Application Note EuroEA3000 Application Note No.3 -- 堆積物中の有機炭素・窒素・硫黄分析 北海道大学大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 有機地球化学研究グループ 椎根 大 氏、 鈴木 徳行 教授 ■ 概要 EuroVector社製 小型元素分析装置 EA3011(シングル炉モデル)を用い、海底堆積物中の 炭素(有機炭素)・窒素・硫黄を分析した例をご紹介します。 EA3011では、試料を高温炉で完全燃焼させ、生成ガスを反応管内の試薬と反応させ、 N2、CO2、H2O、SO2ガスとします。ガスはGCカラムにより成分ごとに分離され、TCD (熱伝導度検出器)で検出されます。得られたクロマトグラムはCallidusソフトウェアで 処理され、各元素の試料中含有量(%)が得られます。 本測定では炭素(有機炭素)・窒素・硫黄を測定しましたが、有機炭素量を求めるためには 塩酸による前処理が必要です。そのため、有機炭素は窒素・硫黄とは別に測定を行い ました。堆積物や土壌には含水層状ケイ酸塩鉱物(粘土鉱物)が多く含まれます。そのため、 EAの燃焼により生成するH2Oガスをトラップ剤により除去しました。これにより、堆積物中の 微量な硫黄についても精度よく測定を行うことができました。 Fig.1 堆積物のCHNSクロマトグラム例 ■ 測定条件 試料調製は以下の通りに行いました。また、検量線用スタンダードとしてはL-Cystine(N:11.66%、C:29.99%、H:5.03%、 S:26.69%)を用いました。 ・ 堆積物試料ー全炭素・全窒素・全硫黄測定 スズカプセルに堆積物試料を約4mg分取した後、五酸化バナジウムを約6mg分取し(試料量の約1.5倍)、ピンセットで 丸めて測定に使用しました。 ・ 堆積物試料ー有機炭素測定 堆積物には無機炭素成分(CaCO3)が含まれます。そのため、塩酸処理により無機炭素を除去してから測定を行いました。 銀カプセルに堆積物試料を約4mg分取した後、1N のHClを滴下しました。反応終了後、ホットプレートで乾燥させました。 乾燥後のカプセルに五酸化バナジウムを約6mg分取し(試料量の約1.5倍)、丸く潰しました。これをさらにスズカプセルに 入れて丸く潰し、測定に使用しました。 EA3011の測定条件は以下の通りです。 Carrier Flow 120±5ml/min Carrier Pressure 80kPa Purge 80ml/min Oxygen Volume 20ml ΔP O2 35kPa Oxid. Time 8.7sec Sample Delay 10sec Run Time 385-390sec GC Oven Temp 115℃ Front Furnace Temp 1020℃ 反応管 CHNS用 Fig.2 CNS同時測定モードレイアウト Application Note EuroEA3000 ■ 反応管・トラップ管充填手順 管の下から次の順で充填します。充填の際は、エアポケットを作らないようにご注意ください。試薬を少量ずつ充填し、 充填ごとに石英管を軽くたたくとうまく充填できます。また、クウォーツウールは粉状にならないようご注意ください。 また、充填済み反応管もご用意しております。 ・反応管CHNS用 ・トラップ管H2O用 E10514-IG クウォーツウール 0.5cm E10514-IG クウォーツウール 1cm E10130-IG ピュア還元銅 10cm E10507-IG 過塩素酸マグネシウム E10514-IG クウォーツウール 2cm E10514-IG クウォーツウール 1cm E10152-IG 酸化タングステン 3cm E13502 トラップ管スモール E10514-IG クウォーツウール 1cm ■ 測定結果 海底堆積物中の全窒素・全炭素・全硫黄測定結果を以下に示します。 試料 試料量(mg) TN(%) TS(%) ILP-075 4.407 0.056±0.001 0.429±0.006 0.051±0.001 0.626±0.009 ILP-074 4.383 4.880 0.053±0.001 0.814±0.012 ILP-073 4.816 0.050±0.001 0.675±0.010 ILP-072 ILP-071 4.984 0.050±0.001 0.493±0.007 ILP-070 4.940 0.053±0.001 0.592±0.009 注)TN : Total Nitrogen TS : Total Sulphur TC : Total Carbon Table1 海底堆積物中の全窒素・全炭素・全硫黄含有量 TC(%) 0.631±0.006 0.693±0.007 0.857±0.009 1.687±0.017 0.990±0.010 0.870±0.009 塩酸による前処理を行った試料から得られた、海底堆積物中の有機炭素測定結果および無機炭素量を以下に示します。 無機炭素量は、全炭素量から全有機炭素量を差し引いて求めました。 試料 試料量(mg) TOC(%) IC(%) 5.467 0.585±0.006 0.046±0.001 ILP-075 0.664±0.007 0.029±0.001 ILP-074 4.693 3.915 0.810±0.008 0.044±0.001 ILP-073 4.709 0.865±0.009 0.822±0.016 ILP-072 ILP-071 4.259 0.825±0.008 0.165±0.003 ILP-070 4.940 0.830±0.008 0.040±0.001 注)TOC : Total Organic Carbon IC : Inorganic Carbon Table2 海底堆積物中の有機炭素および無機炭素含有量 Fig.3 堆積物試料のCNSクロマトグラム 《お問い合わせ先》 ジャスコインタナショナル株式会社 第三事業部 TEL : 042-643-3431 FAX : 042-643-3433 E-mail : sales3@jascoint.co.jp URL : http://www.jascoint.co.jp/
© Copyright 2024 Paperzz