入院患者とご家族のスピリチュアルニーズ ― 療養病棟看護の中の霊的支え― 聖ヨハネ会・桜町病院・清水香名子・石田房子・平野のぞみ KEY WORDS : スピリチュアルニーズ・ 霊的支え・高齢者・療養病棟 はじめに 日頃、病棟で出会う患者は「家族に迷惑をかけてまで生きていたくない」 「生きているのが苦痛だ」 「死ぬ のが恐くて生きている」等スピリチュアルニーズを日常的に訴えている。ホスピスケアでは定着化しつつあ るスピリチュアルケアを、 「人生の完成の時であり、死への準備を整えていくときである」高齢者、慢性疾患 患者が入院している、療養病棟看護においても必要とされているのではないかと考え、研究に取り組みまし た。 用語の定義 今回国内で広く使用されている窪寺の定義を採用した。注)1 窪寺の定義するスピリチュアルキーワー ドは、①生きる意味、目的、価値の喪失②苦難の意味③死後の世界④反省、悔い、後悔、自責の念、罪悪感 ⑤超越者への怒り⑥赦しの6項目である。 注)1 窪寺俊之:スピリチュアルケア学序説、P73 三輪書店 結果及び考察 1 対象者は6名であり、得られたスピリチュアルニーズは窪寺の分類中①~④項目であり、今回、⑤と ⑥項目のニーズはみられなかった。窪寺の分類にはない、 「祈り」「感謝・希望」など肯定的な言葉も 聞かれた。 2 霊的支えの展開 事例1:慢性疾患と悲惨な家族状況から無気力に陥っている患者が、生きる気力が 回復するように援助した。事例2:加齢から身体能力が衰え、日常生活全般に介護を必要とする患者 が、今の生活に喜びを見出せるように援助した。 事例1はキーワード①と②、事例2はキーワード ①と③のスピリチュアルニーズを抱えていた。WHOは「霊的な面まで抱合したケアにおける人間関 係は心の癒しにつながる」1)と霊的援助の必要性を延べている。慢性疾患患者、高齢者看護におい て、看護の中で霊的支えを展開することは有用であると考える。 1) 「がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア」 世界保健機関編 金原出版株式会社 1993 年 結論 加齢に伴う身体機能の低下や慢性疾患患者が入院している療養病棟では、患者やご家族はスピリチュアル ニーズを抱えており、日常的に表出しています。24 時間、患者に接する看護師が霊的支えの必要性を理解し、 患者の霊的な面まで抱合した関わりが求められていると考えます。
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