量子力学 I(2008 年度前期)試験勉強用練習問題 問題 1. 確率変数 A の分散に関して、次の公式を示せ。 h∆A2 i = hA2 i − hAi2 ここで、∆A = A − hAi である。 2. 2 成分スピンに関するシュテルンゲルラッハ型の実験を考える。まず、z 方向の実験を行って上向き 成分だけ取り出したとする。 (a) 続けてもう一度 z 方向の実験を行った時、上下それぞれの結果を得る確率を求めよ。 (b) x 方向の実験を行った時、上下それぞれの結果を得る確率を求めよ。 (c) x 方向の実験を行って上向き成分だけ取り出し、その後 z 方向の実験を行った場合に上下それぞ れの結果を得る確率を求めよ。 3. 次の手順で、不確定性関係を証明せよ。 (a) 自己共役演算子 Â, B̂ に対して、[Â, B̂] = iĈ とおくとき、Ĉ も自己共役演算子であることを 示せ。 (b) ∆ =  − hÂi, ∆B̂ = B̂ − hB̂i とする時、[Â, B̂] = iĈ なら [∆Â, ∆B̂] = iĈ であることを示せ。 (c) 実数 λ に対して D̂ = ∆ + iλ∆B̂ とおくとき、状態 D̂|ψi のノルムの 2 乗を計算せよ。ここで、 |ψi は任意の状態ベクトルである。 (d) 前問で計算したノルムの 2 乗が非負であることから、不確定性関係 D ED E 1 D E2 (∆Â)2 (∆B̂)2 ≥ Ĉ 4 を示せ。(ヒント:判別式を考えよ。) (e) 位置と運動量の不確定性関係を示せ。 4. 無限に深い井戸型ポテンシャル ( V (x) = 0 ∞ ¡ ¡ |x| ≤ |x| > ¢ a 2¢ a 2 を考える。 (a) 時間に依存しないシュレーディンガー方程式を解き、エネルギー固有値と、対応するエネルギー 固有関数を全て決定せよ。 (b) 基底状態と第一励起状態の波動関数の概形を描け。 (c) 基底状態に対し、x̂ と p̂ の分散を計算し、不確定性関係が成り立っていることを確認せよ。必要 なら、公式 Z π/2 x2 cos2 x dx = −π/2 π3 π − 24 4 を使え。 (d) 時刻 t = 0 における状態が、基底状態 ψ1 (x) と第一励起状態 ψ2 (x) の重ね合わせ ψ(x) = √1 {ψ1 (x) + ψ2 (x)} であったとする時、時刻 t における波動関数 ψ(x, t) を求めよ。 2 1 (e) ψ(x, t) に対する時刻 t での位置の期待値 hx̂it を計算せよ。必要なら、公式 Z π 2 x cos x sin 2x dx = −π 2 8 9 を使え。 5. 次の形のポテンシャル ∞ V (x) = 0 V0 (x ≤ 0) (0 < x < a) (a ≤ x) を考える。ただし V0 > 0 とし、上で分けられた3つの領域を左から順番に領域 I, II, III と呼ぶこと にする。 (a) 0 < E < V0 とする時、領域 I, II, III における(時間に依存しない)シュレーディンガー方程式 の解の一般形を書け。 (b) x = 0 と x = a において要求される波動関数の境界条件を書け。 (c) 境界条件から、エネルギー固有値を決定する方程式を導け。 (d) 束縛状態が存在するための V0 に対する条件を導け。 (e) 基底状態と第一励起状態が束縛状態として存在する時、それらの波動関数の概形を描け。 解答 1. hAi は定数なので、hAi = α とおく。 D E D E 2 2 (∆A) = (A − α) ® = A − 2αA + α2 = hA2 i − 2αhAi + α2 = hA2 i − 2α2 + α2 = hA2 i − α2 = hA2 i − hAi2 定数の期待値はその定数そのものであること(hαi = α)、また、定数倍は期待値記号の外に出せるこ と(hαAi = αhAi)に注意。 別解 変数 A のとる値の集合をを {a}、また、値 a が出る確率を P (a) とすると、 hAi = X aP (a) a hA2 i = X a2 P (a). a hAi = α とおくと、 h(∆A)2 i = X (a − α)2 P (a) a = X a2 P (a) − 2α X a a 2 aP (a) + α2 X a P (a). ここで P a aP (a) = α, P a P (a) = 1 を使うと、 h(∆A)2 i = hA2 i − α2 = hA2 i − hAi2 . 2. (a) 測定前のスピンの状態は |ψi は、z 方向上向きなので、 à ! 1 |ψi = |sz ; +i = . 0 この状態に対して、再び z 方向のスピンの測定を行うことを考える。z 方向上向きのスピンを見 出す確率は、 |hsz ; +|ψi|2 = |hsz ; +|sz ; +i|2 = 1. 下向きのスピンを見出す確率は、 |hsz ; −|ψi|2 ¯ à !¯2 ¯ 1 ¯¯ ¯ = ¯(0, 1) ¯ ¯ 0 ¯ = 0. (b) x 方向の固有状態は、 1 |sx ; ±i = √ 2 à ±1 1 ! . (この固有状態は以前に使ったが、覚えていない人は à ! 0 1 ~ ŝx = 2 1 0 を使って、固有値と固有状態の定義に戻って計算してみよう。)従って、x 方向上向きのスピン を見出す確率は、 ¯ à !¯2 ¯ 1 1 ¯¯ ¯ = ¯ √ (1, 1) ¯ ¯ 2 0 ¯ ¯ ¯ ¯ 1 ¯2 ¯ = ¯ √ ¯¯ 2 1 = . 2 |hsx ; +|ψi| 2 同様にして、x 方向下向きのスピンを見出す確率は、 ¯ à !¯2 ¯ 1 1 ¯¯ ¯ |hsx ; −|ψi|2 = ¯ √ (−1, 1) ¯ ¯ 2 0 ¯ ¯ ¯ ¯ 1 ¯2 ¯ = ¯− √ ¯¯ 2 1 . = 2 (c) x 方向のスピンを測定した後、上向き成分を取り出した時、その状態は x 方向の上向き固有状態 であるから、 1 |ψafter i = |sx ; +i = √ 2 3 à 1 1 ! である。(これは明らかであるが、公式通り計算するとすれば、 |ψafter i = = 1 ° ° P̂sx (+~/2)|ψi ° ° °P̂sx (+~/2)|ψi° à ! 1 1 √ 2 1 となる。)この状態 |ψafter i に、さらにスピン z 方向の観測を行ったとき、上向きが得られる確 率は、 |hsz ; +|ψafter i| 2 ¯ à !¯2 ¯ 1 ¯¯ 1 ¯ = ¯(1, 0) √ ¯ ¯ 2 1 ¯ 1 = . 2 同様に、z 方向下向きを得る確率は、 |hsz ; −|ψafter i| 2 ¯ à !¯2 ¯ 1 ¯¯ 1 ¯ = ¯(0, 1) √ ¯ ¯ 2 1 ¯ 1 = . 2 3. (a) レポート問題 7-2 と同じ。 (b) 期待値 hÂi, hB̂i は単なる定数で、積の順序を入れ替えてもよいことに注意すると、 ³ ´³ ´ ³ ´³ ´ [∆Â, ∆B̂] =  − hÂi B̂ − hB̂i − B̂ − hB̂i  − hÂi ³ ´ = ÂB̂ − hÂiB̂ − hB̂i + hÂihB̂i ³ ´ − B̂  − hB̂i − hÂiB̂ + hÂihB̂i = ÂB̂ − B̂  = [Â, B̂]. よって、 [∆Â, ∆B̂] = [Â, B̂] = iĈ. (c) ° °2 ° ° °D̂|ψi° = hψ|D̂† D̂|ψi ³ ´† ³ ´ = hψ| ∆ + iλ∆B̂ ∆ + iλ∆B̂ |ψi ³ ´³ ´ = hψ| ∆ − iλ∆B̂ ∆ + iλ∆B̂ |ψi ³ ´ ∵ ∆Â, ∆B̂ は自己共役演算子 o n ³ ´ = hψ| (∆Â)2 + iλ ∆Â∆B̂ − ∆B̂∆ + λ2 (∆B̂)2 |ψi o ³ ´ n ∵ [∆Â, ∆B̂] = iĈ = hψ| (∆Â)2 − λĈ + λ2 (∆B̂)2 |ψi E D E D E D = (∆Â)2 − λ Ĉ + λ2 (∆B̂)2 (d) ノルムの 2 乗は非負であるから、 E D E D E D (∆Â)2 − λ Ĉ + λ2 (∆B̂)2 ≥ 0. 4 この式が任意の実数 λ に対して成り立つので、判別式 D は0以下、つまり、 D E2 D ED E D = Ĉ − 4 (∆Â)2 (∆B̂)2 ≤ 0. よって、 D ED E 1 D E2 (∆Â)2 (∆B̂)2 ≥ Ĉ 4 が言える。 (e) [x̂, D p̂] E = i~ であるから、 = x̂, B̂ = p̂ とおくと、Ĉ = ~。この場合、~ は単なる定数なので、 Ĉ = h~i = ~。よって、 h∆x̂2 ih∆p̂2 i ≥ 4. (a) |x| ≤ a 2 ~2 . 4 におけるシュレーディンガー方程式は、 − ~2 ∂ 2 ψ(x) = Eψ(x). 2m ∂x2 この方程式の一般解は、E > 0 の場合 à ψ(x) = A cos(kx) + B sin(kx) √ k= 2mE ~ ! と書ける。(E < 0 の場合は、境界条件を満たす解は存在しないことがわかるので、考慮しなく てよい。レポート問題 10-3 参照。)|x| > a 2 の領域には粒子は入り込めないので、この領域では 常に ψ(x) = 0 であり、境界条件は ψ(a/2) = ψ(−a/2) = 0. よって、 A cos(ka/2) − B sin(ka/2) = 0 A cos(ka/2) + B sin(ka/2) = 0. 従って、両辺の和または差をとると、A cos(ka/2) = 0, B cos(ka/2) = 0 が言える。もし A = B = 0 なら、常に ψ(x) = 0 となって、無意味な解となるので、A と B のどちらかは0ではない。 i. A 6= 0 の場合 A cos(ka/2) = 0 から、cos(ka/2) = 0。従って、ka = (奇数) × π の形となる。また、この 場合 sin(ka/2) 6= 0 なので、B = 0。 ii. B 6= 0 の場合 B sin(ka/2) = 0 から、sin(ka/2) = 0。従って、ka = (偶数) × π の形となる。また、この 場合 cos(ka/2) 6= 0 なので、A = 0。 以上をまとめると、エネルギー固有関数は、−a/2 < x < a/2 の範囲において ( A cos πnx (n = 1, 3, 5, . . . ) a ψn (x) = (n = 2, 4, 6, . . . ) B sin πnx a となる。ここで、n = 0 の場合は常に ψ(x) = 0 となるので除外した。また n が負の場合は、位 相因子(符号)を除いて n q が正の場合と同じ解になるので、除外している。規格化定数 A, B は、 規格化条件から A = B = a2 と定まる(レポート問題 10 と同様の計算)。また、ψn のエネル ¡ π~n ¢2 1 ギー固有値は、En = 2m 。 a (b) 教科書5章、図 5.1 の ϕ1 , ϕ2 を参照。 5 (c) Z hx̂i ∞ ψ(x)∗ xψ(x) dx = −∞ Z = |A|2 = Z x cos2 −a/2 ¡ ∵ x cos2 0 πx a πx dx a ¢ は奇関数 µ ¶ ∂ ψ ∗ (x) −i~ ψ(x) dx ∂x −∞ Z a/2 πx ∂ πx 2 = −i~|A| cos cos dx a ∂x a −a/2 Z πx i~π|A|2 a/2 πx sin dx = cos a a a −a/2 ¡ ¢ πx = 0 ∵ cos πx a sin a は奇関数 Z hp̂i hx̂2 i a/2 ∞ = ∞ ψ(x)∗ x2 ψ(x) dx = −∞ Z = |A| a/2 2 x2 cos2 −a/2 πx dx a Z π/2 ³ |A| a πx ´ 2 2 = t cos t dt t = π3 a −π/2 µ 3 ¶ 2 ¡ ¢ 2a π π = − ∵ |A|2 = a2 と、上記の積分公式より 3 π 24 4 µ 2 ¶ π 1 a2 = − . 12 2 π 2 2 3 ¶2 µ ∂ ψ(x) dx ψ (x) −i~ ∂x −∞ Z a/2 πx ∂ 2 πx −~2 |A|2 cos cos dx a ∂x2 a −a/2 Z π 2 ~2 |A|2 a/2 πx cos2 dx 2 a a −a/2 Z π 2 ~2 |A|2 a/2 1 + cos 2πx a dx a2 2 −a/2 Z hp̂ i = 2 = = = ∞ ∗ π 2 ~2 |A|2 a a2 µ 2 ¶ 2 2 2 π ~ 2 ∵ |A| = a2 a = = よって、分散は、 D E µ π2 1 − 12 2 D E π 2 ~2 2 (∆p̂) = hp̂2 i − hp̂i2 = 2 . a (∆x̂) 2 = hx̂2 i − hx̂i2 = これら2つの分散の積をとると、 D ED E 2 2 (∆x̂) (∆p̂) 6 µ ¶ a2 , π2 ¶ π2 1 − ~2 12 2 µ 2 ¶ 2 π ~ = −2 . 3 4 = ここで、π 2 = (3.14 . . . )2 > 9 だから、π 2 /3 − 2 > 1。よって、 D 2 ED (∆x̂) 2 E ≥ (∆p̂) ~2 4 となって、確かに不確定性関係が成り立っている。 (d) 基底状態と第一励起状態は、それぞれ ψ1 (x, t) = e−iE1 t/~ ψ1 (x), ψ2 (x, t) = e−iE2 t/~ ψ2 (x) の形 で時間発展するので、初期条件が ψ(x) = √1 2 {ψ1 (x) + ψ2 (x)} であるばあい、時刻 t における状 態は、 ψ(x, t) o 1 n √ e−i~E1 t/~ ψ1 (x) + e−iE2 t/~ ψ2 (x) 2 ¾ ½ 2~ π 2 ~ π 2 1 πx 2πx √ + e−i m ( a ) t sin . e−i 2m ( a ) t cos a a a = = (e) 位置の期待値は、 Z hx̂it = ψ(x, t)∗ xψ(x, t)dx Z o n o 1 n i~E1 t/~ = e ψ1 (x) + eiE2 t/~ ψ2 (x) x e−i~E1 t/~ ψ1 (x) + e−iE2 t/~ ψ2 (x) dx 2 Z n ³ ´ o 1 x ψ1 (x)2 + ψ2 (x)2 + ei(E2 −E1 )t/~ + e−i(E2 −E1 )t/~ ψ1 (x)ψ2 (x) = 2 Z Z ª 1 a/2 © (E2 − E1 )t a/2 = x ψ1 (x)2 + ψ2 (x)2 dx + cos xψ1 (x)ψ2 (x)dx. 2 −a/2 ~ −a/2 積分の第一項は、奇関数の積分なので0。従って、第二項だけ積分すればよく、 Z (E2 − E1 )t a/2 hx̂it = cos xψ1 (x)ψ2 (x)dx ~ −a/2 Z 2 (E2 − E1 )t a/2 2πx πx = cos sin dx x cos a ~ a a −a/2 Z ³ 2 (E2 − E1 )t ³ a ´2 π/2 πx ´ = cos t cos t sin 2t dt t= a ~ π a −π/2 = = 16a (E2 − E1 )t cos 2 9π µ 2~ ¶ 16a 3π ~t cos . 9π 2 2ma2 途中の式変形で、問題文中の積分公式を用いた。 5. (a) 領域 I, II, III における解をそれぞれ ψI , ψII , ψIII と書くことにする。領域 I には粒子は進入で きないので、ψI (x) = 0。領域 II ではシュレーディンガー方程式は d2 2mE ψII (x) = − 2 ψII (x) 2 dx ~ だから、一般解は à ψII (x) = A cos(kx) + B sin(kx) k= √ 2mE ~ ! と書ける。領域 III ではシュレーディンガー方程式は d2 2m(V0 − E) ψIII (x) = ψIII (x) dx2 ~2 となり、V0 − E > 0 であるから、一般解は ψIII (x) = Ceκx + De−κx 7 à ! p 2m(V0 − E) κ= ~ 図 1: κ = −k cot(ka) と k 2 + κ2 = 2mV0 ~2 のグラフ。k > 0, κ > 0 なので、意味のある交点の存在範囲は第 一象限に限られることに注意。 と書ける。この解において、C 6= 0 なら ψIII (x) は x → ∞ で発散し、物理的に無意味な解とな るので、C = 0 とおく。よって、 ψIII (x) = De−κx . (b) 領域 I と II の間で波動関数は連続につながらなければならないので、 ψII (0) = 0. (1) また、領域 II と III の間で波動関数とその微分が連続になるので、 ψII (a) = ψIII (a) (2) 0 0 ψII (a) = ψIII (a). (3) (c) 上の条件 (1) から、A = 0。条件 (2) と (3) に代入すると、 B sin(ka) = De−κa Bk cos(ka) = −Dκe−κa . (4) (5) (5) ÷ (4) を両辺それぞれで行うと、 k cot(ka) = −κ (6) を得る。また、k と κ の定義から k 2 + κ2 = (6) 式と (7) 式から k が求まり、k が求まれば E = 8 2mV0 . ~2 ~2 k2 2m (7) からエネルギーが求まる。 (グラフ参照。) 図 2: 片方の壁の高さが有限の井戸型ポテンシャルにおける、基底状態と第一励起状態の波動関数の概形。 無限に深い井戸型の場合と比べて、波動関数のしみだしが発生することに注意。 (d) グラフより、(6) と (7) の交点が第一象限に一個以上存在するためには √ π 2mV0 > ~ 2a でなくてはならない。これが束縛状態が存在するための条件である。V0 に対する不等式として 書き直すと、 V0 > π~ 8a2 m (e) 図 2。 コメント • 問題1は、分散に関する問題。変数と定数の区別に気をつけよう。 • 問題2は、シュテルン・ゲルラッハ実験についての問題。量子力学の要請 (3) と (5) を丁寧に使えば 良いだけである。スピンに関する問題は抽象的で難しく感じられるかもしれないが、授業中にやった 光子の偏光に関する問題と内容的にはほとんど同じで、 スピン 偏光 z 方向上向き z フィルター z 方向下向き x 方向上向き x フィルター x’ フィルター という対応関係がある。(x’ フィルターは斜め 45 度のフィルター。) 例えば、z 方向上向きのスピン をもう一度 z 方向の装置に通すと、下向きで出てくる確率は 0 だが、x 方向の装置に通して上向きの スピンだけを残し、z 方向の装置にもう一度通すと、下向きで出てくる確率は 1/2 であり、0 ではな い。これは、縦横の偏光フィルターの間に斜めの偏光フィルターを挿むと光が通過するようになる現 象に対応している。 • 問題3は、不確定性関係を証明する問題。ブラケットや演算子に関する基本的な計算ルールが身につ いていれば難しくないはず。演算子のエルミート共役をとると、積の順序が入れ替わることに注意し よう。 • 問題4は、無限に深い井戸型ポテンシャルの問題。このポテンシャルでエネルギー固有値と固有関数 を求めるのは量子力学の基本中の基本なので、確実に解けるようにしておいてほしい。(d), (e) は時 間発展に関する問題。エネルギー固有状態は、時間が経っても単に位相因子がかかるだけであること と、一般の状態はそのようなエネルギー固有状態の線形結合で書けることを理解しておこう。 9 • 問題5は、片方の壁が有限の高さになった井戸型ポテンシャルの問題。これも量子力学の基本である。 壁の高さが有限の場合と無限の場合で境界条件の付け方が違うことと、粒子のエネルギーがポテン シャルエネルギーより大きい場合と小さい場合でシュレーディンガー方程式の解の振る舞いが異なる ことを理解しておこう。この問題に現れるパラメーター a, V0 を変化させた時解がどのように変化す るかを考えてみると、良い勉強になる。 • このプリントに間違いを見つけたら、工学部 B-509 号室に来るか、または sugita@a-phys.eng.osakacu.ac.jp にメールするかして連絡して下さい。これまでの配布物は、http://www.a-phys.eng.osakacu.ac.jp/ suri-g/members/sugita/lecture.htm に置いておくので、必要ならダウンロードして下さい。 プリントに間違いがあった場合の告知も、このページで行います。 • それでは、試験頑張って下さい。 試験対策チェックリスト • 量子力学の体系の概要を把握しているか。(量子力学の要請 (1)∼(5) の大体の内容を説明できるか。 関連問題:レポート問題 5, 6-1, 練習問題 2) • ブラケットの計算規則を理解しているか。(関連問題:レポート問題 1, 3) • 行列の固有値、固有ベクトルを正しく求められるか。(関連問題:レポート問題 2) • 複素数の基本的な計算ができるか。特に、オイラーの公式を正しく使えるか。(関連問題:レポート 問題 4-1, 4-2, 10-2) • 射影演算子や、完全性関係の意味を理解しているか。(関連問題:レポート問題 4-3) • 物理量の固有状態の意味を理解しているか。(関連問題:レポート問題 7-1) • 波動関数の意味を理解しているか。(つまり、絶対値の2乗が確率になるということがわかっている か。関連問題:レポート問題 8-1) • 期待値、分散、標準偏差の意味を理解しているか。また、量子力学においてそれらを求める公式を正 しく使えるか。 (関連問題:レポート問題 6-2, 7-3, 9, 練習問題 1, 4(c)。特に、運動量に関する期待値 の計算に注意。) • 数ベクトルを使った記述と、連続変数の関数を使った記述の関係を理解しているか。特に、関数の内 積が積分になることを理解しているか。 • 微分演算子を含む交換関係を正しく計算できるか。(関連問題:レポート問題 8-2) • 不確定性関係の内容を説明できるか。(関連問題:レポート問題 7-3, 9, 練習問題 4(c)) • エネルギー固有状態を使って波動関数の時間発展を求める手順を理解しているか。 (関連問題:レポー ト問題 12, 練習問題 4(d)) • 井戸型ポテンシャルにおいてエネルギー固有状態を求める手順を理解しているか。 (特に、壁の高さが 有限の場合と無限の場合の境界条件の違いを理解しているか、また、粒子のエネルギーがポテンシャ ルエネルギーより高い場合と低い場合の解の振る舞いの違いを理解しているか。関連問題:レポート 問題 10, 11, 練習問題 4,5) 10
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