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Jun. 2014
Vol.45
Medical Device Daily
診断と治療の融合―セラノスティックスで飛躍をめざす……1
Hospital Employee Health
一向になくならない医療スタッフの筋骨格系障害……3
Medical Device Daily
拡大するロシアの医療機器市場……5
Case Management Advisor
遠隔疾病管理で心不全患者の再入院率を低減……6
Same-Day Surgery
術後感染を避けるために病院ができること……7
メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
血液検査が切り開く新時代……9
The Academia Highlight[45]
先制医療は予防医療の星になれるか……10
by うのめ・たかのめ
Medical Device Daily……11
Kawanishi Hotline……19
カワニシホールディングス
トムソン・ロイター
AHC Media LLC
Jun. 2014
Vol.45
診断と治療の融合――
セラノスティックスで飛躍をめざす
AAA 社 CEO Stefano Buono 氏インタビュー
――John Brosky/MDD 欧州エディター
Lutathera については 200 以上の論文があり、
核医学・分子イメージングの診
断用製品を供給する Advanced
2,000 人以上の患者が治療を受けるなど、多くの科
Accelerator Applications 社(仏)
学的エビデンスが存在していますが、まだ不十分
は、小さいながらも欧州有数の
なので試験を実施する必要があるのです。
企業である。分子イメージングは
また、我々はいくつかの買収を行うつもりにし
血流や代謝などの機能変化を画
ており、ターゲットも複数考えています。
像情報として見ることができる
さらに、展開地域も拡大するつもりです。製品
ため、創薬開発や疾患病態の解明、
ラインナップには有効期限がわずか 10 時間の診断
個別化医療などへの応用が期待されている。PET や
用製品もあるため、こういった製品を販売するた
SPECT といったモダリティや治療用デバイスを中
めには、現地に製造施設がなければなりません。
心とした分子イメージング市場は、シーメンス(独)、
よそで作った製品を輸送していたのでは採算が合
GE ヘルスケア、フィリップス(蘭)といった世界
わないからです。ですから、欧州の主要市場をカ
的な大手企業によって牽引されているが、AAA 社は
バーするように、施設の建設を行う予定にしてい
放射線メタボロミクスや放射性医薬品に力を入れ、
ます。
頭角を現しつつある。最近も新たな資金調達に成功
FDA が Lutathera を認可したら、米国に
するなど目覚ましい成長を遂げている AAA 社の
CEO である Stefano Buono 氏に、今後の見通しに
も施設を建設されるおつもりですか?
ついてうかがった。(編集部)
Buono
現在、製造施設の建設を検討中です。我々
の顧客は米国のいたるところにいますから、場所
資金調達に成功したことで事業が加速さ
としては東海岸が理想です。例えば、ニューヨー
れると思いますが、どんな成長戦略を描いていま
クからは多くの路線が運航していますし、欧州に
すか?
近いので出張も容易です。また、空港間の接続に
も優れています。
Buono
2、3 カ月中によいパートナーと合意にいたらな
まず、「Lutathera」という希少疾病用の
放射性医薬品の臨床試験を進めます。これは神経
ければ、自分たちだけで一から始めるつもりです。
内分泌腫瘍(NET)の治療薬で、多施設共同第Ⅲ
現在欧州に 17 ある施設のほとんどは何もないとこ
相試験を実施中です。
200 人の患者登録が必要なの
ろから立ち上げましたから、米国でも同じことを
ですが、現在は中間地点にいます。登録が完了す
やるだけです。我々は米国での事業に力を入れよ
れば、1 年半にわたって患者を追跡することになる
うとしており、今後 2 年間で施設を建設し、
Lutathera の認可を得たいと考えています。
でしょう。
次に、Lutathera の適応症を拡大するための
第 2 の試験を開始したいと思っています。この薬
PET や SPECT といったモダリティは引
は、我々が標的とする受容体を発現する多くの神
き続き成長基調にありますが、これが AAA 社の収
経内分泌腫瘍の治療に役立つと考えています。
入源となっているのでしょうか?
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市場そのものの拡大は、確かに成功要因
ックス(Theranostics;Therapy と Diagnostics
の 1 つです。我々は、PET 検査に使用されている
の造語)と呼びますが、Lutathera は初めてのセ
最も重要な検査薬 FDG(フルオロデオキシグルコ
ラノスティック薬です。これはまったく新しい考
ース)の販売を、欧州で初めて許可された企業の 1
え方であり、その大きな可能性を認識している人
つです。FDG は癌に吸収される糖で、癌の診断や
はほとんどいません。実際、この種の薬剤を作っ
治療時に効果を発揮します。
ているメーカーはほかにないのです。
Buono
セラノスティック薬なら、注入するだけで医師
は病変の範囲を確認し、薬剤が標的に達したかど
うかをモニターできます。薬剤がどこに向かうか
が分かるので、各器官に入る薬剤の量を定めるこ
ともできます。これは、多くの医師にとって夢な
のです。
セラノスティック薬のもう 1 つの利点は、薬剤
(http://www.adacap.com/)
の作用機序が細胞と相互に作用する化学物質では
モダリティの多様化によって、診断用製品の市
なく、放射線によるものだということです。我々
場は成長してきました。ただ、PET の成長率は
には放射性医薬品を 40 年にわたって扱ってきた経
10%を少し超えたくらいで、SPECT は 5%くらい
験がありますから、各器官の機能を維持するため
です。我々の PET 薬剤の売り上げの年平均成長率
にはどれくらいの量を投与すればよいか、腫瘍を
は 64%ですから、これは主に展開地域の拡大によ
死滅させるのにはどれくらいの強さが必要かとい
るものと言えるでしょう。
うことをはっきりと理解しています。イメージン
グと放射線の組み合わせで、コストパフォーマン
欧州の多くの国では、病院や大学などが院内製
造の FDG を販売することができるため、競争は厳
スの高い、効果的な治療が可能になるのです。
しく、値下げ圧力も大変なものでした。しかし、
セラノスティックスは我々にとっては未来への
院内製造の FDG のなかには登録製品でないもの
挑戦ともいえる分野ですが、同時に、多くの可能
や、適正製造基準に従って作られていないものが
性を見出せる分野でもあります。
混ざっていました。また、納期遵守率が時に 10%
まで下がることもあり、品質や安定供給の点で問
題がありました。
我々は、民間企業ならではのサービスを提供す
ることで、そのなかで少しずつ支持を獲得してき
ました。たとえば我々の納期遵守率は最初は 90%
でしたが、今日では 99.7%になっています。また、
非常に費用対効果の高いビジネスモデルのおかげ
(http://www.adacap.com/)
で、値下げ圧力に負けない競争力を維持していま
す。同業の現地メーカーの多くが事業に失敗して
最終目標はやはり株式公開ですか?
いることもあって、今では安定した地位を築くこ
Buono
とができています。
新規株式公開(IPO)が最も可能性が高い
でしょう。我々は、現在の市場を切り開くことに
専念しています。売却されればこの勢いは弱まる
現在、診断用ではなく治療用の放射性医薬
品に AAA 社の将来をかけておられますね。
ので、今後何年も独立した状態でいたいのです。
Buono
期的にはおそらく 4 年後になるのではないでしょ
米国市場での IPO に魅力を感じていますが、時
治療用の放射性医薬品は本当に刺激的で
うか。当面は、会社を成長させていきます。
す。診断と治療を同時に行う概念をセラノスティ
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AAA 社は大きな野心を抱いておられるよ
これまでは、まるで上り坂を登っているような
難しい作業でした。今はむしろ、下り坂を速度を
うですね。
上げながら走っているように感じます。Lutathera
に続く新製品候補はすでに第Ⅱ相試験の段階にあ
Buono
り、次回の投資はこれに集中させる予定です。
カーに過ぎなくても、Lutathera の試験を足掛か
そのとおりです。今は小規模の製薬メー
我々は今後も、研究開発施設や小規模なバイオ
りに多くの適応症へと拡大していけば、自社の販
テクノロジー企業にあるような新製品候補を広く
売力を強化するのも夢ではありません。たとえ費
臨床で使用できるようにするために、資金を調達
用がかかり、苦労をともなうとしても、我々は挑
していくつもりです。資金は売り上げの増加によ
戦し続けているのです。
っても得られますし、年間 25%の成長率を維持す
「Medical Device Daily」
れば、必要なだけの資金を手にすることは可能だ
(2014 年 3 月 27 日号)
と思っています。
一向になくならない
医療スタッフの筋骨格系障害
職業病と軽視せず移乗用リフトの導入を
腰痛(4 日以上の休業)は職業性疾病の 6 割を占め
かかわらず、MSD を発症する医療スタッフは後
ており、特に社会福祉施設はこの 10 年で件数が 2.7
を絶たない。米国労働省労働統計局によると、無
倍に増えている(2011 年、厚生労働省)。これを受け
理に患者を持ち上げようとしてスタッフが負傷す
る事例は一時減少したものの 2008 年から再び上
て厚労省は去年 6 月、19 年ぶりに「職場における腰
痛予防対策指針」を改訂し、医療・福祉分野にも適用
昇し始め、正看護師の MSD 発症数も 2009~11
を拡大するとともに、原則として人力で人を抱き上
年は増加している。
げないよう求めた。米国では日本より前から対策に
マサチューセッツ州の公衆衛生局が 88 の病院
乗り出しているが取り組みは難航しており、効果は
を対象に行った調査では、MSD を防ぐための患
限定的という。人材不足に悩む医療や介護の現場で
者の移乗手順を定めた病院は多いが、その完成度
は、働きやすく、かついつまでも働き続けられる環
は病院によって大きく異なることが分かった。手
境作りが求められている。(編集部)
順を文書化していない、もしくは作成中の病院は
34%、MSD 防止委員会を設置していない病院も
35%あった。
「病院が MSD 防止に取り組もうとしているの
米国では、テキサス州が労働者の筋骨格系障害
(MSD:腰痛や肩こり、頭痛といった筋、関節、
はよく分かるが、まだ改善の余地がある」とマサ
腱などの疾患)の防止プログラムを義務化して
チューセッツ州の公衆衛生プログラムを主導する
8 年、リフトを使用せずに患者を持ち上げる際に
疫学者 Angela Laramie は言う。
介助者 1 人当たりの負荷を 15kg までに制限して
7 年が経過した。同様の防止プログラムは 11 の州
節約は MSD 防止に逆効果
が義務化しており、義務化に向けた検討が行われ
マサチューセッツ州の調査では、MSD 防止プ
ている州も複数ある。
ログラムを実行するうえでの問題点として、次の
多くの病院が MSD 防止に取り組んでいるにも
4 点が明らかになった。
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り組む人材の重要性を指摘する。
このコーディネーターは夜間シフトで MSD が
(1) リフトを使うと作業に時間がかかる
(2) 習慣となった作業手順を変えるのは困難
発生した原因を調査し、当時はバッテリーが充電
(3) リフトが高額
中で、移乗用リフトが使えなかったことを突き止
(4) リフトを設置するスペースがない
めた。そして夜間でもリフトを使えるよう、予備
のバッテリーを購入することで解決した。
「スタッフが慣れ親しんだ作業手順を変え、新た
「コスト削減のために MSD 防止策をおろそか
な手順を習得するには時間がかかる。スタッフに
にすると、返ってコスト増加を招いてしまう」と
MSD 防止策を受け入れてもらうためには、トレ
Matz は忠告する。
ーニングやサポートが必要だ」と、退役軍人健康
庁の労働衛生プログラムの責任者 Mary Matz は
説明する。
スタッフは、今まで決まった手順で患者を移動
させてきたため、その方法が習慣化されている。
スタッフの不満に配慮し、新しい手順への変更が
難しいことに理解を示すことが重要だ。そうでな
ければ、リフトはあっても使いにくいから使わな
(http://www.arjohuntleigh.com/)
いというスタッフが出てくる。
作業手順の変更をスムーズに行う最善の方法は、
常にスタッフに意見を聞くことだ、と Matz はア
病院の意識は向上の兆し
まだまだ理想と現実にギャップはあるが、改善
ドバイスする。スタッフは、購入するリフトを選
に向けた良い兆候も見られる。
んだり、保管方法を提案したり、設置場所を確保
マサチューセッツ州が実施した調査は、MSD
したりと活躍してくれるはずだ。
防止に向けた推奨事項をまとめるためのものだっ
また、マサチューセッツ州の調査では、病院内
たが、回答率が 90%と非常に高かった。調査を行
で移乗用リフトの設置率が低いのは集中治療室
っただけで病院の意識は飛躍的に向上し、調査後
(33%)と放射線科(44%)で、90%で設置され
に MSD 防止に向けた新しい取り組みを行う病院
ている内科や外科とは大きな隔たりがあることが
も出てきた、と Laramie は語る。
判明した。トレーニングの実施状況にもばらつき
同じ頃、米国看護師協会(ANA)が新たな自主
があり、MSD を防止するためのトレーニングを
基準を策定したことで、MSD 防止に対する病院
有給で毎年行っているマサチューセッツ州の病院
の意識はさらに高まっている。病院からは推奨事
は、全体のわずか 35%だった。
項を遵守するためのガイドラインを求める声が上
MSD を防止するためのトレーニングや移乗用
がっており、すでに ANA は、自主基準に対する
リフトの費用は高額だが、すぐに回収できること
ガイドラインを公表している。
が実証されている。Matz は、
「退役軍人健康庁が
「いちばん大切なのは、手順を文書化し、スタッ
導入した MSD 防止プログラムはうまく機能して
フが負傷したときには MSD 防止委員会が手順を
おり、我々が管轄する 153 の病院では、MSD の
再検討することだ。また、スタッフの経営参加や
発症件数が 6 年間で 40%も減少している」
と話す。
MSD の防止に取り組むコーディネーター、毎年
MSD を防止するには、MSD の発生原因を究明
のトレーニングと技能審査も必要だ。これらを包
することも重要である。マサチューセッツ州の病
括的に行わなければ、MSD は防止できない」と
院のうち、MSD が発生した部署で追跡調査を行
Matz は話している。
ったのは 61%にすぎなかった。Matz は、MSD の
防止に取り組むコーディネーターが活躍した例を
「Hospital Employee Health」
挙げ、安全・衛生・技術の側面から問題解決に取
(2014 年 2 月号)
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拡大するロシアの医療機器市場
政府は国内メーカーのテコ入れを図る
1.4 億人の人口を抱えるロシアは、先進国の医
スに区分している。
クラスⅠが最もリスクが低く、
療機器市場が伸び悩むなか、間違いなく成長が見
クラスⅡa、Ⅱb、Ⅲとなるにつれリスクは上昇す
込まれる数少ない市場である。医療機器の市場規
る。外国製の医療機器はすべて、医療機器を監督
模は 2012 年に約 67.6 億ドルで、2018 年には約
する政府機関 Roszdravnadzor の承認を得なけれ
115 億ドルに達すると予測されている。2013~18
ばならず、未承認の製品の販売や使用は違法とな
年の年平均成長率は 9.3%にのぼる見込みだ。
ロシア連邦統計局によれば、2006~12年で医療
る。
費は倍増している。この成長の要因の1つは強制
シア、ベラルーシ、カザフスタン以外の地域で生
加入医療保険であり、医療費のうち62%が賄われ
産された製品、販売価格の半分以上が外国製の部
ていると、ロシアの医療機器メーカー団体
品で構成される製品、
ISO 基準を満たしていない、
今回の法案は、強固な関税同盟を結んでいるロ
International Medical Device Manufacturers
Association(IMEDA)は言う。ロシア政府は医
あるいは厳しい書類審査をパスしていない製品の
政府調達を禁止するというものだ。4 月 1 日から
療の充実に3,000億ルーブル(84億ドル)を投入
施行される予定だったが、決議はまだ承認されて
する方針を打ち出しており、今後もロシア政府が
いない。
医療を重視し続けるなら、医療費のさらなる増加
「政府の草案を見る限り、これは国内メーカーの
は必至だ。
意欲を喚起する法案というよりむしろ輸入規制に
ロシアの医療機器市場で高いシェアを誇るのは、 近い」と IMEDA の広報担当者 Olga Meleshko
他国同様、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ア
は言う。規制は投資家の活動を阻害し、メーカー
ボット、フィリップス、シーメンス、メドトロニ
の競争力を弱体化させる。Meleshko は、この法
ックといった世界的な大手メーカーである。国内
案が承認されれば、国内メーカーは革新技術の開
メーカーが占める割合は 18%で、政府はこれを
発や製品改良へのモチベーションを持たないまま
2020 年までに 40%に増やしたい考えだ。
市場を独占し、医師や患者は本当に必要な機器を
使うことができず、仕方なくロシア製品を使わざ
ロシア政府はこれまで、認可する医療機器を増
るを得なくなるだろうと見ている。
やすことで国内医療の質の向上をめざしてきた。
しかし、ロシア製の医療機器が徐々に市場シェア
IMEDA は現在、ロシアに展開している多くの
を失ってきたため、政府は、外国製医療機器の輸
外国メーカーと協力し、今回の法案のキーマンた
入を禁止する法案の草案を発表した。これはロシ
ちと積極的に協議している。さらに、法案の撤回
アの国内メーカーの支援を目的としたものだが、
を求めた大々的なロビー活動も行う構えだ。
実現すれば、外国メーカーにとどまらず、ロシア
「IMEDA の考えは単純明快だ。国内メーカーを
国内の医療機関や患者にとって大きな痛手となる
支援しつつ国外投資家を引きつける最善策は、市
可能性が高い。ロシアの Veronika Skortsova 保
場への参入を制限することではなく、国内メーカ
健・社会開発大臣は、新法案はまだ議論中で、医
ーに対して減税したり、政府調達で優遇したりす
師と患者のニーズがいちばんの焦点だと強調して
るなどの、メーカーの意欲を昂進する方法を検討
いるが、この法案が医療業界に本当に良い結果を
することだ」と Meleshko は述べている。
もたらすかどうかは、
業界関係者にも予測不能だ。
「Medical Device Daily」
(2014 年 3 月 28 日号)
ロシアでは、医療機器をリスク別に 4 つのクラ
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遠隔疾病管理で
心不全患者の再入院率を低減
質問と体重のモニタリングで心不全を管理
医療の効率化には在院日数の短縮が欠かせないが、
同時に質も確保する必要がある。それを調べるのに
自宅に電話回線のない患者には、携帯電話用のデ
バイスが提供される。
Healthy Heart プログラムに参加する患者は、
利用される指標が再入院率で、厚生労働省によると、
平成 23 年度 DPC 対象病院では 11.5%となってい
遠隔モニタリング用の体重計を使って毎日体重を
る。米国では医療の質に応じた報酬を付与する「患
量る。また、通信デバイスに表示される 13~15
者保護および医療費負担適正化法(PPACA)」が施
の質問に「はい/いいえ」で回答する。質問は複
行されており、30 日以内の再入院率が基準よりも高
数の言語で表示できるようになっており、内容は
いとメディケアなどの償還率が引き下げられてしま
患者の回答によって毎回変わる。質問に「はい」
う。そのため、少しでも再入院率を引き下げようと
と答えた場合、原因をつきとめるためにさらに内
試行錯誤が行われている。(編集部)
容が掘り下げられることもある。
非営利の医療保険組合 UCare は、心不全を患
・今日はいつもよりひどい
う会員向けの遠隔疾病管理プログラムを開始し、
息切れがありますか?
入院率を 40%、救急部(ED)への訪問件数を 26%
・今日はいつもよりひどい
足のむくみがありますか?
減少することに成功した。
Healthy Heart と呼ばれるこの心不全患者用の
・薬はすべて飲みましたか?
・咳は出ますか?
遠隔疾病管理プログラムは、再入院リスクが特に
高い患者に、看護師が電話で指導を行うものだ。
プログラムの対象者は、過去 15 カ月の間に心不
全で 2 回以上入院、または ED を訪れた患者とな
っている。このほかにも、医療機関から届く月次
報告書から心不全患者をスクリーニングし、リス
クレベルを判定するプライマリー・ケア医や
遠隔モニタリング用の通信デバイスと
(左)体重計
(右)
UCare の指導員からこのプログラムを紹介され
る患者もいる、と UCare のケア改善部門の責任
患者の体重や質問の回答は、指導を担当する看
者 Jodie Milner は語る。
護師のコンピューターに送られる。もし患者に症
UCare は、まず、Healthy Heart プログラムを
状悪化の兆候が見られれば、警告が表示される仕
実施する医療機関に患者を紹介し、一方でプログ
組みになっている。
ラムの説明、対象となった経緯、プログラムに参
「患者の体重が増える、あるいは減ったとき、ま
加しない選択肢もあることなどを書いた文書を患
たは危険な症状を示したときは、看護師は患者に
者に送る。患者が参加を希望すれば、手続きの担
電話してさらに詳しく調査する」と Milner は話
当者が電話でプログラムの詳細を説明する。
す。例えば患者の体重が増加した場合、看護師は
参加を決めた患者には、自宅の電話回線を通じ
最近の食生活について尋ね、塩分摂取を減らす必
てインターネットにつなぐ遠隔モニタリング用デ
要があるかどうかを判断する。健康に問題がある
バイスと、接続方法を記した説明書が渡される。
と思われる患者にはフォローアップを継続し、電
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話で指導を行ったり、
プライマリー・ケア医を紹介
症状の報告がない患者は Healthy Heart プログラ
し、その日の予約を入れることもある。
ムを卒業する。しかし、多くの患者はプログラム
をセーフティネットとして利用しているため、あ
患者が体重を量っていないときにも、看護師は
まり卒業したがらないという。
電話をかけてその理由を確かめる。問題がない患
者でも月に 1 回は電話をかけ、病気との付き合い
「患者には、プログラムがなくても毎日体重を量
方、食事、運動、禁煙を指導し、インフルエンザ
り、正しい食生活を送り、適度に運動し、薬を忘
や肺炎のワクチン接種の重要性を伝え、健康に生
れずに飲むという習慣を身に付けてもらいたい」
活するためのコツをアドバイスする。このアドバ
と Milner は語っている。
イスは、通信デバイスにメッセージとして送られ
「Case Management Advisor」
ることもある。
(2014 年 4 月号)
きちんと体重管理ができており、長期間異常な
術後感染を避けるために
病院ができること
高まる訴訟リスクへの懸念
術後感染は患者だけでなく、医療機関にも大きな
ため、該当の患者に使われた共通の器具があった
ダメージを与える。しかし手術は感染リスクが高く、
かどうかは不明だという。外科医は、自分が使っ
細心の注意を払っていてもその発症率をゼロに抑え
た器具は完全に滅菌されていたはずだと証言した。
ることは困難だ。多種多様で数が多いために管理の
2010 年以降、この手術センターで同様の感染報
難しい医療機器はリスク要因の 1 つであり、感染症
告はない。センターの広報担当者は、感染は器具
発生時に調査や特定が行なえるような滅菌管理やト
の洗浄に使用したスポンジが原因で、センターは
レーサビリティの確保が求められている。(編集部)
そのスポンジの使用を直ちに中止し、患者に必要
なケアとフォローアップも行っていると主張して
いる。現在、評決を不服として上訴中だ。
カリフォルニア州のある手術センターが、関節
鏡視下手術を受けた患者が術後に細菌感染を発症
したことについて過失を問われた裁判で、数年に
わたる裁判の結果有罪となり、54.3 万ドル(約
5,500 万円)の支払いを命じられた。
この患者は 2010 年に膝の関節鏡視下手術を受
(http://sites.synthes.com/)
けたが、術後 3 日目にひどい痛みと熱を訴えて救
医療機器の正確な使用記録
「リコールや今回のような訴訟に備え、どの患者
急部を受診し、抗生物質の投与と追加手術を受け
た。2012 年には膝関節置換術を受けたが、今も長
にどの器具を使ったかの記録を残しておく必要が
くは歩けないと弁護士は主張している。
この手術センターでは、訴え出た患者のほかに
ある。記録は、リスクが高い場合にだけ行うので
も、3 人の患者が細菌感染を発症していた。報道
はなく、すべてのケースで行っておくべきだ」と
によると、手術センターはどの器具をどの患者に
Joint Commission(米国医療機能評価機構)の感
使ったかという品質管理記録を取っていなかった
染管理の専門家、Lisa Waldowskiは忠告する。
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場する新しい機器や薬剤耐性菌も、滅菌業務で問
米国中材学会(IAHCSMM)の教育ディレクタ
題になっていると ACS は言う。
ーNatalie Lind は、器具の名称やロット番号、シ
リアル番号、その器具を滅菌消毒した担当者の名
Joint Commission はこれらのリスクに対応す
前といった情報を、患者のカルテなどに書いてお
るため、すでに外来施設や小規模な手術施設、長
くようアドバイスする。手術器具のトレイのラベ
期療養施設向けの滅菌業務の規格の改定を行って
ルを利用するのも良い手だ。「器具から患者の特
いる。一方 ACS では、Joint Commission の機関
定ができるコンピューターの追跡システムもある
誌で紹介されたこともある、バージニア・メイソ
が、今のところ完全な記録ができるシステムは存
ン医療センターのプログラムを推奨している。
在しない」と Lind は言う。
外来通院医療認定協会(AAAHC)のメディカ
ルディレクターJack Egnatinsky は、手術キット
の記録の難しさを指摘する。
「手術キットに入れる
器具の種類は決められているが、セットされる
個々の器具は日によって違ううえ、たいてい記録
されていない。しかも、複数の手術が終わって手
術室に開封したキットが複数ある場合には、どの
(http://www.nyhq.org/)
器具がどの手術で使用されたのか分からない可能
性もある」
。Egnatinsky は、手術キットにつけら
24 の手術室で年間 18,000 件もの手術が行われ
れている番号を記録して、どのキットがどの症例
るバージニア・メイソン医療センターでは、バー
で使われたか追跡できるようにしておくとよいだ
ジニア・メイソン生産システム(VMPS)と名付
ろうと話す。
けられた独自の滅菌業務の品質改善プログラムが
これに対して、RFID 製品を開発する American
採用されている。VMPS プログラムでは、37 カ
RFID Solutions 社の Dan Galarde は、RFID タ
月にわたり、滅菌業務で生じたミスを毎日確認し
グを使えば、どの器具やキットが手術室で使われ
て分類する、品質監視アプローチが行われた。ま
ていたかを簡単に識別できると主張する。器具に
た、リーン生産方式を取り入れ、器具の組み立て
RFID タグを組み込んで個々に識別することも、
や包装にそれぞれ決められた工程を設けてリスク
トレイに RFID タグを組み込んで、そのトレイに
を抑えた。狭かった作業場所も新しい工程にあう
入っている器具をまとめて識別することも可能だ。 よう見直し、ミスをなくすためのスタッフのトレ
とはいえ、技術的な限界はある。その器具が手術
ーニングプログラムを作って、継続的にフィード
で実際に使われたのか、
未使用のままだったのか、
バックを行えるようにした。
予備としてトレイに置かれていただけなのかまで
その結果、手術 100 件当たりの滅菌ミスは、3
は分からない。
「RFID タグに可能なのは、決めら
件から 1.5 件に半減した。特に、組み立てミスや
れた方法で本当に滅菌された器具であるという証
ペンやクリップなどの異物混入ミスが減少したと
明と、その器具やキットがあった手術室にいた患
いう。VMPS は直接臨床成績の向上につながるわ
者の特定だ」と Galarde は言う。
けではないが、感染症の発症や手術ミスを防ぎ、
コスト削減にも役立つと ACS は説明する。
術後感染への懸念が高まるなか、Lind は感染症
確実な滅菌・消毒
今回の訴訟を例に引くまでもなく、医療機関は
の発生率を下げる方法について、
「消毒、検品、包
医療機器の消毒や滅菌の重要性をよく理解し、感
装、滅菌、冷却、保管、配送といったすべての工
染防止に努めている。しかし、米国外科学会(ACS) 程が正確に行われているか注意深く監視すること、
はここ数年、Joint Commission から高圧蒸気滅
これに尽きる」と語っている。
菌器の使用手順を見直すよう指摘を受けていたこ
「Same-Day Surgery」(2014 年 3 月号)
とを明らかにした。今までになく早いペースで登
8
Jun. 2014
Vol.45
血液検査が切り開く新時代
迅速・低コスト・正確な検査が臨床を変える
――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
血液検査から得られる情報は多く、健康診断に
ほかにも、昨年、薬局チェーン最大手のウォル
は欠かせないツールとなっている。その血液検査
グリーンと提携したベンチャー企業、Theranos
についての新たな技術がここ 1 年、立て続けに発
社の血液検査が話題を呼んでいる。
Theranos 社の血液検査システムは、
シンプル、
表され、世界の関心を集めている。
ウィーン医科大学(オーストリア)は、血小板
迅速、低コスト、高精度、しかもごく少量のサン
のセロトニン量から脳内セロトニン濃度を予測で
プルで分析できる。技術自体は新しいものではな
きることを突き止め、診断の難しいうつ病が血液
く、1960 年代からある血液検査技術のすべてを改
検査によって正確に判定できるようになった。
善・合理化した結果だというが、1 滴の血液から
また、虚血性脳卒中と出血性脳卒中を、血液検
病原菌や免疫、メタボにストレスマーカーなど数
査ですばやく判定する研究も進んでいる。脳卒中
十種類の検査が行え、結果も今までよりはるかに
は虚血性か出血性かで治療方法が大きく異なるが、 正確である。さらにそのコストは、どの検査をと
ってもメディケアが定めた上限額の半分以下だ。
MRI や CT、血液検査などを組み合わせる現在の
検査では、判定に数時間かかる。ノースカロライ
ナ大学と脳卒中専門の医療機関 SUNY Downstate
Stroke Center は、脳卒中患者に特徴的な 2 つの
(http://www.walgreens.com/)
バイオマーカーを確認し、すばやく分析できる装
置を開発した。この装置はほんの数分で結果が出
るため、迅速な判定につながる。また、今後 4 つ
までのバイオマーカーを同時分析できるように設
計されているため、迅速・精密なマルチ診断デバ
患者は Theranos の検査を利用することで、医
イスとしても期待されている。
血液検査は迅速な診断だけでなく、コスト削減
者にかかるたびに発生する費用や、検査にかかる
にも役立つ。カロリンスカ大学病院(スウェーデ
費用をかなり節約できる。しかも、クリニックな
ン)では、救急部に血液検査と心電図によるスク
どは外注の検査が多く、結果が出るまで数日かか
リーニングを導入し、2 年間で入院率を 20~25%
るが、ウォルグリーンで Theranos の検査を受け
減少した。胸の痛みで救急部に搬送された 15,000
れば数時間後、早ければ買い物をしている間に結
人に血液検査を行ったところ、約 8,900 人は心筋
果が出る。米国と日本では医療システムが異なる
障害の兆候であるトロポニンの血中濃度が低く、
ため比較は難しいが、複数の医療機関・診療科で
心臓発作ではないと診断できたのだという。
別々に検査を受ける手間やコストが省けるメリッ
この血液検査を導入すれば、欧米で胸の痛みで
トは大きい。
救急部を訪れる年間 1,500 万人の多くが入院不要
合理化された検査装置、最新のバイオマーカー
になり、院内感染のリスクや無駄な医療費を大き
とモバイル技術を組み合わせれば、血液検査はと
く抑えられる。まだ欧州でしか効果と安全性が確
てつもなく大きく前進する可能性を秘めている。
認されていない検査だが、最も高齢化が進み、多
心臓発作や脳卒中などのスクリーニングを、患者
くの高齢者が通院する日本でも、今後導入は必至
自らクレジットカードサイズの血液検査キットで
と思われる。
行うようになる日も、そう遠くはなさそうだ。
9
Jun. 2014
Vol.45
The Academia Highlight アカデミア・ハイライト [ 45]
先制医療は予防医療の星になれるか
うのめ・たかのめ
by
予防医療の重要性が指摘されて久しい。疫学
膚癌等で患者の希望に応じて適用していて、
研究などの知見をもとに、健康診断や生活習慣
バイオプシーもこれに基づいて実行するのだ
の改善指導などは広く実施されてきた。
という。このほか、英国の 300 万人計画、シ
10 年前に行われたピッツバーグ大の疫学研
ンガポールの医療・介護統合局の設置等、国
究は、米国は北欧と並んで心臓病死が飛び抜け
レベルの大規模な先進医療の推進体制も動い
て高く、心筋梗塞は 50%以上と死亡率のトップ
ている。
で、日本の倍以上だと指摘した。この要因とし
日本で癌の次に多い死亡・入院原因は脳卒
てコレステロールが強く疑われたが、東北大が
中で、寝たきりの原因の約 40%を占める。未
数年前に行った疫学調査では、循環器疾患死亡
破裂動脈瘤保有率は 4~7%(40 歳以上)と高
の 50%と全死亡の 20%、さらに自立度低下の
く、破裂を未然に防ぐ効果は大きい。脳卒中
半分に高血圧が関係しているという、米国のコ
の危険因子である動脈硬化や糖尿病、腎臓病、
レステロール主因説とは異なる結果が得られ
肝疾患、骨質低下などの加齢関連疾患の元凶
た。このような新たな知見の発見とともに、予
の 1 つ、終末糖化産物 AGE の細胞内代謝経
防医療は進化している。
路の解明と染色体異常の相関も、有力な先制
医療につながる。
最近ではさらに一歩進め、病気の発症前に診
断を行い、予見的に治療的介入を行って発症を
諸疾患の発症を未然に防ぐ“未病”の概念
防止もしくは遅らせる「先制医療」という概念
は、中国最古の医学書『黄帝内経』以来脈々
が注目されている。遺伝子検査やバイオマーカ
と受け継がれていて、日本の定期健康診断は
ーの活用、画像診断によって、万人向けではな
発症リスクを指摘する制度として定着してい
く個人にあった予防策をとることが可能にな
る。まだ健康診断に組み込むほどの指標は得
り、癌などでは、遺伝子検査に基づいて予防的
られていないため見送られているが、尿メタ
な手術に踏み切る例も増えてきた。
ボロミクスと腎疾患、心血管疾患とアルツハ
東北大が 1,000 人のゲノム解析を完了した
イマー病、精神的ストレスとうつ病等はその
のも、先制医療の実現をめざしてのものである。 相関性から早期介入への道が模索されており、
新診断基準が導入されたリウマチでは早期治
同大は、1,500 万個以上の新規遺伝子多型を収
集した実績をもとに、100 人に 1 人程度の中位
療が実効を上げている。
DNA 変異と疾病罹患率に焦点をあわせ、個別
ナノバイオデバイスにより 1 滴の全血から
化医療も視野に入れて 10 万人以上の垂直コホ
微量の疾患マーカーの検出や薬物の血中濃度
ート研究を開始した。日本の死亡原因のトップ
測定が数分以内でできる技術や、直接遺伝子
である癌の本態解明も重要なタスクである。
情報から高感度タンパク質の定量を行う技術
カナダのブリティッシュ・コロンビア癌協会
など、先制医療を後押しする技術は着々と開
は、すでに DNA シークエンス解析で見出され
発されているうえ、7~8 年前に提唱された個
た遺伝子変異を癌治療の最適化に活用してお
別化検査システムは米ベンチャー数社が商業
り、地域住民の環境因子も付加した詳細なクリ
化を始め、その効果を世に問い始めた。
先制医療の実現に向けた勢いは止まらない。
ニカルパスを用意している。結腸癌、乳癌、皮
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Jun. 2014
Vol.45
Medical
Device
Daily
2014/5/1― 2014/5/31
(
)
る。次に、細胞の 3-D 画像を自動的に分析し、肺
Diagnostics
癌の有無や悪性度を評価する仕組みだ。
肺癌患者 30 人と、肺癌のリスクは高いがまだ
RA の疾患活動性を測定する
Crescendo 社の
血液検査 Vectra DA
発症していない 17 人の合計 47 人を対象に行われ
た臨床試験では、肺癌患者 30 人のうち 28 人で中
~ 重 度の 異 形成 や癌 細 胞が 確認 さ れ、感 度 は
93.3%と高かった。また、肺癌でない被験者に対
2014 年 5 月 15 日
する偽陽性は発生しなかった。
Crescendo Bioscience 社が、
関節リウマチ
(RA)
現在行われている患者の痰を顕微鏡で調べる喀
患者の疾患活動性(進行度、症状、機能障害の程
痰細胞診の感度はあまり高くないが、LuCED を
度など)を評価する血液検査「Vectra DA」の新
使えば非侵襲的に精度の高い検査が行えることが
たな研究結果を発表した。
証明された。
Vectra DA は、12 種類のバイオマーカーから疾
患活動性を 1~100 点で評価し、29 以下は軽度、
30~44 は中度、45 以上は重度と 3 段階に分類で
きる。現在は米国でのみ販売中だ。
研究では、臨床試験に参加した RA 患者 235 人
を対象に、Vectra DA の評価結果と評価後 1 年の
(http://www.visiongate3d.com/)
RA の進行度を比較した。Vectra DA で重度に分
Cardiology
類された患者 201 人のうち、疾患の進行が認めら
れたのは 21%だったのに対し、軽~中度に分類さ
れた 34 人ではわずか 3.4%だった。Vectra DA で
LoneStar 社が心筋症
治療用ゲル Algisyl-LVR の
重度の患者は、軽~中度の患者より疾患進行リス
クが 6 倍も高かったことから、Vectra DA の評価
臨床試験を開始
ツールとしての有用性が示された。
2014 年 5 月 6 日
(http://www.vectrada.com/)
拡張型心筋症は、心臓の壁が薄くなり、内腔が
VisionGate 社の
肺癌診断テスト LuCED
拡張してポンプ機能が低下する疾患で、効果的な
治療デバイスや医薬品が少ない。LoneStar Heart
2014 年 5 月 23 日
社は、この拡張型心筋症を治療するハイドロゲル
デバイス「Algisyl-LVR」の臨床試験を開始した。
VisionGate 社は、肺癌を早期に診断できるテス
Algisyl-LVR はシリンジに充填されたポリマー
ト「LuCED」の良好な臨床試験結果を、米国臨床
で、心室内の圧力により薄くなった心室壁の内部
腫瘍学会(ASCO)の年次集会で発表する。
に注入すると、弾力性のあるゲル状に変化して心
LuCED は、専用の分析装置「Cell-CT」に患者
室壁の厚みを再建し、ポンプ機能を改善できる。
の痰に含まれる細胞を入れて全方向から撮影し、
手術時間は約 75 分で、12~18 カ所に分けて注入
取得した画像を組み合わせて 3-D 画像を作成す
する。
11
Jun. 2014
Vol.45
欧州 5 カ国で行われる今回の試験は、拡張型心
LARIAT
筋症の患者 78 人を、Algisyl で治療する群と従来
の薬物治療群とに分け、治療効果と安全性を比較
する。今年 11 月に開催される米国心臓協会で、
術後 6 カ月時点の結果を発表する予定だ。米国で
(http://www.sentreheart.com/)
は 2015 年の前半に臨床試験を開始する。
EuroPCR で各社が
経カテーテル僧帽弁留置術の
FIM 試験結果
2014 年 5 月 20 日・22 日
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)に比べ、
(http://lonestarheartinc.com/)
経カテーテル僧帽弁留置術(TMVI)用デバイス
の開発には課題が多い。人工弁を留置して僧帽弁
左心耳閉鎖デバイスの
最新事情
閉鎖不全(MR)を治療すると弱った心室に大き
な負担がかかり、うっ血性心不全などを引き起こ
2014 年 5 月 12 日
すことがあるからだ。TMVI デバイスを開発する
各社は、EuroPCR で FIM 試験(初めてヒトを対
象として行う臨床試験)の結果を発表した。
米国不整脈学会で、左心耳閉鎖デバイスの代表
的な製品と注目の新製品が紹介された。
(1) Neovasc 社(カナダ)
最も一般的なのは、ボストン・サイエンティフ
ィックの「Watchman」、セント・ジュード・メ
「Tiara」は花型のワイヤーフレームを持つ生
ディカルの「Amplatzer」
、Coherex Medical 社の
体弁で、心尖アプローチで挿入される。今年 1
「WaveCrest」といった、金属製のステントフレ
月末に施術した 1 人目の患者(73 歳男性)は、
ームに繊維を張った傘状の塞栓デバイスである。
治療後の経過は良好だったものの、末期の心
どれも CE マークは取得済みで、販売が好調な
不全のため 69 日後に死亡した。2 人目の患者
Watchman と Amplatzer の使用実績は同じくら
は、左室駆出率が 20~25%と低いながらも(正
いだ。WaveCrest は使用実績こそ 200 例程度と少
常値は 55~80%)
、90 日以上生存している。
ないが、血栓を防止するためフレーム全体を繊維
また、6 分間歩行検査は 50%改善され、心不
で覆った構造で注目されており、米国と日本でも
全の重症度を測るマーカーである血中 BNP
薬事承認を申請中である。同種の製品には、近々
も 50%減少した。
CE マークを申請予定の Lifetech Scientific 社
(中)の「LAmbre」もある。
これら金属製フレームの塞栓デバイスには、血
栓が発生したり、丸い形が患者の左心耳の形状と
適合しないという問題がある。SentreHEART 社
(http://www.neovasc.com/)
の「LARIAT」はそのデメリットを解消する新し
(2) エドワーズライフサイエンス
い製品だ。LARIAT は縫合糸をスネア状にしたデ
バイスで、心臓壁の外側から左心耳にアプローチ
TAVI 用デバイス「Sapien」で培った技術を応
してスネアを左心耳の入り口に引っ掛け、結紮し
用した「FORTIS」は、布で覆った自己拡張
て閉鎖する。すでに市販前届 510(k)を完了し、CE
フレームにウシ心のう膜製の生体弁を組み合
マークを取得している。
わせた仕様で、心尖アプローチで挿入される。
12
Jun. 2014
Vol.45
今年 2 月に施術した 1 人目の患者(62 歳男性)
治療効果もあることを強調し、欧州など販売を継
は、いったん退院したが 76 日後に死亡した。
続している地域では、複数の電極を備えた次世代
品「Symplicity Spyral」も普及しつつあると語っ
2 人目と 4 人目の患者も治療後 15 日以内に死
亡したが、3 人目の患者(65 歳男性)は 76 日
た。Symplicity Spyral は昨年、CE マークとオー
を超えて生存しており、慢性閉塞性肺疾患
ストラリアの薬事承認を取得している。
(COPD)を併発しているにもかかわらず、
6 分間歩行検査で 215 メートルを記録した。
Ekos 社の超音波カテーテル
システム EkoSonic、
PE 用としても承認
(http://www.edwards.com/)
(3) CardiAQ Valve Technologies 社
2014 年 5 月 27 日
拡張式のナイチノール製フレームに生体弁を
備えた「CardiAQ Valve Technologies TMVI
system」は、2012 年に大腿アプローチによる
Ekos 社の血栓塞栓症を治療する超音波カテー
臨床試験が行われ、成功を収めている。今回
テルシステム「EkoSonic」が、末梢動脈疾患(PAD)
の試験はさまざまな理由で大腿動脈からアク
用に加え、肺塞栓症(PE)治療用としても市販前
セスできない患者を念頭に、新しいデリバリ
届 510(k)を完了した。
ーデバイスを用いて心尖アプローチで行われ
EkoSonic は、薬液注入カテーテル、超音波プ
た。88 歳の患者の経過は良好だという。同社
ローブ、本体コンソールからなる。カテーテルで
は来年から再来年にかけて次の臨床試験を行
血栓部に溶解剤を投与し、次にカテーテル内にプ
い、CE マーク取得をめざす。米国での承認取
ローブを通して超音波を照射することで、溶解剤
得は欧州での発売後になる予定。
の浸透率を高めて効率的に血栓を溶解できる。ま
た、溶解剤を投与するだけの一般的なカテーテル
(http://cardiaq.com/)
血栓溶解療法(CDT)に比べて薬の使用量を抑え
られるため、副作用が発生しにくい。
メドトロニック、
RDN デバイスの
米国承認に意欲
PE 患者を対象に、一般的な CDT と EkoSonic
の治療効果を比較した臨床試験では、EkoSonic
群のみ右心負荷が軽減され、CDT に対する優位性
2014 年 5 月 23 日
が示されている。
腎除神経術(RDN)用の RF アブレーションカ
テーテル「Symplicity」の米国での臨床試験を中
止していたメドトロニックは、EuroPCR で、新
たな臨床試験の実施について FDA と掛け合って
(http://www.ekoscorp.com/index.html)
いることを明かした。
Neurology
RDN は、治療抵抗性高血圧を治療できる新た
な術式として注目され、各メーカーがこぞって開
発を進めていた。しかし、メドトロニックが今年
アルツハイマー病の治療用
DBS の臨床試験が開始
1 月、薬物治療群と Symplicity で治療する RDN
群を比較した HTN-3 試験で RDN の優位性を証
2014 年 5 月 1 日
明できず、米国での試験を中止したことから、米
国での RDN デバイスの承認取得は困難な状況に
なっている。
脳深部刺激(DBS)システムをアルツハイマー
メドトロニックは、Symplicity は安全性が高く
病(AD)の治療に使用するための研究を行ってい
13
Jun. 2014
Vol.45
る Functional Neuromodulation 社が、提携する
メドトロニックの DBS 装置「Activa PC」を使用
した臨床試験を米国で開始する。Activa PC は現
在、パーキンソン病(PD)用として欧米で承認さ
れ、広く普及している。
試験では軽度の AD 患者 42 人に Activa PC を
植込み、脳弓を刺激する治療群と、電源をオフに
(http://www.battelle.org/)
しておく非治療群に分けて、治療効果と安全性を
比較する。認知機能検査、糖代謝の変化、脳萎縮
の状態、
有害事象の有無などが評価される予定で、
結果は 2015 年第 2 四半期に明らかになる。
CerebralRx 社の
VNS 装置 FitNeS、
うつ病用として適応拡大
AD の市場は PD の約 7 倍と巨大なため、
Functional Neuromodulation 社は、デバイスに
2014 年 5 月 21 日
よる AD 治療法の確立をめざす。今後もメドトロ
ニックとの提携の継続を希望しているが、試験の
心不全用の植込み型神経刺激装置「CardioFit」
を開発するBioControl Medical社(イスラエル)
結果次第では別の戦略も検討しているという。
のスピンオフ企業 CerebralRx社(同)は、難治
(http://www.functionalneuromodulation.com/)
性てんかん用の迷走神経刺激(VNS)装置「FitNeS」
について、難治性うつ病(TRD)の補助治療用と
脊髄損傷患者の運動機能を
回復させるシステム
してもCEマークを取得した。
うつ病治療の基本は薬物療法だが、複数の薬剤
Neurobridge
を服用しても効果が得られなくなってくると TRD
と診断される。TRD 患者は世界人口の 4~10%に
2014 年 5 月 2 日
のぼるとされており、薬が効かず症状が改善され
ない絶望感から、違法薬物やアルコールに依存し
非営利の研究機関であるバテル記念研究所は、
たり、自殺するリスクが高い。
脊髄損傷患者の運動機能を回復させるシステム
植込み型の刺激装置とリードからなる FitNeS
「Neurobridge」を開発している。
Neurobridgeは、大脳皮質に植込むマイクロチ
は、迷走神経に低振幅の電気刺激を与えることで
ップ、頭蓋骨に植込むトランスミッター、前腕に
TRD の症状を緩和する。ターゲットの神経線維だ
巻きつける電極を内蔵したカフ、パソコン用のソ
けを効率的に刺激し、それ以外の神経線維や周辺
フトウェアからなる。3.8×3.8mmのマイクロチ
組織への影響を抑えているため、副作用はほとん
ップには96の電極があり、運動機能に関する脳の
ど発生しない。
信号を受信する。信号はトランスミッターを介し
Other Products
てワイヤレスでソフトウェアに送られ、ソフトウ
ェアが解読して、
筋肉が反応する信号に翻訳する。
その信号がカフの電極に送られると、筋肉が刺激
Inspire 社が OSA 治療用
刺激デバイス Inspire UAS の
されて動く。脳の信号が筋肉に伝わるまでの時間
は、わずか0.1秒だ。
市販前承認を取得
脊髄損傷で体の一部が動かなくなった患者の新
2014 年 5 月 5 日
しい治療法として期待がかかるが、バテル記念研
究所によると、製品化までにはおよそ10年かかる
Inspire Medical Systems 社は、閉塞性睡眠時
見込みだ。
無呼吸症(OSA)の治療システム「Inspire UAS」
14
Jun. 2014
Vol.45
について、持続陽圧呼吸療法(CPAP)が利用で
大、バッテリーの駆動時間は 8 時間から 12 時間
きない、もしくは効果が得られない患者用として
に延長された。さらに、異常の有無により画像の
市販前承認(PMA)を取得した。
再生速度を自動で調節して読影を効率化するレビ
Inspire UASは、刺激装置を胸部に植込み、呼
ュー機能や、撮影部位が分かるようにカプセルの
吸リズムを検知するセンサーリードと刺激用リー
位置を 3-D 表示する機能、アラームやバイブレー
ドを留置し、最適なタイミングで舌咽神経を刺激
ションで飲食許可や病院へ戻る時間を知らせてく
することで舌根沈下を防いでOSAを治療する。電
れる機能が追加されている。
昨年 2 月から欧州、中近東、アフリカ、アジア
源などの操作は、体外からプログラマーで行う。
OSAの治療には、ダイエット、マウスピース、
太平洋地域の一部で順次発売されており、日本で
は薬事申請中だ。
手術などの選択肢がある。最も一般的で治療効果
が高いのはCPAPだが、咽頭に強い圧力がかかる
ことから、患者の半数は継続して使用しないとい
う問題がある。臨床試験でInspire UASを使用し
た患者は、無呼吸の発生が68%、酸素飽和度の低
下の発生が70%削減され、日中の活動能力を著し
(http://www.olympus.co.jp/)
く改善できた。
Inspire社は2007年にメドトロニックからスピ
Vibrant 社の便秘を解消する
ンオフした企業で、Inspire UASはすでにCEマー
カプセルデバイス
クを取得し、2年前から欧州で販売している。
Vibrant Capsule
2014 年 5 月 8 日
経口カプセルにカメラを内蔵した診断用カプセ
ル内視鏡は、複数のメーカーから販売されるなど
一般的になりつつある。Vibrant 社(イスラエル)
が米国消化器病週間(DDW)で発表した「Vibrant
Capsule」は、診断用ではなく治療用のカプセル
(http://www.inspiresleep.com/)
型デバイスだ。
Vibrant Capsule は慢性便秘を治療する経口カ
オリンパス、小腸用カプセル
内視鏡 Endocapsule 10
System を米国で発売
プセルデバイスで、事前にセットしたプログラム
により服用後 6~8 時間で搭載した超小型の振動
モーターが振動し始め、大腸壁を刺激して腸の自
2014 年 5 月 8 日
然な収縮運動を誘発し、
自発的な排便を促進する。
同社によると、一般的な便秘薬の使用者の半数は
オリンパスは、小腸用のカプセル内視鏡システ
長期服用による安全性や副作用を懸念している
ム「Endocapsule 10 System」の市販前届 510(k)
が、Vibrant Capsule は化学薬品を使用していな
を完了し、米国での販売を開始した。
いため副作用がなく、安全性が高い。
Endocapsule は直径 11mm×長さ 26mm のカ
慢性特発性便秘や便秘型過敏性腸症候群の患者
プセル型で、撮影データは腹部に巻いたベルト状
26 人 を 対 象にし た予 備実験 では 、週に 2 回
のアンテナユニットを経由して受信装置に送られ
Vibrant Capsule を使用したところ、排便回数が
る。アンテナユニットも受信装置も薄型で、負担
1 週間に 2 回から 4 回に増え、便秘の症状を改善
の少ない装着感だ。Endocapsule は従来品よりも
できた。
高画質になり、視野角度は 145 度から 160 度に拡
(http://www.vibrantgastro.com/)
15
Jun. 2014
Vol.45
Rhenovia 社の投薬を
正確にコントロールする
SMARTT e-Patch
2014 年 5 月 8 日
複雑な疾患は、異なる部位に複数の薬を投与す
る必要があるうえ、作用する順番もコントロール
(http://www.medrobotics.com/)
しなければならない。Rhenovia Pharma 社(仏)
は 、 パッ チ 型の ドラ ッ グデ リバ リ ーシス テ ム
Gauss 社の
「SMARTT-e-Patch」を開発している。
術中出血量管理システム
SMARTT-e-Patch は、皮膚に接触する層、柔軟
Triton
性のある電子回路層、薬剤を保管する層の 3 層構
造で、薬剤を放出するための LED ランプやバッ
2014 年 5 月 22 日
テリーは電子回路に印刷されている。薬剤はナノ
粒子に封入することで皮膚を透過する仕様になっ
Gauss Surgical社は、出血量の管理システム
ており、複数の薬剤を決まった時間に決まった量
「Triton」について、de novoプロセス(実質的同
だけ投与できる。数日間の着用が可能で、薬剤の
等品がない新しい製品だが、PMA手続きが必要な
層だけ剥がして取り替えることもできる。正確な
ほどリスクが高くない製品のための承認手続き)
投薬が行えるため、脳の疾患や癌治療への応用が
による承認を取得した。
Triton は、iPad をベースにした視覚センサシス
期待されている。
テム。患者の血液を吸収したガーゼやスポンジを
(http://www.rhenovia.com/)
広げ、フットスイッチを押してカメラで撮影する
と、画像がクラウドに送信される。すると、独自
Medrobotics 社の
の画像解析アルゴリズムにより失血量が推定さ
内視鏡型手術ロボット
れ、リアルタイムに結果が表示される。血液に混
Flex System
入した生理食塩水や腹水などはカウントされない
2014 年 5 月 15 日
ため、従来のスポンジの重量を測定する方法や、
血中ヘモグロビンやヘマトクリット値などを利用
Medrobotics 社は、内視鏡をベースにした手術
する方法に比べ精度が高い。そのため、医師は輸
ロボット「Flex System」を開発している。
血のタイミングを的確に判断でき、不要な輸血を
Flex System の先端部は小さな円柱を連結した
せずに済む。
構造になっており、
上下左右に自在に曲げられる。
共同購買組織プレミアの試算によると、輸血の
蛇のように柔軟な動きが可能なため、咽頭部や声
無駄をなくせば 1 病院につき年間約 100 万ドルの
帯などの湾曲した複雑な部位へも容易に到達で
コスト削減が見込まれるという。
き、画像化できる。複数ある鉗子チャネルでは専
用の鉗子だけでなく、他社の軟性鉗子も扱える。
操作は外部からロボットアームで行うが、小切開
から挿入できるため侵襲性が低い。
今年 3 月に CE マークを取得したばかりで、今
後は欧州での販売促進と、米国での薬事承認取得
をめざす。
(http://www.gausssurgical.com/)
16
Jun. 2014
Vol.45
Zephyr 社の主力製品は「BioHarness」で、ワ
むずむず脚症候群の症状を
緩和する、Sensory 社の
振動デバイス Relaxis
イヤレスセンサーが内蔵されたデバイスを胸部に
装着すると、専用のソフトをインストールしたパ
ソコンやタブレット端末で、心拍数、呼吸数、心
2014 年 5 月 30 日
電図、体温、体勢をリアルタイムでモニタリング
できる。また、ワイヤレスで心電図を測定するパ
むずむず脚症候群(RLS)は、主に就寝時に脚
ッチ型のセンサー「BioPatch」もあり、ほかの測
に不快な感覚が生じて不眠に陥る疾患で、一般的
定デバイスと組み合わせれば、専用のモニタリン
には薬剤で治療されている。Sensory Medical 社
グソフトウェア「ZephyrLIFE」で、体重、血圧
は、薬物を使わずに RLS の症状を緩和するデバ
なども統合して管理できる。
両製品ともに市販前届 510(k)を完了しており、
イス「Relaxis」の市販前届 510(k)を完了した。
BioHarness は家庭用として、BioPatch は医療機
Relaxis は、長方形のパッドとコントローラー
関用として販売されている。
からなるシンプルなシステムで、就寝時に脚の下
にパッドを敷いて電源を入れると、振動を与えて
症状を緩和してくれる。急停止により目が覚めな
いよう、30 分経過すると振動がフェードアウトす
る仕様だ。
中~重度の RLS 患者 77 人を対象とした臨床試
験で、振動しないパッドを使用した非治療群と、
Relaxis 群の治療効果を比較したところ、Relaxis
BioHarness
群の多くは症状が軽減され、睡眠障害が改善した
と回答した。
BioPatch
(http://www.zephyranywhere.com/)
ボストンがバイエルの
血管インターベンション
事業部を買収
2014 年 5 月 16 日
ボストン・サイエンティフィックは、バイエル
(http://sensorymedical.com/)
(独)から血管インターベンション事業部を 4.1
M&A
億ドルで買収し、末梢血管治療の製品ラインナッ
プ強化を図る。対象となるのはカテーテルベース
の製品で、血栓除去用デバイス「AngioJet」シリ
コヴィディエン、遠隔医療用
センサーを開発する
Zephyr 社を買収
ーズ、アテローム切除術用デバイス「JetStream」
シリーズ、吸引カテーテル「Fetch 2 Aspiration
Catheter」だ。
AngioJet は、先端が円錐状のカテーテルで、ガ
2014 年 5 月 7 日
イドワイヤーを末梢血管の血栓部に挿入し、生理
コヴィディエンは、遠隔医療用の着用型センサ
食塩水を噴射して血栓を砕きながら吸引できる。
ーを開発する Zephyr Technology 社を買収するこ
JetStream は、先端にドリル形状の刃を持つカテ
とを発表した。
ーテルで、
アテロームを切除しながら吸引できる。
(http://www.medrad.com/)
17
Jun. 2014
Vol.45
S&N を買収することはない。整形外科分野では、
セント・ジュード、心機能
モニタリングシステムの
CardioMEMS 社を買収
今年 4 月にジンマーとバイオメットによる大型
M&A が成立しており、これに対抗する他メーカ
ーの M&A が噂されていた。
2014 年 5 月 29 日
証券会社のアナリストは、
「今回はまだ買収相手
の調査段階だっただけで、ストライカーが将来的
セント・ジュード・メディカルは、心不全患者
に S&N を買収する可能性はある。整形分野で売
の肺動脈圧をモニタリングする「CardioMEMS
り上げ上位の J&J やストライカーにとって S&N
HF System(以前の製品名は Champion)
」を開
は魅力的な買収ターゲットであるため、どちらか
発する CardioMEMS 社を買収した。
に買収される可能性が高い」と話している。
心不全患者の肺動脈圧をモニタリングすれば、
Global Market
病状の悪化を早期に検知できるだけでなく、薬剤
の投与量の調整にも役立つ。CardioMEMS HF
System は、3.4×15×2mm の植込み型センサー
エドワーズとメドトロニック、
TAVI デバイス訴訟で
ついに和解
とベッドサイドモニターからなるシステムで、8
の字型の固定用ワイヤーを備えたセンサーを肺動
脈にカテーテルで留置する。測定データは無線で
2014 年 5 月 21 日
モニターに送信された後、専用のウェブサイトに
転送され、医師が確認できるようになっている。
2011 年に臨床試験の実施計画違反が指摘され
エドワーズライフサイエンスが経カテーテル
て承認取得が延期されていたが、今年 5 月末に市
大動脈弁留置術(TAVI)用デバイスの特許侵害で
販前承認(PMA)を取得した。
メドトロニックを訴えていた問題で、訴訟開始か
ら 6 年の月日を経て、両社はようやく和解に合意
した。これによりメドトロニックは、7.5 億ドル
の和解金に加え、2022 年 4 月まで特許使用料を
エドワーズに支払う。この特許使用料は、年間
4,000 万ドルの最低支払額に、製品の売り上げに
応じたライセンス料を加えた金額となる。
合意には、TAVI 用デバイスの特許訴訟の案件
(http://professional.sjm.com/)
を含めた両社間で係争中のすべての訴訟を取り下
げ、今後 8 年はお互いに TAVI 用デバイスの特許
ストライカー、
S&N の買収報道を否定
紛争を起こさないことが盛り込まれている。先月
米国の連邦地方裁判所は、
メドトロニックの TAVI
2014 年 5 月 29 日
用デバイス「CoreValve」がエドワーズの「Sapien」
の特許を侵害していることを認め、CoreValve の
先日、英国のフィナンシャル・タイムズ紙は、
米国内販売を制限する仮差止命令を出していた。
ストライカーがスミス・アンド・ネフュー(英)
そのため CoreValve で TAVI のトレーニングを行
を買収すると報じたが、ストライカーはそのよう
った医療機関への影響が心配されていたが、今回
な計画はないと、報道を否定した。
の合意により、販売停止は回避された。
英国の M&A ルールでは、企業が買収の可能性
(http://www.edwards.com/)
を公表した後で買収を行わない意志を表明した場
合、その後 6 カ月間は買収が禁止されるため、
編集部注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し
ています。
S&N からの申し出がない限り、ストライカーが
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Jun. 2014
Vol.45
Kawanishi Hotline
前号の Medical Device Daily から、カワニシグループの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。
生体吸収性の人工靭帯 L-C Ligament の
臨床試験が始まる〈4/22〉
• 患者の立場からすると、もしうまくいかなくても
次の治療法を試せるため、第一選択肢として使っ
てもらいたい製品だろう。(西山)
Soft Tissue Regeneration 社の「L-C Ligament」
は、ポリ乳酸繊維のスキャフォールド。組織の
イングロースを促進して前十字靭帯(ACL)を再
建し、1 年ほどで生体に吸収される。自家腱の採
取は不要で、摩耗リスクも抑えられる。
First Warning社の
着用型乳癌検知デバイスFWS〈4/8〉
「FWS」は温度センサーと記録ユニットを内蔵
したスポーツブラで、12~24時間着用してデー
タを収集し、細胞周期の温度により乳癌を検出
する。マンモグラフィーより検出率が高く、圧
迫したり放射線を使用する必要がない。
• ACL 損傷はスポーツ外傷だけでなく、長年の使
い傷みによって起こるケースが高齢者に多い。吸
収性と非吸収性人工靭帯の摩耗面の比較データ
がないため何とも言えないが、2 年間で自己靭帯
に置換されたという前臨床試験データも出てい
• 日本の乳癌検診の受診率は 30%台で、欧米豪の先
るので、既存品より有利なポジションを確保でき
進国と比較して顕著に低い。受診意識の低さに加
そう。施術時間を 30 分短縮できるのも、術者と
え、マンモグラフィーの「痛い」「大仰な」とい
患者の負担を軽減できて魅力的。低侵襲な手技で
うイメージから敷居の高さを感じる人が多いの
以前の機能や QOL を取り戻すことができる、市
も原因の 1 つだ。着用するだけで高精度に癌検査
場ニーズに適した製品といえる。(安藤)
ができる FWS なら、受診率の向上と早期発見に
• 日本で発売されれば、ユフ精器、アイメディック、
つながり、結果的に患者 QOL の向上と医療費の
アースレックス、バイオメットなどが競合になる。
抑制が期待できる。乳癌検診の対象者を 2,000 万
非吸収性の人工靭帯より自家腱移植のほうが成
人として、受診率を 5 ポイント押し上げれば 100
績がよいとされているが、この製品を使用すれば
万人の新規受診者が生まれるため、市場規模とし
健常な組織を採取せずに済み、術後の早期回復が
ても十分。ただ、FWS は従来の検査よりも検査
見込める。吸収性になったことで摩耗リスクがど
時間(着用時間)が長く、1 デバイスの回転率は
のくらい低減できるのかに注目したい。(坂)
大幅に落ちる。回転率を上げるためには複数台の
• ACL 再建術では自家腱を採取し、採取した腱の
導入が必要なため、価格が普及のカギを握るだろ
補強としてポリエステル製人工靭帯を用いるの
う。(樋口)
が主流。今回生体吸収性のポリ乳酸線維組成の
• 乳癌は年々増加傾向にあり、死亡率も高い。早期
L-C Ligament が登場したことで、今までの人工
発見により完治も可能な癌なので、とにかく検査
靭帯市場の勢力図が大きく変わってくるかもし
を受けることが重要だ。現在の検査は超音波やマ
れない。スムーズに骨孔に通せるのか、特別な縫
ンモグラフィーが主流だが、FWS は 1 日スポー
合糸が必要ないのかなどの疑問はあるが、手技も
ツブラを着用するだけなので、患者も負担なく検
ほぼ変わらず健常な腱の採取が不要になるのは、
査を受けられるのではないか。(栗原)
ドクターにとっても患者にとってもメリットが
• 痛みや被曝なく乳癌の検査が行える、女性に優し
大きい。新たな機能区分と償還価格が適用される
い製品。マンモグラフィーよりも検知率は上で、
のは間違いないため、ディーラーとしては価格面
有用性が高い。着用時間が 12~24 時間と長く、
でも期待できる製品だ。(若江)
病院は貸し出しが必要になるのがネック。
(武智)
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Jun. 2014
Vol.45
セント・ジュードがSCS装置
Protégéの市販前承認を取得〈4/7〉
注目のデバイス関連記事を
ピックアップ!(未掲載記事より)
非常にコンパクトな慢性疼痛用の脊髄電気刺激
(SCS)装置で、植込んだまま機能をアップグレ
ードできるのが最大の特徴。交換にともなう合
併症リスクやコストを抑えつつも最新の治療が
受けられる。バッテリーの耐用年数は最長10年。
■ CryoLife 社の局所止血剤「PerClot」
〈4/7〉
生体吸収性の多糖類の粉末で、出血部にかけると
瞬時に血液中の水分を吸収して止血する。血中の
血小板などの濃度を高めて血液凝固を促進し、2
~3 日で生体に吸収される。CE マークは取得済
みで、米国では臨床試験中。
• 日本ではメドトロニック、セント・ジュード・メ
ディカルに続きボストン・サイエンティフィック
も参入してきた分野であり、今後も市場の成長が
• 現在日本で使用できる植物性由来成分の粉
末止血材は、泉工医科工業の「アリスタ AH」
のみ。仕組みは同じようだが、止血効果や速
度によってはアリスタ AH を上回る可能性も
ある。臨床試験の結果を見守りたい。
(竹田)
• 同じコンセプトのアリスタ AH との違いに注
目している。多糖類が原材料なので、糖尿病
患者に使用した時の影響が懸念される。(片
桐)
見込まれる。MRI 対応や 3 軸加速度センサ付き
などさまざまな SCS が発売されており、電池寿
命も 10 年近くと長いものが多い。長期間使える
が機能が古いままという状況が一般的になりつ
つあるため、ソフトウェアのバージョンアップが
可能という Protégé の特徴は大きなメリットで、
他社との差別化につながる。痛みを除去して患者
の QOL 向上をめざすという製品の性格上、手術
■ Symmetry Surgical 社のケリソン鉗子
せずに痛みを我慢する患者も多いが、本体の交換
(手術)回数が少ないうえに最新のシステムを使
Symmetry Sharp Kerrison〈3/13〉
用できるとあれば、患者も植込みを選択しやすく
切れ味が落ちないよう先端部がディスポになっ
なると思われる。(坂本)
たケリソン鉗子。リユーザブルのハンドル部分
は長さが 3 種類、ディスポの先端分は長さ
50mm で、幅が 4 種類ある。
メドトロニック、MRI対応ICD
Everaの臨床試験を開始〈4/24〉
• 先端部の刃のみディスポなので、切れ味、清
潔にこだわるドクターに歓迎されそう。ディ
スポ部分の値段と、ハンドルとの接続部分の
耐久性が気になる。(千羽)
• ありそうでなかった製品。ドクターは使いや
すいし、ディーラーは消耗品を販売できるし
で、双方にメリットがある。(樋口)
患者の快適性を追求したデザイン、不適切動作
を低減する機能などを備えた ICD で、CE マーク
は取得済み。米国では全身撮影が行える MRI 対
応の ICD はまだ認可されていないため、早期に
承認を取得して米国での主導権を握る構えだ。
• ペースメーカ市場では、従来の MRI 非対応型の
■ Escalon 社が BiCOM 社のペン型眼圧計
「Diaton」を販売〈4/28〉
シェアが大幅に縮小し、対応型がシェアを拡大し
ている。ICD 市場も今後は MRI 対応型が大きく
先端をまぶたに押し当ててボタンを押すだけで、
シェアを伸ばしていくだろう。国内シェア 1 位の
迅速かつ無痛で眼圧を測定できる。従来の接触
メドトロニックから対応型が発売されれば、その
型や空気を放出する眼圧計では測定しにくい小
ブランド力や使い慣れたドクターが多いことか
児患者や角膜手術後の患者にも使用できる。
ら、高い競争力を持つと思われる。(小川)
• 麻酔なしで、まぶたの上から測定できるので
• 今までの MRI 対応製品は撮影部位に制限があっ
手軽。ただ、精度が低ければ今ある非接触型
で十分なため、高精度でなければ普及は難し
いだろう。(岡)
たが、Evera のように全身撮影に対応しているも
のも登場してきた。ただ、MRI 対応は必須の機
能にしても、全身対応を必要とするドクターは少
※〈 〉は MDD の配信日、
( )内は回答社員の名字
ないのではないか。(本山)
20
Jun. 2014
Vol.45
[出典紹介]
MDD (Medical Device Daily)
トムソン・ロイター
HRM (Healthcare Risk Management)
AHC Media LLC
医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。
医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。
医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。
CMA (Case Management Advisor)
入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。
HCM (Hospital Case Management)
病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。
SDS (Same-Day Surgery)
感染症コントロールから償還、コスト削減策まで、日帰り手術の効果と安全性を高める情報を幅広く収録。
HEH (Hospital Employee Health)
安全機能付き器材、感染管理、危険有害性など、医療従事者の安全と健康を維持するための情報を提供。
アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福山健
エディトリアル・スタッフ――佐藤崇/海野裕美/岩田斐/宮長夕紀/田中妙子/岡山大学 MESS/三宅優美
デザイン・フォーマット制作――川畑博昭
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平
崇
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[編集人]―――佐藤
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