MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.1 MS ワードファイルから マルチメディアデイジー・ファイル への変換方法 2012 年2月 国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.2 SaveASDAISY による MS ワードファイルからマルチメディアデイジー・ファイルへの変 換方法 2012-02-14 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 村島完治 北村弥生 印刷物が読み難い人1のために、MS ワード(マイクロソフト社)のファイルから無料変換ソフト Save as DAISY2(マイクロソフト社)を使って、マルチメディアデイジー・ファイルを作成し、配布 する方法を紹介する。マルチメディアデイジー・ファイルを再生すると、音声にあわせて文字にハ イライトが示される。図も表示される。ここでは、音声は合成音声を使う3。 マルチメディアデイジー・ファイルは、パソコンで無料の再生ソフト AMIS4(DAISY コンソーシア ム)により再生することを想定する。まだ、マルチメディアデイジー・ファイルを使ったことのな い人のために、配布 CD には AMIS とインストール方法説明書も同梱するとよい(資料1)。 ハードとソフトのバージョンアップがあると、この資料通りに動作しないことがある。不具合は 巻末連絡先まで、お知らせいただきたい。 マルチメディア DAISY 教科書はじめ DAISY 図書は、読みに課題がある子どもの家族やボランティ アが作成しているが、 「DAISY 図書を作るのは難しい」とよく言われる。5年前に比べると、製作は 格段に容易になったが、こうして書いてみると、やはり「簡単」とは言い難い。情報科学を専攻し たり、パソコン好きの大学生であれば問題はないと想像するが、いくつかのソフトは英語のサイト からダウンロードすることも腰が引けるかもしれない。このマニュアルは、 かなり丁寧に書いたが、 少なくとも9ページ、さらに、25 ページの SaveAsDAISY マニュアルをお読みいただくことになる。 しかし、一太郎 2012 承では、ファイル保存の際に EPUB 形式を選べることから、EPUB 再生ソフトや EPUB と互換性をもつ DAISY 再生装置での再生も可能な場合がでてきた。有料であれば、すでに、 EasyProducer(Dolphin 社)は MS ワードのファイルをボタン一つでマルチメディア DAISY 図書に合成 音声を用いて制作するソフトであり、国内でも、マルチメディア DAISY 変換システムや変換サービ スも開発中である。 平成 23 年 12 月には、国リハ研究所のオープンハウスのパンフレットのマルチメディア DAISY 版 を、ここに紹介する方法で作成した。印刷にすると 14 ページの MS ワードファイルの変換に、習熟 した技術員が丸二日かかった。内訳は、パソコンのセットアップ(ソフトのバージョンアップなど) に半日、辞書登録に半日、変換図書の確認に半日、配布用の CD 焼付けに半日であった。 1 . 印刷物が読み難い人とは、弱視者、ディスレクシアの人、漢字が読み難い人(知的障害者や外国人)などで、プ リントディスアビリティのある人とも呼ばれる。漢字が読み難い人や言語が理解しにくい人には、原文をわかりや すい日本語に直したり、わかりやすい図を用いると、さらに効果的である。 2 MS ワードのアドオンソフト。ファイルのダウンロード先は3ページ目に掲載。 3 合成音声を広く配布する場合には、入手先に許可を得る必要がある。配布数だけの合成音声再生ソフトの購入を求 められる場合もある。合成音声再生ソフト Document Talker を製作・販売するクリエートシステム開発(株)から は、筆者らは、非営利の配布については、その都度、用途を説明して許可を得ている。 4 AMIS: Adaptive Multimedia Information Sysytem, アミと読む。アミのファイルのダウンロード先は5ページ目 に掲載。ただし、WindowsUpdate をあまり行っていないXPパソコンに AMIS をインストールすると、デイジー図書 の見出しは表示されるものの、本文が表示されないトラブルに遭うケースを時々聞く。理由は、インストールされ ている Java のバージョンが古いためである。AMIS のインストール時に英文で警告が出るが、見落としてしまった り、何のことか分からずにそのままインストールを終了してしまうことが原因である。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.3 図1 マルチメディアデイジー・ファイルを AMIS で再生した画面。左側の枠に目次が表示 される。読み上げ中の文が黄色くハイライト表示される。 1.資料の形式に関する要件 ・マルチメディアデイジー図書の形式 ・無料変換ソフト SaveAsDAISY アドオンと合成音声を使って作成する:合成音声はマイクロソ フト社が無料配布している音声を使用5 ・無料再生ソフト AMIS で CD メニューから再生可能とする:AMIS のメニューから CD ボタンク リックで再生可能とする ・音声デイジー再生専用機(プレクストーク、シナノケンシ社6)で再生可能とする:DAISY2.02 フォーマットの図書であることが必要 ・CDで配布する形式:再生専用機で再生するためには、discinfo.html ファイルを同梱する ことが必要。AMIS のインストールファイルも同梱するとよい。 5 マイクロソフト社は 2009 年から DocumentTalker(クリエートシステム開発(株))に添付される合成音声を利用 者からの請求に応じて無料配布している。請求先は3ページ目に掲載。 6 視覚障害者が多く使用している音声デイジー・ファイルを読むが画面がない専用再生機(プレクストーク等)は DAISY2.02 フォーマットの音声は再生するが、文字と図は表示されない。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.4 2.DAISY 図書の作成 2-1.Word の準備・設定 (1)Word2003 あるいは Word2007 を使用する。一番、簡単なのは Word2007 様式で文書を保存して おくことである。Word2003 で保存された文書は識別子が doc である。Word2007 と Word2010 で保存 された文書はどちらも識別子が docx であるため、どちらで保存されたかはファイルを見ただけでは わからないので、文書作成に使った MS ワードを確認する。 ※ 現状では、Word2010 形式の変換には違うバージョンの SaveAsDAISY を使用し、変換では、 特に日本語に特有な内容への対応が不十分な部分がある。例えば、ページ番号の読み上 げは英語になる。日本語機能への対応は、徐々になされると期待される。ただし Word2010 からの変換では、DAISY 図書としては DAISY2.02 と DAISY3 の両方の規格の図書が同時に 別フォルダーに生成される利点はある。 ※Word2003 の場合は、事前に「Word/Excel/Powerpoint 用 MicrosoftOffice 互換機能パック」 をインストールしておく。互換機能パックのダウンロード入手先の URL は以下である。 http://www.microsoft.com/downloads/ja-jp/details.aspx?FamilyID=941b3470-3ae9-4 aee-8f43-c6bb74cd1466 (2)SaveAsDAISY アドオンを Word にインストールしておく。 ファイルのダウンロードは、DAISY 研究センターのページから、 Microsoft Word Add-in Version 2.1.1 を入手する。 http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/save_as_daisy.html (Word2010 の場合は、DAISY コンソーシアムより、Version 2.5.5.1 を選んでダウンロードす るが、32 ビット版と 64 ビット版があるので、Word の種類に合わせてインストールする。 http://www.daisy.org/project/save-as-daisy-microsoft-word-add-in ) 2-2.合成音声の読み上げ辞書の整備 ※ マイクロソフトが提供する合成音声の申請は、下記のサイトから行う。CD が届いたらイ ンストールする。 (32 ビット用と 64 ビット用とがあるので、OS に合わせてインストールする) http://www.microsoft.com/japan/enable/7narrator/default.mspx (1)合成音声の中で使用する音声の指定は、「コントロールパネル」の「合成音声」から行う。 DocumentTalker の音声には、 「けいこ」 「たかし」などがある。 (2)使用する合成音声で原稿を読み上げさせて、文字の読み違い、アクセントの不具合をチェック する:DocumentTalker を立ち上げて、ワードファイルを読み上げる。 (3)部署名、人名などの固有名詞、読み違いやアクセントがおかしい文字列などについて読み辞書 の登録を行う。 マイクロソフト配布の合成音声では、Document Talker Plus V2 を起動して、「設定」→「ユー ザー辞書登録」メニューから登録を行なう7。この合成音声で読み辞書を操作するにはクリエー トシステム開発(株)のホームページから Document Talker Plus V2 をダウンロード(無料) し、インストールしておく必要がある。 7 本資料で使用した図は DAISY コンソーシアムから許諾を得て転載した。図は参考のために示しているため、図を 見ることができなくても支障はない。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.5 http://www.createsystem.co.jp/DTalkerSapi1.html よりアクセントの位置の変更は「アクセント変更」ボタンに可能。 「テスト」ボタンを押して確認し、 「登録」ボタンで登録完了。 2-3.Word での編集・設定 (1)原稿は Word2003 あるいは 2007 で、Word 文書形式で保存する。 (2)目次に表示したい行には、見出しを設定する。見出しは 4 段階までつけられる。(研究所オー プンハウスのパンフレットの場合には、各部の名称の文字列にレベル 1 を設定した。部内の サブ分類にはレベル2やレベル3をつけてもよい。 ) (3)ページ番号を付ける ページ番号のつけ方は手動と自動の2種類があり、SaveAsDAISY の Custum 設定で行う。MS ワード文書に表紙などがなく、物理的なページ番号でよい場合は自動とする。すでにファイ ルでページ番号を入れてあってもなくても、SaveAsDAISY が自動的にページ番号をふり、再生 ソフトのページタグでページジャンプができる。 「印刷物の何ページを見てください」と言わ れたときは、このページタグでジャンプするのが便利である。MS ワード文書のヘッダーとフ ッターは SaveAsDAISY で変換されない。 元の文書ファイルに表紙や目次があり、印刷物のページ番号が物理的なページ数と一致し ないときは、手動でページをつける。すなわち、MS ワードファイルで、ページ始めの文字列 のひとつ前の行に、ページ番号を半角数字で入れる。 印刷物のページ数とデイジー図書を対応させる必要がない意味がない場合は、気にしなく てよい。 (4)文字列をハイライトさせる区切り(Span)は、句点(。)毎になり、読点(、)では区切られな い。英語では、半角コンマと半角スペースの組み合わせ(, )で区切られると言われる。 (5)項目番号と表題を「3 総論」のようにスペースで区切っても、続けて読み上げられることが 多いので注意。読み上げない文字(・_など)で間を開けるとよい。 (6)ルビ付きの漢字は、 デイジー図書になった後はその部分が漢字も含めて本文から消えてしまい、 合成音声は全く読みあげない。ルビは使用しないように注意。 ※合成音声読み上げのための文書作成の留意点は、6に後述する。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.6 2-4.SaveAsDAISY の実行 (1)Word アドオンの SaveAsDAISY の操作に関して、下記のサイトからマニュアル(約 25 頁)を入手で きる。操作は、これを参照して行う。 http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/save_as_daisy.html なお、DAISY コンソーシアムのホームページには、画面とナレーションはすべて英語であるが、 SaveAsDAISY の操作説明のビデオが掲載されている。 ① SaveAsDAISY Ver2.5.5.1 のダウンロードとインストール操作 http://www.youtube.com/watch?v=JOqeIy76IrM&context=C39a9d12ADOEgsToPDskKtXKqFIe-hQ7-BROS F-m62 ② Word2010 における SaveAsDAISY アドオンの操作 http://www.youtube.com/watch?v=4p07HvIB2Lc&context=C31518beADOEgsToPDskIVLrX9abJ39EiI77l k1GTi ③ 再生ソフト AMIS の使い方 http://www.youtube.com/watch?v=NZ30PZGwORs&feature=related ④ パソコン上でコントロールパネルからの合成音声の設定法 http://www.youtube.com/watch?v=ZoKEJA2FdnM&context=C3c38182ADOEgsToPDskJF-unDUylFNfRH_CU FxGlp 出来上がった図書は一群のファイルから構成されるひとつのフォルダーになる。この方法で作成さ れた DAISY 図書は、DAISY3 フォ-マット、文字コードは utf-8 である。AMIS で再生・確認する。AMIS のインストール方法は http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/amis3_1_3.html (日本障害者リ ハビリテーション協会)を参照。 3.DAISY2.02 フォーマットへの変換 (1)プレクストークで再生できるようにするには、図書のフォーマットを DAISY2.02 に変換する 必要がある。これには DAISY Pipeline を使って行うことが可能。 DAISY Pipeline Version 20111215 (2)Pipeline における操作 「File」→「New」→「Pipeline Job」 http://www.daisy.org/pipeline MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.7 「Create and Distribute」→「DAISY Book」→「DAISY3 to DAISY2.02 [BETA]」→「Next」 「Input OPF」欄に DAISY3 図書、 「Output directory」に出力先のフォルダーを指定して「Finish」 メニューから「Run」→「Run」 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.8 DAISY3→DAISY2.02 変換を行うと、現状のバージョンでは、下記のようにバリデーションエラーが 多数表示されて、結果の Status 欄には FAILED と表示される。内容をみると、時間を厳密にチェッ クして、わずかの違いをチェックしている。 しかし、変換結果のデータは、AMIS で正常に表示されるので、当面、これを使うこととする。 元の DAISY3 ファイル 変換後の DAISY2.02 ファイル MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.9 4.discinfo ファイルの作成 プレクストークで再生、あるいは AMIS のメニューで CD アイコンから再生させるためには、 discinfo ファイルを CD に入れておく必要がある。 discinfo 作成には DIMaker2003 というソフトがあるが、ncc.html に文字コードが utf-8 と指定さ れていると、ハングアップするので、手動で作成する。 下記のサンプルファイルをテキストエディターで編集して作ればよい。ファイル名は 「discinfo.html」 下記内容(例)を discinfo.html ファイルとして保存し、DAISY 図書フォルダーの外に付ける。 下線部分が修正箇所。下記では「オープンハウスパンフレット 2011」がタイトル、 「./panphlet202」の文字列は図書のフォルダー名を示す。 【注意】図書のフォルダー名はできるだけ半角英数字を使うとよい。ここに「表 能 一 十 ソ」 など文字コードの 2 バイト目に 0x5c を持つ文字があると、AMIS はハングアップする。 ------------------------------------------------------------------------------<?xml version="1.0" encoding="utf-8"?> <!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD XHTML 1.0 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/xhtml1/DTD/xhtml1-transitional.dtd"> <html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" xml:lang="ja" lang="ja"> <head> <title>オープンハウスパンフレット 2011</title> <meta http-equiv="Content-type" content="text/html; charset=utf-8"/> </head> <body> <a href="./panphlet202/ncc.html">オープンハウスパンフレット 2011</a> </body> </html> ------------------------------------------------------------------------ MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.10 5.SaveAsDAISY でデイジー変換する場合の文書作成の留意点 以下に、デイジー変換して合成音声で読ませる場合の文書作成の留意点をあげる。ただし、使用 する合成音声によって留意点は異なる。以下は、DocumentTalker(クリエートシステム開発(株)) に添付される合成音声の場合である。 留意点 合成音声では、スペース区切りは続けて読み上げられる事が多いため、読 対象者 全て み上げない文字(・、_など)で間をあける。 ルビ付きの漢字は、デイジー図書になった後はその部分が漢字も含めて本 全て 文から消えてしまい、合成音声が全く読み上げない。 合成音声では、英語は読み辞書に登録されていれば英語読み(日本語アク 全て セント)で、登録されていない語はアルファベットで読み上げる。メール アドレスなど、全部アルファベット読みをさせたい場合は辞書登録をす る。 合成音声では、上付き・下付き文字は普通の文字として読み上げられる。 全て 合成音声では、漢字の読みが思い通りにならないことがよくある。固有名 全て 詞は、読みをファイル変換の担当者に通知して、辞書登録する。録音図書 に慣れた視覚障害者に対しては、読み間違えをそれほど気にする必要はな いと思われる。一文字を登録すると、別の読み方をする単語でも登録どお りに読んでしまうので、単語単位での登録がよい。たとえば、「研究所」 は「けんきゅうしょ」と読み上げられるため、 「所」を「じょ」と登録す ると、 「所長」も「じょちょう」と読み上げてしまう。 図が見えない人のためには代替えテキストを付けて図の説明を追加する 視覚障害者(全盲者) ことができる。図にカーソルを合わせて、右ボタンをクリックすると代替 テキストを入力できる。PTR など音声 DAISY として扱われる場合は、代替 テキストは、合成音声が読み上げてくれる。 図は見えるが、図が何を示すかの判別が難しい人に対しては、図の説明を 視覚障害者(弱視 詳しく追加する必要がある。マルチメディアデイジー再生ソフトでは代替 者)、知的障害者、発 テキストを読み上げない場合もある(たとえば、AMIS)。たとえば、シェー 達障害、高次脳機能障 マなどである。 害 図の文字を大きくする。AMIS は、図は拡大しないので、図で使用する文 同上 字が小さい場合は、図の説明に記載するとよい。図も拡大する再生ソフト もあるが有料(例えば、Gh プレイヤー(Gh 社),EasyReader(Dolphin 社)) 。 表も読み上げるが、AMIS は順番に全部読んでしまうため、大きな表を理 同上 解することは難しい。有料の再生ソフトでは、表を上下左右にカーソルを 動かして読めるものもある(例えば、Gh プレイヤー(Gh 社)) 。 読者の必要とするフォントサイズに合わせて原稿のフォントサイズを決 同上 める。AMIS は文字を4段階に拡大する。 AMIS では画面に表示するフォントを変更できないため、対象者が読みや すいフォントにする。視覚障害者に読みやすいことが報告されているゴチ ック体にするのが一般的。 同上 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.11 文章を、わかりやすく表現にする(一文を短くする、二重否定を使わない 同上、外国人 など) 6.CD に焼くときの注意 WindowsVista 以降の Windows の書き込み機能は、いわゆる「ライブファイルシステム」 (USB メモ リへの記録と同様な記録方式)が既定の機能となっている。この方式で書き込んだ CD-R はプレクス トークと、大部分の WindowsXP パソコンで認識されない。 従来の書き込み方式も選択できるが、Vista では、気がつかずに操作すると、選択の画面を見過 ごして、 「ライブファイルシステム」 しか見ずに操作を進めてしまうことが多いことに注意を要する。 Vista ではオプションで「マスター」を選択する。 Windows7 では両方式が表示されて選択しやすくなっているが、逆に、慣れないと選択に迷うので、 「マスター」あるいは「CD/DVD と同じ形式」を選択する。 Windows パソコンでは、CD や DVD への書き込み用の専用ソフトとして ROXIO 等がインストールさ れているため、こちらを使った方が間違いがない。これらの書き込み専用ソフトでは、XP 時代の 記録方式( 「マスター」とも呼ばれる)のみとなっているので、プレクストークや XP パソコンで 再生するのに適している。 7.CD 以外の媒体で配布する方法 (1) 再生にプレクストークポケットを使う場合 CD ではなく SD カードに DAISY フォルダーをコピーする(discinfo.html は不要) 。 (2) USB メモリや HDD を利用する場合 DAISY フォルダーをコピーする(discinfo.html は不要)。 (3)オンラインで提供する場合 講演会等で不特定多数に提供する事前資料の場合には、講演会の広報時のチラシなどにテキスト ファイルとワードファイルをダウンロードできる HP の URL とアップロード予定日を告知できると、 事前に各自で読んでから来場する人には便利である。資料を HP から発信することに抵抗がある場合 は、事前にファイルが必要な人に必要な変換形式を連絡してもらうように、チラシや HP に記載する と効率的である。 EasyReaderExpress(Dolphin 社、NPO 支援技術開発機構取り扱い)を同梱して、ダウンロードした 人が再生ソフトを別に準備しなくても、パソコンでマルチメディアデイジーの再生ができる技術も ある。この方法による配布のためには、変換ソフト(年間約 50 万円)のほかに、NPO 支援技術開発 機構の変換サービス(1 タイトル1万円程度)が利用できる。 (4) iPhone, iPodTouch, iPad で利用する場合 DAISY フォルダーをコピーする(discinfo.html は不要)。DAISY 再生ソフト VOD(サイベックス社) MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.12 で再生ができる。ただし、DAISY2.02 ではルビは漢字の後ろに括弧の中に書き込まれる。DAISY3に 対応するバージョンではルビも表示される予定である。 8.マルチメディアデイジー・フォーマット以外の情報保障の方法 印刷物が読み難い人の状態や便利な方法は多様で、情報補償の方法には、マルチメディアデイジ ー・フォーマットの他に、音声デイジー・フォーマット、mps3、点字、拡大文字などがある。 (1)音声デイジー 音声デイジーは、マルチメディアデイジーと同時に合成音声を用いて作成できる。再生機として プレクストークを使う場合は、discinfo ファイルを付けておく必要があるが、プレクストークポケ ットでは不要である。 図は表示されないことから、ワード文章の段階で、文中または図の説明に、図で示したいことを 記載すると読者に親切である。 合成音声でなく、肉声の朗読が好ましい場合は、音声デイジー製作ソフト(日本障害者リハビリ テーション協会に無料で資料登録できる MyStudioPC など)で別に作成する。視覚障害者は合成音声 に慣れているが、小中学校の教科書は肉声を録音する場合が多い。 ただし、印刷物を聞きやすく朗読するのは、そう簡単ではない。分量が多い場合は、デイジー制 作組織に依頼するのがよい。デイジー制作組織はボランティア組織が多く、障害当事者以外からの 依頼については有料にするものの定価が決まっていることは少ないのが現状で、価格の相談をする 必要がある。 デイジー再生機の場合は、図書の先頭部分に目次を入れておけば、目次に示されたページにジャ ンプできる。下に、目次ページの例を示す。 目次・・・・・・・・・・・・・第一段階のレベル設定をしておく 第一章 2・・・・・・・ページ番号を半角で記す。ページや頁などの単位は書かない。 第二章 11 第三章 21 第四章 31 (2)mp3 ファイル 6ページ目で作成した mp3 ファイル(図に表示されている識別子が mp3 のファイル)は、圧縮形 式の音声ファイルで、ほとんどの mp3 再生機で再生できる。ひとつのデイジー図書には複数の mp3 ファイルが作成される場合もあり、デイジー図書として認識する再生機では、mp3 ファイルの再生 順序は smile ファイルに指定された順序で再生さるが、一般の mp3 再生機では、mp3 のファイルに ついた番号順に再生される。 (3)点字、拡大文字 点字資料と拡大文字資料は、もとの MS ワードファイルとはレイアウトが変わるために、ページ番 号が元の印刷物と異なる。長い文書で、目次にページ番号が振ってある場合には、元の原稿のペー MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.13 ジ番号を文中に書き込むと親切。 点字資料作成は日本点字図書館等に有料で依頼できる。ワードファイルまたはテキストファイル を送り、部数を指定すると、点字版資料が郵送される。固有名詞や専門用語の読み方は指定する必 要がある。視覚障害の人は、地元の点訳ボランティアへの依頼も可能であるので、地元の社会福祉 協議会に問い合わせるとよい。 拡大文字は、希望するフォントサイズを指定する。ゴチック体が読みやすい人が多い。 9.漢字に自動的にルビを振る マルチメディアデイジー図書を SavaAsDAISY で制作する際は、現状ではルビを付けた個所はルビ のみならずルビの付いた漢字も表示されなくなる。ルビ付きのデイジー図書を SavaAsDAISY で制作 する方法として、以下がある。 (1)SaveAsDAISY でルビの付かない図書を制作する (2)出来上がった図書は DAISY3 フォーマットなので、Pipeline を使って DAISY2.02 フォーマットの変換する(プレクストークではテキストは見えないため、視覚 障害者が配布対象でない場合は変換は不要) (3)フリーソフトの「XHTML ルビふりツール」を起動する ダウンロードサイトは http://homepage2.nifty.com/oss/ (2011 年 8 月バージョンは 1.03) (4)DAISY2.02 に変換された図書のフォルダーの中から HTML ファイルを、「XHTML ルビふりツー ル」のウィンドウの中にドラッグする(HTML ファイルの本文が表示される) (5)「一括処理」メニューから「全ての漢字にルビを振る」を選ぶ (6)表示されている本文のすべての漢字にルビが振られる (7)振られたルビを修正したいときは、漢字の上でダブルクリックすると、ルビ修正の画面が開 く。また、ルビが振られなかった漢字はその文字を範囲選択すると、ルビが振られるようである。 修正方法の詳細は、ソフトウェア付属の Readme ファイルを見る。 (8)「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」。元の名前のままで元のフォルダーに保存 する (9)AIMS で図書を開くとルビが表示される。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.14 10.文字コード UTF-8 から Shift-JIS への変換 通常はこの変換は不要だが、Sift-JIS でないと文字が表示されない再生機器あるいはソフトを使 う場合は、文字コードの変換が必要になる。たとえば、SaveAsDAISY で作成した DAISY ファイルを シグツナで編集する場合である。※UTF-8 から Shift-JIS へ変換すると、Shift-JIS には無い文字が 表示されなくなる。東洋医学系の図書などでは注意が必要。 変換には Pipeline の機能を使う。 (1) [ File ] → [ new ]→ [ Pipeline job ] を開く。 [ Modify and Improve ] → [ Multi-Format ] → [ Character Set Switcher ] を選択し、[ Next ] ボタンを押す。 次のページの図で、 (2) Input file : [ Browse ]ボタンを押す。 文字コードを変換したい DAISY 図書のフォルダー内の[ ncc.html ]ファイルを選択する。 *ファイルの種類のプルダウンを確認する。 (3) Output Directory:[ Browse ] ボタンを押す。 PC 内にフォルダーを新規作成し、変換後の DAISY 図書を保存するフォルダーをつくる。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.15 (4) Output encoding:UTF-8 から Shift_jis への変換を行うので、[ Shift_jis ]と入力する。 [ Finish ]を選択する。 (5) メイン画面で、[Character Set Switcher]作業を選択して、[ Run ] メニューの[ Run ]で変換 開始する。 (6) Congratulations!と出たら変換完了。 (7) 再生する機器あるいはソフトウェア(例えば AMIS)で、動作確認。 MS ワードからマルチメディア DAISY へのファイル変換 2/15/2012 --- p.16 ********************** 連絡先: 国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部 北村弥生 kitamura-yayoi@rehab.go.jp TEL: 04-2995-3100 内線 2530 FAX: 04-2995-3132 **********************
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