緑肥(小麦)の鍬込みによる大豆収量の向上 山形県農業総合研究センター 作物資源開発部 研究のねらい 大豆栽培では堆肥などの有機物の施用が基本であるが、堆肥の入手が困難な地域で堆肥無 施用の栽培が続いた圃場では、地力が低下して収量が低迷している。そこで、大豆の収量を 向上させるために、越冬性作物の小麦を緑肥として利用する簡便な地力維持技術を開発した。 研究の成果 ①小麦の緑肥利用は、堆肥散布が困難な大豆栽培地区で簡便に取り入れられる有機物施用技術で、 緑肥用の小麦の栽培と鍬込みは、次の手順で行う。 1)前年の秋の大豆黄葉期に乾燥種子 20kg/10a を大豆立毛間に無施肥で散播して、その後に 落ちた大豆の葉で水分を保ち小麦を発芽・生育させる。 2)翌年の融雪期に 10a あたり窒素成分で 5kg の肥料(硫安)を施用して小麦に窒素を吸収さ せる。 3)大豆播種の約 1 ヶ月前(小麦の穂孕み期頃)に至ったら、モアや刈払い機等で細かく細断 した後にロータリで土中に鍬込む。 ②鍬込み時の小麦は、乾物重が約 480g/㎡、C/N 比が 42 の緑肥となる。この緑肥を施用した大豆 は、無施用と比べて主茎長、茎径、莢数が増加して収量が増加する。 大豆黄葉期に大豆条間へ小麦を 散播する(播種量 20kg/10a)。 越冬 融雪期に硫安を施用 (窒素成分 5kg/10a) 緑肥(小麦)が肥料を吸収 して葉色が濃くなる。 大豆播種 大豆播種 1 ヶ月前に 緑肥(小麦)を細断する。 細断した直後にロータリ で鍬込みをする。 図1 緑肥(小麦)の生育経過と鍬込み 表1 緑肥(小麦)の成分と大豆の生育と収量(2007~2009 年) 緑肥小麦の成分注2) 区 無処理 緑肥(小麦) C/N T-N - 42 乾物重 (%) (g/㎡) - 0.95 489 大豆の生育と収量 主茎長 (cm) 73.0 79.1 主茎 節数 (節) 17.7 17.8 分枝数 茎径 莢数 子実重 (本) 4.7 4.7 (mm) 9.1 9.5 (個/㎡) 522 620 (kg/a) 29.9 36.3 同左 外観 百粒重 比率 品質 (%) (g) (1~10) 100 27.9 1.3 121 28.6 1.3 注1) 緑肥小麦には、融雪期に硫安を窒素成分で5kg/10a施用した。 注2)C/N、T-Nは'07年のデータ。その他は'07~'09年の平均値。 注3)供試品種は タチユタカ。試験期間中、堆肥は無施用。圃場は所内転換畑(細粒灰色低地土)。 問い合わせ先 : 作物資源開発部 ℡023-647-3500 e-mail ynokense@pref.yamagata.jp
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