序 今回、大田裕作院長より「五十周年記念誌に『KBI

序
今回、大田裕作院長より「五十周年記念誌に『KBI の神学の特徴』について論稿を書いていただきた
い」との連絡を受け、「大変光栄なことです」と引き受けさせていただきました。「神学校には宣教のパト
スと神学のロゴスの両輪が必要である」といわれます。まず KBI(関西聖書学院)においては、大田院長
の宣教のパトスを心臓部分とし、神学諸科目のロゴスを手足としているところに基本的特徴があると思
います。その手足の一部としての立場を自覚しつつ、同時に KBI 神学諸科目の枢要部分である『組織
神学』を任されている者としてその責任を果たすという意味から、『福音主義神学 A・B』『組織神学』『ペ
ンテコスタリズム A・B』DVD 講義録を主たる資料源とし、過去・現在・未来というマクロ的な視野から眺
望しつつ“KBI の神学的ルーツとアイデンティティ”を描き出してみたいと思います。
①KBI 共同経営諸教派と JEC の関係について
それでは KBI の経営形態を視野に置きつつ、KBI の神学的ルーツを歴史的に大まかにさかのぼって
いくことにしましょう。KBI は複数の諸教派の共同経営によって支えられている神学校です。理想から申
しますと、KBI の共同経営に参画しておられるそれぞれの教派のルーツとアイデンティティがそれぞれ
の教派を代表される神学教師により記述され、それらの神学が KBI という神学教育の場でどのように
調和・整合されているのかについて書かれるべきかと思いますが、今回はそれをまとめている時間的
余裕がありませんので、ここではその中心部分を担っている JEC(日本福音教会)を中心にみていくこと
にします。(誤解なきよう書き添えさせていただきますと、KBI の屋台骨を支えているのは JEC でありま
すが、わたしの理解では KBI=JEC ではなく、KBI≧JEC であると思います)。JECのマザー・ミッションは、
「スウェーデン・オレブロ・ミッション(現在は三教派合同により“インターアクト”)」でした。スウェーデン・
オレブロ・ミッションは、「スウェーデン・バプテスト系諸教会」を基盤としていました。スウェーデン・バプ
テスト教会のルーツは英国の宗教改革であります「ピューリタン運動」の流れにあります。ピューリタン
運動は十六世紀のルターやカルヴァンの「宗教改革の流れ」の中のひとつにあたります。宗教改革は、
ある意味で「古代の正統教理」を継承する運動であります。そして古代の正統教理は、「初代教会の信
仰」に根差しており、「イエス・キリストの死・葬り・復活の事実と使徒たちの証言」を基盤にしています。
②ペンテコステ諸教派の歴史と神学の重要性
その中で、共同経営に参加されている諸教派の歴史的関連をみますと、英国教会から独立したメソ
ジスト派が母体となって、後にアメリカにおいてホーリネスなどの教会、またペンテコステ派の流れが生
み出されて行ったという歴史的経緯には留意しておくべきと思います。礼拝学の大家ジェームズ・ホワ
イト著『プロテスタント教会の礼拝』では、「宗教改革派・メソジスト派・リバイバル派・ペンテコステ派」が
扱うべき四つの基本的領域として扱われています。今日、リベラル派・福音派を問わず、優れた神学者
の間では、ペンテコステ派の歴史と神学は欠かすことのできない重要な分野となっています。
<1> 過去: KBI の神学的ルーツにおける十一の特徴
このような理解に立ち、私なりにもう少し詳しく記述していきますと、第一に「初代教会」との関連に
おきましては、「聖書における創造や福音を神話とか創作とみるリベラルな神学校」とは異なり、KBI は
使徒たちの信じていた通りの使徒的キリスト教を割り引きもせず、水増しもせず、忠実に継承し、それ
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を熱烈にあかしする神学校です。第二に「古代教会」との関連におきましては、「主要教理を軽視して
異端に走る神学校」とは異なり、KBI とはあらゆるところで(公同性)、常に(古代性)、すべてによって
(一致同意)信じられてきた正統信仰の根幹を基本とする神学校です。三位一体論やキリストの神人二
性一人格論などがそれにあたります。第三に「中世を背景にした宗教改革」との関連におきましては、
KBI は「聖書のみ」「信仰義認」「聖徒の交わりとしての教会(万人祭司)」の三大原理を忠実に継承する
宗教改革の子孫としての神学校です。第四に「宗教改革における四つの流れ(ルター派、カルヴァン派、
アナバプテスト派、英国のプロテスタント)」の関連におきましては、KBI は英国のプロテスタント(ピュー
リタン運動)につながりをもつ神学校です。実際にバプテストの信仰告白のひとつであります第二ロンド
ン告白は、「ピューリタン神学の華」といわれますウエストミンスター信仰告白のうち、教会論のみを会
衆制に変えたものと言われています(ちなみに、KBI 信仰告白は、スウェーデン・バプテスト系オレブロ・
ミッションにより形成された JEC の信仰告白と同じ内容です)。第五に「アルミニウス主義対カルヴァン
主義の論争」の関連におきましては、KBI は神は常に神学よりも大きいし、聖書は私たちの組織的成文
化よりもずっと豊かで大きいという理解の下に両者を包摂する立場をとる神学校です。JEC の母体であ
ったスウェーデン・バプテスト系の流れはカルヴァン主義者を主としつつ、アルミニウス主義者をも包摂
しています。第六に「信条主義」の関連におきましては、KBI は簡易信条主義の立場をとっていますが、
信条は常に誤りのない聖書に従属することを認識しつつ、バプテストの信仰告白をはじめとし、ウエス
トミンスター信仰告白や小教理問答などの諸信条の価値を認め、それらからも学ぶ神学校です。第七
に「正統主義神学」との関連におきましては、KBI は宗教改革の遺産の体系化であります十七世紀の
プロテスタント正統主義と近代の福音派の神学との連続性を認識する神学校です。高橋昭市先生が
教えてくださいましたヘンリー・シーセン著『組織神学』や現在わたしが教えていますミラード・エリクソン
著『キリスト教神学』(ペンテコステ・カリスマ派から保守福音派までの日本のほとんどの神学校で、基準
的「組織神学書」ないし、それに準ずる神学書として使用されており、福音派の共通項を深く耕すため
に用いられている)もそれらを継承しているものです。第八に「敬虔主義運動」との関連におきましては、
KBI は「正しい教理は正しい生活実践を伴わなければならない」と考える敬虔主義運動の体質を有する
神学校です。「十字架のメッセージ」もその霊的遺産のひとつです。第九に「自由教会(フリー・チャー
チ)運動」との関連におきましては、KBI は教会と国家とが明確に分離した社会において独立と自治を
有する「目的を同じくする自発的共同体」としての教会観をもつ神学校です。「明確に新生したもののみ
に、浸礼を授け、そのメンバーで教会形成をする」バプテストの流れはその典型です。第十に「リベラリ
ズム(自由主義神学)と福音主義」との関連におきましては、KBI は「聖書を誤りのある歴史的・宗教的
一文書」としてみるリベラリズムに危機感を抱いて1846年に結成された「聖書を神によって霊感され
た誤りのないことば」としてみる福音主義同盟の9項目より成る福音主義信仰にたつ神学校です。JEC
の母体であったオレブロ・ミッション(現在、三派合同によりインターアクト)はスウェーデン福音同盟に所
属しており、世界福音同盟の一員でもあります。JECまた KBI は日本福音同盟に加盟していませんが、
同じ立場に立っていることに疑いの余地はありません。そして第十一に「世界宣教運動」との関連にお
きましては、KBI は「世界宣教運動を非聖書的な方向に向けてきたWCC(世界キリスト教協議会)」に
対抗して開催されました1974年の「ローザンヌ世界伝道会議」が明らかにしました「ローザンヌ誓約」
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の聖書的な「福音的信仰と宣教観とライフ・スタイル」を信奉するところの神学校です。大田院長は KBI
を代表して、2010 年の第三回ローザンヌ会議(南アフリカのケープタウンで開催)に出席されました。
JEC の母体であったオレブロ・ミッションは、1978年の総会で「ローザンヌ誓約」を宣教活動の基本方
針として採択しました。KBI も同様の福音理解と宣教観の流れの中にあるといってよいでしょう。以上、
キリスト教史二千年の流れの中に歴史的ルーツと連続性をもつ KBI についてみてまいりました。(参考
資料:安黒務『JEC の源流と歴史的遺産』、『福音主義神学 A』DVD 講義録)
<2> 現在:KBI の神学的アイデンティティの三つの特徴
次に、KBI の神学的アイデンティティについてみてまいりましょう。まず明らかなことは、ルーツとアイ
デンティティを切り離すことはできないということです。すでに記述してきました内容において“KBI の神
学的アイデンティティ”の九割方が決定づけられていると思います。ここ五十年間の KBI の中心的流れ
は、院長であったフレッド・スンベリ師、高橋昭市師、理事長であった我喜屋光雄師に代表される「十字
架と聖霊」のメッセージと現在の院長である大田裕作師に代表される「宣教」のメッセージであるいえる
と思います。ただそれらは新しい、あるいは奇異なものではなく、すでに継承されてきました聖書の啓
示とキリスト教神学の歴史の“絶大な霊的な遺産”の一領域、特に救済論の中の「聖化論」と聖霊論の
中の「聖霊の賜物論」、そして教会論の中の「大宣教命令」の領域に聖霊がその時代状況の中で、神
の器が立てられ解き明かしの光が注がれたということです。それゆえ、キリスト・イエスにある測りがた
い富の中から、これら KBI における主要なメッセージの神学的輪郭を三つに分けて描きたいと思います。
(参考資料:安黒務『JEC 信仰告白解説』、『組織神学』DVD 講義録)
①「十字架」のメッセージ
KBI における十字架のメッセージは、ペンテコステ諸派の歴史的経緯に触れつつ描写しますと、共同
経営に参加されているペンテコステ諸派の古典的ペンテコステ主義の中にある新生・聖化・聖霊のバ
プテスマ(もしくは満たし)の三段階で捉える傾向(W.シーモア)と新生・聖霊のバプテスマ(もしくは満たし)
の二段階(W.ダーハム)で捉える傾向を包摂しうる折衷的理解が特徴です。このような理解は、KBI の屋
台骨であるJECの第一世代の日本人教職者に共通するものでした。第一世代の先生方が「“きよめ
(危機的聖化)“を強調する塩屋の神学校」で学ばれたことも関係があります。スウェーデン・バプテスト
の流れは基本的に「聖化を一生涯の漸進的過程」において捉える理解です。それらの両者の折衷的
理解として有名なウォッチマン・ニー著『キリスト者の標準』においてメッセージの輪郭が明確にされて
きました。ウォッチマン・ニー著『キリスト者の標準』や『キリスト者の行程』は、ケズィック聖会におけるメ
ッセージを資料源として芸術作品のように仕上げられたものです。「ケズィック」は英国のリゾート地の
名前で、そこで毎年開催されている「ホーリネスを強調する」聖会の名前です。ただ、ケズィック運動は
組織とか教派ではなく、超教派の聖会であり、聖公会・バプテスト・長老派そして他の教派から多くの著
名な説教者が奉仕しています。教理的には幅広い多様性があります。そしてこれらのメッセージの流
れは、歴史的に「敬虔主義運動」に包括し位置づけることができると思います。KBI においては、ペンテ
コステ運動における二段階説と三段階説、またウォッチマン・ニー著『キリスト者の標準』『キリスト者の
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行程』の背後にあるケズィック的な危機主義と漸進主義の折衷的聖化理解を歴史的側面と教理的側
面の両面から丁寧に吟味し、M.エリクソン著『キリスト教神学』にみられる包括的な聖化論理解や J.D.G.
ダン『ガラテヤ書の神学』、U.ヴィルケンス『ローマ人への手紙』にみられる現代の聖書批評学研究の
成果をも取り入れたガラテヤ書・ローマ書理解により、過去の遺産の健全なかたちでの継承・深化・発
展をはかるべき時期にきているのではないかと思います。(参考資料:安黒務『ウォッチマン・ニーの聖
化論とヘンドリクス・ベルコフの召命論』DVD 講義録、『ガラテヤ書講解 with J.D.G.ダン』『ローマ書講解
with ウルリッヒ・ヴィルケンス』CD 説教集)
②「聖霊」のメッセージ
聖霊のメッセージとは、共同経営に参加されているペンテコステ諸教派にとっては二十世紀初頭の古
典的ペンテコステ主義ないし中期のレストレーション運動等、そして JEC にとっては今世紀中期の「聖
霊カリスマ運動」や後期の「第三の波」からのものです。KBI はこれらの多様な波の只中にあって、特定
の教理、主張に固執せず、二次的な事柄(洗礼の様式や式文、教会の政治形態、伝道事業の推進方
法、千年王国をめぐる諸説、アスケーゼなどの生活実践のあり方)よりも、キリスト教全体が共有する伝
統に対する意識と掘り下げを重視することにより、これらのもろもろの運動を包摂する幅をもつ神学校
として歩んできました。JEC の関連で申しますと、今世紀初頭からのペンテコステ運動は、スウェーデン
にも波及し、スウェーデン・バプテスト同盟から分離した諸教会は、1937年にオレブロ・ミッションを設
立しました。ですから、ペンテコステ的経験は宣教師の来日以前のオレブロ・ミッション諸教会にありま
した。また、ペンテコステ的経験は世界宣教へのエネルギー源でありました。当初は抑制気味であった
JEC における聖霊経験は、今世紀中期からのアメリカやカナダからの「聖霊カリスマのチーム」によって
広く受け入れられ、次第に盛んなものとなっていきました。単なる経験のみではなく、聖霊と経験につい
てのバランスのとれた教えが特徴としてありました。この時期に邦訳刊行された R.H.カルペッパー著『カ
リスマ運動を考える』とその重要参考文献には今日でも有効なメッセージに満ちており、それらを資料
源に多くのすぐれた小冊子が刊行されました。オレブロ・ミッションとJECは、バプテスト的な背景とバラ
ンスのとれた伝統的教理を保ちつつ、ペンテコステ的経験にオープンであったという点において、「伝統
的脈絡に立ち、その神学的脈絡にそうかたちでペンテコステ的経験を理解し受容する」というカリスマ
運動の特徴を明らかにしてきました。ただ聖霊運動は、アラン・アンダーソンが「ペンテコステ主義は、
その世界化と地方化においてもはや単数形で呼ぶことは不適切である」と“Pentecostalisms”と複数形
で呼んでいることに留意し、ことわざに「小異を捨てて、大同につく」とあるように、二次的な事柄におけ
る相違点を尊重しあい、キリスト教会全体が共有する伝統に対する意識と掘り下げること、そして大宣
教命令のもとに結集することこそ大切であると思います。(参考資料:安黒務『ペンテコタリズムの包括
的視点からの分析と評価:A.歴史篇』DVD 講義録)
③「宣教」のメッセージ
KBI の特徴はながらく、ウォッチマン・ニー著『キリスト者の標準』に解説されている“十字架と聖霊”にペ
ンテコステ・カリスマ的強調が加えられたものとして見られてきましたが、インドネシアへ派遣されてい
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た現在の大田裕作師が院長に就任されて以来、オレブロ・ミッションとペンテコステ諸教派の中に流れ
ていた「世界宣教」のメッセージが大幅に強化されました。H.ベルコフ著『聖霊の教理』に「最近になって
わたしたちはようやく、静的なクリスチャン像が、いかに異端的であるかについて気づき始めた。それ
は静的というよりもむしろ自己中心的である。自分たちの永遠の救い(義認)と個人的建徳(聖化)に没頭
して、まだ聖霊の運動の達していない隣人のために時間をさくことができない。…聖書は召命の物語で
あって回心の物語ではない」とあります。KBI の神学の特徴として、これまでの十字架と聖霊に「宣教」
が加えられ、強化されました。これは救済論の第三次元といわれ「義認」「聖化」「召命(聖霊のバプテス
マ、もしくは満たし)」と表現されています。大田院長の下で、KBI 神学教育は「世界宣教」スピリットを中
心に再編されたともいえます。H.ケインが「主は宣教の神」「聖書は宣教のメッセージ」「教会は証しの
共同体」「すべてのクリスチャンは世界的クリスチャン」がいうようにです。神学の場は「キリストの教会」
であり,神学はその「教会に仕える学」です。そもそも神学は「現実の教会の中で起ったもの」です。そ
の意味で神学は「教会の働きの不可欠な一部」なのです。KBI は神学をそのように位置づけている神
学校です。『キリスト者の標準』“Normal Christian Life”(求心的)に解説されている「義認と聖化」に深く
根ざしつつ、“World Christian Life”(遠心的)に「召され、派遣される」神学校と要約できるかもしれませ
ん。
<3> 未来:KBI の神学的特徴の継承・深化・発展への四つの原則
ここでさらに次の五十年を見渡しての KBI 神学教育において取り組むべき課題を、KBI で『組織神学』
を任されている一教師としての立場から提案させていただきます。KBI における神学教育のあり方が、
日本の神学会またキリスト教会の中において、ひとつの意味ある選択(オプション)として評価され、市
民権を獲得しうるかたちに成熟していくためには、一体どのような神学的特質に特色づけられている必
要があるのでしょうか。その第一は、真に聖書的、福音的であることです。“聖書的適格性”が絶えず自
己吟味されていく必要があります。ペンテコステ主義には、多くのすぐれた神学的洞察がみられます。
ただ、内包する課題としては極端な字義主義的な解釈の傾向がありますので、それらが克服されるた
め、そのすぐれたメッセージが福音主義的に再検証され、より聖書的に掘り下げられていくことが大切
と思います。そのために成熟した「聖書観」と熟達した「聖書解釈方法論」を確立していくことが課題で
す。第二に、分派的、自己流であってはいけません。常に公教会的であることが大切です。あらゆると
ころで、常に、すべてによって信じられてきた“正統信仰の公同性”を反映するものでなければなりませ
ん。歴史的経緯の中での論争と対立の結果として、ペンテコステ・カリスマ諸派は分派的また自己流に
なる傾向があります。神学的視点から言えばいわゆる「福音派」対「カリスマ派」というコントラストほど
愚かな描写はありません。「自らが寄って立っている神学的基盤を否定しているのか」との誤解を与え
る表現であるからです。私たちは福音主義神学に根差す福音派の一員としてのペンテコステ派またカ
リスマ派であることを認識し、その福音理解において、絶えず福音主義的公同性を追及していくことが
課題です。第三に、“現代的適応性”と四つに取り組むものでなければなりません。聖書の使信の高さ・
深さ・広さを特定の文化言語と思惟様式において積極的に立証することを不可避の機能として担うこと
が必要です。オウム返しに語るのみではなく、新しく語らねばなりません。単に要約するのみでなく、新
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しく理解されなければならないのです。ペンテコスタリズムは、世界宣教の進展の中で聖書の本質的メ
ッセージの文化脈化に最も成功していると高く評価されています。と同時に、地域においては行き過ぎ
た不健全なコンテクスチュアリゼーションの結果として、福音の本質的メッセージの変質をもたらす異教
の世界観やこの世の価値観とのシンクレティズムもみられます。これは宣教を進展させようとする取り
組みの中で必ず直面するグレイゾーンにおける事柄です。KBI シンポジウム等様々な機会を生かし、
肯定と否定、可能性と危険、また果敢な勇気と誘惑という両面で対処するタイムリーかつバランスのと
れたガイドラインづくりが課題です。第四に、“自己革新性”を不可欠の属性としてもつものでなければ
なりません。改革された教会は常に改革され続けなければなりません。さらに「非批判的伝統主義」に
対して、キリスト教有神論というパラダイムに立った批判的学問性が必要とされています。宗教者一般
によく見受けられる主観、熱狂、独善のみでなく、客観的、学問的脈絡が求められています。ペンテコ
ステ・カリスマの諸派は、世界性と地方性、学問性と大衆性を両立させつつ、宣教の勢いを増している
と評価されています。ペンテコステ・カリスマの諸派のメッセージの良き部分を宣教的にだけでなく、学
問的にも継承・深化・発展させていくことが大切です。現在、KBI 教師陣には、神学と実践の両面を兼
ね備えた現場に強い教師とともに、修士号・博士号を取得した教師も増え学的レベルを向上させてい
ます。また在校生・卒業生は福音主義神学会の会員として名を連ね、それぞれが直面し問題意識を保
持している課題を神学的に扱った論文を発表し、神学会の発展に貢献するようになっています。今 KBI
は、福音主義神学会でもその存在感を増し加えており、果すべき責任も大きくなってきています。小生
も、福音主義神学会の理事として、また『福音主義神学』編集委員として、また『福音主義神学会公式
サイト』http://www.evangelical-theology.jp/の編集・管理の責任者として奉職させていただいておりま
す。KBI は、宣教のパトスと神学のロゴスの両面で、ペンテコステ・カリスマ・第三の波等の聖霊派運動
全体を包摂しつつ、その中心的役割の一端を担うさらなる覚悟と備えをするように、主から迫られてい
るのだと思います。(参考資料:安黒務『福音主義神学 B』、『ペンテコタリズムの包括的視点からの分
析と評価:B.神学篇』DVD 講義録))
<結び>
今回の論稿は、ごく限られた時間内に「KBI の神学の特徴」について執筆を求められましたので、
「JEC 五十周年記念誌」掲載の『JEC の神学的輪郭とその座標軸を模索する』に加筆・修正させていた
だくかたちで書かせていただきました。その内容は、今回広告掲載させていただいています「一宮基督
教研究所資料集」を資料源としていますので、さらに詳しく知りたい方は、それらの資料をお買い求めく
ださい。神さまがこの拙い論稿を祝福してくださり、モーセがピスガの頂きから約束の地を見渡したよう
に、約束の“新たな五十年”を見渡して KBI を共に担っていく決意を固めていただく契機としていただけ
たら幸いです。
6/30
一宮基督教研究所
KBI
祝 50 周年
1979 年、KBI を卒業。KBI 助手として三年間、岬福音教会牧師として七年間、共立基督教研究所で三年間
学ばせていただきました。その時、JEC また KBI の交わりの中に、
“宣教と教会形成”の戦線を背後で支える
“神学的な兵站”の機能をもつ研究所への思いを与えられました。郷里一宮でのこの働きはわたしの思いをは
るかに越えて、福音派全体に貢献させていただくかたちで導かれてきました。以下のものは、必要に迫られ作
成し続けた拙い資料の一部です。諸先生方の“宣教と教会形成”の一助にしていただければ幸いです。
年/種
資料名・奉仕場所・参考文献著者等
価格等
年/種
資料名・奉仕場所・参考文献著者等
価格
A. 前半: 関西学院大学・関西聖書学院卒業から共立までの資料
7 /D
「憲法改訂問題」JEC 拡大教職者会
2500
1976
『英国産業革命と天職意識の変遷』関西学院大学卒論
7 /D
「セカンドチャンス論批判」JEC 牧師会講演
2500
1979
『祝福の約束と律法:海面下のガラテヤ書』KBI 卒論
8 /P
「主の祈り・右傾化・JEC」JEC News
300
1985
岬 25 記念誌「聖霊のバプテスマの神学と経験」から
8 /D
「悪の問題」「天使論」KBI 特別講義
6000
1992
共立卒論「ダンの『イエスと御霊』考察」までの
8 /D
「ナイロビ声明と JEC」JEC 牧師会講演
1500
/P
ICI 資料前半のセレクション 10 編の論文集( 2500 )
8 /B
『霊の戦いに関するナイロビ声明』安黒訳
500
9/ P
「使徒信条・JEC・エリクソン」JEC News
300
B. 後半: 共立基督教研究所卒業から今日までの ICI 資料
3 /B
エリクソン著『キリスト教神学』安黒訳
5670
9 /D
「千年王国と大患難諸説 」with 岡山英雄
3000
3/ D
西宮礼拝とセミナー「JEC-土台と建物」
4000
9 /D
「黙示録特講:イスラエルと教会」 with 岡山
3000
5 /D
「批評学・バルト等」ペンテコステ神学会
5500
9 /D
「ディスペンセーション聖書解釈」with バス
1500
5/ D
JEC の歴史神学軸: 補教師セミナー
2000
9 /C
「黙示録講解説教」with 岡山・ボウカム
6830
5 /D
JEC の組織神学軸: 補教師セミナー
2000
9 /D
「福音主義神学:再考」福音主義神学会講演
4000
5/ D
「ローザンヌ会議・誓約・運動」特別講義
1500
10 /P 「カリスマ的経験座標軸」リバイバルジャパン
500
6 /D
「健全な神学に立つ」KBI3 週間特別講義
3000
10 /P
「JEC の源流と歴史的遺産」JEC News
500
6 /D
「千年王国とユダヤ人の位置」神学会
500
10/B
『聖書神学事典』罪・真理・苦難のしもべ等
7,665
6 /D
『現代における福音派の神学』関学神学部
1880
10/D
「福音主義教会論:再考」関西聖書塾
6670
6/ P
「JEC 信仰告白解説」: JEC 拡大教職者会
1500
10/P 「福音主義聖餐論: 再考」リバイバルジャパン
6 /D
『組織神学』講義録 with M.J.エリクソン
56000
10/C
6 /D
『宗教の神学』講義録 with 稲垣久和
13500
11/D 「ペンテコステ主義研究」with アンダーソン
4500
6 /D
『福音主義神学 A』講義録 with 宇田進
12800
11/B 「デジタル時代の神学会公式サイト」神学会誌
1575
6 /D
『福音主義神学 B』講義録 with 宇田進
10000
11/C
「ローマ書講解説教」with U.ヴィルケンス
作成中
6 /D
「JEC 神学入門」: 補教師セミナー
2000
11/D
「“イエスと御霊”論文講義」with J.ダン
3500
7 /P
「十戒と JEC」JEC News 連載
300
7/ D
W・ニー「聖化論」と H.ベルコフ「召命論」 3000
「ガラテヤ書講解説教」with J.D.G.ダン
11/D 宗教的カリスマ的経験の聖書解釈・構造的本質
11/D
「日の丸・君が代」強制と処罰-思索の道筋
100
1750
500
1000
数字番号は二千年度の作成年。英語は資料の種類で本(B)、小冊子(P)、CD(C)、DVD(D)。“ with 名前”は参考文献著者名。
資料に関する問い合わせ・注文は遠慮なく下記まで。郵便振替用紙同封で後払い。1500 円以上は送料無料。
〒671-4135 兵庫県宍粟市一宮町安黒 389 一宮基督教研究所【略称: ICI】 安黒務
℡.090-5064-7313, Fax.0790-72-0235, Mail: aguro@mth.biglobe.ne.jp,
一宮基督教研究所 HP: http://www.aguro.jp/
日本福音主義神学会 HP: http://www.evangelical-theology.jp/
郵便振替口座:01110-0-15025 加入者名:一宮基督教研究所
銀行口座:ゆうちょ銀行、金融コード:9900、店番 119、店名:イチイチキュウ店、預金種目:当座、口座番号:
0015025、受取人カナ氏名:イチノミヤキリストキョウケンキュウショ
2011 年 9 月 1 日 改訂版
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