Strategy Series FROM THE OFFICE OF THE CHAIRMAN 情報提供資料 2010 年 12 月 BRICs と N-11 の個人消費の台頭 ジム・オニール Chairman, Goldman Sachs Asset Management jim.oneill@gs.com +44(20)7774-2699 アンナ・ストゥプニツカ anna.stupnytska@gs.com +44(20)7774-5061 BRICs の個人消費は、今後 10~15 年で米国の個人消費に匹敵する までに拡大する可能性があります。 今後、米国の消費低迷があったとしても、BRICs とネクストイレブン (N-11)諸国がそれを補う以上の成長を遂げるものと見ています。 中国が今後、数年間に消費支出の対 GDP 比を上昇させることができれ ば、2020 年代前半に中国の個人消費だけで米国の個人消費に匹敵 する可能性があります。 BRICs が圧倒的な力を持つ一方で、インドネシア、メキシコ、トルコなど 一部の N-11 も主要な消費拡大国として重要度が増す可能性がありま す。 世界市場、特に耐久消費財、嗜好品、旅行・観光などを含む個人消費 関連部門への影響は、今後も非常に大きなものとなります。 BRICs と N-11 の個人消費の台頭は非常に複雑で不確実な要素を含 んでいますが、どの市場でも直接・間接的に最も重要な投資テーマを形 成する要素となると考えています。 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 目次 要約 3 はじめに 4 Section 1. BRICs と N-11 の個人消費のパワーはどれほどか? 1.1 今日の消費 5 1.2 次の 10 年間の消費の方向性を探る 6 1.3 信憑性チェック 10 Section 2. 各セクターおよび関連する市場機会への影響 2.1 耐久消費財 12 13 世界の自動車市場 13 N-11 と自動車 15 2.2 嗜好品 15 2.3 旅行と観光 17 19 世界の航空業界 Section 3. 台頭する個人消費:功罪一体か? 20 3.1 機会と恩恵 20 3.2 リスクと圧力 21 22 結論 Goldman Sachs Asset Management が 5 2 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 要約 Goldman Sachs Asset Management が 金融危機後の世界経済では、米国の個人消費の影響力が疑問視されるようになり ました。 過去数十年にわたって世界の成長エンジンとなってきたこの主要なプレーヤーな しで世界が今後を切り抜けていけるのかという不安も高まっています。 弊社では、今後米国の消費低迷があったとしても、BRICs と N-11 がそれを補う以 上の成長を遂げるものと見ています。 米国の消費は今なお BRICs を大きく上回っていますが、成長力と消費の増加率 では、先進国は現在も 10 年後も、そしてその先もこの 4 カ国にかないません。 BRICs の個人消費は 2020 年末までに、実質・名目でも米国に匹敵する規模に 成長する可能性があると予想されます。 中国が今後数年間に消費支出の対 GDP 比を上昇させることができ、米国の比率 が過去の平均まで低下すれば、2020 年代前半に中国の消費だけで米国に匹敵 する可能性があります。 消費の増加については、BRICs 全体で 2025 年まで実質ベースで年間平均 1 兆 米ドルずつ増加していく可能性があります。 名目ベースでは、BRICs の年間平均増加額は 1.5~2 兆米ドルに達する可能性 があります。 BRICs、特に中国とインドが間違いなく圧倒的な力を持つ一方で、インドネシア、メ キシコ、トルコなどの一部の N-11 も主要な消費拡大国として重要度が増す可能 性があります。 BRICs および N-11 の中(および高)所得層の急拡大が、今後 10 年以上にわたり 消費拡大の中心的な原動力となるでしょう。 消費者が上位所得層に移ることで様々な商品やサービスに手が届くようになり、そ れらの需要が加速します。 こうした所得シフトがもたらす消費パターンへの影響を 3 つのセクターについて解 説します。耐久消費財(特に自動車)、嗜好品、旅行・観光(特に航空)です。 今後 10~15 年は、成長率と絶対的規模の両面で BRICs による世界市場の支配 がスタートする可能性があります。 中国は自動車市場で販売高ではすでに世界最大となっています。また、10 年後 には世界最大の航空市場に成長し、15 年後には世界最大の嗜好品市場となる 可能性があります。 多数の機会とリスクが混在して非常に複雑ではありますが、BRICs と N-11 の個人 消費の台頭は現代の最も重要な戦略的ストーリーの 1 つだと考えられます。 3 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer はじめに 金融危機後の世界経済における最大の懸念の 1 つが、米国の消費パワーが衰退してしま った際に、世界は切り抜けていけるだろうか、ということです。周知のとおり、米国の消費は 約 10 兆 5,000 億米ドルで、米国の GDP の約 70.5%、世界の GDP の約 17%を占めて います。2000 年以降世界の経済は 32 兆米ドルから 60 兆米ドルを超える規模に拡大しま したが、この間に米国の消費は約 4 兆 8,000 億米ドル増大し、そのうち 74%が個人消費 によるものです。 したがって、今後米国の消費低迷があったとしてもBRICsといわゆるネクストイレブン(N11)1諸国がそれを補う以上の成長を遂げることは幸運なことです。実際、米国以外の消費 者が世界の成長をリードし、その牽引役を担う時代に入りつつあるのは、米国の低迷や世 界の金融危機がその契機となったと言えるかもしれません。 本稿では、BRICs と N-11 における消費の現在から 2025 年までの潜在的な方向性につ いて、全体および各セクターについて予想してみたいと思います。これには次の 2 つの理 由があります。まず、BRICs という概念が 2001 年に登場して以来、ゴールドマン・サックス の経済調査部は、BRICs の台頭によって 2050 年までの長いスパンにおいて消費パター ンがどのようにシフトする可能性があるかを調査してきました。したがって長期的なダイナミク スは大まかに認識されています。そこで今回は、短期的すなわち投資家にとってより身近な スパンにおける変化と機会を定量化し、詳細に分析評価したいと思います。第 2 に、今後 10~15 年は BRICs の世界的な成長にとって重要な時期になると思われます。数々の敷 居を越え、マーケットシェアを大幅に獲得し、新しいリーダーが世界経済のあちこちに登場 する可能性があります。BRICs は、成長や需要の増加だけでなく、消費の絶対的な規模に おいても初めて多くの市場で支配的な地位を獲得すると思われます。こうしたシフトの中で も特に顕著な変化は、中国の個人消費の世界市場における重要性の高まりとその牽引力 です。そこでこの「主役交代」までの時間とその重要性、さらにその過程における機会と圧 力要因を明らかにしたいと思います。 本稿の構造は以下のとおりです。 セクション 1 では、異なるシナリオに基づき、先進国(日米欧)と比較した BRICs および N11 の現在および潜在的な個人消費の規模を分析します。「現状維持シナリオ」は、全期間 にわたり各国の GDP に占める消費の割合が不変であると想定したシナリオです。「リバラン シング・シナリオ」は、中国と米国の消費が占める割合がより持続可能な水準に収斂してい くと想定したシナリオです。いずれのケースでも今後数年以内に BRICs の個人消費が支配 的になる状況が描かれています。 セクション 2 では、様々なセクターにおける消費の拡大の影響を論じます。BRICs と N-11 における中高所得層の拡大によって最もすぐに現れる直接的影響の 1 つが消費パターン のシフトです。裕福になればなるほど、生活必需品から裁量的支出、そして嗜好品へと 人々の支出の重心が移行していきます。そこで、この動きに最も影響を受けやすい 3 つの セクター、つまり耐久消費財(特に自動車)、嗜好品、旅行・観光(特に航空)に焦点を当て ていきます。 セクション 3 では、BRICs と N-11 の個人消費の台頭による国内経済および世界経済にと ってのメリットとリスクについて論じます。メリットの中では供給サイドの多数の機会とそれに 関連する資本市場の発展の見通しを取り上げます。さらに、国内消費の比重の高まりとセク ターの多様化も成長モデルの持続可能性の向上につながり、国内経済へのメリットとなりま す。潜在的リスクには需要に誘発された変動、供給サイドの圧力、環境問題などが挙げられ ます。また当然ながら、このような予測が不確実であることも認識しています。 1 N-11 にはバングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムが含まれる。 Goldman Sachs Asset Management が 4 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES Section 1. 1.1 The Rise of the BRICs and N-11 Consumer BRICs と N-11 の個人消費のパワーはどれほどか? 先の成長と消費の増加額という点で BRICs の 4 カ国にか ないません。実際、2020 年までには絶対額でも米国の 個人消費の地位が脅かされているかもしれません。以下、 その点について説明します。 今日の消費 図表 1a~c が示すとおり、現在の BRICs の個人消費は 「ほんの」4 兆 2,000 億米ドル(2009 年値)で、これは 米国の合計の約 40%です。このうち中国が占める割合は 半分以下の約 1 兆 8,000 億米ドルです。BRICs の中で第 2 の消費大国はブラジルで、これにインド、ロシアと続 きます。いわゆる N-11 の消費は 2 兆 6,000 米ドルで BRICs の約 3 分の 2 となります。このうち韓国、メキシ コ、トルコが合計のほぼ 60%を占めています。 図表 2a、b が示すとおり、実際ここ数年における主要な 発展途上国の消費の伸びは先進国に匹敵しています。 BRICs の名目消費(米ドル換算)は 2000 年の 1 兆 4,000 億米ドルから 2009 年には 3 倍の 4 兆 2,000 億米 ドルに伸びています。同じ期間における米国の名目消費 の伸び率は 50%です。実質ベースでは、2000 年から 米国と EU27 カ国を合計した消費は約 20 兆米ドルで、 2009 年にかけて BRICs の消費額(米ドル換算)は、ほ このうち米国の占める割合は 50%強です。これは BRICs ぼ 2 倍に増えています。対して米国はわずかに 20%の伸 と N-11 を合わせた消費活動の 3 倍の規模に相当します。 びにとどまっています。世界消費における絶対額ベース 日本の消費は 3 兆米ドル以上で BRICs の合計を下回りま での BRICs の増加額は 2000 年以降米国を上回っていま すが、一国としては依然として米国に次いで第 2 位の規 す。 模です。中国は最近、日本を追い抜いて世界第 2 位の経 済大国に躍り出ましたが、興味深いことに、消費部門の N-11 の台頭はまだそれほど大きなものではありません。 規模は日本の約 60%にすぎません(2009 年、米ドル換 N-11 の消費は 2001~2007 年に実質ベースで 35%以上 算)。 の伸びを示しましたが、金融危機の時期に減少してほぼ 2001 年当初の水準に戻っています。BRICs も 2009 年に これらの数字を見ると、依然として先進国の個人消費が 実質消費が約 3%減少しましたが、これまでに入手可能 今後の世界の GDP 成長にとって必要不可欠であると大 な今年のデータ(2010 年の大部分にわたる GDP 統計や 多数の人々が考えるのも驚くことではありません。絶対 速報性の高い小売売上高などの指標)によれば消費は大 額においては米国の消費が BRICs の合計よりも多く、日 幅に回復し、その上昇幅はおそらく過去最大水準と思わ 本の消費が中国を上回っていることは事実です。しかし、 れます。 今後において重要なのは、現在の水準ではなく変化のペ ースとその方向性です。先進国は、今後 10 年からその 図表1a‐2009年の消費とGDPの概要 16,000 2009 Consumption 14,000 2009 GDP 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 Vietnam Bangladesh Philippines Pakistan Nigeria Egypt Iran Indonesia Korea Turkey Mexico Russia India Brazil China N-11 Japan BRICs BRICs+N-11 0 EU-27 2,000 US 10億米ドル(2009年) 18,000 Source: IMF, national sources, GS Global ECS Research Goldman Sachs Asset Management が 5 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES 図表1b - 米国の個人消費は依然として世界最大 中国の個人消費は依然として日本を下回る 2009 Consumption 800 Source: IMF, national sources, GS Global ECS Research 5,000 2001 2009 6,000 4,000 2,000 BRICs N-11 US EU-27 Vietnam Bangladesh 3,000 2,000 1,000 0 Japan Source: IMF, national sources, GS Global ECS Research 1.2 2001-2009 Real Consumption Change 4,000 8,000 0 Philippines 図表 2b - BRICsの消費増加額は米国を上回る 10億米ドル (2009年) 10億米ドル(2009年) 10,000 Pakistan Source: IMF, national sources, GS Global ECS Research 図表 2a -BRICsの実質消費は10年間でほぼ2倍 12,000 Nigeria 0 Egypt 200 Iran Russia India Brazil China N-11 Japan BRICs BRICs+N-11 0 EU-27 3,000 400 Indonesia 6,000 600 Korea 9,000 2009 GDP Turkey 10億米ドル(2009年) 2009 GDP 12,000 US 10億米ドル(2009年) 1,000 2009 Consumption 15,000 図表 1c -N-11 消費の60%を占める メキシコ、トルコ、韓国 Mexico 18,000 The Rise of the BRICs and N-11 Consumer EU-27 BRICs+ BRICs N-11 US Japan N-11 Source: IMF, national sources, GS Global ECS Research 次の 10 年間の消費の方向性を探る これらの疑問に答えるため、BRICs、N-11、米国、EU 27 カ国および日本の 2025 年までの消費の方向性を予想 今後の発展途上国の消費成長の見通しはどうでしょうか。 してみました。弊社の枠組みは比較的単純です。基本と BRICs と N-11 の個人消費規模はどうなるでしょうか。 なるのはゴールドマン・サックスの GS グローバル ECS 米国の消費は追い越されるでしょうか。 調査部が作成した長期 GDP 予測(米ドル換算)および 各国の消費が GDP に占める割合に関する想定です。消 費予測の詳細については Box1 と 2 を参照してください。 Goldman Sachs Asset Management が 6 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer Box 1: 消費予測の方法 「現状維持」(または「一定消費割合」)シナリオ: 2012 年以後の消費支出の GDP に占める割合が 2000~2009 年の平均に収斂すると想定しています (2010~2011 年は 2009 年の水準からの移行期と みなします)。 消費予測は、以下の手順で行いました。 1. GDP 予測 2009 年の現地通貨建て GDP(確報値)を基準に、 GS グローバル ECS 調査部による実質 GDP 成長予 測を用いて 2009 年の物価水準での 2010~2012 年の GDP を予想します。 「リバランシング」(または「変動消費割合」)シナリオ: 金融危機後に米国と中国の経済がより持続可能な 成長モデルに向けてリバランシングされ、両国の消 費と貯蓄率がより均衡すると想定しています。 GS グローバル ECS 調査部による長期実質 GDP 成 長予測(最新情報は Global Economics Paper 170、2008 年 7 月)を用いて 2009 年の物価水準で の 2013~2025 年の GDP を予測します。 消費の割合を把握した上で、手順 1 で計算した実質 GDP 予測を用いて 2010~2025 年の名目および実 質消費水準を計算します。 名目 GDP を予測するにあたっては、インフレ率が国 の正式なインフレ目標付近で推移するか、インフレ 目標が設定されていない場合は、その国の中央銀 行が目標にすると思われる合理的な中期的インフレ 率付近で推移すると想定します。詳しい想定事項に ついては次頁の表をご参照ください。 3. 通貨 現地通貨建ての消費は、GS グローバル ECS 調査 部の米ドル/現地通貨為替相場の長期予測を用い て米ドルに換算します。この為替相場予測は、相対 的な生産性の改善が徐々に実質的な通貨の上昇に つながるとの前提に基づいています。 2. 消費の占める割合 (シナリオに関する詳細は Box 2 をご 参照ください。) 現地通貨建て名目 GDP と消費データを用いて 2000~2009 年の GDP に占める家計消費の割合を 計算します。 Box 2: 消費のシナリオ 2025 年までの消費を予測するため、消費が占める割合に 関する 2 つの異なるシナリオを検討します。「現状維持」シ ナリオは GDP に占める消費の割合が 2000~2009 年の平 均と同水準で推移すると想定しています。「リバランシング」 シナリオでは、消費と貯蓄の不均衡が特に顕著な国々で持 続可能な水準への調整が進むと想定しています。本稿で は、その趨勢が特に重要な中国と米国に注目していきま す。 エコノミストは、特に個人消費が GDP に占める割合が現在 (2009 年)の 35%から 2015 年には 43%、2025 年には 55%に上昇すると予測しています(GS Global Economics Paper 191「China’s Savings Rate and Its Long-term Outlook」、2009 年 10 月 16 日参照)。我々はこれらの予 測を用いて「リバランシング」シナリオを作成しました。 米国の趨勢は中国と逆です。GDP に対する個人消費の割 合は 1970~2009 年の平均で約 66%、2000 年以後は 70%であり、前述のとおり米国の個人消費は過去数十年に わたり経済成長の主要なエンジンとなってきました。しかし、 金融危機を契機に、景気を下支えしてきた米国の個人消費 の力に疑問が生じました。低迷する住宅市場、長引く貸し 渋り、足踏みする企業の雇用情勢などを前に、消費回復の 遅れが鮮明になっています。米国が貯蓄不足に中長期的 に取り組めば、GDP に占める消費の割合は、少なくとも過 去の長期的な平均である 66%程度までは低下する可能性 があります。これが、我々の「リバランシング」シナリオの想定 です。消費の割合は 2015 年までには 66%に収斂し、その 後 2025 年までは変わらずに推移すると想定しています。 経済における構造的な変化は、中長期的に消費の GDP に 占める割合を大きく変える場合があります。これは、世界経 済において金融危機後のリバランシング(バランス調整)が 進んでいる現在、特に話題性が高い問題です。中でも中国 は重要な例です。同国の貯蓄率は世界でもトップクラスです が、長期的な成長の妨げとならないようにするためには貯蓄 率の低下が必要です。医療や社会保障制度改革といった 政策により意図的にこのプロセスが加速される場合もありま す。ゴールドマン・サックスのエコノミストの予測によると、中 国の貯蓄率は長期的には低下する可能性が高く、これによ り個人消費の伸びが加速する可能性がうかがえます。 Goldman Sachs Asset Management が 7 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer ルを追い抜き、BRICs の中で第 2 位の消費大国とな る可能性もあります。 シナリオの想定事項 2013-2025 年の 想定インフレ率 (前年比%) 2012-2025 年の GDP に 対する消費の割合(%) 2009 年の GDP 「現状維持」 に占める消費の シナリオ(2000- 「リバランシング」 2009 年平均) 割合(%) シナリオ Brazil China 62.8 36.3 61.5 39.8 India Russia 57.3 53.9 60.5 49.0 Bangladesh Egypt Indonesia Iran Korea Mexico Nigeria Pakistan Philippines Turkey Vietnam US 70.5 76.1 58.6 45.3 54.3 67.4 68.5 80.5 73.9 71.5 66.5 70.8 71.5 73.3 63.7 46.2 54.6 65.5 71.5 75.9 70.2 70.4 65.3 69.8 EU-27 Japan 58.4 59.6 58.2 57.4 N-11 の消費が BRICs の潜在力を脅かす可能性は 当然ながらほとんどありませんが、これらの国々も米 ドル換算での個人消費が大幅に成長するものと見込 まれ、2020 年までには 2 倍に拡大する可能性があ ります。N-11 の個人消費は 2012 年にも日本を大幅 に追い抜く可能性がありますが、中国ほどの勢いは 保てないでしょう。2015 年には中国の個人消費はさ らに拡大している可能性があります。 図表 3e が示すように、N-11 の中ではメキシコの個 人消費が引き続き最大を維持し、2009 年の約 6,000 億米ドルから 2025 年には 1 兆 4,000 億米ド ルを超えるほどに成長する見込みです。2020 年代 初めにはトルコとインドネシアが韓国を追い抜く見通 しです。実際、現時点を基準とした場合、N-11 の中 ではインドネシアの経済が最速ペースで成長すると 思われます。その他の N-11 の中では、絶対額ベー スの消費が際立っている国は特にありませんが、消 費成長率が目覚ましく上昇する国は一部出てくるで しょう。 BRICs の消費増加分、つまり 2009~2025 年の年 平均の消費増加額については、間違いなく中国が世 界第 1 位であり、全世界の消費を毎年平均約 5,000 億米ドルずつ拡大していく可能性があります。BRICs 全体では、2025 年まで毎年平均 8,000 億米ドルず つ消費が拡大する可能性があります。 メキシコ、インドネシア、トルコの各国も 2025 年まで 毎年平均約 400~500 億米ドルずつ消費を拡大し ていく可能性があります。興味深いことに、N-11 の年 平均消費増加分は約 2,700 億米ドルと、米国を上 回る可能性があります。 名目ベースでの 両シナリオ – 43.0 by 2015, 55.0 by 2025 – – 4.0 3.0 – – – – – – – – – – – 66.0 by 2015, constant to 2025 – – – – – – – – – – – – – 2.0 3.0 5.0 2.0 0.5 Source: Haver Analytics, GS Global ECS Research, GSAM calculations 実質ベースの「現状維持」シナリオでは、以下の結果が得ら れます。 図表 3a、b が示すように、BRICs の個人消費は 2020 年末までに米国に匹敵するまでに拡大する可 能性があります。実際、実質ベースでの BRICs 全体 の消費(米ドル換算)は 2022 年までに米国を抜き、 3 倍に成長する可能性もあります。EU 27 カ国につ いては、さらに早く、2020 年までに追い抜く可能性 があります。 BRICs の中でも中国の個人消費は今後数年内に支 配的な地位を確保し、2013 年までには日本の消費 を上回るほどに拡大する可能性があります。また、図 表 3c、d が示すように、2019 年までにインドがブラジ 18,000 図表 3a - BRICs の実質消費は次の15年で 4倍の可能性も 「現状維持」シナリオでの 実質消費 16,000 10億米ドル(2009年) 14,000 20,000 図表 3b - BRICsの個人消費、2022年までに 米国を超える可能性も 2009 BRICs 2020 N-11 16,000 2025 10億米ドル(2009年) 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 「現状維持」シナリオでの 実質消費 US EU-27 12,000 Japan 8,000 4,000 2,000 0 BRICs N-11 US EU-27 0 Japan Source: National sources, IMF, GS Global ECS Research, GSAM calculations Goldman Sachs Asset Management が 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 Source: National sources, IMF, GS Global ECS Research, GSAM calculations 8 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 図表 3c - 中国の実質消費、 2025年には5倍以上の可能性も 10,000 10,000 「現状維持」シナリオでの 実質消費 「現状維持」シナリオでの 実質消費 8,000 2009 10億米ドル(2009年) 2020 6,000 2025 4,000 2,000 Brazil China India India Russia 4,000 2,000 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 Source: National sources, IMF, GS Global ECS Research, GSAM calculations Source: National sources, IMF, GS Global ECS Research, GSAM calculations 図表 3e -メキシコはN-11で最大の消費国としての地位を維持する可能性が大 1,600 「現状維持」シナリオでの 実質消費 1,400 2009 1,200 2020 1,000 2025 800 600 400 Vietnam Turkey Philippines Pakistan Mexico Korea Iran Bangladesh 0 Indonesia 200 Egypt 10億米ドル(2009年) China 6,000 0 Russia Brazil Nigeria 10億米ドル(2009年) 8,000 0 図表 3d - インドはブラジルを抜いて BRICs第2の消費大国となる可能性も Source: National sources, IMF, GS Global ECS Research, GSAM calculations 図表 4a -「リバランシング」シナリオのBRICs 消費、2025年までに20兆ドルに達する可能性も 24,000 20,000 BRICs under 'Status Quo' Scenario BRICs under 'Re-balancing' Scenario US under 'Status Quo' Scenario US under 'Re-balancing' Scenario 16,000 16,000 10億米ドル(2009年) 10億米ドル(2009年) 20,000 図表 4b -「リバランシング」シナリオの中国の 消費、2025年までに米国に追いつく可能性も 12,000 8,000 4,000 0 が 8,000 4,000 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 Source: GS Global ECS Research, GSAM calculations Source: GS Global ECS Research, GSAM calculations Goldman Sachs Asset Management 12,000 0 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 China under 'Status Quo' Scenario China under 'Re-balancing' Scenario US under 'Status Quo' Scenario US under 'Re-balancing' Scenario 9 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 図表 5b -「リバランシング」シナリオの中国、 名目ベースで2024年までに米国を抜く可能性も 図表 5a - BRICsの名目消費、 2025年までに7倍になる可能性も BRICs 35,000 US 30,000 EU-27 25,000 China 40,000 「現状維持」シナリオの 名目消費 35,000 10億米ドル 10億米ドル 40,000 20,000 15,000 25,000 China 20,000 15,000 5,000 5,000 0 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 Source: GS Global ECS Research, GSAM calculations Source: GS Global ECS Research, GSAM calculations 「リバランシング」シナリオでは、実質ベースで中国の消費が GDP に占める割合は上昇し、米国での消費の割合は低下し ますが(詳細は Box 2 を参照)、特に注目すべき点として以 下の結果が挙げられます。 「リバランシング」シナリオでは、図表 5b に示したと おり、このような変化の規模と時期はさらに際立った ものとなります。BRICs の個人消費は 2017 年には 米国を抜き、2025 年には 35 兆米ドルを超す可能 性があります。対する米国消費の伸びはこの増加幅 の半分にとどまるかもしれません。2024 年には中国 だけでも米国を抜き、2025 年には名目ベースで 20 兆米ドルを超す可能性もあります。これは現在の米 国と EU 27 カ国の個人消費を合計した規模に相当 します。消費増加分としては、BRICs 全体で現在か ら 2025 年までの年間平均が 2 兆米ドルに迫る可能 性があります。 BRICs の個人消費は図表 4a に示したとおり、2019 年にも米国を超えるかもしれません。BRICs の実質 消費(米ドル換算)は 2020 年までに現在の 3 倍以 上、2025 年には 5 倍に成長する可能性があります。 驚くべきことに、こうした想定下では、図 4b に示され ているように、2025 年末には中国単独でも米国に迫 る可能性が考えられます。中国の消費(米ドル換算) は 2025 年には 13 兆米ドル(2009 年の物価水準を 想定)を超え、米国にほぼ追いつく可能性があります。 1.3 信憑性チェック その結果、中国消費の年平均増分は 7,000 億米ド ルを超える可能性があります。さらに BRICs 全体で は年間 1 兆米ドルずつ消費が拡大する可能性もあり ます。 世界の消費パターンにおけるこのような変化は劇的なものに なると思われます。もし個人消費の重心の BRICs への移動 が長期にわたって生じるのではなく次の 10 年間に起こった 場合、その影響は大きなものとなります。このような予測シナリ オにはどの程度、信憑性があるのでしょうか。 さらに、BRICs の個人消費が名目ベースで先進国と比べてど の程度拡大するかも調査しました。 GDP の想定がこの予測の中心になっていますので、予測結 果は GDP の想定に大きく依存します。ゴールドマン・サックス が発行したレポート「GS Global Economics Paper 192」によ れば、BRICs の長期成長の足取りが最初に予想されてから 6 年後、BRICs の 4 カ国はすべて当初予想を上回る成長を示 しました。これまでの実際の変化は当初の予想よりもはるかに 目覚ましいものとなっています。弊社の長期予想 GDP が現 実化する限り上記の消費シナリオには信憑性があり、むしろ 予測を上回る可能性があります。 「現状維持」シナリオでは、BRICs の消費は 2020 年 までに現在の 4 倍以上、2025 年には 7 倍のほぼ 30 兆米ドルに達する可能性があります。これは米国 の現在の水準の約 3 倍に相当します。BRICs の個 人消費は 2019 年までに米国を追い抜く可能性があ り、2025 年には米国の名目消費は BRICs の 3 分 の 2 以下になるかもしれません。年間ベースでは、 BRICs の 2025 年までの名目消費が平均で 1 兆 5,000 億米ドルを超える増加となる可能性があります。 弊社の GDP 予想への依存を排除するため、BRICs と N-11 これは図表 5a に示されています。 の消費の 2001~2009 年の実質平均成長率(米ドル換算) がその後も継続する(一時的な為替変動を除く)という想定で、 2025 年までの実質消費を予測する単純な予測を行いました。 この予測では、これらの国々の過去の実質消費の成長と通貨 Goldman Sachs Asset Management が EU-27 10,000 「リバランシング」シナリオの 名目消費 US 30,000 10,000 0 BRICs 10 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer の上昇を考慮していることになります。これはつまり、BRICs の実質消費については約 8.4%、N-11 については約 3.3% の年平均成長率を想定することになります。先進国について は現地通貨ベースの(つまり、為替変動は考慮しない)実質 消費成長率を使用しました。米国、EU 27 カ国、日本の成長 率は、それぞれ 2.2%、1.5%、0.8%程度です。 「平均成長」シナリオで先進国を追い抜くタイミングに ついて見ると、BRICs が米国を追い抜く時期は 2024 年となり、「現状維持」シナリオと比べて 2 年遅 れます。中国の消費は 2015 年までに日本を追い抜 く可能性があります。N-11 合計の個人消費が日本を 追い抜くのも同じ時期でしょう。 この予測結果と「現状維持」シナリオとの比較により、以下の 点が明らかになりました。 こうした予測結果から考えれば、別の単純化された手法を用 いて消費の予測を行った場合でも結果が大幅に異なることは ないと考えられます。したがって、どのような方法で検討しても、 先進国の 2020 年と 2025 年までの消費水準につい 今後 10~15 年には先進国から主要新興国/成長国へとこ ては、2 つの予測は非常に類似しています。 れまでになく大きな規模で個人消費の中心が移動すると思わ BRIC では 2020 年の中国とロシアの予測に大きな れます。BRICs、特に中国とインドは間違いなく支配的地位を 違いはありませんでしたが、ブラジルとインドの消費 確保しますが、インドネシア、メキシコ、トルコなど他の国々も は「平均成長」で低めの結果がでました。「平均成長」 主要な消費国としての重要度が増すと思われます。 シナリオによる 2025 年までの中国の消費は、「現状 維持」ケースを若干上回りました。BRICs 全体の 2025 年の予測は、図表 6a、b に示されているとおり、 2 つのシナリオで非常に類似した結果となりました。 N-11 に関しては、「平均成長」シナリオではトルコを 除くすべての国について潜在的消費が低く評価され ています。「現状維持」シナリオに比べて消費が大幅 に低い結果となり、特にバングラデシュ、エジプト、イ ンドネシアにその傾向が顕著です。 図表 6b -N-11の消費が2つのシナリオ間で 最も異なる(2025年) 図表 6a -「平均成長」シナリオはBRICsの消費 予測に概ね信憑性があることを示す 12,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 Brazil China India Goldman Sachs Asset Management 10,000 5,000 0 Russia US EU-27 Japan BRICs N-11 Source: National sources, GS Global ECS Research, GSAM calculations Source: National sources, GS Global ECS Research, GSAM calculations が 'Average Growth' Scenario (Plausibility Check) 'Status Quo' Scenario 15,000 10億米ドル(2009年) 10億米ドル(2009年) 10,000 20,000 'Average Growth' Scenario (Plausibility Check) 'Status Quo' Scenario 11 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer Section 2. 各セクターおよび関連する市場機会への影響 以下、BRICs が今後数十年にわたって世界の自動車、嗜好 品、旅行市場の主要な牽引力となる可能性を明らかにしたい と思います。重要な点は、このような需要パターンの変化は数 十年先ではなく、すでに目前に迫っているということです。今 後 10~15 年には BRICs が需要の伸びだけではなく(これは 過去 10 年間にすでに現実化しています)、初めて絶対的規 模でも世界市場を席巻する時代が始まる可能性があります。 さらに、この間に中国は 3 つすべての商品カテゴリーで世界 最大の市場となる可能性が高く、実際、次のような状況が予 想されます。 弊社グループはこれまで発行してきた BRICs 関連のレポート の中で、これらの国々の台頭が今後数十年における世界の 状況を根本的に変化させる可能性があると強調してきました。 実際、これらの変化の中にはすでに顕在化しているものもあり、 しかも予想より早くなっている様子もあります。消費の変化は、 世界の中間所得層の前例のない台頭が原動力となって生じ る初期の変化の 1 つです。高所得層に移行するにつれ、 人々の消費構成は生活必需品中心から不要不急の消費財・ サービスや嗜好品中心へと移ります。図表 7 は、各セクション にわたるこうした移行の様子をわかりやすく示したものです。 中国の高所得層は年間支出合計のうち住宅関連(耐久消費 財を含む)、交通・通信、教育・文化・娯楽サービスに占める 割合が、低所得層よりも高いことがわかります。同様の状況は、 時間軸に沿って見る場合や複数の国々を比較する場合でも 観察することができます。 これまでのレポートでも、所得増大に牽引された消費パターン の変化が、例えば自動車やエネルギーなど特定の製品にも たらした影響について定量的に論じてきました(GS Global Economics Paper 118、170、192 など)。本稿では 3 つのカ テゴリーの消費関連支出の変化に的を絞って、今後 10 年に おける関連売上高を予測してみたいと思います。対象とする カテゴリーは、耐久消費財(特に自動車)、嗜好品、旅行・観 光です。 2020 年までに BRICs の消費者は世界の自動車販 売台数の半数を購入するようになっていると見込ま れます。昨年、中国はすでに自動車販売で世界一と なっています。 2025 年までに BRICs は世界の嗜好品市場の 50% を占めるでしょう。同じく 2025 年までに中国は世界 最大の嗜好品市場となる可能性があります。 2020 年までに BRICs は世界の航空市場の 35%、 2050 年までに 50%を占めるでしょう。2019 年には 中国は世界最大の航空市場となっている可能性が あります。 消費支出合計に対する割合(%) 図表 7 -中国都市部の家計支出内訳が所得上昇による生活必需品から 一般消費財・サービスへのシフトを示す 100 80 60 40 20 0 Lowest Low Lower Middle Middle Food Residence Health Care and Medical Services Education, Cultural and Recreation Services Upper Middle High Highest Clothing Household Facilities, Articles and Services Transport and Communications Miscellaneous Goods and Services Source: China Statistical Yearbook 2009 Goldman Sachs Asset Management が 12 2010 年 12 月 消費支出合計に対する割合(%) STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 図表 8 - 耐久消費在 対 1人当たり所得 中国は現在韓国の「スイートスポット」に入っている 16 14 12 10 Korea 8 Japan 6 UK 4 US 2 China 0 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 1人当たりGDP(PPPベース、国際ドル換算、2005年) Source: OECD, World Bank, national sources, GSAM calculations 2.1 耐久消費財 ット」に達すると、この割合は急速に拡大します。その後ピーク に達した後、当初の所得水準によって上昇前の水準かそれを 上回る水準にまで低下します。図表 8 は先進国の一部と中 国におけるこのS字パターンを示しています5。家計支出合計 に対する中国の耐久消費財の割合は 2000 年にピークを迎 え、その後ITバブルと同時期に低下しましたが、最近また回 復傾向を示しています。実際、中国は現在、韓国のスイートス ポットに入ってきており、耐久消費財支出の割合と購買力平 価(PPP)ベースの所得がともに 1980 年代初頭の韓国と同水 準にあります。中国が韓国の道筋を辿るならば、今後 10 年 間は耐久消費財に対する家計支出、特に中間所得層による 支出の割合が大幅に加速するでしょう。 特定の消費カテゴリーの需要が加速することは、一国の所得 増大に伴う典型的な現象です。各集団が上位所得層に移行 するにつれて様々な製品に手が届くようになり、それらに対す る需要が増大します。各製品にはそれぞれ成長の「スイートス ポット」があります。耐久消費財のスイートスポットは、低所得 層と中間所得層の境界からその先の中間所得層全体にわた ります。したがって、中間所得層に属する人々が増えるにつ れて、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、ラジオ、DVD プレーヤー、自 動車、その他の幅広い製品への需要が加速度的に増大しま す。 BRICsの消費者が耐久消費財に割り当てる支出の割合は今 もなお比較的低水準です2。中国の都市部では、すべての所 得層を平均すると年間生活支出に占める家庭用耐久消費財 の割合は約 2.8%です3。このうち、最低水準の所得層の耐久 消費財への支出の割合は約 1.3%、最高水準の所得層の支 出は 3.6%です。インドでは数字がやや高く、都市部での耐 久消費財への 1 人当たり月間支出は約 5%、地方では同約 4%です4。これに対して英国や米国での割合は現在約 10%、 日本は約 8%です。 耐久財に割り当てられる支出合計の推移を見てみると、この 割合は所得の伸びとともに一定の増え方をするのではなく、 加速と減速の期間があることがわかります。所得水準が低い ほど、この割合は低くなっています。所得水準が「スイートスポ 世界の自動車市場 GSグローバルECS調査部は、こうした動きが自動車市場でど のように展開する可能性があるのかをすでに明らかにしてい ます。それによると、所得と自家用車の需要との関係も、図表 9aに示すとおりS字カーブを描きます。調査チームの予測によ ると、自動車需要の伸びに関するスイートスポットは 1 人当た り所得が約 9,000 米ドル(PPPベース、2007 年)付近で発生 します。これは図表 9bに示されています。この調査結果と 1 人当たり所得予測に基づき、GSグローバルECS調査チーム はBRICsと一部の先進国における 2050 年までの自動車の 普及率と保有台数の予測を行いました6。図表 9cが示すとお り、BRICsの自動車市場は明らかに劇的な変化を遂げようとし ています。 2 発展途上国の家計支出の統計は断片的である場合が多い。主たる情報源は家計調査だが、カテゴリー別の内訳が入手できない国もある。 3 Source: China Statistical Yearbook 2009. 4 Household Consumer Expenditure in India 2006-2007, Ministry of Statistics and Programme Implementation, Government of India, 2008. 5 韓国、米国、英国は 1970~2009 年。日本は 1980~2009。中国は 1995~2008 年。 6 See GS Global Economics Papers 118, 170 and 192. Goldman Sachs Asset Management が 13 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 1,000人当たりの自動車台数 図表 9a - 多くの耐久財と同様、自動車の需要は 所得の上昇と共にS字カーブを描く 図表 9b - 自動車需要は1人当たり所得が9,000ド ル前後で「スイートスポット」に達する 600 2.5 500 2.0 400 1人当たりGDPの伸びに対する自動 車保有の弾力性 1.5 300 1.0 200 Cars/1000 100 弾力性はPPPベースの GDPが9,040ドルの時に 最大化 0.5 Gompertz Cars 0.0 0 0 10,000 20,000 30,000 0 40,000 1人当たり所得(米ドル換算、PPPベース) 35 400 300 200 100 0 28,000 35,000 図表 10 - 2020年までに BRICsは世界の 自動車販売の半数を占める可能性も 2010 2020 30 自動車、100万台 1,000人当たりの自動車台数 500 21,000 Source: GS Global ECS Research, Global Economics Paper 170 図表 9c - BRICsの自動車普及は 劇的な変化の可能性 Brazil China India Russia 600 14,000 1人当たり所得(PPPベース、2007年) Source: GS Global ECS Research, Global Economics Paper 170 700 7,000 25 20 15 10 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 50 Brazil China India Russia USA Western Japan Europe Source: GS Global ECS Research, Global Economics Paper 192 Source: GS Equity Research この自動車普及率と保有台数を基に自動車販売台数を推定 してみましょう。ゴールドマン・サックスの株式アナリストは、世 界の自動車販売(自家用車と商用軽量自動車を含む)が現 在の年間約 7,000 万台から 2020 年には約 1 億 700 万台 に成長する可能性があると予想しています7。BRICsの自動車 販売は 2020 年には年間 5,000 万台にまで伸びる見通しで す。したがって、世界の自動車販売台数のうち半数はBRICs の消費者が購入するものと思われます。この結果、BRICsは 次の 10 年間で世界の自動車販売の増加分の 70%を占める 可能性があります。中国だけでもこの増加分の 40%近くを占 めるものと見込まれます。 車販売台数は 2020 年代前半には先進経済大国の販売合 計を簡単に超える見通しです。 中国が販売台数で世界一を維持するのに対し、インドは販売 台数の伸びで世界一となる見通しです。インドの年間自動車 販売台数は 2020 年には 4 倍の 800 万台超となる可能性が あります。ブラジルとロシアの自動車市場は同程度の規模に 拡大する可能性がありますが、ロシアはブラジルに比べて販 売台数に占める自家用車の比率が高い状態が続きます。 自動車の世界的な需要パターンの変化予測は確かに劇的で す。しかし、最近のデータを踏まえれば、この予測はそれほど 信じ難い状況ではありません。今年の世界自動車販売台数 への BRICs の寄与は前例がないほど大きなものとなりました。 BRICs 4 カ国は今年、世界の自動車販売の伸びの 70%以 上を占めました。このうち中国のみで世界の販売台数の増加 分の半数を占めています。中間所得層の台頭が続くことで、 こうしたトレンドは今後もそのまま継続するでしょう。 中国はすでに昨年、米国を超えて世界最大の自動車販売市 場となりました。2020 年には中国の年間自動車販売台数は 3,000 万台を超える見通しです。これは米国、日本、西欧の 合計をわずかに 400 万台下回る規模です。図表 10 が示す とおり、もしこの勢いが今後も継続した場合、中国の年間自動 7 グローバル自動車調査チームレポート「Identifying global long-term winners」(GS グローバル・インベストメント・リサーチ、2009 年 11 月 27 日)を参 照。自家用車の販売予測は GS グローバル ECS 調査部の GDP、1 人当たり所得、自動車普及率の長期予測ならびに GS 自動車アナリストによるスクラッ プ率に関する想定を基にしている。商用軽量自動車の販売予測は GS 自動車アナリストの想定を基にしている。 Goldman Sachs Asset Management が 14 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES 図表 11 - 現在のBRICsとN-11 の自動車普及率はバラツキが多い 300 250 2007 Car Penetration 200 150 100 Bangladesh Pakistan Philippines Iran India China Egypt Nigeria Indonesia Turkey Brazil Mexico 0 Russia 50 Korea 1,000人当たりの自動車台数 The Rise of the BRICs and N-11 Consumer Source: World Bank, GSAM estimates 図表 12a は中国の高所得層が今後数年で急速に台頭し、 2020 年には日本を上回る規模に成長する可能性があること N-11 の自動車の潜在的需要は、BRICsと比べてどのような状 を示しています。インドの高所得層の人口はしばらく低水準の 態でしょうか。N-11 の中でも発展段階にバラツキがあるため、 まま推移し、2030 年代以降ようやく大きく上昇し始めると思わ 一般化するのは困難です。図表 11 に示したとおり、現在のNれます。この変化は一見緩やかに見えますが、今後 10~15 11 内での自動車普及率には大きな差があります8。例えば、 年間に増加する高所得層の人数(したがって嗜好品の需要) 韓国の普及率は人口 1,000 人当たり 250 台で、これはロシア は、かなりの規模になるかもしれません。図表 12b が示すと の現在の自動車普及率に近い水準である一方、その対極は おり、今から 2025 年までの間に BRICs で約 2 億 5 千万人 バングラデシュで、普及率は 1,000 人当たりわずか 1 台です。 が年間所得 3 万米ドルの境界線を超える可能性があります。 N-11 の所得拡大が続く中で自動車需要も上昇基調を継続し、 この数字は先進国の合計を上回ります。高所得消費者の増 上昇ペースが加速する国も散見されるでしょう。所得と自動車 加は、特に 2020 年代前半までは中国がその中心です。しか 普及水準のバラツキを考慮すると、自動車需要(および耐久 し、こうした状況は中国だけではありません。ロシアだけでも高 消費財全般)の大幅な加速は、各国で発生の時期が異なるも 所得層の増加幅は日本を上回る可能性があります。N-11 も、 のと思われます。タイミングという点では、メキシコとトルコの自 韓国、メキシコ、トルコを中心に 2025 年までに 6 千万人超が 動車市場は今後 10 年の間にかなりの利益機会を提供すると 新たに高所得層に加わるかもしれず、これは米国の数字を上 思われます。エジプト、インドネシア、フィリピンは数年遅れて 回ります。 いるため、自動車需要が大幅に加速する時期も遅れるでしょ BRICsにおけるこうした高所得者の急増により、世界の嗜好 う。しかし N-11 の個々の国は自動車市場の重要なプレーヤ 品市場はどのように進展していくでしょうか。ゴールドマン・サ ーとして存在感を高めるかもしれませんが、需要の絶対額や ックスのリテール株式アナリストは、前述の所得分布の予測を 業界への影響の点で BRICs を脅かすまでには至らないと思 基に、嗜好品市場が現在の約 2,650 億米ドル規模から 2025 われます。 年には 1 兆米ドル規模に成長すると予想しています。BRICs は、この増加分のほぼ 70%を占める見通しです9。図表 13a、 2.2 嗜好品 bが示すとおり、中国が 2018 年までに欧州、米国、さらには 所得の伸びによって恩恵を受けるもう 1 つのカテゴリーは嗜 日本も抜いて世界最大の嗜好品市場に成長しても不思議で 好品です。これには蒸留酒やシャンパン、香水・化粧品、宝 はありません。2025 年までに中国の嗜好品市場は 3,280 億 飾品、既製服、革製品、時計などが含まれます。嗜好品は一 米ドルにまで成長する可能性があり、これは現在の約 18 倍 般に高所得層の消費者による需要が高いため、需要加速の の規模です。この結果、中国の消費者によって嗜好品市場に スイートスポットも耐久消費財より高くなるのが普通です。弊社 毎年約 200 億米ドルの需要が新たに生み出されることになり の定義で中間所得層と高所得層の境界線となる年間所得 3 ます。 万米ドル近辺(2007 年の PPP ベース)がスイートスポットとな N-11 と自動車 るでしょう。BRICs のこのレベルの所得者層の台頭が今後し ばらく世界の嗜好品市場を牽引します。 8 World Bank Development Indicators Database, the latest available year is 2007. 9 See ‘A trillion dollar global industry by 2025?’, Europe: Branded Consumer Goods: Luxury Goods, GS Global Investment Research, 2 June 2010. . Goldman Sachs Asset Management が 15 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES 図表 12a - 中国は今後数十年間、高所得層の 拡大をリードする 1,000 300 Brazil 年間所得3万ドル以上の 人口(2007年のPPPベース) China India Russia US Western Europe Japan N-11 800 600 400 図表 12b - 2025年までにBRICsの2億5千万人が 高所得層に移動する可能性 年間所得3万ドル以上の人口の増加 (2007年のPPPベース) 250 100万人 100万人 The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 2010-2020 200 2010-2025 150 100 15 20 25 30 35 40 45 50 300 Japan 250 China Brazil Russia India 100 India Brazil Japan US 200 150 100 Brazil India 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 Russia 0 Europe 50 50 0 2025 Luxury Goods Sales Japan 150 Europe US 200 350 US 図表 13b - 中国の嗜好品販売、2025年までに 現在の18倍に拡大の可能性も China 10億米ドル 250 図表 13a - 中国、2018年までに世界最大の 嗜好品市場となる可能性 10億米ドル 300 N-11 Source: GS Global ECS Research, Global Paper 170 Source: GS Global ECS Research, Global Paper 170 350 Russia 10 Western Europe 0 0 China 200 BRICs 50 Source: GS Equity Research Source: GS Equity Research その他の BRICs でも嗜好品の需要が大幅に増加する可能 性があります。インドの嗜好品市場は今後 15 年間に 20 倍に 成長する見通しです。この間の増加額は総額約 650 億米ド ル近くになる可能性があり、これはロシアの増加額をやや上 回る規模です(図表 14a 参照)。この結果、インドとロシアの 2 カ国の力で世界の嗜好品販売が毎年約 40 億米ドルずつ拡 大していくかもしれません。欧州と日本の嗜好品の販売増加 額は BRICs のどの国も下回ります。 製品別の内訳を見れば、すべての嗜好品カテゴリーが販売 拡大の恩恵を受けると思われます。特に、最も「手に入りやす い」製品(比較的所得が低い位置でも手の届く蒸留酒やシャ ンパン、高級香水・化粧品、既製服など)は、持続可能な成長 が期待できます。今後 15 年間で BRICs と N-11 で 3 億人あ まり(現在の米国の人口に相当)が高所得層の境界線(2007 年の PPP ベースで年間所得 3 万米ドル)を超える見通しで あることから、嗜好品や高級製品の潜在市場は間違いなく相 当な規模になるでしょう。時計、宝飾品、革製品などの大部分 の「豪華な」高級製品は潜在消費者の絶対数が急速に増加 することはないでしょうが、堅調な推移を続けます。高所得層 に加わる人口が一層増加し、購買力が引き続き上昇する中、 これらのカテゴリーも過去の水準を上回る成長率を維持する ものと思われます。 図表 14b は、こうした嗜好品需要の BRICs への大幅なシフト によって販売高に占める中国の割合が現在のわずか 7%程 度から 2025 年までに 30%超にまで拡大する可能性を示し ています。さらに驚くべきことに、世界の嗜好品市場に占める BRICs を合わせた割合は現在の約 15%から 2025 年には 50%にまで拡大するかもしれません。 Goldman Sachs Asset Management が 16 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 図表 14a - 嗜好品販売高は中国が支配するも、 他のBRICsもかなり拡大する可能性 世界の嗜好品販売高に占める割合(%) 図表 14b - 2025年までにBRICsが世界の 嗜好品市場の50%を占める可能性も 350 2009-2025 Increase in Luxury Sales 300 10億米ドル 250 200 150 100 Japan Europe Brazil Russia India US 0 China 50 100 80 60 40 20 0 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 US Europe Japan China Brazil Russia India RoW Source: GS Equity Research Source: GS Equity Research 2.3 旅行と観光 多くの国では観光業に対する国際観光の比率はまだ少ない 状態ですが、成長スピードは最も速く、特にBRICsではその 今後 10 年以上にわたって BRICs での富の増加による影響 傾向が顕著です。BRICsはすでに多数の海外訪問者を供給 を大きく受けて需給関係の大幅な変化が予想されるもう 1 つ しています。2000 年以来BRICsからの出国者数は 2.7 倍に のセクターは、旅行・観光業界です。所得の上昇に伴い国内 増え、2008 年には約 1 億人に達しています。中国からの出 外の旅行に出かける人口が増え、国内・国際双方の観光セク 国者数は 4 倍の 4,500 万人以上に膨れ、世界の観光業界 ターが拡大します。このシフトにより航空業を中心とした運輸 で第 5 位の出発国に成長しました。これにロシアが続き、絶 (後述)、ホテル、旅行業者などのサービス業や旅行用品など 対数ではロシアを下回るものの、インドも出国者数が目覚まし の小売業者が好影響を受けます。 く増加しました。欧州はこの統計では依然として世界第 1 位 大部分の国では通常、居住者が自国内を旅行する国内観光 ですが、図 15aに示したとおり、日本はすでに一部のBRICs の方が海外観光よりも規模が大きく、成熟したセクターです10。 を下回り、米国はBRICs 4 カ国の合計を下回っています。 経済協力開発機構(OECD)によれば、OECD域内では観光 図表 15bに示したとおり、国際観光支出も成長しています13。 消費全体に占める国内観光消費の割合は約 75%で、残る 絶対額では中国が最大の増加を示しており、2008 年の観光 25%は外国人観光客による消費です11。インドでは両者の割 支出は合計で 4,000 万米ドルを超えました(2010 年は推計 合がほぼ等しく、国内観光の方が若干少なめです。それに対 4,800 万米ドル)。ロシアも観光支出が大幅に増加し、2000 して、中国では 2008 年の観光収入の 95%以上が国内観光 年から 2008 年にかけて 3 倍に成長しています。このような上 によるものでした12。 昇の結果、BRICsは現在、いずれも国際観光支出のトップ 25 カ国にランクされています。 10 当然ながら一国の自国内観光に占める国内観光の割合は、国の大きさ、地理的位置、アクセスのしやすさ、交通機関の利便性、宿泊施設の収容規模、観 光地(自然、文化)などの様々な要因に左右される。 11 OECD Tourism Trends and Policies 2010. 12 China Statistical Yearbook 2009. 13 国際観光支出はアウトバウンド旅行者の他国での支出を指し、国際線での海外航空会社への支払も含む。 Goldman Sachs Asset Management が 17 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES 図表 15b - 中国とロシアの消費者による 国際観光支出は大幅増加 図表 15a - BRICsからの海外出国者数、 米国を上回る 350 2000 200 150 100 BRICs Brazil China India Russia US 0 Euro Japan Area BRICs Brazil China India Russia US 図表 16b - BRICs の国際観光収入は支出を 下回っているが、同じく急送に成長している 400 2000 2000 350 2008 200 Euro Japan Area Source: OECD 2008 300 100万米ドル 100万人 150 図表 16a - BRICsは海外旅行者の 旅行先としても急速に成長 250 150 100 250 200 150 100 50 0 200 50 Source: OECD 300 2008 250 100 50 0 2000 300 2008 10億米ドル 100万人 250 The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 50 BRICs Brazil China India Russia US 0 Euro Japan Area BRICs Brazil China India Russia US Euro Japan Area Source: OECD Source: OECD BRICs は海外旅行者の出発国としてだけでなく目的地として も急速に成長しており、世界の旅行・観光市場の競争を激化 させています。中国は世界で最も人気がある観光先の 1 つで、 中国への入国者数は 2008 年には 5,300 万人を超えて世界 第 4 位となりました。BRICs 全体の 2008 年の入国者数は合 計で 8,700 万人を数え、米国への入国者数を上回りました。 しかし、ユーロ圏への入国者数と比較すると 3 分の 1 以下に とどまっています(図表 16a 参照)。 1990 年代後半から大幅に増加しており、100 人中約 7 人か ら現在は 26 人にまで増加しています。これは米国を上回りま すが、ユーロ圏の人口比での出発者数には遠く及びません。 人口比での外国人入国者数についても BRICs の順位は同 様ですが、その規模は全体的に低水準です。 BRICs の国際観光収入は支出を下回っています。図表 16b が示すとおり、2008 年の 4 カ国の収入は約 8,000 万米ドル で、米国やユーロ圏の収入を下回っています。しかし、中国と ロシアは観光収入でトップ 25 位以内にランクされています。 海外旅行の出発国としても目的地としても重要性が高まって いる BRICs ですが、人口比での旅行者数は依然として低水 準です。中国の海外出国者数は 100 人中わずかに 3 人程 度です。ブラジルは同 2.6 人とさらに低く、インドの出国者数 は 100 人中 1 人にも満たない状況です。唯一ロシアだけが Goldman Sachs Asset Management が 18 明らかに BRICs の旅行・観光には、国内・国際共にさらなる 発展の余地が十分にあります。世界経済における BRICs 4 カ国の重要性の高まりを考えれば、需給関係に大幅な変化 が生じるか否かはもはや問題ではありません。今ではむしろ、 どのような影響がこの産業に及び、大きな変化が生じるのは いつかということが問題です。BRICs は所得の上昇を背景に、 すでにビジネスとレジャーの双方でインバウンド観光とアウト バウンド観光が大きく成長しています。交通(航空と鉄道を含 む)、旅行業者、ホテル、ケータリングその他関連サービスセ クターや企業はすでにこの成長から恩恵を受けており、今後 もひょっとするとさらに速いペースで恩恵を受けることになりま す。考えられる変化の規模を把握するため、世界の航空業界 について見てみましょう。 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 図表 17 - 1人当たり所得に対する航空旅客数:中国とインドは依然として低水準 100人当たりの航空旅客数 300 Brazil China 250 India 200 Russia 150 UK Euro Area US 100 Japan Korea 50 0 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 1人当たりGDP(PPPベース、2005年、国際ドル換算) 40 2020 2050 30 20 LatAm M.E.&Africa N.America Europe Asia Pacific BRICs 0 Russia 10 India LatAm M.E.&Africa N.America Europe Asia Pacific BRICs Russia India 2050 50 China 2020 60 図表 18b - 世界の航空旅行に対するBRICsの割 合は2020年までに35%、2050年までに 50%に上昇する可能性も 2008 Brazil 世界の航空旅行に対する割合(%) 2008 China 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 図表 18a - 中国の航空旅客機、2020年までに 9億人に達する可能性も Brazil 100万人 Source: OECD, World Bank, GSAM calculations Source: GS Equity Research Source: GS Equity Research 世界の航空業界 GSグローバルECS調査部の長期GDP予測を用いてゴールド マン・サックスの運輸株式アナリストが予想したところ、人口比 でのBRICsの航空旅客数は、平均 100 人当たり、現在の 12 人から 2020 年には約 42 人に上昇する可能性があります14。 中国の増加幅はBRICsで最大の 5 倍近くになり、2020 年に は 100 人当たり旅客数が 64 人になるかもしれません。しかし この統計ではブラジルも 2020 年までに 2 倍となる伸びを見 せ、首位の座を維持するでしょう。したがって、中国とブラジル はいずれも韓国の道筋を辿るものと思われます。今後 10 年 でBRICsの海外旅行の普及率は、米国や日本などの先進国 に匹敵する水準に上昇する可能性があります。国内旅行の普 及率はさらに上昇する見通しです。 世界の航空業界は今後、国内外の旅行の増加を背景に大幅 な変化が予想されます。現在、特に中国とインドでは、大部分 の人々の移動手段は鉄道ですが、航空旅行も今後数年内に 大幅に増加するものと思われます。今日の航空旅行は、上述 した旅行・観光セクター全体の傾向と同様に国内が中心です が(中国では航空交通合計の 94%を占めます)、国際航空は 出国も入国も大幅に上昇する兆候が見られます。 図表 17 は、1980 年から 2008 年における BRICs、韓国、主 要先進国の 1 人当たり所得(PPP ベース)に対する航空旅客 数(人口比)をグラフ化したものです。このように限られた数の 国々を例にとっても、見覚えのある S 字カーブが現れます。 低所得層では航空旅行の普及率は低水準です。中国とイン ドはカーブのまさにスタート地点に位置しています。一定の所 得水準を超えると、航空交通の需要が加速します。BRICs は 韓国の道筋を辿るでしょうか。 14 ‘What happens when 1billion Chinese fly?’, Travel team, GS Global Investment Research, 15 November 2010. Goldman Sachs Asset Management が 19 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 航空旅客数の年間増加率は、中国とインドを牽引役に BRICs 全体で 2 桁(約 12%)になると予想されます。 絶対数ベースでは、図表 18a が示すとおり、BRICs の国内 および国際航空交通の旅客数は現在の約 3 億 4 千万人か ら 2020 年には 13 億人超に拡大する可能性があります。こ のうち中国はほぼ 70%を占め、旅客数は 9 億人に達する可 能性があります。中国は 2019 年までに米国を抜き世界最大 の航空市場となり、旅客数は現在の 2 億 8,400 万人から 2022 年には 10 億人に成長しているかもしれません。インド の旅客数は 2020 年までに 2 億人近くに達する可能性があり ます。 これらの予測が示すとおり、BRICs は世界の航空産業および すべての関連産業にとって主要な成長ドライバーとなるでしょ う。ゴールドマン・サックスの株式アナリストは、こうした急激な 成長により航空会社、OEM メーカー、航空機保守、修理・点 検、パイロット、および旅行代理店、ケータリングサービスなど の関連企業に大幅な需要が生まれると予想しています。また、 航空機メーカー・部品業者、空港建設、ホテル業界も恩恵を 受けると思われます。 BRICs 全体としては、図表 18b が示すとおり、世界の航空交 通に対する割合が 2020 年までに 35%、2050 年には 50% を超えるまでに上昇することも考えられます。今後 10 年間の Section 3. 台頭する個人消費:功罪一体か? なります。国レベルで見ると、こうした時期のズレにより、景気 の大幅な上下動や投機的なバブルが回避され、中長期にわ たる消費関連セクターの持続可能な需要を確保できます。世 界全体で見ると、個人消費の上昇時期は国によっても異なり ます。まさにこの点が N-11 の多様性の利点であり、今後何年 も供給サイドの機会を連続して提供することができます。これ は BRICs にも当てはまり、例えば中国は、中間所得層の発 展とそれに関連する影響においてインドの 10 年先を行って います。 世界の消費パターンにおける前述の目覚ましい変化は、今後 も間違いなく投資家、企業、政府、そして経済全体に多くの機 会を創出するでしょう。しかし、プラスの影響と同時に、関連リ スクや圧力も発生します。前述で説明したシナリオはどの程度 実現の可能性があるでしょうか。供給側は急増する消費財の 需要を満たすことができるでしょうか。これに起因してどのよう な圧力や制約が生じるでしょうか。これらのリスクのバランスに ついて以下に論じていきます。 3.1 機会と恩恵 消費者の台頭を受けて企業が成長し発展する中で、BRICs やその他の新興国の資本市場も恩恵を受けることになります。 新規発行、民営化、債券や株式による資金調達などにより資 本市場の厚みが増し、金融仲介業が発展します。国内投資 家も外国人投資家も流動性の向上や金融商品の多様化から 恩恵を受ける可能性があります。GSグローバルECS調査部は、 多数のレポートの中で世界の資本市場の潜在的な構造変化 について論じています。従来の新興国市場は今後 20 年にわ たって世界の株式市場を支配する見通しです15。図表 19 に 示されているとおり、2030 年までにはこうした新興国市場が 世界の株式時価総額の 50%以上を、またBRICsはそのうち の 40%を占める可能性を秘めています。今後 20 年以内に 中国は時価総額で米国を追い抜く可能性があります。また、 所得の上昇と共にヘルスケアや生命保険、年金商品への需 要も強まることから、BRICsにおける債券市場の重要性も高ま るでしょう16。 需要傾向の変化による直接的な影響の 1 つは、新しい投資 機会の広がりです。豊の蓄積に牽引された様々な財やサービ スへの需要の高まりは、中高所得層の台頭に直接的な恩恵 を受ける企業を中心に、国内企業や国際企業に好影響をも たらすと予想されます。もちろん、メリットを受けるのはセクショ ン 2 で取り上げた 3 つのセクターだけではありません。金融 サービス、保険、医療などのセクターも大きな恩恵を受けると 思われます。したがって、供給サイドの好機は一層幅広くなる 可能性があります。 これらの機会が発生する時期は製品によって、また国によっ て異なります。これは、中間所得層の成長に牽引された消費 拡大におけるプラスの力です。スイートスポット(需要の弾力 性が最大化して需要が加速する所得水準)は消費財・サービ スによって異なるため、需要の拡大による圧力が発生する時 期も異なります。例えば、電化製品は自動車より先に購入可 能となり、耐久消費財は一般に嗜好品に先立って購入可能と 15 EM Equity in Two Decades: A Changing Landscape’, GS Global Economics Paper No. 204, 8 September 2010. 16 See ‘Bonding the BRICs: The Ascent of China’s Debt Capital Market’, GS Global Economics Paper No. 149, 20 November 2006; ‘Bonding the BRICs: A Big Chance for India’s Debt Capital Market’, GS Global Economics Paper No. 161, 7 November 2007. Goldman Sachs Asset Management が 20 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer その性質上予測不可能であるため、弊社のモデルでは考慮 に入れていません。金融危機などのマイナス成長のショックは 弊社の予測に含まれていません。地政学的リスクや関連する 対策は成長を制約する場合がありますが、これらもモデルに 直接加味されてはいません。GDP に対する消費の割合も予 想通りに増加しないおそれがあります。商品によっては、需要 の加速がそれほど大きなものとならないかもしれません。実際、 考えられる展開はあまりにも多く存在しています。 図表 19 - 2030年にはBRICsが世界の株式時価 総額の40%を占める可能性も Russia Brazil Other EM 4% 3% Asia 5% India 5% China DM Asia 29% 6% Other EM 9% Europe 14% この点において、経済の主要成長環境の指標であるGES (Growth Environment Scores:成長環境スコア)は、弊社の 長期予想の実現可能性を測る基本ツールです。これらのショ ックによって一国の成長環境が直接または間接的に変化した 場合、予想にその内容が反映されます。これまでのところ、中 国、インド、ブラジルの成長は予想を上回っており、ロシアは 予想通りの成長となっています17。しかし、もちろん弊社の今 後の予想に関して必然的なものは何ひとつありませんし、物 事が予想通りにいかない可能性も十分あります。 N. America 25% Source: FactSet, IMF, Worldbank, World Federation of Exchange, Goldman Sachs Global ECS Research estimates 国内経済に対するその他の恩恵としては、国内需要および GDP 全体に対する消費の割合が増えることで、純輸出に対 する依存度が軽減される点が挙げられます。成長の原動力の 軸足が内需拡大に移れば、貿易に連動して伝播する外的シ ョックの影響も受けにくくなります。これにより投資環境の安全 性も高まり、国内の投資機会も増えるものと思われます。中国 政府はすでに、他ならぬこの目的のために、国内需要基盤の 拡大を目指した政策を積極的に推し進めています。 現実が弊社の予測に近似し、消費パターンの劇的な変化が 予想通り発生した場合、短期的にも長期的にも様々な側面で 多くの圧力が発生する可能性もあります。 異なる所得層の人口の増加や減少に伴い、様々な種類の製 品が急成長の時期を迎え、その後市場が飽和水準(例えば 1 人当たりの自動車保有台数や航空旅客数など)に達すると鈍 化の時期を迎えやすいと思われます。つまり、消費セクターと 関連製品は需要変動の影響を受けやすいと言えます。変動 の大きさは個々の製品と全体的な需給関係に左右されるでし ょう。 BRICs、N-11、その他従来の新興国市場の個人消費基盤の 拡大は、国内経済におけるセクターの多様化も、もたらすもの と思われます。これはロシア、ナイジェリア、ブラジルなど依然 として天然資源を基盤とする成長モデルを持つ国にとって特 に大きな意味を持ちます。小売業、旅行、観光、保険、ヘルス ケアなどの消費関連セクターが拡大すれば、コモディティ相 場が下落した時に国内経済が被る影響は限定されるようにな ります。株式指標もセクターの多様化が進むことで流動性が 拡大し投資対象となる可能性も増し、好影響を受けると思わ れます。 これまでに見られた需要急増の例に天然資源があります。中 でもエネルギーと食糧が最も顕著なケースでした。消費財の 需要の加速が同様の影響を及ぼす可能性はそれほど高くは ありませんが、需要の何らかの変動は(規模は相対的に小さ いと思われますが)発生する可能性があります。需要が急速 に減退する時期もあるかもしれません。様々な製品のこうした 変動が(上述したように)異なる時点で発生する限り、消費関 連セクターへの全体的な影響は軽減されるものと思われます。 3.2 リスクと圧力 個人消費の台頭は、恩恵や機会と同時にリスクや圧力ももた らす可能性があります。 しかし、供給サイドの圧力はより明確に顕在化する可能性が 高いでしょう。消費財の需要増は天然資源、資本、労働力な ど生産要素に対する需要の上昇につながります。 まず、あらゆるモデル化と同様に、上述のシナリオの作成に用 いた基礎的想定に係るリスクが存在します。実際の GDP が 長期予想と一致せず、弊社の想定事項が現実化しなかった 場合、弊社のシナリオは実現しません。想定外の特異事項は 17 ‘The Long-Term Outlook for the BRICs and the N-11 Post Crisis’, GS Global Economics Paper No. 192, 4 December 2009. Goldman Sachs Asset Management が 21 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 結論 資源確保の競争、供給の制約、労働市場の逼迫などはこの 過程で発生し得る結果の一部です。短期的には価格メカニズ ムがこうした緊張を解決する 1 つの手段となり得ます。中長期 的には、より柔軟な製品および労働市場の構築が価格圧力 の緩和に寄与するものと思われます。この点においては、柔 軟性を確保する上での政府の役割が不可欠になります。 BRICs と N-11 の個人消費の成長は今後 10 年からさらにそ の先の世界経済において最大のテーマになると思われます。 特に中国は、消費面だけでなく世界経済に関するその他多く の点で重要な影響力を持ち続けるでしょう。BRICs の他の 3 カ国および韓国、メキシコ、トルコ、インドネシアを中心とする 一部の N-11 も主要な消費国として世界的重要性を増すと予 想されます。 消費者台頭によるもう 1 つのリスクは環境問題です。弊社は 以前にも、BRICs の中間所得層が増えるにつれ、成長に起 因した環境問題が一層深刻化すると指摘しました。道路を行 き交う車や空を飛ぶ飛行機が増え、天然資源への需要が高 まるにつれ、環境への脅威も間違いなく増すものと予想されま す。明るい材料としては、最近になって BRICs や N-11 の一 部が環境改善への取り組みに対して積極的に発言、行動し ています。ブラジルはフレックス燃料車とエタノール燃料生産 に積極的に取り組み、クリーン燃料とクリーン自動車の導入で 明らかに世界をリードしています。中国政府は今後に向けて 厳しい燃費目標を設定し、その一部はすでに達成されようとし ています。これらの取り組みにはおおいに期待はできますが、 その一方でエネルギー節減や環境改善に関する多数の潜在 的な機会は、BRICs やその他の国々ではまだ実現できてい ない状態です。政府がこの課題に取り組むか否かにかかわら ず、環境悪化と環境問題の意識向上が経済成長とその持続 可能性に及ぼす影響は引き続き不透明です。 今後 10 年からその先における BRICs および N-11 の個人 消費の台頭は、すべての市場における最も重要な投資テー マの直接・間接的な基礎となるでしょう。こうした状況の変化に よる恩恵を享受するためには、投資マネージャーはポートフォ リオのウェイトをいわゆる新興国市場に徐々に移動させること を検討すべきであるとかねてから指摘してきました。実際、世 界市場における重要性を鑑みれば、従来の新興国市場の中 にはもはや「新興」と呼ぶべきではない国もあります。弊社で はそういった国々を「成長市場」と呼びます。BRICs の 4 カ国 をはじめ、N-11 の中にもこのグループに属する国が増えてき ています。その規模からして、これらの国々にはこの先大規模 な投資機会を数多く生み出す力があり、投資家の注目に値す る存在です。 成長市場が支配的立場を獲得していく過程は非常に複雑で す。弊社はこれまでいくつかの疑問に答えを得ようと努力して 最後に、消費関連を含むいかなるセクターや製品における市 きましたが、まだ不透明な部分が多く残されています。したが 場成長の加速も、(少なくとも短期では)必ずしもリターンの拡 って、個人消費の台頭に起因する潜在的な圧力やリスクをモ 大につながるわけではないことを強調しておきたいと思います。 ニターしていくことが極めて重要です。弊社は引き続きこの市 期待値、リスクプレミアム、その他市場特有の要因がリターン 場をしっかりと注視し、今後も関連する見解やアイディアを多 に重要な影響を与えます。個々の国のファンダメンタルズも重 数提供していきます。 要な変数の 1 つです。しかし、長期的には市場成長とリター ンにはプラスの相関性が現れると思われます。 Goldman Sachs Asset Management が 22 2010 年 12 月 STRATEGY SERIES The Rise of the BRICs and N-11 Consumer 追記 本資料はいかなる調査や投資助言を提供するものではなく、またいかなる金融商品取引の推奨を行 うものではありません。本資料に記載された見解は、必ずしもゴールドマン・サックス・アセット・マネジメ ント(以下、「GSAM」といいます)の運用チーム、ゴールドマン・サックス経済調査部、その他ゴールド マン・サックスまたはその関連会社のいかなる部署・部門の視点を反映するものではありません。 本資料は GSAM が作成したものであり、ゴールドマン・サックス経済調査部が発行したものではありま せん。本資料記載の情報は作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変 更することがあります。 本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、GSAM がその正確性・完全性 を保証するものではありません。公開された情報源から取得した情報の正確性・完全性に依拠してお りますが、第三者による検証は受けていません。 過去の実績は、将来の結果を保証するものではありません。 経済、市場等に関する予測は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。予 測値等の達成を保証するものではありません。 特定の期間について市場との比較を行う観点でインデックス、ベンチマーク、その他各種評価基準に 言及している場合は、あくまでも情報提供を目的とするものです。 GSAM とサービス・プロバイダーとの間に利益相反が生じる可能性があります。サービス・プロバイダ ーとは、ゴールドマン・サックスまたはその関連会社を含み、GSAM に対して管理、販売、もしくはサ ービス提供以外の業務を行う法人等をいいます。当該業務には、GSAM が購入または売却を行う可 能性のある有価証券等についての助言、販売、サービス提供等に関連する潜在複合的な業務を含 みます。これらは、投資家の皆様にご注意いただきたい事項であり、このような相反についての詳細な 情報は、GSAM の利益相反方針に記載されています。 本資料に記載された経済および市場の見通しは、本資料作成時点での執筆者の見解であり、将来 予告なしに変更する場合があります。これらの見通しは、特定の投資目的、制限、税務および財務状 況、または特定の投資家のニーズを考慮したものではありません。実際のデータには変動があり、本 資料に反映されていないこともあります。これらの見通しは高い不確実性を伴うものであり、それが実 際のパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。従いまして、これらの見通しは、考えられる様々 な結果の中の一つの例としてみなされる必要があります。これらの見通しは仮定に基づく予測であり、 経済や市場の状態の変化に伴い、大幅に変更される場合もあります。弊社はこれらの見通しの変更 に対する更新、および変更の義務を負いません。ケーススタディーおよび事例は例示をもって理解を 深めていただくことを目的としたものにすぎません。 本資料は、情報提供を目的として、GSAM が作成した英語の原文をゴールドマン・サックス・アセット・ マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が翻訳したものです。訳文と原文に相違がある場合 には、英語の原文が優先します。 本資料は、特定の金融商品の推奨(有価証券の取得の勧誘)を目 的とするものではありません。 本資料の一部または全部を、(I)複写、写真複写、あるいはその他いかなる手段において複製するこ と、(Ⅱ)弊社の書面による許可なく再配布することを禁じます。 © Copyright 2010, The Goldman Sachs Group, Inc. 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