スイス外国企業誘致局ニュースレター

スイス外国企業誘致局ニュースレター
2013 年 3 月
「スイスを活用した
グローバル経営セミナー」
開催
スイス外国企業誘致局では、1 月 31 日、三菱東京 UFJ 銀行と共催、あずさ監査法人の協賛で
「スイスを活用したグローバル経営セミナー」を開催し、スイスの経済情勢、投資環境、日
系企業の投資動向などを紹介した。
欧州危機やスイス・フラン高など逆風が吹いているにもかかわらず、経済成長を続けているスイ
ス。同国では、多くのグローバル企業が拠点を構え、スイスを中心とした事業統括スキームや知
財管理を行っている。グローバルな飛躍を展開・計画されている日系企業の担当者が多数参加し
て開催された。同セミナーの要点は、以下の通り。
スイスに事業・研究拠点を置くメリット
○
イノベーションの能力が高く、研究開発施設に有利な国のランキング世界1位(日本
は 25 位)/グローバル・イノベーション・インデックス 2012 年版発表
セミナーで開会挨拶をする
ブーヘル駐日スイス大使
○
世界で最も競争力があり、ビジネスがしやすい国のランキング、4年連続世界1位
(日本は 10 位)/世界経済フォーラム発表(ビジネスインフラ・制度、人材のレベル、
労働市場の効率性、ビジネスの洗練度、イノベーションのレベルなどで評価)
○
生活水準が高く、生活がしやすいスイスの大都市(世界ランキング:2位・チューリ
ヒ、8位・ジュネーブ、9位・ベルン)/マーサー・ヒューマンリソース・コンサル
ティング発表
○
柔軟性があり、企業ニーズに即した税制度(法人税率が 12‐24%のレベルに抑えられ
ている。特定のビジネス形態、または企業と州・連邦政府との協議によりさらに優遇
される:例/持株会社、ミックスカンパニー、プリンシパルカンパニーなどの制度)
スイス経済の状況(三菱東京 UFJ 銀行の発表)
講演を行う KPMG スイスの
ステファン・クーン氏
○
スイスの経済規模は、GDP 世界 19 位、一人当たり GDP は世界4位(IMF 調査:日本
は、各3位、17位)
○
欧州経済危機、スイス・フラン高などの逆風の中、2012 年の経済成長率 1.0%成長を
達成。2013 年は 1.3%、2014 年は 2.0%成長との予測。
Newsletter March 2013 | 1
○
失業率は 3%前後と極めて良好。
○
日系企業のスイス大型 M&A は引き続き増加。欧米企業と同様に、統括機能をスイスに
移転する動きも活発化。
スイスの柔軟な税制度
○
欧米企業は税金をコストとして認識し、無駄を省こうとする意識が定着。日本企業に
もようやく認識され、浸透し始めている。
○
日本の税制度に則して、海外市場において利益を生み出す原動力(知的財産、バリュ
○
1)低税率、親子間配当・使用料源泉税ゼロなどスイスが提供する優遇税制、2)スイ
ーチェーンなど)を低税率国など有利な場所に移転するスキームなども検討すべき。
スの安定した政治・経済情勢、3)EU をはじめとする欧州他市場への好アクセス、4)
優秀な人材を活用するなど、スイスに販売・知財管理など統括会社を設置することに
メリットが多い。
東京エレクトロン、スイス・
エリコンソーラー社の買収完
了を発表
社名を TEL ソーラーへ
東京エレクトロン株式会社は、2012 年 11 月 26 日をもってスイス・エリコンソーラー社の買
収を完了したと発表した。社名を TEL ソーラーAG と変更し、再スタートをきった。
東京エレクトロン株式会社は、2012 年 11 月 26 日をもってスイス・エリコンソーラー社の買収
を完了したと発表した。社名を TEL ソーラーAG と変更し、再スタートをきった。同社が一貫製
造する薄膜型シリコン太陽電池は、高温になっても発電効率がほとんど低下せず、今後、普及が
期待される熱帯・亜熱帯地域で強みを発揮する。同社は、スイス・ヌーシャテル州にある研究所、
2012 年 3 月につくばに開設した「テクノロジーセンターつくば」
、およびスイス・ヴォー州にあ
り太陽電池技術で世界的に有名なスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)と連携し、技術革
新を続けてゆくとのこと。さらなる普及に向け、スイスと日本の最先端テクノロジーが結集し、
TEL ソーラー社が製造する
薄膜型シリコン太陽電池パネル
技術の飛躍的な発展が期待される。
東京エレクトロン株式会社 常務執行役員 PVE 本部長 伊藤高司氏のコメント
「薄膜シリコン型太陽電池は、材料の価格変動に依存せず、先端技術を駆使することによって、
発電コストを最少化できる特徴を持った太陽電池です。この度のM&Aにより、弊社はスイスと
日本のリソースを余すところなく活用し、薄膜シリコン型太陽電池の飛躍的な技術革新を目指し
てまいります。
」
TEL ソーラー社マネージメントチーム
Newsletter March 2013 | 2
欧米企業、相次いでスイス
拠点を設立
アメリカ最大のドラッグストアチェーン・ウォルグリーンと欧州のブーツが、スイスに新会
社を設立
アメリカ最大のドラッグストアチェーン・ウォルグリーンと欧州の巨大チェーン・ブーツが、合
弁会社をスイス・ベルン州ベルンに設立。今後、欧州での更なるビジネスの拡大、出店攻勢にで
る。ウォルグリーンは、2012 年 6 月にブーツ株の 45%を取得。両社の連携により、世界最大級
のドラッグストア・チェーンが欧州に誕生し、その本社の所在地としてスイスが選ばれた。
(2012 年 10 月、ブーツ社のプレスリリース、およびスイス外国企業誘致局の調査より)
IBM、スイスに欧州で3カ所目の大規模クラウド・コンピューティングセンターを設立
IBM が、スイス・チューリヒ州ヴインタートゥールに企業、および公共機関向けの大規模クラウ
ドコンピューティングセンターを設立すると発表した。IBM では、全世界でこの大規模データセ
ンターを拡大中で、現在までに米、独、仏、豪、日本など 8 カ所(欧州では3カ所目)に設置さ
れている。
(2013 年 2 月 5 日、IBM のプレスリリースより抜粋)
米・ダウケミカル社、スイスに風力発電の試験センターを開設
米・ダウケミカル社が、スイス・シュヴィーツ州のフライエンバッハに、風力発電技術の試験セ
ンターを開設した。フライエンバッハは、チューリヒより 30 キロ南東の町。ここにダウケミカ
ルは、800 平方メートルに及ぶ研究開発、試験センターを設立。これにより、同社はレジン、フ
ォーム、接着剤などの従来までの製品から、風力発電用ブレードの製造までカバーできるように
なったと発表した。
(2013 年 1 月 10 日、同社プレスリリース、およびスイス外国企業誘致局の
調査より)
米・3M 社、スイスに欧州のサービス拠点を統合
米・3M 社が、欧州の複数カ国のサービス拠点をスイス・ベルン州ブルクドルフに統合するこ
とを発表。約 250 人の従業員が、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダなどから
スイスに移住することになる。スイスは、政治や経済が安定しており、生活レベルが高く、欧州
でもっとも外国人が住みやすいと言われる国である。また、ベルン州はインターナショナルスク
ールなどの教育施設が整っており、家族での移住が容易である。3M ではその点も重視し、ス
イスを選択、ほぼすべての対象従業員がスイスへの移住を希望しているとのこと。同施設は、本
年 4 月にオープン予定。
(2012 年 11 月、スイス外国企業誘致局の調査より)
Newsletter March 2013 | 3
スイス在住を経て ‐
スイス滞在経験を持つ日本人
にインタビュー
聞き手:元日本経済新聞社チューリヒ支局長
磯山友幸
磯山友幸(いそやま・ともゆき)
1962 年生まれ。早稲田大学政経学部卒。1987 年日
スイスには昔から国外からの移住者が少なくない。ロシアの革命家ウラジーミル・レーニン
のような政治亡命から、喜劇俳優チャールズ・チャップリンのような晩年を過ごすための移
住まで、理由は様々だとはいえ、数多くの外国人を引き付けてきた。最近は税金が安いとい
った経済的な理由で移住する企業創業者なども増えている。日本人でスイスに移り住む人は
まだまだ少ないが増加傾向にあるようだ。スイスに滞在経験のある日本人に聞くインタビュ
ー・シリーズ。今回はスイスに「移住経験」のある麻植茂さんに話を聞いた。
麻植さんは日本の準大手の会計事務所であるグランドソントン太陽ASGグループの創業者
のひとりです。退職を期にスイスに移住されたそうですが、何年の事ですか。
本経済新聞社入社。証券部記者、日経ビジネス記者
麻植
などを経て 2002 年〜2004 年までチューリヒ支局
が、不整脈で定期的な通院が必要になり、主治医のいる日本に戻ってきました。もちろん、スイ
長。その後、フランクフルト支局長、証券部次長、
スの医療水準が高いことも承知していましたが、体調の微妙なやり取りとなるとやはり日本がい
日経ビジネス副編集長・編集委員などを務めて
いだろうということで帰国しました。2004 年4月ですから、残念ながら3年弱の「移住生活」
2011 年 3 月に退社、経済ジャーナリストとして独
だったことになります。
立。熊本学園大学招聘教授なども務める。
チューリヒに移り住んだのは 2001 年 10 月のことです。そのまま永住するつもりでした
なぜ移住を決めたのですか。
麻植
私は公認会計士でしたが、職業専門家としての能力は 50 歳代でピークアウトします。60
歳で完全にリタイアしようと常々考えていました。しかし、年長の私がいると何かと若い人たち
が頼りにするため、なかなか仕事と縁が切れませんでした。それなら、いっそのこと、海外に移
住してしまおうと考えたわけです。もともと日本的なルールの運用が曖昧な社会は好きでなく、
外国の方が性に合うと思っていたこともあります。日本に飽き飽きしていたわけです。
なぜスイスだったのですか。
麻植
まず安全であること、そして英語が通じること、そして欧州の中心にあって何よりも便利
であることが理由でした。実は、移住する数年前でしたか、チューリヒに行った際に、スイス人
の若い弁護士と知り合いました。その時、日本人がスイスに移住するのは難しいんだろうね、と
何気なく聞くと、いやいやチューリヒ州に退職者を移民として受け入れるリタイアメント・プロ
グラムが導入されたのでチャンスはあるという話をしてくれたのです。スイス移住後は労働しな
いことが条件で、一定以上の消費をすることが義務付けられていました。スイス人の雇用は奪わ
ずに消費を喚起してくれる人を受け入れるというわけです。
一定の消費とは。
麻植
ある一定額の財産証明を提出するのです。そのうえで、消費する額は日本円にして月 100
万円ぐらいだったと記憶しています。これにはアパートの賃借料なども入りますから、そんなに
無理な金額ではありません。加えて、犯罪歴がないことも条件の1つでした。
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その退職者の移住プログラムに応募されたわけですか。
麻植
はい。弁護士に委任状を渡して頼んでおいたのです。申請にはこのほかに、スイス国籍を
持つ人2人の推薦状が必要だったと思います。お願いしたのはツーク市で代々800 年も続くとい
うファミリーのひとりでした。スイスの建国は 1291 年ですから、建国以前からの歴史があると
いうわけです。日本の会社の代理人などを引き受けていた人物で、仕事の関係でかなり前に知り
合っていた人でした。もうひとりはスイスにあった日系の金融機関に頼んで作ってもらいました。
そして許可を得たわけですね。
麻植
あまり期待していなかったのですが、半年ほどして突然連絡が来ました。許可が下りるか
ら3カ月以内に住所を定めて居住申請せよ、ということになったのです。居住許可は1年更新で、
問題がなければ6-7年で定住できる許可に変わると聞いていました。実はそれまで家内にはき
ちんと話しをしていませんでした。
「長期の旅行に行くようなものだから」と言って説得しまし
た。
チューリヒ湖が見下ろせるアパートを借りて、生活を始めると非常に快適でしたね。チューリ
麻植
茂(おえ・しげる)氏
1941 年 3 月神戸生まれ。1963 年、一橋大学商学部卒
ヒを拠点にヨーロッパ各地を旅行して歩きました。むしろ家内の方が気に入って、私の病気で帰
国を決めた時も自分だけ残りたいと言っていたほどでした。
業。会計事務所勤務を経て、1969 年会計事務所設
スイスの中でもチューリヒは外国人に優しい町です。言うまでもなくスイスは、大きく分けて
立。1985 年監査法人を創設し代表社員などを務め
ドイツ語圏とフランス語圏、イタリア語圏から成り立っています。ですから、自分と違う言葉を
る。他の監査法人との合併を推進、現在の太陽ASG
監査法人に育てた。2001 年に退職、会計士を廃業
し、チューリヒで引退生活を送った。2004 年に帰
国。現在、社会貢献活動に取り組む。
話す人に対して非常に寛容です。英語を話せる人も非常に多いですね。市役所の手続きなども英
語で対応してくれます。そうした日常の生活でのストレスが極めて小さいところではないでしょ
うか。
最近は日本人の資産家でスイス移住を希望する人が多いようです。
麻植
私も資産家の財産管理アドバイスなどを長年してきました。日本の場合、相続税が高いこ
ともあり、企業の創業者などの間で、海外に資産を移そうというニーズが高まっているのは間違
いありません。これは世界的な傾向です。最近、フランスが富裕税を課すことを決めた途端に、
フランスの資産家がベルギーなどに移住しています。
フランスからベルギーへの移住なら、フランス語も通じますから国内移動のようなものです。
まったく何の躊躇もなく移住できるでしょう。ヨーロッパ人がヨーロッパ内の他の国に移住する
のもさほど苦労はないでしょう。基本にある文化はかなり共通していますから。言葉が違うのが
壁だと言うかもしれません。だから多言語国家のスイスが移住先として好まれるのでしょう。
ですが、われわれ日本人にとってはこの生活文化の違いはかなり大きなハードルだと思います。
税金のために外国に移住したいと思う人が 100 人いたとすると、実際に移住に踏み切れるのは
5人以下です。もともと外国暮らしが長く、西洋文化に馴染んでいるとか、私のように日本的な
ものに飽き飽きしてでもいない限り、移住はストレスでしょうね。
よくスイスは税金天国だと言われ、課税を逃れた人たちが移り住んでいるとされます。ですが
スイス政府は課税逃れの移住者は好ましくないと思っているそうです。私が利用した退職後移住
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のプログラムの場合、居住実態があるかどうか厳格にチェックされるとの話でした。居住許可証
の更新の際に、居住実態がないとして、許可の更新が受けられなかった人もいたそうです。
文化と言えば食事の違いは問題なかったのですか。
麻植
実は私は、健康上の理由から魚中心の食事にしています。私が移住した 2001 年ごろには
チューリヒでも日本食ブームが盛り上がっていました。町中のミグロやコープといったスーパ
ー・マーケットでも鮮魚コーナーが充実しているところが増えていて、刺身用のサーモンや鮪な
どを買うことができるようになっていました。もともと魚はあまり食べない国民なのですが、寿
司ブームのおかげで、チューリヒの町中には回転ずしレストランなどもできていました。私が帰
国した後は一段と日本食が一般的になったようですから、食材などは簡単に手に入るようになっ
ているのではないでしょうか。
スイスは日本人にとっても暮らしやすいということですね。
麻植
はい。ヨーロッパの中で一、二番目に外国人が暮らしやすい国であることは間違いありま
せんが、それは日本人にとっても同じだと思います。ただ、いずれにせよ、好奇心が旺盛な人で
ないと、外国暮らしは辛いと思いますね。
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