2012/4/24 災害とはなにか 災害復興学総論 「災害」とは何か、「復興」とは何か • フリッツ(1961):個人および集団が機能している社会的コンテキストとの基 本的な破壊、もしくは通常の予測パターンからの急激な逸脱 • クワランテリ(2000) ①突然に開始される事態であり ②社会的集合体のルーティーンに深刻な混乱を引き起こし ③混乱に対応するための計画外の適応と ④社会的空間や時間 中 予期 ざる生活体験(生活歴)を強 られ ④社会的空間や時間の中で予期せざる生活体験(生活歴)を強いられ ⑤価値ある社会事象が危機に晒される事態 • オリバー・スミス(1998):破壊的な災害因が脆弱な人々と結びつくことにより 起こる現象であり、生存のための社会的なニーズ、社会秩序、社会的意味 を破壊する出来事 • ワイズナー(2004):極端な物理的な出来事が人間の抱える脆弱な状態と接 触で生まれる 住環境再生特論 2012年4月24日 地震や台風などは自然現象であるが、 災害とは社会現象である 「脆弱性」が災害を作る 「脆弱性」から「回復力」という概念へ 1. 根源的な原因:貧困、権力構造や資源への限定的 なアクセス、社会経済システムなど • 2. ダイナミックな圧力:教育、知識、技術、人種、ジェ ンダー、人口増加、都市化、環境悪化 – 危険な生活状況:壊れやすい物的環境、脆弱な地 活状況 壊れやす 物的環境、脆弱な地 3. 危険な 元経済(低い収入水準) – • • • 上記の三つが引き金となるイベント(地震、洪水、 飢餓など)と結びつくことで災害が発生する 社会の脆弱性によって被害の大きさが決まる 脆弱な人々・社会・環境 – 社会、経済、文化構造の中に日住む社会的脆弱性を解 明する 脆弱性の克服こそが防災 人々をパワーレスで、被害を一方的に被る受身的な存 人々をパワ レスで、被害を 方的に被る受身的な存 在として位置づけている 復元=回復力(Resiliency) – 必死に立ち向かおうとする活力、社会的関係性、対応行 動などの回復力 – 地域や集団の内部に蓄積された結束力、コミュニケート 能力、問題解決能力などに目を向ける Source) Blaikie, Piers, Terry Cannon, Ian Davis and Ben Wisner,1994, At risk: natural hazards, people's vulnerability, and disasters. ist ed. London: Routledge. 「復旧」と「復興」 • 復旧(旧に復す) – ライフラインの復旧、道路の復旧 • 復興(興して+復す) • 復興とは災害前より良くなることではない 1. 被災者が元気を取り戻し、元の生活が送れるようになる 2. 未来につながる生活、空間、社会を作り上げる(室崎) – 新しいことに飛びつくのが復興ではない – 社会の抱える矛盾・問題を解決する • 「復興」とは「災害によって衰えた被災者および被災者が再生する こと」(宮原) •室崎益輝, 被災者主体の復興への道筋, pp.8-24,学芸出版社編集部編,2011, 「東日本大震災・ 原発事故」復興まちづくりに向けて, 学芸出版社 •宮原浩二郎,2006, 「復興」とは何か, pp.5-38, 先端社会研究―特集災害復興制度の研究 未来につながる生活、空間、社会を作り上げる 「何」を復興するのか •災害によって被害を受けるのは、都市インフラや建物だ けではない •災害によって壊されるのは、人間の平常時のくらし・生 活・こころ • まちや地域では、地域のつながり・人間関係も破壊さ まちや地域では 地域のつながり 人間関係も破壊さ れる •地域経済が復活しないと人々の生活は戻らない •都市の機能が戻らないと、住宅再建はできない •生活を立て直していくためには、生活を包む器である住 宅を再建をしないといけない 6 1 2012/4/24 災害復興では次の災害に向けた備え (減災)に取り組まないといけない、が・・ • 災害で死にたい人はいない。安全なまちを望まない人はいない • 被災者にとって復興とは、災害前の普段通りの生活を回復する こと。総論賛成、各論反対(自分の権利が制限される)。都市の 安全性向上と被災者の住宅再建、生活再建が対立する場合が ある – 「早く元に戻りたい」、「住宅やまちを従前復旧さえできればよ い、と思う」 • “良い”住環境・まち・都市の条件は安全性のみに限定されるは ずがない。安全性と共に、快適性、地域性・歴史性の継承、美し さ、ヒューマンスケール、持続可能性などの要素との総合化。こ れが時に対立するから難しい。 復興の目標は何か • 価値観の転換。経済から平和と文化である。もっといい町へ。経 済の右肩上がりからは解き放たれる必要がある。 • 右上がりでいくかどうかは地域が決めること。右肩下がりの計画 というのは作ったことがない。スマートシュリンキング。敗北では ない。まさにこれからの議論。 • 復興は社会創造そのものである。 • 復興の目的は「被災の状況」「時代の状況」「地域の状況」という 3つの要素によって変化する。 • 地域が自律的に発展していけることが「創造的」な復興である。 (出所)日本災害復興学会 復興とは何かを考える委員会 復興の主語は何か • 復興は都市が復興するのではなくて、都市のなかに人間がいる 。人間が復興するのが大切なのだ。 • 都市復興と人間復興を対立させたつもりはないが、都市がよく なるということは必要条件だと思う。もちろんそれだけでは十分 ではない。 復興とは結果か、プロセスか • 「復興」とは何らかのゴールではなくプロセスである(大 矢根) • 復興は、出来上がった結果より、出来上がるまでのプロ セスが大事(室崎) • 「復興」には目標が必要である • 復興のプロセスの中で、復興の主語は人間のためにと思う。「被 災者」だと被災者にはいろんな人がいるので100%にならない 。結局は人間の社会にとってということが大切。 • 復興の主語は「人」というよりは「人々」という感覚で捉えている (出所)日本災害復興学会 復興とは何かを考える委員会 復興都市計画事業と復興まちづくり • 復興都市計画事業:災害に強い都市づくり – 安全・安心だけをまちづくりの目標にはできない • 復興まちづくり – 施設や空間の整備だけではなく、生活、産業、コミュニティ、文化な どの総合的な生活空間としての都市をどのように復興するか • 被災者の生活再建:多様な要素で構成されている – 居住、健康、安心・安全→できるだけ生活が改変しないようにする 、住み慣れた町に留まって住む – 労働、営業、購買、消費 – 居住環境、交流 – 趣味、文化、歴史、人生 • 復興まちづくりには「復興まちづくりの物語」を地域社会 で共有することが大切である(佐藤滋) •大矢根淳, 被災地におけるコミュニティの復興とは, p.22, 2007 ,浦野正樹, 2007 , 『復興コミュニティ論入門』, 弘文堂 •室崎益輝, 被災者主体の復興への道筋, p.18, 学芸出版社編集部編,2011, 「東日本大震災・原発事故」復興まちづくり に向けて, 学芸出版社 •佐藤滋, 2006, 復興まちづくりを論じる, p.16 参考文献 • 佐藤滋, 2006, 復興まちづくりを論じる, p.8‐28, 造景双書 復興ま ちづくりの時代, 建築資料研究社 • 浦野正樹, 2007 ,復興コミュニティ論入門, 弘文堂 • 大矢根淳, 2007 ,災害社会学入門, 弘文堂 • 目黒公郎, 2008, 都市と防災, 放送大学教材 • 学芸出版社編集部編,2011, 「東日本大震災・原発事故」復興ま ちづくりに向けて, 学芸出版社 • 佐藤滋, 2011, 東日本大震災からの復興まちづくり, 大月書店 2
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