1 編集室 産業化の視点でナノテク情報を提供します ニュース ■電子・情報 2 日立,SPM を使ったナノ描画技術を公開 3 5 青学大,カーボンナノチューブで超電導 7 日立ほか,有機 TFT の印刷法を開発 8 10 11 12 12 ■先端材料 シナノケンシと信大,CNT/ 銅複合粉開発 ■マシン ■その他 中国政府,ナノテク・プロジェクト実施へ 2003 9-22No.1 編集室 創刊号 産業化の視点でナノテク情報を提供します 転職のすすめ ーーー 飯島 澄男氏 日立,ナノテクビジネス推進で専門部署 本日,創刊号をお届けします。私たちはこれから, この最小領域の操作は,マクロなモノと生物の性 関係各省の平成 16 年度ナノテク概算要求 産業化の視点に立ってナノテクノロジーに関する有用 質を大きく変えます。その意味でナノテクは,次世 スペシャルフィーチャー な最新情報をご提供します。調査結果に基づき,産 代の半導体集積回路の製造に用いる以外に,医療や ■インタビュー 業界からの高いニーズにおこたえするため,5年以内 環境分野などに波及し共通基盤技術として産業界の 16 白川 英樹氏 ─ 前総合科学技術会議議員 に実用化が予想される技術の情報を多くします。ただ 幅広い領域に大きな影響を及ぼすことになります。 19 化粧品会社のナノテクノロジー し,10 年以上先の実用化を目指して今から進めなけ 今,ナノテクは世界各国で政府の重点研究開発 24 カレンダー ればならない先進的な研究の情報も適宜加えます。 課題に挙げられています。かつて「made in Japan」 人類は長い歴史の中でモノ作りの経験によって を誇った日本もウカウカしていられません。私たち 技術を蓄積してきました。この「経験的技術」の原 は,海外の見逃せないナノテク情報もウォッチして 理原則の探求が進められ,「科学的技術」が生まれ ご提供するとともに, 情報交換の媒介役を務めます。 ました。ナノテクは,原子・分子や結晶の単位格子 記事を読みながら関係する研究機関や資料にアクセ というモノや生物の性質を決める最小寸法の領域を スできます。動画も張っています。電子媒体ならで 人為的に操作する技術。「科学的技術」寄りですが, はの利便性をご活用ください。 フロンティアカーボンのブランド名は“nanom”に ■解説・企業動向 2003 年 9 月∼11月 目次のタイトルをクリックすると、各ニュースのペー ジへ飛ぶことができます。 本文中のキーワードに関するホームページにリンク しています。 そのページに動画があることを示しています。 まだ未解明な領域に進む上で経験も必要とします。 編集長 黒川 卓 ニュース Inside eReport 2003.9.22 ■電子・情報 性探針先端をレジスト膜に接触させ,探針を走査しながら 03/09/01 日立, 走査プローブ顕微鏡を使ったナノ 描画技術を公開 探針から電子線を照射することで,レジスト膜を絶縁破壊 させパターンを描画する(写真 2)。従来の電子線リソグ ラフィーでは,すでに加速している電子をレジストに照射 するのに対し,走査プローブ方式はレジスト内で電子が加 日立製作所は,走査プローブ顕微鏡の探針を使った 速を始めるのが特徴。電子線照射強度を制御することによ 10nm ∼ 20nm レ ベ ル の 微 細 加 工 技 術 を 研 究 し て い る。 って,加工パターンの断面積を制御できるとともに,描画 2003 年 8 月 29 日, 「第 64 回応用物理学会学術講演会」 寸法が 10nm レベルでも,近接効果による描画パターンの で 補正を必要としない。 同社 基礎研究所 主任研究員 橋詰 富博 氏(写真 1) が「走査プローブ顕微鏡による極微細加工技術と応用」と さらに,走査プローブ顕微鏡描画装置は大気中で動作す 題する講演の中で紹介した。 るともに,装置は小型で安価である。日立製作所は,原子 走査プローブ顕微鏡を使った描画装置は,顕微鏡の導電 間力顕微鏡(AFM)をベースにして描画寸法は 25nm の走 【写真 1】 日立製作所 基礎研究所 主任研究員 橋詰 富博 氏 【写真 2】 走査プローブ顕微鏡描画装置の原理 2 目次へ リンク 「第 64 回応用物理学会学術講演会」 http://www.sanshodo.co.jp/oyobut uri/2003autumn/ 同社 基礎研究所 http://www.hitachi.co.jp/recruit/jski /kenkyu_kaihatu/02/ Inside eReport 2003.9.22 ニュース ■先端材料 青学大理工の春山助教授ら, カーボンナ ノチューブで超電導を確認 青山学院大学 理工学部 電気電子工 学科助教授の春山 純志氏の研究室 http://www.ee.aoyama.ac.jp/Labs/jharu-www/ 科学技術振興事業団 http://www.jst.go.jp/ 青山学院大学 理工学部 電気電子工学科助教授の春山 純志氏の研究室は, 科学技術振興事業団, NTT 物性 基礎研究所所長の高柳 英明氏のグループと共同で,カー ボンナノチューブ(以下ナノチューブ)が超電導現象を 示すことを確認した。臨界温度(Tc)は 0.6K。これまで, 専門家の間でナノチューブが超電導を示すことで“公認” された成果は世界でほとんどない。 春山氏らは,かねてからアルマイトを構成するアルミ ナ(Al2O3)膜に開いた孔の中にナノチューブを成長させ る実験を進めてきた。今回,ナノチューブを成長させた 査プローブ顕微鏡描画装置をつくった(写真 3) 。レジスト 後,Al2O3 膜の表面全体を上からニオブ(Nb)薄膜で覆い, には日立化成の RD2100N を使う(膜厚 50nm ∼ 100nm) 。 Al2O3 膜を支える Al 基板と Nb 薄膜の間に通電しながら冷 ただし,描画速度は 100 μ m/s と遅い,探針(材料は 却し,0.6K で電気抵抗がゼロになることを確認した(図 Si)が磨耗する,などの問題もあり,現在は研究開発用の 1)。Al,Nb ともに超電導を示す金属で,Tc は Al が 1.2K ツールとして活用している。橋詰氏は,大面積パターンは で Nb が 9K。このことから春山氏は,Al と Nb それぞれと 電子線リソグラフィーで,微細パターンは走査プローブ顕 接するナノチューブの両端に近接効果でクーパー対が発生 微鏡描画で,と使い分けることを研究している。 し,冷却によって超電導領域がナノチューブの両端から伸 (神保 進一) 目次へ リンク 03/09/05 【写真 3】 日立製作所が原 子間力顕微鏡(AFM)をベー スにして作製した走査プ ローブ顕微鏡描画装置 3 び,0.6K の時に両者がつながってナノチューブ全体が超 NTT 物性基礎研究所所長の高柳 英 明氏 http://www.brl.ntt.co.jp/people/dir ector/jap.html Inside eReport 2003.9.22 ニュース 電導状態になったとみている。 するが,超音波を当てることで,孔から飛び出した部分 実験で使用した Al2O3 膜には,直径が約 80nm の細孔が は切断される。 規則的に 2 次元に配置している。アセチレン(C2H2)と 次に,熱蒸着あるいはスパッタリングによって Al2O3 膜 窒素(N2)の混合ガス雰囲気中で,孔の中に多層ナノチュー の表面に Nb 薄膜を形成する。続いて,高真空中で 650℃ ブを成長させる。その際,孔の底にはナノチューブ成長 ×約 30min のアニール処理を施すことで,Nb は孔の内側 の触媒となるコバルト(Co)を付着してある。成長し にあるナノチューブ内に拡散し,ナノチューブを構成する たナノチューブの外径は孔の直径と同じ 80nm で,ナノ 炭素(C)との界面で NbC 化合物を形成した。Nb の拡散 チューブの内径は約 40nm。ナノチューブを構成するグラ 深さが約 20nm(ナノチューブ全長の約 1/50)であること, フェンシート 1 枚の厚さが約 0.4nm だと仮定すると,約 NbC 化合物が形成されたことは,走査電子顕微鏡(SEM) 50 層のナノチューブと推定される。Al2O3 膜の孔の高さ などによって確認した(写真)。NbC 化合物が形成された は約1μ m(1000nm)。ナノチューブは孔の外まで成長 結果,Nb と C は低抵抗で接合された。測定系のイメージ 【図1】 温度と電気抵抗の関係図。外部磁界を印加しない時(H=0),電 気抵抗は温度が 0.6K の時にゼロとなった 【写真】 SEM(走査電子顕微鏡)と STEM(走査型透過電子顕微鏡)で観 察したナノチューブと,NbC 化合物 4 目次へ Inside eReport 2003.9.22 ニュース ■先端材料 シナノケンシと信大, カーボンナノチュー ブが分散した金属微粒子の製法を開発 シナノケンシ(長野県丸子町,金子 元昭社長)と 信 州大学工学部電気電子工学科 遠藤研究室教授の遠藤 守信 氏および助手の新井 進氏は共同で, 「遠藤ファイバー」の 名で知られる直径が 100nm 程度の多層カーボンナノチュー ブ(MWCNT)が均一に分散した球状の金属微粒子(写真 1) “Physical Review B”誌 http://prb.aps.org/ 日本物理学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/bbs /meetings.html 科学技術振興調整費 http://www.mext.go.jp/a_menu /kagaku/chousei/ シナノケンシ http://www.skcj.co.jp/ 信州大学工学部電気電子工学科 遠 藤研究 http://endomoribu.shinshu-u.ac.jp/ 【図2】 測定系の断面イメージ を図2で示す。 この研究はナノチューブが超電導を示すことを確認する ために行ったシーズ先行型だが,春山氏は今後,今回の成 果を利用する応用分野の開拓も同時並行して進める。春山 氏は,今年に入って数回,海外で開かれた国際会議で成果 の途中経過を発表したが,まとまった詳しい内容は近々発 行の “Physical Review B” 誌で初めて発表する。 日本では, 日本物理学会秋季大 会で発表する。なお,この研究は 科学技術振興調整費の サポートを受けている。 目次へ リンク 03/09/11 9 月 23 日に,岡山大学で開かれる 5 (黒川 卓) 【写真1】 MWCNT が分散した銅微粒子の走査電子顕微鏡写真 ニュース Inside eReport 2003.9.22 を作製する技術を開発した。 リンク 最初に作ったのは銅の微粒子。この微粒子は銅の導電性 目次へ 長野・上田地域知的クラスター創生 事業 http://www.forum-nagano.jp/ とカーボンの熱伝導性および摺動性を兼ね備えていること から,シナノケンシでは精密モーター用ブラシの摩擦部分 などに適用する実験を開始した。また信大は,銅以外の金 属に MWCNT を分散した微粒子を作製できることも確認 しつつある。 金属微粒子は電解メッキ法で析出物として得られた。 銅微粒子が析出した実験の場合,まず硫酸銅水溶液中に MWCNT を入れる。そのままでは MWCNT は溶液上に浮 くが,新井氏はあらかじめ硫酸銅水溶液に特殊な界面活性 剤を混合。そこに MWCNT を入れると溶媒中に均一に分 6 【写真2】 今回開発した銅微粒子の焼結体 散し,青色の硫酸銅水溶液が黒色の縣濁液に変わった。続 いて通電すると,ステンレス製の陰極が析出物で覆われて 出させる研究を,シナノケンシは主に MWCNT 入り銅微 黒く変わった。析出物は指で触れても分離することができ 粒子の量産法の開発と応用分野の開拓を行っている。 た。 その一つとしてシナノケンシは,この銅微粒子の各種物 厳密に言うと,陰極表面は銅メッキされ,その外側に黒 性データを測定するために焼結体を作った(写真 2)。 色の物質が付着した。この付着物を走査電子顕微鏡で観察 現在,同社は焼結体の電気特性や機械特性を測定してお したところ,毛玉のような球状の銅微粒子とわかった。粒 り,精密モーター用ブラシ以外にもさまざまな製品への適 径は数μ m から約 30 μ m である。燃焼や溶解によって, 用可能性を検討している。 銅の母体の中に分散している MWCNT は数質量%と分析 なお,この研究は文部科学省が進める された。 知的クラスター創生事業で実施しており,今回の成果は事 現在,信大は MWCNT を分散した他の金属微粒子を析 業化見通し第一号となった。 長野・上田地域 (黒川 卓) Inside eReport 2003.9.22 ニュース ■マシン 03/09/11 日立ほか, 薄型ディスプレイの量産化に向 け有機トランジスタの印刷製法を開発 日立製作所,産業技術総合研究所,光産業技術振興協会 は共同で,液晶ディスプレイ(LCD)や有機 EL(OEL)に 代表される薄型ディスプレイの量産化に向けて,有機材 料を用いた薄膜トランジスタの印刷製法を開発した。積み 重ねる部品同士の位置ずれをなくすため,表面修飾,自己 組織化という二つの技術を用いたことが今回のポイント。 フォトリソグラフィーの工程を大部分省略できるため,現 在の無機材料を用いる薄膜トランジスタに比べ製造工程を 【写真1】 試作した有機トランジスタ 1/10 にできる。さらに使用する材料も 1/10 に減らすこと ができるとしている。また,常温,常圧下での塗布あるい は印刷という技術を用いていることから,大がかりな半導 体製造装置も不要になる。 有機トランジスタ(写真 1)は次のようなステップで作 った。 1)ガラスなどの基板材料の上にゲート電極を作製 今回,このステップにはフォトリソグラフィー技術を 用いた 2)その上に絶縁膜を作る 【写真2】 日立本社で行われたプレス発表会に参加した三名。左から,日 立 基礎研究所 ナノ材料・デバイスラボ主任研究員の安藤正彦氏,日立中 央研究所材料・デバイス研究センタ画像デバイス研究部部長の近藤克己氏, 産総研グループリーダーの鎌田俊英氏 7 目次へ Inside eReport 2003.9.22 ニュース 3)続いて絶縁膜の表面を「単分子膜」で修飾。 単分子膜の材料は今のところ未公表 4)ゲート電極の直上部分以外に紫外線を照射し単分子膜 を除去 極の幅が 0.8mm というもの。それとは別に,幅が7μ m, 間隔が 3 μ m の配線パターン形成には成功している。後者 で有機トランジスタを作ることができれば,高精細の薄型 ディスプレイに活用できるとしている。 (黒川 卓) これにより,単分子膜は絶縁膜を挟んでゲート電極の 直上だけに残る 5)粒径が 10nm オーダーの「金属微粒子」をベースとする ペーストを塗布 金属微粒子は単分子膜の上には付着せず,絶縁膜の上 ■その他 03/09/05 中国政府, 2003 年中に総合ナノテク・プ ロジェクト実施へ には付着する。その結果,単分子膜の間隔を開けてソ ース電極とドレイン電極が形成される。金属微粒子の 中国政府は,ナノテクノロジーの研究開発支援に特化し 材料名は明らかにしていない た新プロジェクトを,早ければ 2003 年 11 月から実施す 6)最後に,ソース電極とドレイン電極の間に半導体であ る有機材料を印刷法で付ける る予定だ。プロジェクトの具体的な内容は,中国のナノテ クノロジー関連研究機関の幹部 12 人で策定している。中 国科学院 物理研究所 研究員 兼 中国科学院 ナノ科学・ナ というものである。最後のステップで用いた有機材料は, ノ技術センター 副主任 解 思深 氏 ( 写真 1) が本誌のイン 5 環式炭化水素のペンタセン(ジベンゾアントラセン)系 タビューに応じ明らかにした。 材料や各種の高分子材料。この有機材料は,単分子膜の上 それによると,従来中国政府主導のナノテクノロジーに だけ選択的に自己組織化して高品質の半導体となった。こ 関する研究開発支援としては,国務院が 1986 年から実施 のようにして,積層する部品の位置連れが起こらない印刷 している 技術が開発された。 体字中国語)科学技術省が 1997 年から実施している 「国 今回,トランジスタとして特性を確認したのは,ソー 家重点基礎研究発展計画(973 計画)」(簡体字中国語)が ス電極とドレイン電極の幅がそれぞれ 0.3mm,ゲート電 ある。しかし,いずれも新材料領域の一部としてナノテク 「国家ハイテク研究発展計画(863 計画) 」(簡 8 目次へ リンク 「国家ハイテク研究発展計画(863 計画) 」 (簡体字中国語) http://www.863.org.cn/863_105 /index.html 「国家重点基礎研究発展計画(973 計画) 」 (簡体字中国語) http://www.973.gov.cn/index.html Inside eReport 2003.9.22 ニュース ター」を 2001 年に設立することに合意し,2002 年には 中国政府の承認を得ている。現在,総勢約 350 人(うち 専任研究者約 150 人,大学院生・ポスドクなど約 160 人) 2 を収容する約 1 万 4000m の建物を北京市海淀区中関村に 建設中であり,2004 年末から活動を開始する予定だ。国 家ナノテクセンターの研究領域としては,(1)ナノ材料, (2)ナノデバイス, (3)ナノバイオ, (4)計測・分析, (5) 【写真 1】 中国科学院 物理 研究所 研究員 兼 中国科学 院 ナノ科学・ナノ技術セン ター 副主任 解 思深 氏 コンピュータ・シミュレーション --- を予定している。 なお,新プロジェクトの具体的な支援領域,支援総額, 支援先などは現時点で明らかではない。解氏は「さまざま な研究者が自身の研究の優位性を訴えており,調整に苦労 ノロジーを扱っているにすぎなかった。863 計画,973 計 している」としている。 画によって国家自然科学基金などから年間約 1 億 7000 万 人民元(約 25 億 5000 万円,1 人民元= 15 円)をナノテ クノロジーの研究支援に当てているが,中国科学院など一 部の研究機関にしか配分していなかった。 これに対し新プロジェクトは,ナノテクノロジーに特化 することによって,(1)大学,研究機関,企業に在籍し ている中国のナノテクノロジー関連研究者約 550 人を支 援対象にする,(2)材料だけでなく,ナノデバイスやナ ノバイオなどの領域も開拓する --- ことを狙っている。 すでに新プロジェクトを先取りする形で,中国科学院, 清華大学,北京大学の 3 者が共同で「国家ナノテクセン 【写真 2】 清華大学 化学工 学系 学位委員会主任 教授 魏飛氏 9 目次へ Inside eReport 2003.9.22 ニュース ■その他 「学者・ 研究者の転職をすすめる」 ̶̶̶ 飯島 澄男氏 カーボンナノチューブを発見した(1991 年)ことで知 られている飯島 澄男氏が 2003 年 8 月 29 日, 「第 64 回 応用物理学会学術講演会」において「ナノチューブの科学 ・技術」と題して講演し,同氏の過去の業績を振り返って 「転職のたびに新しい業績を立ててきた」として,聴講者 に“転職のすすめ”論を展開した。これは,飯島氏が今春 「第 3 回応用物理学会業績賞」を受賞したことを記念し 例えば,清華大学 化学工学系 学位委員会主任 教授 魏 て,一般講演 合同セッション「カーボンナノチューブの 飛 氏(写真 2)は,「ナノテクノロジーの応用分野を発展 基礎と応用」で講演したもの。 させることも重要だが,基礎技術の研究をおろそかにす 講演では,2002 年 るとそれを使った応用分野の研究も成り立たなくなってし ときには,「当初カーボンナノチューブに対しての受賞で まう」と訴えている。魏氏は,CVD 法でカーボンナノチ あったが,過去の電子顕微鏡に対する業績も付け加えてほ ューブの大量生産方法を研究開発し(写真 3) ,その用途 しいと注文した」(飯島氏)ことなどのエピソードを披露 も開拓している。すでに,世界中の約 300 の研究機関に, し,同氏の業績はカーボンナノチューブだけではないこと 研究室で製造したカーボンナノチューブのサンプル品を提 を強調した。 供した実績がある。魏 氏は「新プロジェクトには,基礎 また,カーボンナノチューブの研究に関しては「サイエ 研究の成果を迅速に産業化に結びつける効率的な仕組みづ ンスとしてはおもしろいが,具体的な応用となるとまだま くりも必要」と提案している。 だ」(飯島氏)であるとして,「カーボンナノチューブを使 (神保 進一=北京発) 目次へ リンク 03/09/01 【写真 3】 清華大学 化学工学系 研究室に設置しているカーボン ナノチューブ製造プラント 10 日本学士院賞・恩賜賞を受賞した 「第 64 回応用物理学会学術講演会」 http://www.sanshodo.co.jp/oyobut uri/2003autumn/ 「第 3 回応用物理学会業績賞」 http://www.jsap.or.jp/activities/awa rd/outstanding/index.html 日本学士院賞・恩賜賞 http://www.japan-acad.go.jp/japan ese/jigyo.htm Inside eReport 2003.9.22 ニュース った電子デバイスがほんとうに事業化できるのかどうかも 分からない」(飯島氏)という意見を述べた。 ナノテクノロジーの事業化の例として,飯島氏は電子顕微 鏡の例を挙げた。日本メーカーには電子顕微鏡を研究し開発 ■その他 日立,ナノテクビジネス推進で専門部署を 新設し, 研究成果の事業化を加速 り立っていない。むしろ,日本製の電子顕微鏡を使っている 日立製作所は 8 月 25 日,日立グループ全体でナノテク 外国の半導体メーカーが儲かっている,という現状を訴えた。 ノロジー関連ビジネスを推進する専門部署として同社のト 最後に飯島氏は,転職がきっかけで自身の業績が積みあ ータルソリューション事業部内に「ナノテクビジネス推進 がってきたことを紹介した。環境をリフレッシュすること 室」を設けたと発表した。スタート時のメンバーは 15 名 が重要であるという。転職による不安定さや年金支給額減 で,トータルソリューション事業部,研究所,グループ企 少などの損失面もあるが, (1)転機, (2)新鮮,(3)出 業から集めた。富松 淳一郎氏が室長を務める。 会いなどの面で大きなメリットがあるとした。 日立グループには,グループグループ全体でのナノテク なお,飯島氏は 1963 年に電気通信大学を卒業,68 年に 関連事業を推進する組織としてすでに「ナノテクノロジー 東北大学理学部物理学科 博士課程を修了し,東北大学理 統括推進センタ」がある。センタ長を務めるのは,日立研 学部助手になった。1970 年には米国アリゾナ州立大学 研 究開発副本部長の児玉 英世氏である。こちらは,ナノテ 究員となり電子顕微鏡の研究に専念した。1982 年からは, ク関連の研究を推進するための専門部署という位置づけに 新技術事業団(現:科学技術振興事業団)で創造科学堆進 なっている。今回,ビジネスを推進する専門部署ができた 事業林超微粒子プロジェクトリーダーとなり,1987 年に ことで,ナノテク関連の研究とビジネスの両方を推進する は 体制ができた。なお,日立がナノテクビジネス推進室を設 NEC に在籍している。さらに現在は, 名城大学教授, けた背景には,同社会長である金井 務氏が経済産業省の 独立行政法人 産業技術総合研究所 新炭素系材料開発研究 提案で民間企業が任意団体の「ナノテクノロジービジネス センター長, 科学技術振興事業団基礎的研究発展推進事 推進協議会」の初代会長に内定したことを受けている。 業 発展研究飯島チーム代表も務めている。 (神保 進一) 目次へ リンク 03/08/26 ・製造する能力があるが,電子顕微鏡ではほとんど事業が成 NEC 研究開発グループ特別主任研究員となり現在も 11 (黒川 卓) NEC 研究開発グループ http://www.labs.nec.co.jp/top.html 名城大学 http://www.meijo-u.ac.jp/index2.html 独立行政法人 産業技術総合研究所 新炭素系材料開発研究センター http://unit.aist.go.jp/carbon-center/ 科学技術振興事業団 http://www.jst.go.jp/index.html Inside eReport 2003.9.22 ニュース ■その他 フロンティアカーボン http://www.f-carbon.com/jpn/index .html フロン ティアカ ーボ ン のブランド名 は “nanom” に フロンティ 【写真】 フロンティアカーボンの“nanom”ブランド・ロゴ ア カ ー ボ ン は 2003 年 8 月 22 日, 同 社 の ブ ラ ン ド 名 を “nanom”(ナノム)とし,nanom ブランドで複数の商品 名を統一すると発表した。 ・フラーレン誘導体→ nanom spectra。 (水酸化フラーレン, 水素化フラーレンなど。カスタム品にも応じる) nanom は,フラーレンがナノサイズでありながら巨大 ( 神保 進一 ) な可能性と希望を秘めた分子である,という意味に由来し ており,そのキーワードである「ナノ(nano) 」の“na”, 「巨大な(enormous) 」の“no” 「分子(molecule) , 」の“m” からできた造語である。 今後,同社は以下のように商品名を切り替えていく。 ■その他 03/09/01 関係各省, 平成 16 年度のナノテク予算概 算要求を財務省に提出 ・ 混 合 フ ラ ー レ ン → nanom mix。 (C60 が 60 %,C70 が 25%,高次フラーレンが 15%で構成するフロンティア ナノテクノロジー関連研究を進める各省は 2003 年 8 月 カーボンの主力製品。500 円 /g) 29 日,平成 16 年度の概算要求を財務省に提出した。本誌 ・C60 → nanom purple。 (有機溶媒に溶かすと紫色になる は各省の資料を入手したので,ポイントを紹介する。 ことから。一般的な製品の純度は 96%以上。価格は純 まず総務省は,ナノテク関連として,「量子情報通信技 度によって異なり 3000 円 /g ∼ 5000 円 /g) 術の研究開発」で 38 億 2000 万円, 「超高速フォトニック・ ・ フロンティアブラック→ nanom black。 (フラーレン精 製時に分離したすす) 目次へ リンク 03/08/25 C60 な ど の フ ラ ー レ ン を 販 売 し て い る 12 ネットワーク技術に関する研究開発」で 17 億 8000 万円, 「情報通信デバイスのための新機能・極限技術の開発」で Inside eReport 2003.9.22 ニュース 421 億 7000 万円,「ナノ技術を活用した超高機能ネット 代 FTTH 構築用有機部材開発」の 3 テーマ,府省連携プロ ワーク技術の研究開発」で 3 億 3000 万円を要求した。こ ジェクトの一環でバイオテクノロジーとの融合として「ナ こで提出された要求内容は,ナノテクと情報通信技術の融 ノ医療デバイス開発」「ナノカプセル型人工酸素運搬体製 合技術が含まれており,最終的な政府での区分としてはナ 造」の 2 テーマを挙げた。 ノテクでなく,情報通信技術に分類されるものもある。現 厚生労働省は,府省連携プロジェクトが平成 16 年度に 時点で,区分は明確にしていない。 スタートすることから,「ナノメディシン」関連の研究予 文部科学省は,平成 15 年度の 246 億円に対し,平成 16 算として約 9 億円の増額要求を行った。環境省は, 「ナノ 年度は 35%アップの 333 億円を要求した(表1) 。新規に テクノロジーを活用した環境技術開発事業」に 1 億円増額 掲げたプロジェクトは, 「最先端ナノ計測・加工技術の実 の 4 億円,新規事業としてナノテクの地球温暖化対策分へ 用化プロジェクト」の 20 億円と,府省連携プロジェクト の応用」で 3000 万円を要求した。農林水産省は, 「生物 に選ばれたテーマの一つである「革新的ナノ薬物送達シス 機能の革新的利用のためのナノテクノロジー・材料技術の テム(DDS)のための担体材料開発」の 18 億円である。 開発」として,1 億 9800 万円を要求した。 経済産業省は,平成 15 年度の 537 億 2000 万円に対し, なお,内閣府総合科学技術会議は,これから各省から提 平成 16 年度は 26%増額の 679.1 億円を要求した(表2)。 出された資料について外部有識者の意見を聞きながら優先 この数値も,総務省と同様にナノテクと他の領域の境界研 順位をつける。また,2003 年 10 月 1 日に特殊法人から 究を含む金額であり,同省の場合には情報通信技術,バイ 独立行政法人に変わる科学技術振興事業団(科学技術振興 オテクノロジー,環境技術それぞれとの融合研究の予算が 機構に改称),理化学研究所,日本学術振興会,新エネル 合計されている。 ギー・産業技術総合開発機構などの独法化後の業務内容 同省が平成 16 年度から新規にスタートさせる研究テー を把握する。その後,総合科学技術会議は順位表と独法 マは,経済活性化プロジェクトとして「高効率 UV 発光素 における新業務に対する見解を財務省に提出し,財務省 子用半導体開発」と「大学発事業創出実用化研究開発事 はそれを 12 月末に平成 16 年度の予算案を作成する際の 業」の 2 テーマ,環境技術との融合として「高効率マスク 参考資料とする。 製造装置技術開発」「積層メモリチップの技術開発」「次世 (黒川 卓) 13 目次へ Inside eReport 2003.9.22 ニュース 【表1】 文部科学省の平成 16 年度概算要求(ナノテクノロジー・材料分野) 平成16年度概算要求額 ( )内は平成15年度予算額 333 億円(246 億円) 1.実用化・産業化を展望した先端的・革新的な研究開発の推進 52 億円(26 億円) (1)経済活性化のための研究開発プロジェクト(リーディングプロジェクト)の推進 ○ナノテクノロジーを活用した新しい原理のデバイス開発 32 億円(26 億円 ) 4.5 億円( 4 億円) ○極端紫外(EUV)光源等の先進半導体製造技術の実用化 12 億円(12 億円) ○ナノテクノロジーを活用した人工臓器・人工感覚器の開発 8 億円(1.5 億円) ○次世代型燃料電池プロジェクト 3 億円( 5 億円) ○次世代の科学技術をリードする計測・分析・評価機器の開発 4 億円( 3 億円) (2)最先端ナノ計測・加工技術の実用化プロジェクト 20 億円( 新規 ) (3)ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ ※ 512 億円の内数(446 億円の内数) ※科学技術振興事業団「戦略的創造研究推進事業」の内数であり,集計には含めない。 2.大学・独法等における独創的・先端的研究開発の推進 ※集計に含めない。 252 億円(192 億円) 物質・材料研究機構,理化学研究所等における基礎的・基盤的な研究開発 ○物質・材料研究機構 223 億円(168 億円) うち,革新的ナノ薬物送達システム(DDS)のための担体材料開発 18 億円( 新規 ) 安心で安全な社会・都市新基盤実現のための超鉄鋼研究 10 億円( 7.5 億円) 新世紀耐熱材料プロジェクト 13 億円( 3.5 億円) ○理化学研究所 ○その他内局経費等 3.研究機関・分野を超えた横断的かつ総合的な支援 23 億円 ( 17 億円 ) 6 億円( 7 億円) 30 億円(29 億円) 大型・特殊な施設・設備の外部研究者への利用機会の提供,関連情報の収集・発信等の研究支援 ○ナノテクノロジー総合支援プロジェクト 30 億円(29 億円) 14 目次へ Inside eReport 2003.9.22 ニュース 15 目次へ 【表2】 経済産業省の平成 16 年度概算要求(ナノテクノロジー関連分野) 平成 16 年度の主な研究テーマ 平成 16 年度概算要求額 ( )内は平成 15 年度予算額 1.ナノテクノロジー・材料分野 (1)ナノマテリアル・プロセス技術 122.5 億円 2.IT との融合分野 218.7 億円 47.1 億円(47.0 億円) 高度情報通信機器・デバイス基盤プログラム 218.7 億円(223.7 億円) ○精密高分子技術 9.4 億円(9.3 億円) ○次世代半導体材料・プロセス基盤プロジェクト(MIRAI) ○ナノコーティング技術 3.7 億円(3.6 億円) ○携帯用燃料電池技術開発 ○ナノカーボン応用製品創製プロジェクト (2)ナノ加工・計測技術の開発 12.4 億円(12.4 億円) 17.8 億円(14.4 億円) 59.0 億円(45.5 億円) 8.2 億円(2.2 億円)等 3.バイオとの融合分野 37.2 億円 ナノバイオテクノロジープロジェクト 37.2 億円(32.8 億円) ○機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト 5.0 億円(5.9 億円) ○先進ナノバイオデバイスプロジェクト 5.2 億円(4.9 億円) ○次世代量子ビーム利用ナノ加工プロセス技術 3.0 億円(3.1 億円) ○ナノ微粒子利用スクリーニングプロジェクト 4.7 億円(4.5 億円) ○3 D ナノメートル評価用標準物質創成技術 7.0 億円(2.6 億円) ○ナノ医療デバイス開発プロジェクト 新規 3.0 億円 ( 0 ) 等 (3)ナノテク実用化開発 25.5 億円(19.5 億円) 4.ナノテク関連施策を含む諸施策 301.6 億円 ○ダイヤモンド極限機能プロジェクト 7.4 億円(7.4 億円) ○産業技術研究助成事業 ○デバイス用高機能プロジェクト 2.4 億円(2.4 億円) ○産業技術実用化開発補助事業 ○カーボンナノチューブ FED プロジェクト 8.4 億円(7.4 億円) ○大学発事業創出実用化研究開発事業 43.0 億円(24.1 億円) 新規 4.0 億円 ( 0 ) 等 ○交通信号機の LED 化工事への補助制度 28.1 億円(25.0 億円) ○グリーン調達における革新的製品開発補助制度 新規 3.0 億円 ( 0 ) ○高効率 UV 発光素子用半導体開発プロジェクト (4)MEMS 等 41.6 億円(44.4 億円) 78.0 億円(52.8 億円) 131.5 億円(61.3 億円) ○ MEMS プロジェクト・MEMS 用設計・支援システム研究開発プロジェクト 17.1 億円(19.2 億円) ○ナノテク産業発掘調査 新規 1.0 億円 ( 0 ) ○次世代半導体ナノ材料高度評価プロジェクト 20.8 億円(20.7 億円) ○ MOT 人材の育成 17.0 億円(2.0 億円) ○カーボンナノファイバー複合材料プロジェクト 3.7 億円(3.2 億円) 総額 679.1 億円(537.2 億円) スペシャルフィーチャー インタビュー 白川 英樹氏 前内閣府 総合科学技術会議議員 Inside eReport 2003.9.22 導電性ポリマーの発見と開発によって 2000 年にノーベ ル化学賞を受賞した白川 英樹 氏(写真)は,2001 年∼ 2002 年,内閣府 総合科学技術会議の議員として重点分野 推進戦略専門調査会で 基礎研究は情報公開し,ドブにお金を 捨てることも納得させる政策が必要 ナノテクノロジー・材料プロジェ クトを検討するメンバーのリーダーを務めた。現在も, 日本学士院会員などとして科学技術分野を俯瞰(ふかん) する重要な立場にある。 今回は,白川氏に,今後のナノテクノロジー政策のあり 方について聞いた。 (聞き手は黒川 卓,神保 進一) 問:ナノテクノロジーの定義は人によって違いますが,先 生の定義はどのようなものでしょうか? 白川 氏:ナノテクノロジーとは,原子・分子それ自体が 発現する機能をそのまま使って,1 個∼複数個の原子・分 子を意図的に並べ,希望する機能を設計し合成することで す。従来のマクロ(バルク)で見た物性で材料を作るので はありません。強度が高い材料を作るために,金属原子を 主体とした結晶構造がどうなるか,という問題はマクロな 視点でしか見ておらず,ナノテクノロジーではありません。 原子・分子レベルですからスケールは必然的に nm レベ ルになりますが,だからといって,単にスケールが nm レ ベルのものを作るだけではナノテクノロジーではありませ ん。ただし,ナノレベルでの加工によって何かブレークス 16 目次へ リンク ナノテクノロジー・材料プロジェク トを検討するメンバー http://www8.cao.go.jp/cstp/project /nanotech/haihu06/member.htm 日本学士院 http://www.japan-acad.go.jp/ Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー ルーが期待できるのであれば,それはナノテクノロジーと ただし,原子・分子の配列をできるだけナノサイズオー 呼んでもいいと思います。 ダーで制御する技術の対象は,ナノサイズに限りません。 問:科学技術政策におけるナノテクノロジー・材料の位置 巨大な航空材料も船舶材料も高強度,高弾性の鋼板を作る 付けは何ですか? ために結晶粒界をどうするか,結晶構造をどうするかとい 白川 氏: うことだってあるわけです。そういう従来の巨大な材料に 第 2 期科学技術基本計画(平成 13 ∼ 17 年度) では, 「ナノテクノロジー・材料」が四つの重点項目のう 関しても,重要性は今でも生きているし,さらに改良を進 ちの一つになっています。ナノテクノロジーと材料は全然 めなくてはいけないということで,政策では材料も入れて 違うものです。ナノテクノロジーはあくまでも技術で,材 あります。単なるナノテクノロジーの材料ではなくて,分 料ではありません。材料をナノサイズの原子・分子で取り 子集合体としての材料という意味もあるわけです。 扱うという意味でのナノテクノロジーです。 ナノテクノロジーは,学問領域ではなくて,いろいろな 学問領域にまたがっています。ナノテクノロジーに関係す る研究者は,ある一つの専門は必要かもしれないですが, それだけでナノテクノロジーがやっていけるとは思いませ ん。化学だけではなくて物理学や生物学も知っている必要 があります。 問:日本のナノテクノロジー政策はどうあるべきだとお考 えですか? 白川 氏:ナノテクノロジーだけを取り上げても意味がな く,どうあるべきかは,科学技術政策全般について論じる 必要があります。総合科学技術会議でこれらを議論してい くうちに,政策の限界が見えてきました。 限界とは“政府はすでに芽が出ていることにしか予算を 付けることができない”という問題です。すでに芽が出て 17 目次へ リンク 第 2 期科学技術基本計画 http://www.kantei.go.jp/jp/kakugik ettei/2001/kagakugijutu/pdfs/0330 summary.pdf Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー いるわけですから,その後どうなるかの予測をして予算を ています。これに対して競争が大事だということになりま 付けることは可能です。 したが,その対象は芽が出たものに限っています。研究者 ところが,科学技術がかなり進歩したといっても,これ も科研費や国家プロジェクトの予算を取ってくるしかなく までに分かっていないことは無限にあると思います。これ なってきています。 までの歴史を振り返っても,誰もまだ知らないことが必ず 政策の限界を突破するためには,納税者を納得させるた あるに違いないと,少なくとも私自身はそう思っています。 めの手段を考えなければなりません。その場合は,利益を 芽が出ていない,種もあるかどうか分からない,そういう 生まないだろうし,ドブにお金を捨てるようなことも納得 ものに対して政府がお金を使えるかというと,これは今の させる必要があります。 国会議員にそういう発想は全くないだろうし,官僚もそう 問:第 2 期科学技術基本計画では納税者にそのような問題 は考えていません。納税者が納得する理由が見つからない を納得させる方法を盛り込んでいるのですか? からです。 白川 氏:基本計画書に「科学技術と社会の新しい関係を ことわざに「まかぬ種は生えぬ」とありますが,国が種を 構築する」ということがうたってあります。これに対して まく必要があるのです。ですから,第 2 期の科学技術基本 はマスメディアの力も助けになると思っています。 計画では基礎研究を重視することを盛り込んでいます。し 問:しかし,われわれマスメディアも,政府の政策決定過 かし,実際には自転車操業的に,次から次へと解決しなけ 程には不透明な部分が多いと感じています。 ればならない問題が出てくるため,種をまく,芽が出るとい 白川 氏:私も各府省が打ち出す政策の中には,すでに委託 う重要で基本的な問題には深く議論が及びませんでした。 先・受託先の先生の目星が付いているものがあると感じてい 問:10 年,20 年,100 年先を見据えた科学技術政策とは ます。しかし問題は,それをどの程度公表する必要がある どんなものですか? のだろうか,ということになります。公募しているプロジェ 白川 氏:それについては,今まで旧文部省が担当してい クトに関しては,もっと改善しなければならない点がある ました。大学などの高等教育機関では講座費がこれに相 と思います。さらに,評価委員会などの会議が非公開の場 当しますが,研究領域を指定しておらず,学生一人当たり 合は,その理由を述べなければならないと思います。 この程度必要だということで, “つかみ金”として支給し 18 目次へ Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー ■解説・企業動向 19 目次へ リンク 肌表面の発色や手触り感の改善が中心 新材料採用には慎重 ーーー 化粧品メーカーのナノテクノロジー 関連記事 1 http://nano.nikkeibp.co.jp/members/ NEWS/20030531/10466/index.shtml 関連記事 2 http://nano.nikkeibp.co.jp/members/ NEWS/20030703/10515/index.shtml 最近“ナノテク”をうたう化粧品が増えてきている( 関連記事 1) 。しかし,化粧品メーカーによって“化粧品に 【写真 1】 カネボウ 総合研究所 研究企 画 推 進 部 兼 生 産・ 技術室 技術企画部 係長の牛木 勝氏 おけるナノテクノロジー”の位置付けはまちまちだ(注) 。 カネボウは,「ナノテク材料が持つ機能性や有効性のほ かに, ユーザの感性や官能に訴える手段がナノテクである」 (カネボウ総合研究所 研究企画推進部 兼 生産・技術室 技 菱商事はそれを化粧品に応用するために「ビタミン C60 バ 術企画部 係長の牛木 勝氏) (写真 1)と位置付け,その応 イオリサーチ」 を 2003 年 7 月末に設立した ( 関連記事 2) 。 用は繊維にまで広がっている。資生堂もナノテクノロジー この解説では,まず大手化粧品メーカーとして資生堂と の導入に積極的だ。資生堂は 1987 年 8 月には nm レベル カネボウにおけるナノテクノロジーの取り組みを紹介し, でのコーティング技術を使い,顔料を使わないメークアッ ベンチャー企業としてビタミン C60 バイオリサーチの狙い プ化粧品「IT アイカラーバリエーション」を発売した。 を明らかにする。 資生堂のナノテクノロジーは,発色制御や乳化液の手触り 感などの改善にとどまらず,ファンデーションにスキンケ 資生堂:肌荒れの仕組みを解明し粉体で原因酵素を除去 ア機能を持たせるまでに発展している。 資生堂におけるナノテクノロジーには, (1)表面修飾(ナ 一方で,ナノテクノロジーのシーズから化粧品への応用 ノコーティング) ( ,2)複合粉体合成, (3)ナノレベル粒子, (4) を検討しているベンチャー企業も増えてきている。C60 フ 高圧乳化 --- がある。主に,粉体・液体の粒子や膜の構造と成 ラーレン誘導体が高い活性酸素消去機能を持つとして,三 分を工夫することによって,発色や手触り感を改善している。 注記 注:大手化粧品メーカーでも「nm レベルの材料を使っていたとしても 製品ではあえてナノテクであること を宣伝していない。結果的に材料の 寸法が nm レベルになっているにす ぎない」 (花王 広報)とその効果を うたわないところもある。 Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー ▶表面修飾(ナノコーティング)(1988 年) :口紅など になりみずみずしい感触を得ることができる。 の顔料の粉体に厚さ 1nm のシリコンポリマー膜を気相 資生堂におけるナノテクノロジーで特筆すべき技術は, CVD 法によってコーティングし,この膜に不飽和化合物 複合粉体合成技術において,肌荒れを防止するスキンケア を付加し機能性基を導入する。例えば,口紅の顔料に Si- 機能を持つ粉体「スキンケアパウダー(SCZ)」を開発し CH2CHR を導入することで,親水性の顔料の分散がよく たことである(2001 年)。SCZ の開発において,資生堂は, なり,顔料本来の発色をする。 まず肌荒れの発生メカニズムを解明した。それによると, ▶複合粉体合成(1987 年) :顔料を含まず,雲母と低次 表皮には酵素プラスミノーゲンが存在している。表皮の一 酸化チタン TinO2n-1 の薄膜構造で,膜厚(100nm レベル) 部が荒れると角質層に酵素ウロキナーゼが出現し,ウロキ を制御することによって,反射光の色を選択できる。これ ナーゼはプラスミノーゲンを酵素プラスミンに変換する。 らをパール材ともいう。最近の製品では,パール材の表面 このプラスミンが肌荒れを起こす原因であるという。 に直径 50nm,長さ 300nm ∼ 500nm の酸化亜鉛を被覆す SCZ は,プラスミン発生原因であるウロキナーゼを角 ることで,皮脂固化作用を追加している(2003 年)。 質層から除去するという手法で肌荒れを防止する。その ▶ナノレベル粒子(1992 年) :直径 20nm の酸化チタン 仕組みは,ウロキナーゼの活性防止成分として直径 20nm に鉄をドーピングして得られた白っぽい粉末は,紫外線を ∼ 30nm の酸化亜鉛を厚さ 2nm ∼ 3nm のシリカ膜でコー 吸収し肌と同じ小麦色に変色する。紫外線(UVB)防止効 ティングした粒子を使う(写真 2)。シリカ膜がウロキナー 果と白浮き防止効果を合わせ持つ。また,紫外線(UVA) ゼを引き付け,酸化亜鉛でウロキナーゼの効果を抑制する。 防止効果がある酸化亜鉛の粒子を,肌の上で広がりやすい 資生堂が 4000 人を対象にモニター・テストを実施した 花びら状の粒子(30nm)にすることで,塗布面がなめら 結果によると,SCZ 配合のファンデーションを使い始めて かになるり可視光が反射しない(白浮きしない)効果を得 2 カ月で,95%が肌の状態がよくなった(つるつるしてき ている(2003 年)。 た,潤いが出てきた,かさつきやニキビが減った,てかり ▶高圧乳化(1998 年) :通常の乳液の乳化粒子は 1 μ m 2 にくくなった,化粧崩れがなくなった)と回答した。 ∼ 10 μ m であるが,500kg/cm の高圧をかけて乳化する 資生堂 基盤研究本部 マテリアルサイエンス研究セン と乳化粒子の直径を 30nm まで細かくできる。乳液が透明 ター 素材開発研究所 小川 克基 氏(写真 3)は「化粧品開 20 目次へ Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー 21 目次へ リンク 関連記事 3 http://nano.nikkeibp.co.jp/members/ NEWS/20030826/10583/index.shtml 【写真 3】 資生堂 基盤研究本 部 マテリアルサイエンス研 究センター 素材開発研究所 小川 克基 氏 【写真 2】 肌荒れ防止効果を持った資生堂の「スキンケアパウダー(SCZ)」。 2001 年 3 月発売の「EI スキンアップパクト」から採用。出典:資生堂 発における「美・防・快」というキーワードに照らし合わ と水分層を 5nm ∼ 10nm 間隔で液晶構造にし,有効成分 せてナノテクノロジーを適用している。そのための基礎技 を放出する順番を制御する。 術の蓄積は多く,実力もある」と資生堂のナノテクに対す ▶光彩パウダー(2001 年):直径約 10 μ m の雲母に,粒 る取り組みを説明している。 径の異なる大・小の酸化チタン粒子を組み合わせて酸化チ タン層をコーティングする。膜厚を制御することで,青,黄, カネボウ:酸化亜鉛粒子の再凝集防止粉砕技術を開発 赤,緑,紫の 5 色の光彩パウダーを製造。 カネボウの場合も 1990 年からと比較的早くから化粧品 ▶液晶製剤(2001 年):角質層が持っている保湿機構を にナノテクノロジーを導入している。 リポソームポリグリセリン脂肪酸エステルを使って模倣 ▶ナノエマルション(1990 年) :化粧水の保湿効果を高 (写真 4)。繊維にも応用することで,吸湿効果のほかに, めるために,直径 50nm ∼ 80nm の油分を配合し,乳液の 静電気防止効果も得た( 関連記事 3)。 ような感触を出す。 カネボウの最近のナノテクノロジー応用製品は,超微粒 ▶医薬部外品リポソーム(1995 年) :有効成分の油分層 子ナノバリアパウダーを使った日焼け止め剤「アリィ パー Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー 【写真 4】 表皮の角質層の保湿構造を模倣したカネボウの液晶製剤。出典: カネボウ 【写真 5】 日焼け止め剤を塗り乾燥したときの表面の凹凸の様子。出典: カネボウ フェクトサンスクリーン F」だ。日焼け止め剤の撥水性を 集を抑制する。カネボウによると,水浴 1 時間経ったとき 長持ちさせるために,日焼け止め剤を肌に塗り乾燥したと の日焼け止め効果は,従来品では 60%低下したが,超微 きに,蓮の葉のようなきめ細かな凹凸構造ができるように 粒子ナノバリアパウダーを使うとほとんど低下しない。3 した。日焼け止め剤を肌に塗り乾燥すると, 溶媒が揮発し, 時間経過後でも 15%の低下にとどまるという( 22 目次へ 【動画】 写真をクリックすると動画が見られます。 動画) 。 日焼け止め剤に入っているシリコン樹脂の収縮力で凹凸が できる(写真 5)。 シーズが先行しているビタミン C60 バイオリサーチ きめ細かな凹凸構造は,紫外線防止剤の酸化亜鉛のナノ このように,ナノテクノロジーに取り組んでいる資生堂や レベルの粒子が再凝集することを防ぐことで形成できる。 カネボウなどの大手化粧品メーカーは,必ずしもナノテクノ ボールミルを使って酸化亜鉛をナノレベル粒子に粉砕する ロジーのシーズからナノテク化粧品を開発しているわけでは ときに,オクチルシランを添加することによって,粉砕直 ないのが現状だ。また,ナノテクノロジーの適用範囲も肌の 後の粒子表面にオクチルシランが付き酸化亜鉛粒子の再凝 表面せいぜい表皮の角質層までに限定しているのも特徴だ。 超微粒子ナノバリアパウダーを使っ た日焼け止め剤(右)の効果は水浴 1 時間後でもほとんど落ちない。出 典:カネボウ Inside eReport 2003.9.22 スペシャルフィーチャー 自社の技術に自信を持っている資生堂は「C60 フラーレ ンなど,いわゆるナノ材料を化粧品に使うためには,効果 を示し,C60 がその効果のうちどれだけ貢献しているのか をはっきり示す必要がある。現在いわゆるナノ材料を使う 具体的な計画はない」 (小川 氏)としている。 カネボウの牛木 氏は「詳しいことを明らかにできない が,すでに 5 年前に C60 フラーレンを使うことを検討した」 【写真 6】 ビタミン C60 バ イ オ リ サ ー チ 社長の松林 賢司 氏 としている。しかし「アレルギー系の反応が認められたが, 原因が C60 なのか,C60 に混じっていた不純物なのかは特 定していない。現時点では積極的に使うことを検討せず, 様子見の状態だ」(牛木 氏)という。 品にも応用できるための基礎的なデータを採り,具体的 これらに対し,C60 フラーレン誘導体の効用についてビ な製品の試作・販売が可能であるのかメドをつける」と タミン C60 バイオリサーチ 社長の松林 賢司 氏(写真 6) し,ビタミン C60 バイオリサーチの目的が,まだ研究開発 は「三菱商事と共同研究している広島県立大学 生物資源 段階にすぎないことを強調している。三菱商事がビタミ 学部 教授 三羽 信比古 氏は約 2 万件の論文を発表している ン C60 バイオリサーチを設立した経緯は,三菱商事の関連 が,それによると,C60 は活性酸素消去能力がビタミン C 会 社 米 Fullerene International 社(FIC) が C60 フ レ ー ラ の数十倍あるとともに,C60 の利用で著しい実害はない」 ンの物質特許を持ち,そのアジア地域における占有実施権 と説明している。ただし,三羽 氏は本誌の取材に対し「広 を三菱商事が得ていることも関係している。C60 フラーレ 島生物科学研究会の取り決めによって,ビタミン C60 バイ ンを生産する三菱商事の関連会社「フロンティアカーボン オリサーチに関することも含め研究内容の取材を受けるに から C60 を購入する」(松林 氏)というように,ビタミン は人件費などで 20 分 3 万 3333 円の料金が必要」として C60 バイオリサーチは,ナノテク化粧品ベンチャーという おり,具体的な内容に関しての言及は避けた。 よりも C60 フラーレンの販売先の一つとしての位置付けが 松林 氏は「2005 年 7 月までには化粧品だけでなく医薬 強い。 (神保 進一) 23 目次へ カレンダー Inside eReport 2003.9.22 日付 名称 9 月 24 日 ( 水 ) 2003 年度 第 2 回ナノ高分子ワークショップ 山口大学 吉田キャンパス (山口市) 高分子学会,産業技術総合研究所 kokusai@spsj.or.jp 10 月 8 日 ( 水 ) ∼ 10 月 10 日 ( 金 ) 日経ナノテクフェア 2003 東京ビックサイト (東京都江東区) 日本経済新聞社 http://www.nikkei-nanofair.com/ 10 月 8 日 ( 水 ) ∼ 10 月 13 日 ( 月 ) IUMRS-ICAM2003 パシフィコ横浜 (横浜市) 日本 MRS http://www.mrs-j.org/ICAM2003/ie/ 10 月 9 日 ( 木 ) 「日経ナノテクノロジー」創刊記念セミナー 東京ビックサイト (東京都江東区) 日経BP社 http://www.nikkei-nanofair.com/n_seminar.html 10 月 15 日 ( 水 ) 広島大学リエゾンフェア 2003in 東京 東京流通センター (東京都大田区) 広島大学 地域共同研究センター http://home.hiroshima-u.ac.jp/techrd/ 10 月 15 日 ( 水 ) ∼ 10 月 17 日 ( 金 ) Light Emitting Diodes 2003 10 月 16 日 ( 木 ) ∼ 10 月 18 日 ( 土 ) 沖縄国際シンポジウム 10 月 27 日 ( 月 ) 「光メカトロニクス」公開シンポジウム 場所 万国津梁館 (沖縄県名護市 ) 国際シンポジウム国際シンポジウム(主催:内閣府) http://www.okinawasympo2003.jp 日本科学未来館 (東京都江東区) 文部科学省 科学研究費特定領域研究 B http://www.adthree.com/om2003/ Thistle Marble Arch (英国・ロンドン) CMP-Cientifica,IIR http://www.nano-economics.com/ World Nano-Economic Congress 11 月 12 日 ( 水 ) ∼ 11 月 14 日 ( 金 ) International Symposium on Functional NTT 厚木 R&D センター Semiconductor Nanosystems(FSNS2003) (神奈川県厚木市) 11 月 12 日 ( 水 ) ∼ 11 月 14 日 ( 金 ) 第14回マイクロマシン展 11 月 16 日 ( 日 ) ∼ 11 月 20 日 ( 木 ) 第 7 回原子スケール制御表面界面ナノ構 奈良県新公会堂 造国際会議(ACSIN-7) (奈良市) 科学技術館 (東京・北の丸公園) 目次へ 主催 問合先 DoubleTreeMissionValley INTERTECH http://www.intertechusa.com/ Hotel( 米国・サンディエゴ) 11 月 3 日 ( 月 ) ∼ 11 月 5 日 ( 水 ) 24 NTT,NEDO,JST http://www.brl.ntt.co.jp/event/fsns2003/index.html メサゴ・メッセフランクフルト株式会社 http://www.mesago-messefrankfurt.com/micro/ 日本応用物理学会 http://www.ele.eng.osaka-u.ac.jp/acsin7/ 日経ナノテクノロジー Inside eReport (毎月第 2、第 4 月曜日発行) 2003 年 9 月 22 日号(No.1 創刊号) 購読料金1年 (24 号) 98,000 円 (本体 93,333円) 購読申し込み・問い合わせ 電話 03-5696-1111 発 行 人●宮田 満 編 集 長●黒川 卓 編 集●神保 進一 / 西村 勝彦 広 告●企画部長○竹田 茂 販 売●販売部長○近藤 一郎 / 島田 貴 編集アシスタント●小川 美弥 日経 BP 社 Nikkei Business Publications, Inc. 東京都千代田区平河町 2-7-6 〒 102-8622 © copyright 2003 日経 BP 社 〔ご注意〕 日経ナノテクノロジー Inside eReport をコ ピー等で複製することは,社内用,社外用 を問わず,日経 BP 社の承諾なしにはできま せん。無断複製は損害賠償,著作権法の罰 則の対象となります。
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