現代日本におけるメディア環境の階層特性: JGSS-2005 によるテレビ・新聞・インターネット接触を用いた実証分析 Discussion Paper No.08-06 July 2, 2008 橋本 摂子∗ Social Stratification and Media Environment in Japan: An Empirical Analysis of Media Access using JGSS-2005. Setsuko Hashimoto ∗ 東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻 Department of Social Engineering, Graduate School of Decision Science and Technology, Tokyo Institute of Technology E-mail:hashimoto.s.ac@m.titech.ac.jp 現代日本におけるメディア環境の階層特性: JGSS-2005 によるテレビ・新聞・インターネット接触を用いた実証分析 橋本 摂子 1. はじめに メディア・コミュニケーションと社会階層というトピックは、問題設定として珍しい部類に入るだ ろう。深刻化する経済格差を背景に、近年マス・メディアでは階層の分化・固定化をめぐって公共性 のありかたが大きな争点となっているが、当のメディアと階層の関係自体が問われることはほとんど ない。非物質的な情報の授受を基調とするメディア・コミュニケーションと、もっぱら身体的な窮乏 に焦点を置く社会階層との距離は一見して遠く、両者のあいだに有意味な連関を見出しうる動機は弱 い。しかし現在、メディア・コミュニケーションと社会階層の関連を明らかにすることは、以下に見 るように、メディア研究および社会階層研究双方の文脈において重要な意味をもっていると思われる。 まずメディア研究の文脈から説明しよう。メディアと階層の交差が意味をもつのは、メディア・コ ミュニケーションを政治参加として捉え、マス・メディアと政治領域の連接可能性をあつかう場合で ある。 ユルゲン・ハバーマスが『公共性の構造転換』 (Habermas,1962→1990)で「公共圏(public sphere)」 という概念を提示して以降、マス・メディア全般には、公開性をもち、公平性・公正性を志向する言 説/討議(discourse/Diskuls)の場=公論の空間としての政治的な性格が付与された。私的な立場 にとらわれない理性のみにもとづく共同討議こそが、今日の多元社会において共通善を確立する最良 の利害調整手段たりうる。コミュニケーションにもとづく公共圏理念は、メディアと政治の既存の布 置を捉え直す議論として広く受容された(花田,1999)。 しかし同時に、ハバーマスによるコミュニケーションへの過度の理想化は多くの問題を抱えている。 その一つは、彼の定義する「市民的公共圏」が、全ての市民に均一なアクセスが保証された透明な場 所での歪みのないコミュニケーションという、現実からかけ離れた条件を要請するところにあるだろ う。社会階層の文脈では、特に「全ての市民に対する均一なアクセス」という条件付けが問題となる1。 ハバーマスのいう「公共圏」は、もともと 17 世紀後半から 18 世紀にかけてイギリス・フランスで 成立した「公論」をベースとする経験的モデルである。しかしそれらを一般理論へと拡張する過程で、 各ケースが個別にもっていた特殊歴史的な文脈は捨象されていった2。その結果「公共圏」で批判的論 争をおこなう「公衆」が現実には特定の階層メンバーに限定された排他的な集まりであったことが見 えなくなり、公共圏における「公論」の階層中立性や代表性が、検証のないまま暗黙に前提される事 1 ただしハバーマスの議論の問題点は、均一なアクセスを含めた、コミュニケーションに課される条 件の実現不可能性だけではない。そこには、人間事象の領域に「真理」という超越的な基準を持ち込 むことによる、より理論内在的な困難が含まれている。その点に関しては、橋本(2006)参照。 2 ハバーマスがモデルとした 17、8 世紀西欧社会の「市民的公共圏」は、実際には女性や貧困層などを 排除したうえに成立するきわめて排他的な空間であったことが指摘されている(Eley,1992)。また、 公共圏モデルの社会階層への盲目性については、Fraser(1992)によって言及されている。 -1- 態となった。特にインターネットなど、匿名かつ集合的な参加型言論空間では、理論上はすべての人 に開かれているだけに、そこで生じる「公論」の階層偏向性はいっそう見えにくくなる。現在の公共 圏論に広く見られる社会階層への盲目性は、現実から乖離した理念モデルの適用によるものといえる だろう。それはメディア研究全体における階層問題への関心の低さとも通底している。 この点に関しては、もちろん歴史記述の問題としてさらなる検証を要する。しかしそれ以上に、現 代社会のメディアと公共圏を考えるとき、理念モデルの無批判な踏襲は、 「公論」に潜む階層的偏向を 覆い隠すという点で大きな危険をともなう。公共圏と政治との連接を考えるならば、まず現時点で「公 論」の場とされるメディア空間に、実際にはどのような階層的選別が働いているのかを実証的に明ら かにしなくてはならない。これが、メディア・コミュニケーションと社会階層のもつ第一のコンテク ストである。 第二のコンテクスト、階層論においてメディア・コミュニケーションが意味をもつのは、コミュニ ケーションの「文化様式」としての側面を重視し、文化を通じた階層的な選別作用そのものを対象化 する場合である。上でみた公共圏の議論とは対照的に、こちらでは情報へのアクセス能力、選別と享 受、活用、他者への伝達様式などに関わるコミュニケーション行為全般にみられる階層的排他性を前 提とする。その点で、第二の文脈は、第一でみた現実の公共圏を覆う不透明性に直接かかわっている。 文化による階層選別作用の議論でもっとも代表的なのは、ピエール・ブルデューによる文化的再生 産論であろう(Bourdieu,1979)。趣味や教養、物腰全般に表れる階層的に分化したコミュニケーシ ョン様式を、一種の見えざる社会的資源として「発見」し、階層再生産の媒介項とみなす。それは出 身家庭でのインフォーマルな教育を通じて継承・身体化され、後に経済資本へと転化する階級文化で あり、ブルデューによって文化資本(capital culturel)と名付けられた。 公共圏論が社会階層に無関心であったのと同様に、社会階層論もまた、マス・メディア接触にあら われる情報リテラシーを階層変数とはみなしてこなかった。しかし対人コミュニケーション能力およ び情報活用能力が選択機会の幅や生活の質に直結する現代において、情報活用能力を意味する情報リ テラシー概念は明らかに文化資本と通底する3。またメディア・コミュニケーションを政治参加の一様 式と捉えるならば、メディア・リテラシーの高低は、政治参加機会の不平等という意味も担うことに なるだろう。つまり情報リテラシーとは階層研究でいう文化資本の一形態であり、格差を生み出す隠 れた指標を可視化するという点で、近年のデジタル・ディバイド問題は文化的再生産論の 1 バージョ ンとして読むこともできるのである4。 階層研究における従来の文化資本は、その定義上、同定がきわめて難しいことでも知られている。 ただでさえ階級文化が見えにくいと言われる日本社会において、 「文化」の内実を単純かつ具体的に明 文化しなければならない質問紙調査にはまったく適さず、理論的関心に比して実証研究は停滞傾向に あるといわざるをえない。そうした困難のなかで、メディア・アクセスに表れる情報リテラシーは、 音楽や絵画等の古典芸術への美的趣味などに比べてはるかに測定しやすく、かつ有意な文化資本指標 になることが期待されるだろう5。 3 メディア研究における情報リテラシー概念および尺度の構成と測定にともなう困難については、鈴 木(2001)参照。簡単に要約すると、情報リテラシーとは、情報機器操作能力を含んだ高度情報社会 における情報活用能力を意味する。 4 現状のデジタル・ディバイド問題は、その多くが国別のインフラ整備に焦点が置かれている。デジ タル・ディバイドによって個人単位で発生する社会経済的格差をあつかった論考としては、橋元 (2001)が挙げられる。 5 ただし情報リテラシーそのものは決して測りやすい概念ではなく(注 3 参照) 、文化資本に劣らずそ -2- これまでの議論を要約しよう。現在、メディア・コミュニケーションと社会階層との連関関係は、 メディア論においては「公論」の名に隠された階層的偏向として、階層論においては情報リテラシー のもつ地位規定力として、二つの領域を横断する重要な争点となっている。しかしメディア利用者が 現実にどのような社会階層と結びついているのか、その実態についてはほとんど明らかにされていな い6。メディア・コミュニケーションを政治参加のチャンネルへと開いていくには、まず現実の利用層 がどのような利益集団であるのか、その社会階層的な特性をあらかじめ把握しておかねばならないし、 また、情報リテラシーの文化資本としての特性を分析することも、階層研究においては重要な知見と なるだろう。 以上の問題関心から、本報告は、従来分断されてきたメディア研究と階層研究の架橋を目的に、計 量分析からメディア接触と社会階層の関連を精査し、現代日本の情報環境の階層的特性を明らかにす る。具体的には、2005 年版 JGSS データのメディア接触項目を用い、TV、新聞、およびインターネ ットの 3 つのメディアを対象に、それぞれへの接触が既存の階層変数(職業、学歴、収入など)とど のように関わっているかについて分析をおこなう。情報リテラシーそのものではなく、表面的に観察 されうるメディア接触頻度をあつかうという点で、本分析は、情報リテラシーと社会経済格差との関 連を明らかにするという今後のより大きな課題に向けた基礎的な分析として位置づけられる。本報告 を、公共圏および社会階層の両面から情報リテラシーの現況を考察する足がかりとしたい。 2. テレビ視聴の階層特性 (1) 基本分布 まずテレビ視聴の分布状況について概観しよう。JGSS-2005 では 1 日の平均テレビ視聴時間数をた ずねているが、それによると、全対象者の平均視聴時間は 3 時間 31 分、同年の『国民生活時間調査』 (NHK放送文化研究所)の数値とほぼ一致している7。性別、年齢、世帯人数および本人の最終学歴、 の計測には特有の困難がある。本報告で扱う「メディア接触頻度」は、その意味で真の情報リテラシ ーを意味するものではなく、リテラシー保有の条件としての、いわば代理指標にあたる。また、文化 資本に含意される世代間継承性が情報リテラシーにも該当するかどうかは、幼少期の教育や家庭での PC使用環境などとの関連を視野に入れた検証が別途必要になるだろう。 6 メディア接触を含んだマクロ調査は数多くあるが、回答者属性に階層変数が含まれていない場合が 多い。階層関連の社会調査では、通常、回答者の自由回答値に職業コードを当てはめるアフターコー ディング作業がおこなわれ、それに基づいて職業分類が作成される。そのため、職業項目を加えるこ とによって調査コストが飛躍的に上昇するのである。例外的に、東京大学大学院情報学環によって 5 年ごとに実施されている「日本人の情報行動調査」は利用者の階層的属性項目が記載されているが、 職業大分類のなかから回答者が自分で選択する方式が採用されている。データ取得の方法がそもそも 異なるため、通常の階層調査との比較対照は難しいといえる。反対に、階層を焦点とする伝統的な社 会調査では、メディア接触を階層変数と捉える慣習がなく、階層とメディア接触との関連を探る術が ない。その点で、両方のデータを含むJGSSは、階層とメディアの関連を継続的に検証しうる貴重なデ ータとなる。また、本稿であつかう情報リテラシーやTV・新聞・ネット利用と社会階層の関連につい ては、上述の「日本人の情報行動調査」2005 年版報告書(東京大学大学院情報学環編,2006)のな かで多少触れられているが(主に 1.10∼1.11)、前述の調査方式の違いに加え、分析自体が「複数の社 会的属性の組み合わせとしての個人の社会的立場」という視点からおこなわれたものであり、公共圏 および社会階層の視点から各メディア利用者の階層特性の解明に焦点を置く本稿とは重なる部分が少 ない。 7 『2005 年国民生活時間調査』によれば、国民全体の 1 日のTV視聴時間は 3 時間 39 分(週平均) となっている。なお、本分析ではTV視聴項目回答者のうち、1 日平均 20 時間と答えた者 2 名を外れ -3- 図1 1日平均テレビ視聴時間(基本属性) 5:00 3:55 3:42 4:00 3:31 3:18 4:22 3:52 4:09 4:03 3:05 3:05 3:17 2:59 3:18 4:02 3:39 3:09 3:21 2:55 3:39 3:25 3:10 3:00 2:00 1:00 性別 年齢 世帯人数 750万以上 450-749万 0-249万 250-449万 大学 高校 中学 4人世帯 5人以上 3人世帯 単身世帯 2人世帯 60代 70歳以上 40代 50代 30代 20代 男性 女性 全体 時間 最終学歴 世帯収入 図2 1日平均テレビ視聴時間(就労属性) 5:00 4:17 4:00 3:26 3:04 3:20 2:54 2:52 2:53 3:18 2:59 3:20 3:32 3:27 3:05 2:59 2:36 3:00 2:40 2:00 1:00 週就労時間数 就労地位 職種 650万以上 350-649万 130-349万 1-129万 農業 マニュアル 一般ホワイト 上級ホワイト 自営 非正規 正規 50h以上 40-49h 1-39h 無職者 有職者 時間 年収 世帯収入、就業の有無ごとに平均視聴時間を見た(図 1)8。T検定により 5%水準で有意差が検出され た項目を見ていこう。まず全般的に男性よりも女性の視聴が長く、年齢では 60 歳を超えると急激に伸 びる。ただし無職者層には女性と高齢者が多いため、就業効果を考慮に入れねばならない。世帯人数 で見ると、単身世帯・2 人世帯が多人数世帯にくらべて有意に長い。テレビ視聴に関しては、一人暮 らしの場合に長くなる点が指摘されているが、単身世帯だけでなく、2 人世帯も分析に加える必要が あるだろう9。ただし世帯人数は年齢による分布差が大きく、単身世帯・2 人世帯ともに 60 歳以上が 6 割を占める。そのため、世帯人数の影響を検討するには、年齢効果を分離してみなければならない。 その点は、学歴、世帯収入についても同様である。グラフからは、高学歴・高収入層ほど視聴が短く、 特に大学卒と中学卒の間には 1 時間 14 分と大きな差が見られる。学歴による影響もまた、テレビ視 値とみなし、分析から除外している。 8 「最終学歴」の分類については、中学=旧制尋常小学校+旧制高等小学校+新制中学、高校=旧制 中学・高等女学校+旧制実業学校+旧制師範学校+新制高校、大学=旧制高校・旧制専門学校・高等 師範学校+旧制大学・旧制大学院+新制短大・高専+新制大学+新制大学院とする。また、 「就業状態」 では学生を除外している(以下すべての職業関連項目でも同様に分析から学生を除外)。世帯収入は調 査票カテゴリーの中央値を用いている(以下年収についても同様) 。 9 JGSS-2000 を用いたメディア接触の分析については岩井・佐藤編(2002)参照。テレビについては、 無職・単身世帯・高齢者の長時間視聴が指摘されている。この傾向は、 「日本人の情報行動調査」2005 年の傾向とも一致する。 -4- 聴の特徴の一つに挙げられるが、中学卒の 8 割は 60 歳以上であり、世帯収入 0-249 万円層も 60 歳以 上の高齢者が 7 割強を占めるという点は注意を要するだろう10。 有職者と無職者の間に顕著な差が見られるのもまた、先行研究群の知見と一致する。ただし就労に ともなうどのような要因が作用するのかは、これまで明らかにされてこなかった。そこでテレビ視聴 の規定要因を探るため、有職者を対象に、週就労時間数・就労上の地位・職種・年収の 4 変数につい て、視聴時間の平均値を取った11。その結果すべての要因において何らかの有意な差が観察され、図 2 に見るように、いずれの変数においても階層の低い層で視聴が伸びている。週就労時間数については、 1-39 時間層が他よりも有意に長く、就労地位では正規雇用が、職種では上級ホワイト・一般ホワイト が他の層よりも短い。年収については世帯収入と同様にほぼ線形の相関が見られ、特に 1-129 万円層 は他のすべての層に対して有意に長い。 (2) テレビ視聴の規定要因 以上の基本的な分布状況をふまえ、各変数間の影響関係を見るために、テレビ視聴時間を従属変数 として重回帰分析をおこなった(表 1) 。全体的に見て、モデルの説明力はいずれもかなり低い。テレ ビ視聴に関しては、本分析で扱う基本属性や階層変数以外の要因の作用が大きいと見るべきであろう。 基本的な属性変数を投入したモデルaでは、性別・年齢・学歴・2 人世帯ダミーに効果が見られた。 つまり年齢・学歴・2 人世帯はそれぞれに独立の効果を持ち、単身世帯と世帯収入の効果は年齢や学 歴に媒介されたものであったと考えられる12。モデルbでは就労効果を見るために、無職者を 1、有職 者を 0 とするダミー変数を投入した。その結果、性別・年齢の値が減少し、無職ダミーにもっとも大 きな値となった。性別や年齢による効果のうち、かなりの部分は就業状態を反映したものだといえる。 また学歴と 2 人世帯は、就労状態にかかわらず効果を持っていることがわかる。 さらに、就労にかかわるどの要因がテレビ視聴と関連するのかをみていこう。ただし先に見た就労 時間・地位・職種・年収は、多重共線性の問題があり、同時に投入することができない。そのため、 基本属性に各変数を一つずつ加えたモデル c∼f を設定し、決定係数をモデル間で比較する方法を取っ た。その結果、わずかな差ではあるが、もっとも適合するモデルは就労時間、次いで職種となった。 他の変数に比べてこの 2 つが効果を持つことは、有職者を対象に全変数を投入したモデル g からも確 認できる。基本属性を統制しても、就労時間が長くなるほどテレビ視聴は減少し、マニュアル職はそ れ以外の職種に比べて有意に長い。また無職者のみのモデル h では、年齢と性別の効果が消え、学歴 と世帯人数のみが有意であった。このことから、テレビ視聴時間の規定要因は無職者と有職者で異な ること、さらに無職の高齢者にみられる長時間傾向は、年齢よりも学歴や世帯人数の影響が大きいと いえる。 10 なお、TV視聴についてもっとも長い調査期間をもつのは『国民生活時間調査』であり、このデータ からテレビ視聴規定要因を分析した既存研究の知見は、田中・小川編(2005)にまとめられている。 11 「就労地位」の分類の内訳は、正規=経営者・役員+常時雇用の一般従事者すべて、非正規=臨時 雇用・パート・アルバイト+派遣社員、自営=自営業主・自由業者+家族従業者+内職となる。 「職種」 についてはJGSS-2005 コードブックに記載されているSSM95 職業 8 分類対応表に準拠し、上級ホワ イト=専門・管理、一般ホワイト=事務・販売、マニュアル=熟練+半熟練+非熟練、農業=農林と 分類している。JGSSにおける職業分類コードについては西村・石田(2001)参照。 12 以下では各モデルから世帯収入の項目を外している。一番の理由は、世帯収入は無回答者が多く (「回答したくない」「わからない」「無回答」が 802 名)、サンプル数が大きく減少するためである。 ただし世帯収入項を入れてもテレビ視聴との直接の関連がみられないことは、すべてのモデルで確認 された。 -5- 表1.テレビ視聴の規定因 重回帰分析結果 全対象者(強制投入) 従属変数: a.基本変数 β 平均TV視聴時間 性別(男0女1) 0.11 ** 年齢(/10歳) 0.17 ** 学歴(中1高2大3) -0.08 ** 単身世帯(1,0) 0.04 2人世帯(1,0) 0.12 ** 世帯収入(0-2075) -0.02 無職ダミー(1,0) ―― 週就労時間 ―― 就労地位:正規 ―― 非正規 ―― 自営 ―― 無職 ―― 職種:上級ホワイト ―― 一般ホワイト ―― マニュアル ―― 農業 ―― 無職 ―― 年収(/100万) ―― R^2 0.094 ** Adj.R^2 0.089 N 1186 b.就労有無 β 0.05 0.06 -0.12 0.03 0.09 ―― 0.18 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.107 0.104 1962 p 値:+ p < .10, * p < .05, ** p < .01 * * ** ** ** ** c.就労時間 β 0.03 0.07 -0.12 0.03 0.09 ―― ―― -0.19 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.112 0.109 1939 * ** ** ** ** d.就労地位 β 0.03 0.05 -0.12 0.03 0.09 ―― ―― ―― -0.21 -0.10 -0.12 -base―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.108 0.104 1966 + ** ** ** ** ** ** 有職者 無職者 e.職種 β f.年収 β g.SW法 β h.SW法 β 0.06 0.06 -0.10 0.03 0.09 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― -0.16 -0.18 -0.12 -0.05 -base―― 0.110 0.106 1962 0.03 0.12 -0.09 0.03 0.10 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― -0.15 0.100 0.097 1744 0.10 ** 0.07 * -0.08 * × × × -0.13 0.07 0.10 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.032 0.028 747 * * ** ** ** ** ** * ** ** ** ** ** ** 0.11 ** ―― ―― -0.10 ** × × -base―― × × 0.10 ** -base―― × 0.075 ** 0.069 950 ** * ** ** 注: 就労地位・職種はその他を基準とするダミー変数(W:ホワイト) 就労時間(無職者:0,有職者1-105時間/週),年収(35-2075万) モデルg,hのステップワイズ(SW法)はF値 <.05で投入、>.10で除去 ――は非投入、×はステップワイズにより非選択 (3) 考察 以上の分析から、テレビの階層特性について考察する。テレビの視聴時間は就労状態の強い影響下 にあるが、それは年収や雇用形態など、就労にともなう階層的な側面というよりも、就労持間という 物理的な要素が強い。要するに、仕事で拘束される時間の少ない人ほど視聴時間が長いという、単純 な因果関係である。ホワイトカラー層に有意な効果が検出されなかったことから、職種の階層性の影 響はないと考えられる。概してテレビ視聴は、高齢者・無職者・低世帯収入者など、公共圏のどちら かといえば周縁に位置する層との親和性が強い。しかしそれは表面的な連関であって、諸要因間の影 響関係を取り除いてみたとき、実はさほど社会階層の影響を受けないメディアだと言うことができる だろう。各モデルの説明力の低さも、その点を示唆している。ただし就労状態を統制した後も残る階 層指標に学歴があり、学歴効果は有職者・無職者両方に作用する。これについてはさまざまな解釈が 可能だが、一つには、音と映像で構成され、同時性・一回性を基本とする消費型娯楽のメディア特性 が、伝統と文字リテラシーを尊重する高学歴の教養文化と相容れない点が指摘できるだろう。 そしてテレビ視聴についてもっとも特徴的な点は、2 人世帯の効果である。全モデルを通じ、唯一 2 人世帯だけが他とは独立に一定した視聴促進効果を持つ。つまり性別や年齢、学歴、就労等にかかわ りなく、2 人暮らしという居住形態それ自体が、テレビ視聴時間を長くするのである。 2 人きりの空間は、1 人とも 3 人とも異なる。公/私の境界に位置し、つねに相手との直接的なコ ミュニケーションが要請される場である。そのなかで、テレビを見るという行為は、対話による衝突、 あるいは沈黙による気詰まりの双方を回避し、コミュニケーション・コストを緩和する、まさに媒介 された[メディエイティド]コミュニケーションとして機能している可能性があるだろう。テレビ視聴 が独特のコミュニケーション行為であることはこれまでにも指摘されてきたが、この結果は、テレビ が環境化を超えて言語化の域に入っていることを示唆する。現在の人びとの生活の中でテレビ視聴、 -6- ひいてはテレビというメディアがどのような意味づけをもっているのかについて、一つの視座を与え る結果であろう13。 3. 新聞購読の階層特性 (1) 基本分布 次に、新聞の購読状況をみていこう。JGSS-2005 では新聞を読む頻度について「ほぼ毎日」と回答 した人が全体の 74.0%を占める14。「毎日」と答えた人の割合を属性別に示したのが図 3 である。Χ2 乗検定からは、まず性別による違いが見られ、女性よりも男性が有意に高い。さらに年齢による分布 差が大きい。60 代を頂点にほぼ放物線を描いており、若年層の接触の低さが確認される15。世帯人数 では単身世帯と 2 人以上の世帯間に大きな差が見られる。学歴の影響は見られず、反対に世帯収入に は有意な関連がみられたが、この二つについては年齢効果が混在している可能性が大きいだろう。ま た、テレビ視聴と異なり、新聞購読は有職者と無職者のあいだに有意差が見られない。新聞購読の習 慣は、就業の有無に影響されないようである。 さらに、「どのような新聞を読むか」について分析を進めよう。JGSS-2005 では「よく読む新聞」 の銘柄を複数回答で尋ねている。回答者を「全国紙の購読がある層」 「地方紙のみ(全国紙なし) 」 「一 般紙の購読なし」の 3 層に分類し、属性別にそれぞれの割合を見たのが図 4 である16。まず特徴的な のは、接触頻度と異なり、全国紙の購読には男女差および年齢差が見られず、代わりに階層属性に連 動することである。全国紙は高学歴・高世帯収入層でよく読まれ、職種ではホワイト層がマニュアル・ 農業より高い。無職層はその中間に位置している。大都市(東京圏・大阪圏)とその他の地域の間の 差が大きいため、他の変数の関連を見るには居住地の影響に配慮する必要がある17。 (2) 新聞購読の規定要因 以上の分布状況をふまえて、2 種の新聞購読状況を被説明変数とするロジスティック回帰分析をお こなった(表 2)。まず接触頻度(モデル a-f)から見ていこう。全対象者に基本属性を投入したモデ 13 テレビ視聴行為のコミュニケーション的側面については、田中・小川編(前掲書) 、またオーディ エンス研究からのレビューは小林(2003)参照。 14 有効回答者 2013 名。なおJGSS-2000 の「毎日」は 74.8%。近年新聞普及率は下降傾向にあり、一 世帯発行部数は'00 年 1.13 から'04 年には 1.06 に減少している(藤竹編 2005:26)。新聞離れが指摘さ れる昨今だが、頻度を見る限りではこの数年新聞購読に大きな変化は見られない。その点は、 JGSS-2002 データから全国紙読者層を分析した木村(2004)でも確認されている。 15 ただし年齢による分布差の原因には、年齢効果と世代効果とが考えられる。1983∼2003 年のNHK 日本人の意識調査データを分析した佐藤(2008)によると、新聞を必須メディアとする層の分布は年 齢よりも出生年で説明される。今回JGSS-2000 と 2005 で分布の比較を取ったところ、同様の結果が 確認された。つまり「新聞を読む」という行為は、特定の世代文化である可能性が高い。ただし後に 見るように、全国紙購読については多少事情が異なっている。 16 以下の分析は、何らかの新聞購読がある者 1854 名を対象とし、新聞購読のない者 169 名(含不明・ 無回答)を除外している。全国紙は朝日・産経・日経・毎日・読売の 5 紙、地方紙はブロック紙(北 海道・東京・中日・西日本)および県紙、その他のスポーツ紙・専門紙・業界紙などは非一般紙とし て分類している。分類に当たっては藤竹編(前掲書:pp.30-40)Ⅰ-2 節「新聞の種類」 (筆者・藤田真 文)による分類を参考にした。 17 大都市の分類については、全国紙普及率の高い地域として首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)お よび大阪圏(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)を設定し、大都市圏とそれ以外の地域に分け ている。 -7- 図3 「ほぼ毎日」新聞を読む人 % 100 74.0 80 73.6 82.2 80.0 69.0 60 86.9 81.1 79.3 73.7 75.5 76.3 73.3 73.8 72.8 78.6 80.5 72.3 78.1 66.9 59.5 50.9 41.8 40 20 性別 年齢 世帯人数 図4 全国紙購読状況 有職者 無職者 0-249万 250-449万 450-749万 750万以上 中学 高校 大学 単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人以上 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 男性 女性 全体 0 最終学歴 世帯収入 就業状態 全国紙購読 地方紙のみ 一般紙なし 100% 80% 60% 40% 20% 性別 年齢 居住地域 上級ホワイト 一般ホワイト マニュアル 農業 無職 0-249万 250-449万 450-749万 750万以上 中学 高校 大学 大都市 その他 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 男性 女性 全体 0% 最終学歴 世帯収入 職種 表2.新聞購読の規定因 ロジスティック回帰分析結果 「ほぼ毎日」新聞購読 従属変数(1,0) 全対象者 a.強制投入 オッズ比 性別(男0女1) 年齢(/10歳) 学歴(中1高2大3) 単身世帯(1,0) 世帯収入(/100万) 無職ダミー(1,0) 大都市ダミー(1,0) 週就労時間 就労地位:正規 非正規 自営 職種:上級ホワイト 一般ホワイト マニュアル 農業 年収(/100万) Nagelkerke R^2 N 0.54 1.64 1.46 0.21 1.05 1.16 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.192 1187 ** ** ** ** * 全国紙購読 男性 b.強制投入 オッズ比 女性 c.強制投入 オッズ比 有職男性 d.SW法 オッズ比 有職女性 e.SW法 オッズ比 ―― 1.82 ** 1.66 ** 0.19 ** 1.04 0.96 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.215 567 ―― 1.51 ** 1.31 0.25 ** 1.05 + 1.25 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.140 620 ―― 1.94 ** 1.84 ** 0.15 ** ―― ―― ―― × ―― 2.01 ** 1.79 ** 0.22 ** ―― ―― ―― × × × 1.06 3.09 + -base× × × -base× -base× × × -base0.86 ** 0.215 439 0.224 512 p 値:+ p < .10, * p < .05, ** p < .01 無職者 f.SW法 オッズ比 0.46 1.26 × 0.34 1.22 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.133 471 ** ** ** ** 全対象者 g.強制投入 オッズ比 有職者 h.SW法 オッズ比 無職者 i.SW法 オッズ比 0.90 1.05 1.65 ** 0.80 1.00 0.88 11.98 ** ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.321 1079 × × × × × × ―― ―― 11.51 ** × × × -base3.58 ** 2.43 * 1.54 -base× 0.319 875 1.93 ** × × ―― 14.30 ** ―― × × -base―― ―― ―― -base―― 0.386 429 注: モデルd,e,f,h,iのSW法(ステップワイズ)は 尤度比による変数減少法(F値 >.10で除去) ――は非投入、×はステップワイズにより非選択 -8- ル a では、無職ダミー以外の変数すべてが有意となり、年齢を統制した場合に学歴の効果があらわれ る点が確認された。興味深いのは、男性と女性とで規定メカニズムが異なっている点である。男性と 女性で別々に計測したモデル b,c の比較から、学歴は主に男性側の変数で、女性では有意差が見られ ないことがわかる。それに対し、世帯収入は女性の側のみで有意となり、男性では有意にならない。 また単身世帯によるオッズ比も女性の方が大きく、新聞を毎日読むか否かは、男性にとっては本人の 変数、女性にとっては本人よりも世帯の変数によっていることが示唆される。 ただし有職者のみを対象にした場合、そうした性差は見られなくなる。有職者をさらに男女別に分 けて最適モデルを計測したモデルd,eの結果からは、男女ともに年齢・学歴・単身世帯が有意となった 18。ただし男性は非正規雇用層にわずかな有意差が見られるのみで、就労変数にほとんど左右されな いのに対し、女性側は本人の収入に有意な関連を示す。また無職者層を対象にしたモデルfでは、学歴 の効果が消え、世帯収入が有意となった。無職者は、男性が 161 名に対し女性 310 名のため、女性の 側の規定メカニズムが強く現れたものとして捉えられる。女性および無職者層、というよりも恐らく 女性の無職者層ほど、世帯変数の影響を受けやすいことがうかがえる。 モデル g-i では、全国紙購読の規定因を探った。基本属性変数を強制投入したモデル g では、性別・ 年齢・世帯人数・世帯収入・無職ダミーに効果が見られず、学歴と大都市ダミーのみが有意となった。 前節で見た世帯収入による差は居住地域を統制すると消え、学歴のみが残る。さらに有職者に限定し たモデル h では、学歴効果は消えて、ホワイトカラー層における職種効果へと吸収される。無職者層 のモデル i ではモデル g における有意変数と同じ項のみが残り、学歴の効果がより強く現れている。 総じて全国紙購読は、年齢・性差・世帯人数などにはかかわりなく、主に学歴・職種・居住地域によ って決まることがわかる。 (3) 考察 以上をまとめて、新聞購読の階層特性について考察する。 新聞購読層の最大の特徴は、性差と年齢にある。 「新聞を毎日読む」ことに対し、就労属性はほとん ど影響しないため、接触頻度の高さが階層的地位の高さにつながっていることを示すデータは得られ なかった。むしろ男性では非正規雇用層が高い値を示し、有職女性では年収が 100 万円上がるごとに 新聞を毎日読む確率は 0.86 倍に下がっていく。女性の場合、高学歴・低収入ほど接触が高いという結 果は、おそらく専業主婦に近くなるほど接触が高いことを示すものであろう。また本人の属性変数よ りも世帯変数の影響が大きいことから、おそらく女性の新聞購読は配偶者など自分以外の世帯人員の 購読に媒介された受動的なものだと思われる。こうして見ると、日本の新聞は、男性の、それもある 特定の年代のみが選好するかなり特異なメディアであることがうかがえる。近年の新聞離れの一因に は単身世帯の増加があると言われるが、もともと能動的な購買層は特定の層に限られており、世帯形 態の変化によって「手近にあれば読む」程度の受動的購読者層が顕在化しただけ、という解釈も可能 であろう19。 しかし、こうした新聞全体の特性は、全国紙に焦点をあわせた場合、異なる様相を見せる。確かに 新聞を読むか否かは性差と年齢に大きく左右されるが、そのなかでどの新聞を読むかには歴然とした 階層差があらわれる。テレビ視聴で見たように、接触度に対して学歴が影響を持つのは多くのメディ 前述の理由(注 12)から、ここでも世帯収入を投入していないが、投入した場合でも新聞購読との 間に有意な関連はみられなかった。 19 近年の新聞離れに対する新聞関係者側の危機感については中馬(2003)に詳しい。 18 -9- アに共通する特性だが、全国紙の購読が他メディアと異なるのは、学歴そのものよりも学歴を通じた 職業階層と連動している点である20。多変量解析の結果からは、全国紙購読が高学歴を経由し、専門 職・管理職で構成される上級ホワイト層の職業世界と緊密に結びついていることが示されている。一 般に、日本には高級紙が存在せず、全国紙普及率の差は主に輸送機関の未整備に起因するといわれる (井川 2005)。しかし地域間格差の陰に隠れ、全国紙が職業階層を前提としたクオリティ・ペーパー としての側面を有していることは重要な知見であろう。 「新聞」というメディアに限った上でだが、自 分の帰属する日常的な公共圏に「全国」という単位を適用するのは、大都市圏および高学歴・上層ホ ワイトカラーに特有の、それこそ「全国」単位で見ればかなり特殊なパースペクティブなのである。 ただしこの結果からは、全国紙と上級ホワイト層との結びつきが過渡的なものなのか、全国紙の本 質を構成するものなのかは判別できない。たとえば、全国紙購読に性差が見られないのは、全国紙ジ ェンダー・バイアスのない情報を提供しているからだと見ることもできるが、他方で、高学歴・上級 ホワイト職の女性は同階層の男性文化に対する適応力が高いと取ることもできる。上級ホワイト層を 構成する人々の属性が今後変容していく可能性を考慮すれば、全国紙がこのまま選好され続ける保証 はないだろう。紙媒体のメリットが確実に消滅しつつあり、新聞以外の選択肢が増大する現在、新た な参入者に「伝統」への順応を求めるだけの求心力を発揮しうるか、あるいは今後変容するであろう 上級ホワイトの職業世界に自らを適合させる柔軟性を発揮できるかが岐路になると考えられる。 4. インターネット・アクセスの階層特性 (1) 基本分布 最後に、インターネットの利用分布について概観する。JGSS-2005 ではインターネット使用動向に ついて、PC または携帯電話による以下の 4 つの行動(1.情報検索、2.インターネットショッピング、 3.インターネットバンキング、4.HP の作成)の有無を尋ねている。以下では、このいずれかについて 一つでも行っているとした者をインターネット利用者、いずれも行っていないと答えた者を非利用者 と分類して分析を進めていく。 インターネット利用者の分布を属性別に見たものが図 5 となる。利用者の全体は 43.9%、同年の『通 信利用動向調査』(総務省)の 66.8%より低い数値だが、これはおそらく調査対象年齢の違い、およ び本稿ではメールのみのネット利用者を除外したためと考えられる21。一見してわかるように、利用 の有無は基本属性から強い影響を受けている。まず、男性より女性がやや低く、世代別の分布差がか なり大きい。60 歳以上で利用率が大きく下がる点は、政府統計と一致している。世帯人数では 1∼4 人までの間で上昇し、首都圏とそれ以外の地域にも差が見られる。ただし都心では 4 人以上の世帯数 全国紙のこうした特性は読書行為とも異なっている。JGSS-2005 には読書行為の質問も含まれてお り、テレビ、新聞、インターネットと同様に階層特性の分析を行った。紙幅の関係上本稿では詳述し ないが、読書は学歴が大きく作用する点で他のメディアと一致している。ただし職業階層とはかかわ りを持たず、出身階層の地位を示す父親学歴項が有意に作用するところに特徴がある。 21 総務省『平成 17 年通信利用動向調査』の結果概要および『情報通信白書』 (平成 18 年版)より。 総務省による 2005 年調査の対象者年齢は 6 歳以上、対象行動は種類・目的を問わず「インターネッ トを利用したことがある者」すべてとなっている。なお、本稿では公共圏へのアクセス可能性を主眼 とし、インターネットの情報メディアとしての側面を重視するため、上記 4 つの行動を含まない(主 に携帯電話による)電子メールのみのネットユーザー計 294 名を「インターネット利用者」から除外 している。この層を含めた場合、ネット利用率は 58.5%となり、総務省のデータに近い数値となる。 20 -10- 図5 インターネット利用(基本属性) 100 % 85.1 80 60 43.9 73.9 66.0 48.6 39.9 71.4 48.9 32.0 42.8 40 45.8 53.5 41.4 40.2 38.0 26.5 18.8 20 64.1 58.2 57.3 13.3 6.8 7.1 居住地 0-249万 250-449万 450-749万 750万以上 世帯人数 年齢 中学 高校 大学 首都圏 その他 性別 単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯 5人以上 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 男性 女性 全体 0 最終学歴 世帯収入 図6 インターネット利用(就労属性) % 100 80.0 80 60.5 64.3 57.5 60 67.7 53.5 48.7 69.8 64.8 43.6 34.1 40 57.6 20.4 68.0 45.5 17.6 20 週就労時間数 就労地位 職種 650万以上 350-649万 1-129万 130-349万 農業 マニュアル 一般ホワイト 上級ホワイト 自営 非正規 正規 50h以上 40-49h 1-39h 無職者 有職者 0 年収 が少ないので、世帯人数と居住地域は相互に影響を統制する必要があるだろう。学歴による差はきわ めて大きく、中学卒が 10%に満たないのに対し、大学卒で利用率は 70%を上回る。テレビや新聞に 比べると、その効果は格段に強いことがわかる。世帯収入による分布差が大きいのも、政府統計と一 致する傾向である。 図 5 で就労状況の影響を見ると、無職者層の利用率が少なくなっている。就労時間数による差は比 較的小さく、就労地位については自営、非正規、正規の順で段階的に上がっていく。もっとも大きな 差が見られるのは職種で、有職者のネット利用者のうち、ホワイトカラー層は全体の 7 割以上を占め る。背景の一つには、職場でのパソコン使用があるだろう。年収による影響も見られ、130 万円未満 の層では有意に低くなっている。 (2) インターネット利用の規定要因 ロジスティック回帰の分析結果(表 3)をモデル順に見ていこう。就労を除く基本変数を投入した モデル a では、世帯人数以外のすべての変数が有意になった。これらの変数は、相互の影響を取り除 いてもそれぞれが独立に影響を与えている。 単純集計で就労の有無による差異が見られたため、テレビ視聴と同様に、基本モデルに一つずつ就 労変数を投入して分析をおこなった(モデル b-f)。無職と有職による差は弱く、週就労時間数の影響 は見られない。就労地位では正規雇用のみが優位に大きく、職種では上級ホワイトと一般ホワイト、 -11- 表3.インターネット利用の規定因 ロジスティック回帰分析結果 従属変数(1,0) インターネット a.基本変数 利用あり オッズ比 性別(男0女1) 年齢(/10歳) 学歴(中1高2大3) 世帯人数 世帯収入(/100万) 首都圏ダミー(1,0) 無職ダミー(1,0) 週就労時間 就労地位:正規 非正規 自営 無職 職種:上級ホワイト 一般ホワイト マニュアル 農業 無職 年収(/100万) Nagelkerke R^2 N 0.51 0.41 2.32 0.91 1.14 1.57 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.528 1185 ** ** ** ** * 全対象者(強制投入) b.就労有無 オッズ比 0.55 0.42 2.35 0.91 1.13 1.64 0.71 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.531 1181 ** ** ** ** * + p 値:+ p < .10, * p < .05, ** p < .01 c.就労時間 オッズ比 0.56 0.42 2.29 0.91 1.13 1.62 ―― 1.00 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.526 1166 ** ** ** ** * d.就労地位 オッズ比 0.59 0.44 2.33 0.92 1.12 1.66 ―― ―― 1.75 1.48 0.95 -base―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.537 1183 ** ** ** ** * * 有職者 無職者 e.職種 オッズ比 f.年収 オッズ比 g.SW法 オッズ比 h.SW法 オッズ比 0.52 0.43 2.05 0.94 1.11 1.61 ―― ―― ―― ―― ―― ―― 2.70 1.65 1.01 0.65 -base―― 0.540 1181 0.63 0.42 2.30 0.92 1.10 1.61 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 1.08 0.531 1171 0.49 0.50 2.11 × 1.09 1.87 ―― × × × × ―― 3.94 2.50 1.59 -base―― × 0.403 668 0.43 0.36 1.97 × 1.14 × ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 0.513 468 ** ** ** ** * ** * * ** ** ** * * ** ** ** ** * * * ** ** ** 注: モデルg,hのStepWise法は尤度比による変数減少法(F値 >.10で除去 ――は非投入、×はステップワイズにより非選択 また年収による影響も若干見られた。決定係数からは、職種変数がもっとも大きな効果を持つことが 示されている。ただしテレビや新聞と異なり、就労属性の投入によって基本変数の影響に変動が見ら れない。インターネット利用の有無にとって、就労属性の影響は付加的なものであり、根底にあるの は就労以外の属性変数だと言える。 その点は、有職者を対象にスッテプワイズで変数選択をおこなったモデル g の結果で明瞭に示され ている。就労変数のうち残ったのは職種の上級ホワイトのみであった。さらに、有職者であっても自 分の年収ではなく世帯の年収から影響を受けている点が、他のメディアにはみられない特徴である。 また、無職者を対象としたモデル h からは、有職者と無職者のあいだで有効変数がほとんど変わらな いことがわかる。性別の影響に若干の差異が見られるほかは、どちらも年齢・学歴・世帯収入の規定 力が強い点で一致している。唯一首都圏居住のみで、有職者と無職者の違いがあらわれ、有職者のほ うが無職層より居住地の影響をうけやすいという結果が得られた。 (3) 考察 以上の結果を踏まえ、インターネット・メディア利用の階層特性を考察しよう。 まず大きな特徴としては、就労変数の影響は弱く、自分の職業階層よりも世帯単位の階層変数と連 動している点が挙げられるだろう。これは他のメディアには見られなかったインターネット特有の傾 向である。経済指標とは直接結びつきのないテレビや、学歴よりも職種の影響下にある全国紙とは異 なり、ネット利用は学歴と世帯収入の双方から影響を受ける。その点で、より全般的な、いわば「生 活水準」そのものが反映されるメディアだと言えるだろう。 さらにもう一つの大きな特徴は、各モデルにおける決定係数の高さである。ほとんどのモデルにお いて、モデルの適合度を示す疑似決定係数 Nagelkerke の R2 値は 0.5 を超え、この種の社会学の分析 モデルとしてはきわめて高い数値となった。性別・年齢・居住地の影響を除けば、インターネット利 -12- 図7 学歴・年齢別 インターネット利用率 中学 (%) 100 89.5 80.3 80 86.6 高校 79.6 63.9 60 55.6 59.7 54.7 44.4 40 大学 40.4 40.0 20 16.1 30代 40代 50代 図8 インターネット利用者の平均収入(有職者) 利用あり (万円) 1000 利用なし 70歳以上 利用あり (万円) 1000 766 750 595 516 224 390 216 500 362 324 309 588 521 437 500 0 20.9 6.4 3.6 図9 インターネット利用者の平均世帯収入 750 250 23.1 0.7 60代 0 20代 44.3 214 539 913 655 636 453 利用なし 533 669 529 419 316 250 198 0 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 用の有無はかなりの部分が学歴と世帯収入によって決まるといえる。学歴別インターネット利用率の 年齢推移を示した図 7 からは、インターネット利用に対する学歴効果が、全世代に渡って均一に作用 している様子がわかる。また、図 8,9 からは、ネット利用のある層はない層にくらべ、個人収入・世 帯収入ともに大きく上回っている様子がわかる。利用の有無による収入格差を見ると、世帯収入では 40 代以降で 200 万を超え、有職者の個人収入では 60 代以降で 300 万近くなり、デジタル・ディバイ ドは高齢世帯ほど深刻であることがわかる。言うまでもなく学歴および収入変数は、社会を構成する ほとんど全ての人々を包摂しうる、もっとも基本的な階層尺度である。説明力の高さと指標としての 斉一性を考慮すれば、インターネットへのアクセスに対し強力かつ全域的な階層スクリーニングの働 いていることが推察される22。 マス・メディアとしてのインターネットの特徴は、受信者側に高い負担がかかるところにあるだろう。 それは接続環境を準備する経済的なコストや、携帯端末・PC 等の操作能力だけではなく、主に情報の 性質に起因する負担である。発信主体および情報に関する責任の所在が明示化されている放送・出版 22 本稿で確認されたインターネット・メディアの階層偏向性は、単に利用の有無にもとづくネット・ アクセスの階層偏向性にすぎない。公共圏としてのネット空間における階層偏向を見るには、ネット 利用の形態を絞り、より情報行為の内実に踏み込んだ分析が必要になるだろう。先に挙げた「日本人 の情報行動調査」2005 年版報告書(東京大学大学院情報学環編,2006)ではインターネットの利用 内容を属性別にみた分析があり、ネットを介した匿名の他者とのコミュニケーション行為の利用率に は、現時点で年齢・学歴・職業・世帯収入のいずれも明確な関係がみられないとされている。ただし ネット経由のコミュニケーション・サービスは、利用者層自体がいまだ少ないため、今後さらに精査 が必要な領域になると思われる。 -13- メディアとは異なり、インターネット上の情報には、ほとんどの場合「商品」としての制度的な保証 がない。ネットから必要な情報を得るには、自分で探索し個別に価値判断を下さなければならず、自 由度が高い分だけ、無数の情報の中から取捨選択するための高度なリテラシーが要請されるのである。 現行の階層スクリーニングの背景には、アクセスに情報リテラシーおよびメディア・リテラシーの双 方が要請されるインターネットというメディアの特殊性が少なからず作用していると考えられる。 現在インターネットの利用者は若年層が大半を占め、近年は特に不安定雇用層との結びつきが強調 されるため、世代を通じて存在する利用/非利用の階層差には気づきにくい面もある。しかし喧伝さ れる偏在(ユビキタス)性とは裏腹に、現時点での利用者層は、教育水準と経済水準の両面で上層に 位置する特権的な人びとだといえる。インターネットは公共圏への能動的な参加を可能にし、使い方 によっては豊かな選択機会を提供する、身体機能の低下した高齢者にこそ有効性を発揮しうるメディ アである。それだけに、2005 年時点の 40 代層ですでに深刻な格差がみられる現状からかんがみれば、 高齢者層に対するデジタル・ディバイドの是正は、今後数十年間は重要な政策課題となるだろう。 5. 高度情報化社会における階層格差をめぐって 以上、現在の日本社会を代表するメディアとして、テレビ、新聞、インターネットの 3 つ階層特性 を見た。現時点で社会階層による影響のもっとも少ないメディアはテレビであり、性別と年齢によっ て接触頻度が大きく左右される新聞一般についても階層性はかなり低いといえる。ただし全国紙に限 っては、現状ではホワイトカラー層を中心とするスクリーニング作用が見られる。アクセス頻度と社 会階層との関連がもっとも強いのはインターネットであった。ネット利用者は高学歴・上級ホワイト の高収入層に集中する。メディア・アクセス能力に階層規定力をもった文化資本的な要素が見出され るとすれば、現時点でもっとも可能性の高いメディアの筆頭は、疑いなくインターネットだといえる だろう。 職業階層から見た場合、全国紙新聞の購読者層とインターネット利用者はかなり重複する。年代別 に全国紙とインターネット利用の重複状況をみたのが図 10 だが、図からわかるように、40 代以下で は 4 割前後が「全国紙・インターネット併用」となっている。若い層ほど「全国紙のみ」が少なく、 「インターネットのみ」が多くなることから、広域メディアとしての趨勢は、全国紙からインターネ 図10 全国紙の購読とインターネット利用 全国紙のみ インターネットのみ 43.9 20代 4.5 9.7 30代 39.9 70歳以上 0 20 16.6 25.4 27.6 33.0 60代 10.4 34.1 40.6 28.9 50代 41.2 39.7 17.8 40代 全国紙・インターネット併用 両方なし 14.3 4.1 16.2 15.1 4.5 48.2 2.7 40 53.3 60 -14- 28.4 80 100 % ットに傾きつつあるといえるだろう。情報の質や伝達形式が大きく異なる新聞が、インターネットを 深刻な脅威と見なすのは、この点を踏まえればある程度理解しうる事態となる。 全国紙とインターネットは多くのメディアのなかでもとりわけ「公論の場」という性格が強い。こ の二つに階層的スクリーニングが強くあらわれるのは偶然ではない。おそらく、 「公共圏」としての性 格と階層選別性とのあいだには、内在的連関があると想定するべきだろう。つまり、匿名の立場から 論理的説得力のみによって討論をするという公共圏の市民像は、それ自体のうちに強い階層偏向性が 含まれている可能性が高いのである。娯楽要素の高いテレビで階層選別性が低くなることも、同じの 事態の裏面だといえる。 最後に、情報リテラシーの階層格差と公共圏の関係について考察したい。マス・メディアを「公共 圏」として捉えるならば、 「世論」への寄与が大きいメディアへのアクセスの階層格差は、無論できる だけ早急に解消されなければならない。また、文化資本の立場から見れば、情報リテラシーが地位達 成にどのような影響を与えるか、また情報リテラシー格差が世代間にわたっていかに継承されていく のかについて、今後長い期間での追跡調査が必要となる。ただし、それは決して階層的な偏向性の少 ないメディアが政治的に「良い」メディアだということではない。重要なのは、均質で単一のメディ アを作り出すことではなく、複数の重なり合う公共圏のそれぞれに、どのような偏向が存在するのか を把握することである。理想の言論空間や完璧な民意という幻想をしりぞけつつ、同時に公共的コミ ュニケーションの空間を拡大させていくには、こうした視座が不可欠と思われる。 引用文献 Bourdieu, Pierre (1979)La distinction: Critique Social du Jugement, Editions de Minuit.(=1990, 石井洋二郎訳『ディスタンクシオン――社会的判断力批判Ⅰ・Ⅱ』 藤原書店.) Eley Geoff(1992)"Nations, Publics, and Political Cultures: Placing Habermas in the 19th Century," in Calhoun, Craig (ed.), Habermas and the Public Sphere, MIT Press: 289-339. Fraser, Nancy(1992)"Rethinking the Public Sphere: A Contribution to the Critique of Actually Existing Democracy," in Calhoun, Craig (ed.), Habermas and the Public Sphere, MIT Press: 109-42. Habermas, Jürgen(1962→1990)Strukturwandel der Öffentlichkeit, Suhrkamp.(=1994,細谷 貞雄・山田正行訳『公共性の構造転換[第 2 版]』未来社. ) 藤竹暁編(2005)『図説 日本のマス・メディア[第二版]』NHK ブックス. 橋本摂子(2006) 「公共性とコミュニケーション──アーレントとハバーマスにおける言論の政治」 『年 報社会学論集』19 号:1-12. ――――(2003)「〈社会的地位〉のポリティクス──階層研究における"gender inequality"の射程」 『社会学評論』54(1):49-63. 橋元良明(2001) 「日本のデジタル・デバイド」東京大学情報学環編『日本人の情報行動 2000』東京 大学出版会,pp.173-192. 花田達朗(1999)『メディアと公共圏のポリティクス』東京大学出版会. 井川充雄(2005)「日本の新聞、世界の新聞」山本武利編『新聞・雑誌・出版』ミネルヴァ書房. 岩井紀子・佐藤博樹編(2002)『日本人の姿 JGSS にみる意識と行動』有斐閣. -15- 木村雅文(2004)「現代日本の読者層―JGSS2002 からのデータをもとにして―」大阪商業大学比較 地域研究所・東京大学社会科学研究所編『日本版 General Social Surveys 研究論文集[3]JGSS で 見た日本人の意識と行動』pp.59-75. 小林直毅(2003) 「 『消費者』、 『視聴者』 、そして『オーディエンス』」小林直毅・毛利嘉孝編『テレビ はどう見られてきたのか』せりか書房,20-48 頁. 中馬清福(2003)『新聞は生き残れるか』岩波新書. 西村幸満・石田浩(2001) 『JGSS-2000 調査(2000 年 11 月)職業・産業コーディングインストラク ション』SSJ Data Archive Research Paper Series 18(SSJDA-18)東京大学社会科学研究所付 属日本社会情報センター,22p. 佐藤俊樹(2008)「テレビを理解する Understanding Television―データから見たメディア空間の現 代」NHK 放送文化研究所編『現代社会とメディア・家族・世代』新曜社,181-201 頁. 鈴木裕久(2001) 「情報リテラシー」東京大学情報学環編『日本人の情報行動 2000』東京大学出版会, pp.193-200. 田中義久・小川文弥編(2005)『テレビと日本人』法政大学出版局. 東京大学情報学環編(2006)『日本人の情報行動 2005』東京大学出版会. 【謝辞】 日本版 General Social Surveys(JGSS)は、大阪商業大学比較地域研究所が、文部科学省か ら学術フロンティア推進拠点としての指定を受けて(1999-2008 年度)、東京大学社会科学研究 所と共同で実施している研究プロジェクトである(研究代表:谷岡一郎・仁田道夫、代表幹事: 岩井紀子、幹事:保田時男)。東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センターSSJ デー タアーカイブがデータの作成と配布を行っている。 -16- Social Stratification and Media Environment in Japan: An Empirical Analysis of Media Access using JGSS-2005. ABSTRACT Raising questions about relationship between social stratification and media communication is not common in either stratification research or media studies in Japan. The problem that prevents us from seeing this question is apparent difference between these 2 fields: one examines social distribution of wealth and poverty, whereas other studies an intangible object, information. However, in particular contexts following, it can become important issue in both 2 fields. First aspect, in media studies, concerns with Habermasian idea of "Public Sphere", communicative space for democratic debate where people pursuing consensus through the arguments oriented by reason. From the point of the view of public sphere, media communication implies political participation and consensus means common good. If "Public Opinion" would be formed through media discourse and mass communication, we should examine specific features of each media in the aspect of social stratification, so as to keep critical perspective on fictional perfection of neutrality, impartiality of "Public Sphere". The second aspect, in the field of social stratification research, has respect to the theory of cultural reproduction proposed by Bourdieu. That seeks to explain the hidden link between social class of origin and attained status in terms of the impact of cultural capital, which includes cultural tastes, distinction, preferences and literacy, inherited from origin. In this context, it is expected that information/media literacy can be read as a new relevant index of cultural capital and hence current digital divide is a kind of cultural reproduction. Therefore, we should examine the effect of media literacy in terms of status attainment and social exclusion. In these contexts, this paper aims to clarify the relationship between social status and media literacy, not only as political participation in public sphere, but cultural capital in social stratification systems as well. For this purpose, we use data from the Japanese General Social Survey 2005 (JGSS-2005) and assess the correlation between access frequency of 3 kinds of mass media (television, newspaper, and internet) and social status index (mainly occupational status, educational status and house-hold income level). Main results are as follows. In context of social stratification research, the most irrelevant media is television, and most relevant one is internet. Newspaper is located between them, whereas 'national paper' shows strong connection with people in the high occupational status. Keywords: social stratification, media access, information literacy -17-
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