創刊号 vol.1 Jan, 2015 京都から世界、 世界から京都へ府立医大の 「今」 を伝える広報誌 InterView 創刊に寄せて〜吉川敏一学長 積極的な広報が大学の価値を高める 戦略広報委員会メンバー紹介 「京都に府立医大あり」その存在をさらにアピール Point of View News 本学の取り組みが数々の新聞・テレビで取り上げられた Research Views Interview 注目度の高い研究紹介(写真提供 : 細井創 教授) 今後の抱負を語る吉川敏一学長 Campus News 平成 26 年度入学式のようす Learning from the Past Campus News 京都三大学の教養教育共同化施設が竣工 History I&D News Hospital ベトナム・フエ医科薬科大学との学術交流 京都府北部地域医療実習のようす 旧附属図書館棟と基礎医学学舎 Point of View Campus 本学の礎となった青蓮院 夏休み親子セミナーのようす 看護学学舎と広小路門 InterView 創刊のご挨拶 医学に専心する府立医大の姿を 多くの人に知ってもらうための 広報誌が誕生しました ▲京都府立医科大学永守記念最先端がん治療研究センター完成イメージ図 ◀ 最先端がん治療研究施設等の寄附に関する覚書を締結。左から荒巻禎一京都府公立大学 法人理事長、永守重信日本電産株式会社会長兼社長、山田啓二京都府知事、吉川敏一学長 『府立医大 News & Views』は、日々進歩し続ける医学・医療の分野で、再生医療、創薬、遺伝子研究、疾患メ カニズム解明、新たな検査法や治療法の開発、食品と抗加齢医学研究など、基礎医学はもとよりヘルスサイエン ス全般について、キラリと光る先端的研究に果敢に挑戦している京都府立医大の姿を、一人でも多くの方にご覧 いただきたいという思いで制作いたしました。創刊に寄せて、吉川敏一学長にお話を聞きました。 す。しかし謙虚で奥ゆかしい本学の伝 統、特性と言いますか、 「優秀な業績を 積極的な広報が 大学の価値を高める のこと」と受け留めて、外にアピールせ Q ベトナム・フエ医科薬科大学との 学術交流に関する覚書を締結 京都府教育委員会との新たな包括協定・府立高校指定校の覚書を締結 ナルに掲載されております。海外との学 D)」が発足し、再発防止に努めるだけ 術交流もさかんです。附属病院や附属 でなく、今よりもさらに研究の質を高める 北部医療センターにも、全国に先駆け ための教育やシステム構築について積 て地域医療の見本となるような取り組み 極 的に取り組んでまいります。平 成 27 が多数あります。このような本学の多種 年は京都府立医科大学にたくさんの立 多彩な活動・業績を、平成 26 年に発足 派な業績、明るいニュースが生まれ、こ 具体的にはどのような活動・ 業績を取り上げますか? した「 戦 略 広 報 委員会 」が中心となっ の広報誌の誌面を埋め尽くしてくれるこ て、広報誌の内容だけに留まらず、大 とを大いに期待しております。 い、多くの方々に理解していただくこと A たとえば、分子標的癌予防医学の めております。 が、優秀な人材を全国から集めたり、国 酒井敏行教授はがん分子標的薬に関 A 京 都 府 立 医 科 大 学は開 学 143 年 際交流を活発に行うことができ、それが する研究の功績が認められ、本学で初 Q というわが国でも有数の長い歴史と伝 さらなる研究の発展につながり、京都府 めて日本医師会医学賞を受賞しました。 統を誇る医科大学で、我々は世界でも 立医科大学の価値を高めることになる また卒業生で眼科医の服部匡志先生 トップクラスの医 学 研 究に積 極 的に取 と思い、この広報誌を通じて、我々の活 は、ベトナムをはじめアジア各 国で1万 り組 み、それを京 都 府 民、さらには国 動や業績をPRしてまいります。 人超の人々に白内障などの手術を無償 Q 広 報誌を創刊した経緯を お聞かせください。 とても素晴らしいと思う半面、このような 業績を通じて、積極的に広報やPRを行 民すべての医療に生かし続けておりま 143 年の歴史を礎に最先端の医療を京都から世界へ Toshikazu Yoshikawa 全国に先駆け地域医療や最先端医療の 見本となる取り組みが本学には多数ある 2 多種多彩な活動・業績を 知ってもらう 上げて府民のために働くのは当たり前 ずに、黙々と努力を続ける方々が多く、 京都府立医科大学 学長◉ 平成 25 年度卒業式のようす 吉川 敏一 学全体の広報戦略についても企画を進 広報誌に対する期待や、 大学の広報に対する抱負を お聞かせください。 A 優秀な業績や活動が多々ある一方 で行い、外務大臣表彰、読売国際協力 で、研究不正事案が発生したことは誠 賞などを受賞されました。さらに本学発 に遺憾であり、昨年 11 月には「研究開 の研究論文が海外の有名な医学ジャー 発・質管理向上統合センター(CQAR モンペリエ大学との学術交流に関する会談のようす 本学関係者の偉大な功績が認められ価値ある賞を受賞しました! Award winning works 酒井敏行教授が平成 26 年度日本医師会医学賞、京都新聞大賞・文化学術賞を受賞 分子標的癌予防医学の酒井敏行教授は、がん分子標的薬を見出す方法を考案し、世界初承認となる皮膚がん治療新薬を発見す るなど、がん治療の未来を切り開く功績を残されたことが高く評価されたものです。日本医師会医学賞は医学上重要な業績をあげ た会員に対し授与されるものであり、本学では初めての受賞となります。 卒業生の眼科医 服部匡志さんが「平成 25 年度外務大臣表彰」、 「第 20 回読売国際協力賞」、 ソロプチミスト日本財団『社会貢献賞』、ベトナム『友好勲章』を受賞 眼科医の服部匡志さんは、1993 年に本学を卒業、2002 年から日本とベトナムを頻繁に往復しながら、日本での医療活動で得た報 酬で、ベトナムを中心としたアジアの国々で1万人を超える人に白内障などの手術を無償で行いました。献身的な活動で治療費のな い多くの人々を失明の危機から救うという活動に顕著な功績があり、評価されました。 3 Point of View 戦略広報メンバーの抱負 積み重ねてきた実績を 発信する時が来た ! InterView 夏休み親子医学セミナーのようす 平成 26 年春に発足した戦略広報委員会は、京都府立医科大学の前向きな広 夏休み親子医学セミナ・中高校生向け医学セミナーのチラシ 小児医療センターから見た五山の送り火 報をどのように展開していくべきかについて、 じっくりと話し合ってきました。夏 休み中には、3 つのイベントと記者発表を1回開催し、多くのマスコミが取材に 来て、イベントの模様はテレビニュースで放映されました。そして平成 27 年は、 さらに積極的に我々の業績を京都、関西、 日本のみならず、世界に発信してま いります。戦略広報委員会委員長の木下茂副学長と委員会メンバーの先生方に、 本学発祥の地である青蓮院で、今後の抱負について聞きました。 小児医療センターで行われた送り火こども祭りのようす 基礎から臨床まで 国際的評価の高い 業績を発信 Q 略広報委員会が発足した 戦 経緯をお聞かせください。 A 平成 24 年、25 年と研究不正事件 が発生し、大学全体が重苦しい空気中 でも、黙々と自分の研究を地道に続け、 命を守る仕事である医師・看護師など 世界的にも高い評価を得ている先生方 の魅力を説明したり、若手研究者等の が、本学にはたくさんいらっしゃいます。 パネルディスカッション、質問コーナーで 研究不正防止に関しても研究統合セン の勉強法のアドバイスなどを実施しまし ターが中心となって積極的に取り組んで た。私も中高校生向けのセミナーに参加 行くことが決まり、平成 27 年からは、前 しましたが、熱心な若者が多く、瞳を輝 向き、積極的な広報を戦略的に実践し かせて話に集中してくれたのが印象的 て行こうということになり、その準備を平 でした。セミナー参加者へのアンケート 成 26 年 3 月よりスタートしておりました。 調査によると、満足度も高く概ね好評で、 Q NHKのニュースでも放送されました。 プレスセミナーのようす 府立医大の良さ・魅力を知ってもらうために「戦略広報委員会メンバーの抱負」 小児発達医学 細井 創 放射線診断治療学 教授 山田 惠 統合生理学 八木田 和弘 教授 感染病態学 教授 中屋 隆明 どんな取り組みを されましたか? 8 月16日には本学附属病院の小児医 A 平成 26 年 8 月11日と12日に、小中 しながら夏祭りを楽しんでもらう「送り火 高校生を対象に医学セミナーを開催しま こども祭り」を開催しました。 した。小 学 生には、 「 夏 休み親 子 医 学 併せて、小児医療の重要性を多くの セミナー」と題して、親子で楽しく医学を 一般の皆様に向けて発信していただく 学んでいただく機会を提供。夏休みの ために、メディアに取材していただくとと 自由研究にも役立つお話や、自由研究 もに、プレスセミナーを開催。この模様は のヒントになるアイデアを紹介しました。 テレビニュースとして放送されました。 中高校生には、 「夏休み中高校生向け さらに平成 27 年 1 月23日には、多くの ている『科学新聞』に、 「最先端地域医 そして平成 27 年 1 月末に念願の『府 医学セミナー」というセミナーを開催し、 研究者や文部科学省関係者に購読され 療から世界へ発信 京都府立医科大 立医大 News & Views』の創刊となり 学」という特集記事が掲載されました。 ました。 療センターに入院中のこどもたちとその 家族のために、 「五山の送り火」を観賞 小児医療センターのセンター長 として、小児関連 4 診療科によ るチーム医 療、高 度 な医 療を 行っています。平成 25 年に全 国で 15 カ所しかない「小児が ん拠点病院」の指定を受け、小 児がんにも積極的に取り組んで います。 「人は社会的な絆を必 要とし、社会的に貢献すること によって人生の意味を見出す」 とドラッガーが示すように府立 医大の地域貢献を世界に発信 して、地域医療と小児医療の拠 点と呼ばれることを目指します。 「形態および機能・代謝画像の 融合」による総合画像診断学を 基 盤として、 放 射 線 治 療や放 射線診断の臨床と研究を専門 に行っています。我々の推進す る広報活動を通じて、大学がさ らに明るい雰囲気になり、京都 の中で最も誇れる大 学・ 附 属 病院としてさらに躍進するため の活 動に積 極 的に取り組んで 行きます。今回初めて青蓮院に 行き、本 学の歴 史と伝 統を再 認識できました。ぜひ多くの方 に訪れていただきたいです。 体内時計を社会環境の乱れか らどのように守り、整えて行け ば良いのかを基 礎 的なメカニ ズムからトランスレーショナル まで体 系 的に研 究を展 開して います。府立医大には母校とし てかなり強い思いがあり、卒業 後、基礎研究の道に進み、他大 学で研鑽を積む中で、府立医大 で受けた学 部 教 育や先 生 方と のつながりは大きな力になりま した。私が感じた温かい縁を後 輩にもつなげていきたいと思い ます。 基礎から臨床まで国際的評価の高い業績を情報発信 医薬品化学 教授 府 立 医 大に着 任して3年にな ります。現在取り組んでいる研 究の一つは、インフルエンザウ イルス病原性の分子機構解明 を目的としたものです。研究成 果をプレスに発表する際には、 どうしてもこちらが言いたいこ とをそのまま正しく記事にして くれるとは限らないので、大学 HP 等を利用した研究成果の、 より詳 細 かつ 正 確 な 説 明( 解 説)の発信を通じて、本学の広 報 活 動に貢 献できればと考え ています。 鈴木 孝禎 教授 一貫して、創薬研究を続けてい ます。 「エピジェネティクス」と いう遺伝子発現制御機構に着 目して、いくつもの画期的な医 薬 品 候 補 化 合 物を見出しまし た。本学は教員同士の距離、教 員と学生の距離が近く、共同研 究もスムーズに進んでいます。 海外との学術交流を積極的に 行うために、外国人の教員や学 生をもっと受け入れることがで きるシステム作りが必要ではな いかと思います。 Q 今後の戦略広報委員会の 活動や抱負についてお聞か せください。 A 京都府立医科大学は非常に長い Shigeru Kinoshita 歴史を持ち、関西圏では最も伝統ある 大学です。その誇りを持って、我々が取 り組んでいる医 学・医 療の成 果を、積 「京都に府立医大あり」 その存在をさらにアピール 極的に日本、世界に発信していきます。 平 成 26 年 度に行った取り組み以 外に も、学 内にある素 晴らしい業 績を集め て世の中に発信し、 「京都に府立医大 木下 茂 あり」と世界中に広めて行きたいと思い 戦略広報委員会 委員長 視覚機能再生外科学教授 ◉ ます。 平成 27 年 1 月 23 日号の『科学新聞』で本学の特集記事が掲載された 4 5 Views Research and Development Views 研究活動の適正化と的確な支援を行う 研究開発・質管理向上統合センター がスタート す。大学などで行われる臨床研究は小規模で希少疾患を対象と したものが多いので、臨床研究の効率化のために統計学を駆使 して意味のある結果を早く出せるようなデザインを考えることが、 (The Center for Quality Assurance in Research and Development :CQARD) 私の大きな研究テーマです。最近ではベイズ流統計学の利用が ある種のブームでして、その方面で主に研究しております。 本学で発生した研究不正事案の反省に立ち平成 26 年 11 月 1 日に「研究開発・質管理向上統合センター (CQARD:略称は研究統合センター)」を開設しま した。本センターは、医学研究全般の科学性・倫理性 を適正に担保し、研究の質管理・向上を一元的に行う 組織として新たに創設したものであり、研究活動の適 正化と的確な支援を行い、大学発の研究開発を一層推 進することを目指します。 A もともと私は企業に勤めていたのですが、平成 14 年から大 A この研究統合センターの役割は、 「研究開発」と「研究の質 学に移り、臨床研究の支援センター立ち上げに長年従事して、統 管理・保証」の2つです。研究開発では、研究のシーズ発見段階 計解析やデータマネージメントの部門を担当してきました。京都 から、その前臨床あるいは臨床研究、さらに実用化まで一貫して 研究支援することが、センターの大きな役割です。 研究の質管理・保証では、4つポイントがあります。1つ目は Interview 府立医科大学には、平成 26 年 6 月に移りました。本学で生物統 研究統合センターがさらなる研究の質向上を後押しする 計学の教室を新規に立ち上げるということを伺い、そこで教育す Q 今後の抱負をお聞かせください。 る、さらに研究統合センターでも仕事ができると考えて移ってき 観点からは、生物統計学、COI(利益相反)のマネジメント、倫 A 本学が新しく生まれ変わり、さらに飛躍するためには、研究 理審査などが重要です。 統合センターが大きな役割を担うと考えております。今後、本学 Q 医学研究に関する教育には特に 「臨床研究の科学性、倫理性を担保するための支援」です。その 2つ目は「研究データの保管」です。これについて、本学では従 センター長・伏木 信次 副学長インタビュー Q 本学に着任されるまでの経緯をお聞かせください。 Q どんな活動を行っていくのでしょうか? 来きちっとしたルールがありませんでした。今後は、実験ノートか ら研究データまで含め、研究が完了した段階でCQARDが保管 し、何か問題が生じたときにも対応できるような体制を整えます。 の行動規範教育として提供されている文科省の「CITI Japa A 本学発の研究成果は国際的にも高い評価を n」プログラムを、大学院生も含めて教員・研究者全員が受講 得ており、今後もさらに一層、質の高い医学研究 するよう義務化し、これを履修していないと、臨床研究やそれ以 重点を置かれているそうですね? の研究開発と質保証の両面で本センターが貢献できるように努 A 教育については、平成 27 年度から学部で生物統計学の教 力したいと思っています。 副センター長・手良向 聡 生物統計学教授インタビュー Interview 3つ目は「研究倫理教育」です。eラーニングによる研究者へ Q センターを開設した背景は? ました。 育を行う予定ですし、国際的に活躍できる人材を育成するため にはとても重要です。大学院生や臨床研究を行う医師、メディカ ルスタッフ等に対しては、臨床研究の方法論について、実施計 画書の作成というスタートから指導していく必要があると考えて Q ご専門の生物統計学について います。さらに平成 27 年 4 月より臨床研究の倫理指針と疫学 ご説明ください。 研究の倫理指針を統合した新しい倫理指針が施行されます。ま を発表していくためには、そのクオリティを一元 外の研究の計画が申請できないような形にしようと考え、すでに A 生物科学におけるデータの統計解析の問題を た、未承認や適用外の医薬品等については法制化の対象とする 的に管理し、研究活動に関する教育や支援を積極的に行う必要 そのシステムを稼働させております。また、eラーニングだけでな 扱う分野で、私は主に臨床研究や疫学研究の方法 という動きもあります。このような国の制度改正にも的確に対応 があると考えました。その一方で平成 24 年から 25 年にかけて、 く、実際の研修会やワークショップなどで、倫理原則あるいは原 論を研究しております。 できるように研究統合センターが中心となって、本学の研究の 研究論文あるいは臨床研究のデータ改ざん、ねつ造といった事 理に加えて、応用編としての具体的なケーススタディも行い、各 案が本学で発生しました。これについて我々は深く反省し、そう 人の研究倫理意識を向上させたいと考えております。 した事案が本学で二度と起こらないようにするためにも、本セン 方法論には、研究のデザイン開発とデータ解析の 2 つがありま 質向上・管理に注力したいと考えています。 4つ目は「論文作成」です。英文で研究成果を発表する際に、 ターが中心となって研究の科学性・倫理性を適正に担保して行 オーサーシップ(著者情報)やCOIの開示の問題などについて適 きます。 正な支援ができるように、センター運営を進めていくつもりです。 研究開発・質管理向上統合センター(CQARD:略称は「研究統合センター」)組織図 研究開発部門 副センター長 中川 正法 教授 センター長 生物統計・データマネージメント部門 研究倫理教育・管理部門 伏木 信次 副学長 副センター長 臨床研究部門 臨床治験センター 手良向 聡 教授 研究・論文指導部門 研究開発・質管理向上統合センター(CQARD:略称は研究統合センター)のメンバー 6 7 R esearchViews ResearchViews 京都府立医科大学で進めている世界的にも注目度の高い 11 の研究について、 それぞれ研究室の代表者よりご紹介させていただきます。 消化器癌患者の個別化による 新たな治療法の開発 消化器外科学 教授 大辻 英吾 口を見つけた。これまでに様々な消化 された。これらの研究成果は、高次脳機 関する臨床研究、生検を要しない非侵襲 角膜 移 植 術でしたが、当研 究 室が中心 器癌に特異的な遊離核酸の異常を発 能の獲得過程の解明につながる重要な発 的な診断法の開発、予後予測因子の解 となって、水疱性角膜症に対する培養ヒ 見し、薬物療法の感受性試験としても 見と考えられる。さらに進化過程と個体 析、皮膚がんの中でも特に難治な悪性黒 ト角膜 内 皮 細 胞 移 植を、平 成 25 年 12 有用性であることを発見している。 発生を知ることで、脳疾患の起源まで明 色腫や皮膚血管肉腫に対する分子標的 月に世界で初めて実施した。平成 26 年 らかにできることが期待される。 治療薬の開発と作用機序の解明にも力を 12 月 31 日現在までに 11 例の臨床研究 注いでいる。 を実 施し、本 細 胞 移 植 治 療の安 全 性を 3)癌細胞に特異的なイオンチャンネルを 用いた新たな治療法の開発:癌細胞 確認するとともに、角膜の透明化や視力 の進展において重要な様々なイオン チャンネルの異常を発見し、癌細胞が 第 120 回日本解剖学会総会・全国学術集会第 92 回 日本 生 理 学 会 大 会 合 同 大 会 は平 成 27 年 3 月 21 日 ( 土 ) ~ 23 日 ( 月 ) 神戸国際会議場・展示場で開催さ れる 低浸透圧刺激に弱いことを見出した。 近年、様々な因子が癌の発生・進展に これらの知見を基に、腹腔内等に遊 寄与していることが明らかにされ、消化 離した癌細胞に対する蒸留水を用い 器癌患者の個々に応じた治療戦略の重 た低浸透圧刺激による殺細胞効果を 長い年月をかけて追い求め、熟成しつつ、 再生医療の臨床応用を牽引するプロジェ 要性が叫ばれている。当教室では、癌患 検討し、新たな治療法を開発した。 さらに新たな香りを探し求めてきた。その クトとして、国内のみならず、海外からも 「形と働きの科学」研究の集大成が、平 大きな注目を集めている。将来的には並 成 27 年 3 月 21 日から 23 日に行われる 行して開 発している点 眼 治 療とともに、 解剖学会と生理学会の合同大会の実施 シームレスな内皮障害克服が可能になる と な る (http://psj92-jaa120.umin. と考えている。 者の予後を左右する転移の診断や新た な治療法の開発を目的として、様々な研 究を行っている。 1)5- アミノレブリン酸(5-ALA)を用い た新たな転移診断法の開発:癌組織 に特 異 的な酵 素の異 常を利用して、 経口投与した 5-ALA の癌細胞中の代 大脳皮質とその機能形成の 進化学的および 個体発生学的研究 神経発生生物学 教授 小野 勝彦 究室は、これらの時代の先端的な内容を 胎児期に脳の領域形成不全が生じると、これを通過す る回路も異常となる(下段) アトピー性皮膚炎・皮膚がん の克服に挑む 皮膚科学 教授 謝物の蓄積を特殊な蛍光カメラで検 加藤 則人 出する方法。これまでに胃癌・大腸癌 マウスの刺激性皮膚炎が血小板減少マウス(下段)で は著明に減少 「脳とホルモン」 そのシームレスな機能形態の 連関:解剖・生理合同大会の 実施に向けて 生体構造科学 教授 を中心に検討を行い、肉眼では捉える ことのできない微小なリンパ節転移や 大脳皮質はヒトを人たらしめる構造基 河田 光博 腹膜播種転移を手術中にリアルタイ 盤の中心であり、その機能原理は形成機 ムに診断できることを発見した。 構の普遍性から知ることができる。私た 小 児・ 青 年の約 1 割が 罹 患するアト 2)循環核酸を用いた新たな治療戦略の ちの部門では、大脳皮質形成過程の分子 ピー性皮膚炎、最近急速に患者数が増 機構の解明を目的として、進化発生学的 加している皮膚がんの克服をテーマに、 「脳とホルモン」の関係は、神経系と内 DNA や RNA の検出を行い、癌の腫 視点と個体発生学的視点の両方からアプ 教室をあげて研究に取り組んでいる。ア 分泌系の作用相関というよりも、内分泌 瘍量のみならず特性をも理解すること ローチしている。その成果として、細胞分 トピー性皮膚炎については、自然免疫や 機能がどのようなメカニズムで神経系か で、個々に応じた集学的治療への糸 化に必須の転写調節因子により、脳内の 血小板の病態への関与、皮膚バリア機能 らの制御を受けているのか、ということに 大腸癌腹膜播種 腹膜播種巣に一致して蛍光像で蛍 光を認める 現 化ハイウェイ」、厚 生 労 働 省「 再 生 医 療実用化研究事業」に採択されており、 jp/)。日本の解剖学会・生理学会のオー ルスターは、世界に比してどの国にも負 培養ヒト角膜内皮細胞 + ROCK 阻害剤 けない布陣であることを、この合同大会 は示しており、その開催の一翼を担うこ とを誇りと感じ、さらなる研 鑽を積んで 行く所存である。 うつ向き姿勢 培養ヒト角膜内皮細胞移植に よる角膜内皮再生医療の 実現化 開発:血液中に循環する腫瘍関連の 角膜内皮細胞の生着 視覚機能再生外科学 教授 木下 茂 細胞注入療法 1 培養した角膜内皮細胞と「ROCK 阻害剤」を注入 2 患者さんの白く濁った角膜をはがし洗浄する 3 うつぶせで横になり安静に 3 時間過ごす 領域形成が制御されていること、さらにこ の低下や掻破による外傷が、経皮感作に 力点がおかれた歴史がある。近年、ホル の正常な領域形成が、大脳皮質機能に よる全身性アレルギー反応を誘導するメ モンを中心とする生理活性分子は、脳や 角膜の最内層を被 覆する一 層の角膜 必須の回路形成の際に軸索の通り道を作 カニズム、胎児期からの生活リズムの破 脊髄をその標的器官、組織として作用し 内皮細胞層は、角膜組織の含水率を一 ることが示唆された。また哺乳類大脳皮 綻に伴うアレルギー反応への影響など、 ており、フィードバックループに加えて、 定に保ち、角膜の透明性を維持するため 質の進化的起源を探るため、爬虫類脳を 臨床での課題に即した基礎研究や臨床 神経細胞やグリア細胞に直接働きかけ、 に必須の細胞である。しかしヒトやサル 解析した結果、爬虫類の脳は非常にゆっ 研究を展開し、新規治療法の開発に挑ん 生殖機能はもちろん、情動や行動にも幅 などの霊長類の生体内では角膜内皮細 くりと形成されることが明らかになった。 でいる。またアトピー性皮膚炎や慢性蕁 広く影響していることが明らかとなってき 胞が通常は増殖しないことが知られてお 従って、哺乳類が進化する過程で神経細 麻疹の予後予測因子の解析などの疫学 ている。このようなパラダイムシフトは、 り、外傷や疾病、手術などによって広汎 胞の産生率が増大することにより、大き 的な研究や、治療アドヒアランス向上プ 脳神経系での生理物質やその受容体を に障害されると、角膜の透明性を維持す な脳を獲得したと考えられる。一方、皮 ログラムの作成にも注力している。 同定し、分子を可視化することが可能と ることができなくなり、角膜に浮 腫と混 なったことに起因する。その結果、分子 濁を生じ、水疱性角膜症と呼ばれる角膜 発がんに最も重 要であるがん抑 制 遺 質の層を形成する神経細胞は爬虫類にも 8 改善などの有効性についても確認してい る。本研究は文部科学省「再生医療の実 さらに難治な皮膚がんの新規診断法・ 独自のスクリーニング系を 用いたがん分子標的薬の開発 分子標的癌予防医学 教授 酒井 敏行 存在していたことから、大脳皮質層構造 治療法の開発にも勢力的に取り組んでお から個体、さらには個体間の行動研究に 混濁による視覚障害の主要原因疾患を 伝 子 RB の失 活に着目し、RB 機 能を定 の起源は哺乳類と爬虫類の共通祖先が り、豊富な症例数を背景に、光線力学的 まで解 析が進むこととなり、まさにシー 引き起こす。従来、水疱性角膜症に対す 量する新規診断法、RB を再活性化させ 生きていた3億年前に遡れることが推測 な手法を用いたリンパ節転移の検出法に ムレスな機能形態の連関と言える。本研 る唯一の治療法は、ドナー角膜を用いた る予 防 法や治 療 法の開 発 研 究を多くの 9 R esearchViews ResearchViews 京都府立医科大学で進めている世界的にも注目度の高い 11 の研究について、 それぞれ研究室の代表者よりご紹介させていただきます。 企業と展開してきた。中でも RB 再活性 に有効であり、現在 CT や MRI の画像が 化スクリーニングと名 付けたがん分 子 用いられている。加えて、術中に特異的 標的薬のスクリーニング系を JT 医薬総 光分子イメージングを行うことができれ 合 研 究 所や中外 製 薬に提 供し、共同で ば、より良い予後や QOL を得ることが可 新 規 MEK 阻 害 剤 trametinib や、新 規 能になる。ただ新しい分子プローブをヒ RAF/MEK 阻害剤 CH5126766 をそれ トに直接使用するには多くの困難が立ち ぞれ見いだした。この trametinib は、進 行 性 BRAF 変 異メラノーマ患 者に対す る治療薬として欧米他で承認された。そ はだかっている。我々はその現状を打破 エピジェネティクスの化学的制御により疾患の治療が 可能となる (小児悪性固形腫瘍の非侵襲的診断とより安全で 治療後 QOL の向上した新規標準治療開発のため の多施設共同臨床研究によるトランスレーショナ ルリサーチ) 小児発達医学 教授 細井 創 するため、体内に元々存在する蛍光分子 糖尿病におけるインスリン抵抗性 およびアルツハイマー型認知症 発症メカニズム解明と早期診断・ 予防法の開発 細胞生理学・ バイオイオノミクス 教授 残基のアセチル化、メチル化が重要なエ 提案している。 約 5%であったのに対し、trametinib と ピジェネティクス機構の一つであること ● 八木田 和弘 世界における糖尿病患者は3億7千万 リンパ節転移イメージング:5- アミノレ 人にもおよび、我が国でも糖尿病あるい BRAF 阻害剤 dabrafenib を併用するこ が 明らかにされてきた。また、エピジェ ブリン酸 (5-ALA) は、正常細胞では蛍 は糖尿病が強く疑われる人の数は2千万 ネティクスの異常は、がんや神経精神疾 光を認めないヘムにすばやく代謝される に達している。さらに、高血糖・インスリ にまで改善した。メラノーマは欧米では 患などの疾病に関与することも報告され が、腫瘍細胞では赤い蛍光を持つ PpIX ン抵抗性を有する2型糖尿病患者におけ 日本に比して 10 倍近い頻度で発生する ている。したがって、エピジェネティクス が蓄積する。我々は 5-ALA を利用して るアルツハイマー型認知症の発症リスク ことに加え、治療法を抜本的に変えうる をコントロールする化合物は、エピジェ リンパ節転移を高い正診率で検出でき 成果が得られたことから、trametinib は ネティクス研究のためのツールとして利 る機器の実用化を進めている。 (医工連 British Pharmacological Society か 用することもでき、抗がん剤などの治療 ら 2013 年の Drug Discovery of the 薬として応用することも期待できる。そこ Year に選ばれた。現 在は、がん分 子 標 で、我々の研究グループでは、エピジェ 的薬の開発だけでなく、新規診断法や予 防法の開発も精力的に行っている。 医薬品化学 教授 統合生理学 教授 丸中 良典 とにより、奏効率 76%(完全奏効率 9%) エピジェネティクスの 化学制御による創薬研究 体内時計研究の拠点形成を 目指して や、ラマン散乱を用いたイメージングを の結果、旧来の抗がん剤による奏効率が MEK 阻害剤 trametinib(商品名 Mekinist)の錠剤 小児がん細胞の異常遺伝子をK/Oし、さらにCDK4/6 を抑制すると最終分化と細胞死が誘導された が高いことも知られているが、2型糖尿 病 患 者でのアルツハイマー 型 認 知 症 発 行動リズム解析ユニットと体内時計リアルタイムイメー ジングによる包括的概日リズム研究 近年の分子遺伝学的診断法、造血幹 症リスクの高い原因は未だ不明のままで 当研究室では体内時計の研究に取り組 ラマン散乱イメージング:光を物質に 細胞移植らを含む集学的治療の進歩は ある。我々は、糖尿病において組織間質 んでいる。シフトワーカーだけではなく、 照射するとその一部は散乱する。ラマン 小児がん患児の救命率を飛躍的に改善 液 pH が低下し、この組織間質液 pH 低 社会環境の変化によって、多くの人たち ネティクスのケミカルコントロールを行う 散乱は異なった振動数を持ち、そのシフ させたが、成長発達期での強力な治療は 下がインスリン抵抗性発症の原因である が不規則な生活を送るようになった。こ 小分子化合物の創製研究と、その応用研 トは物質を構成する分子構造に固有で 長期・慢性的な副作用や晩期合併症を ことも世界で初めて明らかにした。現在、 れは、直ちに何か特定の疾患につながる 究を行ってきた。これまでに、エピジェネ あるため、ラマンスペクトルを解析する 引き起こし、その後のがん経験者の社会 我々は、糖尿病における組織間質液 pH 訳ではないが、様々な疾患リスクの上昇 ティクスを制御する重要な酵素であるヒ ことにより分子の同定が可能である。す 生活上の QOL を著しく低下させている 低下、およびアルツハイマー型認知症発 につながることがわかってきている。特に ストン脱アセチル化酵素や、ヒストン脱メ なわち、生きた細胞・組織中に存在す ことが問 題となっている。当院は、平 成 症メカニズムの解明を、特にミトコンドリ 子供たちの心身の健康に影響があるとい チル化酵素のイソ酵素に対する特異的阻 る分子の構造やその変化を非破壊・プ 24 年度、厚生労働省から「小児がん拠 ア機能に注目し、研究を進めている。さら う可能性が指摘されており、体内時計を 携事業化推進事業) ● 害薬を世界に先駆けて見出し、それら阻 ローブ無しで解析可能であり、無標識 点病院」に指定され、臨床実績のみなら には、食生活習慣改善による腸管をはじ 社会環境の乱れからどのように守り、整 害薬が抗がん剤や抗うつ薬として有用で での心筋梗塞巣や末梢神経の検出シス ず、当教室の臨床応用に向けた基礎研究 めとする、各種臓器における種々のイオ えて行けば良いのかを基礎的なメカニズ あることを示してきた。現在、これらの研 テムを開発している。 (総合特区推進調 の取り組みも高く評 価された。平 成 25 ン・糖・脂肪酸輸送タンパク質の機能発 ムからトランスレーショナルまで、体系的 究成果を基に、がんや神経精神疾患など 整費) 年度には文部科学省 科学研究助成 基 現調節を行なうことにより、組織間質液 に研究を展開している。最近の成果とし 盤 A「小児固形悪性腫瘍の非侵襲的診 pH 制御を介した糖尿病・アルツハイマー て、胚性幹細胞(ES 細胞)を活用した独 の難治性疾患の根本治療を可能にする エピジェネティクス制御化合物の開発を 断と新規治療開発のためのトランスレー 型認知症発症予防法の開発にも取り組ん 自の解析系を開発し、体内時計の発生過 展開している。 ショナルリサーチ」の採択を受け、臨床 でいる。これらの研究に加えて、糖尿病・ 程を明らかにした一連の研究は、世界初 光分子イメージングによる 診断支援システムの開発 鈴木 孝禎 髙松 哲郎 DNA の塩基配列に依存しないで遺伝 子の発現を制御する機構は、エピジェネ ティクスと呼ばれている。最近の研究に 画像誘導手術は、対象が複雑な構造 より、DNA のメチル化やヒストンリシン を持つ場合や、より正確さを求める場合 研究で検証する前段階の基礎応用研究 アルツハイマー型認知症の非侵襲的早期 の独創的研究として評価されている。こ の推 進に全 国レベルの共 同 研 究を、平 診断機器開発も行なっている。これらの の研究によって細胞分化の最初のスイッ 成 26 年度には厚生労働科学研究委託費 研究成果により、糖尿病・アルツハイマー チである DNA メチル化 制 御など、エピ ( がん対 策 推 進 総 合 研 究 事 業 ) 「ノン・ 型認知症の非侵襲的早期診断および予 ジェネティック制御が、体内時計の発生 防が可能になる日も近いと思われる。 に重要であることを発見し、細胞分化と ハイリスク群 小 児 悪 性 固 形 腫 瘍の安 全 細胞分子機能病理学 教授 10 小児がんの後遺症なき治癒を 目指して ヒト大腸癌リンパ節転移の可視化 性と治療後 QOL の向上への新たな標準 体内時計の発生が切っても切れない密接 治療法開発のための多施設共同臨床研 な関係にあることが示された。今後は、子 究」の採択を受け、それぞれ研究班長と どもの心身の発生発達と体内時計との関 して、小児がん治療の安全性と患児の治 連や、エピジェネティック発がんなどの 療後 QOL の向上を目指した基礎医学研 新たな概念を、体内時計の視点で斬ると 究、および基礎研究と直結した臨床研究 いった、体内時計研究のフロンティアに を全国規模で展開している。 糖尿病での間質液 pH 低下により引き起こされる神経 機能の低下およびアルツハイマー型認知症発症機構 分け入って行こうと考えている。 11 京都府立医科大学附属病院の近況と今年の展望について福居顯二病院長・副学長に聞きました。 府内のがん診療病院に研修会や 講習会を実施 府立医大附属病院の理念は「世界トップレベルの医療を地域 世界的に有名な科学雑誌に 紹介された研究論文 本学では毎年数多くの研究論文が、世界的に認めら れている価値の高い科学雑誌で紹介されています。 2014 年に高い評 価を得た 8 つの研 究 論 文の概 要 と、2 つの世 界で初めて行われた手 術についてご紹 介します。 Medical research that has been adopted in the famous scientific journals へ」で、さらに大学病院ですので、研究・教育も担っており、臨 床と基礎医学や社会医学、教養教育とも連携しながら研究を行 い、その成果を臨床現場に還元し、府内外の方々の健康維持に 貢献しています。 附属病院病院長・副学長 福居 顯二 2月 2 月 特にがん診療に対して各科が熱心に取り組んでおり、平成 18 した。府内のがん診療病院に対し、種々の研修会や講習会を実 施しており、府内におけるがん診療の向上と均てん化に努めてい 2月 2月 小児がんの高度な治療、 認知症の診断・治療にも尽力 り、平 成 25 年 2 月には国が 指 定する 全国で 15 箇所しかない「小児がん拠 点病院」の指定を受け、小児関連の4 2月 2月 診療科が、高度な治療を行っています。 平成 23 年には京都府より「認知症 疾患医療センター」の指定を受け、認 との連携に力を入れています。 緩和ケア病棟がスタート 一方、積極的ながん治療と共に、がんの痛みなどを和らげる緩 和ケアについては、疼痛・緩和医療学教室を発足させ、精神科 3月 3月 に当たり、 「緩和ケア病棟」を平成 26 年 1 月に 16 床で立ち上げ ました。 医師臨床研修マッチング率が 100% 診療等の医学教育関連では、研修医は卒後臨床研修センター に所属して研修を行っています。幸い平成 27 年度の医師臨床研 修マッチング率は 100%でした。フルマッチの大学病院は全国に 4 校のみで、これからも研修医教育にも力を入れて取り組みます。 臓器・疾患別にメディカルセンター化 臨床実習のようす 平成 23 年の秋には新外来棟が竣工し、また「消化器センター」 や「脳神経センター」などのメディカルセンター化がなされ、臓 器別、疾患別にわかりやすく、利便性を持たせた組織に整備しま した。 5月 5 月 4月 4月 8月 8 月 送に関与する蛋白質である VCP の発現量を低下させると悪化 し、逆にその発現量を増加させると改善するという関係性を明 らかにし、VCP あるいはその活性を調節する因子が、これまで にはなかった ALS の根本治療薬となる可能性を示しました。 重症先天性疾患の新生児に対する 世界初の手術に成功 極めて治療が困難な重症先天性心疾患を持つ生後 28 日の女 児(体重 2,500g)に対して、本学小児医療センターの小児心 臓血管外科で世界初の手術(大動脈離断症に対する自己肺動 脈移植手術)を世界で初めて適応し、成功しました。 11 月 細胞分化と密接に関連する 「体内時計の発生メカニズム」を解明 【米国科学アカデミー紀要オンライン速報版掲載】 統合生理学の八木田和弘教授と梅村康浩助教らは、マウス胚 性幹細胞(ES 細胞)を用いて細胞分化と密接に関連した体内 時計の発生メカニズムを解明しました。研究ではマウス ES 細 胞を用い「細胞分化の制御因子が関わる体内時計発生メカニ ズム」および「ES 細胞で体内時計のリズムが阻害されるメカニ ズム」を解明するとともに、細胞分化異常によって正常な体内 時計が形成されないことを示し、細胞分化と密接に関連する 体内時計の発生メカニズムを世界で初めて明らかにしました。 筋萎縮性側索硬化症の新治療法開発につながる 分子を同定 分 子 脳 病 態 解 析 学 ( 神 経内科 学 併 任 ) の東 裕 美 子 助 教、徳 田隆彦教授らは、自らが既に開発していた筋萎縮性側索硬化 症(ALS)の病態である運動神経(ニューロン)障害を再現し ているモデルショウジョウバエを用いて、その運動障害と運動 神経細胞の障害(変性)は、オートファジーおよび核細胞質輸 エストロゲンが神経ヒスタミン受容体の発現を制御 【PLOS ONE 掲載】 総合医療 医学教育学 森浩子助教らは、ラット視床下部腹内側 核領域 (ventromedial nucleus of the hypothalamus:VMN) における、ヒスタミン受容体(histamine receptor subtype 1: H1)の詳細な分布を明らかにし、VMN 領域において H1 は、エストロゲン受容体 (ER α ) の発現分布と一致しているこ とを発見した他、H1 の発現量がエストロゲンによって変化する ことを見出しました。 視覚機能再生外科学(木下茂教授、上野盛夫助教)は世界 で初めて水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞移植を 実施しました。これは同志社大学生命医科学部(小泉範子教 授、奥村直毅助教)、滋賀医科大学動物生命科学研究センター (中村紳一朗准教授)との共同研究による成果です。 医・看護師・薬剤師などの多職種による緩和ケアチームが治療 臨床実習のようす 水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞移植を世 界で初めて実施 脳の発達異常を引き起こす新メカニズムを発見 【英専門誌「Development」オンライン版掲載】】 神経発生生物学の小野勝彦教授らは、グリア細胞の形成に 関わる遺伝子である Olig2 が、脳の形成の初期には前脳のパ ターン形成を調節し、このパターン化が間脳と大脳皮質をつ なぐ神経回路形成に重要であることを明らかにし、未分化な幹 細胞から特定の神経系の細胞を作り出すときに、出来上がっ た神経細胞の機能だけではなく神経回路基板となる細胞まで 作り出す可能性を示しました。 心肥大を制御する情報伝達メカニズムの発見 【米国科学アカデミー紀要オンライン速報版掲載】 循環器内科学の小形岳寛特任助教、上山知己特任講師らの 研究グループは、MURC(マーク)/Cavin(キャビン)-4と呼 ばれるカベオラ関連タンパクの1つが心肥大を引き起こすシグ ナル伝達に深く関わっていることを発見しました。 今回の発見は、心肥大シグナル制御に重要な新知見を与える もので、心筋症の発症機序および病態解明にも寄与すると期 待されます。 小児医療センターNICUにて 知症の的確な診断・治療・啓発に加えて、医療機関・福祉施設 最新の IVR 設備による低侵襲治療 がんのリスクとなる大腸ポリープの再発を アスピリンで約 40%抑制することを発見 【消化器関連ジャーナル誌「GUT」掲載】 本学を含めた 19 施設の共同研究で、大腸がんへ進行する可 能性の高い大腸ポリープ(腺腫)を摘除した患者に、既存薬で ある低用量アスピリン腸溶解錠を 2 年間投与、311 名による 無作為化比較試験で再発リスクを検証したところ、40% 程度 抑制する結果が得られました。 また、小児医療センターが中心とな 高度な技術力を有する医師たちによる小児開心術 5月 5 月 星野温研修員、的場聖明助教らは、糖尿病モデルマウスを用 いて膵臓のβ細胞において、老化因子である p53 がオートファ ジーによる不良ミトコンドリアの分解処理(マイトファジー)を 阻害し、ミトコンドリア機能不全を進行させることが糖尿病の 病態に関与していることを明らかにしました。 年度には都道府県の「がん診療連携拠点病院」の指定を受けま ます。 糖尿病発症の新規メカニズムの発見 【米国科学アカデミー紀要オンライン速報版掲載】 11 月 強迫症における前頭皮質−線条体回路の異常を解明 【PLOS ONE 掲載】 精神機能病態学の中前貴学内講師らは、強迫症患者と健常者 の頭部 MRI 画像(拡散強調画像)を撮像し、前頭葉と線条体 を結ぶ線維をトラクトグラフィーという 技術を用いて描出しま した。線維の走行や性状を詳細に調べたところ、強迫症患者 では健常者と比べて、眼窩前頭皮質と線条体とを結ぶ線維が 線条体のより背側 に分布し、かつ、構造的結合性の強さの指 標となる Fractional Anisotropy (FA) 値が有意に高いこと がわかりました。 平成 27 年も引き続き、患者さんに信頼される質の高い医療を 1階外来ホール 12 提供してまいります。 13 International & Domestic News Domestic 最 大学関連のトピックスをご紹介します。 国内外の学術・人材交流などについてご紹介します。 竣工式 先端がん治療研究施設等の寄附について 京都三大学の 教養教育共同化施設が竣工 日本電産株式会社会長兼社長永守重信(ながもりしげのぶ)氏 より、最先端がん治療研究施設を京都府立医科大学に寄附する旨のお申し 冒頭の式辞において、山田知事は、 「特 徴ある京都三大学の学生が一つの場所に 集い学ぶことによって、教養教育も格段 に深みを帯びる。この施設で学ぶ学生の 皆さんには、大学という枠を超えて、様々 卒業式・修了式 平成 25 年度卒業式・ 大学院修了式 出をいただき、、平成 26 年 11 月 17 日に覚書を締結しました。名称は「京 京都工芸繊維大学、京都府立大学、京 な人たちとの交流を深め、幅広い教養と 都府立医科大学永守記念最先端がん治療研究センター」とし、本学敷地内 都府立医科大学の京都三大学は、それぞ 深い倫理観、そしてチャレンジ精神を身に て平 成 25 年 度 卒 業 式を挙 行しました。 れ 100 年を超える歴史の中で個性ある つけていただき、この京都・北山の地か 本学教授のほか、来賓や保護者の方々に 学風を培い、京都、日本、そして世界で ら世界に飛躍する人材に育っていくこと 見守られながら、医学部・大学院合わせ 活躍する人材の育成を行ってきました。 を期待している。」と述べられました。 て 197 名の学生が卒業証書・学位記を に地上 4 階、地下 1 階の合計約 6500㎡の施設が建設され、体にやさしい 低侵襲の陽子線治療装置や最新鋭の放射線治療装置を設置し、府民のがん 医療に貢献するセンターとなる予定です。 International 京都三大学では、それぞれの教育理念 京都府立医科大学永守記念最先端がん治療研究センター 完成イメージ図 は「京都に住んで 60 年、会社(京セラ株 時代が求める新たな教養教育を構築して 式会社)が出来て 55 年、この京都という いくため、平成 26 年度から全国初となる 地、また京都の方々に有形無形の恩恵を 教養教育共同化をスタートしています。 ベ トナム・フエ医科薬科大学とハノイ医科大学との 学術交流 平成 26 年 10 月 11 日、ベトナム中部トゥア・ティエン・フエ省のフエ医科薬 科大学、平成 26 年 12 月 17 日、ベトナム北部に位置する首都ハノイにあるハ ノイ医科大学と、それぞれ国際的な学術交流に関する覚書を結びました。京都 府とフエ省は平成 25 年 11 月に教育分野などにおける協力強化を目指した協 寄附者であり来賓の稲盛名誉会長から を基本にしながら、共同することによって、 受けて今日まで一生懸命働いてきた。世 平 成 26 年 9 月 29 日には、教 養 教 育 のため人のために貢献することが、人間 共同化施設の竣工式が開催されました。 として最も大事なことだという人生観を 竣工式では、山田啓二京都府知事、多 持っているので、教養教育共同化施設の 賀久雄京都府議会議長、稲盛和夫京セ 話を聞いて一も二もなく賛同した。」と述 ラ株式会社名誉会長、荒巻禎一京都府 べられ、 「立派な倫理観に裏打ちされた、 公立大学法人理事長と、京都三大学の 人間性の豊かな人が育っていかなくては 学長によって定礎式、テープカットが行 ならない。」と教養教育共同化施設に対 われた後、竣工式典が開催されました。 する期待を寄せられました。 定を締結しており、今回の覚書はこれを具体化する第一歩となるものであり、 平成 26 年、本学附属図書館ホールに 授与されました。 ■卒業生・修了者内訳(合計:197 名) 医学科 看護学科 医学研究科博士課程 大学院 医学研究科修士課程 保健看護研究科修士課程 医学部 90名 78名 13名 6名 10名 卒業証書を授与する吉川敏一学長 本学吉川敏一学長が覚書に調印しました。今後、教職員や学生の交流、調査 研究の情報交換、共同研究の実施、セミナーやワークショップの開催などに取 り組むこととしています。 フ フエ医科薬科大学での調印式 ランス・モンペリエ大学との友好提携に向けて 平成 26 年 9 月、フランス南部のラングドック・ルシヨン州 にあり、ヨーロッパで最古の医学部を持つモンペリエ大学と京都府立 197 名の学生が晴れやかな笑顔で卒業 医科大学は、学術や人材の交流などに関する友好提携に向けての会 入学式 談を行いました。同州と京都府は、平成23年に友好宣言に署名して おり、800年を超える歴史を持つモンペリエ大学と本学において国際的な医学・医療の発 展に貢献する友好提携を進めることとしています。 本 モンペリエ大学との友好提携に向けての 会談に臨む吉川敏一学長 平成 26 年度入学式 竣工式典でのテープカットのようす 平成 26 年 4 月 3 日、本学附属図書館 ホールにて平 成 26 年 度 入 学 式を挙 行 し、医学部 192 名が入学しました。 学での留学プログラム修了者について ■入学生内訳(合計:192 名) 平成 26 年 8 月 1 日、韓国・ハリム大学医学部より来校した 2 名の 留学生が本学での 4 週間の留学プログラムを修了。8 月 8 日には英国・カー 医学部 ディフ大学より来校した 3 名の留学生が本学での 4 週間の留学プログラムを 修了、それぞれに修了式が行われました。ハリム大学と本学は、平成 22 年よ り学術交流包括協定を締結しており、学生・研究者の相互派遣、共同研究の 医学科 看護学科 107 名 85 名 英国・カーディフ大学留学生の 4 週間留学プログラム修了式 推進をしています。今回の留学生 2 名は脳神経外科学教室と移植・一般外 祝辞を述べられる山田啓二京都府知事 科教室にそれぞれ 2 週間ずつ配属されました。カーディフ大学の School of Optometry and Vision Sciencesと本学眼科学教室が共同研究を行ってき た経緯から平成 21 年より本学との学術交流協定を締結しており、今回の留学 生 3 名も眼科学教室に配属されました。留学生には吉川敏一学長から修了証 と医学振興会からの記念品が授与されました。 14 韓国・ハリム大学医学部留学生の 4 週間留学プログラム修了式 竣工した教養教育共同化施設 桜咲く青空の下 85 名の入学生を迎えた看護学科 15 温故知新 故知新 京都府立医科大学の礎となった格式高い青蓮院門跡 京 都 東 山 の 山 麓・ 粟 田 口 に あ る 天 台 宗 比 叡 山 延 暦 寺 の 三 門 跡 の 一 つ で、 古 くより皇室との関わりが深く格式の高 京都府立医科大学は、京都の人々の健 い青蓮院。 やかな暮らしを守る療養を行い、医療・ 医学を担う人材を養成する場として、京 都 の 人 々 か ら 寄 附 を 募 り、1872 年 にこの青蓮院内に開設された療病院とし 今 も 敷 地 内 に は「 療 病 院 址 」 と 記 さ て誕生しました。 れ た 碑 も 建 っ て い ま す。 入 口 に は 樹 齢 800 年 と 伝 え ら れ る 見 事 な 風 格 の 楠 が出迎え、院内の宸殿や革頂殿では庭園 分受付終了) 30 を眺めながらゆっくりと静かな時間を過 時 16 ごせます。ぜひ一度訪れてください。 時( 17 【 ご案内】 時〜 9 ◉ 拝観時間 5 分 上段左:宸殿。門跡寺院特有のもので、主要な法要はここで行う 上段右:境内にある療病院址 下段左:庭園から宸殿を仰ぐ吉川敏一学長 下段右:革頂殿で今後の抱負について語り合う戦略広報委員メンバー ※春・秋の夜間拝観開催中は要問合せ 3 ※団体割引料金有、夜間拝観料金は要問合せ 5 46 ◉拝観料金 個 人 大人 5 0 0 円 中 高 生 4 0 0 円 小学生 200 円 1 vol. ◉交通 京都市営バス ・ ・100 系統 「神宮道」下車 徒歩 分 地下鉄東西線「東山駅」下車 徒歩 Learning from the Past さらなる地域医療への貢献のために ご寄附のお願い 京都府立医科大学では、「世界トップレベルの医療を地域へ」をスローガンとして、医学教育・研究・診療のあらゆる面で活動 しています。こうした各分野での活動をさらに充実させ、今後も地域医療の貢献に積極的に取り組んでまいりますので、皆様 のご支援を賜りますようよろしくお願いします。 お問い合わせ先 〒 602-8566 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町 465 番地 京都府立医科大学 総務課総務担当 TEL:075-251-5210 発行日: 2015年1月31日 発行: 京都府公立大学法人 京都府立医科大学 〒602-8566 京都府京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465番地 URL:http://www.kpu-m.ac.jp/ 企画・編集:宇山恵子 (特任教授) /印刷:太洋堂
© Copyright 2024 Paperzz