民間航空機に関する市場予測 2016-2035 2016 年 3 月 一般財団法人 日本航空機開発協会 市場予測 2015-2034 市場予測 2016-2035 まえがき 航空機産業は先端技術を駆使し、知識集約的で波及効果が大きく、産業構造の高度 化に有効なため、科学立国を目指す我が国にとって不可欠な産業として、その発展 と高度化には大きな努力が払われている。 今後、我が国の航空機産業をさらに発展させていくためには、世界の民間航空機市 場に関する情報の収集および市場分析を継続的に行なうことが不可欠である。 弊協会では航空輸送、航空機、航空会社、航空機メーカー等の世界の民間航空機市 場に関する情報を収集・調査し、その分析結果に基づき航空旅客、航空貨物および 航空機の需要予測を実施している。 本書は、その予測結果をまとめたもので、関係者に広く配布すると共に、ウェブサ イト(http://www.jadc.or.jp)を通じて、航空関連業界関係者のみならず、広く一 般に供するものである。 2016 年 3 月 一般財団法人 YGR-5088 i 日本航空機開発協会 市場予測 2016-2035 ii 市場予測 2016-2035 目 次 1. 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 航空業界を取り巻く状況 ・・・・・・・・・・・・・・・ 5 4. 航空輸送に影響を与える主要因・・・・・・・・・・・・・ 13 5. 航空旅客需要予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 6. 旅客機の需要予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 7. 航空貨物需要予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 8. ジェット貨物機の需要予測 9. 販売予測 10. 地域別概要 11. 航空エンジンの需要予測 12. 予測手法 ・・・・・・・・・・・・・・ 49 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 ・・・・・・・・・・・・・・・ 77 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 略語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 用語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 Appendix A 機体分類の定義 Appendix B エンジン分類の定義 Appendix C ・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 ・・・・・・・・・・・・・・ 84 航空旅客需要 ・・・・・・・・・・・・・・・ 85 Appendix D 航空貨物需要 ・・・・・・・・・・・・・・・ 86 Appendix E 機材需要予測結果 ・・・・・・・・・・・・・・・ 87 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 参考資料 iii 市場予測 2016-2035 市場予測 2016-2035 1.概要 民間航空機市場の長期需要予測は、民間航空機ビジネスを行っていくうえでの市場 リスクの評価・検討および中長期事業計画や製品戦略立案に有用な情報を提供する ものである。JADC は、2016-2035 年の 20 年間について、航空旅客、航空貨物お よび機材(ジェット旅客機、ターボプロップ旅客機およびジェット貨物機)ならび に航空エンジンについての需要予測を行った。 予測期間における世界の経済成長は、GDP ベースで年平均 2.9%の伸びとなる。世界 経済を牽引しているのは、中国、東南アジア、南アジア、中東といった地域である。 航空旅客需要は、RPK ベースで、2015 年の 6 兆 5,282 億人キロメートルから 2035 年には 16 兆 3,546 億人キロメートルと 2.5 倍になり、その間の年平均伸び率は 4.7% である。その中で、アジア/太平洋地域は年平均 5.9%の伸びを示し、そのシェアは 2015 年の 31%から 2035 年には 39%に増加する。 ジェット旅客機の運航機数は、2015 年の 20,814 機から 2035 年には 38,313 機に増 加する。今後 20 年間の新規納入機数は 33,160 機で、販売額は 4 兆 9,508 億ドル(2015 年カタログ価格)となる。新規納入機数が最も多いのは、120-169 席クラスの 13,255 機である。地域的には、アジア/太平洋地域が 13,308 機と最も多い。 ターボプロップ旅客機の運航機数は、2015 年の 3,445 機から 2035 年には 3,778 機 に漸増する。新規納入機数は 3,143 機で、販売額は 654 億ドル(2015 年カタログ価 格)となる。60-79 席クラスの新規納入機数が最も多く 1,101 機である。地域的に は、ジェット旅客機と同様にアジア/太平洋地域が最も多く、1,142 機の新規納入が ある。 2015 2035 世 界 の 経 済 成 長 率 ( GDP) 伸び率 販売額( 2015米億ドル) 2.9%p.a. 旅客需要(億人キロメートル) 65,282 163,546 4.7%p.a. ジェット旅客機運航機数 20,814 38,313 3.1%p.a. 33,160 ジェット旅客機新製機納入機数および販売額 49,508 貨物需要(億トンキロメートル) 2,261 5,063 4.1%p.a. ジェット貨物機運航機数 1,764 2,667 2.1%p.a. ジェット貨物機新製機納入機数および販売額 837 2,590 ジェット新製機納入機数および販売額(合計) 33,997 52,098 ターボプロップ旅客機運航機数 3,445 3,778 0.5%p.a. ターボプロップ旅客機新製機納入機数および販売額 3,143 654 エンジン納入基数および販売額 84,488 11,570 (文中の用語や略語については P.81 以降に示した) 1 市場予測 2016-2035 航空貨物需要は、RTK ベースで 2015 年の 2,261 億トンキロメートルから 2035 年に は 5,063 億トンキロメートルと 2.2 倍となり、その間の年平均伸び率は 4.1%である。 アジア/太平洋地域は 4.9%の伸びを示し、そのシェアを 2015 年の 35%から 2035 年には 41%に拡大し、旅客と同様に世界最大の市場となる。 ジェット貨物機の運航機数は、2015 年の 1,764 機から 2035 年には 2,667 機に増加 する。新製機需要は 2,254 機(この内、旅客機からの改造機は 1,417 機、貨物機と しての新造機は 837 機)で、販売額は 2,590 億ドル(2015 年カタログ価格)である。 その内、大型機需要が最も多く 427 機である。地域的には、アジア/太平洋地域と北 米の需要が多い。 世界のエンジン需要(スペア用を含む)は、84,488 基、1 兆 1,570 億ドル(2015 年 市場価格)である。その内、ジェットエンジンが 77,533 基、販売額 1 兆 1,430 億ド ル、ターボプロップエンジンが 6,955 基、販売額 140 億ドルである。 世界 伸び率 経済(GDP) 2.9% 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 4.7% 運航機数 4.1% 2.7% 新製機需要 38,557 販売額 2015US$億 52,753 CIS 伸び率 欧州 伸び率 北米 伸び率 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 新製機需要 7,343 経済(GDP) 2.3% 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 2.8% 3.0% 販売額 2015US$億 運航機数 0.6% 8,191 1.8% 3.7% 2.7% 2.3% 運航機数 新製機需要 7,155 販売額 2015US$億 8,858 伸び率 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 3.7% 2.8% 貨物需要(RTK) 運航機数 3.3% 3.1% 5.0% 貨物需要(RTK) 運航機数 3.9% 2.6% 貨物需要(RTK) 運航機数 6.0% 3.3% 6.5% 新製機需要 2,268 販売額 2015US$億 5,912 アフリカ 伸び率 2.6% 4.6% 新製機需要 1,900 販売額 2015US$億 2,031 中東 中南米 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 新製機需要 3,147 販売額 2015US$億 3,131 伸び率 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 3.8% 貨物需要(RTK) 運航機数 5.3% 2.1% 4.8% 新製機需要 1,629 アジア/太平洋 伸び率 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 4.1% 貨物需要(RTK) 運航機数 4.8% 4.6% 5.9% 販売額 2015US$億 1,691 *運航機数伸び率、新製機需要および販売額は、ターボプロップ旅客機、ジェット旅客機およびジェット貨物機の合計である。 2 新製機需要 15,115 販売額 2015US$億 22,940 市場予測 2016-2035 2. はじめに 航空機の開発は、計画段階から初号機の納入まで 10 年近い期間と数千億円を超える 開発費を要するとともに、投資の回収にも長期間を必要とする。開発された航空機は、 その後、いくつかの派生型の開発を経て、数十年間にわたり生産が続けられる。また、 納入された機体は、早いものでも 10 数年、長いものでは 40 年以上の長きにわたり運 航に供される息の長い製品である。このため、航空機産業は事業リスクの高い産業と言 われている。 航空機を購入し運航するエアラインは、民営化や規制緩和により LCC に代表される 新規参入エアラインとの競争、燃油費の高騰によるコストの増大といった、その時々の 経済状況、社会状況の影響を大きく受けている。航空機は 1 機あたり数十億円から数百 億円と高額であり、その航空機を多数必要とするエアラインは装置産業と言えるが、運 賃は低下の一途であり今や航空券はコモディティと言われるまでになっている。 このような事業環 境下において、事業 リスクや市場リスク を最小とするために は、航空機産業や顧 客であるエアライン の取り巻く経済環境、 社会環境等の市場動 向を継続的かつ注意 深く観察していくこ とが重要である。 JADC は、航空機、 航空輸送、エアライ ン等の世界の民間航空機市場に関する情報の収集、調査及び分析を継続的に行い、協会 内および我が国の航空機産業に対して、長期にわたる製品戦略の立案および事業計画の 作成の資とするために、1970 年代後半から航空輸送需要および機材需要についての長 期需要予測を行っている。 JADC の長期需要予測である「民間航空機に関する市場予測」は、2016 年から 2035 年までの 20 年間について、航空旅客、航空貨物、機材として 15 席以上のターボプロ ップ旅客機、20 席以上のジェット旅客機およびジェット貨物機並びに航空エンジンの 需要予測結果を示している。 予測結果は、国内外の航空機メーカー、サプライヤー、エアライン、金融機関等、広 く一般に公開されている。 3 市場予測 2016-2035 4 市場予測 2016-2035 3.航空業界を取り巻く状況 ビジネス概況 2015 年の世界経済は、中国経済の減速が各国に影響を及ぼしたほか、欧州の難民・テロ・ EU 離脱指向・政府債務などの問題による混乱、原油等資源価格の下落の影響もあって、 GDP の成長率は 2.4%に留まった。2016 年は、米国経済は堅調さを保つと期待されるが楽 観はできず、ユーロ経済圏の情勢不安定も依然続くなど、牽引役を見いだせない中で、GDP の成長率は 2.7%程度になると予測されている。 航空旅客輸送量と営業利益の推移 営業利益 (10億ドル) 有償旅客キロメートル (兆RPKs) 60 7 営業利益 有償旅客キロメートル 50 6 40 5 30 4 20 3 10 0 2 1995 2000 2005 2010 2015 -10 1 -20 0 出所: IATA, ICAO, JADC 地域別 売上高純利益率の比較 10 売上高純利益率 (%) 8 2014 2015 6 4 2 0 アフリカ アジア/太平洋 中東 中南米 -2 -4 出所: IATA December 2015 5 北米 欧州 市場予測 2016-2035 このような状況ではあるが、2015 年の世界の航空需要は、旅客輸送量が RPK ベースで 前年比 5.8%、貨物輸送量が RTK ベースで前年比 4.6%の伸びが予想される。 日本のエアラインでは、航空旅客数が対前年比で国内線が 1.4%増、国際線が 11.5%増、 全体では 2.9%増となった。出国日本人数が前年比 4.1%下回ったが、訪日外客数は 47.1% 増となり、インバウンド需要が補う構図となった。 決算状況をみると、世界の航空業界全体の売上高は 7,100 億ドルで前年比 6.3%減となっ たものの、燃油費の低下が大きく貢献し営業利益 550 億ドルと、前年比で 1.3 倍となって いる。売上高に対する純利益率を地域別に見ると、北米のエアラインが 9.5%と最も高く、 次いで欧州が 3.5%、アジア・太平洋が 2.9%の順となっている。 機材の受注納入状況 2015 年末、世界全体で 20,814 機のジェット旅客機、3,445 機のターボプロップ旅客機お よび 1,764 機のジェット貨物機が運航されていた。 ジェット機の受注機数変遷 機数 4000 その他 3500 3513 79 エンブラエル 342 ボンバルディア 3000 エアバス 1932 1940 2 34 79 213 1255 66 79 2000 1500 1000 500 1366 14 1253 140 32 1090 117 201 26 35 162 37 284 404 644 399 75 2 45 81 708 543 607 441 1534 23 323 996 63 92 163 200 399 327 351 794 924 13 41 217 339 589 314 0 1995 75 2813 225 2567 127 256 49 1795 2343 40 1519 134 87 183 17 2647 51 85 114 ボーイング 2500 698 0 87 27 333 861 51 172 66 852 3 124 89 325 365 762 959 907 1400 1419 22 44 48 739 1142 251 247 271 1552 880 1140 125 54 54 708 2 21 91 611 1304 860 349 1498 1529 869 556 543 2000 3598 38 128 108 245 2005 出典:Airbus, Ascend, Boeing, Bombardier, Embraer, JADC(一部推定を含む) 2010 2015 1)ネットオーダー(ただし、キャンセルは発注年から減じた。) 2)旅客機(含む、コンビ及びQC)及び貨物機 受注機数(キャンセル分を除いたネットオーダー)をみると、ジェット旅客機(コンビ 機およびクイックチェンジ機を含む)およびジェット貨物機は、2015 年には 2,343 機と前 年比で約 35%の大幅減少となった。これは、更新用機材の発注が一段落したこともあるが、 新興国の景気減速で先行き不透明感が増していること、燃油費下落の影響により機材更新 の先延ばしを考えるエアラインの存在などが理由として考えられる。 ジェット貨物機の 2015 年の受注数は 75 機で、その内 49 機が 767F であった。また、タ ーボプロップ旅客機の 2015 年の受注数は 203 機あり、直近の 10 年では 2 番目の記録とな った。ATR が好調に受注を伸ばしている。 6 市場予測 2016-2035 ジェット機の納入機数変遷 機数 1800 その他 1600 1563 エンブラエル ボンバルディア 1400 エアバス ボーイング 1200 1000 800 600 400 483 63 0 40 495 43 2 53 124 126 256 271 200 677 27 33 60 1131 1110 38 48 950 97 160 82 22 60 99 75 294 229 311 1199 39 161 147 325 1006 8 911 129 11 92 185 222 935 8 147 175 182 305 620 492 498 99 434 303 564 1529 26 1418 92 28 59 1317 90 8 26 106 1177 1171 14 5 1103 1123 1117 0 0 0 108 139 1041 0 97 1 169 198 629 47 59 34 909 129 626 60 4 588 61 79 138 320 510 534 483 601 381 281 285 635 378 527 375 453 21 101 44 290 398 441 375 481 462 648 723 762 477 0 1995 2000 2005 2010 2015 *旅客機(含む、コンビ及びQC)及び貨物機 出典:Airbus, Ascend, Boeing, Bombardier, Embraer ジェット機の納入機数は、2015 年には 1,563 機となり、前年の 1,529 機を上回り過去最 高を記録した。エアバス、ボーイングはそれぞれ増産に努めており、A320 ファミリーおよ び 737 ファミリーがともに月産 42 機、787 が月産 10 機、777 が月産 8.3 機に達している。 ジェット機(旅客機及び貨物機)の受注残の推移 16,000 14,000 12,000 機数 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 14,355 顧客名非公開 CIS 北米 欧州 中東 アジア/太平洋 中南米 アフリカ 11% 4% 20% 20% 8% 4,607 29% 30% 23% 32% 6% 0 2005 2015 ジェット貨物機は、2015 年に 45 機が納入され、その内 42 機はリーマンショック後の 2010 年以降に発注されたものであった。また、777F が最も多く 19 機であった。 2015 年のターボプロップ旅客機の納入機数は 141 機と前年の 143 機を僅かに下回った。 7 市場予測 2016-2035 2015 年末の受注残をみると、ジェット機が 14,355 機、ターボプロップ旅客機が 563 機 であった。ジェット機の受注残は 2005 年に比べて 3.1 倍になった。地域別で見ると、2005 年、2015 年ともアジア・太平洋地域のエアラインのシェアが大きいが、2015 年には顧客名 を非公表とする発注主が多くなっている。 主要メーカーでは、特に、細胴機の納入枠が 2020 年頃までほとんど埋まっているとも言 われている。A320 ファミリーは 2017 年に月産 50 機に、737 ファミリーも 2018 年には月 産 52 機への増産が決まっている。受注機の早期引渡しのために、更なる増産も検討されて いる。 エアラインの業界再編 2013 年 12 月、アメリカン航空と US エアウェイズが合併した。米国では、既にノース ウエスト航空がデルタ航空と、コンチネンタル航空がユナイテッド航空と、エアトランが サウスウエスト航空と合併している。この結果、この 4 社が、ASK ベースで米国国内市場 の約 85%を占めるに至っている。欧州や中南米でも、エアラインの再編が進んでいる。 米国の航空規制緩和以降、30 年以上にわたり、多くのエアラインが市場に参入し熾烈な 競争が繰り広げられ運賃が低下した。燃油費の上昇、テロや金融危機といった外性要因も あり、エアライン各社の経営状況は悪化の一途をたどっている。このような中で、エアラ インは、生き残りを賭け、市場シェアの拡大、コスト削減の手段として企業の吸収合併を 行っている。この吸収合併による業界再編の最大の恩恵は、競合他社が減ることにある。 しかし、エアラインの業界再編が進むとしても、外国エアラインへの出資には外資の出 資規制があり、一部の例外を除けば 50%を超える額を出資できないのが現状であるため、 国を跨ぐ合併は稀である。だが、完全な吸収合併ではないが、この範囲内で出資すること で目的を達することもできる。このような動きは今後とも拡大し、エアラインは地域ごと にいくつかの会社またはグループに集約されていくと考えられている。 アライアンス 世界には、スターアライアンス、スカイチーム及びワンワールドの 3 大アライアンスが ある。3 大アライアンスに加盟するエアラインで、世界の RPK の 63%と、営業収入の 69% を占めている。アライアンス内のエアライン提携には独占禁止法の適用除外措置を受ける ことが可能であるため、以前は個別エアライン間の競争が主であったものが、今ではアラ イアンス間の競争へと変わってきている。 アライアンスは、世界に張りめぐらせたネットワークが切れ目無く続くようにメンバー の拡大を図っている。アライアンスの加盟には、各エアラインのサービスレベルをアライ アンスの基準に合わせなければならない事等もあり、そのためのコストが掛かる。しかし ながら、中小エアラインにとっては、そのコストを支払ってもアライアンスへの加盟なく して生き残る事は困難な状況になってきている。ただ、すべてをアライアンス内で賄えな 8 市場予測 2016-2035 い事もあり、アライアンスの枠を越えて他のアライアンスのエアラインとの業務提携を行 う例も増えてきている。 3 大アライアンスのシェア (2014) また、エアラインの合併に伴い、アライアンス内のメンバーの移動も起こっており、ア ライアンスのネットワーク戦略にも影響を及ぼしている。2014 年には、アメリカン航空と US エアウェイズの合併、及び LAN と TAM の合併により、US エアウェイズと TAM がス ターアライアンスを脱会しワンワールドに加盟した。アライアンス内では、既にコードシ ェアや FFP の統合、備品類等の共同購入といったことが行われ、航空機の共同購入も検討 されている。こうした動きの中で、エミレーツ航空やハワイアン航空のようにアライアン ス加盟のデメリットを重視し、単独で自身のネットワークの拡大および利便性の向上を図 ったり、エティハド航空のように他社に出資しエクイティ・パートナーとして取り込んだ りしているエアラインも存在する。但し、これらのエアラインといえども、すべてを自身 でまかなう事は困難なため、自身の戦略に適したエアラインと業務提携を行っている。 インフラストラクチャー 航空輸送の発展には、空域や空港といったインフラストラクチャーの整備が重要である。 現在、空域の効率利用、混雑改善や経済性の向上のため、欧米や日本において次世代航 空管制システムの整備が行われている。しかし、技術的な問題や予算の制約から、短期間 での新システムへの移行は困難であり、段階的とならざるを得ない。 各国の主要空港では、空港混雑や発着枠不足のため、遅延、増便や新規路線の開設に支障 をきたしている。世界の主要空港の多くは、ピーク時間帯では 30 分から 1 時間の遅延は既 に日常的になっている。ロンドンのヒースロー空港は、既に容量の限界に達しており、発 着枠の確保が困難な状況である。 9 市場予測 2016-2035 空港の新規建設、滑走路や駐 空港別乗降客数の推移 120 設の増改築といった既存空港の 100 乗降客数 (百万人/年) 機場の増設、空港ターミナル施 整備は、多額の費用と長い期間 を必要とする。 近年では、環境意識の高まり 2008 2015 80 60 40 20 から、空港周辺騒音や大気汚染 バンコク デンバー 廣東 ジャカルタ シンガポール ニューヨーク・JFK 上海 アムステルダム フランクフルト イスタンブール パリ 香港 ロサンゼルス ダラス・フォートワース 成長著しいアジアではインフ ロンドン・ヒースロー シカゴ 東京・羽田 北京 アトランタ ければならなくなってきている。 ドバイ 0 に対する周辺住民の理解を得な 出所:ACI、IATA ラの整備が急務で、既にいくつ かのプロジェクトが着工済みま 空港別貨物取扱量の推移 たは計画中である。中国でも、 5.0 2008 国内エアラインが急速に成長し 2015 EU28 ヶ国において、1 フライ 2.0 出所:ACI、IATA ドーハ アムステルダム パリ シカゴ シンガポール 北京 マイアミ ロサンゼルス 台北 フランクフルト 東京・成田 分に増加し、これによる旅客の ドバイ の 8.75 分から 2035 年には 14.2 ルイビル 香港 0.0 廣東 トあたりの遅延時間は 2012 年 ロンドン・ヒース… 1.0 ソウル・仁川 ユーロコントロールによれば、 アンカレジ 画されている。 3.0 上海 に新たに約 100 空港の建設が計 メンフィス ていることもあり、2020 年まで 貨物取扱量 (百万トン) 4.0 時間価値の総損失額は、2012 年 の 40 億ユーロから 2035 年には 空港別離発着回数の推移 134 億ユーロに拡大すると予測 1.20 している。 0.60 0.40 0.20 10 サンフランシスコ ニューヨーク・JFK 東京・羽田 フェニックス トロント 上海 イスタンブール アムステルダム フランクフルト パリ ヒューストン ラスベガス シャルロット デンバー 北京 ロンドン・ヒースロー 出所:ACI、IATA ロサンゼルス 0.00 ダラス・フォートワース いついていないのが現状である。 0.80 シカゴ フラストラクチャーの整備が追 2015 アトランタ 界的に空港をはじめとするイン 離発着回数 (百万回/年) 航空輸送の伸びに対して、世 2008 1.00 市場予測 2016-2035 環境問題 航空における環境問題は、従来、空港周辺の騒音問題及び大気汚染問題に焦点が当てら れてきた。最近では、地球温暖化問題がクローズアップされるようになり、航空機からの CO2排出量にも注目が集まるようになってきた。 航空分野からのCO2排出量は2013年には 490百万トンで、全世界で排出されるCO2総排出量の2%弱であるが、今後、航空輸送量の伸 びに伴って増加すると予測される。 国際航空輸送におけるCO2排出量の推移 600 CO2排出量(百万トン) 500 400 300 その他エネル ギー産業 5% 製造業及び建 設 19% その他 5.2% 自動車 17.2% 200 運輸 23% 国際航空 1.5% 発電及び暖房 42% 100 国際海運 1.9% その他 2.3% 排出量シェア (2013年) 0 1990 1995 2000 2005 2010 出所: 国際エネルギー機関 ICAO は、2010 年の第 37 回総会で、先進国も途上国も含めた目標として、2050 年まで 燃料効率を年率 2%改善し、2020 年以降 CO2 排出量を増加させないというグローバル削減 目標を決議した。(こうした中で EU は 2012 年から、CO2 排出規制と排出権取引義務を課 した EU-ETS を欧州で運航するすべての航空機に対して適用したが、これには欧州発着の 外国航空機も対象として含まれたため、米国、中国、インド、日本、ロシア等の各国政府 が反対を表明した。これに対し、EU は 2014 年 1 月から 2020 年までは、欧州域内で発着 する航空機については欧州域内の飛行分だけを EU-ETS の対象とする見直しを行って現在 実施している。) さらに ICAO は、2013 年の第 38 回総会で、2010 年に決議した削減目標を達成するため に各国があらゆる施策によって包括的に取り組むことを確認し、市場メカニズム(いわゆ る排出権取引など)を活用した排出量削減制度を 2016 年中に構築し 2020 年から適用する 目標を定めた。現在は、2016 年の第 39 回総会へ向けて、具体的な規制内容、経済的手法 の検討、及びこれらの実行計画の策定が進められている。 CO2 の発生は燃料の燃焼と直接対応するものであるため、航空機の燃費向上は燃料消費の 低減を通じて CO2 排出量の削減に直接役立つ。しかし、CO2 排出量削減の検討が進むにつ 11 市場予測 2016-2035 れ、機体の技術革新や運航方法の改善だけでは目標達成が難しいことが明らかになってお り、カーボンニュートラルの考え方にそって化石燃料にかわる代替航空燃料を使用する可 能性も考慮され、植物由来のバイオ燃料などの研究も進められている。 空港周辺の騒音問題は、1970 年代に比べてはるかに低騒音な機体が出現している現在で も環境問題として主要なものである。多くの主要空港は、騒音対策のため離発着制限、夜 間運航制限等が課せられている。航空輸送量の伸びにともない、便数の増加、大型機材の 運航が必要とされているが、空港周辺の環境悪化の問題もあり、既存空港の離発着制限緩 和や空港拡張、新空港建設が困難な状況になっている。こうした状況のなかで、ICAO は、 2013 年 8 月の第 38 回 ICAO 総会において現行基準より厳しい騒音基準 Chapter 14 の適用 を採択した。新基準の適用時期と対象は、2017 年末(最大離陸重量が 55 トン未満の航空機 は 2020 年末)以降に型式証明を取得する機体となっている。 環境基準は今後も強化される方向にあり、エアラインは、経済的な理由だけでなく、環境 の観点から低騒音かつ燃費効率に優れた新型航空機の導入を進めざるを得ない状況にある。 12 市場予測 2016-2035 4. 航空輸送に影響を与える主要因 4.1 経済動向 世界経済は米国を中心として緩やかな回復が続いていると見られており、2015 年の実質 経済成長率は 2.4%の伸びになったと推計されている。 当面の世界経済は、米国の金融緩和政策の正常化と利上げに向けた動き、中国等新興国 経済の減速、欧州の難民・テロ・政府債務・EU 離脱指向などの問題、原油等資源価格の下 落などの影響とリスクの下にあるが、長期的に見れば、予測期間である 2016 年から 2035 年の間、世界の実質 GDP(2010 年米ドル換算)の年平均成長率は 2.9%と予測され、この間 に高い GDP 成長率が見込まれるのは、南アジア、中国、東南アジア、中東、といった地域 である。 地域別 経済予測 2.9% 2.9% 世界 アジア・オセアニア 北米 欧州 欧州 内訳 アジア・ オセア ニア 内訳 4.1% 4.3% 2.3% 2.4% 1.8% 1.8% 2016‐2035 1996‐2015 1.7% 1.7% 西欧 東欧 0.8% 0.8% 日本 オセアニア 中国 北東アジア 東南アジア 南アジア 2.8% 3.2% 2.5% 3.2% 5.1% 9.0% 2.3% 4.2% 4.4% 4.4% 6.3% 6.4% 3.7% 4.3% 中東 2.8% 3.0% ラテンアメリカ アフリカ CIS 2.6% 0% 1% 2% 3% 3.8% 4.3% 3.4% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10% 実質GDP 年平均成長率 その中で、中国の成長率は過去 20 年間の年平均成長率 9.0%に対して 5.1%と低くなるも のの依然として高く、その規模と合わせて大きな GDP 成長分を作り出す。これに対し、先 進地域の経済成長は現状維持もしくは鈍化が予測され、北米が 2.3%、欧州が 1.8%、日本が 0.8%となっている。世界全体の実質 GDP は、2015 年の 74 兆ドルから 2035 年には 133 兆ドルとなり、約 1.8 倍になる見込みである。 実質 GDP を地域別シェアでみると、既に北米を抑え世界第 1 位にあるアジア・太平洋地 域は、2015 年の 31%から 2035 年には 39%に増加する。特に、中国はそのシェアを 12%か ら 19%に伸ばし、北米や欧州と比肩するまでに成長する。 13 市場予測 2016-2035 世界の実質GDPの推移 10% 世界 8% 先進国 実質GDP伸び率(%) 6% 新興国 4% 2% 0% 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 -2% -4% -6% 2035年における地域別GDPシェア アフリカ 中東 4% 4% CIS 3% 中南米 8% 北東アジア* 2% 東南アジア 5% 欧州 21% 中国 19% アジア/太平洋 39% 南アジア 7% 日本 5% 北米 22% * 中国および日本を除く。 オセアニア 2% 世界の総GDP額 (2010 US$): 133兆ドル 14 市場予測 2016-2035 4.2 原油価格 航空業界において、燃油費の変動はエアラインの損益に直接影響する。原油は 2014 年前 半まで高値を付けていたが、中国の景気減速が顕著になり新興国を含めた原油の需要が減 っていることや、米国でのシェール・オイルの産業化をうけて政府が原油の輸出を 40 年ぶ りに解禁したこと、経済制裁の解除によってイランが原油の輸出を再開したこと、などか ら原油市場は供給過剰となり、さらに、OPEC での協調減産は見送られ非 OPEC 国では原 油の増産を行っていることから、ここ 1 年半ほどで原油価格は大幅に下落している。 国際指標となっているブレント原油のスポット価格は、急落前の 2014 年 6 月の 1 バレル 当たり 111.8 ドルから 2016 年 1 月には 30.7 ドルと 73%下がった。また年平均価格で見る と、2015 年は 52.4 ドルと、前年の 99.0 ドルから 47%下がった。 ジェット 原油価格とジェット燃料価格の推移 燃料価格(米 180 国、スポット ブレント 160 WTI (West Texas Intermediate, Cushing, Oklahoma) 価格)も原油 ジェット燃料 140 価格の急落 により、2014 ロン当たり 2.88 ド ル か ら 2016 年 1 月 に は 0.93 ド ル と 68% スポット価格 ($/bbl) 年 6 月の 1 ガ 120 100 80 60 40 20 も下がった。 0 年平均価格 で は 、 2015 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 出所:EIA 年が 1.53 ドルと前年の 2.70 ドルから 43%下がり、多くのエアラインが燃料サーチャージ を廃止するに至っている。 原油需要は、2000 年以前は先進国での消費が主であったが、2000 年以降はアジア諸国、 特に中国、BRICs 諸国といった新興国の急速な経済発展に伴う原油需要が増大した。この ため、IEA によれば、非 OECD 諸国の原油需要が世界の原油需要に占める割合は、2000 年の 37%から 2013 年には 49%に拡大した。2000 年以降、原油供給量は、旺盛な世界需要 と価格上昇を受けて、2000 年の 7,730 万バレル/日から 2013 年には 9,140 万バレル/日 に増大した。とりわけ、ロシアをはじめとする CIS 諸国の生産力の強化、西アフリカやブ ラジルの深海油田の開発、北米のシェール・オイル開発といったことにより、非 OPEC 産 油国の供給量は著しく増加し、2000 年から 2013 年の 13 年間で 810 万バレル/日の増加と なった。それに対して、OPEC 諸国は 590 万バレル/日の増加であった。 15 市場予測 2016-2035 世界の原油需要の推移 欧州 (CISを含む) 2013 アフリカ 2000 1990 中東 非OECD 中南米 その他アジア 中国 非OECD OECD 0 10 20 30 40 50 60 百万バーレル/日 出所: IEA ブレント原油価格の推移と予測 300 予測 実績 250 ブレント原油価格 (2013US$/bbl) High oil price case 200 150 Reference case 100 Low oil price case 50 0 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 出所:EIA, JADC 各機関から公開されている今後の原油価格の予測では、総じて、短期的には供給過剰や 景気の足踏みによって原油価格は低下しているものの、長期的には供給過剰も解消され、 省エネルギー技術の開発普及や他のエネルギー源への乗り換え等による原油の需要減少は あるが、新興国の経済発展に伴うエネルギー需要の増加などを背景として原油価格は上昇 基調になると見込まれている。 例えば、IEA(2015 年)の中位推計によれば、原油価格は 2020 年頃までに1バレル 80 ド ルに上昇して一旦均衡するが、その後も上昇し 2040 年には約 140 ドルに達すると予想され ている。この場合は、原油価格は今後数年で1バレル 70 ドル程度となって価格上昇が始ま っていた 2005 年頃の水準になり、2030 年代に入ると高騰していた 2011~2013 年頃の価 格水準に達すると言え、エアラインは今後 20 年間で、かつてよりは緩やかではあるが、再 度燃油価格の上昇に直面することになると考えられる。また、同予測の低位推計によれば、 2010 年代末までは1バレル約 50 ドル前後に留まるが、その後は緩やかに上昇して 2040 年 には 85 ドルになるとされる。この場合は、今後 5 年間程度は 2000~2004 年頃の価格水準 16 市場予測 2016-2035 にあって、その後 20 年程度で 2009~2010 年頃または 2014~2015 年頃の価格水準になる と言え、輸送コストの上昇圧力が弱くイールドも低く保たれることから経済の回復や発展 に伴う輸送需要の増加を引き出しやすいが、輸送効率改善のための機材更新への投資が見 送られる作用もあり、IEA も、中位推計と比較して、2040 年までに車両や航空機などの効 率化に対する投資額が約 8,000 億ドル減少すると見込んでいる。 4.3 人口動向 アジアをはじめとする新興国は、高い経済成長率もあり中間所得層(世帯年間可処分所 得 5,000-35,000 ドル)が急激に増加している。2000 年から 2010 年の 10 年間で中間所得 層人口は、年平均 13.3%の伸びを示し 21 億人に達した。そして、2020 年には 31 億人に増 加すると予測されている。 新興国の中間層人口の推移 40 中間層人口 (億人) 30.6 上位中間層 (15-35千ドル未満) 30 26.5 下位中間層 (5-15千ドル未満) 11.5 21.3 20 7.9 5.1 11.0 10 2.6 16.2 6.1 1.6 18.6 19.1 2015 2020 8.4 4.5 0 2000 2005 2010 出所:経済白書2011より作成 国連の人口推計によれば、世界人口は、2000 年の 61 億人から 2020 年には 77 億人に増 加する。新興国人口は、2000 年の 49 億人が 2020 年には 64 億人になると推計されている。 その結果、中間所得層の世界人口に対する割合は、2000 年には 10%であったが 2020 年に は 40%に達すると見込まれている。地域別では、やはり中国及びインドを擁するアジアが 最も多く、2010 年の 15 億人から 2020 年には 23 億人となり、全世界の中間所得層の 76% を擁する地域となる。世界人口は、2015 年の 73 億人から 2035 年には 88 億人に増える。 この間の人口増加分の 98%は新興国によるものである。 人口の増加、経済成長によって、都市化が進んでいく。世界の都市人口のシェアは、2010 年には 51.6%であったものが 2025 年に 58.0%、そして 2035 年には 61.7%に増加する。先 進国は、この間に 77.5%から 82.1%と 4.6%ポイントの増加に対して、新興国は 46.0%から 55.8%と約 10%ポイントの増加となり、新興国での都市化が加速する。 17 市場予測 2016-2035 世界の将来人口推計(中位推計) 世界 1.01%p.a. 10,000 8,839 8,142 8,000 282 696 7,349 239 634 中東 322 743 中南米 1,866 アフリカ 人口(百万人) 1,504 6,000 1,186 新興国 1.19%p.a. 4,000 4,383 4,621 1,251 1,277 1,287 2015年 2025年 2035年 4,038 アジア/ 太平洋 2,000 0 先進国 0.14%p.a. *先進国は、北米、欧州、日本、オーストラリアおよびニュージーランド 出所:UN World Population Prospects: The 2015 Revision 人口 1,000 万人以上の都市は、2010 年には世界全体で 23 都市存在し、2025 年には 37 都市に増加する。新興国には、2010 年に 17 都市あり、2025 年には 29 都市に増加する。 新興国の都市化が進んでいく。人口 1,000 万人以上の都市の人口が世界の都市人口全体に 占める割合は、2010 年の 10%から 2025 年には 14%に増加し、都市の巨大化が加速する。 地域的に見ると、人口 1,000 万人以上の都市は、2010 年にはアジアに 11 都市存在し、2025 には 20 都市に増加する。世界の人口 1,000 万人以上の都市の約 2 分の 1 は、アジアに存在 することになる。 都市人口の推移 5,000 1千万人以上 5百万人-1千万人 4,000 1百万人-5百万人 50万人-1百万人 人口(百万人) 50万人以下 3,000 2,000 1,000 0 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 出所: UN World Population Prospects: The 2011 Revision 18 市場予測 2016-2035 4.4 旅行需要 国連の世界観光機関 UNWTO によると、2014 年の国際観光客到着数(宿泊者)は、一 部地域での紛争、経済的困難、疫病等にも関わらず、前年から 4.3%増の 11 億 3,300 万人 となった。地域別には、欧州では 3%増の 5 億 8,200 万人、米国は 8%増の 1 億 8,100 万人、 アジア・太平洋は 5%増の 2 億 6,300 万人、中東は 5%増の 5,100 万人であった。これら国際 観光客到着数の約 80%は域内移動であり、従来、市場は欧州、米国、アジア・太平洋の先進 国に集中していたが、近年は中間層人口の増加に伴いアジア、中央・東ヨーロッパ、中東、 アフリカ及びラテンアメリカ等の新興国でも急速な成長が見られる。 同機関の 2010 年から 2030 年の世界全体の国際観光客到着数(宿泊者)の予測によれば、 2030 年には 18 億人に達し、その間の平均成長率は年 3.3%である。新興国地域の平均成長 率は年 4.4%で先進国地域の 2 倍あり、2030 年には国際観光客到着数の 57%が新興国地域、 43%が先進国地域と逆転していると予想されている。最も成長するのはアジア・太平洋で年 平均成長率は 4.9%であり、欧 国際観光客の交通手段 州や米州の成長は緩やかであ 60 航空 る。世界市場におけるシェアは、 から 2030 年に 30%)、中東(同 6%から 8%)、アフリカ(同 5% から 7%)は増加するが、北米 自動車 マーケットシェア (%) アジア・太平洋(2010 年の 22% 50 40 30 20 (同 16%から 14%)と欧州(同 10 51%から 41%)は低下すると予 0 想されている。 船舶 鉄道 2004 2005 souce: UNWTO 19 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 市場予測 2016-2035 2014 年の統計では宿泊を伴う旅行者の 54%が航空機を利用しており、航空機が輸送シェ アを伸ばしている。また、目的別では、レジャー関連が 53%、知人・親族訪問(VFR)や巡礼、 健康治療等が 27%、ビジネス関連が 14%であった。 一人当たりの GDP の少ない新興国では、一人当たりの GDP のわずかな増加で海外旅行 需要が急増する。それに対して、経済的に成熟した国では、その感度は小さくなっている。 また、経済成長による所得の増加につれ旅行需要は増加していき、一人当たりの GDP が 5,000~10,000 ドルになってくると急激に増加する。 新興国は、著しい経 済成長と人口増加に よって、大量の中間所 得層を生み出す。所得 の向上につれ、彼らの 旺盛な購買意欲がた だ単に物品の購入だ けでなく、旅行といっ たサービスにも向く ことにより、航空需要 も大きく増加してい くことになる。 20 市場予測 2016-2035 5 航空旅客需要予測 5.1 航空旅客市場 航空旅客 今世紀に入り、2001 年の同時多発テロ、2003 年のイラク戦争と SARS、2008 年の米国 経済危機及びそれに続く欧州の債務危機によって、世界の航空輸送量は RPK ベースで大幅 な減少を経験した。しかしながら、2009 年後半から回復傾向が鮮明になり、その後は堅調 な伸びを続け、1996~2015 年の間では年平均 4.8%の伸びとなった。ここでは、アジア地 域をはじめとする新興国の旺盛な航空旅客需要による寄与も大きい。 世界の航空旅客輸送量の推移 19801982 6 1986-1995 1996-2005 2006-2015 1996-2015 19911993 20012003 20082009 成長率( % ) 5.4% 4.3% 5.4% 4.8% 4 2 0 1978 1982 1986 1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 *網掛け部分は、航空不況を示す。 出所: IATA, ICAO, JADCデータより作成 航空旅客需要は、一般に所得、 航空旅客と実質経済成長および実質航空運賃の関係 運賃、人口、距離、便数、季節、 12 24 を受けることが知られており、 特に所得と運賃の影響が大き い。最近ではさらに戦争やテロ、 疾病、金融危機といった外的要 因によっても航空需要が大き く変動しており、エアラインの 経営においては、このような外 米国同時 イラク戦争 多発テロ SARS 湾岸戦争 20 米国発 金融危機 10 8 16 航空旅客:RPK 経済活動:GDP 12 6 8 4 4 2 0 0 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 -4 -2 -8 -4 航空運賃:Yield -12 -6 -8 -16 的要因による航空需要の変動(イベントリスク)への対応が重要な課題となっている。 21 経済成長率(%) 代替交通手段の有無等の影響 航空旅客の伸び率(%)、 航空運賃の伸び率(%) 航空旅客輸送量(兆人キロメートル) 8 市場予測 2016-2035 自由化と LCC 航空の自由化により、北米、欧州をはじめ、各国で LCC(Low Cost Carrier)が設立さ れた。近年では、LCC の空白地帯と言われていた日本や台湾にも LCC が設立されたほか、 新興国でも航空の自由化の進行に伴って多くの LCC が設立されている。 地域内路線の提供座席キロに占めるLCCの割合推移 70 2005 2015 提供座席キロに占めるLCCの割合 (%) 60 50 40 30 20 10 0 北米 西欧 東欧 中南米 中東 アフリカ 中国 日本 北東アジア オセアニア 東南アジア 南アジア 世界 出所:Flightglobal, OAG, JADC 2015 年には、世界の地域内路線の提供座席キロメートル(ASK)の 34%は LCC によって 提供された。東南アジア地域内路線では、LCC が ASK に占めるシェアは 2015 年には 56% であったが、2020 年には 70%を超えるとの予測もある。中東やアフリカの地域内路線で LCC が ASK に占めるシェアは、それぞれ 23%と 14%であるが、自由化の拡大によってこ れらの地域でも LCC のシェアが更に拡大すると予測される。 また、LCC は国内・地域内市場だけでなく短中距離国際線市場にも進出しており、乗務員 が宿泊せずに折り返せる距離であればコスト的に成り立つ模様である。乗務員の宿泊や交 代要員確保が必要となる長距離国際線への進出は、燃油費が高騰していた時期に参入と撤 退が相次いだが、最近の燃油費下落を追い風に再度検討されはじめている。 国土交通省国土交通政策研究所の「LCC 参入による地域への経済波及効果に関する調査 研究」 (2015 年)によれば、LCC 利用者へのアンケート結果では、 「LCC が就航していなけ れば今回の旅行をしなかった」との回答が 17%あり、日本でも LCC が新規誘発需要を生み 出していると言える。このように、LCC の参入および拡大による航空運賃の低下は、航空 運賃の高さがネックとなって今まで航空機を利用しなかった旅客を掘り起し、航空需要の 増加を導き出すものである。 LCC は FSC(Full Service Carrier)に対して 50-60%のコストメリットがあると言われ 22 市場予測 2016-2035 ていたが、LCC は業績好調を背景に労務関連費が上昇してきており、逆に FSC は生き残り をかけて事業の合理化やコスト削減を続けてきたために、両社の差が小さくなってきてい る。また、LCC は本来低コストであるはずだが、LCC とは言っても実際には中コスト乃至 高コストで格安運賃を提供しているエアラインもある。これらのエアラインは収益力が弱 く財務的に脆弱な事もあり、景気の大きな変動やイベントリスクに弱い。 2015 年末時点で 57 社がひしめくアジア・太平洋地域の LCC 市場では、競争激化によっ て財務状況が厳しい LCC も存在し、従来のネットワーク拡大指向から高収益路線重視指向 に戦略を変更してきている。また、乱立気味の LCC 市場は、今後、市場の成熟と共に統合 が進んでゆく可能性があり、サウスウエスト航空とエアトランのように LCC 同士の合併も 既に始まっている。 高速鉄道 温暖化ガスの問題もあり、ブラジル、インド、米国、インドネシア等で新たな高速鉄道 の建設計画が発表されているが、とりわけ鉄道路線のインフラ建設とその維持には多額の 費用を要し、その費用回収は長期に渡るため、計画を実行するには長期の需要予測と慎重 な経営判断が必要となっている。その点、航空路線は空港のみを整備すれば飛行機を飛ば せるのでインフラに係る経費は少なくて済む。高速鉄道は航空機のせいぜい 3 分の 1 程度 の速度で運航されることから、主として短距離航空路線との競合となる。 高速鉄道は人口の多い大都市間を結ぶが、この大都市間の路線は旅客数も多く、ビジネ ス路線でもあることからエアラインにとっても重要な路線であり、その影響は無視できな い。鉄道は、都心から都心へ直接アクセスでき、天候に左右されることも少なく、またセ キュリティチェックに時間をとられる事もなく、車内でも携帯電話やインターネットが使 え、等級の高いクラスでは食事もとれるため、航空機よりも便利で快適という理由で高速 鉄道を利用する人も多い。 既に、高速鉄道網を有する日本、欧州、中国、韓国、台湾では、航空輸送と鉄道輸送と の間の競合が起こっている。特に、航空機で 1~2 時間の路線が厳しく、高速鉄道の乗車時 間が 4 時間以内に短縮されると、高速鉄道に分があるとも言われている。その結果、競合 した航空路線では減便や機材の小型化が生じ、更に進むと撤退となる。これらの路線には、 LCC も運航していて安い航空運賃が出回っている場合もあるが、最近は高速鉄道の運賃も さらに下がっており、欧州では正規航空運賃の半額程度の鉄道切符や LCC の運賃よりも安 い切符も出回って、LCC の路線撤退の原因となったのではないかと考えられる事例も出て いる。また、高速鉄道の運転速度も年々速くなっており、航空路線にとっては一層状況が 厳しくなっている。中国は延べ 16,000km に渡る高速鉄道網の建設を行う計画があるとさ れ、また、中国の高速鉄道は世界でも最も安く平均運賃でみると航空運賃の 36%以下とも 言われている。このため、2013 年から 2015 年の間に、中国国内線の主要 25 路線で、約 6%の旅客が航空から高速鉄道に移るとする試算もある。 23 市場予測 2016-2035 高速鉄道の路線長 中国 スペイ ン 日本 トルコ 運行中 建設中 フランス ドイツ イタリア 0 5,000 10,000 15,000 20,000 km 出所:国際鉄道連合をもとにJADC一部推定(2014年~2015年) 旅客ロードファクター 旅客ロードファクターは、2015 年には世界の年間平均で 81.0%に達した。1995 年は 67.1%程度であり、ここ 20 年間で約 14%ポイント増加している。米国では、2013 年の夏 の繁忙期にはロードファクターが 90%に達したエアラインもあり、既に年平均で 84%に達 している。他の地域のエアラインも年々上昇し、その多くが 80%を超えつつある。 この高い旅客ロード ファクターは、LCC を 地域別ロードファクター ロードファクター (%) 90.0 含むエアライン間の競 1995 2015 争による運賃低下から 80.0 くる収入の減少と燃油 費の高騰等による運航 コストの増加による損 70.0 益分岐ロードファクタ ーの大幅な上昇に対応 60.0 するため、ASK の増加 を RPK の増加に比べて 50.0 北米 欧州 アジア太平洋 低く抑えて RASK (Revenue per ASK)の改善に努めた結果である。 24 中東 中南米 アフリカ CIS 世界 市場予測 2016-2035 約 10 年間にわたって高騰が続いた原油価格は、2014 年半ば以降に大幅に下落したが、 今後の原油価格の動向についての予測では、程度の差はあっても景気の回復や経済の発展 に伴う需要増加による価格上昇が予見されている。また、各国が 2050 年に向けて CO2 排 出量の大幅な削減を求められる環境の下では、燃料の消費を安易に増やすことは難しくな る。加えて旅客運賃はエアライン間の競争もあって今後とも大きな上昇は見込めないこと から、利益確保の観点からも、輸送効率の観点からも、旅客ロードファクターは高い水準 に維持されるものと考えられる。 旅客イールド 1996-2015 年の 20 年間で、世界の実質旅客イールドは年平均 1.6%で減少している。過 去 20 年間に実質イールドを低減させてきた大きな要因は、運航経済性の良い新型機への更 新による運航コストの低減とエアラインの合理化努力であった。最近では、LCC の出現や 既存エアラインとの競争がこれに加わっている。 今後も、更なる航空機の運 航経済性の向上やエアライ ンの企業努力、LCC をはじめ とするエアライン間の競争、 地域別 実質航空運賃(yield)の推移 2010 US cent/RPK 30 25 加えて燃油価格の低下の効 果もあって、航空運賃は低下 する余地はあると考えられ 西欧 20 世界 15 る。しかしながら、エアライ ンのリストラや合併・吸収を 10 北米 伴うコスト削減も限界に近 づきつつあり、また、実質イ ールドもすでに十分低くな 5 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 出所: AEA, A4A, ICAO, IATA っていてさらに今後 20 年間の下げ余地を単純に見込むことは不合理と考えられる地域も出 てきており、そうしたことから運賃低下の傾向は今までよりは緩やかになっていくと考え られる。 25 市場予測 2016-2035 5.2 航空旅客需要予測 2016 年から 2035 年までの 20 年間に、世界の RPK は、年平均 4.7%の伸びを示し、2015 年の 6 兆 5,282 億人キロメートルから 2035 年には約 2.5 倍の 16 兆 3,546 億人キロメート ルになる。予測期間において、実質旅客イールドは、エアライン間の競争もあり、年平均 約 1.6%で減少していくと予測している。 世界の航空旅客予測 航空旅客輸送量 (兆人キロメートル) 20 実 績 予 測 16 2.5 倍 12 4.8% p.a. 8 4 4.7% p.a. 2.6 倍 0 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 地域別 航空旅客需要予測結果 アジア・太平洋 (中国) (東南アジア) (南アジア) (オセアニア) (北東アジア) (日本) 欧州 (西欧) (東欧) 北米 中東 中南米 CIS アフリカ 5.9% 7.0% (年平均成長率) 5.9% 6.6% 4.0% 2015実績 3.1% 2016-2035増加分 2.9% 3.7% 3.6% 5.2% 2.8% 6.5% 5.0% 4.6% 4.8% 0 1 2 3 4 RPK (1兆人キロメートル) 26 5 6 7 市場予測 2016-2035 地域別に見るエアラインの航空旅客需要は、北米と欧州では市場の成熟化に伴い 2.8.% および 3.7%と低い伸びとなる。これにより、北米エアラインの RPK は、2015 年の 1 兆 6,030 億人キロメートルから 2035 年には 2 兆 7,622 億人キロメートルに、欧州エアラインは、1 兆 5,978 億人キロメートルから 3 兆 2,992 億人キロメートルに増えるが、市場シェアはそ れぞれ 2015 年の 25%および 24%から 2035 年には 17%および 20%に縮小する。 欧米エアラインに代わりシェアを伸ばすのはアジア/太平洋や中東のエアラインである。 アジア/太平洋エアラインは、過去 20 年間に RPK ベースで年率 6.6%の旅客の伸びを経験 し、この地域は世界最大の市場に成長した。今後も中国、ASEAN 諸国およびインドが中 心となって年率 5.9%の成長を続け、2015 年の 1 兆 9,941 億人キロメートルから 2035 年に は 3.2 倍の 6 兆 3,131 億人キロメートルとなり、そのシェアは 31%から 39%に拡大する。 地域別航空旅客輸送量シェア(RPK ベース) 中南米 5% アフリカ 中東 CIS 4% アフリカ 2% CIS 中南米 2015年(シェア) 北米 4% 6% 2035年(シェア) 17% 北米 2% 25% 9% 中東 13% その他 (20%) (17%) その他 (24%) (25%) 日本 2% 日本 2% アジア/太平洋 (31%) 13% 中国 欧州 (20%) 19% 東欧 中国 西欧 1% 20% 23% 2% 北東アジア 3% 南アジア 7% 3% 東南アジア 北東アジア 西欧 アジア/太平洋 (39%) (24%) オセアニア 3% 欧州 オセアニア 1% 東欧 2% 4% 南アジア 8% 東南アジア 地域別に見る航空旅客需要の年平均伸び率は、中国エアラインは、過去 20 年間の平均伸 び率が 13.5%であった。最近の景気の不透明感や市場の成熟化によって今後 20 年間の伸び 率は 7.0%に減速するものの依然として世界の成長の中心であり、2035 年の RPK は 3 兆 3,235 億人キロメートルと 2015 年の 8,638 億人キロメートルの 3.8 倍になる。 インドをはじめとする南アジアのエアラインも年率 6.6%、東南アジアのエアラインも年 率 5.9%とそれぞれ大きな伸びが期待できる。 中東エアラインは中東地域の地政学的なリスクはあるものの、多くの乗継客需要を取り込 み 6.5%と 3 番目の高い伸びを示し、2015 年の 5,938 億人キロメートルから 2035 年には 2 兆 822 億人キロメートルに増加し、シェアも 9%から 13%に伸ばす。 旅客ロードファクターは、エアラインが利益確保のため、より精密に需給調整を行ってい くことから、今後とも高い水準を維持するものと考えられ、2015 年の 81.0%から 2035 年 27 市場予測 2016-2035 には 82.7%になると予測している。 世界の ASK は年平均 4.6%で伸び、2035 年には 2015 年の 2.5 倍にあたる 19 兆 7,658 億 座席キロメートルになる。 地域別航空旅客伸び率 RPK年平均伸び率 (%) 20 1996-2015 2016-2035 15 13.5 11.3 10 6.5 5 5.5 4.8 4.7 5.0 5.2 3.9 3.6 7.7 7.0 6.5 5.9 5.9 6.6 5.0 4.6 4.9 4.8 3.8 4.0 4.0 2.9 2.8 2.8 3.1 0.5 0 世界 北米 中南米 西欧 東欧 アフリカ 中東 28 オセア ニア 日本 中国 北東 アジア 東南 アジア 南 アジア CIS 市場予測 2016-2035 6.旅客機の需要予測 6.1 機材分析 路線距離区分別 ASK 分布 エアラインが運航する旅客機は、その路線距離に適した機材が選択される。路線長 500km 単位でまとめた定期運航ノンストップ路線の路線距離別 ASK 分布では、ターボプロップ機 は主に 1,000km 以下で運航され、ピークは 500km 前後である。 リージョナルジェット機は主に 500-2,000km で運航され、最も 多いのは 1,000km 前後の路線であ る。 細胴機は 500-4,500km の路線 をカバーし、特に 1,000-2,000km 帯を中心に運航され、3,500km 以 下の路線で細胴機自身の ASK のう ちの 91%を占める。4,500km 以下 の路線では世界の ASK の 78%を 占め、すべての距離帯で見れば世 界の総 ASK の 50%を占める。 広胴機が運航されているのは、主に 11,000km 以下の路線で、ここまでで広胴機自身の ASK の 91%を占める。4,500km 以上の路線では、世界の ASK の 97%を占める。 座席区分別 ASK 分布 路線距離区分でみた機材座席数別 ASK 分布をみると、路線距離区分 1-1,000km では、 ターボプロップ機およびリージョナルジェット機による 40-99 席の小さな山と細胴機の 120-169 席(A320、737-700/800 等)の大きな山があり、主力は 120-169 席である。 1,001-2,000km でも、120- 169 席が最も多く、170-229 席 の細胴機(A321、737-900ER、 757 等)と 230-399 席の広胴機 が少数ではあるが運航されてい る。 2,001-4,500km でも、主力は 120-169 席で、170-229 席の 細胴機と 230-399 席(A330、 767/787 等)の広胴機が運航され 29 市場予測 2016-2035 ている。この距離帯では、路線長が長くなっていることもあり、1,001-2,000km に比べて 170-229 席の細胴機と 230-399 席の広胴機といった大型機材が多く運航されている。 4,501km 以上では、310-399 席(A340、777 等)が主力で、以下、230-309 席(A330、 787 等)、400-499 席(747)、そして 500-800 席(A380)と続く。最近では 747 が減少し A380 が増加していることもあり、400-499 席と 500-800 席の差が小さくなってきている。 平均座席数の増加/機材の大型化 世界の上位 50 空港の離発着回数と利用旅客の関係を 2004 年と 2013 年と比較してみる と、離発着回数に大きな増減は見られないが、利用旅客数は増加している。2004 年の平均 は 1 離発着当たり 87 人であ ったが、2013 年には約 1.3 倍の 113 人に増加している。 この間、世界のロードファ クターは 73.1%から 79.8% と 6.7%ポイント増加してお り、この分を差し引いても、 1 機あたりの平均座席数は 十分に増加していると考え られ、エアラインは旅客数 の増加を座席数の増加また は機材の大型化で対応して いることが窺える。 全般に、リージョナルジェット機や長距離運航が可能で従来よりも小型の機材が導入さ れたこと、小型機による多頻度運航が広く行き渡ったこともあり、1 機当りの平均座席数は 2000 年代半ばまで減少してきた。しかし、燃油費の高騰、空港混雑による発着枠制限、エ アライン合併による重複路 1機当たりの平均座席数の推移 線の整理や便数の縮小等も 110 あり、最近では 1 機当りの 平均座席数は増加に転じて 2004 年以降、2,000km 以 下の路線では、平均座席数は 2001 年に比べて約 8%増加 105 Index (2001=100) いる。 1,000km以下 1,001-2,000km 100 95 している。2,001-4,500km 路線でも 2007 年以降増加に 転じ、ほぼ 2001 年のレベル 2,001-4,500km 4,500km以上 90 2001 2002 2003 出所: OAG 2014年9月 30 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 市場予測 2016-2035 にまで回復している。4,500km 以上の路線は未だ 2001 年のレベルには回復していないが、 同様に増加に転じている。 退役 2002 年以降、燃油費の高騰やコスト削減もあり、燃費が劣り整備費用のかかる機体年齢 の高い機体(特に、機齢 20 年以上)の退役が加速した。しかし、最近では、機体年齢 15 年以下の A318/319/A320、CRJ100/200、737-600/700/800 といったリージョナル機や細胴 機に加えて、1990 年代後半に製造された 777 や A340 の退役も始まっている。 西側製造の旅客機につ いて見ると、 2005 年は 291 機が退役し、その退役機齢 は 27.8 年であったが、そ の後の 10 年間にエアライ ンは燃油価格の暴騰に遭 遇し、2012 年には 550 機 (平均機齢 25.6)、2013 年 にも 555 機(同 24.2)の 退役を見た。2015 年の退 役機数は 403 機に減少し 燃油価格とともに一旦落 ち着く感があるが、平均 機齢は 22.8 年であり”若 年化”は進行している。 2015 年末のジェット旅 客機の受注残は 9,870 機 で、2020 年頃までの納入 枠はほぼ埋まっており、 一部の新型機では、2020 年代前半の納入枠も埋ま っているとも言われている。これらの機体が納入されるにつれ、古い機体や比較的小型の 機体は順次退役していくことになる。 退役機齢は、景気の変動、燃油費の上昇度合い、新技術を採用した新型機の出現等によ って影響されるが、当面は、多少の変動はあっても下がっていくものと考えられる。 ターボプロップ旅客機では、2005 年の退役機数は 87 機、その平均機齢は 26.6 年であっ たが、2012 年の 118 機(平均機齢 27.9)、2013 年の 103 機(同 24.7)を経て 2015 年は退 役機数 51 機、平均機齢 27.5 年となった。退役機数が減少に転じたのはジェット旅客機と 31 市場予測 2016-2035 同様であるが、退役機の平均機齢は過去 30 年間にわたって漸増しており、近年は 26~27 年の水準にあって下がる傾向を見せていない点がジェット旅客機とは異なる。 ターボプロップ旅客機は、燃油費の高騰に対応してその燃費の良さが見直されているこ とと、適当な代替機が生産されていないことも影響し、ジェット旅客機より長く使用され 続ける傾向にある。 運航機数 世界全体では、1995 年には、ターボプロップ旅客機が 5,579 機、ジェット旅客機が 11,591 機運航されていた。2015 年には、ターボプロップ旅客機が 3,445 機およびジェット旅客機 が 20,814 機となり、この間にそれぞれ 2,134 機の減少および 9,223 機の増加となった。 運航機数は、経済成長による所得の増加、それに伴う旅行需要の増加により、その数を 増やしている。人口百万人当たりの運航機数と一人あたりの GDP は、国土面積や地上交通 網の整備の度合によって差はあるものの、正の相関をみることができる。 2015 年末の受注残は 9,870 機で、その内の 35%がアジア/太平洋地域のエアラインから の発注である。アジア、特に、中国、南アジアや東南アジアは、旺盛な航空需要もあり多 数の機材を発注している。 これらの地域の 1 人当たりの GDP(2010 年米ドル)は、2035 年には中国が 17,466 ド ル、南アジアが 4,330 ドル、東南アジアが 7,865 ドルと、2015 年の 2~2.8 倍になると予想 されている。経済の発展につれて所得が上昇し、それに伴って旅行需要も増加していくこ とから、これらの地域は航空機の大きな潜在需要を有していると言える。 32 市場予測 2016-2035 6.2 ジェット旅客機の需要予測 ロードファクターの増加、機材の大型化および経済性の良い新型機の導入や整備作業の 効率化による機材の生産性向上もあり、2035 年の運航機数は 2015 年の 20,814 機から 1.84 倍の 38,313 機に増加する。2016-2035 年の 20 年間のジェット旅客機の納入機数は 33,160 機であり、その内、15,661 機は現有機の代替需要で納入機数の 47%を占め、17,499 機は今 後の航空旅客需要の増加に対応するための新規需要である。 ジェット旅客機の需要予測結果 40,000 38,313 35,000 30,000 新規需要 17,499 53% 25,000 機数 20,814 納入機数 20,000 33,160 代替需要 15,000 15,661 47% 10,000 5,000 既存機 5,153 0 2015 2035 100 席以下のリージョナルジェット機は、2015 年末に 3,267 機が運航されていたものが 2035 年には 3,923 機に増加するものの、運航機数シェアは 16%から 10%に減少する。2016 -2035 年の間に 2,986 機が退役する。同期間に新たに 3,642 機が納入され、納入機シェア は 11%である。 50 席以下のリージョナルジェット機は、90 年代後半から 2000 年代前半にかけて、経済 性の良い新型機の出現し、ターボプロップ機からの代替需要とメインラインからの低需要 路線の移転や新規路線の開拓もあって、その数を増やした。しかしその後は、2001 年の米 国同時多発テロ以後の航空不況や燃油費の高騰によるコスト増大の影響もあり次第にその 数を減らしている。既に CRJ100/200 や ERJ 135/145 といった 50 席以下の機体の製造は 終了しており、燃油価格の大幅かつ安定的な低下、大規模な合併といったような大きな環 境変化がなければ、以前のような需要が出てくることはなく、製造の再開も難しいと考え る。また、最近では、リージョナルジェット機であってもファーストクラスまたはビジネ スクラスが配置されていることから、機体はひと回り大きめのものが求められている。 米国大手エアラインは、スコープクロースによる制限が 76 席に緩和されたため、50 席以 33 市場予測 2016-2035 下の機材の更新用に 76 席級機材の導入を決め、CRJ900、EMBRAER 175 および MRJ-90 が発注された。これらの機体は、座席数は 86-90 席と大きめであるが、ファーストクラス を配置することで 76 席に抑えている。スコープクロースでは、座席数と共に最大離陸重量 が 86,000lb 以下に制限されているため、これを超える EMBRAER 175-E2 および MRJ-90 の運航には何らかの処置が必要であるが、今後はこれらが主要な運航機材となっていく。 クラス別運航機数および納入機数 リージョナルジェット機 細胴機 広胴機 100% 3,984 9,486 8,553 24,904 20,965 3,923 3,642 2035年運航機数 2016-2035年の納入機数 80% シェア 60% 13,563 40% 20% 3,267 0% 2015年運航機数 90 席機クラスには、CRJ1000、EMBRAER 190、MRJ-90、ARJ21、Superjet100 とい った 5 機種が運航中または開発中である。その需要拡大のためには、特に米国で、スコー プクロースが少なくとも 80 席ないしは 90 席に緩和される必要があろう。リージョナルジ ェット機の主力になる 60-99 席の運航機数は 2015 年の 2,092 機から 2035 年には 3,750 機に増加する。当該クラスの納入機数は 3,469 機である。 100-229 席の細胴機は、2015 年末に 13,563 機が運航されていたが、2035 年には 24,904 機となり、運航機シェアは 65%になる。2016-2035 年の間に 9,624 機が退役し、新たに 20,965 機が納入される。納入機シェアは 63%である。 最近の傾向として、燃油費の高騰、空港混雑といった問題から、A319 や 737-700 よりも A320/321 や 737-800/900ER/MAX-8 のようなやや大型の機体に人気がある。また、平均座 席数も増加傾向にある。例えば、欧州エアラインの 737-800 の平均座席数は既に 180 席に 達している。一部には、757 のように高温・高地性能に優れ、200 席クラスで大西洋横断能 力のある機体を欲しているエアラインもでてきている。LCC は、現在使用中の機材である A320 や 737 で飛行可能な4~5 時間の中距離路線を主に運航しているが、当該市場の成熟 につれ、長距離路線へ進出して行くことになる。将来的には、現有機より大きめで、長距 34 市場予測 2016-2035 離を飛行できる機体にも需要が広がっていくであろう。いずれにしても、今後 20 年間の需 要の中心は細胴機であることに変わりはない。その中でも 120-169 席機の納入機数が 13,255 機と最も多く、2035 年には運航機数が 16,498 機となる。機材の大型化や長距離化 もあり 170-229 席機の納入機数も 5,876 機と多い。100-119 席機の納入機数は、CS100 と EMBRAER 195 が主で 1,834 機である。最近では、150 席を区切りとして需要を論ずる 事も多いので、細胴機の座席区分を便宜的に 100-149 席と 150-229 席に分けてその納入 機数をみると、100-149 席機が 7,357 機、150-229 席機が 13,189 機となる。 サイズ別 ジェット旅客機運航機数および需要予測 機数 18,000 リージョナル・ジェット機 16,498 細胴機 広胴機 16,000 合計運航機数 2015年末: 20,814 機 2035年末: 38,313 機 2016-2035年新規納入機数: 33,160 機 14,000 新規納入機 12,000 10,901 10,000 13,255 8,000 6,468 6,000 10,901 0 4,307 1,509 4,025 1,956 3,860 5,876 2,092 2,000 4,359 3,750 4,000 3,469 1,175 1,175 173 173 0 2,092 281 2015 2035 2015 2035 20-59席 60-99席 1,938 残存機 1,976 3,243 686 1,834 686 104 1,976 592 1,956 1,509 334 447 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 100-119席 120-169席 170-229席 230-309席 310-399席 820 519 668 152 519 2015 2035 400席以上 230 席以上の広胴機は、2015 年末の運航機数は 3,984 機であり、2035 年には 9,486 機と なり、そのシェアは 19%から 25%に増加する。2016-2035 年の間に 3,051 機が退役し、 新たに 8,553 機が納入される。納入機シェアは 26%である。 広胴機の主要な市場は中長距離国際線および高需要の国内幹線である。787 のような燃費 の良い中型機の導入により、747 や 777 といった大型の機材では採算がとり難かった中需 要長距離路線への進出が可能となった。広胴機では 230-309 席機が最も納入機数が多く 4,025 機の納入が見込まれ、2035 年の運航機数は 4,359 機となる。310-399 席機の納入機 数は 3,860 機で、2035 年の運航機数は 4,307 機となる。 400 席以上の大型機は、最近のエアラインの小型機志向や景気の先行き不透明感もあり受 注状況は芳しくない。長期的に見れば、航空旅客需要は年率 4.7%で伸び、空港混雑や燃油 費の上昇、さらに、人口の増加とともに都市化も進み都市部に人口が集中する傾向がある ことなどから、高需要の主要都市間を結ぶ路線を中心に大型機の需要は存在する。400 席以 35 市場予測 2016-2035 上の運航機数は、2015 年の 519 機から 2035 年には 820 機となり、今後 20 年間で 668 機 が納入される。 機数 地域別 ジェット旅客機の運航機数と需要予測 16,000 15,370 合計運航機数 2015年末: 20,814 機 2035年末: 38,313 機 2016-2035年新規納入機数: 33,160 機 14,000 12,000 新規納入機 10,000 既存機 13,308 8,000 6,000 4,000 7,334 7,365 6,104 6,034 6,239 4,361 6,457 3,030 2,315 2,000 0 1,253 2,062 1,330 1,460 2,565 2,013 739 1,168 162 1,569 863 1,410 159 1,095 908 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 2015 2035 北米 欧州 アジア/太平洋 中東 中南米 アフリカ CIS 302 465 地域別でみると、2015 年末で運航機数が最も多いのは北米で、6,104 機が運航されおり、 2035 年には 7,334 機に増加するが、地域別運航機シェアでは、29%から 19%に減少する。 この間に 6,239 機が納入される。納入機シェアは 19%である。 欧州の運航機数は 4,361 機から 7,365 機に増加し、そのシェアは 21%から 19%に低下す る。この間の納入機数は 6,457 機で、シェアは 20%となり、北米を僅差でしのいで第二の 市場になる。 アジア/太平洋は、現在、6,034 機が運航されている世界第二の市場である。旅客需要の 高い伸びを背景に 2035 年には 15,370 機に増加し、運航機シェアは 29%から 40%に増加す る。今後 20 年間に 13,308 機が納入され、そのシェアは 40%となる世界最大の市場である。 長距離大型機材を多く必要とするため、400 席以上の広胴機が 340 機納入される。 中東、中南米およびアフリカは、世界平均を上回る高い旅客需要の伸びを背景に、その 運航機数を増やしていく。2035 年には、中東、中南米およびアフリカの運航機数は、それ ぞれ 2,315 機、3,030 機および 1,330 機となる。納入機数は、それぞれ 2,013 機、2,565 機 及び 1,168 機である。特に、中東は広胴機が 1,372 機と、地域内の納入機数の 68%を占め る広胴機市場である。 CIS は、旧ソ連時代からの旧式機の退役もあり、1,410 機が納入され、2035 年の運航機 数は 1,569 機となる。 36 市場予測 2016-2035 6.3 ターボプロップ旅客機の需要予測 世界のエアラインで運航されている 15 席以上のターボプロップ旅客機は、1994 年の 5,908 機をピークに、リージョナルジェット機の普及に押されて減少し、2015 年末の運航 機数は 3,445 機となった。 現在のターボプロップ機が運航されている路線の殆どは 1,000km 以下であるが、この距 離帯には社会的に最低限必要とされる交通サービスとしての路線や、技術的にジェット化 が困難な路線もあり、不採算路線からの撤退や減便が進んでも一定量の輸送力は維持され ると考えられる。加えて、近年の燃油費の高騰を背景に、燃費の良いターボプロップ機が 見直され、受注状況も改善されている。 実際には、60-79 席機では依然としてリージョナルジェット機との競合があることに加 えて、59 席以下では新規調達に適した機材が生産されていないことから、評価の好転が速 やかな機数増に繋がりにくい状況にあるが、ターボプロップ機の運航機数は 2015 年末の 3,445 機から 2035 年末には 3,778 機に漸増する。この間、2,810 機が退役するが、3,143 機が新たに納入される。 ターボプロップ旅客の需要予測結果 5,000 3,778 4,000 0 333 3,445 新規需要 3,000 333 11% 機数 代替需要 2,810 89% 納入機数 2,000 3,143 1,000 既存機 635 0 2015 2035 現在のターボプロップ運航機数は、北米を中心として 15-19 席機が 1,018 機、シェア 31%と最も多い。しかしながら、ターボプロップ機の市場は、2000 年以降、39 席以下の機 体の新規発注が少ないこと、ターボプロップ機メーカーの撤退もあり適当な小型機がない こともあり、需要は大型機へ移行している。2035 年には ATR72 や Q400 といった 60-79 席機が 1,608 機と最も多くなり、そのシェアは 32%から 43%に増える。この間の納入機数 は 1,101 機であり、納入機シェアでは 35%を占める。 37 市場予測 2016-2035 低需要路線であっても、最低限の航空サービスを必要とする路線や地域的に特殊な路線 (離島路線等)においては、ターボプロップ機が必要とされている。それらの路線では 15 -19 席機が今後とも運航され、438 機が納入されると見込まれる。 20-39 席機は、2015 年には 611 機が運航されているが、DHC8-200 や Saab340 といっ た機体の経済的 ターボプロップ旅客機の受注推移 な寿命が 2020 年 350 600 代前半にくるた ジェット燃料価格 500 アラインで代替 400 受注機数 機を求める声が ある。 300 リージョナルジェット機 250 200 300 150 200 90 - 100 席 の 100 100 ターボプロップ ジェット燃料価格(¢/ガロン) め、特に、北米エ 50 ターボプロップ旅客機 機の開発も検討 0 0 1995 されている。輸送 2000 2005 2010 2015 *ジェット燃料価格は、製油所からの引渡し価格。 出所: Ascend, EIA, JADC 需要が比較的高 く路線距離が短い路線を運航しているエアラインは、このクラスの機体に興味を持ってい る。これに対応するため、ボンバルディアは Q400 のオプションとして 86 席仕様を開発し ている。ATR は 90 席機の開発を望んでいる。 サイズ別 ターボプロップ旅客機の運航機数と需要予測 機数 1,800 1,600 1,400 合計運航機数 2015年末: 3,431 機 2035年末: 3,778 機 2016-2035年新規納入機数: 3,143 機 既存機 1,200 1,000 1,088 1,018 1,101 752 800 600 714 627 611 507 400 743 284 438 627 507 200 0 新規納入機 1,608 234 9 69 2015 2035 15-19席 2015 2035 20-39席 50 2015 2035 40-59席 38 0 0 2015 2035 2015 2035 60-79席 80-99席 市場予測 2016-2035 これに対して、「派生型であっても新型機であっても多額の開発費を要し、それに伴い機体 価格も上昇する。また、短距離路線では地上交通手段と競合し、路線距離が長くなればリ ージョナルジェット機と競合する。そのため、燃油費の更なる高騰や、技術的な飛躍とい った事がない限り、開発は難しいのではないか」との声もある。このクラスの潜在需要は、 627 機が見込まれる。 地域別でみると、2015 年末の運航機数は、アジア/太平洋が 899 機と最も多い。今後 20 年間の旅客の伸びが大きいことや都市間距離が比較的短くターボプロップ機の運航に適し ていることもあり、2035 年には、運航機数は 1,394 機となり、地域別の運航機シェアは 26% から 37%に増える。今後 20 年間に、アジア/太平洋では最も多い 1142 機が納入され、そ の納入機シェアは 36%となる。 北米の 2015 年末の運航機数は 753 機で、2035 年には 454 機に減少する。今後 20 年間 に 372 機納入される。 欧州は、2015 年末の運航機数は 595 機で 2035 年には運航機数は 540 機と減少するもの の、今後 20 年間に 421 機の納入が見込まれる。 中南米およびアフリカでもターボプロップ機が見直されてきており、2035 年の運航機数 は、それぞれ 534 機および 452 機となる。納入機数は、それぞれ 457 機および 390 機であ る。 CIS は、旧ソ連製の機体の更新、広大な未開拓地の開発等もあり 2015 年の 262 機から 2035 年には 377 機に増える。納入機数は 338 機である。 地域別 ターボプロップ旅客機の運航機数と需要予測 機数 1,600 合計運航機数 2015年末: 3,445 機 2035年末: 3,778 機 2016-2035年新規納入機数: 3,143 機 1394 1,400 1,200 新規納入機 1,000 800 899 753 既存機 1142 595 600 534 540 480 454 400 426 452 457 372 200 252 0 377 421 82 2015 2035 北米 119 2015 2035 2015 2035 欧州 アジア/太平洋 30 27 2015 2035 中東 39 23 4 77 262 390 62 338 39 2015 2035 2015 2035 2015 2035 中南米 アフリカ CIS 市場予測 2016-2035 40 市場予測 2016-2035 7.航空貨物需要予測 7.1 航空貨物市場 航空貨物輸送 世界の航空貨物輸送量は、RTK ベースで 1996-2015 年の 20 年間に年均 3.7%で伸びて きた。貨物ビジネスは、旅客に比べ景気の変動を大きく受け易く、直近の 10 年では、同時 多発テロ、米国の金融危機や欧州の信用不安の影響もあり、その伸び率は年平均 2.0%と、 1996-2005 年の 10 年間の年平均伸び率の 5.5%に対して大きく減少した。 2015 年では、RTK は対前年比で 4.6%の増加となった。景気の回復局面の初期には、在 庫サイクルから航空輸送を利用する度合いが大きくなることもあり、2008 年から続いた低 迷からは 2014 年までに脱出したが、2015 年は中国経済の低迷等により成長率は鈍化し、 IATA の予測では今後 5 年 間は年平均 3.7%の成長率 が見込まれている。 欧州景気の不透明感も あり、中国-中東-欧州 はあまり芳しくなかった ようだが、アジア-中東 -アフリカ、アジア-中 東-南米といった路線が 比較的好調なこともあり、 41 市場予測 2016-2035 中東エアラインは 10.6%の伸びとなった。 最近では、高付加価値品の新興国での製造や、新興国企業が他の新興国へ進出するとい った、従来の先進国から新興国へ低付加価値品の製造移転とは異なった動きが活発化して きている。近年、最終製品の組み立ては労働コストの安い国や消費地に近い場所で行われ ていることが多く、航空貨物輸送品は、携帯電話や AV 機器といった最終製品から電子部品 やレンズといった製品を構成する部品に移ってきている。また、包装技術も進歩し、以前 に比べると荷物の容積も小さくなっている。このように、航空貨物の小型化、軽量化が進 んでいることから、航空貨物の輸送供給量は全体的に過剰となっている。 エアラインは、貨物イールドの低下、 燃油費の高騰による収支の悪化、A330 や 777-300ER のように床下貨物室の容積が大きく比較的多くの貨物を搭載できる機体の増加などから、 貨物機による輸送を減らし旅客機の床下貨物室の利用を増やしている。LCC も旅客関連収 入以外の収入源として、貨物事業に進出してきている。 当面の世界景気は力強さに欠け、新興国景気や欧州景気の不透明感もあり下振れリスク もあるが、長期的には、企業のグローバル化、在庫の削減、新興国の経済成長、それによ る中間層の増大と彼らの購買力の向上等により、人や物はより活発に移動し、航空貨物需 要もそれにつれて回復してくるものと考えられる。 他の輸送モードとの競合 航空貨物輸送は、航空旅客輸送のように陸上路線でのみ高速鉄道や長距離バスと競合して いるのとは異なり、陸上では鉄道やトラックと、海上ではコンテナ船と競合しており、取 り巻く環境は旅客輸送よりも厳しい。 世界の商品とサービスの貿易は、輸出額ベースで、直近の 10 年間で年平均 5.3%の伸びを 示している。この間、海上コンテナ輸送は、TEU ベースで年平均 5.8%の伸びを示している のに対し、航空貨物輸送は RTK ベースで 2.0%の伸びであり、その伸び率は非常に小さい。 企業は、商品価格の下 落による運賃負担力の 低下、企業の物流コスト の削減等の理由により、 高価な航空輸送から安 価な海上コンテナ輸送 をはじめとする他の輸 送機関を利用する傾向 にある。 近年、航空貨物は、よ り付加価値が高く、航空 機の高速性を生かす事 42 市場予測 2016-2035 ができる生鮮品、医薬品、緊急輸送品や精密機器といったものに重点を置いている。 貨物ロードファクター 貨物ロードファクターは、貨物機による輸送と旅客機の床下貨物室による輸送を合わせ た全体でみると、1995 年では 35.0%であったが、2015 年には 37.4%と、需要の変動の影 響を受けながらもわずかではあるが増加している。 貨物機のロードファクターは、1995 年は 64.9%、2015 年は 63.8%と若干減少してはい るがほぼ同程度である。貨物機のロードファクターは、既に高水準に達しており、今後大 きく増えることはないであろう。 同期間に旅客機の床下貨物室 のロードファクターは 26.8%か ら 27.4%に微増している。2000 年頃には 25%前後であったが、直 近の 4 年間は 27%台後半となっ ており、旅客機の床下貨物室の利 用の増加傾向との対応が伺える。 LCC の貨物事業の進出、輸送 品の小型化および軽量化、貨物搭 載量の大きな広胴旅客機の出現といったことから、今後も旅客機の床下貨物室での貨物輸 送が増加し、旅客機の床下貨物室のロードファクターも上昇するものと考えられる。 貨物イールド 運賃を示す指標である実質貨物イールドは、1986-1995 年の 10 年間では世界で年平均 7.5%の減少であったが、1996-2015 年の 20 年間では、年平均 1.2%の減少とその減少率 を大幅に減らした。1980 年代は、 747F のような大型貨物機の市場 投入もあり、大きな減少を示して いたが、1990 年以降、世界経済 のグローバル化による国際貿易 の拡大による航空貨物需要の増 大があり、イールドは大きく下が りにくい状況にあったが、今後は、 他の輸送モードとの競合や企業 の物流コスト削減による運賃下 げ圧力、航空貨物需要の減少による供給量過多もあり、イールドは比較的下がりやすい環 境になると考えられる。 43 市場予測 2016-2035 7.2 航空貨物需要予測 世界の航空貨物需要は、RTK ベースで 2016-2035 年の間に年平均 4.1%で成長し、2015 年の 2,261 億トンキロメートルから 2.2 倍の 5,063 億トンキロメートルに増加する。この間、 実質貨物イールドは年平均 0.7%で減少すると見込んでいる。 路線別でみると、最大の市場はアジア/太平洋-北米路線で、年平均 3.9%の伸びを示し、 2015 年の 414 億トンキロメートルが 2035 年には 891 億トンキロメートルとなる。伸び率 が世界平均と同程度であることもあり、そのシェアは 17.6%を維持する。 アジア/太平洋-中東路線は、年平均 9.4%の伸びを示し、2015 年の 149 億トンキロメ ートルが 2035 年には 6.0 倍の 890 億トンキロメートルとなり、そのシェアは 6.6%から 17.6%に増加する。この路線は今後 20 年間の増加分が最も大きい市場である。 アジア/太平洋-欧州路線は、年平均 3.0%の伸びを示し、2015 年の 419 億トンキロメ ートルがから 2035 年には 756 億トンキロメートルとなり、シェアは 18.6%から 14.9%に減 少する。 アジア/太平洋域内は、3.5%の伸びで、同様に 341 億トンキロメートルが 676 億トンキ ロメートルとなり、シェアは 15.1%から 13.3%に減少する。アジアは、陸上インフラの整 備が進むと共に航空輸送からトラック輸送をはじめとする陸上輸送へのシフトが起こり、 航空輸送の伸びは緩やかになっていく。 欧州-中東路線は、6.9%の伸びで、2015 年の 144 億トンキロメートルから、2035 年に は 3.8 倍の 551 億キロメートルとなり、そのシェアも 6.4%から 10.%に増加する。中東は 地理的な優位性から、アジア/太平洋-欧州需要を取りこんでいく。このため、アジア/ 太平洋-欧州路線の伸びは小さくなり、アジア/太平洋-中東路線や欧州-中東路線の伸 びが大きくなる。また、中東経由のアフリカや中南米への需要も取り込んでいる。 44 市場予測 2016-2035 伸び率でみると、アフリカ-中東路線が 9.6%、アジア/太平洋-中東路線が 9.4%、欧州 -中東路線が 6.9%と大きな伸びが期待できる。中東を経由して東西または南北に貨物が輸 送されていくことが窺える。 全般的に、中東、アジア/太平洋や中南米といった新興国地域内および地域間を結ぶ路 線で大きな伸びが期待でき、特に、中東およびアジア/太平洋を結ぶ路線が成長の中心と なっていく。 成熟市場である欧州域内、欧州-北米および北米域内は 1%前後の低い伸びとなる。 地域別では、アジア/太平洋地域のエアラインの輸送量が最も大きく、地理的な広がり や高い経済成長を反映し、2015 年の 803 億トンキロメートルが 2.6 倍の 2035 年には 2,093 億トンキロメートルに増加する。北米のエアラインは、568 億トンキロメートルから 1,048 億トンキロメートルに、中東エアラインは、その地理的な優位性を生かし 281 億トンキロ メートルから 3.4 倍の 951 億トンキロメー トルとなり、欧州を抜 いて 3 番目となる。欧 州エアラインは、473 億トンキロメートル から 675 億トンキロ メートルとなり、大き な伸びを示す中東エ アラインに及ばない。 45 市場予測 2016-2035 既に成熟市場にある北米および欧州エアラインは、年平均 3.1%および 1.8%と低い伸び となり、そのシェアは北米では 25.1%から 20.7%に、欧州では 20.9%から 13.3%にそれぞ れ減少する。世界最大の市場であるアジア/太平洋は、4.9%の伸びが期待でき、そのシェ アは 35.5%から 41.3%に拡大する。 中東は 6.3%と最も 高い伸びを示す。アフ リカ、CIS および中南 米は直近では景気の 不透明感があるもの の、長期的には比較的 高い経済成長が期待 でき、それぞれ 4.9%、 3.8%および 3.3%の 伸び率となる。 旅客輸送と同様に、 貨物の伸びはアジア /太平洋、中東やアフ リカの新興国によっ て牽引される。 航空貨物は、旅客機の床下貨物室と貨物機によって輸送されている。LCC を含む旅客エ アラインが旅客機の床下貨物室の利用を増やしていること、A330 や 777-300ER のように 床下貨物室の容積が大きく比較的多くの貨物を搭載できる機体が増えていることから、今 46 市場予測 2016-2035 後とも旅客機の床下貨物室の利用が増えていき、床下貨物室の貨物ロードファクターは 2015 年の 29.3%から 2035 年には 34.4%に増加する。貨物機のロードファクターは既に 60% 台半ばと高いが、2035 年は 68.6%と 2015 年の 64.0%から少し増加する。全体では、貨物 ロードファクターは、2015 年の 38.3%から 2035 年には 42.7%に増加する。 航空貨物輸送供給量は、世界全体では ATK ベースで 2015 年の 5,908 億トンキロメート ルから 2035 年には 2.0 倍の 1 兆 1,863 億トンキロメートルになる。 地域別航空貨物輸送量シェア(RTK ベース) 47 市場予測 2016-2035 48 市場予測 2016-2035 8.ジェット貨物機の需要予測 8.1 機材分析 運航機数 世界の貨物機の運航機数は、2015 年に RTK が 4.6%増加したこともあり、2014 年の 1,708 機から 2015 年には 1,764 機に増加し、細胴機 632 機、中型広胴機 532 機および大型機 600 機となった。なかでも、細胴機が、1998 年以降減少を続けてきたが、昨年に続き 29 機と わずかであはある が増加に転じた。 2005 年には、細 胴機が 873 機と運 航機数の約 43%を 占めていたが、次 第にその数を減ら し 、 2015 年 に は 632 機となり、シ ェアも 36%に減少 した。代わって、 その数を増やして いったのは大型機で、2005 年の 498 機でシェアが 25%であったが、2015 年には 600 機と そのシェアを 34%に伸ばした。中型広胴機は、2005 年に 653 機で 32%のシェアを有して いたが、2015 年には 532 機に減少し、シェアについても 30%と若干減少した。 改造貨物機 貨物機市場では、歴史的に旅客機からの改造機が多く使用されており、運航機数でみる と、おおよそ 50%が改造機であった。旅客機は、機齢 10 年を過ぎる頃から貨物機への改造 が始まり、機齢 15 年頃 から 20 年位までが改造 のピークとなる。 改造機は、特に大き な環境の変化がない限 り、改造後 25 年ほど使 用され退役する。2015 年は 827 機が改造機で あった。 1995 年以降の新製機 49 市場予測 2016-2035 と改造機の納入履歴を見ると、細胴機は、1990 年代に製造された 757 貨物機を除けば新製 機はない。このため、この市場は改造機市場であり、比較的安定した改造機需要がある。 特に、737-300/400 および 757 が多数改造されている。また、最近では、CRJ200 や ERJ 145 といったリージョナルジェット機および MD-80 の改造貨物機が出てきている。 広胴機は、もともとは 改造機市場で、1990 年 代 は A300/A310 や DC-10、2000 年代は 747、 767、MD-11 といった機 体が多数貨物機に改造 された。しかしながら、 2008 年以降、航空貨物 市場の低迷、燃油費の高 騰もあり、燃費の悪い 3 発機や 4 発機は敬遠さ れ、これらの機体の改造 需要が大幅に減少した。 また、新型機の開発遅れにより改造に適した機体が不足していることや A330 や 777 とい った人気機種の改造キットが存在していないこともあり、新製機の納入が増えている。貨 物需要の低迷、改造に適した機体の不足や燃油費の高騰もあり、広胴機の改造貨物機は、 以前程魅力的ではなくなってきている。 大型化 この 10 年間に、707F、727F、737-200F、747-100F/200F/300F、DC-8F、DC-9F の多 くが退役し、A300-600、 ジェット貨物機1機あたりの貨物搭載容量の推移 MD-11、747-400、757、 70 767-300ER と い っ た 多く導入された。また、 A330-200F 、 777F 、 747-8F といった新製 貨物機が市場に投入さ 平均貨物搭載量(トン) 旅客機からの改造機が 60 57.5 53.5 50 45.1 40 れた。 この結果、1 機あた りの平均貨物搭載容量 は、2004 年の 45.1 ト 30 2004 2009 出所: Ascend, Airbus, Boeing, JADC 50 2014 市場予測 2016-2035 ンから、2014 年は、57.5 トンとなった。小型機が若干増加したこともあり、2013 年の 57.8 トンからわずかに減少したもののこの 10 年間で 27%増加した。直近の 3 年間では、57%半 ばで推移している。 退役 貨物機の場合、旅客機からの改造機が多いこと、稼働時間も旅客機より短いこともあり、 退役機齢は、30 数年と長い。 2002 年以降、燃油費の高騰やコスト削減もあり、燃費が劣り整備費がかかる機齢の高い 機体、特に、機齢 35 年以上機体の退役が加速した。さらに、最近では貨物需要の低迷もあ り、機齢 16 年から 30 年の比較的若い機体も退役している。 2005 年は 46 機が退 役し、平均退役機齢は 37.4 年 で あ っ た が 、 2010 年 に は そ れ ぞ れ 118 機、37.7 年に増加し た。その後、若干減少し、 2015 年は 66 機が退役 し、平均退役機齢は 36.8 年となった。平均退役機 齢は 2007 年頃をピーク に、多少の変動はあるも のの若くなっている。 51 市場予測 2016-2035 8.2 ジェット貨物機の需要予測 貨物機による貨物輸送量は、RTK ベースでは 1995-2015 年の間に年平均 4.5%で増加し、 輸送シェアは 1995 年に 40%であったものが 2015 年には 48%となった。但し、この間の貨 物機による輸送シェアは 2007 年の 58%をピークにその後は減少を続けており、同様に RTK も大きく減少している。 また 2007 年と 2013 年で比べると、この間は、RTK の伸びが低迷していたこともあり、 エミレーツ航空やカタール航空を除けば、主要な航空会社の RTK も減少している。 主要航空会社別貨物輸送量の推移 シンガポール航空 カタール航空 ルフトハンザ 大韓航空 2013 2007 貨物機 2013 2007 旅客機の床下貨物室 2013 2007 2013 2007 エミレーツ航空 キャセイ航空 エールフランス 2013 2007 2013 2007 2013 2007 0 出所: IATA, ICAO, JADC 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 RTK (億トンキロメートル) このように、この期間の旅客機の床下貨物室の RTK は全体では横ばいか若干減少を示し ているが、貨物機の RTK はより大きく減少していることから、相対的に航空貨物輸送が輸 52 市場予測 2016-2035 送機による輸送から旅客機の床下貨物室による輸送に重心を移していることが伺える。エ ミレーツ航空やカタール航空では、貨物機の導入もさることながら、広い床下貨物室を持 つ広胴機を大量に導入していることで貨物輸送供給量が大幅に増加し、この 7 年間で 2 倍 乃至 3 倍に増加している。 今後とも、A330 や 777-300ER をはじめとする床下貨物室に余裕のある広胴機の増加や、 旅客以外の収入源の確保のために旅客機の床下貨物室の利用を拡大する動きもあって、旅 客機の床下貨物室による貨物輸送量は増え、相対的に貨物機による輸送のシェアは減少し ていくものと考える。 2016 年から 2035 年までの貨物機による貨物輸送量は年平均 3.6%で増加し、2015 年の 1,053 億トンキロメートルから 2035 年には約 2.0 倍の 2,134 億トンキロメートルとなるが、 この間の貨物機による ATK は 1,645 億トンキロメートルから 3,110 億トンキロメートル (1.9 倍)になり、貨物機による輸送のシェアは 42%に減少する。 運 航 機 数 は 、 2015 年 の 1,764 機 か ら 2035 年 に は 2,667 機に増加する。2015 年 は、細胴機が 622 機と最も多 く、そのシェアは 35%であっ たが、2035 年には 838 機に 増加するものの、そのシェア は 31%に減少する。これに対 して、大型機は、同期間に 567 53 市場予測 2016-2035 機、シェア 32%から 992 機、シェア 37%に増加する。この間、1,351 機の貨物機が退役し、 2015 年の運航機のうち 2035 年に運航しているのは 413 機となる。今後 20 年間に 2,254 機が納入される。その内、代替需要が 1,351 機でシェア 60%、新規需要が 903 機でシェア 40%となり、ジェット貨物機需要の 60%が代替需要である。 機材別の納入機数は、細胴機 835 機、中型広胴機 686 機、大型機 733 機の 2,254 機で、 シェアは、それぞれ 37%、30%および 33%である。このうち新製機は 837 機納入される。 新製機の内訳は中型広胴機 410 機、大型機 427 機であり、これらが広胴機の納入機数の 59% を占める。 細胴機は、適当な新製貨物機が存在しないことから、A320/321、MD80、737 や 757 と いった旅客機からの改造貨物機が主となる。CRJ100/200 や ERJ 145 といったリージョナ ルジェット機の改造貨物機も出現している。 広胴機は、改造貨物機としては主に A330、777 が期待でき、新製機としては A330-200F、 777F、747-8F が存在する。将来的には A350、A380、787 の貨物機の出現もあろう。 地域別では、2015 年から 2035 年の間、運航機数は、北米が 796 機から 871 機、アジア /太平洋が 324 機から 785 機、欧州が 247 機から 333 機、中東が 94 機から 278 機、南米 が 87 機から 142 機、アフリカが 57 機から 77 機、そして CIS が 159 機から 181 機に増加 する。貨物機市場としては、期間を通して北米が最も大きい。中東、南米などの新興国で の運航機数が伸び、特にアジア/太平洋では 2035 年には北米に迫る機数を擁する。 納入機数が最も大きいのは北米で 732 機、次いでアジア・太平洋が 665 機、欧州が 277 機、中東が 232 機、中南米が 125 機、アフリカが 71 機、そして CIS が 152 機である。欧 州、アフリカ、中南米、CIS は改造貨物機が主であるが、北米、アジア/太平洋、中東で は新製機の割合も比較的高い。 54 市場予測 2016-2035 新製機は、北米の 285 機、アジア/太平洋の 239 機、中東の 145 機、欧州の 47 機と続 く。新製機の市場としては、北米とアジア/太平洋が最も大きな市場である。 ランプ式貨物扉を有する貨物機によって重量物や規格外品を輸送する HOM(Heavy and Oversize air cargo Market)では、旧ソ連製の軍用機の民間転用型である An-124 や Il-76TD が主に用いられている。HOM の輸送量のシェアは、RTK ベースで航空貨物輸送量全体の 0.5%程度と非常に小さいが、航空宇宙機器、精密機械、油田や鉱山開発用資機材、災害支 援、人道支援等の輸送需要の高まりから、当該市場の需要の伸び率は、航空貨物輸送全体 の伸び率よりも高いと考えられている。当面、An-124、An-225 や Il-76TD、Il-90VD に替 わる機体がないこともあり、現有の機体が今後とも運航されることになる。最近では、西 側諸国で運用中又は現在開発中の軍用輸送機の民間型の検討が進められている。 55 市場予測 2016-2035 56 市場予測 2016-2035 9.販売予測 9.1 ジェット機の販売予測 2016-2035 の納入機数は、ジェット旅客機およびジェット貨物機を合わせて 33,997 機、 販売額(2015 年カタログ価格)は 5 兆 2,038 億ドルになる。 機材サイズ別 ジェット旅客機の販売予測 機数 2015年価格 (10億米ドル) 16,000 1,600 リージョナルジェット機 細胴機 広胴機 14,000 12,000 合計 33,160 機 4兆9510 億米ドル 1,400 1,316 13,255 1,316 1,200 1,018 1,000 10,000 738 8,000 800 5,876 6,000 600 4,025 3,469 4,000 3,860 400 285 156 2,000 0 1,834 200 118 668 173 5 20-59 60-99 100-119 120-169 170-229 230-309 310-399 400 over 0 座席区分(席) ジェット旅客機の納入機数は 33,160 機、 販売額は 4 兆 9,510 億ドルである。 その内、 ジェット旅客機の販売額シェア 20-59 0% 400 over 6% リージョナルジェット機は、納入機数 3,642 60-99 3% 100-119 2% 機、販売額 1,610 億ドル、販売額シェアは 3%である。細胴機は、納入機数 20,965 機、 120-169 27% 310-399 27% 販売額 2 兆 1,720 億ドル、 販売額シェア 43% となり、広胴機は、納入機数 8,553 機、販売 細胴機 43% 広胴機 54% 額 2 兆 6,190 億ドル、販売額シェア 54%と なる。 230-309 20% 販売額が最も多いのは、A350、777 や 170-229 15% 787-10 といった 310-399 席機の 1 兆 3,160 億ドルであり、販売額シェアは 27%を占め 4兆9510 億米ドル 57 市場予測 2016-2035 る。納入機数の 40%を占める 120-169 席機は、機体単価が安いこともあり 1 兆 3,160 億 ドルと 310-399 席機の販売額にちょうど並び、販売額シェアは 27%である。 新製貨物機の納入機数は 879 機、販売額は 2,590 億ドルで、需要が最も多い大型機の販 売額が 1,811 億ドル、中型広胴機が 778 億ドルである。 地域別 ジェット機*の機材需要および販売予測 2015年価格 (10億米ドル) 機数 2,500 25,000 合計 35,414 機 5兆 2100 億米ドル 2,268 20,000 13,973 15,000 10,000 6,971 1,500 1,000 876 812 2,000 6,734 591 500 5,000 2,690 305 2,245 1,239 162 0 北米 北米 欧州 欧州 アジ アジア太平洋 中東 中東 ア太 平洋 ジェット機(旅客機および貨物 機)の販売額を地域別でみると、 アフリ アフリカ カ 中南 中南米 米 1,562 196 CIS CIS 0 * ジェット旅客機とジェット貨物機の合計 地域別ジェット機の販売額シェア 納入機数が 13,973 機と最も多い アフリカ 3% アジア/太平洋が、2 兆 2,680 億 CIS 4% 中南米 6% ドルと世界最大の市場であり、販 売額シェアは 43%である。 北米 16% 中東 11% 次いで欧州、北米が、それぞれ 欧州 17% 8,760 億ドルと 8,120 億ドル、シ ェアはそれぞれ約 17%と 16%と アジア 太平洋 43% なる。中東は広胴機需要が多いこ ともあり、2,245 機の需要に対し て、5,910 億ドルと大きな額にな り、その販売額シェアは 11%であ 合計 5兆210億米ドル る。 58 市場予測 2016-2035 9.2 ターボプロップ旅客機の販売予測 2016-2035 年の販売機数は 3,143 機で、その販売額(2015 年カタログ価格)は 654 億 ドルである。ジェット機の市場と比較すると、機数は 9.5%、売上高は 1.3%にすぎない。 販売額は、納入機数を反映して 60-79 席が 280 億ドルと全体の約 43%を占めている。 2015年価格 (10億米ドル) 機材サイズ別 ターボプロップ旅客機の販売予測 機数 1,500 30 28 合計 3,143 機 649 億米ドル 1,101 19 1,000 20 743 627 12 500 438 10 4 234 2 0 15-19席 20-39席 40-59席 座席区分 60-79席 80-99席 0 地域別では、アジア/太平洋が、納入機数が 1,142 機と最も多い事もあり、260 億ドルで、 40%を占める。次いで、北米、欧州および中南米が、それぞれ 70 億ドル、100 億ドル及び 80 億ドルと続く。 地域別 ターボプロップ旅客機の機材需要および販売予測 2015年価格 (10億米ドル) 機数 1200 30 1,142 合計 3,143 機 654 億米ドル 26 1000 25 800 20 600 15 400 421 372 457 390 10 8 10 338 7 7 7 5 200 23 0.5 0 北米 北米 欧州 欧州 アジア太平洋 アジア太平洋 中東 中南米 中南米 中東 59 アフリカ アフリカ CIS CIS 0 市場予測 2016-2035 9.3 世界の販売予測 2016-2035 年の 20 年間における世界のジェット旅客機、ターボプロップ旅客機およ びジェット貨物機の総納入機数は 38,557 機、販売額(2015 年カタログ価格)は 5 兆 2,750 億ドルとなる。 2015年価格 (10億米ドル) 地域別 機材需要および販売予測 機数 25,000 2,500 合計 38,557 機 5兆 2750 億米ドル 2,294 20,000 2,000 15,115 15,000 1,500 886 10,000 7,343 1,000 819 7,155 591 5,000 0 欧州 欧州 北米 北米 アジ アジア太平洋 ア太 平洋 500 3,147 313 2,268 中東 中東 中南米 中南 米 1,629 169 1,900 203 アフリカ アフリ カ CIS CIS 0 *ジェット旅客機、ターボプロップ旅客機およびジェット貨物機の合計 地域別にみると、15,115 機と最も納入機数が多いアジア/太平洋は、販売総額 2 兆 2,940 億ドルで、世界の販売総額の約 43%を占める世界最大の市場となる。 次いで、欧州および北米の 8,860 億ドル、8,190 億ドルと続き、両地域で世界の約 32% を占める。中東は、ターボプロップ旅客機の需要はほとんどないが、ジェット旅客機、特 に、広胴機が多いこともあり、販売総額は 5,910 億ドルと、市場の 11%を占める。 2016-2035 年の販売総額と総需要の地域別シェア アフリカ 3% 中南米 6% CIS 4% アフリカ 4% CIS 5% 中南米 8% 北米 16% 中東 11% 北米 19% 中東 6% 欧州 17% 欧州 19% アジア/太平洋 39% アジア/太平洋 43% 納入機数 38,557機 販売総額 5兆2,753億ドル 60 市場予測 2016-2035 10.地域別概要 欧州 CIS 北米 中東 アジア/太平洋 中南米 アフリカ 過去 20 年間、世界の GDP は年平均 2.9%、旅客輸送は 4.8%、航空貨物は 3.7%で成長し てきた。この間、世界各地で航空の自由化が進み、多くの国営エアラインが民営化される と共に多くの LCC が市場に参入してきた。エアラインは、単独でのネットワーク形成から アライアンスと呼ばれるグループによるネットワーク形成へと戦略が変化している。また、 以前は、航空輸送の成長を牽引していたのは欧米のエアラインであったが、近年では、ア ジア/太平洋や中東のエアラインが台頭し牽引する勢いである。このように、時代ととも にエアラインのビジネスモデルやネットワーク戦略は変化し、主役となるエアラインやそ の地域も変わっている。 地域によって航空機に対する要求も変化する。その地理的要求から中東のエアラインは 長距離飛行が可能な広胴機をもとめ、欧州は同じ広胴機でも 6,500nm の以下の航続距離の 機体を要求している。また、LCC が多く運航している欧米では細胴機が中心である。エア ラインを取り巻く環境は、エアラインが所属している地域によっても異なり、それによっ て機材への要求も異なってくる。 なお、以下に示す地域別の旅客需要、貨物需要や機体需要は、各エアラインによって輸 送される旅客需要や貨物需要、運航されている機体数や納入機数を、各エアラインが法人 登録されている(本社を置いている)国の属する地域ごとに積算したものである。 61 市場予測 2016-2035 10.1 北米 米国経済は、堅調ではあるが力強さに欠け、政策金利の引き上げも度々見送られる状況 にある。原油価格下落によるエネルギー産業の調整、ドル高進行、世界経済の減速等によ るリスクもある。 2001 年の同時多発テロによって北米のエアラインは大きな打撃を受けた。その後、組織 の合理化、他社との合併等によって、その体力を回復してきている。米国では、大手エア ラインは、アメリカン航空、デルタ航空およびユナイテッド航空の 3 社に、リージョナル エアラインも、スカイウエスト航空、リパブリック航空およびトランスステート航空の 3 社にほぼ集約されている。現在、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空および サウスウエスト航空の 4 社が、RPK ベースで米国国内線の約 70%を占めており、寡占化が 進んでいる。 北米エアラインの需要予測結果 10,000 8,659 8,000 新規需要 1,006 14% 7,653 00 6,000 納入機数 7,343 機数 代替需要 6,337 86% 4,000 2,000 既存機 1,316 0 2015 2035 北米エアラインは、リストラクチャリングによる財務状況の改善や精密な需給調整によ って、今や世界で最も採算性の良いエアラインに変わった。2015 年には、全世界のエアラ インが稼ぎ出す純利益の約 59%を占めるに至っている。 近年は、ゼロ金利政策や量的緩和策による資金調達コストの低下もあり、機体の更新を 加速させている。更新に際しては、燃油費の高騰や、主要空港の発着枠が上限に近付いて いることから、やや大きめの旅客機に需要が移っている。リージョナルジェット機は、ス コープクロースの緩和もあって主力が 50 席から 76 席へと移った。細胴機でも同様に、 A319/A320 や 737-700/800 といった 120-169 席クラスから、A321 や 737-900ER といっ た 170-229 席クラスの一回り大きめの機体にも需要が出てきている。また、既に生産を終 62 市場予測 2016-2035 了した 757 の代替機を望む声もき かれる。 北米大手エアラインは、国内線で は LCC との競争が激しいため、国 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) 際線への路線拡張に注力しており、 運航機数 2015 2035 A330 や 777/787 といった広胴機の 需要も増えている。 北米は、1996-2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 2.4%、 旅客需要は 2.8%、貨物需要は 3.4% ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 長率は、GDP が 2.3%、旅客需要が 60-99 席 リージョナルジェット機 計 2.8%、貨物需要が 3.0%となる。成 100-119席 120-169席 熟市場である北米の輸送需要の伸 170-229 席 びは、旅客および貨物ともに世界 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 平均より低めである。 400 席以上 2015 年の運航機数は 7,653 機で、 広胴機 計 2035 年には 8,659 機に増加する。 計 で伸びてきた。2016-2035 年の成 この間の納入機数は 7,343 機、販 ジェット貨物機 売額(2015 年カタログ価格)は 細胴機 中型広胴機 大型機 計 8,191 億ドルとなる。納入機数のう ち 86%は既存機の代替需要である。 また、細胴機が 52%を、ターボプ 北米 2.3 2.8 3.0 0.6 8,191 合計 ロップ機を含む 100 席以下の機体が 24%を占める。 63 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 479 120 154 753 164 30 260 454 156 27 189 372 841 999 1,840 155 2,732 750 3,637 365 227 35 627 6,104 0 1,577 1,577 528 2,831 1,338 4,697 602 450 8 1,060 7,334 0 1,425 1,425 509 2,196 1,143 3,848 544 415 7 966 6,239 255 315 226 796 154 433 284 871 154 347 231 732 7,653 8,659 7,343 市場予測 2016-2035 10.2 欧州 欧州は、一部国の債務問題や EU 脱退の試み、テロや難民問題などの地政学的なリスクも あり、景気の見通しも楽観できないが、旅客需要は 2010 年以降、比較的堅調な伸びを示し ている。この伸びは、LCC によってもたらされており、欧州の LCC は 1997 年の自由化後 に急速に発展し、現在では欧州域内路線の座席供給量の約 40%を占めるに至っている。 欧州では高速鉄道網の整備が進んでいることもあって、既存エアラインは国内線や域内 線において LCC や高速鉄道との激しい競争にさらされている。さらに最近では LCC と高 速鉄道との競争もあって、一部路線では LCC の苦戦も伝えられている。このため、大手エ アラインは域外路線に活路を見出そうとしているが、同様に中東エアラインの欧州路線へ の進出も進んでおり、厳しい競争状況が続いている。 欧州エアラインの需要予測結果 10,000 8,238 8,000 6,000 機数 新規需要 3,035 42% 5,203 納入機数 %00 7,155 代替需要 4,000 4,120 58% 2,000 既存機 1,083 0 2015 2035 欧州の大手エアラインは、既にエールフランス-KLM、IAG、ルフトハンザの 3 社にほ ぼ集約されているが、合併の後遺症もあり財務的には未だ健全な状態とは言いにくい状況 が続いている。また、労務問題もあり、エールフランス-KLM やルフトハンザはストライ キによって大きな打撃を受けている。今後は、西欧に比べて事業再構築が遅れている中欧 および東欧の中小エアラインを対象とした再編が起こるのではないかとの見方がある。 米国同様、欧州でも機材の更新が進んでいる。ひところの燃油費の高騰や、主要空港の 発着枠が上限に近付いていることもあり、A321 や 737MAX-9 といった 170-229 席クラス の一回り大きな機体にも需要が移りつつある。また、A320 や 737-800 の座席数も従来の 150 席前後から今では 180 席前後に増加しており、大手エアラインと LCC で大差がなくな ってきている。 64 市場予測 2016-2035 欧州は、1996-2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 1.8%、旅客 需要は 4.0%、貨物需要は 2.4%で伸 びてきた。2016-2035 年では GDP 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) が年平均 1.8%、旅客需要が 3.7%、 運航機数 2015 2035 貨物需要が 2.7%となる。米国同様、 成熟市場である欧州の航空需要の 伸びは、旅客および貨物の世界平均 に対して低めとなっている。 2015 年の運航機数は 5,203 機で、 2035 年には 8,238 機に増加する。 この間の納入機数は 7,155 機、販売 額(2015 年カタログ価格)は 8,858 億ドルとなる。納入機数のうち、 58%は既存機の代替需要である。ま た、細胴機が 63%を占める。 欧州 1.8 3.7 2.7 2.3 8,858 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 201 111 283 595 117 27 396 540 111 22 288 421 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 72 393 465 145 2,471 38 649 687 543 3,544 38 643 681 513 2,940 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 455 3,071 241 440 144 825 4,361 1,152 5,239 699 658 82 1,439 7,365 1,050 4,503 667 553 53 1,273 6,457 108 70 69 247 180 83 70 333 180 70 27 277 5,203 8,238 7,155 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 合計 65 市場予測 2016-2035 10.3 アジア/太平洋 アジア/太平洋地域は、大きな 人口と高い経済成長による中間 所得層の増大により、今後も長く 経済の成長が見込まれる地域で 中国 日本 ある。現在は中国が人口規模と経 済成長率の両面から世界的に強 北東アジア 力な牽引力を発揮しており、航空 においても大きな需要を創出し ている。中国の人口は 2015 年頃 南アジア にピークを過ぎて減少過程に入 り、今後は社会の老齢化が急速に 東南アジア 進むことになるが、経済の成長は 今回の予測期間(2016-2035)を通 オセアニア じて続く。さらに、この予測期間 内にはタイ、ベトナムやインドネシアを含む東南アジア諸国(ASEAN)における経済成長と 航空需要の拡大も予想されており、期間内の RPK の増加額や旅客機の新規納入機数におい て南アジア(主にインド)の 2 倍を超える。 アジア/太平洋エアラインの需要予測結果 20,000 17,549 15,000 機数 新規需要 10,292 納入機数 68% 10,000 15,115 7,257 %0 代替需要 4,823 32% 5,000 既存機 2,434 0 2015 2035 この地域でも航空の規制緩和が進んでおり、LCC の空白地帯であった日本や台湾にも LCC が設立されているほか、2016 年からは、AEC(ASEAN 経済共同体)の発足にともな 66 市場予測 2016-2035 って ASEAN のオープンスカイ (域内完全自由化)が順次始まっ ている。 アジア/太平洋は、地理的な広 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) がりが大きい一方で地上交通網 運航機数 2015 2035 が十分に整備されていないこと もあり、航空輸送が適している。 しかし、一部を除けば空港や航空 交通管制といったインフラの整 アジア・太平洋 4.1 5.9 4.8 4.6 22,940 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 334 141 424 899 333 100 961 1,394 311 80 751 1,142 51 277 328 71 3,592 570 4,233 474 860 139 1,473 6,034 23 644 667 400 6,851 3,004 10,255 2,122 1,954 372 4,448 15,370 23 596 619 394 5,467 2,775 8,636 1,976 1,739 338 4,053 13,308 129 40 155 324 311 157 317 785 311 138 216 665 7,257 17,549 15,115 備が遅れており、今後の更なる発 展のためには、インフラの整備が 期待される。 ア ジ ア / 太 平 洋 は 、 1996 - 2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 4.3%、旅客需要は 6.6%、 貨物需要は 4.4%で伸びており、 この間の世界の航空輸送の成長 を支えてきた。2016-2035 年で は、GDP が年平均 4.1%、旅客需 要が 5.9%、貨物需要が 4.8%と、 今後とも高い成長が見込まれる。 2015 年の運航機数は 7,257 機、 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 合計 2035 年には 17,549 機に増加す る。この間の納入機数は 15,115 機、販売額(2015 年カタログ価格)は 22,940 億ドルと見 込まれる。納入機数のうち、68%は新規需要であり、大きな成長市場である。また、インド や中国という大規模な国内市場が存在すること、LCC の機体需要が多いこともあり、細胴 機が 57%を占める。 67 市場予測 2016-2035 10.4 中東 中東産油国の経済見通しは、最近の原油価格の下落により全体的には減速すると見込ま れているが、中東諸国は「石油後」に備えて新しい産業の育成を意図しており、その一環 として、エアラインの育成にも注力している。 中東エアラインは、その地理的な優位性を最大限に活用し、世界の航空需要を取り込み、 過去 20 年間では旅客および貨物とも 2 ケタ成長となった。特に、“スーパーコネクター” と呼ばれるエミレーツ航空、エティハド航空およびカタール航空は、ドバイ、アブダビお よびドーハを中心に世界各地に路線を張り巡らせ、多数の乗継需要を獲得している。その ため、これらのエアラインは、比較的大型の広胴機で航続距離の長い機体を必要としてい る。また、その購買力の大きさにより、メーカーに対して大きな発言力を有している。 中東エアラインの需要予測結果 3,000 2,620 新規需要 1,243 55% 機数 2,000 1,377 納入機数 2,268 %00 代替需要 1,000 1,025 45% 既存機 352 0 2015 2035 アライアンスについては、エミレーツ航空はそれぞれの地域、路線で最適な相手とパー トナーを組み、エティハド航空は他社に出資しエクイティ・パートナーとして提携し、カ タール航空はアライアンスのひとつであるワンワールドに加盟するといったように、各々 が自身に適していると考えられる戦略を取っている。 中東でも航空の自由化が始まっている。サウジアラビアでは、2007 年に唯一の民間エア ラインで LCC である Flynas(旧 Nas air)が設立され、サウジアラビア政府は 2012 年に 新たに同国の運航ライセンスを与えることを発表した。カタール航空はサウジアラビア国 内線参入のため同国内に子会社 Al Maha Airways を設立し 2016 年中に運航を開始する計 画である。また、Al-Qahtani Group は SaudiGulf を設立し、やはり 2016 年中に運航を開 始する予定である。 68 市場予測 2016-2035 中東は、1996-2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 4.3%、旅客 需要は 11.3%、貨物需要は 9.8%で 伸びてきた。2016-2035 年の成長 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) 率は、GDP が年平均 3.7%、旅客需 運航機数 2015 2035 要が 6.5%、貨物需要が 6.0%と、大 きな成長が見込まれている。 2015 年の運航機数は 1,377 機、 2035 年には 2,620 機に増加する。 この間の納入機数は 2,268 機、販売 額(2015 年カタログ価格)は 5,912 億ドルとなる。納入機のうち、55% が新規需要である。また、中東エア ラインの運航の特徴を顕し、広胴機 が 60%を占める。 中東 3.7 6.5 6.0 4.3 5,912 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 合計 69 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 7 18 5 30 3 10 14 27 3 7 13 23 5 72 77 14 458 16 488 196 302 190 688 1,253 3 46 49 39 539 155 733 328 865 340 1,533 2,315 3 42 45 38 410 148 596 307 813 252 1,372 2,013 11 31 52 94 26 38 214 278 26 26 180 232 1,377 2,620 2,268 市場予測 2016-2035 10.5 中南米 過去数年間、中南米はアジアとともに大きな成長を見せてきた。資源開発や自由貿易協 定によって中南米への直接投資が急増し、名目 GDP は 2000 年代の 10 年間で約 2.3 倍に伸 びた。しかしながら、最近では、先進国や中国経済の減速、石油をはじめとする資源価格 の下落もあり、輸出が減少するとともに、景気を下支えしてきた内需も悪化し始め、アル ゼンチンやブラジル、ベネズエラをはじめとして中南米諸国の景気は急速に減速している。 中期的に見ても、経済成長のテンポは落ちてくるのではないかと言われている。 中南米でも欧米と同様に、大手ではコロンビアのアビアンカ航空とエルサルバドルのタ カ航空(TACA)、チリのラン航空(LAN)とブラジルのタム航空(TAM)が国境を跨いだ 合併により、この地域は大手 2 社に集約された。また、ブラジルでは、国内エアライン同 士の合併も起こり、エアラインの再編が進んだ。 中南米エアラインの需要予測結果 4,000 3,706 3,000 新規需要 1,679 53% 機数 2,027 納入機数 2,000 3,147 0% 代替需要 1,468 47% 1,000 既存機 559 0 2015 2035 この地域でも、航空の自由化が進み、ブラジルでは GOL、メキシコではインタージェッ ト航空、ボラリス航空、コロンビアではビバコロンビアといった LCC が設立された。域内 路線における LCC の座席供給量シェアは、2001 年では 3%程度であったが 2012 年には 31% と約 10 倍になった。また、各国の国内需要を取り込むために、それぞれの国に子会社を設 立して対応している。コロンビアは、中米では人口も多く経済成長が著しい国でもあるこ とから航空需要が伸びている。コロンビアには、コパ航空はコパ・コロンビアを, ラン航 空はラン・コロンビアを設立している。このほか、アビアンカ航空、LCC のビバコロンビ アといったエアラインが運航しており、コロンビア国内市場は競争の激しい市場である。 70 市場予測 2016-2035 中南米は、1996-2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 3.0%、 旅客需要は 5.5%、貨物需要は-0.4% で伸びてきた。2016-2035 年の成 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) 長率は、GDP が年平均 2.8%、旅客 運航機数 2015 2035 需要が 5.0%、貨物需要が 3.3%と、 旅客需要の高い伸びが見込まれて いる。 2015 年の運航機数は 2,027 機、 2035 年には 3,706 機に増加する。 この間の納入機数は 3,147 機、販 売額(2015 年カタログ価格)は 3,131 億ドルとなる。納入機数のう ち、53%は新規需要であり、代替需 要とほぼ二分している。 中南米 2.8 5.0 3.3 3.8 3,131 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 合計 71 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 263 105 112 480 243 44 247 534 239 31 187 457 44 191 235 136 895 55 1,086 111 27 1 139 1,460 50 448 498 288 1,456 392 2,136 267 125 4 396 3,030 50 411 461 244 1,154 358 1,756 226 118 4 348 2,565 57 21 9 87 85 45 12 142 83 33 9 125 2,027 3,706 3,147 市場予測 2016-2035 10.6 アフリカ アフリカは、石油や鉱物といった地下資源が豊富なこともあり、近年、これらの資源開 発を中心に急速に成長している。特に、サブサハラ・アフリカの成長可能性は高く、中間 層人口は 2030 年には 5 億人を超えると言われており、消費の担い手である中間層が増える ことで、航空需要も伸びる。しかしながら、貧困問題や感染症問題が未解決のまま残され ており、市場の成長の妨げになっている。 アフリカエアラインの需要予測結果 2,000 1,859 機数 0% 新規需要 637 39% 1,222 納入機数 1,000 1,629 代替需要 992 61% 既存機 230 0 2015 2035 アフリカ市場は、伝統的に欧州エアラインが強かったが、中東エアラインが勢力を伸ば してきている。最近では、アフリカ経済の高い成長を背景に、米国エアラインやアジアの エアラインがアフリカ路線を強化している。アフリカと他の地域を結ぶ路線網は強化され はじめているが、アフリカ大陸内を運航する直行便が極めて少ないこともあり、域内の移 動には、例えば、中東経由とならざるを得ない。このため、国内線を含む域内線の RPK は、 世界の RPK の 2.2%程度と小さい。 航空産業の発展にはインフラの整備が必須であるが、アフリカでは、航空ビジネスの保 護主義をとっているにもかかわらず、優先順位が低く、インフラの整備が遅れている。 アフリカのエアラインは、以前は欧米のエアラインの中古機を使用することが多かった が、最近では、以前に比べ比較的容易に購入資金が調達できるようになったこと、オペレ ーティング・リースが利用できること等によって、新製機の入手が以前より容易になった。 2015 年末現在、A350 や 787 といった最新の機体を含め 139 機の受注残がある。 72 市場予測 2016-2035 アフリカは、1996-2015 年の過 去 20 年間で、GDP は年平均 4.3%、 旅客需要は 4.9%、貨物需要は 5.9% で伸びてきた。2016-2035 年の成 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) 長率は、GDP が年平均 3.8%、旅 運航機数 2015 2035 客需要が 4.8%、貨物需要が 5.3% と、伸びが見込まれている。 2015 年の運航機数は,1,222 機、 2035 年には 1,859 機に増加する。 この間の納入機数は 1,629 機、販 売額(2015 年カタログ価格)1,691 億ドルとなる。納入機数の内、61% は代替需要であり、古い機材の更 新が進む。 アフリカ 3.8 4.8 5.3 2.5 1,691 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 254 65 107 426 271 50 131 452 256 46 88 390 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 77 76 153 58 364 15 437 80 59 10 149 739 34 192 226 77 590 140 807 149 140 8 297 1,330 34 181 215 75 484 140 699 121 125 8 254 1,168 31 16 10 57 30 15 32 77 30 15 26 71 1,222 1,859 1,629 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 合計 73 市場予測 2016-2035 CIS 10.7 旧ソビエト連邦崩壊後の壊滅的な経済危機を乗り越え、2000 年以降 8 年連続で経済成長 を記録したロシアを筆頭とし、透明な市場経済化が進むウクライナ、豊富な資源を背景に 安定した発展を見せているカザフスタンやトルクメニスタンなど、CIS 諸国の経済は高い 成長を続けている。ロシアでは、平均賃金が 2000 年の 2,200 ルーブルから 2007 年には 12,500 ルーブルに上昇して中間所得層が大きく増加したが、近年では原油価格の下落やウ クライナ情勢を巡る欧米の経済制裁もあり不安定な状態が続いている。 CISエアラインの需要予測結果 3,000 2,127 機数 2,000 新規需要 843 44% 1,284 納入機数 % 0 1,900 代替需要 1,057 56% 1,000 既存機 227 0 2015 2035 CIS は広大な国土とそれに伴う長大な各都市間距離もあり、域内の移動にとって航空輸 送は重要である。CIS の航空需要は旺盛で、過去 10 年間の RPK の伸びは年平均 12.63%と、 中東に次いで大きな伸びとなっている。CIS のエアラインは、2015 年に RPK ベースで対 前年比 13.6%増の 2,489 億人キロメートルと高い伸びを示し、旅客ロードファクターも 79.7%となった。また、航空貨物は、RTK ベースで対前年比 3.9%増の 515 万トンキロメー トルを輸送した。 この 20 年間で、CIS のエアラインで運航されている機体は、旧ソビエト製の航空機が数 を減らし、欧米製の航空機に代わっている。2015 年末現在、CIS のエアラインの運航機材 の 83%、受注残の 64%はエアバス、ボーイングといった西側諸国製造の機体である。 74 市場予測 2016-2035 CIS は、1996-2015 年の過去 20 年間で、GDP は年平均 3.4%、旅客 需要は 5.0%、貨物需要は 3.1%で伸 びてきた。2016-2035 年の成長率 主要指標 (2016-2035) 経済(GDP) 旅客需要(RPK) 貨物需要(RTK) 運航機数 販売額 (2015年カタログ価格) は、GDP が年平均 2.6%、旅客需要 運航機数 2015 2035 が 4.6%、貨物需要が 3.9%と見込ま れている。 2015 年の運航機数は 1,284 機、 2035 年には 2,127 機に増加する。 この間の納入機数は 1,900 機、販売 額(2015 年カタログ価格)は 2,031 億ドルとなる。納入機数のうち、 56%は代替需要であり、旧式の機材 の更新が進む。 CIS 2.6 4.6 3.9 2.3 2,031 % % % % 億ドル 納入機数 2016-2035 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 91 139 32 262 128 23 226 377 105 21 212 338 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 85 84 169 107 389 115 611 42 41 0 83 863 25 194 219 63 687 287 1,037 192 115 6 313 1,569 25 171 196 61 604 262 927 184 97 6 287 1,410 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 31 82 46 159 52 66 63 181 51 57 44 152 1,284 2,127 1,900 合計 75 市場予測 2016-2035 76 市場予測 2016-2035 11. 航空エンジンの需要予測 航空エンジン需要は、機体納入時に搭載されるものと、スペア用がある。前者は機体の販 売機数にエンジン基数を乗じたもので、後者は機体納入時に搭載されるエンジン基数にス ペア率 10%を乗じたものである。エンジンは、機体装備品の中では最も高額な購入品であ り、その価格は機体販売価格の内数で約 20%を占めている。 2016-2035 年のエンジンの販売基数は、ジェット旅客機およびジェット貨物機用のジェ ットエンジンが 77,533 基、ターボプロップ旅客機用のターボプロップエンジンが 6,955 基 で、合計 84,488 基となる。販売総額(2015 年市場価格)は、ジェットエンジンが 1 兆 1,430 億ドル、ターボプロップエンジンが 140 億ドルの合計 1 兆 1,570 億ドルである。 ジェットエンジンの基数で最も大きい市場は、737 や A320 シリーズに搭載される推力 12,000-35,000 lb.クラスエンジンの 42,843 基で、ジェットエンジン市場の 57%を占める。 777/787-10 や A330/A350/A380 に搭載される 65,000-115,000 lb.クラスが 19,382 基、 747/767/787-8 や A340 に搭載される 35,000-65,000 lb.クラスが 6,267 基と続く。リージ ョナルジェット機用の 12,000 lb.未満は 9,042 基と販売総数の 11%程度にすぎない。 エンジン基数 2015年市場価格 (10億米ドル) サイズ別 航空機エンジンの需要および販売予測 600 60,000 エンジン基数 50,000 ターボプロップ ジェット 合 計 6,955 77,533 84,488 売上高 (10億ドル) 14 1,143 1,157 547 500 42,843 415 40,000 400 30,000 300 19,382 200 20,000 10,000 9,042 6,955 6,267 115 100 66 14 0 0 ターボプロップ L410, ATR42/ 72 DHC- 8 12未満 12-35 CRJ-200/700/900 A318/A319/A320/A321 B757/B767/B737 EMB135/145/170/190 MRJ/CS100/CS300 ARJ21/SSJ100 35-65 A300/A310 A340-500,600 B747/B757/B767 B787-8/9 65-115 推力 (×1,000 Ibs) A380 A350 A330 B777/B787-10 *スペアエンジンとして、機体搭載用エンジンの10%分を含む。 ジェットエンジンの販売額では、65,000-115,000lb.クラスエンジンが、販売基数では全 体の 23%にすぎないながら、エンジン単価が高いこともあって 5,470 億ドルと最も大きく、 総販売額の 47%を占める。次いで、販売基数が最も多い 12,000-35,000lb.クラスが 4,150 億ドルである。35,000-65,000lb.は 1,150 億ドル、ジェット機用で最小の 12,000lb.未満の 77 市場予測 2016-2035 クラスが 660 億ドルとなる。 地域別では、機体需要が最も多いアジア/太平洋地域が最大の市場であり、販売機数 33,525 基で販売基数シェア 40%、販売額 4,990 億ドルと販売額シェアで 43%を占める。次 いで、欧州の 15,435 基でシェア 18%、1,960 億ドルでシェア 17%、北米の 15,428 基でシ ェア 18%、1,820 億ドルで販売額シェア 16%となる。中東は、販売基数は 5,693 基と欧米 の 3 分の 1 程度であるが、広胴機需要が大きいこともあり、販売額は 1,220 億ドルと欧米 の 3 分の 2 程度になる。 地域別 航空機エンジンの需要および販売予測 2015市場価格 (10億米ドル) エンジン基数 35,000 700 33,525 合計 84,488 基 1兆1570 億米ドル 30,000 600 499 25,000 500 20,000 400 15,428 15,435 15,000 300 182 10,000 196 200 5,693 122 5,000 6,797 71 3,576 4,034 0 North America北米 Europe Middle East 中東Latin America 中南米 Africa アフリカ アジア・太平洋 欧州 Asia-Pacific *スペアエンジンとして、機体搭載用エンジンの10%分を含む。 78 100 47 40 CIS CIS 0 市場予測 2016-2035 12.予測手法 旅客機需要予測 予測の流れは、下記に示すように旅客予測、提供座席予測及び機材販売予測の 3 つのパー トに分かれている。 航空旅客需要は、所得および運賃との相関が非常に強いことから、RPK は GDP および イールドの関数として計量経済学的手法によって求められる。しかしながら、航空旅客需 要は、例えば、航空の自由化に代表される航空政策の大きな転換、LCC の新規参入、高速 鉄道等の他の輸送モードの整備といったことによって大きく変化する。そのため、GDP と イールドとの関係のみで将来需要を予測することは困難であり、今後起こり得る可能性の ある事象についても、その影響を加味している。 JADC は、GDP と実質旅客イールドを用いた因果モデルにより過去のデータを分析する と共に、上述の例のような各種要素について、現状や今後の動向を加味して航空旅客需要 を予測している。なお、予測にあたっては、世界の路線を 54 のマーケットに集約し、マー ケット毎に航空旅客需要を求めている。 提供座席予測は、予測された航空旅客を運ぶために必要な提供座席数をマクロ予測にて求 める。予測は、地域区分(13 区分)、距離区分(4 区分)および座席サイズ区分(15 区分) に分類し、運航機材構成と運航路線分析を行うと共に機材の退役機齢を想定して、将来必 要とされる提供座席数を区分毎に求める。 機材販売予測は、必要提供座席数を、座席数、航続距離等の機体性能とメーカーの販売力 から具体的機材に割り当て、その機数を求めている。 79 市場予測 2016-2035 貨物機需要予測 予測の流れは、下記に示すように貨物予測、貨物機の供給量予測及び機材販売予測の 3 つのパートに分かれている。 航空貨物需要は、航空旅客需要と同様に GDP と貨物イールドとに相関があることが知ら れている。JADC では、GDP と実質貨物イールドを用いた因果モデルにより過去のデータ を分析すると共に、航空貨物需要の影響を与える各種要素について、現状や今後の動向を 加味して航空旅客需要を予測している。なお、予測にあたっては、世界の路線を 33 のマー ケットに集約し、マーケット毎に航空貨物需要を求めている。 貨物機需要予測フローチャート 供給量予測 航空貨物予測 機材販売予測 経済予測 (GDP) 運航機材 構成 旅客機による 貨物輸送量 旅客機 需要予測 改造貨物機 需要予測 航空貨物 需要予測 供給量予測 貨物機による 供給量予測 貨物機 需要予測 新製貨物機 需要予測 航空貨物 運賃予測 運航路線 分析 退役予測 貨物機の供給量予測は、地域区分(7 地域)、ペイロード区分(3 区分)に分類して行なう マクロ予測(Top Down)である。航空貨物は、旅客機の床下貨物室と貨物機によって輸送 される。貨物機の貨物輸送量および供給量の予測は、航空貨物需要予測結果から旅客機の 床下貨物室で輸送可能な貨物輸送供給量および輸送需要量を差し引くことによって求める ことができる。旅客機の床下貨物室で輸送可能な貨物輸送供給量は、旅客機の機材需要予 測結果を基に推算する。 航空貨物輸送量 = 旅客機の床下貨物室の貨物輸送量 + 貨物機の貨物輸送量 予測は、運航機材構成と運航路線分析を行うと共に機材の退役機齢を想定して、将来必要 とされる供給量を区分毎に求める。 機材販売予測は、ペイロード、航続距離等の機体性能、新製機と改造貨物機の比率考慮 し、将来必要とされる供給量を具体的な機材に割り当て、その機数を求めている。 80 市場予測 2016-2035 略 語 A4A Airlines for America 米国エアライン協会 AAPA Association of Asia Pacific Airlines アジア・太平洋エアライン協会 AEA Association of European Airlines 欧州エアライン協会 ASEAN Association of South-East Asian Nations 東南アジア諸国連合 ASK Available Seat Kilometers 提供座席キロメートル ATK Available Ton Kilometers 提供トンキロメートル BRICs Brazil, Russia, India, China, ブラジル、ロシア、インド、中国 BTS Bureau of Transport Statistics, U.S. Department of Transportation (米国)運輸省運輸統計局 CAPA Centre for Asia Pacific Aviation アジア・太平洋航空センター CASK Cost per ASK 単位コスト CIS Commonwealth of Independent States 独立国家共同体 EIA Energy Information Administration (米国)エネルギー情報局 ETS Emission Trading Scheme 排出量取引制度 EU European Union 欧州連合 FFP Frequent Flyer Program 常顧客優待制度、マイレージサービス FSC Full Service Carrier フルサービス航空会社 FTA Free Trade Agreement 自由貿易協定 GDP Gross Domestic Product 国内総生産 HOM Heavy and Oversize air cargo Market 重量物及び規格外品輸送市場 IATA International Air Transport Association 国際航空運送協会 ICAO International Civil Aviation Organization 国際民間航空機関 IEA International Energy Agency JADC Japan Aircraft Development Corporation 日本航空機開発協会 JICA Japan International Cooperation Agency 国際協力機構 LCC Low Cost Carrier MLIT Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism (日本)国土交通省 OPEC Organization of Petroleum Exporting Countries RASK Revenue per ASK 単位収入 RPK Revenue Passenger Kilometers 有償旅客キロメートル RTK Revenue Ton Kilometers 有償貨物トンキロメートル SARS Severe Acute Respiratory Syndrome 重症急性呼吸器症候群 TEU Twenty-Foot Equivalent unit 20 フィートコンテナ換算 UIC International Union of Railways 国際鉄道連合 UN United Nations 国際連合 国際エネルギー機関 格安航空会社 81 石油輸出国機構 市場予測 2016-2035 略 語 (続) UNWTO UN World Tourism Organization 82 国連世界観光機関 市場予測 2016-2035 用 語 提供座席キロメートル(ASK: Available Seat Kilometers) 旅客輸送供給量の単位。 座席数 × 輸送距離(キロメートル) 有償旅客キロメートル(RPK : Revenue Passenger Kilometers) 有償旅客が搭乗し、飛行した輸送実績 有償旅客数 × 輸送距離(キロメートル) 座席利用率(Load Factor) 総座席数に対し有償旅客の搭乗度合を示した数値で、座席の販売状況を計る指標 有償旅客キロメートル ÷ 提供座席キロメートル 無償旅客数を含めない点で搭乗率とは異なる イールド(Yield) 旅客1人について1キロメートル(または1マイル)あたりの収入単価 旅客収入 ÷ 旅客キロメートルによって算出される 貨物の場合は、貨物1トンにつき1キロメートル(または1マイル)あたりの収入単価 貨物収入 ÷ 貨物トンキロメートルによって算出される ユニットコスト 、単位コスト (CASK: Cost per ASK) 単位輸送量あたりコストの指標 1座席キロメートル(ASK)あたりのコストとして算出される 提供貨物トンキロメートル(ATK: Available Ton Kilometers) 貨物輸送供給量の単位。 搭載量(トン)× 輸送距離(キロメートル) 有償貨物トンキロメートル(RTK: Revenue Ton Kilometers) 有償貨物を搭載し、飛行した輸送実績 有償貨物輸送量(トン)× 輸送距離(キロメートル) 貨物ロードファクター (Cargo Load Factor) 有償貨物トンキロメートル ÷ 提供貨物トンキロメートル 83 市場予測 2016-2035 Appendix A : 機材分類の定義 ターボプロップ旅客機 15-19 席 BE1900, DHC6-400, Do228, L410 20-39 席 DHC8-200, Saab 340, Su-80 40-59 席 ATR 42, DHC8-300, An-140, MA60/600 60-79 席 ATR 72, DHC8-400, Il-114 80-99 席 ATR 90 Seater, MA700 ジェット旅客機 リージョナルジェット機 20-39 席 Do328, ERJ 135 40-59 席 ERJ 140/145, CRJ100/200 60-79 席 CRJ700, EMBRAER 170/175, MRJ-70, An-148, 80-99 席 CRJ900/1000, EMBRAER 190, MRJ-90, ARJ21, Superjet100 細胴機 100-119 席 A318, CS100, EMBRAER 195, 717, 737-600, 120-169 席 A319ceo/neo, A320ceo/neo, CS300, 727, 737-700/800, 737MAX-7/8, C919-200, MS21-200/300, Tu234 170-229 席 A321ceo/neo, 737-900ER, 737MAX-9, 757, C919-300, MS21-400, Tu-204 広胴機 230-309 席 A300, A310, A330ceo/neo, A350-800, 767, 787-8/9, Il-96 310-399 席 A340, A350-900/1000, MD-11, 777, 787-10 400-499 席 747 >500 席 A380 *原則として、99席以下は1クラス、100-229席は2クラス、230席以上は3クラスでの標準的な座席数を基に分類している。 ジェット貨物機 細胴機(< 50 ton) A320, A321, BAe146, CRJ100/200, DC-8, DC-9, ERJ 145, MD-80, 707, 727, 737, 757, Tu-204 中型広胴機(40-70 ton) A300, A310, A330, DC-10-10, L-1011, 767, 787, Il-76 大型機(>70 ton) A350, A380, DC-10-30/40, MD-11, 747, 777, An-124, An-225 84 市場予測 2016-2035 Appendix B : エンジン分類の定義 推力区分 (×1000 lb) 65~115 35~65 エンジン名 メーカー CF6-80E1 GE/SNECMA GEnx GE GE90 GE/SNECMA GP7000 GE/PW PW4074/4084 PW PW4168 PW 推力(×1000 lb) 適用機種(エンジン基数) 67.5~72 67~ A330(2) 75~115 76.5~81.5 B777(2) B787-10(2) A380(4) 74~84 68 A330(2) B777(2) TRENT 700/XWB RR 71 A330(2) TRENT 800 RR B777(2) TRENT 900 RR 75~95 68~84 TRENT 1000 RR TRENT 7000 RR 67~ 68~ TRENT XWB RR 93 GEnx GE CF6-50 GE/SNECMA CF6-80A GE/SNECMA 53~70 46.5~54 48~50 CF6-80C2 GE/SNECMA JT9D PW 52.5~61.5 43.6~56 PW4000 PW 52~68 RB211-524G/H RR 58~60.6 56 A380(4) B787-10(2) A330neo(2) A350(2) B787-8/9(2), B747-8(4) B747(4), A300(2) B767(2), A310(2) B747(4), B767(2), A300(2), A310(2), MD-11(3) B747(4), B767(2), A300(2), A310(2) B747(4), B767(2), A300(2), A310(2) MD-11(3) 12~35 TRENT 500 RR TRENT 1000 RR PW2000 PW RB211-535C/E4 RR V2500 IAE CFM56 CFM INT'L 53~70 38.2~41.7 37.4~43.1 22~30 18.5~34 B747-400(4), B767-300(2) A340-500/600(4) B787-8/9(2), B747-8(4) B757(2) B757(2) A319(2), A320(2), A321(2), MD-90(2) B737-300/400/500(2), B737-600/700/800/900(2) A318(2), A319(2), A320(2), A321(2), A340-200/300(4) LEAP-X CFM INT'L 20~30 A319neo(2), A320neo(2), A321neo(2), PW1000G PW 15~32 MRJ-70/90(2), CS100/300(2), MS-21(2) JT8D-200 PW 18.5~21 20~23 MD-80(2) 18.5~22 17.4 717(2) 737MAX(2), C919(2) A319neo(2), A320neo(2), A321neo(2) ~12 PW6000 PW BR700 BMW/RR SMI46 SNECMA/NPO CF34 GE 8.6~20 A318(2) SSJ100(2) CRJ100/200(2), CRJ700(2), CRJ900(2), CRJ1000(2) EMBRAER 170/175(2), EMBRAER 190/195(2), ARJ21(2), RRJ(2) Turboprop AE3007 ALLISON PW300 PWC CT7 GE PW100 PWC 7.2~12 4.2~5.7 ERJ 135(2), ERJ 140(2), ERJ 145(2) 328JET(2) 1700~1940 SHP CN235(2), SAAB340(2), L610(2) 2000~5000 SHP ATR42(2), ATR72(2), DHC8-100(2)/300(2)/400(2), Do328(2) EMB120(2) TPE 331 GARRETT 715 SHP 85 CASA212(2), Metro(2), Do228(2) 市場予測 2016-2035 Appendix C : 航空旅客需要 地域 RPK( 10億人キロメートル) 1995 2015 2035 年平均成長率 2016-2035 北米 924 1,603 2,762 2.8% 欧州 729 1,598 3,299 3.7% 711 18 1,534 64 3,123 176 3.6% 5.2% アジア/太平洋 553 1,994 6,313 5.9% 日本 中国 北東アジア 東南アジア 南アジア オセアニア 130 68 91 139 39 85 145 864 200 435 172 180 255 3,324 369 1,358 612 395 2.9% 7.0% 3.1% 5.9% 6.6% 4.0% 70 594 2,082 6.5% 中南米 120 347 919 5.0% アフリカ 56 144 370 4.8% CIS 93 249 609 4.6% 2,544 6,528 16,355 4.7% 西欧 東欧 中東 世界 86 市場予測 2016-2035 Appendix D : 航空貨物需要 路線 RTK(10億トンキロメートル) 年平均成長率 2016-2035 1995 2015 2035 0.3 0.7 1.6 4.4% 13.1 34.1 67.6 3.5% 欧州域内 4.1 2.5 3.5 1.7% 中南米域内 1.5 2.7 5.8 3.8% 中東域内 0.2 1.3 4.4 6.5% 北米域内 21.2 23.3 28.1 0.9% アフリカ-アジア/太平洋 0.3 0.9 2.3 4.7% アフリカ-欧州 3.5 6.0 9.5 2.3% アフリカ-中東 0.2 3.2 19.8 9.6% アジア/太平洋-欧州 21.0 41.9 75.6 3.0% アジア/太平洋-中東 1.1 14.9 89.0 9.4% アジア/太平洋-北米 15.5 41.4 89.1 3.9% 欧州-中東 2.6 14.4 55.0 6.9% 欧州-中南米 4.7 8.1 11.8 1.9% 17.8 25.3 34.4 1.5% 北米-中南米 1.7 4.2 6.8 2.5% その他 0.1 1.1 1.8 2.4% 109.0 226.1 506.3 4.1% アフリカ域内 アジア・太平洋域内 欧州-北米 世界 87 市場予測 2016-2035 Appendix E : 機材需要予測結果 機材予測結果概要 2015 運航機数 地域 北米 欧州 アジア/太平洋 中東 中南米 アフリカ CIS 世界 機体区分 退役 新製機需要 2035 運航機数 販売額 ($10億) 計 ターボプロップ旅客機 7,653 753 6,337 671 7,343 372 8,659 454 819 7 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 6,104 796 5,009 657 6,239 732 7,334 871 731 81 5,203 595 4,361 247 4,120 476 3,453 191 7,155 421 6,457 277 8,238 540 7,365 333 886 10 863 13 7,257 899 6,034 324 1,377 30 1,253 94 2,027 480 1,460 87 1,222 426 739 57 1,284 262 863 159 26,023 3,445 20,814 1,764 4,823 647 3,972 204 1,025 26 951 48 1,468 403 995 70 992 364 577 51 1,057 223 704 130 19,822 2,810 15,661 1,351 15,115 1,142 13,308 665 2,268 23 2,013 232 3,147 457 2,565 125 1,629 390 1,168 71 1,900 338 1,410 152 38,557 3,143 33,160 2,254 17,549 1,394 15,370 785 2,620 27 2,315 278 3,706 534 3,030 142 1,859 452 1,330 77 2,127 377 1,569 181 44,758 3,778 38,313 2,667 2,294 26 2,187 81 591 1 538 53 313 8 293 11 169 7 154 8 203 7 184 12 5,275 65 4,951 259 2035 運航機数 販売額 ($10億) ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 計 ターボプロップ旅客機 ジェット旅客機 ジェット貨物機 2015 運航機数 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119 席 120-169 席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 88 退役 新製機需要 1,629 699 1,117 3,445 1,551 649 610 2,810 1,181 234 1,728 3,143 1,259 284 2,235 3,778 14 4 20 65 1,175 2,092 3,267 686 10,901 1,976 13,563 1,509 1,956 519 3,984 20,814 1,175 1,811 2,986 582 7,658 1,384 9,624 1,175 1,509 367 3,051 15,661 173 3,469 3,642 1,834 13,255 5,876 20,965 4,025 3,860 668 8,553 33,160 173 3,750 3,923 1,938 16,498 6,468 24,904 4,359 4,307 820 9,486 38,313 5 156 161 118 1,316 738 2,171 1,018 1,316 285 2,619 4,951 622 575 567 1,764 619 424 308 1,351 835 686 733 2,254 838 837 992 2,667 0 78 181 259 市場予測 2016-2035 地域別機材予測結果 2015 運 航 機 数 北米 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 欧州 アジア/太平洋 中東 中南米 CIS アフリカ 世界 479 120 154 753 201 111 283 595 334 141 424 899 7 18 5 30 263 105 112 480 254 65 107 426 91 139 32 262 1,629 699 1,117 3,445 841 999 1,840 155 2,732 750 3,637 365 227 35 627 6,104 72 393 465 145 2,471 455 3,071 241 440 144 825 4,361 51 277 328 71 3,592 570 4,233 474 860 139 1,473 6,034 5 72 77 14 458 16 488 196 302 190 688 1,253 44 191 235 136 895 55 1,086 111 27 1 139 1,460 77 76 153 58 364 15 437 80 59 10 149 739 85 84 169 107 389 115 611 42 41 0 83 863 1,175 2,092 3,267 686 10,901 1,976 13,563 1,509 1,956 519 3,984 20,814 255 315 226 796 108 70 69 247 129 40 155 324 11 31 52 94 57 21 9 87 31 16 10 57 31 82 46 159 622 575 567 1,764 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 2035 運 航 機 数 北米 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 欧州 アジア/太平洋 中東 中南米 CIS アフリカ 世界 164 30 260 454 117 27 396 540 333 100 961 1,394 3 10 14 27 243 44 247 534 271 50 131 452 128 23 226 377 1,259 284 2,235 3,778 0 1,577 1,577 528 2,831 1,338 4,697 602 450 8 1,060 7,334 38 649 687 543 3,544 1,152 5,239 699 658 82 1,439 7,365 23 644 667 400 6,851 3,004 10,255 2,122 1,954 372 4,448 15,370 3 46 49 39 539 155 733 328 865 340 1,533 2,315 50 448 498 288 1,456 392 2,136 267 125 4 396 3,030 34 192 226 77 590 140 807 149 140 8 297 1,330 25 194 219 63 687 287 1,037 192 115 6 313 1,569 173 3,750 3,923 1,938 16,498 6,468 24,904 4,359 4,307 820 9,486 38,313 154 433 284 871 180 83 70 333 311 157 317 785 26 38 214 278 85 45 12 142 30 15 32 77 52 66 63 181 838 837 992 2,667 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 2016-2035 新 製 機 需 要 北米 ターボプロップ旅客機 15-39 席 40-59 席 60 席以上 計 ジェット旅客機 20-59 席 60-99 席 リージョナルジェット機 計 100-119席 120-169席 170-229 席 細胴機 計 230-309 席 310-399 席 400 席以上 広胴機 計 計 ジェット貨物機 細胴機 中型広胴機 大型機 計 欧州 アジア/太平洋 中東 中南米 CIS アフリカ 世界 156 27 189 372 111 22 288 421 311 80 751 1,142 3 7 13 23 239 31 187 457 256 46 88 390 105 21 212 338 1,181 234 1,728 3,143 0 1,425 1,425 509 2,196 1,143 3,848 544 415 7 966 6,239 38 643 681 513 2,940 1,050 4,503 667 553 53 1,273 6,457 23 596 619 394 5,467 2,775 8,636 1,976 1,739 338 4,053 13,308 3 42 45 38 410 148 596 307 813 252 1,372 2,013 50 411 461 244 1,154 358 1,756 226 118 4 348 2,565 34 181 215 75 484 140 699 121 125 8 254 1,168 25 171 196 61 604 262 927 184 97 6 287 1,410 173 3,469 3,642 1,834 13,255 5,876 20,965 4,025 3,860 668 8,553 33,160 154 347 231 732 180 70 27 277 311 138 216 665 26 26 180 232 83 33 9 125 30 15 26 71 51 57 44 152 835 686 733 2,254 89 市場予測 2016-2035 参考資料 「民間航空機に関する市場予測 2016-2035」の作製にあたっては、下記の機関、団体等か ら出版されているデータおよび資料を利用している。 AACO Arab Air Carriers Organization AAPA Association of Asia Pacific Airlines ACI Airports Council International AEA Association of European Airlines AFRAA African Airlines Association ALTA Latin America & Caribean Air Transport Association A4A Airlines for America BTS Bureau of Transport Statistics, U.S. Department of Transportation CAAC Civil Aviation Administration of China DOT U.S. Department of Transportation EIA U.S. Energy Information Administration ERAA European Regional Airline Association Eurocontrol European Organisation for the Safety of Air Navigation IATA International Air Transport Association ICAO International Civil Aviation Organization IEA International Energy Agency JETRO Japan External Trade Organization MLIT Ministry of Land, Infrastructure and Transport of Japan RAA Regional Airline Association UN United Nations Air Transport World AviationWeek Ascend Fleets Ascend Flightglobal Consultancy AviationDaily AviationWeek Flightglobal Flightglobal IHS Connect IHS Inc. OAG OAG Aviation Ltd. 90 市場予測 2016-2035 本報告書は弊協会ホームページ( http://www.jadc.or.jp )にも掲載されています。 本資料は、現状で信頼できると考えられる各種データに基づいて作成されていますが、過 去の実績データについてもリスクや不確定要因が含まれており、弊協会はその正確性、完 全性を保証するものではありません。 本資料に基づく利用者の決定、行為、及びその結果について、弊協会は一切の責任を負い ません。ご利用にあたっては、利用者自身の責任で判断くださいますようお願いいたしま す。 なお、本資料の全文または一部を転載・複製する際は、著作権者の許諾が必要ですので、 当協会までご連絡下さい。引用する際は、必ず、「出所:日本航空機開発協会」と明記して ください。 問合せ先: 一般財団法人 担当: 宮城 〒100-0011 日本航空機開発協会 第二企画室市場調査グループ 裕之(hmiyagi@jadc.or.jp) 東京都千代田区内幸町二丁目 2 番 3 号(日比谷国際ビル7F) TEL: 03-3503-3212 FAX: 03-3504-0368 URL: www.jadc.or.jp 91
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