平成26年度文部科学省委託 「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業」 インターネットベーシックユーザーテスト 教員用 クラウド時代のWebビジネスに対応した 地域版ITビジネスクリエータ学び直し教育プログラム整備と実証 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) インターネットベーシックユーザーテスト 教員用 【目次】 1. インターネットの基礎 ................................................................................................... 3 1-1 インターネットとは何か ........................................................................................ 3 1-2 インターネットの基本的な構造 ............................................................................. 4 1-3 インターネットがもたらす便利なサービス ........................................................... 5 1-4 インターネットの影響力 ........................................................................................ 6 2. インターネットのしくみ ............................................................................................... 8 2-1 インターネットのしくみ ........................................................................................ 8 2-2 ホームページのしくみと利用の仕方 ...................................................................... 9 2-3 電子メールのしくみ ............................................................................................. 11 2-4 ブログのしくみ .................................................................................................... 11 2-5 電子掲示板のしくみ ............................................................................................. 13 2-6 SNS のしくみ ...................................................................................................... 14 2-7 ネットショッピングとは ...................................................................................... 15 2-8 ネットオークションとは ...................................................................................... 16 2-9 スマートフォンの基礎知識 .................................................................................. 18 2-10 無線 LAN と Wi-Fi の基礎知識 ......................................................................... 22 2-11 クラウドサービスとは ....................................................................................... 23 3. コンピュータウイルス ................................................................................................. 25 3-1 マルウェアとは .................................................................................................... 25 3-2 コンピュータウイルスの感染経路 ........................................................................ 29 3-3 コンピュータウイルス感染を防ぐには ................................................................. 30 4. セキュリティー............................................................................................................ 31 4-1 ID とパスワードについて ..................................................................................... 31 4-2 ファイアウォールのしくみ .................................................................................. 32 4-3 暗号化のしくみ .................................................................................................... 33 4-4 電子署名のしくみ ................................................................................................. 35 4-5 SSL とは .............................................................................................................. 36 4-6 ソーシャルクラッキング、スキミング ................................................................. 37 5. インターネットでの被害 ............................................................................................. 38 1 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 5-1 インターネットは、具体的にどんな被害をもたらすのか .................................... 38 5-2 フィッシング詐欺 ................................................................................................. 38 5-3 ワンクリック詐欺 ................................................................................................. 39 5-4 詐欺、犯罪に巻き込まれないために .................................................................... 42 5-5 インターネットに関連した新たな詐欺の被害例 .................................................. 43 5-6 迷惑メール、チェーンメール ............................................................................... 43 5-7 健康面への影響 .................................................................................................... 45 6. インターネット関連の法規 .......................................................................................... 46 6-1 著作権の重要性、保護する必要性 ........................................................................ 46 6-2 著作権 ................................................................................................................... 46 6-3 違法ダウンロード ................................................................................................. 47 6-4 名誉毀損 ............................................................................................................... 48 6-5 わいせつ物頒布 .................................................................................................... 48 6-6 特定商取引法 ........................................................................................................ 49 6-7 電子契約法 ........................................................................................................... 49 6-8 不正アクセス禁止法 ............................................................................................. 50 6-9 個人情報保護法 .................................................................................................... 50 6-10 青少年インターネット環境整備法 ..................................................................... 51 6-11 特定電子メール法 .............................................................................................. 52 6-12 出会い系サイト規制法 ....................................................................................... 52 7. インターネット利用者のモラル................................................................................... 54 7-1 情報発信者のモラル、心構え ............................................................................... 54 7-2 ホームページを閲覧するうえで注意すること ...................................................... 55 7-3 個人情報の公開について ...................................................................................... 56 7-4 不正な嫌がらせや迷惑行為に遭わないために ...................................................... 56 7-5 プライバシーの保護について ............................................................................... 57 7-6 インターネットアクセスするうえでの心構え ...................................................... 58 7-7 電子メールのマナー ............................................................................................. 58 2 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 1. 1-1 インターネットの基礎 インターネットとは何か インターネット(internet)は、相互接続されたネットワークの集合です。インターネッ トという単語は、相互に(inter)つながった網(net)に由来します。インターネットを使 用すると、ホームページを閲覧したり、電子メールの送受信ができたり、チャットやゲー ムの対戦などができるようになります。 インターネットは、1995 年頃から急速に一般家庭に普及し、今では私たちの生活には なくてはならない社会基盤の 1 つとなっています。現在インターネットは、PC やタブレッ ト、スマートフォン、携帯電話など様々な通信機器で利用可能で、今後もインターネット を利用するデバイスは変わってもインターネットは利用され続けるでしょう。 総務省の調査によると、平成 24 年末の時点で日本国内に住む 6 歳以上の約 8 割の人が インターネットを利用していると報告されています(以下のグラフ参照)。 図 1-1 インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人) [出典:総務省『平成 24 年通信利用動向調査』] インターネットは、電気、ガス、水道とならんで、社会生活の基盤となりつ つあります。政府も、確定申告や選挙の投票などの国民向けのサービスを提 供しています。また、教育分野や医療・福祉分野にもインターネットの活用 が促進されています。 3 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 1-2 インターネットの基本的な構造 インターネットは、家庭や会社、学校といった小規模な単位で構成されるネットワーク (このような規模のネットワークを LAN といいます)を外部のネットワークにもつながる ようにして、その輪を世拡げ、世界規模での通信ができるようにした仕組みです。 インターネットに接続されているコンピュータのうち、情報やサービスを他のコンピュ ータに提供する役目のコンピュータをサーバーと呼び、提供された情報やサービスを利用 する役目のコンピュータをクライアントと呼びます。家庭のコンピュータや携帯電話、ス マートフォンはクライアントにあたります。 クライアント デスクトップ PC インターネット ノート PC スマートフォン 図 1-2 クライアントとサーバー 4 サーバー インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) サーバーには、Web サイトを構成するファイルを保存しておくサーバーやデ ータを格納する専用のサーバー(データベースサーバー)など様々なサーバ ーがあります。特に最近では、スマートフォン内のアドレス帳や画像データ をサーバーに保存し、機種変更時に、サーバーからデータを新しいスマート フォンに保存するサービスが提供されいます。このように、時や場所、クラ イアントの機器を超えてデータを一元管理する方法が主流となっています。 1-3 インターネットがもたらす便利なサービス インターネットを利用して私たちは次のようなことができます: ・広範囲な人的交流 地域や国を超えた広範囲な人的交流が可能になる。個人同士のメール交信、複数の人 同士のディスカッション、掲示板やブログでの意見発信、国を超えて多く人との交流 ができる。 ・音楽、映像、文章などの双方向配信 音楽、動画、文章などを手軽に入手でき、世界の不特定多数に向けて自己作品を配信 できる。Youtube やニコニコ動画などの Web サイトで動画を全世界に配信すること ができます。 ・電子商取引 インターネット上で商品を売買できる。商品検索から購入までを豊富な情報で確認で きるうえ、店を構えずとも物品販売やオークション参加といった商取引をできる。 ・ビジネスの拡大(地理的な距離感を超えたビジネス展開) 地域や国籍、言語の壁を越えてビジネスを拡大できる。従来のマスメディア依存型の 広報・広告活動とは別に、ターゲット市場に対し、適切な商品情報をダイレクトに届 けられる。電子マネー、ネットバンキングなど、現地に足を運ばずに金銭の授受がで きるため、多くの人が金融取引に参入できる。 上記以外のインターネットの活用の例として、災害地で電話回線網が寸断され、報道機関 の情報発信すらままならない時に、多くの人達が Twitter で連携し合い、被災状況や遭難 5 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 者の位置を伝えたことで、救援活動に大きく役立った事もあります。 農業や漁業でも、インターネットと物流網をうまく活用すれば、周辺地域どころか世界 までを相手にした大きな市場での販売活動ができます。インターネットは、社会に大きく 貢献し、影響力が大きい情報メディアです。その反面、間違った使い方や悪意を持った使 い方をした場合の被害も計り知れないものがあります。誰もがインターネットと付き合う ための正しい知識とモラルを身に付け、快適なネット社会を発展させて行きましょう。 インターネットよる電子商取引には、BtoB(Business to Business、B2B) や BtoC(Business to Consumer、B2C)などの形態があります。BtoB は企業間の電子商取引を表し、BtoC は企業と一般消費者の間の電子商取引 を表します。 1-4 インターネットの影響力 インターネットの普及により、私たちは、インターネットに接続された PC やスマートフ ォンで、いろいろな情報を簡単かつ迅速に得ることができたり、インターネット上で買い 物ができたりするなど、私たちの生活は豊かになりました。 しかし、インターネットの恩恵を受ける一方で、インターネット上の情報の信憑性をイ ンターネット利用者自身が判断しなければならないことや、インターネット上での詐欺事 件や、コンピュータウイルスによるインターネットへの個人情報の流出などのトラブルが 年々増加しています。特に、実社会の経験のない小中学生がインターネット上でのトラブ ルに巻き込まれる事件が増加しており、深刻な社会問題となるケースが増えています。こ のようなインターネットによるトラブルを防ぐためには、法律による規制、利用者のマナ ー・モラルの向上、技術的な対策が必要になります。 6 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 図 1-3 サイバー犯罪の推移 [出典:警視庁『平成 25 年度中のサイバー犯罪の検挙数について』] インターネットは、個人が自由に利用できるため、インターネットには様々 な文化やルールが存在します。児童・生徒は、実社会のルールやマナーを知 らずにインターネットの世界にふれるため、インターネット活用のリテラシ 教育が大切となります。 7 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2. 2-1 インターネットのしくみ インターネットのしくみ インターネットに接続するコンピュータは、インターネット上で情報の行き先を指定す るために使用される IP アドレスを持ちます。IP アドレスは、インターネット上の住所に相 当するものです。IP アドレスは、「198.55.123.100」のようなデータです。 私たちがインターネットを利用しているとき、私たちのコンピュータはデータを送受信 しています。そのデータは、パケットと呼ばれる単位に分割され、送受信されています。 インターネット内の回線を占有することを防ぐのが、パケット分割を行う目的です。 インターネット ネットワーク プロバイダー プロバイダー 太郎のコンピュータの IP アドレス 花子のコンピュータの IP アドレス 「192.168.10.1」 「192.168.20.233」 図 2-1 インターネットの概念 我々がインターネットを利用しているコンピュータやスマートフォンを識別 するのが IP アドレスです。この IP アドレスは接続情報としてプロバイダー やサーバーに記録されます。 8 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2-2 ホームページのしくみと利用の仕方 インターネットで情報を公開するページをホームページといいます(ホームページは、 Web サイト、Web ページなどとも呼ばれます) 。ホームページの内容は、インターネット 上にある Web サーバーというホームページ公開専用のコンピュータに保存されています。 WWW(World Wide Web)とは、世界中のサーバーで公開されている情報をインター ネットのホームページとして閲覧することができる仕組みを指します。なお、WWW の World Wide Web は、世界中に張り巡らされたクモの巣という意味があります。 私たちは各自のコンピュータの Web ブラウザという専用のソフトウェアで URL を指定 することで、ホームページを閲覧します。ここで、URL はインターネット上の情報が格納 されている場所を示すための住所のような役割を果たす文字列のことです。たとえば、ヤ フー社の運営するホームページのトップページの URL は、「http://www.yahoo.co.jp」 です。「http://」以下「www.yahoo.co.jp」はドメインと呼ばれる Web サイトなどのイ ンターネットサービスを提供するサーバーを表す文字列のことです。 【代表的な Web ブラウザ】 ・Internet Explorer ・Mozilla Firefox ・Google Chrome Web ブラウザによって、電子掲示板、ブログ、SNS、ショッピングサイトなどのサービ スを利用することができます。 9 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) URL「http://www.aaa.com」を Web ブラウザにて指定 Web サーバーA クライアント Web サーバーB インターネット URL「http://www.bbb.com」を Web ブラウザにて指定 ・Web サーバーA で公開されているホームページの URL 「http://www.aaa.com」 ・Web サーバーB で公開されているホームページの URL 「http://www.bbb.com」 図 2-2 Web ブラウザで URL を指定 ホームページへのアクセスは、Web サーバーを公開している企業・個人や通信プロバイ ダによってアクセスの記録が行われています。SNS や電子掲示板などに書き込んだメッセ ージやアクセス履歴は、常に記録されていることを意識してインターネットを使用してく ださい。 Web ブラウザは、Cookie(クッキーと読む)によって、閲覧履歴をコンピ ュータに記憶する機能を持っています。複数の人とコンピュータのユーザー を共有する際は注意が必要です。やむ得ず共有する場合は、閲覧履歴を削除 するとよいでしょう。 10 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2-3 電子メールのしくみ 電子メール(e-mail)とは、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの通信機 器を使って、インターネットを介して情報をやりとりする機能です。文章の他に、画像や 音声などを一緒に相手に送る事もできます。電子メールに添付されたファイルを添付ファ イルといいます。 電子メールを利用するには、個人やコンピュータを特定するためのメールアドレスが必 要です。メールアドレスは、一般的に@(アットマーク)で区切られ、@の後の文字列は、 所属する組織や加入しているインターネットサービス事業者の識別名が使われます。 (電子メールアドレスの例) tanaka@ibut.co.jp 電子メールは、Google 社やヤフー社の提供する Web 上での電子メールサービスや、通 信プロバイダと契約してメーラーと呼ばれる専用ソフトウェアによって利用可能です。 最近では、迷惑メールが多くなってきており、同一のメールアドレスを長い 年数使用していると、個人のメールより迷惑メールの受信件数の方が多くな ってしまいます。また、迷惑メールや広告メールには、 「このメールの配信を 停止する場合は、○○してください。 」のような文章が含まれている場合が多 く、その作業を行うことで相手に、現在のメールをまだ使用しているという 情報を与えることになってしまいます。したがって、迷惑メールが多くなっ たときは受信箱に振り分けたり、無視したりするしかありません。 2-4 ブログのしくみ ブログは、日常での自分の考えや思いを日記風に書いたり、社会的な出来事に対する意 見や論評などを公開するための Web サイトのことです。個人的な利用が主だったのですが、 最近では企業が自社の情報を公開したり、新商品やサービスを案内すしたりするために利 用することが増えてきました。 ブログは、一般的なホームページ運営技術をそのまま応用しており、通常の Web ブラウ ザだけで閲覧することができます。ホームページの更新は、Web 担当者が HTML ファイ 11 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ルを書き換える事で行われますが、ブログの場合は、所定のエリアに文章などを書き込む だけで自動的に更新が出来るような仕組みとなっています。Web の専門知識やホームペー ジ作成ソフトを持たない人でも、簡単に情報公開ができるため、広く利用されるようにな りました。 ブログと類似したサービスに、プロフがあります。プロフは、自分のプロフィールが掲 載された Web サイトが携帯電話からも簡単に作成できるサービスです。プロフでは、生年 月日、性別、趣味、写真などの個人を特定できる情報を掲載できます。携帯電話からも利 用できるため、学生の会員が主となっています。 【代表的なブログ・プロフ】 ・アメーバブログ「http://ameblo.jp/」 ・前略プロフィール「http://pr.cgiboy.com/」 図 2-3 ブログのイメージ ブログやプロフは、児童・生徒でも簡単に利用できるため、学校内でのいじ めの温床になりやすいです。また、プロフィールを偽って児童・生徒になり すまし、児童・生徒がトラブルに巻き込まれる事件が起こっています。自分 の個人情報をむやみに公開することは危険であることを児童・生徒に知って おいてもらうと良いでしょう。 12 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2-5 電子掲示板のしくみ 電子掲示板とは、特定のホームページの表示エリアに、多くの人が共通の話題について 意見やメッセージを書き込めるようにした Web サイトです。共通の話題で分類された文章 グループをスレッドと呼びます。学校や駅に有る伝言板や掲示板に似ている事から「掲示 板」または「BBS」と呼ばれています。個人的に運営しているものから、企業が運営する 大規模なものまで様々に存在します。電子掲示板に書き込まれたメッセージは、所定のデ ータベースに蓄積され、閲覧者がページを参照すると、最新のデータが自動的に表示され るしくみになっています。 【代表的な電子掲示板】 ・2 ちゃんねる「http://www.2ch.net/」 ・Yahoo!知恵袋「http://chiebukuro.yahoo.co.jp/」 図 2-4 電子掲示板のイメージ 電子掲示板では、匿名での情報発信ができるため、悪ふざけのメッセージや 誹謗中傷などのメッセージを投稿しがちになる傾向があります。もし、自分 の個人情報などが書き込まれていることを児童・生徒が発見した場合は、す ぐに親や学校に知らせるよう指導するとよいでしょう。 13 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2-6 SNS のしくみ SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、ユーザー同士が交流できる Web サイ トの会員制サービスのことです。友人同士での繫がりで利用する小規模な使い方から、近 隣地域の情報コミュニティーとしての利用、同じ趣味を持つ全国の見知らぬ人同士が会話 するための利用など、人それぞれの目的に合った使われ方をしています。その特徴として、 共通の友達を通して交流の輪を広げたり、同じ趣味や同じ業界の人、同じ情報を必要とす る人達が集まるなど、ある程度の共通情報を持った人同士がコミュニケーションを広げて いくと言った特性にあります。 最近では、会社や組織の広報を行うための利用やマーケティングツールとしての利用が 活発化してきました。一般的に SNS では、メッセージ交信の他に、自分のホームページを 持つことができ、個人のプロフィールや写真を掲載できます。その情報公開に関する制限 範囲を自分で管理できるため、誰もが手軽にホームページを運営できるようになり、情報 発信者になれるようになりました。 SNS には、メッセージ機能の他に、日記機能、リアルタイムに会話できるチャット機能、 特定の仲間だけで情報交換するグループ機能など、多彩な機能が有ります。追加アプリケ ーションをインストールすることで機能拡張できるところも魅力の一つです。 また、SNS は、パソコン、携帯電話、スマートフォンなどの様々な通信機器を通して、 同じ操作方法で利用できます。SNS は、とても身近で便利なコミュニケーションツールと して発展しましたが、反面では、アカウントの不正利用や、知り合い同士の空間であると いう安心感を利用した詐欺、コンピュータウィルス配布の対象となるなどの被害も発生し ています。また、友人間のコミュニケーションを目的として SNS を利用している場合であ っても、プライバシー設定が不十分であったがために、予想外に情報が外部に広がったり、 軽い気持ちで書き込んだメッセージが、友人のプライバシーを侵害してしまったりと言っ た弊害も頻発しています。どんなに小規模な範囲での会話でも、インターネット上に情報 が発信されていることに変わりはないということを念頭に置いて、書き込む内容には十分 に注意をはらいながら利用することが大切です 【代表的な SNS】 ・Twitter「https://twitter.com/?lang=ja」 ・Facebook「https://ja-jp.facebook.com/」 14 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 図 2-5 SNS のイメージ 多くの SNS では友達申請によるグループ機能があるため、グループから解 除されたことによる人間関係のトラブルが多発しています。また、投稿する 画像や動画は、十分に検討する必要があります。 2-7 ネットショッピングとは インターネット上で買い物ができるホームページのことです。ネットショッピングの Web サイトでは、Web サーバーとデータベースサーバーが連携して動作しています。デー タベースサーバーには、顧客情報、商品情報、在庫情報、販売情報などのデータがあり、 ユーザーの入力情報が、リアルタイムにデータベースに書き込まれ、更新されます。 ユーザーが商品を注文すると、購入情報がデータベースに登録されます。ショッピング サイト側は、ユーザーに注文受付が完了したことをホームページや電子メールで通知しな がら、同時に受注情報を商品の提供元(販売会社)に通知します。商品の提供元(販売会 社)は、この情報から決済確認、在庫数更新、商品発送などの処理を進めます。あわせて、 これらの処理経過をユーザーに電子メール等で通知します。ネットショッピングのサイト 15 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) が集合し、大型化したものをショッピングモールと呼びます。最近では個人でもショッピ ングサイトを開設できるサービスを提供している企業もあります。 【代表的なショッピングサイト】 ・Amazon「http://www.amazon.co.jp/」 ・Yahoo!ショッピング「http://shopping.yahoo.co.jp/」 図 2-6 ネットショッピングサイトのイメージ ネットショッピングでは、クレジットカード払いや代引きによって支払いが できるため、必要以上に買い物をしてしまう傾向にあります。また、高額請 求などの被害に遭う可能性もあります。 2-8 ネットオークションとは インターネットを利用した電子商取引の一つで、ネット上で競売(オークション)を行 うことです。オークション専用サイトに出品されている商品の中から、気に入った物を自 分の指定した金額で購入することができます。一般的なオークションサイトでは、開始価 16 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 格が表示されており、その価格よりも高い金額で入札(購入意思を示す事)を行い、最も 高い金額を提示した人が落札(購入)できる仕組みを設けています。 最近では、個人が自分の商品を出品することもできるようになっており、新たなフリー マーケットの場としてとして普及しつつあります。但し、一般商店での購入と異なり、ネ ットオークションでは商品の実物を確認しづらく、販売者の顔も見えないため、消費者ト ラブルに巻き込まれる危険性もあります。盗品や違法な薬物などが出品されたり、偽ブラ ンド品などを販売して、代金をだまし取るなどの詐欺行為が行われるケースがあります。 また、利用者同士の販売上のトラブルも発生しています。怪しげな出品にだまされないよ う、商品や販売者を充分に確認しながら慎重に利用しましょう。ネットオークションを安 全に利用するためには、まず出品者の過去の取引実績を確認することが大切です。過去の 取引実績がないにもかかわらず、同時に大量の商品を出品している場合には注意しなけれ ばなりません。実際に入金したり商品を送付する前には、取引相手の氏名とメールアドレ ス以外の連絡先(住所、電話番号)を確認しておくことが大切です。また、トラブルが発 生してしまった場合に備えて、交換した電子メール、銀行振込みの控え、宅配便の伝票な どの証拠を保存しておくことも大切です。最近では、宅配便事業者に一定の手数料を支払 った上で、購入者が商品の到着後に内容の確認を行ってから、代金を支払うサービス(代 引きサービス)も提供されています。ネットオークションを利用する際には、そのような サービスを利用してみるのも良いかもしれません。 図 2-7 オークションサイトのイメージ 17 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ネットオークションでは、入札したにもかかわらず、商品が郵送されなかっ たり、表示してあった商品の画像と異なった商品が郵送されなかったりする トラブルがあります。 2-9 スマートフォンの基礎知識 スマートフォンは、従来の携帯電話に比べて、パソコンに近い性質を持った通信機器で す。大きな画面でパソコン向けの Web サイトや動画を閲覧できたり、タッチパネル操作で 画面拡大やスクロールなどを直感的に行えます。 図 2-8 スマートフォン スマートフォンには次のような長所と短所があります: 【長所】 ・パソコンのファイルを閲覧できる。 ・Web サイトを閲覧できる。 ・タッチパネルによる直感的な操作ができる。 ・アプリケーションを追加できる。 18 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 【短所】 ・ガラケーと比べ、バッテリーの消費が早い ・インターネットに常時接続するため使用料金が高くなる。 ・スマートフォン内のアドレス帳や画像ファイルを流出させるような悪意のあるアプリ ケーションが存在する。 家庭だけでなく外出先や電車の中など、場所を選ばずに豊富な情報を得られる便利なスマ ートフォンですが、新たな危険性も高まりつつあります。 日常会話において「携帯電話」という単語は、 「ガラケー(ガラパゴス携帯)」または「ス マートフォン」を指す場合が多いです。スマートフォンは、年々利用者数が増加していま す。 携帯電話やスマートフォンはいつでもどこでも利用できて便利ですが、TPO(時・場所・ 場面)を考慮して使用しなければ、周囲の人に迷惑をかけてしまう恐れがあります。すな わち、TPO を考慮した「ルール」や「マナー」を知ることが大切です。 では「ルール」、 「マナー」とは何でしょうか。 「ルール(rule) 」を辞書で調べると「規則、 規定、きまり」といった意味があります。ルールは、社会や組織に属するうえで、知って おかなければならない決まりごとといえます。 「マナー(manner)」を辞書で調べると「行 儀、作法」といった意味があります。マナーは一般常識や習慣などで定められたものから、 相手への配慮としてのマナーなどがあり、様々なマナーが存在します。一般に、マナーは、 ルールとは違って明文化されていない場合が多く、個人の人間性や良識を問われるものが 多いです。 携帯電話やスマートフォンを自宅で使用する場合は利用マナーなどを特に意識すること はありませんが、公共の場では、TPO に合わせたルールやマナーを考慮する必要がありま す。そのため、携帯電話・スマートフォンには、マナーモードや機内モードなどの設定を 行うことができます。携帯電話・スマートフォン利用者は、場所に応じたモードに設定し たり、場所によっては電源をオフにしたりしなければいけません。マナーモードは、着信 音を鳴らさない設定です。映画館や電車内などで着信音を出したくない場合に設定します。 機内モードは、通信機能をオフにして、航空安全基準に従って使用できる機能です。 ●新幹線、電車、バス内でのルール・マナー 新幹線や電車内では、各鉄道会社のルールにしたがってください。鉄道会社では、車内 19 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) での通話等は控えるようにルールが設定されています。バス内でも同様のルールがありま す。周りの乗客の静寂を乱さないようにしてください。 車内で特に私たちが気を付けなければならないのが優先席付近です。優先席付近ではペ ースメーカーなどの医療機器を装着している乗客がいる可能性があるので、携帯電話・ス マートフォンの電源は切りましょう。携帯電話・スマートフォンは使用していなくても電 波の送受信が行われており、電波が医療機器の誤作動を招く可能性があるからです。 図 2-9 電車内の優先席に張られているシール ●飛行機内でのルール・マナー 携帯電話・スマートフォンの電波が飛行機を構成する機器に影響して誤作動を招く可能 性があるため、飛行機内では携帯電話・スマートフォンの電源は切りましょう。機内での スマートフォンの利用は、航空法により禁止されています。違反した場合は、50 万円以下 の罰金が科せられることがあります。 ●歩行時におけるルール・マナー 携帯電話やスマートフォンの画面を見ながら歩行する「歩きスマホ」は大変危険なので 避けましょう。「歩きスマホ」は利用者自身も危険ですが、他者を巻き込んだ大事故に発展 する可能性があります。 「歩きスマホ」が原因で駅ホームや階段からの転落事故が多発して います。 ●運転時におけるルール・マナー 自転車や車の運転中の携帯電話やスマートフォンを保持しての使用は、道路交通法にて 罰則の対象となる違反行為ですので注意してください(ただし、傷病者の救護またはは公 20 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 共の安全の維持など、やむを得ない場合は対象外となります)。 ●レストランやホテルのロビーにおけるルール・マナー レストランやホテルのロビーなどの静粛な場所では、周囲の迷惑にならないよう声のト ーンをおさえて通話するのがマナーです。大声で会話したり、長い時間通話したりするこ とは控えましょう。 スマートフォンに夢中になっていると、注意への注意が散漫になりがちです。 関東券の鉄道会社では、車内アナウンスで歩きスマホは控えてくださいとの アナウンスがあります。ホームからの転落事故や他人とぶつかったりする事 故が多発しています。 21 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 2-10 無線 LAN と Wi-Fi の基礎知識 Wi-Fi(ワイファイ)とは、無線 LAN の代表的な呼び名であり、電波でデータの送受信を 行う通信網を指します。通常、会社や家庭内でパソコンやプリンタなどを通信させる場合 は、機器同士をネットワークケーブルで接続します。このケーブルの代わりに無線通信を 使うのが無線 LAN です。Wi-Fi 機器とは、無線 LAN の普及促進団体(Wi-Fi Alliance) が認証した通信機器のことです。 現在は Wi-Fi 認証を得た製品が増えたことから無線 LAN 全般を「Wi-Fi」と呼ぶことが 多くなりました。無線 LAN を利用すれば、ケーブルを気にすることなく、どこでも好きな 場所でインターネット接続できます。無線 LAN を利用するには、親機(アクセスポイント) と、パソコンなどに装着する子機が必要ですが、最近のノートパソコンやスマートフォン には、子機の機能が内蔵されているため、親機があれば無線 LAN を利用できます。近頃は、 駅や空港などの公共施設、ファーストフード店などが親機を設置して、公衆無線 LAN サー ビスの提供を進めており、手軽に無線 LAN が利用できる環境が広がっています。 無線 LAN は簡単にインターネットに接続できますが、利用者が適切なセキュリティ対策 を取らずにいると、気がつかないうちに情報が盗み見られたり、コンピュータウイルスの 配布などに悪用されたりすることがあります。無線 LAN の利用には以下のことに気をつけ ましょう: ・SSL(https://~)を利用する ・ファイル共有機能を解除 ・自宅のアクセスポイントには適切な暗号化方式を設定 22 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 暗号化の設定 「https//abc.com」 アクセス にアクセス ポイント 無線 LAN の暗号化 図 2-10 無線 LAN のセキュリティ 無線 LAN とは異なり、有線 LAN は電波を拡散させているため、無線 LAN の不正使用を試みる人はノート PC やタブレットを片手に歩き回り、セキュ リティの脆弱なアクセスポイントを探します。無線 LAN のセキュリティは 十分に行っておく必要があります。 2-11 クラウドサービスとは クラウドサービスは、コンピュータで利用するデータやソフトウェアを、インターネッ ト経由で利用者に提供するサービスです。クラウドサービスに加入することで、ユーザー は複数の端末(パソコンや携帯端末など)で、場所を選ばずにサービスを利用することが できます。 従来、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどは、会社や自宅でユー ザーが管理していました。これらをクラウドシステムで管理する事で、外出先や移動中で も簡単にデータ利用が出来るようになります。また、システムの構築、管理などにかかる 手間が削減され、業務の効率化やコストダウンを図れます。 一般的にクラウドサービスは従量制と言われ、保管ディスクやアプリケーションを利用 23 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) した分だけの費用を、月契約や年契約で払う形式になっています。業務負荷の増減に合わ せて使用料を調整できるので、年間のピーク時に対応できるようシステム増強をして、閑 散期に無駄を生むような事がなくなります。 インターネットの先にある複数のコンピュータ群が実際にどうなっているのか見えづら いことを、雲に例えて「cloud=雲」という名称がついたと言われています。 クラウドサービスを利用する際は、データが事業者側のサーバーに保管されるというこ と、インターネットを介してデータがやりとりされることを念頭に置き、十分なセキュリ ティ対策が施されたクラウドサービスを選択することが重要です。 クライアント ①ファイルのアッ プロード デスクトップ PC インターネット サーバー ノート PC ②クラウド上にアップロ スマートフォン ードした画像ファイルを 閲覧。 図 2-11 クラウドサービスの例:ファイル共有サービス ファイル共有サービスは端末や場所を選ばす使用できて便利ですが、定期的 にデータのバックアップをとっておくようにしましょう。サービスの仕組み の不具合でデータが消えてしまう事故も発生しています。 24 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 3. 3-1 コンピュータウイルス マルウェアとは マルウェア(malware)は、不正かつ有害な動作を行う意図で作成された悪意のあるソ フトウェアや悪質なプログラムの総称です。マルウェアという名称は、「malicious(マリ シャス、悪意のある)」と「software(ソフトウェア) 」の単語に由来します。マルウェア の例としては、コンピュータウイルス、バックドア、キーロガー、トロイの木馬、スパイ ウェアがあります。 ●コンピュータウイルス コンピュータウイルス(computer virus)は、他のファイルやソフトウェアに寄生して、 不正かつ有害な動作を行う意図で作成された悪意のあるソフトウェアや悪質なプログラム です。コンピュータがコンピュータウイルスに感染すると、そのコンピュータはさまざま な被害を受けてしまいます。たとえば、ハードディスクに保管されているファイルを消去 したり、コンピュータが起動できないようにしたりします。 ●ワーム ワーム(worm)は、それ自身が独立した実行可能なファイルで自己増殖し続けます。他 のシステムへの感染にファイルを必要としない点がコンピューウイルスと異なります。ネ ットワークを介して、攻撃先のシステムのセキュリティホール(セキュリティの脆弱性) を悪用して侵入する事が多いです。コンピュータがワームに感染すると、コンピュータ内 のファイルが破壊されたり、ハードディスクがフォーマット(初期化)されたり、さまざ まな被害が発生することがあります。 25 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ●トロイの木馬 トロイの木馬(Trojan horse)は、他のプログラムに紛れ込んで侵入し、ユーザーの知 らない間に不正な行為をおこなうプログラムです。ギリシア神話におけるトロイア戦争の 伝説に語られるトロイの木馬になぞらえて名前が付けられました。自己増殖機能がないこ とからコンピュータウイルスとは区別されますが、ほとんどが有害なため一般的にはコン ピュータウイルスとして認知されています。コンピュータがトロイの木馬に感染すると、 ネット接続設定やファイアウォールの設定を変更し、攻撃者任意のポートを開放し、外部 からの接続を許可します。これにより攻撃者は被害者のパソコンを乗っ取って様々な被害 をもたらします。例としてはキーロギング、プログラムの追加/削除、ファイルの追加/削 除、アンチウイルスソフトの無効化、被害者のデスクトップ画面の撮影、パスワードの奪 取、ウェブからの悪意あるプログラムのダウンロードなどがあります。 26 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ●スパイウェア スパイウェア(spyware)は、何らかのソフトウェア内に混入していることが多く、PC 内のデータや Web サイトの訪問履歴などのユーザーに関する情報をユーザーの知らないう ちに抜き取ったりします。スパイウェアは、ユーザーの意図に反してインストールされ、 ユーザーに気付かれないように活動します。代表的なスパイウェアとして、キーロガー、 バックドアがあります。 キーロガー(key logger)は、ユーザーがキーボード入力した内容を記録するプログラ ムです。このキーロガーが悪用され、キーボード入力したデータを不正に取得するスパイ ウェアとして用いられる場合があります。キーロガーがインストールされたコンピュータ において、パスワードなどを入力すると、悪意のあるユーザーに入力したパスワードが入 手されてしまいます。 銀行 暗証番号 キーロガーを仕込 悪意のある ユーザー まれた被害者 暗証番号 ②ひひひ。この暗証番号を使っ ①インターネットバンキングで て、自分の銀行口座に振り込みを 振り込みをしよう。暗証番号を入 しよう。 力。 図 4-1 キーロガー 27 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) バックドア(back door)は、コンピュータに仕掛けられ、そのコンピュータに再侵入 する為に準備するプログラムです。バックドアが仕掛けられたコンピュータは、遠隔操作 されたりする場合があります。 ボット(bot)は、コンピュータをネットワークから遠隔操作することを目的とするプロ グラムです。ボットに感染すると、ユーザーが知らない間に悪意のあるユーザーに加担す る攻撃者となってしまいます。 ボットは、コンピュータウイルスやスパイウェアと同様の方法で感染します。 ボットに感染したイン ターネット利用者 遠隔操作によ る攻撃の指令 悪意のある ユーザー A 社のサーバー 一斉に A 社のサーバー に攻撃だ! 図 4-2 ボット 28 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) スマートフォンの普及に伴って、スマートフォンを対象としたマルウェアも 多く報告されています。スマートフォン用のゲームやアプリケーションによ っては、インストール時に何の告知もなく、位置情報や接続情報などを知ら ないうちに送信するようなものもあります。出所のわからないアプリケーシ ョンのインストールはなるべく控えるようにしましょう。 最近では、スマ ートフォンを遠隔操作する悪意のあるアプリケーションも登場しています。 3-2 コンピュータウイルスの感染経路 コンピュータウイルスは、ユーザー操作を利用してコンピュータに入り込み、感染しま す。コンピュータウイルスの感染につながる操作には、次のようなものがあります: ・コンピュータウイルスが含まれるファイルを開く・実行することによる感染 ・電子メールの開封や添付ファイルを開くことによる感染 ・悪質なホームページの閲覧による感染 ・インターネットへの接続による感染 コンピュータウイルスは、他人から借りた CD/DVD メディアや USB メモリ内、インタ ーネットからダウンロードしたファイル内、電子メールの添付ファイルに潜んでいること もあります。それらファイルを開くことによって、コンピュータがコンピュータウイルス に感染してしまいます。ユーザーにファイルを開かせるために、ユーザーの気を引くよう なファイル名になっていたり、ファイルのアイコンを偽造したりしている場合があるので 注意が必要です。 ネットワーク接続しているコンピュータに対して、ぜい弱性のあるコンピュータを探し て、ウイルス感染したファイルを送り込む場合もあります。また脆弱性を解消していない と、ホームページを閲覧するだけでコンピュータウイルスに感染してしまう場合もありま す。 コンピュータウイルス感染の危険性はあらゆるところに潜んでいます。上記 に挙げた主な 4 つの感染経路をしっかりと理解し、自ら感染を予防できるよ うにしましょう。 29 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 3-3 コンピュータウイルス感染を防ぐには コンピュータウイルスに感染しないためには、基本的に次の3つの対策が必要です。 ・利用しているソフトウェアを新しいものに更新する ソフトウェア・メーカー各社は、ソフトウェアにおけるウィルス対策を強化しています ので、新しいバージョンにアップグレードする事で、セキュリティーホールと呼ばれるプ ログラムの弱点(脆弱性)を改善したものを利用できます。 ・利用しているオペレーティングシステムをアップデートする Microsoft 社の Windows に関しては、Windows Updatae を行い、常に最新の状態に しておいてください。Windows の脆弱性が取り除かれます。 ・ウィルス対策ソフトを導入する 使用するコンピュータには、必ずウィルス対策ソフトを導入する必要があります。また、 常に最新のウィルスに対応できるように、ウィルス対策ソフトの検知用データを更新しな ければなりません。 ・怪しいホームページやメールに注意する ウィルスは悪意のホームページなどで配布されていたり、メールに添付されていたりな ど、さまざまな経路でコンピュータに侵入してきます。悪性ホームページに接続する可能 性のある迷惑メールや掲示板内などのリンクに注意する。不審なメールの添付ファイルを 開かないなどの対策が必要です。最近では、SNS などで用いられる短縮 URL が、悪性ホ ームページなどへの誘導に使われる例も出てきており、これにも注意が必要です。 コンピュータウイルスは、日々新しいものが登場していますので、ウイルス 対策ソフトをインストールしても、定期的にウイルス検知用データを更新す る必要があります。 30 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 4. 4-1 セキュリティー ID とパスワードについて インターネットでは、通信している相手が本人かどうかを確認する手段として認証 (authentication)と呼ばれる方法がとられます。インターネットの認証は、利用者を識 別する情報として ID が使用され、それを確認する情報としてのパスワードを組み合わせる ことで行われます。ID は、情報機器やサービスの提供者が、一人ひとりの利用者を区別す るために割り振る文字列です。パスワードとは、その ID を割り振られた本人だけが知り得 る情報であり、それを入力することで ID を持つ本人であることを確認するための文字列で す。パスワード以外では、カードや生体情報(指紋や網膜など)などが使われることもあ ります。 ID とパスワードは、合わせてアカウント情報と呼ばれ、情報機器やインターネットでサ ービスを利用する際に本人を確認するための重要な情報です。利用者の範囲が制限されて いる情報機器やインターネットサービスに、ID とパスワードを入力して、その機器やサー ビスの利用を開始することをログインといいます。利用を終了して、機器やサービスから 離れることはログアウトといいます。 このような仕組みによって、情報機器やサービスを利用する際に、利用権限のない第三 者の不正利用を防止します。しかし、ID やパスワードが不適切に管理されていたり、サイ バー攻撃などで盗まれてしまうと、なりすましなどの不正行為が行われてしまう危険性も あります。このような被害にあわないよう ID やパスワードなどのアカウント情報は厳重に 管理するようにしましょう。 ID やパスワードが他人に不正使用されると、ネットショッピングで勝手に買 い物されたり、SNS などのプロフィールを改ざんされたりするので、アカウ ント情報は厳重に管理しましょう。コンピュータを共有する場合は特に気を 付けてください。 31 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 4-2 ファイアウォールのしくみ ファイアウォール(firewall)には“防火壁”の意味があります。火災のときに被害を最 小限に食い止める防火壁のような役割を果たすことから、インターネットの世界では、外 部のネットワークからの攻撃や、不正なアクセスから自分たちのネットワークやコンピュ ータを防御するためのソフトウェアやハードウェアを、ファイアウォールと呼ぶようにな りました。 ファイアウォールは、ネットワーク通信において、その通信をさせるかどうかを判断し、 許可するまたは拒否する仕組みです。しかし、その通信をどう扱うかの判断は、通信の送 信元と宛先の情報を見て決めており、通信の内容は見ていません。これを荷物の配送にた とえると、送り主と宛先などの情報は見ているが、その荷物の中身は見ていないというこ とになります。 悪意のある ユーザー ファイア ウォール 悪意のない ユーザー 図 4-1 ファイアウォール 現在のファイアウォールには、大きく分けて 2 種類あります。ひとつは家庭などで利用 する単体のコンピュータを防御することを目的としたパーソナルファイアウォールで、ク ライアントのコンピュータに導入するソフトウェアです。インターネットサービスプロバ イダが、自社の接続サービス利用者に、ウィルス対策ソフトとファイアウォール機能を統 32 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 合された形で提供するケースが多いです。自分が利用しているインターネットサービスプ ロバイダで、サービスが提供されているかどうかを確認してみるとよいでしょう。もうひ とつの、企業などのネットワークに使用するファイアウォールは、インターネットと社内 の LAN との間に設置するものです。この場合のファイアウォールの基本的な機能は、外部 からの不正なアクセスを社内のネットワークに侵入させないことです。 具体的には、外部からの不正なパケット(データ通信の際の分割された単位)を遮断す る機能や、許可されたパケットだけを通過させる機能を持っています。ファイアウォール の設置は、外部のネットワークに接続した環境にとっては、必須と言える情報セキュリテ ィ対策です。ただし、ファイアウォールを設置しても、それがネットワークに関する完全 な情報セキュリティ対策になるわけではありません。あくまでも、情報セキュリティ対策 のひとつとして考える必要があります。 Microsoft 社の Windows には、ファイアウォール機能があるため常に有効 にするようにしましょう。 4-3 暗号化のしくみ 暗号化(encryption)とは、データの内容を他人には分からなくするための技術です。 コンピュータを利用する際のパスワードが、そのままの文字列で保存されていたら、簡単 にパスワードを抜き取られてしまう危険性があります。それを防ぐために、通常、パスワ ードは、第三者の理解できない暗号化されたデータでコンピュータに保存するようになっ ています。暗号化は、鍵(キー、key)と呼ばれる特殊なデータを使用します。データを暗 号データにする作業を暗号化(encryption)、暗号データを元データに戻す事を復号 (decryption)と呼びます。鍵が第三者に渡ってしまうと、暗号データを勝手に復号され てしまう危険性があります。そのため、鍵は関係のない人に渡ったりしないよう厳重に管 理しなければなりません。 暗号化には、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式があります。 ●共通鍵暗号方式 共通鍵暗号方式では、送信者と受信者が事前に共有された同一の鍵(共通鍵と呼ぶ)を 使用します。情報の送信者は共通鍵で暗号化を行い、受信者は共通鍵で復号します。この ように共通鍵暗号方式では、送信者と受信者は共通の鍵を使用するため。第三者に鍵が渡 33 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) らないようにする必要があります。 Alice Bob Hello Hello ①共通鍵で ②共通鍵で 復号 暗号化 Yj@;e 図 4-2 Yj@;e 共通鍵暗号方式 ●公開鍵暗号方式 公開鍵暗号方式では、公開鍵と秘密鍵という 2 つの鍵を使用します。公開鍵で暗号化さ れたデータはペアとなる秘密鍵で復号できます。また、秘密鍵で暗号化されたデータはペ アとなる暗号鍵で復号できます。 34 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) Alice Bob Hello Hello ① Alice の 秘 ②Alice の公開 鍵で復号 密鍵で暗号化 Yj@;e Yj@;e Alice Bob Hello Hello ①Bob の公開 ② Bob の 秘 密 鍵で復号 鍵で暗号化 Yj@;e 図 4-3 Yj@;e 公開鍵暗号方式 公開鍵暗号方式のひとつである RSA 暗号は、現在最も広く使用されている 暗号化の方法です。RSA 暗号は、素因数分解の困難さに基づいた暗号方法で す。 4-4 電子署名のしくみ 暗号化技術を応用した仕組みとして電子署名(digital signature)があります。電子署 名は、ペアとなる二つの鍵コードのうちの片方(秘密鍵)をメッセージ送信者が所有し、 受信者は、もう片方(公開鍵)を使用して、受信したメッセージを検証します。つまり、 35 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 作成者本人しか持ち得ない秘密鍵を使ってメッセージが作成されたことを検証することで、 作成元の確認ができることになります。電子署名を利用することにより、なりすましやメ ッセージの改ざんを防止できます。 電子署名は、従来の商取引における押印に相当するものです。電子署名は、 ユーザーのみが所有する秘密鍵(印鑑に相当)を使用します。なお、電子商 とりひきでは、「電子署名及び認証業務に関する法律」(通称、電子署名法) や「IT 書面一括法」などといった電子データの取り扱いに関する法律が施行 されています。法律のおかげで電子化された契約書を私たちは信頼できるこ とになります。 4-5 SSL とは SSL は、インターネット上でデータを暗号化して送受信する仕組みのひとつです。クレ ジットカード番号や、秘密にすべき個人情報を取り扱う Web サイトで、情報が盗み取られ るのを防止するために広く利用されています。また、SSL は暗号化に加え、電子証明書に より通信相手の本人性を証明し、なりすましを防止するなど、今日のインターネットの安 心・安全を支えています。 たとえば、インターネットバンキングで利用者登録する場合などは、この SSL を使った ホームページが使われます。入力された情報は暗号化され、金融機関の Web サーバに送ら ます。これにより、通信の途中で情報が盗み見られることを防いでいます。SSL を使った サイトに接続するには、一般的な「http://」で始まるアドレスではなく、 「https://」で始 まるアドレスのサイトに接続します。SSL を利用したサイトに接続すると、アドレスバー の色が緑色に変わったり錠のマークが表示されたりします。これらにより、SSL 通信を使 っているサイトかどうかを確認することができます。Web ブラウザの種類やバージョンに よっては、他の場所に保護を示すマークが表示されますので、普段利用している Web ブラ ウザで、どこにどのようなマークが出るかということを、あらかじめ確認しておくのがよ いでしょう。 36 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 「https//abc.com」 アクセス にアクセス ポイント 無線 LAN SSL による通信経路 の暗号化 の暗号化 図 4-4 SSL による暗号化 SSL(Secure Sockets Layer)は、Web サーバーと Web ブラウザ間の HTTP 通信を暗号化して送受信する業界標準の通信プロトコルです。 4-6 ソーシャルクラッキング、スキミング ソーシャルクラッキング(social cracking)とは、コンピュータやネットワークの管理 者や利用者、また、その関係者などから、話術や盗み聞き、盗み見などの「社会的」な手 段によって、パスワードなどの保安上重要な情報を入手することです。 いくら技術的にセキュリティを強化しても、付箋にパスワードを書いていたり、電話な どでパスワードを話したり、ログインしたままコンピュータから離れる行為などをおこな うと、ソーシャルクラッキングの対象となってしまいます。 スキミング(skimming)は、近年のカード犯罪で多く使われる手口の一つで、磁気カー ドに書き込まれている情報を抜き出し、まったく同じ情報を持つカードを複製する犯罪で です。スキミングを防止するには、クレジットカードを使用するときは、店員の手元など を注意深く観察するしかありません。 ソーシャルクラッキングによる情報漏えいが多く報告されています。技術的 な教育のほかに、退席する場合はロックをかけるなどといったリテラシ教育 も大切です。 37 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 5. 5-1 インターネットでの被害 インターネットは、具体的にどんな被害をもたらすのか インターネットを悪用する例としては、不当にお金を稼いだり、請求を逃れるといった 金銭目的の犯罪が多いです。また、企業や個人を誹謗中傷したり、恨みや不満を晴らす目 的で悪用される場合も有ります。 インターネットを通じて、相手に気付かれないようにウィルスを送ったり、政府機関や 企業のサーバーに侵入してシステムを破壊するなどの知能犯もいます。犯罪意識がなくて も、政治目的やいたずらなどで同じような行為をする者もいます。他にも、コンピュータ やソフトウェアの不具合による事故や障害が起こる可能性もあります。 社員や担当職員の過失による情報漏洩や機械的事故の誘発も有れば、火災や台風などの 自然災害によって通信が遮断され、情報伝達の遅れから事故が発生するなど、インターネ ットに関連する事故や被害は数多くあります。また、情報公開やコミュニケーションの面 でも社会的な問題が発生しています。ネットの掲示板に安易な気持ちで書き込みをして、 他人の心を傷つけてしまったり、心理的な圧迫を与えてしまうケースが有ります。 犯罪を意図していない一般の人が「つい、うっかりした気持ち」から操作ミスや送信間 違いをして重要情報を漏らしたり、一人の不注意な書き込みから企業が社会的な信用を失 うなどの甚大な被害を生んでしまうなど、従来とは違った危険性をはらんでいる事もイン ターネットの特徴です。 インターネットの特性上、被害が広がりやすく、また一度拡散した情報は消 えにくいため、社会問題となるケースが多いです。 5-2 フィッシング詐欺 フィッシング詐欺とは、別人になりすまして電子メールを送りつけたり、有名な会社名 を騙って偽のホームページに誘導させたりするなどの方法で、クレジットカード番号やア カウント情報(ログイン ID やパスワード)などの個人情報を盗み出す行為のことを言いま す。最近では、本物と殆ど区別がつかないように偽造するなど、手口が巧妙になってきて 38 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) おり、ひと目ではフィッシング詐欺であるとは判別できないケースが増えてきています。 フィッシング詐欺の手口としては以下のようなものが挙げられます。 ・電子メールでフィッシングサイトに誘導する手口 クレジットカード会社や銀行からの連絡メールに似せて、本物そっくりな偽サイト にユーザーを誘導して、クレジットカード番号や口座番号などを入力させて情報を盗 み取ります。 ・電子掲示板からフィッシングサイトに誘導する手口 電子掲示板や SNS の投稿サイトに、悪質なサイトのリンクを張って誘導します。 ・偽の URL でフィッシングサイトに誘導する手口 偽サイトの URL を、本物の URL に見せかけてアクセスさせます。 身に覚えのないメールに記載された URL にアクセスすることは控えましょ う。また、有名な Web サイトの URL と酷似した場合が多いため、アクセス する Web サイトの URL を十分にチェックするようにしましょう。 5-3 ワンクリック詐欺 ワンクリック詐欺とは、Web サイトや電子メールに記載された URL を一度クリックし ただけで、一方的に、不当なサービスへの入会などの契約成立を宣言され、多額の料金の 支払いを求められるといった詐欺です。 ワンクリック詐欺の典型的な手口は次のようなものです: ①利用者の興味を引きそうな電子メールや電子掲示板などを利用して、利用者をおびき 寄せる。 ②アダルト系、出会い系の Web サイトを装った内容であることが多い。 ③いかにも正当な契約手続きが完了しているかのように見せかけ、利用料を不正に請求 する。 ④わざとわかりにくいところに不当な利用規約などを表示して、利用者が気付きにくい ような細工をする。 39 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ⑤料金請求の際、携帯電話の個体識別番号や、パソコンの固有識別番号、利用している インターネットサービスプロバイダの情報などを表示し、あたかも利用者が特定され たように見せかける。 ⑥期限内に支払わない場合、延滞料が加算される、法的措置を講ずる、取り立て業者を 向かわせるといった脅迫的な内容で、利用者に支払いを迫る。 これらの対処方法としては、不用意に Web サイトにアクセスせずに、電子メールや電子掲 示板の文面をきちんと読んで利用しましょう。特に利用規約などが記載されている場合に は内容確認が必要です。利用規約を非常に長文にしたり、Web ブラウザで見えずらい表示 に細工して、利用規約を読まずにクリックさせるような手口が横行しています。もし誤っ て悪質サイトにアクセスしてしまい、あたかも個人が特定されたような表現で、 「お支払い 頂けない場合には、自宅にまで伺います」といった脅し文句が表示されても、真に受けな いで無視しましょう。このような手口は法的に規制されており、支払い義務は発生しませ ん。支払拒否の連絡や状況確認のために業者に連絡を取るということは、相手に自分の個 人情報を渡すことにつながります。どうしても心配であれば、支払いをする前に、総務省 電気通信消費者相談センター、消費生活センター、警察などに相談しましょう 40 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 電子メール subject:広告 こんにちは。新しい商品が発売されたので以下のサイトでチェックし てください! クリック http://www.xyz.com Web サイト ○○○ショッピング 入場! クリック 会員登録いただき、ありがとうございます。 ご利用金額:3000 円 お振込先 :○△□銀行 図 5-1 ◇○支店 ワンクリック詐欺 最近では、ツークリック詐欺、スリークリック詐欺という手口も登場しています。ツー クリック詐欺、スリークリック詐欺では、クリック後に確認措置をとる画面がポップアッ プすることにより電子消費者契約法に基づいているかのように見せ、キャンセルをしても 強制的に契約をさせられてしまいます。 ワンクリック詐欺による不正な請求では、最初の請求額が低く設定されてい る場合が多いですが、一度金額を振り込んでしまうと、芋づる的に請求が続 くケースもあるので、絶対に振り込まないようにしましょう。 41 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 5-4 詐欺、犯罪に巻き込まれないために インターネット犯罪に巻き込まれないための対処方法としては、以下があげられます。 知らない Web サイトへのアクセスをする場合は、そのサイトの利用規約や注意事項を確認 したり、電子掲示板の文面をきちんと読むなど、事前確認を行ってから利用しましょう。 うっかり悪質サイトにアクセスしてしまい、不当な支払いを請求されても無視しましょう。 このような手口は法的に規制されており、支払い義務は発生しません。「電子消費者契約 及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」では、消費者がコンピュータの操作 ミスなどで、契約する意志がなく申し込んだ場合における救済措置がとられています。間 違ってクリックした場合や、意図せずに Web サイトを閲覧して料金を請求された場合は、 相手に連絡などはせずに無視しましょう。 支払拒否の意思表示や支払理由などを確認するために業者に連絡を取るということは、 相手に自分の個人情報を渡すことにつながります。決して連絡をしないようにしましょう。 どうしても心配であれば、支払いをする前に、総務省電気通信消費者相談センター、消費 生活センター、警察などに相談しましょう。 インターネットにおける詐欺は、迷惑メールなどの知らない人から送信されるメールが 発端になる場合が多いので、できるだけ知人以外からの電子メールを受け取らないように するために、あらかじめ推測されにくいメールアドレスを使うとか、不特定多数に送信さ れるメールを受信しないように情報機器の受信設定をしておくと良いでしょう。 最近ではホームページを表示した際に、自動的にウィルスを埋め込む悪質な Web サイト も増えてきているため、知らない Web サイトを訪問する場合には、何が起こるかを予測す る警戒心を持ち、可能な限りで事前に調べる心構えが大事です。 初めて訪問する Web サイトには、危険が潜んでいる可能性がある事を常に念頭において インターネットにアクセスして下さい 児童・生徒は、興味本位で Web サイトにアクセスする可能性があるので、 保護者や先生に報告が遅れるケースが多いです。保護者や先生は、Web ブラ ウザのフィルタリングの設定を十分に行いましょう。 42 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 5-5 インターネットに関連した新たな詐欺の被害例 インターネットバンキングを利用している金融機関から「お知らせ」という電子メール が届きました。そこに書かれたリンクをクリックすると、その金融機関のホームページが 表示されました。同時に別の画面が開かれ、ユーザー確認のためにインターネットバンキ ングの ID や暗証番号、秘密の質問の答えの再入力が要求されました。表示された画面には 暗号化通信の SSL の鍵マークも表示されており、フィッシング詐欺ではなさそうです。画 面の指示に従い、ID や暗証番号、秘密の質問の答えの再入力を行いました。しかし、これ が元となり、インターネットバンキング口座の預金を搾取されてしまいました。 解説:これは、これまでの偽のホームページに誘導するタイプのフィッシング詐欺とは異 なる、新たな詐欺の手口の例です。あらかじめ利用者のコンピュータにウィルスを感染さ せておき、不正な入力画面をポップアップして、インターネットバンキング口座にアクセ スするための情報を盗み取る手口です。不正なポップアップ画面の後ろに表示されている のが、本物のインターネットバンキングのホームページなので、見分けるのが困難になっ ています。 対応:金融機関が、ポップアップ画面でユーザー情報の再入力を求めることはありません。 このような画面が表示されても入力をしないようにしましょう。また、利用している金融 機関のインターネットバンキングの機能や操作方法、注意事項などを確認しておき、そこ に書かれていない操作はしないようにしましょう。 5-6 迷惑メール、チェーンメール 電子メールに関する被害として、迷惑メール(スパムメール)、チェーンメールが挙げら れます。 ●迷惑メール 迷惑メールは、受信者の意向を無視して、無差別かつ大量に一括して送信される、電子 メールです。迷惑メールは、スパムメールと呼ばれることもあります。迷惑メールは、単 なる広告活動であったり、悪意のある Web サイトへの誘導をさせるものなどがあります。 ●チェーンメール チェーンメールは、連鎖的に特定多数への配布をするように求める電子メールです。チ ェーンメールの内容は、文書の転送を促す文面だったり、他の人にも転送してしまうよう 43 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) な文面だったりします。チェーンメールを受け取っても、他の人に転送しないようにして ください。 迷惑メールやチェーンメールの受信数が通常のメールより多いとそのメールアドレスは 使いづらくなってしまいます。他の人に迷惑がかかるので、他の人にメールを送信する際 は気を付けましょう。 自分の電子メールアドレス流出は、電子掲示板などの Web サイトに書き込んだり、懸賞 への応募で自らが記載したりすることで起こってしまいます。迷惑メールへの事前対策と しては、推測されにくいメールアドレスを使用したり、電子掲示板などに電子メールアド レスを不用意に入力たりしないことが挙げられます。もし迷惑メールがたくさん送られて くるようになったら、電子メールアドレスを変更するか、携帯電話会社が提供する迷惑メ ールフィルタ機能を利用してください。また、迷惑メールを利用したトラブルに巻き込ま れないために、迷惑メールは無視しましょう。 この度は商品の注文を有難うございます。 注文した商品は液晶テレビです。 以下の商品を購入した覚えのない方は、以下のサイトよりキャンセルを行っ てください。 http://www.yanoo.co.jp 図 5-2 迷惑メールの例 迷惑メールは、無作為に送信する場合が多いため、迷惑メールに返信すると そのメールが有効であることを相手に知らせることになってしまいます。し たがって、迷惑メールの返信は絶対にやめましょう。 44 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 5-7 健康面への影響 インターネットの普及により、一般ユーザーでもコンピュータやスマートフォンを長時 間利用する人が増えてきました。これによりさまざまな健康面への影響が出てしまいます。 身体的には、長時間画面を見続けることによる視力低下や視力障害、キーボードや液晶画 面操作による手首や首の炎症などが発症するケースもあります。このような身体的な負担 を軽減するためにも、休憩をとるなどして、長時間身体に負担をかけないようにしましょ う。 コンピュータやスマートフォンまたはインターネットを、限度を超えて長時間利用する ことによる心への影響は、テクノストレス(techno stress)と呼ばれています。また、心 身への影響は VDT 症候群(VDT は Visual Display Terminal の略)と呼ばれます。テク ノストレスは、コンピュータやスマートフォンなどの電子機器やインターネットを使用す ることに対する不安や、インターネットに依存してしまういわゆる「インターネット中毒」 があります。とくに、オンラインゲームによるインターネット中毒は、日常生活に支障を きたすため、時間を決めてゲームをプレイするよう心がけましょう。もしインターネット 中毒になり、日常生活が困難になった場合は、家族や周囲の人に相談し、カウンセリング を受けることが必要です。最悪の場合は、学校や会社をやめたりする人もいます。 テクノストレスを予防するには、コンピュータの連続使用時間を決めるしか ありません。最近ではスマホのゲームからテクノストレスになるケースが増 加しています。また、スマホゲーム内の課金システムも社会的な問題となっ ています。 45 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 6. 6-1 インターネット関連の法規 著作権の重要性、保護する必要性 インターネットを利用して情報を発信する際には、著作権の侵害に注意しなければなり ません。音楽、映像、写真、イラストなど、インターネットで閲覧できるほとんどのもの は誰かが著作権を有しています。これらの著作物が、製作者に無断で世間に広がった場合、 本人の努力や才能が侵害されるばかりでなく、その人々の収入源を奪う事にもなります。 CD の不正コピーやダウンロードによる音楽業界の衰退を危惧する声もあります。お金を惜 しんで利己的な行為を行う先には、素敵な作品が生まれない、つまらない未来が待ってい ます。著作物に対する敬意と保護の精神を持つ事が大事なのです。 著作物を権利者の許諾を得ないで複製することや、インターネット上に勝手に掲載して 誰でもアクセスできる状態にすることは著作権侵害にあたります。新聞や雑誌などの記事 にも著作権があり、引用の範囲を越えて掲載すると著作権侵害にあたりますので注意しま しょう。また、人物の写真などの場合は、撮った人が著作権を有するだけではなく、写っ ている人にも肖像権があるため、ホームページに掲載する場合にはこれらすべての権利者 の許諾が必要になる場合があります。 市販の素材集(絵や写真など)やインターネットに素材を提供しているホームページな どでは、これらを使用する場合に、権利者に許諾を求める必要がない旨を記載しているこ とがあります。しかし、そのような素材であっても、商業利用については制限がかけられ ていることがあるため、必ず規約をよく読んでから利用するようにしましょう。 著作権は法的に定められていますが、未成年にとって理解することは難しい と思います。なので、自分が苦労して作成した物が、第三者に複製・加工さ れたときにどのような気持ちになるのかを考えさせるのもよいでしょう。 6-2 著作権 ●著作権 著作権は、知的財産権のひとつで、著作物に対する著作者の権利です。自分の制作した 画像や楽曲、撮った写真などを、他人が勝手に公開したりすることを防ぐ法律です。情報 46 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) を発信する際には、著作権の侵害に注意しなければなりません。写真、イラスト、音楽な ど、インターネットのホームページや電子掲示板などに掲載されているほとんどのものは 誰かが著作権を有しています。これらを、権利者の許可を得ないで複製したり、インター ネット上に掲載することは、著作権侵害にあたりますので注意しましょう。 自分のホームページ 他の人のホームページ 私の書いた絵 私の書いた絵 無断で掲載 図 5-2 著作権侵害の例 ●肖像権 肖像権は、自分の肖像(写真や絵画など)を他人に取られたり使用されたりしない権利 です。個人の人格やプライバシーの保護を目的としています。他人の顔写真を無許可で Web ページに掲載したりしないようにしましょう。 ●パブリシティ権 パブリシティ権は、タレントなどの顔や姿などの経済的利益を保護する権利です。広く は肖像権に含まれます。肖像権と同様に、タレントなどの写真を無許可で Web ページに掲 載したりしないようにしましょう。 友達との写真を SNS に載せる場合は、その写真に写っている友人に掲載許 可をもらうようにしましょう。学校で提出するレポートも、Web サイト上の 情報を使用する場合は、その Web サイトの引用を付けるようにしましょう。 6-3 違法ダウンロード 有償で提供されている音楽・映像、電子書籍が無断でインターネット上に置かれていて、 47 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) これらの著作物を、私的使用の目的で自分のパソコンや情報機器、録音/録画装置に勝手に 保存する事を、違法ダウンロードと呼び、著作権を侵害する行為として罰則されます。 インターネット上で漫画や音楽データを見つけても、ダウンロードすること は控えましょう。 6-4 名誉毀損 刑法上の記述として、 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無 にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 」とありま す。文章内の「公然と事実を摘示し」とは、不特定多数の人が認識できるような場所(公 共施設や職場、インターネットの掲示板など)で、具体的な事実を示す事です。名誉毀損 の例で言えば、駅や学校で「こいつの親は前科者だ」とか「こいつの兄貴は中学校しか出 てないんだぜ」などと大声で言いふらす行為が当てはまります。単に「バカ」とか「アホ ウ」と言うのでさえ、侮辱罪として罰せられます。 学校の闇サイトが社会的問題となっています。闇サイトでは、クラスメイト の悪口が書かれているケースが多く、児童・生徒がそのようなサイトを見つ けた場合は保護者や先生に報告するよう指導するとよいでしょう。書き込み をするのは絶対に避けましょう。 6-5 わいせつ物頒布 刑法上の記述として、 「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と 陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金もしくは科料に処する。販売 の目的でこれらの物を所持した者も同様とする。」とあります。 刑法上の「わいせつ物頒布罪」などの犯罪にあたるような文書や画像、動画 などの公開は控えましょう。また、わいせつなものでなくても、閲覧者が嫌 悪感をいだくような文書や画像、動画も控えましょう。 48 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 6-6 特定商取引法 特定商取引法は、消費者トラブルを防ぐために、事業者の不公正な勧誘行為を取り締ま る法律です。 「事業運営者の情報開示」、「商品やサービスの価格と支払い時期、提供期間の 適切な提示」、「事実と著しく異なる情報を表示し消費者に誤認を与えることの禁止」、「表 示を裏付ける資料の提出」、「未承認者に対するメール DM の禁止」、「顧客の意に反する申 込みをさせる広告の禁止」などが規定されています。これらのいずれかに該当するサイト での商取引は控えましょう 特定商取引法の対象には、インターネットでの通信販売が含まれています。 特定商取引法では「クーリング・オフ」を認めていますが、通信販売には、ク ーリング・オフに関する規定はないため、問題となっています。 6-7 電子契約法 インターネットショッピングなどの電子商取引における契約では、申込み完了前に、ユ ーザーが申込み内容を確認できる措置を講じなければならないと規定しています。申込み 内容の確認もないままに、注文完了してしまうサイトは、違法サイトの可能性が高いので 商品購入はしないように心掛けましょう。 電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する 法律)は、電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済などを目的とし た法律です。 49 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 6-8 不正アクセス禁止法 不正アクセスは、利用する権限を与えられていないコンピュータに対して、不正に接続 しようとすること。実際にそのコンピュータに侵入したり、遠隔操作で使用することも不 正アクセス禁止法の違反となり処罰されます。 不正アクセスを防ぐためには、パスワードの厳重な管理にくわえて、英大文 字、英小文字、数字、記号を混在させ、他人にはわかりにくいパスワードに することが有効な手段となります。パスワードを定期的に変更する方法も有 効な手段です。 6-9 個人情報保護法 個人情報とは、生存する個人の情報で、個人を識別できる情報を指します。また、単独 では個人を識別できない情報でも、他の情報と組み合わせることにより、特定の個人を識 別できるものは、個人情報に該当します。個人情報の例は、氏名、住所、性別、生年月日、 勤務先、電話番号、電子メールアドレス、親族情報などです。特に、氏名、住所、性別、 生年月日は、基本 4 情報と呼ばれています。 個人情報は、経済的な価値があります。私たち一般消費者の個人情報は、販売戦略のた めの情報源として、経済的な価値があります。個人情報は私たちの知らないうちに売買さ れたり、個人情報を持っている企業から盗み出されたりする事件が後を絶ちません。これ ら以外にも、個人情報が漏えいするケースとして、USB メモリやノートパソコンの紛失・ 盗難が原因となる場合もあります。 日本では、1989 年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関 する法律」が施行され、2006 年にすべての地方自治体が「個人情報保護条例」を制定し、 個人情報の漏えいが起きないような保護制度をつくってきました。企業活動を中心とする 個人情報保護に関する法律は、2005 年に「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護 法)」として施行されました。 インターネットを利用する際、さまざまな場面で個人情報を使用しなければならない場 面があります。ネットショッピングやネットバンキングなどでは、氏名や住所などの個人 情報を登録する必要があります。このようなサービスを利用する場合は、個人情報を入力 50 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) しなければ、サービスを利用することはできません。個人のホームページを開設する場合、 そのホームページ内に記載する個人情報については十分検討する必要があります。 スマートフォンには、アドレス帳、カメラで撮影した画像、LINE、Facebook 等にログインしたままにしている場合が多いため、スマートフォンは個人情 報の塊といっても過言ではありません。コンピュータウイルスやスマートフ ォンの紛失にはくれぐれも気を付けてください。 6-10 青少年インターネット環境整備法 青少年を有害サイトから守るすることを目的として、平成21年4月1日に「青少年が 安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年インター ネット環境整備法)」が施行されました。 青少年にインターネットを適切に活用する能力を習得させたり、フィルタリングの普及 促進などにより青少年の有害情報の閲覧機会を少なくしたりすることを基本としてインタ ーネット関係事業者に義務などを課すとともに、保護者や、インターネットの利用者みん なで、青少年を有害情報から守る取組を求めています。 Web ブラウザのフィルタリング機能には、指定の Web サイトのみをアクセ ス可能にする方法、児童・生徒にとって有害な Web サイトへのアクセスを 禁止する方法、時間帯による利用制限、などの方法があります。青少年イン ターネット環境整備法では、フィルタリングサービスの利用は、保護者の責 務となっています。 51 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 6-11 特定電子メール法 迷惑メール(スパムメール)は、受信者の意向を無視して、無差別かつ大量に一括して 送信される、電子メールです。迷惑メールは、業務の妨げになったり、インターネット回 線を混雑させたりします。携帯電話・スマートフォンの普及により、迷惑メールは増加し ています。迷惑メール送信を取り締まる法律として、「特定電子メール法」が施行されまし た。この法律により事業者は、広告メールを送信する際には、送信者情報の表示が義務付 けられました。偽った場合には、1 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金が科せられま す。 特定電子メール法では、広告メールを送信する際には、氏名や名称および電 子メールアドレスなどの表示が義務付けられているので、送信者情報が記載 されていないメールには返信等をしないようにしましょう。 6-12 出会い系サイト規制法 出会い系サイトは、面識のない異性との交際を希望する者同士が、電子掲示板を通して、 電子メールやチャットなどでお互いが連絡できるようにするサービスを行っている Web サ イトです。出会い系サイトの特徴として次のようなものがあります: ・会員制であっても偽のプロフィールによって簡単に会員となることができる場合が多 い ・異性交際を希望するユーザーのための Web サイトであることに関係して、1 対 1 で連 絡を取り合えるしくみになっている場合が多い 18 歳未満の人が出会い系サイトを利用することは法律「インターネット異性紹介事業を利 用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(通称、出会い系サイト規制法)」で禁止 されています。 警視庁の発表によると、出会い系サイトに関連した事件の被害者の多くが 18 歳未満です。 トラブルとしては、会員登録によって高額な金額を請求されたり、出会い系サイトで知り 合った人から脅されたり、自分のプロフィールを使用してだれかが会員登録していたり、 などが報告されています。 52 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) SNS のようなコミュニティサイトでも、実質は異性の出会いが目的となって いる Web サイトが数多くあります。 出会い系サイト規制法では、 「異性交際」、 「1 対 1 で連絡を取り合える」という文言が含まれているため同性紹介事業 や会員制の掲示板など出会い系サイトと定義できないものもあります。 53 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 7. 7-1 インターネット利用者のモラル 情報発信者のモラル、心構え インターネットで発生する社会的な被害は、些細な事が原因で起こります。本人に悪気 が無くても、ネットの掲示板に安易な書き込みをして他人の心を傷つけてしまったり、心 理的な圧迫を与えてしまうケースも有ります。また逆に自分が大勢の人から糾弾されてし まうケースも有ります。 操作や通信設定のミス、機器の紛失で情報が漏れるなど、いわゆる「つい、うっかり」 の過失から多くの被害が発生しています。情報発信のしかたを誤ることにより、重要情報 が漏洩(ろうえい)したり、企業・組織のブランドやイメージを大きく低下させたり、自 分のプライバシーを必要以上に公開してしまったり、他人のプライバシーを侵害してしま うなどのトラブルが起ります。 最近の検索技術の向上により、インターネットで公開している情報が断片的なものであ っても、さまざまな情報が組み合わされ、あなた個人が書き込んだ情報であることが特定 されてしまう可能性が高くなっています。また、一度インターネット上に公開された情報 は、本人は削除したくても、コピーされて拡散していった場合は完全に削除することは困 難です。「軽い気持ちで」 「いたずら半分で」「すぐに消せばいいから」といった安易な気持 ちから、公開した情報があっという間にネット上に拡散し、甚大な被害と不幸を招いたケ ースはたくさん有ります。 インターネット上の「情報」には次のようなものがあります: ・ニュース記事などの文字データ ・画像データ、 ・音楽データ インターネットは全世界の人が利用するため、インターネット上の情報の価値は利用者ご とに異なります。たとえば、日本語で記述されたニュース記事は、日本語を理解できない 人にとっては価値の見いだせない情報となります。 インターネット上の情報は電子データでありコピーが簡単で、全世界の利用者がアクセ スできるという特性上、口コミなどの情報の伝搬と異なり、非常に速いスピードで伝搬し、 54 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) コピーが作られ拡散してゆきます。つまり、一度拡散してしまった情報をインターネット 上から全て消し去るということは極めて困難となります。 インターネットでは膨大な情報を簡単に入手することができます。そのため、ユーザー は、情報の信頼性や客観性を自己判断しなければいけません。情報の信憑性を確かめる方 法としては、その情報が個人的意見であるのかどうか、その情報内で使用されているデー タの出所元はどこか、作成された情報の日付、などを確認し、新聞やテレビなどの他の情 報源による情報との比較をするようにすればよいでしょう。 【インターネット上の情報の特性】 ・新聞やテレビなどの従来のメディアより情報量が多い ・情報の価値は、情報の受け取り側に依存する。 ・インターネット上から消えにくい ・複製が容易 インターネットで情報発信をする際には、むやみに掲示板、SNS などに機密情報・個人 情報を書き込まない、誹謗中傷しないことが重要です。これは自分のものだけでなく、家 族や友達などの情報も同様です。インターネットに書かれた情報は広く不特定多数の人に 公開されるため、その情報が悪用されて思わぬ被害を受ける危険性を含んでいる事を常に 頭に置くべきです。また、書き込む内容や情報公開する範囲、その結果どのような影響が 起こりえるか、常に意識をしながら情報発信をするよう心がけましょう。 7-2 ホームページを閲覧するうえで注意すること Web ブラウザは、ホームページ上でさまざまな処理ができるように、各種のプログラム を実行できる仕組みになっています。これらのプログラムの脆弱性を突いて悪用するウィ ルスが埋め込まれたホームページを閲覧すると、それだけでコンピュータがウィルスに感 染してしまう危険があります。 最近では、Web ブラウザへ機能を追加するアプリケーション(プラグインソフト)の脆 弱性を利用した感染方法が増加しています。以前は怪しい Web サイトを訪問しなければ大 丈夫と思われていましたが、最近では正規の Web サイトが不正侵入によって書き換えられ、 ウィルスが仕込まれてしまうケースが急増しています。この場合は、正規の Web サイトを 閲覧しても、ウィルスに感染してしまうことになります。 55 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) また、あたかも無料のウィルス対策ソフトのように見せかけて、悪意のあるプログラム をインストールさせようとする「偽セキュリティソフト」などの悪質な被害が増えていま す。その代表的な手口は、ホームページなどで「あなたのコンピュータはウィルスに感染 しています」のようなメッセージを表示し、利用者を偽のウィルス対策ソフトを配布する Web サイトに誘導する方法です。信頼のできるサイトかを確認し、少しでも怪しいと思わ れるサイトで配布しているプログラムはインストールしないようにしましょう。 7-3 個人情報の公開について インターネット上で公開した情報は、不特定多数の人が閲覧する可能性があり、見知ら ぬ人に悪用される危険性があります。そのため、インターネット上に、名前、年齢、住所、 電話番号、メールアドレス、自分の写真といった個人の情報を公開することの危険性につ いて、きちんと認識しておかなければなりません。たとえば、写真や住所、連絡先が公開 されていれば、そのホームページを見た人があなたに興味を持って、自宅の周りをうろつ いたり、電話をかけてきたりといったストーカー行為を行うかもしれません。また、公開 した情報をもとに迷惑メールや振り込め詐欺などの別の犯罪に利用される可能性もありま す。このような被害から身を守るためには、何よりもインターネット上では、むやみに個 人の情報を公開しないようにすることです。インターネットで公開している個人情報が断 片的なものであっても、さまざまな情報が組み合わされ、あなたであることが特定されて しまう可能性が高くなっています。 また、一度インターネット上に公開された個人情報は、本人は削除したくても、コピー されて拡散していった場合、それを完全に削除することは困難です。個人情報の公開につ いては、非常に慎重に行うべきです。さらに、自分以外の家族や他人の個人に関する情報 を、本人の許可なく掲載することなどは、絶対に行ってはいけない事です 7-4 不正な嫌がらせや迷惑行為に遭わないために インターネット利用の魅力として、個人がホームページやブログ、SNS などを通じて、 自分の考えや日常生活などを手軽に多くの人と共有できること、また、自分の投稿に対す る読者からの反応をすぐに確認できることなどが有ります。その一方で、これらの情報発 信に関連するトラブルも起きています。 自分の管理する Web サイトから情報発信する場合は、まず迷惑行為への対策として、迷 56 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 惑行為の禁止や「不適当と思われる発言は削除します」といった旨をはっきりと明記して おくようにしましょう。そして、これらの行為を発見したら、すみやかに書き込みの削除 を行いましょう。悪質な迷惑行為を受けた場合には、投稿日時、投稿者のコンピュータ名、 IP アドレス、投稿内容などの情報を保存した上で、サイトの管理者などに削除依頼をしま しょう。相手が接続しているインターネットサービスプロバイダや企業の管理者に連絡す ることも対策手段のひとつとなります。 もし自分で対応するのが不安な場合は、専門の相談窓口に問い合わせるのが事もできま す。削除依頼の手順や相談窓口は、以下のサイトなどを参考にしてください。(インターネ ットホットライン連絡協議会・違法・有害情報相談センター・法務省インターネット人権 相談受付窓口 7-5 プライバシーの保護について インターネットは、気軽に情報発信できるメディアですが、便利である反面、発信のし かたを誤ると、他人の心を傷つけたり、トラブルを引き起こす原因にもなります。また、 他者の個人的な情報を勝手に公開してしまったり、他人の人格や品位を下げる内容の記事 を掲載したことで、関連する企業や組織のブランドイメージを大きく損ってしまい、大き なトラブルに発展する事件も発生しています。プライバシーとは「他人の干渉を許さない、 各個人の私生活上の自由」と言われています。 (広辞苑より引用)インターネットにおいて も、実社会と同様に、プライバシーは守られなければなりません。インターネットは、不 特定多数の利用者が接続するので、特に注意を払ってプライバシーに関する情報を管理し なければなりません。 最も大切なのは、自分や知人の個人に関する情報を不用意に公開しないことです。たと えば、インターネット上の電子掲示板やホームページなどへの氏名、住所、電話番号、メ ールアドレスなど個人に関する情報の公開は、プライバシー保護の観点から考えて問題が 無いかをよく考えてから掲示すべきです。基本的に別の人の個人情報は、インターネット に掲示すべきではありません。また、ホームページを開設している人や企業が、アンケー トで個人情報を収集する場合には、情報管理について、重大な責任があるということを認 識しなければなりません。プライバシーに関する情報は、万全な情報セキュリティで管理 する義務があります 57 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) 7-6 インターネットアクセスするうえでの心構え インターネットは、距離感を意識しないで多くの人と交流できる半面、相手の顔が見え ないため、発信した情報に対する反応をリアルに確認できない弱点があります。無遠慮な コメントを書いたり、無意識に他人のプライバシーに関わる画像を掲載する事で、知らぬ 間に誰かを傷つけてしまう危険性が有るのです。インターネットにアクセスする際は、情 報の受け手がどう感じるかを常にイメージして、相手を思いやる感受性が求められます。 日常生活に溶け込んで、どんどん便利になるツールだからこそ、社会ルールを守りながら、 みんなで正しく発展させて行きましょう 7-7 電子メールのマナー 電子メールは、宛先に送信してもメールサーバーやネットワークのトラブルにより、受 信者にすぐに届かない可能性もあります。また、電子メールを送信した人が、そのメール を直ぐに読むかどうかはわかりません。したがって、返信を必要とする電子メールを送る 際には、あらかじめ心に余裕を持つことが大事です。また、受け取り側のことを考慮して、 メールの要件を短く表現した件名を付けることも大切です。 電子メールには、送信元(From)、宛先(To)のほかに、宛先に送信する電子メールを 他の人にも同時に送りたい場合に使用する CC(Carbon Copy) 、BCC(Blind Carbon Copy)を使用できます。CC によって複数の宛先にメールを送信した場合、宛先のユーザ ーが CC 送信された他のユーザーの電子メールアドレスを見ることができます。一方、BCC によって複数の宛先にメールを送信した場合は、宛先のユーザーはお互いの電子メールを 知ることはできません。したがって、お互いに面識のない複数人にメールを送信したい場 合は、BCC による送信を行うようにしてください。個人情報流出の原因となってしまいま す。 58 インターネットベーシックユーザーテスト(教員用) ■CC 送信 太郎 To 太郎 Cc 花子; 一郎 To 太郎 To 太郎 Cc 花子; 一郎 Cc 花子; 一郎 To 太郎 Cc 花子; 一郎 花子 一郎 受信者は他の CC の人の電子メールアドレスがわかる。 ■BCC 太郎 To 太郎 To 花子 To 一郎 送信 To 太郎 Bcc 花子; 一郎 受信者は差出人と受信者(本人)しかわからない。 図 7-1 CC と BCC の違い 59 花子 一郎 平成 26 年度文部科学省委託 「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業」 クラウド時代のWebビジネスに対応した 地域版 IT ビジネスクリエータ学び直し教育プログラム整備と実証 ■実施委員会 ◎佐竹 新市 龍澤 尚孝 中島 慎太郎 河原 成紀 古賀 稔邦 平井 利明 菊嶋 正和 吉岡 正勝 飯塚 正成 学校法人龍馬学園 理事長 学校法人龍澤学園 法人本部事務局事務局長/企画推進部 室長 学校法人有坂中央学園 常務理事/広報本部長 学校法人河原学園 理事長 日本電子専門学校 校長 静岡福祉大学 名誉教授/学校法人上田学園 理事 株式会社サンライズ・クリエイティブ 代表取締役 株式会社日本教育ネットワークコンソシアム 事業開発部マネージャ 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 専務理事 ■開発分科会 ◎平井 利明 中川 隆 高田 孝一 小澤 慎太郎 神馬 一博 山田 太 福田 竜郎 菊嶋 正和 吉岡 正勝 静岡福祉大学 名誉教授/学校法人上田学園 理事 高知情報ビジネス専門学校 副校長 盛岡情報ビジネス専門学校 校長代理・事務局長 中央情報経理専門学校高崎校 教務部情報教育課 課長 河原電子ビジネス専門学校 教務部長 富山情報ビジネス専門学校 学科長 日本電子専門学校 Web システム科 株式会社サンライズ・クリエイティブ 代表取締役 株式会社日本教育ネットワークコンソシアム 事業開発部マネージャ ■実証分科会 ◎佐竹 新市 龍澤 尚孝 中島 慎太郎 河原 成紀 古賀 稔邦 飯塚 正成 学校法人龍馬学園 理事長 学校法人龍澤学園 法人本部事務局事務局長/企画推進部 学校法人有坂中央学園 常務理事/広報本部長 学校法人河原学園 理事長 日本電子専門学校 校長 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 専務理事 室長 平成 26 年度文部科学省委託「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業」 クラウド時代のWebビジネスに対応した 地域版 IT ビジネスクリエータ学び直し教育プログラム整備と実証 インターネットベーシックユーザーテスト 教員用 平成 27 年 2 月 学校法人龍馬学園(高知情報ビジネス専門学校) 〒780-0056 高知県高知市北本町 1-12-6 TEL088-825-0900 FAX088-820-0456 ●本書の内容を無断で転記、掲載することは禁じます。
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