「プロジェクトX」を利用した授業科目 社団法人私立大学情報教育協会 平成21年度全国大学IT活用教育方法研究発表会特別セミナー資料 1)「プロジェクトⅩ」を素材に、受講生が新しい課 題に挑戦し夢中になれるものを発見するための ヒントを提供する 2)ケース分析を通じて「プロジェクトⅩ」を複眼的 視点で考えることの重要性を理解する。 3)受講生と外部講師・担当教員との双方向コミュ ニケーションを重視しようとする授業 経営学教育におけるシナリオ設計を 重視した授業 京都産業大学経営学部 佐々木利廣 sasaki@cc.kyoto-su.ac.jp 「チャレンジ精神の源流」(2003年開講~現在) 1 「チャレンジ精神の源流」開講までの経緯 • 進路センターでの危機意識⇒就職ガイダ ンスでの部分的活用⇒経営学部専門科 目での講師招聘⇒経営学部複数教員に よる取組み⇒ケース分析を中心にした著 書出版『チャレンジ精神の源流:プロジェク トXの経営学』(2007年ミネルヴァ書房) • 教員と事務スタッフ(キャリア教育研究開 発センター・情報センター)との教職協働 による授業設計 2 授業シナリオ設計のポイント 映像と講演の寄せ集めだけではない授業計画 ①複眼的視点を基礎にした設計 NHK製作者からの視点の講義 専門領域の異なる教員のケース分析導入講義 ②IT活用による双方向授業を重視した設計 授業中と授業後の感想・意見・質問の開示 外部講師からの回答や感想のフィードバック ケース分析レポートの提出(ユニークなレポートの紹介) ケース分析ミニプレゼンと評価のフィードバック 3 4 授業シナリオ 教員によるケース分析 毎年の授業設計の手順 • プロジェクトX作品187本(2000/3/28~2005/12/28)の うち7年間で37本を使用。 • 教員による希望プロジェクトXの選択→NHKとの調整→ 当事者との日程調整 • 決定したプロジェクトXのビデオ(DVD)視聴と著書の読 み込み→ケース分析入門講義の準備 • Moodle (フォーラム)の準備と運用 • ケース分析レポートやミニプレゼンの説明 • 到達目標と授業評価の説明 • 独自の授業アンケートの回収と分析 5 入門講義 講義(90分) プロジェクトXのリーダー による講義(45分) プロジェクトXの放映(45分) 撮影及び HPで公開 内容確認シート配布・ 回収(マークシート) 成績評価 1)組織のまとめ方 2)製品・技術の開発 3)モチベーション 4)市場開拓 Moodle上でフィードバック Moodleのフォーラムへ の書き込み(1週間) 学生によるミニプレゼン 1)私のチャレンジ精神 2)プロジェクトXのケース分析 2回(3回)のレポート作成と提出 講師インタビュー 佐々木利廣編著(2007) 『チャレンジ精神の源 流:プロジェクトXの経営 6 学』ミネルヴァ書房 1 社団法人 私立大学情報教育協会 平成21年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会 プロジェクトXと外部講師のリスト 年間授業計画の例(2009年春学期) No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 日時 4月10日 4月17日 4月24日 5月1日 5月8日 5月15日 5月22日 5月29日 6月5日 6月12日 11 12 13 14 15 6月19日 6月26日 7月3日 7月10日 7月17日 テーマ オリエンテーションと履修確認 ①「通勤ラッシュを退治せよ 世界初自動改札機誕生」(オムロン田中壽雄) ②NHKディレクター講義(プロジェクトX制作デスク山本隆之) 第1回 ケース分析入門講義 ③「突破せよ 最強特許網新コピー機誕生」(キヤノン丸島儀一) 特別講義「チャレンジ精神の源流」(本学理学部益川敏英) 第2回 ケース分析入門講義 ④「執念のICカード 16年目の逆転劇」(JR東日本Suica部椎橋章夫) ⑤「ナホトカ号重油流出日本海30万人の闘い」(ボランティア平田毅) ⑥「炎上 男たちは飛び込んだ ホテルニュージャパン火災・伝説の東京士 たち」(東京消防庁 高野甲子雄) ⑦「男たちの復活戦 デジタルカメラに賭ける」(カシオ末高弘之) ⑧「家電革命 トロンの衝撃」(東京大学 坂村健) ⑨「王が眠る 神秘の遺跡」(吉野ヶ里遺跡・七田忠明) 学生によるミニプレゼン~私のチャレンジ精神~(総評オムロン田中壽雄) 学生によるミニプレゼン~「プロジェクトX」のケース分析~ ミニプレゼン感想シート・受講生アンケート 2003年 国井雅比古 (アナウンサー) 伊藤庄助(富士山レーダー) 末高弘之(カシオ計算機) 大谷豊二 秋田壽(元大島町助役) 浅田武夫(元オムロン) 高野甲子雄 (東京消防庁隊長) 和田富夫(シャープ) 小川三夫(宮大工) 有村新市(鹿児島県警) 寺田陽次郎(ドライバー) 山本隆之 (NHKディレクター) 2004年 山本隆之(NHKディレクター) 平田毅(ボランティア) 水元豊弘(大林組) 溝口薫平(玉の湯) 秋山晃久(日清食品営業担当) 和田富夫(シャープ) 末高弘之(カシオ計算機) 田中寿雄(オムロン) 篠田 傳(富士通研究所明石) 伯野卓彦(NHK製作スタッフ) 2005年 山本隆之(NHKディレクター) 田中寿雄(オムロン) 尾関雅則(旧国鉄) 越智成之(ソニー) 冨田洋(JAHDS事務局長) 森健一(東芝) 上村春樹(柔道) 安川力(ヤマハ) 谷口裕(松下電器産業) 2006年 山本隆之(NHKディレクター) 田中寿雄(オムロン) 藤田欣司(諏訪精工舎) 森健一(東芝) 大槻正(ソニー) 安藤直典(群馬交響楽団) 柳生健智(金閣寺) 熊井英水(近畿大学) 高野甲子雄(東京消防庁隊長) 2007年 田中寿雄(オムロン) 山本隆之(NHKディレクター) 尾崎哲夫(元だんぴあ丸船長) 七田忠明(吉野ヶ里) 熊切顕夫(キッコーマン) 椎橋章夫(JR東日本) 北山安夫(北山造園) 末高弘之(カシオ計算機) 2008年 田中寿雄(オムロン) 山本隆之(NHKディレクター) 丸島儀一(キヤノン) 多田伸司(香川県農業試験場) 加藤房男(ヤマト運輸) 椎橋章夫(JR東日本Suica部) 平田毅(ボランティア) 國井雅比古(NHKアナウンサー) 高野甲子雄(東京消防庁隊長) 2009年 田中寿雄(オムロン) 山本隆之(NHKディレクター) 丸島儀一(キヤノン) 益川敏英(ノーベル賞受賞者) 椎橋章夫(JR東日本Suica部) 平田毅(ボランティア) 高野甲子雄(東京消防庁隊長) 末高弘之(カシオ計算機) 坂村健(東京大学) 七田忠明(吉野ヶ里) 7 8 授業シナリオ設計におけるIT活用 教育の情報化への経過 ①Moodleの活用:リソース(教材・資料提供) 講義資料の提供 受講生の質問に対する講師からの回答の提供 ②Moodleの活用:フォーラム(掲示板) 受講生の感想・質問(毎週書き込み) ③ビデオ編集と学内ストリーミング放送 学生によるビデオ撮影と編集 大学HPから学内向けに発信(2004~2009) ④レポートフォルダの活用(to/from teacher ) ミニプレゼン用ファイルのアップロード 2003年頃 学内開発の独自システム(課題提出 システム)の運用しながら情報教育委 員会でLMS導入を検討 (商用・オープンソース等を対象に学 内で検討) 2004年 Moodle採用を決定 2005年 Moodle利用開始 レポートフォルダ(課題参照・提出 フォルダ)の利用開始 10 9 Moodleの本学仕様への主要変更 Moodle利用のメリット • 本学ポータルサイトからログイン • ユーザID、パスワードはメール利用と同じ • 開講科目や履修情報はすべてmoodleに組み込 まれている • いつでも利用開始できる(申請不要) 1.ユーザ(学生)のコースへの登録方法 各学生の履修情報をもとに一括で登録できるように変更 2.コースブロックの表記 セメスタ・曜日・時限という順に表示 3.CC環境と同じID・パスワード Moodle用のID・パスワードを用意する必要がないように 4.データをエクセルに変換可能 出力データをパソコンのアプリケーションソフトで扱える Moodleに対する心理的抵抗感なし Moodle利用法について学生間や教員間での情報交換(講習会不要) 教員のニーズに応じてカスタマイズ可能 商用ではないことのメリット 5.卒業セメスタでの学生判別 成績データ出力時に在籍セメスタの判別ができるよう変更 11 12 2 社団法人 私立大学情報教育協会 平成21年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会 moodleの機能と活用実態 moodle利用状況 • 平成17(2005)年4月からサービス開始 • 平成21(2009)年2月1日時点 • 利用教員数 276 • 登録教員数 958 • 利用科目数 599 • 登録科目数 5,084 • 利用学生数 11,053 • 登録学生数(在学生数)12,543 • 延べログイン回数 336,285 名 28.8% 名 科目 11.8% 科目 名 87.8% 名 回 リソース(教材・資料提供) 4,736 50.2% フォーラム(掲示板) 1,554 16.5% 課題 1,493 15.8% 小テスト 1,363 14.5% ラベル 投票 16 0.2% 17 0.2% 用語集 11 0.1% 2 0.0% Hot Potatos 9,428 平成21年2月1日現在 14 独自アンケート調査(2004~) 授業に対す満足度 ①授業出席回数 ②各外部講師の講義への満足度 ③授業に対する満足度 ④受講前と受講後の変化 ⑤変化の具体的内容 ⑥複眼的視点の到達度 ⑦授業を通じて習得した意識・態度や能力・スキル ⑧授業を通じて難しかった点 ⑨科目紹介と改善意見 (有効回答数は、2004年が101、2005年が212、2006年が222、2007 年が145) 15 • 「非常に満足」「かなり満足」の合計 2004年 69.3% 2005年 81.4% 2006年 77.5% 2007年 75.8% • 「非常に満足」「かなり満足」「どちらかというと満足」の計 2004年 95.0% 2005年 93.5% 2006年 97.3% 2007年 95.1% 16 「チャレンジ精神の源流」の紹介例 複眼的視点の理解 ケース分析入門講義にそってプロジェクトXのビデオや外部講師 の講義を理解することができたかという質問に対して「かなりでき た」と回答 20.8% 31.4% 21.6% 29.7% 「かなりできた」「すこしできた」の合計 82.2% 85.0% 81.5% 90.4% 0.4% SCORM/AICC 13 2004年 2005年 2006年 2007年 2.1% 41 チャット 合計 2004年 2005年 2006年 2007年 195 17 • 自分が住む日本の底力を知るきっかけになるとともに新たな 自分を見つけるきっかけになる。 • 努力とひらめきの追体験講義 • 「チャレンジ精神の源流」はめっちゃモチベーションが上がり ますよ。 • 「チャレンジ精神の源流」は、学校の講義の中でも、一番役 に立つ科目だ。 • 「チャレンジ精神の源流」は普段の大学の講義では学べない 、人生において大切なことを教えてくれる科目である。 • 「チャレンジ精神の源流」は物事について興味を持つ為の科 目だ。 • 「チャレンジ精神の源流」は、物事を複眼的視点で見る大切 さを教えてくれる科目である。 18 3 社団法人 私立大学情報教育協会 平成21年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会 学内外の協力による授業シナリオの設計と運用 NHK プロジェクトXの リーダー 所属企業・組織 チャレンジ精神の源流 情報センター 図書館 キャリア教育研究 開発センター 経営学部 19 良質なケースとしての「プロジェクトX」 1.製品をつくる(戦略論) 新事業開発のプロセスと技術・組織・政治的問題の解決 新製品開発における企業間関係の役割 イノベーションと産業発展の相互作用 2.市場を拓く(マーケティング・国際経営) 国内あるいはグローバル新市場の開拓 国際化と現地化の推進 3.組織を束ねる(組織論・リーダーシップ) 社会課題解決のための複数組織間の協働 プロジェクトリーダーのリーダーシップ 佐々木利廣編著『チャレンジ精神の源流:プロジェクトXの 経営学』ミネルヴァ書房、2007. 20 2005年度以降 レポートテーマ(参考) 2004年度レポートテーマ(参考) 第1回レポート(提出期間5月17日~5月20日) テーマ:「ナホトカ号による海洋汚染事故への対応」「湯布院というまちづくり」「桂離宮 の修復復興」のうちの1つを選択して、企業・市民ボランティア団体・NPO・行政・そ の他の組織がそれぞれどのような役割を果たし、どのように協働パートナーシップ を創り上げたかを成功要因を含めて考えなさい。 第2回レポート(提出期間6月14日~6月17日) テーマ:なぜ研究開発担当者や営業担当者は、失敗やどん底の経験の中、途方もない 目標に向けて果敢に努力したのだろうか。「魔法のラーメン」「液晶」「デジタルカメ ラ」のケースのうちのいずれかを選び、①「個人における人間のやる気や仕事意欲 などの動機づけ要因」、②「組織的な要因」の双方の観点からまとめなさい。 第3回レポート(提出期間7月12日~7月15日) テーマ: 製品開発は問題解決のプロセスとしてとられることができる。「①オムロンの自 動改札機」と「②冨士通のプラズマテレビの開発」の2つの開発事例も同様であろう。 二つの事例のうち、一つを選んで,どのような問題が起こり,どのように解決するよ うになったのかについて,市場戦略,技術戦略,組織的対応という3つ観点からそ の成功要因を分析しなさい。 各回4000字程度。ケース分析入門講義で説明する「ケース分析のための視点」を中 心に「プロジェクトX」のビデオや講演を分析することを重視。 21 テーマ:4つのケースの中で2つを選び,経営学(もしくは技術 経営論)に基づき以下の設問について論じてください。 ①ケース面白さなど二つのケースを選んだ理由 ②選んだ二つのケースの共通点と相違点について ③選んだ二つのケースの成功要因について 1)第1回レポート[提出期間6月6日(月)~6月10日(金)] 2)第2回レポート[提出期間7月11日(月)~7月15日(金)] レポートのテーマは第1回レポートと第2回レポートとも同じ。 理論的導入講義で説明する「ケース分析のための視点」を中 心に「プロジェクトX」のビデオや講演を分析することを重視。 22 課題 1)授業コンテンツとしての活用 授業とビデオ編集作業・学内HPアップとの時差 ケース分析レポート作成時に間に合わない 他授業での利用や学外発信の難しさ プロジェクトXの認知度と汎用性 2)Moodleによる受講生間の議論の促進 教員と受講生、外部講師と受講生との意見交換 の仕組みはすでに準備し一定の成果 受講生間の意見交換の仕組みは部分的(フォーラ 23 ム、ミニプレゼンの評価) 授業内容の詳細は以下をご覧ください。 http://www.kyotosu.ac.jp/feature/ce/challenge/challenge.html 学習支援システムmoodle(ムードル)につい ては京都産業大学情報センターまでお問い 合わせください 24 4 社団法人 私立大学情報教育協会 平成21年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会
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