27年度欧米6都市和牛プロモーション開催1.95 MB

16万人が来場したANUGAの和牛PRブース
クリスマス商戦に向けて日本の最高級商品を世界に発信!
世界6都市で一斉に和牛プロモーション
オールジャパン・オール畜産体制で日本産
畜産物の輸出振興を行っている日本畜産物輸
出促進協議会(中須勇雄会長、
菱沼毅理事長)
は、今年9月下旬から10月上旬にかけて、
欧米6都市で和牛の集中プロモーションを展
開した。
ミラノでは5ヵ所のレストランシェフの協力を得て和牛メニューを提案
昨年6月に輸出が開始された最重点地域の
EUは、世界最大規模の食品展示会ANUGA
の開催地「ケルン(ドイツ)」
、世界の金融・
情報発信をリードする都市「ロンドン(イギ
リス)
」、食がテーマの万国博覧会が開催され
日本館も設置された「ミラノ(イタリア)」
の3都市で実施。
観光都市オーランドの飲食関係者も興味津々
欧州とともに牛肉の一大消費地で、同じく
最重点地域であるアメリカは新たな需要拡大
を目指して南部フロリダ州の2都市(マイア
ミ、オーランド)でプロモーション。さらに
は今年3月に輸出が開始した「モスクワ(ロ
シア)
」でも見本市やレストラン等でPRを
行った。
本コーナーでは、これらの開催の模様を誌
上再録する。
ロンドンでは多くの著名シェフがブースに来場
熱弁を振るう講師と真剣な眼差しの来場者
ロシアでも熱気に包まれた
16万人が来場した会場エントランス
ブースの吊看板中央に「和牛統一マーク」を掲げ、
オールジャパンの和牛パビリオンとして運用
真剣な眼差しの聴講者
【ドイツ】世界最大規模の食品見本市「ANUGA」に
オールジャパンで和牛パビリオンを展開
国際食品見本市「ANUGA」が10月10日
利活用方法を正しく理解してもらえるよう、
から14日までの5日間、ドイツ連邦共和国
解説とカッティング・調理の実演、試食を織
のケルンメッセで開催された。この見本市は
り交ぜた構成により、5日間で計38回実施。
隔年で開催される世界最大規模の見本市。今
ブースには1万人以上が来場したが、約半数
回は108ヵ国から7063社が出展し生鮮食
にあたる5000人がセミナーを聴講した。
品 ほ か 加 工 品、 飲 料 な ど が 展 示 さ れ、
解説の部では、協議会の菱沼毅理事長がEU
192ヵ国から約16万人が来場した。
でも商標登録されている和牛統一マークをア
協議会は、JETROの協力を得て、世界各
ピールするとともに、南九州大学の六車三治
国の食肉輸出促進団体や民間企業が出展する
男教授が和牛肉の特徴とおいしさの秘密を説
食肉ホール内に和牛パビリオンを設置。ミニ
明した。部位ごとの和牛肉の特徴とカッティン
ステージを活用したセミナーを繰り返し実施
グ、適した調理方法の説明は、㈱ミートコン
するとともに、和牛を紹介するポスターの掲
パニオンの植村光一郎常務取締役が担当。サー
示や小冊子の配布、DVDの放映、和牛情報
ロイン、リブロース、ヒレ、かたロース、うで、
交換コーナーでの情報発信等を行い、各国か
らんいち、うちももを順次用いて実演した。
ら訪れる食品バイヤーに世界最高級牛肉であ
今回のANUGAは、先行してEUで販売展
る「日本産和牛」のPRを行った。
開してきた伊藤ハム㈱、
エスフーズ㈱、
スター
このうちセミナーは、日本産和牛の特徴と
ゼン㈱、全農、日本ハム㈱とともに、チーム
和牛の魅力を力説する菱沼毅理事長
カッティングと多様な部位の利活用方法は植村 和牛肉の特徴とおいしさの秘密を解説し
光一郎氏が担当
た六車三治男教授
セミナーの合間も多くの来場者が
情報交換にステージに詰めかけた
ショーケースには個体識別情報や枝肉格付結果を掲示
情報交換用机での意見交換
セミナー中はブース前の
通路に立見が大勢
ジャパンの一員として京都・香川・宮崎・鹿
和牛肉のPRに加えて日本・京都への観光と
児島の4産地からも生産者や食肉事業者、関
一体的なインバウンド消費も含めて訴えた。
係者が参加。産地を越えて資料配布や試食提
協議会が欧州の大規模な国際展示会に和牛
供を行うとともに、ステージでは郷土の趣向
パビリオンを設置したのは、昨年のSIAL(仏
を凝らした調理セミナーも実施した。
パリ)に続く2回目。南北アメリカやオセア
鹿児島県食肉輸出促進協議会は、肉用牛肥
ニアなどの牛肉輸出国やEU諸国に交じって
育農家の牧原保氏が農場の写真を見せながら
のナショナルパビリオン的な位置づけも来場
和牛の飼い方や個体識別などを説明した後、
者に浸透しつつある。実際にショーケースで
出汁の旨味を生かした日本料理のテイストを
立ち止まる来場者の声も「Oh! Kobe」から「I
当地の郷土料理・鶏飯(けいはん)をヒント
know Japanese WAGYU」 に 変 わった。
に考案した牛飯として紹介。㈱ミヤチクは、
EUでの和牛発信はまだまだ始まったばかり
全国和牛能力共進会の話題を織り交ぜなが
だが、着実に進んでいるといえる。
ら、肉汁を逃がさず焼いた「ホイル包み焼き
国を挙げて和牛をアピールしている姿勢を
ステーキ」を調理・提供した。讃岐牛・オリー
内外に示すためにも今後も継続して国際的な
ブ牛振興会は、欧州人に馴染みの深いオリー
展示商談会に出展していく必要がありそう
ブを飼料給与した牛肉の特徴をフランス人担
だ。その中で国として旗印を掲げたブース設
当者が現地の言葉で語りかけるとともにサー
置と最大ターゲットであるレストランへの着
ロインとモモの食べ比べを実施。京都府農林
実な浸透を目指しての活動の深化など多様な
水産物・加工品輸出促進協議会和牛部会は、
展開が求められよう。
①
●
①和牛食文化の双方向での理
解を唱えた㈱銀閣寺大西の
庭野友哉氏
②讃岐牛・オリーブ牛振興会
はサーロインとモモの食べ
比べを実施
③鹿児島県食肉輸出促進協議
会の牧原保氏(右)が和牛
の飼い方を説明
④㈱ミヤチクの横部顕然氏(右)
がホイル包み焼きステーキを
提案
③
●
(砺波 謙吏)
②
●
④
●
会場のOlympia London
会場内で一番の賑わいをみせた和牛ブース
和牛のおいしさに舌鼓する来場者
【イギリス】レストラン関係者へ
重点的に和牛の使い方を啓蒙
イギリス、ロンドンでは、10月5日から
取り扱いにあたっての留意点を説明した。
7 日 ま で の 3 日 間、「The Restaurant
ブースには2500人以上が来場。来場者は
Show」にPRブースを設置し、和牛セミナー
「和牛は噂に聞いており大変興味があった」
を開催した。
「高価ゆえ試したことが無かったが、前向き
同見本市は、生鮮食品、加工品から什器、
にメニューへの展開を考えていきたい」と口
調理器具に至るまで、レストランに関連する
をそろえた。
ものを一堂に集める。クリスマス商戦におい
同国におけるオールジャパンでの和牛プロ
て目玉商材を探すレストランオーナーやシェ
モーションは、平成26年6月にEU向け牛肉
フがイギリス全土から多く来場した。
輸出が解禁となって以降、今回で4回目。こ
ブースでは、㈱ミートコンパニオンの植村
れまでのPRを通じて日本産和牛の認知度が
光一郎常務取締役が和牛の高価なイメージを
一定の広がりを見せた一方で、販売を拡大さ
払しょくできるよう、効果的なカッティング
せるためには、現地系レストランのシェフに
方法や多様な調理方法を繰り返し披露した。
対する新規開拓が課題となっていた。ブース
また、現地の有名レストランで腕を磨いた経
には星付きレストランのシェフや有名キャス
験を持つシェフ2名ともコラボ。現地の価値
ターなどが多く来場し、課題解決に光明が見
観も取り入れながら調理実演を行い、和牛の
えた見本市であった。
①
●
①開催2日目は特設ステージでのセミナーも実施
②特設ステージにも多くの来場者がつめかけた
③若手料理人の登竜門コンテストで優勝経験のある
Tim Anderson氏
④星付きレストランシェフDaniele Codini氏(日本
料理にも精通)
(大場 義和)
③
●
②
●
④
●
【イタリア】現地の調理方法で和牛を味わう
―和牛フェアinミラノ―
多くの取材陣が訪れた記者発表
イタリア・ミラノでは、食をテーマとする
味を合わせるなど、赤身肉を食べなれたイタ
万博の開催に合わせ、9月19∼25日の1週
リア人が食べやすいよう工夫が凝らされてい
間、ミラノを代表するレストラン5店舗で和
た。その結果、実際に食した人にアンケート
牛肉フェアを開催した。現地のシェフにイタ
を取ったところ約9割が「とてもおいしい」
リアの伝統的な牛肉料理と融合した和牛メ
または「おいしい」と回答した。
ニューを開発してもらい、現地の人々や観光
また、
フェア開催期間中、
1店舗ではスター
客に和牛のおいしさを知ってもらおうという
ゼンインターナショナル㈱の江口和男氏によ
もの。
るカッティング、調理実演が行われ、しゃぶ
フェアに参加した5店舗はミシュランの星
しゃぶといった日本の伝統的な牛肉料理も紹
付きや高級ホテル
「パークハイアットミラノ」
介された。
内のレストランなど、いずれもイタリアの著
フェア終了後には、参加した5店舗のシェ
名なリストランテ。提供されたメニューはカ
フを招いて表彰式が行われ、ミラノのみなら
ルパッチョやタリアータ(焼いた牛肉を薄く
ずローマ、トリノからも多くのメディアが参
切り、野菜を添えたイタリアではポピュラー
集し、和牛のおいしさを広く報じた。
(工藤 憲一郎)
な料理)
、ラビオリなどで、和牛の甘みに酸
①
●
②
●
③
●
④
●
①
「和牛のたたき」を作るMio-Park Hyattのアン
ドレア シェフ
②Innocenti Evasioniのトマーゾシェフが調理し
た「和牛のラビオリしゃぶしゃぶ風」
③「しゃぶしゃぶ」を味わう参加者
④ミラノ唯一の3つ星レストランCraccoは「和
牛の煮込み」を披露
⑤表彰式の様子
⑤
●
オーランド会場でのセミナーの様子
【アメリカ合衆国】フロリダ半島の2ヵ所で
和牛のおいしさをアピールしたセミナーを実施
米国向けの牛肉輸出量は2014年実績で
マイアミでは対象を変えて2部構成でセミ
前年比45.2%増と著しく伸びており、TPP
ナーを実施
大筋合意により15年目に牛肉輸出の関税が
マイアミ会場は10月5日にレストランを
撤廃(それまでの間、無税枠を20∼40倍に
兼 ね 備 え た 料 理 学 校(Miami Culinary
拡大)されることから、今後、ますます輸出
Institute=MCI)を会場に、前半(第1部)
増が期待できるマーケットである。
は高級レストランのシェフを目指す料理学校
米国ではこれまで、2013年10月にニュー
の学生約70人を対象に、後半(第2部)は
ヨークで日本酒とコラボレーションしたセミ
マイアミの高級レストランシェフ45人を招
ナーを実施、2014年1月はサンフランシスコ
き、入れ替え制でセミナーを行った。
で開催された西海岸最大級の食品展示会
セミナーでは、和牛統一マークの意義、ト
「Winter Fancy Food Show」に出展。2015
レーサビリティや格付制度の紹介、和牛の肉
年2月にはニューヨーク、アトランタでシェフ
質の特徴やおいしさの秘密の講演を実施。実
を対象としたセミナーを実施してきた。
演ではサーロインとウチモモという対照的な
今回は米国屈指の高級リゾート地ながら和
部位を使ったデモンストレーション、試食提
牛がまだ浸透していないフロリダ半島の2ヵ所
供を行った。
(マイアミ・オーランド)でセミナーを開催した。
冒頭、日本畜産物輸出促進協議会の事務局
和牛の特徴や取り扱い方法について真剣に聴講するMCIの学生。MCIは全米から高級レストランのシェフの卵が集
まる(左)しゃぶしゃぶを体験する学生たち(右)
試食提供したサーロインステーキ
和牛香について解説する松石 参加者からの質問に答える農畜
教授
産業振興機構の木下雅由審査役
マイアミ会場の第2部に参加した現地の高級レストランシェフ
長を務める南波利昭中央畜産会副会長が和牛
統一マーク、トレーサビリティシステムなど
を紹介。その後、日本獣医生命科学大学の松
石昌典教授が、和牛のおいしさを決定づける
「和牛香(わぎゅうこう)
」や、どのような条
件で和牛香が最も強く感じられるか、自らの
研究内容に基づき分かりやすく解説した。松
石教授は、健康志向の高まりから脂肪を敬遠
する傾向のある米国マーケットにも和牛を受
け入れられるように、和牛肉は和牛香によっ
て過食を押さえられ、少量で満足できる優れ
江口氏のスライサー実演。赤身
主体のアメリカンビーフと違い
融点が低い和牛の取り扱い方法
やスライスしたあとの盛りつけ
方を具体的に解説した
た食材であるということをアピール。少量
(Small)で満足(Satisfactorily)するスマー
ト(Smart)な食べ方(Eat)を「Yes,ES!」
のキャッチコピーで提唱した。
続いてスターゼンインターナショナル㈱の
江口和男氏がスライサーを用いてしゃぶしゃ
ぶ用のスライス肉を盛りつけ、ポン酢とごま
オーランドはフロリダ半島最大級の食の展示
だ れ の 2 種 類 の た れ で 味 わって も らった。
会に出展
サーロインは手切りのステーキを提供。ウチ
オーランド会場は10月6日から3日間開
モモはさく取りして手切りで薄切りし、炙り
催された「Florida Restaurant & Lodging
寿司を披露した。
Show」へブース出展。専用のステージを活
用して、松石教授の講演と江口氏によるカッ
ティングデモ・試食提供を複数回実施した。
この展示会はフロリダ半島からレストラン
関係者が多く集まるプロ向けの食品展示会
で、日本食材も数多く出展されていた。和牛
ブースのセミナーは毎回立ち見がでるほどの
盛況で、会期中1500人がブースに来場。来
場者の多くは今後、日本の和牛を扱いたいと
いう意欲をもっており、新たなエリアでの和
牛の浸透が期待できるセミナーとなった。
(岩東 香織)
総合食品見本市「PIR2015」で
日本畜産物を解説する菱沼理事長
「PIR2015」でしゃぶしゃぶの試食に関心が集まった
【ロシア】輸出解禁間もないモスクワで
牛肉ほか日本産畜産物をPR
今年3月に牛肉輸出が始まったロシア。正
ステーキを試食しながらセミナーを行った。
しい知識の普及が必要なことから、首都モス
一方、高級スーパーの「アズブカ・フクー
クワ市内で日本の食肉輸出事業者とともに食
サ」や「エリセーエフスキー」
、赤の広場に
品展示会やレストランでの和牛セミナーを実
面した高級百貨店「グム」、会員制業務用大
施するとともに、食肉卸売業者や小売店(百
型スーパー
「メトロ」などハイクラスの小売
貨店・スーパーの精肉売場、食肉小売専門店)
店舗も巡回し、和牛をPR。このうち、モス
を巡回して、牛肉をはじめとする日本産畜産
クワを中心に店舗展開する
「アズブカ・フクー
物のプロモーション活動を展開した。
サ」では、すでに日本産和牛を取り扱ってい
訪れた展示会は、ロシア最大級の総合食品
るが、本部の精肉バイヤーと精肉売場のチー
見 本 市「PIR2015」
(10月5∼8日 開 催 )
。
フに対して週末のバーベキュー需要に向けた
日本産牛肉を取り扱う出品ブース(エスミー
売場・商品づくりなどを提案した。
ト)で和牛をはじめとする日本畜産物の解説
国際的にとかく話題の多い国だが、「今回
するミニセミナーを行った。また、日本食レ
の活動を通して分かったことは、ロシアには
ストラン「SEIJI」やステーキハウス「バイソ
富裕層が確実に存在し、潜在需要の大きさを
ン」では、現地の卸売業者やその得意先を対
実感した」
(菱沼毅・協議会理事長)という。
象に、実際に日本産和牛を使ったすき焼きや
(近田 康二)
①
●
③
●
②
●
④
●
①「すき焼き」のデモンストレーションを交
えたセミナー(日本食レストラン「SEIJI」で)
②現地の卸売業者やその得意先の質問に答え
る菱沼理事長
③日本産和牛を取り扱っている「アズブカ・
フクーサ」
④精肉担当者に販売方法などを提案
⑤日本食レストラン「ノブ」のシェフを訪問
してPR
⑤
●