DAIYA FAX EXPRESS Volume 19 7 JUL. 06 D 繁 盛店・レポート ぶどうの木 石川・金沢 社長 本 (もと 昌康 様 まさやす) 「私自身はもともとぶどう栽 培農家の跡取りなんです。学生 FE 第 19 号をお届けし 時代は東京農業大学でぶどうに ます。今回は金沢市に本 ついて勉強しましたので製菓業 社を構える「ぶどうの木」の本 や飲食業が専門なのではなくぶ 社長をお訪ねしました。 どうの専門家です。お菓子やレ 同社は金沢市北部のぶどう園に 隣接した敷地にケーキショップ、 ストランを始めるまでは、ぶど うを交配して新しい品種を開発 ベーカリー、カフェ、フランス するなど、ぶどうの研究や育成 料理、ハーブ、ブライダル事業 に一生懸命でした。ぶどうは一 を展開し、このたびそれらの施 品種だけ栽培して市場に出して 設をひとつの街並のように改装 もなかなか儲かりません。です して話題を呼んでいます。また ので自分で新しい品種を開発し 昨年、銀座に「コンフィチュー て、それらを直接お客様に販売 ル・エ・プロヴァンス」を開店、 今春には「ジンジャーシロップ」 するようになりました。すると 結構遠方からわざわざ金沢の片 をマスコミで紹介されたのをき 田舎までぶどうを買いに来てく っかけに大きな話題を提供しま れるんです。何時間もかけて来 した。本社長にその事業展開の てくださって、ぶどうを選んで 要諦と人材育成のポイントをお もらう。私には見慣れたぶどう 話しいただきました。 畑の光景が、そういうお客さん の目にはとてもすてきな空間に 映るようなのです。ぶどう畑の 中を散歩しながらゆっくりとし た時間を楽しんでいるようでし た。そのような姿を見ていると、 せめてお茶くらい飲んでいただ けるようにしようと思い、カフ ェを作りました。せっかくだか らお茶といっしょに自家製のケ ーキをお出ししようと思い、家 内がチーズケーキを作るのが得 意でしたので、生ぶどう入りの レアチーズケーキを作ってお出 しするようになったのです。す るとそれが結構好評で、それな ら敷地の一部をお店にして『一 日 3 万円だけ売れるようになろ う』と開店したのがケーキショ ップの始まりでした。おかげさ までそれに火がついて、金沢駅 やショッピングセンターから出 店のお誘いがあり、現在では近 郊に 7 店を展開しています。」 「お茶を提供しようとカフェ とケーキが始まり、どうせだっ たらぶどう畑の中で食事ができ るようにとフレンチレストラン ができました。そこでのパンが おいしいと言われれば、テイク アウトできるようにベーカリー 部門を独立させてショップとし、 またパーティーの予約が増えて くるとブライダルもできるよう にとチャペルもできました。ブ ライダルが増えてくると常連の お客様からフレンチの予約がで きないとの苦情をいただくこと が多くなり、ブライダルを中心 とした新中国料理であるシノア が追加されました。現在の本店 の敷地の中には、これらがひと つの小さな街並のようになって いますが、これらは最初から意 図したものではなく、自然と膨 らんでいつの間にかこのような 姿になってしまったという感じ です。」 「大学 3 年の初夏に、それま でアルバイトで貯めたお金で、2 ヶ月間ヨーロッパを旅してきま した。その時の体験・経験が今の 仕事にすごく生きていると思い ます。本店敷地のイメージもそ の時に見た光景が元になってい ます。今まで感じてきた『こん なステキなことが実現したら楽 しいだろうな』という引き出し が頭の中にいっぱい詰まってい ます。そしてそれを語るのが大 好きです。こんなことしたい、 あんなことできたらステキだろ うな、というような話を絶えず スタッフに語りかけています。 15 年前にオーベルジュを作っ たときも、『ぶどうに囲まれて、 ヨーロッパで見たようなレスト ランで食事ができたら楽しいだ ろうなあ』と話していたら、 『そ れいいですね。私にやらせても らえませんか』と進言してきた スタッフがいたので、 『じゃあい っしょにがんばろう』と実現し ました。どの事業も同じです。 私が語り、スタッフが実現させ ていく。いつもこのようなステ ップで新しい事業が進んでいく のです。 」 「昨年『コンフィチュール・ エ・プロヴァンス』というコン フィチュールの専門店を銀座に 出しましたが、それも 7 年ほど 前にパリで入手したフェルベー ルさんのぶどうのコンフィチュ ールを食べて感激して『こんな ものを作ってみたいなあ』と思 ったこと、それらの思いと学生 のころの旅の人脈があいまって 『南仏でジャムを作って日本で 売ってみよう』という具体的な プランになりました。その話を 聞いたスタッフが『ぜひ私にや らせてください』と言うので、 トントン拍子で話しが進みまし た。プロヴァンスの田舎の町で 季節ごとにさまざまなコンフィ チュールを作り、日本に送って 銀座で売っています。まだまだ たくさんの課題はありますが、 多くのマスコミに採り上げても らい、日本橋高島屋さんにも出 店させていただいて、少しづつ 世間のみなさんの認知度も高ま ってきたようです。先日そこで 取り扱っている当社のジンジャ ーシロップが話題になりました。 これが全国のカフェやバーに、 ナショナルブランドのリキュー ルの隣に置かれるようになった らすごいぞ、と壮大な夢を語っ ています。」 「20 代のころに『人生年表』 を書きました。しばらく忘れて いたのですが、先日偶然にもそ れを紐解く機会がありました。 それには『30 歳でビジネスを始 めるべし、40 歳で海外展開をす るべし』と書いてありました。 当時は根拠も無く書いたことで すが、不思議なことに初めてシ ョップを作ったのが 30 歳でし たし、やや遅れましたが現在は フランスで仕事もしているわけ で、人の念いというのは自覚し ていなくてもきっと潜在意識の 中でしっかり自分をコントロー ルしていることがあるのではな いかと思います。」 「ぶどうの木ではパート・ア ルバイトを含めると社員数は 160 から 170 人になります。そ れぞれの人に活き活きと元気に 働いてもらいたいと思っていま す。それを実現するのがプロの 経営者の根本的な役割だと思っ ています。人を活き活きさせる のは基本的に『自分の好きなこ とをやって成果が上がる』こと だと思います。自分の力で成果 を上げたという実感を得た時に その人の生活はとても心地よい ものになるのだと思います。そ れぞれの社員さんの達成感をど のように作り上げていくか、そ れは明確な計数管理のシステム を構築して数字で仕事の成果を 表すことしかないと思います。 組織を細かくチーム分けして、 チームごとに目標予算を組んで 実績と対比し反省してまた目標 を立てる、これを何度も繰り返 す。それがひとりひとりのモチ ベーションを上げる原動力にな っていると思います。」 「お客さんのことを最初に考 えること、 『ようこそぶどうの木 へ。こんな遠くまでわざわざお 越しいただきありがとうござい ます』という感謝の気持ちを最 優先にと考えています。それ無 しで商売は成り立たないと思い ます。しかしそればかりに目を 奪われていると『感謝を表現す るのだったらもっと安い価格で 提供すべきではないのか』とい う疑問が出てきて、利益を出す ことと感謝することが相反する ことになるのではないかという 錯覚に陥り利益が出てこないこ とがあります。しかし社会貢献 という意味をしっかり理解する と、利益を上げて納税してこそ 社会の役に立つことができます し、成果が上がってこそ社員の 人生に輝きを与えることができ ます。赤字続きでは社会での存 在意味を無くすばかりか、その ような経営は罪悪だともいえる でしょう。ですので適正価格を お客様からいただくには、それ に見合った商品やサービスを提 供しなくてはなりません。それ を生み出していくには必ず費用 が必要です。だから新しい商品 やサービスを世の中に提供し続 けるには絶対に利益が必要です。 だからこのお客様への感謝の心 と利益というものに対するバラ ンスがとても重要なのだと思い ます。例えれば『手の長いやじ ろべえ』みたいなものでしょう。 やじろべえの右手は利益、左手 は心、このふたつをとことん追 求してバランスをとっていかな くてはなりません。それには余 計なものに惑わされずに自らの 本業に対して、心と利益という ふたつを深堀りしていかなくて はなりません。そのためには長 い手が必要になります。手を長 くしていくと必然的に安定性が 増して倒れにくくなります。だ から『手の長いやじろべえ』な んです。私はもともとぶどう農 家のお百姓ですから、今の仕事 を社員の人たちと勉強しながら 磨き深めていくしかないと思い ます。」 あ とがき 本社長様とお話していると社員 のかたがまるで友だちのように 相談をしに来たり、気さくに話 をしていきます。 「うちでは話言 葉を聞いていると誰が社長だか まるでわからないとよく言われ るのですよ」と冗談交じりにお 話しされましたが、そこには現 場の目線と対等な社長の目線、 そして相互の信頼関係が存在し ています。組織が大きくなると とかくトップの意思が現場に反 映しづらくなるのが多くの現実 ではないかと思います。それを 乗り越えていくには、人並みな らぬ勉強と、学んだことを現場 に落としこんでいく仕組みを会 社の体質に合わせてつくりあげ ることが必要なのだと思います。 ぶどうの木様の強さはまさにそ こにあると感じました。 お話をされている間は笑顔が絶 えずに冗談を交えながらにこや かな表情のなかにも、社員教育、 特に幹部教育に関しての話題に なると瞳の奥に光る真剣な情熱 を熱く感じました。トップの情 熱と勉強熱心な姿勢の大切さを 改めて痛感いたしました。 当 FAX に対するご意見は下記 まで。 FAX 06−6386−4707 E-mail webmaster@daiyacase.co.jp 大阪支店 DFE 配信室 企画・編集・文責 ダイヤ冷ケース株式会社 営業企画部 編集責任者 太田 専務取締役 和隆 TEL:03-3412-1443 FAX:03-3412-3131 d i j /
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