2008年3月27日 流通ネットワーキング 6月号 流通ビジネスメッセージ標準(流通 BMS)導入のメリットと留意点 == 「流通 BMS」はいよいよ普及の段階へ! == EDI パッケージ ACMS で安全安心の EDI 環境構築 株式会社データ・アプリケーション ACMS 統括本部 ビジネス推進部 上級コンサルタント 藤野 裕司 た JCA 手順よりほぼ進化することなく今日を迎える はじめに こととなった。途中 JCA-H 手順が登場した時期もあ 1.流通ビジネスメッセージ標準(流通 BMS)とは るが、JCA 手順を置き換えるような普及にまでは至 2.流通 BMS 導入のメリット っていない。また、インターネット時代を迎え、 3.規模に応じた2つのモデル Web-EDI が急激に普及する中、その利用は標準化さ 4.導入時の注意点 れることなく個別 EDI のまま増殖し混乱を広めてい 5.ACMS での構成パターン る。これら従来型 EDI は、もはや課題山積で身動き おわりに の取れない状況となってしまった。 【用語解説】 そのような危機的な状況で 2003 年、流通業界は経 はじめに 済産業省の事業として次世代 EDI の検討に着手した。 流通業界での次世代 EDI「流通 BMS」が今まさに普 そこから「流通サプライチェーン全体最適化事業(流 及段階に入ろうとしている。この流通 BMS は、従来型 通 SCM 事業) 」として 3 年、その後「流通システム EDI で抱えていた多くの問題を解決し、新たにさまざま 標準化事業」として2年が過ぎ、今年はいよいよそ なメリットを提供してくれる。しかし、インターネット の集大成となる最終年度、まさにこの流通 BMS は本 EDI であるため注意しなければならない点も数多くあ 格的普及段階に入ろうとしている。 る。 (2) 課題山積の従来型 EDI 本稿では、その流通 BMS がどのようなものであるか、 流通業界における EDI の特徴は、小売から卸・ そしてそのメリットと導入時の注意点、実際のシステム メ ー カ へ の 発 注 が JCA 手 順 に よ る EOS 構成などを、EDI パッケージとして最も多く利用されて (Electronic Ordering System)で行われてきたと いる ACMS をベースにできる限りわかりやすく解説し ころにある。この JCA 手順は、1980 年に制定さ てみたい。 れた日本独自の EDI 標準通信プロトコルで、すで に30年近く利用され続けているのだ。この進化 の激しい IT 業界で、30年前の通信方式を使うこ 1. 流通ビジネスメッセージ標準(流通 BMS)とは とには相当無理がある。 まず、流通 BMS が登場した背景とその概要について 説明する。 具体的には、 ・ 通信速度が 2400bps と極端に遅い (1) 流通 BMS 登場の背景 流通業界における標準 EDI は 1980 年に制定され (一部、9600bps とやや早い速度での利用も 見受けられるが、あくまで限定された運用で 1 ある) 使えなかったり、同時並行で動作しなかった ・ 漢字が使えない りと、これも現場で混乱をきたしている (これも一部非標準として改造したシステム ・ データは、企業間のみならず企業内も縦横無 での漢字の利用が見られる) 尽に走り回り、データ連携がスムーズに行わ ・ 文字以外を送れない れていない (カタログデータや音声・映像など) (具体例は、図5参照) ・ インターネットを利用できない など、多岐にわたる問題があげられるようになっ ・ 使用するハードウェアがすでに大手メーカで た。 は製造中止となっており、故障時に補充がで (3) 課題解決のための流通 BMS きないうえ、サポートも終了している ・ 日本の独自標準であるため海外では受け入れ これらの課題を解決するため、流通業界の小売・ られない 卸が一丸となって取り組んだ一大プロジェクト、そ れがこの流通 BMS なのだ。 ・ データの送受信がバッチファイル転送方式で あるため、リアルタイムの要求に応えること ここで流通 BMS とはどのようなものかを簡単に ができない などがあげられる。 見てみよう。 流通 BMS は大きく2つの機能で構成されている また、通信プロトコル以外の要因としても (図1) 。ひとつはビジネスプロセスやデータ属性を ・ データフォーマットはほとんどが個別仕様で、 表す「EDI メッセージ」で、もうひとつはインター ネット経由の EDI を実現する「通信インフラ」であ 取引先ごとにプログラム開発が必要 ・ Web-EDI が普及したが、企業ごとに画面が異 る。 なり、運用が混乱している。また、手動操作 が必要で自動化できず、人的コストが増大し ている。自動化ツールを提供している例も見 られるが、個別仕様であるため他の取引先に 取引業務プロセス(メッセージ種) EDIメッセージ データ項目 コード(GTI N、GLN) データ表現形式(X M L) 通信インフラ 通信手順(ebX M L M S、AS2、JX 手順) 通信基盤(インターネット、TCP / I P) 共通基盤 (デファクトスタンダードの 中から選択) (図は流通システム開発センター資料より) [図1:標準化された流通 BMS の機能] ① EDI メッセージ すべての企業間取引で共通のメッセージを使える むデータの構造には柔軟性の高い XML が採用され た。 ように、 「メッセージ種別」 「メッセージ構造」 「デー タ項目とその意味」 「データ属性」を標準化した。取 対象業務は、2008年3月の段階で7業務10 引先コードや商品コードは国際標準に準拠すべく メッセージ(図2) 。ここには、グローサリ、アパレ 「GLN(共通企業識別コード) 」 「GTIN(共通商品 ル、生鮮が含まれている。基本はグローサリで、 「発 識別コード) 」を使用している。そして、それらを含 注」 「出荷」 「受領」 「返品」 「請求」 「支払案内」の6 2 業務。ただし、 「出荷」のメッセージは「出荷(梱包 も、業務システムへの影響が最小限になるよう配慮 紐付けあり) 」 「出荷(梱包紐付けなし) 」 「出荷(伝 されている。 票) 」 の3種類があり、 あわせて8メッセージとなる。 一方、業務の改善・効率化を目指し、伝票レス・ そこに、 「発注」の補助データとして「集計表作成」 検品レスの業務の標準化も行った。これにより、従 とアパレルの「値札作成」業務が加わり、合計で7 来なら取引先ごとに別システムを作る必要があった 業務10メッセージとなった。 ところを、ひとつのシステムですべての相手先に展 開できるようになったのだ。 これらの業務プロセスとメッセージは、既存業務 との整合性が担保されており、流通 BMS 導入時に 卸・メーカー 商品マスタ登録 センタ在庫補充 値札作成 小 商品マスタ登録 商品マスタ (GDS) 在庫補充 値札データ 発 発注データ 受 注 売 注 集計表作成データ 発注修正データ 出荷(梱包 紐付けあり)データ 小売へ 出 荷 出荷(梱包 紐付けなし)データ 受 領 (検品) 出荷(伝票)データ 卸・メーカーから 受領(伝票)データ 小売から 返品受領 返品データ 返 卸・メーカーへ 品 売掛 返品受領データ 買掛 請求 請求データ 消込 消込 支払案内データ 支払 [図2:7業務10メッセージを標準化] ebXML MS(*1)と AS2(*2)は、ともに国際標準 ② 通信インフラ の EDI 通信プロトコルで、サーバ間通信に利用さ 通信基盤はインターネットが前提となり、通信 れる。一方 JX 手順は、サーバ運用が困難な小規 プロトコルは国際標準の ebXML MS と AS2、日 模の企業やデータ量の少ない取引で利用される日 本標準の JX 手順という3方式が流通標準として 本独自の通信プロトコルで、クライアント側から 制定された。 の起動によりセンターのサーバにデータを取りに 行くような運用になる。 a.通信基盤:インターネット、TCP/IP インターネットは、高速・安価で世界中を統一 された規格で接続できる。また、TCP/IP は、企 業内の LAN として最も多く利用されている通信 2. 流通 BMS 導入のメリット 流通 BMS を導入すると、前述のような課題の解決を 方式。 含め、様々なメリットを受けることができる。 b.通信プロトコル:ebXML MS、AS2、JX 手順 (1) JCA 手順の課題を克服 3 「通信速度が遅くインターネットが使えない」 「漢 (5) 国際標準採用でグローバル対応可能 字が使えず文字以外の情報を送ることができない」 流通 BMS は、国際標準化団体 GS1(*4)が定めた 「ハードウェアが製造中止になった」など JCA 手 「BMS(*5)」をベースとしている。よって、今後日 順固有の問題を解決。 本特有の業務プロセスを BMS で対応できるよう要 請していくことにより、日本の流通 BMS が国際標 特に 2400bps という極端に遅い JCA 手順の回線 がインターネットに置き換わることにより、処理時 準としてグローバルな取引に利用できるように進化 することも可能となる。 間が大幅に改善される。データが XML 化されるこ とによりデータ量は12倍から16倍に増大するが、 (6) 企業間・企業内のシームレスな連携を実現 回線速度が速くなることにより全体の処理時間は約 JCA 手順は、古い通信プロトコルであるため、社 1/20∼1/25に短縮されるという実証結果が 内のネットワーク資源を利用することができない。 出ている。 しかし、流通 BMS の通信プロトコルは、新しい通 また、卸やメーカでは処理が高速化されることで 信規格に準拠しているため、社内のネットワーク関 「出荷精度が向上した」 「深夜作業の軽減により人手 連ハードなど資産を共通化することができる。その が確保しやすくなった」など、現場レベルでのメリ ため、企業間・企業内のシームレスな連携環境を構 ットも多く聞かれるようになった。 築しやすくなる。 もちろん、このときにはセキュリティに対するポ (2) 業務の標準化により開発工数が激減 従来、小売ごとにデータフォーマットが異なって リシーやどのようなソフトでどのように運用するか などの検討を加えることが重要。 いたため、卸・メーカは取引先ごとにプログラムの 開発が発生していた。しかし、流通 BMS では業務 (7) WebEDI の手動操作から開放 とメッセ−ジを統一したため、一度標準システムに WebEDI は、小規模の企業にむけた FAX に替わ 対応すれば、その後は個別開発ではなく共通企業識 る重要な EDI ツールだが、手動操作が発生し、運用 別コードで取引先を区別するなど、大幅に対応作業 上非常に問題視されている。 は軽減される。 流通 BMS では、Push 型通信プロトコル(ebXML MS、AS2)と Pull 型通信プロトコル(JX 手順)が (3) インターネットのメリットを享受 インターネット経由になるため、高速で安価な 用意されており、目的に応じて使い分けることで手 動操作をなくせるよう配慮されている。 EDI 環境を構築できたり、ハードやソフトが豊富で 入手が容易であるなど、インターネットが持つ様々 なメリットを享受することができる。 (8) トランザクション処理が可能 JCA 手順では、締め時間に通信が集中し、業務処 理の時間が通信時間の制約を受け、出荷時刻との調 (4) 業務改革にも対応 整が難しくなることがある。 既存の業務を担保するほか、伝票レスや検品レス ebXML MS、AS2 の通信方式では、Push 型の運 などの業務の運用も標準化されたため、従来の業務 用が前提となり、小売は任意のタイミングで発注情 を改革したり、新たな効率化に挑戦したりすること 報を送信し、卸・メーカは受けたデータを任意のタ も可能となる。 イミングで処理することができる。これにより通信 また、懸案だった EDI によるペーパレスの消費税 の集中が避けられ、業務の平準化が可能となる。 法上の扱いについて、正式に国税庁から「流通 BMS この機能を応用すると、将来的には伝票単位のト 採用の場合、仕入税額控除適用」との回答が出され ランザクション処理が可能となり、より進化したリ た(*3) 。これにより、流通 BMS の導入も弾みがつ アルタイムの問い合わせ/回答が得られる業務環境 くだろう。 を構築することができるようになる。 4 3. 規模に応じた2つの導入モデル 4. 導入時の注意点 では、ここで実際に導入する際に必要となるシステム について説明する。EDI システムには、運用形態に応じ 実際に導入が決まっても、運用上予め考えておくべき て2つのモデルがある。 ことは多い。ここでは、その主だったことを整理してみ よう。これは EDI パッケージを選ぶ際にも重要なことで、 通信プロトコルの項でも説明したように、サーバモデ これらの条件を満たした製品を採用することがポイント。 ル(ebXML MS、AS2)とクライアントモデル(JX 手 以下に弊社製品 ACMS で実現する場合を例にあげて説 順)である。 明する。 自社の EDI 規模や運用の方法に応じてどちらのモデ (1) 従来型 EDI の継続は必須 ルを採用するか決めることになる。 流通 BMS を導入したからといって、既存のお取引 先に一方的に従来型 EDI を廃止しますとは言えない。 サーバモデルは、一般に大手企業や大規模システムを 持つ企業での採用を前提としており、EDI を行う双方が 当然、先方にも事情がある。 互いに常時稼働のサーバ同士で接続する。送信データが とはいえ、既存の従来型 EDI システムをそのまま運 できると相手側に送りつける Push 型通信方式で、サー 用しながら別途新しく流通 BMS の EDI システムを設 バ間通信となるところから S-S 型 EDI モデルと呼ぶ。 置するのは、コストも運用・管理上の手間も障害リス クも格段に高くなる。ここはやはり従来型 EDI も継続 しつつ流通 BMS も含めて統合管理をするべきだろう 一方、送受信頻度の少ない企業やデータサイズの小さ い取引で EDI を行う場合、相手企業のサーバシステムや (図3) 。 VAN センターに PC など随時稼働のシステムで接続しに 行く。クライアントよりサーバに対して接続し送受信を 行うところから、C-S 型 EDI モデルと呼び、この通信を Pull 型通信方式と言う。 国内で利用されている すべての標準EDI通信プロトコルをサポート 取引先 次世代EDI ebXML ebXML MS 取引先 AS2 全銀・ JCA手順 JCA手順 JX手順 JX手順 Internet 全銀TCP/IP 手順 全銀TCP/IP手順 ACM S E ²X E-mail WebEDI WebEDI インターネットEDI 従来型EDI Browser 取引先 取引先 [図3:従来型 EDI を継続しつつ多様な EDI を統合運用] ない。相手先が求めるものを用意する必要も出てくる。 (2) 目的に応じて通信プロトコルを選択 EDI は、 複数の相手先と行うのが一般的。 その場合、 そのためには、想定しうる通信プロトコルは一通り用 意しておくべきだろう。 こちらの都合だけで通信方式を指定するわけにはいか 5 特に注意が必要なのは、お取引先に小規模の企業が ターネット上、つまり DMZ(非武装地帯)上に設 ある場合。その時、先方がクライアントモデルの JX 置することになり、外部攻撃にさらされることにな 手順で接続してくることになるので、こちら側は JX る。その時、EDI サーバ上にデータが保存されると 手順サーバプロトコルを用意しておく必要がある。も どうなるだろう。データを外部から見られたり破壊 ちろん、 自社が大手企業や VAN につなぎに行くとき、 されたりする可能性がでてくる。また、社内に管理 先方に JX 手順を指定されたならば、こちら側には JX 用 EDI サーバを設置し、外部のデータをこちらにコ 手順クライアントプロトコルが必要となる。つまり、 ピーすると、管理サーバの通信ログに残るのは、EDI ひとつの EDI システムに JX 手順のサーバプロトコル の正しい記録ではなく、自社 EDI サーバ間の通信記 とクライアントプロトコルの両方が必要となる場合が 録だ(図4) 。 DMZ 上に置くのは通信サーバのみで、送受信デ あるわけだ。このあたり、中堅・大手の卸は必ず直面 する問題なのでご注意いただきたい。 ータはその通信サーバで保存することなく、直接内 部に設置したサーバで管理する必要がある。こうす いずれにしても、ACMS は日本国内で用いられる全 ての標準通信プロトコルを装備しており、導入時には ると、データを外部にさらすこともなく、通信ログ を正しく残すことができる。 必要なプロトコルのみを選択してご購入いただくこと ACMS は、複数サーバに機能を分散することがで ができる。 きる。しかも DMZ 上の通信サーバは通信のみを行 (3) インターネット上でのセキュリティは完璧に 流通 BMS で注意すべきセキュリティは2点。外部 攻撃からの防御と互いの認証である。 い、データは社内の管理サーバで統合運用すること ができるのだ。もちろん、リバースプロキシを設置 し、通信機能・データ管理機能を共に社内に持つこ とも可能。お客様の環境とセキュリティポリシーに ① 外部攻撃からデータを守る 応じて構成を検討いただくことができる。 ebXML MS、AS2 を利用する場合、サーバはイン Internet 一般的には DMZ上 DMZ上 DMZ上 DMZ上 通信サーバ 通信サーバ ファイア ウォール 社外向け 社外向け システム EDI EDIシステム 管理DB 送受信 データ 通信サーバ 通信サーバ 破壊の データ り! あ 性 能 可 正しい送受信記録が 確認できない! 管理サーバ 管理用 管理用 EDIシステム システム EDI EDIシステム Internet ACMSなら ACMSなら 管理DB 送受信 データ ファイア ウォール ACMS E²X 管理サーバ ACMS E²X 管理DB 送受信 データ [図4:インターネットでも安全な EDI を実現] 定のものを使用する必要がある。Web サーバの SSL ② 相手先の認証は証明書で 流通 BMS でのルールで、証明書は流通 BMS 指 サーバ証明として利用されているパブリック証明書 は使えないのでご注意いただきたい。 6 その理由は、パブリック証明書には有効期間 1 年 一般に企業間のデータ連携を EDI と言い、社内の のサーバ証明書の機能しかないからだ。流通 BMS データ連携を EAI と言う。しかし、図5のように取 ではサーバ証明書、クライアント証明書、署名の3 引のデータは企業間・企業内を縦横無尽に走り回っ 機能が必要となる。また有効期間が 1 年では短すぎ ている。この一連の業務の流れを、EDI・EAI 別の て運用に支障をきたす。そこで流通 BMS は、有効 システムで管理してよいのだろうか。本来ひとつの 期間を 3 年とし、3機能がオールインワンで備えら 業務なのだから、ひとつのシステムとして管理すべ れた安価な流通 BMS 専用の証明書を発行できるよ きはず。しかし、企業間は EDI パッケージ、企業内 うにしている。 は EAI パッケージで管理するのが当然のように行 それらの証明書は、必要な要件を満たした認証機 われている。 関から取得しなければならない。どの機関で取得で ACMS では、複数の ACMS 同士が常時連携し合 きるかは、流通システム開発センターで公表してい いあたかもひとつの ACMS として稼働する。図7 る。 の例では、サーバ A の ACMS が親サーバとなり、 サーバ証明書は、ebXML MS・AS2・JX 手順サ サーバ B・サーバ C・サーバ D の ACMS をひとつ ーバ側で必要となる。サーバ証明書を取得すれば、 として管理する。これで企業間・企業内がシームレ クライアント証明書とメッセージ署名に使うことも スに統合運用できる。 できる。 JX 手順クライアントのみ利用の場合は、別に安 また、複数の ACMS がひとつとして稼働するた 価なクライアント証明専用の証明書も発行されてい め、ファイル転送という概念はない。利用者はあく る。 まで業務の連携のみ指定す ればよい。データは ACMS が目的の業務に自動的に運ぶ。頭の中から、 詳細については、認証機関にお問い合わせいただ きたい。 ファイル転送という概念を一切忘れ去ることができ るのだ。 (4) 企業間・企業内はシームレスに連携 サーバB 量販店 サーバA EDIシステム EDIシステム 基幹システム 受注 ACMS E²X 発注データ 受注 受注 ACMS E²X 出荷 出荷データ (梱包紐付けあり) 企業間・企業内はシームレス 在庫引当 出荷報告 受注 在庫 出荷 ACMS E²X 出荷指示 在庫管理システム ACMS E²X 企業間 企業内 ピッキング 物流業務システム サーバC サーバD [図5:業務は企業間・企業内がシームレス] 7 (5) 障害時も自動継続運転 ている。たとえば、複数の通信サーバで稼働してい 流通 BMS のサーバ運用は、常時稼働が前提とな るとき、1つのサーバがダウンしても残りのサーバ る。となると、障害時も安易に停止させるわけには で自動縮退運転を行い、処理はそのまま継続される いかない。かならず自動継続運転ができるような体 (図6) 。もちろん、サーバが復帰すれば自動でもと 制が必要である。 の状態に復元される。 ACMS は大手の VAN 事業者様でも多くご利用い ただいており、障害に強いことでご評価をいただい サーバー 1 サーバー 3 業務AP 業務AP 通信回線網 ACMS E2X ACMS E2X 業務AP 業務AP サーバー 障害 サーバー 2 サーバー 4 管理DB 業務AP 業務AP ACMS E2X ACMS E2X 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP [図6:障害時も自動継続運転] (6) システム増強時やメンテナンスも簡単に い接続先を設定した EDI システムで運用を始める 従来型 EDI から流通 BMS にどんどん移行が進む だけだ(図7) 。なぜなら、複数の ACMS がひとつ と、システムの増強が頻繁に求められるようになる となって稼働するからである。旧サーバを触る必要 だろう。その場合一般的には、既存のサーバの横に がないので、手間もかからずリスクも最小限にとど もう1台大型サーバを設置し、まず EDI システムを めることができる。 インストールする。その後すべての接続先と移行テ ストを行い、完了後旧システムから新システムに切 また、システムを常時稼働していると、サーバメ り替えを行う。取引先が多くなった場合、この移行 ンテナンスの時にも簡単に止めることはできない。 テストが大きな負担となる。相手先のあることなの このときも、複数の ACMS で運用していると安心 で、依頼や準備に相当な手間と労力とリスクが発生 して無造作にサーバを停止することができる。もち する。 ろん、このときも処理は残りのサーバで自動継続運 転される。メンテナンスが終わり電源を入れれば、 ACMS なら、キャパシティオーバーとなっても心 自動的に元の運用に戻る。 配する必要はない。ただ単にサーバを追加し、新し 8 分散環境でも統合運用 が可能 分散環境でも統合運用が可能 管理DB ACM S E2 X 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP 業務AP 管理DB ACM A CM S E2X E2 X 業務AP 業務AP A CM S ACM E2 X ACM S E2 X E2X 業務AP 業務AP ブラウザ ブラウザ [図7:柔軟な拡張性とメンテナンス性] ACMS は、巨大 VAN センターでの利用から中堅 (7) 企業規模に応じたシステムが必要 今、 企業は合併や分社でグループ化が進んでいる。 企業のシステム、最小構成では PC による利用とあ いつどのようなタイミングで外部企業が社内として らゆる稼働規模を想定したラインナップをそろえて 接続するようになったり、社内部門が別法人格にな いる。しかも、100%PureJAVA で開発されている ったりするか分からない。そんな時、異なる企業や ので、オープンシステムなら動作環境を選ばない。 部門でも同一ネットワークとして管理できると非常 WindowsPC から NonStop-Computer まで、安心し に運用がしやすくなる。 てご利用いただきたい。 (図8) (図9) HP NS16000 HP ProLiant IBM eシリーズ、 eシリーズ、 iシリーズ 富士通 PRIMEPOWER IBM zシリーズ zシリーズ 日立 HA8000シリーズ HA8000シリーズ ACMS E²X NECサーバ NECサーバ Gモデル DELL他、各社 PC DELL他、各社PC SUN UAP [図8:マルチプラットフォームで稼働] ACMS Lite WebEDI アプリケーション スケジュール管理 API 業務データ 業務データ (企業X) 業務管理 フォーマット 変換 運用管理 通信機能 JX手順 JX手順 全銀TCP/IP 全銀TCP/IP (企業Y) 次世代 EDI INETZ INETWebAgent Lite (企業Z) (企業Z) EDI EDI [図9:小規模な EDI 向けのクライアント製品] 9 (8) XML 変換のみならずデータの加工・編集も視 野に入れて ている(図10) 。しかも、SAP の iDOC や RDB にも直接読み書きが可能。また変換の過程でデータ 流通 BMS ではデータは XML が前提。つまり の加工や編集もでき、それらの定義を仕様書として XML 変換は必須の要件となる。ところが、XML だ 出力もできる。これはまさにプログラム開発ツール け扱えればよいのだろうか。いや、データは XML と呼べるのではないだろうか。これにより、相当数 だけではなくアプリケーションで利用される様々な のプログラム開発を削減できるのだ。 データ形式やコード体系に対応する必要がある。つ まり、どのようなアプリケーションと連携するか分 からないからだ。 ACMS は、XML は当然として、日本で使われる あらゆるシンタックスルールと文字コードに対応し In b o u n d O u tb o u n d フ ラ ッ ト フ ァ イ ル フ ラ ッ トフ ァ イ ル (個 別 フ ォ ォ ー マ ッ ト) (個 別 フ フ ォ ー マ ッ ト ト) 変 換 定 義 U N /E D I F A C T U N /E D I F A C T C SV 形 式 C SV 形 式 A N Y 変 換 S A P R /3 ID o c S A P R /3 ID o c X M L XM L C II C II R D B R D B [図10:多様なフォーマと変換に対応] バを社内に分散配置。DMZ 上に送受信データを実 5. ACMS での構成パターン ここからは具体的なシステム構成例をご紹介する。 体化させることがないので、安全な運用が可能とな る。 幅広い ACMS の規模構成より、VAN センターもしく この場合、社内の管理サーバは、障害対策上クラ はセキュリティ・負荷分散を重視した構成、中規模もし スタ構成にしておくことが望ましい。あわせて、通 くは一般企業での構成、PC によるクライアントシステ 信サーバを複数用意すると、トラフィックの負荷分 ムの構成、という大中小3パターンと従来型 EDI と共存 散、通信サーバ障害時の縮退運転、柔軟なメンテナ する構成を例に説明を進める。 ンス環境、などより安全安心な EDI システムを構築 できる。 (1) 高セキュリティ負荷分散型構成 トラフィックやアクセスが多いセンターで推奨の なお、異なるプロバイダ・回線を契約し 2 重化し ておくと、より一層安全性は高まる。 構成(図11) 。通信サーバを DMZ 上に、管理サー 10 DMZ Internet ACMS E2 X 証明書 ACMS E2 X 通信サーバ通信サーバ1 通信サーバ通信サーバ証明書 2 負荷分散装置 クラスタ 構成 ファイア ウォール 送受信 データ 社内 ネットワーク ACMS E2 X 管理サーバ 管理DB AP データ 共有ディスク [図11:高セキュリティ負荷分散型構成] (2) ミドルサーバシステム 信を行おうとすると、フォワードプロキシも必要と トラフィックやアクセスがさほど大きくない場合 なる。 の構成(図12) 。社内に EDI サーバを設置し、DMZ ACMS には小規模のサーバ構成でご利用いただ 上のリバースプロキシ経由でデータを送受信する。 く B2B LE という製品があるが、この場合クラスタ この場合も社内の EDI サーバはクラスタ構成が 構成を取ることができない。クラスタ構成にするか 望ましい。リバースプロキシは外部の攻撃から社内 否かは、導入企業のポリシーによる。 を守る機能だが、1 本のインターネット回線で送受 DMZ Internet 証明書 証明書 リバースプロキシ フォワードプロキシ ファイア ウォール 社内 ネットワーク 送受信 データ ACMS B2B 通信/ 通信/ 管理 サーバ ※ LEの場合は、 LEの場合は、 クラスタ構成不可 クラスタ 構成 or 管理DB ACMS 送受信 B2B LE 管理DB データ 通信/ 通信/ 管理 サーバ [図12:ミドルサーバシステム] (3) PC システム 最もコンパクトな WindowsPC1台での構成例 ウイルス対策はプロバイダのサービスや PC 用ソフ トを利用して行い、ファイアウォールはルータの機 (図13) 。インターネット環境は、家庭でインター 能や PC 用ソフトを利用することになる。もっとも、 ネットを利用するのと同じと考えてよい。ただし、 どのレベルまで対策を行うかは、各企業のポリシー ウイルス対策やファイアウォールの使用は考えたい。 で対応いただきたい。 11 Internet 社内ネットワーク クライアントPC クライアントP C ACMS Lite ファイアウォール 相当機能 送受信 データ 証明書 [図13:PC システム] ここはあくまで同一システムで管理することを前提 (4) 従来型 EDI との共存 とするべきだろう。 「4.導入時の注意点」でも述べたように、流通 共存する場合、インターネット系通信プロトコル BMS を導入するからといって、その日より従来型 は DMZ 上の通信サーバで通信を行い、従来型通信 EDI を廃止することはできない。相手先にも事情が プロトコルは社内のネットワークに置く通信/管理 あるので、当面は共存を前提とする必要がある(図 サーバで通信を行う。 14) 。その時、流通 BMS と従来型 EDI を別管理 するのは運用が煩雑になるばかりでメリットはない。 DM Z I n tern et ACM S E2X 通信サー バ 証明書 次世代手順 全銀T CP /IP 手 順 TC P/IP フ ァ イア イア ウォール 通信/ 管理/ AP サーバ ダ イアル アップル ー タ UST 通信回線網 (専用線/I SD N ) ACM S E2X 送受信 データ 全銀手順 JCA JC A 手 順 社内ネッ トワーク [図14:従来型と共存] ときどき巷では「流通 BMS なんてまだまだ。普及す おわりに 以上で流通 BMS の概要と留意点についてご理解をい ただけただろうか。 るかどうかなんて全くわからない」 という声が聞かれる。 これはまさに業界をご存じない!としか思えない発言 である。現実には、2008 年 3 月の時点ですでに150 社以上が導入を進めているといわれている(流開センタ 12 ーニュース 2008 年 3 月号および関係者談) 。またまもな 得ない理由」に相当するとし、仕入税額控除の適用を受 く全国で小売ごとの説明会が開かれると聞く。導入を終 けている。しかし、従来は小売が個別に伝票レスを実施 えられた企業の声も、入れてよかったという評価が続い していたため、各社が所轄の税務署に自社システムで確 ている。これで普及しないわけがないのではないか。 認を受ける必要があった。それを、今回流通 BMS の標 今まだ導入を迷っておられる企業の皆さんには、是非 準化された運用で国税庁へ照会し、 「問題なし」と直接の ここで真剣に検討を始めていただきたい。少しでも早く 確認が取れたことになる。詳細については、国税庁のサ 取り組んだ方が、より大きなメリットが得られる! そ イトをご参照いただきたい。 んなことを強く感じる今日この頃である。 ――――――――― 国税庁> 東京国税局>事前照会に対する文書回答事例 >東京国税局文書回答税目別検索>EDI 取引を行った 【用語解説】 *1:ebXML MS ebXML メッセージサービス仕様 場合の消費税法第 30 条第 7 項の適用関係について ――――――――― 国税庁ホームページのサイト内検索で「EDI 取引を行 インターネット上で、高速かつ安全な EDI 環境を構築す った場合の消費税法第 30 条第 7 項の適用関係につい るための次世代 EDI 国際標準として UN/CEFACT と て」を検索するとヒットする。 OASIS で開発され、アジアを中心に普及が始まっている。 日本では、流通業界(流通 BMS)をはじめ、電機・電 子部品業界で、実用化・普及段階にきている。 リアルタイムの EDI メッセージングを実現、通常のフ ァイル転送(文字情報)のほか、ファイル添付 (Word/Excel/PowerPoint、PDF、CAD、画像、音声、 *4:GS1 流通システムの国際標準化団体。欧州の EAN と米国 の UCC が統合してできた組織で、世界のほとんどの 国・地域はその傘下にある。 日本では(財)流通システム開発センターがその窓口と 動画など)による転送も可能。 なっている。 *2:AS2 *5:BMS EDIINT-AS2 の略称。EDIINT は、IETF というイン GS1 で定めている標準策定プロセスが「GSMP」 (グ ターネット技術の標準化組織のワーキンググループのひ ローバル・スタンダーズ・マネジメント・プロセス) 。この とつ。米国を中心に世界的に利用が拡大しつつあるイン GSMP で定められた EDI メッセージの国際標準が ターネット EDI の通信プロトコル。 「BMS」 (ビジネス・メッセージ・スタンダーズ)である。 通常の標準メッセージ(文字情報)のほか、様々なコ ンテンツ(Word/Excel/PowerPoint、PDF、CAD、画像、 音声、動画など)を送ることができる。 共通鍵や公開鍵暗号などの暗号化技術やデジタル署名 を使用してセキュリティを高めている。 【著者紹介】 藤野 裕司(ふじのひろし) 株式会社データ・アプリケーション ACMS 統括本部 上級コンサルタント *3:EDI 取引の消費税法における扱い 消費税法第30条第7項で、 「課税仕入れに係わる支払 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1−3−8 TEL 03-5640-8540 FAX 03-5640-8541 対価の額の合計額が3万円以上の場合、課税仕入れ等の E-mail: fujino@dal.co.jp 事実の帳簿への記録、保存及び課税仕入れ等の事実を証 URL: http://www.dal.co.jp/ する請求書等の保存義務がある」と定められている。こ 藤野ブログ「EDI 情報館」 : れに対して、EDI 取引ではそれらの情報はすべて電子的 URL: http://www.ediblog.jp/ に残される。そこで、一般には[消令49]の「やむを 13
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