2 February 2003 Vol.10(年4回発行) 商いまんでがん 有限会社 CAT 特集 今どき 消費者事情 独身OL編 その3 商いインフォメーション / 新着ビデオ・ブック等情報 私の視点 “和うるし”の可能性を信じて キ ャ ット カラーデザインオフィス 有限会社 CAT か ず こ 代表者 宮井 一子 氏 会 社 概 要 〒761-8084 高松市一宮町1591-3 TEL&FAX 087-886-8056 E-mail color@i-cat.co.jp 事業内容:毛糸、輸入雑貨販売・化粧品販売、 リラックスルーム・喫茶&軽食「花のカフェ」経営・キャット CATカラースクール主宰(カラーコーディネーター養成講座、実践カラー講座、カラーアナリ スト、各種カルチャー教室のカラー講座ほか多数) ・ニッティング(編み物)スクール主宰 創業:昭和61年4月 設立:平成11年6月 従業員数:10名 営業:年中無休・1階「雑貨キャットCAT」AM10時∼PM7時、 2階 喫茶&軽食「花のカフェ」AM8時∼PM9時 宮井氏とカラースクールの生徒さん 好きなことを極めたいという向上心が 次のステージへのきっかけに まったくの素人で、毛糸屋からスタート 子育てしながら「商売」と「勉強」 現在、CATの事業内容は多岐にわたっているが、もとも 大阪へ通学する3年ほど前から、毛糸屋を始めていた。そ とは宮井氏が趣味でしていた編み物が発端であった。ニット れまで商売をした経験はなく、 しかも3人のお子さんたちは のデザイナーとして人に教えられるまでの腕前になったも まだ小・中学生。軌道に乗るまでご苦労されたものの、自ら のの、 「いい作品が作りたい」という気持ちから、大阪へ勉 デザイン・制作したオートクチュールのニットが次第に売れ 強をしに行く決心をした。瀬戸大橋ができる前、今から15 出し、経営も順調に伸びていった。しかしながら、バブル崩 年以上前のことである。 壊により売上が減少。好きな毛糸の仕事は続けつつ、長年 し ら は え し ゃ 学んだ先の(財)白南風社は、色彩学に関して30年以上も 勉強していた色彩関係に事業のウエイトを置くようになった、 す な こ の歴史のある労働省認可団体であった。師事した秦 砂丘子 とのことである。 先生は色彩学の第一人者として知られ、絵の具の代わりにニッ トを使って色彩表現をする専門家。学校には全国の有名メー カーのデザイナーが色彩を学びに集まっており、デザインを 勉強するつもりで通学していた宮井氏も、次第に色彩の世界 の奥深さに興味が広がっていったという。 「色彩の勉強を1年すれば理屈はわかる。 それから先はセンスの問題」。宮井氏は1年 間だけ勉強する予定が、結局は8年間学び、 カラーリストの資格を取得し、カラーコーディ ネーター、パーソナルカラーアナリスト…と 色彩に関する専門分野を拡大させていった。 お店の外観 1 商い情報かがわ 2003年2月号 四季を演出するエントランス 色彩、カラースクールの事業で 後進の指導と色彩文化の振興に貢献したい スも含めた化粧品をメインにしていく。女性がターゲットな CATカラースクールの内容は「色彩感覚トレーニング講 らず、雑貨の仕入れ業者を 座」、 「基礎色彩学∼色彩検定資格取得講座」、 「パーソナ 探して大阪を歩きまわった ルカラーアナリスト講座」など色彩に関することは網羅され こともある。何ごとも勉強。 ので、その窓口として雑貨を置くことにした」。現在アメリカ から直接カントリー雑貨を輸入している。 「最初は何もわか ており、宮井氏は、県内はもちろん、中・四国の各地で開講 何かを始めたら、それに関 されるカルチャー教室のカラー講座でも教鞭をとっている。 するアンテナを張っていると、 今、力を入れているのは、色彩の専門知識を必要とする職 と、情報が入ってくるもの」 種の人たちへの講座。例えばインテリア、ファッション、フラ とのこと。新しいことに対す ワーアレンジメント、メイクアップ…といったセンスを要求 る前向きな姿勢とさまざま される仕事に色彩の知識は不可欠である。 な人とのコミュニケーション また色彩に関連する内容は一般企業にとっても無視できな が、事業へ の突破口になっ い。 「商品を選ぶときの選択基準は色。色は黙って商売する。 たことが推察できる。 その色が人に受け入れられるかどうかで商品価値は決まり、 色により経済効果が変わる」と宮井氏。確かに、商品開発や企 業のイメージ作りにおいても色彩は重要な位置を占めている。 昨年11月から、少しずつお店の リニューアルを開始 階段を作り、全体を回遊できる建物が目標 アメリカ直輸入の カントリー雑貨など 女性が自分で自立して生きていける職場 今やりたいことを実現するために、 亀にように進んで行く ご自身の性格は「思い切りがいい」ことで、 「いいと思うこ とはやってみる。悪いことは自然淘汰されていくから」という。 「やりたいことのためには、手間をいとわないことが人に自 建物全体のコンセプトは「フランスの片田舎風、プロヴァ 慢できる」そうである。 「憩い、やすらぎ、健康」を具体化し ンスの雰囲気」で、 「憩い、やすらぎ、健康」がキーワード。 た事業を展開している宮井氏。スタッフは全員女性であるが、 2階のカフェで「ゆったりと心と体と胃袋を癒して」、1階の それは自立した女性たちに囲まれて仕事をしたいとの思い 雑貨CATで「可愛い雑貨を手にとってワクワク楽しんで」、 からである。また社外活動では、女性だけのライオンズクラ 化粧品コーナーで「よい化粧方法で芯からキレイになって」 ブに参加したり、中小企業家同友会の勉強会にも出席したり ほしいとのこと。この化粧品コーナーは、宮井氏の長女が担 するなど、人との出会いを大切にしている。 当している。大学卒業後、英語講師を2年間していた経歴な 「建物のリニューアルも少しずつ、やりたいことの実現も がら、宮井氏とともにCATの経営に携わるようになった。幼 少しずつ、ずりずり進んでいく」。そして、ここまで事業を い頃から色を見て育った環境ということ 続けられたのは、 「これがやりたい、 もあり、大学時代に宮井氏が学んだのと という痛烈な思い。それも自分から し ら は え し ゃ 同じ(財)白南風社に通った彼女は、卒業 進んでやりたいという気持ちがあった 時には同窓の年上のデザイナーたちから から」とのことであった。 も一目置かれるほどの色彩感覚を身に付 最後に語られた宮井氏の「人間は けていた。 きれいなものに反応する。色彩は人 「将来的に後継者として、娘の仕事しや 間の心・感覚を大きく左右する。商品 すい環境にしてやりたい。カラーアドバイ の売れる・売れないも色彩に左右さ れる」という言葉が印象的であった。 毎月発行しているお客様との コミュニケーション誌 (商業支援アドバイザー 川野 洋巳) ア ド バ イ ザ ー の ひ と こ と お店は、輸入雑貨が狭いスペースに工夫をこらして飾られ、階段を超えるつど異質空間を演出している。メイクから服飾に至るパーソ ナルカラーを個々に提案できるサービス力と、オリジナルメニューのカフェとの組み合わせが、高松中心部から離れた場所にありながら、 独自なフアンづくりに成功している。これから創業を意図する女性には、本物へのこだわりと、人との積極的な出会いが参考になろう。 2 今どき 消費者事情 黒 田 商業支援アドバイザー 英 津 子 当サポートセンターでは香川県内在住の消費者にインタビューを行い、その購買行動や消 費の特性から、消費者層の姿を浮き彫りにし、ニーズを探り出す手がかりをつかむ試みを行い ました。 独身OL編 その3 前2回にわたり、消費のリーダー的存在である独身OLについて行ったグループインタビュー から、 その価値観を垣間見ることができました。 この時のグループメンバー6名は事務職系の方々でしたが、今回はそのほかに、販売系 の職業についている方たちに、街角でお話を伺いました。その殆どからは、事務職系の方と 異なり、 「買い物大好き」という解答をいただきました。以下に彼女たちの声をお届けします。 買 う 買物大好き。買うのはほとんど身の回り品(ファッション品)。 買物症候群かもしれない。 お給料よりも先にカードで買ってしまう。 勤務先の店で買わざるを得ない。その額は非常に大きい。 休日が友人と一致しないので、たいてい一人で買物に行く。 特に「これが欲しい」というわけではないが、とにかく買う。 普段販売する側の彼女たちは、仕事を離れたときには逆の欲求 が働くのであろうか。 事務職系の方からは聞けなかった買物意欲の旺盛さが感じられた。 遊 食 ぶ べ る 3 商い情報かがわ 2003年2月号 休日は家でゴロゴロするか、一人で買物。 たまに神戸、大阪などに行く。そこで買物をする。 休日には他店のディスプレイや陳列を見るのが楽しい。 就業後職場の仲間と食事に行くことが多い。 飲食店では食べることより、友人と過ごす時間が目的。 就業時間や休日の変則性からか、一人で行 動することも多い。やはり買物がついてくる。 学 ぶ 販売の仕事が好きで、続けるつもりだが、そのためにも資格取得 の必要性を感じている。 カラーコーディネータの勉強をしている。現在の仕事に活かせる。 現在の仕事を自身の基盤として、キャ リアアップを図ろうとしているようである。 独身OL編 総括 今回のインタビューでは、買物意欲については、事務系・販売系の職種により二 極化された。だが、 その本質はどうであろう。前者は「時間節約型」の買物のしかた であり、後者は「時間消費型」のそれといえる。後者の彼女たちは、就業時間の変則 性から、 自由な時間を共有できる相手が少ないための買物行動とは言えないだろうか。 必要なモノをほとんど手にしている独身女性たちは、特に欲しいものがあるわけ ではない。「買物大好き」と答えた販売系の仕事についている女性たちにしても 然り、である。〈飽食の時代〉〈モノ余りの時代〉といわれる今日、彼女たちが真 に支出をいとわないのは、親しい友人達と(あるいは自分ひとりででも)楽しく快適 に過ごす時間(時間消費)への対価であるように思われる。 今回インタビュアー側の予測を上回ったのは、学ぶことへの意欲と実際の取り 組み方であった。彼女たちは、自分自身のキャリアアップのための対価もいとわな いのではないだろうか。あるいはそこまでの思いはなくても、試行錯誤から可能性 の拡大、といったようなことを求めているのではないか。 彼女たちは何かを捜して、現状にいるように思える。「指示待ち族」とは最近の 若者に対して聞かれる言葉ではあるが、彼女たちは「自己実現の対象」を探して いるのかもしれない。そのための時間消費と、それ以外の時間節約のニーズが、 同居しているように思われる。 彼女たちの「時間・消費と節約志向の同居」ニーズに対応するために、商業 者は個店として、あるいは集積として、物販のみでなく、サービス(学ぶ・遊ぶ・食 べることなどを提供する)との複合化に取り組むことが、一つの方向として考えられ る。単独で困難なことには、コラボレーションも考えたい。趣向を凝らしたイ ベントの実施も方策の一つと思われる。 ※「商い情報かがわ」では、既にその取り組みをされている店舗、集積などを「商いまんでがん」 「こんな店オープンしました」欄で過去にもご紹介させていただいています。ご参照下さい。 4 中小企業の経営革新をお手伝いします 経営革新支援アドバイザーに お気軽にご相談ください かがわ産業支援財団のかがわ新事業サポートセンターには、 中小企業経営革新支援法に基づく経営革 新計画の申請・作成のお手伝いをする「経営革新支援アドバイザー」がいます。 アドバイザーは民間企業の出身で、財務・営業・技術といった専門分野のエキスパートです。 私 た ち が 村尾 俊二 ●資格等 中小企業診断士 支 援 い た し ま す 大森 晴男 ●専門分野 新 商 品 開 発 、品 質管理 ●専門分野 経営戦略、マーケ ティング、財務分 析 川本 泰 ●資格等 一級土木施工管理技 士、建 設 技 術 士、労 働安全コンサルタント ●出身企業等 建設機械製造会 社出身 ●専門分野 土 木 技 術 、労 働 安全関係 ●出身企業等 金融機関出身 ●出身企業等 総合建設会社出身 資延 隆 ●専門分野 人材育成・研修、 労務管理 多田羅 劼 ●資格等 中小企業診断士 西岡喜代二 ●資格等 宅 地 建 物 取引 主 任 ●専門分野 ●出身企業等 情報通信会社出 身 経営管理全般、 金融全般 ●出身企業等 金融機関出身 浜本 通泰 ●専門分野 企 業 会 計 、広 告 関係 細川 駿 ●資格等 RST(安全教育ト レーナー) ●専門分野 経営・営業管理 ●出身企業等 電気機械製造会 社出身 宮武 重弘 ●専門分野 物流システム ●出身企業等 ●出身企業等 金融機関出身 ●専門分野 建設関係一般 ●出身企業等 建設会社出身 商い情報かがわ 2003年2月号 運輸会社出身 支援のシステム お申し込み方法 電話またはFAXでお気軽に当セ ンターまでお申し込みください。 T EL(087)840-0391 FAX(087)869-3710 窓口相談 (経営革新計画申請に ついてのご相談) ●経営革新支援アドバイザーが 経営革新の申請について懇 切丁寧にご指導します。 無料 経営革新計画 作成の支援 経営革新計画の申請の要件を 満たす場合、該当分野の経営革 新支援アドバイザーが経営革新 計画の作成などを具体的に支援 します。 ●また、併せて経営革新の案件 に応じて、専門のコーディネー ターがサポートします。 無料 無料 中小企業経営革新支援法とは 目 的 新商品・新サービスの開発や提供、新たな生産方式や販売方式の導入といった「経営革新」に、積極 的に取り組む中小企業の方々を支援するための法律です。 対象者 中小企業(卸・小売・サービス業等を含みます)の経営革新を幅広く支援します。また、中小企業単独 のみならず、異業種交流グループ等の多様な形態による取り組みを支援します。 手続き 事業者は「経営革新計画」を作成して、香川県知事(あるいは国の地方機関等)に提出し、計画の承 認を得る必要があります。 経営革新支援アドバイザーは、この「経営革新計画」の作成を支援することを目的としています。 (計画承認後の支援内容) 1.政府系金融機関等による低利融資 2.中小企業経営革新支援対策費補助金 3.信用保証の特例 4.税制措置 5.高度化融資 6.中小企業投資育成会社の特例 (これらの支援については、承認を受けた後、それぞれの支援機関等の審査が必要になります) DO IT!シリーズ 「コスモスグループ」 (飲食サービス業) 株式会社ブロックス (V2002-44) 「働く人の幸せのためにこそ、会社がある」と、社員が自立的に、 そして豊かに働くことを経営目標におき、着実に成長を続けるコスモ スグループの生き方に焦点を当てている。 DO IT!シリーズ 「ホンダクリオ新神奈川」 (自動車ディーラー) 株式会社ブロックス (V2002-51) 「この店は気持ちがいい、雰囲気がいい」こんな一言が最高の 評価である。徹底したCS 経営とそれを支える店長に焦点を当て、 感動と効率を生む全員営業を紹介している。 「聞く技術」 (基礎編・応用編) プレジデント社 (V2002-45・46) 人間関係を豊かにし、ビジネスを成功に導く「聞く技術」を段階 的に説明している。心理学博士の伊藤明氏が監修。 「ベンチャー企業の経営 日本経済新聞社 と支援」 「ウオルマート『儲け』の あさ出版 しくみ」 編/早稲田大学アントレプ ルヌール研究会 松田修一監修 (M14R‐118) 著者/ルディー和子 世界一の小売業「ウオルマート」の企業コンセプト、 (M14R-133) 戦略を説明し、 その儲ける仕組みを探り出している。 著者/中村中 (M14R-140) 元銀行マンの中村氏が金融検査マニュアルを説明 し、借り入れに成功する方法、交渉術を豊富な事例で 詳しく述べている。 「お 客 様は悪 魔 ! 悪 魔 日本HR協会編 を魅 了 するサービス 改 産能大学出版部 (E11R-330) 善」 形骸化した個客満足をいかに改善し定着していくか について、多業種の店でのたくさんの事例で紹介。 「銀行交渉術」 TKC出版 講演: 邱永漢・船井幸雄・浜田泰助・ 小山政彦・マギー司郎 船井メディア 作家の邱氏が「潮の流れを読む」、 お客様中心を説 くマギー氏、画家の浜田氏がスピードと経験を話されて (C2002-058∼060) いる。 「スーパーサポートセミ 船井メディア ナー」 講演:杉原忠・小山 経営者やリーダーのサポートする力が困難な時代を 突破する源だと「入門編」「実践編」「まとめ」という 政彦・宮内亨 (C2002-18∼20) 構成で展開している。 「JUST 1月号」 講演:西村晃・ 「 I T 活 用 で 見 えてくる 商業界エジュパ 原邦生 ック 本当の顧客」 (C2002-39) DO IT! シリーズ 「コスモスグループ」 (飲食サービス業) 7 ベンチャー企業のビジネスモデルの構築、 ファイナン スの手法、危機への対応など、 ネット時代のベンチャー 企業の経営を詳述している。 商い情報かがわ 2003年2月号 バレンタイン・チョコ生みの親のメリーチョコレートの 原氏がIT活用について実践的な話をしている。 「ベンチャー企業の 経営と支援」 「IT活用で見えてくる 本当の顧客」 “和うるし”の可能性を信じて 和うるし工房あい 宮崎 佐和子さん 執筆者紹介: 漆ア−ティスト。丸亀市出身。高松工芸高校インテリア科、香川短期 大学卒。岡山県の出版社勤務後、香川県漆芸研究所にて漆芸を学ぶ。 岩手県・徳島県で“漆掻き” (採取)をし、純国産うるしのみで事業を展 開、善通寺に漆作家の夫と工房を持つ。2002年3月、五色台で阿波 漆の植栽を行う。 「うるし」、この不思議なもの−。私と漆との出会いは高校 1 年 生の夏、15 歳でした。その時は、まさか生涯をかけた存在になるとは思いもしません。その後憧れだった岡 山の出版社に7 年勤めた私は、激務と現社会の矛盾に行き詰まり、ごく自然に故郷の香川へ戻り、漆の世界に 入りました。 独立して痛感したのですが、作家業もれっきとした一事業。ただ好きな物を作りさえすればいい訳ではあり ません。工房を維持管理し、自分の魅力を生かしてどう事業展開するか…当然ながら経営センスが重要です。 私たちの場合、一番の強みは“うるしの木”と関わっていることでした。 いま国産漆は需要がなく、日本各地の畑も壊滅状態。中国産漆が使われています。他の素材と同じく現在 の人件費や流通等の問題で、価格がなんと10 倍近く違うのが一番の原因でした。漆に従事する方々の多く はうるしの木を知らず、私も修業時代、チュ−ブやプラスチックケ−スに封入された輸入漆を、当たり前のよう に使っていました。 まるで食卓のおさかなが海で泳いでいた姿を想像できない、いたいけな子供みたい…。ごく自然な違和感 からここに可能性があると感じ、修業のかたわら岡山や徳島の漆掻きさんの協力で和うるしを取材していまし た。同じ志の夫・松本和明は高松の塗師の息子。同時期、彼は文化庁の保護する岩手県で香川県初の漆掻き 研修生となり、半年間技術を学び、その後結婚して工房の運営・作家活動をしていくことになりました。 和うるしは、浸透性と結合力が高いのが特長ですが、その魅力は、何と言っても日本人の感性にあった美し く繊細な表現力。うるし樹液は均一ではなく、ワインのよ うに木、畑、産地の違い、貯蔵法などで異なりますが、これ はデメリットではなくメリットと捉えています。また最大の 強みは大きなドラマ性を秘めていること。自然のサイクル から隔離された社会で、人々はいわゆる「癒し」を求めて おり、そこに隠れたニ−ズがあるのです。 江戸時代、讃岐にあった和うるしを復興させよう…。工 房の立上げ時期で苦しかったのですが、波及効果をねらっ て松本の祖父の土地を借り、五色台にうるしの植栽を行い、 地元で話題になりました。今年3月は徳島で苗作りの予定。 また嬉しいことに県の事業でも植栽をする運びになり、そ のお手伝いをします。 日本の文化はすばらしいが、死にかけている。お客様に 「大事なものだから」と従来の形を押売りするだけでなく、 その魅力を現在必要なものに転換する工夫がいります。 和うるしはその可能性を秘めています。 昨年3月2日、五色台での初植栽の様子。 (中央、講師の漆掻き職人・東氏) そして近い将来、和うるしを国外に紹介できる形にした い…。私たち夫婦の夢と試行錯誤はこれからも続きます。 8 アメリカ商業施設の新潮流(Ⅱ) (Ⅱ) 永 峰 かがわ新事業サポートセンター 総合コーディネーター 茂 ポス ト時代の開幕 ●ポストディスカウント時代の開幕 アメリカの小売業は80年代の経済不況を背景に、90年代初頭まで「ディスカウント性」をベースとする新業態が次々に出 てきた。 いわゆる、 「カテゴリーキラー」(これまでの商業形態を打ち破る形態)と呼ばれる新業態の誕生である。 90 年代前半のアメリカ小売業は各業界のこれまでの商業形態と新開発された商業形態が、全米各地で生き残りをかけて 流通戦争をくりひろげていた。「ディスカウント時代」と位置づけられた時期であり、勝ち残った新業態はさらに各業界での 優位性を確保するため、その業態を進化させていった。 それまでの「ディスカウント性」に新たな顧客ニーズを加味させた競争局面の展開であり、 「ポストディスカウント時代」 の開幕といえる。ポストディスカウント時代のキーワードは「エンターテイメント性」であり、お客さまの「うきうき、わくわ く」気分をどのように買物局面のなかで醸成させるのかをめぐる競争であり、90年代小売業の基調となった。 人工的につくられた「街角 人工的に 街角」(ブロック) ●人工的につくられた「街角」 エンターテイメント時代を象徴する商業施設として、前回はエンター テイメント施設のみの集客をベースに、順次物販機能を加えながら開発 された「アーバンエンターテイメントセンター」のユニークな商業施設 の事例を紹介した。 その後も、アメリカが都市形成の過程で消滅したダウンタウンを「郊 外における繁華街」として再生する試みは、全米各地でみられた。 なかでも1998年11月に開業した「ザ・ブロック・アットオレンジ」は、 オープンエアなアウトレットセンターとして特筆される商業施設といえる。 「ザ・ブロック・アットオレンジ」はまさにそのネーミングのように「街 角(ブロック)」としての期待を担って開発された。 人工的に再現された「街角(ブロック)」 かつて消滅した繁華街に現代のエンターテイメント機能を加えて人 工的に再現された新しい街区は、新時代の商業施設として人々の人気 を集めている。 カリフォルニアの快適な気候に合致したオープンエアな街並みがレー ストラック状にレイアウトされ、回遊性を高めると共に、噴水、塔、広場な どのコミュニティ・スペースが整備されている。ここで各種イベントが常 時開催されているほか、街並みにはビルボード(屋外公告)やバナーが 多用され、賑わいを演出している。 テナント構成も、 シネコン、 ゲームセンター、 スケートパークなどアミュー ズメントや飲食が65%を占め、物販は35%と、従来のショッピングセン ターとは逆構成で一線を画している。 敷地面積は75エーカー(98,000坪)。アミューズメントや飲食の核店 全米最大のスケートパーク「ヴァンス」 舗は9店、 テナント数109店、パーキング台数5,485台で構成されている。 ユニークなテナントが多数入っており、アメリカ本土初出店のハワイの土産物店「ヒロ・ハツティ」、フロリダを本拠とする サーフィンの専門店「ロン・ジョン・サーフショップ」、楽器のカテゴリーキラー「マーズミュージック」、さらには全米最大 4,700平方メートルの広さをもつスケートパーク「ヴァンス・スケートパーク」など、多彩な業態が勢揃いして、界隈性あふ れる人間臭い街区を創造している。 住民の誇り「ライフスタイルセンター」 ●住民の誇 21世紀を迎えて、アメリカの商業施設はさらなる脱皮を見せ始めている。新しい開発トレンドは、家庭でも職場でもない 9 商い情報かがわ 2003年2月号 人々が集う「第3の場」の創設であり、同時多発テロ以降の価値観の変化 にも合致した施設として、圧倒的な支持を集めつつある。 「ライフスタイルセンター」と呼称される商業施設であり、これまでの、 家から遠くはなれたショッピングセンターではなく、地域の住宅の中に立 地して徒歩でも行ける利便性を持ち、街並み風のデザインに配慮した小 型センターとなっている。 施設コンセプトは、人々が集う「第3の場」、オアシス空間の提供であり、 近隣型商業機能ばかりでなく、郊外生活の中核となる日常的なコミュニティ 空間として、地域住民の誇りに思える商業施設となっていることが大き 人々が集う「第3の場」 な特徴である。 オープンエアな空間には造園が施され、昔ながらの街並みを強調した 界隈性に、その地域の人々が持っているコミュニティ意識や温かさが取り 入れられている。 裕福な住宅地域を商圏とするだけに、最寄性ばかりでなく時間消費型 のグレードのあるライフクリエーションなテナントで構成されている。 ロサンゼルス郊外のカラバサス市に創設された「コモンズ・アット・カ ラバサスパーク」は、こうした諸条 件をクリアした代表的なライフスタ イルセンターである。 大規模な乱開発を拒否して大都 15世紀のイタリアの村をテーマに 「コモンズ・アット・カラバサスパーク」 会ロサンゼルス市から独立したカラ バサス市は、平均世帯所得が12万 5000ドルにのぼる裕福な土地柄で、 同施設はカールソ社が地域住民の意向を「全て」受け入れて設計開発されただけに、 15世紀のイタリアの村をテーマとするたたずまいは、文字通り「パーク」の名前に恥じ ないオアシス空間をつくり出している。 敷地面積22エーカー(27,000坪)に、店舗面積20万平方フィート(5,620坪)の一 階層の街並みと1500台の駐車場、さらに5エーカー(6,120坪)分の人工湖や子ども たちの遊び場が設けられている。テナント構成は、地域生活の核としてシネコン(6スク リーン)スーパーマーケット「ラルフ」 ドラッグストア「ライトエイド」、さらに「バーンズ& ノーブル書店」など、ライフクリエーションな37店舗となっている。 「パーク」は人工的なモールでは感じられなかった季節感、また自然環境や子ども、高 齢者に配慮したユニバーサルな施設で、地域住民の日常的なコミュニティ空間として「リ フレッシュされる街づくり、元気のでる商業施設」としての役割を担っている。 シアトルの「ユニバーサルシティ・ビレッジ」を第1号とするライフスタイルセンターは、 消費者・生活者レベルから住民・市民レベルを意識した開発であり、そのコンセプト「住 民が誇りに思う商業施設づくり」は、21世紀の商業施設開発の新潮流として、わが国で も問われるべきテーマとして注目したいものである。 緑に囲まれた5エーカー(6000坪)の人工湖 裕福な住民たちのオアシス空間 地域生活の核「シネコン」 (6スクリーン) 10 ↑ 至 高 松 ●さぬき豊中インター ●マクドナルド 114BK● オーナー福田佳美さんと店内 観音寺市本大町1578-3 2F Tel/Fax 0875-23-1665 URL http//www.lifezakka-tempo.net GS● ● 香川BK ★ 至 松 山 ↓ ●大野原インター そう広くはない店内だが、 「tempo」をコンセプトに 当店自慢の ピンクレモネード “Eat"“ Enjoy"“ Sleep"“ Food"と分類、ディスプレー tempo された雑貨たちは、流れるボサノバを聞きながらひな たぼっこをしているかのよう。 “Eat"のコーナーには「tempo(ゆったり)な気持ちで食事を楽しむための」温かみのあ る和食器やベーシックな洋食器たち。 “Enjoy"では「tempo(快適)にすごすための」ステーショナリー、アクセサリーな ど。 “Sleep"では「心身をtempo(心地よい)状態に戻すための」香りやリネン。 “Food"は「心とおなかにtempo (おだやか)な」お茶やチョコレートなどなど。品揃えの幅は広い。 「かわいい !というよりはスタンダードなラインで品揃えしているつもりです。」とおっしゃる福田さんだ が、スタンダードな中にも独自の感性が垣間見え、この手の雑貨屋さんとしては結構個性的かもしれない。 商品の特性としてプレゼントやギフトが多いが、差別化要因はラッピング。「自分で」とおっしゃるお客 様のためにラッピング資材の販売も行っているが、基本的にはサービスで行う。「送る方の気持ちをちゃ んと伝えたくて、資材は(店にとっては)贅沢かな ?と思うくらいのものを使っています。」 仕入はメーカー直で行うことも多いため、新しい感性の商 品が早く手に入れられることも。また、アクセサリーは定番以外は 一点づつしか仕入れないため、お客様は独自性の高いものを 手にいれることができることになる。リピーターには入荷の 都度、メールでお知らせするようにしているとか。また、 Cafeコーナー 店舗の休日は不定だが、前月から店内表示と合わせて ホームページでもお知らせしている。 インターネットも活用した新しい感性のtempo。 西讃地域の新しい風に期待したい。 tempoな雑貨たち http://www.kagawa-isf.jp/ こちらのアドレスでホームページ上でも「商い情報かがわ」が見られます。 http://かがわ新事業.jp.io (ortech.asp.ad.jp ) (商業支援アドバイザー 黒田英津子)
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