- 1 - 2006 年度国際機構論ガイダンス Ⅰ.この授業のねらい 国際機構

2006 年度国際機構論
ガイダンス
Ⅰ.この授業のねらい
○国際機構に関する国際法制度を学ぶこと。
○国際機構にかかわる国際社会の諸問題の知識を身につけ考え方を養うこと。
新聞の国際面がわかるようになる。
公務員試験の国際関係に対応できる?
Ⅱ.講義の仕方と受講上の注意
レジュメ配布・口述
単位認定方法・・・・・・試験6割・レポート4割(2回課す予定)の総合点(予定)
適宜アンケートを実施し、受講者の意見を取り入れたいと思います。
※旧カリキュラム適用学生(03J以上)……本授業と「武力紛争と法」
(金5校時)が旧
カリキュラムの「国際機構論」(4単位、公共政策コースのみ選択科目)の読替科目
になります。
Ⅲ.授業の構成と概要(あくまで予定です)
第一部 国際機構(国際連合が中心)の仕組み・法制度
国際機構の歴史、種類、組織、意思決定、加盟国の地位、地位、権限など
内容は制度論や法律論中心(抽象度が高い)
。
第二部 国際機構の活動
国連による紛争の平和的解決、国連の集団安全保障、国連の平和維持活動、軍縮・軍
備管理、人権の保護、国際経済、開発援助など
内容は具体的(第一部よりわかりやすい)
。
01・03年度に担当した主題科目「国際化する社会・国際連合の諸問題」と重複します。
国連の集団安全保障・平和維持活動は「武力紛争と法」と重複する部分があります。
おまけ 地域的国際機構について(時間があれば。EU、ASEANなど)
Ⅳ.テキスト・参考書
◎テキスト――なし
◎条約集(六法に相当)――小田滋・石本泰雄編『解説条約集』
(三省堂、第 10版)<
必ず購入のこと>(2年次の授業で使用した第 10版で可。最新版は 2006年版)
香西茂・安藤仁介『国際機構条約・資料集(第2版)
』
(東信堂)
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2006 国際機構論
◎参考書(※は指定参考書)
・入門書
家正治編『講義 国際組織入門』
(不磨書房)※
家正治他『国際機構(第3版)
』
(世界思想社)
横田洋三編『国際機構入門』
(国際書院)
・概説書
横田洋三編『新版 国際機構論』
(国際書院)※
最上敏樹『国際機構論(第2版)
』
(東大出版会)
・国際機構法に関する入門書・概説書
横田洋三編『国際組織法』
(有斐閣)
佐藤哲夫『国際組織法』
(有斐閣)
・国際法の判例集集
山本・古川・松井編「国際法判例百選」
(ジュリスト別冊・有斐閣)
田畑・竹本・松井編『判例国際法』
(東信堂)
・その他参考書
国際連合広報局『国際連合の基礎知識』
(世界の動き社)
明石康『国際連合』
(岩波新書)
-----------------------------------------------------------------------------------------◎担当教官のプロフィール
湯山智之(ゆやまともゆき) 法学部助教授
1969年4月・愛媛県今治市生まれ
今治西高校・東北大学卒業 東北大学大学院修了
1999年4月・香川大学赴任
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第Ⅰ講 国際機構の歴史と概念
国際関係の緊密化と国際協力の必要→共通の利害関心のある事項について国際機構(国
家による団体)を設立して処理
(1)国際機構の歴史
19世紀
・国際河川委員会 河川の自由航行と委員会による航行規則制定、河川の監視、罰金徴
収など(1831年ライン川、1856 年ドナウ川)
・国際行政連合 共通の問題(専門的・技術的)について国際会議を開催 常設の事務
局を設置……1865 年万国電信連合(現・国際電気通信連合)
、1874 年一般郵便連合
(現・万国郵便連合)
、1875 年国際度量衡連合、1883 年工業所有権保護同盟、1886
年国際著作権同盟、1890年国際鉄道運送連合など。
20世紀……普遍的集団安全保障機構の成立
国際連盟(League of Nations)・・・・・・第一次大戦後ベルサイユ条約により設立(1920
年)
独立の機関を持った
・総会……定例は年1回開催。
・理事会……8か国→15か国で構成。総会と同じ任務・権限を持つ。
・事務局……事務総長の独立の権限。事務局職員に国際公務員の地位。
戦争を禁止 違反国には経済制裁(拘束力なし) 全会一致制
国際労働機関(ILO)……ベルサイユ条約により設立。総会・理事会・事務局を持つ。
常設国際司法裁判所(PCIJ)……国際連盟により創設(1921年)
国際連合(United Nations, UN)の成立(1945年)
第二次大戦中の連合国の戦後構想(41 年8月・大西洋憲章)→ダンバートン・オ
ークス会議(44年8月)→サンフランシスコ会議(45年)で国連憲章を採択
(2)国際機構(international organization)の概念
国際機構の定義=「政府間国際機構(intergovernmental organization)
」
(条約法条約
2①(i)など)
非政府組織(NGO)
(赤十字国際委員会、アムネスティ・インターナショナルなど)と
は区別される。
学説による一般的な定義
①国家が(主要な)構成員である
②国家間の合意(条約)に基づく設立
③組織の目的実現のために一定の(限定された)機能の遂行(機能的団体)
④常設的機関を保持し構成国から区別された固有の意思の形成
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2006 国際機構論
国際機構の分類
①普遍的国際機構と地域的国際機構
普遍的国際機構……国連と国連の専門機関を含めて国連ファミリーという。後述)
、世
界貿易機関(WTO)など
地域的国際機構……米州機構(OAS)
、アフリカ連合(AU、前身はアフリカ統一機構
(OAU)
)
、欧州連合(EU、経済は欧州共同体〔EC〕
)
、全欧安保協力機構(OSCE)
、
アラブ連盟、東南アジア諸国連合(ASEAN)
、カリブ共同体(CARICOM)
、西ア
フリカ経済共同体(ECOWAS)など
②一般的(包括的)国際機構と専門的国際機構
一般的国際機構……国連、OAS、AUなど
※国連の目的――国連憲章1①∼④参照
専門的国際機構
政治的・軍事的分野……北大西洋条約機構(NATO)
、OSCEなど
経済的分野……IMF、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)、石油輸出国機構
(OPEC)
、アジア開発銀行(ADB)など
社会的分野……WHO、ILOなど
特殊な国際機構
※司法的国際機構……国際司法裁判所、国際刑事裁判所、欧州人権裁判所、国際海洋
法裁判所、投資紛争解決センター(ICSID)
条約の履行確保機関……人権条約(自由権規約委員会など) 地球環境条約の締約
国会議(オゾン層保護ウィーン条約、地球温暖化防止条約など)
※国連の専門機関
通貨・金融分野……国際通貨基金(IMF)
、国際復興開発銀行(世界銀行)と世銀グル
ープ〔国際開発協会(IDA)
、国際金融公社
(IFC)
、多数国間投資保証機関
(MIGA)
)
〕
社会分野……ILO、世界保健機関(WHO)
教育・科学・文化分野……国連教育科学文化機関(UNESCO)
、世界気象機関(WMO)
、
世界知的所有権機関(WIPO)
、世界観光機関(UNWTO)
農業分野……国連食糧農業機関(FAO)
、国連農業開発基金(IFAD)
交通・通信分野……万国郵便連合(UPU)
、国際電気通信連合(ITU)
、国際民間航空機
関(ICAO)
、国際海事機関(IMO)
工業開発分野……国連工業開発機関(UNIDO)
準専門機関……国際原子力機関(IAEA)
国連と専門機関の連携の内容――①専門機関の政策・活動を調整するため国連が勧告を
する権限(憲章 58 条。経社理について 62 条①・63 条②) ②国連による専門機
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関の行政的予算検査権(17条③) ③報告受理の権限(64条①)
連携協定の締結(憲章 63①)……①∼③に加えて、相互の代表者の派遣、専門機関の
会議における国連の議題の提案権、専門機関による安保理の強制措置の実施などを
取り決め。
※国際金融機関(IMF・世銀グループ)の自律性の強さ……国連の勧告権を制限し、
行政的予算検査権も認めず。国連による議題の提案も考慮するにとどまる。
その他国連と関係のある国際機構……世界貿易機関(WTO)
、国際海底機構(ISA)
、
国際海洋法裁判所(ITLOS)
、化学兵器禁止機関(OPCW)
、国際刑事裁判所(ICC)
など
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2006 国際機構論
第Ⅱ講 国際機構の組織構造
(1)国際機構の設立と終了
設立――通常は条約(憲章。設立文書・基本文書)によって設立される
条約によらない設立……GATT・OSCE・ASEANなど
国際機構主導の下での国際機構設立……IAEA(国連)
、世銀グループ(世銀)
終了
(解散)
……東南アジア条約機構
(SEATO, 1954-77)
、
ワルシャワ条約機構
(1955-91)
承継される場合……国際連盟→国連(総会で機能・活動・資産の承継に関する決議を
採択。連盟との間で資産等の承継協定を締結) ★南西アフリカ事件勧告的意見
(2)国際機構の内部機関――総会・理事会・事務局
①総会……審議機関。全加盟国(の代表)を構成員とする。
大会議(UPU)
、全権委員会議(ITU)、世界気象会議(WMO)、労働総会(ILO)
、
総務会(世銀・IFAD)
。
通常総会は年1回開催。2年毎(UNESCO、FAO、IMO、WIPO)
、3年毎(ICAO)
、
4年毎(ITU)
、5年毎(UPU)も。
権限=通常は最高意思決定機関。具体的な年間活動計画の承認、設立文書改正、予算・
決算の承認、加盟や除名の承認、理事国の選出、他の国家や国際機関と締結する協
定の承認など
②理事会……執行機関。一部の加盟国からなる。
安保理・経社理・信託統治理事会(国連)
、
管理理事会(ITU、UPU)
、執行理事会(WHO、
UPU、WMO)
、執行委員会(UNESCO)
理事国選出は総会の選挙による場合が多い
(ポストが地理的に配分されることが多い)
が、常任理事国(国連安保理)や出資(割当)額による場合(IMF、世銀)
、実績
を考慮する場合(ICAO、IMO、IAEA)も。
③事務局……総会・理事会の監督の下で補佐的・日常的業務を遂行する。機構の組織・
財政の管理、会議の運営、予算案や活動計画案の作成、調査・研究、情報収集など。
職員=国際公務員の地位(独立性・国際性)を有する(例・国連憲章 100)
。職務に従
事する間必要な特権免除(機能的免除)を与えられる(例・国連憲章 105②――詳
細は国連特権免除条約、専門機関特権免除条約)
。
待遇……国連ファミリー(国際金融機関を除く)では採用・勤務条件・給与など共
通の基準による。
身分保障……雇用に関する苦情は国連行政裁判所、ILO行政裁判所(ILOほかの専
門機関)で審理される。
事務局の長(行政職員の長)=事務総長(Secretary-General)
。ILO・WHOは事務
局長(Director-General)
、IMFは専務理事(Managing Director)
、世銀は総裁
(President)
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(3)国連の主要機関
①総会
予算・分担金の決定(憲章 17)
、理事国(安保理非常任理事国・経社理)の選挙(23
①・61①)
新規加盟の承認・事務総長の指名(憲章4②・79。安保理の勧告に基づく)
平和及び安全の維持に関する権限(憲章 11) 平和的調整措置(憲章 14) 国際協
力の促進(憲章 13) 一般的な権限(憲章 10)……いずれも勧告
実質審議は下部の委員会で――第一(軍縮・安全保障)
、第二(経済・財政)
、第三(社
会・人権・文化)
、第四(政治・非自治地域)
、第五(行政・予算)
、第六(法律)
②安全保障理事会(安保理)
常任理事国5か国(米英仏中ロ)
・非常任理事国 10か国(任期2年)
(憲章 23)
非常任理事国の配分=地理的配分(西欧その他2、東欧1、ラテン・アメリカ2、
アジア2、アフリカ3)
国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を負う(憲章 24①)
安保理の任務(憲章 24②)――紛争の平和的解決(憲章6章) 平和に対する脅威・
平和の破壊・侵略行為に対する強制行動(経済制裁・軍事行動、憲章第7章) 地
域的取極・機関による紛争の平和的解決・強制行動(憲章第8章)
決定は加盟国を拘束する(憲章 25)
③経済社会理事会(経社理)
54理事国(任期3年)
(憲章 61)
経済・社会・文化・教育・人権などの問題についての国際協力の推進など(憲章 62)
④信託統治理事会(活動停止)
(憲章第 12・13章)
⑤国際司法裁判所(ICJ)
国連の主要な司法機関(憲章 92) 勧告的意見(憲章 96)
ICJ規程=憲章と一体 規程当事国=国連加盟国(憲章 92・93①。ただし 93②)
裁判官(15名)の選出(ICJ規程4以下)――安保理と総会で選挙(規程 10)
⑥事務局
ニューヨーク(その他ジュネーブ、ウィーン、ナイロビに主要事務局あり)
国連の運営に関する事務
職員=国際公務員としての地位(独立性=憲章 100①②)
高級職員(事務総長・事務次長・副事務総長・事務次長補)
、幹部職員(局長・部長。
D-2∼1)
、専門職員(P-5∼1)
、一般職員(G-7∼1。事務職員、現地採用が多い)
採用の原則(憲章8・101)
待遇は職員規則(1952年総会決議 590)
・職員細則や雇用契約等による
特権免除(憲章 105)→詳細は国連特権免除条約
身分保障……国連行政裁判所によるコントロール
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2006 国際機構論
ICJによる判決の審査(審査請求委員会の要請による勧告的意見手続。87年ヤキ
メツ事件など)→95年廃止
事務総長――行政職員の長(憲章 97・98) 総会・安保理・経社理などから委託され
た任務(憲章 98) 平和の維持に関する任務(憲章 99)
※国連総会と安保理の関係
総会の権限に対する制約――憲章 11②第二文、12①
発足当初は 12①を厳格に遵守→その後逸脱する実行
平和のための結集決議(1950年)……憲章違反との批判
1960年代以降安保理と並行して総会が審議し決議採択(南アのアパルトヘイト、ナミ
ビア問題、キプロス問題など。70年代からは中東問題、南ローデシア問題など)
※1968 年国連法律顧問の見解――12①の禁止は安保理が「現にその時点において遂
行している間」に限られる
★ICJ国連経費事件勧告的意見(1962年)……国連総会による PKO の設置・派遣が争わ
れる。安保理の責任は「主要な」責任(排他的責任ではない)であり、11②の「行動」は憲
章第7章下の強制行動とし、派遣の法的根拠=憲章 14 とした。
★ICJパレスチナにおける壁建設の効果事件勧告的意見(2004 年)……12①の解釈は
発展していて、総会と安保理が同一の問題を並行して扱う実行が受け入れられていることを
認定し、パレスチナ問題に関する総会の活動は 12①に合致するとした。
(4)国連機関の補助機関(subsidiary organ, 下部機関)
総会(憲章 22)――主要機関については資料参照。その他、政治的機関(植民地独立付
与委員会、宇宙平和利用委員会など)
、行政的機関(国連行政裁判所や合同監査団な
ど)
、法律的機関(国際法委員会や国際商取引法委員会)
。
安保理(憲章 29)――PKO(平和維持活動)
、制裁実施委員会、旧ユーゴ・ルワンダ国
際刑事裁判所(ICTY・ICTR)など
経社理(憲章 68)――機能委員会(人権委員会〔廃止〕
、婦人の地位委員会、犯罪防止
刑事司法委員会、持続可能な開発委員会など)
、地域経済委員会など
★ICJ・国連行政裁判所の補償裁定の効果事件勧告的意見(1954年)
★ICTY上訴裁判部・タディッチ事件管轄権判決(1995 年)……安保理自身が司法機能を
有していないから設置できないということはなく、平和と安全の維持というその機能を行使す
るため補助機関として裁判所を設置できる。
自立的補助機関(UNHCR、UNICEF、UNDP、UNCTADなど)
独自の意思決定(執行理事会) 財源の自律性(各国の任意拠出が主) 予算・人事
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の独立性 単独で国家や他の国際機関と協定を締結
自立的補助機関は国連とは独立の法主体か否か議論あり。
☆おまけ……外務省国際機関人事センター< http://www.mofa-irc.go.jp/>
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2006 国際機構論
第Ⅲ講 国際機構の意思決定
(1)代表と定足数
代表――政府代表
特殊な代表制――ILO(1国4名。2名が政府代表・1名が使用者団体・1名が労働者
団体の代表) ほかに WHO、WMOなど。
個人がメンバーとなる機関……国連国際法委員会、国連人権保護小委員会、ILO条約適
用専門家委員会、EU/EC・欧州議会など
定足数―― 一般的には過半数
国連総会――討論については 1/3、決定については過半数(総会手続規則 67)
安保理――定足数の規定なし(ただし憲章 28)
(2)表決方法(1国1票が原則)
①全会一致――国家主権の尊重(同意なしに拘束されない)から。伝統的方法。
国際連盟規約5①(手続事項・加入承認等は例外)……紛争当事国は除外(規約 15⑩)
②多数決制
単純多数決(過半数)と特別多数決(過半数以上)
原則=過半数 重要事項(加盟、財政、対外事項など)=特別多数決が多い。
国連総会――重要事項(2/3)とその他の決定(過半数)
(憲章 18②)
※重要事項か否かの決定は過半数
経社理は単純多数決(憲章 67) 憲章改正は特別多数決(全加盟国の 2/3)
(憲章 108)
ILO――財政/条約・勧告の採択(2/3)とその他(過半数)
(ILO 憲章 13②・19②、
17②)
WIPO――原則(2/3)
・知的所有権に関する国際協定の管理(3/4)
・国連との連携協
定の承認(9/10)
(WIPO設立条約6③(d)∼(f))
ICAO――原則(過半数)
・加入承認(4/5)
・条約改正(2/3)
(シカゴ条約 48(c)・93・
94(a))
※特定多数決――割合ではなく票数が可決の条件(国連安保理)
③加重投票制――1国1票ではなく一定の基準により加盟国に異なる票数を割り当てる
方式
IMF・世銀グループ――割当額・出資額に応じて表決権数を配分(IMF協定 12⑤(a)、
IBRD協定5③(a))
加重投票制の意義……主権平等原則の修正(形式的平等から機能的平等へ)
④拒否権(安保理)――特定の加盟国の投票行動に議決の成立を阻止する効果を与える
非手続事項……5常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成票(憲章 27③)
手続事項……拒否権の対象外(憲章 27②)
。ただし、手続事項とする決定も非手続事
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項に含まれる(二重拒否権)
※棄権は決議の成立を妨げない(慣行。ICJナミビア事件勧告的意見も確認)
※欠席の扱いは議論あり……朝鮮国連軍派遣決議(1950年。ソ連が欠席)
紛争当事国の棄権は6章下の決定に限られる(憲章 27③但書)
。
拒否権制度の意義……歴史的経緯(第二次大戦における五大国の主導的役割)と国連
の大国主義
⑤その他の特殊な表決制度
IFAD(加盟国を先進国、産油国、途上国の3グループに区別し、各グループに 600
票を割り当て、各グループ内で配分。表決は原則過半数)
EC・閣僚理事会(EC条約 205)
国際海底機構・理事会(実質問題について 2/3。ただし理事会を構成する①深海底鉱
物の消費国または輸出国・②深海底活動への投資国・③深海底鉱物と同じ鉱物の輸
出国・④途上国・⑤地理的配分で選出された国の各グループ内で過半数の反対がな
いことが条件。国連海洋法条約第11部実施協定附属書第3節)
※実際の国際機構の議決にあってはコンセンサス方式がよく用いられる。
(3)国際機構の決議の効力
国連総会決議……憲章で認められた事項(加盟承認、権利の停止、除名、事務総長選挙、
補助機関設置、予算、手続規則制定、職員規則採択など)を除き拘束力はない。
※サンフランシスコ会議でのフィリピン提案(総会への立法権限付与)の否定
法原則を宣言する決議あり……憲章の解釈、すでにある慣習法(現行法、lex lata)の
定式化・確認 新たな原則の表明(立法論、lex ferenda)
拘束力の説明……合意による拘束 ソフトロー理論 慣習法化による説明
安保理決議……拘束力(憲章 25)の範囲について論争(憲章第7章下の強制措置の決定
に限られるか否か)
★ICJ ナミビア事件勧告的意見(1971 年)……一般的拘束力説を採用(25 条が 24
条のすぐあとにある。7章下の措置の決定に限定すれば 48・49条が無意味になる)
ICAO、WHOなどの採択する技術規則……異議を表明しない限り拘束する(opt out方
式または contract out方式。シカゴ条約 37・38、WHO憲章 22)
※国際捕鯨委員会(IWC)の付表の修正と異議申立て(国際捕鯨取締条約5)
1979 年インド洋サンクチュアリ設定 82年商業捕鯨モラトリアム(実施は 86 年から。日本
は異議を申立てるも 86年撤回) 94 年南氷洋サンクチュアリ設定(日本はミンククジラに
ついて異議申立て)
ILO、UNESCO、WHOなど――採択した条約・勧告の履行についての加盟国の報告義
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2006 国際機構論
務(ILO憲章 19⑤⑥、UNESCO憲章8、WHO憲章 62)
EC――理事会等の議決……規則・指令など(EC条約 249)
(4)国際機構の財政
国際機構の収入
・分担金……もっとも一般的。加盟国に割り当て(支払能力=国民所得を基礎とするも
のが多い……国連、ILO、FAO、WHO、UNESCO、UNIDOなど)
・自発的拠出金……信託基金。UNDPなど国連の補助機関の大半の財源。92年に設立
された PKO留保基金。国連の運転資本基金(回転基金)など。
・出資……世銀グループ(脱退・除名の際には返還される)
その他――課税(EC)
、営業収入(世銀などの貸付利子。国連や専門機関の出版事業・
切手販売)
、借入・起債(国連では 61-65年発行。ほかに世銀)
、寄付・贈与
国連の財政――総会が決定(憲章 17) 会計期間=2暦年
通常予算
各国の国民総生産を推計して算出(3年毎に算出方法を改訂。最初は単年度の国民所
得→92-94年分担金は10年間の平均→01-03年分担金は6年間の平均と3年間の平
均の平均)→調整
負担の下限――最低負担 0.001% 一人当たり所得の低い国・累積債務国には軽減措
置。後発開発途上国も配慮(上限 0.01%)
負担の上限――国連発足時米国の分担率約 40%(算定では約 50%)→1948 年最高負
担を 1/3 に(57年に 30%、72年に 25%、2000年に 22%に引き下げ)
。
決定手続――事務総長原案→行財政諮問委員会(ACABQ)の審査→総会第5委員会
→総会の承認
特別予算(PKO予算。ほかに国際刑事裁判所特別予算)
平和維持活動の負担方式は様々(通常予算、関係国負担、自発的拠出金など)
当初の PKOに対するソ連・仏等の拒否と分担金滞納→60年代の PKOは関係国の
負担や自発的拠出金→70年代から特別予算方式に
PKO特別分担率(途上国を軽減し、その分を常任理事国が負担)
国連の財政赤字と滞納問題(03 年末で通常予算について 66 か国・4 億 4200 万ドル。
PKO経費の滞納は 11億ドル)
米国の滞納が大きい(約6割)――80年代滞納と国連に対する政策要求・行財政効率
化要求(84年外交関係授権法=PKO予算は 25%まで/ 85 年カセバウム修正=国
連・専門機関で加重投票制を導入しなければ20%以上の負担はしない)→99年ヘ
ルムズ・バイデン法(通常予算負担率22%・PKO予算分担率 25%などの条件をみ
たせば段階的に滞納金を支払う)
アナン事務総長(97年∼)の組織改革――通常予算の前年度比5%削減、事務局ポス
ト(約1万)の1割削減、国連財源確保のための回転資金創設、結果重視型予算等。
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第Ⅳ講 国際機構の加盟国の地位
(1)加盟
原則は国家
例外――国連…ソ連崩壊前の白ロシア〔現ベラルーシ〕
・ウクライナ/独立前のインド・
フィリピン(すべて原加盟国)
地域や国際機構の加盟の例――WTO(香港・台湾・ニウエ・クック諸島・ECなど)
UNESCO(準加盟国。英領ヴァージン諸島・ケイマン諸島・マカオなど) FAO
(EC) WHO(クック諸島・ニウェ。準加盟国としてプエルトリコ・トケラウ)
加盟の要件と手続
国連――要件=国家であること、憲章義務の受諾、憲章義務履行の意思、能力、平和
を愛好すること(憲章4①) 手続=安保理の勧告に基づいて総会が承認(憲章4
②)
★ICJ国連加盟承認条件事件勧告的意見(1948 年)……憲章4①の要件は網羅的。
★ICJ国連加盟承認に対する総会の権限事件勧告的意見(1950年)……安保理の勧告
なしに総会が加盟を承認することはできない。
→1955年に 16か国の一括加盟を承認。
UNESCO・WHO――国連加盟国は無条件で、その他の国は要加盟承認(UNESCO
憲章2①②、WHO 憲章4・6。その他の専門機関も同様)
。ILO・UPU・ITU―
―以前からの加盟国+国連加盟国は無条件(ILO憲章1②∼④)
。WIPO・UNIDO・
IAEA――国連・他の専門機関の加盟国は無条件。
地域的機構――域内国であることが原則
EU――自由・民主主義・基本的人権・法の支配の尊重(アムステルダム条約6)
(2)オブザーバー
国連(明文規定なし)――国家(スイス、02年まで) 他の国際法主体(ローマ法王庁、
マルタ騎士団) 民族解放団体(PLO(現パレスチナ)
) 国際機構(OAS、AU、
EC、アラブ連盟、イスラム諸国会議、カリブ共同体、ISA など) NGO(赤十字国
際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟)
OAS――域外諸国をオブザーバーとして招請。
(3)代表権――政府の分裂の場合に加盟国をどの政府が代表するかという問題
→本国政府が発給し代表団が国連に提出する信任状の審査の問題になる(信任状委員会
→50年総会決議 396で国連の目的と原則及び各事案の状況に照らして総会が審議)
中国代表権問題――原加盟国は中華民国(国民党政府。内戦後の台湾政府)→49年に中
華人民共和国建国(共産党政府・北京政府)→50 年総会で国民党政府追放・北京政
- 13 -
2006 国際機構論
府招請決議案否決→60年までは審議棚上げ、61年から北京政府招請を重要事項指定。
71年には逆重要事項指定決議案が否決、国民党政府追放・北京政府招請を決議。
カンボジア問題――1979 年ベトナム軍の侵攻によるポル・ポト政権(民主カンボジア政
府)の打倒とヘム・サムリン政権(人民共和国政府)の樹立。
国連の代表権=ポル・ポト派(82年からシアヌーク派などとの三派連合政府) 東側
諸国が反対 91年の和平合意により最高国民評議会(SNC)が設立される
南ア――1974 年信任状委員会において南ア政府代表の信任状を政府が南アの人民を真
に代表していないとして拒否(94年まで)
(4)国家の変動と国連加盟国の地位
1947 年パキスタン加盟承認に際しての総会第七委員会の指針……①現加盟国は憲法や
国境の変更により加盟国の地位を喪失しない。②新加盟国は加盟手続が必要、③その他は
実情に応じて判断する。
国連の実行……①分離独立→旧国家は加盟国の地位を承継、新国家は加盟申請が必要、
②分裂→すべての新国家が加盟申請をすべき(1992年チェコスロバキア・旧ユーゴ
の分裂)
、③合併→新国家は加盟国の地位を承継(1958 年アラブ連合〔エジプト+
シリア〕
、1964タンザニア〔タンガニーカ+ザンジバル〕
)
例外……1961 年シリアのアラブ連合からの分離
(新規加盟手続なしに加盟国の地位を
回復) 1991 年ソ連分裂(ロシアがソ連の地位を承継。ベラルーシ・ウクライナ以
外は新規加盟)
※新ユーゴ(現セルビア・モンテネグロ)の扱い……1992 年総会決議 47/1(新ユー
ゴは旧ユーゴの地位を自動的に承継せず、新規加盟手続が必要。総会の作業には参
加できない)→2000年新規加盟
(5)権利の停止・除名……加盟国としての義務の違反に対する制裁措置
①権利の停止
(a)分担金の滞納による権利の停止
国連(総会の投票権の停止、憲章 19)
PKO経費負担問題……ソ連・仏等は PKOの合憲性を否定して経費支払を拒否。64
年総会で米英等が 19条適用を主張。妥協が成立。
95年、20か国に対して 19条を適用して投票権を停止。
ILO(すべての機関における投票権の停止、ILO憲章 13②)
、ICAO(シカゴ条約 62)
、
WHO(投票権及び加盟国の受けるサービスの停止、WHO憲章7)など
(b)他の義務違反による権利の停止
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国連(加盟国としての権利の停止、憲章5) UNESCO(国連の権利停止で自動的
に権利停止、UNESCO憲章2④)
WHO(WHO憲章5の「他の例外的事情」を援用して 64年に南アの投票権を停止)
・
ITU(明文の根拠のなしに 74年に南アの権利を停止)
IMF・世銀(いずれかの義務の不履行により資格を停止、IMF 協定 26②(a)・IBRD
協定6②)
EU(基本原則の重大な違反に対して投票権を含めた権利の停止、EU条約7)
②除名
国際連盟(連盟規約16④)
国連(憲章6) ※UNESCO・IMOは国連からの除名で自動的に除名(UNESCO憲
章2⑤、IMO条約 11)
IMF(資格停止から相当期間経過後に強制脱退、26②(b))→世銀(自動的に除名、IBRD
協定6③/資格停止から1年経過の場合も除名)→IFC(自動的に除名、IFC 協定5
③)
UPU(明文の根拠なしに 79年南アを除名。81年再加入)
OAS(明文の根拠なしに 62年キューバを除名。88年に改正された OAS憲章3(e)は政
治体制の性質を問わない)
(6)脱退
設立文書に明示規定のあるもの
国際連盟(連盟規約1③、1年の予告) ILO(ILO憲章1⑤、2年の予告・財政的
義務の履行が条件) UNESCO(UNESCO憲章2⑥、通告の翌年の末) ICAO
(シカゴ条約 95、脱退禁止期間あり)
、IMF・IBRD(IMF協定 26①・IBRD協定
6①、即日発効
※加盟期間中の財政的義務は免除されない(例・UNESCO憲章2⑥)
。
UNESCO の「政治化」と米・英などの脱退(1984∼85 年)
・UNESCO のその後の
財政危機
明文規定のない場合……明示の制限ない限り脱退の権利が推定される
一般原則による=条約法条約54
国連――脱退規定がない(国際連盟の経験を考慮)
サンフランシスコ会議・第一委員会第二専門委員会報告(1945年6月全体会議で採
択)……例外的場合にのみ脱退を許容
インドネシアの脱退通告(1965年。翌年復帰)――国連は協力の停止として扱う。
WHO(脱退規定なし)……ソ連・東欧諸国の脱退(49∼50 年。57∼58年復帰) 国
連と同様の扱い。
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2006 国際機構論
第Ⅴ講 国際機構の地位と権限
(1)国際機構の法主体性(国際機構については「法人格」の語が用いられる)
国際法人格=国際法の主体であり国際的な権利及び義務を有すること(ICJ国連賠償事
件勧告的意見)
国内法人格との区別……条約で用いられる「法人格」の多くは国内法人格(国内法上の
権利能力・行為能力)
国連憲章104・国連特免条約1、UNESCO憲章 12、シカゴ条約 47、世銀協定7
明示的付与はまれ……EC条約 281(解釈)
、アフリカ開発銀行協定50
→通常は推論による
国際機構の国際法主体性に関する二つの説
①主観説――創設者の意思により(設立文書によって)明示または黙示に付与されてい
る場合に認められる(通常は条約締結権などの存在から推論される)
。具体的な権能
は法人格の存在からは導かれず、設立文書が認める範囲で認められる(通説)
。
②客観説――国際機構が加盟国から分離した独立の機関を備えているという客観的事
実のみによって国際法人格を有する。
国際機構の法人格はそのような内容の国際慣習
法に由来する。国際法人格を持つならば、その目的及び任務の達成に必要な範囲内で
国家と同様に自由に行為する権能が認められる。
★ICJ国連賠償事件勧告的意見(1949年)
国連の国際法人格……憲章に明示されていないので、憲章の内容と実行を参照。憲章が国
連に固有の機関を与え、機関に独自の権限を与え加盟国に義務を与えていること、憲章
が国連に国際法人格なしでは遂行できないような広範囲の任務を与えていること、国連
特免条約で国連と加盟国の間に権利義務関係を定めていることから、肯定。
国際請求能力……国連に対する義務違反により国連に損害を与えれば請求できるのは当然。
職員・遺族については、憲章に明示されてないが、必然的推論により任務の遂行に不可
欠なものとして付与された権能は認められる(黙示的権能理論)とし、職員本国の外交
的保護が行われない場合があること、職員の独立性の確保から、職員に対する「機能的
保護」の権利を認めた。
条約によらないで設立された国際機構の法人格
旧 GATT……協定では「締約国団」→事後の実行で総会として機能。事務局は ITO準
備委員会事務局が代行。理事会(55年)やパネル(紛争解決小委員会)などを創設。
OSCE……75 年ヘルシンキ最終議定書で全欧安保協力会議(CSCE)を創設。90 年
新しい欧州のためのパリ憲章で常設機関を設置(その後 OSCE に改称)
。条約締結
権や特権免除、国際請求能力はないとされる。
ASEAN……67年バンコク宣言(法律的合意ではない)で創設。76年中央事務局設立
協定。79年中央事務局の特権免除に関する ASEAN・インドネシア協定。
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国際機構の法人格と非加盟国との関係
主観説――非加盟国の承認が必要(承認=創設的効果)
。
客観説――客観的存在から非加盟国にも対抗できる。
★ICJ賠償事件勧告的意見――国際社会の大多数を代表する国は国連という客観的な
法人格を持つ実体を創設する権能を有していた。非加盟国に対しても請求を提起で
きる。
(2)国際機構の権能
法人格と具体的権能の有無は別問題(設立文書の解釈による)
明示的権限と黙示的権限
★ICJ国連のある種の経費事件――安保理・総会による PKO の設置・派遣は国連の
目的(事態の平和的解決の促進、国際の平和と安全の維持)に合致するので適法。
安保理はその権限を事務総長に授権し、任務遂行に必要な補助機関を設置できる。
①条約締結権
1986 年国際機構条約法条約(未発効)――国際機構の条約締結能力は当該機構の規則に
よる(6条)
国連
明文規定のあるもの……特別協定(憲章 43) 他の国際機構との連携協定(憲章 63)
黙示的権能によるもの……本部協定 PKOの派遣協定・駐留協定
EC/EU(ローマ条約 300、EU条約 24)
②特権免除
国連 憲章 105→国連特権免除条約
国連、加盟国の代表者、職員、国連のために任務を行う専門家(マズィル事件、クマ
ラスワミ事件)
原則として機能的免除
★オランダ最高裁・イラン=米国請求権裁判所対 A・S 事件判決(85 年)……通常
国際機構は条約で任務の範囲内の行為についての裁判権免除が規定される。本件
ではそのような条約は存在しないが、慣習法上同様に免除が認められる。国家の
免除の範囲についての議論は国際機構には無関係である。
本部所在地国との関係……本部協定による(米国、スイスと締結) 国連・各国の常
駐代表
★PLO代表部事件
(ICJ勧告的意見。
米国ニューヨーク南部地区連邦地裁判決
(1988
年)は米国政府の代表部閉鎖の請求を棄却)
※アラファト PLO議長ヴィザ発給拒否事件(1988 年)
国際機構が国家・他の国際機構に能動的使節権を有する場合あり
★EC委員会駐日代表部事件(東京高判s58.12.14 判タ 515号 137頁)
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2006 国際機構論
裁判権免除に関する問題
国家の裁判権免除に関する制限免除主義→国際機構には適用されるか?
★米国コロンビア特別区控訴裁・ブロードベント対 OAS事件(1980年)……絶対免
除主義でも制限免除主義でも内部の行政職員の雇用に関する訴訟は免除される。
★イタリア破棄院・FAO 対コラグロッシ事件判決(92 年)……裁判権免除は本部協
定ではなく慣習法(制限免除)によるとした82年の判例を変更。事後の実行(FAO
の私法的紛争の解決手続採用と伊政府の絶対免除の確認)に照らして協定を解釈。
③国際請求能力
★ICJ賠償事件勧告的意見……国連が国連自身及び職員のために国際請求を提起する能
力を肯定(職員本国の外交的保護権との関係は誠意と良識に基づいて解決すべき)
④国際責任
PKO 活動による国連の賠償責任……UNEFⅠや ONUC による損害について責任を認
め賠償金支払(ONUCについてはコンゴ、ベルギーなど被害者の本国と協定締結)
国際海底機構(国連海洋法条約附属書Ⅲ22) EC(ローマ条約 235)
国際機構の責任と加盟国との関係
宇宙損害責任条約22③(b)
★英国貴族院・国際スズ理事会破産事件判決(89年)……債権者が加盟国を相手取っ
て英国(本部所在地)裁判所に提訴。理事会が国家と別個の法人格を有することを
理由に請求を棄却。
PKOの活動に関する国連と部隊派遣国の関係
★英国貴族院・ニッサン事件判決(69 年)……UNFICYP の英国部隊により損害を
受けた原告が政府に賠償金支払を求める。部隊が国連の機関として行動したと認定
した原審判決を破棄し、
国連の指揮下においても英国の任務を遂行していたとした。
★オーストリア・ウィーン地区上級裁:N・K 事件判決(79 年)……UNDOF に派
遣された墺軍兵士が他の兵士の過失で損害を受けた事案で、判決は加害兵士が国連
の機関として行動したと判示。
※1996年 PKO財政に関する国連事務総長報告……損害が兵士個人の故意または重大
な過失による場合、個人の刑事責任が生じる場合は所属国に償還を請求する。
⑤領域管理
国際連盟……委任統治地域、ザールラント・ダンチヒ自由市への監督権
国際連合……信託統治地域への監督
国連ナミビア理事会……南アとの委任統治協定を破棄後直接統治
PKO による領域管理……西イリアン国連暫定行政府 国連ナミビア独立支援グルー
プ(UNTAG) 国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC) 国連東チモール暫定
行政機構(UNTAET) 国連コソボミッション(UNMIK)など
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第Ⅵ講 国連による紛争の平和的解決
(1)国際法上の非裁判的紛争解決手段
国家の紛争の平和的解決義務(憲章2③・33)
交渉
周旋・仲介(居中調停)
(国際紛争平和的処理条約3)
周旋……交渉の機会や場所の提供
仲介(居中調停)
(条約3)……周旋に加えて紛争当事国の主張を調整し解決案を提示
審査(条約9)……第三者機関による事実調査(報告に拘束力なし)
実例は異なる(1904年ドッガー・バンク事件、1961年レッド・クルセイダー事件)
ジュネーブ諸条約第一追加議定書 90
調停(国際紛争平和的処理一般議定書)……事実調査に加えて解決策を提示 条約法条
約 66・附属書、自由権規約 42
(2)国連による紛争解決制度
安保理
加盟国の付託義務(憲章 37①) 合意による付託(38) 第三国・総会・事務総長に
よる注意喚起(35・11③・99)
安保理による紛争の調査(34) 調整の手続・方法の勧告(36) 適当な解決条件の
勧告(37②)
総会
国際の平和と安全について討議し勧告する権限(10・11) 平和的調整措置の勧告(14)
事務総長
安保理・総会から委託された任務(98)
独自のイニシアチブによる活動(紛争当事者への特使派遣、当事者間の周旋・仲介な
ど)
事務総長は憲章 99を根拠規定として主張
事務総長の独自の活動に対する加盟国の反対
総会・国際紛争平和的解決マニラ宣言(1982年)
→国際紛争または事態の予防及び除去に関する宣言(88年)……事務総長による事
実調査・紛争調整活動を認める
国連による紛争解決機能の展開
ガリ事務総長の「平和への課題」
(1992年。95年に補遺)……予防外交・平和創造・
平和維持・平和構築
ブラフミ・レポート(国連平和活動に関する委員会報告、2000年)……紛争予防・平
和創造、平和維持、平和構築 /機構改革の提言
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2006 国際機構論
(3)国際司法裁判所による紛争の司法的解決
①紛争の範囲
法律的紛争と政治的紛争の区別(一般議定書 17・28、ICJ規程 38②)
政治的紛争の抗弁――在テヘラン米国大使館人質事件・ニカラグア事件では認めず
安保理との管轄権競合=裁判に影響しない(エーゲ海大陸棚事件・ニカラグア事件)
②勧告的意見
諮問事項の範囲(憲章 96)――いかなる法律問題(総会・安保理による諮問の場合) 活
動の範囲内において生じる法律問題(専門機関など)
実質的に国際機構と国家の紛争であるもの……南西アフリカ事件 PLO 代表部事件
マジル事件 クマラスワミ事件など
意見付与の裁量性(規程 65)……「決定的理由」があれば意見付与を拒否できる
政治的問題(加盟承認総会の権限事件、経費事件、壁建設の法的効果事件)
、諮問事項
の抽象性(西サハラ事件、核兵器使用の違法性事件)は拒否事由に該当しない
東部カレリア原則=諮問事項が国家間の紛争の主題である場合関係国の同意がなければ
意見を付与できない
★平和条約の解釈事件――東部カレリア事件と事案を区別
★西サハラ事件――当事国の同意は意見付与の司法的適切性の問題。諮問の目的は紛
争の解決ではなく総会の任務の遂行への援助を求めること。
★壁建設の法的効果事件――諮問事項はイスラエル・パレスチナ間の紛争だけでなく、
パレスチナ委任統治・分割決議に起源を持つ国連の直接の関心事項である。
(4)国際司法裁判所による国際機構の行為の適法性審査
ICJの司法審査権の有無
サンフランシスコ会議でのベルギー提案(ICJに安保理の決定に対する司法審査権を
与える)――認められず
「国際連合の主要な司法機関」
(憲章 92)を根拠に肯定する見解
経費事件・ナミビア事件――憲章の最終的解釈権・司法審査権を否定
適法性自体が諮問事項となった事例……加盟承認総会の権限事件、IMCO海上安全委員
会の構成事件
司法機関として違法なものは違法として扱わなければならないという見解
付随的審査……経費事件・ナミビア事件では諮問主題でなくても、関連して適法性に
関する異議が提起されれば判断
二国間争訟事件において国際機構の行為の適法性を争うことは可能か?(Cf. ILO 憲
章 29・31・32、シカゴ条約 84・86/設立文書の解釈に関する訴訟……ILO 憲章
37、UNESCO 憲章 14②、WHO 憲章 75、FAO憲章 17①、IAEA 憲章 17 条 A
- 20 -
など)
★ロッカービー事件仮保全措置命令・管轄権判決
※ICTY上訴裁判部・タディッチ事件管轄権判決(1995年)……裁判所を設置した
安保理決議の合憲性を判断。
憲章違反の効果
★経費事件――国連の目的の範囲内であれば有効性が推定され、内部の権限分配に合
致していなくても機構の経費となる(国内法の ultra viresの法理)
。ICJには憲章
の最終的解釈権はなく、国内法における立法や統治行為の効力を定める手続は存在
しない。
少なくとも第一次的には各機関が自身の管轄権を決定しなければならない。
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2006 国際機構論
第Ⅶ講 国連の集団安全保障
(1)国連の集団安全保障
集団安全保障体制とは?……国際連盟→国際連合
平和に対する脅威・平和の破壊・侵略の認定(憲章 39)
(平和の破壊の認定は朝鮮戦争、
フォークランド紛争、イラン・イラク戦争、イラクのクウェート侵略。侵略について
は認定例なし)
→暫定措置(40)
・非軍事的措置(41)
・軍事的措置(42)
(2)非軍事的措置(経済制裁)……輸出入の禁止、資産の凍結、取引禁止、航空機の発着禁
止、政府関係者の入国禁止など
アパルトヘイト(人種隔離政策)……南ローデシア(現ジンバブエ、1965-79)
・南ア(77-94)
イラクのクウェート侵略(湾岸危機)
(90-)/ 湾岸戦争停戦決議=イラクに大量破壊
兵器等の廃棄、国境画定、賠償金支払などを義務づけ(91-)
内戦への関与……新ユーゴ(セルビア・モンテネグロ)(92-96)、リベリア(01-)など
テロ支援国家・・・・・・リビア(92-00)、スーダン(96-01)、アフガニスタン・タリバーン(00-)
軍事クーデターへの制裁・・・・・・ハイチ(93-94)
、シエラレオネ(97-98)
紛争地域への武器禁輸・・・・・・旧ユーゴ(1991-95)、ソマリア(92-)、リベリア(92-01)、ルワ
ンダ(94-)
、ボスニア(94-95)
、新ユーゴ(98-01)
、コートジボワール(04-)
、スーダン(05-)
など
※エチオピア・エリトリア紛争(国家間紛争)にも適用(00-)
内戦当事者に対する制裁・・・・・・アンゴラ・UNITA
(93-02)
、ボスニアのセルビア人勢力(94-96)
、
シエラレオネ・RUF(98-)
、コンゴ民主共和国(イツリ州、南北キヴ州)の武装集団(03-)
、
スーダン・ダルフール地方の武装勢力(04-)など
戦争犯罪人の処罰(刑事裁判所の設置)・・・・・・旧ユーゴ(1993-)、ルワンダ(96-)/スーダ
ン・ダルフール地方の虐殺を ICC に付託(05)
個人を対象……リベリア前大統領とその関係者(04-)、コートジボワール(04-、武装勢力指導
者など)
、スーダン(05-、空軍司令官・民兵指導者など)
特殊な措置(安保理による「立法」
)
包括的テロ防止措置(2001年決議 1373。テロ団体への資金供与禁止、資産凍結、テ
ロ行為の犯罪化など)
PKOに参加する ICC規程非当事国要員への ICCの捜査・訴追の停止(02-04)
イラク復興決議によるイラク産石油の流通・流出文化財の返還促進の義務づけ(03)
非国家主体への大量破壊兵器・運搬手段の拡散防止措置(04年決議 1540)
国連の経済制裁の特徴
- 22 -
「平和に対する脅威」概念の拡大(=安保理の広範な裁量)……内戦で行われる非人
道的行為、難民の国外流出/国際テロリズム
※安保理首脳会合議長声明(1992年)――経済的・社会的・人道的・生態的分野
における不安定が平和に対する脅威となったと述べる。
補助機関(制裁委員会)を設置して制裁を実施。 特殊な機関として、対イラク制裁
に関する国連特別委員会(UNSCOM)
・国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)
、
国連補償委員会(UNCC)/ICTY・ICTR/反テロ委員会、1540委員会。
人道上の例外(食糧・医薬品の除外や人道上の理由による適用除外)とスマート制裁
の発展(制裁対象の絞込み、資産凍結・入国禁止など)
(3)軍事的措置
本来の国連軍……特別協定による兵力提供(憲章 43) 軍事参謀委員会の指揮(47)
朝鮮国連軍(1950-)……朝鮮戦争の際「勧告」
(ソ連は欠席中) 国連旗と「国連軍」
の名称の使用を許可される 指揮権は米国 費用も兵力提供国が負担
多国籍軍方式……安保理が「憲章第7章」に基づいて、加盟国の軍隊に平和の維持・回
復のための武力行使=「必要なすべての手段をとる権限を与える(authorize all
necessary means)
」 指揮権は各国に属し費用も各国が負担
湾岸多国籍軍(1990-91) ハイチ多国籍軍(94-95、米軍中心) NATO軍による
ボスニア飛行禁止区域設定・上空監視飛行(92-93)/ボスニア空爆(94-95)
人道支援活動の保護や治安維持のために派遣される傾向
ソマリア(92-93、24 か国)
、ルワンダ(94、仏軍主体)、ザイール(現コンゴ民主共和
国)東部(96, 実施せず)
、アルバニア(97、伊軍主体)
、東チモール(99、豪軍主体)、
コートジボワール(03-、仏・ECOWAS軍)、コンゴ民主共和国(03-、EU 部隊)
、リ
ベリア(03-、ECOWAS・米軍)、ハイチ(04、米仏加など)
※非国連の平和強制部隊(国連による平和強制部隊については次講参照)……NATO
ボスニア平和執行部隊(IFOR・SFOR,95-) コソボ国際部隊(KFOR,99-) ア
フガニスタン国際治安支援部隊(ISAF,01-) イラク多国籍軍(03-、米英軍主体)
(4)安保理の憲章7章下の措置の問題
安保理の裁量権に限界は存在しないのか?
★ICTY 上訴裁判部・タディッチ事件管轄権判決……憲章 39 条は安保理に広範な裁量を
与える。安保理の実行上、国内的武力紛争も平和に対する脅威に含まれる。とるべき手段の
選択についても安保理に広範な裁量がある。41 条のリストは例示的で「兵力の使用を伴わな
い」のであればいかなる措置でもよい。ICTY の設置は安保理の権限の範囲内に属し、平和
- 23 -
2006 国際機構論
と安全の維持というその機能を果たす手段として司法機関を設置しうる。
★シエラレオネ特別裁判所上訴裁判部・テイラー元リベリア大統領訴追に関する決定
(2004 年)……本裁判所は安保理決議 1315 には明示されていないが国連の強制措置によ
り設立された。
憲章上の制約……憲章 24②・25→1①
学説によって主張される制約……国際法の遵守 事実認定の公平さ 比例性 人権の
保護 ユス・コーゲンス(強行規範)
多国籍軍方式の国連憲章上の根拠は?
特別協定の締結が前提ではないか?
39 条の「勧告」に根拠づける見解 42 条に根拠づける説 黙示的権能に根拠づける
見解
安保理がコントロールできない(白紙委任)という問題
実行におけるコントロールの方法の発展……任務の具体化・明確化、期間の設定・短
期間化、頻繁な報告の義務づけ
多国籍軍派遣の可否が大国(地域大国含む)の意向に左右される問題
総会は強制措置を発動できるか?――「平和のための結集決議」の合憲性
- 24 -
第Ⅷ講 国連の平和維持活動
(1)平和維持活動(Peace Keeping Operations, PKO)とは?
=紛争当事者の停戦合意などの受け入れの同意を得て、加盟国が提供する要員を国連の
指揮の下で派遣して、停戦や軍の撤退などを監視する活動。
安保理(まれに総会)の決定により派遣される国連の部隊(多国籍軍と異なり国連に指
揮権・費用は国連負担)であるが、非強制的で自衛の範囲を越える武力は行使しない
(
「6章半活動」と呼ばれる)
。
冷戦による国連の集団安全保障の麻痺を受けて編み出される。特に冷戦終結後は民族紛
争の多発で各地に派遣される。
(2) PKOの沿革
UNEFⅠ(第一次国連緊急軍)……エジプトのスエズ運河国有化宣言に対して英・仏・
イスラエルがエジプトに侵入(第二次中東戦争)
、カナダ外相ピアソンの提案をハマ
ーショルド国連事務総長が具体化、総会の承認を得て非同盟 10 か国による中立の軍
隊を派遣、兵力引き離し、撤退監視を行わせた(1956-67年)
。
ONUC(コンゴ国連軍)……コンゴ(ザイール、現コンゴ民主共和国)独立に反対する
ベルギー軍の撤退の監視と治安維持が任務。その後コンゴ内戦に介入し、カタンガ州
の独立運動を鎮圧した(1960-64年)
。ソ連・仏などは PKOは憲章違反であるとして
分担金支払を拒否。ICJの経費事件勧告的意見(1962年)はソ・仏の主張を認めず。
UNFICYP(国連キプロス平和維持軍)……キプロス内戦で派遣される(1964 年∼)
。
PKOの方式が確立される。
非同盟諸国が PKOを高く評価し、広く用いられるようになった(第四次中東戦争以降)
。
(3)伝統的 PKOの種類とその原則
①平和維持軍(Peace Keeping Force, PKF)
軽武装の部隊(通常数千名)が紛争地域に駐在し、紛争の拡大を防止する。停戦監視、
兵力引き離し、兵力の撤退の監視、非武装地帯の設定などを行う。停戦直後に派遣
されることが多い。UNFICYP、UNEFⅡ、UNDOF、UNIFILなど。
②軍事監視団(Military Observer Group)
非武装の軍事要員(数百名以下)が駐在し、停戦や撤退の監視、国境線や停戦ライン
の監視を行う。88 年の国連イラン・イラク軍事監視団(UNIMOG)が最初(49
年の UNTSO などは軍事監視団の前例とされる)
。UNAVEM、UNIKOMなど。
伝統的 PKOの基本的原則……UNEFⅠ設立時(56年)にハマーショルド事務総長が提
出した報告書、及び 58年の研究摘要でまとめられる。
①同意の原則……紛争当事者が PKOの受け入れに同意する。
全当事者の同意が得られるとは限らない(UNEFⅠ・Ⅱ、UNIFIL)
同意が撤回されれば PKOは終了(UNEFⅠや UNAMIR)
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2006 国際機構論
②中立(公平性 impartiality)の原則……いずれの紛争当事者にも中立。紛争の根本
的解決を強制しない。国内事項に干渉しない。
③武力行使の禁止……武器使用は自衛のため必要最小限度で許される。
その他の原則
※要員派遣の任意性
※大国・利害関係国の排除……非同盟諸国などPKO派遣地域に利害関係を持たない中
小国の軍隊が参加するのが慣行(地理的バランスや紛争当事者の意向も配慮される)
※国際性の原則……国連の権威の下の活動
(安保理または総会の補助機関。
国連旗・
“ブ
ルー・ヘルメット”の使用など)
。事務総長の統一的指揮権(事務総長が PKO司令
官を任命) ただし部隊内部の行政や要員の身分は派遣国に管理権
(4)冷戦後の PKOの新たな展開……冷戦終結にともなう PKOの増大と質的変化
①総合的・多機能型PKO(平和構築活動(Peace Building)
、
「第二世代の PKO」
)
紛争当事者の包括的な政治合意に基づき、紛争の包括的解決(
「包括的平和」
)をめざ
す。軍事・文民・警察要員の混成からなる。
民主的な選挙や住民投票の監視、人権状況の監視、文民警察要員による治安維持や現
地警察の訓練、内戦各勢力の軍隊の武装解除・社会復帰支援(DDR)
、難民の帰還
の支援や再定住、地雷の除去、経済再建の支援(道路・水道などのインフラ整備)
、
暫定的な行政の実施または現地行政の監督、政府機能の樹立・再建などを行う。
89 年の国連ナミビア独立支援グループ(UNTAG)が最初で、92 年の国連カンボジ
ア暫定統治機構(UNTAC)が典型。ガリ事務総長の「平和への課題」
(92 年)で
「平和構築」と呼んで積極的に評価した。
PKF+選挙監視……UNTAG、ONUMOZ(モザンビーク)
総合的活動……UNTAC、UNMIH(ハイチ)
、UNTAET(東チモール)
、UNMIK(コ
ソボ)
選挙監視団……ONUVEN(ニカラグア)
、ONUSAL(エルサルバドル)
、MINURSO
(西サハラ)
②予防展開型PKO……「平和への課題」
で提唱される。
国連予防展開軍(UNPREDEP。
95年3月までは UNPROFORの一部)がマケドニア(旧ユーゴ)に派遣される。
③平和強制部隊(Peace Enforcement Unit)
(平和執行部隊、
「第三世代の PKO」
)
PKFであるが、
安保理の憲章7章下の授権により自衛の範囲を越える武力を行使する。
紛争が進行中である地域に派遣され、
和平または和平合意を強制する。
「平和への課
題」で提唱(ただし憲章 40の暫定措置として)
。
ソマリア……多国籍軍のあとを受けて憲章7章に基づき PKO の任務を拡大(第二次
国連ソマリア活動・UNOSOMⅡ)
。停戦合意違反の防止、武装解除、人道援助の安
全確保。アイディド将軍派の勢力と交戦し撤退(93年5月∼95年5月)
。
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ボスニア……内戦の激化により、従来型の PKOであった国連保護軍(UNPROFOR)
に憲章7章に基づき、安全地帯(サラエボ、ゴラジュデ、スレブレニッツァなど)
の防衛などのため武力行使を授権(93年7月)
。セルビア人勢力の攻撃に NATOに
よる空爆支援を受けるも要員拘束事件発生。その後重装備の英・仏軍が展開し、和
平後は IFOR()が展開。
「平和への課題・補遺」
(95年)で構想が撤回される。その後も、UNTAET(東チモー
ル)
、UNAMSIL(シエラレオネ、00年2月以降)
、MONUC(コンゴ民主共和国)
の派遣例あり。
(5)平和維持活動の問題点
PKO予算の増大と財政問題
大規模 PKOの派遣……UNTAC(2万人)
、UNPROFOR(4.5 万人)
、UNOSOMⅡ
(2.8万人)など
国連平和維持留保基金の創設(92 年)……PKO 予算不足に対応。予算承認から実際
の拠出までの間のつなぎ資金(1億5千万ドル)
PKOの迅速な派遣の困難/要員の装備・訓練不足
派遣の要請→事務総長による派遣計画策定→安保理で承認→要員提供の交渉→実際の
派遣
待機制度(提供可能な要員の事前登録) 加・蘭・墺・北欧諸国は国連待機軍を設置
PKO 要員の犠牲者の増加→国連要員保護条約を採択し、要員への犯罪を国際犯罪と
する(1994年) cf. ICC 規程8②(b)(iii)・(e)(iii)
PKFへの国際人道法の適用
国連が国家でないこと、PKO の中立性・武力不行使、履行方法(処罰・懲戒)の欠
如を理由に人道法適用に消極的な立場
派遣協定・服務規則……「軍事要員の行動に適用される一般的条約の原則と精神の尊
重」
国連部隊による国際人道法の遵守に関する国連事務総長告示(1999年)……「原則と
精神」を明確化。ジュネーブ諸条約・第一追加議定書の主要原則を規定。
※日本の PKO参加
政務官の派遣(外務省設置法による)
、選挙監視への派遣(88 年以降は改正 PKO
法による)
国連平和維持協力法(92年)……自衛隊・文民警察の派遣を認める(国際機関の実施
する人道援助活動含む)
。PKO参加5原則(①停戦合意、②日本の派遣への紛争当
事者の同意、③中立、④以上の条件が崩れた場合の撤収、⑤小型の武器の携行は認
めるがその使用は自衛のためやむをえない範囲に限られる) PKF本体業務への参
加を凍結、停戦監視と PKFの後方支援のみとした(01年の改正で凍結解除)
。
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2006 国際機構論
カンボジア(92-93)
、モザンビーク(93-94)
、ゴラン高原(95-)
、東チモール(02-04)
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