E-01 混合液晶のレーザー光の透過による過渡応答特性の 温度依存性と面内依存性 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1、仙台高専マテリアル環境工学科2) ○菊地信哉 1・本田皓2・熊谷晃一2 キーワード:液晶、過渡応答特性、温度依存性 1.緒言 サーモトロピック液晶はある温度範囲で液晶 性を示すという特徴から、過渡的な応答特性も温 度依存性を有すると考えられ、サーモトロピック 液晶として構造の知られている4’-ペンチル-4ビフェニルカルボニトリル(4’-Pentyl-4biphenylcarbonitrile;5CB)ではその性質を有し ていることを明らかにした。しかしその他のサー モトロピック液晶やそれらの混合液晶について は未だ明らかにされていない。 本研究では、5CB と同様にサーモトロピック液 晶として知られている 4’- オクチル-4- ビニフ ェ ル カ ル ボ ニ ト リ ル (4 ’ -Octyl-4-biphenyl carbonitrile;8CB)と 5CB の混合液晶を用い、液 晶温度範囲で温度制御しながら電圧を印加し、駆 動させた際の、レーザー光の透過によって過渡応 答特性を測定し、その温度依存性を調べた。 4.過渡応答特性の測定 5CB/8CB 混合液晶で TN 型液晶セルを組み、温 度制御しながら、複数点で過渡応答特性を測定し、 その面内依存性についても測定した。 過渡応答特性を測定する方法としては、液晶セル に矩形波パルスを印加する。これによって液晶分 子がねじれて配向している状態と面内方向に対 して 90°垂直に配向している状態を作る。そこ に He-Ne レーザーから放射したレーザー光を液 晶セルに透過し、Pin フォトダイオードで受け、 その透過光を電気信号に変換しオシロスコープ で観察して液晶分子の配向変化の過渡応答特性 の測定を行った。図 2 に時間応答特性の測定装置 構成を示す。講演では、その結果について報告す る。 2.混合液晶 5CB は 24℃で結晶からネマチック相へ、35℃ で等方相へ相転移し、8CB は 22℃で結晶からスメ クチック相へ、34℃でネマチック相へ、41℃で等 方相へ相転移する[1]。本研究では 5CB と 8CB を 複数の重量比で混合したものを用いた。 混合液晶について、熱分析装置により示差走査 熱量測定(Differential scanning calorimetry; DSC)を行い、実際の試料の相転移温度の測定を行 った。 3.液晶セルの作製 基板は石英基板を用いた。基板を洗浄後、RF マ グネトロンスパッタリング装置を用い、同研究グ ループが過去に良好な透過率および抵抗率が得 にられた RF パワー比 7:23 の ITO-ZnO 二元系透 明導電膜を成膜、初期配向を与えるためポリビニ ルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)をスピン コートにより塗布しラビング処理を行い、セルギ ャップを保つため 6μm のスペーサーをはさみ液 晶を注入する、といった工程で液晶セルを TN(twisted nematic)型で作製した[2]。図 1 に液 晶セルの模式図を示す。 図1.液晶セル模式図 図2.応答特性の測定装置構成 参考文献 [1] 液晶便覧編集委員会(2000) 『液晶便覧』 丸善株 式会社 p.325. [2] 佐藤純平, 狭間徹, 笹野優寿, 吉田むつみ, 熊谷 晃一: 第 18 回高専シンポジウム講演要旨集, “ITO‐ ZnO 二元透明導電膜を用いた混合液晶の配向応答”, pp.340. お問い合わせ先 氏名:熊谷晃一 E-mail:kumagaik@sendai-nct.ac.jp E-02 エッチングによる透明導電膜の膜厚制御と導電特性 (仙台高専マテリアル環境工学科 1,生産システムデザイン工学専攻2) ○伊藤愛 1・井上達仁2・熊谷晃一1 キーワード:透明導電膜 熱処理 石英基板 溶解侵食 膜厚制御 1.緒言 TV などに応用されている液晶ディスプレイ には透明導電膜が使用されている。透明導電膜 はディスプレイを制御する電極として用いら れている。この透明導電膜は光線透過率の関係 から膜厚は小さいことが望まれる。スパッタリ ングで透明導電膜をガラス基板に堆積させる 際の膜厚制御は行われているが、製膜後の膜厚 制御はあまり行われていない。 本研究ではガラス基板に堆積した透明導電 膜をエッチングで溶解侵食し、膜厚を制御する ことが可能であるか検討した。また、膜厚を小 さくすると導電性が低下することが考えられ るため、製膜後の熱処理による導電特性の向上 についても検討した。 2.実験内容 研究には膜厚制御を行うにあたって溶解液 としてエスクリーン IS(佐々木化学薬品株式会 社)を使用した。 基板は 30 mm×30 mm の石英基板に透明導電 膜を作製したものを用いた。透明導電膜は ITO 1 元系透明導電膜、ZnO 1 元系透明導電膜、 ITO/ZnO 2 元系透明導電膜を RF マグネトロン スパッタリング装置によって作製した。出力比 は 10:0、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、 1:9、0:10 を作製した。透明導電膜製膜条件を 表 1 に示す。 表 1 製膜条件 スパッタ時間[min] RF パワー(ITO)[W] RF パワー(ZnO)[W] Ar ガス流量[sccm] 基板-ターゲット間の垂直 距離[mm] くなったためであると考えられる。 図 1 溶解侵食前の ITO 1 元系透明導電膜(右) 溶解侵食後の ITO 1 元系透明導電膜(左) 次に導電特性向上のため ITO と ZnO の最適 な熱処理温度について調査した。ITO 1 元系透 明導電膜と ZnO 1 元系透明導電膜を 100 ℃、 200 ℃、300 ℃と温度を上げ 5 分間熱処理を行 いそれぞれの抵抗を直流四端子法で測定した。 その結果を図 2 に示す。ZnO 1 元系透明導電膜 は 400℃で熱処理を行ったところ、測定域から 外れるほど抵抗が大きくなった。また、ITO 1 元系透明導電膜は熱処理温度 300 ℃で一番抵 抗が小さくなっている。この結果から、熱処理 の最適温度は 300 ℃であると考えられる。 20 0~150 0~150 20 90 図 2 熱処理後の抵抗変化 研究を行うにあたって、まず溶解液を用いて 溶解侵食することは可能であるかを調査した。 RF マグネトロンスパッタリング装置で製膜し た ITO 1 元系透明導電膜を溶解液に 60 ℃で 10 分間溶解侵食をした。その結果を図 1 に示す。 図 1 を見ると部分的ではあるが溶解侵食され ていることが確認できた。また、溶解侵食前の 抵抗は 150 Ω であったが溶解侵食後の抵抗は 250 Ω と抵抗が大きくなった。これは膜厚が薄 溶解侵食後の基板に熱処理を施し膜厚制御 と導電特性向上についてさらに調査を進めて いる。各調査結果詳細については口頭発表時に 報告する。 お問い合わせ先 氏名:熊谷晃一 E-mail:kumagaik@sendai-nct.ac.jp E-03 Li2SrSiO4:Eu,Dy 蛍光体の残光特性 (仙台高専 専攻科 生産システムデザイン工学専攻 1、 マテリアル環境工学科 2) ○佐藤大暉 1・鈴木吉朗2 キーワード:残光性蛍光体,残光寿命,発光スペクトル,Li2SrSiO4:Eu 1.緒言 残光性蛍光体は,太陽光や蛍光灯からの光エ ネルギーを蓄積し,暗中でいわゆる夜光として エネルギーを放出する特徴から,防災材料とし て様々な用途に利用されてきたが,最近は省エ ネ材料としての利用も増加している.Eu と Dy を共添加した SrAl2O4(SrAl2O4:Eu,Dy) は市場の大半を占める代表的な残光性蛍光体 であるが,残光輝度・持続時間の向上の他,多 色化,可視光励起化,経済性の向上などの課題 を解決するための材料開発が活発化している. 本研究グループは,白色 LED 照明用黄色蛍 光体 Li2SrSiO4:Eu に着目した.この蛍光体は 1000℃以下の常圧で焼成でき,母体に希土類 を含まないため,原料及び製造上の経済性に優 れた材料である.本研究では,Li2SrSiO4:Eu に Dy を新たに添加することで,残光を賦活さ せることを目標とした.Dy は結晶中に電子ト ラップを生じさせ残光をもたらすと考えてい るが,実際の導入は難しい.そこで本研究では, 焼結温度および雰囲気,融剤 SrF2 を作製パラ メータとして残光の発現を目指した. 2.実験方法 Li2SrSiO4:Eu,Dy 試料の作製には,固相反応 法を用いた.母体構成原料 Li2CO3,SrCO3, SiO2 と添加剤 Eu2O30.2mol%,Dy2O30.3mol%, 融剤 SrF24mol%を化学量論組成比に秤量した. これらを乾式混合した後,圧力 15MPa で加圧 成型し,管状炉に挿入して,900~950℃で 9 時間,焼結した.焼結中は 97%N2+3%H2 また は 95%Ar+5%H2 ガスを 400ml/min 流し,還 元雰囲気に保持した. 光学特性評価には,Xe 灯(100W)を光源とし た分光測定システムを使用した.残光は, Hg-Xe 灯(500W)からの 254nm 光(19µW/cm2) を 600 秒間照射した後,2400 秒間強度変化を 測定した. 3.実験結果および考察 Table1 に試料の焼結温度,雰囲気,融剤の 条件を示す.Fig.1(a)は代表的試料 2 の励起, 発光スペクトルである.550nm 以下の広い波 長域の励起により 590nm をピークとする Eu2+による黄橙色発光が生じていることが見 て取れる.図中の白丸は励起停止後数秒間受光 した残光スペクトルで,発光とスペクトルが一 致している.このことは,残光も同じ Eu2+を 起源として生じていることを示す. 発光強度が試料で大差ないのに対して,残光 強度は試料で大きく異なった.残光強度の時間 変化を Fig.1(b)に示す.試料 4 では残光は微弱 であったが,SrF2 融剤を使用した試料 3 では, 同一温度での焼結にもかかわらず残光強度が 大幅に増加している.焼結温度を 950℃に上げ た試料 1,2 では更に強度が増加している.試料 2 では試料 1 に比べて減衰の速い成分は少ない が遅い成分が増加しているように見える.これ は Dy の結晶中への侵入が促進されたことで, 深い電子トラップが増加したためと推測され る.今後,この制御が残光特性の向上の鍵とな る. 試料# 1 2 3 4 Table1 試料の作製条件 温度[℃] 雰囲気 融剤 SrF2 不使用 950 H2 5% 使用 使用 900 H2 3% 不使用 Fig.1 (a)試料 2 の励起,発光,残光スペクトル, (b) Li2SrSiO4:Eu,Dy 試料の残光時間変化 お問い合わせ先 氏名:佐藤大暉 E-mail:a1401016@sendai-nct.jp E-04 12CaO・7Al2O3 の合成と熱電変換材料への適用性の検討 (久留米高専 専攻科物質工学専攻 1 一般理科 2 生物応用化学科 3 材料工学科 4,長岡技科大機械系 5,豊橋技科大総合教育院 6) ○大石和希 1・山﨑有司2・松山清 3・武田雅敏 5・武藤 浩行 6・奥山 哲也 4 キーワード:熱電変換,酸化物粉末 3.結果及び考察 各粉末の XRD 観察結果を図 1 に示す。これ を見ると、作製した C12A7 粉末は第二相とし て 3CaO・Al2O3(C3A)や、5CaO・3Al2O3(C5A3) を含んでいることが分かる。また、いずれの試 420 ●:C12A7 ○:3CaO・Al2O3 ▼:5CaO・3Al2O3 ▽:C(Carbon) 422 112 2.実験方法 Al2O3 と CaO の混合粉末から熱処理を施し C12A7 粉末を合成した。C12A7 粉末と、還元 剤となるカーボンブラックを混合し、一軸加圧 成型にてペレットを作製した。作製したペレッ トに対し、カーボンによる還元反応を促進する ため、真空雰囲気下にて 1000℃の熱処理を実 施した後、ペレットを粉砕して粉末とした。通 常焼結と比較して短時間でより緻密なバルク 体を得られることから、PCS 焼結法を用いて熱 処理後の粉末を 1150℃×10min の条件で焼結 し、バルク体を作製した。作製した C12A7 粉 末、真空熱処理を施した粉末、PCS 焼結後のバ ルク体を粉砕した粉末それぞれに対して XRD 観察を実施し、構成物質を確認した。作製した バルク体に対しては SEM-EDS による観察を実 施した。また、ゼーベック係数、導電率、熱伝 導率の測定を実施し、無次元性能指数 ZT を導 出した。 料においてもカーボンブラックを加えたこと による、炭化物や炭酸塩等の生成は見られない。 バルク体の SEM-EDS 観察を行ったところ、カ ーボンが組織中に残留していることが分かっ た。室温下での導電性評価を行ったところ、バ ルク体の導電率は 10-3[S/cm]程度であり、未還 元の C12A7 の導電率(約 10-10[S/cm])と比べて向 上していた。導電率が向上した要因としては C12A7 が還元されたこと以外に、残留カーボ ンの影響が考えられる。しかし、熱処理を施さ ずに PCS 焼結を実施して作製したバルク体の 導電率を測定したところ、未還元の C12A7 同 程度の値を示したことから、残留カーボンが導 電性に与える影響は小さいと考えられる。また、 真空雰囲気下での熱処理は導電性の向上に有 効であると言える。この要因としては、熱処理 により、還元反応が進行するためであると考え られる。 任意強度 1.緒言 近年、電力の有効利用のために熱を直接電気 に変換する熱電変換材料が注目されている。そ の変換効率はゼーベック係数 α、導電率 σ、熱 伝導率 κ からなる無次元性能指数 ZT = α2σ /κ にて評価される。熱電変換材料のコスト削減や 性能向上のため、新規の熱電変換材料の研究が 行われている。12CaO・7Al2O3(C12A7)という 酸化物は単結晶バルク体に還元処理を施すこ とで、最大 102 [S/cm]程度の導電率を示すこと が報告されている 1)。C12A7 はクラーク数上位 の元素のみで構成されていることから、安価な 熱電変換材料への応用を期待し、本研究では、 生産が容易な多結晶バルク体の開発を行って いる。しかし、多結晶体は単結晶体と比較して 還元処理性に劣るといった課題がある。そこで 本研究ではバルク体の焼結前の粉末について 還元処理を実施し、この粉末を用いたバルク体 の作製法の検討を行う。 PCS処理材 真空熱処理 粉末 混合粉末 10 20 30 40 50 60 2θ [deg.] 図 1 各粉末の XRD 測定結果 5.参考文献 1)H. Hosono, Japan Nanonet Bulletin, 72 (2004), p.1. 2)H.Hosono, Journal of Non-Crystalline Solids, 354 (2008), p2772-2776. お問い合わせ先 氏名:奥山 哲也 E-mail:okuyama@kurume-nct.ac.jp E-05 Co−Cr−Mo 合金の加工後熱処理による組織と 機械的特性の変化 (仙台高専マテリアル環境工学科 1) ○佐藤 奈々絵 1・森 真奈美 1 キーワード:生体材料,機械的特性,組織制御,熱処理 1.緒言 代表的な生体用金属材料の一つである Co−Cr−Mo 合金は耐食性・耐摩耗性に優れるた め、人工股関節等の整形外科用インプラントに 用いられている。近年では本合金の高強度・高 弾性特性を生かし、脊椎矯正用ロッドへの応用 が期待されている。一般に、このようなロッド 材は塑性加工と熱処理を繰り返し行うことに より製造されるが、加工後の熱処理による機械 的特性や組織への影響は未解明な部分が多い。 本研究では Co−Cr−Mo 合金の冷間スウェージ 加工後の焼鈍熱処理による組織と機械的特性 の変化を明らかにすることを目的とした。 2.実験方法 高 周 波 誘 導 溶 解 炉 を 用 い て Co−28Cr−6Mo−0.12N (mass%) 合金を溶製した。 熱間鍛造・圧延にて φ13 mm の丸棒材に加工し、 1423 K にて焼鈍後、約 φ7 mm まで冷間スウェ ージ加工を行った。その後、冷間スウェージ材 は 1173−1423 K の温度範囲にて保持時間を 10 min から 6 h として熱処理を行った。この熱処 理材に対し、走査型電子顕微鏡(SEM)及び電 子線後方散乱回折(EBSD)を用いて組織観察 (構成相、結晶粒径等)を行った。また、電子 線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて析出 物の元素分析を行った。さらに、引張試験機を 用いて室温での機械的特性を調査した。 3.結果と考察 図 1 に各熱処理条件において得られた室温 引張特性を示す。本研究において最も低い 1173 K で熱処理を行った試料において最も高 い 0.2%耐力(約 900 MPa)が得られ、保持時 間によらずほぼ同等の強度レベルを示した。一 方、1273−1423 K の範囲で熱処理を行ったサン プルでは引張強度に顕著な差がなく、0.2%耐 力は 500−650 MPa の値を示した。しかしなが ら、1373 K の場合を除き、熱処理時間が増加 に対して強度が低下した。EBSD 観察の結果、 いずれの熱処理条件においても相構成や集合 組織の違いは見られず、fcc 構造の γ 相のみが 観察された。図 2 に各熱処理条件における γ 相の結晶粒径を示す。結晶粒径は 1173 K 熱処 理材において約 8 μm と全熱処理条件中で最も 微細で、熱処理時間の増加に伴う結晶粒径の変 化も小さかった。一方、1223 K 以上の熱処理 温度では 20−60 μm と 1173 K 熱処理材の結晶粒 径に比べ粗大であり、熱処理時間の増加に伴っ て結晶粒径が粗大化した。SEM 観察の結果、 1173 K 熱処理材では熱処理時間に関わらず全 ての試料で析出物の形成が確認されたことか ら、この温度領域では粒界に形成した析出物に より粒成長が抑制されたと考えられる。 図 1 各熱処理温度における 0.2%耐力の変化 図 2 各熱処理温度における結晶粒径の変化 4.結言 熱処理条件の違いにより機械的特性や結晶 粒径は変化したが、1273 K 以上では機械的特 性に大きな差は観察されなかった。一方、1173 K 熱処理材では析出物の形成が観察され、粒成 長が抑制されることにより高い機械的特性を 示すことが明らかとなった。 お問い合わせ先 氏名:佐藤 奈々絵 E-mail:s1100324@sendai-nct.jp E-06 73'2 *60+-$% 98!.# 1 ;!&1 < : 5 "(4 < ,/) *868/ŤOÃFe-Ni T»Ã¡o !" «´ Fe gi¡o%¢ Fe3NÃFe4NÃFe16N2 ¤Ob\"ÄÃ# ¤ O N Qatwr"ÃI o:P%m"YÁ!ÃS¤O ¡o%¦ª{ £A f"Ä £Ã¤OP ¡o%{ "%ÃFe ¥ Fe-Ni T»¥¤OJ"©} ¹R¡ouN¶ %¯Ä #" dÂz µyÃFe ¥(! 3~5 µm)3(0(4& 5 ' 7 , ! 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Elektrochemie, 36 (1930) S. 383-392. WT$F UÅ E-mailÅasada@sendai-nct.ac.jp E-07 /305. 2$6 87""%- :7"+# - ; 9 ) !1& ; 4,' *,( ; 2@>@6õ¼[T¬ðFe-C-V BL¿^Üð[^©y× òñÅÒ ît¾}'î~}[Î,+Ú cÍ×z¹Ìæ¼[±, +ñÌæ¼[ÚÉÊðÉ°Zª (Éë.`C+ ðÌæ¨ O,'¢§T¬(*&#wñ ^ÜzPßð<?'¶ïDÀ©.a $§ÁzPß8740:'3=:¼ [© LÁ.¤Yß*ð¼[T¬ Ùߺ 1 +ñð¼[T¬ ã+µ»nðßa",+DÀ©'¤ Y©(+¼[عçÒ ] ñµ»ðîÀ} \. Fe-C-V BL¿^ܼ[T¬. ð8740:³¼[عE+ ç.Ôñ óñrí Fe(99.9%) ð C(99.9%) ð V(99.9%) . Fe-0.2C-xV(x=0.2ð0.5ð1.0 mass%)à / @3¥Ñ(* Ar äfF^Ü[ð 890 2 âhA[T¬.Ëñ,.¦ Sð5520mm ²IW*U¼[ T¬.ñ¼[T¬ NH3 15. Û 20ml/min ¦vOð580 0.5hð1hð 2hð4h T¬.Ëñ¼[ÌæÃÇÐs Nqêàð¼[yÂÃÇÕjåp êà.Ðsñ"ð¼[£u +³X^ EBSD(åpÆGe) (Vñ ôñríÄ Fe-0.2C-0.5V ^Ü. 0.5hð2h ¼[T¬ ¼[ÌæÃÇ.,, Fig.1(a)ð(b) ¸ñ,)Ö)ð¼[âmY +![^©y á+V+ñ "ðy.Ï+Ý«³½QUð Û 0.5h (* 2h nñ,S +(Øìb¼Á γ’³ U+%+ñ) 0.5h (* & 2h y+¼Ág¥Ûo È),+ñ 0.5h ¼[T¬ Fe-0.2C-0.5V ^ÜH åpJ. Fig.2(a)ðEBSD (+³VÄ . Fig.2(b)¸ñÀÞ.¼[l^ð¼[ Ìæ) ε ³ðγ’³ðα’g¥³è|³ ,+ðγ’³FÛ) ε ³·Ó ,ñðCr .¤Y^ÜÏ),+ γ’-α’³¯æ ε ³KM áÏ), ñ ¤Y[^©y× çx È),+ñ³V{ãðÌæ) ( 20 μm £" ε y ,ðγ’ y( 5 μm +VñH åpJ)9@;5Ìæi²`KM áð" EBSD VÄ)9@;5ék ε ³+·Ó ñ (a) (b) 30μm 30μm Fig.1 Fe-0.2C-0.5V ^ÜÃÇR´ ¼[â(a)0.5hð(b)2h (a) Surface (b) ε γ’ α’ 10 µm Fig.2 0.5h ¼[T¬ Fe-0.2C-0.5V ^Ü (a)HåpJð(b)EBSD VÄ d^-M _õ¡® E-mailõasada@sendai-nct.ac.jp E-08 水浸処理法によるジョセフソン接合 デバイスの作製 (米子高専電気情報工学科) ○中川明秀・田中聖也・田中博美 キーワード:Bi 系高温超伝導体,ウィスカー,水浸処理,ジョセフソン接合 水酸化物層 価で簡単なプロセスとして水浸処理法を提案 した.この方法により表面を部分的に水酸化物 等の非超伝導体にし,c 軸方向に電流を偏向す ることが出来ると期待される. 2. 実験方法 デバイス材料としては完全結晶である Bi 系 高温超伝導体針状単結晶(以後,Bi 系ウィスカ ー)を用いた.まず,Bi 系ウィスカーを ASGQP (Al2O3-Seeded Glassy Quenched Platelets) 法[2] を用いて育成した.そして育成した Bi 系ウィス カーの表面に 4 つの金属電極を作製した.また, 電極作製部分に金蒸着を施した.これは電極と ウィスカーの界面に水酸化物層が形成されるの を防止するためである.その後,蒸留水を利用 して水温 25℃,水浸時間 5~15h の条件で水浸 処理を施した.この処理を施した Bi 系ウィスカ ーの評価を 4 端子通電法による電流-電圧 (I-V) 特性測定等で行った.また,X 線光電子 分光法 (XPS) を用いた化学結合状態の分析を 行い,水酸化物の形成の確認と水浸処理された 厚さの算出を行った[3]. O (a) as-grown O 1s 水酸基由来 OH lntensity (a.u) 1. 緒言 高 温 超 伝 導 体 (HTS : High Temperature Superconductor) は超伝導線材,超伝導磁石や 超伝導量子干渉計 (HTS-SQUID) など多岐の分 野にわたって応用されている.特に HTS-SQUID 超高感度磁気センサは液体窒素温度で脳磁計や 心磁計を実現できるため,医療分野での幅広い 普及が見込める.この HTS-SQUID を実現するに は,第 1 ステップとしてジョセフソン接合デバ イスを作製する必要がある.ジョセフソン接合 とは,厚さ数 nm の薄い絶縁体を超伝導体で挟ん だ構造をしており,超伝導電流が絶縁層をトン ネルすることで流れる.現在,高温超伝導体を 用いたジョセフソン接合デバイスには,ランプ エッジ接合やバイクリスタル法といった複雑な 成膜プロセスが必要である.もしくは,固有ジ ョセフソン接合を利用する場合がある.この接 合は Bi 系高温超伝導体などの結晶構造中で面 間方向 (c 軸方向)と平行にジョセフソン接合 を有しているものである.しかしながら,固有 ジョセフソン接合を利用したジョセフソン接合 デバイスの作製には c 軸方向に電流を偏向する 必要がある.従って,集束イオンビーム加工な どの微細加工を必要とし,高価で複雑な作製技 術を要する[1]. そこで本研究は,微細加工を必要としない安 =0.38 (b) 5h水浸処理後 O OH 水酸基由来 酸素 (Bi系超伝導 ウィスカー) =0.8 533 531 529 527 525 増加! 図 1 水浸処理した Bi 系ウィスカーの化学結合状態 Binding Energy (eV) 3. 結果と考察 図 1 に水浸処理した Bi 系ウィスカーの O1s XPS スペクトルを示す.図 1(a)に示されてい るように,as-grown 試料においては超伝導由来 の酸素ピークの強度を IO,水酸基由来のピーク の強度を IOH とした時の比率 IOH/IO は 0.38 であ った.一方,図 1(b)に示されるように 5h 水 浸処理後のスペクトルでは IOH/IO が 0.8 であり 5h 水浸処理後の方が水酸基由来の相対強度が 増加している. また,I-V 特性を測定したところ,不連続的 な電圧の飛びが観測された.この特性は,一般 的なジョセフソン接合デバイスと同様な振る舞 いである.従って,水浸処理法を用いることに よって,微細加工無しでジョセフソン接合の特 性が得られることが分かった.さらに, 5h の水 浸処理で 30.3Åの水浸膜厚が形成されること が確認できた. これらの結果より,水浸時間を変化させるこ とでジョセフソン接合デバイスの接合数を制御 できると期待される. 4.結言 本研究では,水浸処理という簡単なプロセス によりジョセフソン接合デバイスの作製を行っ た.その結果として,水浸処理を施した Bi 系ウ ィスカーにおいて電圧の飛びを持つジョセフソ ン接合デバイスを作製できることが分かった. 今後は,水浸時間と水浸膜厚の時間依存性に ついて調査する予定である. 参考文献 [1]S.J.Kim et al., Appl. Phys. Lett. 74, (1999) 1156. [2]H. Uemoto et al., Physica C, 392 (2003) 512. [3]奥田ら:分析化学,40 (1991) 691-696. お問い合わせ先 氏名:中川明秀 E-mail:e22o5na28@gmail.com E-09 前処理条件が電子基板の Au 定量に及ぼす影響 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1,国立環境研究所2) ○安藤成美 1・葛原俊介 1・小口正弘2・寺園淳2 キーワード:電子基板,リサイクル,定量分析,ICP-AES,F 検定 1.緒言 電子基板中に Au は数百 [mg / kg] 程度含有 しており[1],主成分の Cu や Si に比べ極めて低 い.そのため,実プロセスにおける廃電子基板 類の貴金属分析は,サンプル採取や前処理方法 による影響を受けやすい. 本研究では,Au 濃度分析値のばらつきを抑 えることを目的とし,サンプルの粒径および重 量,王水抽出回数をパラメータとして前処理方 法について評価した. 2.試料および分析方法 ハードディスク(ドライブ)基板,ビデオカー ド基板,メモリ基板 3kg を分析対象とした.今 回はメモリ基板について検討した. 2.1 試料の粉砕 試料を破砕機およびカッターミルで粉砕後, 四分法で全量が 100g になるまで縮分した.さ らに凍結粉砕機を用いて微粉砕し,粒径 250 ㎛以下,250-1000,1000-2000,2000 ㎛以上に 篩い分けした. 2.2 前処理 試料粒径毎に異なる条件で前処理を行った. ・粒径 250 ㎛以下 試料 1.0,5.0g を硫酸( 5ml),硝酸( 2ml + 適 宜追加),王水( 10ml ) で加熱分解した.王水 分解処理は 3 回行った. ・粒径 250 ㎛以上 王水によって全量溶解した. 2.3 定量分析 溶液を濾過し,濾液を 0.5%の塩酸または硝 酸で希釈した.ICP-MS および ICP-AES によっ て Au の定量分析を行った. 3.前処理条件の検討 3.1 粒径毎の Au 分配率 メモリ基板中の Au 含有量および分配率を 表 1 に示す. 含有する Au は約 90%以上が 250 ㎛以下に分配した.磁性試料には数%程度分配 し,その他の粒径では 1%弱であった.他の試 料も同様の分配挙動を示しており,廃電子基板 は,粉砕後 250 ㎛以下の試料を分析すること によっておおよその Au 含有量を把握するこ とが出来る. 3. 2 試料重量および王水抽出回数による Au 含有量の評価 粒径 250 ㎛以下の Au 濃度を表 2 に示す.試 料重量 1.0g のときは 3~321 [mg / kg]となり, 先にも述べた通り基板中に含有する Au の 1/100 程度の濃度になる場合もあった.一方, 5.0g では全て数百 [mg / kg]程度であった. そのため,今後の分析は試料重量 5.0g につ いて検討した. 王水による抽出回数が 1,3 回の時の Au 濃度について F 検定(有意水準α=0.01)を行 った.F 検定より,分散比は 186,棄却限界 値は 99 であり,抽出回数 1 回の分散の方が 大きかった.そのため,抽出回数を 3 回にす ることでばらつきが抑えられるといえる. 以上より,本研究における電子基板中の Au 濃度分析の前処理条件は,廃電子基板を 粉砕後,粒径 250 ㎛以下の試料 5.0g を王水 で 3 回抽出する方法が最も有効であった. 表 1 粒径毎の Au 含有量と分配率 粒径 250µm 以下 250-1000µm 1000-2000µm 2000µm 以上 磁性試料 破砕除外部品 含有量 [mg] 1,645 12 2 0 128 75 分配率 [%] 88.3 0.7 0.1 0.0 6.9 4.1 Total 1,863 100 表 2 前処理条件と Au 濃度 [mg / kg]の関係 試料重量[g] 抽出 1.0 1回 試料重量[g] 抽出 1 回目 3 回目 Sample 1 3 Sample 4 564 843 Sample 2 19 Sample 5 335 915 Sample 3 322 Sample 6 979 1020 5.0 【参考文献】 1) 白波瀬 朋子,貴田 晶子,廃棄物資源循環 学会論文誌,Vol. 20, No. 4, pp. 217-230, 2009 お問い合わせ先 氏名:葛原 俊介 E-mail:kuzuhara@sendai-nct.ac.jp E-10 ノート PC 用バッテリーパックに含有する 有害金属の定量評価 (仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻1,仙台高専専攻科2, 国立環境研究所3) ○秋元裕太1・葛原俊介2・寺園淳3・小口正弘3 キーワード:リチウムイオン二次電池,有害金属,RoHS 指令,ICP-MS 1.緒言 2006 年 7 月に欧州で施行された RoHS 指令 により,我が国でも指令に準拠した製品が普及 している。一方で,指令施行前の製品における 特定有害物質および代替物質の使用量は不明 確なままである。 浅利ら[1]は,リチウムイオン二次電池中の金 属類濃度を算出し,電池中に Pb や Cr が含有 することを明らかにした。著者ら[2]はこの結果 を受け,電池の金属含有量を部位別に評価した。 その結果,Pb,Cr,Sn 等は電池本体ではなく 付随する基板等に含有するという知見を得た。 本研究では,リチウムイオン二次電池に付随 する基板やケーブルに着目し,RoHS 指令前後 の特定有害物質の含有量および代替物質の使 用量について評価した。 2.実験方法 本研究では,ノート PC 用の使用済みリチウ ムイオン二次電池に着目し,2004~2007 年に 製造された 8 点を分析対象とした。 電池の放電処理を行った後,電池本体,基板, ケーブル等の構成部品に分解した。そのうち, 基板とケーブルの一部について王水で加熱分 解を行った。Pb,Cr,Cd,Sn の定量は ICP-MS を用いて行った。なお,検出下限値は重量濃度 換算で 100 ppm である。 3.結果と考察 図 1 にリチウムイオン二次電池に付随する 基板中の Pb と Sn の濃度を示す。Pb に着目す ると,2004 年製造の電池では数千 ppm であっ たが,2005 年以降の電池では 1,000 ppm 以下 であることがわかった。RoHS 指令は 2003 年 2 月に公布されており,その影響で Pb の濃度 は大きく減少したと推察する。一方,Sn 濃度 は年代に関わらず 10 wt%程度であった。 図 2 にリチウムイオン二次電池に付随する 基板中の Cd と Cr の濃度を示す。Cd 濃度は 150~250 ppm の濃度で検出された。一方で, Cr 濃度は 2006 年製造の電池のみ 262 ppm を 示した。 図 1 リチウムイオン二次電池に付随する 基板中の Pb と Sn の濃度 図 2 リチウムイオン二次電池に付随する 基板中の Cd と Cr の濃度 [参考文献] [1] 浅利美鈴,酒井伸一.小形電池の金属量推定とそ の廃棄行動に関する研究.廃棄物資源循環学会誌. 2012,Vol. 23,No. 4,pp. 268-279. [2] 秋元裕太,葛原俊介,寺園淳,小口正弘.リチウ ムイオン二次電池に使用される金属量の評価.平 成 27 年度資源・素材学会秋季大会講演集. 2015, Vol. 2,No. 2,PY-41. お問い合わせ先 氏名:葛原俊介 E-mail:kuzuhara@sendai-nct.ac.jp E-11 10%冷間圧延した純マグネシウム板材の動的再結晶の挙動 (久留米高専専攻科物質工学専攻 1,久留米高専材料工学科2) ○徳永隼人 1・周致霆2 キーワード:マグネシウム,SEM-EBSD,再結晶 1.緒言 マグネシウムは実用金属中最も軽く,比強度 が高い,リサイクル性に優れる点から実用化が 期待されている.しかしながら,マグネシウム を塑性加工する場合,変形の異方性が高く,冷 間加工性が低いことから出発組織が重要であ る.出発組織は圧延,熱処理により調整が可能 であり,再結晶挙動の理解がマグネシウム製品 の実用化拡大に必要となる.本研究では,圧延, 熱処理による組織変化を SEM-EBSD 法を用い て同一視野観察することで,純マグネシウムの 再結晶挙動を知ることを目的とした. 2.実験方法 厚さ 5 mm の純マグネシウム板材(純度 99.9%)から 5 mm×5 mm×15 mm の試験片を切 り出した.切り出した後に鏡面研磨,化学腐食 を行い,ビッカース硬度計を用いて同一視野の 目印となる圧痕を付した.その後,累積圧下率 が 10%となるように 1 パス 1%の圧延を施した. 圧延の前後にはビッカース圧痕を目印として, 圧 延 面 ( ND 面 ) に 対 し て 同 一 視 野 で の SEM-EBSD 観察を行った.続けて,300℃,10 分間の真空焼鈍と同一視野での SEM-EBSD 観 察を繰り返し行った. 3.実験結果および考察 10%冷間圧延,300℃の真空焼鈍による組織 変化を Fig.1 に示す.図中の 2~15°の小傾角粒 界を白色,15°以上の大角粒界を黒色で色付け (a) (b) (c) した.冷間圧延前の IPF(Inverse Pole Figure) マップからは(0001)面が ND 面に平行に配向 した組織であり,KAM(Kernel Average Misorientation)マップからは KAM 値が小さい ため,内部ひずみの小さい組織であることがわ かった.冷間圧延後は,圧延前の結晶粒がその まま観察されるものや方位回転が起きている 結晶粒がみられた.また,KAM 値の大きい領 域が観察され,内部ひずみが大きいことがわか った.焼鈍を行うと,図中(c)に矢印で示す 内部ひずみの小さい再結晶粒の発生が観察さ れた.10%冷間圧延後の IPF マップを解析する と,10 分焼鈍後の再結晶粒と重なる旧粒界近 傍で,再結晶と同一の方位をもつ動的再結晶核 の形成がみられた.この動的再結晶核が焼鈍に より優先的に成長することで,再結晶粒に至っ たと考えられる.その後,繰り返し焼鈍を行う ことで再結晶粒が成長していく過程が観察さ れた.再結晶粒の成長過程においては,隣接す る内部ひずみの大きい領域から優先的に成長 し,内部ひずみの小さい領域で成長が抑制され た.このことから,再結晶粒の成長の駆動力と して,再結晶粒と隣接する結晶粒の内部ひずみ 差が大きく影響していると考えられる. 以上の結果から,10%冷間圧延により旧粒界 近傍に動的再結晶核が形成され,それらが焼鈍 に伴い優先的に成長したと考えられる. お問い合わせ先 氏名:周致霆 E-mail:chou@kurume-nct.ac.jp (d) (e) KAM 値 20 µm Fig.1 (a)冷間圧延前, (b)10%冷間圧延後, (c)300℃10 分焼鈍後, (d)300℃20 分焼鈍後, (e)300℃30 分焼鈍後.上段:IPF マップ,下段:KAM マップ E-12 電気炉および SPS で作製した Ti 添加 Al2O3/Sn 複合体における焼結性評価 (久留米高専専攻科物質工学専攻 1,久留米高専材料工学科2) ○草場康志 1・周致霆2 キーワード:Al2O3,Sn,Ti,パルス通電焼結法(SPS) ,遊星型ボールミル 1.緒言 セラミックスは硬度が高く,耐熱性,耐摩耗 性,耐食性に優れているため切削工具や耐熱材 料など様々な製品に用いられている.しかし脆 い,絶縁性といった欠点を有することから使用 に制限が掛かっている.本研究ではセラミック スの粒界に金属を分散させバインダーとした 複合体の作製を行った.出発原料としてセラミ ックスには α-Al2O3,金属には融点が 232 ℃と 低い Sn を使用し,焼結方法に電気炉とパルス 通電焼結(SPS)を用いた.また,Al2O3 に対する Sn 濡れ性改善に SPS 使用時は Ti を添加し,複 合体の焼結性改善を目指した. 2.実験方法 α-Al2O3,Sn,Ti 粉末を出発原料とし,Sn 及 び Ti 粉末は遊星型ボールミルを用いて粉砕し た.粉砕条件は回転数 1465 rpm,時間 105 min である.粉砕後それぞれの粉末をボールミルで 24 hr 混合した.各粉末の混合比は焼結方法が 電気炉の場合は Al2O3-10, 20 vol%Sn,SPS の場 合は Al2O3-10, 20, 30 vol%Sn(-3 vol%Ti)とし た.焼結方法が電気炉の場合,圧力(98・490 MPa)にて万能試験機で成形体を作製した後に 焼結温度(260~350 ℃) ,時間(240・480 min) の条件で焼結を行った. SPS 処理の場合,焼 結温度(300・400 ℃) ,時間(10 min) ,圧力 (31 MPa)の条件で複合体を作製した.得ら れた複合体に対してビッカース硬さ試験 (HV1)を用いた焼結性評価を行った. 3.実験結果および考察 表 1 に電気炉,表 2 に SPS を用いて作製に 成功した複合体の焼結条件を示す. 10 vol%Sn 複合体はいずれの条件においても 作製出来なかった.これは Sn の量が少量であ るためにバインダーの役割を果たせなかった ためである.一方で 20 vol%Sn 複合体が作製出 来たのは電気炉を使用した条件のみだった.こ れは焼結前の成形圧力が SPS 処理時よりも高 く,焼結時間も長いために Sn が少量でも複合 体を作製出来たと考えられる.しかし図 1 のよ うに電気炉で作製した複合体においては毛細 管現象により Sn が表面部に輸送され,内部で 二層に分かれていた.毛細管現象により成形圧 力と焼結温度が高い複合体は表面部の Sn 量が 増加し,硬さに占める Sn 割合が大きくなり HV1 が低下したと考えられる. SPS で作製した複合体は圧力が低いために 緻密化されておらず,HV1 が低下した.しか し Ti を添加することで濡れ性が改善され SPS 処理においても 20 vol%Sn-3 vol%Ti 複合体を 作製可能となった.30 vol%Sn-3 vol%Ti 複合体 においては,Ti による濡れ性の改善と Sn の十 分な添加による Al2O3 の粒界への浸透のため HV1 が他の複合体よりも高くなった. 図 1.複合体の表面(左),内部(右)写真 (電気炉, 20vol%Sn ,350℃,480min,490MPa) 表 1.複合体の作製条件(電気炉) 温度 時間 圧力 [℃] [min] [MPa] 20vol%Sn 260 240 98 35.9 20vol%Sn 300 240 98 25.0 20vol%Sn 350 240 98 19.2 20vol%Sn 350 240 490 24.0 20vol%Sn 350 480 490 20.4 混合比 HV1 表 2.複合体の作製条件(SPS) 温度 時間 圧力 [℃] [min] [MPa] 30vol%Sn 300 10 31 16.1 30vol%Sn 400 10 31 22.8 20vol%Sn-3vol%Ti 400 10 31 26.5 30vol%Sn-3vol%Ti 400 10 31 38.7 混合比 HV1 お問い合わせ先 氏名:周 致霆 E-mail:chou@kurume-nct.ac.jp E-13 実用鋼における窒化処理した 曲げ疲労特性と残留応力に関する報告 (仙台高専専攻科 1 ,仙台高専 2 ) ○中島賢也 1 ・熊谷進 2 キーワード:窒化,残留応力,XRD,実用鋼 1.緒言 自動車業界において自動車部品の小型軽量 化が注目されている.動力伝達部品の熱処理は 浸炭焼入れが主流であるが,ひずみが大きく焼 入後の修正が必須であるため,ひずみが小さい 窒化処理が注目されている.窒化の場合,硬さ 向上に寄与する表面窒化層 (ε-Fe2-3N および γ’-Fe4N 相)の力学特性に及ぼす影響を明らか にすることは重要である.最近,化合物層構造 の違いが曲げ疲れ強さに及ぼす影響に関して, γ’主体材は ε 主体材よりも疲労特性に優れるこ とを明らかにした1). そこで本研究では化合物層による疲れ強さ 向上のメカニズムについて表面の残留応力を 測定し考察する. 2.実験方法 供試材は JIS-SCr420H(0.22%C-0.21%S-0. 78%Mn-1.1%Cr)鋼をφ8 mm×15 mm の円柱 状に加工し,片側底面はアルミナ研磨液を用い てバフ研磨を行い,鏡面に仕上げた.その後図 1 に示すような窒化処理条件で 520〜580℃の 範囲で窒化を行った.冷却過程においては,窒 化処理後, 500℃まで NH3 ガスの流量を流し ながら炉冷を行った.また,窒化処理後の冷却 過程を変えた試料を 3 水準用意した.XRD に よる残留応力評価は 2θ-Ψ 法を用い,ε,γ’ のピークを 2θ =115〜125°の間で測定した. 3.結果および考察 XRD の結果から 520℃窒化ではεのピークが 見られたため,ε相主体の化合物層であること が分かった.また,図 2 にそれぞれの残留応力 結果を示す.2θ=115〜125°の間で現れたε ピークの残留応力は冷却時の流量の増大で顕 著に増大した.以上のことから冷却過程時に NH3 ガス流量を上げると圧縮残留応力も大き くなることが分かった.これはε相(hcp)の 結晶中に冷却時の NH3 ガスが分解してできた 窒素が多く固溶したため,ひずみが大きくなっ た可能性がある. 図 1 窒化処理条件 図 2 冷却過程における NH3 ガス流量を変化させた時 の残留応力変化 4.結言 窒化処理後の冷却過程を変えたことで圧縮残 留応力が大きくなっていった.圧縮残留応力が高 くなることで疲れ限度が大きくなったと考えら れる. 参考文献 1) 中島賢也, 平岡 泰,熊谷進, 渡邊 陽一, 第 78 回日本熱処理技術協会講演大会講演概要 集,pp.15-16 (2014). お問い合わせ先 氏名:熊谷進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-14 タンク内減圧キャビテーション損傷の評価法開発 (仙台高等専門学校マテリアル環境工学科) ○小関菜摘・熊谷進 キーワード:損傷,キャビテーション,ベルセロ法 1.緒言 今後利用の拡大が想定される軽量かつ高強 度な先進圧縮水素タンクおよび液化水素タン クにおいて, 内容物の吐き出しにおける圧力 変化によるキャビテーション発生に関して, 表面損傷メカニズムについての詳細な研究が 行われていないのが現状である. 本研究では, タンク内のキャビテーション による材料表面損傷を明らかにすることを目 的とし, アルミニウム合金を対象にキャビテ ーション損傷付与試験法の検討を行った. 2.実験方法 本研究では, タンク内のキャビテーション 発生を目的として行うものであり, 今回は水 とベルセロ容器を用いて実験方法の確立を行 った. 供試材は A6061 アルミニウム合金で, 試験 片寸法は直径 14.5 mm, 厚さ 3 mm の円柱状 であり, 試験片表面をエメリー研磨で研磨後 バフ研摩を行い, 焼なまし処理を施した. こ の際焼なまし条件を様々な条件に変えて表面 の残留応力が除去できる条件を探した. 試験片を図1の高低温用圧力変換器(共和電 業製,PHB-A-10 MP)にナットで締め付け固定 し, 受圧部に液体を封入したものをベルセロ 容器と呼ぶ. そしてベルセロ容器を槽内の水 温 を 一 定 と し た 高 温 槽 (353 K) と 低 温 槽 (273 K) に交互に浸漬させ, ベルセロ容器の 温度を変化させた際の圧力変化を測定した. また, 温度変化による表面残留応力の変化を 調査するため, 温度変化を与えた試験片表面 の残留応力測定を行った. 3.結果および考察 試験片の予備処理として残留応力が除去さ れたのは, 415℃で 3 時間行った試験片であり, 以後この条件を試験片予備処理とする. 図 2 に 273 K の低温槽と 353 K の高温槽に 交互に浸漬させた際の結果を示す. 高温槽に 浸漬した際には正の圧力, 低温槽に浸漬した 際には負の圧力が発生した. 高温槽から低温 槽に浸漬した直後に急激に圧力が低下し, そ の後少し回復してから圧力が一定範囲内を変 動し, 高温槽に浸漬するとまた圧力が少し下 がってから正の圧力になった. そのまま正の 圧力で変動し, 低温槽に浸漬すると急激に圧 力が負の圧力まで下がった. その後も同じよ うな傾向がみられた. 浸漬後の試験片表面の残留応力に関しては 当日発表する. 4.結言 アルミニウム合金を対象に, 金属容器ベル セロ法を用いたキャビテーション損傷付与試 験方法を検討したところ, 水を用いてキャビ テーションを発生させた際の圧力変化の様子 を観察した. また, より残留応力を除去する 条件を明らかにした. 図 1. ベルセロ容器 図 2. キャビテーション発生時の圧力変化 お問い合わせ先 氏名:熊谷進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-15 アルミニウム基金属間化合物を用いた軽量摩擦材料の開発 (仙台高専マテリアル環境工学科) ○糸井 椎香・熊谷 進 キーワード:紛体工学, トライボロジー, 燃焼合成, 摺動材料, Al 基複合材料 1.緒言 摺動材料に関して, 過去レジンモールド系 や Cu, Pb 化合物ベースの複合材料が開発され てきた. しかし発癌性があることや環境への 負荷が大きいことから全面的に使用禁止, 規 制されている. それらを考慮し, 現在 Al 基材 料の適用が期待されている. 本研究では実際の環境に近い状態での特性 解明を目的とし, Al-Fe-Si 金属間化合物強化 Al 基複合材料の摺動特性評価を行う. 2.実験方法 Al, Fe, Si の原子比が 8:2:1 になるよう秤量 し, 120 min のミリング処理後, 燃焼合成を経 て作製した Al-Fe-Si 系金属間化合物粉末を強 化材, Al 粉末を母材として用いる. Al-Fe-Si 粉 末を Al 粉末中に 10 wt.%, 20 wt.%, 30 wt.%添 加し, 50 MPa で予備成型圧縮した. その後, 400 ℃で 60 min ステアリン酸を揮発させ, 560 ~590 ℃の 10 ℃刻みで 25 MPa の圧力 を加え Ar 雰囲気中で 180 min ホットプレス焼 結した. また, 摺動摩耗試験用ダイナモ装置を 開発し使用した摺動摩耗試験の装置を図 1 に 示す. 摩耗試験として, 発熱測定, 摩耗量の測 定を行った. 試験後, 各試料の微視的構造を SEM によって観察した. 3.実験結果と考察 摩耗試験の結果, 摩耗量は含有量増加に伴 い増加傾向にあることが分かった. 図 2 に摩 耗試験における各試料の発熱履歴を示す. Al-Fe-Si 粉末強化 Al 基複合材料は Al 単体に 比べ平均発熱温度, 最大発熱温度の両方が低 いことが分かった. この結果から Al-Fe-Si 粉 末強化 Al 基複合材料は放熱性が良好であると 考える. また, SEM の結果から 30 wt.%の試料 だけ Al-Fe-Si 粉末が展伸した形跡がないこと から Ai-Fe-Si 粉末を添加し過ぎたことにより 脆くなり剥離してしまったと考える. そのた め, Al 単体の試料に近づき発熱温度がほかの 試料に比べて上昇したと推測する. 図 2 各複合材料の発熱履歴 4.結言 本研究を通して次のことが得られた. ・Ai-Fe-Si 粉末を含有すると Al 単体に比べ放 熱性が大きく向上する. ・Al-Fe-Si 粉末を含有すると Al 単体に比べ摩 耗量が増加する. ・Al-Fe-Si 粉末の含有量が 30 wt.%だと粉末が 剥離してしまい放熱性が低下する. 図1 摺動試験用ダイナモ装置 a) ダイナモ装置 , b)ブレーキディスク, c) 摩耗していない状態の浮動型ブレーキ, d) 摩耗状態の浮動型ブレーキ お問い合わせ先 氏名:熊谷 進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-16 超音波探傷法を用いた工具鋼の熱処理評価 (仙台高専マテリアル環境工学科) ○赤間幹久・熊谷進 キーワード:非破壊評価, 熱処理, 超音波探傷法, 工具鋼 1.緒言 5940 ■ 5920 5900 音速 , V / ms-1 超音波探傷法は, 物質の境界で超音波が反射 する性質を生かして, 試料の表面や内部の欠陥 を検出する方法であり, 非破壊検査の中でも簡 便さから最も用いられている評価法である. 近 年, 工業製品において高い精度の品質管理から 全数検査のニーズが高まっており, 熱処理の評 価方法として, 非破壊かつ設備投資コストの低 い超音波探傷法が注目されている. 本研究では, 熱処理を行った工具鋼での超音波探傷法を用い た健全性評価法の開発を目的とする. ● 5880 5860 ● 5840 ▲ ■ 焼ならし 5820 ● ▲ 焼入れ 5800 ● 焼戻し 5780 5760 2.実験方法 0 𝑉= 𝑉0 ∙ 𝐻 𝐻0 100 200 300 図1 3.結果および考察 図 1 に音速に及ぼす焼入れ・焼戻しの影響を示 す. 音速 V は, 焼入れによって減少する傾向に あるが, ばらつきは大きい. また, 焼戻した試 料では焼戻し温度の上昇に伴って音速は増加し, ばらつきは小さくなる傾向にある. これは, 焼 戻すことで, 試料の組織内の内部応力が減少し ていくことが影響していると考えられる. 図 2 に周波数解析結果を示す. 何れの周波数解 析からも 22~26 MHz 付近で最も大きいスペクト ル強度を示しており, 焼入れることで, スペクト ルの極大周波数が高周波側にシフトしており, 焼き戻し温度の上昇に伴い低周波側に徐々にシ フトする傾向がある. 500 鋼中の音速に及ぼす熱処理の影響 焼戻し 450 °C 焼戻し 300 °C 焼戻し 150 °C 焼入れ 焼ならし (1) V0 は超音波探傷装置での設定音速(V0=5900 m/s), H はマイクロメーターを用いて測定した試料厚 さ, H0 は超音波探傷試験で求めた試料厚さであ る. 400 焼戻し温度, T / °C スペクトル強度 a.u. 供試材は, 幅 8 mm, 長さ 20 mm, 厚さ 3 mm に 加工した工具鋼 JIS SKS2 鋼を用い, 850 °C で 0.5 時間保持後焼ならし, 80 °C 油焼入れを施し, 150, 300, 450 °C で, 6 時間保持後に空冷した. 超音波探傷試験には, 超音波探傷装置 (OLYMPUS EPOCH 1000i)および水浸型探触子 (周波数:20 MHz,焦点距離:0.75 inch)を用い, 各 試験片において 6 点ずつ測定し, 数値データをフ ーリエ変換により周波数解析した. さらに, マイ クロメーターを用いて試験片の厚さを測り, 材 料鋼材中の音速 V は次式より得られる. 0 10 20 30 40 50 周波数, f / MHz 図 2 周波数解析結果 4.結言 工具鋼 JIS SKS2 鋼に熱処理を施し, 超音波探 傷試験を行った結果, 焼入れによって音速の変 化が見られた. また, 周波数解析の結果, 焼入れ により, スペクトルの極大周波数が高周波側に シフトし, 焼戻し温度の上昇に伴い低周波側に シフトする傾向を示した. このような評価方法 をさらに進めていくことで, 工具鋼の熱処理評 価法の判定に対応できるのではないかと考える. お問い合わせ先 氏名:熊谷進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-17 大径丸刃の振動抑制を目指した工具鋼の 力学特性に及ぼす熱処理の影響に関する研究 (仙台高専マテリアル環境工学) ○原崇・熊谷進 キーワード:力学特性,鋼の熱処理,工具鋼 1.緒言 刃物の切れ味や耐摩耗性は, 熱処理によっ て大きく左右し, 熱処理は経験の蓄積および 金属学的観点から工業的学術的に解明が進ん でいる. しかしながら, 大径丸刃を高速回転 させて使用する工業用刃物において, 高速回 転時の振動が切れ味や摩耗に影響することは 経験的に問題となっているものの, 熱処理と 力学挙動の関係は十分に明らかではない. 本 図 1 硬さに及ぼす焼き戻し温度の影響 研究は刃物用鋼材の力学特性に及ぼす熱処理 の影響を明らかにすることを目的として, 曲 げ特性に及ぼす焼戻し温度の影響を調査した ものである. 2.実験方法 供試材は JIS SKS2 工具鋼であり, 120 mm ×20 mm ×3 mm に加工した試験片を 860℃ から油焼入れし, 種々の温度で焼戻したもの を曲げ試験に供した. 曲げ試験は 5 kN ロード 図 2 荷重変位曲線 セルを用い, 支点間距離 100 mm, 試験速度 1 mm/min で実施した. また, 曲げ試験に供する 前に, 曲げ特性に影響しない位置でロックウ ェル硬さを測定した. 3.結果および考察 図 1 は表面硬さに及ぼす焼戻し温度の影響 を示したもので, 焼戻し温度の上昇に伴い硬 さは低下する. また保持時間に影響しない. 図 2 に代表的な荷重変位曲線を示す. 刃物 の焼き戻しとして通常は 190℃前後の温度が 使われるが温度上昇で延性を示すようになる. 図 3 は荷重変位曲線の初期直線部の傾きを まとめたもので, 260℃から 280℃で傾きが低 下する傾向にある. 図 3 荷重変位曲線の傾きまとめ 4.まとめ (省略) お問い合わせ先 氏名:熊谷 進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-18 実用鋼の組織および硬さに及ぼす浸窒焼入れの影響 (仙台高専 専攻科 1、仙台高専 マテリアル環境工学科 2) ○齋藤樹 1・熊谷進2 1.緒言 鉄鋼の表面硬化技術である浸窒焼入れは,浸炭 焼入れよりも低温処理が可能で、ガス窒化より厚 い硬化層が得られる点で実用上期待されている. 本研究は,実用鋼における浸窒焼入れによる硬さ 向上機構を明らかにすることを目的として実用 歯車鋼である Cr 合金鋼を対象として硬化層に及 ぼす浸窒焼入れ工程の影響を検討する. 2.実験方法 供試材は 2 mm×8 mm×20 mm の板状試験片に加 工した JIS SCr420H 鋼であり,NH3 ガス(5N)を流 量 20 ml/min 一定で流し,580℃で 6 h 保持後, そのまま油冷,920℃まで昇温して 30 min 保持後 油冷,750℃昇温後 5 min あるいは 30 min 保持後 油冷した.また、750℃昇温後 5 min 保持後油冷 の試料において焼戻しを 300℃~500℃で行った. 熱処理を施した試料に対してロックウェル硬 さ試験、X線回析(XRD),断面の光学顕微鏡観察, 電子線後方散乱回折(SEM-EBSD),マイクロビッ カース硬さ試験(荷重 0.1 kgf)を行った. 3.結果および考察 マイクロビッカース硬さ試験による試料断 面の硬さ分布を図 1 に示す. 580℃油冷は表面 から 30 μm 以降は徐々に硬さは減少し, 750℃ 油冷(5min)は表面から 50 μm において 650 HV~ 750 HV に至る.また 400℃で焼戻すと表面か ら 50 μm において硬さは減少するが,80 μm に おいては硬さは向上する.これらは 400℃で保 持することで表面の窒素が深さ方向に拡散し たからであると考えられる. 図 2 に SEM-EBSD によるマッピング図を示す. 各図上部が処理表面である.580℃油冷では表面 から約 30 μm にε相(Fe2N+Fe3N)とγ’相(Fe4N)の 混合の窒素化合物層が存在し内部は母相の Fe で ある.750℃以上では化合物層が約 10 μm まで になり,ほとんどが母相であるが,内部に窒素化 合物が検出された. 400℃焼戻しにおいては化合 物層が深さ方向に広がっている.これらも硬さの 変化をもたらしている. 4.結言 Cr 合金鋼を対象に浸窒焼入れを行い,表面 部の硬さ向上を明らかにした.また,400℃焼 戻しをすることで化合物層の領域が広がる. ビ ッカース硬さ HV キーワード:材料加工,熱処理,ガス窒化,実用鋼 850 750℃油冷(5min) 580℃油冷 650 450 400℃焼戻し 250 0 20 40 60 80 100 120 表 面からの深さ D/μm 図 1 試料断面の硬さ分布 ε相+Cr2N γ’相 ε相 a b c 図 2 EBSD マッピング図 a:580℃油冷,b: 750℃油冷(5min), c:400℃焼戻し [謝辞]本研究は, パーカー熱処理工業(株)技術 研究所渡邊陽一氏から供試材の提供並びに有 益な助言を多数いただきながら遂行したもの で,ここに深謝の意を表します. お問い合わせ先 氏名:熊谷進 E-mail:skumagai@sendai-nct.ac.jp E-19 共析鋼の水素脆化に及ぼす熱処理の影響 (久留米高専専攻科物質工学専攻1,久留米高専材料工学科2) ⃝ 岩本孝信1・山本郁2・田中慎一2 キーワード:水素脆化,共析鋼,熱処理,ミクロ組織,水素拡散係数 2500 Without charged Charged 2000 Stress(MPa) 1.緒言 水素の原子半径はわずか0.5Å程度であり, 鉄の格子定数(2.86Å)と比較して極めて小さく, 鋼材中に容易に侵入し,鋼材の劣化現象つま り 水素脆化 を引き起こす.水素脆化につい ては数多くの研究が行われてきたが,鋼中の 水素の分析は非常に困難であることから,機 構は未だ解明されていない.本研究では,共 析鋼に熱処理を施して得られる様々なミクロ 組織に対して水素脆化挙動及び水素の拡散挙 動を調査し,共析鋼の組織と水素脆性の関係 について考察を行った. 1500 1000 500 0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 Elongation(mm) 3.実験結果及び考察 Fig.1に573K焼戻し試料の応力−伸び線図 を 示 す. 水 素 未 チ ャ ー ジ 材 の 引 張 応 力 は 2000MPa以上を示すが,水素チャージ材は強 度,伸び共に未チャージ材の約半分まで減少 している.同様な水素チャージによる脆化は, 焼入れまま材,473K焼戻し及び573K焼戻し 材で確認された.一方, 673K以上の焼戻し 温度では,強度及び伸びの減少はほとんど認 められず,水素脆化は起こらなかった. 水素透過試験から算出した鋼中の水素拡散 係数及び水素供給側の供試材表面における水 素濃度と焼戻し温度との関係をFig.2に示す. 鋼中の水素拡散係数は焼戻し温度が573K以下 Fig.1. Stress-Elongation curves of specimens with and without hydrogen charging (tempered at 573K). 4.0 Diffusion coefficient Conc. of hydrogen 6.0 3.0 4.0 2.0 2.0 1.0 0.0 As-quenched 473 673 873 Tempering temperature (K) Fig.2. Influence of tempering temperature on diffusion coefficient and the concentration of hydrogen at surface. では比較的小さく,それ以上になると直線的 に増加する.また,水素濃度は焼戻し温度 573Kまで一様に高く,その後,焼戻し温度の 上昇と共に減少している.水素脆化した573K 以下で焼戻しした組織はマルテンサイト相が 存在しており,マルテンサイト変態により導 入された欠陥が水素の拡散を阻害したものと 考えられる. お問い合わせ先 氏名:山本郁 E-mail:yamamoto@kurume-nct.ac.jp Conc. of hydrogen (ppm) 8.0 Diffusion coefficient (cm2/s) 2.実験方法 供試材として共析鋼JIS SK85を用いた. 供 試材は真空炉にて1073K 0.5hr保持した後, 油中に投入して焼入れした.更に,473,573, 673,873Kの各温度で1hr焼戻しを行った. 各試験片は1M NaOH溶液中で24hr,0.5A/ cm 2 の条件で水素チャージを行った後,大気 中で速やかに引張試験を行った(クロスヘッド 速度0.5mm/min).試験後は,試験片の破面 に対してSEM観察を行った. また,各熱処理条件で熱処理した厚さ0.5mm の試料に対して,水素透過試験を行った.水 素引抜側は0.1M NaOH溶液を使用し,透過 した水素をイオン化させるため0V vs. Ag/Ag Cl/sat. KClの定電位で陽分極を行った.水素 供給側は,1M NaOH溶液を用い定電流密度 (300mA/cm2)で陰分極した.これにより各試 料の水素の拡散係数及び鋼表面での水素濃度 を測定した. E-20 電源装置の制御方式による PECS 焼結体への影響 (久留米高専物質工学専攻1,長岡技術科学大学2,佐賀大学3, 久留米高専材料工学科4) ○酒井大樹 1・南口誠2・三沢達也3・川上雄士4 キーワード:PECS,Ti,パルス信号 2.実験方法 原料には,ふるい分け法により粒径を調整し た純 Ti 粉末及び,パルス信号による酸化膜の 除去効果に関して検討するため,大気酸化を施 した Ti 粉末を用いた.PECS はサイリスタ方式 とインバータ方式を用い,ON/OFF 比はサイリ スタで 99/1 及び 12/2,3/3 を採用し,インバ ータではサイリスタに対応する条件とした.尚, 12/2 はサイリスタにおける標準条件である. 焼結条件は.焼結温度 600 及び 750 ℃,昇温 速度 50 及び 200 ℃/min,加圧力 20 MPa,真空 雰囲気とした.グラファイトダイに対して外周 表面からの距離を変えて熱電対を設置し,径方 向の温度変化を測定した.また,パンチ-スペ ーサー間に電極銅板を差し込み,焼結型間に印 加される電圧を測定すると同時に,オシロスコ ープを用いて電圧波形を観察した.得られた焼 結体に対して,SEM-EDS 及び密度測定を行った. 3.実験結果及び考察 サイリスタ及びインバータの電源装置を用 いた場合の出力電圧波形をそれぞれ Fig. 1,2 に示す.サイリスタにおける出力電圧は山脈パ ルス,インバータでは矩形パルスであることが わかる.また,焼結の進行に伴い,インバータ ではパルス波形に明確な変化は見られないが, 3 ON/OFF = 12/2 赤 : 初期電圧 青 : 中期電圧 voltage / V 2.5 2 1.5 1 0.5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 time / ms Fig. 1 サイリスタ方式における出力電圧波形 3 ON/OFF = 40 ms / 7 ms 赤 : 初期電圧 青 : 中期電圧 2.5 voltage / V 1.緒言 近年,材料創製プロセスとして PECS(Pulsed Electric Current Sintering)法を利用した多 くの研究が行われている.PECS 法は粉末試料 に対して一軸加圧を行うと同時に,直流パルス 電流を印加して焼結させる手法である.直流パ ルス電流により,粉末試料内部での局部的なジ ュール加熱や渦電流が生じるため,従来の焼結 法に比べ短時間での焼結や低い焼結温度等の 利点が存在する.しかし,PECS 法の詳細な焼 結メカニズムには不明な点が多い.現在,直流 パルス電流を発振させる電源ユニットには,サ イリスタ制御方式及びインバータ制御方式の 二種が採用されている.制御方式により出力信 号のパルス波形や周波数が変わる.本研究では, 詳細な焼結メカニズムの解明を目的とし,電源 装置の制御方式による焼結挙動差の調査を行 った. 2 1.5 1 0.5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 time / ms Fig. 2 インバータ方式における出力電圧波形 サイリスタでは最初のパルスの高さが低く,そ の後に続くパルスはほぼ一定の高さであるこ とがわかる.また,パルスの高さと共に各パル スの幅が広くなっている.パルス波形の差異に より,渦電流の発生や電流の流れが異なり,焼 結挙動に影響を及ぼすと思われる. 謝辞 本研究の一部は「高専-長岡技科大共同研究 助成」の支援を受けたものです. お問い合わせ先 氏名:川上雄士 E-mail:kawakami@kurume-nct.ac.jp E-21 燃焼合成法による TiB2-Ni-Mo 系複合材料の作製(第 2 報) (久留米高専 材料工学科学生 1,教育研究支援室2,材料工学科3) ○佐野友哉 1・吉富俊之2・馬越幹男 3 キーワード:燃焼合成,焼結,TiB2,複合材料 1.緒言 燃焼合成は、無機化合物を構成する元素の化 学反応が大きい発熱反応であることを利用し た材料の合成法として知られている。この方法 は簡単に短時間で化合物を作製できるという 特徴がある。 これまで当研究室では様々な化合物の燃焼 合成を行ってきており、TiB2-Ni-Mo 系複合材 料についても一昨年の高専シンポジウムにお いて TiB2-Ni 系複合材料に第四元素として Mo を添加することによって Ni のみ添加の場合よ り、高硬度を有することを報告した。しかし、 最適の添加量に関する知見は得られておらず、 TiB2 本来の高硬度、高融点の特性を発揮するに は金属の添加量は少ない方がよいと考えられ る。 そこで本研究では添加元素である Ni、Mo の 量を減らし、燃焼合成時の TiB2 粒子の微細化 および易焼結性の TiB2-Ni-Mo 系複合材料の作 製に関する条件を調査、検討をすることを目的 とした。 2.実験方法 粉末の配合比は全量を 50g とし、モル比 TiB21:2 の粉末に対して 20%wt%および 10wt% の Ni+Mo 粉末を添加した。Ni:Mo の重量比は 5:1 とした。これらの混合粉末を 5g 秤量し、円 柱状に加圧成形した。これをアルゴンガス雰囲 気中で試料の下部から W コイルを用いて点火 し、燃焼合成を行った。 その後、燃焼合成体をボールミルを用いて粉 砕した。粉砕時間は 20wt%のもので 100hr と 200hr、10wt%のもので 200hr とした。これらの 粉砕後の粉末 1.5g をペレット状に加圧成形し、 電気炉を用いてアルゴンガス雰囲気中で焼結 を行った。焼結条件は昇温速度 10K/min、保持 温度 1673K、保持時間 2hr、炉冷とした。 燃焼合成体および焼結体について、SEM 観 察、線収縮率・体積収縮率・気孔率測定、X 線 回折および硬さ測定を行った。 3.実験結果および考察 燃焼合成を行うと、試料に燃焼熱が瞬時に自 己伝播し、激しく燃焼反応が進行した。得られ た燃焼合成体はやや膨張し、横割れが多数生じ ていた。原料粉末の粒径は、Ti:45m 以下、 B:45m 以下、Ni:45m 以下、Mo:3m 以下の ものを使用したが、燃焼合成体の破面を SEM 観察すると、生成した TiB2 粒子の粒径は添加 量 20wt%では約 3m、添加量 10wt%では約 8m と原料粉末よりも微細になった。粒子が微細に なった例として 20wt%の燃焼合成体破面の SEM 像を図 1 に示す。 この理由は、反応が始まると燃焼熱によって まず混合粉末中で融点の低い Ni、Ti が溶融し て Ti は直ちに B と反応し TiB2 が生成するが、 同時に Ni 融体が TiB2 粒子間を埋め、TiB2 が粒 成長しないまま急冷されるためと考えられる。 焼結前後の直径から求めた線収縮率とアル キメデス法により測定した気孔率の値を表1に 示す。これより添加量の多い方が線収縮率が大 きく、気孔率は低いが、これは10wt%では金属 層がTiB2 粒子を十分に覆いきれないためと考 えられる。また、20wt%の場合、粉砕時間が 200hrの方が緻密な焼結体が得られているが、 まだ緻密化は十分とは言えない。 5µm 図 1 添加量 20wt%の燃焼合成体破面の SEM 像 表 1 焼結体の線収縮率および気孔率 添加量(wt%) (5Ni-Mo) 20 10 粉砕時間(hr) 線収縮率(%) 気孔率(%) 100 200 200 11.9 13.9 7.4 12.3 7.4 20.9 お問い合わせ先 氏名:馬越幹男 E-mail:umakoshi@kurume-nct.ac.jp E-22 TiB2-Co 系および TiB2-Fe 系粉末の燃焼合成と焼結挙動 (久留米高専 材料工学科 1,教育研究支援室2,材料工学科 3) ○古川千皓 1・吉冨俊之2・馬越幹男 3 キーワード:燃料合成,焼結,TiB2,複合材料 1.緒言 燃焼合成法とは元素同士の反応熱を利用し て化合物を合成する簡便な方法で、当研究室で は様々な材料の燃焼合成を試みてきた。 その一つとしてサーメット系複合材料の作 製を取り上げているが、サーメットの金属相と して、一般にコバルト、ニッケル、モリブデン などが用いられる。この作製に燃焼合成法を適 用すると、短時間での反応でありながら反応熱 によって 2000K 以上の高温になることから複 合化が容易であるが、通常の焼結とは異なる組 織になることも予想される。 そこで本研究では、 これまで行ってきた TiB2-20wt%Ni 系複合系材料のニッケルの代 わりに、コバルトまたは鉄を添加してみた。 TiB2 組織の Ti-B 混合粉末に第三元素として 20wt%を基本にコバルトまたは鉄を添加し、 燃焼合成を用いた昜焼結性の TiB2-Co 系、 TiB2-Fe 系複合材料の作製に関する知見を得 ることを目的に調査を行った。 2.実験方法 Ti、B および Co または Fe 粉末の配合比は モル比で Ti:B=1:2 とし、Co、Fe 添加量を 全量に対して 10、20、50wt%とした。これら の混合粉末を円柱状に加圧成形し、アルゴンガ ス雰囲気中で試料の下部に点火することによ り、燃焼合成を行った。原料粉末はいずれも市 販の高純度のものを使用した。粒径は Ti およ び B:45m 以下、Co および Fe:5m 以下で ある。燃焼合成体の粉砕にはボールミルを用い、 処理時間は 100hr および 200hr とした。これ らの粉末約 1.5g をペレット状に加圧成形し、 シリコニット電気炉でアルゴンガス雰囲気中、 焼結温度 1673K で保持時間 2hr の条件で焼結 を行った。 3.実験結果および考察 燃焼合成では、10、20wt%Co、20、50wt%Fe のすべての試料において、点火後瞬時に自己燃 焼した。得られた燃焼合成体には変形と膨張が 見られ、割れが多数生じた。X 線回折によると、 燃焼合成体の主要な生成物は、いずれの試料で も TiB2 であった。Co を添加の場合、TiB2 以 外に回折ピークは見られなかった。Fe 添加の 場合、20wt%は TiB2 の他に FeB が、50wt% では Fe2B が同定された。また、図 1 の例のよ うに、燃焼合成によって TiB2 の粒子は原料粉 末の粒径より小さく、数m 程度と微細になっ た。 これらの焼結体の気孔率をアルキメデス法 により測定した。その結果を表 1 に示す。 TiB2-Co 系の焼結体の気孔率は、Co 添加量が 20wt%から 10wt%に減少すると、気孔率が増 加した。また 20wt%試料について、ボールミ ルでの粉砕時間を 100hr に減らすと気孔率が 増加した。TiB2-Fe 系の場合、Fe 添加量が 20wt%から 50wt%に増加すると、気孔率が増 加した。また、ボールミルでの粉砕 時間を 100hr に減らすと、気孔率が増加していること が分かる。これらの結果より、燃焼合成の段階 で複合化が進行しているため、燃焼合成体は大 変硬くなっており、緻密な焼結体を得るために は十分粉砕する必要があることが分かった。粉 砕時間には最低でも 200hr は必要であると考 えられる。 図 1 20wt%Co 燃焼合成体破面の SEM 像 表 1 アルキメデス法により測定した焼結体の 気孔率[%] 試料 添加量[wt%] 粉砕 100 時間 200 [hr] TiB2-Co 系 TiB2-Fe 系 10 20 20 50 ― 9.6 13.1 13.0 14.1 0.8 1.2 5.7 お問い合わせ先 氏名:馬越幹男 E-mail:umakoshi@kurume-nct.ac.jp E-23 Mn-Ga-Cu 合金磁石の磁気特性に及ぼす Fe 置換の影響 (仙台高専マテリアル環境工学科) ○境七美・伊東航 キーワード:Mn-Ga 合金,磁気特性,保磁力,ハード磁性,時効熱処理 1.緒言 近年、希少元素を用いない磁石材料として、 資源が豊富で安価な Mn 基合金が注目されて いる。本研究グループは、Mn-Ga 基合金に Cu を添加した Mn-Ga-Cu 合金が低温で時効熱処 理すると、10 kOe を超える希土類磁石に匹敵 す る保磁力 を発現す るこ と [1] に着目し た。 Mn57Ga18Cu25 合金では非磁性相である L10 構造 相に強磁性相の D022 構造相が微細析出するこ とで、単磁区構造をとり、高い結晶磁気異方性 を持つことによって保磁力を発現する[2]。希土 類磁石の代替材料として期待できるが、残留磁 化が低いため実用化には至っていない[1]。 本研究では、Mn-Ga-Cu 合金の Cu の一部を強 磁性元素である Fe に置換し、磁気特性にどの ような影響を与えるのか調査した。 材よりも高い保磁力を示し、時効時間が長いほ ど磁化が低下した。Mn57Ga18Cu25 合金と比較す ると、残留磁化および保磁力大幅にが低下した。 結晶構造の同定では、300 ℃、3 日間の時効熱 処理材では-Mn 相および1 相に由来するピー クが確認された。また、Mn-Ga-Cu 合金におけ る-Mn 相と1 相はいずれも非磁性相と報告さ れていることから[2]、大幅な磁気特性の低下が 理解できる。 当日は Mn57Ga18Cu20Fe5 以外の組成と、その 他の時効熱処理条件の調査結果についても報 告する。 2.実験方法 Mn57Ga18Cu25-xFex(x=2.5, 5 at.%)合金を高周 波誘導溶解炉により、Ar 雰囲気下で作製した。 得られたインゴットを石英管に真空封入し、 800 ℃から 900 ℃で 1 日間の条件で溶体化熱 処理を施した後、300 ℃、10 分間から 3 日間 の時効熱処理を行った。特性評価として、組織 観察、変態温度の決定、結晶構造の同定および 磁化測定を行った。 3.実験結果および考察 Mn57Ga18Cu20Fe5 合金を 800 ℃、1 日間の条 件で作製した溶体化熱処理材(ST 材)は光学顕 微鏡で組織観察したところ、二相組織となるこ とが確認された。900 ℃、1 日間の溶体化熱処 理でもマルテンサイトを含む二相組織となっ た。 次に、時効時間により磁気特性にどのような 変化が現れるか磁化測定の結果から比較した。 図 1 に Mn57Ga18Cu20Fe5 合金の 800 ℃、1 日間 の ST 材および溶体化処理後 300 ℃で時効熱 処理を行った試料(時効材)の磁化測定結果を 示す。参考データとして Mn57Ga18Cu25 合金の 300 ℃、3 時間の時効材の結果[2]を点線で示す。 図より、Mn57Ga18Cu20Fe5 合金は ST 材が時効 図 1 : Mn57Ga18Cu20Fe5 合金の ST 材および 300 ℃時効材の磁化測定結果 参考文献 [1] K. Minakuchi et al., J. Alloys Comps. 611 (2014)284. [2] 佐々木雅弘, 平成 25 年度仙台高専専攻研 究論文 お問い合わせ先 氏名:伊東 航 E-mail:ito@sendai-nct.ac.jp E-24 Ni-Mn-Sn メタ磁性形状記憶合金の 微細組織に及ぼす B 添加の影響 (仙台高専マテリアル環境工学科) ○佐々木智也・伊東航 キーワード:Ni-Mn-Sn-B、メタ磁性形状記憶合金、マルテンサイト変態、粒界強化 1.緒言 近年、外部磁場を利用する新しい形状記憶合 金が発見された。これはメタ磁性形状記憶合金 と呼ばれており、外部から磁場を印加すること で常磁性のマルテンサイト(M)相から強磁性の 母相へ磁場誘起逆変態を起こすことによって 形状回復が得られる[1]。従来の形状記憶合金に 匹敵する高い応力、歪み量が得られることに加 え、磁場を用いることで優れた応答性を示すた め、注目を集めている。しかし、結晶粒界の脆 弱性や形状記憶効果の発現に必要な磁場が大 きい点が問題となっており、実用化が困難とな っている。 近年、Ni-Mn-Ga 強磁性形状記憶合金に B を 添加することで B 析出物が粒界に偏析し、粒 界が強化されることが報告された[2]。Ni 基ホイ スラー合金の粒界強化には B の添加が有効で あるというこの報告を受け、本研究ではメタ磁 性形状記憶合金の脆弱性の改善を目的とし、 Ni-Mn-Sn 合金に対して B を添加し、微細組織 や M 変態温度に及ぼす影響を調査した。 2.実験方法 Ni50Mn35Sn15-xBx (x=1, 2, 5 at.%)合金を、高周 波誘導溶解炉を用いて Ar 雰囲気下で作製した。 得られたインゴットを短冊状に切断後、石英管 に真空封入し、それぞれ融点直下の温度で 24 時間の熱処理を行った。 試料の組織観察には光学顕微鏡を用いた。各 変態温度の決定には示差走査熱量計(DSC)を 使用し、結晶構造の同定には X 線回折装置を 用いた。 3.結果および考察 DSC の測定結果から、B 濃度の増加に伴っ て M 変態温度が上昇する傾向にあることが分 かった。また、キュリー温度は Ni50Mn35Sn14B1 合金でのみ約 48℃と確認することができたが、 B を添加していない Ni50Mn35Sn15 3 元合金とほ とんど変わらなかった。 図 1 に Ni50Mn35Sn14B1 合金の組織写真、図 2 に Ni50Mn35Sn10B5 合金の組織写真を示す。いず れの試料においても析出物が確認でき、二相を 示した。Ni50Mn35Sn14B1 では析出物が粒界に沿 って析出しておらず、試料内に粒界割れが多数 存在していた。一方、Ni50Mn35Sn10B5 合金では 組織全体に対する析出物の割合が増加してお り、析出物が粒界に沿って析出していることが 確認できた。さらに、Ni50Mn35Sn14B1 合金に比 べて割れが抑制されていた。析出物の体積分率 は B 濃度の増加に伴って直線的に増加してい るため、添加した B は析出物に多く含まれて いると予想される。 当日は変態温度測定結果や組織観察とあわ せて、X 線回折パターンや機械的特性について も報告する。 [参考文献] [1] R. Kainuma et al., Nature 439 (2006) 957. [2] M. Ramuda et al., Intermetalics 28 (2012) 51. 図 1 : Ni50Mn35Sn14B1 合金の組織写真 図 2 : Ni50Mn35Sn10B5 合金の組織写真 お問い合わせ先 氏名:伊東航 E-mail:ito@sendai-nct.ac.jp E-25 Co2(Nb,X)Sn 合金(X=Cr, Mn, Mo)の 微細組織とマルテンサイト変態挙動 (仙台高専マテリアル環境工学科) ○丸屋百花・伊東航 キーワード:Co 基ホイスラー合金,マルテンサイト変態,形状記憶合金 1.緒言 現在、Fe 基、Ni 基、Cu 基ホイスラー合 金はマルテンサイト変態が発現することか ら、形状記憶合金として盛んに研究が行わ れている。一方、Co 基ホイスラー合金は Co2NbSn を除く合金系でマルテンサイト変 態の発現が報告されていなかった。また、 Co2NbSn 合金自体の研究報告は少なく、化 学量論組成のみに限られている。この合金 のマルテンサイト変態は低温域で確認され ているが、変態温度は報告者によって異な っている[1,2]。 近年、Co 基ホイスラー合金の一つである Co-Cr-Ga-Si 合金で新たにマルテンサイト 変態の発現が報告された [3]。また、世界で 初めて冷却誘起形状記憶効果が発見された ことで、Co 基ホイスラー合金は注目を集め ている。 昨年度、本研究室で非化学量論組成の Co50Nb50-xSnx (x=20~30)合金におけるホイス ラー相の相安定性を調査した。その結果、 ホイスラー単相域は極めて狭く、変態温度 を大きく変化させるのは困難であった。 本研究では、ホイスラー単相領域の拡大 を図るため、Co2NbSn 合金の Nb に対して Mo, Cr, Mn を置換することで微細組織とマ ルテンサイト変態温度におよぼす影響を調 査した。 2.実験方法 Co50Nb12.5X12.5Sn25(X = Mo, Cr, Mn)合金と Co50Nb15Mn15Sn20 合金を Ar 雰囲気中の高周 波誘導溶解炉で作製した。試料は石英管に 封入し、1000 ℃で 24 時間の熱処理後、水 中に焼き入れた。組織観察は光学顕微鏡で 行い、XRD 測定は 2の範囲が 20~100 度ま で、Cu-K 線源を用いて行った。マルテン サイト変態温度測定には DSC を用いた。 3.実験結果および考察 組織観察の結果、Co50Nb12.5Mo12.5Sn25 合金 と Co50Nb12.5Cr12.5Sn25 合金は三相組織であ った。図 1(a)に Co50Nb12.5Mn12.5Sn25 合金、(b) に Co50Nb15Mn15Sn20 合金の組織写真を示す。 (a)より Co50Nb12.5Mn12.5Sn25 合金は巣が多く、 一見二相組織であったが、XRD の結果から L21 ホイスラー構造の単相であると判断し た。(b)より Co50Nb15Mn15Sn20 合金は二相組 織であった。つまり、Mn を置換しても単相 は維持できたが、Sn 量を化学量論組成から 減らすと二相になることが確認された。 これらの合金のマルテンサイト変態温度 を-100~100 ℃の温度範囲で測定した。Mo, Cr を置換したとき、それぞれ変態開始温度 (MS)が-85.5 ℃、-45.9 ℃であると決定した。 一方、Mn を置換した合金は、測定温度範囲 内で変態温度を確認できなかった。この理 由として、Mn の置換によって母相が安定化 し、マルテンサイト変態温度が低下したと 考えられる。 【参考文献】 [1] V. N. Antonove et al., Phy. Rev. B71 (2005) 174428. [2] M. Terada et al., PHYS. Soc, JAPAN 36 (1974) 620. [3] X. Xu et al., Appl. Phys. Lett. 103 (2013) 164104. 図 1: (a) Co50Nb12.5Mn12.5Sn25 合金、 (b) Co50Nb15Mn15Sn20 合金の組織写真 お問い合わせ先 氏名:伊東航 E-mail:ito@sendai-nct.ac.jp E-26 籾殻から作られた多孔質摺動エレメントの 硬さと摩耗の関係および寿命評価 制御情報工学科 1,機械工学科 2,機械電気システム工学専攻 3 三和油脂(株)4,山形大学大学院理工学研究科 5) ○本間賢人 1・増山知也 2・佐藤貴洋 3・高橋武志 4・飯塚博 5・宍戸道明 1 (鶴岡高専 キーワード:籾殻,多孔質炭素材料,ビッカース硬さ,摩耗特性 1.緒言 100 ビッカース硬さ (Hv) 廃棄処理される籾殻の再生と二次利用を促進 するため,本研究グループでは籾殻を焼成して得 られる多孔質炭素材料の開発を行ってきた.本材 料は無潤滑性,低摩擦,高耐水性のコア・コンピ タンスを確立しており,RHSC を切削加工して 得られる回転軸受の応用が期待される.一方で, すべり軸受の性能評価は ISO/TC123 で標準化さ れ,その中でも摩耗は寿命低下に関係している. 本研究では,軸受材料の評価として硬さ試験と 摺動摩耗試験を行った.とくに,切削位置が寿命 に与える影響について検討した. 80 Area(A) : 0mm(端部)~30mm Area(B) : 30mm~60mm Area(C) : 60mm~90mm Table.1 摩耗痕の幅と深さ 60 width [μm] depth [μm] 40 Area(A) 82.1 1.8 20 Area(B) 79.6 1.7 Area(C) 74.1 1.8 0 Area(A) Area(B) Area(C) 測定エリア Fig.1 各エリアのビッカース硬さの平均 2.供試材および実験方法 2-1.供試材 乾燥させた生籾殻にフェノール樹脂 25wt.%を 混合,含浸させ,900℃の窒素ガス雰囲気中で 3 時間炭化焼成する.その後,粉砕工程を経て籾殻 焼成粉体が得られる.再び, フェノール樹脂 25wt.%を混合,含浸させて加圧成形し,乾燥後, 再び窒素ガス雰囲気中で 3 時間炭化焼成する.こ れにより 150mm×75mm×6mm の RHSC 成形体が 得られる.こうして得られる加圧成形体は,不均 一材料であり,圧縮強度はカサ密度に依存するこ とが確認されている.このため,切り出し位置を 端部から 30mm 間隔で区分し,各エリアから 10mm×10mm×6mm の形状の試験片を得た. 2-2.実験方法 硬さ試験は JIS-R1610 を参照し,ビッカース硬 さ試験機(AKASHI ,AVK-AII)を用いて,試験片 にビッカース圧子を 49N,98N の荷重で圧入した. 硬さの測定は JIS-Z2244 に定められている次式を 用いた. Hv = 0.1891 × F/d2 (1) ここで,F は荷重量[N] ,d は圧痕の対角線長さ [mm]である. 摺動摩耗試験は JIS-K7205 を参照し,本材料の 試験条件は次のように定めた.試験機はブロック オンリング式の試験機を用いて,摺動速度 1.5m/s, 摺動距離は約 130km,荷重を 10N,そして相手材 は SUS304 を使用した.試験後に小形表面粗さ測 定器(Mitutoyo ,SJ-210)を用い,摺動方向と垂直 方向の断面形状を測定した.さらに,表面状態を 走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した. 400𝜇𝑚 Fig.2 摺動面の SEM 像(×50) 3.実験結果および考察 Fig.1 に各エリアのビッカース硬さの平均を示 す.Area(A)は 44.4Hv,Area(B)は 51.4Hv,Area(C) は 55.5Hv という結果が得られた.このばらつき は,加圧成形によって生じた Area(C)付近の圧縮 残留応力が硬さを向上させていると推測される. Table.1 に摩耗痕の幅と深さを示す.また,Fig.2 に摺動面の SEM 像(×50)を示す.矢印は摺動方向 を指しており,その垂直方向に摩耗痕が形成され ている.最大深さに差は見られなかったが,摩耗 痕の幅は 8μm の差が生じた.Area(A)の表面では, 摩耗痕付近において多数のクラックが確認され た.そのため,摺動によってクラックが伝播し, 剥摩した微小片が摩耗痕に影響を与えていると 考えられる. 4.結言 硬さと摩耗痕の関係は,硬さがクラックの伝播 に影響した.また,軸受の寿命予測は切削位置に よるばらつきを考慮する必要がある. お問い合わせ先 氏名:本間 賢人(ほんまけんと) E-mail:i7983@edu.tsuruoka-nct.ac.jp E-27 Tb3+ドープ Ni/Al 系層状複水酸化物の合成と特性評価 (米子高専専攻科物質工学専攻 1,米子高専物質工学科 2, 島根大学大学院総合理工 3) ○小原大輝 1・伊達勇介 2・笹井亮 3・新井栄作 3・藤村卓也 3 ・日野英壱 2・藤井貴敏 2 青木薫 2 キーワード:粘土鉱物,層状化合物,共沈法,光学特性,希土類元素 1.緒言 層状複水酸化物(LDH)は、陰イオン交換性の層 状無機化合物である。LDHを構成する物質の組 み合わせにより、LDHに付加される特性が変化 するために、これまで多様なLDHの合成とその 応用について報告がなされている。しかし、LDH 自身は光学特性を示さないため、光物性に関して はほとんど検討が行われていない。 そこで、本研究では高効率な蛍光特性を示す LDHの創製を目的として、構造の一部に直接希 土類元素をドープした希土類含有型LDHの創製 を試みた。希土類元素として緑色の蛍光を示すテ ルビウム(Tb)を採用し、合成条件の検討を行った。 2.実験操作 A液として水酸化ナトリウム(NaOH)と硝酸ナ トリウム(NaNO3)をNaOH : NaNO3 = 20 : 30に 調製し、B液として硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・ 6H2O)と硝酸アルミニウム(Al(NO3)3•9H2O)お よび硝酸テルビウム(Tb(NO3)3・6H2O)をNi : Al : Tb = 10 : 5-x : x(x=0、0.75)に調製した。B液を 図1 合成した LDH の XRD 測定結果 いても、CO32-型Ni/Al系LDHに由来するピークが 確認された。また水熱処理時間が長くなると、回 折強度が高くなる傾向を示したが、AlOOHなど の不純物の生成も認められた。 図2に水熱処理温度を230℃で12~24h加熱し て作製したCO32-型Ni/Al系LDHの3D蛍光スペク トル測定結果を示す。水熱処理時間を24hとして 合成した試料では蛍光が確認されなかった。一方、 水熱処理時間を12hとして合成した試料では450 nm付近に弱い蛍光が確認された。この発光はTb に由来する蛍光と考えられ、LDH骨格中にTbを 導入できたと考えられる。 撹拌させながらA液を滴下し、前駆体を作製した。 オートクレーブを用いて140~230℃、12~24h で水熱処理を行い、減圧濾過し真空乾燥し粉体試 料を得た。得られた粉体試料はXRD、3D蛍光ス ペクトル測定、ICPで評価した。 3.結果と考察 図2 合成した LDH の 3D-FL スペクトル 図1に水熱処理温度を230℃とし、水熱処理時 間を12~24hで作製した粉体試料のXRD測定結 果を示す。図より得られた粉体試料はいずれにお お問い合わせ先 氏名:伊達勇介 E-mail:date@yonago-k.ac.jp E-28 Mg/Al 系層状複水酸化物/ビシンコニン酸複合体の合成と イオン検知特性評価 (米子高専物質工学科 1,島大院総理工2) ○西田知央 1・伊達勇介 1・笹井亮2・日野英壱 1・ 藤井貴敏 1・藤村卓也2・青木薫 1 キーワード:層状複水酸化物,ビシンコニン酸,排水処理 1.緒言 排水処理が必要となる現場では、重金属等の有 害イオンの存在を半定量的に迅速かつ簡易的に評 価できる材料が必要である.本研究では、イオン 検知能を有する固体材料の創製に向けて、陰イオ ン交換能を有する層状複水酸化物(LDH)に対して、 キレート剤の一種であり 1 価 Cu に選択性を有す るビシンコニン酸(BCA)を導入した LDH/キレー ト複合体の作製とそのイオン検知能評価を試みた. 2.実験 炭酸イオン型 LDH(協和化学工業製、DHT-6) を分散させたメタノール中に酢酸を LDH の陰イ オン交換容量に対して 150%加え、 窒素流通下で 3 h 撹拌することで層間陰イオンを炭酸イオンから 図1 LDH/BCA/C4S 複合体の XRD パターン 酢酸イオンに交換した.続けて BCA(東京化成工 業 製 ) を LDH の 陰 イ オ ン 交 換 容 量 に 対 し て を示す.炭酸イオン型 LDH の(003)面のピークが 0.05~150%加え窒素流通下で 20 h 撹拌すること 低角側に大きくシフトしていることから目的とす で LDH/BCA 複合体を作製した.吸引ろ過、真空 る LDH/BCA/C4S 複合体が作製できたと考えられ 乾燥により複合体の粉体を得た.また、酢酸イオ る.また、1 価 Cu に対するイオン検知能評価に ン型 LDH の作製に続けて界面活性剤(C4S:東京 おいて、LDH/BCA/C4S 複合体では BCA の添加 化成工業製)を 150%、BCA を 0.05~150%加え窒 量が 0.5~40%の複合体について、赤紫の発色が認 素流通下で 20 h 撹拌することで LDH/BCA/C4S められた.BCA は 1 価 Cu とキレートを形成し赤 複合体を作製した.吸引ろ過、真空乾燥により複 紫色に発色することから、 作製した 合体の粉体を得た.得られた試料の XRD 測定、 LDH/BCA/C4S 複合体は 1 価 Cu に対する検知能 FTIR 測定、CHNS 測定および 1 価 Cu に対する を有するこが明らかとなった. イオン検知能評価を行った. 3.結果および考察 図 1 に LDH/BCA/C4S 複合体の XRD パターン お問い合わせ先 氏名:伊達勇介 E-mail:date@yonago-k.ac.jp E-29 チタン酸ナノシート/アルキルアンモニウム/ローダミン 色素複合体薄膜の作製と発光挙動 (米子高専物質工学科 1、島大院総理工2) ○田守徹 1・伊達勇介1・Wasusate Soontornchaiyakul2・笹井亮2 ・藤村卓也 2・日野英壱 1・藤井貴敏 1・青木薫1 キーワード:低次元光機能材料、粘土鉱物、ハイドロタルサイト、有機/無機ハイブリッド材料 1.緒言 層状化合物の一種であるチタン酸から作製 したチタン酸ナノシートは層表面が負に帯電 したコロイドとなっていることから、正電荷を 帯びた材料を吸着させ様々な機能を付与させ た複合体薄膜として利用することができる。 本研究では、チタン酸ナノシートを利用した 発光材料の創製を目的とした。炭酸ナトリウム およびアナターゼ型二酸化チタンを原料とし て、チタン酸ナノシート/テトラメチルアンモ ニウム(TMA/Ti3O7)複合体を作製し、得られ た TMA/Ti3O7 複合体に対して、ローダミン系 色素を吸着・複合化させ TMA/Ti3O7/ローダミ ン色素複合体薄膜を作製し、その発光特性につ いて評価を行うことを目的とした。 2.実験 炭酸ナトリウム(Na2CO3)およびアナターゼ 型二酸化チタン(TiO2)をモル比 1:1.3 で量り 取り、900℃で 24 h 加熱し Na2Ti3O7 の粉体を得 た。次に Na2Ti3O7 を 1 M 塩酸に 10 g/L の割合 で加え、 室温で 24 h 撹拌し H/Ti3O7 を作製した。 H/Ti3O7 をアンプル管に入れ、40%メチルアミ ン水溶液(MA)をモル比でメチルアミン/チタン 酸中の H が 20 になるように加えた。これを 60℃で 6 日間加熱し、吸引濾過、真空乾燥させ MA/Ti3O7 の粉体を得た[1]。次に、テトラメチ ルアンモニウムヒドロキシド溶液(TMA)中に MA/Ti3O7 の粉体をモル比で TMA/Ti3O7 = 2~8 になるよう加え 2~6 日分散させた。この TMA/Ti3O7 懸濁溶液にローダミン 3b(R3B)を 所定量添加し、TMA/R3B/Ti3O7 複合体を作製し た.この複合体のキャスト膜を作製し、XRD、 蛍光スペクトル等により評価した。 3.結果と考察 Fig.1 に TMA/Ti3O7 = 2~8 として作製したキ ャスト膜の XRD 測定の結果を示す。5°付近 の TMA/Ti3O7 回折ピークは、モル比が 2 の懸 濁液において最も強く観測された。TMA/Ti3O7 = 4 以上になると、回折強度は著しく弱くなっ た。 Fig.1 TMA/Ti3O7 複合体薄膜の XRD パターン Fig.2 TMA/R3B/Ti3O7 複合体薄膜の蛍光スペクトル TMA/Ti3O7 = 2 の試料に R3B を複合化させて 作製した TMA/R3B/Ti3O7 複合体の蛍光スペク トル測定結果を Fig. 2 に示す。比較として R3B 水溶液の蛍光スペクトルを合わせて示す。いず れの条件においても R3B に由来する蛍光ピー クが認められた。R3B 水溶液で観測された 584 nm 付近のピークは複合化によって、低波長側 へのシフトが認められた。 [1] N.Miyamoto, J.Pyhs.Chem. 2004, 108, 4268-4274. お問い合わせ先 氏名:伊達勇介 E-mail:date@yonago-k.ac.jp
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