行動の進化・発達・現実発生

行動の進化・発達・現実発生
keywords: 知覚の構え・錯覚・順応/残効、育児の構え、行動誌
㻌
◆研究概要
心理系専攻
人間とは何か、生きるとはどういうことか。心とは何か、
≪ 行動発達学研究室 ≫
それを科学するとはどういうことか。そんなことを考えて
心理学を始めました。そして、行動の準備状態として
の「構え」という概念を軸に研究を進めています。㻌
まず学生の時から、実験室の中で知覚の順応と残
効や錯覚等の現象をとらえながら、知覚の構えと現実
発生という理論の検討を行ってきました。㻌
また、幼稚園児、発達障碍児等と関わってきた中で
行動の発達を考える一方、育児の構えをテーマに心
理学的、生物学的、社会・文化的に考察しています。㻌
それから、行動を学際的・総合的にとらえる試みとし
て、「行動誌」という理論的枠組みを提案しています。㻌
教授(博士:人間科学)
心理学の方法論、科学の歴史・哲学・社会学等に
なかたにかつや
中谷 勝哉
nakatani@socio.kindai.ac.jp
も関心を寄せています。㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌
💛💛 研究テーマ
1.知覚の構え錯覚、順応残効、現実発生
ものの見え方は人によっても違いますし、同じ人で
も刻一刻と変化します。㻌
ツバメ等は誰から教わらなくても子育てをしますが、
人間には適切な経験が必要です。どのような場合に
例えば長さの異なる 㻞 本の線分を繰り返し何度も
どのような経験が適切なのでしょうか?㻌 赤ちゃんは
見ていると長さの差が少なく見えてきます。これが順
かわいいですが、泣いているとやっかいです。しかし
応です。その後で同じ長さの 㻞 本を見ると、長さが異
泣いているときにこそ親は一生懸命に構うのはなぜ
なって見えます。これが残効です。このような現象を
でしょうか?㻌 㻌
構えとその現実発生という枠組みから検討していま
す。㻌
このような問題に実験や調査をしながら取り組んで
います。㻌
29
2.育児の構え:発達
3.行動誌:学際と総合
行動や心がどのようにして成り立っているかは心理
学の力だけでは解りません。人間科学というもっと大
きな枠組みから、生き物の構造と機能、生態や進化、
社会や制度、文明や文化といった問題も並行して考
えてゆく必要があります。㻌
こうした問題に対して、 行動を現実発生、発達、
進化という発生の枠組みから学際的・総合的にとら
える「行動誌」を提唱しています㻌
♠主な著書、論文
中谷勝哉 子育ての理由 −かわいい赤ちゃん/面倒な赤ちゃん 丸善プラネット 中谷勝哉 行動誌入門 ナカニシヤ出版 中谷勝哉㻌 動物の子育てから教わること㻌 Ⅰ ― 動物の子育てはどこまで本能か ―㻌 近畿大学総合社会学部
紀要, 第 1 巻, 第 2 号, 69-92. 2012.
中谷勝哉
動物の子育てから教わること Ⅱ ― 繁殖の進化と遺伝的プログラムの役割 ― 近畿大学総合社
会学部紀要㻌 第 2 巻㻌 第 1 号㻌 47-71. 2012.
Nakatani, K. Magnitude estimation in the method of limits. In; S. Mori et.al. (eds.) Fechner Day 2007. Proceedings of the 23rd Annual Meeting of the International Society for Psychophysics. The International Society
for Psychophysics. 407-410. 2007
Nakatani, K.
Time error in repeated trials and a new aftereffect. In; D.E. Kombrot et.al. (eds.) Fechner Day
2006. Proceedings of the 22nd Annual Meeting of the International Society for Psychophysics. Hertfordshire
University Press. 233-238. 2006.
中谷勝哉・山本クニ子㻌 育児関連ストレスと妊娠前の母親の経験・知識㻌 発達研究,19,㻌 53-67.㻌 2005.
中谷勝哉㻌 行動誌における総合の構想㻌 近畿大学教養部研究紀要,㻌 第 31 巻,第 3 号,17-33. 2000.
Nakatani, K. Microgenesis of the length perception of paired lines. Psychological Research, 58, 75-82. 1995.
Nakatani, K.
Fixed set in the perception of size in relation to lightness.
Perceptual and Motor Skills, 68,
415-422. 1989.
Nakatani, K. Application of the method of fixed set to the size weight illusion. Psychological Research, 47,
223-233. 1985.
♣趣味
㻌 山歩き:㻌 体育会ワンダーフォーゲル部の部長をしています。ワンダーフォーゲルとは「渡り鳥」。㻌
㻌 芸能鑑賞:㻌 落語、文楽といった上方古典芸能からリリパットアーミーまで。㻌
💛💛 ゼミへの招待
㻌 赤ちゃんに興味のある人、知覚に関心のある人、心や行動や人間や世界とは何かを考えたい人、ロマンチス
トの人、歓迎します。㻌
30
対人コミュニケーション
Keywords :
アサーティブ,トレーニング,対等性,フェアネス
◆研究概要等
大学院以来の自分の関心を改めて振り返ってみ
心理系専攻
社会心理学研究室
ると,様々なことに関心が移ってきたようにみえます
が,根底では,平等や対等,フェアネスといったこと
が気になり続けているようです.
資源の分配におけるフェアネス認知を研究してき
教授
ほった
堀田
みほ
美保
mihohotta@socio.kindai.ac.jp
ました.分ける資源(物資的資源だけではなく,時
間,サービス,予算,関心や注意など)が豊富にあ
るなら,あまり問題にはなりませんが,多くの場合は
十分な量はありません.すべての人が望むだけ手
に入れることは難しく,資源は分け与えられねばな
りません.誰にどれだけ分配するのがフェアだと言
えるのかが問題となります.どのような状況で,どの
ような考え方で(分配原理),どのような手続きで(分
その後,アサーティブネスというコミュニケーショ
配方法),どのような結果(分配結果)になったとき
ン理論に出会い,現在に至るまで,それに惹かれ
にフェアだと評価されるのかを実験的に研究してき
続けています.アサーティブネスとは,「自他尊重」
ました.原理,方法,結果のフェアネスは独立して
を土台とし,問題解決に向けて,自分の想いを伝え,
認知され,どれが重視されるのかは,分配者である
交渉をすすめるコミュニケーションの1つの方法で
か,第三者であるかによって異なります.
す.アサーティブネスを人々に伝える活動を行って
いるNPO法人,アサーティブジャパンという団体で学
び,認定講師として自らトレーニングを実施しながら,
研究を行っています.
■現在の研究テーマ
1.アサーティブ・トレーニングの効果
のような過程を経て,何がどう変化するのか
教育,医療・福祉,企業などさまざまな現
を検討することで,トレーニングのプログラ
場でアサーティブなコミュニケーションを身
ムの改善も可能となります.
に付けるための研修や講座が開かれていま
す.私自身,トレーナーとして,また学習者
31
2.人間関係における対等性の理解
として,アサーティブ・トレーニングと関わ
アサーティブネスの土台は自他尊重です.
っている中,学びを通じて人は変化可能であ
コミュニケーションをとる際に,相手を見下
るという実感を持っています.しかし,「実
すことなく,かといって,自己卑下するわけ
感」は実証的に検討されねばなりません.ど
ではなく,役割や立場で上下関係があったと
そこで,トレーナーを対象にインタビュー
しても,人と人として互いに尊重することが
やアンケートを実施し,アサーティブネスに
求められます.
おける対等性の具体的要素の抽出,整理を行
人間関係における対等性について,このよ
っています.
うに説明されると,多くの人は確かに大事な
ことであると同意はするでしょう.しかし,
「でも現実には無理でしょう」ということば
3.社会心理学の歴史
が続くこともしばしばあります.また,「理
留学先であったカナダで日本の社会心理学
念」としてはわかるが,具体的にはどうすれ
について紹介をする機会があり,その際,社
ばいいのか,という疑問もわいてきます.
会風土と社会心理学の関係について論じまし
トレーニングを行う上で,こういった疑問
た.数年前から「心理学史」を担当するよう
に明確に答えていく必要があります.しか
になったこともあり,またその関心が戻って
し,これまでの心理学には,コミュニケーシ
きています.近年の日本の社会心理学の文化
ョンにおける対等性とは具体的にどのような
的特徴があるのかないのか,考えてみたいと
ことが含まれるのか,といった疑問に答える
も思っています.
ものはありません.
●論文・著書等
堀田
美保 (2009)
「対等」という語に対する一般的イメージについての一考察
近畿大学文芸学部論集
文学・芸術・文化,第21巻,第1号,15-39.
堀田美保(2013)
.アサーティブネス・トレーニングの効果研究では何が測られているか
近畿大学総合社会
学部紀要,第3巻,第1号,35-48.
堀田美保(2013)アサーティブネス・トレーニング効果研究における問題点
堀田美保(2015)
.アサーティブネスにおける「対等性」の要素 ―
から
教育心理学研究,61,412-424.
アサーティブネス・トレーナーの語り
近畿大学総合社会学部紀要,第 4 巻,第1号, 1-25.
大越愛子・堀田美保(編著)(2001).現代文化スタディーズ 晃洋書房
堀田美保訳(2005)
.社会心理学が描く人間の姿
バー著 ブレーン出版
1987年3月26日 学術修士(大阪大学)
1992年6月12日 Doctor of Philosophy (Psychology)
CANADA Carleton University
▲趣味等
もともとは体を動かすことが好きでしたが,この頃はあまりその時間がとれていません.今の
私の趣味的時間とは,我が家の猫たちの観察,そして彼らとの対話でしょうか.心が和みます.
◆ゼミの宣伝等
本ゼミで扱うテーマは多様です.ゼミ生のみなさんが,それぞれの関心に沿って見つけてきます.
SNS上でのコミュニケーション,一人で行動すること,ファンやオタクの心理など,現代的な問題へ
の関心も高いようです.他にも,人間関係や自己認識にかかわるテーマが多く研究されています.
ゼミでは,まずは自分の考えを述べること,それが最重要視されます.
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知覚心理学/実験心理学
Keywords : 感覚、知覚、視覚、奥行き知覚、両眼立体視、嗅覚、嗅覚イメージ鮮明度
◆研究概要等
心理系専攻
専門は実験心理学をベースとした知覚心理学の
研究です。しかし、応用的な研究にも数多く関わっ
感覚・知覚研究室
てきました。ヒトと電気通信の基礎技術や通信・放
教授
送関係では、3'ディスプレイとヒトの視覚応答、情
須佐見憲史
すさみけんじ
報通信の分野では映像とニオイによる臨場感など、
susami@socio.kindai.ac.jp
多岐にわたります。博士論文(論博)のタイトルも、
およそ心理学の論文とは思えないような題名になっ
ています。ようやく年に、「知覚」という用語を
使った著書(単著)を出版したり 、年には、
「心」や「視覚心理」といったキーワードが入った著
書(分担執筆)が出版され、ようやく心理学者らしく
なりました。
現在は、「視知覚と眼球運動」や「運動視差によ
る奥行き知覚」、といった本来の専門分野の実験
研究を共同で行っています。しかし、相変わらず
「日本語版嗅覚イメージ鮮明度質問紙の試作研究」
http://researchmap.jp/susami
http://www.kindai.ac.jp/sociology/staff/psyc
hology/
http://www.irc.atr.jp/member/
や、「ドライビングシミュレータと心拍・呼吸反応」、
「周辺視野への視覚刺激を用いた注意誘導」 、
「歩行者の視覚的気づき」などの応用研究にも共
同研究者として参加しています。
■研究テーマ等
両眼立体視の研究
ヒトを含め多くの動物は2つの眼を持ってい
としている写真です。
ます。したがって3次元の世界の視覚像は両眼
の網膜には、少しだけずれが生じます。これは
一般には両眼視差(専門的には両眼網膜像差)
とよばれてます。一部の市販3' ディスプレイ
は、この手がかりをうまく利用して、見かけ上、
奥行きが知覚されるように作られています。本
研究室では、現在、3台の40インチ4. ディ
スプレイを利用して、3' ディスプレイを試作
し、両眼立体視の研究を始めようとしています。
3KRWR一台のディスプレイから光学系(表
3KRWR はその前段階として、1台のディスプ
33
レイでデモ用の3' ディスプレイを試作しよう
面鏡)を使って3' ディスプレイを試作中。
他にも、「奥行き運動知覚」、「周辺視野への
視覚刺激を用いた注意誘導」など、実験装置の
環境整備とともに、主に奥行き知覚の研究を中
心に進めようとしています。
●論文・作品・表彰・特許等
1) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000004787831
2) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000004758962
3) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000006684491
4) CiNii(NII学術情報ナビゲータ)Dissertations-日本の博士論文をさがす http://ci.nii.ac.jp/d/search
須佐見憲史 奥行運動の視覚情報処理過程,中京大学博士心理学乙第号1998-03-19.
5) 心理学モノグラフ1R 須佐見憲史奥行運動知覚の視覚情報処理過程
http://www.psych.or.jp/publication/monograph.html, accessed July 30, 2016.
6) 「心の状態を測る」視覚心理入門-基礎から応用視覚まで-第章畑田豊彦須佐見憲史
担当共著オーム社年月
7) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000319071235
8) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000237725641
9) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000296674756
10) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000319071345
11) http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000318561125
▲趣味等
趣味は、山歩きとジャズ鑑賞(オーディオも含む)です。
3KRWR柳生街道経由で春日奥山遊歩道を抜
3KRWRあるジャズバーにてピアノにもたれ、
け夕暮れの若草山から奈良の街や生駒山を望む。 ジャズを聴きながら、ほっと一息(店主撮影)
奥行き知覚の手がかりが満載。
◆ゼミの宣伝等
視覚、聴覚、嗅覚(ただしニオイ呈示はなし)、前庭系感覚などを中心に、多様な卒業論文のテ
ーマを受け入れています。例えば、「両眼立体視と視野闘争」、「錯視研究」、「周辺視の動きと
注意誘導や眼球運動」、「色覚」、「顔の知覚」、「視覚誘導性自己運動感覚(ベクション)」、
「ラバーハンドイリュージョン」や「心理的時間」などのプロジェクト研究も行っています。
34
Keywords :
心理療法、フォーカシング、教育相談体制、保護者対応
◆研究概要等
27 年間の教育委員会勤務を含む高等学校で
の教員生活や大学相談室での長年の心理臨床
活動、教職大学院での教員経験を活かして実際
に児童生徒・保護者、教職員、クライエントの
役に立つ実践的な研究を目指してきました。
心理系専攻
教授
こいずみ
りゅうへい
小泉 隆平
koizumi@socio.kindai.ac.jp
心理臨床の深い営みについて臨床心理学を
通して読み解き、人々の成長に寄り添う研究を
行うとともに、研究成果について専門家以外の
人々も理解し活用できるようにすることが大
切と考えています。
人の心というものは、浅はかにも理解できた
と思ったとしても、実は全く理解できていなか
ったのだと後になって気づくことがあります。
研究対象には常に謙虚に向き合うことが必要
です。
■研究テーマ等
1.心理療法の態度や方法に関する研究
心理療法が効果的であるためのクライエン
トとセラピストの態度にはそれぞれどのよう
な要因があるのか?
クライエントが向き合えないテーマを心理
面接でどのように扱うことができるのか?
人の話を聴くときに何が起きているのか?
そのような問題意識をもって心理臨床の営
みを臨床心理学、なかでも PCA(PersonCentered Approach)やフォーカシングの立場
から研究しています。
どの学派においても重要な心理臨床活動の中
核となる人との関係性のもち方について扱っ
ています。そこで起きていることをからだで
感じ取り、実感をもつことを大切にしていま
す。
35
2.学校教育相談体制に関する研究
学校における公的な児童生徒支援体制に加
えて、教職員等による自然発生的な児童生徒
支援チームが学校内でどのように効果的に機
能するか?
校内教育相談事例カンファレンスの効果的
な方法とは?
集団教育における個別支援の位置付けと個
別支援を行う教職員の負担感の軽減への工夫
とは?
保護者との円滑なコミュニケーションのあ
り方とは?
以上のようなことに関心をもって研究を行
っています。
実際に学校現場と連携して生徒の学校適応
の向上に役立てるよう共同研究を行っていま
す。
●主な論文・著書・表彰
1
本間友巳・内田利広・小泉隆平ら
不登校・ひきこもりと居場所 2006 年 12 月
ミネルヴァ
書房
2
小泉隆平
学校からの報告(7)別室登校をどう考えるか
pp.144-152
3
2013 年 2 月
「子どもの心と学校臨床」第 8 号
遠見書房
本間友巳・竹内伸宜・山本彰子・藤田恵津子・小泉隆平ら
「日本語教室」における来日・帰
国外国人児童生徒への支援の現状と課題-日本語教室担当者への聞き取り調査を通して-
2005 年 3 月
4
小泉隆平
「京都教育大学紀要」
小泉隆平
程
6
第23巻第2号
2008年6月
小泉隆平
小泉隆平
pp.62~68
2009年6月
日本学校教育相談学会「学校教育相談研究」
復讐心を淡々と語る男子中学生との面接過程―「第二の皮膚」の特徴をフォーカシ
2010年10月
日本心理臨床学会「心理臨床学研究」
第28巻
pp.467-478
小泉隆平
小泉隆平
摂食障害の女子高校生への援助事例-クラス担任の負担感の軽減に着目して-
日本学校教育相談学会「学校教育相談研究」
第21号
pp.24-31
クリアリング・ア・スペースを活用したフォーカシング技法の有効性-問題の核心
に直面することを避ける女子高校生の事例をとおして-
会「学校教育相談研究」
10 小泉隆平
第18号
pp.4-12
2011年7月
9
pp.244-255
日本学校教育相談学会「学校教育相談研究」
ング的態度につなげる工夫」
8
日本心理
クラス担任を中心とした自然発生的援助チームで支えた男子高校生の事例-教師カ
第19号
第4号
2005年6月
亡くなった母親のイメージを追い続けて不登校傾向になった女子高校生との面接過
ウンセラーの果たす役割と工夫-
7
pp.1-20
不登校女子高校生との同一セラピストによる母子並行面接
臨床学会「心理臨床学研究」
5
第 106 号
2014 年 6 月
日本学校教育相談学
第 24 号 pp.14-22
問題の核心に向かい合えず、そのテーマについて語れないでいた女性との面接過程
-“Thinking
About”とノートテイキングを用いて-
「人間性心理学研究」
第 32 巻第 1 号
2014 年 9 月 日本人間性心理学会
pp.45-56
11 東日本大震災支援業務に対する感謝状(京都府知事) 2011 年 9 月
12 東日本大震災支援業務従事職員等に対する顕彰(京都府教育委員会教育長) 2011 年 11 月
▲趣味等
山歩き、自然(温泉)や音楽に浸ること
◆ゼミの宣伝等
近大では来年度学部ゼミ1期生を迎えます。よく遊びよく学ぶゼミでありたいと思っています。
メッセージ
・まずは先行研究をしっかり読むことが大切です。皆さんには多くの文
献を読んでまとめることを期待します。
・心理学は人を対象に研究をします。研究対象に対して熱いハートで真
面目に取り組みつつ、同時に対象との距離をとって客観的に扱える力を
求めます。
36
ディーセント・ワーク、人とモノ・技術との望ましい関係
Keywords : 労働、健康、デザイン、ユーザビリティ
心理系専攻
◆研究概要
准教授
ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕
さとうのぞみ
事)や人とモノ・技術との望ましい関係のあり方につ
いて長年に渡り関心を持ち続けてきました。
ディーセント・ワークに関しては、主に、作業負荷
佐藤
望
nozomi.satoh@socio.kindai.ac.jp
の適正化、セクシャリティと職場における心身の健
康などの問題に関心があります。また、人とモノ・技
術との望ましい関係のあり方に関しては、主に、使
いやすいモノのデザインといった人間工学的な問
題や高度技術社会における技術倫理の問題など
に関心があります。
近年は以下のような研究を行ってきています。
http://researchmap.jp/read0181539/
■研究テーマ
1. 女性における荷物取扱い作業時の作業負担に
関する研究
め(例えば、作業負荷によって血圧は上昇しても、
心拍数が増加する場合もあれば、減少する場合も
女性就業人口の増加や、女性が就労可能な職
あるなど)、作業の性質と心血管系のストレス反応パ
域・職務の拡大によって、女性が身体的負担の高
ターンとの関連性を明らかにし、適切な評価指標の
い荷物取扱い作業に従事する機会が増えていま
体系化を目指した研究を行ってきています。
す。しかし、作業に対する安全対策に関わる知見
は十分には得られていません。そこで、荷物取扱
い作業時の背部、肩腕部、脚部の負担における性
3. 介助式車椅子操作時における身体的負担の軽
減化に関する研究
差を明らかにするために、単独および複数の作業
高齢化にともない高齢者の車椅子利用者が増加
者によって荷物の積み下ろし、運搬作業を行う際
しています。この状況に付随して車椅子の介助者も
の心身への負担について筋電図、心電図、負担感
増加いていくことが推測されます。これまで自走式
などを測定指標として検討を行っています。
車椅子については、操作者の身体的負担軽減化
や安全性確保の観点から多くの研究が実施され、
2. 精神作業負担の定量的評価に関する研究
37
仕様の改良や路面整備などに対する配慮事項の
精神作業を行うことによって生じるストレス反応を
提案がなされてきています。一方、介助式車椅子に
定量的に評価し、精神作業負荷の適正化に導くこ
ついては、同様の問題に関する知見は十分には得
とは、作業関連性の心血管系疾患を未然に防ぐ上
られていません。以上の理由により、平面やスロー
で重要です。この点について、脈波、負担感などを
プの昇降といった異なる床面移動条件下で介助式
指標として作業負担の評価を行っています。また、
車椅子を操作した時の介助者の身体的負担を筋
心血管系のストレス反応の動態は負荷する作業の
電図、心電図、負担感など測定指標として研究を
性質によって一律ではないことが示唆されているた
行いました。
4. 歩行補助車における把持部の形状と身体的負
担との関係に関する研究
止に向けた組織的取組の必要性を明確化するため
の研究に着手しました。心理学的なアプローチに加
高齢化にともない高齢者の歩行補助車利用数は急
え、セクシャリティのコマーシャリズム(商品化)による
速に増加することが予想されます。歩行補助車を用い
偏見や差別の助長に関わる問題について社会学的
て屋外を移動する場合、スロープ上の歩行時や段差
観点からの考察も試みています。
を乗り越える際などに、上半身や手首関節部に負担
がかかることが考えられます。そこで歩行補助車にお
ける把持部の形状と上半身の筋負担との関係を明ら
6. 超高齢社会におけるソーシャルキャピタル向
上のための支援体制創出に関する研究
かにすることにより、無理のない力、姿勢で操作できる
学内の共同研究プロジェクト(認知症高齢化社会
歩行補助車の把持部の形状について検討するため
の質の向上のための医工文理アプローチによる研究)
に筋電図などを測定指標として研究を行いました。
のサブテーマとして、認知症患者とその家族を地域で
支えていく仕組みづくりに関する共同研究に着手しま
5. 職場におけるセクシャル・マイノリティのメ
ンタルヘルスに関する研究
した。医療診断技術の飛躍的な進歩にともなう認知
症の早期告知は認知症進行の遅延化を図るための
近年、ダイバーシティマネジメントの一環として、ま
ケアをより効果的にとする上で重要なプロセスだと考
た、セクシャル・マイノリティへの人権的配慮に対する
えられます。一方、早期告知により、日常生活に急激
社会的責任の認識の高まりなどにともなって、セクシ
な変化がもたらされることから、深刻な心身の不調に
ャル・マイノリティの雇用促進に取り組む組織が増加
陥る方も少なくありません。この問題解決に向け、医
する傾向にあります。しかしながら、当事者が抱える
療診断技術の急速な進展が患者や家族に及ぼす影
心理的困難に対する職場での理解が不十分であるこ
響を心理学的観点に加え、生命倫理学的観点、医療
とによって、当事者がメンタルヘルスの不調に陥るケ
社会学的観点などからも考察し、認知症の早期発見・
ースも少なくありません。この問題解決に向け、当事
告知後における患者と家族を地域で支援するための
者に対する心理学的支援やセクシャルハラスメント防
方策を提案することを目指して研究を行っています。
●論文など
Sato, N. (2015). Considerations on diversity management for sexual minorities in the workplace. In Yamamoto S.
Shibuya, M., Izumi, H., Shih, Y.H., Lin, C.J., Lim, H. K.. (Eds.), New Ergonomics Perspective, (pp. 251-255).
Boca Raton, FL; CRC Press.
Sato, N. (2014). Sex differences in physiological and psychological load during manual handling task. Proc. of
Asia Pacific Industrial Engineering and Management System, CD-ROM.
▲趣味
インラインスケート、ランニング、伝統工芸鑑賞、香道など
◆ゼミの宣伝
作業負担の軽減化、モノのデザインと使いやすさ、感性の定量的評価といったテーマに研究関心があ
るゼミ生が多く所属しています。研究テーマ・研究手法の選定ではゼミ生の自主性を尊重していますが、
主に実験的手法を用いて研究に取り組みたい人が志望されることを期待しています。
38
健康・スポーツ・心理学
Keywords:スポーツ傷害、心理スキルトレーニング、コーピングスキル、運動の継続
 研究概要等
心理系専攻
スポーツ傷害の心理学、運動とメンタルヘル
ス、日本や海外のスポーツ選手を対象にコンサ
スポーツ心理学・健康心理学
准教授
ルティングに関する比較文化研究などを行って
います。スポーツ選手でも、受傷や競技の停滞
からメンタルヘルスに問題がみられることがあ
ります。スポーツ心理学の専門家として、アス
なおい あいり
直井 愛里
airinaoi@socio.kindai.ac.jp
リートのメンタルヘルスの向上を目的として研
究をしています。
米国では、共同研究を経験してきました。現
在、スポーツリハビリテーションの研究に関し
て、整形外科医、理学療法士などの専門家と共
同研究を進めています。他分野の専門家から知
識をいただき、スポーツ・健康心理学の理論が
どのように医療やスポーツ現場に活かせるのか、
研究と実践を通して検討しています。
http://researchmap.jp/spo
 研究テーマ等
1.スポーツ傷害の研究について
受傷後、長期間のリハビリテーションを必要
2. 運動行動と生活習慣について
運動を継続するために、セルフモニタリング、
としているアスリートは、焦りや不安を感じる
目標設定などを用いて、運動量と心理面・身体
ときがあります。そのため、アスリートに対し
面の変化に関する検討しています。また、大学
てリラクセーションや認知トレーニングなど
生の運動行動を妨げている要因や運動行動に
の心理スキルトレーニングを実施し、心身の回
関連している生活習慣などについて調査をし
復やスポーツの復帰への効果を検討していま
ています。
す。また、前十字靭帯再建術前後に調査を実施
し、スポーツ選手の楽観性、コーピングスキル、
3.卒業論文
気分、痛みと回復度の関連について研究してい
卒業論文のテーマは、スポーツ・健康心理学
ます。現在は、スポーツリハビリテーションコ
の領域で、学生の興味・関心に合わせて実施し
ーピングスケールを開発しています。この研究
ています。スポーツでは「あがり」「競技意欲」
では、受傷選手の心理的特徴をリハビリテーシ
「競技不安」など、健康では「運動習慣」「食
ョンの初期段階で予測できるようになること
習慣」「睡眠」などのテーマが中心です。また、
を目的にしています。
大学生アスリートを対象に、目標設定とセルフ
モニタリングが競技意欲に与える影響について、
介入研究を計画しています。
39
 論文・作品・表彰・特許等
1. Naoi, A., & Ostrow, A. (2008). The effects of cognitive and relaxation interventions on injured athletes’
mood and pain during rehabilitation. Athletic Insight: The Online Journal of Sport Psychology, 10(1).
http://www.athleticinsight.com/Vol10Iss1/101IssueHome.htm.
2. Naoi, A., Watson, J., Deaner, H., & Sato, M. (2011). Multicultural issues in sport psychology and consultation. International Journal of Sport and Exercise Psychology,9(2), 110-125.
3. 直井 愛里 (2013). 健康増進プログラムが成人女性の身体活動量および体力及ぼす効果
近畿
大学臨床心理センター紀要 6, 51-63.
最終学歴
Doctor of Education (米国ウェストバージニア大学)
スポーツ心理学
資格
臨床心理士
スポーツメンタルトレーニング上級指導士(スポーツ心理学会認定)
スポーツコンサルタント(国際応用スポーツ心理学会認定)
スポーツの経歴
大学まで硬式テニスを専門とし、様々な試合に出場していました。
国体3位(テニス:茨城県代表)、全日本学生テニス選手権 シングル・ダブルス Best 16
全日本テニス選手権出場(シングルス)
 スポーツコンサルティング・カウンセリングの活動について
中学生アスリートからプロ選手、スポーツの指導者、スポーツ選手の家族を対象に、スポーツ選
手の競技力やメンタルヘルスの向上を目的としたメンタルトレーニング、カウンセリングを提供し
ています。各アスリートや指導者のニーズに合わせて、目標設定、イメージトレーニング、リラク
セーション、チームビルディング、カウンセリングなどを実施しています。
 趣味
旅行・テニス・ピアノ・スポーツ観戦
 ゼミの宣伝等
同学年だけではなく、3年生と4年生の交流も大切にしています。スポーツ経験者が多いので、明
るく、活発な学生が多いのが特徴です。ゼミ生の進路として、進学(大学院:スポーツ心理学専攻)、
専門学校(理学療法士)、教員、公務員、プロのサッカー選手など、進む道は幅広く、様々な領域
で活躍しています。
40
適応的⾏動の制御メカニズム
Keywords: 潜在学習,作業記憶,注意,潜在/顕在意識
◆研究概要等
⼼理系専攻
専⾨は認知⼼理学です。認知⼼理学は,広く
認知⾏動研究室
⼈間の知的⾏動を⽀える仕組みを明らかにす
准教授
る⼼理学の⼀領域ですが,ここで⾔う「知的」
とは⼀般的な意味合いでの賢さとか要領の良
えんどう のぶたか
遠藤 信貴
さなどを指すのではなく,私たちが普段の⽇常
endo@socio.kindai.ac.jp
⽣活の中で当たり前に⾏っている種々の⾏動
のことです。私たちは⽇常⽣活において常に状
況に応じた適切な⾏動をとることができます
が,それは過去に経験した出来事を知識として
取り込み,その知識を適切に利⽤することがで
きるからです。こうした環境への適応的⾏動が
獲得されていくプロセスがどのようにすれば
効率化できるのかということが,研究の根本に
ある問題意識であり,記憶や学習,注意の働き
などの⾼次認知機能の側⾯から研究していま
す。
■研究テーマ等
https://sites.google.com/a/socio.kindai.ac.jp/
nendo/
1. 反復経験に伴う⽂脈的知識の獲得と適
獲得過程はこの潜在学習によって説明するこ
私たちの⽣活環境は千差万別であり,⾮常に
験によって明らかにしつつ,効率的な技能習得
複雑です。それでも私たちは何の苦労を⾃覚す
のための訓練⼿法の開発などの応⽤可能性を
ることもなく,適応的な⾏動を取ることができ
模索しています。
応的⾏動の制御に関する研究
ます。⼀⾒当たり前のように感じるかもしれま
せんが,実は,私たち⼈間は⽣活環境に内在す
る規則性や関係性(物の配置や組み合わせ)を
41
http://researchmap.jp/read0137584
とができます。⽂脈の潜在学習の諸相を⼼理実
2. 潜在/顕在的知識の付与による⾏動選択
の揺れと安定性に関する研究
知識として獲得し,巧みにその情報を⽤いるこ
私たちは⽇々様々な意思決定・判断を求めら
とができるからこそ,適切な⾏動を瞬時に起こ
れますが,その多くは不確定要素を含むもので
すことができるとされています。この規則性や
あるため,何がベストであるかの確信を持って
関係性のことを⽂脈と呼んでおり,適応的⾏動
判断することはできません。通常は,⾃分⾃⾝
の基盤として⽂脈の潜在学習の重要性が指摘
の経験や何となくの思い込みに従うか,他者か
されています。潜在学習とは,学習意図を伴わ
らのアドバイスに頼るかによることになりま
ない偶発的な学習のことであり,広くスキルの
す。実際,私たちの意思決定判断(⾏動選択)
は,⾃分⾃⾝の内的状態や周囲の状況によって
⼀定の妥当性をもつ知識)や顕在的知識(外的
揺れが⽣じるものですが,この⾏動選択の揺れ
に明⽰的に⽰される知識)がどのような影響を
や安定性において,潜在的知識(経験を通じて
与えるのかについて検討しています。
培われた,⾔葉で明⽰的に⾔い表せないものの,
●論⽂・作品・表彰・特許等
1. 遠藤信貴 (2016). 変化検出課題における空間レイアウトの⽂脈学習. 近畿⼤学総合社会学部紀
要, 4, 1−13.
2. Honma, M., Endo, N., Osada, Y., Kim, Y., & Kuriyama, K. (2012). Disturbances in equilibrium
function after major earthquake, Scientific Reports, 2, 749, 1−8.
3. Endo, N., Nagai, M., & Kumada, T. (2009). Objective estimation of state of understanding by
near-infrared spectroscopy (NIRS). Japanese Journal of Psychonomic Science, 28, 2−16.
4. 遠藤信貴・武⽥裕司 (2008). 全体または局所レイアウトの繰り返しにおける⽂脈⼿掛かり効果.
⼼理学研究, 78, 583−590.
5. Endo, N. & Takeda, Y. (2005). Use of spatial configuration is restricted by relative position in
implicit learning. Psychonomic Bulletin & Review, 12, 880−885.
6. Endo, N. & Takeda, Y. (2004). Selective learning of spatial configuration and object identity in
visual search. Perception & Psychophysics, 66, 293−302.
7. 2004 年 3 ⽉:博⼠(学術)(名古屋⼤学)
8. 2008 年 9 ⽉ 20 ⽇
2007 年度⽇本⼼理学会優秀論⽂賞
受賞
▲趣味等
わたくしは,趣味らしい趣味は持っていませんが,ドライブは好きです。出⾝が関東なので,ま
だまだあちこちに⾞で出かけては楽しんでいます。その他,船舶免許を持っているので,プレジャ
ーボート,マリンジェットには興味があります。所有しているわけではないので,なかなか遊ぶ機
会はありませんが。
◆ゼミの宣伝等
わたくしのゼミでは,認知⼼理学およびその周辺領域において,広く⼈間の「知」に関わる問題
をテーマとして研究指導をしております。研究は実験という⼼理学の基本的⽅法が主になります。
認知⼼理学にまったく興味がない,実験だけはやりたくない,という気持ちが強い⽅には合わない
かもしれませんが,例えば,臨床志望であっても学部ではしっかりと基礎⼼理学を⾝につけたいと
いうモチベーションさえあれば,きっと充実した⽇々を送ることができると思っています。ゼミの
学⽣と酒を飲みながらあれこれ話をするのが好きですので,不定期にそういう場を設けています。
また,夏休み中のゼミ合宿も恒例⾏事としていきたいと思っています。
42
Keywords :メンタルヘルス,うつ病,不安障がい,復職支援,認知行動療法,問題解決療法
◆研究概要等
心理系専攻
これまで,医療現場・産業現場を中心に,メンタ
臨床心理学 研究室
ルヘルス不調者,特にうつ病や不安障がい患者の
准教授
問題解決プロセスの特徴を調べてきました.メンタ
もとおか ひろこ
ルヘルスが不調である場合,効果的な問題解決が
本岡 寛子
困難となり,さらに,状態が悪化し,悪循環に陥るこ
とが明らかになっています.
h_motooka@socio.kindai.ac.jp
そこで,不調から抜け出すための糸口を見つけ
出す支援プログラム「問題解決療法」を構築し,
様々な臨床・教育の場で,その効果を検討していま
す. 近年の研究として,(1)メンタルヘルス不調によ
る休職者の復職支援プログラム,(2)がん患者の心
理的苦痛の緩和を目指した介入プログラム,(3)大
http://researchmap.jp/hiroko.motooka
学生の抑うつや不安の緩和を目指した介入プログ
ラム,(4)大学生のコミュニケーション力の向上を目
指した実習プログラム等があります.
◆研究テーマ等
1.メンタルヘルス不調による休職者の復職
支援プログラムに関する研究
近年,癌の罹患率が増加すると共に,治療の
長期化,副作用,再発不安等で心理的苦痛を抱
近年,適応障がいやうつ病等の気分障がいで
える患者の心理的支援が求められています.
休職する就労者が増加しています.そこで,問
我々は,「がん患者の心理的苦痛を緩和する問
題解決療法を基盤とした復職支援プログラム
題解決療法」を構築し,その効果を検討してき
を構築し,その効果を検証してきました.さら
ました.現在は,そのプログラムの効果検証の
に,2015 年 12 月には,就労者のストレス・チ
みならず,緩和ケアに携わっている医療関係者
ェックが義務化されたことにより,チェック後
等を対象とした実施者養成プログラムの開発
の高ストレス者に対するフォローの在り方が
を進めています.
模索されています.休職者の復職支援・再発予
防のみならず,高ストレス者の早期発見・早期
3.大学生の抑うつ・不安の緩和と予防に関
介入プログラムを構築し,ラインケア研修やセ
する研究
ルフケア研修における有用性についても検討
をはじめています.
近年,うつ病や不安障がい等の低年齢化が問
題となっていることから,大学生を対象とした
介入及び予防プログラムの開発と,その効果検
43
2.がん患者の心理的苦痛の緩和を目指した
証が進んでいます.我々も,大学生を対象とし
介入プログラムに関する研究
た講義形式のプログラムや,学生相談室と連携
して,相談者を対象としたプログラムを構築し,
大学生のコミュニケーション力を高めると共
その効果を検討してきました.さらに,「就業
に,その理論的背景についても理解を深めるこ
後のメンタルヘルス不調予防のための大学生向
とを目的とした「コミュニケーション心理学実
けキャリア教育プログラムの開発」に関する共
習(担当者:直井,大対,堀田(美),本岡)」
同研究を進めています.
を2016年度より開講しました.実習プログラム
の構成,進め方等を検討し,その効果について
4.大学生のコミュニケーション力の向上を
検証していく予定です.
目指した実習プログラム
◆論文・作品・表彰・特許等
1: 本岡寛子・中川(井上)裕美・枚田香(2015).トピック3 ストレス 現代社会と応用心理学4 ク
ローズアップ「メンタルヘルス・安全」福村出版
2:本岡寛子(2014). ストレスマネジメント力を身につける‐認知行動療法をヒントに‐.奈良大学
臨床心理クリニック紀要,6,50-58.
3:本岡寛子(2012).「うつ病に対する非薬物療法の有用性:各治療法と薬物療法の効果の比較」
うつ病に対する問題解決療法.Japanese Journal of Clinical Psychopharmacology ,
138, 53-58.
4:本岡寛子・長見まき子・藤原和美(2011). 復職支援プログラム参加者を対象とした集団問題解決
療法の有用性‐問題解決に伴う社会的問題解決能力と情緒状態の変化‐. 関西福祉科
学大学EAP研究所紀要, 5, 17-26.
5: 本岡寛子(2011).「がん患者への認知行動療法」Monthly Book Medical Rehabilitation,全日本
病院出版会
6: 本岡寛子(2010).大学生を対象とした集団問題解決療法プログラムの作成の試み.総合福祉科学
研究,創刊号,57-64.
7: 明智龍男・平井啓・本岡寛子(2009).「不安と抑うつに対する問題解決療法」金剛出版
◆趣味等
夏は水のあるところへ,冬は雪のあるところへ旅行に行きます。旅行先に地ビールと猫がいると,
なおさら,嬉しいです.
1: 水泳
2: スキー
3: 国内・海外旅行
4: 猫と遊ぶ
5: 地ビール巡り
◆ゼミの宣伝等
心理療法の1つである認知行動療法を基盤とした心理アセスメントや介入プログラムの開発を行
っています.青年期以降のうつや不安を専門にしていますが,最近では,高齢者心理にも領域を広
げつつあります.ゼミでは,食事会等を開催して親睦を深めています。
44
人生を豊かにする生涯学習の心理学
Keywords
:がん患者 認知症患者 家族コュニケーション 意思決定 後悔
研究概要
風邪をひいて体調が悪いといつもより悲観的にな
ったり、肌の調子が悪いと考えが卑屈になったりした
ことはありませんか?身体と心の状態が関連している
ことは、日常で感じることも多いのではないでしょうか。
私はこれまで主に、「がん」という大病に直面した
患者さんとご家族を対象に、心理学的側面からその
心理系専攻
准教授
しおざき まりこ
塩﨑麻里子
博士(人間科学)
経験を理解し、支援方法を提案するサイコオンコロジ
ーを専門としてきました。
心身の状態は関連しているので、がんの診断を受
けたとき、再発が判明したとき、治す手立てがなくな
ったとき、自分らしく現実に向き合うのは簡単なことで
はありません。病と向き合う状況でも、自分らしく治療
や人生を選択していくために心理学を役立てたいと
考え、研究を続けています。
最近は、認知症の患者さんやご家族の支援、病
気になる前の家族関係の在り方についても関心が広
がり、生涯発達の視点で人生を豊かにするために心
理学を活かすことに興味をもっています。
Mariko SHIOZAKI
shiozaki@socio.kindai.ac.jp
http://researchmap.jp/mariko_shiozaki
研究テーマ
1.がん患者とその家族の意思決定支援
人生の最期を決定する意思決定は、客観的で合理
家族の一員ががんになると、患者だけでなく家族にも
的な選択が最良とは限りません。そこで、“後悔を減ら
大きな影響があります。家族は、闘病と仕事や家事、
すこと”を、終末期のがんの治療選択におけるひとつの
子育ての両立に疲弊した状況で、患者への接し方に思
落としどころとして研究を行ってきました。
い悩み、患者より心理的不適応状態に陥ることも少なく
心理学分野における先行研究では、後悔が生じや
ないことが報告されています。このような状況で、患者
すい条件や、後悔をしやすい意思決定スタイルが明ら
と家族の間のミス・コミュニケーションは生じやすく、両
かになっています。日本のがん医療における意思決定
者の適応に深刻な影響を及ぼすことがあります。
は、本人だけでなくご家族が大きな影響を及ぼすこと
これまでに乳がん患者と配偶者を取り上げ、夫婦間
が多いという背景から、本人とそのご家族を含めて、
のミス・コミュニケーションを研究してきました。男女のコ
後悔の少ない意思決定支援の在り方について提案を
ミュニケーションの違いを土台として、がんという特殊性
行っています。
が加わることで、よりネガティブな影響が強まる状況を
また、近年の急速な高齢化を背景に、意思決定に
おける加齢の影響も加味した研究を行っています。
45
2.がん患者の夫婦間コミュニケーション
量的・質的アプローチで明らかにしてきました。配偶者
向けのウェブサイトを立ち上げて情報提供しています。
3.認知症患者の家族の代理意思決定支援
学内の共同研究プロジェクト(認知症高齢化社会の
たいと考えています。
4.いのちの教育の在り方とその効果
質の向上のための医工文理アプローチによる研究)の
人は生まれたからには、誰でも死を迎える運命にあ
サブテーマとして、認知症患者とその家族を地域で支
ります。しかし、人生の終わりを決める病気は、そもそも
えていく仕組みづくりに関する共同研究を行っています。
かかるのか?それは、どのような状況で、いつなの
認知症は、本人の認知機能が低下していくために、
か?そのすべては、誰にも予測することはできません。
意思決定能力が蝕まれていく病といえます。患者を支
今を生きる私たちにできるのは、あるのでしょうか。
える家族は、患者の人生の最期を代理で意思決定し
大学の授業の枠組みにおいて、生きていく上でのレ
ていく場面にも多く遭遇します。がん患者と家族の意
ジリエンスを高めるためには、どのような教育が効果的
思決定との共通点や相違点を整理したうえで、家族が
で、どのような工夫が必要なのか、ゼミ学生と共同で
後悔しない意思決定支援について提案を行っていき
継続的に研究を行っています。
論文・著書
👉👉Shiozaki M, Hirai K, Dohke R, Morita T, Miyashita M, Sato K, Tsuneto S, Shima Y, and Uchitomi, Y. Measuring
of the regret of bereaved family members regarding the decision to admit cancer patients to palliative
care units. Psychooncology 17, 926-31, 2008.
👉👉塩崎麻里子・中里和弘 遺族の後悔と精神的健康の関連:行ったことに対する後悔と行わなかったことに対す
る後悔 社会心理学研究 25,211-220,2010.
👉👉Shiozaki M, Hirai K, Koyama A, Inui H, Yoshida R, and Tokoro A. Negative Support of Significant Others
Affects Psychological Adjustment in Breast Cancer Patients. Psychology & Health 26, 1540-51, 2011.
👉👉塩﨑麻里子・酒見惇子・佐藤貴之・江口英利・種村匡弘・北川透・伊藤壽記・平井啓 問題解決プロセスを応
用した膵臓がん患者の心理社会的問題と対処法リストの作成:外来において化学療法加療中の膵臓がん患
者を対象として Palliative Care Research 10, 186-193, 2015.
👉👉塩﨑麻里子 “いのちの教育”を受講した大学生の死生観の量的・質的な変化 近畿大学総合社会学部紀要
4, 57-68. 2016.
趣味
👉👉美味しい酒どころめぐり
「とりあえず、ビール!」から始まり、ワインや焼酎、ブランデー、日本酒…美味しいお酒が大好きです。お酒にぴっ
たり合う食事を五感で楽しみ、その場を囲む人と時を共有する。最高に幸せを感じる瞬間です。
👉👉植物とのふれあい
観葉植物や果物や実のなる植物を育てたり、季節のお花を咲かせるのが好きです。
ゼミの宣伝
卒論のテーマは、意思決定・後悔・親子関係・結婚観・死生観・etc…
と様々です。ゼミは、集まる人によって、作り出される雰囲気が全く違って、
毎年、本当に面白いです。楽しく、そして真剣に学びたい人は、その空間を
自分たちで作る自覚をもって、ぜひ、塩﨑ゼミに集合してください!
46
応用行動分析に基づく子どもの学校適応支援
Keywords :応用行動分析,学校適応,ソーシャルスキルトレーニング,特別支援教育
研究概要
私の専門は心理学の中でも応用行動分析とい
心理系専攻
う領域です。応用行動分析とは,ヒトや動物の
准教授
行動獲得のメカニズムを応用し,問題となる行
おおつい
動の修正や,またより適応的な行動を形成する
大対
かなこ
香奈子
k_otsui@socio.kindai.ac.jp
ための支援をし,その効果をデータに基づき検
証するという研究・実践分野です。私は主に,
学校現場の特に通常学級において見られる,私
語や指示への非従事,授業中の立ち歩きや学習
困難といった問題行動を扱って,研究活動や実
践活動を行っています。また,子どもの社会性
発達が学校適応に及ぼす影響についても関心が
あり,社会性を育むソーシャルスキルトレーニ
ング(Social Skills Training; 以下SST)を小学
https://researchmap.jp/kanakotsui/
校や福祉施設などで実施し,その効果検討を行
う研究も実施してきました。
研究テーマ
1.学校コンサルテーション
現在,徳島県の教育委員会と連携して,「徳島
47
2.支援員による学校適応支援の効果
2014 年 9 月より,近畿大学の近隣の小学校 2
発!発達障害等『とくしま支援モデル』充実事業」
校,幼稚園 2 園において,学生を支援員として配
において小学校の通常学級や特別支援学校での
置し支援活動を行っています。応用行動分析を学
コンサルテーションを行うアドバイザーチーム
んでいるゼミの 3 年生と 4 年生の学生をボランテ
の一員を務めています。この事業では,1 校につ
ィアの支援員として,各学校園に 4 名程度ずつ派
き年に 2 回のコンサルテーションを行い,1 回目
遣し,それぞれの学生が週 1 回ずつ決まった曜日
のコンサルテーションで児童生徒の問題行動に
に学級で学習面や行動面で困難を抱える幼児・児
ついてのアセスメントと支援計画をし,2 回目の
童に支援を行っています。支援の内容については,
コンサルテーションまでにデータを取って,問題
毎回支援レポートという形で報告させ,子どもと
行動が改善しているかの経過を確認します。2 回
の関わり方や支援の仕方について学生に助言や
目のコンサルテーションでは支援の成果につい
指導を行い,学校園からの要請があれば支援対象
て検討し,必要に応じて支援計画の内容の修正を
となっている子どもの様子や学級の様子を私が
提案します。年度末には事業の成果報告会があり,
見に行き,先生方に直接アドバイスをするなどし
各学校での実践的取り組みについてデータを示
ています。大学と地域との連携プロジェクトとし
してポスター発表会を行い,学校間での情報交換
て,また学生の学びの場としても有意義な活動で
を行います。
す。
3.福祉施設等における発達障害児支援
4.公共マナー向上のための介入研究
放課後等デイサービスを行っている福祉事業
ゼミ 3 年生と行う研究プロジェクトでは,毎年
所で,発達障害の児童生徒への学習支援や SST
公共マナー向上のための介入研究を行っていま
を実施している学生スタッフや事業所のスタッ
す。扱う具体的な内容は,その年の学生の関心に
フに対し,支援プログラムの提案やその効果の検
よって変動はしますが,これまでに取り組んでき
証をデータに基づき行っています。データ収集に
たテーマとして,キャンパス内の喫煙禁止区域で
よる効果検証は,研究のためという目的だけでは
の喫煙行動,キャンパス間をつなぐ横断歩道上で
なく,行っている実践がどれほど効果的であるか
の歩きスマホ,ゴミの分別,授業中の私語,授業
を常にモニターしながら,必要に応じてすぐにプ
への遅刻,キャンパス内での自転車の安全な走行
ログラム内容を修正するという柔軟な対応がで
等を対象として,介入研究を行ってきました。ま
きるようにするためでもあります。このような実
ずはベースラインとして現状,それらの行動がど
践的研究の一部は,ゼミの学生の卒業論文として
の程度の頻度で見られるのかを観察によりカウ
もまとめて発表しています
ントします。その後,ポスターを掲示するなどし
て,公共の行動がどう変化するかを再度観察によ
り確認し,行った介入の効果を検討します。
論文・作品・表彰・特許等
1.大阪府立子どもライフサポートセンター・服部隆志・大対香奈子 (2014). このまま使える!子ど
もの対人関係を育てるSSTマニュアル -不登校・ひきこもりへの実践にもとづくトレーニング
-
京都:ミネルヴァ書房. (2014年9月発行)
2.大対香奈子・堀田美佐緒・竹島克典・松見淳子 (2013). 日本語版SLAQの作成:学校適応の規定要
因および抑うつとの関連の検討. 日本学校心理士会年報, 第6号, 59-69. (2014年3月発行)
3.大対香奈子・松見淳子(2010)小学生に対する学級単位の社会的スキル訓練が社会的スキル・仲間か
らの受容・主観的学校適応感に及ぼす効果 行動療法研究, 36 (1), 43-55. (2010年1月発行)
4.2010 年度 日本行動療法学会 内山記念賞受賞
5.2007年3月 博士(心理学)の取得(関西学院大学)
趣味
趣味は国内外に旅行に行くことです。今は子どもが小さいので,国内が中心ですが旅行中の非日
常的な体験を通して,自分についても家族についても新たな一面を発見することができ,それが何
よりの楽しみです。また,今は時間が作れずに実現できていませんが,子どもができる前はヨガも
やっていたので,そのような体を動かす活動も定期的にしていきたいです。
ゼミの宣伝等
私のゼミでは,小学校や幼稚園,福祉施設など,様々な現場で主に子どもを相手にしたボランティア
活動にほとんどの学生が従事しています。このような現場での経験は,現場の子どもたちのためにとい
うことはもちろんですが,何よりも学生自身の学びと成長に大きくつながる経験になっていると,ここ
数年の活動を通して感じています。
48
生涯発達・発達臨床
Keywords : 情緒-対象-言語の三項関係、自己成長・自己変容、メンタルヘルス、
関係性の問題、対人援助職
研究概要等
心理学の中でも臨床心理学、精神分析学、生
涯発達を専門分野としています。これまで臨床
研究、調査研究をしてきました。臨床研究では、
心理系専攻
臨床心理学研究室
乳幼児から老年期の幅広い対象にした心理臨
床において、カウンセリング(スクールカウン
講師
セリングを含む)、心理アセスメント、発達援
助、心理的援助を行ってきました。調査研究で
おくの ようこ
は、乳幼児期の母子関係の発達についての観察
奥野 洋子
研究、対人援助職のメンタルヘルスに関する調
査研究などを行ってきました。
研究テーマ等
現在関心のある主な研究テーマは次の内容です。
 対人援助職の自己成長とバーンアウト
医療・福祉・教育現場に携わる対人援助職の人々は、人を対象とした援助する仕事であるた
め、その仕事の大変さや困難さによる心身の負担感が大きく、バーンアウト(燃え尽き症候群)
に陥ったり、メンタルヘルスを害したりするため、休職や離職が多いことが問題となっていま
す。その一方で、対人援助の仕事を通して、自分自身が成長したとの実感(自己成長感)を抱
くこともあります。この自己成長感に着目し、バーンアウトとの関連や自己成長感を高める要
因などについての調査研究を行っています。
 精神疾患や身体疾患、発達障害を抱えた人、及びその家族への心理的援助
心理臨床において、うつ病などの精神疾患、さまざまな
身体疾患、発達障害を抱えた人に対して、病や障害を持ち
ながら生きていくことへの心理的援助を行っています。病
や障害を抱えている本人だけでなく、その家族に対しても、
本人の病や障害について正しい知識・理解、本人への適切
な対応・接し方などについての心理的援助を行っています。
 絵本の読み合いを通したコミュニケーション
絵本は、子どもの頃に親などから読んでもらった経験が多くの人々にあり、大変なじみ深い
ものです。「絵本は子どもが読むもの」とのイメージがある一方、近年は、大人向けの絵本も
49
作られ、絵本を楽しむ大人も増えてきています。また、絵本は、絵が主体であり、読み手に読
んでもらうという読み聞かせをすることが前提としています。絵を見ること、絵本を読む声を
聞くことを通して、情緒的にメッセージが伝ってきます。大人(大学生)どうしでも、互いに
絵本を読んでもらうこと、その感想を語り合うことが、共感性やコミュニケーション・スキル
に影響するのではないかと考え、研究を進めています。
論文・作品・表彰・特許等
(1) 児童生徒の心理と発達(2016):本間友巳・内田利広・編著 はじめて学ぶ生徒指導・教育相
談 金子書房.
(P.42-51)
(2) 対人援助職のストレス体験が 1 年後の自己成長感に与える影響に関する縦断的研究(2013)
:
近畿大学医学雑誌,第 32 巻 3・4 号,115-124.
(共著)
(3) 教師のメンタルヘルス(2013)
:近畿大学臨床心理センター紀要,第 6 巻,33-41.
(4) 面接者-来談者関係の二重性とその乗り越え(2008)
:近畿大学臨床心理センター紀要,創刊号,
117-127.
(5) 日本の育児—早期の重要な他者からの関わりの体験が、子どもの外界との関わりにどのような
影響を与えるか—(2000):第 3 回M.マーラー国際シンポジウム.
(6) 自閉的傾向のある幼児とその母親に対する発達相談(1999):九州・山口地区自閉症研究協議
会第 24 回宮崎大会,pp.18-19.
(7) 乳幼児期における、母親の子どもへの関わりと子どもの応答について—実証的観察研究の事例
分析より—(1999)
:九州臨床心理学会第 27 回大会論文集,30-31.
(8) 自分を出せない息子が気になってしまう女性との面接—親面接から本人面接へ—(1998):日
本精神分析学会第 44 回大会,162-164.
(9) 緘黙の意味と背景に関する一考察—「気持ち悪い」という言葉を手がかりにして—(1996):
第 3 回日本語臨床研究会抄録集,pp.10.
(10) ことばの遅れた子とその母親に対する発達援助—“できない自分”をめぐって(1995):九州
大学心理臨床研究,第 14 巻,43-52.
趣味等
など
研究室の宣伝等
手芸(ビーズアクセサリー、あみぐるみなど
小物作り)
、旅行、他
学生各自の自主性を重視することをゼミの
指導方針としています。自主的に、興味を追求
し、卒業研究を進めていってほしいです。
四国 88 か所を歩き遍
路で結願しました
研究室からの風景㻌
50
犯罪心理学
Keywords:非行・集団過程・社会的アイデンティティ
研究概要
犯罪心理学と聞くと,犯人は誰かとか,犯人の
心理系専攻
犯罪心理学研究室
講師:中川知宏(なかがわ ともひろ)
心の内を言い当てるというような研究をしてい
HP:QR コードを読み取ってください
るのではないかと思われることがありますが,決
E-mail:tnakagawa@socio.kindai.ac.jp
してそうした研究をしているわけではありませ
ん。犯罪心理学は心理学の一領域であり,理論に
基づいた仮説と定量的データをもとに,犯罪に関
する一般傾向の抽出を試みます。そして,そこか
ら犯罪や非行のような反社会的行動がなぜ生じ
るのか,そして,そうした行動にはどのような意
味があるのかということを考察します。
論文・書籍
中川知宏 (2016) 犯罪心理学事典 丸善出版 村
松励ほか(編) 分担執筆 (低自己統制理論,
研究テーマ
大学院時代から継続しているテーマは「集団
と非行」です。少年犯罪の特徴のひとつは,集
団性にありますが,なぜ集団で非行に関与する
のかということを少年たちの集団内における
相互作用過程(特に,少年たちの社会的アイデ
ンティティ)に焦点をあてて検証してきました。
また,非行に積極的に関与するような集団に身
を寄せるのはなぜかということを少年たちが
所属する集団とそれを取り巻く集団(例えば,
同級生や家族,地域住民など)との集団間関係
に焦点をあてて研究をしています。
現在は,以下のようなテーマにも関心を持っ
ています。

自己統制の特性的側面と状況的側面

地域住民による出所者の受容過程

非人間化と処罰動機

社会的排斥と関係再構築

サイコパシーの社会適応性
非行集団,文化的逸脱理論を執筆)
中川知宏 (2016). 非行集団と暴力犯罪. 大渕憲
一(監修)
紛争・暴力・公正の心理学, 北
大路書房.
中川知宏・林 洋一郎 (2015). 自己統制が逸脱行
動実行意図に及ぼす効果:自己統制の特性的
側面と状況的側面. 近畿大学総合社会学部紀
要, 4, 85-94.
上原俊介・中川知宏・田村達 (2015). 怒りの利
己性:公正敏感さは怒りの道徳感を誘起する
か. 実験社会心理学研究, 54, 89-100.
中川知宏 (2010). 集団非行の発生過程:非行の
集団過程モデルの実証的検討. 青少年問題,
57, 26-31.
中川知宏 (2010). 青年期の集団と非行:非行の
集団過程モデルの検証. 東北大学文学研究科
博士学位論文. 2010 年 6 月授与
趣味
趣味と言えるほどのものはありませんが,お
酒は大好きです。大学院時代,長らく住んでい
た東北地方(仙台市ですが)は米どころであり,
51
水どころでもあったので,日本酒のバリエーシ
果の集約,考察という手順を踏んで論文の形に
ョンがとても豊かです。それもあってか,お酒
仕上げていきますが,その過程において研究会
の中でも日本酒とビールが特に好みです。
や合宿での発表を行います。
ちなみに,東北地方では,9 月から 10 月にか
当研究室では,他領域の研究室や他大学との
けてコンビニに薪が置かれるのですが,これは
合同研究会や合宿を行っていますので,そうし
河原(仙台では広瀬川あたり)で芋煮会なるも
た場に参加し,発表を行うことでふだんとは異
1
のがあるためです。要は皆で温かい芋煮 を食べ
なる視点からの議論を通じて,ふだんは考えな
て,お酒を飲んで親睦を深めようという企画で
かったようなことを再考する機会にしてほし
す。当然,大阪では芋煮会はないので,秋ごろ
いと思っています。
また,通常の演習以外に年に数回ほど,学生
になると仙台が恋しくなります。
有志を募り,犯罪や非行に関連する専門機関で
研究室について
当研究室では,3 年時から卒業論文に向けた取
り組みを実施しています。3 年生前期は,犯罪
心理またはそれに関連する学術論文(英語)を
各自で探して,読むところから始まります。後
期は,前期に読んだ論文をもとに研究計画を立
て,指導教員を始め研究室のメンバーとの議論
を通じて,研究計画を改善していきます。4 年
生になると,調査あるいは実験的手法に則り,
データの取得を開始します。そして,分析,結
課外学習を実施しています。具体的には,少年
鑑別所刑務所,裁判所,地方検察庁などです。
こうした課外学習を通じて,決して犯罪とよば
れるものは私たちと縁遠いものではなく,加害
者にも被害者にもなりうるということを知っ
てほしいと思っています。その上で,犯罪や非
行に関与した人たち(同様に,被害にあった人
たち)がどのような経緯でそこに至り,どのよ
うに考えているのか,そしてどのように処遇さ
れて,社会に復帰するのかということを考えて
ほしいと思っています。
卒論題目

ストレインと非行の関係-社会的絆は調整
要因となりえるか-

社会は出所者を受け入れるのか?-出所者
との絆の再構築-

犯罪不安が犯罪数推定に及ぼす影響-調整
要因としての集合的効力感-

ゼミ合宿での集合写真(2015 年 8 月)
及ぼす効果-制御焦点による影響-

公正世界信念への脅威によって非人間化は
生起されるのか-自己制御資源と道徳的解
1
サトイモを中心として,色んな具材を鍋に投
入するが,宮城県と山形県ではレシピが微妙に
異なる。例えば,宮城は豚肉や野菜を味噌で煮
込むが,山形では牛肉やその他の野菜を醤油で
調味するのが一般的である。そのため,しばし
ば県民同士の葛藤が生じる。
社会的排斥が受容・排斥サインへの注意に
放から迫る-

Cheater’s high(悪事による気分高揚)-規
定因としてのスリルと自己正当化-
52