CDMA における 制御チャンネルのない発信方式 金田 直樹, 塩見 格一 kanada@enri.go.jp, shiomi@enri.go.jp 独立行政法人 電子航法研究所 管制システム部 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.1/26 OverView ENRI • はじめに • 昨年の発表 (概要) • 遠近問題とは • 従来の緊急発信 • 提案した緊急発信方式 • 提案した方式の利点と欠点 • 研究の発端 : 昨年発表の問題点 • 提案する優先発信方式のアイデアと構成 • 提案する方式のの利点と欠点 • 制御チャンネルのある発信方式 • 制御チャンネルのない発信方式 • まとめ CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.2/26 Introduction (1) なぜ CDMA か : 航空無線に CDMA 導入? ENRI • 高い周波数利用効率 (周波数の割当が容易) • マルチパスに強い (RAKE 受信) • 通信路容量の割り当てが柔軟 (Soft Capacity) • ソフトハンドオーバ • 拡散利得によるアンテナの小型化 • 無線 LAN, GPS 等, 広範囲に利用 • 携帯電話の技術を航空無線に ⇒ 緊急通信等の優先が必要 • 昨年 : CDMA 上で緊急通信等を優先する簡単 で効果的な方法を提案 ⇒ 問題点があった CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.3/26 Introduction (2) 今回の発表は • 昨年の問題点を解決 • 昨年提案方式の本質的な利点はそのまま • より有効な周波数の利用 • より頑強な発信方式 : 耐ノイズ性, ビット誤り • より容易な実装 : 新規装備時の低コスト化 • より自由な用途 : 用途は電波法に縛られない • 拡張例 : 制御チャンネルのない発信方式を提案 制御チャンネルからの解放 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.4/26 Preliminaries まずは昨年の発表を振り返る 準備と用語 FDMA : 周波数分割多元接続 : 周波数で区別 TDMA : 時間分割多元接続 : 時間で区別 CDMA : 符号分割多元接続 : 符号で区別 • 本発表では直接拡散 (DS-)CDMA について議論 • 1 つの基地局と n 個の移動局からなるシステム 電波法第五十六条に定める遭難通信, 緊急通信, 非常通信及び安全通信を緊急通信等と呼ぶ • ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.5/26 The Near-Far Problem 遠近問題 近くの強い信号 −→ 遠くの弱い信号 干渉 ENRI CDMA で遠近問題が不可避な理由 • 1 つの受信機で多くの移動局の信号を受信 • FDMA : 同じ周波数で送信しない → 区別可 • TDMA : 同時に送信しない → 区別可 • CDMA : 同時に同じ周波数で送信する → 受信 機は強い信号の影響で弱い信号の情報を失う 遠近問題解決策:電力制御 (携帯電話, by Qualcomm) 衛星基地局 (GPS) CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.6/26 Traditional Emergency Call 緊急通信等を発信するための従来方式 • 航空無線 : 現在は人間による手順 自動的に緊急通信等を優先する方法はない 緊急通信等発信 → システム全体がデッド ロック • 緊急通信等専用の通信路を用意 例 : 非常通信周波数, 非常用スロット etc. • 通常使用しない通信路を用意する ⇒ 周波数利用効率の低下 • 非常通信周波数の聴取義務 : 人間に負担 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.7/26 Emergency Call (CDMA)-1 基地局 0 移動局 2 移動局 3 .. . 移動局 1 移動局 n □肉□食方式緊急発信 • 遠近問題, 隠れ端末問題の対策済みシステム • 移動局 1 が緊急通信等を発信する方法は… ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.8/26 Emergency Call (CDMA)-2 基地局 0 抑圧 × × × 移動局 1 移動局 2 移動局 3 .. . 移動局 n 弱肉強食方式緊急発信 1. 強い電波を出す (大出力 or 空中線利得変更) 2. 遠近問題により他の通信を抑圧 3. 基地局との独占的通信路確立 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.9/26 Advantages of First Method (1) 1. 周波数の有効利用が可能 通常通信に使用しない通信路はもはや不要 2. 単純で理解しやすい 3. 確実性 : ノイズ耐性, ビット誤りで失敗しない 4. 上位層のプロトコルに依存しない 5. 大きな改修は不要 6. 通信速度設定は柔軟 (独占的通信路をも設定可) 3,4 は OSI 7 層モデルで言えば物理層による優先制 御方式であることに由来する利点である ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.10/26 Advantages of First Method (2) 7. 遠くのセルに影響は及ばない ⇒ システム全体がデッドロックしない HHHHHHHHHHHHHHHH v ← 緊急発信中の無線局 HHHHHHHHHHHHHHHH HHHHHHHHHHHHHHHH 通常通信を続けられる → v HHHHHHHHHHHHHHHH 参考文献 (追加) ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.11/26 Problems and Solutions 昨年いただいた質問 : 電界強度を上げる方法 • 航空機で出力を大きくするのは困難 • 10W → 100W, 100W → 1kW は難しい • 電源, 発熱, 設置場所の問題 etc. • 空中線利得を大きくすればよい ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.12/26 Problems and Solutions 昨年いただいた質問 : 電界強度を上げる方法 ENRI • 航空機で出力を大きくするのは困難 • 10W → 100W, 100W → 1kW は難しい • 電源, 発熱, 設置場所の問題 etc. • 空中線利得を大きくすればよい??? • 利得を大きくすると追尾が大変 アンテナのビームを絞ったとき, 高速移動体で ある航空機からの基地局追尾は困難 • アイデアは良いが, 航空機への実装は困難では • 他の問題 : 他局の通信に故意に干渉 → 緊急通信等の発信にはむしろ望ましいが, 用途が電波法により制約される CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.12/26 Proposed Method : The Origin ここからが今日の本題 今回の研究の発端 • 出力を大きくしたりアンテナのビームを絞ら ずに同様のことを実現したい 今回提案する方法 • 昨年提案した方式の問題点を解決 • 構成はよりシンプルに • 応用範囲はより広く ⇒ 制御チャンネルのない発信方式 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.13/26 Proposed Method : Base (1) • 緊急通信等を含む優先通信の本質 • 回線が全部通信中の時に, 緊急状態である という情報を伝達する • 最初に多くの情報を伝達する必要はない • 昨年の提案 : 電界強度を大きくして, 遠近問題 により他局を抑圧 → 実装は困難 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.14/26 Proposed Method : Base (1) • 緊急通信等を含む優先通信の本質 • 回線が全部通信中の時に, 緊急状態である という情報を伝達する • 最初に多くの情報を伝達する必要はない • 昨年の提案 : 電界強度を大きくして, 遠近問題 により他局を抑圧 → 実装は困難 本提案方式のアイデア 電界強度ではなく電力スペクトル密度の大きな 電波により優先通信を実現する → 電波そのものを強くする必要がない ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.14/26 Proposed Method : Base (2) 優先通信の発信 電界強度ではなく, 電力スペクトル密度 (Power Spectrum Density, PSD) max p( f ) の大きな電波 f 電力一定 : 帯域狭い ⇒ 電力ス ペクトル密度高い スペクトル比較 p( f ) 6 優先通信を通常通信と区別する ため帯域フィルタ (BPF) をつけ た受信機を基地局に用意する ENRI 高電力スペクトル密度の電波に より全回線が使用中でも情報は 確実に基地局に届く f0 f - 点線 : 前回方式 CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.15/26 Proposed Construction (1) 電力スペクトル密度 (PSD) が高い信号の生成方法 平均電力 P • PSD p( f ) = p0 の間に P = p0 B が成り立つ 帯域幅 B • • 通信路容量 C (bps), 雑音平均電力 N に対して P C = B log2 1 + が成り立つ N 1 P が一定の時 p0 ∝ , C ∝ B B 電力スペクトル密度 p0 は通信路容量 C に反比例 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.16/26 Proposed Construction (2) • 通信速度低 ⇔ 電力スペクトル密度大 (前頁) • CDMA : 拡散変調による高 chip rate(高速通信) • 通信速度低 ⇔ 低 chip rate • ENRI chip rate 最低 ⇔ 拡散変調をやめる 1 枚 Skip CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.17/26 Proposed Construction (2) • 通信速度低 ⇔ 電力スペクトル密度大 (前頁) • CDMA : 拡散変調による高 chip rate(高速通信) • 通信速度低 ⇔ 低 chip rate • • chip rate 最低 ⇔ 拡散変調をやめる 拡散変調をやめる, 簡単な方法 拡散符号を 0 や 1 の連続 (直流成分) にする p( f ) p( f ) 6 6 =⇒ f この信号は通常通信を妨害しない (予稿付録) - • ENRI 拡散変調中止 f 1 枚 Skip CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.17/26 Proposed Construction (3) 基地局側の構成 • 基地局は拡散されない信号を受信するため, こ の信号専用の狭帯域無線機を別に持つ • 基地局は通常通信しつつ, この信号を受信可能 • 通常通信に使用中の通信路を, 緊急通信に振り 向けるかどうかは基地局側で決定する ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.18/26 Proposed Construction (3) 基地局側の構成 • 基地局は拡散されない信号を受信するため, こ の信号専用の狭帯域無線機を別に持つ • 基地局は通常通信しつつ, この信号を受信可能 • 通常通信に使用中の通信路を, 緊急通信に振り 向けるかどうかは基地局側で決定する 高電力スペクトル密度の信号を生成する別法 6 • 無変調信号による PSK • 周波数ホッピングによる通信 -f ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.18/26 Proposed Protocol (1) 移動局から基地局への緊急発信手順 (複数発信) • 移動局も緊急発信中 に狭帯域信号受信必要 移動局 (要認証 : SYN Cookie 等) • • CDMA の広帯域信号と 狭帯域信号の受信を 1 つの受信機で切替え 最終的に CDMA で通信 ⇒ 2 つ目以降の移動局が 緊急発信可能 1 枚 Skip ENRI 基地局 無線機 1 (狭帯域) (1) 発信 (2) 符号 基地局 無線機 2 (CDMA) 要求 割当 (3)Ack . . . 以下, 通常の通信手順に従い, 通信を行う 太線は帯域の狭い信号を表す CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.19/26 Proposed Protocol (2) 移動局が CDMA 用の受信機で狭帯域信号を受信 • 復号 (受信) は符号化 (送信) と逆の手順を行う • 狭帯域信号の生成の逆は何か? • 逆拡散をやめることで狭帯域信号が受信可 • 逆拡散をやめるには逆拡散を行うときの拡散 符号を直流成分にすればよい 受信側も拡散符号を変更するだけで狭帯 域信号を扱うことができる ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.20/26 Advantages of Second Method 1. 周波数の有効利用が可能 通常通信に使用しない通信路はもはや不要 2. 単純で理解しやすい 3. 確実性 : ノイズ耐性, ビット誤りで失敗しない 4. 上位層のプロトコルに依存しない 5. New! 移動局無線部の改修不要 : デジタル処 理だけで実現可能, 変調方式等の変更は不要 6. New! 通常通信中の他局に干渉しない ⇒ 電波法による使用法の制約がなくなる ENRI 物理層による優先制御の特長は残しつつデジタル 処理だけで実現でき, 法令上の制約もなくなった CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.21/26 Problems and Solutions 昨年提案した方式との比べた問題点と解決策 1. 基地局に受信機が2つ必要 移動局の負担が大きなプロトコルから基地局 の負担が大きなプロトコルへ変化 2. 発信時の通信速度が遅い 昨年の方式 : 全帯域を占有した高速通信可能 提案方式 : 通信容量は 1ch 分 ⇒ 緊急通信等の発信があれば基地局は通常通 信を切断し, 全帯域を用いて移動局と通信を行 うことができる ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.22/26 Transmission with Ctrl. Ch. 通常の発信 1. 2. 3. 4. 移動局が制御チャンネル (ch) で基地局を呼ぶ 基地局は空き ch があるか調べる 基地局は制御 ch で移動局に空き ch を通知 空いていた通信用 ch を使用して通信開始 移 (制) 基 (制) 移 (通 ) 基 (通 ) 1 2 3 4 - ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.23/26 Transmission without Ctrl. Ch. 通常通信の発信に応用 1. 2. 3. 4. 移動局が拡散しない狭帯域波で基地局を呼ぶ 基地局は収容可能かどうか調べる 基地局は狭帯域波で移動局に空きを通知 空いていた拡散符号を用いて CDMA 通信開始 移 (狭) 基 (狭) 移 (拡散) 基 (拡散) 1 2 3 4 - ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.24/26 Conclusions ENRI • 新しい緊急通信等発信方式の提案 • 昨年の問題点を解決 • 昨年提案方式の利点はそのまま • 周波数の有効利用 • 物理層による優先通信 プロトコル非依存, ビット誤りで失敗しない • 単純で理解しやすい • より容易な実装 : 符号の変更で電波を変える • より自由な用途 : 用途は電波法に縛られない • 拡張例 : 制御チャンネルのない発信方式を提案 航空無線 by CDMA OverView に戻る CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.25/26 References 参考文献 (追加) AUSCERT Advisary AA-2004.02 “Denial of Service Vulnerability in IEEE 802.11 DSSS Wireless Devices” 日本でのアナウンス : JPCERT/CC Alert 2004-0007 「IEEE 802.11 DSSS 無線機器における DoS の脆弱性」 ENRI CDMA における制御チャンネルのない発信方式 – p.26/26
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