ホバークラフトとソーラーカー

4.2
ホバークラフトとソーラーカー
ホバークラフト
松阪市立鎌田中学校
井戸坂幸男
○概要
写真1
ホバークラフトの完成品
写真2
ホバークラフトで遊ぶ子どもたち
ホバークラフトは、空気を地面に吹きつけることにより浮上します。乗用型のものは、
エンジンで大きなファンをまわしています。そして、吹き付けた空気が広がっていかない
ようにまわりにはスカートがついています。この原理をもとに小型のホバークラフトを設
計しました。浮上するためのエンジンとファンは、掃除機のモーターを利用し、スカート
の部分には自動車のタイヤのチューブを使用しています。掃除機は、普通、吸い込みます
が吸い込んだ空気を後部から噴出しています 。その噴出する空気を利用し 、浮上させます 。
○こんなことが学べます
船体を浮上させるためには,どれくらいの空気を噴出させる必要があるか、空気が横に
漏れないためにはどのようにすればよいかなど工夫しながら学ぶことができます。また、
完成したホバークラフトに乗ることにより、一定の速度(等速直線運動)を体験したり、
力の働きを学ぶことができます。
○こんな仕組みです
写真3
ホバークラフトの中
写真4
4.2 - 1 -
ホバークラフトの裏
(Copyright Y.Idosaka,2001)
空気を上から吸い込み、地面に吹き出すように掃除機のモーターを取り付け、地面に向
かって空気を吹き出します。その空気が横に広がっていかないようにスカート部分に自動
車のタイヤを取り付けます。1つだけでは、バランスが悪く、傾いたときに反対側から多
量の空気が漏れますので、バランスをとるために、最低3点以上で本体を支持するように
します。
○準備しよう
材料…黒板クリーナーのモーター(3台 )
〔家庭用掃除機のモーター1台を使用してもよ
い。廃品の掃除機を分解し、モーターを取り出して利用してよい 。(廃品の掃除機
の動かない原因は、モーターによるものでなく、スイッチの断線による場合がほと
んどである。黒板クリーナー1台で約60kg(大人1人)の物体を浮上させる能
力があります 。
〕
自動車用タイヤチューブ(155R12 3本)
コンパネ(90cm×180cm×1.2cm )
、角材(1.5cm×5cm×2m 3本)
電源コード(交流100V15A程度に耐えられるもの20m、工事用延長コードを利
用)
(交流100V用 1個 )、ビス(木工ねじ 4×32mm 30本)、イレクター
パイプ、スイッチ、コーキング剤(1本 )
、板金用強力両面テープ
道具…のこぎり、ドリル、ドライバードリル(ドライバーでも可 )
、はんだごて、ジクソ
ー(ノミでも可 )
)
○作ってみよう
①コンパネで、フロアになる部分を作ります。同じ
形のものを2枚作ります 。
(写真5)
②2枚作ったものの内、1枚にモーターの大きさに
あわせて穴をあけます。穴の大きさは、上の吸い
込み部分の方が下の吹き出し部分より大きくなっ
ていますので、下の吹き出し部分が通る大きさに
あわせます。少し
大きめの穴をあけ
て(上部の大きさ
より大きくならな
写真5 コンパネの加工
いように注意)おいて、大きさがあわなかった部分を
コーキングでうめれば簡単にできます。モーターとコ
ンパネとの取り付けは、コーキングで接着します。
(写真6)
写真6 モーター取り付け
③角材で、上の板と下の板の空間を作ります。角
材と板との接合にはビスを使って接合します。
メインテナンスをするときに簡単にあけられる
ようになります。注意することは、まわりを完
全にかこってしまうと空気を吸い込む部分がな
くなります。空気の吸い込みのための部分をあ
けておくことを忘れないようにしてください。
また、中央部にも補強のために角材をいれない
と上の板に人が乗った場合、板がたわみます。
(写真7)
写真7 本体の設計
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(Copyright Y.Idosaka,2001)
④図のように配線をします。交流100Vで
すので、きちんとはんだづけをし、ビニー
ルテープで絶縁をしないと危険です。
交流100Vですので、モーターはすべて
並 列に接続します。
コンセントへ
スイッチ
モーター
モーター
モーター
⑤人が乗る
ところを
取り付け
ます。安
全ため、
イレキュ
ターパイ
プでガー
ドを工夫
して取り
つけます 。
(写真8
9)
写真8
正面
写真9
背面
⑤裏面にタイ
ヤのチュー
ブを両面テ
ープで取り
付けます。
タイヤの空
気圧は、多
く入れすぎ
ると地面と
の間にすき
写真10 タイヤの取り付け
写真11 タイヤの配置
間ができやすくなり浮上しませんので、少なく(1気圧ぐらいが適当)するとうまく浮
上します。いろいろと試行錯誤で調節をしてください。
○製作の注意
・交流100Vを使用しますので、電気配線は確実に行いましょう。また、安全のため
ヒューズなどを取り付けておきましょう。
・交流100Vを使用しています。コンセントに入れる前によく確認をしましょう。コ
ンセントに指したまま、作業をするとショートや感電の危険があります。
・モーターを家庭用の掃除機を1つだけ使っても工夫すれば製作できます。
○開発にあたって
掃除機のモーターを利用したホバークラフトは、他の本でもいろいろと紹介されていま
す。しかし、モーターの吸い込み口の安全性と人の乗りやすさを考え、このような形で設
計しました。性能的には、大人3名(約120Kg)でも、浮上します。
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(Copyright Y.Idosaka,2001)
ソーラーカー
松阪市立鎌田中学校
井戸坂幸男
○概要
写真1
ソーラーカーで遊ぶ子ども
写真2
ソーラーカー
ソーラーカーは、太陽電池(ソーラーパネル)で電気(直流)を発電し、それをモータ
ーに流すことにより、走行します。電圧・電流値は大きいですが、モーターに電池をつな
いで走る模型の構造と同じです。太陽電池は発電しますが、基本的には普通の電池と同じ
ように考えて製作していけます。製作では廃品を利用し、本体部分には廃品の三輪車と車
椅子を使っています。車椅子を使用することによって、材質がアルミ、ジュラルミンのた
め、軽量化も実現されています。
○こんなことが学べます
太陽光によって発電する様子など最先端の環境技術を学べるだけでなく、環境問題・ゴ
ミ問題・地球の温暖化を考えるきっかけにすることができます。動力はモーターによって
走りますので、自動車のように排気ガスや騒音が出ません。大きさも車椅子の大きさにす
ることによって、車椅子用のスロープさえあれば、どこにでも行くことができます。その
ため、天候の悪い日や日没後でも走行できるようにバッテリーも積んでいます。
○こんな仕組みです
太陽光をあてると電気(直流)電気が発生し、それを
バッテリーに蓄えます。バッテリーからモーターに電流
を流すことによって、走行します。当然、バッテリーな
しでも晴天の日なら走行できますが、大きさを小さく考
えた太陽電池を使用しているため、日陰では走行できま
せん。バッテリーを積むことによって、安定した走行が
可能になります 。
(写真3 4 5)
写真3
ソーラーカー
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(Copyright Y.Idosaka,2001)
←写真4
バッテリー
写真5
モーター→
○準備しよう
材料… ・フレームベース…車椅子(できれば、ブレーキ付きのもの )、三輪車
・太陽電池パネル…FT132-E(Max39.8W,2.52A,15.8V)〔昭和シェル〕×2枚
・モーター…SS40E4-H3F.12.5(200rpm,1.47N・m)〔澤村電気〕
・バッテリー…NB5L-B(12V.5Ah)〔パナソニック〕×2個
ボルトナット、コンパネ、自転車のハンドルとブレーキケーブル他
工具… ドリル、溶接機、はんだごて、スパナ、ドライバー他
○入手先
・モーター、プーリー
澤村電気工業株式会社
〒213-0002 川崎市高津区二子6-12-10
TEL 044-811-9331
・太陽電池パネル
昭和シェル石油(株)新エネルギー 太陽電池事業部門 佐久事業所
〒385-0051 長野県佐久市中込3295
TEL 0267-68-7877
○作ってみよう
①本体(フレームベース )
を製作します。三輪
車と車椅子を強度を
考えながらボルトや
溶接で接合します。
その際、強度が足ら
ない場合は、鉄のア
ングル(3*25*25*
5.5m)等で補強しま
す。基本的に三輪車
は鉄、車椅子はアル
ミ合金ですので、溶
接ができません。種
類の違う金属を接合
する場合は、ボルト
を使います 。
(写真6 7)
写真6
本体
4.2 - 5 -
写真7
裏面
(Copyright Y.Idosaka,2001)
②モーターを取り付
けます。モーター
の動力をどのよう
に伝えるかが工夫
が必要です。今回
は、プーリーを使
い、直接タイヤに
押しつけて動力を
伝えるようにしま
した 。(写真 8 9) ↑写真8
モーター取り付け
↑写真9
プーリー
③太陽電池パネル、
バッテリーを取り
つけます。太陽電
池パネルは、割れ
やすいもの(シリ
コン結晶板)のた
め、裏に補強する
ものを敷くとよい
とでしょう。今回
は、アルミ板(0.6mm) ↑写真10 パネルの取り付け ↑写真11 バッテリー
を使っています。また、操作用のスイッチも取り付けます 。
(写真10 11 12)
※直流の回路ですので、極性(プラスとマイナス)に注意しましょう。
※回路図
写真12
スイッチ
+ 太陽電池パネル(Max15.8V) -
+ バッテリ(12V) + モーター(12V) -
+ 太陽電池パネル(Max15.8V) -
+ バッテリ(12V) スイッチ
④最後にカラーリングをして完成です。
↑写真13
ブレーキ
↑写真14
4.2 - 6 -
カラーリング
(Copyright Y.Idosaka,2001)
○製作の注意
・太陽電池パネルは、割れることがありますので、取扱には十分注意しましょう。
・太陽電池は、直流でも大きな電流を流しています。感電には、十分注意しましょう。
・直流12Vでも、電流値が大きいと危険です。感電しないように注意しましょう。ま
た、極性を間違えると壊れてしまう場合もありますので、注意が必要です。
・いろいろな形を工夫してみましょう 。また 、ソーラーカーレースなどもありますので 、
チャレンジするのもいいでしょう。
○開発にあたって
ソーラーカーを製作するには、どのタイプの太陽電池を選び、どのサイズのモーターを
使用するかを選ぶことは経験と知識が必要です。最近、ほとんどの工業高校では、ソーラ
ーカーレースに取り組んでおり、知識を持った先生もたくさんみえます。今回は、松阪工
業高校の伊藤潤三先生の協力により製作しました。
また、バッテリーの必要性については、いろいろと実験を行いました。晴天の日でも太
陽光線の角度が変わったり、日陰などがあり、電圧・電流値がモーターをまわすほど発生
しない場合があります 。電圧・電流を安定させるためにも 、バッテリーは必要です 。また 、
充電・放電を何度も繰り返しますので、バッテリーへの負担が大きいこともわかってきま
した。
動力を伝えるプーリーですが、多少のすべりがあります。すべりをなくすためには、チ
ェーンやギヤなどで伝える方法も工夫する必要があります。
※この資料により製作した場合の事故及び怪我については、一切責任を負いません
ので、ご了承下さい。
※この資料の無断転載を禁止します。
※この資料は、下記の本として出版されています。
書籍「つくる科学の本」
編著者 足利裕人
定価1500円
発行所 株式会社シータスク出版
2001年9月20日発行
(株)シータスク UnDigital事業部
TEL 03-5964-6800 FAX 03-5964-6801
〒173-0024 東京都板橋区大山金井町48-7
http://www.c-task.co.jp
・本の注文先
http://www.c-task.co.jp/flsorder.html
2001.11.21
「早期ものづくり教育に関する調査研究」に関する研究会資料
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(Copyright Y.Idosaka,2001)