Q1 / 2014 - CBRE Japan

Japan Investment
Market View
CBRE Global Research and Consulting
Q1 2014
GDP 成長率 Q1※
+5.9% 前四半期比年率
10年国債利回り
0.64% (12月末比-9.5 bps)
期待NOI利回り
4.13% (13Q4比-2bps)/オフィス(大手町)
※内閣府速報値
物流施設はJ-REITを中心に投資額は増加、存在感を高める
東京のオフィスの期待NOI利回りはリーマンショック前の水準に近づく
Summary
 2014Q1の収益不動産の取引額
は、1兆円、前年同期比23%減少
した。J-REITの取得額が前年同期
比で概ね横ばいとなった一方、他
の国内投資家による取得が減少し
たことが、全体の取引額減少の主
な要因となった。
 アセットタイプ別にみると他のア
セットタイプが減少するなかで、
物流施設の取得額が前年同期比で
11%増加して780億円となり、引
き続き売買市場における存在感が
高まっている。
 期待利回りの低下傾向は今期も続
いている。CBREの四半期投資家
調査(2014Q1)では、賃貸マン
ションを除いた全アセットタイプ
で期待利回りは低下、東京オフィ
ス(大手町)は前期比2bps低下して
4.13%となった。
 既存J-REITによる公募増資は
2014Q1に 7件、調達金額1,145
億円で、件数・金額ともに
2013Q1を下回った。
2014 Q1概要
収益不動産の取得総額
J-REITによる取引や、その他の公表案件
を CBRE が 集 計 し た と こ ろ に よ れ ば 、
2014年Q1期(1月~3月)の収益不動産の
取引額は1兆円で、前年同期比でマイナ
ス23%となった。直近で行ったCBREの
四半期毎の投資家調査は引き続き堅調な
投資家マインドを示しており、取引総額
の減少は売却物件の品薄が主因とみられ
る。主体別でみると、J-REITによる今期
の取得総額は3,760億円(10億円以上の取
引、IPOに伴う取得を除く)で前年同期比
マイナス3.5%、取引全体の38%を占めた。
一方、アセットタイプ別でみると、物流
施設を除いていずれのアセットタイプも
前年同期に比べて取得額は減少したが、
物流施設の取引額は前年同期比11%増加
しての780億円となり、引き続き売買市
場における存在感が高まっている。
キャップレートは低下傾向が続く
CBREの投資家調査によれば収益不動産
に対する期待利回りの低下傾向は続いて
おり、特にオフィスビル(東京・大手町)
については、07年当時の水準に近づき
つつある。大阪のオフィスについても
2008年来初めて下限値が6%を下回り、
同エリアのオフィス賃料に底打ちの兆し
も見られる中で関心の高まりがうかがえ
る。また、物流施設についても下限値が
5%に近づいているが、実際の取引にお
いては5%を下回る事例も見られている。
今後の見通し
株式市場は年明け以降は冴えない状況が
続いており、年初来で日経平均は4月末
までで12%、TOPIXは11%、それぞれ下
落した。4月の消費税増税以降の景気動
向に対する市場の慎重な見方に加え、ウ
クライナ情勢など地政学的リスクの高ま
りから為替レートの円安方向への動きに
歯止めがかかっていることなども要因と
みられる。J-REITの株価についても2013
年初頭のような勢いはない。しかし、年
初来概ね横ばいで推移しており、株式市
場全体のパフォーマンスは上回る状況が
続いている。J-REITによる公募増資の案
件数は前年同期に比べて減少したものの、
物件取得総額はほぼ前年同期並みとなっ
た。一方で、J-REIT以外の国内投資家に
よる不動産取得実績が前年同期に比べて
減少したのは、都内オフィス案件の希少
性が高まっていることによる影響とみら
れる。当期における物流施設の取引総額
の増加が示唆しているように、オフィス
以外のアセットタイプ、ならびに地方都
市での取得の増加が今後はより顕著とな
ろう。
Chart 1: 主要不動産取引 (主体別 取引額)
国内投資家(J-REIT)
(10億円)
7,000
国内投資家(その他)
海外投資家
6,000
5,000
4,000
3,000
1
2,000
1,000
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
10億円以上の取引を対象
2013
2013Q1
2014Q1
J-REITによるIPO時の取得物件を除く
© CBRE Ltd. 2014
Chart 2: 主要不動産取引 (地域別 割合)
J-REITが引き続き市場を牽引 物流施設の取引額は増加
アセットタイプ別に見ると、オフィス(取引総額の59%、5,920
億円)が最も多く、これに住宅(15.2%、1,520億円)、商業施設
(15%、1,460億円)と、物流施設(8%、780億円)が続いた。物流
施設を除いていずれのアセットタイプも前年同期に比べて取得
額は減少したが、物流施設の取引額は前年同期比11%の増加と
なり、引き続き存在感が高まっている。
当期中の主な取引としては、みずほ銀行が「大手町タワー」の
オフィス持分を1782億円で東京建物などから取得した事例が
最も高額だった。商業施設では、三菱商事のSPCがオリックス
などから352億円で取得した「エスポワール表参道」(その後、
「Gビル表参道02」として50%持分を日本リテールファンド投
資法人に譲渡)などがある。物流施設では、J-REITの野村不動産
マスターファンドが一部出資するSPCが114億円(推計値)で取得
した日本通運北東京流通センターが最大で、それ以外の上位
10案件は、大和ハウスリート投資法人が72億円(NOI利回り
5.9%)で取得したDプロジェクト久喜IIを初めとして、全てJREITによる取得案件が占めた。
期待NOI利回り ほぼ全アセットタイプで低下
最新のCBRE不動産投資家調査(2014年4月)によれば、東京の
NOI期待利回り(平均値)は、賃貸マンション(ファミリータイプ)
では前期比で横ばいとなったが、その他の全てのアセットタイ
プにおいて低下した。主なアセットタイプとしては、オフィス
(大手町)が4.13%で最も低く、次いで商業施設(銀座中央通り)が
4.35%、湾岸部マルチテナント型物流施設で5.46%と続いた。
東京オフィス(大手町)の期待NOI利回りは前期比2bpsの低下で、
低下幅は前期の5.0bpsに比べて縮小したものの、賃料の上昇を
見込んで2013年から低下傾向にあるトレンドに変わりはなく、
リーマンショック前の2007年の4%に近づきつつある。
大阪オフィスのNOI利回り(平均値)は15bps低下して6.08%、名
古屋オフィス(平均値)も10bps低下し6.35%となった。なお、大
阪のオフィスについては2008年来初めて下限値が6%を下回り、
同エリアのオフィス賃料に底打ちの兆しも見られる中で関心の
高まりがうかがえる。
2
他のアセットタイプについては、首都圏湾岸部マルチテナント
型物流施設が前期比14bps低下し5.46%、下限値では5.28%と
5%に近づいている。実際の取引においては5%を下回る事例も
既に複数見られている。物流の賃貸マーケットで、昨年から続
く大量の新規供給にも関わらず空室率が低水準を保っているこ
とも好感されている。また、大手商社や生命保険会社など新規
投資家の参入もみられる等プレイヤーが増加していることも利
回り低下の背景になっている。
© CBRE Ltd. 2014
首都圏
大阪
名古屋
地方都市
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2005
2006
2007
2008
2009
2010
10億円以上の取引を対象
2011
2012
2013
2013Q1
J-REIT による IPO 時の取得物件を除く
2014Q1
出所: CBRE
Chart 3: 主要不動産取引 (アセットタイプ別 割合)
オフィス
リテール
物流
住宅
ホテル
ヘルスケア
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2005
2006
2007
2008
2009
2010
10億円以上の取引を対象
2011
2012
2013
2013Q1
J-REIT による IPO 時の取得物件を除く
2014Q1
出所: CBRE
Chart 4: 期待利回りの推移
オフィス(大手町)
ワンルーム(東京主要5区)
9.5
ファミリー(東京城南・城西)
物流マルチテナント(首都圏湾岸部)
8.5
リテール(銀座中央通り)
ホテル(東京主要5区運営委託型)
(%)
7.5
6.5
5.5
4.5
3.5
Jul 2007
Oct 2007
Jan 2008
Apr 2008
Jul 2008
Oct 2008
Jan 2009
Apr 2009
Jul 2009
Oct 2009
Jan 2010
Apr 2010
Jul 2010
Oct 2010
Jan 2011
Apr 2011
Jul 2011
Oct 2011
Jan 2012
Apr 2012
Jul 2012
Oct 2012
Jan 2013
Apr 2013
Jul 2013
Oct 2013
Jan 2014
Apr 2014
地域別では、東京主要5区が取引総額の48%、東京23区全体で
は68%を占めた。大阪・名古屋を含む地方都市が取引総額に占
める割合は23%であった。
東京23区
出所: CBRE Research Quarterly Survey
Chart 5: 期待利回りスプレッドの推移
(%)
オフィス(大手町)
ワンルーム(東京主要5区)
8.0
ファミリー(東京城南・城西)
物流マルチテナント(首都圏湾岸部)
7.0
リテール(銀座中央通り)
ホテル(東京主要5区運営委託型)
6.0
5.0
4.0
3.0
2
2.0
1.0
Jul 2007
Oct 2007
Jan 2008
Apr 2008
Jul 2008
Oct 2008
Jan 2009
Apr 2009
Jul 2009
Oct 2009
Jan 2010
Apr 2010
Jul 2010
Oct 2010
Jan 2011
Apr 2011
Jul 2011
Oct 2011
Jan 2012
Apr 2012
Jul 2012
Oct 2012
Jan 2013
Apr 2013
Jul 2013
Oct 2013
Jan 2014
Apr 2014
2014年(1月~3月)の収益不動産の累計取引額は1兆円で、前年
同期比でマイナス23%となった。主体別に見た場合、J-REITに
よる今期の取得総額は3,760億円(10億円以上の取引、IPOに伴
う取得を除く)で、前年同期比マイナス3.5%でほぼ横ばいとな
り、その取得総額は取引全体の38%を占めた。一方、J-REITを
除く国内投資家の取引総額は5,330億円で前年同期比で35%減
少した。J-REITが引き続き売買市場を牽引していることに変わ
りはなく、他の国内投資家による取得が減少したことが、全体
の取引額減少の要因となった。
東京主要5区
100%
Japan Investment | MarketView
不動産投資マーケットの動向
Q1 2014
INVESTMENT MARKET OVERVIEW
出所: CBRE Research Quarterly Survey
引き続き投資意欲は旺盛
2012年以降、海外投資家が物件の売り手となりマーケットの
活性化に貢献している。過去2年で見ると海外投資家の売却総
額は取得総額を上回り、今期(売却額1,060億円、取得額940億
円)も同様の結果だった。
海外投資家が買い手となった主な取引としては、米アクサ生
命がオフィスビル「中野セントラルパーク イースト棟」(東京
都 中 野 区 ) を 約 380 億 円 で 取 得 し た ほ か 、 独 SEB Asset
Managementがオフィス複合ビルの「Primegate」(東京都新宿
区)をセキュアード・キャピタル・インベストメント・マネジ
メントから55億円で取得した取引、香港Gaw Capital Partners
が大林組から大阪・南港の「ハイアット リージェンシー 大
阪」(客室数480)を取得した取引があげられる。更に3月には、
韓国のLGグループが、竣工したばかりの京橋トラストタワー
(中央区京橋)の持分約2割を取得している。取得価額は開示
されていないものの、200億円程度と推測される。
CBREがクロスボーダー投資家へ行った2014年の投資戦略に関
する調査(参考資料)では、売却よりも多く取得すると回答した
投資家が69%を占めた。日本では売却が順調に進んだこと、
改善している資金調達環境が海外投資家を後押ししている。
しかし、東京での投資環境が厳しさを増し、利回りが2007年
の水準に近づきつつある中、海外投資家が今後買い越しに転
じる場合、市場の物件不足が進むことが懸念される。より高
い利回りを求めて大阪や福岡等のエリアへ投資対象を広げて
検討する状況は今後も続くであろう。
Japan Investment | MarketView
海外投資家
Q1 2014
INVESTMENT MARKET OVERVIEW
Table 1: 主要不動産売買事例 (2014年 1 月~ 3 月 **)
年月**
物件
所在
用途
売主 ( スポンサー )
買主 ( スポンサー )
取引金額
( 百万円 )*
2014年3月
大手町タワー
東京都千代田区
事務所
東京プライムステージ
(東京建物、大成建設)
みずほ銀行
2014年3月
中野セントラルパーク
イースト棟
東京都中野区
事務所
中野駅前開発特定目的会社
(東京建物、ヒューリックなど)
ALJ CENTRAL RE1特定目的会社
(アクサ生命保険)
38,000
2014年3月
エスポワール表参道
東京都渋谷区
店
オリックス、セキュアード・キャピタル・
インベストメント・マネジメント、トリニ
ティ・インベストメンツのSPC
合同会社神宮前425(三菱商事)
35,200
合同会社KRF50、ケネディクス・
プライベート投資法人
34,600
舗
178,200
(オリックス、セキュアード・キャピタル・インベストメント・マ
ネジメント、トリニティ・インベストメンツ)
2014年3月
KDX豊洲グランスクエア
東京都江東区
事務所
ゲートウェイ特定目的会社
2014年3月
麹町ミレニアムガーデン
東京都千代田区
事務所
森トラスト
野村不動産オフィスファンド投資法人
26,500
2014年3月
ウエストパークタワー池袋
東京都豊島区
住
IKBR合同会社(オリックス)
オリックス不動産投資法人
20,500
2014年1月
クイーンズタワーA
神奈川県横浜市西区
事務所
レジーナ・プロパティ合同会社
(三菱地所)
ジャパンリアルエステイト投資法人
17,200
2014年3月
NSビル,ソニー4号館
東京都品川区
事務所
ソニー
住友不動産
16,100
2014年3月
大手町フィナンシャルシティ
ノースタワー
東京都千代田区
事務所
三菱地所、サンケイビル
ジャパンリアルエステイト投資法人
15,463
2014年3月
アルカセントラル
東京都墨田区
事務所
イスタンブールアセット特定目的会社(エー
トス・キャピタル)
グローバル・ワン不動産投資法人
15,031
2014年3月
中之島セントラルタワー
大阪府大阪市北区
事務所
住友生命保険
日本ビルファンド投資法人
14,900
13,000
2014年3月
新宿サンエービル
東京都新宿区
事務所
小田急電鉄
合同会社KRF43(ケネディクス、
ケネディクス・オフィス投資法人)
2014年3月
Gビル表参道02
東京都渋谷区
店
舗
合同会社神宮前425(三菱商事)
日本リテールファンド投資法人
17,750
2014年2月
立川TMビル
東京都立川市
店
舗
エスアイエイキング2号
(シンプレクス不動産投資顧問)
高島屋
12,000
2014年1月
浜離宮インターシティ
東京都港区
事務所
新日鉄興和不動産
ジャパンエクセレント投資法人
12,000
神奈川県川崎市
事務所
合同会社KRF41(ケネディクス)
ケネディクス不動産投資法人
12,000
10,800
10,512
2014年3月
3
居
TKS武蔵小杉ビル
2014年3月
NIS WAVE.I
東京都立川市
店
舗
合同会社ウエーブ
パーシモン特定目的会社
(Croesus Retail Trust)
2014年2月
恵比寿ネオナート
東京都渋谷区
事務所
国際石油開発帝石
ジャパンリアルエステイト投資法人
2014年2月
パークキューブ愛宕山
タワー
東京都港区
住
居
非開示
日本アコモデーションファンド
投資法人
8,650
2014年3月
JouLe SHIBUYA
東京都渋谷区
店
舗
合同会社ロサンゼルス・ゴールド
(オリックス)
オリックス不動産投資法人
7,550
2014年3月
Dプロジェクト久喜Ⅱ
埼玉県久喜市
物
流
大和ハウス工業(株)
大和ハウスリート投資法人
7,200
2014年3月
ソニー5号館
東京都品川区
事務所
ソニー
住友不動産
7,000
2014年3月
岩本町ビル
東京都千代田区
事務所
プレミア投資法人(NTT都市開発)
NTT都市開発
6,915
2014年3月
GLP辰巳Ⅱa
東京都江東区
物
東京ベイプロパティー特定目的会社
GLP投資法人
6,694
2014年2月
プライムゲート
東京都新宿区
事務所
SCG20特定目的会社(セキュアード・キャピタル・インベ
APF2 PG特定目的会社
(SEB Asset Management)
5,500
流
ストメント・マネジメント)
※会社公開情報および報道情報等によりCBRE作成。J-REIT上場時の組み入れ物件取引は対象外。持分等を含む。
*概算金額、推定金額を含む。**契約月、発表・報道月を含む。
© CBRE Ltd. 2014
3
Q1の既存J-REITによる公募増資は7件、1,145億円
東証リート指数は2014年初以降、1450から1500のレンジの間
で一進一退を続けている。3月末時点では年初から3.3%の下落
となり、4月末では同1.3%の下落となった。ただし、3月末時
点で年初来9%下落し、4月末までで同12%の下落となった日経
平均株価に対してはアウトパフォームしている。オフィス賃料
の上昇や、全般的な不動産市況の好転に対する市場の期待のほ
か、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がREIT投資を
開始したと4月に発表したことも好感された。
Chart 6: J-REITの株価動向 (東証リート指数)
3000
東証リート指数(左軸)
17
東証リート指数の日経平均に対する相対株価(右軸)
16
2500
15
14
2000
13
12
1500
11
10
1000
9
14年5月
13年7月
13年12月
13年2月
12年9月
12年4月
11年6月
11年11月
11年1月
10年8月
10年3月
09年5月
09年10月
08年7月
08年12月
08年2月
07年9月
07年4月
06年6月
06年11月
06年1月
05年8月
05年3月
04年5月
8
04年10月
500
既存J-REITによる公募増資(新規上場に伴う公募増資=IPOを除
く)は今期7件、調達金額は1,145億円で、件数、調達額ともに
前年同期(11件、2,416億円)に比べて減少した。調達額で最大
出所: 東京証券取引所
だったのはオリックス不動産の公募増資で、342億円を調達し、
8物件(取得総額468億円)を取得した。これに続くのがコンフォ
Chart 7: J-REITのインプライドキャップレート
リア・レジデンシャルによる案件で、237億円を調達し、22物
件を総額373億円で取得した。
日本ビルファンド
ジャパンリアルエステイト
Japan Investment | MarketView
J-REIT市場の概要
Q1 2014
J-REIT MARKET OVERVIEW
6.5%
なお、今後の新規のJ-REITとしては、米資産運用大手のインベ
スコがスポンサーとなるインベスコ・オフィス・ジェイリート
投資法人が6月の上場を予定している。上場時の運用資産は
786億円で、恵比寿プライムスクエアや晴海アイランド トリト
ンスクエア オフィスタワーZなど5物件でのスタートとなる見
込み。
J-REITの取得物件は引き続きアセット・地域ともに拡大
5.5%
4.5%
3.5%
14年5月
13年5月
12年5月
11年5月
10年5月
09年5月
08年5月
07年5月
06年5月
05年5月
2.5%
04年5月
一方、新規上場については、ヒューリックリートが公募増資で
677億円を調達し、2月7日に上場した。デベロッパーのヒュー
リックがスポンサーの総合型リートで、上場時の運用資産
1,014億円(21物件)は、オフィス(56%)、商業施設(21%)、ヘル
スケア施設(14%)、通信インフラ施設(8%)で構成されている。
同リートの上場初値は122,000円で、公募価格の108,000円を
12.9%上回った。上場後も株価は好調に推移し、3月24日には
終値で152,300円をつけた。その後やや調整されたものの、5
月9日時点では142,500円と公募価格を32%上回っている。
なお、Q2に入ってからは4月24日に日本リートが上場した。
こちらも上場初値は262,000円と公募価格の252,000円を4%上
回り、現在も公募価格を上回る水準(5月9日時点で272,800円)
で推移している。
これら2リートの上場でJ-REITは45銘柄となった。
出所: CBRE
Chart 8: J-REITによる公募増資 (IPOを除く 発行価格ベース)
(件)
調達額(10億円)
件数
(10億円)
40
800
35
700
30
600
25
500
20
400
15
300
10
200
2014Q1
2013Q1
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
100
5
2014Q1のJ-REITの不動産取得総額は3,825億円(IPOに伴う取得
0
0
を除く)で、前年同期の2013Q1に比べて4.0%減少した。ア
セットタイプ別では、物流施設が570億円と前年同期比で78%
増加した一方、オフィスの取得額は26%減少する結果となった。
IPOを除く 発行価格ベース
出所: CBRE
その結果、J-REITによる取得総額に占めるオフィスの比率は
42%で50%割れとなった(前年同期は54%)一方で、物流施設は
Chart 9: J-REITによる不動産取得実績 (IPOに伴う取得を除く)
15%(前年同期は8%)となって、オフィス、住宅(28%)に次ぐ規
模となった。
(10億円)
1,600
4
地方都市でも市況改善の兆しが見られつつある中、J-REITの取
得エリアも分散傾向にある。2014 Q1のJ-REITの取得総額に占
める東京主要5区の比率は前年同期に比べて増加したものの、
東京23区全体では前年同期の64%から当期は55%に減少した
(Chart 11)。その一方、大阪と名古屋の比率はそれぞれ比率が
上昇している。取得総額の増加率が最も高かったのは大阪で、
前年同期比で2.4倍の341億円となった。前年同期の大阪にお
けるJ-REITの取得は住宅と物流施設が中心だったのに対し、当
期はオフィス(底地を含む)の取得額が全体の94%を占めたこと
が取得額増加の背景である。なお、オフィスについてだけみる
と(Chart 12)、取得総額に占める比率は大阪が20%で、東京主
要5区の48%に次ぐ水準となっている。
1,400
1,200
1,000
800
600
4
400
200
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2013Q1 2014Q1
出所: CBRE
© CBRE Ltd. 2014
Q1 2014
J-REIT MARKET OVERVIEW
一方、地方案件としては、日本ビルファンドが大阪の中之島
セントラルタワーの40%持分を、同投資法人のスポンサーの
一社である住友生命保険から149億円(NOI利回り5.1%)で取得
した案件が金額で最大であった。このほか、プレミアが取得
したトレードピア淀屋橋の底地(65億円、NOI利回り4.0%)、日
本ビルファンドが取得した堺筋本町センタービルの追加持ち
Chart 10: J-REIT アセットタイプ別取得比率
オフィス
商業
物流
住宅
ホテル
ヘルスケア
分など、オフィスビル関連の取得が、大阪でのJ-REITによる取
得総額を前年の2.4倍に押し上げる要因となっている。なお、
地方都市で取得総額で最も多かったのはオフィスであったが、
件数ベースではレジデンシャルが11件で、これにオフィスと
物流施設がそれぞれ8件と続いた。
物流施設では大和ハウスリートがスポンサーの大和ハウスか
ら、埼玉県久喜市に立地するDプロジェクト久喜II(72億円、
NOI利回り5.9%)など6棟を総額251億円で取得したほか、産業
ファンドが総額166億円で8施設を取得した。他に、GLPや日
本ロジスティクスファンドなども引き続き積極的に投資を
行っており、特にGLPが東京都江東区で取得したGLP辰巳IIaは、
取得価格67億円に対するNOI利回りは4.7%で想定されており、
物流施設においてもキャップレートの低下傾向が進んでいる
ことを示している。
Chart 11: J-REIT エリア別取得比率
インフラ
駐車場
主要5区
100%
100%
90%
90%
80%
80%
70%
70%
60%
60%
50%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
0%
2013Q1 2014Q1
2005
東京23区
2006
2007
首都圏
2008
2009
大阪
2010
2011
名古屋
2012
2013
出所: CBRE
Chart 13: オフィス市場の地域別空室率
主要5区
100%
25%
首都圏
大阪
名古屋
地方都市
2013Q1 2014Q1
出所: CBRE
Chart 12: J-REIT オフィスのエリア別取得比率
東京23区
Japan Investment | MarketView
Q1中のJ-REITによる取得案件で取得金額が最大だったのは、
野村不動産オフィスファンドが森トラストから取得した麹町
ミレニアムガーデンであった。千代田区麹町に立地する築14
年のオフィスビルで、取得価格265億円に対するNOI利回り(鑑
定NOIベース)は4.4%であった。他に、東京都心での案件とし
ては、ジャパンリアルエステイトが三菱地所およびサンケイ
ビルから大手町フィナンシャルシティノースタワーの持分を
154億円、NOI利回り3.3%で取得している。
地方都市
東京23区
名古屋
90%
大阪
20%
80%
仙台
福岡
70%
15%
60%
50%
10%
40%
30%
10%
0%
0%
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2013Q1 2014Q1
2003.09
2003.12
2004.03
2004.06
2004.09
2004.12
2005.03
2005.06
2005.09
2005.12
2006.03
2006.06
2006.09
2006.12
2007.03
2007.06
2007.09
2007.12
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
5%
20%
出所: CBRE
出所: CBRE
Table 2: 2014 年 J-REIT の新規上場
投資法人名
5
ヒューリックリート
投資法人
© CBRE Ltd. 2014
東証
コード
上場日
資産運用会社の
主要株主
主な投資対象
発行価格
(円)
発行総額
(円)
払込価格
(円)
払込総額
(円)
上場初値
(円)
初値 vs発
行価格
3295
2014 年2 月 7 日
ヒューリック
オフィス、商業施設、
有料老人ホーム、
ネットワークセンター
108,000
70,200
104,220
67,743
122,000
+13.0%
5
Q1 2014
CONTACTS
本社
東京都千代田区丸の内2-1-1
明治安田生命ビル
t: 03 5288 9760
横浜
横浜市西区北幸1-11-15
横浜STビル
t: 045 316 4311
高松
高松市寿町2-3-11
高松丸田ビル
t: 087 821 2601
関西支社
大阪市中央区安土町2-3-13
大阪国際ビルディング
t: 06 6261 2111
金沢
金沢市鞍月5-177
AUBE Ⅱ
t: 076 239 4041
福岡
福岡市博多区博多駅2-2-1
F福岡センタービル
t: 092 472 1711
札幌
札幌市中央区北二条西4-1
北海道ビル
t: 011 231 6931
名古屋
名古屋市中区錦3-20-27
御幸ビル
t: 052 205 6541
仙台
仙台市青葉区中央1-2-3
仙台ワークマン
t: 022 262 5651
広島
広島市中区袋町3-17
シシンヨービル
t: 082 243 9321
Japan Investment | MarketView
各地のマーケットに関するお問い合わせ
Japan Investment Market View に関するお問い合わせ
Japan Research
大久保 寛
エグゼクティブ ディレクター
Japan Research, CBRE
t: 03 5288 9760
e: hiroshi.okubo@cbre.co.jp
本田 あす香
シニアアナリスト
Japan Research, CBRE
t: 03 5288 9760
e: asuka.honda@cbre.co.jp
+ FOLLOW US
Global Research and Consulting
CBRE Japan Research Teamは、不動産マーケットに関するリサーチ、軽量経済学的予測、コンサルティングサービスをグローバルに協働
して提供する卓越したリサーチャーとコンサルタントのネットワークであるCBRE Global Research and Consulting の日本部門として、世
界中の不動産投資家やオキュパイヤーに向けて本レポートを提供しております。
Disclaimer
6
掲載しているマーケットデータは集計サンプルの情報更新等により、過去に遡って訂正する場合があります。本レポート
は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社又は第三者が本レポートに基づいて行われた検討、判断、意思決定
及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。
本レポートの無断転載を禁じます。
© CBRE Ltd. 2014
6