ご あ い さ つ 北上市長 伊 藤 彬 北上市は、企業誘致をはじめ、若年者から企業経営者層までの重層的な人材育成、 産学官連携など、特色ある工業振興の取り組みによって東北有数の工業都市として発 展して参りました。 本計画は、上位計画である北上市総合計画の目標「ひと・技・資源を組み合わせ活 気あふれるまちづくり」を実現し、当市がこれから先も工業都市として持続的な発展を 可能とするため、これまでの計画の進捗状況や、北上市を取り巻く社会・経済状況、市 の工業の現状と課題等を踏まえ取りまとめたものです。 具体的なプロジェクトとして、多様な企業誘致施策の強化により企業と人が集まる地 域を目指すための「企業集積プロジェクト」、中小企業の自立強化に向けた「中小企業 活性化プロジェクト」、ものづくり産業の発展に必須である高度技術系人材等の育成に 取り組む「ものづくり人材育成プロジェクト」、産学官や農商工連携に取り組む「地域産 業連携プロジェクト」の4つを掲げております。 本市は、これらプロジェクトの着実な推進により本計画の副題である「東北一のもの づくり拠点」を目指して参りますが、本計画が市施策の指針としてだけでなく、市民を はじめ産業界や関係機関の工業振興に向けた共通認識のための指針となり、地域一体 となった取り組みが展開されましたら幸いであります。 最後に、本計画策定にあたり「北上市地域産業成長戦略に関する調査研究」をお願 いした岩手県立大学の齋藤俊明教授、意見や助言をいただいた北上市工業振興アドバ イザー各位をはじめ企業や関係団体、計画案を審議・検討いただきました工業振興審 議会の委員の皆さまに深く感謝の意を表します。今後とも北上市の工業振興施策に御 理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 北上市工業振 興 計 画 目 次 序 章 東北一のものづくり拠点を目指して 第1章 第2章 工業振興計画策定の趣旨 1 計画策定の背景・目的… ……………………………………… 5 2 計画の性格… ………………………………………………… 5 3 計画の期間… ………………………………………………… 5 北上市の工業の現状 1 北上市の概要…………………………………………………… 6 2 北上市の工業の現況と特性…………………………………… 8 3 日本をとりまく社会経済情勢… ……………………………… 13 4 北上市をとりまく環境変化… ………………………………… 18 これまでの取り組み 1 北上市の工業集積の経緯……………………………………… 20 2 これまでの工業振興施策……………………………………… 24 第3章 北上市の工業発展の特徴と課題 1 活かすべき特徴………………………………………………… 30 2 取り組むべき課題……………………………………………… 33 第4章 第5章 資料編 工業振興施策の視点 1 企業と人が集まる地域へ……………………………………… 36 2 企業が成長できる地域へ……………………………………… 36 3 ものづくりのためのひとづくり………………………………… 36 4 地域の潜在能力を引き出す…………………………………… 37 5 広域連携によるものづくりの支援… ………………………… 37 工業振興の指標と目標……………………………………………… 37 工業振興の実施プロジェクト 1 企業集積プロジェクト… ……………………………………… 39 2 中小企業活性化プロジェクト… ……………………………… 40 3 ものづくり人財育成プロジェクト……………………………… 43 4 地域産業連携プロジェクト… ………………………………… 45 ①前工業振興計画の中間評価………………………………………… 48 ② 「北上地域産業成長戦略に関する調査研究 (抜粋)……………… ―東北の産業拠点をめざして―」 51 ③地域企業の声… …………………………………………………… 56 ④本計画策定に係る審議会等開催状況……………………………… 58 ⑤本計画策定に係る委員会委員等名簿……………………………… 60 序章 工業振興計画 策定の趣旨 計画策定の背景・目的 1 北上市は、県内でもいち早く独自に工業団地の造成を行い、積極的 な企業誘致を進めるとともに、先進的な工業振興の取り組みによって 東北有数の工業集積都市として発展しています。市総合計画に沿って 平成15年に策定した工業振興計画に、基本方針と具体的なプロジェク トを定め、これに基づいて工業振興施策の推進を図ってきました。 平成15年度からスタートした計画は22年度に終了するため、その進 捗状況と社会・経済状況等を踏まえ、現状と課題を整理し、23年度か らの新北上市総合計画に基づき、これから先も工業都市として持続的 な発展を可能とするため、新計画を策定したものです。 2 計画の性格 この計画は、 「北上市総合計画」の目標の実現に向け、北上市にお ける総合的、長期的観点から工業振興施策を推進するための具体的な 方策を示すものです。 また、北上市の工業振興を推進するうえで、市が取り組むべき内容を 示し、市民を始め産業界や関係機関が共通の認識に立つことができる ようにするためのメッセージとしての役割も果たすものとします。 3 計画の期間 この計画の期間は、 「北上市総合計画」の目標年次である平成32年 度までを見据えた10年間とします。ただし、プロジェクトの内容につい ては経済情勢の変化や工業振興を取り巻く状況の変化に対応するため 計画期間を5年間とします。また、より大きな状況の変化があった場合 は、必要に応じ見直すこととします。 5 北上市工業振 興 計 画 第 1 北上市の工業の現状 章 1 北上市の概要 北上市は、地域の産業振興を目的として昭和28年に1町8カ村で組織された 「工場誘致促進協議会」がその母体となっています。この1町8カ村のうち、1 町6カ村が昭和29年4月1日に合併し北上市が誕生しました。その後、和賀町 及び江釣子村と平成3年に対等合併し、現在の北上市を形成しています。 平成3年の合併当初の人口は、83,000人余りでしたが、平成17年現在では 94,321人と1万人ほど人口が増加し、人口規模では岩手県で第5位の都市となっ ています。市総合計画においては、人口減少とともに高齢化の進行が予想され 東北一のものづくり拠点を目指して ていますが、将来像の実現に向け、子育て支援等の拡充や生活環境の充実、ま た、産業振興や雇用対策、地域資源の活用による北上市の魅力の発信、創造な ど、各分野における施策の積極的な取り組みにより、人口維持を図ることとし、 目標年次(平成32年)の人口目標を、95,000人としています。 ■北上市の人口と世帯数の推移 100,000 80,000 人口 82,902 87,969 28,247 91,501 94,321 40,000 31,023 33,623 24,608 20,000 10,000 20,000 0 30,000 世帯数 人口 60,000 40,000 50,000 世帯数 平成2年 平成7年 平成12年 平成17年 0 資料:国勢調査 北上市の年齢階層別人口について、人口10万人前後の県内他市と比較する と生産人口の比率が高くなっています。また、産業別の就業人口を比較すると、 工業を始めとする第2次産業が38.3%となっており、県内他市が30%前後である ことに比べて高く、大きな特徴となっています。 6 ■北上市と他市との比較(県南広域振興局管内) 項 目 北上市 人 口 花巻市 奥州市 一関市 94,321 構成比 105,028 構成比 130,171 構成比 125,818 構成比 老齢人口 19,274 20.4% 27,080 25.8% 34,945 26.8% 34,778 27.6% 生産人口 60,303 63.9% 63,802 60.7% 77,170 59.3% 73,826 58.7% 年少人口 14,384 15.3% 14,036 13.4% 17,998 13.8% 16,748 13.3% ※平成17年以降に合併した市は旧市町村の合算値 資料:H17国勢調査 ■北上市の産業別就業人口比率 第1次産業 平成7年 11.8% 平成12年 9.7% 平成17年 8.6% 第2次産業 第3次産業 42.0% 46.1% 40.9% 49.3% 38.3% 0% 52.3% 20% 40% 60% 80% 資料:H17国勢調査 ■産業別就業者数の割合(%) 第1次 80.9 第2次 第3次 62.7 56.7 52.3 53.2 51.6 100% 61.1 58.9 58.8 51.9 47.3 51.6 47.9 38.3 27.9 27.4 32.4 29.1 23.4 18.6 14.2 15.5 25.3 29.5 31.7 30.3 11.8 8.6 11.5 八幡平市 二戸市 久慈市 釜石市 陸前高田市 大船渡市 宮古市 遠野市 一関市 奥州市 北上市 花巻市 盛岡市 ※平成17年以降に合併した市は旧市町村の合算値 27.0 25.2 12.0 8.4 4.2 27.6 20.8 16.4 15.8 28.9 資料:H17国勢調査 7 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 2 北上市の工業の現況と特性 1 北上市の経済 北上市の経済は平成13年の「ITバブル」崩壊により、一時停滞状況に陥りま したが、日本全体が戦後最長の景気回復局面を迎えると同時に緩やかな成長を 続けてきました。しかし、平成20年の米国発金融危機に端を発した世界同時不 況により、大きな影響を受けました。 また純生産を見ると、国内や岩手県のそれより振れ幅が大きく、好・不況の 影響を受けやすい状況であると言えます。 ■北上市純生産 ■岩手県総生産、国内総生産 6 単位:億円 3,500 単位:兆円 5 500 県総生産 3,000 2,500 2,000 1,500 4 400 3 300 2 1 0 平2 平7 平12 0 平2 平17 200 県総生産 国総生産 1,000 500 600 平7 国総生産 東北一のものづくり拠点を目指して 4,000 100 平12 平17 0 2 北上市の雇用情勢 北上市の雇用情勢を見ると、有効求人倍率は、景気回復とともに平成18年度に は1.67倍となっていましたが、今般の景気後退により大きく低下しています。なお、 平成23年2月現在では概ね0.6倍前後の有効求人倍率で推移しています。 ■有効求人倍率 2.0 北上 岩手(季節調整値) 全国(季節調整値) 有効求人倍率 1.5 1.0 0.5 0.0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年度 資料:公共職業安定所資料により作成 8 3 北上市の産業構造 北上市の産業構造を見ると、第3次産業の比率が年々増加しています。平成 19年度の市町村民所得推計(純生産)における産業別構成比を見ると製造業が 30.36%となっており、市の産業の大きな柱となっていることが数値からも見て とれます。 ■北上市の産業構造 第一次産業 第二次産業 第三次産業 平成 2 年度 5.0% 46.8% 48.1% 平成7年度 3.0% 48.4% 48.6% 平成12年度 1.9% 45.6% 52.5% 平成17年度 1.8% 37.3% 60.9% 平成19年度 1.6% 35.4% 63.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 資料:岩手県市町村民所得推計(市町村内純生産) ■北上市の純生産(産業別) 農業 平成 2 年度 11,706 製造業 電気・ガス・水道業 公務 7,548 31,102 21,410 14,373 39,592 (16.34%) 金融・保険業 不動産業 運輸・通信業 政府サービス業 102,446(35.75%) 35,713 30,721 19,756 8,927 平成12年度 5,646 115,149(37.35%) 25,226 33,076 94,087(32.08%) 15,430 29,779 15,570 平成19年度 4,881 0 92,488(30.36%) 15,278 24,728 50,000 100,000 対家計民間非営利 サービス生産者 8,878 38,349 (13.38%) 14,537 23,408 14,636 平成17年度 5,120 単位:百万円 サービス業 89,546(36.96%) 23,614 建設業 平成7年度 8,371 卸売・小売業 47,323 (15.35%) 17,960 53,332 (18.18%) 18,899 23,329 23,394 7,501 23,498 25,646 150,000 200,000 70,535 (23.16%) 250,000 9,392 9,452 300,000 350,000 資料:岩手県市町村民所得推計(市町村内純生産) ※・サービス業は平成7年度からサービス業(産業)、サービス業(政府サービス生産者)、サービス業(対 家計民間非営利サービス生産者)に分割 ・金融保険不動産業は平成7年度から金融保険業と不動産業に分割 ・電気・ガス・水道業は平成7年度から電気・ガス・水道業(産業)と電気・ガス・水道業(政府サー ビス生産者)に分割 9 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 4 北上市の工業の現況と特性 北上市の事業所数は、平成3年の合併以降減少傾向にありますが、平成16年 を底として近年はほぼ横ばいとなっています。従業員数については「ITバブ ル」崩壊以降、減少傾向にありましたが、景気回復とともに増加に転じました。 しかし、平成20年の世界同時不況により減少してきています。 ■北上市の事業所数と従業員数の推移 500 20,000 事業所数 従業者数 400 15,000 10,000 従業者数 事業所数 東北一のものづくり拠点を目指して 300 200 5,000 100 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 0 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年 平成9年 平成8年 平成7年 平成6年 平成5年 平成4年 平成3年 平成2年 0 資料:工業統計 製造品出荷額等及び粗付加価値額※は、平成13年を底とし上昇傾向が続いて いましたが、世界同時不況により平成21年度の額は大きく減少しました。製造 品出荷額等については、平成20年統計において岩手県1位、東北でも7位に位 置しており、金ケ崎町との合計額では東北で3位に相当するなど、東北でも有 数のものづくり拠点となっています。 ※付加価値額(粗付加価値額)は下記算式により算出し、表章している。 ⑴ 付加価値額 付加価値額=製造品出荷額等+(製造品年末在庫額-製造品年初在庫額)+(半製品及び仕掛品年末 価額-半製品及び仕掛品年初価額)-(消費税を除く内国消費税額(*1)+推計消費税額(*2))-原材 料使用額等-減価償却額 ⑵ 粗付加価値額 粗付加価値額=製造品出荷額等-(消費税を除く内国消費税額+推計消費税額)-原材料使用額等 *1:消費税を除く内国消費税額=酒税、たばこ税、揮発油税及び地方道路税の納付税額又は納付すべき 税額の合計 *2:推計消費税額は平成13年調査より消費税額の調査を廃止したため推計したものであり、推計消費税 額の算出に当たっては、直接輸出分、原材料、設備投資を控除している。 10 ■東北の主な都市の製造品等出荷額 12,000 郡山市 北上市 いわき市 福島市 北上+金ケ崎 金ケ崎町 米沢市 単位:億円 10,000 いわき市 8,000 郡山市 福島市 米沢市 北上+金ケ崎 6,000 4,000 北上市 金ケ崎町 2,000 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年 平成9年 平成8年 平成7年 平成6年 平成5年 平成4年 平成3年 平成2年 0 資料:工業統計 ■東北の主な都市の粗付加価値額 6,000 郡山市 北上市 いわき市 福島市 北上+金ケ崎 金ケ崎町 米沢市 単位:億円 5,000 4,000 いわき市 3,000 郡山市 福島市 2,000 米沢市 北上+金ケ崎 北上市 1,000 金ケ崎町 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年 平成9年 平成8年 平成7年 平成6年 平成5年 平成4年 平成3年 平成2年 0 資料:工業統計 北上市の工業集積の特徴を見ると、事業所数からは様々な業種がバランス よく配置された産業構造となっていることが分かります。従業者数については、 電子部品・デバイス製造業が高い数値を示しています。 11 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 ■北上市の業種別事業所数・従業者数 45 40 事業所数 4,500 従業者数 4,000 3,000 25 2,500 20 2,000 15 1,500 10 1,000 5 500 その他の製造業 輸送用機械器具製造業 情報通信機械器具製造業 電子部品・デバイス・電子回路製造業 電気機械器具製造業 業務用機械器具製造業 生産用機械器具製造業 はん用機械器具製造業 金属製品製造業 非鉄金属製造業 鉄鋼業 窯業・土石製品製造業 なめし革・同製品・毛皮製造業 プラスチック製品製造業︵別掲を除く︶ ゴム製品製造業 石油製品・石炭製品製造業 化学工業 パルプ・紙・紙加工品製造業 印刷・同関連業 木材・木製品製造業︵家具を除く︶ 家具・装備品製造業 繊維工業 東北一のものづくり拠点を目指して 飲料・たばこ・飼料製造業 食料品製造業 0 従業者数 3,500 30 事業所数 35 0 資料:平成20年工業統計 製造品出荷額等については、電子部品・デバイス製造業が出荷額の約4割を 占め、産業の大きな柱になっています。10年前と比較すると輸送用機械、パル プ・紙、金属製品製造業の割合が増加し、鉄鋼業の割合が低下しています。現 在は、輸送用機械、パルプ・紙、金属製品、生産用機械がそれぞれ約1割前後 となっており、電子部品・デバイス製造業を加えるとその比率は約8割と高い構 成になっています。 ■北上市の業種別製造品出荷額等 食料品 1.6% 飲料・たばこ・飼料 1.2% 衣服 0.7% その他 2.1% 木材・木製品 1.3% 精密機械 2.6% 家具・装備品 0.3% 輸送用機械 8.3% 電気機械 39.8% その他 1.1% 食料品 1.6% 飲料・たばこ・飼料 0.2% 繊維 2.0% 電気機械 1.5% 木材・木製品 1.0% 情報通信機械 家具・装備品 0.0% 0.3% 印刷 2.1% 出版・印刷 1.2% 輸送用機械 パルプ・紙 化学 1.9% 13.6% 化学 1.5% 12.1% パルプ・紙 プラスチック プラスチック 9.3% 2.0% 1.2% ゴム 0.9% 金属 8.5% ゴム 0.3% 電子部品・デバイス・ 鉄鋼 8.8% なめし革・ 電子回路 窯業・土石 1.9% 毛皮 0.2% 38.1% 生産用機械 金属 5.5% 鉄鋼 1.7% 8.1% 窯業・土石 一般機械 3.2% 非鉄金属 1.0% 9.6% 平成10年 3,152億円 平成20年 5,024億円 はん用機械 0.3% 業務用機械 1.5% 資料:工業統計 ※平成11年、14年、20年に産業・品目分類改定が行われた。電気機械器具製造業は電気機械器具製造業、 情報通信機械器具製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業に分割、一般機械器具ははん用機械器 具製造業、生産用機械器具製造業、業務用機械器具製造業に分割、精密機械器具製造業は業務用機械器 具製造業とその他に分割、衣類・その他繊維製品製造業は繊維工業に統合した。 12 3 日本をとりまく社会経済情勢 1 日本の経済情勢 日本経済は「ITバブル」崩壊後、米国経済やアジア経済の回復を契機として、 戦後最長の景気回復に突入しました。しかし、この景気回復は外需が引っ張る 形の経済成長であり、家計部門の回復になかなか繋がらなかったことから、過 去の景気回復に比べると非常に印象が薄いものでした。現在は、平成20年の米 国発の金融危機に端を発した世界同時不況により、戦後最長の景気回復も終わ りを告げ、日本経済も極めて不安定な状況下に置かれています。 今回の不況においては、景気回復を支えていた外需がかつてないほど大幅 にかつ急速に停滞したことから、輸出型の製造業が集積する地域において企 業の撤退や非正規職員の雇い止めなどの社会問題を引き起こしました。この ような状況下、政府は平成22年6月に「新成長戦略〜「元気な日本」復活の シナリオ〜」を発表し、7つの戦略分野の推進により、新たな雇用と需要を 生み出す方針です。新たな戦略分野が日本経済を牽引していけるかどうか、 その動きを注視していく必要があります。 ■国別・地域別実質経済成長率の推移 〜世界規模の金融危機が発生し、2001年以降成長を持続してきた世界経済は急速に減速している〜 日本 アメリカ アジア ヨーロッパ 世界 (%) 12.0 10.0 8.0 7.8 6.0 5.5 4.0 3.4 2.0 1.0 0.0 -0.3 -2.0 -4.0 1.1 0.5 -1.6 -2.0 -2.6 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008(予測)2009(予測) (年) 資料:2009年中小企業白書より抜粋 13 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 2 製造業のグローバル化 インターネットを始めとする情報通信技術の飛躍的な進歩や高速交通体系の 整備により、地球的な規模での人・もの・情報等の交流が活発化しており、世 界中の人達が同じ土俵のうえで競争できる環境が整ってきています。製造業に おいても、輸送用機械・電気・鉄鋼・一般機械などの分野において、グローバル 企業が日本の本社を拠点として、世界各地で熾烈な競争を展開しています。 2000年前後から、高度な擦り合わせが必要な自動車や液晶テレビなど、いわ ゆる垂直統合型※のビジネスモデルを掲げる企業を中心に、工場の国内回帰が見 られるようになっていましたが、外国のグローバル企業が新興国の市場を取り 込みながら急速に成長するのに対し日本のグローバル企業の競争力は相対的に 東北一のものづくり拠点を目指して 低下していきました。現在は世界同時不況による企業の設備投資停滞がみられ るものの、今後急速に成長する新興国市場を取り込むため、日本のグローバル 企業は海外の需要地に近いところに工場を設置し、競争力を高める動きに出る 可能性があります。「2009年版ものづくり白書(経済産業省他編)」においては 企業のアジア展開の見通しとして「生産工程や生産品目による棲み分けは、80 年代後半の円高以降、海外展開を進めてきた日本の製造業の典型的な国際分業 パターンであったが、今後は販売市場や機能による棲み分け、あるいは、アジ アと日本国内の役割に大差ない同一レベルのものづくりが増えていくと考えら れる」と指摘しています。 このような厳しい国際競争下で取引先企業の生産拠点が海外移転してしまう と、国内の生産拠点を主な顧客としていた企業は取引量の減少等を招き、競争 力が低下する可能性があります。北上市の製造業においても、世界中で自社し かできないオンリーワンの技術を開発する等、世界的視点でビジネスモデルを 構築していく必要性が高まっています。 ※垂直統合型(⇔水平分業型) :製品の設計から製造、販売までを一貫して一社で行うこと。 14 ■世界の付加価値獲得戦略の推移 1970年代 垂直統合・自前主義、 同業種切磋琢磨で 世界を席巻 円高 日 本 1980年代後半 1990年代 黒字縮小を 目指して 内需拡大 バブル 崩壊 (1991) アジア通貨危機(1997) ⇒産業大再編(韓国) 競争 外資規制 安い人件費 大胆な投資減税 国有企業改革、 外資導入政策(中国) 垂直統合 モデルで 世界シェア喪失 欧 州 欧州委員会主導で 共同研究を支援 ヤングレポート(1985) ・立地競争力強化 (法人税減税等) ・オープン/クローズ 戦略でBRICs市場を 取り込み 競 争 プロイノベーションへ ・知的人材を世界から 呼び込む ・リスク投資増加 ・知財権・規格基準の 整備 日本の得意な 分野(製造装 置、部材) にま で進出 モジュール化モデルで 世界シェア奪還 オープン分業 型に戦略転換 世界シェア喪失 特定品への 集中投資 (EMS等) モジュール化 オープン化 ・プロパテント ・オープン環境下 での共同研究 現在 高度擦り合 わせによる 国内回帰 欧米のアジアの分業協力 デジタル 技術 米 国 産業空洞 化の危機 三つの過剰 (債務・設備・雇用) バブル アジア 2000年前後 ・IT中心のイノベー ション ・金融、インフラ中 心に域内統合深化 リスボン戦略(2000) 戦略分野への 集 中 投 資(ク リーンエネル ギー、次 世代 自 動 車 、ヘ ル スIT) 競争力のある グリーンエコ ノミー創出へ 戦略的な投資 計画 資料:経済産業省産業構造審議会産業競争力部会資料より抜粋 3 IT化・電子化 近年社会のIT化・電子化の進展は目まぐるしい状況にありますが、製造業 の生産現場でも、従来は手作業で行っていた設計や実験について、コンピュー ター上で3次元CADによる設計をしたり、シミュレーション(解析)を行ったり することで、生産の効率化を図る取り組みが進められています。 また、製品においても同様でIT・電子技術を活用した製品が次々と開発され ています。 「東北地域のものづくり産業を支える技術ロードマップの作成に関 する調査(東北経済産業局)」によると、例えば自動車分野においては「1台の 自動車に搭載されるマイクロプロセッサが1998年には30個程度であったものが、 2007年には70個程度に増加し、センサについても2003年の40個から2010年には 60個以上に増加、さらにはITS※の進展に伴うディスプレイ機器や車内LANが増 加すると予測される」と指摘しています。 北上地域の企業においても、IT・電子技術を活用した生産工程の構築や電子 化に対応した部品開発などを進める必要性が年々高まってきています。 ※ ITS:高度道路情報システム(Intelligent Transport Systems)の略。最先端の情報通信技術を用い て人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問 題の解決を目的に構築する新しい交通システムのこと。 15 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 4 環境意識の高まり 近年、地球温暖化などの地球規模での環境問題やゴミ問題等の身の回りの問 題に至るまで、生活環境、自然環境に対する意識が高まっています。 製造業においては、平成9年に「気候変動に関する国際連合枠組条約」に基 づく「京都議定書」が採択され、温室効果ガスの排出削減が義務付けられて以 降、工場の動力システムを天然ガスを用いたシステムに変更するなどの動きが 活発化しています。 さらに、平成18年に施行された欧州連合(EU)のRoHs指令(電子・電気機器へ の特定有害物質の含有を規制する指令)などを契機に、Pb(鉛)フリーはんだ 技術等の環境配慮型技術開発・製品開発が進んでいます。 東北一のものづくり拠点を目指して また、近年の資源価格の高騰により、地球資源に対する問題もクローズアッ プされるようになりました。最新の電子機器等は、レアアースやレアメタルなど がなければ生産できません。これらの問題を解決するために、廃棄物からの資 源回収や代替物質による生産を可能とする技術開発などが進んでいます。 一方自動車産業では、環境負荷の少ない自動車として、新しいシステムやエネ ルギーを利用するハイブリッド自動車や電気自動車などの技術開発が進められ ています。 このような状況を踏まえ、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進 や低炭素型社会に対応した技術開発・製品開発を進めるなど、環境への負荷の 少ない持続可能な循環型生産活動を意識していく必要があるほか、静脈型産業※ の育成が求められています。 ※ 静脈型産業:廃棄物回収・処理、リサイクルなどの産業。これに対して製品の生産、動脈型産業と呼 ぶことがある。 16 5 少子高齢化(人口減少)の進行 最新の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所 平成18年12月中位推 計)によると、我が国の総人口は、前回(平成14年1月)の推計から未婚化、晩 婚化等の影響が反映され、一層厳しい見通しとなっており、2005年の1億2,777 万人をピークに長期の人口減少過程に入り、2055年には8,993万人になることが 見込まれています。 さらには、少子化の進行や人口減少ばかりでなく、我が国の人口構造そのも のが大きく変化していく見通しが示されています。総人口に占める割合を見る と、年少人口(0〜14歳)は2009年の13.2%から低下を続け2055年には8.4%とな り、生産年齢人口(15〜64歳)も同じく64.1%から51.1%となる一方、老年人口 (65歳以上)は2009年の22.8%から上昇を続け、2055年には40.5%に達すると予 測されています。 少子高齢化と人口減少の進行に伴い、国内需要の構造変化や生産活動のより 一層の効率化などが予想され、これまでのものづくりが大きく変わる可能性が あります。 17 第 1 章 北上市の工業の現状 北上市工業振 興 計 画 4 北上市をとりまく環境変化 1 自動車産業の拠点化 北上市には、従来から自動車関連の企業が数社立地していましたが、平成5 年に金ケ崎町へ完成車組立工場が立地して以降、同工場への部品供給する企業 の立地が多く見られるようになりました。 近年、トヨタグループは、東北を中部、九州に次ぐ国内第3の拠点と位置付 け、岩手県及び宮城県を中心に関連企業の立地が相次いでいます。この動きに 対応するため、岩手県を始めとした東北6県は「とうほく自動車産業集積連携 会議」を設立し、トヨタグループを始めとした自動車関連企業の立地促進及び 東北一のものづくり拠点を目指して 地場企業の自動車関連産業への参入促進を目的とした活動を進めています。 北上市でも、隣接する完成車組立工場の増産に伴い、関連企業の立地が進ん でいるほか、生産機能の集積に加え研究開発機能の集積も見られるようになり、 岩手県の自動車関連産業の拠点地域となりつつあります。 ■東北地域の主な自動車関連企業 ◉秋田県 ◉北上市内 秋田渥美工業㈱ ㈱アイメタルテクノロジー ユニシアJKCステアリングシステム㈱ 岩手河西㈱ ㈱エレック北上 ◉山形県 ㈱庄内ヨロズ 秋田県 岩手県 カルソニックカンセイ岩手㈱ ㈱北上エレメック ㈱東海理化東北技術センター 北上精工㈱ マーレエンジンコンポーネンツジャパン㈱ 北上槌屋デカル㈱ ㈱ケー・アイ・ケー ◉宮城県 アイシン高丘東北㈱ 山形県 宮城県 東京製綱㈱北上工場 ㈱東北イノアック北上工場 セントラル自動車㈱ 東北日発㈱ 太平洋工業㈱東北工場 トヨタ紡織東北㈱ トヨタ自動車東北㈱ プライムアースEVエナジー㈱宮城工場 福島県 ㈱平野製作所 ㈱ユニシア厚和 ◉岩手県内 ◉福島県 アイシン東北㈱(金ケ崎町) 曙ブレーキ福島製造㈱ 関東自動車工業㈱岩手工場(金ケ崎町) ㈱デンソー東日本 ㈱日ピス岩手(一関市) 日産自動車㈱いわき工場 ㈱フタバ平泉(平泉町) 平成23年2月末現在 18 2 進出企業の視点の変化 工場立地動向調査(経済産業省実施)において、前北上市工業振興計画策定 時の平成14年と平成21年の「工場新設に係る最も重要な立地地点選定理由」を 比較すると、最も多くのウェイトを占めていた項目が、平成14年の「用地面積確 保の容易さ」から、平成21年では「本社・他の自社工場への近接性」へと変化 しており、北上市への近年の立地状況を鑑みても、安価な土地を求めるだけの 新規立地から、既存集積企業との関連による拠点化を促進する立地へと変化し ています。また、拠点化が進む一方で、自然災害等の事業リスクも注目されて おり、リスク分散を視野に入れた立地も見られるようになっています。 更には、 「2008年版ものづくり白書」では、国内回帰をしている企業の回帰理 由として「技術者・技能者等の確保の容易さ」も立地場所選定時の理由として 挙げられており、これまで以上に地域全体として、技術を有する人材を継続的 に供給するための体制づくりが必要とされています。 19 北上市工業振 興 計 画 第 2 これまでの取り組み 章 1 北上市の工業集積の経緯 1 工業集積の変遷 北上市の工業開発は、用地の有効活用と市民の働く場の確保、提供を目指し て、昭和28年に工業都市化を目的とした「工場誘致促進協議会」を結成し、翌 年、黒沢尻町を母体に1町6村が合併し北上市が誕生したことに始まります。 市制施行直後に「工場誘致条例」を制定し、昭和36年に岩手県内で初めての開 発公社である財団法人北上市開発公社を設立し、市が独自に工業団地の用地買 東北一のものづくり拠点を目指して 収、造成、企業誘致を開始しました。当時全国的に見ると臨海型の大規模工業 基地の開発が進められていましたが、北上市では、内陸型の工業団地「北上工 業団地」の造成を開始しました。 昭和39年に東北開発促進法による中規模内陸工業地区、昭和62年9月に北上 川流域テクノポリス、平成5年2月に北上中部地方拠点都市、平成9年には北 上川流域地域産業集積活性化、平成12年12月には高度技術産業集積の地域に指 定され、北上市はその中心的な都市として重要な役割を担うようになりました。 現在は、岩手県及び県南地域9市町と企業立地促進法に基づく「北上川流域 地域産業活性化協議会」を結成し、平成19年7月に国から同意を得た基本計画 に基づき、半導体関連産業、自動車関連産業、産業用機械関連産業、医薬・医 療機器関連産業の集積に取り組んでいます。 ■工業振興関係の地域の歴史 昭和 28 年工業振興を目的に黒沢尻町と8村による「工場誘致促進協 議会」結成 昭和 29 年 黒沢尻町を母体に1町6村の合併により北上市が誕生 昭和 29 年「工場誘致条例」制定 昭和 34 年 通商産業省の工場適地調査実施 昭和 36 年 財団法人北上市開発公社を設立 昭和 37 年 工業団地の用地買収、造成、企業誘致開始 昭和 39 年 東北開発促進法による中規模内陸工業地区に指定 昭和 40 年 北上工業団地の分譲開始 昭和 49 年 国道4号線北上バイパス開通 20 昭和 52 年 東北縦貫自動車道開通(一関―盛岡) 昭和 57 年 東北新幹線開通(大宮―盛岡) 昭和 62 年 北上川流域テクノポリス開発計画承認 昭和 63 年「北上工業クラブ」結成 平成元年 「物流ネットワークシティ構想」のモデル地区に指定 平成3年 北上市、和賀町、江釣子村が合併し新「北上市」誕生 北上コンピュータ・アカデミー開校 平成5年 「北上中部地方拠点都市地域」に指定 平成7年 北上インランド・デポ(内陸貿易港)設置促進協議会が設立 平成9年 東北横断自動車道秋田線開通 〃 〃 「地域産業集積活性化法」に基づき地域計画承認 産業業務団地「オフィスアルカディア・北上」分譲開始 平成 11 年北上市基盤技術支援センター・北上オフィスプラザがオー プン 平成 12 年新事業創出促進法における「高度技術産業集積地域」の地 域計画同意 〃 北上ネットワーク・フォーラム(K.N.F)結成 平成 13 年 岩手大学と相互友好協力協定調印 平成 15 年北上市の寄附により岩手大学工学部附属金型技術研究セン ターに新技術応用展開部門を設置 平成 16 年 北上高等職業訓練校移転新築 平成 18 年 北上市貸研究工場棟オープン 〃岩手大学大学院工学研究科金型・鋳造工学専攻の北上サテ ライト設置 平成 19 年黒沢尻工業高校に専攻科 (工業技術科機械コース・電気コース) 設置 〃北上川流域地域産業活性化協議会が企業立地促進法に基づ き作成した地域産業活性化計画(基本計画)について、国 から全国1号の同意を得る 〃経済産業省が「企業立地に頑張る市町村 20 選」に北上市を 選定 平成 21 年 いわてデジタルエンジニア育成センター開所 21 第 2 章 これまでの取り組み 北上市工業振 興 計 画 2 北上市の工業団地 北上市内には、工業団地が8つあり、なかでも北上工業団地は昭和30年代後 半から事業を開始した県内で最も歴史のある団地で、 「工業都市・北上」のシン ボルとなっています。 飯豊西部中小企業工業団地は、地場中小企業の集団化用地として造成され、 機械部品・めっき・金型関連業種の企業が立地しています。 また、他の工業団地として、和賀川東部工業団地、北上機械鉄工業団地、村 崎野西部工業団地、竪川目工業団地があるほか、流通団地として北上流通基地 があります。 比較的新しい工業団地としては、北上南部工業団地と後藤野工業団地があり、 東北一のものづくり拠点を目指して 企業の立地を進めています。 その他、産業業務機能の地方への分散等を進め、産業業務機能の全国的な適 正配置を推進することを目的に造成された北上産業業務団地(オフィスアルカ ディア・北上)があります。 ■北上市内の工業団地位置図 北上工業団地 村崎野西部 工業団地 北上流通基地 JR北上 線 北上機械鉄 工業団地 至釜石・大船渡 北上江釣子IC 北上西IC 北上JCT 北上駅 和賀川東部工業団地 至仙台 オフィスアルカディア 北上 東北 新 幹線 北上金ヶ崎IC 国道107号 北上南部 工業団地 東北横断自動車道秋田線 22 国道4号 至横手 JR東北本線 竪川目工業団地 至盛岡 東北縦貫自動車道 飯豊西部 中小企業工業団地 後藤野工業団地 いわて花巻空港 3 企業誘致の概況 当初は少なかった誘致企業も、市長によるトップセールスなどの積極的な企 業誘致活動や国道4号のバイパス化の進展等の交通網の整備が進むにつれ徐々 に増加してきました。その後昭和52年の東北縦貫自動車道の開通、昭和57年の 東北新幹線の開通により交通の要衝となり、住宅用地の整備、上下水道の整備 等、快適な住環境の提供、優秀な人材の提供等の相互作用により、企業誘致が 進みました。また、国・県の工業再配置政策、テクノポリス構想、産業集積活性 化政策等の施策による環境整備や誘致企業が関連企業を呼び寄せる効果も見ら れ、企業進出が年に10件を超す年もありました。バブル経済が崩壊し、国内の 生産拠点の集約・再配置が進む中でも、北上市においては誘致企業の撤退はほ とんど見られず、逆に北上市に生産拠点を集約したり、本社機能を移したりと いう動きが出てきました。 現在では、工業団地8箇所、流通基地1箇所、産業業務団地1箇所を中心に 252社が操業する県内一の工業集積地となりました。 ■北上市内の工業団地等一覧 (平成23年2月末) 団地面積 (ha) 分譲率 (%) 操 業 企業数 北上工業団地 127.0 100.0 28 工業専用 北上南部工業団地 197.7 62.2 55 工業専用 北上流通基地 94.1 83.9 65 準工業 飯豊西部中小企業工業団地 19.7 100.0 20 工業専用 村崎野西部工業団地 21.3 100.0 9 工業専用 北上機械鉄工業団地 6.9 100.0 19 和賀川東部工業団地 18.3 100.0 4 後藤野工業団地 90.4 98.0 13 工業専用 竪川目工業団地 27.4 100.0 13 工業 北上産業業務団地 36.9 34.7 11 準工業 その他 用 途 準工業 工業専用,工業, 近隣商業 16 計 639.7 84.1 253 23 第 2 章 これまでの取り組み 北上市工業振 興 計 画 2 これまでの工業振興施策 北上市は、昭和初期から積極的な企業誘致施策を展開してきました。その一 方でバブル崩壊後、日本に押し寄せる産業の空洞化現象を背景とし、平成10年 頃から技術の高度化とイノベーションの推進を展開してきました。市の工業振 興施策はこれら2つの取り組みに大きく区分することができます。前工業振興 計画においてはこれらに関連する6つの重点プロジェクトを設定し重点的に取 り組んできました。 市では、商工部内に工業振興課、企業立地課、基盤技術支援センターの工業 関係3課を設置し、これらの活動を行っているほか、岩手大学地域連携推進セ ンターに市職員を共同研究員として派遣し、産学官連携を積極的に推進してい 東北一のものづくり拠点を目指して ます。 商業観光課 北上市商工部 工業振興課 職員を派遣 岩手大学地域連携 推進センター 企業立地課 基盤技術支援センター 1 企業誘致の取り組み 誘致推進体制 北上市では、庁内すべてのセクションが同じ目線で企業誘致を考えられるよ うにするため、副市長を長とする全庁的な企業立地推進本部会議を設け、企業 誘致戦略を立案するとともに、立地企業の課題、市に求められているものなど について検討しています。 また、平成3年に当時北上市と人口が同規模の自治体にはあまり見られな かった企業誘致を専門に担当する企業立地課を商工部にいち早く設置し、企業 誘致や誘致企業に対するフォローを行ってきました。 こうした体制のもと、開発許可などの手続きや届け出、各種の許可事業に対 してはスピーディーな対応を心がけ、企業誘致に係るワンストップ体制を構築 しています。 雇用確保への取り組み 北上市が中心となり「北上雇用対策協議会」を組織し、雇用拡大の働きかけ や就職希望者との面談機会の提供により、できる限り地元採用していただける 24 よう企業に働きかけています。また、平成20年度には無料職業紹介所の資格を 取得し、Uターン・Iターン希望者や市の施策で育成した人材を地元企業に紹 介する仕組みを構築しています。 立地環境の整備 北上市では、工業団地の整備や道路の整備等を行い、企業がより良い生産活 動を行える環境整備を進めています。 また、中小企業の福利厚生事業に対する支援を始め、保育事業や教育環境 などの生活環境面の充実を図り、企業で働く人達を支援する施策を展開して います。 立地企業のフォローアップ 北上市では、誘致企業及び地場企業がより充実した企業活動ができる環境づ くりをするため、企業と市の懇談会を開催しています。また、企業の意見を聴き 要望や提言を市の施策に反映させ、より良い事業環境を作るため、商工部職員 による日常の企業訪問に加え、市長、副市長をはじめ市の幹部職員が市内約100 社を定期的に訪問しています。 公害防止体制 北上市では誘致した企業と「環境保全協定」を締結しています。この協定は、 市が進めている公害防止行政に積極的に協力してもらうことが基本となってお り、企業自身も公害防止対策を積極的に行うことが決められています。市では 環境審議会、環境保全専門委員、専任環境監視員をおき、環境管理計画を策定 して、公害を未然に防ぐことを目指しています。 2 技術の高度化とイノベーションの推進 北上市基盤技術支援センターの整備 地域産業集積活性化法に基づく「北上川流域基盤的技術産業集積活性化計 画」の主要プロジェクトの一つとして、地域企業のもつ基盤的技術の高度化を 支援するため、中小企業が単独で整備することが困難な各種精密測定機器や試 験機器を備えた開放型試験研究施設である北上市基盤技術支援センターを平成 25 第 2 章 これまでの取り組み 北上市工業振 興 計 画 11年に整備しました。 基盤技術支援センターでは、機器の開放に加え、産業高度化アドバイザーを 設置し企業の技術相談への対応、大学や他の試験研究機関へのコーディネート、 各種セミナーの開催、技術支援制度や各種研修情報提供などの支援を行ってい るほか、産学官民や異業種間の連携・交流事業の実施など地域企業向けの総合 的な支援を行っています。 北上オフィスプラザの整備 北上オフィスプラザは、地方拠点法に基づき地域振興整備公団(現・中小企 業基盤整備機構)、岩手県、北上市及び民間企業が出資して設立した第三セク ター、㈱北上オフィスプラザが管理する施設で、「北上地方拠点都市地域」業 東北一のものづくり拠点を目指して 務拠点として、同公団が整備した北上産業業務団地(オフィスアルカディア・北 上)の中心部に平成11年に整備されました。 北上オフィスプラザには、業務支援のため貸オフィスが用意されているほか 起業家育成のための、インキュベーター室やSOHOオフィスが設置されています。 また、㈱北上オフィスプラザは、周辺地域企業の業務活動や研究開発活動に対 する支援を行っています。 北上市技術交流センターの整備 通商産業省(現・経済産業省)の電源地域産業再配置促進費補助事業を導入 し、企業間の交流を通して企業の技術の向上と受発注体制の確立を図るととも に、市内の企業に働く勤労者の研修や学習活動を支援するために整備されてい ます。 北上高等職業訓練校の整備 平成16年に、従来からあった北上高等職業訓練校をオフィスアルカディア・ 北上内に移転新築しました。これにあわせ、従来からの建築系を主とした訓練 内容に加え、地域に集積する製造業のニーズに合わせた訓練も実施していくこ ととし、「21世紀型のものづくり人材育成の拠点施設」というコンセプトのもと 人材育成事業を実施しています。 26 北上コンピュータ・アカデミーの設置 国の「情報処理技術者等養成施設」の施策を受けて北上市では、企業集積 が進む中、産業の高度化、情報化に対応するため情報処理技術者の育成が必 要であることから、岩手県と連携し国に対し設置要望を行い、名称を北上コン ピュータ・アカデミーとして、平成3年4月の設置に至りました。 北上市貸研究工場棟の設置 北上市は、新製品や新技術を開発しようとする企業等を支援するため、平成 18年に貸研究工場棟を北上イノベーションパーク内に設置しました。市基盤技 術支援センター、岩手大学工学部附属金型技術研究センターなどの支援機関に 隣接する研究開発に最適な立地であり、企業や大学が入居し、製品開発や研究 活動を行っています。 岩手大学と北上市の相互友好協力協定 岩手大学と北上市は相互発展のため「産業振興に向けての支援」や「岩手大 学北上サテライトの設置」等を含んだ相互友好協力協定を締結しました。また、 平成14年度からは、産学官連携に関する各種取り組みについて理解を深めるた め、岩手大学地域連携推進センターに職員を派遣し「産学官連携システムの構 築に関する共同研究」を実施しています。 現在では、市基盤技術支援センター内に「岩手大学工学部附属金型技術研 究センター北上サテライト」が設置され市内企業の技術支援を行っているほか、 「岩手大学大学院工学研究科 金型・鋳造工学専攻」の授業が、市貸研究工場 棟で行われており、多くの研究者や学生が訪れています。 いわてデジタルエンジニア育成センターの設置 北上市では、今後のものづくりにおいて必要不可欠である3次元データを取 り扱い、設計から生産革新まで実行できる高度な人材の育成を目的として、平 成18年度から「3次元ものづくり革新事業」を実施しています。北上職業訓練 協会とともに、自動車産業等で使用頻度の高いハイエンド3次元CADである CATIAおよびSolid Worksの講習を地域企業の従業員や求職者向けに行うこと ができる地域講師の育成や、3次元CADを活用した起業を目指す人材の育成を しています。 平成21年度には市と岩手県が共同で北上オフィスプラザ内に「いわてデジタ 27 第 2 章 これまでの取り組み 北上市工業振 興 計 画 ルエンジニア育成センター」を設置し、岩手県の人材育成拠点として、求職者、 企業在職者、高校生等を対象に3次元ものづくり人材の育成を行っています。 産業界との取り組み 北上市には、地域産業界と大学及び行政等との連携を深め、新技術及び新事 業の創出を図り、地域産業界の自立的・創造的活性化を目指すなどを目的とし て、北上市を中心とする企業等により北上ネットワーク・フォーラムが設立さ れ活動を行っています。その他市内には、産業界で組織する北上工業クラブや 北上商工会議所、団地内企業で組織する北上金属工業協同組合等の組織があり、 これらの組織とも連携を図りながら活動を行っています。 また、全県的な組織である、岩手ネットワークシステム(INS)やINSいわて 東北一のものづくり拠点を目指して 金型研究会とも連携した活動を進めています。 工業振興アドバイザーの設置 北上市の工業振興に関する諸施策の展開に当たり、中央等で活躍している市 出身者や市にゆかりのある方から工業振興や企業誘致に関する助言及び情報の 提供をしていただくため、アドバイザーを設置しています。 3 前工業振興計画における重点的取組の成果 前工業振興計画(平成15年から平成22年)においては、6つの重点プロジェ クトを中心に取り組みを進めてきました。平成20年度末までの成果については 次のとおりとなっています。 企業誘致強化プロジェクト 企業誘致の優遇制度の創設を行ったほか、企業誘致の環境整備を進めるなど して、28件の企業誘致を行いました。誘致案件の中には、近年の東北地方には 例を見ないほどの大規模投資案件である半導体新工場誘致にも成功しました。 イノベーション誘発プロジェクト 地域企業のイノベーション誘発に向け、産学官連携を推進する環境を整備し、 企業における技術開発を活発化させる取り組みを積極的に行いました。 また、産学官連携が、製造現場の人材育成にもつながっており、市内企業に おける技術の高度化にも貢献しています。 28 基盤技術支援センター機能強化プロジェクト 平成11年4月に開設された北上市基盤技術支援センターは、地域企業の基盤 的技術の高度化等を支援し、地域産業の振興を図っています。センターでは地 域中小企業において導入の難しい高額な検査機器を整備し、活用していただく ことで、地域企業の技術・開発力の向上に寄与しています。 さらに、地域企業の経営・技術や各種制度、産学連携等の相談窓口の役割を 担っているほか、同業種・異業種連携組織である北上ネットワーク・フォーラム の事務局を担い、イノベーションや新事業の創出につなげる活動を行いました。 一方、より事業化に繋がるような活動が必要なほか、地域企業の受発注の増 加に繋がるように更なる取り組みが必要であるという課題も見えてきています。 自動車関連産業参入支援プロジェクト 北上市自動車関連産業集積促進補助金を創設し、自動車関連企業の設備投資 等を促したほか、自動車産業に求められる人材育成などを実施しました。その 結果、既存企業が新たに自動車産業へ参入するため設備投資を行ったほか、自 動車関連企業の研究開発部門の設置が進むという成果があらわれています。 モノづくり人材育成プロジェクト 北上市ではこれからも工業都市として発展していくため、未来のものづくり を担う青少年、求職者、若手から経営者層までの企業在職者など幅広い層に対 応した重層的なものづくり人材の育成に積極的に取り組みました。 IT・環境対応プロジェクト 情報化推進については、新規ホームページ「腕きき産地きたかみ」を開設し たほか、ファクスやメールマガジン等を活用し、企業に対する積極的な情報提 供を行ってきました。 環境分野においては、環境保全協定を締結し、環境対策に効果を上げた一方、 計画期間中に市内企業における土壌汚染等が発生し、環境への負荷が表面化す る事態もありました。 また、市内でゼロエミッションを構築する目標がありましたが、企業の活動ま かせになっていたことは否めませんでした。 29 北上市工業振 興 計 画 第 3 北上市の工業発展の特徴と課題 章 1 活かすべき特徴 1 多種多様な業種の集積 北上市を含めた県南地域は、東北でも有数の自動車及び半導体関連産業が一 体的に集積しています。特にも隣接する金ケ崎町にある「岩手中部工業団地」、 奥州市にある「江刺中核工業団地」とは、距離的にも近接しており、企業同士 の繋がりも密接です。 第1章の北上市の工業の現状で述べたとおり、北上市は製造品出荷額として 東北一のものづくり拠点を目指して は、電子・デバイス製造業の比率が高いものの、食品加工から物流まで幅広く 多種多様な業種が集積しており、いわゆる企業城下町的な集積ではなくどのよ うな業種でも立地可能なことが特徴となっています。 また、これまでは生産部門の立地が主でしたが、企業のリスク分散や人材 確保等のニーズを背景に研究開発部門の集積も見られるようになってきました。 今後はこれらの特徴を活かした工業振興を進めていく必要があります。 2 基盤技術関連産業の集積 北上地域おける基盤技術関連産業の集積は、平成4年以降のいわゆるバブ ル崩壊後、後継者不足や価格低迷などが原因で基盤技術関連産業の中心で あった東京圏が衰退していく一方で、誘致企業の進出とともに、基盤技術関連 産業の必要性が高まっていったことがきっかけとなりました。基盤技術関連産 業のなかでも、北上市には半導体や電子機器用の精密プレス金型やモールド金 型、半導体封止金型などに強みを持つ企業が集積しています。 基盤技術はサポーティングインダストリーとも呼ばれ、自動車産業や半導体 産業、医療機械産業などすべての分野に求められる製造業の根幹となる技術 です。 30 3 企業間ネットワークの充実 地域産業界と大学及び行政等との連携を深め、新技術及び新事業の創出を図 り、地域産業界の自立的・創造的活性化を目指すことなどを目的として、平成 12年3月、北上市を中心とする企業等により北上ネットワーク・フォーラムが設 立されました。その他にも市内には、北上工業クラブ、北上金属工業協同組合、 北上機械鉄工業協同組合等の企業組織があるほか、岩手大学が中心となり組織 している岩手ネットワークシステムにも多くの企業が参加しています。 また、近年の自動車産業や半導体関連産業の集積を背景に設立された「いわ て自動車産業集積促進協議会」や「いわて半導体関連産業集積促進協議会」、 ものづくり人材育成のために設立された「北上川流域ものづくりネットワーク」 など様々な組織があり、これら組織が連携しながら、地域活性化のために活動 しています。 さらに、企業間で共同発注、共同受注などの産産連携も徐々に生まれてきて います。 4 岩手大学等の高等教育機関との連携 オフィスアルカディア・北上内には、「岩手大学工学部附属金型技術研究セ ンター北上サテライト」及び「岩手大学大学院工学研究科 金型・鋳造工学専 攻」が設置され、市内企業の技術的助言や共同研究による技術・製品開発及び 企業の人材育成等を行っています。また、特定の課題については、東北大学と も連携を図っています。 企業の課題解決においては、大学等の専門的知識が必要なこともあることか ら、これまでの取り組みを踏まえ、更なる連携を促進することが必要となってき ています。北上市の近隣には、 「岩手大学工学部附属鋳造技術研究センター」 (奥 州市)、 「岩手大学工学部附属複合デバイス技術研究センター」 (花巻市)、 「一関 工業高等専門学校」などもあることから、これらの機関との連携を視野に入れ る必要もあります。 31 第 3 章 北上市の工業発展の特徴と課題 北上市工業振 興 計 画 5 高速交通ネットワークの拠点都市 北上市は、古くから交通の要衝として栄え、現在、市の中央を国道4号とJR 東北本線が南北に走り、国道107号が交差し、JR北上線が分岐しています。東 北縦貫自動車道と東北新幹線も市内を縦走しており、さらに、東北横断自動車 道秋田線が市内で東北縦貫自動車道に接続するほか、北上市の北約15kmには 「いわて花巻空港」があり、北東北における交通の要衝として「高速交通ネット ワークの拠点都市」となっています。 ■北上市の位置と交通ネットワーク ▲ 岩木山 八戸 十和田湖 青森県 青い森鉄道 車 道 二戸 十和田南 能代 IGR いわて銀河鉄道 能代南IC いわて花巻空港 q 新花巻 釜石 東和IC 横手 線 田 北上西IC 北上金ケ崎IC 水沢 北上 水沢江刺 大船渡 湯沢 ▲ 栗駒山 線 動 車車 東 北 新 幹 線 自 天童 登米東和IC 北 本 北 貫 東根IC 山形新幹線 月山IC 東 東 縦 鶴岡 気仙沼 一ノ関 宮城県 新庄 盛 三 陸南 鉄リ ア 道ス 線 陸前高田 平泉 酒田みなとIC 湯殿山IC 遠野 岸 秋 道 車 動 自 断 横 北 東 酒田 湯沢IC 海 ▲早池峰山 花巻 北上江釣子IC 大曲 北上JCT 岩城IC 宮古 盛岡 秋 田 新 幹線 角館 三 陸 鉄 道 北 リ ア 岩泉 ス 線 中 男鹿半島 田沢湖線 田沢湖 岩手県 好摩 ▲ 岩手山 男鹿 秋田 いわて沼宮内 ▲ 八幡平 秋田県 ▲ 鳥海山 久慈 陸 東北一のものづくり拠点を目指して 目時 大館 八 戸自 動 弘前 牡鹿半島 松島 道道 山形上山IC 仙台 6 行政や市民による支援体制の充実 北上市には、市が設置する「基盤技術支援センター」、 「北上高等職業訓練校」 のほか、岩手県が設置している「工業技術集積支援センター」、 「農業研究セン 32 ター」、 「生物工学研究所」に加え、 「岩手県立黒沢尻工業高校」、 「いわてデジタ ルエンジニア育成センター」、 「北上コンピュータ・アカデミー」などの産業支援機関、 教育機関、研究機関、人材育成機関が有り、企業に対する支援体制が充実していま す。 これからの工業振興においても、これらの機関が持つ強みを生かし、企業ニーズ に応じた技術支援や人材育成の取り組みを進めて行く必要があります。 また、市民の工業に対する関心は高く、地域活動において工場見学等が多く行わ れてます。一方、企業においてもCSR活動を積極的に展開するなど地域に深く溶け 込んでおり、市民全体の理解を得ながら円滑な企業活動が図られています。 長く企業誘致に取り組むなか、市民には進出企業を温かく迎える気質が浸透し ているほか、市では企業訪問等によって企業ニーズの把握とその対応に努めるなど、 企業に対するフォローアップ日本一を目指した活動を継続しています。 2 取り組むべき課題 1 企業誘致の推進 近年の工場立地状況を見ると、 平成21年の工場立地動向調査において、全国の工場 立地件数は前年から約半減し、 平成20年から2年連続で減少しています。また、東北 地方でも、同件数は前年から約半減と、 平成19年から3年連続で減少しており、近年の 立地状況は、全国・東北とも、 平成元年以降の同調査で最も低い水準となっています。 また、同調査の東北の立地件数シェアは平成元年以降に最も高かった平成9年の 18%から徐々に低下し、 平成19年以降は10%以下の低水準となっており、東北地方へ の企業誘致が全国的に難しくなっているように見受けられます。 北上市においては、地域内に拠点のある自動車産業や半導体産業に関連する企業 など、多種多様な産業が立地しています。これまで同様、 今後も、 これら立地企業の投 資を促し、当地域での継続的な活動を支援する必要があります。 更に、製 造 業の 企 業 誘 致をこれまで以 上に推 進するために、M A D E I N KITAKAMI(JAPAN)ブランドによる高付加価値を生む産業分野や、国内市場規模 が拡大する可能性がある分野など、 これから高い成長が見込まれる産業分野において、 誘致活動を展開する必要があります。 具体的な方策としては、近年、企業側から求められている初期投資軽減策など、企 業誘致に対する新たな施策が求められています。 33 第 3 章 北上市の工業発展の特徴と課題 北上市工業振 興 計 画 2 自立創造型企業の育成 近年の量産加工部門を中心とした企業の海外シフト、 自働化設備の導入による加工 技術の平準化を踏まえると、地場中小企業が従来どおり大企業等の生産工程を受け 持つ、単工程の下請け加工に依存し続けるのは困難な状況となってきています。これか らは、戦略的に取引関係を多面化(メッシュ化) したり、設計・開発能力の向上、新技術 の導入、既存製品の高機能・高付加価値化、顧客の求める生産形態(短納期や少量 多品種など)への対応、新たな製品開発戦略の提供、 アフターサービスの充実、新分 野への進出など、 自ら需要を引き寄せる取り組みが必要です。 市の施策としては、基盤技術支援センターが中心となり、従来からの技術、研究開発 に係る支援に加え、消費者や川下企業など顧客のニーズを分析することで、 より事業化 に繋がるような支援活動を展開するほか、地域企業の受発注の増加に繋がるような取 東北一のものづくり拠点を目指して り組みをグローバルな視点も含めて展開していく必要があります。 また、 中小企業においては、経営は経営者の資質に因る部分が大きいことから、経 営者層に対する育成支援も重要となってきます。 ■取引関係のメッシュ構造化 川下(最終製品) 川中(部品) 川上(原材料・部材) 3 ものづくり人材の育成 資料:「2005年版ものづくり白書」より抜粋 企業訪問等を通じて、地域の中小企業では、 自社と同様の業務に携わってきた人材 を中途で採用したいというニーズが比較的高いと見受けられます。一方、大手企業にお いては、新卒者の採用ニーズが比較的高い状況です。大手企業が新卒者に求める資 質としては、工業に関する知識に加え、 コミュニケーションや基礎学力といった社会人と しての基礎力が比較的重要視されています。 人材育成においては、 これらの企業ニーズを踏まえた取り組みを進めるほか、北上コ ンピュータ・アカデミー、 いわてデジタルエンジニア育成センター等の人材育成機関がそ れぞれの強みを生かして取り組みを進める必要があります。 4 地域資源との連携 北上市はこれまで、製造業が地域経済を牽引してきましたが、県内でも有数の農業 地域という面も有しており、里芋、 アスパラガスなどの特産物も豊富に有しています。ま 34 た、観光資源にも恵まれており、農・商・工が一体となったまちという側面も持っています。 これまでは、あまり着目されてこなかった農・商・工が連携した地域資源活用型の事 業も近年見られるようになってきており、新たなビジネスとして注目されています。 例えば、農業分野においては、近年の養蚕業の衰退に伴い、生産量が落ちていた桑 について、 その機能性に着目し、桑園を再生し商品開発に繋げる取り組みが進められて います。 また、観光面でも、市内の工場と観光資源を組み合わせた「産業観光ルートの開 発」を行い新たなビジネスを生み出していく取り組みが進められています。 市総合計画においては、 「一次産業としての農業から、付加価値の高い農産品の加 工販売、流通の拡大など総合的な産業としての農業へ積極的な展開を図り、競争力の ある産地づくり」が求められていますが、 このような地域資源活用型の取り組みを進め るためには、農業分野のみの取り組みだけでは限界があり、農・商・工が一体となり、お 互いの強みやノウハウを活用できる横断的な連携体制が重要となってきます。 北上市においても、農・商・工のお互いの資源と潜在能力を繋ぎ合わせ、域外所得を 獲得できるような新たなビジネスや、地域課題の解決に繋がるようなビジネスを創出し ていく支援と組織横断的な支援体制整備が必要となっています。 5 勤労者の良好な就労環境の確保 勤労者の良好な就労環境とは、雇用の拡大が図られ、働く場が確保されるとともに、 安全・安心な就労環境や勤労意欲が高まる福利厚生の充実などが促進されることに より、豊かさを実感できる環境であることです。 勤労者の良好な就労環境を確保するためには、企業立地の促進や生産性の向上・ 製造品の高付加価値化などによる事業所の収益性を高めることなどにより、雇用規模 の拡大を図らなければなりません。また、製造部門の他、研究・開発部門など多様な職 種が整うことも大切です。 当地域には、多数の中小企業が集積し、 そこに勤務する勤労者も多数います。大き な事業所では勤労者の福利厚生に力を入れているところが多いようですが、 中小の事 業所では難しい現状でありますので、 中小事業所の福利厚生支援を行うことが必要と なっています。 また、労働力人口の減少が予想されることを踏まえ、女性の就業を促進するため仕 事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を促進する視点に立ち、家事、 子育てなど家 庭生活と仕事が両立できる職場環境づくりを進める必要があります。 35 北上市工業振 興 計 画 第 4 工業振興施策の視点 章 北上市総合計画の目標である「ひと・技・資源を組み合わせ活気あふれるまちづく り」と前章で述べた北上市の工業の活かすべき特徴と取り組むべき課題を踏まえ、次 の視点に立って工業振興施策に取り組んでいきます。 1 企業と人が集まる地域へ 工業団地の整備拡張、物流拠点機能の充実等と併せて誘致にあたっての補助 金等支援制度の整備を行うとともに、これまでに引き続いて積極的な企業訪問や トップセールスを通じて企業誘致活動を展開し、企業集積の一層の進化を図りま 東北一のものづくり拠点を目指して す。また、受発注機会の増加に向け、企業間等ネットワークの充実を図ります。 あわせて道路や公園など生活環境の整備を図り、活気と潤いのある街を目指 します。 2 企業が成長できる地域へ 企業が、将来にわたって北上を拠点としながらグローバルな競争に勝ち抜い ていくために、徹底したフォローアップと支援を行います。経営力や技術力の 向上、販路拡大に向けた支援を強力に展開し、自立創造型企業への転換を促 進します。また、企業の技術・開発力を育成支援するため、基盤技術支援セン ター機能の強化や大学等研究機関との連携を推進します。 一方、ゼロエミッションによる廃棄物削減や低炭素型社会に呼応した技術開 発など、企業の環境に配慮した生産活動の取り組みも支援します。 3 ものづくりのためのひとづくり 企業が進出する地域を選ぶ基準は、どんな企業においても、必要とする人材 の有無が重要となっているため、大学等教育機関と連携した高度技術人材の育 成や起業家育成、職業訓練機関との連携による企業在職者のスキルアップ、技 能の継承に取り組むことにより、多様なものづくり人材の安定した育成を目指し ます。 また、将来のものづくりを担う小中高校生を対象にした、キャリア教育やアン トレプレナー教育、ものづくりへの啓発を目的とした事業を展開します。 36 4 地域の潜在能力を引き出す 農林、観光、サービス業など他の産業には、まだ発掘されていない工業振興 へのヒントがあると考えられ、これらの他産業との連携強化により、産業観光や 農商工連携事業など地域資源を活用した新たなビジネスチャンスの創出に取り 組むとともに、それぞれの地域資源の付加価値の向上を図ります。 また、これまで取り組んできた工業系の大学や研究機関だけでなく、農業系 など他分野の研究機関等との連携を図ることによって、新たな切り口での研究 開発を推進します。 5 広域連携によるものづくりの支援 岩手大学やINS、県工業技術集積支援センター、いわてデジタルエンジニア育 成センターなど、北上川流域の産業支援機関等の持つ支援機能の強みを活用し ながら、市の事業と合わせてものづくり産業の振興に取り組みます。 また、類似する産業構造をもつ近隣市町とは、人材育成事業等を始めとして 他の分野においても連携を模索しながら、共に、地域一体として東北のものづ くり産業拠点を目指します。 ■工業振興の指標と目標 北上市の工業の目指すべき姿を従業員数、事業所数、製造品出荷額等、粗付 加価値額を指標として5年後と10年後の目標値を次のとおり設定します。 平成20年 平成21年 平成27年 平成32年 従 業 員 数 (平成21年比) 14,923人 13,454人 14,000人 (+3.7%) 14,500人 (+7.4%) 事 業 所 数 (平成21年比) 279 264 274 (+3.8%) 284 (+7.6%) 製造品出荷額等 (平成21年比) 5,024億円 3,645億円 8,000億円 (+122%) 1兆1,000億円 (+206%) 粗付加価値額 (平成21年比) 1,591億円 1,159億円 2,400億円 (+107%) 3,300億円 (+185%) 37 北上市工業振 興 計 画 第 5 工業振興の実施プロジェクト 章 北上市総合計画の基本方針の実現に向け、前章で示した工業振興施策の視点を 踏まえて「企業集積」 「中小企業活性化」 「ものづくり人材育成」 「地域産業連携」の4 つのプロジェクトを設定しました。 プロジェクトの計画期間は5年間とし、 プロジェクト毎 に成果指標を設定しています。 市では県、北上商工会議所、北上工業クラブ、北上ネットワーク・フォーラムなどの関 係団体、岩手大学などの教育機関や支援機関との連携のほか、他市町村等との広域 連携も図りながらプロジェクトを着実に推進します。 実施にあたっては、個々の企業ニーズや経済環境を的確に把握しながら企業誘致 や企業活動への支援を強力に行うことにより、東北一のものづくり拠点を目指すことと 東北一のものづくり拠点を目指して します。 企業集積 プロジェクト 企業誘致のための環境整備 多種多様な企業誘致の推進 より効果的な支援制度の整備 技術力向上への支援 中小企業活性化 プロジェクト 経営力(販路拡大・提案力・QCD)向上への支援 新分野への取り組み支援 従業員のスキルアップ 従業員の福利厚生の充実 ものづくり人財育成 プロジェクト 高度技術系人財の育成 青少年へのものづくり教育・キャリア教育 求職者及び若年者に対する支援体制の充実 技能功労者の表彰 産学官連携の推進とイノベーション誘発 地域産業連携 プロジェクト 農商工連携の創出 地域産業の魅力発信 金ケ崎町と連携した取り組みの推進 環境に配慮した生産活動の推進 38 (平成23〜27年度) 1. 企業集積プロジェクト 企業誘致のための環境整備 企業集積プロジェクト 多種多様な企業誘致の推進 より効果的な支援制度の整備 企業誘致のための環境整備 事 業 名 概 要 後藤野工業団地の拡張や竪川目工業団地の整備、 NEW 工業団地等整備事業 既存工業団地における企業ニーズに応じたロット 整備などにより、更なる企業誘致を推進します。 北上地域の物流拠点としての機能を高め、産業振 きたかみ新貨物駅設置促進事業 興とその集積を図るため、きたかみ新貨物駅設置 促進協議会と一体となって、新貨物駅の設置を促 進します。 多種多様な 企業誘致の推進 高い成長性のある医療、食品、環境等の多様な産業 の誘致のため、市内立地企業の交流会や首都圏等で 企業誘致推進事業 企業誘致説明会を開催し情報収集を図ります。加え て、東芝の半導体新工場の早期着工を促進するとと もに、自動車関連産業の誘致を進めます。 より効果的な支援制度の整備 企業立地促進補助金、設備投資奨励補助金などの 集積産業活性化事業 支援制度により自動車関連産業や半導体関連産業 などの既存産業の更なる集積を支援します。 医療、食品、環境等の今後成長が見込まれる産業 NEW 成果指標 成長産業立地支援事業 の誘致を推進するため、現行の支援制度に加え、 企業立地により効果的な支援制度を整備します。 ①誘致企業の数(20社) 39 第 5 章 工業振興の実施プロジェクト(平成23〜27年度) 北上市工業振 興 計 画 2. 中小企業活性化プロジェクト 技術力向上への支援 経営力(販路拡大・提案力・QCD)向上への支援 中小企業活性化プロジェクト 新分野への取り組み支援 従業員のスキルアップ 従業員の福利厚生の充実 東北一のものづくり拠点を目指して 技術力向上への支援 事 業 名 概 要 岩手大学工学部附属金型技術研究センターの持つ 金型技術に関する知見を生かした基礎研究や企業 基盤技術高度化推進事業 との共同研究の取り組み、技術相談への対応、人 材育成事業の実施等について委託を行い、市内企 業の技術力、開発力の強化を図ります。 工業発展の著しいアジア地域の状況を把握するこ アジア経済調査事業 とで地場企業の技術力の高度化や企業誘致施策等 の参考とするなど、国内では得ることのできない 新たな視点での工業振興につなげていきます。 基盤技術支援センターの試験測定機器の維持・充 実を図ることにより、企業のOB人材を活用しなが 基盤技術支援センター機能強化事業 ら地域中小企業等における品質管理技術の向上を 支援し、より付加価値の高い製品受注の実現につ なげます。 北上イノベーションパーク整備促進 事業 企業の技術相談等に対し充実したワンストップ対 応ができるよう、さらに他の産業支援機関や大学 等のサテライト機能の整備、大学の研究室等の誘 致に取り組んでいきます。 主に中小企業の技術、経営等に関する課題に対応 するため、中小企業の経営指導等の経験豊かなア 産業高度化アドバイザー設置事業 ドバイザーを設置し、企業間連携、共同受注、地 域内受発注や国県等の補助金等外部資金の導入な どにあたってアドバイスを行います。 40 技術力向上への支援 事 業 名 NEW 大学等との連携推進事業 概 要 高度技術を有する大学等と協力協定を結び、地域企 業の技術力向上に向けた取り組みを実施します。 企業の新分野への参入や、技術、経営、販路開拓 新事業創出プロデューサー NEW 設置事業 等に関する課題への対応を強化するため、それぞ れの分野に熟知したプロデューサーを複数設置 し、チームを組んでアドバイスを行い成功に導き ます。 経営力(販路拡大・提案力・QCD)向上への支援 国内外のセットメーカーと取引できる事業者及び NEW 中小企業における販路開拓 推進事業 グループ化することで部品製造・組立まで可能な 事業者の調査を実施し、その結果を基に新規取引 を支援します。 主に中小企業の技術、経営等に関する課題に対応 産業高度化アドバイザー設置事業 【再掲】 するため、中小企業の経営指導等の経験豊かなア ドバイザーを設置し、企業間連携、共同受注、地 域内受発注や国県等の補助金等外部資金の導入な どにあたってアドバイスを行います。 企業の新分野への参入や、技術、経営、販路開拓 新事業創出プロデューサー NEW 設置事業【再掲】 等に関する課題への対応を強化するため、それぞ れの分野に熟知したプロデューサーを複数設置 し、チームを組んでアドバイスを行い成功に導き ます。 北上市中小企業融資要綱に基づく融資に付される 中小企業融資保証料補給事業 信用保証について、それに係る保証料を市が負担 することにより、中小企業の事業資金のより円滑 な確保を図ります。 北上市中小企業融資要綱に基づく融資に係る貸付 中小企業融資利子補給事業 利息に対して、その一部を市が負担することによ り、中小企業の事業資金のより円滑な確保を図り ます。 新分野への取り組み支援 中小企業者又は中小企業で組織する共同受注グ ループを対象に、新事業創出に向けた試作、研究 NEW 新製品開発支援事業 開発に関する必要経費、商談会への出展経費、共 同受注グループの活動などの取り組みに対する支 援を行います。 太陽光発電、省エネルギー、次世代自動車、医療 NEW 中小企業における新事業創出 事業 など近い将来に高い競争力を持つことが期待でき る分野に参入可能性のある事業者の調査と、その 結果を踏まえた支援を行います。 41 第 5 章 工業振興の実施プロジェクト(平成23〜27年度) 従業員のスキルアップ 北上市工業振 興 計 画 事 業 名 概 要 北上職業訓練協会会員企業及び市内企業に対し て、これまでの訓練事業に加えて企業ニーズや時 企業在職者向け訓練事業 代のニーズに応じた新分野の訓練事業等を実施 し、地域企業の従業員が持つ技術のスキルアップ を図ります。 工作機械、測定機器の操作講習や、新技術や工程 管理などのセミナーを技術をもった企業OB人材 製造技術高度化推進事業 等を活用しながら、初級者や中級者など習熟度別 の実施等によって、より効果的な人材育成を推進 東北一のものづくり拠点を目指して します。 北上雇用対策協議会において、中小企業が独自で 従業員スキルアップ支援セミナー 行うことが難しいoff-JTによる従業員研修を実施 し、従業員のモチベーションの向上と職場への定 着等を図ります。 従業員の福利厚生の充実 北上地区勤労者福祉サービスセンター 支援事業 勤労者生活安定資金貸付事業 勤労者の福利厚生事業を行う北上地区勤労者福祉 サービスセンターを支援し、労働環境や職場環境 の整備を推進します。 金融機関に資金を預託し、勤労者に低利な生活安 定資金の貸付を行います。 ワークライフバランス促進の視点に立ち、多様な ニーズに対応した保育サービスの充実を図るほ 企業における子育て支援推進事業 か、企業に対し、育児休業制度や子どもの看護の ための休暇制度、事業所内保育所の設置等につい て普及啓発に努めます。 成果指標 ①産業高度化支援による受発注成立件数(20件) ②産業高度化支援による新規事業等創出件数(10件) ③大学・大学院との連携による新技術等創出件数(2件) ④地域企業の自動車、半導体、医療分野への新規参入件数(5件) ⑤ものづくり人材育成事業の受講者数(850人) ⑥勤労者福祉サービスセンター会員数(2,700人) 42 3. ものづくり人財育成プロジェクト 高度技術系人財の育成 ものづくり人財育成 プロジェクト 青少年へのものづくり教育・キャリア教育 求職者及び若年者に対する支援体制の充実 技能功労者の表彰 高度技術系人財の育成 事 業 名 概 要 地域企業の技術力の高度化と、自動車関連開発部 門等の高度技術人材を必要とする企業の誘致を推 進するため、高度な3次元CAD等の技術を有す 3次元ものづくり革新事業 る地域指導者や起業家の育成を図るほか、3次元 CADの活用等について企業の支援を行います。ま た、設計から生産革新までを担える高度な技術人 材の育成を目指すいわてデジタルエンジニア育成 センターの活動を支援します。 岩手大学大学院工学研究科 金型・鋳造工学専攻活用事業 金型・鋳造工学専攻を活用した高度な金型技術に 関する人材育成事業の実施により市内金型関連産 業の技術力の強化を目指します。 全国的に不足している組込み系ソフトウェア開発技 組込み系ソフトウェア NEW 技術者育成事業 術者の育成・輩出について、関係団体と方向性や手 法を研究することにより、当地域への組込み系ソフ トウェア開発企業の誘致と地元企業の技術高度化を 図ります。 北上コンピュータ・アカデミー 支援事業 北上コンピュータ・アカデミーに対する支援を行 い、ものづくりに関わるIT人材の安定した育成を 行います。 43 第 5 章 工業振興の実施プロジェクト(平成23〜27年度) 青少年へのものづくり教育・ キャリア教育 北上市工業振 興 計 画 事 業 名 概 要 小中学生に対し、勤労観、職業観を育て、働くこと キャリア教育推進事業 への関心、意欲の向上を図るためトレーディング ゲーム導入を促進するとともに職場体験学習の支 援などによりキャリア教育を推進します。 高校生向け就職促進支援事業 高校生に対し、職業・就職に対する意識づけ、就職 活動のスキルアップにむけた事業を実施します。 北上市及び金ケ崎町の将来を担う小学生に対し、ア 子ども創造塾事業 ントレプレナー教育やものづくり意識向上に繋がる 東北一のものづくり拠点を目指して 事業(工場見学やロボットコンテストなど)を実施し ます。 求職者及び若年者に対する支援体制の充実 求職者向け訓練事業 求職者向けの職業訓練事業を実施することにより、 求職者のスキルアップと就職率の向上を図ります。 北上雇用対策協議会の新卒者の就職や離転職者の 就職対策支援事業 再就職、各種相談への対応などの活動を支援するこ とにより、当地域の雇用対策を強力に推進します。 市が人材育成を行った人及びUターンまたはIターン 北上市無料職業紹介事業 したい人を対象に市内及び隣接市町事業所の職業 紹介を行い、市内への居住を促進します。 主に若年者を対象に、就労相談や就職活動に必要 ジョブカフェさくら運営事業 な情報の提供、就労に関する適正診断等を実施し、 相談者に対し悩みの軽減や就職活動に必要なスキ ルの習得を図ります。 技能功労者の 表彰 優れた技能をもって市の産業の発展に功労のあっ 技能功労者表彰事業 成果指標 た者や高い技術を有する若年者を表彰し、社会に 技能を尊重する気風の浸透と技能者の地位向上を 図ります。 ①高度技術系人材育成事業等受講者数(340人) ②小中学生向けものづくり人材育成事業受講者数(1,250人) ③職業訓練施設等での資格取得者述べ人数(550人) ④技能検定合格者の延べ人数(180人) ⑤高校生とコンピュータ・アカデミーの就職率(100%) ⑥北上市無料職業紹介マッチング数(20件) 44 4. 地域産業連携プロジェクト 産学官連携の推進とイノベーション誘発 農商工連携の創出 地域産業連携プロジェクト 地域産業の魅力発信 金ケ崎町と連携した取り組みの推進 環境に配慮した生産活動の推進 産学官連携の推進とイノベーション誘発 事 業 名 概 要 岩手大学地域連携センターに北上市職員を共同研 岩手大学共同研究員派遣事業 究員として派遣し、大学の持つ知的財産と市内企 業・団体等の持つ研究課題の橋渡しを通じて産学 官連携の実践的研究を行います。 K.N.F、INSなどの産学官連携組織と連携しなが 産学官連携推進事業 ら、各種勉強会等の開催によって、産学官連携の機 会を提供するとともに、研究開発事業や企業間連 携の円滑な推進を図ります。 市内企業と大学、公設試験研究機関の間で実施さ 産学共同研究支援事業 れる共同研究について市補助金を交付し、立ち上 げ時期の共同研究を支援します。 農商工連携の 創出 農家等農商工連携に係る事業相談・情報提供等の 農商工連携支援事業 側面支援を実施することにより新たな事業を創出 し、雇用の創出や農産物の付加価値向上、農業所 得の向上を図ります。 地域産業の魅力発信 ものづくり観光推進事業 企業の地域貢献・まちづくり 活動支援事業 農業、観光分野との連携を強め、新たな産業観光 ルートの開発を目指します。 企業の地域貢献活動及びまちづくり活動について、 実施にかかるコーディネート等の支援を行うととも に、地域貢献活動について活動を広く市民に周知す るため企業褒賞を実施します。 地域企業の製造している製品を市民に周知すると NEW 地域工業製品PR事業 ともに、市、市民が地域企業の製品に理解を深め愛 用を促進すること等により、企業の振興、イメージ アップに寄与することを目的とします。 45 第 5 章 工業振興の実施プロジェクト(平成23〜27年度) 金ケ崎町と連携した取り組みの推進 北上市工業振 興 計 画 事 業 名 子ども創造塾事業 【再掲】 ものづくり観光推進事業 【再掲】 東北一のものづくり拠点を目指して 農商工連携支援事業 【再掲】 概 要 北上市及び金ケ崎町の将来を担う小学生に対し、 アントレプレナー教育やものづくり意識向上に繋 がる事業(工場見学やロボットコンテストなど) を実施します。 農業、観光分野との連携を強め、新たな産業観光 ルートの開発を目指します。 農家等農商工連携に係る事業相談・情報提供等の 側面支援を実施することにより新たな事業を創出 し、雇用の創出や農産物の付加価値向上、農業所 得の向上を図ります。 地域企業の現状とともに、先進技術と伝統技能の 北上・金ケ崎工業匠祭の実施 紹介等により、市民の工業に対する理解の促進 と、青少年の職業選択の視野を広げることを目的 に開催します。 環境に配慮した生産活動の推進 北上金属工業協同組合会員企業のゼロエミッショ ンの取り組みをモデル事業として支援し、他の工 環境負荷低減生産活動普及事業 棄物削減とコストダウンの実現に向けたマテリア ルフローコスト会計(低炭素型環境管理会計)等 の普及を図ります。 企業、地域、行政のコミュニケーションを図ると 北上市快適環境づくり推進事業 成果指標 ともに、協働でより良い地域環境づくりを推進し ます。 ①産学連携による新技術・新事業創出件数(5件) ②農商工連携創出件数(3件) 46 業団地へ普及可能性について調査します。また廃 北上市工業振興計画 資 料 編 東北一のものづくり拠点を目指して 北上市工業振 興 計 画 ①前工業振興計画の中間評価 ※総合評価 A:目標以上に達成 B:計画通り概ね達成 C:達成できなかった プロジェクト名称 総合 評価の理由 評価 従前より、小さな情報を糸口として他に先んじて積極的な企業誘致活 動を行い、多くの誘致案件を成功させた。平成20年には経済産業省の 「企業立地にがんばる市町村20選」に選ばれている。 立地した企業に対しては随時個別のきめ細かなフォローのほか、立地 企業誘致強化プロ ジェクト 企業懇談会を実施し企業間交流の促進を図ること等により、昨今の不況 A 下においても、撤退企業は他市町村と比較すると少ない状況である。 東北一のものづくり拠点を目指して 【主な成果】 ・H15〜H20の誘致件数 28件 ・H15〜H20の既立地企業新増設件数(補助金ベース) 29社分 ・東北最大規模の東芝新工場誘致 地域企業のイノベーション誘発に向け、産学官連携を推進する環境を 整備し、企業における技術開発を活発化させる取り組みを積極的に行っ た。 また、産学官連携が、製造現場の人材育成にもつながっており、市内 企業における技術の高度化にも貢献している。 イノベーション誘 発プロジェクト A 【主な成果】 ・岩手大学工学部附属金型技術研究センターの設置 ・H15〜H20の産学共同研究件数 38件 ・岩手大学大学院金型鋳造工学専攻の設置 ・上記大学院を卒業した市内企業の従業員数 3名 ・北上市貸研究工場棟の設置 ・北上市貸研究工場棟への入居企業数 4社 48 プロジェクト名称 総合 評価の理由 評価 平成11年4月に開設された基盤技術支援センターは、地域企業の基 盤的技術の高度化等を支援し、地域産業の振興を図っている。センター では地域中小企業において導入の難しい高額な検査機器を整備し、活用 していただくことで、地域企業の技術・開発力の向上に寄与している。 さらに、地域企業の経営・技術や各種制度、産学連携等の相談窓口の 役割を担っているほか、同業種・異業種連携組織である北上ネットワー ク・フォーラム(K.N.F)の事務局を担い、イノベーションや新事業 の創出につなげる活動を行った。 基盤技術支援セン ター機能強化プロ A ジェクト 【主な成果】 ・H20年度の試験機器利用件数 1,120回 ・H11とH20の試験機器利用件数対比 2.53倍 ・北上ネットワーク・フォーラム内の共同受注グループによる自動車 部品の受注 【主な課題】 ・産業高度化アドバイス事業については、より事業化に繋がるような 活動が必要。 ・地域企業の受発注の増加に繋がるように更なる取り組みが必要。 各種事業の展開により、企業誘致に加え地元企業の高度化が進むこと で、当市は県内の自動車関連産業集積の中核地域として成長した。 【主な成果】 自動車関連産業参 入支援プロジェク ト A ・自動車関連産業集積促進補助金交付対象企業数 16社 ・3次元CAD 「CATIA」 へ対応し、市内企業3社が自動車部品と金 型を受注 ・㈱アイメタルテクノロジーが技術開発センター設置 ・河西テクノ㈱が開発センターを設置 ・関東自動車工業㈱が開発センター東北を設置 資 料 編 49 北上市工業振 興 計 画 プロジェクト名称 総合 評価の理由 評価 当市ではこれからも工業都市として発展していくため、未来のものづ くりを担う青少年、求職者、若手から経営者層までの企業在職者など幅 広い層に対応した重層的なものづくり人材の育成に積極的に取り組ん モノづくり人材育 成プロジェクト だ。 A 【主な成果】 ・小中学生を対象とした人材育成事業受講者数 1,135人 ・北上高等職業訓練校の移転新築 ・H19〜H20の3次元機械設計技術者の育成人数 117人 ・H15〜H20の技能功労者表彰者数 28人 情報化推進については、光回線の整備によるIT環境の高度化を実現し 東北一のものづくり拠点を目指して たほか、ホームページ「腕きき産地きたかみ」の開設や、メルマガ等を 活用により企業に対する積極的な情報提供を行った。 環境保全及び循環型社会の形成については、市内企業と環境保全協定 IT・環境対応プロ ジェクト を積極的に締結するほか、市内企業の環境に配慮した生産活動推進に向 A け積極的に取り組んできた。 【主な成果】 ・ホームページ「腕きき産地きたかみ」開設に伴う情報提供の一元化 ・環境保全協定締結企業数(H20末現在) 55社 ・北上市快適環境づくり懇話会の設置 50 ②「北上地域産業成長戦略に関する調査研究 ―東北の産業拠点をめざして―」(抜粋) 「北上地域産業成長戦略に関する調査研究」は、本計画策定の参考とするため、自動車関連産業が 集積するなど産業構造が類似する隣接の金ケ崎町との連携も視野に入れた市の産業施策の基本方向と 戦略のあり方について、平成20年度に岩手県立大学総合政策学部の齋藤俊明教授に委託したものです。 その一部を抜粋し、以下に掲載します。なお同教授は、金ケ崎町から、同町の23年度からの次期総合 計画に係る「金ケ崎町まちづくり将来ビジョンに係る調査研究」を受託しています。 第Ⅰ部 北上市の地域力(略) 第Ⅱ部 北上市の地域産業成長戦略の構想 1〜3(略) 4 北上市の地域産業成長戦略 (略) ⑴新たな戦略の目標 ○東北のものづくりの拠点の形成 北上市においては、ものづくり産業のさらなる発展に向けた環境が整いつつある。今後は、 自動車、半導体などの基盤技術に強みをもつ製造業のさらなる高度化と、医薬品、環境・エ ネルギー(太陽光発電やLED)など新たな成長産業の集積促進によって、東北のものづくり の拠点としての地位を築いていく。 ○暮らしやすい自然豊かな交流拠点の形成 自然豊かな生活とにぎわいを生みだす産業振興、魅力的な自然資源や観光資源を活用する ことによる農業、観光産業の充実をはかることによって、人と自然がふれあう活気とにぎわ いに満ちあふれた暮らしやすい自然豊かな交流拠点を形成する。 ○産業振興と連動した研究開発・人材育成の拠点の形成 岩手県には、岩手大学、岩手県立大学、岩手医科大学、北里大学などの特色ある大学・研 究機関が集積している。今後は、これらとの連携のもとに、地域企業の技術の高度化や新産 業の創出につながる研究開発機能を強化するとともに、ものづくりにとどまらず、地域産業 全体を支える人材育成機能を整備し、産業振興と連動した人材育成の拠点を形成する。 資 料 編 ⑵3つの戦略 ■戦略Ⅰ ものづくり産業の振興 □戦略Ⅰ-1 地域企業の競争力強化(本文略) 51 □戦略Ⅰ-2 地域企業の技術基盤の強化と新産業の創出(本文略) 北上市工業振 興 計 画 □戦略Ⅰ-3 新たな成長産業の戦略的集積(本文略) ■戦略Ⅱ 自然豊かな生活とにぎわいを生みだす産業振興 □戦略Ⅱ-1 暮らしに豊かさを感じる商業・サービス産業の振興(本文略) □戦略Ⅱ-2 生活関連産業としての農林業の振興(本文略) □戦略Ⅱ-3 地域資源を活かした観光産業の振興(本文略) ■戦略Ⅲ 人材育成と就業支援の推進 □戦略Ⅲ-1 ものづくり産業を担う人材の育成と確保(本文略) □戦略Ⅲ-2 農林業を担う人材の育成と確保(本文略) □戦略Ⅲ-3 雇用の場の確保と就業支援(本文略) 東北一のものづくり拠点を目指して 第Ⅲ部 北上市と金ケ崎町の連携戦略 (略) 1 目標と将来像 ⑴目標 ○東北のものづくりの拠点の形成 ○暮らしやすい自然豊かな交流拠点の形成 ○産業振興と連動した人材育成・研究開発の拠点の形成 ⑵将来像 自然に恵まれた豊かな生活を創造する「東北の産業拠点」 連携戦略の目標 東北の ものづくりの拠点の 形成 暮らしやすい 自然豊かな 交流拠点の形成 産業振興と連動した 人材育成・研究開発の 拠点の形成 北上市と金ケ崎町の連携戦略 52 戦略Ⅰ 戦略Ⅱ 戦略Ⅲ 東北の ものづくりの拠点の 形成 暮らしやすい 自然豊かな 交流拠点の形成 2 連携戦略 産業振興と連動した 人材育成・研究開発の 拠点の形成 北上市と金ケ崎町の連携戦略 戦略Ⅰ 戦略Ⅱ 戦略Ⅲ ものづくり産業の振興 自然豊かな生活と にぎわいを生みだす産業振興 人材育成と 就業支援の推進 戦略Ⅰ−1 地域企業の競争力強化 戦略Ⅱ−1 暮らしに豊かさを感じる商業・サービス産業の振興 戦略Ⅲ−1 ものづくり産業を担う多様な人材の育成と確保 戦略Ⅰ−2 地域企業の技術基盤の高度化と新産業の創出 戦略Ⅰ−3 新たな成長産業の戦略的集積 戦略Ⅱ−2 生活関連産業としての農林業の振興 戦略Ⅲ−2 地域産業を担う人材の育成と確保 戦略Ⅱ−3 地域資源を活かした観光産業の振興 戦略Ⅲ−3 雇用の場の確保と就業支援 ■戦略Ⅰ ものづくり産業の振興 □戦略Ⅰ-1 地域企業の競争力強化 ○企業内・企業間・異業種間・地域間のネットワークの形成と産学官の連携の拡大、強化 の支援 ○地域企業の技術力、販売力など競争力の向上支援 ○付加価値を高めるデザインなどの知的サービス産業の振興と人材の育成 □戦略Ⅰ-2 地域企業の技術基盤の高度化と新産業の創出 ○自動車、半導体関連企業の技術基盤の強化を支援する ○既存産業の発展を基盤とした先端・成長産業の育成 ○大学や研究機関との連携のもとに、地域企業の技術の高度化や新産業の創出につながる 研究開発の支援 □戦略Ⅰ-3 新たな成長産業の戦略的集積 ○成長性と波及効果の高い産業分野、医薬品、環境・エネルギー(太陽光発電やLED)な どの重点的誘致 ○成長産業の戦略的誘致に向けて、技術支援、人材育成において大学や研究機関との連携 の強化 ○研究開発型企業の集積の促 ■戦略Ⅱ 自然豊かな生活とにぎわいを生みだす産業振興 資 料 編 □戦略Ⅱ-1 暮らしに豊かさを感じる商業・サービス産業の振興 ○商業地の立地環境に応じた地域交流拠点としての再生と活性化 ○住民ニーズの個性化、多様化に対応する生活関連サービス業の支援 ○生活関連サービス業への女性雇用の促進 53 □戦略Ⅱ-2 生活関連産業としての農林業の振興 北上市工業振 興 計 画 ○農産物の高付加価値化による地域ブランドの形成の支援 ○農畜産業の6次産業化の推進 ○給食業者、飲食店、ホテル等との連携による地産地消の促進 □戦略Ⅱ-3 地域資源を活かした観光産業の振興 ○ものづくり産業を組み込んだ産業観光のルート化 ○農林業資源を活用した体験型観光と安全・安心で美味しい食材を組み合わせたグリーン ツーリズムの推進 ○観光行動の広域化に対応した広域観光ネットワークの構築 ■戦略Ⅲ 人材育成と就業支援の推進 東北一のものづくり拠点を目指して □戦略Ⅲ-1 ものづくり産業を担う多様な人材の育成と確保 ○ものづくり人材育成の推進 ○新産業の創出につながる人材育成のための連携事業の推進 ○地域企業での就労体験を組み込んだ若年求職者に対する実践的人材育成の推進 □戦略Ⅲ-2 地域産業を担う人材の育成と確保 ○基盤産業としての農林業の担い手の育成と確保 ○6次産業化をふまえた人材育成の推進 ○農林業を支える多様な担い手の確保と支援 □戦略Ⅲ-3 雇用の場の確保と就業支援 ○若年者の就業意識の啓発 ○若年者、女性の正規雇用化の促進 ○求職者・就労者の職業能力訓練、職業能力開発の推進 54 自然に恵まれた豊かな生活を創造する「東北の産業拠点」 連携戦略の目標 東北の ものづくりの拠点の 形成 暮らしやすい 自然豊かな 交流拠点の形成 産業振興と連動した 人材育成・研究開発の 拠点の形成 北上市と金ケ崎町の連携戦略 戦略Ⅰ 戦略Ⅱ 戦略Ⅲ ものづくり産業の振興 自然豊かな生活と にぎわいを生みだす産業振興 人材育成と 就業支援の推進 戦略Ⅱ−1 暮らしに豊かさを感じる商業・サービス産業の振興 戦略Ⅱ−2 生活関連産業としての農林業の振興 戦略Ⅱ−3 地域資源を活かした観光産業の振興 戦略Ⅲ−1 ものづくり産業を担う多様な人材の育成と確保 戦略Ⅲ−2 地域産業を担う人材の育成と確保 戦略Ⅲ−3 雇用の場の確保と就業支援 戦略Ⅰ−1 地域企業の競争力強化 戦略Ⅰ−2 地域企業の技術基盤の高度化と新産業の創出 戦略Ⅰ−3 新たな成長産業の戦略的集積 資 料 編 55 北上市工業振 興 計 画 ③地域企業の声 〈金融・融資関係〉 ・各種補助制度や融資制度の条件が厳しい。 ・現金がないが借入は避けたい。 ・融資の場合、支払猶予の期間が長く、利子の支払いが無いものであってほしい。 ・できれば銀行等の融資ではなく、国のテコ入れによる事業所の経営支援を望む。 (融資には返済が 伴うが、先が見えない状況では、返済計画も立たない) ・銀行から融資の勧誘があるが、据え置き期間が無いなど使いづらい。 〈交流・情報交換関係〉 東北一のものづくり拠点を目指して ・同業者間の交流促進のため、貸研究工場棟を増設してもいいのではないか。 〈交通関係〉 ・新幹線「はやて」を増便して欲しい。 ・花巻-名古屋便を復活して欲しい。 ・自動車集積を図るためには貨物駅の新設が大きなポイントになる。 〈公共工事関係〉 ・冬場凍結する路線にロードヒーティングを設置して欲しい。 ・道路を拡幅して欲しい。 ・小中学校の耐震化工事を推進して欲しい。 〈技術開発関係〉 ・地元企業との連携は進んできたが全体を取りまとめる人がいない。 ・北上で操業しているメリットは人材供給にあるので、人材確保の支援をして欲しい。 ・3次元CADを使える設計の人間がほしい。 ・大学のメカトロニクス関係の先生に企業訪問して欲しい。 ・岩手大学の研究者からアドバイスをもらえないか。 ・資格(有機溶剤取扱い、危険物、ボイラー、クレーン、ホイスト等)の試験会場、教育を受ける場 等が花巻、盛岡方面なので北上にも欲しい。 ・めっき技能士(技能に係る国家検定の資格)の試験を宮城県や秋田県では受験できるのに、岩手県 内では受験できないので何とかならないか。 56 〈基盤技術支援センター関連〉 ・電子顕微鏡の利用者が多く予約が取りにくい。 ・非接触3次元測定機器があると助かる。 ・1ランク上の機器を整備して欲しい。 ・板金関係の勉強会を開いて欲しい。 ・中堅社員向けの生産管理、品質管理、ISO等の研修を実施して欲しい。 〈市の事業の関係〉 ・自動車関連だけでなく、広く仕事が取れるような企業誘致をしていただきたい。 ・子どものコミュニケーション能力の強化が必要だ。 ・中学生の職場体験などを受け入れたい。 ・市役所で市内企業の受賞や製品の展示場所を設けてほしい。 ・市が地元企業を全国にPRし、地元企業の受注を拡大することによって、外貨獲得、雇用、税収を増 やすことになる。 〈その他〉 ・「市民の生活ガイド」の英語版を作成して欲しい。 ・不法投棄対策を強化して欲しい。 ・中心市街地の活性化のため、あまり郊外大型店の出店を認めないでほしい。 資 料 編 57 北上市工業振 興 計 画 ④本計画策定に係る審議会等開催状況 区 分 会議等名称 平成21年8月27日 第1回 策定委員会 内 容 ・現工業振興計画の進捗状況について ・次期工業振興計画策定に係る指針、日程、作業部会設置 について 平成21年9月18日 第1回 作業部会 平成21年9月28日 平成21年度 ・現計画の中間評価について ・次期計画の策定指針について ・次期計画の策定にあたっての提言聴取 アドバイザー会議 平成21年10月2日 第2回 策定委員会 東北一のものづくり拠点を目指して 平成21年10月5日 第1回 審議会 平成21年10月9日 第2回 ・現計画の中間評価について ・今後の策定作業について ・次期計画策定についての諮問 ・現計画の中間評価について ・次期計画策定の進め方整理及びスケジュールについて 作業部会 平成21年10月30日 第3回 作業部会 ・次期計画骨子(策定の視点、実施プロジェクト)につい て ・関係団体からの意見聴取について 平成21年12月1日 第4回 ・次期計画骨子素案について 作業部会 平成21年12月14日 第3回 ・次期計画骨子の審議会提出案について 策定委員会 平成21年12月24日 第2回 ・次期計画の骨子について 審議会 平成22年1月22日 第5回 作業部会 平成22年2月4日 第4回 ・次期計画骨子素案について ・先進地視察について ・次期計画骨子の庁議提出案について 策定委員会 平成22年2月25日 第6回 作業部会 平成22年3月25日 第7回 ・次期計画の実施プロジェクトについて ・評価指標設定の考え方について ・次期計画の実施プロジェクトについて 作業部会 平成22年3月31日 第8回 作業部会 58 ・次期計画の実施プロジェクトについて 区 分 会議等名称 平成22年4月28日 第9回 内 容 ・次期計画の中間案について 作業部会 平成22年5月6日 第10回 ・次期計画の中間案について 作業部会 平成22年5月25日 第11回 ・次期計画の中間案について 作業部会 平成22年6月2日 第5回 ・次期計画の中間案(実施プロジェクト)について 策定委員会 平成22年7月23日 第12回 ・次期計画の中間案について 作業部会 平成22年8月5日 第6回 ・次期計画の中間案(全体)について 策定委員会 平成22年8月30日 平成22年度 ・次期計画の中間案に対する提言聴取 アドバイザー会議 平成22年9月28日 第3回 ・次期計画の中間案について 審議会 平成22年10月22日 第13回 ・次期計画の最終案について 作業部会 平成22年12月16日 第7回 ・次期計画の最終案について 策定委員会 平成22年12月22日 第4回 ・次期計画の最終案の審議及び答申 審議会 資 料 編 59 北上市工業振 興 計 画 ⑤本計画策定に係る委員会委員等名簿 北上市工業振興審議会委員 区 分 職 名 氏 名 備 考 関係行政機関の職員 経済産業省東北経済産業局総務企画部 総務課長 菅 原 正 昭 (1号) 北上公共職業安定所 所長 宇夫方 明 ~第2回 本 田 祐 司 第3回~ 岩手県県南広域振興局経営企画部 産業振興課長 宮 澤 一 久 公共的団体の職員 (2号) 北上商工会議所 専務理事 高屋敷 克 広 北上商工会議所 工業部会長 秋 井 文 夫 東北一のものづくり拠点を目指して 北上商工会議所 女性会長 北上工業クラブ 副会長 知識経験者(3号) 国立大学法人岩手大学工学部 教授 高 田 真由美 ~第2回 藤 田 澄 子 第3回~ 谷 村 久 興 清 水 健 司 北上オフィスプラザ株式会社 専務取締役 高 橋 司 株式会社北上エレメック 代表取締役会長 菅 野 羌 俊 株式会社岩手銀行地域サポート部 顧問 千 田 正 俊 北上市工業振興アドバイザー 職 名 60 氏 名 システム研究センター 理事長 片 方 善 治 株式会社アルプス技研 創業者最高顧問 松 井 利 夫 国立大学法人一橋大学大学院商学研究科 教授 関 満 博 国立大学法人岩手大学 理事 岩 渕 明 法政大学理工学部 教授 渡 辺 嘉二郎 北上市工業振興計画策定委員会委員 区 分 職 名 氏 名 委 員 長 商工部長 菅 野 俊 基 副委員長 商工部工業振興課長 昆 雅 幸 委 員 企画部政策企画課長 今 野 好 孝 財務部財政課長 及 川 義 明 平成21年度 及 川 清 喜 平成22年度 生活環境部生活環境課長 千 葉 茂 農林部農政課長 辻 市 茂 商工部商業観光課長 同 企業立地課長 同 基盤技術支援センター所長 教育委員会事務局学校教育課長 備 考 小田嶋 卓 樹 平成21年度 高 橋 善 孝 平成22年度 斉 藤 泰 男 高 橋 善 孝 平成21年度 石 塚 豊 平成22年度 下川原 宏 明 平成21年度 盛 島 徹 平成22年度 北上市工業振興計画策定委員会作業部会員 区 分 部 会 長 副部会長 部 会 員 職 名 工業振興課工業係長 氏 名 備 考 芳 野 重 樹 小 原 賢 司 平成21年度 高 橋 憲 義 平成22年度 総務課法規文書係長 小 原 賢 司 平成22年度 政策企画課政策推進係長 阿 部 英 志 地域づくり課主任 宮 腰 敏 則 財政課財政係長 八重樫 義 正 商業観光課商業係長 小笠原 達 也 工業振興課雇用対策係長 小 原 学 企業立地課企業立地係長 同 主任 (岩手大学地域連携推進センター共同研究員) 高 橋 正 貴 大 竹 隆 憲 企業立地課主任 高 橋 顕 祐 基盤技術支援センター主任 小 原 健 資 料 編 同 主任 平成22年度 61 北上市工業振興計画 2011年3月 お問い合わせ 北上市商工部工業振興課 〒024−8501 北上市芳町1番1号 TEL:0197−6 4−2111(代 表 ) FA X:0197−6 4−2171 URL:http://www.city.kitakami.iwate.jp/index.html E-mail:kougyo@city.kitakami.iwate.jp
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