GEC ニューズレター No.24(2003年8月発行)

AUGUST 2003
24
No.
地球温暖化対策に貢献するGEC
(財)地球環境センター
(GEC)
は今、
地球温暖化対策に向けて着々と活動を進めている。
環境省からの委託を受けた「クリーン開発メカニズム
(CDM)事業調査案件」では、
今年は例年以上の応募があり、
企業や団体の
地球温暖化対策への熱意がより一層高まっていることを感じている。
GECは、
CDMの活用について適切な情報を提供するため、
12 月の「COP9」に先立つ6 月のプレ会議「SB18」
(ドイツ・ボン)
に出席した。
今後、
ますます地球温暖化対策への主体的な対応が求められていく中、
CDMの取り組みを充実させるとともに、
その国際的な動向などについて、
ニューズレターを通して可能な限り分かり易く伝えていきたいと考えている。
COP9・プレ会議でサイドイベントを開催
GECは、
ドイツ・ボンの UNFCCC(気候変動枠組条約)SB18( 第
の小林マネージャーが、
GECの CDM 事業調査で行ってきたインドネ
18 回補助機関会合 ) 開催中の 2003 年 6 月 5 日に、CDMシンク
シア東ジャワ州を対象にしたフィージビリティ
(実行可能性)調査の成
(CDMとしての二酸化炭素吸収源)
に関するサイドイベントを日本環
果発表を行い、
植栽樹種や原生2次林の CO 2 吸収量や CDM 植林
境省と主催した。共催国は、
ボリビア、
カナダ、
チリ、
コロンビア、
インドネ
事業としての費用対効果、
森林火災や病虫害などの植林特有のリス
シア、
ウルグアイである。2003 年 12 月にイタリア・ミラノで開催予定の
クなどについて、
有用な知見を紹介した。
COP9( 気候変動枠組条約第 9 回締約国会議)
では、
植林などの二
酸化炭素吸収源に関する詳細なルールが決定されることとされてお
本サイドイベントには100 人近い参加者があり、
会議開催中に発行
された速報の一面に、
本サイドイベントの報告が掲載された。
り、
これに繋げるための、
有用な情報交換を目的としている。
環境省の山田審議
官の開 会の挨 拶から
始まり、各 国から持 続
可能な新規植林・再植
林を推 進 する内 容の
発表が行われた。日本
からは、
住友林業(株)
ウルグアイ発表(SB18)
2003 年度 CDM 事業調査案件
1999 年度から、
温暖化対策クリーン開発メカニズム
(CDM)事業調
査を実施しているが、
今年度も企業、
NGO、
地方公共団体等を対象
にプロジェクトを募集した。その結果、
59 団体から74 件の応募があり、
廃棄物管理、
バイオマス利用など、
20 件のプロジェクト案件を採用した
(次頁参照)。早ければ年内にも京都議定書が発効する見込みであ
り、
具体的なCDM 事業が動き出すと考えられる。CDM 事業を具体
化するためには、
ホスト国政府からの承認をはじめ、CDM 理事会
Contents
(EB)が指定した運営組織(DOE)からバリデーションと言われる事
CDM 特集
1-2
タイの「エコ・フェスティバル」参加報告
2
業の適格性に関する審査を受け、
承認されなければならない。今回
3
の選定案件は、
バリデーションにまで繋がる可能性のある熟度の高い
JICA 座談会:EMSの講義を受けて
4-5
プロジェクト提案が中心となっている。更に、
事業規模は小さいものの、
大気汚染対策ビデオを制作
5
ホスト国の地域社会への貢献度が大きいと考えられる案件が採択さ
UNEP 親善大使活動レポート
6
れていることも、
今回の特徴である。
「第3回世界水フォーラム」参加報告
GECでは、
今後、
これらの案件の実現可能性の評価を行いながら、
【GECニュース】
6
【GEC/IETCニュース】
6
CDM 具体化のための支援を行うとともに、
CDMの本来の目的であ
「国際環境シンポジウム(清水市)
」を共催
6
るホスト国の持続可能な発展に貢献できる事業を推進していきたいと
【IETCニュース】
7
考えている。
8
「CDM 事業」に関する解説や概要等の詳細については、GECのウェブサイトを参照ください。
EMS 研修コース案内、GEC 友の会便り
GEC Newsletter
No.24 August 2003
1
2003 年度採択案件
団体名
(株)大林組
清水建設(株)
電源開発(株)
廃
棄
物
管
理
豊田通商(株)
調査名
団体名
タイ国における廃棄物処理場(バンコク郊外)
から発生するメタンガス有効利用発電施設
の事業性の調査・検証
大連経済技術開発区
中央下水処理場汚泥消化メタンガスの
コジェネレーション利用事業
ルーマニア国における廃棄物処分場から
発生するメタンガスを利用した
熱電併給設備の事業性調査
ブラジルにおけるランドフィルガス回収および
発電事業からの炭素クレジット獲得調査
マレーシア 廃棄物のコンポスト化処理に
日本環境
よる埋立地からのメタンガス抑制事業計画
コンサルタント
(株)
実現可能性調査
プノンペン市 廃 棄 物 埋 立 処 分 場( Stung Mean
(財)廃棄物
Chey)から排出するメタンガス等(LFG)の回収による
研究財団 温室効果削減及びエネルギー活用事業のF/S調査
フィリピンにおける廃棄物埋立て処理場の
三菱証券(株)
回収埋立てガスによる
発電事業の実施可能性調査
(株)
エックス
都市研究所
バ (株)関西総合
イ
オ 環境センター
マ
ス
利 (社)国際環境
用 研究協会
(株)パウワウプール
植バ 王子製紙(株)
林イ
オ
マ
ス 関西電力(株)
利
用
と 住友林業(株)
調査名
団体名
マレーシア・パハン州チニ地区における近接
パームオイル工場の統合に伴う
メタン排出抑制とバイオマスの有効利用調査
タイ国におけるバガスとライスハスクを用い
た熱電併給の事業化可能性調査
(財)
オイスカ
植 (財)国際緑化
林 推進センター
ブラジル製糖廃棄物エネルギー
転換プロジェクト
丸紅(株)
ひまわりを資源作物とするバイオディーゼル油
製造プロジェクトに関するタイでの調査
マダガスカル・トアマシナ州における
循環型バイオマスプランテーションの事業化
ポーランド共和国 柳植林事業を利用した
石炭焚熱供給プラントの
バイオマス転換事業調査
インドネシア共和国3州における植林及び
バイオマスエネルギー利用プロジェクト調査
(株)日商岩井
総合研究所
そ
の
他
調査名
フィリピンにおけるNGO 主導による
住民参加型植林事業可能性調査
インドネシア国ロンボク島における
住民参加型 CDM 環境植林可能性調査
カンボジア・モントギリ高原における
ゴムの木植林事業可能性調査
中国における半導体工場より排出される
代替フロンを対象としたCDM 事業化調査
日本重化学工業(株)
ロシア連邦イルクーツク市での地中熱利用
ヒートポンプによる地域暖房可能性基礎調査
みずほ証券(株)
共同実施事業(ハンガリー風力発電)の実現に
向けた日本からの資金導入手法検討を含むFS
*各調査案件の詳細内容はGECウェブサイトに掲載しています。
(マレーシア)
CDM承認を目指して運営委員会に参画
GECは、
環境省の温暖化対策クリーン開発メカニズム事業調査の
2001 年度の実施案件である「マレーシアのパームオイル工場を対象
としたバイオガス発電プロジェクト
(調査団体:
(株)エックス都市研究
所)」の CDM 事業具体化の支援の一環として、
2003 年 2 月 14 日に
CDM(クリーン開発メカニズム)
って何?
“二酸化炭素の排出権”や”炭素クレジットの売買”などの言葉が
新聞の紙面や経済雑誌に良く出てくるが、
まだ何となく、業界用語から
脱しきれていない面がある。これらの取引は、今後、温暖化の原因物質
である二酸化炭素を1
削減するのに、日本などこれまでエネルギー効
マレーシアで開催されたステアリング
(運営)委員会に環境省の代理
率改善などの対策を講じてきた国(よく「水を絞り切った雑巾」に例えら
で出席した。CDM 事業を具体化するためにはホスト国政府からの承
れる)では、非常にコスト高となってしまうため、世界全体でできるだけコ
認が必要であるが、
当委員会は、
本案件を評価するために、
マレーシ
ストをかけないで削減していくことを誘導するものである。これは、1997
ア・日本の産官学の関係者から構成されており、
事業承認のための
年に京都で開催されたCOP3で米国から提唱されたものであるが、皮肉
にも米国はこの後、京都議定書から離脱した。
第 1 段階と位置づけられている。
また本案件は、
環境省が 2002 年 12 月から始めている「認証モデル
CDMは、先進国の企業などが技術や資金を提供し、途上国において、
当該国の企業などと共同で二酸化炭素などの温室効果ガス削減のプ
事業」の1つであり、
GECは委員会の中で、
環境省のCDM への取り
ロジェクトを行い、得られた温室効果ガス削減量を両者で分配するもの
組みの概要を紹介し、
マレーシア関係者に、
認証モデル事業に対する
である。温室効果ガス削減量に価値が付くため、温暖化対策に前向き
今後の協力を要請した。
な企業などにはビジネスチャンスとなりうるものであるが、京都議定書に
よると、CDMの第一の目的はホスト国の持続可能な開発に資すること
とされている。
環境省の「認証モデル事業」
CDM 事業を行うためには、
プロジェクト参加者は、ホスト国から事業承認を受けるだ
けでなく、CDM 理事会が信任する運営組織(第3者認証機関)
からバリデーション(有
効化)が確認されなければならない。日本において、① CDM 事業の有効化や炭素ク
レジットの検証・認証を行う運営組織候補を育成するとともに、② CDM 事業参加者
のプロジェクト設計書(PDD)作成のための経験、知見の蓄積向上を図ることを目的と
して、バリデーションの予行演習を行うものである。
CDMはうまく機能すれば途上国・先進国ともに利益を得られるすばら
しい制度であるが、途上国には、CDMは「先進国の便利な道具である」
として批判されがちである。CDMが推進されるためには、
ビジネスと同時
にホスト国への貢献を前提にしたプロジェクトデザインが要求される。
タイ・ランプーン市の「エコ・フェスティバル」に参加
エコ・フェスティバルの宣伝看板
GECでは、
日本で環境保
メンバーが中心となって、
日本の市民による河川環境保全活動に
全活動を実践している方々
ついて紹介しました。写真や絵を多く用いるなど展示物に工夫を凝
の協力を得て、2001 年から
らしたことで、
子供達を中心に多くの市民の注目を集め、
またチェ
タイ北部のランプーン市で、
ンマイ大学工学部の助教授からは「今後、
タイでの河川環境改善
住民参加型の環境保全活
モデルの参考にしたい。
」
とのコメントをいただきました。
動が展開されるよう取り組ん
他にも、
小学生による自転車ラリーが催され、
約 6kmの区間・9
でいます。
これまでの活動成
か所の関門を、
150 人の子供たちがマウンテンバイクで疾走しまし
果を踏まえ、
2003 年 6 月 5 日に「世界環境日祭り
(エコ・フェスティ
た。関門(下水処理場
バル)
」が当地で開催されました。
やお寺)では、
『ごみの
フェスティバルには、
タイ国・県・市の行政、
大学や小・中学校、
地
分 別は何 種 類です
元コミュニティ、
企業、
また地元で新しく発足した環境 NGO“トンボ
か?』などの環境クイズ
クラブ”など、
予想以上に多彩な団体がブース出展し、
約 5,000 人
が出題され、
市民の環
が参加しました。ステージでは環境についてのクイズや演劇があり、
境への関心が一段と
野外では22のかやぶき屋根の展示ブースが設けられました。GEC
高まりつつあることを実
ブースでは、
大阪のNGOである「恩智川環境ネットワーク会議」の
感できた一日でした。
2
No.24 August 2003
オープニングセレモニー
GEC Newsletter
第 3 回世界水フォーラム
(WWF3)での GECの取り組み
「第 3 回世界水フォーラム」は、
内外から2 万人強の参加者を得て、
2003 年 3 月 16 日∼23 日の間、
京都・滋
賀・大阪の3 府県で開催された。世界水フォーラムは3年おきに開催されており、
今回はマラケシュ
(モロッコ)
と
ハーグ
(オランダ)
に続く3回目で、
閣僚級国際会議も併催された。
洪水や水不足に対する対策や水質汚濁による公害問題の克服など水環境を改善してきた経験があり、
また、
水にまつわる固有の風土・習慣が豊かに根付いている日本での開催は、
世界の人々にとって有意義であった
と考えられる。一方、
四季の変化に伴う豊富な雨量を享受できる小さな島国に住む日本の人々にとっては、
こ
のフォーラムは、
安全な水が飲めない、
荒廃する自然に対応できないなどの世界の水問題の現状について関心を持ち連帯意識
を育むまたとない機会となった。
GECは、
環境事業団の地球環境基金を受けて2001 年度からタイ、
ランプーン市を流れるクァン川を対象に展開している「住民
参加による環境普及啓発活動」事業のこれまでの成果を、
フォーラムの分科会で発表した。
(1)「タイ・ランプーン市における住民参加による環境モニタリングと保全活動」の発表
京都での水環境セッションで、
GEC が実施している「タイ・ランプ
討議では、
水環境の調査におけるモデリングについて、
ーン市での事業」について、
タイ側アドバイザーであるチェンマイ大
(1)汚染の数学モデルに基づく図式化(各国政府代表の専門家)
学教育学部のプラサーン助教授が、
プレゼンテーションを行った。海
水質汚染物質の負荷・拡散や水質項目間の相関関係、自然浄化のメカニズムなど
の自然科学的な数式モデルによる定式化が容易なパラメータを用いて環境の質の変
化を把握することを目的として、調査を設計、実施し、評価する図式。
外からの報告は、
タイ以外は全てが政府代表の専門家からという
こともあり、
ランプーンの事例は唯一の海外 NGOからの報告として
注目された。
プラサーン助教授は、
住民参加による水質モニタリングや、
行政、
NGO、
研究者など主体間のパートナーシップの必要性を強調し、
ま
た、
この事業のワーキングメンバーである原田氏も討議に参加し、
モ
ニタリングとモデリングの関係等について、
基本的な考え方からもう
一度整理することを提案した。
(2)行政施策や市民啓発などを考慮した図式化(日本のNGO 代表)
専門家や市民組織のリーダーあるいは市民自身が、地域に居住し生活している市民
に対して、大学や行政の専門家が設計し実施する調査と、
そのような調査の結果に基
づいて立案される水質汚染対策の施策に対して、内容を理解し効果を増大させることを
目標として、調査や解析、施策の実施に参加できるように啓発する図式。
(3)地域社会の主体的な環境認識を重視した図式化
(プラサーン助教授)
環境及び環境認識は社会的に構築されるとする社会構築主義の立場から、
モニタリ
ングとモデリングの枠組みと調査の実施の手順と評価の基準は、流域社会を構成する
ステークホルダー
(利害関係者)間の合意によって形成されるとする図式。
という3種類の考え方が示された。
それぞれの国・地域で異なる文化的・自然的な環境を適切に捉
えるには、
(3)の図式化と、
それに合ったモニタリングを、計画・実
施・評価・見直し
(P.D.C.A.)
のサイクルで改善することが必要であ
り、
本事業は、
この視点での環境保全活動を推進しようとしている。
プラサーン助教授のプレゼンテーション
ワーキングメンバーの原田氏
(2)
「水のEXPO」にブース出展 (3)
「水のEXPO」でフォーラムを開催 第 3 回世界水フォーラム開催期間中、
大阪では、
水に関するフェアとして、
「水と
2003 年 3 月 20 日、
『水の EXPO』水道展示会の
都市と産業、
そして未来∼つくり出す水と未来∼」をテーマに『水の EXPO』が開
ベンダーフォーラム会場において、
民間企業 5 社の協
催された。水問題にかかわる機関・団体約 500 社が出展参加。3 月 18 日から22 日
力を得て、
「持続可能な水技術∼日本の技術が世
までの5 日間の来場者数は、
ほぼ10 万人となった。
界に貢献する∼」をテーマにフォーラムを開催した。
今回 GECのブースでは、
環境技術情報データベース
(NETT21)
コーナーを設
最初にGECの活動と日本の環境技術データベ
け、
実際のデータベースに触れていただき、
特に
ース N E T T21の紹 介を行い、続いて U N E P -
技術系企業の方から「NETT21に自社情報を
IETCの活動、
データベースmaESTroIIについて
掲載するには、
どうしたらよいか」など多くの質問
説明した。
をいただいた。
また「クイズに答えてエコバッグを
もらおう!」企画を実施。ブース来場者に、GEC
力いただいた企業とその技術の内容は次のとおりである。
に関するクイズを出題し、全問正解者に、GEC
オリジナルのエコバッグを進呈、
合計 236 人の方
に参加いただいた。
クイズに答える参加者
【用語解説】
●モニタリング…施設や設備の運転状態、
水質や大気などの状態を監視すること。
●モデル化…一般的には、
実際には調べることが難しいことを模擬実験で調べるため
(モデリング)モデル(模型や数式)を作ること。ここでは、調査のプランニングの段階
で調査項目間の関係を図式化すること。
GEC Newsletter
No.24 August 2003
発表に聞き入る参加者
次に企業から各々が現在取り組んでいる水技術について紹介が行われた。協
(株)クボタ
液中膜装置を用いた排水処理
(株)東芝
風力、
太陽光を利用したデータ収集局
日本ガイシ(株)
NGKセラミック膜について
月島機械(株)
TSKエアレーションパネルの省エネ効果について
(株)荏原製作所
・都市部における雨水対策技術
・大規模膜ろ過システム
各社の取組み、
様々な技術について紹介していただき、
バラエティ豊かなフォー
ラムとなった。GECは今後も民間企業との連携を深め、
企業の持つ技術を世界へ
普及するべく活動していきたい。
3
GEC PLAZA Corner
座談会『JICA 環境政策コースの環境マネジメントシステム(EMS)プログラムについて』
開催日:2003 年 6 月 30 日
会場:GEC
参加メンバー:
2003 年度「環境政策・環境マネジメントシステムコース」参加研修員 5 名
Ms. Manila Lorna S. ローナさん:フィリピン
Mr. Lagang Matuwid Sanchez ラガンさん:フィリピン
Mr. Khalid Alladin カリッドさん:ガイアナ
Mr. Janak Raj Bhatta ジャナックさん:ネパール
Mr. Paredes Vargas Filipe Alejandro フィリペさん:チリ
座談会
役割について言えば、日本のように、自治体がモニタリン
2002 年度から、JICA 環境政策コースに、環境マネ
・最も有益だったのはケース・スタディとロール・プレイで
ジメントシステムプログラム(6 日間)
を取り入れた。コ
あった。この EMS の手順とテクニックは実践を重ねるこ
グを行うだけの予算や人材がありません。
ース名を、以前の「環境管理セミナー」から、
「環境政
とによって学べると思う。
ラガンさん:EMSをサポートする法的基盤がありません。
策・環境マネジメントシステム」に変更したことからも、
・演習が多かったが、
それらのすべてが有益であった。た
フィリピンにおいて、EMSを適用しようとするのであれば、
環境マネジメントシステムがこのコースの主要な柱とな
だ、工場での監査を想定した演習は、主に写真を見なが
制度化が必要でしょう。
しかし、
フィリピンには法的に定め
っていることが、
お分かりいただけると思う。このコース
ら進められたため、
イメージが持ちにくかった。出来れば実
られた環 境 適 用 証 明( Environmental Compliance
は、途上国の環境行政に関わる行政官、技術者を対
際に工場で行いたかった。
Certificate: ECC)が既にあり、企業はこの ECCが無け
象としており、
そのねらいは、環境マネジメントシステム
3.プログラムはこのコースの目的を達成したと思いま
を環境行政の政策ツールとして利用してもらいたいと
すか。
いうところにある。
・時間的に余裕がなく厳しいスケジュールであったが、目
環境マネジメントシステムの講義には、英国に本部
的は達成したと思う。
を置く環境マネジメント・アセスメント協会(IEMA)の環
・プログラムはこのコースの目的を達成した。このプログ
境監査員養成コースとして認定を受けたテキストを使
ラムによって、ISO14001とOHSAS18001(労働衛生
用している。このコースを設定した目的は、環境マネジ
安 全マネジメントシステム)がよく理 解できた。また
メントシステムについて、実務的なアプローチをとおし
OHSAS18001とISO14001/9001の関係についても学
て基本理念を理解してもらうことであるが、副次的なメ
んだ。審査行程で学んだ知識も有益であったと評価して
リットとして、
このコースを受講した研修員は、最終日
いる。
の試験によって、IEMAの資格(環境監査員補)申請
・完全に達成した。EMS 手順の環境審査への適用方
時に必要な10ポイントのうち、最大 5ポイントが得られ
法について、理解した。
る。他のポイントは、学歴資格、専門職団体の会員資
・達成した。ISO14001とOHSAS18001のコンセプトと
格などで加算でき、申請は、帰国後、研修員各自で行
要求が明解になった。
ってもらう仕組みとなっている。
・最低 2 週間の研修期間が必要だと思う。
この環境マネジメントシステムが果たして研修員に
けられている時間や費用の面から見ても重要なところ
・ディスカッション/ケース・スタディ/ロール・プレイでい
である。この講義を開始した昨年度、講義終了後の
くつかの指示と仕組みのはっきりしない面があった。複数
研修員にアンケート調査を行い、概して好評な結果を
グループに分かれて研修を行う際には、個別にアシストで
得た。今年度は、
この講義導入の意義をもう少し掘り
きる補助講師がいればよかったと思う。
下げて探りたいという目的で、
アンケート調査に加え、
・講義の中で、最も有益な部分であった。
からいくつかの質問を行った。
ため、現在中小企業には導入するゆとりがありません。
し
かし個人的には、近い将来、
フィリピンにおいてもEMSが
実施されていくと思っています。
カリッドさん:ガイアナは人口が少なく
(約 80 万人)
、実
質、中央政府がすべてやることになっています。
フィリペさん:チリでは自治体にも環境部門はあります
が、
その力は日本に比べて小さいものです。また、私が
EMSを導入しようとしても、EMS の経験がなく、
どこかの
機関や企業で実際に審査員を務めることは難しいと思い
ます。
ジャナックさん:ネパールも中央政府にほとんど機能が集
にはEMSを実施していきたいと思っています。
NL:ラガンさんは、
現状ではECC がありEMSの導入
はむずかしいと述べておられますが、個人的には
EMS の導入には楽観的であると述べられました。そ
れはどういうところからくるのでしょうか。
ラガンさん:ISO14001を取得するのはむずかしいと思い
ますが、EMS の考え方に基づき、
できるところからやって
5.全体的に、
あなたにとって有益でしたか。
いけばいいのではないかと思っています。そういう面で楽
・非常に有益であった(複数)。
・コースは明確に、組織が環境と経済の目標を達成する
ことを規定している。
アンケート調査
あると思います。また、ISO14001 取得には経費がかかる
現在の自分の立場では力不足だと感じますが、個人的
4.ディスカッションやケース・スタディはどうでしたか。
・非常によかった(複数)。
方について伺うため、GECニューズレター編集部(NL)
ら、EMSとECCの関係については今後、議論の余地が
まっています。上級組織にEMSの導入を説得するには、
どのように受け止められているかについては、講義にか
座談会において研修員の率直な意見と講師の考え
れば、操業を認められない仕組みになっています。ですか
・ISO14001は、EMSを構築するための枠組みを提供す
るものである。
観的です。
カリッドさん:ISOの認証取得を促進するためには、経済
面のインセンティブ、例えば、税の控除の導入等が考えら
れます。
1.テキストは役に立ちましたか。
NL:ISO14001は国際貿易を行う上で必要だと思い
・非常に有益であった(複数)/役に立った。
ますか。
2.講義のどの点が最も役に立ちましたか。
また、
その
点についてさらに希望したい内容を記入してください。
・すべての演題が有益であった。特に内容についての希
望はないが、
それぞれの課題について議論をする十分な
座談会
フィリペさん:チリは輸出が多いので、基本的には必要だ
NL:この環境マネジメントシステムをあなたの国で実
施する場合、
どのような問題があると思いますか。
と思っています。すなわち、ISO14001は環境における世
界共通語といえます。
ジャナックさん:ネパールでは現在、国内の環境法を遵
時間が欲しかった。
ローナさん:私のいるところは、政府の地方組織であり、
・ISO14001に関する講義が最も有益であり、
そのコン
予算をはじめ重要な事柄は中央で決まるので、EMSを自
ローナさん:フィリピンでは中小企業も輸出関連の製品
セプトと要求事項がよく分かった。ただ、
「環境監査の国
分の組織に適用するのは難しい面があります。また、仮に
を多く作っています。従って、ISOは必要かもしれません
際規格(ISO19011)についてはもう少し説明が欲しかっ
導入したとしても、民間企業に対しては間接的な効果し
が、取得するのは難しい状況です。
た。また、
「環境影響評価」の中で行う、環境側面抽出
かありません。地方自治体が財政面、権限面でEMS 導
フィリペさん:国内市場向けの場合は、国内法を遵守し
表での計算方法が、
はっきりと理解できなかった。
入のイニシアティブを取るのは無理です。地方自治体の
ていれば十分ではないでしょうか。
4
守することで精一杯の状況です。
No.24 August 2003
GEC Newsletter
GEC PLAZA Corner
JICA 研修テキストをホームページに掲載開始 カリッドさん:EMSは会社の自衛手段として必要だと思
います。ガイアナでは1995 年にシアンの流出事故があ
りました。その事故の対策に要した企業の経費は莫大で
した。また、社会的信用も失いました。結局、
その会社は
1999 年にISO14001を取得しました。こうした事故を防
ぐためにもEMSは有益だと思います。
NL:個人的な見解ですが、
ある基準を達成できたかを
評価する方法(結果主義)
はなじみやすいが、
システムの
機能を評価する欧米型の方法(プロセス主義)
にはなじ
みにくい気がします。それについてはどう思いますか。
カリッドさん:途上国の私たちにとって、世界の中である
方法が求められれば、
それに対応せざるを得ない、
すなわ
ち、選択の余地がないというのが現実です。
NL:日本では、
多くの企業が ISO14001を取得してい
GECでは、国際協力事業団(JICA)の委託を受
け、途上国の行政官や専門技術者を対象に、大気
汚染対策、都市廃棄物処理、環境政策・環境マネ
ジメントシステム、有害金属等汚染対策、
キューバ
2003 年 5 月からホームページへの掲載も随時行な
っている。現在、都市廃棄物処理等のテキストにつ
いても鋭意作成中である。ホームページには講師
がインターネットへの掲載を了解したテキストのみ掲
環境マネジメントの5つのコースを運営している。こ
れらの研修で最も重要な課題の一つは、
テキストの
充実である。従来、テキストは、紙媒体で研修員に
配布していたが、日本で得た知識や情報を帰国後
職場で共有し、活用するという点からもその電子化
が望まれていた。
載しているが、研修員には、研修で使用した全ての
テキストをCD-ROMで配布することを今年度から試
行的に実施する予定である。
テキスト電子化にあたっての、版権や著作権の問
題については、関係者の途上国への環境技術移
転の熱い思いによってとりまとめられてきた。また、
GECでは、研修修了者に対するフォローアップ事
業の一環として、
2年前からJICA の了解を得て、
テ
キストの電子化に取組み、
これまでに、大気汚染対
策、環境政策・環境マネジメントシステム、有害金属
等汚染対策用テキストの電子化をほぼ完了し、
また
技術の進展に伴い情報の更新を継続的に行って
いく必要があるが、
このような努力の積み重ねが日
本の都市環境技術を集大成するものとなることを願
っている。
詳細については、
GECのウェブサイトを参照ください。
ます。取得には、日本の企業の品質管理システム
(QMS)の経験が生きています。日本の EMS の取得
件数が大幅に伸びた一因として、
企業や組織が環境
GEC NEWS
に配慮していることのシンボルとして使われていること
が挙げられます。一方、
途上国でも、
国際的な市場の
国際環境協力のためのビデオを制作!
中 で 必 要とされ る場 面 は 多 いと言 えます が 、
「日本の大気汚染対策の経験−大阪市のケーススタディ−」
ISO14001を取得するのは経済的に困難な状況であ
るということですね。
しかし、
EMSの考え方を導入して
いくことに関しては皆さん前向きであり、
有効だと考え
ておられるということですね。本日はどうもありがとうご
ざいました。
新日本認証サービス(株)審査員
楢崎建志 講師談話
この6日間の EMS 講義で研修
員に学んでもらいたいことは、
マネジ
メントの考え方である。ISO14001
規格は、
どんな国・組織でも成り立
GECは、
(財)地球
環境戦略研究機関
(IGES)と共同で、途
上国向けの大気汚
染対策研修用ビデ
オを制作した。この
ビデオは、日本の大
都市における大気汚染対策を素材として、
それら
の歴史や社会的背景を分析することにより、
大気
汚染対策が成功した要因について解説している。
ビデオ制作に当たっては、
大阪市をはじめ、横
浜市、北九州市や紀本電子工業(株)、
( 株)中
山製鋼所、
電源開発(株)
などの企業等、
様々な
機関から映像や資料の提供などの協力を得た。
ビデオは英語版で、
GEC の実施するJICA 集
団研修「大気汚染対策コース」や、
IGESのeラー
ニングコースにおいて、
活用する予定である。
また、
世界銀行が実施している「Clean Air Initiative
for Asian Cities (CAI-Asia)」事業の人材開発
プログラムの教材としても提供する予定であり、
さ
らに、
中国語版やスペイン語版の制作も検討して
いる。日本の公害対策の経験が途上国の都市
環境管理に活かされるよう、
様々なチャンネルを通
じてこのビデオを提供していきたいと考えている。
つようにできており、規格には基本
的な要求事項しか入っていない。た
楢崎先生
だ、
この規格は、
システムの仕組み
はよく出来ているが、運用面での制
【環境マネジメントシステム出張研修】初めて企業を対象に実施
度(認定制度や審査員の要件など)が国際的に共通化さ
れないと、各国でばらばらになってしまうのではないかという
懸念は考えられる。
研修員と日本の受講生の相違点は、規格の理解の早
さである。日本では、例えば、
「運用」
「活動」といった規格
の要求事項で用いられる言葉の説明をすることに時間を
費やすが、研修員は、規格が書かれている英語で学ぶため、
説明せずともすんなりと分かるようだ。
現在、途上国の認証取得件数が少ないのは、
インフラ
や制度上の整備の問題がある。また、日本とは産業の数、
公害を起こしてきた経験が違う。ただ、日本の取得の多さ
は少し異常といえる。研修員には、自国での取得件数を増
やすことではなく、
ツールの一つとしてISO14001という国
際規格があるということを知ってもらいたいと考えている。
昨年が初めての EMS 講義の導入だった。そのとき、
あ
る研修員が、帰国後企業にEMSを指導してみたいと語っ
ていた。それから1 年経つが、各々の研修修了者が、EMS
講義を仕事の中でどのように活かしているのかについて知
りたい。研修員からの、受講後の情報のフィードバックが
必要である。
GEC Newsletter
No.24 August 2003
GEC は、環境マネジ
メントシステム研修の一
環として、
2002 年度から
新たに、出張研修を始
めた。出張研修とは、
各
団体の要望に応じて内
容をアレンジして提供す
EMSの研修(井上講師)
るものである
(出張に限
らず、
GECを会場にして開催することも可能)。
2003 年 1 月から3 月にかけて、
D 社の社員を対
象に、
環境マネジメントシステム
(EMS)
セミナーを
計 6 回行い、
合計 193 名が受講した。D 社はこれ
までも社員研修に環境問題を取り入れてきたが、
2003 年 1 月にISO14001の認証を取得、
これに合
わせてEMSをテーマに再度環境について考える
機会を持ちたいということであった。
セミナーは約 2 時間半で、
最初に、
GECの事業
概要と「地球環境問題とわが国の対応課題」に
ついての解説があり、続いて井上講師((株)環
境戦略研究所 )が「環境マネジメントシステム
ISO14001 入門」と題して、
企業における環境問
題への積極的な取り組み、
EMSとは何か、
EMS
の中で社員一人ひとりができることなどについて
講義を行った。
2002 年度は、
大阪市(569 名)、
日本水道協会
関西地方支部(70 名)等、
自治体に向けた出張
研修を多く実施した。企業に向けては、
今回の他
にも、
「環境法規制解説」などについての研修を
行っており、
今後も自治体のみに止まらず、
企業も
対象に、
広くEMS 研
修を実施していきた
いと考えている。
出張研修の詳細につ
いては、本 NLの最終ペー
ジをご覧ください。
EMSの講義を受ける受講者
5
【UNEP 親善大使活動報告】
GEC NEWS
理事会・評議員会の開催 加藤親善大使がウズベキスタンとキルギスを訪問 加藤登紀子 UNEP 親善
3 月 27 日、
第 31 回理事会及び第 29 回評議員会が開催され、
2003 年
大使は、5 月 13 日から24 日
度事業計画及び収支予算に関する件などが討議、
承認された。
また、
第
まで、中央アジアのウズベキ
32 回理事会及び第 30 回評議員会が 6 月 26 日に開催され、
2002 年度
スタン共和国とキルギス共和
事業概要及び決算報告に関する件などが討議、
承認された。終了後、
国を訪問し、
GECは、
UNEP
生き生き地球館やUNEP-IETC、
JICA 研修の見学会を実施した。
親善大使の事務局として、
こ
の訪問の企画・随行・記録を
行った。今回の訪問の目的
雄大な山を背景に子供たちと
(キルギス)
は、両国の環境の現状や保
GEC/IETC NEWS
国際環境シンポジウム
全活動を視察するとともに、
関係者を激励し、
マスコミを通じて広報するこ
とであった。
13 日から訪問したウズベキスタンにおいては、
環境保全委員会副議長
など関係者と意見交換したほか、
「20 世紀最大の環境問題」といわれる
「持続可能なまちづくり-環境にやさしい技術を都市
(清水市)
づくりに活かすために-」を開催
アラル海を視察した。アラル海は、
1960 年には世界でも最大級の淡水湖
2003 年 2 月 8 日に清水市(同年 4 月 1 日に静岡市
のひとつであったが、
現在は水量が 1/7、
面積が 2/3になり、
そのため塩分
と合併)
で、
環境省、
清水市と共に標記シンポジウムを
濃度は7.2 %にも達している。加藤親善大使は、
かつてはアラル海のほとり
共催した。開会の挨拶に引き続き、
UNEP-IETCのホ
の漁港であったムイナクの住民と交流するとともに、
上空からアラル海やそ
ールズ所長から「環境上適正な技術(EST)」を地域
の周辺の塩害に苦しむ大地を視察、
また、
同国の首都タシケントにおいて
管理にどのように取り入れていけばよいかについて基
は環境教育プログラムを見学した。5 月 17 日には、
第二次世界大戦後に
調講演があり、
その後開催地である清水市を事例とし
日本人抑留者が建設したナボイ・オペラ・バレエ劇場で、
日本環境省・日
本大使館主催により、
ミニシンポジウムとコンサートを行い、
加藤親善大使
は歌と話を通じてウズベキスタンの国民に環境保全の大切さを訴えた。
た活発なパネルディスカッションが行われた。
基調講演を行う
ホールズIETC 所長
ホールズ所長は基調講演で、
人口増などによる都市
の劣化を防ぐため、
国連が取り組んでいる個人生活の質の改善や地域活
動強化等について訴えた。特に環境と経済の両立を図るためには、
新しい
考え方が必要であり、
解体時のことも考えた建物設計やエコ工業団地など
の事例を紹介、
さらに市民の意識向上が欠かせないため、
環境教育を生涯
教育として位置付け世代間の壁をなくすため、
一にも二にも行動をおこすこ
とが必要であると力説した。
アラル海付近の「塩害」を上空より撮影
ナボイ・オペラ・バレエ劇場でのコンサート
パネルディスカッションで出された主な意見は下記のとおりである。
港の機能を活かして未利用地に
●「清水市の特徴や短所を踏まえた上で、
リサイクル企業を誘致して、
水やエネルギーを有効に活用するエコタウンを
< GEC 新旧スタッフからのメッセージ> 藤倉前事業部長からご挨拶
GECで2 年 11ヶ月お世話になりました。この間、GEC 自身
は10 周年を迎え、
また国連の監査結果を受けてIETCとの関
係も大きく変化しました。そのような中、IETC 支援事業として
EST 国際セミナー(2002 年/大阪市)や国際シンポジウム
(2003 年/清水市)
を開催できたことは大きな経験でした。また、
2000 年より始まったUNEP 親善大使事業で加藤登紀子さん
藤倉まなみ
に随行してモンゴル、韓国、南アフリカ
(WSSD)
、中央アジアを 前事業部長
訪問したこと、JICA の国別特設コース開設準備のためにキューバを訪問した帰
路、
メキシコで「9.11」に遭遇したこと、
ワンディセミナーのエジプト開催やタイ・ラン
プーンの普及啓発事業など、私の人生の中でもとても印象深い仕事を数多く経
験させていただきました。関係各位に厚く御礼申し上げるとともに、GECと皆様の
一層の発展を祈念いたします。
小川新事業部長からご挨拶 途上国における環境保全に関する仕事に携わるというのは、
私の夢の一つでした。これまで、廃棄物を中心に、
「水」
、
「基準」
のいずれかに関わる仕事をしてきました。そのような中、機会を
得て、世界の“廃棄物に関する制度”を全て制覇してやろうと
いう意気込みで英国に留学したものの、各国のお国事情とEU
といった多国間の枠組み等まできちんと把握するには時間が足
小川眞佐子
新事業部長
りず、志半ばで帰国することとなりました。
その後環境省勤務を経て、
このたび GECにお世話になることとなり、大変うれ
しく思っています。私自身はまだまだ未熟者ですが、皆様のお力を得て、GEC の
事業が円滑に実施されるよう力を尽くしていきたいと思います。どうぞよろしくお願
いいたします。
6
設け、
資源回収システムやネットワークを作ってはどうか」
(チュー教授/デラ
サール大学)
●「輸送形態が陸運から海運に変化することで環境への負荷を減少しうる
といった、
港のプラス面を活かすことが必要である」
(花木教授/東京大学)
●「環境にやさしい技術を持つ企業を市民が大事にする意識がないとそう
した構想は進まない。例えば公共事業の入札の際、
金額面だけでなく環境
面をポイントに入れることに配慮して欲しい」
(原田氏/静岡新聞)
●「国際的な情報のネッ
トワーク化が進んでいる。地元とは異なる視点から
も考えられるよう、
さまざまな情報を広く世界から収集してほしい。そのため
には同時に情報発信をして欲しい」
(森口博士/国立環境研究所)
これらの意見を受けて宮城島市長から「エコタウンは総論賛成、
しかしい
ざ自分の地域にリサイクルタウンを作るとなると簡単にはいかない。ホールズ
所長が述べたように、
市民に対しての十分な説明や、
意識の向上、
教育な
どを進めながら、
この地域でエコタウン作りを実現させたいと思う。」と決意
を述べた。最後にコーディネータの藤田助教授(大阪大学/現東洋大学教
授)が「本日のシンポジウムは、
市民が主体となり自治体・企業と協力して、
環境と経済の両立
を一緒に考えるきっ
かけになったと思う。
まさにこれをスター
トとしていただきた
い。」
と締めくくり、
パ
ネルディスカッション
を終了した。
パネルディスカッションの参加者
No.24 August 2003
GEC Newsletter
IETC NEWS
「第 3 回世界水フォーラム
(WWF3)
」でのIETC の活動
UNEP-IETC は、第 3 回世界水フォーラム
UNEP-IETCはこれまでに多
(3/16-23)
において3つの分科会を主催するな
くのパートナーと連携して水問
ど積極的な役割を果たした。京都では16 日に、
題に取組んできており、
その成
「水供給、
衛生及び水質汚染」のテーマの中で
果としてサファイア
(SAFFIRE)
「開発途上国への代替技術」、
大阪では18 日に
淡水情報、
資源及び、
教育のた
「水と都市」のテーマの中で「都市の水:都市部
めの戦略的提携( Strategic
の水問題に対処するためのダイナミックな解決
Alliance
for
Freshwater
策」と題する分科会を主催した。
また、
滋賀では「統合的流域及び水資
Information, Resources and
源管理」のテーマ全体をコーディネートするとともに、
20 ∼21 日にはその
Education)や統合的水管理
中で「統合的流域管理」
と題して分科会を開催した。
に関するeラーニング、
さらには出版物として「統合的管理のためのガイ
京都宝ヶ池国際会議場内での資料配布
ドライン:植物生態応用技術と環境水文学」などを本フォーラムにおいて
発表した。
また、
大阪の「水 EXPO」、
滋賀の「水フェスティバル」におい
てはブース出展、
京都のステークホルダー・センターにおいてもブース出
展や展示の他、
ステージイベントにおいてESTIS(環境上適正な技術情
報システム)や eラーニングのデモンストレーションを行うなど積極的な情
報発信を行った。
IETC 主催の分科会(統合的流域管理)
テプファー UNEP 事務局長と
尾縄常務(GEC)の歓談光景
IETC NEWS
詳細については、
IETCのウェブサイト
< http://www.unep.or.jp/ietc/wwf3/index.asp >を参照ください。
IETC NEWS
「環境上適正な技術情報システム
(ESTIS)
」発足式 IETC の新職員紹介
2003 年 2 月 26 日に国
IETCでは、2003 年 4 月に矢田貝久美子総務・財務担当官が、6 月
連大学(東京都渋谷区)
に青木千鶴企画官が着任。今後の活躍が期待される。今号では矢
において ESTIS 発足式
田貝担当官を、次号で青木企画官を紹介する予定である。
が行われ、
約40名の参加
一橋大学法学部卒業後、
英国ケンブリッジ大学にて開発学
があり、GEC からは藤倉
修士号を取得。97 年から99 年にJPO(国連のアソシエートエキ
事業部長が出席した。
スパート)
として、
UNDP(国連開発計画)
レバノンオフィスに勤
鈴木国連大学副学長
の挨拶のあと、ホールズ
IETC 所長が発足式の目
的についてスピーチを行い、
戦略的パートナーである国連大学と
務、
レバノン内戦後の復興期の環境事業及び気候変動・オゾ
矢田貝 久美子
総務・財務担当官
ン層破壊物質関連のプログラムを担当。99 年からの3 年間は、
紛争下のパレスチ
ナにてUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)勤務、
ドナー渉外及びプロ
ジェクト管理を担当。その後、
JICA 評価監理室勤務を経て、
現在に至る。専門は、
IGES(財団法人地球環境戦略研究機関)及び GEC 等の協力を
開発立案モニタリング評価。アラビア語については、
国連公用語試験に合格され
得てESTISを作成したこと、
このようなシステムは世界最先端の
た実力をお持ちである。
ものであり他に例を見ないこと、
そしてこれはIETCだけのもので
はなく多くの人が参加して作るシステムであるということを述べた。
【解説】
<ご本人からのメッセージ>
IETCでは、
財務・総務管理の仕事を中心として、
限られた予算をいかに使い、
IETCの事業目的を最大限に達成するかについて日々奮戦中です。多くの援助
機関がアウトカム
(活動の成果)
をより重視する傾向にある中、
IETCとしてはドナ
IETC は昨年 11 月にESTデータベースmaESTroを更新したが、
こうしたデータベースはユーザへの情報の一方通行になりがちであ
ーに、
活動の成果が正しく伝わるよう、
積極的に内外に情報を発信していこうと考
る。そこで、IETC が開発した ESTIS は、ユーザ自身が情報の受け手
えています。GECには、
特に総務課の皆様に、
施設管理の面でお世話になり感謝
に止まらず、同時にESTISビルダーを使用して EST の情報提供者に
しています。
なりえ、
かつ自国語又は英語で独自のウェブサイトを作成でき、
さらに
環境については、
太陽の輝く中東での経験が長かったこともあり、
太陽光エネル
インターネット上で世界各地のユーザ間でのコミュニティの構築もで
ギーの利用に特に興味を持っています。
この分野でIETCが貢献できると嬉しい
きる双方向の画期的な情報システムである。世界に環境技術のデー
タベースは多々あるが、ESTIS が最先端であり、ユニークなのは、情
報のユーザが同時に情報の提供者にもなりえる双方向性にある。し
です。
またアラブの半乾燥地帯は気候変動による影響を顕著に受ける地域であり、
地球環境問題への1 人 1 人の意識の向上が何よりも重要であると実感しました。
かも英語だけでなく、自国語でウェブサイトを作成できるのは、
まさに
趣味はテニスやダイビング
(世界有数のスポットである紅海は、
透明度も魚の種
IETCが EST の移転の対象とする発展途上国などのニーズに合致す
類の豊富さも抜きん出ていた)、
合唱などで、
現在子育て
(3 歳の男の子)
に奮闘
るものである。
GEC Newsletter
中です。
No.24 August 2003
7
環境マネジメントシステム(EMS)
研修コースのご案内
JAB 認定
【JAB 認定環境審査員フォーマルトレーニングコース】
実施日:第 29 回 2003 年 9 月 1 日(月)∼ 9 月 5 日(金)
参加費:280,000 円(テキスト・昼食費含む/消費税別途)
※ GEC 主催の内部環境監査員養成コースに参加された方は、
参加費 250,000 円となります。
【内部環境監査員養成コース】
実施日:第 24 回 2003 年 8 月 7 日(木)∼ 8 月 8 日(金)
第 25 回 2004 年 1 月 29 日(木)∼1 月 30 日(金)
参加費:80,000 円(テキスト・昼食費を含む/消費税別途)
【 ISO14001 内部環境監査員&環境審査員セットコース
<教育訓練給付制度指定>】
参加費:330,000 円(テキスト・昼食費を含む/消費税別途)
※セットで受講いただくと参加費 360,000 円が330,000 円と割安になります。
入門コースとして2 日間の「内部環境監査員養成コース」を受講し、環境マネジメントシス
テムの知識を深めた上で、続いて5 日間の「環境審査員フォーマルトレーニングコース」を
受講することにより、専門的知識を効果的に習得することができます。
< GEC 友の会事務局便り>
「GEC 友の会」第1回交流会を開催!
2003 年 1 月 31 日、大阪産業
創造館にて「GEC 友の会交流会」
を開催しました。
交流会の前半では、水本 GEC
専務理事の挨拶にひきつづき、大
阪市建設局世界水フォーラム担
当課長の杉本博司氏から「第3
回世界水フォーラム」の概要と大
夜景を眺めての交流
阪市の取り組み状況などについ
て、発表していただきました。その後、GEC 担当者が、
「第3回世界水フォーラム」でのGEC の取り組みにつ
いて紹介しました。
交流会の後半は、同ビル16F のレストランにて立食
パーティーによる親睦会を持ちました。初めての交流
会は、終始なごやかな雰囲気の中で交流が深められ、
WWF3について講演する
杉本水フォーラム担当課長 意見交換が活発に行われました。
【環境マネジメントシステム出張研修】
GEC友の会がリニューアル!
ISO14001 認証取得をめざす団体だけでなく、EMSについて情報を集めたい
という団体にも適した出張コースです。
(GECを会場として開催することもできます)
ご利用いただきやすいよう出張形式をとっています。
・「EMS 入門」
・「構築事例」
・
「内部環境監査技法」 ・「法規制解説」など
研修内容は、
ご要望に応じてアレンジし、提供いたしますので、
お問い合わせください。
※研修コースの開催予定は2003 年8月7日現在です。今後、変更される場合があります
ので、必ず下記の研修グループまでご確認下さい。
2003 年 9 月から、友の会は新しく生まれ変わります。
これまでのGECに対する支援にとどまらず、会員同士の交流をさらに深
め、互いが楽しみながら知恵を寄せ合える会にしていきます。
●イ
ベントの一つとして、
エコツアー
(環境関係施設見学会)
も企画します。
●
●
会員証は、届きましたか!
会員の更新手続きはお済みでしょうか。
15 年度の会員証がまだ届いていない方は、至急、事務局へご連絡ください。
●
各研修コースに関する詳しい内容等は下記までお問い合わせください。
お問い合わせ先:GEC 研修課 研修グループ(松浦、中島)
TEL:06-6915-4121 FAX:06-6915-0181
* GECウェブサイトよりお申込もできます。< www.unep.or.jp/gec >
人事異動のお知らせ
【着任】
● 4 月 1 日付
城下 栄輔(審議役)
吉田 誠宏(審議役兼調査課長)
松浦 八洲雄(事業部次長兼研修課長)
● 4 月 16 日付
笠松 久(総務部情報課長代理)
GEC 友の会に関するお問い合わせは、
(財)地球環境センター内「友の会事務局」までどうぞ。
特定公益増進法人の再認定
寄附金報告
GECは1992 年 10 月に所管官庁(環境省・外務省)
か
ら特定公益増進法人の認定を受けています。認定の期
限は2 年間ですが、6 期目の認定を2003 年 3 月 17 日付
けで受けました。特定公益増進法人に対する寄附金は、
税制上の優遇措置が講じられています。みなさまのGEC
事業へのご理解とご支援をよろしくお願いします。詳しく
はGEC 情報課までお問い合わせください。
次の皆さまからご寄附をいただきました。誌面
を借りて厚くお礼申し上げます。
● 5 月 21 日付 森井 重裕(事業部課長)
● 7 月 1 日付 小川 眞佐子(事業部長)
【退任】
● 4 月 1 日付 高橋 正明
(前事業部次長兼調査課長/
現大阪府環境農林水産部環境指導室参事)
井上 敏彦
(前事業部次長兼研修課長/
現大阪市都市環境局環境部環境基本計画担当課長)
● 4 月 16 日付 辻本 雄次
(前総務部情報課長代理/
現大阪市立環境科学研究所企画調整課研究主任)
● 5 月 31 日付 藤倉 まなみ
GEC/JCBカードとGEC 友の会の
会員募集中
GEC/JCBカードは、
ご利用さ
れた金 額の一 部 ( 0 . 3 % )が
JCB からGEC に還元され、
GEC の活動を通して地球環
境保全に貢献できます。JCB
の各種サービスも併せてご利
用になれます。また、GEC/JCBカード会員の方は、GEC
への支援を通して情報交換や学びの場の提供をめざす
「GEC 友の会」の年会費(3 千円)
が免除されます。
GEC/JCBカードに関するお問い合わせは、GEC 情報課
までどうぞ。
(前事業部長/現国土交通省北海道局水政課開発専門官)
【退職】
● 3 月 31 日付 尾田 晃一(前審議役/現 GEC 友の会事務局長)
4 月 30 日付 大野 裕子(総務部情報課員)
●
8
(2003 年 1 月 1 日∼2003 年 6 月 30 日までの寄附収受)
【個人】
尾田 晃一 匿名希望(1 名)
【法人】
◎三菱電機(株)関西支社
◎近畿労働金庫社会貢献預金
「近畿労働金庫地球ふれあい口座まもるくん
(UNEP-GEC 支援コース)」の預金者および
近畿労働金庫:¥134,819
2003 年 8 月 第 24 号
[編集・発行]財団法人地球環境センター
※ GEC NEWSLETTERについてのご意見、
ご感想、お問い合
わせはGEC 広報委員会事務局(情報課)
までお願いします。
〒538-0036 大阪市鶴見区緑地公園 2 番 110 号
TEL 06-6915-4121 FAX 06-6915-0181
E-mail: gec@unep.or.jp
本誌は非木材紙(ケナフ)および大豆インクを使用しています。
©Global Environment Centre Foundation (GEC)
[お詫びと訂正]
前号(23 号)の 4 ページにおいて、JICA 研修員座談会の会場が
「大阪市立環境学習センター」となっておりましたが、正しくは「大
GECホームページ (URL):
阪市立環境科学研究所」でした。謹んでお詫び申し上げます。
www.unep.or.jp/gec
No.24 August 2003
GEC Newsletter