こちら - 臨床歩行研究会

ライブラリーCD の紹介
Ⅰ.ライブラリーの内容はどのようなもの
臨床歩行分析研究会で共通フォーマットとして提唱している DIFF(Data Interface File
Format)を使い、データを有効に活用していただくために、ライブラリー委員会を設けてい
ます。
ライブラリー委員会で所有しているのは、これまで会に登録してもらってきたプログラム
や、DIFF 形式で保存されたデータ、研修会で実際に使ってきた資料です。新しいプログラ
ムをライブラリーに登録する都度、ニューズレターに紹介してきましたが、全体について把
握されているかたは少ないと思われます。現在の臨床歩行分析研究会ライブラリーにつ
いて紹介していきましょう。
ライブラリーCD の内容はどのようなもの
ライブラリーCD に収められている内容は、「プログラム」と「セミナー」の大きく 2 つに分か
れ、それぞれを LHA で圧縮して保存しています。目的に合わせて、使いたいものをハード
ディスクに解凍、起動して使用します。
[プログラム]
この項目には、会が発足してから現在までのプログラムすべてが登録されています。会
の発足当時 windows は普及しておらず、MS_DOS が優勢な時代でした。また、「NEC980
1シリーズ用」「DOS/V 用」と、ハードにより動作するプログラムが違っていました。よっ
て、登録されているプログラムの中には、「NEC9801シリーズ用」「DOS/V 用」、及び
「DOS/V・NEC9801共通」で重複しているものがあります。現在のパソコンで使用する場
合には、「DOS/V・NEC9801共通」に登録されたものを windows の仮想 MS-DOS 上で使
います。
その他にも windows 用のプログラムとして動くように作成されたものや、マイクロソフト社
の表計算ソフト EXCEL のマクロを利用したものがあります。EXCEL マクロはとても手軽に
使えるため、最近目立って増えてきています。
[セミナー]
この項目の中には「Material」や「DATA」「Presentation」として、これまで開催された実習
セミナーに関するデータが保存されています。
「Material」には、DIFF を使うときに欠かせない歩行データ・インターフェイス・ファイル活
用マニュアル、実際に講師の先生方が使われた講義資料、セミナーの流れに合わせて作
られたプログラムの操作マニュアルがそのまま保存されています。併せて、実習セミナー
の模範解答や分析のヒントも収められています。
「DATA」には各回の実習セミナーで計測されたデータが保存されています。
「Presentation」には、実習セミナーで参加者が各班に分かれて発表したパワーポイントデ
ータが収められています。実習セミナーに参加したことがない方でも、何かと参考にできる
ものが発見できることと思います。
DIFF プログラムは実習セミナーの中で使われていますが、セミナーではデータの分析に
重点が置かれています。そのため、DIFF プログラムについてはニューズレターに掲載され
たときが最も情報を得る機会と言えるでしょう。9 月 25 日に開かれた DIFF セミナーでは、
新たに DiffPlot2002、DiffSeikika2000、DiffUcalc2000 EditPLC2000、ModifWin2001 の DIFF
プログラムを追加登録していただきました。
DIFF プログラムは、いろいろな目的のために書かれています。まずは主な DIFF プログラ
ムを一覧として紹介します。項目として「データ変換」、「ローパスフィルター」、「計算処理
(関節角度、関節モーメント、パワー,等)」、「データ表示」、「その他」に分類してあります。
DIFF プログラム一覧
種目
プログラム
データ変換 ASC2DIFF
内容
アスキーテキストファイルを DIFF に変換(win)
Atob
アスキーからバイナリ-へデータを変換
BVH_β 版
DIFF の DA ファイルを BVH の形式で出力(EXCEL マク
ロ)
Btoa
バイナリ-からアスキーへデータを変換
DA に出力
EXCEL データを DA の形式でファイル出力(EXCEL マ
クロ)
PYLDIFF.EXE
パイロンデータを DIFF に変換
trc2diff.EXE
モーションアナリシスの3D データを DIFF に変換
ローパス
Filter
DIFF形式データの任意をローパスフィルタを通して
DIFF 形式で出力
フィルター
Filter
ローパスフィルター(EXCEL マクロ)
Lpf5a
デジタルローパスフィルター:SHD、HIP、KNEE、
ANKLE、MP5 計 10 ポイント
Lpfa
デジタルローパスフィルター:任意の種別を選択
Lpfah
デジタルローパスフィルター:Lpfa に補間機能をプラス
Lpffp
デジタルローパスフィルター:床反力データ専用
Bibun
微分プログラム
Calca3
計算処理プログラム
計算処理
関節中心を推定、腫位置データを推定、関節角度の
計算、筋電処理機能、体重心計算機能、データの間
引き、骨盤に対する大腿部の3次元角度、筋電処理、
BVH 形式のファイル書き出し
CALCA3GR
計算処理プログラム
筋電処理機能
Jmome5
関節モーメントを計算
Power5
パワーを計算
DIFFGait
計算統合プログラム:LPF5A、CALCA3、JMOME5、
POWER5 を統合
DiffUcalc2000
汎用計算処理ソフト(WIN)
データ表示 Cogmovie
その他
スティック図描画プログラム
Stick
EXCEL でスティックピクチャーを描くマクロ(EXCEL マク
ロ)
WAVE_EYES
DIFF データをグラフ表示 (EXCEL マクロ)
DiffSeikika2000
データ正規化(WIN)
DiffPlot2002
データプロット(WIN)
EditPLC2000
汎用プロットコマンド編集ソフト(WIN)
Anacom
ANALY.EXE 用のパラメータファイルの作成
Analy
汎用特性値抽出プログラム
Kentei
精度検定プログラム
Kikaku
時間軸規格化プログラム
重心を求める
画像から重心の位置を計算(EXCEL マクロ)
INFMAKE
インフォメーションファイルを作成(WIN)
ModifWin2001
DIFF 修正(WIN)
ライブラリーCD の紹介
-処理の流れ-
Ⅱ.処理の流れ
今回は、これらの DIFF プログラムを使用して、実習セミナーで使われている両側の肩、
股関節、膝関節、足関節、第 5MP の 10 点にマーカーを貼り、床反力と組み合わせて計測
した処理の流れを例にとって、使用できるプログラムについて紹介しましょう。
① 計測して DIFF 形式で出力したデータは、データ処理する前に必要なデータが正確に
記録されているか確認する必要がある。このとき使うのが、Cogmovie や ModifWin2001 で
ある。Cogmovie では、実際に DIFF データをスティック表示させ、動きでデータの確認が出
来る。ModifWin2001 では、データをグラフ表示させ、確認後データに無効値へ変換などの
修正を加えることが出来る。
② データの計算をさせるのが DIFFGait である。このプログラムでは、ローパスフィルタ
ー、関節角度計算、重心計算、関節中心計算、静止データ処理、関節モーメント計算、関
節モーメントによるパワーの計算をまとめて処理してくれる。この処理は、LPF5A、
CALCA3(ANGLE,COGM,STIL,JPOINX)、JMOME5、POWER5 を順番に処理したのと同じ
である。
③ 計算処理後、①と同じ処理でデータの確認をする。
④ グラフ表示プログラムの WaveEyes や DiffSeikika2000、DiffPlot2002 でデータの出力を
行う。WaveEyes では Excel データにファイル変換しファイル表示させる。DiffSeikika2000
や DiffPlot2002 では、DIFF データをそのままグラフ化することが出来る。
以上の流れで処理したものを、表計算プログラム等で用途に合わせたデータ加工を行っ
てください。
ライブラリーCD の紹介
-DIFF プログラムを使おう-
Ⅲ.DIFF プログラムを使おう-
今回は、ライブラリープログラムの操作の方法を紹介します。ライブラリーに登録されてい
るソフトには、MS-DOS の時代に仕様を決めてプログラムを作り使ってきたものです。普
段使っているソフトは、マウスでクリックするだけで操作できるのに対し、キーボードから1
つ 1 つ入力していく必要があります。しかし、データの数が多いときなどにも、効率よく処
理が行えるようになっています。
ここでは、実習セミナーで裏方のスタッフが行っている処理を例にとって紹介しましょう。
もちろん使うデータは10ポイント(LSHD、LHIP、LKNE、LANK、LMP、RSHD、RHIP、
RKNE、RANK、RMP)マーカーを使った 3 次元動作計測データと床反力データです。
実際の作業ですが、必ず 1 番目に静止立位を計測し、続けて課題の動作を計測しま
す。計測後、それぞれの計測システムから DIFF 形式のファイルとしてデータを書き出しま
す。DIFF へのファイル変換については計測機器メーカに問い合わせください。
DIFF 形式で書き出されたファイルは次の 3 つの部分から構成されています。
① は英数半角の 6 文字でファイルの名前をつけます。6 文字よりも少ないときには_(半
角アンダーバー)で文字数を合わせます。
② データの番号で01に静止データが来るようにし、02~99までデータを記録できま
す。
ライブラリーソフトで計算処理すると00番のデータが作られます。01番の静止立位から
それぞれのデータの平均値だけを書き出したものです。
③ 拡張子によりファイルの種類がわかります。DA は数値データの書き込まれたファイ
ル、INF は計測データについての条件が書き込まれたファイルです。ファイル名とファイル
番号が同じで拡張子が異なる2つのファイルを 1 組として扱います。
データの確認
計算処理する DIFF 形式のファイルの用意が出来たら、まずデータの確認をしましょう。
Cogmovie が使えます。データの保存されているフォルダ名とファイル名+ファイル番号を
入力するとデータをスティック表示できます。ビジュアルに正しく計測されているか確認で
きます。
計算処理
計算処理には DIFFGaitを使います。DIFFGaitではローパスフィルター、関節角度計算、
体重心計算、関節中心計算、静止データー計算、関節モーメント計算、関節モーメントの
パワー計算をまとめて処理できます。
使い方は、DIFFGaitフォルダの中に、拡張子が exe の実行ファイルがあるのでダブルクリ
ックして起動させます。起動すると次のような DOS 画面が現れるので、指示に従ってディ
レクトリや拡張子、ファイル名、ファイル番号を入力していきます。最後に999と入力して
リターンキーを押すと指定したファイルを順番に処理をしています。
データ表示
計算処理が終わったら、専用のデータ表示プログラムか EXCEL を使ってデータの分析
を行います。DIFF 専用のデータ表示プログラムは、新しく2004年 10 月からライブラリー
に登録されています。実習セミナーでは EXCEL マクロの WAVE EYE を使って分析をしま
す。WAVE EYE では、はじめに DIFF 形式のファイルを EXCEL ファイルにファイル変換しま
す。DIFF データをデータ種別ごとに分類し EXCEL のシートを割り振って EXCEL ファイルと
して保存します。次に EXCEL ファイルから必要な部分を抜き出し、グラフ表示して実際の
動作の動きに当てはめて分析を進めていきます。
WAVE EYE は、次の表示が可能です。
① はじめと終わりを選択し、その範囲を表示する。
② 100%規格化して表示させる。
③ グラフは右を赤、左を青で表示しているので、左右を同時表示、あるいは右だけ、左だ
けを分けて表示させる。
④ スティック表示を動かし、グラフと同時表示する。
これらの表示を駆使して、動作を分析していってください。
ライブラリーCD の紹介
-資料を利用しよう-
Ⅳ.資料を利用しよう
前回までは、プログラムの使い方に関する内容でした。今回は、ライブラリーCD に収め
られている様々な資料をご紹介したいと思います。
資料集には、DIFF を使うためのマニュアルや実習セミナーで講師の先生方が使ってい
る講義資料、実習セミナーのデータと最終プレゼン資料が収められています。臨床歩行
分析研究会が開催したセミナーに関する資料をほぼ網羅しているといっていいでしょう。
これらの資料は、「歩行分析についてこれから学んでいきたい」「歩行分析に関する講義
内容を考えている」「臨床歩行分析の実習セミナーを受講する前に予習をしたい」「目的に
あわせた計測をしていきたい」等等、初心者から上級者まで、それぞれのレベルで活用し
ていただけると思います。
1.講義資料
歩行分析実習セミナーの講義のために講師の先生が用意し、受講生に配布された講義
資料が収められています。計測機器の原理や管理方法、計測することによって何がわか
ってくるかといったことが主な内容です。実際のセミナー中、受講生とのやり取りで判明し
た不足分についても補足してあります。セミナー毎に特徴的な内容も盛り込まれていま
す。歩行分析に興味を持ち出した方、教育機関などで講義を行う予定の方等の参考にな
るでしょう。
・計測データと最終プレゼンテーション
実習セミナーで受講生が計測した生データと、受講生によるプレゼンテーションがパワ
ーポイントデータとして保存されています。扱われた課題は、正常歩行、歩き始め、歩き終
わり、椅子からの立ちあがり、階段昇降などの身近な動作ですから、データから動作をイ
メージするのもさほど難しくないはずです。人間がいともやすやすと行っている動作は、実
は複雑な制御によって実現されています。関節に働くモーメントやパワーなど3次元動作
分析装置と床反力計で計測されたデータ値と、計算処理により得られる値があること等を
知っていただけるでしょう。
2.DIFF 解説書
臨床歩行分析研究会で提唱し、実習セミナーでも使われている DIFF の基盤です。この
解説書の中では、DIFF を使うときの決まりごとについて解説しています(歩行データ・イン
ターフェース・ファイル活用フォーマット-歩行データフォーマット標準化-)。インフォメー
ションファイルやデータファイルの構成について説明していますので、1つ1つのデータの
意味を理解できるかと思います。また、実習セミナーでは使わなかったEMGデータ、フッ
ト・スイッチ・デ-タ、パイロン研究デ-タ、筋張力デ-タなども含まれ幅広い計測に使うこ
とができます。その他に、DIFF ソフトで正確な計算処理を行うためのマーカー貼付位置
や、計算処理による関節位置の近似方法、関節角度を計算するときのオイラー角等につ
いての解説が載っています。どのような処理が行われているかを理解することで、精度の
高い計測ができるようになるでしょう。また、独自のプログラムを作成し計算処理を行うと
きなどに参考になります。
表 1 資料としてライブラリーCD に収められているものの例
講義資料
運動計測システムの導入のノウハウ
VICON 計測原理
キスラーフォースプレート
人体寸法
被験者注意
power
官能検査
関節モーメントから何を知るか
関節モーメントとはなにか
(3 次元計測の仕組み)
(リンクモデル)
(講義)
関節モーメントの利用
実習セミナーデータとプレゼン資料
の内容
立ちあがり
スクワット
椅子からの立ち上がり
歩き始め、歩き終わり
歩行
正常歩行と杖歩行
速度を変えた歩行
杖歩行
ステップ昇降
飛び上がり
片足垂直とび
おじぎ側屈
垂直跳び
関節点位置の同定
基礎力学 (床反力・重心・関節モーメント)1
(床反力・重心・関節モーメント)2
(床反力・重心・関節モーメント)3
基本動作における関節モーメントとパワー
健常者はどう歩いているか
健常者歩行
重力と床反力
床反力・重心・関節モーメント
床反力の利用価値
正常歩行のバイオメカニクス
統計処理
運動は何から生じるか
分析のヒント
模範プレゼン(ジャンプ)
模範プレゼン(正常歩行)
国立身体障害者リハビリテーションセンター
研究所・補装具製作部
yamasaki@rehab.go.jp
介助
収納動作
車いす
持ち上げ
障害物またぎ
スロープ
ジョギング
片麻痺者 はじめの一歩
片麻痺歩行
DIFF 解説書
歩行データ・インターフェース
・ファイル活用フォーマット
-歩行データフォーマット標準化
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