知的障害児教育における「総合的な学習の時間」の現状と課題 −「生徒の

知的障害児教育における「総合的な学習の時間」の現状と課題
−「生徒 の興味 ・関心 」を中心 にすえた実践の検討−
要旨: 本研究の目的は、生徒の主体的 な社会自立を目指して「支援ツール 」
(例えば、高畑・武蔵 , 2000; 富山大学教育学部附属養護学校, 2001 )の開発
を行って、知的障害児を取り巻く環境の改善ならびにその有効な活用の在り
方について 研究実践 を行っているA養護学校を対象として、そこでの「総合
的な学習の時間」であるボウリング利用教室の取り組みの概要を報告し、そ
の実践の在り方について検討するものである。具体的には、支援ツール「ボ
ウリングお助けブック」や「お助け財布」を作成し対象生徒に提供して、養
護学校の授業で実践し、その経過及び休日の実行について個別の事例を報告
する 。知的障害児教育における「 総合的 な学習の時間 」の授業実践 としては 、
「生徒の興味・関心」を中心に据えた「クラブ 」的取り組みの実践が求めら
れている(坂本・河田, 2002)。「生徒の興味・関心」を大切にしながら、個
々の生徒がより主体的に取り組みながら、日々の生活の質の高まりや家庭生
活などへの拡大に寄与するための 配慮の在り方について考察した。
はじめに
本稿においては、このような知的障害児教育
前報( 坂本 ・河 田, 2002 )で は、 知的障 害 児
に お け る 「総合的な学習の時間」の授業実践と
教育、特に 知的障害養護学校における「総合的
し て 、「 生 徒 の 興 味 ・ 関 心 」 を 中 心 に 据 え 、 さ
な学習の時 間」の実施状況に関する質問紙によ
ら に、家庭生活への拡大も視野に入れた実践で
る調査を行 い、その結果を報告した。その中で
あ るA養護学校での「総合的な学習の時間」と
特に、知的障害児教育においては従前から「経
し て の ボウリング場利用の取り組みの概要を報
験カリキュラム」を根幹とした生活単元学習や
告し、そのあり 方について検討を加えたい 。
作業学習な ど の 「教科・領域にわけない指導」
を中心と し た教育課程編成がなされており、今
方法
回の「教科 カリキュラム」にその基を置く「総
1
対象校
合的な学習 の時間」の導入に対して非常に大き
知 的 障 害 児 の 社 会 自 立 を 目 指 し 、「 支 援 ツ ー
な戸惑いがあることが明らかになった。また、
ル 」( 例 え ば 、 高 畑・ 武 蔵 , 2000; 富 山 大 学 教
「 生徒の興味・関心 」に中心にすえた「 クラブ 」
育学部附属養護学校 ,2001 )などの開発を行い 、
的取り組みがほとんどの学校で実施されてお
障 害 児 を取り巻く環境の改善ならびにその有効
り、その実 施においては「生活の質の高まり」
な 活用の在り方について、研究実践を行ってい
を 念 頭 に お き 、「 家 庭 生 活 な ど へ 拡 大 」 す る 取
る A 校を対象校とした 。
り組みとなるように配慮すべきであると指摘し
2
た。
総合学習
A養護学校高等部では、卒業生の生活実態調
査(高畑・ 武蔵,1997)を研修する機会を設定
こうした三種類の営みの中から 、本稿では「 レ
し、普段家 で一人で過ごす時にする活動内容で
ジ ャ ー ・スポーツ教室」を取り上げる。この教
は 「 テ レ ビ 」「 CD 音 楽 鑑 賞 」 な ど が 圧 倒 的 に
室 では、地域のボウリング場を、一人もしくは
多いこと 、休日などの屋外での過ごし方では「 家
友 人 同 士 で休日に利用できることを目標として
族での買い 物・デパート巡り」が多いこと、運
い る。ボウリングは、比較的簡単なスキルで楽
動・ス ポ ー ツでは体を動かす活動は非常に少な
し め、年齢・性別を問わず広く取り組まれてい
い実態に ついての共通理解を得た。また、在校
る レジャー・スポーツである。また、ボウリン
生に つ い て も、静的・受動的な活動で変化の無
グ 場は晴雨に関係なくいつでも利用でき、必要
い余暇を過ごしている現状が確認された 。
な 用具が全て揃っており、得点集計もコンピュ
こうした 卒業生ならびに在校生の家庭での状
ータで自動計算 される 。さらに 、今回利用 した B
況を踏まえ、 A 校高等部では、現在の生活充実
ボ ウ リ ン グ場は 、 JR の C 駅 近く に あ り生徒が
に加え、卒 業 後 も含めた豊かな生活の創造を目
利 用しやすい立地条件である。このようにボウ
指して、平 成9年度より「総合学習」を教育課
リ ン グ 場利用の仕方を学習することは、知的障
程に取り入 れた。それは生徒一人一人の趣味や
害 のある生徒が地域の余暇資源を積極的に活用
特技、継続 して取り組めることを見つけ、充実
す る こ と を通して、豊かな社会参加の契機の一
した休日や 余暇を過ごして欲しいという願いか
助 となるものとの考えのもとに取り組まれてい
らであった。
る。
この学習 を展開するに当たって次のような点
4
に留意した。
検討方法
授業場面では筆記記録とビデオ録画により各
・生徒の興味・関心やニーズを把握する。
生 徒の実施状況を記録した。休日の活動は、約
・家族との 連携・協力が不可欠なので、保護者
束 カード及び本人、保護者、クラス担任からの
の意向やニーズを把握する。
・多様な生 徒に対応するために、できる限りの
多様な活動を準備する。
・可能な限り地域での実際的な活動を多くす
る。
・ 選 択 の 機 会 を 多 く す る た め に 、 前 期 ( 4月 か
報 告により記録を行った。事例研究として2名
を 取り上げ、それらの記録を分析した。事例1
で は平成x年9月から3月 まで、事例2では平成
x 年6月から平成x年+1年3月までと平成x
+ 1年11月から平成x年 +2年3月までの二期
の支援状況について検討を加えた。
ら 9月 ) と 後 期 ( 9月 か ら 3月 ) の 二 期 制 と す
る
支援の経過と結果
平成10年度からの実施に当たっては、本人と
1
取り組みの概要
保護者に活 動 内 容 にアンケートを実施した。そ
生徒一人一人が「レジャー・スポーツ教室」
の 結 果 を 受 け て の 教 員 同 士 で 協 議 の 上 で 、「 レ
で の活動を通して、ボウリング場が生徒にとっ
ジャー・スポーツ教室 」「クッキング教室 」「カ
て 有効な地域の余暇資源になることを目指し、
メラ・ビ デ オ教室」の三つの教室を設定した。
Table 1に 示したように 学校での支援や家庭で
そして、教 室の所属は、本人と保護者の希望で
の 支援が無理なくつながることを考慮し、現地
選択することとした。
での実地指導を原則とし継続的 に行った 。なお 、
ボウリング 場を利用するための一連の流れを表
保護者に対しては、写真を中心に構成した通
2に示した 。この手順を決めるに当たっては、
信 「ボウリングかわら版」を発行し、個々の生
ボウリング 場の支配人と話し合いの機会を持
徒 の様子や友達同士で利用可能であることを伝
ち、生徒が 利用し易いよう利用手続きの次の三
え 、家庭でも話題となり、更に休日にボウリン
点を依頼し 了承を受けた。第一点は療育手帳を
グ 場に出かけるように働きかけた。合わせて、
提示した場 合には団体割引料金とすること。第
休 日に友達と行く場合には、待ち合わせ時間と
二点は団 体 割 引 の場合に発行される「シューズ
友 達の名前を明記する「約束カード」の記入を
券」の発行 をせずに、一般の利用者が行う「シ
行 うようにし、家族がその内容を確認した上で
ューズレンタル機」を利用できるように料金体
出かけるように 配慮した。
系を変更してもらうこと。第三点は忘れ物など
こうした諸準備や配慮の中で、平成x年度後
のトラブル にあった場合には直ちに学校へ連絡
期 (9月から3月)の授業 に取り組んだが、最初
してもらうという点であった。
は 生徒9名いずれもボウリング場利用がほとん
さらに、 ボウリング場利用の流れを生徒一人
どできなかった。しかし、半年間の取り組みの
一人に合わ せ て 分析し、Fig.1に示したような
中 で、6名は「ボウリングお助けブック」を利
「ボ ウ リ ン グお助けブック」を作成した。この
用 すれば一連の活動を一人で行うことができる
ボウリング お助けブックは、写真と簡単な文字
ようになった。また、残りの3名はいずれもシ
を手がかりにして、一つ一つの手続きが分かる
ューズレンタルが課題として残ったが、ボウリ
ように写真と言葉で説明したブック型のもの
ン グ場スタッフの支援を得ることで一連の活動
と、ど こ ま で行ったか見失いがちになる生徒が
を 行うことができるようになった。また、休日
自分でチ ェ ッ ク しながら手続きを進めていくチ
に 友達とボウリングに出かけるようななった者
ェック表 形 式の2タイプを作成し、毎時間の授
が 6名 お り 、 生 徒 同 士 で の ボ ウ リ ン グ 場 利 用 が
業において 生徒が主体的に活用できるよう支援
授 業 期 間 中に延べ49回、 授業終了後の1年間で
した。また 、場面に応じてカードやお金を分類
も 延べ27回もあった。このうちの1名は16回も
し て 入 れ て お く こ と が で き る F i g.2 の よ う な
行 っていたが、学校を卒業した今でも、友達を
「お助け財布」も活用した。
誘 ってボウリング場を利用している。一方、ボ
このようなお助けブックなどを休日も活用で
ウ リ ン グ 場の友達との利用がなかった者3名の
きるよう、 ボウリング場のスタッフに対してそ
う ち の 2名は家族同伴での利用があり、保護者
の機能と使 用 方 法 について説明し、困っている
か ら は ボウリング場でスムーズに活動する我が
場合にのみ 直接支援してもらうことを授業の取
子 の姿を嬉しく思ったとの連絡が学校になされ
り組みの中で、実地に依頼した。
た。
そして、 どの生徒もボウリングを通して友達
との遊び方 や楽しさを知りながら、卒業後も助
2.支援事例
け合い支え 合える関係を育み、続けていって欲
(1)
しいと願い 、友達と一緒にボウリングが楽しめ
①
る環境と なるよう 、男女や自宅の位置なども考
高等部1年生のD君は、作業場面では不要な
慮してグループ編成を行った。
事例1
対象生徒 の様子
おしゃべりが多く途中で作業の手が止まること
もあるが、 明るく活動的な男子生徒であった。
そして、休日などに自分からボウリング場の
家庭は本人 、両親 、姉 、姉 の5人家族であった 。
利 用を家族に申し出るようにもなり、平成x年
両親は、本 人への支援に対して大変熱心で積極
9 月から平成x+2年 3 月の間だけでも、 E 君
的であった 。家庭からは、休日などに時間を持
をはじめとするレジャー・スポーツ教室に所属
て余し、なにをするではなしに一人で外出する
し た 友達 と一 緒に 16 回 もボ ウ リ ン グ を楽 しむ
ことがよくあり、心配しているとの相談もなさ
姿がみられた。
れていた。
②
支援経過の概要
a 平成x年度後期総合学習(平成x年9月∼
平成x+1年3月)
(a)
支援ツール
D君のボウリング 場利用の手順をTable 2の
③
まとめ
これまで校外学習で出かける場所はD君にと
って 、休日に出かけるほどの魅力がないものか 、
魅 力があってもその利用がD君一人では難しい
ものになっていたように思われる。しかし、今
回 のボウリングの取り組みでは、ボウリング場
様にし 、その手順を「 ボウリングお助けブック 」
を 利用するための支援ツールの導入、ボウリン
として、 13cm×10cm ミ ニ ク リ ア ブ ッ ク に、右ペ
グ 場スタッフの協力によって、休日には友達を
ージに各 項 目が言葉で、左ページにそれに対応
誘 ってのボウリング場利用が報告されるように
する写真が 示してあるようなものを使用した。
な っ た 。また、本実践で導入した「ボウリング
(b)
経過概要
お 助けブック」は、教師の指示や支援を最小限
ボウリング場を初めて利用した9月9日は教
に し、ボウリングを友達と楽しむ体験を重ねる
師の支援が 一連の活動の約8割程度必要であっ
中 で、次回を楽しみにして待つ気持ちや友達に
た。そこで 、9月17日に「ボウリングお助けブ
積 極 的 に関わろうとする態度も育んだものと思
ック」の制作を教師と一緒に行った。
われる。
そして、 9月24日に、ボウリング場で、各手
(2)
事例2
続 き の 場 所 へ と 移 動 し な が ら 、「 ボ ウ リ ン グ お
①
助けブック 」の各項目を読んで、何を行うかを
高等部1年生のFさんは、明るく穏やかでの
確認するよう 支援した。
対象生徒 の様子
んびりとした性格の女子生徒であった。縫製作
その後、E君との2人組グループになり、ボ
業 や塗り絵などの好きなことや得意なことに対
ウリング場 を5回利用した。その中で、1回目
し て は マイペースでこつこつと取り組み、細か
(10/10)は 療 育 手 帳 提 示 と 料 金 支 払 い に 教 師 や
な 作業でも正確で丁寧な作業をすることができ
ボウリング場スタッフの支援が必要であった
た 。一方、掃除や買い物などの十分に習得して
が 、「 ボ ウ リ ン グ お 助 け ブ ッ ク 」 を 参 照 し な が
い な い 手順を伴う活動に対しては消極的で、周
ら 、シューズ の自動レンタル 機の操作ができた 。
り か ら の 手助けや確認、称賛がないとなかなか
3 回 目 (10/22)は 、 D 君 が わ か ら な い 場 合 に お
活動が進まない 様子が見られた 。
助けブック の参照を促す声がけをすることで、
家庭は本人、両親、弟 、妹、祖父母、曾祖父
一連の利用行動ができるようになった 。そして 、
母 の9人家族である。両親や祖父母は、本人へ
約 4 か 月 後 の 5 回 目 (2/3)の 際 は 、 ほ と ん ど の
の 支援に対して大変熱心で積極的であった。母
手順を一人で行うことができた。
親 から本人への要望として、やや肥満傾向にあ
るので一人 でできる簡単な運動を身につけさせ
年 11 月∼平成x+2年3月)
たい、年 齢 相 応 な趣味を身につけさせたいなど
(a)
の項目が挙げられた。
「 ボ ウ リ ン グ お 助 け ブ ッ ク ( 改 良 版 )」 と し
支援ツール
②
支援経過の概要
て 、平成x年後期のものに、次の移動場所を示
a
平成x年度後期総合学習(平成x年9月
す 言葉や荷物の整理、売店の利用などの周辺行
∼平成x+1年3月)
動 に関するページ、トラブルが起きた時用のペ
(a)
支援ツール
D君同様 の「ボウリングお助けブック」を使
用した 。ただし 、シューズレンタル機のサイズ 、
ボウルについてはFさん用の写真とした 。
(b)
経過概要
ージをつけ足した。
(b)
経過概要
平成x年後期に行ったブックの利用が定着し
ており 、「ボウリングお助けブック(改良版 )」
の 使い方への支援は特段必要なかった。新たに
ボウリング場を初めて利用した9月9日は教
追 加したページについては、お助けブックの参
師の支援が 一連の活動の約7割程度に必要であ
照 を促す声がけがあれば、写真を見ながら行動
った。そ こ で、9月16日に「ボウリングお助け
することができた。ボウリングゲームをしてい
ブック」の制作を教師と一緒に行った。
る と き 、機械が動かない場面があった。そのと
授業では、女子生徒3人のグループでボウリ
き 、「 困 っ た と き は 、 ト ラ ブ ル の ペ ー ジ を み れ
ング場を5回利用した。その中で、1回目(10/
ば い い よ 」の声がけで、ボウリング場スタッフ
10)は 療 育 手 帳 提 示 と 料 金 支 払 い に 教 師 や ボ ウ
を 呼び出すボタンを押すことができ、自分一人
リング場スタッフの支援が必要であったが 、
「ボ
でトラブルを回避することができた。
ウリングお 助けブック」を参照しながら、シュ
また、ボウリングの授 業、家族でのボウリン
ーズの自動 レンタル機の操作ができた。2回目
グ での様子に関して、Fさんの母親から連絡帳
(10/15)はゲーム延長を一人で行う場面となり 、
を通じて感想が次のような寄せられた。
「ボ ウ リ ン グお助けブック」を参照するように
・ いつもボウリングの写真をありがとうござい
促 し た 。 3 回 目 (10/22)は 、 フ ロ ン ト か ら シ ュ
ます。 家の様子とは違って生き生きしていて
ー ズ コ ー ナ ー へ の 移 動 に 際 し て 、「 ボ ウ リ ン グ
高校生 らしくしっかりしているように見えま
お助けブ ッ ク」の参照を促すことが必要であっ
す。
た以外は一 人で行うことができた。そして、約
・ ボウリングに行った日はスコアをいつも見せ
4 か 月 後 の 5 回 目 (2/3)の 際 は す べ て の 手 順 を
て く れ ま す。点数はあまり出ないようですが
一人で行うことができた 。
楽しんでいるようなのでぜひ機会を見つけて
また同時 に、授業の様子を写真を中心とした
Eさんと行かせてみたいと思います。
通信で家庭 に提供すると共に、休日に友達同士
・ 今日は家族でボウリングに行ってきました。
でボ ウ リ ン グに行くことを促した。友達との外
靴を出 したり、申し込みを書いたりさっさと
出を促す よ う な 家庭の働きかけはなかったが、
していました。そんな姿をとてもうれしく思
その分、家 族とボウリングに出かけるような機
いました。
会を作っていただいた。
④
b 平成x+1年度後期総合学習(平成x+1
まとめ
馴染みの薄い活動にはどうしても引っ込み思
案になりがちなFさんであったが、今回の取り
感 じることのできる「総合的な学習の時間」の
組みの中で 、学校からボウリング場に出かける
取り組みの有り様を追求していきたい。
日になると 「ボウリングお助けブック」などの
準 備 を 自 分 か ら 進 ん で 行 っ た り 、「 今 日 、 ボ ウ
文献
リング行く よ」などと教師や家族に積極的に話
坂本
裕 ・ 河 田 将 一 ( 2002 ) 知 的 障 害 児 教 育 に
しかけたりしてくるようになった。こうした姿
おける「 総合的な学習の時間 」の現状と課題 .
は家庭か ら の連絡帳の記述にもあるように周囲
せいかつか&そうごう,9,130-137.
の者にとって 、とても嬉しいものであった。
しかし、 活動の広がりの点からすると、家族
でのボ ウリング場利用は数回あったものの、友
高 畑 庄 蔵 ・ 武 蔵 博 文 (1997) 知 的 障 害 者 の 食 生
活、運 動・スポーツ等の現状についての調査
研究.発達障害研究,19,235-244.
人同士での 利用までは至らなかったことが今後
高 畑 庄 蔵 ・ 武 蔵 博 文 ( 2000 ) 生 活 技 能 支 援 ツ ー
の課題と な っ た 。保護者にとって、女子生徒だ
ルによるなわとび運動の習得過程と家庭での
けでのボウリング 場利用についてはもうひとつ
長期的維持の検討 .
積極的になれなかったのかもしれない。ただ、
13-23.
社会の余 暇 資 源 を活用することはFさんの社会
参加を確実 に進めるものであると考えられる。
そ の た め に は、今後、ボランティアなどの人的
資源の積 極 的な活用も組み入れた活動を考えて
いきたい。
おわりに
今回の報 告で検討を加えた「総合的な学習の
時 間 」 の 授 業 実 践 で は 、「 生 徒 の 興 味 ・ 関 心 」
を大切に しながら、個々の生徒がより主体的に
取り組み 、成功経験を重ねることができるよう 、
支援ツール が用意され、ボウリング場スタッフ
や家族の支 援を受けながら、実地での活動が繰
り返し展開 された。このことで、いずれの生徒
も毎回のボウリング を楽しみにし、家族とボウ
リングを、 さらには自分から友達を誘って楽し
もうとする姿を見せてくれるようになった。
今回はボウリングの取り組みについて検討を
加えたが、 今後更に他の活動についても検討を
加え、往々 にして活動の場が制限されてしまい
がちになる 知的障害をもつ生徒一人一人が「自
分の興味・ 関心」を実現し、達成できる喜びを
特殊教育学研究 , 37, 4,
富 山 大 学 教 育 学 部 附 属 養 護 学 校 (2001) 個 性 を
生かす支援ツール.明治図書 .
Table1 平成X年度後期総合学習「
レジャー・
スポーツ教室」
指導計画
月 日
10月6日 導入
計 画
活 動 内 容
時 間
・各活動グループの説明を聞く
40分×2
・生徒が活動グループの選択
時限
10月9日 保護者へのプリント配布 ・保護者と話し合い最終的に教室を選択
10月12日 選択教室の決定
・プリント及び学部掲示で教室を発表
10月14日 校外学習1(事前調査)
・ボウリング場利用テスト 40×4
10月21日 事後・事前学習
・ボウリングの感想の発表
・「ボウリングお助けブック」
の制作
40×4
12月2日 校外学習2(指導1)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
12月9日 校外学習3(指導2)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
1月13日 校外学習4(指導2)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
1月20日 校外学習5(指導2)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
2月10日 校外学習6(指導2)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
2月19日 校外学習7(指導2)
・「ボウリングお助けブック」
等の使い方指導40×4
・実地指導
Table 2 ボウリング場利用の流れ
場 面
1
2
申し込み 3
4
5
1
シューズ 2
3
4
1
2
3
ゲーム 4
5
6
7
8
1
2
3
支払い 4
5
6
7
8
生徒の行動
申し込みカード記入コーナーに行く。
カードに自分(および友達)の名前を記入する。
フロントまで行く。
フロントの人に療育(障害者)手帳を見せる。
レーンの番号カードをもらう。
レンタルシューズコーナーに行く。
自分の足サイズの自動レンタル機の前に立つ。
自動レンタル機に300円を入れる。
シューズを履き替える。
レーンの番号カードと同じレーンに行く。
ボールを持ってくる。
自分の番が来たらボールを投げる
友達を賞賛する。
ゲーム延長のボタンを押す。
終了ボタンを押す。
ボールを所定の場所へ返却する。
シューズを履き替える。
フロントまで行く。
レーンの番号カードをフロントの人に渡す。
財布を出す。
料金を払う。
名前を言ってスコアカードをもらう。
お礼を言う。
シューズの返却コーナーに行く。
所定の場所にシューズを返却する。