24 February 2016 Hong Kong 2016 – 17 Budget insights 「新経済秩序」に言及する革新的な財政予算 主なポイント ► ► ► 2015/16年度における給与 所得税及びその他所得税 の75%、上限20,000香港ド ルまで減税 基礎(独身)及び寡婦(夫) 除額が120,000香港ドルか ら 132,000 香 港ド ルに 、既 婚者の基礎控除が240,000 香港ドルから264,000香港 ドルにそれぞれ増加 父母・祖父母扶養控除に ついて被扶養家族が、60 歳以上の場合には40,000 香港ドルから46,000香港ド ルに、55歳以上59歳の場 合には20,000香港ドルから 23,000香港ドルに増加、扶 養父母・祖父母が同居して いる場合には、追加控除と して上記控除額がさらに付 与される ► 高齢者介護費用控除額の 上限が80,000香港ドルから 92,000香港ドル ► 2016/17 年度の不動 産税 が、課税対象となる不動産 ごとに、四半期ごとに最大 1,000香港ドル免除 ► 総合社会保障支援計画と して、高齢者手当、高齢者 生活手当、および障害者 手当が1か月分補填 ► 2016/17年度の事業登録 費用免除 ► 飲食業を含む観光産業に 関連したライセンス取得費 用を一年に限り免除 ► 半導体集積回路配置設計、 植物品種保護権利に関す る知的財産の購入による 資本支出に対する減税範 囲の拡大 ► インフレ連動型債券である 「iBond」 を 10億香港ドル まで、及び65歳以上の香 港居住者を対象とした 「Silver Bond」を公募で発 行 彼にとって9回目となる財政予算演説の終わりに、曾俊華財政長官は、ワールドカップ・ サッカー2018予選での香港チームの善戦を例え、その試合での香港の不屈の精神から、 彼が来るべき挑戦を香港が乗り越えることができることをどのように確信したかについて 触れました。 曾俊華財政長官にとって、来るべき挑戦とは、香港の従前及び新興産業の双方に影 響を与えるIT技術の発展による打開策が創り出す「新経済秩序」によるものであるとして います。さらに、それは開かれたエコシステム市場を導き、既存の市場参加者に影響を もたらす革新的な模範の転換を引き起こすだろうと述べました。 香港が直面する挑戦を明確した後に、多様化する香港経済の挑戦に立ち向かうため の曾俊華財政長官の提案は期待を裏切るものではありませんでした。この日の予算案 演説で、香港の四大産業(金融、観光、貿易及び物流、専門家による役務提供)への繰 り返されるモノローグ的な懸念はありませんでした。その代わりに、曾俊華財政長官は、 イノベーションの育成、新規市場の発見やR&Dに対する取り組みとその才能への援助、 フィンテック企業及びその設立の促進、「一帯一路」(「シルクロード経済ベルト」及び「21 世紀海上シルクロード」)イニシアチブの活用や技術及び発明の分野でのトレーニング・ プログラムの増加等に注目した、さらに創造的な行動計画を述べることを選択しました。 しかしながら、新しい提案が常に歓迎される一方で、提案の適切さと、その提案の対価 に値する見返りがあるかどうかを懸念する声も挙がります。香港経済を多様化させるた めの彼の計画が発表された後、一部の評論家は、曾俊華財政長官と政府の考える、そ のような革新的な方針がもたらす結果と支払う対価とが見合うかをどのような基準で評 価するつもりでいるかについて深い関心を持つかもしれません。そのような懸念は、曾 俊華財政長官が、その発展を過去に提案した分野には、その後の実績が示されていな い事実を強調したものであるといえるでしょう。しかしながら創造性と前向きさに欠けると 非難された過去を省みれば、財政長官は新しいことを試みていることで称賛に値すると いえます。 この日の提案にて、納税者に向けた緩和策に目新しさはなかったものの、これらの緩 和策は納税者にとって、なければ欲しがる年次行事となっています。納税者の期待を、 曾俊華財政長官は裏切りませんでした。実にこの緩和策は、昨年度に増して、今年は拡 大されています。もし、このような緩和策が将来においても提供される場合、香港経済の 健全性に対する公衆の視線がより強く向けられることになるでしょう。一部の評論家は、 不動産税と給与所得税での優遇について、香港の中産階級に歓迎されることに疑いは ないものの、香港の貧富の差をなくすことにわずかな影響をもたらすのみで、香港人口 の高齢化への懸念や税基盤が限定されていることへの懸念への示唆がないと主張して います。 曾俊華財政長官が、教育分野、社会福祉や医療機関サービスにおける「納税者の生 活に関連した支出」の全般的な概算金額の増加が、それらの懸念を部分的に示唆する ものと主張する一方で、社会評論家は、追加増加の規模が十分でないとし、経済評論家 は香港の限定された税基盤には大きな課題が残されたままであり、曾俊華財政長官も 前任の財政長官たちも明確な提示がないと主張するでしょう。 全般的には曾俊華財政長官は、過年度に比較すれば創造的な行動計画を発表し、革 新的な考えを提示したといえるでしょう。 知的財産取引のハブとしての香港を奨励 曾俊華財政長官は、前回の予算案で、特許、産業ノ ウハウ、登録商標、デザイン及びその他の知的財産権 (以下「IP権」)を含む著作権の購入に関連した資本支 出に対する現状の減税範囲を拡大すること考慮してい ると表明しました。 この日の予算案で、曾俊華財政長官は、現在の上記 5つの種類に分類される減税範囲に、半導体集積回路 配置設計、植物品種保護権利等を加えることを表明し ました。 弊事務所は、曾俊華財政長官が、上記に加えて一定 のライセンス権利を含むその他のIP権及び一般的に電 気通信産業にて獲得される「 (配線ケーブルに対する) 破棄し得ない使用権」にも同様な減税政策を適用する よう考慮することを要望します。 さらに、曾俊華財政長官は、減税が認められる前提 条件として、香港でIP権の法的な所有権を得ていること を条件としていることの適切性について、国際的な傾向 が経済的な所有者に移行している状況を踏まえて、再 検討する必要があるかもしれません。 航空機リース事業の奨励 曾俊華財政長官は、航空機リース事業を繁栄させる ための税務的な優遇を検証するとしましたが、今後の 予定について意見を具体的には述べませんでした。 現行の規定では、香港にいる貸手が海外に航空機を 貸し出した場合には、その航空機の減価償却費が損金 不算入とされることから、香港は航空機リース事業を展 開する場所とはされない理由となっています。このこと に関して曾俊華財政長官ができうる限り早く検証を終 わらせることを希望します。 コーポレート・トレジャリー・センターとしての香港を奨励 曾俊華財政長官は、この日の財政演説で、立法政府 議会に下記の議案を提出すると報告しました。提出さ れる議案には、1)一定の条件を満たしたコーポレート・ トレジャリー・センター(以下「CTC」)が海外関係会社に 支払う支払利息の損金算入、及び2)適格CTCによる適 正な利益に税率の50%の優遇税率を適用することが含 まれています。 しかしながら、CTCは、優遇税率を享受するためには、 海外で香港の所得税と同様の税金を「利息または関連 した金額」に対して、香港の基準税率(16.5%または 8.25%)を下回らない税率で海外関係会社が支払った、 または支払われる予定であることを、内国歳入庁長官 (以下「CIR」)に対して証明をする必要があります。 ところが、状況によっては海外で「利息または関連し た金額」に対して支払われた税金を当該年度または次 年度のどちらに帰属するか確定することは難しい可能 性があります。海外関係会社が、その他の事業で営業 損失となった場合には、特に難しいでしょう。 この要件は、多国籍企業グループにとって提案された 法令の魅力を損なうものとなる可能性があります。もう ひとつの選択肢として、一部の識者は要件を海外の税 金が香港の基準税率(16.5%または8.25%)を下回らない 税率で支払われた、または支払われる予定である」で はなく、簡潔に「課税対象」であるとするよう提言してい ます。 税率に対して50%の優遇税率においては、「法人ベー ス」でのアプローチを適用していますが、一定のセーフ・ ハーバー・ルールが適用されます。すなわち、 CTCが、 特定の適格トレジャリー・サービス事業、取引またはグ ループ内の資金調達事業のみを忠実に行っている場 合のみに優遇税率を享受できるとされています。 「法人ベース」アプローチでは、 CTC事業を幅広い業 務の一環として現在行っている多くの大企業が、 CTC 事業を独立した別法人としてスピンオフさせない限り、 優遇税率を享受することはできないと思われます。 しかしながら、租税協定を享受するための「実体」の 要件の充足等の多様な理由から、スピンオフは、必ず しも現実的ではありません。スピンオフ後の懸念は、ス ピンオフにより新設された法人または、元々の法人が 十分に「実体」があるかどうか、すなわち、元々の法人 の「実体」、例えば、従業員数や事業活動等がスピンオ フ後に2つの法人に分けられること等が挙げられます。 シンガポールがさらに柔軟な優遇税制を付与している ことから、曾俊華財政長官は、利害関係者からの提案 を受け入れることを考慮する必要があるかもしれませ ん。そうした提案には、優遇税率は、CTCが法令で定め られた特定の条件を満たした場合に、「法人ベース」ア プローチに適用しているかどうかにかかわらず享受でき る、そして特定のセーフ・ハーバー・ルールを75%の限度 に低減するといった内容が含まれるでしょう。 香港のアセット・マネージメント産業の奨励 曾俊華財政長官は、立法政府議会にオープンエンド 型の投資ファンド会社(以下「OFC」)の設立を許可する 法案を最近提案したと表明しました。現在、オープンエ ンド型の投資ファンドは、香港法に基づいてユニット・ト ラストの形式でのみ設立可能です。これは、会社法で 株式減資(解約)に対する様々な制限を行っているため です。 新法律や規則の枠組みの下では、従来型の会社形態 に、集団投資スキームとして投資家からの申込や解約 の要求を満たすために、株式資本を変動させる柔軟性 を加えた形で設立することが可能になります。 法案の下では、証券先物取引委員会(以下「SFC」)が、 SFCライセンスを保有する投資マネージャー(OFCの取 締役は必ずしもSFCライセンスを要求されていません。) 選任の要件等、投資範囲や企業統治を含んだOFCの 全範囲を規制することになります。 CTCには、香港の基準税率(16.5%または8.25%)を下回 らない税率で海外関係会社が税金を支払った、または 支払われる予定であることを証明するために、CTCの 要件に関して、手間がかかるデュー・デリジェンスを要 求される可能性もあります。 2 Hong Kong 2016-17 Budget insights 税務上の問題において、特定の印紙税条例の改正を 除いては、法令案は香港でOFCの所得税免除に関する 規定を含んでいません。そのようなことから、OFCの所 得税が免除されるかは、香港に存在するファンドの既 存の所得税の免除要件を満たしているかによって判断 されます。 既存の税法の下では、OFCがSFCまたは海外の同等 の規制当局の下、香港で民間に販売することを認可さ れたファンドを設立した場合は、香港の居住者であるか ないかにかかわらず、香港の所得税が免除されていま す。 しかしながら、OFCが認可ファンドでない場合には、非 香港居住者ファンドである、すなわち中心的な管理や 統制機能が香港外で行われている場合のみ、所得税 が免除される可能性があります。 SFCによって規制されたOFCを奨励するために、香港 政府は、認可されていない居住者ファンドに対する法律 の下で設立されたOFCに対して、香港の所得税から免 除する別の法令、つまり、香港居住者であるOFCに対 する新しい所得税免除の法令の制定を検討しています。 しかしながら、SFCにより規制されるOFCを奨励するス キーム以外にも、曾俊華財政長官はアセット・マネージ メント産業を奨励する全般的な利益に関して、香港はシ ンガポールと同様、居住者としてのユニット・トラストまた はリミテッド・パートナーシップ・ファンドを含む全てのタ イプの居住者であるファンドに対して、新しい所得税免 税法を与えるべきであるかを検討する必要があるかも しれません。 主要な予算案作成上の仮定、予測及び基準 2016/17年度から2020/21年度の中期予測(MRF)における仮定 ► 予測期間の実質GDP成長率は、2016 年度で1% から2% 、 2017 年から2020年の成長率の趨勢は3% ► 投資利益率は2016年度において3.3% 、その後は年間2.6%から3.5%の範囲と仮定 ► 2017/18年度以降の土地売却収入はGDPの2.7%と仮定 ► 2020年3月31日時点の財政準備金の予測残高は9,488億香港ドルだったがこれを8,327億香港ドルに修正、これは当該年度の GDPの29.4%に相当する。2021年3月31日までに財政準備金残高は8,354億香港ドルに達し、これは当該年度のGDPの28.3%に相 当すると見積もられている 予算案作成基準 ► 予算収支 総合収支と一般収支の均衡を維持、長期的には一般会計の剰余金を部分的に財政資本支出の財源に充当 ► 歳出方針 公共支出をGDPの20%以下に維持 ► 財政準備金 長期的に適切な準備金を維持 年度 中期予測と財政準備金(単位:10億香港ドル) 2015/16 2016/17 2017/18 2018/19 (改訂後) 2019/20 2020/21 一般会計歳入 387.6 398.2 426.6 435.9 451.4 472.1 一般会計歳出 (339.3) (376.8) (384.1) (430.9) (428.5) (426.9) 一般会計収支 48.3 21.4 42.5 5.0 22.9 45.2 資本会計歳入 69.9 100.1 79.5 83.8 87.4 90.5 資本会計歳出 (87.7) (110.1) (108.2) (117.8) (131.3) (133.0) - - - - (1.5) - (17.8) (10.0) (28.7) (34.0) (45.4) (42.5) 30.5 11.4 13.8 (29.0) (22.5) 2.7 859.0 870.4 884.2 855.2 832.7 835.4 政庁債及び証券の返済 政庁債返済後の資本会計収支 総合収支 3月31日時点の財政準備金 情報源: 香港政府財政予算 2016/17年度より Hong Kong 2016-17 Budget insights 3 Hong Kong office Agnes Chan, Managing Partner, Hong Kong & Macau 22/F, CITIC Tower, 1 Tim Mei Avenue, Central, Hong Kong Tel: +852 2846 9888 / Fax: +852 2868 4432 Head of Tax, Ernst & Young Tax Services Limited Tracy Ho +852 2846 9065 tracy.ho@hk.ey.com Business Tax Services Agnes Chan +852 2846 9921 agnes.chan@hk.ey.com Ivan Chan +852 2629 3828 ivan.chan@hk.ey.com Joe Chan +852 2629 3092 joe-ch.chan@hk.ey.com Owen Chan +852 2629 3388 owen.chan@hk.ey.com Wilson Cheng +852 2846 9066 wilson.cheng@hk.ey.com Lorraine Cheung +852 2849 9356 lorraine.cheung@hk.ey.com Brian Foley +852 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