派遣事業 - 貿易研修センター

平成22年度
貿易・投資円滑化等経済交流促進補助事業
「派 遣 事 業 」
実施報告書
財団法人
貿易研修センター
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp
はじめに
(財)貿易研修センターは、対日理解の増進を通じて円滑な対外経済関係の推
進・発展に資するため、海外の有識者の招聘、海外への有識者のミッション派遣、
国際シンポジウムの開催等、各種国際交流事業あるいは人材育成事業を実施して
おります。
その一環として、平成22年度は、「タイ・インドでのエコカー輸出拠点進出へ
向けた交流及び技術融合事業」と「ベトナム・カンボジア現地調査ミッション」
の2つの派遣事業を実施いたしました。
これらの事業遂行に当り、ご協力いただきました皆様方に深謝申し上げるとと
もに、両派遣事業が国際経済協力の橋渡しとなり、経済交流発展の一助となるこ
とを切に願っております。
平成23年3月
財団法人
貿易研修センター
Ⅰ.タイ・インドでのエコカー輸出拠点進出へ向けた
交流及び技術融合事業
■事業概要
中国地域の自動車サプライヤーのアジア巨大市場でのビジネス展開推進を目的
として、インド・タイにおける事業展開の在り方を検討するため、自動車関連産
業、大学、自治体、産業支援機関で構成する調査団を派遣し、エコカーの輸出拠
点拡大へ向けた施策の状況、自動車関連企業の動向、部品調達の実態、低コスト
化、環境対応等について現地調査を行った。同時に、技術者相互の意見交換を行
い、ビジネス創出の契機となる海外事業展開のネットワーク拠点の構築を狙った。
また、タイでは、自動車クラスター交流フォーラムを開催し、日本側から、日
本の自動車を巡る事業環境や中国地域の自動車産業に係る取組みについて説明し、
続いて、タイ政府及び自動車関連企業におけるエコカー施策を含めた自動車を巡
る事業環境及びその現況について、意見交換した。
さらに、広島県では、本調査団派遣と同時期に、インド・チェンナイにて、ビ
ジネスマッチングセミナーなどを実施していたことから、当該事業と一部連携し
て調査及び交流を実施した。
■事業参加者
競輪の補助金を受けて派遣した技術専門家3名を筆頭に、政府関係機関(産業
支援機関も含む。)、大学、自動車産業関係企業からの自費参加者も加え、合計
16名で構成。
(敬称略)
氏名
【団長】
産業支援機関
岩城
技術専門家
(コストダウン・カーエレ)
【副団長】
技術専門家
保田
(樹脂モジュール)
技術専門家
立澤
(部品流通)
所属
富士大
(公財)ひろしま産業振興機構
カーエレクトロニクス推進センター
センター長
敏史
ダイキョーニシカワ(株)
開発本部第3設計部 部長
昌男
元
産業支援機関
難波
徳郎
産業支援機関
池田
修
大学研究者
伊藤
洋
ビステオンアジアパシフィック研究所
(公財)ひろしま産業振興機構
カーエレクトロニクス推進センター
コーディネーター
(公財)ひろしま産業振興機構
中小企業・ベンチャー総合支援センター
研究開発推進担当 参事
東京大学 大学院 経済学研究科
ものづくり経営研究センター
特任研究員
1
澤建
東京大学 大学院 経済学研究科
ものづくり経営研究センター
特任教授・経済学博士
東北学院大学
経営学部 准教授
大学研究者
李
大学研究者
目代
武史
大学研究者
古川
澄明
山口大学
経済学部
金融機関
廣江
裕治
(株)広島銀行
法人営業部 シニア・マネージャー
自動車メーカー
鳥居
元
マツダ(株)
経営企画部 主幹
部品メーカー
山本
優
(株)シギヤ精機製作所
取締役
部品メーカー
藤阪
敏夫
国家行政機関
(事務局)
弥益
慎吾
シンクタンク
(事務局)
弓場
隆宏
産業支援機関
(事務局)
播磨
秀一
教授
(株)シギヤ精機製作所
営業部貿易課・課長
中国経済産業局
地域経済部
産学官連携・産業クラスター担当推進2係長
(財)ひろぎん経済研究所
経済調査部 主任研究員
(財)貿易研修センター
国際交流部 職員
■派遣専門家
以下の3名の技術専門家派遣について支援した。
岩城 富士大 氏
専門分野:コストダウン/カーエレクトロニクス
ひろしま産業振興機構カーエレクトロニクス推進センター センター長(平成20
年~)
平成17年まで、マツダ株式会社においてカーエレクトロニクスの開発分野な
どで25年の経歴。特に音響工学、アンテナ、GPSナビゲーション、ワイヤ
ーハーネス、圧着技術の分野で有名。特許登録実績8件、実用新案も4件所有。
価低減技術開発(VA/VE)や自動車のモジュール化、統合型ものづくり研
究にも15年間従事。平成18年、東京大学大学院経済研究科ものづくり経営
研究センター特任研究員兼務(平成20年3月まで)。広島市立大学大学院国際
学研究科非常勤講師兼務(現在まで)。カーエレクトロニクス分野の経験なども
踏まえ、今回のミッションの技術専門家として、団長の任を担っていただいた。
2
保田 敏史 氏
専門分野:樹脂モジュール
ダイキョーニシカワ(株)開発本部第3設計部部長
長年、内装・インパネ関連部品等、樹脂モジュールの設計・開発に従事。本ミ
ッションでは進出を目指す部品メーカーの開発責任者(サプライヤー)の視点
から、助言、また、副団長の任を担っていただくとともに、現地の技術水準の
評価から部品の低コスト化などに着目いただいた。
立澤 昌男 氏
専門分野:部品流通
元
ビステオンアジアパシフィック研究所
フォード・日産・東洋工業の合弁企業、日本自動変速機(現JATCO)、東洋
工業(現マツダ)、フォード自動車(日本)、ビステオンアジアパシフィックな
どで部品流通にかかる業務に長年従事。現地通訳でカバーしきれない技術的な
解説などでも活躍いただくとともに、部品流通、サプライチェーンに着目いた
だいた。
■実施期間及び日程
2010年11月7日(日)~2010年11月17日(水)(9泊11日)
11月7日
(日)
11月8日
(月)
日本発→チェンナイ着
(チェンナイ泊)
(1) NSK-ABC ベアリングス社
(日本精工関連)
(2) タタ コンサルタンシー サービシズ
ェンナイ事業所
チェンナイ近郊
チ
チェンナイ
(チェンナイ泊)
11月9日
(火)
(3) ヤザキ ワ イヤリ ング テク ノロ ジーズ
インディア(矢崎総業関連)
(4) ルノー日産アライアンス チェンナイ工場
11月10日 (5) タタ モーターズ プネ工場
(水)
11月11日 (6) 在インド日本大使館
(木)
11月12日
(金)
(7) マルチ
スズキ
(8) ジェイ
バラット
グルガオン工場
マルチ
3
チェンナイ近郊
チェンナイ近郊
(チェンナイ泊)
プネ
(プネ泊)
ニューデリー
(ニューデリー泊)
ニューデリー近郊
グルガオン
ニューデリー近郊
グルガオン
(9) デンソー
ハリヤナ
グルガオン工場
11月13日 ニューデリー→バンコク移動
(土)
11月14日 情報整理等
(日)
(10) タイ工業省 産業振興局
11月15日 (11) 自動車クラスター交流フォーラム(タイ・
(月)
中国地域)
ニューデリー近郊
グルガオン
(ニューデリー泊)
(バンコク泊)
(バンコク泊)
バンコク
サムット・プラカーン
(バンコク泊)
11月16日
(火)
11月17日
(水)
(12) オート アライアンス タイランド
(マツダ・フォードの合弁生産会社)
ラヨーン県
(13) ダイキョーニシカワ
ラヨーン県
タイランド
帰国
4
■インド・タイ訪問先
(10)タイ工業省産業振興局
(11)自動車クラスター 交流フォーラム(会場)
バンコク
(6)在インド日本大使館
(7)マルチスズキ グルガオン工場
(12)オートアライアンス タイランド(AAT)
(8)ジェイ バラット マルチ社
(13)ダイキョーニシカワ タイランド
(9)デンソー ハリヤナ グルガオン工場
( 5 ) タタ モ ータ ーズ プネ 工
場
(1)NSK-ABC ベアリングス社
(2)タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)
(3)ヤザキ ワイヤリング テクノロジーズ インディア
(4)ルノー日産アライアンス チェンナイ工場
5
■調査報告
訪問先(1)
NSK-ABCベアリングス社
①日
時: 11月8日(月)9:30~12:00
②場
所: Plot No. A2, SIPCOT Oragadam Growth Centre, Mathur Village,
Sriperumbudur-602 105, Tamil Nadu(インド タミルナドゥ州 チェンナイ)
③応接者: Managing Director:松田
Headquarter):松本
正俊、General Manager(Nsk Ltd. Indian
保
訪問記録(概要):

インドのABCグループとのジョイントベンチャー企業で、主に自動車用の軸
受けを製造。

創業開始は08年。当オラガダム工業団地には、日本企業ではコマツが最も早
く進出しており、当社の進出は2番目。

当工業団地には、日産のチェンナイ工場も進出。三菱ふそうやブリジストンも
入居する予定で、すでに全ての区画が埋まっている。工業系の学校も入居する
と聞いており、自動車産業を中心とした一大工業団地になるだろう。

インドは電力事情が不安定なので自家発電を行っており、1日4時間の計画停
電を行っている。

インドでも設計までできるようにしたいが、現時点ではできないし、できるよ
うになるにはまだまだ時間がかかる。

米国、欧州ではテクノロジーセンターのトップは現地の人間になっているが、
インドではまだ難しいだろう。

インド人は一般的に、カタチ・製品を作
り出すのは比較的得意であるが、その後
のメンテナンス・サービスなどが得意で
ない。そうした部分はまだ日本人などが
フォローしていく必要がある。

鍛造品の品質は日本と同じレベルにはな
い。材料の割れがないかどうかなどは全
数チェックしている。

一般的に日本メーカーは、地場で必要と
される設計レベルにあわせて仕様を変え
ていくのが不得意である。インドではA
BSはいらないという車が多いが、AB
Sを搭載していない車を設計しなおすと
なると、今となってはなかなか難しい。

インドでは、アセンブリーさえ現地です
れば、現地調達製品として認められる。

1ルピー=2円程度でインドと日本の価
6
格競争力はほぼ同じという印象。インドの生産コストは決して安くない。

インド人はコスト意識が高く、純正パーツは高いということで、アフターマー
ケットが拡大している。ただ、補修などを収益源とする日本のディーラーのよ
うな事業スタイルでは、なかなか儲けるのは難しいかもしれない。

日本でいう多能工というレベルにまで人材を教育していくのはなかなか難しい。
訪問先(2)
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)
①日
時: 11月8日(月)15:30~18:30
②場
所: 415/21-24, Kumaran Nagar, Sholinganallur Old Mahabalipuram, Chennai
600 119(インド
タミルナドゥ州
チェンナイ)
③応接者: Head Program Management(Automotive Vertical Engineering & Industrial
services):Sudhir Nagaraju, Embedded Systems:Ramanathan Annamalai
訪問記録(概要):

タタグループのIT関連サービス企業。
TCSは、1968年にR&D業務に参
入、CMMiでは最高位のレベル5を取
得できるレベル。

自動車関連での取引先は、GM、クライ
スラー、フォード、日産、フェラーリ、
ホンダ、ボッシュ、ジャトコなど。

自動車の開発全体をサポートできる機能
を有している。

具体的な製品やソフトウェアだけでなく、
戦略もアウトプットして出していくこと
ができる。例えば、エンジンマネジメン
トの方法や、どのようなモジュールを開
発していくかという方針などがアウトプ
ットになる。

仕事を受けたメーカーごとに専門チーム
を結成し、社員同士でも交流が全くでき
ないようにするので、当社を通じて他社
に情報が漏れるようなことはない。タタ
モーターズからも仕事を受けているが、
異なる会社であり、同様である。

ボーイング社とは13年も協業している。
チェンナイとムンバイの2か所に専用の
開発拠点を置いており、450人のエン
ジニアが働いている。
7
【専門家の所見】

日産自動車との共同開発は以前より聞いていたが、ステップを踏んで日産開
発プロセスを理解して、開発の片腕になるべく努力している姿を肌で感じた。
タタとの共同開発とあわせて将来の強敵が育ちつつある。
訪問先(3)
ヤザキ
ワイヤリング
テクノロジーズ
インディア
①日
時: 11月9日(火)9:30~12:00
②場
所: D-7, Industorial Estate, Maraimalai Nagar-603 209, Tamil Nadu (インド
タミルナドゥ州
チェンナイ)
③応接者: General Manager Sales & Operations Support :V.Sumanth, General
Manager-Engineering:Deepa Dinesh、タタ矢崎オートコンプ Senior
Advisor:中島
ト
製品企画部
知博、矢崎部品
部長
真壁
自動車機器マツダビジネスユニッ
徹
訪問記録(概要):
・
もともと当工場は、シーメンスの工場であ
った。矢崎シーメンスとして矢崎総業が運
営に参画したのち、現在では矢崎の工場と
なっている。
・
ワイヤーハーネスを製造。また、R&Dセ
ンターやコンポーネントの製造センター
も有している。
・
納入先はフォードが中心である。フォード
の小型車i-conなどにハーネスが搭
載されている。
・
インドには28の州があるが、当社が立地
するタミルナドゥ州は人口6,000万人
で、識字率が73%と比較的高い。近年は
外資による投資が非常に増えている。
・
インド自動車産業は、1991年から年平
均17%のペースで拡大してきた。インド
政府は、「Auto mission plan2000-2016」を
打ち出しており、自動車産業の研究開発活動などをサポートしている。インドで
は若い人口層が多いので、まだ市場拡大は続く。
・
タミルナドゥ州では、チェンナイが自動車産業のハブ地域となりつつある。もと
もとフォードが進出していたほか、ヒュンダイやルノー日産の新工場などが立地
している。
8
【専門家の所見】
・
ワイヤーハーネスは労働集約型の製品で
総材料費に占める構成比が1/3から1
/4と高く、かつ部品を持ち込み、教育
を徹底すれば、途上国でも生産可能なこ
とから、自動車メーカーの進出時真っ先
に現地生産を求められる製品である。一
方、一歩間違えると電気火災に直結しリ
コールの可能性の高い、非常にセンシテ
ィブな部品でもあり世界的に見てもTier-1は10社に満たない部品である。
・
今回訪問した矢崎ワイヤリングテクノロジーズインディア社は矢崎グループで
も異質で、矢崎本社直轄ではなく2001年3月独シーメンスとの合併でインド
を含む6か国のW/H工場の親会社 YAZAKI Wiring Technologies 株の75%を獲
得し、2004年4月100%した会社で日本人の常駐はいない。しかし工場の
オペレーションはさすが矢崎であり、30年ほど前に圧着問題で日本中のハーネ
ス会社の圧着定数を変更したが、今回の調査で、はるか離れたインドの地で重要
管理ポイントとしてキチンと守られていたのには、当たり前ではあるが感激であ
った。
訪問先(4)
ルノー日産アライアンス
チェンナイ(オラガダム)工場
①日
時: 11月9日(火)14:00~16:00
②場
所: Plot No.A1, SIPCOT Industrial Park, Oragadam, Mathur (PO), Oragadam
Village, Kancheepuram, District, Tamil Nadu-602 105(インド
ドゥ州
タミルナ
チェンナイ)
③応接者: CEO & Managing Director:櫻井
亮(Akira SAKURAI)、Senior Vice
President : Kou KIMURA, Vice President Production Engineering :
Yoshinori KARATSU
訪問記録(概要):
・
当工場はルノー日産グループで初めての
アライアンス工場。工場周辺にはサプライ
ヤーパークを整備している。
・
インドでの自動車需要は右肩上がり。当工
場は稼働して5か月だが、すでに次期増強
計画を検討。
・
オペレーターの能力は高く、中国と同等あ
るいはそれ以上のポテンシャルを持って
いる地域だと考えている。
・
価格ベースで、部品の85%は現地調達。ただし、欧州輸出用のタイヤなどは、
9
インド国内メーカー製のものだと欧州基
準に適合しないので、日本製のタイヤを輸
入している。
・
サプライヤー数は96社に上るが、これを
指導するために日本から人を呼んで、強力
に支援を行っている。サプライヤーの指導
が、インドでの工場運営で一番難しいとこ
ろだと感じている。
・
内外装モジュールはサプライヤーから供
給を受けている。ただし、モジュールにつ
いては、純粋な現地メーカーからの調達は
まだ難しい。
・
基本的に、インド現地のサプライヤーはま
だ日系メーカーの生産対応に慣れていな
い。設計変更なども多く、普通にやってい
ると納期遅れが避けられない。サプライヤ
ーにはかなり深くまで入り込んで指導を
行っている。
・
トレーニングセンターでは、日本ではやらないような基本的な作業から徹底的に
教えている。例えばインド人は左手は不浄な手としてあまり使いたがらないので、
両手でしっかりねじを締めるというようなことから教えていかないといけない。
・
労務費については、インドは競争力がある。役職等によって賃金の幅はあるが、
1時間200円もかからないという水準。
・
チェンナイ(タミルナドゥ州)は産業の集積が途上で、人材も枯渇していないの
が大きな利点である。また、政府も自動車産業育成に積極的である。また、北部
都市に比べてテロなどの危険性が低いのも魅力だと考えている。ただ、デリーな
どに比べて国際的なビジネスには不慣れであるという弱点も指摘できる。
【専門家の所見】
・
最新鋭工場であり30人もの訪問団ゆえ、工場見学は僅か30分に制限され、最
終組み立てラインの中央部分のみを見学させていただいた。
・
人件費の安いインドでのオペレーションを意識して、ロボット化を最小限にした
生産方式ではあるが、ロビーに飾られていたマイクラ(日本名マーチ)の品質レ
ベルは、タイ生産で日本に逆輸入されているマーチに遜色ないどころか、むしろ
上であった。これは同行したマツダの生産技術マネージャーも同意見であり、日
本品質の実現にかけて努力されている桜井社長以下のメンバーの努力の賜物で
あろう。日産グループでは新型車の量産は各工場のコンペで決定されるとのこと
で、日本の工場にも侮れない敵が出てきたものである。
10
訪問先(5)
タタ
モーターズ
プネ工場
①日
時: 11月10日(水)13:30~16:45
②場
所: Pimpri and Chikhali , Pune - 411018, Maharashtra (インド
トラ州
プネ)
③応接者: Administration Dept., GM Mr. Col N H Gracias
訪問記録(概要):
・
タタグループには100社程度の企業が
あり、グループの22社は上場している。
・
タタ社は企業市民として社会に奉仕する
ことを大きな役割として考えている。
・
会長であるラタン・タタは、タタ社を世界
3位の自動車メーカーにするという目標
を公言している。
・
プネ工場は最新設備を有している工場で、
研究機関も有している。
・
エレクトロニクス分野では、開発者の5
0%が女性になっている。
・
R&Dセンターは、基本的にインド国内市
場向けの自動車が対象であり、買収したジ
ャガー、ランドローバーの開発は成果は共
有しているが、それぞれが行っている。
・
ハイブリッドや電気自動車に関連する研
究もプネで行っている。バイオディーゼル
などは、インドの国営エネルギー企業など
と共同して開発している。
・
離職率は3~5%程度で、業界では最も良
い水準だと自負。就職して3~5年以内の
離職が多い。
・
大学との共同研究などはインド工科大学
との人事交流や資金支援などは行ってい
るが、特に行っていない。
・
部品の海外調達は行っていない。地域の
当社独自のサプライヤーのほか、いわゆ
る多国籍大手企業とも取引しているが、
海外から輸入することはない。
・
ナノはすでに市場に5万台は供給されて
いる。現在、予約から納品まで3か月待ち
という状況である。
・
工場内には約1週間分の在庫を置いてい
11
マハラシュ
る。現在、ストックヤードが一杯になって
おり、敶地内のあちこちに完成車を置いて
いる。
・
タイの工場ではエコカー政策を活用して
いない。進出目的は主にピックアップトラ
ックの生産であったためである。
【専門家の所見】
・
本社工場の2ラインを見学した。特に先日
までナノを生産していたラインは、それまでベンツ組み立て用のラインとして新
設され10年間生産してきて、ベンツの工場が出来てタタ車の組み立てに転じ、
コルカタの農民紛争でナノの新ラインが稼働できなかったとき、応急的に生産を
担当したラインであった。あいにく休憩時間でラインは動いていなかったものの
高品質なラインの様相であった。グジャラートにあるナノ専用新ラインの調査が
待たれる。
訪問先(6)
在インド日本大使館
①日
時: 11月11日(木)16:00~18:00
②場
所: 50-G, Chanakyapurino, New Delhi 110021(インド
ニューデリー)
③応接者: 経 済 公 使 ( Minister Economic & Development) : 竹 若
Takewaka)、一等書記官(First Secretary):磯野
敬 三 ( Keizo
聡(Satoshi ISONO)
訪問記録(概要):
・
インドの面積は欧州全体とほぼ同じで、とにかく大きい国である。こうした大国
に日本人は4,000人もおらず、プレゼンスは非常に小さいのが現実である。
・
インドは2040年まで現在とほぼ同じ人口構成で推移し、今後30年にわたっ
て若い労働力の供給が期待できる。
・
インドの経済は内需だけで十分やっていけるということも特徴といえる。外需に
頼っていないということは強みであるが、まだ水準としては1人当たりGDPが
4ケタ(1,000ドル)にまで達していない。
・
インドのGDP構成はサービス業が60%、農業が15%、製造業が15%とい
う構成であり、製造業の構成比は中国の40%、日本の20%と比べて小さい。
・
インドの政策はとにかく農業が優先される。政府の重要課題として、1.農業の
活性化、2.雇用の拡大、3.貧困層への対応、4.製造業の強化と続いている。
・
インドの貿易は5,000億ドル程度で、非常に小さい規模である。また、貿易
するほど赤字が増えるという傾向にある。
・
こうした課題を踏まえて、IT人材を輸出して稼ぐという戦略を国としてとっている。
・
インドは、デリー、ムンバイ間の産業大動脈構想という大胆なプロジェクトを日
本に任せてくれている。地下鉄なども日本のシステムを導入しており、日本に対
12
する親近感は今後も高まってくると考えてよい。
・
日本・インド双方ともに、EPAを結んだ国として最もGDPが大きい国である。
特に製造業は、横綱を相手にEPAを結べたという機会を活かしていくべき。
・
インドの投資環境は依然厳しい。インフラが整っていないので、ゼロから事業を
始めないといけない場合が多い。
・
インドでは小型車に対する嗜好が強い。また、タフな商品がインド市場には向い
ている。
・
インド人は価格コンシャスであり、メンタリティとしてとにかく低価格のものを
求める傾向がある。価格戦略は非常に重要である。
訪問先(7)
マルチスズキ
グルガオン工場
①日
時: 11月12日(金)10:00~11:30
②場
所: Palam Gurgaon Road, Gurgaon-122 015(Haryana)(インド
州
ハリヤナ
グルガオン)
③応接者: 取 締 役
常 務 執 行 役 員 ( 生 産 担 当 )、 Board Member & Managing
Executive Officer(Production):大橋
(人事)Advisor-HR:小島
恒雄(Tsuneo OHASHI)、顧問
洋一(Yoichi KOJIMA)、執行役員(サプ
ライチェーン)Executive Officer(Supply Chain):Kazuhiko AYABE
訪問記録(概要):
・
サービス網の厚さが客の信頼を得て、現在
インドでの乗用車市場に占めるシェアは
45%。しかし、主力であるアルト、スイ
フト等の小型車クラスに大手自動車メー
カーがどんどん新車を投入してきており、
競合は激化している。
・
自動車の設計は日本のスズキが行ってい
る。
・
現状のインドではクルマ全体を設計する
ような実力はない。まずは車体上部のデザ
インでもやれないかと考え、教育を行って
いる。
・
現地調達率は90~95%程度。強化ボル
トやECUなどはどうしても輸入となる。
・
鋼板は日本・韓国からも仕入れているが、
インドでの調達が6割。
・
プレス工程では、まだトランスファープレ
スの投資は行っていない。マネサール工場
もタンデムプレスになっている。
13
・
工場運営は日本のスズキと同様で、まず安
全、次に品質、コストという物差しで考え
ている。
・
溶接工程の自動化率は50%程度になっ
ている。
・
まだ工場全体としては人手に頼っている
ような部分が多いが、自動化も積極的に行
っている。
【専門家の所見】
・
40年近い長いオペレーションで日本人スタッフとインド人スタッフとで組み
上げられたチームワークには見るべきものがあり、品質と効率の良いバランスを
取っている感がある。現場の品質管理担当マネージャーにプレゼンテーションの
チャンスを与えて、エンカレッジしていく人材育成に感銘した。
訪問先(8)
ジェイ
バラット
マルチ社
①日
時: 11月12日(金)11:45~13:30
②場
所: Plot No.5, MSIL Joint Venture Complex, Gurgaon-122 015(Haryana)
(イ
ンド
ハリヤナ州
グルガオン)
③応接者: President(BG-I):Jai Veer Jain
訪問記録(概要):
・
マルチスズキのサプライヤーの中でもっ
とも大きなジョイントベンチャー。
・
JBMグループには25の工場がある。グ
ループ売上は7.3億ドルに達している。
当グループはデザインからエネルギーま
で広い分野を事業範囲としている。
・
ジェイバラットマルチは、マルチスズキ専
用の部品を製造。
・
人材育成は大きな課題である。特にホワイトカラー層のリーダーシップが問題と
なっており、採用後もしっかりしたトレーニングを行っている。
・
専門学校を卒業してエンジニアになった人材などは、自ら研修を受講してレベル
アップを図っている。
・
インドの自動車市場は成長が続くと考えている。インド経済は海外市場に頼って
おらず、世界的な不景気にもあまり影響されない。
・
人口が多くて国内需要が大きいので、成長余地も大きい。
・
若者がどんどんお金を稼げるようになっている。土地政策から農民が急に金を持
つこともあり、自動車に対する需要は拡大している。
14
訪問先(9)
デンソー
ハリヤナ
グルガオン工場
①日
時: 11月12日(金)14:30~16:30
②場
所:
Plot No.3, Sector-3, IMT, Manesar, Gurgaon-122 050(Haryana)(インド
ハリヤナ州
グルガオン)
③応接者: Managing Director:内藤
秀人(Hideto NAITO)、Denso Sales India Pvt.
Ltd. Managing Director:梶田
宜孝(Yoshitaka KAJITA)、Denso Sales
India Pvt. Ltd. Dy. Managing Director : 森 川
伸 之 ( Nobuyuki
MORIKAWA)
訪問記録(概要):
・
自動車のエンジン制御関連機器を製造。
・
デンソーは85年からインドで活動を始
めており、インドで25年以上の歴史を持
っている。
・
日本で製造している製品はほぼすべてイ
ンドでも製造している。ハイブリッド関
連・衝突安全などは生産していないが、1
国でこれだけの製品群を手掛けられる国
はデンソーの中では珍しい。
・
自動車メーカーは現地調達を進めている
ので、これに対応するためにもインドでの
展開を強化している。
・
ワーカーの給料はタイと同じくらいの水
準で、インドネシアよりは高い。インドが
ローコストカントリーとは決して言えな
い。
・
インドでの経験は長く、労務問題なども一
通り経験している。いろんな経験をしなが
ら、苦労しながら運営しているというのが
現実。
・
インドでは、組合活動が盛んであり、階級
意識も非常に複雑である。
・
インドには先進国並みの品質を実現でき
るサプライヤーはいないと考えていた方
が良い。基本に立ち返ってサプライヤーの
指導などを行っている。
・
インドでは、品質を調査するより、まずは自己実現意欲があり、お金を持ってい
る企業を探していくことが必要。
・
インドでもサプライヤーの競争が非常に激しくなっており、これから作って儲か
るような部品に対する需要は限られるように思う。自動車メーカーは成長して儲
15
かっているが、部品メーカーには難しい市場になっている。
・
インドだからと言って品質を落とすことはできない。ただ、仕様を変えて、機能
を割り切った製品を提供していくという発想は必要であろう。
・
インドの部品はかなり安いが、その実力には懐疑的。ホーンなどはほぼ日本の半
値であるが、コピーして作るだけなら簡単で、安くもできるのは当たり前。イン
ドの企業が先の技術開発に取り組んでいるかというと、できていない企業が多い。
【専門家の所見】
・
3年前にも訪問し非常に感心した工場であり、他のメンバーに有益な情報が入手
できるとして再度訪問した工場であるが、前回とは首脳陣が一新され雰囲気が
尐々変わっていた。
・
よく言えばますます現地化されている感じであり、とことん日本品質で押すので
はなく、現地に融和しつつデンソーウェイを貫く感じで、これもインド化であろ
うと感じた。
訪問先(10) タイ工業省
工業振興局等
①日
時: 11月15日(月)9:00~12:00
②場
所: Soi Treemitr, Rama 4 Rd., Klongtoey, Bangkok 10110(タイ
バンコク)
③応接者: Development of Industrial Promotion Director-General:Arthit Wuthikaro,
Bureau of Supporting Industries Development Director : Wuttichai
Pracharpon 他20名程度
訪問記録(概要):
・
タイ工業省の表敬訪問を実施。
・
日本側から、インド・タイへ調査団派遣の
目的や日本の自動車を巡る事業環境及び
中国地域における自動車産業に係る取組
みについて説明し、タイ側からは、タイ工
業省工業振興局、タイ投資委会, Thailand
Automotive Institute などから、それぞれの
組織の取り組みなどについて、プレゼンテ
ーションがなされ、日本(中国地域)の自
動車産業とタイの自動車産業に係る情報
交換を行った。
・
タイ工業省 Arthit Wuthikaro 氏より、
「タイ
と日本は、民間も政府もよい関係を保って
いると認識している。産業では、電機・自
動車の進出が目立っている。タイの自動車
産業は生産台数が100万台を超えた。日
16
本の政府とも密接に情報交換を行い、自動
車関連の中小企業支援策を学んでいる。今
後も自動車産業の支援に積極的に取り組
みたい。
」とのコメントがあった。
・
続いてタイ側から、エコカープロジェクト
の概要や進行状況について説明がなされた。
・
更に、エコカープロジェクトに加え、エコ
カー部品の生産サプライヤーや次世代自
動車(HEV/EV/燃料電池車)など自
動車生産に加えて部品生産へのインセン
ティブなど、タイ進出への優遇施策につい
て説明がなされた。
【専門家の所見】
・
エコカー戦略でいち早く欧州CO2、12
0グラム/kmを必須要件にするなど、環
境対策車でアジアの車づくりをリードし
たいとする気概が感じられた。次世代自動
車組み立てや、その構成部品への過大なインセンティブ付与などを見ても、アジ
アのデトロイト構想から、環境自動車立国へ転じたいという強い意志感じた。
・
2010年7月から開始された日産マーチの逆輸入以上のインパクトがタイか
ら起りそうな、国の意思、気概を感じた。
フォーラム開催(11)
中国地域・タイ自動車クラスター交流フォーラム
①日
時: 11月15日(月)14:00~18:00
②場
所: ノ ボ テ ル
バンナ
ホテル
バ ン コ ッ ク ( Hotel Novotel Bangna
Bangkok)333 Srinakarin Road Nongbon PRAVET 10250 BANGKOK
TAJLANDIA
【内容】
・
日本側の産学官、タイ側の産官との交流を
深めるため、タイのサムット・プラカーン
のホテル会場にて、「中国地域・タイ自動
車クラスター交流フォーラム」を実施した。
・
日本側から、日本の自動車を巡る事業環境
や中国地域の自動車産業に係る取組みに
ついて説明し、続いて、タイ政府及び自動
車関連企業とエコカープロジェクトなど
を含めた自動車を巡る事業環境及びその
17
現況について、意見交換を行った。タイ側
から、タイ政府関係者、タイ進出日系企業、
タイ現地企業など29名参加。
・
意見交換では、タイ側から、「タイの自動
車産業は、日本企業との取引も長く、自社
の技術・品質・コスト競争力には自信を持
っている。」、「タイでは、官民一体となっ
て、自動車産業を支援している。タイの工
業省、自動車研究所や投資委員会など、
様々な関連機関から支援も多い。」などの
コメントが寄せられた。
【専門家の所見】
・
タイ工業省産業振興局肝いりのイベント
でありAATの楠橋社長も参加されると
いうフォーラムで、予想以上の熱気あるイ
ベントとなった。現地部品サプライヤーも
熱心に参加いただき、交流に一定の成果が
あったものと考える。
・
タイはエコカー・インセンティブによって
5社が一斉に10万台以上の乗用車を量
産するという破天荒なプロジェクトの最
中にいて、部品メーカーの鼻息も荒い感じ
がした。いままで商用車で培った部品作り
の長い経験で、乗用車の希望に燃え自信を
持って取り組んでいる様子がうかがえた。
訪問先(12) オートアライアンス
タイランド(AAT)
①日
時: 11月16日(火)13:00~15:00
②場
所: Eastern Seaboard Industrial Estate (Rayong) 49 moo 4, Pluakdaeng
Rayong
21140 (タイ
③対応者: President : 楠 橋
President:向井
川崎
ラヨーン県)
敏 則 ( Toshinori KUSUHASHI )、 Executive Vice
武司(Takeshi MUKAI)、Chief Interface Engineer:
俊介(Shunsuke KAWASAKI)
訪問記録(概要):
・
フォードとマツダが50:50で出資し、マツダとフォードとAATのそれぞれ
のやり方をミックスして運営している。
18
・
タイ国内のサプライヤー、海外のサプライ
ヤー、ティア2などを含めると300社程
度と取引しており、インターナショナルな
ソーシングをしている。
・
乗用車の現地調達率は50%程度。
・
マツダのタイでのシェアは5%程度で、日
本のシェアと同程度。
・
輸出先は全世界の100か国以上にのぼ
っている。
・
マツダの防府工場のように、四角い工場ラ
インの真ん中に事務所を置くようなレイ
アウトとしている。
・
日本人は一般的な運用体制では20人程
度が駐在している。日本人がいなくても、
品質レベルはかなり技術伝承されている
ため維持できるだろう。
・
検査工程は主に女性が行っている。女性は
きめ細かくみるし、妥協しない。日本より
厳しい基準で検査ができている。
・
エコカープロジェクトによって、日系サプ
ライヤーも他系列から仕事をとれるチャ
ンスは増えているのではないか。地場企業
もしっかり力をつけてきており、日本で考
えるほど品質・コストなどに差はなくなっ
ている。
・
労務環境はトータルで考えていく必要が
ある。基本的に人が足りなくなってきているので、労務環境のレベルアップは重
要。
【専門家の所見】
・
日本がものづくりの領域で、どのように優位性を保つのか、国の基幹産業たる
自動車をこの先、どうしていくのか、様々に考えさせられた。
訪問先(13) ダイキョーニシカワ
タイランド
①日
時: 11月16日(火)16:00~17:30
②場
所: 500/1 moo 3, Tambol Tasit, Amphur Pluakdaeng, Rayong 21140(タイ
ラ
ヨーン県)
③対応者: Chairman (CEO):寺岡
田
哲伸(Tetsunobu TERAOKA),President:篠
茂治(Shigeharu SHINODA)
19
訪問記録(概要):
・
自動車用のプラスチックバンパー、インス
ツルメントパネル、ドアトリムなどを製造
している。
・
現在、マツダ向けが売り上げの86%を占
めている。
・
当地に進出した理由は、AATの近くとい
うこともあるが、比較的郊外で進出に対す
るタイ政府の優遇レベルが高かったこと
も大きい。
・
立地している団地には、2011年にフォ
ードが進出してくる予定。海の近くには三
菱自工も進出している。
・
プラスチック材料は、日系企業のタイ工場
から仕入れている。金型も日系のタイ工場
・
・
から購入している。
外観の品質については日本よりタイの方
がレベルが高いと思う。日本人では分か
らないレベルまでチェックをしっかり行
ってくれる。
取引先企業に純粋なローカル企業は数社
であるが、ローカル企業のレベルは上がっ
ており、安いうえに品質も良くなっている
ので、情報を積極的に集めるようにしてい
る。
・
タイでは、経理・総務の人材確保に特に苦
労するという印象がある。トヨタは、そう
した進出サプライヤーの意見を受けて、100人以下の規模の企業を団地に集め、
商事会社に一括して総務・経理を委託するような仕組みをつくっている。
・
エコカープロジェクトで自動車生産台数は一挙に増えるが、これはサプライヤー
にとってチャンスである一方、リスクも高いと感じている。
・
今は、チャンスの方が大きいことは間違いないが、スケールメリットを追求する
有力サプライヤーとの競争も激しくなるだろうから、将来的にはリスクも大きく
なるのではないか。
【専門家の所見】
・
昨年進出したばかりの新鋭工場で、国王夫妻の写真が飾られている玄関ロビー
に2000年頃から地域で開発した機能統合モジュールが飾られていた。優れ
た技術が地域を超えて広がっている姿を目の当たりにし、競争力のある技術を
開発していくことこそが、地域にとって競争力を確保し世界に打って出ること
20
ができることを証明していると感じた。
■成果・課題
① インドの自動車生産は、インド国内需要の予測される伸びと、生産・輸出拠点と
しての成長力の両面で、今後も更に加速して行くものと確認できた。インドでビ
ジネスを拡大していくためには、インドのニーズにあった商品(低価格、ホーン
や足回りなどのインド向け仕様)をタイムリーに開発していく必要がある。
② タイ政府は、環境に配慮した小型車を中心とした自動車の輸出拠点とするため、
エコカープロジェクトに加え、エコカー部品の生産サプライヤーや次世代自動車
(HEV/EV/燃料電池車)などの自動車生産に加えて、部品生産へのインセ
ンティブを新設していることを確認した。エコカーを皮切りに、次世代自動車の
生産及び部品供給基地として名乗りを上げたこととなり、日本での自動車産業海
外事業展開の在り方について、影響をもたらすものと考えられる。
③ AAT及び三菱自工も来年度以降増産を実施して行くことから、中国地域のサプ
ライヤーは、タイ進出の是非を検討する重要な時期となり、判断を間違えれば、
事業縮小を余儀なくされる一方で、事業拡大ができるチャンスでもある。
④ 中国地域のサプライヤーがインド・タイに進出するにあたっては、トヨタグルー
プの事例にあるように、進出先での人事・総務に関する業務支援を、進出企業共
同でケアーするような環境の構築・整備をすることや、海外進出に向けた人材育
成などが必要であろう。
⑤ 地域サプライヤーの海外での事業展開に係る競争力を強化するために、今後もイ
ンド・タイ市場の情報収集を継続して行うとともに、他のBRIC’S諸国(ロ
シア、南米等)の情報も収集し、地域のサプライヤーに対して、国内及び海外展
開のあり方について検討するための情報を引き続き提供して行く必要がある。今
回の調査により情報収集した結果を元に、自動車産業の関係者や広く域内外の多
方面の有識者が参集した検討会の場で中国地域自動車関連企業のインド・タイに
おける事業展開の在り方を更に検討し、中国地域企業へ情報発信する予定である。
21
Ⅱ.ベトナム・カンボジア現地調査ミッション
1.ミッション概要
■目的・背景
最近における東アジア諸国の経済進展に伴い、我が国とこれら国々との貿易や
投資などの経済活動は一層緊密化しており、今後ますます相互依存関係が進んで
いくものと考えられる。
なかでもカンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマー(CLMV)は、我が国
対外通商政策上、対ASEAN支援における重要地域とされている。同時に、こ
れら諸国から我が国に対しても、経済発展の基礎となる様々な分野で我が国が培
ってきた経験、ノウハウ、技術等について支援協力への期待は大きい。
このため当センターは、CLMV諸国の一層の経済発展と我が国との経済交流
促進に資するべく、平成18年度以降、これら諸国を対象に「日本との相互理解・
経済交流の促進」、
「エネルギー」、
「中小企業の育成と振興」、
「企業誘致」、あるい
は「メコン圏経済交流促進、ラオスSEZ政策後方支援」、「メコン圏中小企業事
情調査」、「中小企業育成、メコン圏企業誘致調査」というテーマで招聘、派遣事
業を実施してきた。
一方、CLMV諸国においては、とりわけ、産業の土台となる中小企業の育成
と振興が期待されているところ、その事業活動を支える上で中小企業向け金融制
度の確立が急務となっている。
そこで、ベトナム及びカンボジアの2か国に専門家を派遣し、日本の中小企業
金融システムについての両国の理解促進、ひいては中小企業金融制度の発展に資
するため、
「中小企業金融」に関するセミナーを開催した。あわせて、両国の中小
企業向け金融制度の現状と課題、今後の方策、我が国の中小企業進出の可能性等
の把握に努めた。さらには、平成22年度「CLMV若手有望指導者招聘事業」
参加の両国若手指導者へのフォローアップ調査を通じて、関係省庁や政府関係機
関等との交流の維持・拡大、協力関係の発展を図った。
■内容
(1)「中小企業金融セミナー」開催
(2)関係省庁、政府関係機関、日本の関係団体の現地事務所訪問
■参加者
専門家2名を含む下記4名が参加した。
(敬称略)
氏名
団
長
赤津
光一郎
所属
(財)貿易研修センター
専務理事
23
専門家
星野
達哉
専門家
相良
和孝
事務局
加藤
晴美
(独)中小企業基盤整備機構
国際化支援アドバイザー 兼
ベトナム経済研究所
研究理事
(株)日本政策金融公庫
国民生活事業本部 国際交流グループ
(財)貿易研修センター
企画調査広報部 部長補佐
調査役
■実施期間
2011年1月16日(日)~22日(土)(5泊7日)
■日程
1月16日
(日)
成田発→ハノイ着
(ハノイ泊)
セミナー開催(於:ホテルニッコー・ハノイ)
1月17日
(月)
ベトナム商工省 Bui Huy Son アジア太平洋市場局長表敬訪問
ベトナム商工会議所訪問
(ハノイ泊)
1月18日
(火)
ハノイ発→ホーチミン着
(ホーチミン泊)
セミナー開催(於:コンチネンタル・ホテル)
1月19日
(水)
ジェトロ・ホーチミン事務所訪問
(ホーチミン泊)
ホーチミン発→プノンペン着
1月20日
(木)
ジェトロ・プノンペン事務所訪問
カンボジア開発評議会表敬訪問
(プノンペン泊)
セミナー開催(於:ラッフルズホテル・ル・ロイヤル)
1月21日
(金)
カンボジア商業省 H.E. Em Sophoan 副長官表敬訪問
プノンペン発
(機中泊)
1月22日
(土)
成田着
24
2.セミナー概要
■講師紹介
ほしの
たつや
星野 達哉 氏
(独)中小企業基盤整備機構
ベトナム経済研究所
国際化支援アドバイザー
研究理事
1963年3月
同年4月
1969年8月~1976年6月
東京大学
法学部卒業
伊藤忠商事(株)入社
シドニー駐在(機械プラント担当)
。BHP向
けなど大型製鉄プラントや産業プラントで実
績
1976年7月~1982年3月
海外重工プラント課長代行や課長を歴任。ア
ルジェリア、リビア、ポーランド向けなど大
型プラントで実績
1982年4月~1984年3月
機械部門分掌の副社長付きで全機械・プラン
トの海外企画統括の業務
1984年4月~1991年3月
海外建設・海外不動産開発部長代行や部長を
歴任
アジア、大洋州、西欧で開発建設案件を推進。
シンガポール最高層 Republic Plaza ビル、バ
リの Grand Hyatt ホテル、ジャカルタのゴルフ
場、ジャカルタ・香港・バンコックのオフィス
ビル、バンコックの工業団地、ロンドン市内
金融街のオフィスビルなど開発・建設で実績
1991年10月~1995年10月
伊藤忠ナイジェリア会社社長(ナイジェリア
駐在)大型石油精製プラント、原油取引や車
両の取引が主体
1996年12月~1999年6月
都内第二地銀の顧問(伊藤忠から出向)
1999年9月
伊藤忠商事定年退職
伊藤忠商事に勤務した36年間で、海外駐在
11年、海外出張350回以上、海外訪問国
65か国以上。担当地域は、東南アジア17
年間、豪州・NZ8年間、欧阿7年間、米国
4年間。海外事業や海外プラント推進の責任
者として経験が深い。
2000年4月~2006年3月
中小企業基盤整備機構(旧中小企業事業団)
経営支援専門員(ベトナム担当)。年間150
社~200社に対してベトナム進出に関する
アドバイス。ベトナムへも同行出張
25
2006年4月~現在
中小企業基盤整備機構国際化支援アドバイザー
(ベトナム)
2006年4月~現在
数社の非常勤顧問(ベトナムなど海外案件顧問)
2007年7月~現在
ベトナム経済研究所
さが ら
研究理事
かずたか
相良 和 孝氏
(株)日本政策金融公庫
国民生活事業本部
事業管理部
国際交流グループ(調査役)
1996年3月
慶應義塾大学経済学部卒業
1996年4月
国民金融公庫(現日本政策金融公庫国民生活
事業)福岡支店
2000年9月
国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫国民
生活事業)千住支店
2003年5月
米国ジョージタウン大学に留学
2004年6月
国民生活金融公庫
人事部(リクルーティン
グを担当)
2006年4月
国民生活金融公庫
熱田支店
2009年4月
日本政策金融公庫
国民生活事業本部
事業
運営部(調査役、経営企画を担当)
2010年8月
日本政策金融公庫
管理部
国民生活事業本部
事業
国際交流グループ(調査役)
○専門分野
・小企業金融実務(融資審査及び債権管理)
・小企業金融分野における海外技術協力業務
■開催概要
(1)「中小企業金融セミナー」in ベトナム(ハノイ)
①日 時:2011年1月17日(月)8時30分~13時
②場 所:ハノイ(ホテルニッコー・ハノイ)
③主 催:(財)貿易研修センター
後 援:ベトナム商工会議所
④参加者:計画投資省、商工省、科学技術省、経済団体、中小企業支援団体、
銀行、中小企業等から計45名
⑤プログラム:
08:30~08:35
歓迎挨拶
赤津
光一郎
(財)貿易研修センター
26
専務理事
08:35~08:45
開会挨拶
Dr. Pham Thi Thu Hang
Director of SME Promotion Center and
Director of Enterprise Development Foundation
Vietnam Chamber of Commerce and Industry
(VCCI)
08:45~09:00
(財)貿易研修センター紹介(DVD放映)
09:00~10:00
講演:
「中小企業に対する金融について」
星野
達哉氏
(独)中小企業基盤整備機構
国際化支援アドバイザー
ベトナム経済研究所
10:15~11:15
研究理事
講演:
「日本の中小企業金融における政策金融の役割」
相良
和孝氏
(株)日本政策金融公庫
国民生活事業本部 国際交流グループ 調査役
11:15~11:50
質疑応答
11:50
閉会
12:00~13:00
意見交換(昼食)
<左上から時計回りに:赤津専務理事、Dr. Pham Thi Thu Hang、相良氏、星野氏>
27
<ハノイにおけるセミナーの模様>
(2)「中小企業金融セミナー」in ベトナム(ホーチミン)
①日 時:2011年1月19日(水)8時30分~13時
②場 所:ホーチミン(ホテルコンチネンタル・サイゴン)
③主 催:(財)貿易研修センター
後 援:ベトナム商工会議所
④参加者:ホーチミン市貿易産業局、中小企業支援団体、銀行、中小企業等か
ら計38名
⑤プログラム:
ハノイにおけるセミナーと同じ。ベトナム商工会議所ホーチミン事
務所を代表して下記の方に開会のご挨拶をいただいた。
Mr. Vo Tan Thanh
Vice Secretary General
Vietnam Chamber of Commerce and Industry
(VCCI)
<Mr. Vo Tan Thanh>
28
<ホーチミンにおけるセミナーの模様>
(3)「中小企業セミナー」in カンボジア
①日 時:2011年1月21日(金)9時~13時
②場 所:プノンペン(ラッフルズホテル・ル・ロイヤル)
③主 催:(財)貿易研修センター
後 援:カンボジア商業会議所
④参加者:経済財政省、商業省、開発評議会、中小企業支援団体、業界団体、
銀行、中小企業等から計33名
⑤プログラム:
09:00~09:05
歓迎 挨拶
赤津
光一郎
(財 )貿易研修 センター
09:05~09:10
専務理事
開会挨拶
H.E. Mr. Nguon Meng Tech
Director General
Cambodia Chamber of Commerce
09:10~09:25
(財)貿易研修センター紹介(DVD放映)
29
09:25~10:25
講演:
「中小企業に対する金融について」
星野
達哉氏
(独)中小企業基盤整備機構
国際化支援アドバイザー
ベトナム経済研究所
10:35~11:35
研究理事
講演:
「日本の中小企業金融における政策金融の役割」
相良
和孝氏
(株) 日本 政策金融公庫
国民生活事業本部 国際交流グループ 調査役
11:35~12:00
質疑応答
12:00
閉会
12:00~13:00
意見交換(昼食)
<H.E. Mr. Nguon Meng Tech>
30
<プノンペンにおけるセミナーの模様>
■講演概要
星野達哉氏:「中小企業に対する金融について」
日本とベトナムの中小企業を比較定義。日本における中小企業の資金調達先と
しては、個人や親族の資産、関係企業や大企業、民間金融機関、政府系金融機関
が挙げられるが、なかでも現状では、民間金融機関、とりわけ中小企業と同じ都
道府県に本店を置く地域密着型金融機関をメインバンクとする例が最も多いこと
が述べられた。
収益性、将来性・発展性が見込めない中小企業は自然淘汰されるとして、中小
企業の存続、発展には、企業理念の明確化、コンプライアンス(法令順守)の徹
底、情報開示の必要性が強調された。
相良和孝氏:「日本の中小企業金融における政策金融の役割」
日本の中小企業金融の概要を、雇用、社会的分業構造の担い手、地域経済の中
核等として経済活力の源泉となっている中小企業の役割とそれを支える金融機関
という図式に沿って説明。
続いて、日本における政策金融の役割と題して、日本政策金融公庫(JFC)
の事業の1つであるJFC-Micro(旧国民生活金融国の業務を承継する国民生活
事業)の概要、その歴史的役割、
“マルケイ”貸付(商工会議所または商工会の経
営指導を受け、推薦を受けた小企業が利用できる担保、保証人不要の経営改善貸
付)をはじめとするその事業資金制度について説明した。また、融資先企業や事
業資金融資の特徴、企業の開業率と廃業率等も紹介された。
最後に、JFC-Micro の融資審査概要が、調査項目、分析内容、CRD(融資
審査のための財務データ)の活用等をもってなされることが解説された。
31
3.訪問概要
■関係省庁・政府関係機関訪問
(1)Ministry of Industry and Trade(ベトナム商工省)
①日 時:1月17日(月)14:45~16:00
②場 所: 54 Hai Ba Trung Str., Hoan
Kiem, Hanoi
③応接者:M. Bui Huy Son, Director
General, Asia-Pacific Market
Department(ソン・アジア太
平洋市場局局長)
Mr. Truong Quang Hoai Nam,
Director General, Domestic
Market Department( ナム国内
市場局局長)
Mr. Tran Van Thanh, Deputy
Director General of Organization & Personnel Department(タン人事部
副局長)
Mr. Vo Thanh Ha, Deputy Head of Division, Asia Pacific Market
Department(ハー・アジア太平洋局東北アジア部副部長)
Dr. Phung Thi Van Kieu, Deputy Chief, Strategy on Trade Development
Research Department, Vietnam Institute for Trade、他
③懇談内容:
当センターの実施するCLMV諸国対象事業への要望、提案につい
て尋ねたところ、商工省側からは、人材教育、とりわけ市場経済に
おける管理職、専門家教育に対する協力要請があった。商工省側は、
今後、当センターのツールに合わせた協力内容を提案したいとし、
当センターは、具体的な提案をいただけたら日本の関連機関とも協
議し協力したいと応じた。
(2)Vietnam Chamber of Commerce & Industry(ベトナム商工会議所)
①日 時:1月17日(月)16:30~17:00
②場 所:No. 9 Dao Duy Anh Str., Hanoi
③応接者:Dr. Pham Thithu Hang, Director
of SME Promotion Center,
Director
of
Enterprise
Development Foundation
Ms. Le Thi Thu Thuy, Deputy
Director,
SME
Promotion
Center
④懇談内容:
「中小企業金融セミナー」開
催協力に対する御礼に続き、
具体的な協力に関する提案の有無について尋ねたところ、ベトナム
商工会議所側からは、銀行、特に地方銀行や地方公務委員の人材育
成等、ベトナムにおける中小企業支援の課題が説明された。当セン
32
ターからは、引き続きの協力、それに伴う話し合いの継続を要望し
た。
(3)Council for the Development of Cambodia(カンボジア開発評議会)
①日 時:1月20日(木)16:45~17:15
②場 所: Government
Palace,
Sisowath
Quary
Wat
Phnom, Phnom Penh
③応接者:H.E. Mr Suon Sitthy, Advisor to
Hun Sen Prime Minister of the
Kingdom of Cambodia, Deputy
Secretary General, Secretary
General
of
Cambodian
Investment Board(スオン・シ
ティー・カンボジア投資委員
会事務局長)
Mr. SENG Sochinda, Director, Environmental Assessment Department,
Cambodian Investment Board
(ソチンダ環境評価部長)、他
④懇談内容:
カンボジア投資委員会事務局長からカンボジアへの日本の民間投
資が依然低調な原因についての意見を求められ、ミッション参加の
専門家とともに当センターからは、日本企業の特性、カンボジアに
おける外国企業に対するソフト・サポートや中小企業育成の必要性
等を述べた。
(4)Ministry of Commerce(カンボジア商業省)
①日 時:1月21日(金)15:00~15:30
②場 所: Lot 19-61, MOC Road (113B
Road), Phum Teuk Thla,
Sangkat Teuk Thla, Khan Sen
Sok, Phnom Penh
③応接者: H.E.
Dr.
Em
Sophoan,
Undersecretary of State(副長
官 )、 Dr. Kan Channmeta,
Under Secretary of State、他
④懇談内容:
商業省の組織、業務等に関す
る説明がなされた後、当セン
ターによる前日のカンボジア開発評議会事務局長とのやり取り紹
介を端緒に、SEZ、小売業、米の輸出等、カンボジアの経済発展
に関して、さらに今後の当センター事業に関しての意見交換となっ
た。また、ミッション参加専門家より、セミナー参加者からJFC
-Micro に対する強い関心が寄せられたことが説明され、今後カン
ボジアで同様の機関を検討される場合には情報の共有をとの依頼
がなされた。
33
■日本の関係団体の現地事務所訪問
(1)日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所
①日 時:1月19日(水)13:30~14:30
②場 所:14th Floor, Sun Wah Tower, 115
Nguyen Hue Street, District 1,
Ho Chi Minh City
③応接者:次長 永盛 明洋氏
④懇談内容:
高成長、外資・輸出依存経済
と総括されるベト ナム のマ
クロ経済、日本からの外国直
接投資の動向、税 務・ 労務
等々、ベトナムの経済の現況
についてご説明いただいた。
(2)日本貿易振興機構(ジェトロ)プノンペン事務所
①日 時:1月20日(木)15:30~16:00
②場 所: Attwood Business Center, Unit #17- 21E2, Russian Blvd., Sangkat Toeuk
Thla, Khan Sensok, Phnom Penh
③応接者:所長 道法 清隆氏
④懇談内容:
日本とカンボジアの貿易動向、SEZ開発状況、プノンペンの工業
団地入居企業数、在留者数等々、カンボジア経済の現況についてご
説明いただいた。
4.ミッション成果
■セミナー評価
(1)「中小企業金融セミナー」in ベトナム(ハノイ及びホーチミン)
セミナーに対する5段階(1:全く同意しない、2:同意しない、3:どちら
でもない、4:同意する、5:大いに同意する)の評価調査を実施した結果、ハ
ノイ参加者45名中35名、ホーチミン参加者38名中29名、計64名が回答。
下記①~⑤いずれの質問に対しても、1、2の評価点はなく、4、5とした回
答の割合は下記の通り。
①セミナーの目的について事前によくご理解戴いていましたか?
―85%(55名)
②セミナーの内容は期待通りでしたか?
―85%(55名)
③セミナーで学ばれた事柄は職場でも有効ですか?
―89%(57名)
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④セミナーの時間配分は適正でしたか?
―90%(58名)
⑤質疑応答時間は十分でしたか?
―90%(58名)
また、下記⑥~⑩の質問で、参加者のご意見を伺った。
⑥本セミナーの最も有益な点は何ですか?
・どのように中小企業が銀行融資を利用し、融資審査が行われるのか
・日本の中小企業政策と中小企業金融
・日本の銀行と企業の連携
・日本とベトナムの企業の開業率と廃業率の分析
・日本政策金融公庫国民生活事業(JFC-Micro)の融資審査
・質疑応答セッション
⑦本セミナーの最も役に立たない点は何ですか?
・ベトナムの中小企業が日本政策金融公庫の融資を利用できないこと。
⑧本セミナーで学ばれた中で最も重要な点は何ですか?
・CRD(Credit Risk Database)
(中小企業信用リスクデータベース)方式
・日本の中小企業発展の経験談
・日本政策金融公庫国民生活事業(JFC-Micro)の戦略
・ベトナムの中小企業は、国際機関やベトナム商工会議所の支援が必要
・経済発展における中小企業の役割
⑨本セミナーの改善点はどこですか?
・もっと実用例を聞きたい。
・もっと講演を増やした方がよい。
⑩今後、セミナーで取り上げて欲しいテーマは何ですか?
・中小企業へのベンチャーキャピタル
・海外との農業技術連携のチャンス
・ベトナムの中小企業支援のための日本の事業計画やベトナムの支援団体と
の協力
・中小企業支援のための融資利用の新手法
・中小企業の現況、その融資の必要性
・中小企業における財務管理
・中小企業のための融資管理
・融資をうまく利用する方法
・中小企業の生産力向上
(2)「中小企業金融セミナー」in カンボジア
セミナーに対する5段階(1:全く同意しない、2:同意しない、3:どちら
でもない、4:同意する、5:大いに同意する)の評価調査を実施した結果、参
加者33名中、19名が回答。
下記①~⑤いずれの質問に対しても、1、2の評価点はなく、4、5とした回
35
答の割合は下記の通り。
①セミナーの目的について事前によくご理解戴いていましたか?
―89%(17名)
②セミナーの内容は期待通りでしたか?
―94%(18名)
③セミナーで学ばれた事柄は職場でも有効ですか?
―57%(11名)
④セミナーの時間配分は適正でしたか?
―89%(17名)
⑤質疑応答時間は十分でしたか?
―73%(14名)
また、下記⑥~⑩の質問では、参加者のご意見を伺った。
⑥セミナーの最も有益な点は何ですか?
・金融機関から融資を受ける方法(中小企業の財政管理、申請前の書類作成
の方法、事前準備-企業の将来性・発展性を持つこと)
・中小企業が融資を受ける意味
・中小企業と銀行との関係の重要性
・JFC-Micro の融資
・中小企業金融の政策や仕組み
・起業の方法
・中小企業の種類
⑦セミナーの最も役に立たない点は何ですか?
・事前通知や広報があまりなかった。せっかくの良いセミナーが多くの事業
主に参加してもらえなかったのではないか?
⑧セミナーで学ばれた中で最も重要な点は何ですか?
・金融機関から融資を受けるための正しい方法
・中小企業は融資を受ける前に企業自体を改善し、信頼性向上を図ることが
大切
・融資申請の前に起業の方法と銀行の仕組みを理解すること
・企業の財政管理と、融資用の書類に記す企業の所有権
・中小企業の資金ニーズ
・中小企業に融資するための情報とデータ分析
・中小企業金融と質と量の分析
・民間企業への融資に関する政府の役割-融資の方法
・日本政府と日本政策金融公庫(JFC)が日本の中小企業をどうサポートし
ているかについて、中小企業の融資の利用しやすさ
⑨セミナーの改善点はどこですか?
・政府からの参加者を増やして、カンボジアで中小企業への融資に関する政
策立案、プロジェクト・プログラム実施ができるようにする。
36
・たくさんの小規模金融会社や銀行が中小企業関係者と一緒に参加すべき。
・時間を取って、もっと分かりやすい説明をして欲しい。専門家からのアド
バイスがもっと欲しい。
・グループディスカッションにもっと時間が欲しかった。
・セミナーの後、専門家からのアドバイスの時間がもっとあると良かった。
・スライドを要約して、講演時間を短縮して欲しい。
・融資の利用法について、具体例を使ってもっと詳しく説明して欲しい。
・もっと関連するテーマと具体例を増やして欲しい。
・カンボジアの中小企業の融資の現状をもっと教えて欲しい。
・このセミナーに参加できなかった中小企業関係者も学べるよう、このセミ
ナーはテレビで放映すべき。
・もっと多くのセミナーを開催して欲しい。
⑩今後、同様のイベントでどんなテーマを扱って欲しいですか?
・中小企業の財務管理(財務諸表の作り方とその重要性)
・中小企業からの融資の受け方、CRDの詳細
・技術、特に生産技術
・日本で中小企業が成長する方法
・先進国と途上国での資金ニーズと中小企業改善の違い
(以下はテーマではなく、開催方法についての要望)
・より多くの中小企業関係者の参加
・政府機関や中小企業関係者に対する中小企業の成長戦略紹介のためのセミ
ナー開催
■ミッション成果・課題
「中小企業金融セミナー」は、ハノイ、ホーチミン、プノンペンの3か所で、
のべ116名の参加者を集めた。いずれの会場でも一様に、メモをとりながら
講演に聴き入り、「日本の政策金融による事業資金制度を利用できないのか」、
「融資を受けるための土地も、担保もない場合はどうしたらよいのか」等々、
多くの質問を寄せる、非常に熱心な参加姿勢が見られた。
さらにアンケートでも、上記「セミナー評価」に見る通り、セミナー内容、
構成等について概して非常に高い評価が与えられた。
「セミナーで学ばれた事柄は職場でも有効ですか?」の質問に対して「同意
する」「多いに同意する」との回答が、ハノイ、ホーチミンの89%に対し、
プノンペンでは57%であった点が目をひくが、両国の中小企業金融分野にお
けるそれぞれの発展段階を反映したものと推察する。いずれ中小企業金融制度
の構築がなされていない状況に違いはなく、融資を受ける前に中小企業がすべ
きこと、あるいは日本の中小企業金融制度について述べた今回のセミナー内容
は極めて適切であったと考えられる。
一方、セミナー内容にさらに加えるならば、実際の融資の事例紹介あるいは
融資を受けた中小企業関係者の体験披瀝が望まれることが参加者のコメントか
37
ら読み取れた。
また、セミナー構成面では、Q&Aセッションで参加者からの質問等は一通
り受けたはずであるが、カンボジアではなお専門家からのアドバイスやグルー
プディスカッションの時間を増やして欲しいとするコメントが多かった。これ
に応えるには、参加者の質問を促すようなセミナー進行上のテクニックや主催
者側のチームプレー―今回は質問が出かねている状況を見て、ミッションリー
ダーが先のセミナーで頻出した質問を自ら専門家にし、これを契機に参加者か
らの質問が続いた―の工夫がさらに必要かもしれない。
同じくカンボジアでは、中小企業関係者とその支援団体関係者からであろう、
政府や銀行関係者、すなわち中小企業金融制度の構築と運用に関わる人々のセ
ミナー参加への強い要望があった。今後のセミナー開催に際しても、これを念
頭に、テーマに関係する分野でより影響力のある参加対象の選定について現地
協力団体と事前に協議する必要性を再認識した。
今後に期するいくつかの課題はあるものの、今回のセミナーが両国の参加者
にとって、日本の中小企業金融政策・制度理解、ひいては自国の現状・課題認
識の機会となったことはまちがいない。
ベトナム、カンボジアの現地政府・関係機関訪問を通じては、当センター及
び当センター実施事業による両国の一層の経済発展への貢献を求める声が極め
て高いことが確認された。今回のセミナーが成功裏に開催されたことを受け、
当センターのツールにあわせたより具体的な要望、提案が相互に検討されるこ
とになろう。
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財団法人
貿易研修センター
〒105-0001
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http://www.iist.or.jp
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虎ノ門実業会館 2 階