「逆転裁判」 (東宝)などが公開。「ドラゴン・タトゥーの女」は 431 スクリーン、初日 3 日間で動員 22 万 7524 人、興収 2 億 8847 万円と好スタートをきった。 スウェーデン製のオリジナル版が日本でも主にパッケージソフト市場でカルト的な人気を博すな どヒットの下地ができているところへ、デヴィッド・フィンチャー監督の起用も作風にマッチし て、映画ファンを確実に押さえつつ客層を広げていった。10 億円を超えてどこまで興収を伸ばせ るかに期待したい。「はやぶさ 遥かなる帰還」は 311 スクリーン、初日 2 日間で動員 10 万 8945 人、興収 1 億 2821 万円とこちらも順調なスタートとなった。同テーマの昨年 10 月公開「はやぶ さ/ HAYABUSA」 (FOX)の 5 億円を超え、10 億円の大台にのるかに注目が集まる。「逆転裁判」 は 275 スクリーン、初日 2 日間で動員 8 万 5382 人、興収 1 億 1795 万円。東宝としては中規模の 公開となり、こちらも 5 億円を超えてどこまで伸ばせるかがポイント。 【月前半は、「TIME /タイム」が大方の予想を上回るヒット】 3 週目には「TIME /タイム」 (FOX)、 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 (WB) などが登場。 「TIME /タイム」は 427 スクリーン、初日 3 日間で動員 26 万 1161 人、興収 3 億 5101 万円をあげ、週末のランキングでは首位を獲得。ビッグ・スター不在の近未来アクション ながら大方の予想を超えて動員を伸ばし、10 億円台後半を狙う勢いだ。内容に対する評価も高 2 K INEMA JUNPO R ESEARCH I NSTITUTE く、こうした作品のヒットが続くことが市場を底上げすることにつながるだろう。一方、「ものす ごくうるさくて、ありえないほど近い」は 309 スクリーン、初日 2 日間で動員 7 万 3798 人、興収 9481 万円と、アカデミー作品賞ノミネーションながら低調な出だしとなった。 4 週目には、「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1」 (角川)、「アンダーワール ド 覚醒」 (ソニー)とシリーズ作品が揃って公開。前者は 206 スクリーン、後者は 171 スクリー ンとそれぞれにシリーズ前作の実績に合わせて公開規模を絞り、手堅い興行を目指してパッケー ジソフト市場へとバトンをつなぐ。 2 月の興行は、「ドラゴン・タトゥーの女」 「TIME /タイム」と洋画のヒットが続いたが、こう した作品がコンスタントに 20 億円を超えてくると、市場も安定してくる。一方、邦画は前月封切 りの「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」 (東宝)が粘り強い興行を続け、40 億円超えも見えてきた(前 作の最終興収は 45.6 億円)。今後のラインナップを見通すと、前年の年間興収の維持も厳しいと 冒頭で触れたが、 「ALWAYS 〜」のような実績のある大作がしっかりと市場をリードし、「ドラゴ ン・タトゥーの女」 「TIME /タイム」のようなヒットが途切れなく続いていけば、徐々に底上げさ れてくるはずだ。映画の視聴動向は連続性が高く、一度、劇場で映画を見て満足度の高い経験と なれば、次回来場へとつながる傾向が強い。もちろん作品ありきではあるが、そこで魅力的な作 品が連続して上映され、その予告編を見ることがチェーンビューイングへとつながる。大作でふ だん来場しない観客を呼び込み、10 〜 20 億円クラスのヒット作の連なりで連続視聴へと誘う。 興行市場を上向かせるには、こうした流れをもう一度つくっていくしかない。 3
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