高分子材料を用いた振動低減・ 電磁波吸収による電子機器の 雑音対策法 近畿大学 工学部 機械工学科 教授 西村 公伸 連絡先 TEL:082-434-7000 e-mail:nisimura@hiro.kindai.ac.jp 1 提案技術の背景1 オーディオ機器における音質改善手法 1.インシュレータ:種々の形状・材質で実用化 2.ケーブル類(信号・電源) 3.オーディオラック・スピーカスタンド 等多種多様 ⇒インシュレータはアンプなどの「足」として使用 電気的効果は期待できないはずだが・・・? ・・・雑音低減効果あり! ⇒ 何が影響するか? 2 提案技術の背景2 内部雑音低減の原因 ⇒不要振動の除去や低減 電子機器における振動の影響 ・・・地磁気との相互作用 例:地磁気に垂直な5cmの導体、地磁気と 導体に垂直な方向に周波数10kHz、振幅 100 mの振動により両端に0.01mVの電圧 (-100dBのバックグランドノイズ)発生 音響機器での振動抑制が重要。 ⇒精密電子機器でも同様!? 3 Noise Level under 13k (E-Type 6) オーディオ機器の振 動によるアンプ出力 の変化 (13kHz) Noise L evel dB with insulators -40 E-Type 6 -60 -80 -100 -120 0 5000 10000 15000 20000 Noise Level under No Signal (E-Type 6) -40 signal 13kHz E-Prop Noise Level under 13k(No-Prop 3WP) -60 -80 -100 -120 0 5000 10000 f Hz 音響加振なし 15000 20000 Noise L evel dB Noise Level dB f Hz -40 No-Prop -60 -80 -100 -120 0 音響加振あり 5000 10000 15000 20000 f Hz 4 提案技術の背景3 インシュレータに高分子材料水溶液を併用 ⇒雑音低減・音質改善効果の向上 ⇒高分子材料水溶液の利用はできないか? オーディオ機器での応用 1.電源トランスへの応用 2.電源コードへの応用 3.ディジタル信号ケーブルへの応用 一般的には、上記1.の対策は電源分離、2.3. は高材質化。 何れもコストがかかり価格が大きく上がる。 5 従来技術とその問題点 オーディオ機器での高音質化: 1.高級材料:高級線材(9N、銀線)、銅の利用 2.高品質部品:コンデンサ、抵抗、真空管・・・ ⇒コストアップ 提案手法の利点 1.雑音対策の原理が全く異なる ⇒従来の手法では対策出来ない雑音に効果 2.低コスト 3.形状がフレキシブル 6 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術では解決し得ない、白色雑音(聴感 上)をさらに低減することに成功した。 • 従来は再生音において、奥行きや高さの変化が 再現できなかったが、音像の前後・上下の位置 の違いを聞き取れるまで性能が向上できた。 • 本技術は、市販のオーディオ機器に容易に適用 でき、水溶液であるため、封入容器により形状を 自由に変えられ、応用箇所が広い。 • 原価は非常に安く(1ℓ数百円)、利用によるコスト 上昇は非常に低く抑えられることが期待される。 7 雑音低減の原理 1.雑音の原因: ①機械的振動、②電磁波or外部雑音電流 2.高分子材料水溶液の動作: ①外部振動による高分子材料の加振と外部 磁界との相互作用による分極モーメントの回 転(推定) ②電源コードなどに流入する高周波交流電流 による磁界変動と分極モーメントの相互作用 による分子の回転(推定) 8 高分子材料溶液のモデル • PEGの分子構造 HO-(C2H4O)n-H H O O H • 単鎖結合:C-C-O H H O C C CやOのなす角度は約105度 H C C H • 結合は回転可能 ・・・大きく変形 H HH H • 単純な円筒でモデル化 • 両端に OH– と H+ l B v=d r 数値例:M = 10 D,l = 59m,r = 0.3 nm, d = 1 m m = 1.17×10-20 kg,B = 4.5×10-5 Wb/m2 反転運動の角周波数:約8Hz 9 ブルーレイレコーダーと アンプの電源コードに高 分子材料水溶液を封入し たチューブを巻く 機器間のアース電位の差 を低減 10 機器アース間の電位差 HDMIおよび電源コードにPEGチューブ使用の有無による比較 信号再生時 PEG Normal PEG-Norm (dB) PEG-Norm (V) Average -145.6 -143.5 -2.09 -6.10E-08 Variance 116.8 156.2 81.03 1.13E-13 0-10kHz -138.6 -135.1 -3.43 -1.10E-07 10k-20kHz -152.6 -151.9 -0.75 -1.18E-08 PEG-Norm (dB) PEG-Norm (V) 無信号時 PEG Normal Average -157.6 -158.4 0.79 1.04E-08 Variance 81.3 93.9 69.49 7.98E-14 0-10kHz -155.7 -155.4 -0.30 -2.10E-08 10k-20kHz -159.5 -161.4 1.88 2.06E-09 11 電源トランスでの使用例 ( b) 電源トラ ンス:パック 巻きつけ状 態 パック (a) 電源トランス:ノーマルの 状態 スピーカユニットへの適用 12 レシーバーアンプ 電源トランス:PEGパック 電源コード :PEGチューブ RCD-M37 0 0 -20 without PEG Mod. -40 Level dB Level dB -20 -60 -80 -40 -60 -80 -100 -100 -120 -120 0 5000 10000 f Hz 15000 20000 with PEG Mod. 0 5000 10000 f Hz 15000 20000 RCD-M37のPEGによる対策の効果 (1kHz信号入力に対する5kHz-15kHz帯域のノイズレベルの比較) State 1kHz Level 5 1kHz Level 8 No Signal Noise Levl Dif. -0.956 -0.866 -0.372 (dB) 13 ノートPCでの音像位置の比較 ビートルズ:イエローサブマリン ディスプレイ ボード+E-Type スピーカ キーボード ドラム ギター 平面図(前後の位置) 正面図(上下の位置) 波の音 ヴォーカル ディスプレイ スピーカ ボードなし キーボード 14 ノートPCでの音像位置の比較(ヘッドホン受聴) 高分子材料 水溶液封入 ボードあり ドラム ギター ビートルズ:イエローサブマリン 波の音 ヴォーカル 高分子材料 水溶液封入 ボードなし 15 想定される用途 • オーディオ技術以外に本技術の特徴を生かす ためには、 (高周波)振動の影響を受ける場 所で微細な電気信号を扱う場合、振動吸収に よる雑音低減が効果を発揮すると考えられる。 • 例えば、PCのハードディスク、DVDなどのドラ イバー、ヘッドホンのマグネット。 • 高周波数の電磁波吸収が期待できるので、ス マホのカバーに組み入れて音質改善。 • 振動吸収能力を利用して、車載用スピーカ、 カーステレオへの応用 16 電磁雑音の低減:高分子材料溶液 • 対象に応じて変形自在(小型 ・大型) • 振動源,電磁雑音発生源に 直接適用 • 特にディジタル電子機器に有 効 パック ディジタル機器 0 0 2000 4000 6000 8000 -20 0 0 2000 4000 6000 -80 -100 10000 AAC(without PEG) -40 AAC(with PEG) -60 8000 -20 AAC(with PEG) -40 10000 AAC(without PEG) -60 -80 -100 -120 -120 a) 1kHz 正弦波再生時 b) 5kHz 正弦波再生時 小型ディジタルオーディオでのPEG水溶液の効果 17 パソコンでの使用例 高分子材料溶液の利用 により,PCのハード ディスクアクセスが 2%程度高速化 40 デスクトップPC 39.8 測 定 速 度 [M B/ s] 39.6 39.4 39.2 39 38.8 38.6 38.4 ノーマル 電源 HD 電源+HD ベンチマークテストの結果 18 スピーカユニット装着状態 高分子材料パック マグネット背部の空間 スピーカユニット・マグネット ヘッドホンでの使用例 19 実用化に向けた課題 • 現在、水溶液であるので蒸発が懸念され、ポ リエチレンの容器で3年程度レトルトパックな どで5年程度は有効。さらに長期に使用する ための容器の検討が必要である。 • 液体で、人畜無害であるが、破裂などによる 機器の損傷(電子回路への影響)防止の検討 が必要。特に100度を超える高温箇所での使 用が難しい。 20 企業への期待 • 高分子材料水溶液の応用対象の提案:例え ば、スマホカバー、携帯カバーなどへの封 入・・・高音質化カバー。 • インシュレータとの併用でピアノなど(床に設 置して演奏する楽器:チェロ、コントラバス、バ スクラ、ティンパニ・・・)楽器に生じる不要振動 除去による音質向上を目指し、楽器メーカー との共同研究を希望。部分的に実証済み。 21 本技術に関する知的財産権 • • • • • 発明の名称 :吸収体 出願番号 :特願2010-226313 特許番号 :特許第5644003号 出願人 :近畿大学、KRYNA(株) 発明者 :西村公伸、伊奈龍慶 22 お問い合わせ先 近畿大学 次世代基盤技術研究所 (工学部キャンパス内) 社会連携センター 近村 淳 TEL 082-434 - 7000 FAX 082-434 - 7020 e-mail riit@hiro.kindai.ac.jp 23
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