グローバル知識ネットワークのダイナミックス -日韓自動車産業

131030 博士論文公開予備審査
グローバル知識ネットワークのダイナミックス
-日韓自動車産業の事例を中心に-
東京大学大学院 経済学研究科
経営専攻 博士課程
徐寧教(ソヨンキョ)
2013/10/30
Y. K. Suh
1
目次
1.はじめに:問題意識
2.グローバル知識ネットワークの分析視点
3.本国の知識とその移転可能性
4.本国知識の海外移転
5.本国における知識ネットワーク
6.グローバル知識ネットワーク
7.海外拠点で生まれる知識とその移転
8.結論
付録1.論文目次
付録2.参考文献
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Y. K. Suh
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各章のもとになった論文・発表
・第1章:書き下ろし
・第2章:書き下ろし
・第3章:徐寧教(2011)「現代自動車の海外展開‐北京現代を事例に」、東京大学大学
院修士論文
・第4章:Suh Y.(2012) Global Knowledge Transfer of East Asisan Auto Industry:
Comparative Study of
Toyota and Hyundai, 24th SASE Annual Meeting
:徐寧教(2012)「マザー工場制の変化と海外工場 -トヨタ自動車のグローバル
生産センターとインドトヨタを事例に」、『国際ビジネス研究』vol.4 No.2 pp79-91
・第5章:徐寧教(2012)「マザー工場制の変化と海外工場 -トヨタ自動車のグローバル
生産センターとインドトヨタを事例に」、『国際ビジネス研究』vol.4 No.2 pp79-91
・第6章:SUH Y.(forthcoming) A Global Knowledge Transfer Network: The Case of
Toyota`s Global Production Support System, International Journal of Productivity and
Quality Management
:徐寧教(2012)「マザー工場制の変化と海外工場 -トヨタ自動車のグローバル
生産センターとインドトヨタを事例に」、『国際ビジネス研究』vol.4 No.2 pp79-91
・第7章:徐寧教(2012)「海外拠点における生産システムの進化―生産システムの理
想像の実現としての北京現代汽車の事例」、『国際ビジネス研究』vol.4 No.1 95-108
・第8章:書き下ろし
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Y. K. Suh
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第1章 はじめに:問題意識
1.はじめに:問題意識
1.1.研究の背景
1.2.課題提起
1.3.研究の目的と分析対象
1.4.論文の構成
多国籍企業の活動が増え、その進出拠点も多様化している中で、それをどうマ
ネジメントすべきかが企業にとって大変難しい課題となっている。このような状
況で多国籍企業の競争力を探ることは、経営学に任された課題だといえる。本
研究では多国籍企業の競争力を左右する最も重要な要素である知識とそれを
多国籍企業内部で活用する能力について探ることにする。多国籍企業の競争
力を決める要因を知識だとし、多国籍企業がその知識を活用するために持つ
知識ネットワークの姿を明らかにする。そしてその知識ネットワークがどのよう
に形成されるかをダイナミックに分析する。
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Y. K. Suh
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1.1 研究の背景
多国籍企業化の進展
450000000
50.00
400000000
45.00
350000000
300000000
40.00
250000000
35.00
200000000
150000000
30.00
100000000
25.00
50000000
0
20.00
1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
海外進出企業売上高
海外法人売上高
売上比率
-多国籍企業化が進むにつれて海外法人の売上高が高まり、全体の売上高から
占める比率も高くなっている。
-海外法人の数、進出国の多様さも増え、多国籍企業のマネジメントは経営学が
扱うべき課題となっている。
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Y. K. Suh
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1.2 課題提起
多国籍企業と知識ネットワーク
• 多国籍企業は本国でなんらかの優位性を持ってい
て、それを海外に移転することで競争力を得ると考え
られてきた(Kindleburger1969, Hymer1970, 1976,
Dunning 1979, Rugman1981)。
• その後、多国籍企業のマネジメントにおいて知識を競
争力の源泉だとみなしそれをどうマネジメントするかを
議論がなされてきた(Bartlette&Ghoshal 1989、Doz,
Santos, Williamson2001)
• しかしこれらの議論は、多国籍企業における知識とそ
れを国際的に移転する能力の重要だとは言ってきた
が、具体的にどのようにそれを成し遂げるかについて
は言及していない。
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Y. K. Suh
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1.3 研究の目的と分析対象
RQ
• 多国籍企業の競争力を決める要因を知識だ
とし、多国籍企業がその知識を活用するため
に持つ知識ネットワークの姿を明らかにす
る。そしてその知識ネットワークがどのように
形成されるかをダイナミックに分析する。
-企業のグローバル知識ネットワークの姿を本国から海外への知識移転という視点
で分析する。
-日本のトヨタ自動車と韓国の現代自動車を事例に議論
-トヨタ自動車がマザー工場システムに代表される分権的なグローバル知識ネット
ワークをもっており、現代自動車はモデル工場システムに代表される集権的なグ
ローバル知識ネットワークを持っている。
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1.4 論文の構成
5章
3章
本国工場1
6章
本国工場2
C
4章
海外工場1
海外工場2
海外工場3
海外工場4
7章
-各章を一つのテーマにし、そのテーマに合わせてトヨタVS現代の内容を入れ、最
後は比較と小括という節を入れた
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Y. K. Suh
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第2章 グローバル知識ネットワーク
の分析視点
2.グローバル知識ネットワークのの分析視点
2.1.多国籍企業の海外展開 7
2.2.多国籍企業と海外生産
11
2.3.日本企業の海外生産とマザー工場制
2.4.知識移転と知識ネットワーク
20
2.5.リサーチデザイン 27
15
第2章では生産システムの海外移転に既存文献を整理して本研究における理
論的な土台を確立する。多国籍企業の海外展開に関する理論から始まり、そ
の後海外生産に関する研究を整理する。日本企業の海外生産とそれを支えて
いるマザー工場システムを見た後は、知識移転と知識ネットワークの研究をま
とめることにする。最後に本研究の分析枠組みを整理する。
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Y. K. Suh
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2.1 多国籍企業の海外展開
海外直接投資に関する議論
• 多国籍企業が海外に進出するのは、自社が持つ優位性を海外で活用す
るためである(Kindleburger1969, Hymer1970, 1976, Dunning 1979,
Rugman1981) 。
• Kindleburger(1969)多国籍企業のもつ優位性を ①製品市場での不完全
競争、②要素市場での不完全競争、③規模の経済・垂直統合、④生産、
参入に対する政府の規制で分類した。
• Rugman(1981)多国籍企業は研究、情報、知識などの中間生産物を、企
業内部市場を通じて海外で用いていると説明。
• Dunning(1979 )は、このような企業のもつ所有優位性(Ownership specific
advantages)と、それが市場取引されずに内部化されるための内部化優
位性(Internalization incentive advantages)、そして進出国における立地優
位性(Location specific advantages)を一つにした折衷理論を提唱
→これらの研究は多国籍企業がなぜ海外に進出し、それが持つ優位性は何
かに注目した研究である。
→では、進出後これらはどうマネジメントされるべきなのか?
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Y. K. Suh
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2.1 多国籍企業の海外展開
多国籍企業のマネジメント
• Porter(1986)は多国籍企業のバリューチェーンの各機能をどこでも
つのかという「配置」の面とほかの国で行われる活動をどのように
「調整」するかの問題を強調。
• Prahalad&Doz(1987)では、多国籍企業は、I(グローバル統合
Integration)と R(現地適応Responsiveness)をバランスさせる必要が
あると主張。
• Bartlette&Ghoshal(1989)はトランスナショナル企業という概念で多
国籍企業の理想像を提示。これは世界規模での効率性、各国環
境への適応、イノベーションの促進と活用を同時達成する企業を
指す。
• Doz, Santos, Williamson(2001)はメタナショナル企業という概念で多
国籍企業が知識をどう扱うか議論した。
→これらの議論は、多国籍企業のマネジメントにおいて、本国だけではなく全世界的
な最適化を重要視している。伝統的な海外直接投資論で前提にされていた本国優
位性の移転以外に海外子会社が現地環境に適応しながら何らかの優位性を生み出
すことを説明する必要がある。
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Y. K. Suh
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2.1 多国籍企業の海外展開
海外子会社から生まれる優位性
• Gupta&Govindarajan(1991, 1994)は、海外子会社が知
識を生むとし、知識の流れから海外子会社を4つに分
類した。
• Birkinshaw(1996)は、海外子会社が権限を獲得、発展
させるためには子会社自らの能力(capabilities)が重要
であると指摘
• Rugman&Verbeke (2001)は海外子会社は企業特殊優
位性を、自ら、本社との関係から、現地環境から生み
出すとした。
→このように本国だけではなく、海外子会社でも生まれる優位性を全世界の各
拠点にどう移転するのかに対する具体的な方法についてはあまり議論されてこ
なかった。
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Y. K. Suh
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2.2 多国籍企業の海外生産
海外直接投資と海外生産
• 1960年以降の海外直接投資理論では、海外直
接投資が海外生産を行うためだと仮定した(藤沢
2000)
• Vernon(1966)では、製品のライフサイクルにより
生産拠点が、先進国から発展途上国に移転され
ていくと主張
• Barlow (1953)は海外生産子会社を持つ本国親
会社の役割を実務的な観点から接近した。
→多国籍企業の海外生産は直接投資の結びつけて考えられてきた。また実務
的な観点からの接近もあった。
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Y. K. Suh
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2.2 多国籍企業の海外生産
Fordの海外生産
• Ford社の最初の海外進出はイギリスであり、フォード
はアメリカでのやり方をそのままイギリスに導入しよう
とした(Wilkins&Hill1964, Lewchuk1987, 1992,
Tolliday1995)。
• 1930年代からは、フォード生産方式に対する国別修
正が行われる(Wilkins&Hill1964)
• 1980 年代後半からフォードは日本的生産方式を導入
し、それを海外工場にも適用することになる
(Carrillo&Montiel1998)
→フォードの海外生産の研究から生産システムの移転及び修正に関する議論
が始まったが、生産システムの移転に関する本格的な議論は1980年代日本企
業の海外進出が本格的になってから始まる。
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Y. K. Suh
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2.3 日本企業の海外生産とマザー工場制
日本企業と日本的経営の海外移転
• このように日本企業の海外直接投資は、1960、70年代の輸出中
心戦略と一緒に展開された消極的なものから1980年代以降の輸
出規制、円高などの外部環境により積極的なものに変化する(吉
原・林・安室1988、安保他1991、Besser1996、Liker他1999、中村
2002、山口2006)
• 日本企業の海外進出を論じる際には、日本的経営システム・生産
システムがアメリカのそれとは異なり、競争優位性になり得るとさ
れてきた(Yohsino1976、Ouchi&Jaeger1978、Ouchi&Price1978、
Pascale&Athos 1981)
• しかし、日本的経営・生産システムは完全には移転されず、なんら
かの形で修正されて移転される(安保他1991、Liker et al. 1999、中
村2002、山口2006)。
→日本的生産方式が優位性として海外に移転されることは説明されたが、それ
がどのように移転されるかという仕組みに関しては説明されなかった。
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Y. K. Suh
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2.3 日本企業の海外生産とマザー工場制
マザー工場システム
• 日本的生産方式を海外に移転させる仕組みとして指
摘されたのがマザー工場システムである(山口2006、
大木2011)
• マザー工場システムは本国工場で持っている暗黙知
を暗黙知のまま移転させるシステム(山口2006)
• 国内外の工場の生産性を高めていく過程でマザー工
場が主導的な役割(大木2011)
→しかしマザー工場制に関する議論は基本的に1対1の議論に留まっている。
またマザー工場システムがいかに形成されてどう変化するのかついての分析
も足りない。
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Y. K. Suh
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2.4 知識移転と知識ネットワーク
企業と知識移転
• 企業がもつ知識とその活用は競争力の源泉となるということは多くの研
究から指摘されている(Kogut&Zander1992, Kogut&Zander1993,
Zander&Kogut1995, Grant1996, 1997 Argote et al2003, Chini2004)
• 知識を有効に活用するためには、それが必要とされる場所に適切に移
転される必要がある。知識の移転は容易ではなく、そこにはなんらかの
問題やコスト、つまり粘着性が存在する(Von hippel1994, Szulanski1995,
1996, 2000)
• 知識はその性質によって移転可能性が異なる(Kogut&Zander1993、
Zander&Kogut1995、Szuanski1995, 1996, 2000、椙山2001)。
• 多くの研究は知識が移転されることを組織関係によって解釈した
(Darr,Argote&Epple1995, Grant 1996, 1997, Almeida&Kogut1998,
Tsai2001, 2002, Schlegelmilch&Chini2002)
→知識移転は企業の競争力を決める重要な要因であり、それは知識そのもの
の性質、組織関係などと関係がある。
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Y. K. Suh
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2.4 知識移転と知識ネットワーク
知識移転とはなにか。
知識の複製
-知識の複製にはノイズが発生する
-知識の複製が起きた後、発信側と受信側は類似した知識をもつことになる
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Y. K. Suh
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2.4 知識移転と知識ネットワーク
知識移転とはなにか。
知識の移動
-知識がなんらかの媒体を通じて移動する
-知受信側に移動した知識は発信側にはなくなる
2013/10/30
Y. K. Suh
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2.5 リサーチデザイン
リサーチクェスチョン
多国籍企業の競争力を決める要因を知識だと
し、多国籍企業がその知識を活用するために
持つ知識ネットワークの姿を明らかにする。そし
てその知識ネットワークがどのように形成され
るかをダイナミックに分析する。
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Y. K. Suh
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2.5 リサーチデザイン
知識の移転可能性
Kogut&Zander(1993)
Zander&Kogut(1995)
生産システムの成文性が高く、伝授可能性が
高く、複雑性が低いほど生産システムの移転
可能性は高くなる
2013/10/30
Y. K. Suh
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2.5 リサーチデザイン
知識移転のフレームワーク
Walsh&Ungson(1991)
Argote&Ingram(2000)
・メンバー:従業員(労働者、エンジニア)
・タスク:標準作業(マニュアル)
・ツール:生産設備、技能育成ツール
・メンバー×ツール:技能(スキル)
・メンバー×タスク:組織(構造、文化)
・ツール×タスク:レイアウト
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2.5 リサーチデザイン
知識移転のフレームワーク
組織
ユニット
組織
ユニット
・メンバー:従業員(労働者、エンジニア)
・タスク:標準作業(マニュアル)
・ツール:生産設備、技能育成ツール
・メンバー×ツール:技能(スキル)
・メンバー×タスク:組織(構造、文化)
・ツール×タスク:レイアウト
組織
ユニット
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2.5 リサーチデザイン
事例と調査方法
• 本研究では事例として、トヨタ自動車と現代自動車の2
社を選定
• 自動車産業は生産の多国籍企業の海外進出がかな
り進んでいる産業であり、生産システムを移転して生
産性の向上を図ることが非常に大事である。
• 本研究では、工場訪問調査とインタビュー調査を基に
ケーススタディーを行った。
• 本研究では、今まであまり注目されてこなかった知識
ネットワークのダイナミックな形成に焦点を当てたた
め、新しい理論構築に適しているケーススタディー
(Eisenhardt1989)を方法として用いた。
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Y. K. Suh
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第3章 本国の知識とその移転可能性
3.本国の知識とその移転可能性
3.1.トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
32
3.2.現代自動車の生産システムとその移転可能性
44
3.3.比較と小括 63
第3章ではトヨタ自動車と現代自動車の本国における生産システムに関して分析を
行う。まずは、両社の歴史を分析し、海外に進出してからの歴史を3つの時期に分
けることでダイナミックな分析に備える。またそれぞれの生産システムの特徴を明ら
かにし、分析枠組みに照らし合わせてその移転可能性を分析する。最後に両者の
比較を通じてその差を鮮明に現わす。
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Y. K. Suh
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3.1 トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
トヨタ自動車の歴史
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1933
豊田自動織機自動車部設立
1937
トヨタ自動車工業設立
1959
元町工場完工
1962
ブラジルサンベルナルド工場完工
1966
高岡工場完工
1970
堤工場完工
1979
田原工場完工
1984
NUMMI操業開始
1988
ケンタッキー工場完工
2002
中国天津豊田生産開始
2003
GPC設立
Y. K. Suh
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3.1 トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
トヨタ生産台数の推移
5,000
70.0%
4,500
65.0%
4,000
60.0%
3,500
55.0%
3,000
50.0%
2,500
45.0%
2,000
40.0%
1,500
35.0%
1,000
30.0%
500
25.0%
0
20.0%
2001年
2002年
2003年
2004年
海外生産合計
2005年
2006年
国内生産合計
2007年
2008年
2009年
2010年
海外/全体生産比率
2000年代に入り、海外生産が急激に増え、2007年には海外生産台数が国内生
産台数を超えている。
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.1 トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
トヨタ自動車:3つの時期
時期1:
途上国中心
にKD工場、
国内生産能
力拡充
1959
ブラジル
KD生産
時期2:
本格的海外
生産開始、
マザー工場
制
1984
NUMMI
生産開始
時期3:
海外生産の
急増加、
マザー工場
制の変化
2003
GPC
設立
トヨタの分析においては主に時期2と時期3を扱うことにする
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.1 トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
トヨタ生産システム
• トヨタ生産システムはフォード生産システムの影響を受けながらも
独自的に発展してきた(藤本1997、下川2004、和田2009)
• トヨタ生産システムは多種少量で製品のコストを安くするために工
夫された(大野1978)
• JIT:組み付けに必要な部品を必要なときに、必要なだけ供給
• 自働化:異常があったときに機械が自動的に止まること
• 作業標準の徹底化:改訂には現場の意見を反映
• プル生産を指向
• かんばんシステム
• 生産現場における熟練形成
• あまり進んでいない部品のモジュール化
• 情報システムの徹底化
• 組織文化がボトムアップ的
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.1 トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性
トヨタ生産システムの移転可能性
成文性:作業標準を徹底化しており、
現場の意見が標準の改訂に反映され
る。
情報システム・ソフトウェアに多くのノウ
ハウを取り込んでいるため高い。
成文性は高いが、伝授可能性
が低く、複雑性が高いため、移
転可能性が高いとは言えない
伝授可能性:生産工程が労働者に多く
の熟練を期待するために低い。
複雑性:部品のモジュール化があまり
進められていない、
協力しあう現場、
情報システムによる生産の統合(低)
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.2 現代自動車の生産システムとその移転可能性
現代自動車の歴史
1968 現代自動車設立
米フォード社とのKD契約
1974 日三菱社との技術契約
1975 蔚山工場完工
1989 カナダブロモン工場完工
1990 全州商用車工場完工
1995 牙山工場完工
1997 トルコKD工場完工
1998 インド工場完工
起亜自動車買収
2002 北京汽車との合弁で北京現代汽車設立
2005 米アラバマ工場完工
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.2 現代自動車の生産システムとその移転可能性
現代自動車生産台数の推移
2500
60.0%
50.0%
2000
40.0%
1500
30.0%
1000
20.0%
500
10.0%
0
0.0%
2002
2003
2004
2005
国内生産
2006
2007
海外生産
2008
2009
2010
2011
海外/全体生産比率
2000年代になってから海外生産台数が急激に増え、2009年に生産比率が50%を
超えている。
2013/10/30
Y. K. Suh
32
3.2 現代自動車の生産システムとその移転可能性
現代自動車:3つの時期
現代自動車の分析では基本的に時期3を扱うことにする
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.2 現代自動車の生産システムとその移転可能性
現代自動車生産システム
• フォード生産方式の影響を受けながらも、日本的生産方式の導入
を試みるが、それがうまく機能していない(李1994、呉1998 、チョ
2005)
• 規模の経済を最大限利用:量産・量販志向
• プッシュ生産を志向
• 生産計画に基づいてMRP方式で調達
• 柔軟な生産体制を志向:しかし、うまくいっていない。
• 自動化:人の介入を嫌う(労働排他的)自動化
• 作業標準の改訂に現場の意見が反映されない。
• 作業と改善の分離:労働者に改善の役割を期待していない
• 生産システムの情報化、情報による統合
• 部品のモジュール化を進めている。
• 組織文化がトップダウン的。
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.2 現代自動車の生産システムとその移転可能性
現代生産システムの移転可能性
成文性:標準はあるが、現場とは乖
離。そのため、本社で決めた標準を移
転に利用。
情報システム・ソフトウェアに多くのノウ
ハウを取り込んでいるため高い。
成文性が高く、伝授可能性が
低く、複雑性が低い。比較的に
移転可能性が高いといえる。
伝授可能性:生産工程が労働者に熟
練を期待しない(簡単)ために高い。
複雑性:モジュール部品使用で生産工
程の簡略化(低)
協力しあわない現場
情報システムによる生産の統合(低)
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.3 比較と小括
両社の生産システム比較
トヨタ自動車
現代自動車
多品種少量生産
少品種大量生産
PULL生産
PUSH生産
標準が守られる
標準が守られない
標準改訂に現場意見反映
標準改訂に現場意見反映せず
労働者の役割大
労働者の役割小
自働化
人の介入を嫌う自動化
モジュール化×
モジュール化○
ボトムアップ
トップダウン
2013/10/30
Y. K. Suh
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3.3 比較と小括
移転可能性の比較
トヨタ自動車
成文性
現代自動車
作業標準、情報システム
本社の作業標準、情報システム
高い
高い
伝授可能性 労働者の役割-大
複雑性
労働者の役割-小
低い
高い
モジュール化×、協力し合う現場
モジュール化○、協力し合わない
現場
高い
低い
総合的
相対的に低い
移転可能性
相対的に高い
両社の本国の知識の移転可能性を比較してみると、トヨタの移転可能性が相対
的に低く、現代自動車の移転可能性が相対的に高いことが分かる。
2013/10/30
Y. K. Suh
37
第4章 本国知識の海外移転
4.本国知識の海外移転
4.1.天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
70
4.2.北京現代汽車における生産システムの移転とモデル工場制
88
4.3.比較と小括
103
第4章では、生産システムの海外移転の実例を見ることにする。この章ではトヨタ自動
車の高岡工場と天津一汽豊田の天津泰達工場の事例を通じてトヨタ自動車における
マザー工場制の実例を分析する。そして現代自動車の牙山工場と北京現代汽車の
北京工場の事例を通じて現代自動車におけるモデル工場制の実例を分析する。また
マザー工場制とモデル工場制の比較も行い両方式の差を現わす。
2013/10/30
Y. K. Suh
38
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
マザー工場制:機能
-本国工場は海外工場の立ち上げと支援において大きな役割を果たす。
-マザー工場は基本的に生産車種によって決まる。
2013/10/30
Y. K. Suh
39
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
トヨタのマザー工場一覧
マザー工場
元町
高岡
堤
田原
海外工場
ロシア
NUMMI
米ケンタッキー
米インディアナ
インドネシア
カナダ
イギリス
ブラジル
フィリピン
フランス
トルコ
ベネズエラ
タイ
チェコ
広州
アルゼンチン
マレーシア
四川
台湾
天津
南アフリカ
ベトナム
インド
パキスタン
オーストラリア
ここに載っていない海外工場に関しては7章の方で説明
2013/10/30
Y. K. Suh
40
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
マザー工場制:知識移転
<マザー工場>
・メンバー:マザー工場から海外工場に人
が派遣される。また海外工場の人を研修
のために受け入れる。
・タスク:マザー工場のマニュアル・標準作
業を海外工場に導入する。
・ツール:マザー工場から生産設備化移動
する。
・スキル:マザー工場の技能を海外工場の
人が教わる。
・組織:マザー工場の組織構造、組織文化
が海外工場に適用される。
・レイアウト:マザー工場のレイアウトが海
外工場に適用される。
<本社>
・メンバー:本社組織から海外工場に人を
派遣する。
2013/10/30
Y. K. Suh
41
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
本国マザー工場:高岡工場
高岡工場第1組立レイアウト
2013/10/30
-1966年に乗用車生産工場として建設
-3つの生産ラインを持っているが、現在は
第1ラインだけが稼働している
-第1ラインの生産能力は12万台
-生産車種はカローラとiQ
-SPSシステムを導入中
-第1工場レイアウトはスモールh型
-スモールh型レイアウトは部品を各ライン
に供給しやすくするためのもの
-工場内に足回り部品を組み立てるサブア
センブリラインがある
-作業組織は技能員、TL、GLで構成
-TL、GLは生産過程で何らかの問題が起き
た際にその問題を解決する。
-GLは作業標準改訂の仕事も行っている。
Y. K. Suh
42
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
海外工場:天津泰達工場
天津泰達工場第3組立レイアウト
2013/10/30
-天津一汽豊田は2002年から生産を開始
-3つの工場を持っており、第1工場は西青
工場、第2、3工場は別の場所で泰達工場
-第3工場を観察対象とする(生産車種、マ
ザー工場)
-生産車種はカローラとRAV4
-SPSシステムは導入していない
-第3工場のレイアウトはスモールh型
-スモールh型レイアウトは部品を各ライン
に供給しやすくするためのもの
-作業組織は技能員、TL、GLで構成
-TL、GLは生産過程で何らかの問題が起き
た際にその問題を解決する。
-GLは作業標準改訂の仕事も行っている。
-しかしまだGLとTLがなかなか育たない
Y. K. Suh
43
4.1 天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制
マザー工場制の変化
なぜマザー工
場を統一した
のか?
-それぞれの
工場の生産方
式、教え方の
違い
-派遣者間の
コミュニケー
ション
天津工場のマザー工場の変化:
時期2:元町、高岡、(一部田原)
2013/10/30
時期3:高岡に統一
→
Y. K. Suh
-海外と国内
の生産車種の
不一致
44
4.2 北京現代汽車における生産システムの移転とマザー工場制
モデル工場制
本国工場はモデルとして生産立ち上げ準備と工場のコンセプトだけを提供し、多くの役
割を本社が担う。
2013/10/30
Y. K. Suh
45
4.2 北京現代汽車における生産システムの移転とマザー工場制
モデル工場制
<モデル工場>
・メンバー:モデル工場から海外工
場へエンジニアが派遣される。
・レイアウト:モデル工場のレイアウ
トが海外工場に適用される。
<本社>
・メンバー:本社組織から海外工場
にエンジニアが派遣される。
・ツール:本社組織から海外工場に
生産設備が移動する。
・タスク:本社組織の作業標準、マ
ニュアルが海外工場に導入される。
・スキル:本社組織のスキルを海外
工場の人が教わる。
2013/10/30
Y. K. Suh
46
4.2 北京現代汽車における生産システムの移転とマザー工場制
本国モデル工場:牙山工場
牙山工場組立レイアウト
2013/10/30
-1996年から生産開始
-韓国では2番目の乗用車工場
-現代自動車のグローバル工場標準の
モデルとなる本国工場
-ソナタとグレンジャーを生産
-生産能力は30万台
-工場の建設の際にはトヨタ九州の宮
田工場をベンチマークしている
-組立レイアウトは自立完結組立工程
(九州宮田工場から)
-モジュール部品メーカーが生産ライン
にモジュール部品を供給
-高い自動化率
-作業組織は作業者、組長、班長で構
成
-班長は作業標準改訂の仕事を任され
ているが、ほとんどやっていない。
Y. K. Suh
47
4.2 北京現代汽車における生産システムの移転とマザー工場制
海外工場:北京工場
-現代自動車と北京汽車の合弁
で2002年から生産開始(第1)
-第2工場は2008年から生産開始
-現在第3工場まで稼働中
-ix35、i30、エラントラY、ソナタLを
生産
-生産能力は30万台
-工場建設の際にはグローバル
工場標準を適用
-組立レイアウトは自立完結組立
工程
-モジュール部品メーカーが生産
ラインにモジュール部品を供給
-高い自動化率
-作業組織は作業者、組長、班長
で構成
-韓国工場よりも生産性がいい
北京現代第2工場組立レイアウト
2013/10/30
Y. K. Suh
48
4.2 北京現代汽車における生産システムの移転とマザー工場制
モデル工場制の確立まで
• モデル工場制は現代自動車の時期3において使用されたもの(アメリカ工
場の建設から)
• 時期2ではどのような形での知識移転が行われていたのか?
• 1998年から量産開始のインド工場
-組立ラインは蔚山工場の組立てラインをベースに
-生産本部長兼蔚山工場長だった人がチェンナイ工場の建設責任者に
なった
-あまり自動化せず、労働集約的に
• 2002年から量産開始の北京現代第1工場
-牙山工場から生産現場の組長・班長クラスが派遣
(第2工場の時には派遣なし)
• かなりマザー工場制と類似した姿。なぜか?
-インド工場の建設は1995年から、当時牙山工場は建設中
-インド工場の建設にはカナダ工場の設備を使わざるを得なかった
-現代自動車が独自の生産方式を追求するのは経営陣が交替された
2000年代以降
2013/10/30
Y. K. Suh
49
4.3 比較と小括
マザー工場制とモデル工場制
モデル工場制
マザー工場制
―マザー工場は海外工場にコンセプトを提供し、その後のサポートも提供。モデル
工場は海外工場にコンセプトを提供するが、その後のサポートは主に本社組織が
担当
―マザー工場制とモデル工場制の最も大きな違いは、海外への知識移転の役割
分担をどう行うかだといえる。マザー工場制ではマザー工場が主導的役割を持ち、
モデル工場制では本社が主導的な役割を持つのである。
2013/10/30
Y. K. Suh
50
4.3 比較と小括
移転可能性と移転方式
―3章の分析:トヨタ生産システムは移転
可能性が相対的に低く、現代生産システ
ムは相対的に高い
―このようなトヨタ自動車の生産システム
を海外に根付かせるためには、本国工場
が最初のコンセプト提供と立ち上げを助
けるだけではなく、持続的なサポートを行
うことが適している
―本国工場は最初の立ち上げだけ関係し
ていてその後は関係が薄くなっても問題
はないのである。その後のサポート・コン
トロールに関しては本社で集中的に管理
する
―マザー工場制は移転に時価がかかるが、その成長性は高い。反対にモデル工場制
は移転は速いがその成長性はあまり高くない。
2013/10/30
Y. K. Suh
51
第5章 本国における知識ネットワーク
5.本国における知識ネットワーク
5.1.トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
5.2.現代自動車の本国知識ネットワーク
5.3.比較と小括
134
108
121
第5章では、本国における知識ネットワークがどの様になっているかについて分析す
る。トヨタ自動車も現代自動車も本国に複数の工場を持っている。その工場がお互い
どの様な関係でつながっているかを分析する。トヨタ自動車の生産現場で生まれる
多様性について言及してから生産調査室とGPCという2つの組織の役割について説
明する。さらに現代自動車の最大工場である蔚山工場について説明してから国内の
労使環境と生産技術研究所について説明する。
2013/10/30
Y. K. Suh
52
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
トヨタの本国工場間関係
量産開始
生産実績
(千台)
生産車種
元町工場
高岡工場
1959年
1966年
61 クラウン、マークX、エスティマ
130 カローラセダン、カローラルミオン、iQ
堤工場
1970年
372
1979年
レクサス(LS、GS、IS、ISF、GX)
322 トヨタ(ランドクルーザー、ランドクルーザープ
ラド、RAV4、ヴァンガード、WISH、4Runner
田原工場
プリウス、プリウスα、プリウスPHV、カムリ、
プレミオ、アリオン、サイオンtCほか
-トヨタ生産システムの基本思想が企業のなかで共有されても他方では競争圧
力が様々な試行錯誤を促進させ生産システムの多様性が保たれる(藤本2003b)
-トヨタ内部では、サプライヤー連合会、生産調査室、自主研究会など知識を共
有する仕組みが設けられている(Dyer&Nobeoka1998)
-組立部長連絡会・組立課長連絡会など各工場間の同階層が直接知識交流を
行う仕組みもある(氷熊2012)
2013/10/30
Y. K. Suh
53
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
生産調査室
• 生産調査室はTPSを国内工場すべてに広め
るために、設立された組織
• 海外工場は基本的にはマザー工場の支援を
受けることになるが、それだけではなく生産調
査室も海外工場の支援を行う場合がある
• 海外工場にTPSに関する教育コンテンツを提
供し、時には国内に海外の人材を受け入れ
教育することもしている
東京大学
徐寧教
54
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
生産調査室:国内機能
知識移転の仲介(氷熊2012)
標準制定と伝播(氷熊2012)
・メンバー:他拠点の人が生産調査室に入る。問
題解決のために生産調査室の人を派遣する。
・タスク:他拠点の作業標準、マニュアルを問題解
決のために提供。
・ツール:他拠点の設備を問題解決のために提
供。
・レイアウト:他拠点のレイアウトを問題解決のた
めに提供。
・スキル:他拠点の技能を問題解決のために提
供。
・メンバー:各工場の人が生産調査室に入る。生産調
査室から人を派遣する。
・タスク:各工場の標準作業、マニュアルを整理・標準
化・伝播。
・ツール:各工場の設備を整理・標準化・伝播。
・スキル:各工場の技能を整理・標準化・伝播。
・レイアウト:各工場のレイアウトを整理・標準化・伝播
2013/10/30
Y. K. Suh
55
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
GPC
• GPC(Global Production Center)は2003年7月
に設立
• GPCの機能:
-基本技能という車づくりにおいて最も基本
的な技能を設定し、それを現場の技能員にわ
かりやすく教えるためのツールを開発
- GPCではモデル切替え時の量産化過程を
支援
東京大学
徐寧教
56
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
GPC:国内機能
・メンバー:各工場の人を受け入
れて育成。
・タスク:各工場の作業標準・マ
ニュアルを整理し標準化する。そ
の後各工場にそれが導入され
る。
・スキル:各工場の技能を整理し
標準化する。
・ツール:技能育成のための設
備がGPCから各工場に移動。
2013/10/30
Y. K. Suh
57
5.1 トヨタ自動車の本国知識ネットワーク
トヨタの本国知識ネットワーク
‐基本技能の
ベストプラクティスを設定、
‐人材育成ツール
‐標準制定・伝播
‐知識の仲介役
生産調査室
メンバー、
タスク、
ツール
レイアウト、
スキル
GPC
メンバー、
タスク、
スキル
-このような多様性は一
つのシステムとして吸収さ
れ、体系としてのトヨタ生
産システムという知識とな
る
ツール
タスク
メンバー
国内
工場A
-トヨタの国内工場は同
じトヨタ生産方式を共有し
ながらもそれぞれ違う
国内
工場B
国内
工場C
-国内工場間で知識共
有・交換を行うために、工
場間直接交流、生産調査
室、GPCが活用される。
工場同士が直接交流
:メンバー、タスク、ツール、レイアウト、スキル
2013/10/30
Y. K. Suh
58
5.2 現代自動車の本国知識ネットワーク
現代の本国工場間関係
蔚山工場
1968~
生産能力(万
台)
170
牙山工場
1995~
30
量産開始
生産車種
第1:verna,click
第2:tucson,veracruz,santafe
第3:avante,avanteHEV,i30,i30cw
第4:genesis coupe,grand
starex,porter2
第5:equus,genesis,tucson
grandeur,sonata
-現代自動車は国内に蔚山工場と牙山工場の2つの乗用車生産工場を持っ
ている。
-蔚山工場と牙山工場間ではあまり交流がないといわれている。
-現代自動車は強い労働組合を持ち、労働者は会社に非協力的である。現
場における知識創造があまり起きず、多様性が生まれていない。
2013/10/30
Y. K. Suh
59
5.2 現代自動車の本国知識ネットワーク
蔚山工場
-1968年からKD生産開始、1975年から完成車生産開始
-第1から第5工場までで年間170万台の生産能力をもつ
-蔚山工場の現場では、作業標準があまり守られていない
-また蔚山地域は最も労働組合活動が盛んな地域でもある
2013/10/30
Y. K. Suh
60
5.2 現代自動車の本国知識ネットワーク
現代自動車と労働組合
金属労働組合の労使関係(チョン他2003)
単位:%
1997年以前
1997年直後
2002年
すごく対立的 少し対立的 少し協力的 すごく協力的 対立的合計
25.6
44.2
23.3
7
69.8
13.3
55.6
26.7
4.4
68.9
30.6
40.8
26.5
2
71.4
-現代自動車の労働組合は1987年設立
-金属労働組合は現代自動車労働組合の上級団体であり、その中でも蔚山、
釜山、慶尚南道地域の組合員を調査。対象組合員81781名の中で、現代自動車
の組合員数は21623名で26%を超える。
-この結果を見ると常に労使関係が対立的だと考えている人が7割ほどある。
-労働組合設立後、役員選挙を通じて、協力的勢力、中途的勢力、階級的勢力
のどれが実権を握るのかを追跡してみると、最初は3つの勢力が政治闘争を繰り
広げたが、結局は階級的勢力が実権を握ることになり、政治闘争は階級的勢力
の中での闘争に移った(チョ2001)
-このような非協力的な労使関係は現代自動車の現場では労働者が自発的に
生産システムの発展に参加していない。
2013/10/30
Y. K. Suh
61
5.2 現代自動車の本国知識ネットワーク
生産技術研究所
-生産技術研究所は本社に所属する組織で
あり、生産技術の開発、エコーカーの開発、量
産生産技術開発業務などを担当
-新技術導入を主導したり、作業標準の骨格
となる組立工法書を作ったりする
-生産に関する知識の創造は主に生産技術
研究所という本社組織を通じて行われ、それ
が生産現場の方に伝播
・ツール:生産技術本部から生産設備が国内
工場に移動。
・タスク:生産技術本部のマニュアル・作業標
準を国内工場に導入。
・レイアウト:生産技術本部からのレイアウト
が国内工場に導入される。
2013/10/30
Y. K. Suh
62
5.2 現代自動車の本国知識ネットワーク
現代自動車の本国知識ネットワーク
-現代自動車は非協力的な労使
関係のため、現場では知識があま
り生まれていない。
生産技術本部
作業標準、新技術
導入などを生産技
術本部で主導
-そのため知識を生み出す役割
は生産技術本部に任されている。
-また本国工場同士では直接的
な交流はあまりない
工場A
2013/10/30
工場B
Y. K. Suh
63
5.3 比較と小括
本国知識ネットワークの比較
―現代自動車の場合、工場同士での知識の交流がないが、トヨタの場合はある
―現代自動車の知識ネットワークは矢印が一方向であるのに対して、トヨタでは
両方向となっている
―トヨタ自動車の場合、現場に知識が集中しているが、現代自動車は生産技術
本部に知識が集中している
2013/10/30
Y. K. Suh
64
5.3 比較と小括
本国環境と海外移転方式
現代とモデル工場制
トヨタとマザー工場制
各海外工場によって、その海外工場が
必要とする生産知識があるのであれ
ば、それに最も適する本国工場をマ
ザー工場として指定し、海外工場をサ
ポートさせれば、的確な知識を、時間を
かけて移転し続けることが出来る
2013/10/30
モデル工場は技術とコンセプトで
は優れているが、知識を生み出す
存在ではない。そのため海外工
場と持続的なつながりを持つ必要
がない
Y. K. Suh
65
第6章 グローバル知識ネットワーク
6.グローバル知識ネットワーク
6.1.トヨタ自動車グローバル知識ネットワーク
6.2.現代自動車グローバル知識ネットワーク
6.3.比較と小括 158
140
151
第6章では、第4章で分析した本国工場と海外工場の関係と第5章で分析した本国内
での知識ネットワークをつなげてグローバル生産ネットワークを描くことにする。生産
拠点だけではなく、それをサポートする組織の存在と役割も合わせて議論する。トヨタ
自動車の生産調査室とGPCのグローバル機能について、そして現代自動車の生産技
術研究所、パイロットセンター、グローバル総合状況室について分析する。トヨタ自動
車と現代自動車がそれぞれ集権的・分権的知識ネットワークを持っていることを指摘
する。
2013/10/30
Y. K. Suh
66
6.1 トヨタ自動車のグローバル知識ネットワーク
生産調査室:グローバル機能
<生産調査室:時期2>
・メンバー:生産調査室から海外工場に人を派
遣する。
・組織:生産調査室が海外工場に組織文化を
教える。
2013/10/30
<生産調査室:時期3>
・メンバー:生産調査室からOMDD(生産調査室海
外分室)へ、OMDDから海外工場に人を派遣する。
・組織:生産調査室がOMDDに、OMDDが海外工
場に組織文化を教える。
Y. K. Suh
67
6.1 トヨタ自動車のグローバル知識ネットワーク
GPCグローバル機能
・メンバー:GPCが地域GPCへ、地
域GPCが海外工場へ人を派遣す
る。
・スキル:GPCが地域GPCへ、地
域GPCが海外工場へ技能を教え
る。
・ツール:GPCが地域GPCへ、地
域GPCが海外工場へ人材育成設
備を移動させる。
・タスク:GPCが地域GPCへ、地
域GPCが海外工場へ作業標準・
マニュアルを導入させる。
2013/10/30
Y. K. Suh
68
6.1 トヨタ自動車のグローバル知識ネットワーク
分権的グローバル知識ネットワーク:詳細
時期2
時期3
-トヨタの知識ネットワークの中心になっているのはマザー工場
-つまり各マザー工場が主導権を持っているという意味で分権的だといえる
-時期3においては地域統括会社の役割も大きくなっている。
2013/10/30
Y. K. Suh
69
6.1 トヨタ自動車のグローバル知識ネットワーク
分権的グローバル知識ネットワーク:全体像
時期2
時期3
生調
生調
マザー
工場
マザー
工場
マザー
工場
GPC
マザー
工場
地域
統括
海外
工場
海外
工場
海外
工場
マザー
工場
マザー
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
地域
統括
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
-知識ネットワークの全体を俯瞰するために、何種類の知識が移転されるのかに
よって矢印の太さを変えた。
-そうすると、時期2も時期3もマザー工場から最も多くの矢印が出ており、またその
矢印が太いことがわかる。
-時期3においてはマザー工場を地域統括会社がかなりサポートしている。
2013/10/30
Y. K. Suh
70
6.2 現代自動車のグローバル知識ネットワーク
グローバル工場標準
メンバー、タスク、ツール、レイアウト、スキル
生産技術本部
海外工場
-グローバル工場標準とは、海外工場を建てるためにつくられた標準であり、工場レイ
アウト、モジュール部品率、自動化率、ロボット台数、トイレット・休憩室に位置など様々
な項目を標準化しておいたものである。
-グローバル工場標準は生産技術研究所で作成される。
-グローバル工場標準は、韓国の牙山工場そしてアメリカのアラバマ工場を基に作成
された。
・メンバー:海外工場に人を配置し設備の設置・試運転を助ける。
・タスク: 作業標準を作成する。
・ツール:グローバル工場標準には生産設備の標準も入る。
・レイアウト:グローバル工場標準には工場・ラインのレイアウトも入る。
・スキル:海外現地人相手に技能教育。
2013/10/30
Y. K. Suh
71
6.2 現代自動車のグローバル知識ネットワーク
パイロットセンター
南陽研究所
パイロットセンター
タスク、ツール、レイアウト
海外工場
-パイロットセンターは、開発を完了した車両を実際に工場で生産する前に、工
場と同じ工程で生産し量産開発を行う部署である。
-試作車の制作と量産開発を行う
-パイロットセンターは南陽研究所内に位置
-現在3つの試作ラインを持っている
・タスク:量産試作の段階で作業標準を検討し海外工場に導入する。
・ツール:量産試作の段階で生産設備を検討し海外工場に移動させる。
・レイアウト:量産試作の段階でレイアウトを検討し海外工場に適用する。
2013/10/30
Y. K. Suh
72
6.2 現代自動車のグローバル知識ネットワーク
グローバル総合状況室
• グローバル総合状況室(Global command and control
center)は、外国工場の生産における問題点をリアルタイ
ムで把握、報告する組織
• 現代自動車の海外工場では、リモート・コントロール・シス
テムが設置されている。グローバル総合状況室ではこれ
を活用して、全世界の工場の生産状況をモニタリング&コ
ントロール
• 2008年設立当初は品質問題だけに対応していたが、現在
は販売、開発、走行テストなど多くの部分に対応している。
• グローバル総合状況室は知識が集中している部署であ
る。海外で不足な知識を補う役割を行う。
• しかし海外に知識移転を行うわけではない。
2013/10/30
Y. K. Suh
73
6.2 現代自動車のグローバル知識ネットワーク
集権的グローバル知識ネットワーク
現代知識ネットワークの詳細
現代知識ネットワークの全体像
海外工場
モデル
工場
メンバー、タスク、ツール、レイアウト、スキル
タスク、ツール、レイアウト
生技
生産技術本部
パイロット
センター
グローバル
総合状況室
パイ
ロット
総合
状況室
メンバー、
レイアウト
タスク、ツール、レイアウト
タスク、ツール、レイアウト、スキル
本国工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
海外
工場
-現代自動車の知識ネットワークの中心は本社組織その中でも特に生産技術本部にあ
るといえる。
―本社組織に知識移転の主導権が集中しているという意味で集権的だといえる。
2013/10/30
Y. K. Suh
74
6.3 比較と小括
グローバル知識ネットワークの比較
トヨタ自動車
海外
工場C
海外
工場D
海外
工場E
本国マザー
工場A
現代自動車
海外
工場F
本国モデル
工場
生産技術本部
パイロットセンター
本国マザー
工場B
海外
工場G
生産調査室、
GPC
海外
工場H
―トヨタの場合は本社機能が本国マザー工場をサポートし、それぞれのマザー工場が海外
工場を支援している。現代の方は本社組織から本国モデル工場、そして海外工場への知
識移転を行っている。
―トヨタは各マザー工場が主導する分権的なネットワークを、現代は本社組織が主導する
集権的なネットワークを持っている
2013/10/30
Y. K. Suh
75
6.3 比較と小括
分権的ネットワークと集権的ネットワーク
• 組織の集権化は、組織内部の組織単位が知識を移転する主導権
を減少させる。そのため集権化は知識の共有に負の影響を与える
(Tsai2002)
• 集権的ネットワークと分権的ネットワークはそれぞれの長所と短所
を持っている。分権化は、問題に対する解決方法の発見とその室
とは正の相関を持つ。しかし問題解決の速度、コストなどとは負の
相関を持つ(Sheremata2000)
• トヨタ自動車の分権化された知識ネットワークの中では、多くの知
識が生まれる。しかしそれを統合するためには多くのコストが必要
となる。知識の移転速度も速くない。
• 現代自動車の集権化した知識ネットワークの中では知識が生まれ
る場所が限定されている。知識の多様性、量の面では相対的に劣
るといえるだろう。しかしそれを移転する速度は非常に速い。
2013/10/30
Y. K. Suh
76
第7章 海外拠点で生まれる知識とその移転
7.海外生産拠点で生まれる知識とその移転
7.1.トヨタ自動車の海外生産拠点の知識 162
7.2.現代自動車の海外生産拠点の知識 169
7.3.比較と小括
179
第7章では、海外生産拠点で生まれる知識とその移転について分析する。知識は本
国だけではなく、海外子会社でも生まれ得る。それをいかに活用するかがグローバ
ル知識ネットワークを構築するにとって大事なのである。トヨタ自動車の海外工場が
自らマザー工場化する現象や現代自動車の海外生産拠点で生産システムの進化が
起きることを説明する。
2013/10/30
Y. K. Suh
77
7.1 トヨタ自動車の海外生産拠点の知識
海外工場の限定的マザー工場機能
海外現地専用モデ
ルマザー工場
メンバー、スキル
ツール、タスク、
レイアウト
海外現地専用モデ
ル生産工場
-トヨタは2002年からIMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)とい
うプロジェクトで現地専用車種を開発した。
―IMVプロジェクトで開発された車に関してタイトヨタはマザー工場の機能を果
たしている
・メンバー:現地専用モデルを生産する工場に人を派遣
・スキル:現地専用モデルを生産するための技能を伝授
・ツール:現地専用モデルを生産するための設備を移転
・タスク:現地専用モデルを生産するための作業標準を移転
・レイアウト:現地専用モデルを生産するためのレイアウトを適用
2013/10/30
Y. K. Suh
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7.1 トヨタ自動車の海外生産拠点の知識
海外工場のマザー工場化
海外マザー工場
海外マザー工場
支援される工場
米インディアナ 米ケンタッキー カナダ(1)
タイ(サムロン)
カナダ(2)
タイ(バンポー)
米テキサス
米ミシシッピ
メキシコ
海外マザー
工場
地域GPC
メンバー、スキル
ツール、タスク、
レイアウト、組織
メンバー、スキル
ツール、タスク
海外
新工場
2013/10/30
〈海外マザー工場〉
・メンバー:海外マザーから海外新工場に人を派遣
・スキル:海外新工場の技能員を育成
・ツール:自動車を生産するための生産設備を移転
・タスク:自動車を生産するための標準作業を移転
・レイアウト:生産ラインのレイアウトを適用
・組織:組織編成や組織文化などを移転
〈地域GPC〉
・メンバー:トレーナーを派遣
・スキル:トレーナーが基本技能を教育
・ツール:基本技能を教えるためのツールを提供
・タスク:制定された基本技能をマニュアルとして提供
Y. K. Suh
79
7.2 現代自動車の海外生産拠点の知識
海外拠点における生産システムの進化
比較項目/工場
作業標準*
作業組織*
労使関係*
組長・班長の役割*
需要と生産*
保全・
問題解決能力#
現代自動車生産
システムの理想
守られる
柔軟
協調的
ラインでの
現場管理者・改善
プル生産
牙山工場
守られない
硬直的
敵対的
限定的
プッシュ生産
北京現代
北京現代
第1工場
守られる
柔軟
協調的
現場管理者
機能発揮
プル生産
第2工場
守られる
柔軟
協調的
現場管理者
機能発揮
プル生産
ラインの作業者に存 ラインの作業者に存
あまりできていない あまりできていない
在
在(限定的)
―現代自動車が試みて失敗した生産システム改革、インタビューなどを通じて現
代自動車生産システムの理想を導出、国内工場と海外工場を比較
―*の項目に関しては北京工場が理想に近く、#の項目については牙山工場が理
想に近い。
―現代自動車は韓国で存在した問題を特定し、その部分を意図的に移転させな
かった。また独自の生産システムの進化を遂げた
2013/10/30
Y. K. Suh
80
7.2 現代自動車の海外生産拠点の知識
海外工場同士の生産車種移管
• 現代自動車はインド市場とヨーロッパ市場を狙う
ためにiシリーズを開発。
• iシリーズは韓国国内では生産されず、インド工
場で全量生産された。
• その中でi20という車種が2010年からトルコ工場
で生産移管された。
• 生産移管の背景:インド国内市場の成長、ヨー
ロッパ市場での現代自動車の占有率増加
• 生産移管に際してインド工場からのサポートは
あったが、それは技術的な面ではなく、インド工
場からの部品輸入の問題に関するものだった。
2013/10/30
Y. K. Suh
81
7.3 比較と小括
海外生産拠点から生まれる知識の分析
• トヨタ自動車の事例
-トヨタは本国からの支援を減らそうとし、海外子会社の自
立化を目指した。海外工場のマザー工場化はそれの一環
-海外工場の能力蓄積
-現地専用車種開発の必要性
-本国は未だに知識創造の役割を担っている
• 現代自動車の事例
-本国からはなれた環境から新しい生産システムの進化
が起きる
-また現地環境の圧力(ディーラー網)もあった。
-トルコ工場の事例は生産能力配置の問題である
2013/10/30
Y. K. Suh
82
第8章 結論
8.結論
8.1.分析の要約
183
8.2.本研究の理論的含意
184
8.3.実務的インプリケーション 186
8.4.今後の研究の方向性
187
本研究の結果から得られる理論的貢献は、①新しいフレームワークを使い知識移転
の流れを分析したこと、②マザー工場システムの議論を拡張したこと、③国内知識
ネットワークとグローバル知識ネットワークの関係性を見つけたこと、④グローバル
知識ネットワークの形成をダイナミックに分析したことである。
2013/10/30
Y. K. Suh
83
8.1 分析の要約
•
•
•
•
•
第3章:トヨタ生産システムは成文性が高く、伝授可能性が低く、複雑性が高いと分析された。現代
自動車生産システムは成文性が高く、伝授可能性が高く、複雑性が低かった。トヨタ生産システム
は現代自動車生産システムより相対的に移転可能性が低いと解釈することができる。よってトヨタ
生産システムの方がより移転が難しく、現代自動車生産システムの方が相対的に移転しやすいこ
とになる。
第4章:トヨタ自動車は本国の工場がマザーなり、海外工場の立ち上げからその後も持続的なサ
ポートを行うマザー工場制を採用していることが分かった。現代自動車は本国の工場がモデルと
なり、海外工場の立ち上げの際にコンセプトを提供していた。しかしその後の関係性は薄く、主に
本社がサポートを行うことになっている。
第5章:トヨタは生産拠点ごとに多様性が生まれ、各工場が知識の生産を行う分権的な構造になっ
ている。そして直接交流、生産調査室、GPCが知識の移転と共有を担当していた。現代は非協力
的な労使関係のため生産現場とは関係なく、背さん技術本部が集中的に知識の生産と伝播を行
う集権的な構造になっている。
第6章:トヨタの生産調査室とGPCはグローバル機能も持っている。これらがマザー工場をサポート
する形になっている。現代自動車の場合は生産技術研究所、南陽研究所パイロットセンター、グ
ローバル総合状況センターがグローバル機能を持っている。トヨタのグローバル知識ネットワーク
はマザー工場を中心とする分権的な構造になっている。現代自動車のグローバル知識ネットワー
クは本社機能を中心に集権的な構造になっている。
第7章:トヨタは現地専用車種の生産移管において海外工場が限定的にマザー工場機能を行う現
象と海外工場が新しい海外工場のマザー工場になる現象が観察できた。そこで海外工場が知識
移転の主体として機能していた。現代自動車においては海外工場において生産システムの進化
が見られたが、それが別の海外工場に移転されることはなかった。また海外生産車種の移管に
おいても海外工場が主導的な役割をしていなかった。
2013/10/30
Y. K. Suh
84
8.2 本研究の理論的含意
• 1つ目は新しいフレームワークを使い知識移
転の流れを分析したこと
• 2つ目はマザー工場システムの議論を拡張し
たこと
• 3つ目は国内知識ネットワークとグローバル
知識ネットワークの関係性を見つけたこと
• 4つ目はグローバル知識ネットワークの形成
をダイナミックに分析したこと
2013/10/30
Y. K. Suh
85
8.3 実務的インプリケーション
• 1つ目は、知識ネットワークを構築する際は自
社の強みがどこにあるのか把握する必要が
あるという点
• 2つ目は、マザー工場システムとモデル工場
システムについて
• 3つ目は知識ネットワークで知識移転を助け
る組織を設立することで知識の流れを強化す
ることができる
2013/10/30
Y. K. Suh
86
8.4 今後の研究の方向性
• グローバル知識ネットワークにおける知識移
転の開始段階を分析する必要性
• 自動車産業の特殊要因を超えた一般的なグ
ローバル知識ネットワークのダイナミックな形
成に関する議論が求められる
• 海外拠点における知識創造をもっと詳細に扱
う必要性
2013/10/30
Y. K. Suh
87
ご清聴ありがとうございました。
徐寧教
赤門総合研究等453号室
ruiberd@gmail.com
2013/10/30
Y. K. Suh
88
2013 年度
博士学位論文
グローバル知識ネットワークのダイナミックス
徐寧教 Suh Youngkyo(東京大学経済学研究科経営専攻博士課程 )
目次
1.はじめに:問題意識 ...................................................................................................... 1
1.1.研究の背景 ......................................................................................................... 1
1.2.課題提起 ............................................................................................................ 3
1.3.研究の目的と分析対象 ........................................................................................ 4
1.4.本論文の構成 ..................................................................................................... 5
2.グローバル知識ネットワークのの分析視点 ................................................................ 7
2.1.多国籍企業の海外展開 ........................................................................................ 7
2.2.多国籍企業と海外生産 ...................................................................................... 11
2.3.日本企業の海外生産とマザー工場制 ................................................................. 15
2.4.知識移転と知識ネットワーク ........................................................................... 20
2.5.リサーチデザイン............................................................................................. 27
3.本国の知識とその移転可能性 ..................................................................................... 32
3.1.トヨタ自動車の生産システムとその移転可能性 ............................................... 32
3.1.1.トヨタ自動車の歴史 ................................................................................ 32
3.1.2.既存文献からみたトヨタ自動車生産システム .......................................... 40
3.1.3.移転可能性の分析 .................................................................................... 44
3.2.現代自動車の生産システムとその移転可能性 ................................................... 44
3.2.1.現代自動車の歴史 .................................................................................... 44
3.2.2.既存文献からみた現代自動車生産システム.............................................. 56
3.2.3.移転可能性の分析 .................................................................................... 62
3.3.比較と小括 ....................................................................................................... 63
3.3.1.両社の生産システム比較 ......................................................................... 63
3.3.2.移転可能性の比較 .................................................................................... 65
4.本国知識の海外移転 .................................................................................................... 68
4.1.天津一汽豊田における生産システムの移転とマザー工場制 .............................. 70
4.1.1.マザー工場制 ........................................................................................... 70
4.1.2.本国マザー工場:高岡工場 ...................................................................... 75
4.1.3.天津一汽豊田の概要 ................................................................................ 80
I
4.1.4.天津一汽豊田とマザー工場制 .................................................................. 85
4.1.4.1.高岡工場と天津泰達工場の比較 ...................................................... 85
4.1.4.2.マザー工場制の変化 ........................................................................ 86
4.2.北京現代汽車における生産システムの移転とモデル工場制 .............................. 88
4.2.1.モデル工場制 ........................................................................................... 88
4.2.2.本国モデル工場:牙山工場 ...................................................................... 91
4.2.3.北京現代汽車概要 .................................................................................... 94
4.2.4.北京現代汽車とモデル工場制 .................................................................. 99
4.2.4.1.牙山工場と北京工場の比較 ............................................................. 99
4.2.4.2.モデル工場制の確立まで ............................................................... 101
4.3.比較と小括 ..................................................................................................... 103
4.3.1.マザー工場制とモデル工場制 ................................................................ 103
4.3.2.移転可能性と移転方式 ........................................................................... 104
5.本国における知識ネットワーク ............................................................................... 108
5.1.トヨタ自動車の本国知識ネットワーク ........................................................... 108
5.1.1.トヨタの本国工場間の関係とその多様性 ............................................... 108
5.1.2.生産調査室:国内機能 ........................................................................... 113
5.1.3.GPC:国内機能 ...................................................................................... 117
5.2.現代自動車の本国知識ネットワーク ............................................................... 121
5.2.1.蔚山工場 ................................................................................................ 122
5.2.2.国内環境:現代自動車と労働組合 ......................................................... 129
5.2.3.生産技術研究所 ..................................................................................... 132
5.3.比較と小括 ..................................................................................................... 134
5.3.1.両社の本国知識ネットワーク比較 ......................................................... 134
5.3.2.本国環境と海外移転方式 ....................................................................... 137
6.生産システムのグローバル知識ネットワーク ........................................................ 140
6.1.トヨタ自動車グローバル知識ネットワーク .................................................... 140
6.1.1.生産調査室:グローバル機能 ................................................................ 140
6.1.2.GPC:グローバル機能 ........................................................................... 142
6.1.2.1.GPC のグローバル機能 .................................................................. 142
6.1.2.2.GPC とインド工場の事例 .............................................................. 144
6.1.3.分権的グローバル知識ネットワーク ...................................................... 146
6.2.現代自動車グローバル知識ネットワーク ........................................................ 151
6.2.1.生産技術研究所とグローバル工場標準 .................................................. 151
6.2.2.南陽研究所パイロットセンター ............................................................. 152
6.2.3.グローバル総合状況室 ........................................................................... 154
II
6.2.4.集権的グローバル知識ネットワーク ...................................................... 156
6.3.比較と小括 ..................................................................................................... 158
6.3.1.グローバル知識ネットワークの比較 ...................................................... 158
6.3.2.分権的ネットワークと集権的ネットワーク............................................ 160
7.海外生産拠点で生まれる知識とその移転 ................................................................ 162
7.1.トヨタ自動車の海外生産拠点の知識 ............................................................... 162
7.1.1.海外工場の限定的なマザー工場機能 ...................................................... 162
7.1.2.海外工場のマザー工場化 ....................................................................... 165
7.2.現代自動車の海外生産拠点の知識 .................................................................. 169
7.2.1. 海外拠点における生産システムの進化 ................................................. 169
7.2.2.海外工場同士の生産車種移管 ................................................................ 176
7.3.比較と小括 ..................................................................................................... 179
7.3.1.海外生産拠点から生まれる知識の分析 .................................................. 179
7.3.2.海外と本国の生産現場の関係 ................................................................ 180
8.結論 ............................................................................................................................ 183
8.1.分析の要約 ..................................................................................................... 183
8.2.本研究の理論的含意 ....................................................................................... 184
8.3.実務的インプリケーション ............................................................................. 186
8.4.今後の研究の方向性 ....................................................................................... 187
付録.調査リスト ................................................................................................................ i
参考文献・ウェブサイト .................................................................................................... ii
韓国語文献・ウェブサイト .............................................................................................. vii
III
参考文献・ウェブサイト 51
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