Vtáâ| cÜxáá 花水プレスヨーロッパのスパ訪問記Ｖｏl.1 私どもは花水のオープンに際し、国内外の温泉施設を訪問してまいりました。日本と同様にヨーロッパでも温泉活用は盛んで独自の温泉文化があります。延べ１ヶ月をかけてフランス・イタリア・ドイツ・スイスの４カ国、十数件のスパ施設を巡ってきました。今回から数回に亘ってこれらをご紹介していきたいと思います。今回は、花水のメディテーションバスのデザインモチーフにもなったスイスのスパ「Felsen-Therme（フェルゼンテルム）」をご紹介いたします。１．スイスの温泉文化国土のほとんどが山というスイスは、温泉や鉱泉が豊富な国。全国で約２５０種類の鉱泉が湧出しており、中には 3,000 年前から利用されていたという歴史のある所もある。ドイツ語圏でバードやバーデン、フランス語圏でバンといったように、伝統の温泉地には“お風呂”を意味する単語が地名につけられていることが多い。ローマ時代にはアルプスを越えて遠征するローマ軍の兵士たちの保養のために重宝され、ローマ帝国の拡大につれて、ヨーロッパ各地にローマ風の浴場が作られた。中世には医療目的のほかに華麗な社交場となり湯治場に行くことがステータスの証となった。近世になると、温泉の医学的利用法はより研究され、発展してきた。そして、現代では、治療というより、むしろリラクゼーションのために利用されることが多くなってきているようです。 “気持ちの良い時を過ごす”“疲れた心身を癒す”これこそが欧米の旅行者たちがスイスを滞在地として選んできた理由でした。美しい風景、澄み切った空気、アルプスの豊富なミネラルを含んだ水。スイスでは、誰もがナチュラルになれるからかもしれません。２．ヴァルスの温泉スイスで有名な温泉地に、バーデン、バート・ラガッツ、ヴァルス、サン・モリッツ、イヴェルドン・レ・バン、ロイカーバートなどがあります。そのなかで海抜 1,200M に位置する、手つかずの自然と素朴な谷の暮らしが残る静かなアルプスの山里ヴァルス（人口 990 人）に「フェルゼンテルム」はあります。イランツという町から両サイドに切り立った山々の間の谷底をバスで３０分程度揺られて到着。道中至る所で山の亀裂から滝が流れていて豊富なアルプスの水量を感じさせます。バスから降りますと、カウベルの「カランカラン」という音と、サーっと山に霧がかかっては消え、パッと目の前に山の斜面が迫ってくる光景は特筆しがたい雄大なものです。世界的な現代建築家として知られるペーター・ズントーが手掛けたスパは、地元産の片麻岩を積層して建築されたもの。無機質ながらもシンプルで美しいフォルムは、外の美しい風景と不思議な調和をみせています。文化財として保護の対象にも指定され、古い伝統の息づくこの谷の自然に溶け込むように存在する建築物は一見の価値があると思います。隣接するホテルでは現在コンランのデザインによる増築も行われており、湯治や観光客だけでなく建築やデザインに興味ある人々からも一層注目を集めています。 ← アルプスを背景にした外観の様子。 → 片麻岩を緻密に積み上げた壁面のディテール。このスパの内外装は角棒状の石で仕上げられ、内部空間はやや暗く、天井の縦横に走る長いスリット状のトップライトから、スーっと細い太陽光が差し込んできます。温泉は無色透明で、たたえた温泉水が周りの石の色を反映して、青く澄み、水中照明により映し出された波紋が実に美しかった。こんな幻想的な空間が演出されていたりすると、日本で体験する温泉入浴とは感じる気持も全然違うものになるのでしょうね。まるで時を忘れてしまうかのような神秘的な空間です。屋外の浴槽に出れば目の前に牧草の緑が鮮やかな谷の風景や 3,000M 級のアルプスの山々が広がる雄大な景色の中で、周囲の山に抱かれているように感じながら温泉に浸ることができます。水温は 3２℃～ 37℃前後と日本人にとってはぬるく感じますが、その分のんびりできて、このスパの持つ不思議なリラクゼーション効果を最大限に味わうことが出来ました。時間が止まってしまったかのようなここを後にするのは本当に名残惜しく感じられ、機会があれば、是非また行きたいスパ施設でした。エステや各種テラピー、マッサージもありましたが、何時間も入浴だけで使ってしまい、ここでは体験できませんでした。 ← 山々を眺めながらリラックス。 → 浴槽の底よりライトアップ。３．次号予定スイスではこの他に古くからの温泉地として栄えた”バーデン”とハイジの舞台であり、クララが療養のために滞在した町”バート・ラガッツ”の２都市を訪問しました。次回はとりあえずスイスを離れ、イタリア・トスカーナ地方にある「グロッタ・ジェスティ」をご紹介する予定です。グロッタ・ジェスティ・テルメの外観。その地下に広がる地底湖温泉の蒸気と天然洞窟を利用したサウナ。