Embargoed Advance Information from Science The Weekly Journal

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Science 2012 年 12 月 14 日号ハイライト
パナマでの節足動物の個体数調査
腫瘍細胞の多様性の原因となるのは遺伝的特徴だけではない
メスのマウスは Darcin のおかげでオスの居場所が覚えられる
DNA ナノ物質のアセンブリのスピードアップ
パナマでの節足動物の個体数調査
A Headcount of Arthropods in Panama
昆虫、クモ形類動物、甲殻類を含む節足動物は地球上で最も多様な陸生種群である。そして、
それゆえに研究者らは、その個体数、特に非常に多くの節足動物が生息していることが分か
っている熱帯雨林に棲む節足動物の個体数の推定に苦闘し続けて来たのかもしれない。Yves
Basset らは今回、節足動物の個体数を推定する現行の研究の一環として、パナマのサン・ロ
レンソ森林保護区において研究者 102 名と共同で土壌から林冠までを対象に徹底したサンプ
リングを行い、その結果を報告している。彼らはサン・ロレンソ森林保護区の中の約 0.5 ヘ
クタールから 6,144 種にわたる 129,494 の節足動物を収集した。次にモデルを用いて、それ
より広い 6,000 ヘクタールというその森林保護区には約 25,000 種の節足動物が生息している
と推測した。しかし森林 1 ヘクタールだけでも常にこれら 25,000 種の 60%以上が棲んでい
ると、彼らは加えて述べている。Basset らによると、植物の多様性といった要因がこの地域
に生息する節足動物種を推定する際の有力な判断材料になり得るという。たとえばこの地域
では、維管束植物 1 種につき 17 種、鳥 1 種につき 71 種、哺乳類 1 種につき 270 種の節足動
物が存在すると彼らは述べている。今回の研究結果は、生物多様性の推定と今後の保護活動
の指針として有用だと思われる。
Article #21: "Arthropod Diversity in a Tropical Forest," by Y. Basset; D.W. Roubik at Smithsonian
Tropical Research Institute in Panama City, Republic of Panama. For a complete list of authors, please
see the manuscript.
腫瘍細胞の多様性の原因となるのは遺伝的特徴だけではない
Genetics Not the Only Driver of Tumor Cell Diversity
癌細胞は、同一のゲノムを持つにもかかわらず、お互いに非常に異なる挙動(化学療法に対
する反応など)をとることができることが報告された。これらの知見は、固形腫瘍内で個々
の細胞の挙動が異なる原因は遺伝的な差異であるというこれまでの考え方に疑問を呈してい
る。このような機能の差異の中には、癌がどのように進行するか、あるいは治療にどのよう
に反応するかということに不可欠なものがある。例えば、多くの腫瘍では、特定の細胞のみ
が実際に腫瘍増殖を促進させたり化学療法耐性となったりする。このような細胞を標的とす
ることは、癌治療の重要な目標であるが、新しい知見は、このような細胞を遺伝学のみに基
づいて探索すると不成功に終わる可能性があることを示している。Antonija Kreso らは、マ
ウスに移植したヒト大腸癌の遺伝子プロファイルと増殖挙動をモニタリングした。個々の腫
瘍細胞クローンは、同じ遺伝系統であっても、生存率、増殖ダイナミクス、化学療法薬への
反応性が大きく異なっていた。したがって、多様性のもとになる付加的なメカニズム(エピ
ジェネティック制御や微小環境の可変性など)が、特に負荷時に、一部の腫瘍細胞に強力な
生存能を与えていると考えられる。
Article #22: "Variable Clonal Repopulation Dynamics Influence Chemotherapy Response in
Colorectal Cancer," by A. Kreso; P. van Galen; O. Gan; F. Notta; E. Wienholds; J.E. Dick at
Campbell Family Institute in Toronto, ON, Canada. For a complete list of authors, please see the
manuscript.
メスのマウスは Darcin のおかげでオスの居場所が覚えられる
Thanks to Darcin, Mice Remember Where Their Mates Were
哺乳類の臭跡は様々な物質の混合物を含み、その個体の性別や生殖状態に関する情報を伝え
ている。動物は通常、そのような臭跡を探し出すことができるが、臭跡のある場所をいかに
再認識するのかを決定することは難しいとされてきた。新しい研究によると、メスのマウス
がオスの居た場所を記憶できるのは darcin という尿タンパクのためであるという。Sarah
Roberts らは、メスのマウスは ―― そして競争心旺盛なオスも ―― オスの尿や合成され
た darcin の付いた場所を好むことを発見した。しかもメスのマウスは、その臭いが消えても
2 週間はその場所を記憶し、探し出すという。これらの研究結果は、齧歯動物は darcin によ
って空間記憶を刺激されることで、過去に出会ったものと社会的関連のある場所や過去に嗅
いだ臭跡をもう一度特定できることを示している。Darcin のようなフェロモンは社会的学習
のための極めて強力な刺激だと考えられると Roberts らは述べている。
Article #16: "Pheromonal Induction of Spatial Learning in Mice," by S.A. Roberts; A.J. Davidson;
J.L. Hurst at University of Liverpool, Leahurst Campus in Neston, UK; L. McLean; R.J. Beynon at
University of Liverpool in Liverpool, UK.
DNA ナノ物質のアセンブリのスピードアップ
Assembly of DNA Nano-Objects Speeds up
最適条件下では、以前よりもはるかに効率的に、DNA を複雑なナノスケールの物質へと折
りたたませることができることが、新しい研究で報告された。これらの知見により、DNA
ナノテクノロジーは、実際の適用(ナノスケール電子工学や薬剤送達システム)に役立つよ
うになると考えられる。これまでの研究では、一本鎖 DNA「スキャフォールド」を、短い
DNA「ホチキス」で結合させて折りたたむことで、印象的な数々の三次元のナノサイズ物
質を作り出してきた。これらのプロセスは、遅く、たくさんの日数が必要であり、比較的少
量の最終産物しか得られない。ドイツの Jean-Philippe Sobczak らは、蛍光色素を用いて折り
たたみプロセスを検討し、折りたたみ時の二重鎖 DNA の形成や、解きほぐし時の一本鎖
DNA の形成を調べた。また、さまざまな時点と温度で急速冷凍したサンプルを作成し、産
物を検討した。その結果、折りたたみを一桁分(一部の場合では分の単位へ)加速でき、収
率をほぼ 100%まで高める反応条件を発見した。このプロセスの一部はタンパク質折りたた
みとほぼ同じであり、この加速されたプロセスによって、いつか、細胞内で DNA ナノ物質
を作り出せるようになるだろうと Jean-Philippe Sobczak らは考えている。
Article #15: "Rapid Folding of DNA into Nanoscale Shapes at Constant Temperature," by J.-P.J.
Sobczak; T.G. Martin; T. Gerling; H. Dietz at Technische Universität München in Munich, Germany.