第6章 第6章 海外制度調査の結果の概要 海外制度調査の結果の概要 ― イタリアの保健医療の概要と高齢者医療における薬剤師の介入の可能性― 1.背景と高齢者福祉事業の概観 イタリアは、個人主義的傾向の強い欧州にあって、家族責任を基盤とする社会保障 システムが構築されているという特徴をもち、政権交代が生じる度に多少の方向転換 がはかられながらも、家族という社会単位が十分に機能しているという前提の下に、 様々なサービスや現金給付政策が計画実行されてきた。イタリアの社会学者 C.サラン チェーノ(Chiara Saranceno)はこうした社会状況を評し、「地中海レジーム」という 社会構造を提案し、南欧を中心とするイタリア的な社会福祉システムを「家族」、 「福 祉制度の形態」、 「所得水準」などの軸から他の欧州諸国の制度と明確に区別した。具 体的には、「社会福祉システムの家族への深い依存体質と家族政策への貧困が同居し た」社会システムであると評し、併せて、ジェンダー研究の視点から「家庭内におけ る女性のケア負担」について前向きに検討する必要があると断じた。サランチェーノ の「地中海レジーム」に、家族責任という視点から「老人福祉における家族への依存 性の高さ」が日本とイタリアにおける類似性を示すと確認できる。併せて、イタリア においても大都市を中心に核家族化が急速に進行し、家族主義を貫いてきた両国の文 化背景が転換期を迎えているということにも共通点を見いだせるといえる。 こうした類似性は、家族性という社会環境のみではなく、両国の人口構成にも確認 することができる。日伊両国の高齢化率(2000 年)は、イタリアが 18.07%、日本が 17.34%であり、20%台に突入したのが両国ともに 2006 年であった。また、高齢化率 が 30%台に突入するのは両国とも 2033 年と予想されており、統計的にもっとも似通 った少子高齢化社会を抱えているといえる。その意味でも、持続可能な福祉体制を速 やかに構築する必要性に迫られている。 イタリアは、2000 年に「福祉基本法(法律 328 号)legge quadro per la realizzazione del sistema integrato di interventi e servizi sociali」が施行されたが、高齢者福祉については限 定的な記載にとどまり、国家的に統一されたユニバーサルケアを志向するのではなく、 1970 年代から実施されている州やコミューン単位で独自に運営される高齢者福祉制 度を尊重し、「より包括的な団体はより小さな団体で効果的にできない事務のみを補 完的に担当する」という補完性の原理が貫かれた。したがって、イタリアの高齢者福 祉事業は、州によって大きな差異が観察できる。たとえば、住民ひとり当たりの高齢 者事業への支出を州単位で考察してみると、スイス国境にあるヴァッレ・ダオスタ州 の 805.8 ユーロを最高として、南部に位置するカラブリア州の 19.1 ユーロまで、実に 800 ユーロもの幅が生じていることが分かる。しかし、この差異も、補完性の原理と 住民の要請に基づいたものである。したがって、福祉事業が十分に整備されていない 州であるからといって住民が満足していないというわけではない。州の現状に合わせ て、支払い者である選挙民たる住民によって選ばれた州政府が政策決定したシステム - 227 - に基づいて高齢者福祉事業が展開されている。一般的には、支払いや福祉事業の内容 などに南北格差が考察することもできるが、南部イタリアは、まだ、大家族主義と家 族による責任分担が温存されているという側面があることも考察できよう。 なお、こうした福祉事業については、後述するが、税方式によって賄われ、州の事 業については、間接税である州生産活動税(IRAP)を財源としている。 2.医療制度の概要 イタリアの医療制度は、1978 年に税方式による国民保健サービス方式(SSN)Servizio Sanitario Nazionale が導入されたが、完全な形となったのは 1998 年となってからであ る。全国的な医療給付の最低水準を国が示してはいるが、前項でも述べたように州に 大幅に権限が委譲されている。州によって給付内容に独自性をもたせることが可能で あり、実際に、薬剤給付の一部負担金の有無や 2 次医療サービスを受療する際の一部 負担金の額の大小などに差がみられる。 SSN を実際に運用しているのは州政府である。歴史的には、県やコミューネの権限 が強い時期もあったが、2001 年の憲法改革によって、保健分野の立法権限は州にある と確認され、州政府の権限強化が名実とも明らかになっている。 SSN は、州税を基本として賄われており、国からの財政補助はほとんどない。財源 は、州の間接税である IRAP imposta regionale sulle attivita produttive であり、そのうち の 0.9%が SSN に使用されることになっている(州の状況に応じて 1.4%まで増加が可 能) 。この他にも、州の直接税から転用されることも許されていて、州の提供する様々 な付加的サービスの実施状況に応じて、税収移転による予算充足ばかりではなく、利 用者に一部負担金を課すなどして財源を強化している。 SSN の保健政策立案の青写真は連邦健康保健・労働・社会政策省が国として立案す る。しかし、国は、全国保健計画(PSN)Piano Sanitario Nazionale という全国レベル で保障される保健水準を提示するにとどまる。この PSN に基づき各州政府が、州保健 計画(PSR)Piano Sanitario Regionale を策定し、より具体的な地域保健計画を立案す る。ただし、PSR は必ずしも PSN に沿ってはいないのが現状である。それほどに州の 権限が大きいともいえる。しかし、この背景には、保健政策が地域に依拠してきた長 い歴史がある上に、長い年月、この地域間格差を放置していたという事実もあり、一 朝一夕にして全国均一の医療制度を構築するのは難しいという一面もある。したがっ て、PSN にしても内容的には解釈の幅があえて広いものとしている。 なお、この PSR に基づいて州内の保健行政が策定されるが、実際の保健医療サービ ス給付の担い手は、地域保健公社(ASL)Aziende Sanitaria Locale である。ASL は、州 内をいくつかに分割した医療圏ごとに設置され、その地域の保健行政を監督させてい る。 たとえば、エミリア・ロマーニャ州の場合には、6つの ASL(エミリア・ロマーニ ャ州では、ASL とは呼ばず AUSL(Azienda Unita Sanitaria Locale)と表記される)が - 228 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 設置されており、概ね州内の県の配置と一致している。各 ASL は、PSR に基づき、管 轄地域の状況を鑑み、独自の医療サービスを展開することができる。したがって、イ タリアの医療サービスは、州ごとの差異はもちろんであるが、先進地域にいけばいく ほど、ASL 管轄地域間の差異も大きくなるといえる。 本調査においても、連邦健康保健・労働・社会政策省を訪問したが。保健プログラ ムの詳細については、州やコミューンによる差異があることを認めており、一般的な 事項以外は州に確認してほしいという趣旨の発言が多かったという感がある。本調査 では、北部のエミリア・ロマーニャ州と中部のラッツィオ州を実地調査したが、保健 の実際の取り扱い部分に差異があることが確認されている。具体的に確認されたのは、 薬剤分野では、処方せんの有効期限、記入方法、取扱い方法、薬剤の一部負担金、医 薬品のカテゴリーごとの制約事項などに差異があった。しかし、以下の概要説明では、 イタリア全国で概ね同一と思われる範囲について述べることとする。 イタリアでは、医療給付を受けるに先だって、国民はかかりつけ医(一般開業医)を 指定し、そのドクターの名前を ASL に登録する必要がある。国民の一般開業医の選定 は自由であり、また、開業医も正当な理由があるならば、国民から「かかりつけ医」 の申し出に対して拒否することもできる。この場合は、誰かのほかの開業医をみつけ ることになる。かかりつけ医指定を拒否する理由でもっとも多いのは、開業医に課せ られた人数規制によるものが多い。イタリアの開業医は、住民 1,500 人(小児科医 800 人)までしか登録させることができないとされているが、開業医が集中する大都市な どでは登録患者が 1,000 人にも満たない開業医も多い。なお、開業医への報酬は、登 録された患者の数に応じて支払われており、実際に診療した数や回数は報酬に反映さ れていない。しかし、州によって差はあるものの、診療の内容などを評価した「評価 報酬」という変額部分が加算されることもあり、制度上は、医療の質も評価されるよ うなシステムになっている。 たとえば、開業医の処方があまりに杜撰で、平均的な開業医よりもあきらかに処方 薬が多い開業医にはペナルティーを課すこともある。このような場合には、患者に処 方した薬剤費は開業医が負担することとなるので、開業医の収入は実質上マイナスと なる。 健康保健・労働・社会政策省によれば、女性患者の言うなりに処方していた男性開 業医の例などは、これまでもよくあったと述べている。このような平等性を欠くよう な医療給付を防止する意味も含めて、薬局は、健康保健・労働・社会政策省に毎月の 医薬品売上(SSN)の状況をすべて報告する義務があり、同省は、イタリア国内の医 薬品流通動向を完全に把握しているという。同省は、こうしたデータを積極的に活用 し、前述した過剰な処方例を排除するばかりでなく、薬剤価格の適正化に向けた根拠 データとして活用している。 高度医療や専門医療へのアクセスについては、開業医の紹介がなければ受療できな いシステムとなっている。患者は、かかりつけ医である開業医に紹介状(処方せんと 同じ様式)を発行してもらい、この紹介状をもって ASL と提携する予約窓口 CUP に - 229 - 赴き、指定された高度医療や専門医療を予約する。このとき州によっては、チケット と称する負担金を支払う必要がある場合もある。エミリア・ロマーニャ州の場合には、 2009 年 9 月現在で、予約 1 回につき 18 ユーロが必要となっていた。なお、医師が必 要と認める検査も CUP にて予約することになっている。CUP は、ASL が提供する医 療扶助予約システムであり、公的病院、ASL、薬局、ASL の医療施設などにその窓口 が用意されている。 残念ながらイタリアでは、高度医療・専門医療へのアクセスには時間がかかり、平 均的な待ち時間は 1 カ月以上となっている。この待ち時間を解消することが、今後の イタリアのカギとなってくると考えられるが、利用者であるイタリア国民は、現状に 概ね満足しており、急速な改善がなされると考えにくい状況である。 3.高齢者福祉制度の概要 高齢者福祉事業の担い手も州政府に権限委譲されている。日本のような介護保険制 度は設置されておらず、福祉事業は税金によって賄われている。福祉事業については、 先述した州税以外にも、州による格差を是正する目的から国税が投入される場合もあ る。 先述したように 2000 年の福祉基本法の制定によって、福祉全般について国家レベ ルで最低限の保障がなされたが、高齢者福祉については、具体的な事項は示されてお らず、州の判断に大幅に委ねられる格好となった。エミリア・ロマーニャ州やロンバ ルディア州などのように 1970 年代より積極的に高齢者福祉事業に力を入れてきた州 の提供する高齢者介護サービスは非常に充実している一方で、十分な供給体制が構築 されていない州も存在しており、医療分野以上に地域間格差が生じている。しかし、 高齢者福祉事業の充実は、増税なくして図られるものではなく、地域住民の求めるも のと租税が許される範囲でサービス展開がなされていると考えるのが適当である。 国は、提供されるべき最低限の介護サービスの基準を示しており、このレベルを下 回ることのないように連邦基金より補助金を拠出するなどの策を講じている。 提供されるサービスは、図表 6-1-1 に示したように現金給付と現物給付の2つに分 かれている。 - 230 - 第6章 図表 6-1-1 エミリア・ロマーニャ州の高齢者福祉サービス 現金給付 居住サービス 現物給付 海外制度調査の結果の概要 デイサービス 在宅サービス 介添手当 国 介護手当 州 RSL residenza sanitaria assistenziale ASL CP casa protette コムーネ CD casa diurni コムーネ CP casa protette コムーネ ADI assistenza domiciliare integrata コムーネ ADSC 社会的在宅援助サービス コムーネ 2009 年 9 月に作成されたボローニャ保健公社の資料に基づき作成 現金給付は、国が主体となっている「介添手当(indennita di accmpagnamento)」があ り、完全なる要介護者であるという前提条件をクリアする必要があるが、基準に達し ている要介護者は給付対象となるという全国的に統一された制度である。州レベルで は、 「介護手当(assegno di cura)」を用意している州もある。介護手当は、コムーネごと に実施され、介護度レベル、所得などによって支給レベルが決定されている。 それでは、下記にエミリア・ロマーニャ州の高齢者福祉サービス事業について簡単 にまとめることとする。 4.高齢者福祉事業と薬剤師 イタリアにおいて、これまでは、薬剤師が薬局以外の場所にて調剤を含む医薬品の 販売をすることは法律で禁止されていた。したがって、薬剤師が、老人介護施設や在 宅に赴き、老人施設を巡回する医師の残した処方せんに基づき調剤をすることはもち ろん医薬品を販売することは法律的には不可能であった。もちろん、患者の求めに応 じて、医薬品を配達することはあったが、あくまで薬局内で調剤をした後に届けると いうものであった。また、配達をしても、それは単なるサービスの一環であり、手数 料を請求することはできなかった。これについては、健康保健省の見解では、「マー ジンとして計上される薬局の手数料部分にこうしたサービスも含まれるものと考え る」とされていた。したがって、医薬品を配達するとしても、薬剤師本人が出向くと いうよりは、薬局に勤務するアシスタントや事務職員などが配達するという程度のも のであり、薬学的なサービスがそこに内包されてはいなかった。 しかし、高齢化社会が進行し、これまでのような家族に依拠した高齢者介護システ ムだけでは福祉事業が成立するのは難しくなり、薬局も含めた既存の社会インフラを 十分に活用しながら新たな社会福祉システムを構築する必要性に迫られてきた。そこ で、2009 年 7 月に制定された委任立法 69 号 Decreto Legislativo 69(D.lg.69)であり、こ の法律で、薬剤師および薬局の在宅介護サービスへの一層の関与が可能となることに - 231 - なった。D.lg.69 では、薬剤師の職能活用の方法として下記のサービスが考えられてい るとされる。この法令は、現在、薬剤師会(FOFI)、薬局ギルト(Federfarma)、保健 省との間で最終協議がなされており、具体的なサービス内容やその報酬については 10 月 8 日の最終決定をもって明らかにされる。しかし、先述したようにイタリアの保健 福祉サービスは、各州に権限委譲されていることから、各州における実際的なサービ スの内容や具体的な報酬額については 2010 年春以降にならないと明らかにならない と考えられている。 ① 薬剤師の在宅介護サービス ② 薬局におけるコメディカルの活用 ③ 薬局における簡単な臨床試験の実施 ④ 薬局における地域医療サービスの提供 ⑤ 薬局を教育施設として活用 このなかでもっとも注目されるのが「在宅介護サービス」であり、これまでの「宅 配サービス」を超えた薬学的なサービスを付与することによってより専門家としての 関与を意図したものと考えられている。 具体的には、患者宅に赴き、患者の服用状態を確認すると同時に、患者の健康状態 も確認し、医師と連絡を密にすることによって、患者の健康増進に寄与するというも のである。当然のことながら、在宅サービスに赴く開業医との連携も必須となる。ま た、このサービスを薬局が実施するにあたって、開業医だけの判断だけで実施できる のか、あるいは、先述した州の UVG(老人評価機構)による評価基準をベースに訪問 対象患者を絞り込む方式とするかなど具体的な基準は交渉中であり、できるだけ明確 な基準が制定できるように働きかけているということであった。しかし、詳細がはっ きりするのは、2010 年以降ではないかという意見が、ボローニャ市薬剤師会、イタリ ア薬剤師会(FOFI)および Federfarma すべての組織から聞かれた。また、薬局ギルト (Federfarma)の話によれば、このサービスに対する報酬をどの辺りに落ち着かせる かが 2009 年 9 月末現在の論点であるということであり、サービスの内容的な話より も報酬部分の話が先行しているという印象を受けたが、これも州権限との兼ね合いと 考えられる。 また、併せて活発な議論にあるのが、薬局に看護師を配置し、薬局を地域プライマ リーケアーの担い手として活用していこうという話である。現在の法律では、薬局で 勤務できる人員に看護師と明記されておらず、看護師を薬局に配置すること自体が法 的には不可能である。しかし、法律を新たに制定し、看護師を含むコメディカルが薬 局で勤務できるようにすることによって、薬局機能を拡大させ、簡易な検査や処置に ついては薬局で対応できるようにしようという考えである。こうした政策が立案され る背景には、イタリアにおける 2 次医療アクセスへの待機時間の長さが考えられる。 薬局への看護師配置問題については、看護師会および薬剤師会は賛成の意向を表明 - 232 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 し、積極的なロビー活動を展開してきているが、薬局経営者の集まりである薬局ギル ト(Feder- Farma)は頑強に反対しており、昨今の情勢は、看護師配置問題は先送りと なる模様である。 なお、簡易的な臨床検査については、すでに薬局で実施されているが、血糖値、 HbA1C、高脂血症、血圧などの検査のみである。薬剤師会は、これより一歩踏み出し、 専門医療への受診勧奨など薬局が担うことを目標とし、すでに提供している高次医療 機関の予約サービス(CUP)と合わせれば、薬局の地域における存在はゆるぎないも のになると考えているようである。したがって、薬局経営者協会である Federfarma と の意見対立によって、看護師配置が遠のくことによって、高次医療への薬局の一層の 関与という当初の目標は若干遠のいたといっても過言ではなかろう。 FOFI 会長の Leopardi 氏の個人的な見解では、 「看護師配置が可能となることによっ て、薬局のビジネスモデルが刷新され、高齢者医療へもさらに薬局が関与する可能性 が広がる。なんといっても地域をもっとも理解しているのは薬局であるという事実に 間違いはなく、このような医療機関を利用しない手はない」と述べているが、こうし たサービスの拡充には数年を要する見込みである。 最後に、薬局における「高次医療機関予約サービス」について触れる。 先述したように、高次医療機関および専門医療機関の診察を受けるには、かかりつ け医による指示が必要とされている。実際には、かかりつけ医が、処方せんとして使 用される書式と同じ用紙に、必要とされる高次医療機関の具体的な診察科や検査内容 を記載し、これを患者が、ASL の設置した CUP と呼ばれる医療機関予約サービス端 末があるサービスステーションに持参する。そして、担当者が患者と相談しながら、 端末に表示される空き状況を確認しつつ、処方せんにある診療科や検査などの予約を とるというシステムになっている。これまでは、ASL の事務所や ASL の経営する公 的病院および地域病院公社などにしか端末が設置されていなかったが、予約をとるた めの待ち時間が長い上に、診察までの待機時間が長いということで利用者の不満が募 っていた。そこで、住民 5,000 人を目途に 1 軒存在する薬局を CUP の窓口として利用 するようになり現在に至っている。しかし、薬局に CUP が導入されたのはここ数年 のことであり、すべての薬局にすべからく導入されているという状態にまでは至って いない。ボローニャ市の ASL の担当者の推測では、70%くらいの薬局に導入済みであ るということであった。薬局における CUP 利用者からの評判がよいという。その最 大に理由は、身近な専門家が親身になって予約を手伝ってくれるということにある。 ASL の事務所の場合には、見も知らない窓口職員に予約を手伝ってもらうので当たり はずれもでてくるが、かかりつけの薬局であるならば、オープンに自分の希望を言い やすいということもあるのではないかと ASL の担当者は分析している。こうした背景 も鑑み、今後も、薬局への導入を進めていきたいということであった。 なお、現在のところイタリアにおいてはかかりつけ薬局制度のようなものは存在し ていない。しかし、上記に挙げた高齢者福祉に関連する在宅支援サービスに薬剤師が 関与するような場合には、患者が在宅サービスを受ける薬局をあらかじめ指定すると - 233 - いような制度にすることが考えられているようである。これは、イタリア版のかかり つけ薬局制度の始まりともいえ、今後の動向に注視する必要があると考える。 5.訪問調査報告 1) AUSL Bologna(地域健康公社ボローニャ) 高齢者福祉事業にて述べたように、イタリアでは、福祉事業については州に権限が 委譲されている。各州の福祉事業において、その中心的な役割を担うのが各地区に設 置されている ASL(地域健康公社)である。本調査では、エミリア・ロマーニャ州の 福祉事業全体を調査する目的から同社を訪問し意見聴取を実施した。 エミリア・ロマーニャ州は、2002 年の福祉基本法制定以前より高齢者福祉事業に力 を入れてきたという歴史があり、現在でも、イタリアにおける福祉先進地域である。 とくに同州では、州が提供するサービスの幅が広いことで知られ、在宅介護サービス から居住型福祉サービスまできめ細かにサービスが提供されている。詳細については、 翻訳資料を参考にされたい。 また、ASL からの聞き取りでも強調されたのが、イタリア全般に病院の平均在院日 数が短いことであった。現在のボローニャ域内の平均在院日数は、ASL の担当者によ れば概ね 7 日前後であり 5 日くらいまで減少させているかもしれないということであ った。病院は、急性期病院として機能させ、療養病床は、中間型施設である CP など で受け持つという考えが基本にあり、結果的に、病院の平均在院日数はできるうる限 りで減少させているという。しかし、平均在院日数を減らしても、病院診療までの待 機時間は解消されていない。病床を増床し、待機時間を減らすという必要性を感じて いないのかという問いに対して、「優先度をつけて対応しているので、いまのところ 待機時間が長いことによる医学的な問題は生じていない。また、住民も、待機時間が 長いことに不満はあるものの租税とのバランスを考えて納得はしていると考えてい る」と回答している。 なお、同地域における薬剤師の老健事業への関与については、在宅患者への薬剤師 のデリバリーサービスや在宅で治療を受療しているがん患者への薬剤投与サービス に限られているということであった。高齢者施設で、医療サービスが提供されている 施設へは、基本的に ASL より直接医薬品を供給しており、開局薬剤師が関与すること はないということであった。高齢者施設に ASL より直接納入している理由は、「ASL で購入する場合には、製薬会社から直接購入するので、取引価格が薬局での販売価格 の 50∼70%割引された額に抑えられる。このため医療費抑制に大いに貢献できる」か らだということであった。また、 「薬局からは、 「高齢者施設や病院への医薬品および 医療資機材納入も薬局に任せないのは不当」という要望が大きいのは了知しているが、 変更する予定はない」という意見も確認できた。 - 234 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 2) Villa Serena セレナ館 (RSA 20 床、CP30 床) 私立病院が母体となり設立された民間の高齢者福祉施設である。CP では、33 日以 内の滞在のみしか許されておらず、主に、母体の病院からリハビリ等も含めて回復期 の患者を受け入れる施設として機能している。RSA は、主に認知症の患者を受け入れ ており、現在の待機患者数は、200 人弱ということであった。 薬剤師の配置はないということであった。施設長によれば、エミリア・ロマーニャ 州の基準では、100 床を超える施設については、薬剤師を 1 名配置する必要があると されているが、同施設は 100 床なので、設置義務はなく、医師が実地に管理している という。出入庫管理については、警察および ASL の担当者が抜き打ち検査を実施して いるということで、医薬品管理は厳に行われているということであった。 3) Ordne Framacisti di Bologna ボローニャ薬剤師会 薬局を取り巻く現状について確認するために訪問した。エミリア・ロマーニャ州は、 すべての州に先んじて高齢者福祉事業に取り組んできた歴史があり、薬剤師会として も同様に高齢者の在宅ケアに関与してきたという自負があるということであった。具 体的には、薬局に医薬品を取りに来るのが不可能な患者については、薬局が届けるの は当然のこととであったという見解が得られた。また、がん患者の疼痛治療が在宅で 実施される場合に、薬剤師が医師とともに患者宅に出向き、薬学的なフォローをする サービスも実施されており、このようなサービスが制度化されたのは、同州の薬剤師 が制度化に先んじて積極的に在宅患者のケアに関与してきた証であるということで あった。 薬局実務についても、他州に比べて先進的であることが考察された。 たとえば、一般的にイタリアの処方せんの有効期間は 1 カ月であり、一枚の処方せ んに 3 種類の医薬品しか記入ができず、また、通常は、それぞれ 2 箱までしか処方す ることができないとされているが、ボローニャでは異なっていた。ボローニャでは、 慢性疾患に対応する処方せんの有効期間は 6 カ月とされており、医師が処方せんに数 量を記載していない場合には、患者が 6 箱までならば、自由に数量を決めることがで きるとされていた。また、分割調剤を希望することも可能であり、分割調剤の場合に は、調剤済みの数量を記入し、その処方せんを患者に返却するという方法がとられて いた。なお、この返却された処方せんは、必ずしも同じ薬局で調剤してもらう必要は なく、エミリア・ロマーニャ州内であれば、どこの薬局であっても調剤に応じること になっているという。急性期疾患の患者の場合にもほぼ同様であるが、有効期間は 1 カ月となる。この場合、医師が数量の記載を忘れると、3 箱まで調剤できることにな るというが、このような場合には、必ず医師に疑義紹介をして、数量のチェックをす るようにしているということであった。 ただし、向精神薬などで指定されているものが処方されている場合には、処方でき - 235 - る数量が 2 箱までと限定されるということであった。 イタリアにおける調剤は、ドイツのような標準包装型の調剤ではなく、小包装調剤 であり、製薬会社は、1成分につき1つの小包装しか製造していない。この包装内容 数を確認しながら、患者に必要な数量の目途を計算し、医師が箱数を処方せんに記載 することになっている。 なお、ジェネリックへの変更については、薬剤師に説明義務があるとされている。 また、患者側にも、ジェネリックがあるにも関わらず先発品を希望する場合には、そ の差額を実費負担させるという制度が導入されているということであった。ジェネリ ックにかかる制度については、イタリア全土で共通であり、州による違いはないとい うことであった。 4) ASP Giovanni XXIII 医療福祉保護施設ジョバンニ 23 世 (RSA 25 床, CP75 床) 歴史的には、ボローニャの裕福な市民の寄付によって開設された福祉施設であり、 中世からの歴史をもつ。主に、認知症患者を受け入れているということであった。現 在は、公社となっているが、元来は、ボローニャ市の施設であったという歴史もあり、 広く一般に開放され利用されるようにしているということであった。 入所にかかる費用は、自己負担部分として、宿泊費として 1 日 50 ユーロ、看護手 当が必要となる場合には、さらに 52 ユーロが加算されるということであった。 この施設は、100 床を超える施設でありながら薬剤師は勤務していなかった。やは り医師が医薬品の管理をしているということで、セレナ館と同様にして、ASL から直 接医薬品の供給を受けているということであった。 調査団より「100 床を超えると薬剤師が必要だということだが?」という質問をし たところ、 「そのような規制はないはずだが、100 床規制があるのは、病院や医療介護 施設などの医療施設のはずである」と断言された。この辺りについては、可能であれ ば、詳細な追加調査が必要であると考える。 5) イタリア薬剤師会 FOFI 7 月に制定された D.lg.69 の取り扱いについて質問した。新型インフルエンザ対策会 議が連邦保健省で開催されるという忙しい中で対応してくれた。 FOFI としては、薬局における看護婦の配置を明文化させる方向で活動しているが、 10 月 8 日の最終決定では、否決される目算が大きいということであった。今回は逃し たとしても継続的に政策立案に向けて交渉を続けていきたいということであった。 目下の問題は、10 月 25 日に欧州裁判所で判決が下る「薬局設置の距離規制」問題 の設置許可確認訴訟であり、この判決の如何によっては、イタリアの距離規制や設置 規制が撤廃されることとなり、薬局の生存権を脅かされることになるとして注視して - 236 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 いるということであった。 6) イタリア薬局ギルト Federfarma 薬局経営者の集まりである Federfarma は、初めての訪問となった。ジェネリック使 用を含めて多くの問題について質疑応答がなされた。注目すべき見解は、Federfarma が、看護師の薬局配置に反対であるということであり、その理由は薬局にさらなる人 件費が付加されることを避けたいということであった。 7) イタリア保健・労働・社会秩序省 OECD および国際担当の担当官が応じ、医療制度、医薬品の承認制度などについて 説明を受けた。資料に基づきプレゼンを受けるだけのものであった。 イタリアの医療保険制度は、州に権限が委譲されており、詳細は州レベルに確認を しなければわからないということを確認する会見となった。 - 237 - 資料1 ボローニャ市における高齢者への経済的支援措置について ボローニャ市のインターネット・ネットワーク “Iperbole” のホームページの 項目である「 高齢者(65 歳以上)- Anziani (over 65) - 」 より抜粋 (医療・保健や在宅支援と関連が薄いサービスおよび各サービスの関連法規は省略) http://informa.comune.bologna.it/iperbole/salute/servizi/12:672/ 経済的支援措置 介護手当 Interventi di sostegno economico Assegno di cura 介護手当は、高齢者を自宅で支援するために給付される経済的援助。自宅介護を促進するため と、施設への入所を減少させるためという二つの目的の間でとられる措置である。 申請資格 ・ ボローニャ市内に在住し、住所登録をしている人 ・ 65 歳以上か、50 歳以上で老人病の症状がある人 ・ 2004 年 12 月 20 日公布の州法令 2686 号(Direttiva Regionale 2686 del 20 dicembre 2004)で定めら れた所得 申請方法 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。給付金が認可される かどうかは、受給者となる老人の社会的・経済的状況からだけでなく、地域老年医学評価機構 (Unità di Valutazione Geriatrica Territoriale、略称: UVGT)の評価によっても判断される。 利用者カテゴリー 高齢者 必要書類 調整経済状態指数 (Indicatore della Situazione Economica Equivalente 略称:ISEE) 医師の診断書 (Certificazione sanitaria) 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内で手続きが済み、その後 UVGT の評価を受けるのに最長で 90 日か かる。 契約書に署名した後、地域保健公社 (Agenzia di unità sanitaria locale)から給付金が支払われ る。 - 238 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 休養ホーム、保護ホーム、保健・援助型介護施設、保護アパート等施設への 入所費用援助 Contributo al pagamento della retta per strutture residenziali per il ricovero in Casa di Riposo, Casa Protetta, Residenza Sanitaria Assistenziale e Appartamenti Protetti 地区(Quartiere)は、協定を結んでいる高齢者介護施設(休養ホーム、保護ホーム、 保健援助施設、 保護アパート) への入所費用が支払い不可能な者に対して、援助金を給付する。給付金は、 高齢 者の年金の税引後手取額に応じて、費用全額の場合と一部の場合があり、 申請者本人だけでなく 法律で規定された扶養義務者である親族の経済的状況も考慮される。この給付金は前払い金と考 えられ、受給者が入所後に財産や不動産を所有することになった場合、その時点まで地区を通じ て費用を負担した市に対して全額あるいは一部を返金する義務がある。 申請資格 ・ ボローニャ市内に在住し、住所登録をしている人 ・ 65 歳以上か、50 歳以上で高齢者と似た症状を持つ人 申請方法 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。 必要書類 高齢者本人と法律で規定された扶養義務者である親族の所得証明書 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内 - 239 - 在宅支援サービス 住宅環境の適応 Servizi e interventi domiciliari Adattamento domestico 住宅環境の適応とは、自立生活が不可能な人や障害者や高齢者の住宅を自立性や介助の必要性 に合わせ、家族やソーシャルワーカーによる自宅での支援に適したものにする一連のサービスで ある。高齢化と自立生活が不可能な事例の増加にしたがい、ますます広まってきた支援である。 以下の点に関する一連のサービスを提供する。 ・ 建築上の障害の除去 ・ 自立生活を可能にする方法の採択や補助器具の設置 ・ ホームオートメーション ・ 住宅環境の安全とその管理 ・ 設備の自動化 通常、以下に挙げる異なる規定に従って実現される。 ・1989 年法律 13 号 (legge 13/89):個人住居における建築上の障害除去のための給付金 ・1997 年州法 29 号 10 条 (legge regionale 29/97):重度の障害者に対して、自宅での生活を持続す るための州からの給付金 ・ 「人工的補欠物と補助器具の料金一覧 - 1999 年省令第 332 号-」( Nomenclatore tariffario degli ausili e delle protesi" -DM 332/1999- ) に含まれる補助器具の使用を許可するための地域保健公社 (ASL)のサービス。 2007 年 8 月から、上記に加え、自立生活不可能者への資金に関する州決議(2007 年エミリア・ ロマーニャ州協議会決議 1206 号 - Delibera Giunta regionale E.Romagna 1206/2007- )で規定された 「住宅環境の適応措置」が開始される。これは、高齢者と障害者への地域サービスによって企 画・発展され、ボローニャ県住宅環境適応センター (Centro provinciale per l'adattamento dell'ambiente domestico 略称:CAAD) からの助言と監修を得て実現された。また、この措置を実施するために、 ボローニャ地域保健公社によって規則 (Regolamento Adattamento Domestico ) が整えられた 。 住宅環境の適応は、多様な分野の専門家(医者、理学療法士、ソーシャルワーカー、エンジニ ア、建築家、測量技師、職人、器具設置担当者など)の協力を得ることによって、社会的、保健 的、建築技術的なサービスを統合するものである。 住宅環境の適応に関する情報は、ボローニャ県住宅環境適応センターまでお問い合わせのこと。 Servizio CAAD, centro provinciale per l'adattamento dell'ambiente domestico del Comune di Bologna Sportello informativo c/o CRH via della Grada 2/2 40122 Bologna tel. 051/2194353 e-mail: caad@comune.bologna.it 火曜日 9:30∼12:30 木曜日 10:00∼13:00 (電話受付のみ 051/402255) 利用者カテゴリー 高齢者、障害者、専門職業人 利用者詳細 ボローニャ県在住者で、自立性の向上や家族・ソーシャルワーカーの介助活動を容易にするこ とを目的とする人であれば、障害の重度やねたきり度に関わらず、利用者として申請できる。 必要書類 ・ 申請者の障害度に関わる医師の診断書 ・ 適応措置を希望する住居の詳しい見取り図 - 240 - 第6章 在宅支援費用の割引 海外制度調査の結果の概要 Assistenza domiciliare a tariffe agevolate この支援は所得額に関係なく受給でき、ボローニャ市と協定を結んでいる次の二つのサービス 提供者に対して申請することができる。 1. servizio AIDA 2. servizio HOPE 在宅支援サービスの希望者は、以下に直接問い合わせること。 1. servizio AIDA Via Lame, 116, Bologna, telefono 051-6493418 e 051-522066, e-mail: aida@aclibo.it http://www.aclibo.it/assistenza_anziani.htm 2. servizio HOPE via Paolo Frisi, 9/a, Bologna, telefono 051-328467, e-mail: hope@epta.coop http://www.progetto-hope.it/ 申請書提出後、オペレーターが無料で居宅を訪問し、個別のサービスプランを立てる。プラン は、申請者と家族のニーズや支払い可能額との関係で決められ、申請者と家族の間で共有される。 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 手続きに要する期間 オペレーターによる最初の訪問を受けるまでの時間や、サービス開始までの待ち時間について は、サービス提供者に直接問い合わせること。 費用と支払い方法 費用は、サービス実施時間に基づいて計算され、サービス提供者と受給者の間で直接交渉した うえで契約が結ばれる。 1. AIDAの料金は、一時間12ユーロ。 2. HOPE の料金は、サービスの種類によって変わり、一時間 11,35 ユーロ∼ 42,02ユーロ。 サービス内容 1. Servizio AIDA ・評価や専門的助言、社会福祉に関する事務処理(無料) ・居宅における協力サービス ・居宅における専門的な介助サービス ・ ボランティアによる 社会化を促す活動(無料) 2. Servizio HOPE ・評価や専門的助言、 社会福祉に関する事務処理 (無料) ・器具の設置や環境適応に関する評価や専門的助言 ・居宅における専門的な介助サービス ・専門看護師、療法士、言語聴覚士、一般医、運動機能回復訓練専門医や、その他の専門医によ る専門的な支援サービス ・救急病院での医療 ・ボランティアによる 社会化を促す活動(無料) - 241 - 高齢者の在宅介護 - Assistenza domiciliare anziani 在宅介護サービスの目的は、自立性に制限のある高齢者が自宅での生活を続けていけるように することである。このサービスでは、高齢者の清潔介助と世話、 居住場所のメンテナンスと毎日 の家事、社会との融合促進などに関して必要な支援を行い、実用能力と人間関係力の維持あるい は回復を目指し、社会福祉に関する事務処理を請け負う。 このサービスの対象は、65 歳以上の高齢者あるいは 50 歳以上で高齢者と似た症状を持つ人 と なっている。 申請方法 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。 利用者カテゴリー 高齢者 必要書類 ・経済的状況を証明する書類・・・前年度の所得申告に関わる様式 ‘730’ ‘UNICO’ または ‘CUD’(公務員の所得証明書)、前年度の家賃の領収書、その他の社会・援助費用を証明する書類 こういった書類は、費用負担額を決めるために必要になる。 ・医師の診断書 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内 費用と支払い方法 費用は申請者および 申請者と同居する高齢者 一人当たりの収入によって定められる。支払いは、 MAV (pagamento Mediante Avviso —通知による支払い—) の振り込み用紙あるいは RID(Rapporti Interbancari Diretti —銀行口座からの自動引き落とし—) によってなされる。 サービス内容 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 高齢者の清潔介助と世話 自宅内および自宅外での移動 付き添い 買い物 食事の準備あるいは配達 家事手伝い 服薬の管理 社会福祉に関する事務処理 社会化への支援 地域におけるほかのサービスとの相互協力関係構築 - 242 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 総合的在宅介護 Assistenza domiciliare integrata - ADI このサービスは、かかりつけの一般医、専門看護師、ソーシャルワーカーによって実行される。 以下のような援助が可能である。 ADI 1: 医療度が低いもので、長期間にわたると予想される基本的な支援(一般医とソーシャ ルワーカーによって行われる在宅支援)が行われる。このようなサービスは、申請者が直接申し 込みするものではなく、かかりつけの一般医と居住地区 (Quartiere)のソーシャルワーカーが共同の 支援計画に同意し、書類に署名することによって、連携して実施するものである。 ADI 2 または ADI 3: 医療度が中程度あるいは高いもの。重度の症状を抱えた人を対象とす る(一般医、看護サービス、専門医、リハビリ専門医、在宅支援サービスが関わる)。このよう なサービスは直接申し込みするものではなく、かかりつけの一般医の要請で、特定の手続きに従 って行うものである。場合によっては、病院やソーシャルワーカーや専門看護師からの報告を通 じて、 サービスが開始されることもある。ADI 2 または ADI 3 の場合、地域保健公社 (Ausl)を通し て市から在宅支援のサービスを無料で最長 40 日間受けることができる。 ADI 2 または ADI 3 の在 宅支援サービスを行うかどうかは、ADI のサービス開始直後の数日間のうちにソーシャルワーカ ーが自宅を訪問し、判定する。引き続き支援が必要だとされた場合、継続性を保証しつつ、居住 地区の在宅支援サービスを実施する。 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 利用者詳細 65 歳以上か、老人病の症状を持つ成人 必要書類 ADI 2 か ADI 3 の場合、 地域保健公社 (Ausl) は経済的状態に関する書類の提出を要請しない。 ADI 2 か ADI 3 を初めの 40 日以降も継続する場合と、ADI 1 の場合には、経済状態を証明する書 類( 前年度の納税申告に関する様式 ‘730’ か‘UNICO’、 あるいは 'CUD ‘, 前年度の家賃の領収書、 その他の社会・援助費用を証明する書類)と医師の診断書を提出する必要がある。こういった書 類は、費用負担額を決めるために必要になる。 手続きに要する期間 地域保健公社(Ausl)の社会援助サービスによる ADI 2 または ADI 3 は、ソーシャルワーカーによ る自宅訪問での認定後、数日中に開始される。 再評価と負担額決定のための調査がなされた後 、 ADI 2 か ADI 3 の形体での在宅支援サービスが引き続き行われる。 ADI 1 の在宅支援サービスは、申請書提出から 60 日以内に開始される。 費用と支払い方法 基本的な支援サービスに関しては、 地域保健公社 (Ausl) からの給付金がある場合を除き、サー ビス受益者の側の経済的負担が見込まれている。 - 243 - 高齢者のための在宅ボランティア活動 Attività di volontariato domiciliare svolte a favore di anziani ‘AUSER’ は、 孤独・親族との別居・排除に立ち向かうための連帯とサービスの自主管理を目的 とした協会であり、高齢者対象の大学 “Primo levi”とも協力しながら、相互交流の理念に基づいて 人間関係を築き、人間の教養育成を促す。各地区(Quartiere)の在宅支援をバックアップする活動 (ちょっとした買い物や、社会福祉に関する事務処理、諸手続の処理、社会化活動、診療への付 き添い)や、高齢者のためのデイケアセンターでの支援活動を行い、図書館、美術館、緑地など で社会の役に立つ活動をしている。 AUSER のボランティア職員は、社会サービスからの要請に応じて、または協定任務として、高 齢者個人に対し、次のようなサービスを施す。買い物の手伝い、食事の準備と配達、クリーニン グの集配と宅配、洗濯の手伝い、修理や衛生改善などアパート管理の手伝い。 ‘ARAD’ は、アルツハイマー病患者や認知障害を持つ人とその家族に対して情報を提供したり支 援したりする非営利組織である。この組織は、患者の家族、研究者、専門医、老人病専門医、心 理カウンセラーで構成されている。サービス希望者は、直接 ARAD に問い合わせるか、居住地区 のソーシャルワーカーに連絡する。 ‘ANT’ は、腫瘍専門の在宅病院としてのはたらきをする非営利法人で、腫瘍を患った人を自宅 にて無料で治療している。かかりつけの一般医の要請でサービスが受けられる。 利用者カテゴリー 高齢者 利用者詳細 AUSER と ANT はすべての市民を対象とする。 ARAD は、老人認知症の症状を持つ 55 歳以上の人を介護しているボローニャ在住の家族を対象 としている。 費用と支払い方法 無料 サービスの内容 AUSER では、高齢者の家事手伝いや付き添いをしたり、話し相手になったりするサービスがあ る。 ARAD については、以下の協定の第 4 章を参照のこと。 http://informa.comune.bologna.it/iperbole/media/files/arad_2008.pdf - 244 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 医薬品の無料宅配サービス(もしもし健康サービス) Consegna gratuita a domicilio di farmaci (Servizio Pronto salute) 薬局によって提供される、医療領域のほかのサービスも含まれる(ラボラトリーでの検査、標 本の引き取りと結果の受け渡しなど)。24 時間受付。 サービス利用資格 市の在宅支援を受けている高齢者市民と障害者 ANT や ARAD の支援を受けている人 サービスの流れ 1.この企画に対応している市営薬局で配布している所定の様式に記入するか、以下の WEB サイ トにて、登録する。 http://www.farmaciapertutti.it/AFMBO/servizi.asp?Sezioni=Pronto%20Salute&IDSezione=23 2.フリーダイヤル 800 -547454 に電話する。 3. 薬剤師が応答し、上記の資格を有しているかどうか、また必要に応じて処方せんがあるかどう か確認し、サービスを開始する。 4. 公共支援十字イタリア(Pubblica Assistenza Croce Italia - PACI) のボランティアが利用者の自宅 まで処方せんを回収しに行き、最寄りの薬局で開いているところを探す。 5. 利用者の自宅に次の二つの時間帯で医薬品の配達が行われる。 12.00-14.00 / 18.00-20.00 市民は、ボローニャ市内と県内のすべての薬局でフリーダイヤルの番号が書いてあるカード (CARD)を受け取ることができる。 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 費用と支払い方法 サービスは無料(但し、購入する医薬品の費用は別) - 245 - 困難を伴う退院における支援継続 Continuità assistenziale nelle dimissioni ospedaliere difficili 公立病院や協定を結んでいる民間病院 (Casa di cura)から退院する 65 歳以上の高齢者で、自立し た生活が不可能か、自立性が低い人を対象とする。 医療支援が必要かどうかに関わらず、社会・援助的な支援の必要性に応える。 利用者が家族を持たないか、利用者の家族が世話をすることができない場合(世話の一部がで きない場合も含む)に限る。 通常は、地区 (Quartiere)の専門的社会サービス (Servizio Sociale Professionale)を受けていない人 が対象となっている。 サービスの申し込みは、病院職員側から地域保健公社ボローニャ地区(Distretto di Bologna dell’Azienda USL)の支援継続センター(Centro per la continuità assistenziale)に対してなされる。 地域保健公社の支援継続センターに勤務するソーシャルワーカー(Assistente Sociale)は、サービ ス内容や個別化された支援計画について話し合うために、利用者の家族に連絡する。 支援継続センター(Centro per la continuità assistenziale)のソーシャルワーカー(Assistente Sociale) は、利用者の居住地区の専門的社会サービスに支援計画を伝え、サービスの統合や、場合によっ ては継続が保証できるようにする。 次の二つのコースがある。 A コース: 地域保険公社(A.Usl)が提供する社会・援助的な在宅サービスを実施する。サービ ス期間は平均で 30 日、最長で 40 日。 B コース: 複数のサービスを組み合わせたいろいろなプログラムがある。例えば、一般ヘルパ ーや保健社会オペレーターによる社会・援助活動や、家族の支援、電話による話し相手/援助/ 検査、苦痛緩和のための施設入所、ボランティアによる「親しい仲間」サービスなど。これらの プログラムの期間は場合によって変わる。 利用者カテゴリー 高齢者。 利用者詳細 高齢者。特に 65 歳以上で、自立した生活が不可能か、自立性が低い人。 必要書類 調整経済状態指数 (Indicatore della Situazione Economica Equivalente, 略称:ISEE) - 246 - 第6章 高齢者のためのクリーニング 海外制度調査の結果の概要 Lavanderia per anziani このサービスは、衣服やシーツなどを洗濯し清潔に保つことが困難な、居住地区在住の高齢者 を構成員とする家庭を対象としている。ソーシャルワーカーによると、このサービスの実施は特 化された支援計画の領域で有効だとみなされている。 サービス利用資格 サービスを申し込む地区(Quartiere)の住民であること 満 65 歳以上であること 現在の住居以外の不動産を所有していないこと 一人当たりの所得が、「最低生活費」(minimo vitale)を 1/3 増加させた額を超えないこと 問い合わせ先 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。 利用者カテゴリー 高齢者 必要書類 前年度の所得申告に関わる様式 ‘730’ ‘UNICO’ または ‘CUD’(公務員の所得証明書), 度の家賃の領収書、その他の社会・援助費用を証明する書類、医師の診断書。 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内 - 247 - 前年 救急電話サービス Servizio di Telesoccorso 電話による連絡システムで、利用者自宅の基準適合を認定された電話機に子機を取り付けるこ とを想定している。 サービスを受けるためには、高齢者や障害者やその家族が、居住する地区 (Quartiere)の社会福祉 窓口(Sportello sociale)に問い合わせ、ソーシャルワーカーと面談するためにアポイントをとる。 65 歳以上のボローニャ在住者がサービスの対象である。 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 必要書類 最新の納税年度における家族の所得申告書 (様式 ‘730’ ‘UNICO’ または ‘CUD’)、最新の納 税年度における家賃の領収書、申請者の症状に関する医師の診断書。 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内 費用と支払い方法 家族の所得により月額が定められ、 MAV (pagamento Mediante Avviso —通知による支払い—) の 振り込み用紙あるいは RID(Rapporti Interbancari Diretti —銀行口座からの自動引き落とし—) に よって支払うことになる。 - 248 - 第6章 施設入所型サービス 保護アパート 海外制度調査の結果の概要 Servizi Residenziali Appartamenti protetti 施設の目的と利用者のタイプ 保護された住居施設で、通常は多機能センター内に配置されている。入居者の残存能力と自立 性を最大限に維持し、各自のプライベートを守り、家族や友人との関係を維持し、生活上の習慣 や関心を保持することができるように設計され、設備がそなえられている。 このような施設は、個人あるいはカップルの高齢者(65 歳以上でボローニャ在住)を対象とし て、日常生活の営みを支援し、社会化を促し、孤独や孤立によるリスクを回避することを目的と している。施設利用者は、自立性があり、医療支援や身元保証人との定期的な連絡を必要としな がらも、主な活動は一人で行える人とする。 保護アパートは、地区における社会的あるいは社会・援助的サービスのネットワークと連携し た在宅支援を高齢者に保証している。 施設経営者は、ボローニャ市との協定で規定されている内容に従って、費用外のサービスを提 供する。このサービスを利用するには、利用者となる市民が直接保護アパートの責任者( 介護活 動責任者 -Responsabile Attività Assistenziali- 、あるいは他の専門職員)と連絡をとる。 居住型の支援サービス、介護と食事のサービスを必要とし、経費の支払いが不可能な人は、地 区(Quartiere)の S.S.T.に問い合わせ、サービス必要度の評価や個別支援プログラム( Programma Assistenziale individualizzato 略称 P.A.I.) の決定を受けることができる。決議 1988 年 609 号と 1998 年 127 号 (delibere C,C, n, 609/88, n. 127/98)で定められた基準に従ってサービスの承認が行われ る。 申し込み方法 二つの申し込みルートがある。 1.公的な待機リスト。1 年に二回(通常 4 月と 12 月)、地区 (Quartiere)の地域社会サービス (Servizio sociale territoriale)から支援を受けている人を対象に、施行中の所定の方法で作成される。 2.施設を経営する民間機関による待機リスト。 地域社会サービスから受けている支援の有無 にかかわらず市民ならだれでも登録できる。 アパートの空室は 50%ずつそれぞれの待機リストに割り当てられる。 公的な待機リストへの申し込みと手続きの方法 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)に問い合わせ、 事例に関して 必要な情報を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経 済的援助、介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたり するためにソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。 当該事例の担当責任者は、高齢者のサービス必要度を評価し、個別支援プログラムを準備する。 公的な待機リストに登録するために、調書を送る。その際、希望地区を特記したり、サービスを 提供できない場合はその理由を明記したりする。 - 249 - 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 必要書類 所得と健康状態に関する書類 手続きに要する期間 公的な待機リストは 1 年に二回(4 月と 11 月)に作成される。 保護アパートを割り当てられるかどうかは、申込先施設の空室状態による。 費用と支払い方法 費用の支払いは市民の負担となる。但し、協定施設の費用を支払うことが不可能だと判断され た人に対し、地区が援助金を給付することがある。給付金は、 高齢者の年金の税引後手取額に応 じて、費用全額の場合と一部の場合があり、 申請者本人だけでなく法律で規定された扶養義務者 である親族の経済的状況も考慮される。この給付金は前払い金と考えられ、受給者が入所後に財 産や不動産を所有することになった場合、その時点まで地区を通じて費用を負担した市に対して 全額あるいは一部を返金する義務がある。 - 250 - 第6章 休養ホーム 海外制度調査の結果の概要 Casa di Riposo このサービスは、高齢者および重度の障害を持った成人を対象とする。 サービスへの申し込みは、利用者の家族が直接休養ホームに対して行う。 社会福祉窓口 (Sportello sociale)に問い合わせれば、 市と協定を結んでいる施設一覧を提示して もらえる。(協定施設への入居に限り、ボローニャ市は社会的状態と所得の点から利用者を審査 後、入所費の援助を行う) 利用者カテゴリー 高齢者、障害者 利用者の詳細 自立して生活ができないか、自立性の低い高齢者 費用と支払い方法 入所費用は市民の負担となる。但し、協定施設の費用を支払うことが不可能だと判断された人 に対し、地区が援助金を給付することがある。 給付金は、 高齢者の年金の税引後手取額に応じて、 費用全額の場合と一部の場合があり、 申請者本人だけでなく法律で規定された扶養義務者である 親族の経済的状況も考慮される。この給付金は前払い金と考えられ、受給者が入所後に財産や不 動産を所有することになった場合、その時点まで地区を通じて費用を負担した市に対して全額あ るいは一部を返金する義務がある。 - 251 - 保護ホーム Casa Protetta 保護ホームは、介護を要するが家庭で支援できない高齢者を一時的にあるいは無期限で受け入 れる入所型の社会・保健施設である。保護ホームは、高齢者の自立性の維持、体力・精神力・人 間関係力の回復を目的としている。日常生活、一般医療、看護、リハビリなどにおける支援活動 が専門職員によって提供されている。 対象者: ボローニャ在住で、65 歳以上の高齢者か 50 歳以上で老人病の症状がある成人。また、老年医学 評価機構 (Unità di Valutazione Geriatrica、略称: UVG)によって認定を受けた人。 問い合わせ先 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。申請の認可にあたっ ては、申請者が現在の生活環境において安全に居住し続けるのが実際に不可能かどうかという、 ソーシャルワーカーによる社会的な評価と、老年医学評価機構 (UVG)による多角的な評価が行わ れる。保護ホームへの入所申請書は、市の保護ホーム入所者待機名簿 (lista unica cittadina per Case protette 略称:L.U.C.CP)へと登録される。 利用者カテゴリー 高齢者 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内で手続きが済み、その後 UVGT の評価を受けるのに最長で 90 日か かる。 保健的・社会的な重度の基準として編成された待機者リストに従い、 実際に入所可能な人 に通知する。 費用と支払い方法 入所費用の一部は、地域保健公社(A.Usl)は直接給付される資金によってカバーされており、一 部は入居者が負担して施設に支払うことになっている。費用の支払いを補完するための援助金を 申請することが可能であるが、この事例を担当するソーシャルワーカー (Assistente Sociale Responsabile)の側から、申請者とその親族の経済状態の評価と援助の可否決定を受ける。 サービス内容 ボローニャ市と AUSL との協定を結んでいる保護施設が提供しているサービス一覧とその特色 に関する情報については、各施設のサービス案内を参照のこと。 - 252 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 保健援助施設 Residenza sanitaria assistenziale (RSA) RSA は、 自立した生活が不可能な高齢者のための社会・保健的特色を持った病院外の施設であ る。主に保健医療に関する役割を果たし、居宅で支援できない老人や、病院で特別な治療を必要 とはしないが、慢性の退化的な症状を抱え、ねたきりの傾向があり、継続したケアを必要とする 人を対象としている。 一時的な入居と無期限入居を受け付けている。 対象者: ボローニャ在住で、65 歳以上の高齢者か 50 歳以上で老人病の症状がある成人。また、老年医学 評価機構 (Unità di Valutazione Geriatrica、略称: UVG)によって認定を受けた人。 参照資料 1.Circolare del Comune di Bologna per il reperimento dei criteri di gestione delle liste di attesa delle strutture protette 2. Criteri di gestione delle liste di attesa delle strutture protette 一時入居者の入居認可の手続きに関しては、以下を参照。 3. Regolamento posti temporanei 問い合わせ先 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。 申請の認可にあたっ ては、申請者が現在の生活環境において安全に居住し続けるのが実際に不可能かどうかという、 ソーシャルワーカーによる社会的な評価と、老年医学評価機構 (UVG)による多角的な評価が行わ れる。入所申請書は、市の保健援助施設入所者待機名簿 (lista unica cittadina per Residenze Sanitarie Assistenziali 略称:L.U.C.RSA)へと登録される。 利用者カテゴリー 高齢者 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内で手続きが済み、その後 UVGT の評価を受けるのに最長で 90 日か かる。 保健的・社会的 な重度を基準として編成された待機者リストに従い、実際に入所可能な人 に通知する。 費用と支払い方法 入所費用の一部は、地域保健公社(A.Usl)から直接給付される資金によってカバーされており、 一部は入居者が負担して施設に支払うことになっている。支払い費用を補うための援助金を申請 することが可能であるが、この事例を担当するソーシャルワーカー (Assistente Socilae Responsabile)の側から、申請者とその親族の経済状態の評価と援助の可否決定を受けることになる。 サービス内容 ボローニャ市と AUSL との協定を結んでいる保護施設が提供しているサービス一覧とその特色 に関する情報については、各施設のサービス案内を参照のこと。すべての保護施設が RSA に対応 した部屋を備えているわけではないので、サービスのタイプ詳細について確認すること。 - 253 - 施設半入所型サービス Servizi semi residenziali デイケアセンター Centro Diurno このサービスの対象は、軽・中・重度の介護を必要とする 65 歳以上の市民と高齢者に多い重病 の症状(脳梗塞の後遺症、パーキンソン病、老人性認知症)が原因で自立して生活きない成人(50 ∼65 歳)とする。 デイケアセンターの目的は、高齢者とその家族を支援すること、自立性、自我同一性、空間・ 時間感覚、人間関係、社会化の領域に関する能力を強化し、維持し、補うこと、社会的・保健的 権利を保護すること、施設入所を遅らせることである。 問い合わせ先 申請者が居住する地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報 を得ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて経済的援助、 介護、教育、社会・保健的支援などの異なる種類の個別化されたサービスを受けたりするために ソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもできる。申請が認可されるか どうかは、老年医学評価機構 (UVG)の評価による。 利用者カテゴリー 高齢者 利用者の詳細 ボローニャ在住で、65 歳以上の高齢者か 50 歳以上で老人病の症状(脳梗塞の後遺症、パーキン ソン病、老人性認知症)がある成人。 必要書類 ・ 最新納税年度の所得申告書、申請者本人または配偶者があれば両者の申請年 1 月の年金額 ・ 申請年 1 月の家賃領収書 ・ 申請者の症状に関する医師の診断書 手続きに要する期間 老年医学評価機構 (UVG)の評価の後、待機リストがあればそこに登録され、なければデイケア センターに通所開始できる。 費用と支払い方法 費用は高齢者本人とその配偶者の所得状態をもとに計算される。支払いは、 MAV (pagamento Mediante Avviso —通知による支払い—) の振り込み用紙あるいは RID(Rapporti Interbancari Diretti —銀行口座からの自動引き落とし—) によってなされる。 サービス内容 ・ 保護的な支援活動 ・ 文化レクリエーション、社会化活動、肉体作業、運動、認知を促進する活動 ・ 利用者の自宅からセンターまでの送迎 - 254 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 特別デイケアセンター Centro Diurno Specializzato このサービスの対象は、行動障害を伴う認知症患者である 50 歳以上の市民とする。 特別デイケアセンターへの受け入れ目的は、入所型施設に完全に入所することを回避したり遅 らせたりすること、認知力の衰えが進行するのを防ぐこと、残存している実用能力を維持するこ と、患者の行動障害を減少させ、抑制すること、家族のストレスをなくすこと、サービスによる 支援と家族による支援との間に継続性を持たせることである。 問い合わせ先 申請者の居住地区 (Quartiere)の社会福祉窓口(Sportello sociale)で、 事例に関して必要な情報を得 ることができる。また、 介護の必要性について認定を受けたり、 場合に応じて 個別化されたサー ビスを受けたりするためにソーシャルワーカー(Assistente sociale)とのアポイントをとることもで きる。 申請が認可されるかどうかは、老年医学評価機構 (UVG)の評価による。 利用者カテゴリー 高齢者 利用者の詳細 ボローニャ在住で、65 歳以上の高齢者か 50 歳以上で認知障害の症状がある成人。 必要書類 ・ 最新納税年度の所得申告書、申請者本人または配偶者があれば両者の申請年 1 月の年金額 ・ 申請年 1 月の家賃領収書 ・ 申請者の症状に関する医師の診断書 手続きに要する期間 申請書提出日から 60 日以内で手続きが済み、その後 UVGT の評価を受けるのに最長で 90 日か かる。サービス認可への手続きが完了した後、特別デイケアセンターへの受け入れが開始される。 市内の施設のどこにも空きがない場合、申請書は待機リストに登録される。 費用と支払い方法 費用は高齢者本人とその配偶者の所得状態をもとに計算される。支払いは、 MAV (pagamento Mediante Avviso —通知による支払い—) の振り込み用紙あるいは RID(Rapporti Interbancari Diretti —銀行口座からの自動引き落とし—)によってなされる。 サービス内容 特別デイケアセンターでは、施設の所属地区のソーシャルワーカー、老人病専門医、心理カウ ンセラー、レクリエーション活動担当者、 専門看護師、介護活動責任者( referente attività assistenziali)、一般ヘルパー、社会保健オペレーターといった多様な職種の専門職員によるグル ープが利用者の保護および看護に関わる支援活動を行っている。サービスには次のようなものが ある。 ・ 残存能力の衰えに退行するリハビリテーション ・ 運動自立性と記憶回復の促進を目指す社会化活動およびレクリエーション活動 ・ 日常生活の世話において家族を支援すること - 255 - ・ 自宅からの送迎サービスを提供しているセンターもある 週単位の受け入れ曜日は、センターへの受け入れ証明書により規定されるが、場合に応じて変更 可能である。 - 256 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 資料2 イタリア薬剤師会連合(FOFI) 薬剤師倫理規定 (2007 年 6 月 19 日全国会議にて承認) 第1章 第1条 適用の対象と範囲 定義 1.薬剤師会は、加入者の職業資格と適正な行為を国民に保障する公共団体である。 2.倫理規定は、薬剤師会の参照基準であり、 国民や共同体に対する保障とし、薬剤師の職業上の倫 理、威厳、名誉を守る目的で定められた規則や原則を集めたものである。 第2条 適用の範囲 1.薬剤師会に加入しているすべての薬剤師は、本倫理規定の規則・原則を知り、遵守する義務があ る。また、勤務時間外であっても、常に役に適した行動をし、職務の信用を損なういかなる事例 も起こさないようにしなければならない。 第2章 一般原則と義務 第1節 薬剤師の一般義務 第3条 職務の自由、独立、威厳 1.薬剤師には以下の義務がある。 a) 薬剤師会加入の際に倫理規定を読んだことを明言すること b) 服務宣誓の原則に従うこと c) 倫理行動規準に従い、患者の権利を常に鑑み、生命を尊重しながら、自律性と職業的自覚を持っ て職務を遂行すること d) 全国薬剤師会連合と所属する薬剤師会により発表された職業的・倫理的な方針に従うこと 2.薬剤師は、いかなる理由でも以下のことを実施したり、認めたり、援助したりしてはならない。 a) 違法な職務遂行 b) 民法第 2598 条で定められた不正な競争を成すすべての行為 第4条 保健医療当局や諸機関との協力義務 1.薬剤師は、医療の担い手として当局と協力し、行政上の目的達成において尽力する。 2.薬剤師は、全国薬剤師会連合や県薬剤師会との合意によって当局が主催する、病気予防や保健教 育を推進するキャンペーンに参加する。 - 257 - 第2節 薬剤師の職業的義務 第5条 専門職の記章と白衣 1. 公衆の面前で職業活動を行う場合、薬剤師は白衣と専門職の記章を着用する義務がある。 2. 専門職の記章は、薬剤師会加入者で、法律で定められている公立又は民間の施設で職務を行う者 によってのみ使用される。 3. 薬剤師の記章は、全国薬剤師会によって採択され、県薬剤師会に配布されたものとする。 4. 公営又は民営薬局の所有者、又は薬局責任者は、専門職の記章着用が薬剤師に限られた特権とな るように管理しなければならない。 第6条 医薬品の供給と納入 1.医薬品の供給は、患者の心身の健康と充実を保持するための保健医療行為である。 2.いかなる医薬品の配給と納入も、薬剤師に限られた特権であり、薬剤師はこれらの職務を自分自 身で遂行し、それに関わる責任を負う。 第7条 薬局における生薬の調剤 1. 生薬の調剤は、薬局において薬剤師のみが行うことができる。 2. 薬剤師が薬局で医薬品を調剤する際、効能と安全を前提とした質を保障するために、規則で定め られた手順を遵守すべきである。 第8条 医薬品監視 1. 薬剤師は、医薬品監視の規準に厳密に従い、公共の健康を守るために助力する。 第9条 生涯教育と専門研修 1. 生涯にわたる教育と研修は、職務遂行の適正化と効率化を図るために必要とされる。 2. 薬剤師は、科学の進歩、規定変更、保健医療組織の改編に合わせ、また保健医療に関する国民の 疑問に答える形で、継続的に自己の知識を増幅するため、生涯にわたる研修と専門研修を受ける 義務がある。 3. 薬剤師は、全国薬剤師会連合や所属薬剤師会が加入者の参加を見込んでいる生涯教育や専門研修 の企画に無料で参加する。 第 10 条 1. 医薬品の不適切な使用、濫用、治療以外の目的での使用 薬剤師は、いかなる方法においても、麻薬やその他の薬物の投与、及びドーピングを目的とし た服用法や製品の使用を人や動物に対して認めたり、助長したりしてはならない。 2. 薬剤師は、患者の心身の均衡に異常をきたす恐れのある医薬品やその他の製品が不適切に使用 されたり、濫用されたりしないように監視しなければならない。 3. 薬剤師は、患者の責任ある自己投薬を推進し、治療の必要から正当と認められない場合の医薬 品の自己投薬を抑制する。 - 258 - 第6章 4. 海外制度調査の結果の概要 薬剤師が医薬品の濫用や治療以外の目的での使用事例について知り得た場合、それを当局に通 知する義務がある。 第3章 国民との関係 第 11 条 薬局の自由な選択 1. 薬剤師は、国民の側から薬局を自由に選択する権利を限定したり阻止したりする企画や行為を 行ってはいけない。 第 12 条 助言・相談活動 1. 専門的な助言をしたり相談を受けたりする場合、薬剤師は医薬品の適切な使用法、禁忌、副作用、 保存方法について言及しながら、明確で正確かつ十分な保健医療情報を提供する。 2. 薬剤師は、患者に後発医薬品の存在について知らせる義務がある。 第4章 医師、獣医、その他の医療従事者との関係 第 13 条 ほかの医療専門職との関係 1. 医療専門職種間の意思疎通は、科学的厳密性に基づいて行う。 2. 薬剤師は、職務遂行において職種間での知識交換をも図った協力を行いながら、ほかの医療従 事者を尊重するという原則を守らなければならない。また、公の場でほかの医療従事者の行為 を批判することを控えなければならない。 第 14 条 医師と製薬会社との癒着やその他の不正な取り決め 1. 医薬品の処方せんを発行する資格のある医療従事者との関係は、利害関係や経済的な利益に起因 したり左右されたりしてはならない。 2. いかなる形式においてでも、医師や獣医による処方せん発行を促進することは、たとえそれが癒 着を形成しないという仮定のもとであっても、重大な職権濫用となる。 3. 不正な利益を得るために、不適切な用法や実際に治療に必要な量を超過した服用を目的とする医 薬品の販売を促進しかねない協定を認めたり提案したり受諾したりすることは、重大な職権濫用、 及び職業意識の欠如となる。 第 15 条 処方せんの買い占め禁止 1.薬剤師は、いかなる方法や場所で実施されるのであっても、医師が製薬会社と癒着して処方せん を発行する企画を推進したり組織したりそれに応じたりしてはならない。 - 259 - 第5章 同僚や研修生との職務上の関係 第 16 条 協力の義務 1. 薬剤師は、同僚の役割と能力を尊重し、適正で協調性に満ちた行動をとるべきである。 2. 薬剤師は、大学や薬剤師会との協力関係のもとに研修生を受け入れる場合、研修生が必要な専 門能力や倫理的判断能力を習得できているかどうか確認しながら、薬剤師養成に助力する。 第 17 条 1. 職務上の議論 職務上、意見の相違や議論があった場合、その仲裁は、法的手段に訴える前に薬剤師会の評価 に委ねられる。 第 18 条 1. 不適正な行為 次の行為は懲罰の対象となる。 a) 同僚の職業活動を故意に利用する行為を実施するか又は助長すること。 b) 職務を秩序づける規定又は職業倫理に反する行為を同僚や同じ職場の職員に行わせること。 c) 同僚やほかの職員に対する差別、嫌がらせ、いじめなどに係わるあらゆる行為を実施すること。 第6章 薬剤師会との関係 第 19 条 協力と通知の義務 1. 薬剤師は、薬剤師会との関係において最善を尽くし協力する義務がある。 2. 薬剤師は、職務遂行を秩序づける規定に反する行為や不適切な行為を強要しかねない発案につ いて、所属薬剤師会に通知する義務がある。 第7章 医療関係の広告と情報 第 20 条 原則 1. 薬剤師の職務に関する広告や医療情報は、適正で、真実性があり、人をだますものではないと いう原則に従ったものであれば、認められる。広告を発表すると同時に、薬剤師はその内容を 所属薬剤師会に伝えなければいけない。 2. 薬剤師は、ほかの医療関係者や医療施設のためには、いかなる形式でも広告を行うことができ ない。 3. 薬剤師は、自分の薬局や業務(2006 年法律第 248 号第 5 条にて規定)に関する広告情報を医師 や獣医の診療所、総合病院、民間病院、保健医療施設、社会援助施設に掲示することに同意し てもそれを提案してもいけない。 - 260 - 第6章 4. 海外制度調査の結果の概要 国民の利益を守るために適正で、真実性があり、人をだますものではないという原則に従って いれば、薬局の広告は認められ、自由に行うことができる。 5. 薬局のサービスや売り場や値段に関して、真実性があり、適正な情報を公衆に広めることは規 定に準拠している。 第8章 薬局における職業活動 第 21 条 原則 1. 倫理的観点から、専門職の薬剤師と薬局経営者の薬剤師の役割は分離できない。 第 22 条 1. 業務の組織 薬局の所有者又は責任者は、薬局が社会・保健援助施設及び医療サービスセンターとして果た す役割に適した方法で業務が組織されるように配慮しなければならない。 第 23 条 1. 薬局の店頭及び道路の看板 法律や規則や法令による特別な規準を除き、薬局の店頭看板は義務づけられており、必ず 「farmacia(薬局)」という表示を入れなければならない。 2. 道路看板は、最寄りの薬局に到達できるように方向や距離を示したもの(方向を示した矢印も 含む)に限り、組織図 (pianta organica)で規定された所属薬剤局の地域内に設置されるものとする。 3. 道路看板は、薬局の方向と距離の両方を表示することが義務づけられている。 第 24 条 1. 処方せん医薬品 医師や獣医による処方せんなしに、又は法律で定められた要件を満たさない処方せんによって 医薬品の供給を依頼された場合、それを拒否しなければならない。 2. 現行法に従い、医薬品の供給を依頼する人が誰であっても、人間に対して重大な損害を与える 危険から救う必要のある場合は例外とする。 第 25 条 1. 認可されていない医薬品の保持・供給の禁止 薬剤師は、たとえ医者の処方せんによるものであっても、イタリアでの流通が認可されていな い工業薬品を保持することも供給することも販売促進することもできない。 第 26 条 1. 処方せんのチェック 処方せんの送付は、薬剤師が確信を持って患者の安全を守ることを前提としている。処方せん について疑問がある場合、薬剤師は、処方せんを送付する前に必要な説明を受ける目的で、慎 重に且つ協力の精神を持って処方せんを発行した医師や獣医と連絡をとらなければならない。 2. 薬剤師は、医師が生薬調剤の処方せんで、1998 年法律第 94 号第 5 条で規定された限定数量を守 っているかどうか確認しなければならない。 - 261 - 第 27 条 1. 協定の違反 SSN(国民健康保健サービス)と公営・民営薬局の関係を定める協定に記載された職務上の規 定を遵守することは、薬剤師にとって厳正な倫理的義務であり、違反があった場合は懲罰の対象 となる。 第 28 条 1. 医薬品の居宅への配達 処方せんを必要とする医薬品の居宅への配達は、処方せんの原本が薬局に送付された後に行わ れる。 2. 医薬品の居宅配達企画を実施する薬剤師は、このようなサービスが第 11 条、第 12 条、第 36 条 で規定された事項に従って行われることを保障し、医薬品の適切な保存条件を確保しなければ ならない。 第9章 医薬品産業における職業活動 第 29 条 行動規準 1. 医薬品産業において活動を行う薬剤師は、自らを律し、職務の独立を重んじなければならない。 第 30 条 医薬情報担当者(informatore tecnico scientifico)としての薬剤師 1. 医薬情報担当者としての薬剤師は、専ら科学的評価に基づいて、医薬品に関する正しい知識を 広めなければならない。 第 10 章 第 31 条 1. 公立及び民間の医療施設における職業活動 ほかの医療従事者や同僚との関係 公立及び民間の医療施設において職務を遂行する薬剤師は、相互の役割を尊重し、職業上建設 的な協力関係を築くべきほかの医療従事者や同僚に対し、同等の尊厳と自律性を認めたうえで 対応しなければならない。 2. 公営又は民営薬局の同僚との関係において、職務を行う時や場所に適した薬剤医療の実現を可 能にするような情報交換を進めなければならない。 第 32 条 1. 医薬品供給についての管理 公立及び民間の医療施設において職務を遂行する薬剤師は、医薬品が直接患者に供給される場 合、第 11 条で定められるところに従い、薬剤師によってのみ供給が行われるように注意深く監 視しなければならない。また、ある特定の患者に対し、治療計画によって、又は「一回分の服 用量(dose unitaria)」にて医薬品が記名式で要求される場合、その医薬品の供給は管轄の公団 (Unità Operativa) に属する医薬機関によって、直接監査と担当薬剤師の責任の下で行われる。 - 262 - 第6章 第 11 章 第 33 条 1. 海外制度調査の結果の概要 医薬品を間接的に供給する場合の職業活動 技術管理責任者 (direttore tecnico responsabile) の義務 医薬品を間接的に供給する業務を担う薬剤師は、すべての医薬品が適切な条件で保存され搬送 されることを保障しなければならない。また、医薬品が卸売り供給や直接販売を認可された者 や薬局や 2006 年法律第 248 号第 5 条にて規定された販売業者にのみ譲渡されるようにしなけれ ばならない。 第 12 章 第 34 条 1. インターネットによる医薬品の販売と医薬品以外の製品 インターネットによる医薬品の販売 薬剤師がインターネットやその他の情報網を通して医薬品を譲渡することは、処方せんの必要 の有無にかかわらず、また同種療法の医薬品であっても認められていない。国内の特別な規則を 例外として、欧州連合(UE: Unione Europea) の法令と世界保健機関 (OMS: Organizzazione Mondiale della Sanità) のガイドラインに準拠するものとする。 第 35 条 1. 医薬品以外の製品 医薬品以外の製品の販売活動において、薬剤師は。国民の健康と薬剤師の職務に対する印象を 守るために、医療の担い手として遂行すべき役割と適合した行動をとる義務がある。 第 13 章 第 36 条 1. 職務上の秘密と守秘義務 職務上の秘密と守秘義務 薬剤師が職務上知り得た事実や状況について秘密を保持することは、法的義務であるだけでな く、倫理的に当然の義務であり、薬剤師は個人情報の処理業務担当者にもこの義務を要求する。 第 14 章 第 37 条 倫理規定の違反 倫理規定違反と薬剤師会の制裁権 1. 本倫理規定の内容事項の普及、知識の推進、規定遵守監査を薬剤師会の義務とする。 2. 本倫理規定の違反については、所属薬剤師会の重役会によって懲罰の判定が行われる。 3. 薬剤師は職業活動を行う県域の薬剤師会によって、倫理的監視を受ける。 4. 薬剤師会は、当該薬剤師が加入している薬剤師会の会長に通知し、管轄地域内で職務を遂行す る薬剤師を招集することができる。 5. 薬剤師の職務と薬剤サービスを秩序づける規範・法律・規則などの違反、及び公共の衛生や医 療のために当局から発表された措置や命令に反する行為はすべて懲罰の対象となる。 - 263 - 6. 職務濫用や職業意識の欠如、及びサービスに支障をきたしたり、国民の健康に害を与えたりす る行為、又はそのような恐れのあるすべての行為は、懲罰の対象となる。 - 264 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 資料3 2009 年 10 月 3 日委任立法第 153 号 国民保健サービスの領域において薬局が提供する新サービスの明確化、及び 農村部の薬局所有者に対する住宅手当に関する規定 (2009 年 6 月 18 日法律第 69 号に拠る) 第1条 (国民保健サービスの領域において薬局が提供する新サービス) 1. 2009 年 6 月 18 日法律第 69 号第 11 条(国民保健サービスの領域において薬局が提供する新サ ービスの明確化、及び人口 5000 人以下の地方自治体 (comune) の薬局所有者に対する住宅手 当に関する規定の政府への委任)の施行にあたり、当該委任立法によって、国民保健サービ スとの協定関係のもとで経営される公営・民営薬局(以下「薬局 <farmacie>」と称する)の 新しい任務と援助機能の定義と、1992 年 12 月 30 日委任立法第 502 号による規定及びその後 の修正規定の関連改正を整えるものとする。 2. 国民保健サービスの範囲で保障される薬局の新サービスは、州の社会・保健計画 (Piani socio-sanitari regionali) で規定されたところに従い、薬局所有者の同意を事前に得たうえで、 次のことにかかわる。 a) 各薬局の所在地域内に在住する患者のための総合的在宅支援サービスへの参加。薬局は、 管轄内に本籍地か現住所を置く患者のために、自由選択制の一般医や小児科医の活動を 援助する目的で、次のような形式でサービスに参加すること。 1) 必要とされる医薬品や医療機器の居宅への配達。 2) 人工的な栄養摂取のための合成食品や鎮痛剤の調剤、及び居宅への配達を、医薬品の適 切な調剤と供給方法に関する規定や、現行法によって定められた処方や限定数量を遵守 して行うこと。 3) 医療施設の代わりに医薬品を直接提供すること 4) 自由選択制のかかりつけ医や小児科医の要請で居宅における専門業務を実施するための 社会・保健オペレーター、看護師、療法士を配置すること。但し、薬局での遂行が可能 な看護師や療法士の業務は、本項 d)に記載されるものとし、国家、州、トレントとボル ツァーノ自治県関係常任議会の同意を受け、福祉・保健・労働大臣令により定められた 薬局の新任務を遂行するのに必要な付加業務に限られる。 b) 患者の治療法へのアドヒアランス向上を目的として、処方せん医薬品の正しい用法とそ のモニタリングを保障する取り組みに、薬局が医薬品監視の特別プログラムへの参加等 を通して協力すること c) 薬局が、必要であれば業務を遂行する薬剤師の事前研修も行ったうえで、一般市民、患 者団体、施設を対象として、保健教育プログラムや、社会への影響が強い主な病気の予 防キャンペーンに参加することにより、第一レベルのサービスを提供すること。 d) 特定の症状のために規定された診断・治療過程やガイドラインに沿って、自由選択制の一般 - 265 - 医や小児科医による処方せんに従ったうえで、看護師を活用したり、薬局に半自動除 細動器を備えることを見通したりしながら、個人を対象とした第二レベルのサービスを 提供すること。 e) d)で規定された第二レベルのサービスの領域で、国家、州、トレントとボルツァーノ自 治県関係常任議会との同意のうえ、福祉・保健・労働大臣令(法令ではない)によって 定められた条件内で、薬局にて自己検査の枠内に入る第一段階の検査業務を実施するこ と。但し、いかなる場合にも、処方や診断、及び注射器その他の機器を用いた血液やリ ンパしょう(plasma)の採取は、本サービスから除外される。 f) 薬局にてサービス受益者が公立医療施設や民間の委託施設における専門診断を予約し、 国民の負担となる料金支払いに対処し、公立医療施設や民間の委託施設で受けた専門診 断の報告書を受け取ることができるというサービスの実施。このような様式は、個人情 報保護法である 2003 年 6 月 23 日委任立法第 196 号で見通されている内容に従い、個人 情報保護局、及び国家、州、トレントとボルツァーノ自治県関係常任議会との同意のう え、福祉・保健・労働大臣令(法令ではない)による安全に関する様式、技術規則、措 置にもとづいて規定される。 3. 第2項第一文が定めるサービスに公営薬局が同意するにあたっては、公共財政の負担上乗せ や職員の増加を行うことなく、地方機関のための安定協定に関する現行法を遵守することを 保障し、経済財政大臣、内務大臣との合意のうえで福祉・保健・労働大臣令で制定された規 準に従うものとする。 4. 第2項が定める新サービスの遂行のための薬局の国民保険サービスとの関係は、1992 年 12 月 30 日委任立法第 502 号第8条第2項とその後の修正規定と同様の協定によって規定され、 1991 年 12 月 30 日法律第 4 章第 9 項により締結された全国集団協定と州レベルの関連協定に 適合するものとする。全国協定と州レベルの協定は、さらに第 2 項の活動に参加するために 薬局に必要な条件を定める。 5. 国民保健サービスは、公営薬局及び国民保健サービスと協定を結んだ民営薬局の薬剤師が、 第 2 項の活動に関して、自由選択制の一般医や小児科医と異職種間連携を行うことを促進す る。 第2条 (1992 年 12 月 30 日委任立法第 502 号による規定、及びその後の修正規定の改正) 1.1992 年 12 月 30 日委任立法第 502 号第 8 条とその後の修正規定について、次の改正が行われる。 a) 第 1 項 m)の後に、以下を加える。 「m-bis) 2009 年 6 月 18 日法律第 69 号の規定とその施行に関連する委任立法に関して、公営 薬局及び国民保健サービスと協定を結んだ民営薬局の薬剤師と自由選択制の一般医や小児科 医との異職種間連携を促進すること」 b) 第 2 項にて、 1) a)の「国民保健サービス(Servizio sanitario nazionale)」という語の後に、次の文を差し入れ - 266 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 る。 「州の社会・保健計画 (Piani socio-sanitari regionali) で規定されたところに従い、薬局所有 者の同意を事前に得たうえで各州、トレントとボルツァーノ自治県が定めた様式に従うこと を示し、以下の b-bis で規定されるさらなる役割を果たしながら、また公営薬局のサービスへ の同意にあたっては、新たな公共財政の負担上乗せや職員の増加を行うことなく、地方機関 のための安定協定に関する現行法を遵守することを保障し、経済財政大臣、内務大臣との合 意のうえで福祉・保健・労働大臣令で制定された規準に従うものとして」 2) b)の中の語「サービス(il servizio)」を次の語に改める。「製品の供給(la dispensazione dei prodotti)」 3) b)の後に以下を加える。 「b-bis) 以下のことを統制するために対処する。 1) 公営薬局及び国民保健サービスと協定を結んだ民営薬局(以下、薬局と称する)が、 管轄内に本籍地か現住所を置く患者のために、自由選択制の一般医や小児科医の活動 を援助する目的で総合的在宅支援サービスに参加すること。地方保険公社は、多くの 薬局が混在する地域内に在住する患者のために、患者の住居から徒歩で最も近い薬局 という規準にもとづいて、サービスを担当する薬局を指定する。ある薬局が総合的在 宅支援サービスに参加しないと決めた場合、地方保険公社は、その地域に在住する患 者のために上述の規準に従って担当薬局を指定する。サービスへの参加として次のよ うなことが想定されている。 1.1) 医薬品や医療機器の供給と居宅への配達 1.2) 人工的な栄養摂取のための合成食品や鎮痛剤の調剤及び居宅への配達を、医薬品の適 切な調剤と供給方法に関する規定や、現行法によって定められた処方や限定数量を遵 守して行うこと。 1.3) 医療機関に代わって医薬品を直接供給すること 1.4) 自由選択制のかかりつけ医や小児科医の要請で居宅における専門業務を実施するた めの社会・保健オペレーター、看護師、療法士を配置すること。但し、薬局での遂 行が可能な看護師や療法士の業務は、4)に記載されるものとし、国家、州、トレン トとボルツァーノ自治県関係常任議会の同意を受け、福祉・保健・労働大臣令によ り指定された薬局の新任務を遂行するのに必要な付加業務に限られる。 2) 患者の治療法へのアドヒアランス向上を目的として、処方せん医薬品の正しい用法と そのモニタリングを保障する取り組みに、薬局が医薬品監視の特別プログラムへの参 加等を通して協力すること。このような協力は、薬剤師が前もって特別研修に参加す ることによって実現される。 3) 薬局が、必要であれば業務を遂行する薬剤師の事前研修も行ったうえで、一般市民、 患者団体、施設を対象とした保健教育プログラムや、社会への影響が強い主な病気の 予防キャンペーンに参加することを通して、第一レベルのサービスを設定すること。 4) 特定の症状のために規定された診断・治療過程やガイドラインに沿って、自由選択制の - 267 - 一般医や小児科医による処方せんに従ったうえで、看護師も活用しつつ、個人を対象 とした第二レベルのサービスを設定すること。予防キャンペーンへの参加によって、 薬局にも半自動除細動器を設置することが見通されている。 5) 4)で規定された第二レベルのサービスの領域で、国家、州、トレントとボルツァーノ 自治県関係常任議会との同意のうえ、福祉・保健・労働大臣令(法令ではない)によ って定められた条件内で、薬局にて自己検査の枠内に入る第一段階の検査業務を実施 すること。但し、いかなる場合にも、処方や診断及び注射器その他の機器を用いた血 液やリンパしょう(plasma)の採取は、本サービスから除外される。 6) 薬局にてサービス受益者が公立医療施設や民間の委託施設における専門診断を予約 し、国民の負担となる料金支払いに対処し、公立医療施設や民間の委託施設で受けた 専門診断の報告書を受け取ることができるという様式。診断報告書を受け取る様式は、 個人情報保護法である 2003 年 6 月 23 日委任立法第 196 号で見通された内容に従い、 個人情報保護局及び国家、州、トレントとボルツァーノ自治県関係常任議会との同 意のうえ、福祉・保健・労働大臣令(法令ではない)による安全に関する様式、技術 規則、措置にもとづいて規定される。 7) 本項 b-bis)で規定された活動に薬局が参加するための必要条件。 8) 本項 b-bis)の活動に関して、公営薬局及び国民保健サービスと協定を結んだ民営薬局 の薬剤師と、自由選択制の一般医や小児科医との異職種間連携を促進すること。」 4) c)にて、 “e, le modalità di collaborazione”から “di informazione, e di educazione sanitaria”まで1を削る。 5) c)の後に、以下を加える。 「c-bis) 全国集団協定は、2009 年 6 月 18 日法律第 69 号第 11 条が定める業務と援助機能に対 する国民保健サービス側からの報酬の原則と規準を定義する。また、薬局の上述の活動によ ってもたらされる国民保健サービスと州と地方機関の負担軽減の査定額内で、公共財政に新 たな負担を上乗せすることなしに、国レベルで関連費用の上限を定める。前述の負担軽減の 査定においては、加えて国家、州、トレントとボルツァーノ自治県関係常任議会にて 2005 年 3 月 23 日に締結された合意第 9 条と第 12 条が定める委員会(Comitato)、協議 (Tavolo)、各州 が作成した証明書にも従い、対処がなされる。 c-ter) 全国協定で定められた費用の上限を有効とし、また、c-bis)に従い、前掲の委員会 (Comitato)と協議 (Tavolo)で査定されたところを超えない額を各州の費用上限として、州レベ ルの協定は、c-bis)で定められた業務や援助機能に対する報酬の支払い方法や時期を規定する。 さらに、州協定は、同上の費用の上限内で、施設や組織の特性や最低限のテクノロジー設備 を定義し、その定義にもとづいて、第二レベルのサービスを提供するための契約・協定を締 1 「薬局が緊急活動、医薬品監視、健康情報提供や保健教育の領域で協力する様式」という部分を、地方レベルの協定にそ の関連規定を委任するものの中から削る。 - 268 - 第6章 海外制度調査の結果の概要 結する薬局を指定する。州協定が明示する費用上限を超える業務や援助機能については、そ れを要求した国民の負担となる。 」 第3条 (公営・民営薬局のための全国集団協定) 1.1991 年 12 月 30 日法律第 412 号第 4 条とその後の修正規定にて、9 項の後に次の文を差 し入れる。 「9-bis. 第 9 項が定める施設は、同項に明示されている費用の認可上限を有効として、 公営・民営薬局のための全国集団協定を更新するという目的においても、公共行政側の代 表となる。国家、州、トレントとボルツァーノ自治県関関係常任議会における協定に従い、 イタリア薬剤師会連合から意見聴取し、上述の協定に関する集団契約の措置が規定される。 9-ter. 9 項と 9 項乙(9-bis)による全国協定の更新において、異職種間連携については、 2009 年 6 月 18 日法律第 69 号第 11 条の規定とその施行に関する委任立法に関して、イ タリア薬剤師会連合と全国外科医師・歯科医師会連合からの意見を聴取する。」 第4条 (農村部の薬局に関する規定) 1.1968 年 3 月 8 日法律第 221 号第 2 条の第 1 項と第 2 項を次のように改める。 「1992 年 12 月 30 日委任立法第 502 号第 8 条第 2 項とその後の修正規定による全国集団 協定は、1934 年 7 月 27 日勅令第 1265 号により承認された保健法全文第 11 条で規定され た農村部の薬局所有者に対する住宅手当を、州とトレント、ボルツァーノ自治県が決定 する際の規準を定める。上述の規準は、薬局の位置にかかわる不便度の指数とサービス 提供地域の広さを考慮に入れる。 前項の全国集団協定が締結されるまで、農村部の薬局所有者に対する住宅手当は、既存 法にもとづいて決定される。 」 第5条 (名称とシンボルの利用) 1. 国民保険サービスの領域で業務を行う薬局を国民が直ちに認識できることを目的とし た「farmacia」の名称と緑十字の使用は、紙上であっても電子媒体やその他のいかなる 媒体上であっても、一般市民に開かれた薬局と病院薬局の特権とする。 第6条 (負担額の不変更) 1.本法の施行によって、公共財政に新たな負担が上乗せされてはいけない。 国璽を押印した本法は、イタリア共和国法文書の公的ファイル(Raccolta Ufficiale degli atti normativi della Repubblica Italiana)に収められる。何人にもこれを遵守すること と遵守させることを義務づける。 - 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