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ボストン コンサルティング グループ
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●パターン認識からチャンスをつかむ
●シンプルを貫く経営
●パターン認識からチャンスをつかむ
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●シンプルを貫く経営
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パターン認識からチャンスをつかむ
パターン認識からチャンスをつかむ
1つ目は、必要とされる製品やサービスを極端な低価格で提供する「ワン
ランク下」のビジネスモデル。2つ目は、思い入れのある分野でなら「ワン
パターン認識からチャンスをつかむ
ランク上」のものを買いたいという顧客セグメントを惹きつけることで新た
な市場を開拓するやり方。3つ目は、ワンランク上とワンランク下の志向の
顧客のどちらも失うことなく、両方の声に応える戦い方。4つ目は、
「固定資
産の購入」を「変動費」に置き換えることで特定の高額商品の顧客ベースを
広げる仕組みである。
ビジネスリーダーは、自社の業界や関連業界の動きに常に注意をはらって
いるが、なかでも意欲的なリーダーは、自社の関連業界を超えて、似通った
信頼できる「ワンランク下」
市場の状況や広い意味での競合企業を探し出し、その動きに着目する。彼ら
ヨーロッパのホテルチェーン「フォーミュラ・ワン」は、ワンランク下の
は、そこで革新的な価格体系や製品デザイン、商習慣、技術などを探求した
市場で成功している事業の好例だ。同チェーンのホテルは、一泊するのにご
り、たとえば消費者接点のマネージや、サプライヤーとのコラボレーション
く基本的な要素、すなわち、簡易なチェックイン、清潔な客室、シャワーを
など、他業界での進んだやり方から新たなアイデアを取り込んだりする。私
わずか27ユーロ(約4,400円)で提供している。フォーミュラ・ワンの客室
たちはこのような手法を「競合パターン認識」と呼んでいる。
には3人まで宿泊することができ、パン、デニッシュ、コーヒー、オレンジ
パターン認識は、意識調査やフォーカスグループ、インタビューなどの従
来型マーケット調査手法とも、教科書的な競合分析とも異なる。パターン認
ジュースの朝食が食べ放題で3.40ユーロ(約550円)である。まさに、フォ
ーミュラ・ワンはバーゲン好きの人にとっての夢だといえよう。
識の目的は、事業の現状改善ではなく、事業がどのように変わりうるかにつ
フォーミュラ・ワンは1985年に、世界中に約4,000のホテル施設を展開す
いての洞察を探求することである。パターン認識では、その商品を、どんな
る大手ホテルチェーン、アコーによって設立された。アコーの傘下には、ソ
人が、どのように使っているか、また、どんな使い方の可能性があるか、そ
フィテル、ノボテル、メルキュール、レッドルーフイン、モーテル6などの
れぞれどんな理由があるのか、といったことについて、大量の定量的・定性
そうそうたる著名ブランドのホテルがある。当時、低価格でありながら上質
的データを収集する。そして、「どうして自社はこのようなやり方をし、彼
なホテルを望む声は非常に大きかったものの、そのニーズは満たされていな
らはあのようなやり方をしているのか」
、
「自社のやり方と他社のやり方はそ
かった。もちろん安価な部屋はあったが、まともなベッドとテレビが備え付
れぞれ、顧客のニーズや要望にどう適合しているのか」
、
「これらのやり方を
けられているか、我慢できるバスルームに辿りつけるかどうかは疑わしかっ
どのように組み合わせたら顧客満足度やロイヤルティを引き上げられるか」
た。
といった基本的な問いを追求する。パターン認識から最大の効果を上げるに
アコーはフォーミュラ・ワンの客室に厳密な基準を設定することで、この
は、自社の事業とは別の市場で事業を営む企業が、自社の市場に見られるの
状況を一変させることにした。その基準とは、1泊100フラン未満(今日のほ
と同様の傾向にどのように対応しているかをつかむことが重要だ。
ぼ13ドル相当)、高い清潔度、快適なベッド、カラーテレビ(1985年に!)
というものであった。今日アコーは、フォーミュラ・ワン・ブランドで世界
以下に、前号でもご紹介した「一人二極化消費」を例にとり、さまざまな
市場でのパターン認識から抽出された4つのアイデアを紹介したい。
1
12カ国に370軒を超えるホテルを展開している。
経済性と一定の品質の両方を提供するために、アコーは開発、建設、経営
2
パターン認識からチャンスをつかむ
パターン認識からチャンスをつかむ
にかけるコストを削減することにした。まず、ホテルの立地は地価の安い市
けない理由などあるだろうか、とでも言いたげに。
街地のはずれを選び、建設にはプレハブ部材を用いた。各客室に標準デザイ
あらゆるカテゴリーの高級ベビー用品における消費者支出は世界中で年
ンを規定し、建築士に支払う料金を最小限に抑えた。フォーミュラ・ワンの
間約450億ドルに達しており、それに最も多く寄与しているのは所得が全体
客室にはそれぞれ、ダブルベッド一台と、その上にシングルの二段ベッドが
の上位10%に入る世帯だ。そこではまさに爆発的な成長が起きている。
ついていて、3人までが泊まれるようになっている。フロントに受付係がい
親は常に、子どもには最高のものを望んできた。しかし、一人っ子を持
るのは一日6時間だけで、それ以外の時間には、宿泊客はクレジットカード
つ今日の共働き夫婦の出費ぶりを見ると、自分たちの子どもがまるで王子
でチェックインやチェックアウトの手続きができる1。
や王女であるかのようだ。この子どもたちがもっと大きくなった時、今度
フォーミュラ・ワンの客室は、パリの最高級ホテル「ル・ブリストル」のス
イートには到底かなわないが、多くの旅行者にとっては、一晩ぐっすり眠れ
はどんなカテゴリーが、このような高収入の両親の想像力と情熱をつかむ
のだろうか。
て朝食が食べられれば必要十分なのだ。しかも、2ツ星ホテルに泊まらずに
節約したお金で、市内の3ツ星レストランで家族全員が食事できるのである。
両極制覇へのチャレンジ
あなたの会社の事業でフォーミュラ・ワンに相当するものが考えられるだ
二極化消費という傾向をしっかりとらえて、高価なものから安価なもの
ろうか。最低限に抑えたコスト、信頼できるサービス、安定した品質、画期
まで幅広い商品を提供しようとしている企業もある。健康志向の高級食料
的な料金水準、を1セットにしたビジネスモデルの青写真を描いてみてはい
品を専門に扱っていることで古くから知られている、アメリカのホール・
かがだろう。
フーズ・マーケットは目下、顧客の要望により的確に応え、競合優位を構
築するための武器として、実験的な価格設定を進めている。
たいせつな人のための「ワンランク上」
ホール・フーズは、多くの顧客にとって、ホール・フーズ店舗での購入
消費者は、コーヒーから自動車にいたるまで、ほとんどすべての商品カテ
額がすべてのスーパーマーケットでの買い物合計額のごく一部にすぎない
ゴリーにおいてワンランク下の消費を行なっている。たいていの場合、収入
ことを認識していた。実際にホール・フーズは、あらゆる小売企業が行な
の如何にかかわらず、できるだけ良い商品をできるだけ安価で買おうとす
っているのと同様に、各商品カテゴリーの需要全体における自社のシェア
る。しかし、なかには、ある特定のセグメントの消費者がワンランク上の消
を顧客セグメントごとに分析した。その結果、ホール・フーズの熱心なフ
費に夢中になる商品カテゴリーもある。そのひとつが、一人っ子を持つ、や
ァンは食料品のほとんどを同店舗で買っているが、そこまで熱心なファン
や年嵩の親たちのベビー用品に対する支出である。
でない顧客は日常的な食料品のほとんどを別の店で買っていて、ホール・
このような親たちのほとんどは、共に仕事を持ち、自身のキャリア形成に
フーズで買った食料品は全体の約15%から20%にすぎないことがわかった。
集中するために子どもを持つのが遅くなった夫婦だ。2〜3人の子どもを持と
私たちの調査によると、約200品目の食料品および食品関連商品について
うと考える比較的若い親と異なり、多くの年嵩の親たちは、自分たちの子ど
は、消費者の価格認識が高い。消費者はこれらの商品についてはブランド
もは一人っ子になると思っている。そこで彼らは収入(それもかなり多い)
や店舗ごとの価格帯を知っている。そのような実用的な知識こそ、できる
のなかから突出した額をバガブーの超高級ベビーカー、ラルフ・ローレンや
だけ低価格で最高のものを手に入ようとする消費者の戦略のひとつなのだ。
クリスチャン・ディオールの洋服、高度な技術を駆使した知育玩具などにあ
ホール・フーズは、価格認識度の高い商品の一部について、より価格競
てる。両親にそうする余裕があるのだから、子どもに最高のものを与えてい
争力のある、市場をリードするような価格で販売することを計画している。
1 欧州ほか海外のフォーミュラ・ワンの設備・サービスに基づく。
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4
パターン認識からチャンスをつかむ
パターン認識からチャンスをつかむ
そうすれば、同社店舗での消費者の購入額が支出全体に占める割合を増やせ
共同所有を選ぶのはどのような人々だろうか。世帯純資産が1億ドルを超
ると考えたからだ。そして、顧客が定期的に店舗を訪れるようになれば、よ
えるような大富豪ではない。そのような大富豪は、共同所有という所有形態
り高級な商品も買うようになるはずである。同社のスポークスマンは、「価
が存在することさえ知らないだろう。米国では、100万ドル以上の純資産を
格認識度が高い商品について、参入しているあらゆる市場で価格競争力を持
持つ「中程度の富裕層」世帯が中心になって共同所有が拡大している。これ
つプライシングを行なう」と語る。最高品質を維持しながら、幅広いプライ
らの裕福な消費者は賢明な支出行動をとる。彼らは、いつ、どこで、どのよ
ベート・レーベル商品を揃え、視覚を刺激する店づくりをして、カギとなる
うに投資をしたいかを慎重に選んでいる。彼らは自宅や自家用車を持ち、旅
品目には戦略的な価格設定をすることが彼らの勝利の方程式なのだ。
行には正規運賃をきちんと払う。しかし、1年に1度しか訪れない家を資産と
もちろんホール・フーズにとって、このような形で顧客の要望に応えるこ
とは、「両極を制覇する」戦略のごく一部でしかない。同社は、量販店も含
め、有機・健康食品市場への新規参入店に顧客が移っていかないように努力
している。
して抱え込むことに、何の意味があるのだろうか。彼らは汗水流して得た金
をはるかに有意義に使える方法があることを知っているのだ。
共同で所有するものは別荘や船、飛行機に限らない。少しばかり創造力を
働かせて応用すれば、多くの消費者がごくたまに使いたいと思う、さまざま
あなたの事業に、ホール・フーズのような当該商品カテゴリー内の自社の
シェアを上げるモデルを応用することはできるだろうか。価格を下げて、シ
な製品やサービスを手頃な価格で利用できるビジネスへと展開することがで
きよう。
ェアを獲得することは可能だろうか。
*
*
*
高額固定資産の変動費化
消費者は非常に賢明になってきている。共同所有、すなわち別荘、飛行
競合パターン認識では、目前の競合企業を超えて、最高級品やニッチ・ブ
機、船などの一部の権利を購入する人が増えてきたのもそのことを示すもの
ランド、他国企業、新参企業などを含めた市場全体に目を向ける。そして、
に他ならない。
さまざまな市場で起こっている現象のうちカギとなる要素を探り出し、それ
彼らが高価な固定資産の一部のみを所有する理由は、それしか購入できな
らが互いにどのように結びつき、その結びつきのパターンを他の業種や市場
いからではない。そのような固定資産全部を購入したいとは思わないから
にどのように応用できるかを探求する。他社が何かおもしろいことをうまく
だ。消費者は、人生において最も自由がきかないのは時間だということを知
やっていないだろうか。彼らのアイデアを自社の顧客にどのように活用する
っている。100万ドルの別荘を購入しても、年間14日間しかそこで過ごせな
ことができるだろうか。革新的なビジネスリーダーは、こうした他業界・他
いのであれば、それは高価すぎる買い物だ。だが、同じような別荘、あるい
市場でのパターン認識を通じて、事業の進化の方向性や成長機会に関わるヒ
はさらに豪華な別荘を8万ドルの会費と1週間5000ドルの料金で使用すること
ントを常に探求している。
ができるのなら、彼らにとっては割安なのだ。
共同所有を選ぶ人々の考え方や行動は、高価な固定資産のオーナーたちと
は異なる。彼らは面倒な手入れや改修、価格の変動と無縁でいられるのを快
く思っている。特別な機会に衣装をレンタルするのと同じように別荘や船を
使いたいのだ。
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シンプルを貫く経営
パターン認識からチャンスをつかむ
マイケル・J・シルバースタイン
フランソワ・ダレンズ
シンプルを貫く経営
原題: Looking for Patterns
マイケル・J・シルバースタイン
BCGシカゴ事務所 シニア・パートナー & マネージング・ディレクター
共著に、
「なぜ安くしても売れないのか 一人二極化消費の真実」
(杉
田浩章監訳、飯岡美紀訳、ダイヤモンド社)
、
「なぜ高くても買ってし
まうのか 売れる贅沢品は『4つの感情スペース』を満たす」
(杉田浩
章監訳、BCG訳、ダイヤモンド社)
。
フランソワ・ダレンズ
BCGパリ事務所 パートナー & マネージング・ディレクター
ビジネスのあらゆる側面をできるだけシンプルに保つことは、経営幹部
にとって最も困難な課題のひとつといえよう。本来複雑にする必要もない
ところをあちこち複雑にしてしまった結果、身動きがとれなくなった組織
の話は後を絶たない。シンプルに保っていればこのような問題は生じず、シ
ンプルに保つことには莫大な潜在的価値が潜んでいる。
複雑性は、プライシングや契約条件、提供する製品、サプライヤーネッ
トワーク、製造ライン、組織構造、ビジネスプロセスに数限りないバリエ
ーションをつくってしまうために発生する。そのような複雑性の中には価
値を高め、収益を上げているために正当化できるものもある。しかし、多
くはそうではない。人件費を増大させ、サイクルタイムを引き延ばし、顧
客と従業員の双方にフラストレーションを感じさせ、価値を破壊する場合
の方がよほど多いのだ。ある企業について概算したところ、労働力の実に4
分の1がもっぱら「複雑性に対処する」ために存在しており、その人件費と
して年間10億ドルを優に超えるコストがかかっていた。もちろんこのコス
トには、苛立ちを募らせた顧客から得られるべき収益を上げられなかった
ことによる損失は含まれていない。
複雑性は何気なく入り込み、じわじわと増えていく
不必要な複雑性をもたらす原因は何なのだろうか。正しく言うと、その
ような原因をつくっているのは誰なのだろうか。その答えは、
「組織のあら
ゆるレベルの善意あふれる人々」である。たとえば、次のようなことがあ
なたの身近でもよく起こっていないだろうか。
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8
シンプルを貫く経営
シンプルを貫く経営
誤ったやり方で顧客の声に応えようとする。
必要だ。
「応える」とは「相手の欲するままに合わせる」ことだと解釈している人
や組織が多い。しかし、これでは個別対応するための手作業や、ばらばら
1.
まず複雑性の根源を断つ。
いきなりビジネスプロセスやテクノロジーに手をつける前に、まず、複雑
の対応策が多く生じるため、結局混乱をきたし、顧客の満足につながらな
性の元となっている要因そのものに正面から取り組む必要がある。例えば、
いことが多い。
プライシングにおける特例や非標準的な契約条件、少量製品コードなどであ
る。自社にプライシングの方法や契約条件、製品コードが一体いくつあるの
経済性がじわじわと悪化する。
1つの複雑性を加えるコストはほぼゼロであるため、何か1つ複雑にする
か、それらがどれほど収益に「貢献」しているのか、一方でどれほどのコス
ことにためらいをもつことはほとんどない。だが、複雑になった要素が数
トを(直接および間接的に)発生させているのか、そして最も重要なことと
多く積み重なれば、累積コストは非常に大きくなる。そして、それを考慮
して、それらがどれほど顧客の要望に対応する能力の妨げになっているか
に入れる人はほとんどいないために、複雑性によるコストはじわじわと増
を、徹底的に究明する。そのうえで、高い価値を持つものだけを残し、低価
えていく。
値の多くの非標準的慣行は廃止する。こうすると、既存のビジネスプロセス
やテクノロジーでも目を見張るほどうまく機能するものだ。
テクノロジーを盲信する。
複雑性の問題はIT(情報技術)が「自動的に解決してくれる」と無邪気
に信じている企業が多すぎる。もちろん多数の複雑な課題を処理すること
が、コンピュータの存在意義であるのは確かだ。だが問題は、ITが対応で
2.
排除、適合化、分離の3つに分けて取り組む
複雑性はすべて同じように生み出されてきたわけではない。個々の複雑性
を、その性質により次の3種類の打ち手に分けて取り組むことが必要だ。
きる能力を超える速さで複雑性が増大し、ITへの妄信が複雑性をさらに拡
・排除
大していることだ。
単純に取り除く。ボリュームが小さいバリエーションは、ボリューム
の大きな標準的なものに統合する。この取り組みを成功させるために
増えたものは簡単には減らない。
物価、体重、子どもの小遣いなど、一度増えたものはたいてい減ること
はない。ビジネスにおける複雑性も同様だ。値引き方法や製品コードを新
は、徹底的な排除と関係者の説得が必要になる。
・適合化
たに一つ導入するのは実に簡単なことだ。しかし、それを廃止したり、顧
工場さながらのプロセスによって、ボリュームが大きいバリエーショ
客を旧コードから新コードに切り替えたりすることは、全くもって容易な
ンを標準化し、自動化を進める。価値が低い、あるいはボリュームが小
ことではない。
さいバリエーションを無理にこの「工場」方式で処理しようとしてはな
らない。作業が滞る原因となるからだ。
複雑性を解消するにはどんな打ち手が必要か?
・分離
では、複雑性を減らしてビジネスをシンプルにするには、どうすればよ
価値が高い、あるいはボリュームが小さいバリエーションは、個別生
いのだろうか。これをうまくやるには、以下の5つの原則を実行することが
産方式で処理する。自動化しようと考える必要はない。これらは、量が
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シンプルを貫く経営
シンプルを貫く経営
少ない、あるいは価値が高いために、手作業で処理することが妥当と認
シンプルに保つケイパビリティを構築する
められる。ただし、個別生産方式で処理するもののボリュームは常に小
複雑性を減らすとは、ビジネスをできるだけシンプルに見直すだけではな
さく抑え、個別生産方式で処理するものと工場方式で処理するものを明
く、ビジネスをできるだけシンプルなまま「維持する」ことだ。それは複雑
確に分けておくことが必要だ。
性を一掃すれば終わりというものではなく、継続的なプロセスである。ゆえ
にこの取り組みでは、製品のライフサイクルやポートフォリオ全体を通して
3.全社的に取り組む。
複雑性をマネージすることが必要になる。必然性を伴わない、その場限りの
ビジネスから複雑性を取り除くには、全社挙げての取り組みが必要にな
例外的対応はやめ、共通項を引き出すことが肝要だ。また、営業プロセス全
る。ひとつ行動を起こすたびに、組織内には一次的、二次的な影響が及ぶ。
体にわたる複雑性のマネジメントが求められる。簡単に言えば、ビジネスを
そして、それらの影響は部署の枠を超えて現れるため、複雑性低減への取り
シンプルに保つためには、一度きりの活動で終わるのではなく、それを可能
組みの人員配置やマネジメントも、機能横断的に行う必要がある。
にするケイパビリティ(組織能力)を組織内に構築することが求められる。
複雑性マネジメントのケイパビリティは、人材、システム、そして、ハー
4.統計の罠に気をつける。成果そのものを測定する。
複雑性を減らすのは、コスト削減、顧客対応の改善、収益の増加といった
ド面およびソフト面でのフィードバックループにかかっている。自社のケイ
パビリティについて以下の問いを自問していただきたい。
具体的な成果を上げるための一手段にすぎない。これらの成果を直接測定
し、効果が出ていることを確認する。成果そのものではなく、複雑性に関わ
・自社には、複雑性に関するオペレーション上の定義があるか。
る統計的数値がどれほど低下したか(例えば製品コード数の削減など)を測
・自社がどれほどの複雑性を抱えているかを、ばらばらの逸話としてでは
定して勝利を宣言する、という罠に陥ってはならない。
なく、定量的に把握しているか。
・ボリュームが少ない非標準的慣行がどれほどの価値を生み出し、またそ
5.個人のリスクがない環境をつくる。
れらにどれほどのコストが費やされているかを把握しているか。それら
複雑性の問題に取り組むのは個人的にリスクが高いと考える従業員が多
は利益を生み出す源泉か、あるいは利益を漏出させる穴のいずれだろう
い。複雑性を減らそうと行動を起こすより、そのまま放置しておく方が、結
か。その非標準的慣行は、顧客に効果的に対応する上での障害になって
局ずっと安全だと。ある製品マネジャーは「少量製品コードをそのままにし
いないだろうか。
ておいたからといって解雇される人はいない。だが、私がもしも中途半端な
・複雑性を制御するためのチェック・修正機能は存在しているか。その機
製品コードを廃止した後に誰かにそれを要求されれば、私は責められること
能は、前述の「複雑性の排除、適合化、分離」の3種類に分けて対応す
になる」と語った。経営幹部が目に見える形で変革に関与し、支援しなけれ
る仕組みになっているだろうか。明確なフィードバックプロセスがある
ばならない。そして、廃止した特例を要求された場合はいつでも、複雑性削
か。意思決定がばらばらにその場限りで行なわれていないか。
減に取り組むスタッフを擁護することが必要だ。
以上の問いに対する答えが満足できるものでないなら、まさに改善できる
余地があるということだ。
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シンプルを貫く経営
ケン・ケヴェリアン
ヴィカス・タネジャ
ボブ・ヴィクター
原題: As Simple As Possible
ケン・ケヴェリアン
BCGボストン事務所 シニア・パートナー & マネージング・ディレクター
ヴィカス・タネジャ
BCGボストン事務所 パートナー & マネージング・ディレクター
ボブ・ヴィクター
BCGワシントン事務所 パートナー & マネージング・ディレクター
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バックナンバーは、弊社ホームページでご覧いただけます。
http://www.bcg.co.jp/
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2007年5月発行