VOL.12 May. ’14 国土文化研究所年次報告 ANNUAL REPORT OF RESCO Research Center for Sustainable Communities 国土文化研究所年次報告 VOL.12 目 はじめに May.’14 次 国土文化研究所所長 池田 駿介 1 《研究報告要旨》 《研究概要》 都市内農地の多面的機能をふまえた緑地環境形成に関する 研究 Study on the green space conservation based on the multifunctional roles of the urban agricultural lands 大阪本社 道路交通部計画室 〃 〃 〃 〃 本社 国土文化研究所 竹林 高橋 福田 福富 粟生 原田 木村 弘晃 富美 裕恵 浩史 啓之 邦彦 達司 3 地域管理におけるコミュニティビジネスの可能性に関する 研究 Studies on the think tank of local government in Honjyo city 東京本社 都市システム部 〃 〃 〃 〃 〃 是枝 小原 山本 藤原 中村 高木 伸和 裕博 大樹 正明 翔一 雄基 9 コンパクトシティ形成に関わる政策研究 東京本社 都市システム部 〃 東京本社 PFI・PPP室 東京本社 都市システム部 土屋 信夫 長谷川翔生 川上 哲生 是枝 伸和 19 国土文化研究所 〃 東京本社 水システム部 東京本社 環境部 東京本社 河川部 和田 木村 宇井 稲葉 若杉 彰 達司 正之 修一 耕平 29 東京本社 都市システム部 〃 〃 〃 東京工業大学名誉教授 飯田 哲徳 水場 牧子 鵜野 勝巳 是枝 伸和 中村 良夫 35 世代別の転居につながる誘導方策の研究 Policy study for compact city research of the guidance which leads to migration 地域に根ざした河川再生の共創アプローチ 水辺からの都市再生を核とするアジアのネットワーク研究(その2) Development of river restoration network based on partnership and creating shared value approach 「まちニハ」実現化に向けた基礎的研究 ~日本橋浜町・人形町界隈を対象として~ A fundamental study on the method of creating “Machi-niwa” - focused on Nihonbashi-Hamacho and Ningyocho - 東京本社 水システム部下水 道室 蛯原 雅之 44 人々のための駅・最新の鉄道駅デザインの開発 Stations for people–recent developments in railway station design 国土文化研究所 木戸 エバ 53 文化財防災の研究 Study on technique for safeguarding culture assets against earthquake fire 大阪本社 地圏環境部砂防室 山邊 建二 82 地中構造物周辺空洞化に伴うリスク定量評価手法の研究 一連堤防としての安全性照査手法の事例検討 Research on quantitative risk assessment of the cavity around underground structure 注)所属は、平成26年3月現在のものです。 研究報告要旨 都市内農地の多面的機能をふまえた緑地環境形成に関する研究 Study on the green space conservation based on the multifunctional roles of the urban agricultural lands 集約型都市構造化を推進していくにあたって,良好な都市環境の維持・形成の観点から,緑地やオープンスペースの確 保や適切な土地利用転換が求められている.本稿は,市街化区域内農地(生産緑地)の保全が喫緊の課題となっている大 阪府高石市と共同研究契約を結び,都市内農地のレクリエーション,教育,福祉,防災,ヒートアイランド緩和といった多面的 機能を明らかにするとともに,これらの機能を活用した農地の保全・活用方策について,シンクタンク的な立場から自治体に 対して企画提案・支援を行い,具体の政策展開への方向性と新たなビジネスモデルとしての建設コンサルタントの役割に ついて考察するものである. 地域管理におけるコミュニティビジネスの可能性に関する研究 Studies on the think tank of local government in Honjyo city 人口減少や地方財政の悪化等の地域環境のなかでエリアマネジメントの導入により地域活力の維持・回復・創出等へ の期待が高く,今後は法人格を有した組織活動の需要が高まることが予見される. 本研究は,埼玉県本庄市との共同研究を行い,実際のコミュニティエリアでのフィールドワークを通じて,建設コンサルタン トにおける新事業として関心を集めている包括管理業務等への進展においてコミュニティ・ビジネスの可能性を確認するた め 2 か年の調査を実施するものである. 1 年目の研究では,対象地区の住民や既存まちづくり活動団体,自治体との意見交換等を重ね,まちづくりの経緯や現状 の整理,課題と各種エリアマネジメントの適合性を検討した.その結果,住民と行政との地域管理の志向の相違点などが明ら かになったことから,新たな事業モデルの適用や民間参入事業としての成立要件に関する検討をする必要があることが確 認できた. コンパクトシティ形成に係わる政策研究 世代別の転居につながる誘導方策の研究 Policy study for compact city research of the guidance which leads to migration 我が国においては,今後,人口減少や超高齢化に伴う財政規模の縮小や社会保障費用が増大する中で,コンパクトな まちづくりあるいは歩いて暮らせるまちづくりの推進が必要であり, これらを都市経営的な視点で考えていくことが重要であ る.その中で, これまでのような画一的・網羅的なコンパクト施策の展開ではなく, 多様化するニーズに対応したきめ細か い施策の展開が必要になってきたといえる. こうした状況を鑑み,本論文では, これまでビジョンや理念で語られることの多かったコンパクトシティを,今後,本格的に 実現に向かわせていくため,富山市をケーススタディとして,都市経営上, 行政が意図するコンパクトシティの形態(お団 子と串の都市構造)への転居を促すための世代別の転居への抑止力及び誘発要因を把握し, その上で「転居につながる 誘導方策」を提案するものである. 地域に根ざした河川再生の共創アプローチ 水辺からの都市再生を核とするアジアのネットワーク研究(その2) Development of river restoration network based on partnership and creating shared value approach 本研究は,当社が公益を目的に事務局を共同運営する「日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)」を活用しながら,国内 外の河川再生に関わる情報・知見の普及・啓発を促進し,各地域に相応しい河川再生の技術や仕組みづくりの発展に寄 与する持続可能なネットワークを構築するものである.本稿では,2013 年の主な研究活動と今後の展開,またネットワーク の持続的発展に向けた当社の役割について紹介する. 1 「まちニハ」実現化に向けた基礎的研究 ~日本橋浜町・人形町界隈を対象として~ A fundamental study on the method of creating “Machi-niwa” - focused on Nihonbashi-Hamacho and Ningyocho 本研究では,「生態・社会複合文化系の再構築に関する研究(平成 22~24 年実施)」で示された「まちニハ」の概念を用 いて,浜町緑道とその界隈の空間のあり方を捉えなおし,「まちニハ」実現化に向けた課題と実現化方策について検討し, 密集度の高い都市部における「まちニハ」実現性を検証することを目的としている. 平成 25 年は,「まちニハ」の概念・成立条件を整理し,評価軸を明確にした上で,浜町緑道とその界隈を対象として「ま ちニハ」の現状評価を行った.また,「まちニハ」の考え方を適用したケーススタディの提案を行ない,「まちニハ」の具体化 に向けた課題を提示した. 地中構造物周辺空洞化に伴うリスク定量評価手法の研究 一連堤防としての安全性照査手法の事例検討 Research on quantitative risk assessment of the cavity around underground structure 河川堤防の質的整備の一環として浸透に対する安全性照査が行われているが,その対象は土堤の堤防一般部に限ら れ,樋門設置部等の特殊部は対象外となっている.また,数百m~数kmの細分区間毎に代表断面を設定して照査し,そ の結果を細分区間の縦断方向全体に適用して補強対策等を行っているため,対策区間が必ずしも必要十分とは限らず, 対策範囲設定の精度向上やコスト縮減の余地がある. 本稿は,昨年度報告した『地中構造物周辺空洞化に伴うリスク定量評価手法の研究』に関する事例検討であり,開発し た解析ツールおよび考案した堤防安全性照査手法を用いて,A川左岸をフィールドとする事例検討を行い,実務への適 用性について検証を行ったものである. 人々のための駅・最新の鉄道駅デザインの開発 Stations for people–recent developments in railway station design Travel by railways is now more popular, than it was several years ago. Since 1980s, railways and rail architecture have been experiencing “station renaissance”. Along with this trend, many new stations have been built and many historical stations have been refurbished, upgraded and developed. Stations have become more user-friendly, satisfying many needs and various additional functions. This paper examines recent evolution of railway stations in Europe and Japan, as well as the process, within which stations have become more designated for people than, like before, for trains. Design of meaningful stations can popularize railways. Beautiful stations can attract people and station development can improve the urban areas around the stations. 文化財防災の研究 Study on technique for safeguarding culture assets against earthquake fire 我が国では,近年大規模な地震により,甚大な被害を受けており,津波や地震火災等により,多くの文化財についても損傷 を受けている.京都では,世界遺産をはじめ,多くの文化財を有しており,地震火災から文化財の焼失を防ぐことが文化財防 災のひとつのテーマとなっている. 本論文は,地震火災から文化財を守るための取り組みとして,当社が事務局を行っている「地震火災から文化財を守る 協議会」の取り組みを紹介したものである. 2 都市内農地の多面的機能をふまえた 緑地環境形成に関する研究 竹林弘晃1・高橋富美1・福田裕恵1・福富浩史1・粟生啓之1 原田邦彦2・木村達司3・ 1株式会社建設技術研究所 大阪本社道路交通部計画室(〒541-0045大阪府大阪市中央区道修町1-6-7) E-mail: takebays@ctie.co.jp 2株式会社建設技術研究所 本社(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail: harada-kunihiko@ctie.co.jp 3株式会社建設技術研究所 国土文化研究所(〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-15-1) E-mail: tt-kimur@ctie.co.jp 集約型都市構造化を推進していくにあたって,良好な都市環境の維持・形成の観点から,緑地やオープン スペースの確保や適切な土地利用転換が求められている.本稿は,市街化区域内農地(生産緑地)の保全が 喫緊の課題となっている大阪府高石市と共同研究契約を結び,都市内農地のレクリエーション,教育,福祉,防 災,ヒートアイランド緩和といった多面的機能を明らかにするとともに,これらの機能を活用した農地の保 全・活用方策について,シンクタンク的な立場から自治体に対して企画提案・支援を行い,具体の政策展開 への方向性と新たなビジネスモデルとしての建設コンサルタントの役割について考察するものである. Key Words : Mmultifunctional role of agricultural land,Intensive urban structure,Community regeneration 保や適切な土地利用転換を図っていく必要がある. このためには,従来のような土地の公有化や規制と いった手法のほか,緑地・農地について地域の合意形 成のもと計画的な土地利用コントロールを図る新たな 手法を用いることが効果的である. そこで,集約型都市形成のための計画的な緑地環境 形成を図るため,近年,多くの課題を抱える市街化区域 内農地を対象にした,エリアマネジメントの方策と農 地を核とした地域コミュニティづくりの活性化手法に ついて研究する.具体には,実地において課題を抱える 大阪府高石市との協力のもと,行政・住民への介入方 法等,課題解決のための手法等について実証的な研究 を実施する. 併せて,これまでの建設コンサルタントの,発注者から 契約関係で業務を受注する方式から,自治体シンクタン クとして政策立案支援,人材育成等の新たな役割を担う 新たな展開可能性についても考察する. 1.本研究の背景と目的 (1) 研究の背景 全国的に都市部では,無秩序な開発やスプロール化に より消失した緑地環境の適正な確保が課題となっている. その中で都市内農地は,多面的機能を有しており,その有 効な保全と活用が喫緊の課題となっている.さらに,団塊 の世代と称される元気な高齢者が定年退職を迎え,地域 社会での活動の場が求められている.これらの世代の生 きがいの場としての市民農園による「農」との関わりを 強化する取組は全国で可能であるが,そのための先導的 な取組みは未だ緒についたばかりである.さらに,生産緑 地として指定された農地の指定解除による宅地化が今後 急激に進むことが懸念されており,市街化区域内農地の 保全と活用に関する取組みは,先導的かつ汎用性が高く, これらを実現する技術やノウハウは,都市局や全国の自 治体から求められている. (2) 研究の目的 良好な都市環境の維持・形成や合理的な土地利用を 推進する観点から,緑・オープンスペースの保全・確 3 2. 高石市の概況 3.農地の持つ多面的機能 高石市は,大阪府の南部に位置し,北と東は堺市に,南は 和泉市・泉大津市にそれぞれ隣接する,市域面積11.35平 方キロメートルのコンパクトな都市である. (1) 多面的機能の概要 都市内の農地は,食料生産をはじめとする様々な機能 の他に,農業土地利用が物質的循環系を補完することに よる環境への貢献や,生産・生活空間の一体性と地域社 会の形成・維持適等が挙げられている. 表-1 都市内農地の持つ多面的機能の概要 1 持続的食料供給が国民に与える将来に対する安心 2 農業的土地利用が物質循環系を補完することによる環境 への貢献 1) 農業による物質循環系の形成 (1) 水循環の制御による地域社会への貢献 洪水防止,土砂崩壊防止,土壌侵食防止,河川流況の安 定,地下水涵養 (2) 環境への負荷の除去・緩和 水質浄化,有機性廃棄物分解,大気調節,資源の過剰な 集積・収奪防止 2) 二次的(人工の)自然の形成・維持 (1) 新たな生態系としての生物多様性の保全等 生物生態系保全,遺伝資源保全,野生動物保護 (2) 土地空間の保全 優良農地の動態保全,みどり空間の提供,日本の原風 景の保全,人工的自然景観の形成 図-1 高石市の位置 3 生産・生活空間の一体性と地域社会の形成・維持 交通網は,府道堺阪南線,国道26号,府道和泉泉南線,大阪 湾岸線などの主要道路とともに,南海本線とJR阪和線 の鉄道が南北に走っている.なお,高石・羽衣・富木3駅か ら大阪の中心部まで約20分,また関西国際空港にも20数 キロメートルと近く,温暖な気候と相まって,便利で住み 良い住宅地として発展している. 都市基盤の形成については,戦前は田園地帯であり,海 岸部には砂浜が広がっていたが,臨海部の埋立てにより 工場地帯が形成され,内陸部の市街化が進展してきた.そ の後,平成6年の関西国際空港の開港を契機に,阪神高速道 路大阪湾岸線等の交通網が一層充実し,現在の都市基盤 が形成された. 農家人口の推移を見ると,平成2年から22年までの20年 間で,1/6以下に減少しており,平成22年では111人となって いる.こうした動きに伴い,経営耕地面積も平成2年から22 年までの20年間で,1/3以下に減少している.また,市域の面 積のうち農地が占める割合が2.64%であり,大阪府43市町 村のうち39番目となっている.さらに,平成24年で19 件,7,392㎡の農地が住宅や駐車場に転用されており,農地 の保全対策は待ったなしの状況となっている. 1) 地域社会・文化の形成・維持 (1) 地域社会の振興 (2) 伝統文化の保存 2) 都市的緊張の保存 (1) 人間性の回復 (2) 体験学習と教育 日本学術会議「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面 的な機能の評価について」(2001 年 11 月) (2) 本研究で対象とした多面的機能 高石市では,農地の宅地等への転用が進んでおり,市街 化区域内に残された農地はわずかである.そのため,これ らの農地を良好な都市空間形成のために保全するために は,農地の持つ多面的機能を市民や地権者等が理解でき るように,調査・分析し,わかりやすく市民に公表すると ともに,それらの機能を活用した具体的な政策への展開 が必要であった. 写-1 昭和30年代の高石市の状況 図-2 本稿で対象とした農地の多面的機能と今後の展開 4 5.学校教育と連携したモデル事業の実施 4.市民農園の拡充に向けたモデル事業の実施 (1) レクリエーション機能としての市民農園の概要 一般に市民農園とは,都市住民がレクリエーションと しての自家用野菜・花の栽培,高齢者の生きがいづくり, 生徒・児童の体験学習などの多様な目的で,小面積の農 地を利用して野菜や花を育てるための農園のことをいう. 高石市内には2つの市民農園が存在し,農地の持つレクリ エーション機能が活用されている. (2) モデル事業の概要 高石市においては,様々なニーズの市民が市民農園を 利用している.そのため,モデル事業として,農家の栽培 技術指導者と市民が交流し,市民の農作物栽培技術の向 上を図る「栽培指導」の取り組みを実施した. 事業は,高石市民を対象に,市内の2箇所の市民農園を 会場に,各1回ずつ農業者から白菜とブロッコリーの栽培 方法についての指導を行った.指導者は,若手の農業者で 構成されている4Hクラブ(全国農業青年クラブ連絡協議 会)に依頼した.募集は,全市民を対象に市報等で行った. (3) 結果の概要 平成25年10月17日(木)と10月27日(木)の2回実施 し,それぞれ23人の市民が参加した.30代から80代以上の 幅広い参加であったが,60~70代が参加者の8割を占めた. 参加者の評価は95.7%が本事業に対して高い評価を行い, 農業従事者と市民との交流や,栽培方法等の情報を知 りたいというニーズが高いことが明らかとなった. 0.0% 0.0% (1) 教育機能の活用と学校教育との連携 農地の持つ教育機能を活用し,次代を担う若年層を対 象に,農業体験学習を通じた農業や農地に対する理解深 化を図る取り組みが各地,また各年代(小学校~高校 生)において進められている. 特に近年では,学校教育と連携し,食育や環境学習,コミ ュニケーションの習得と一体的に取り組まれる事例が多 く,複合的な効果が期待できる. 本研究では,市内に立地する全小学校(7小学校)にお いて農に関連する環境学習をモデル事業として実施した. (2) モデル事業の概要 各小学校の5年生(約500人)を対象に,2時限を利用し 農家による米づくりについての説明と案山子づくりを行 った.さらに,小学生が作成した案山子は,市内の水田に展 示し,市民への農に対する関心を高める工夫を行った. 写-2 案山子学習会,案山子展示会 (3) 結果の概要 参加児童アンケート調査の結果から,参加児童が農業 の大変さを理解したとともに,「街中にある田んぼや畑 はずっと残してほしい」と農地保全の意向を高めたこと が明らかとなった. (回答数) 1.大変よかった 4.3% 2.良かった 45.7% 3.どちらでもない 0.0% 4.あまり良くな かった 5.全く良くなかっ た 50.0% N=46 図-3 本事業に対する参加者の評価 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% ① お米や野菜を栽培する大変さを 改めて知った(N=378) ② 農業に興味を持った(N=129) 78.1% 26.7% ③ 街中にある田んぼや畑はずっと 残してほしい(N=375) ④ 家族で農体験できる市民農園を ) もっと増やすべきだ(N=185) ⑤ 農家の人の話をもっと聞きたい (N=138) 77.5% 38.2% 28.5% (4)とりまとめ ⑥ その他(N=44) 9.1% 本事業は試行的に実施したものであるが,参加者の評 図-4 環境学習を受けて理解した事項 価は高く,また農業従事者も市民との交流にやりがいを 感じたことを評価した. 実際の農業従事者に,栽培のノウハウを聞く機会が少 (4)とりまとめ なく,このような取り組みを,市民農園利用者や市民に継 本事業により児童への啓発効果が確認できた.この取 続的に行うことで,市民農園利用者の利用意向や市民の り組みを今後も実施していくためには,指導者やパート 農に対する認識が向上することが期待できる. ナーの確保や継続的な取り組みとする仕組みづくりの構 築を市や教育関係者と構築していくことが必要となる. 5 6. 農地の持つ福祉・医療分野における機能の適用 可能性の検討 7.延焼遮断効果のシミュレーションの実施 (1)防災機能の一つとしての延焼遮断効果 高石市において,貴重なオープンスペースである農地 の防災機能の把握・検証するため,農地の延焼遮断効果 についてシミュレーションを実施した. (2)シミュレーションの概要 市東部に位置し,市立高齢者福祉センターや防災倉庫 等の公共施設が立地するエリアをモデル地区に選定した. 建物の平面形状・階数・構造と出火点・風向・風速のみ で,市街地での延焼をシミュレートする東京大学小出研 究室で開発された延焼モデルを使用した.計算速度が速 いため,複数の町丁目にまたがる広い範囲の延焼シミュ レーションに適している. (3)結果の概要 シミュレーション結果からは,農地ありケースと農地 なしケースを比較した場合,農地ありケースは360分経過 時に対象域における焼失棟数の割合が29%であるのに対 し,農地なしケース(農地が宅地化したと仮定したケー ス)では,焼失棟数の割合が98%であった.また,対象域内 に立地する市立高齢者福祉センターについては,農地あ りケースでは農地なしケースと比較し,着火時間帯が遅 くなっており,これにより避難する時間を稼ぐことがで きる等,防災性向上に貢献していると見ることができる. これにより,モデル街区において,農地があることによる 延焼遮断効果が確認できた. (1)福祉・医療分野における機能の概要 農地の持つ多面的価値の一つとして,生産・収穫の喜 びや農作業を通じた老齢化防止,園芸療法によるリハビ リテーション・精神安定等,またこれを通じた生活の質 の向上といった効果が期待されている. 高石市においても福祉農園として,高齢者等を対象と した市民農園が開設・運営されるなど,こうした農地の 持つ福祉・医療分野における機能に対するニーズの高ま りをふまえ,園芸療法に関する,先進事例調査を行い,高石 市における導入可能性を検討した. (2)園芸療法事例調査の概要 平成25年11月20日(水)に,市報により公募した市民31 名とともに,園芸療法の指導・普及を先進的に実施して いる兵庫県立淡路景観園芸学校の視察を行った.視察で は,学校の取り組みや園芸療法についての講義を参加者 が受けた後,園芸療法の体験学習も実施した. 写-3 園芸療法体験学習 98% 98% 98% 農地ありケース 農地なしケース 36% 24% 28% 29% 29% 29% 29% 29% 21% 26% 18% 分 210‐240 分 240‐270 分 270‐300 分 300‐330 分 330‐360 分以上 360 10% 22% 14% 分 180‐210 もっと園芸や園芸療法につい て知りたい(N=15) 98% 分 150‐180 64% 機会があれば園芸療法にチャ レンジしたい(N=21) 街中にある農地や身近な緑を 今後も残したい(N=58) 98% 分 120‐150 緑にはいろいろな効果がある ことがわかった(N=21) 98% 65% 9% 分 30‐60 82% 分 0‐30 緑にふれあう機会を増やして いきたい(N=27) 97% 88% 分 90‐120 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 5% 10% 0% 4% 分 60‐90 (3) 結果の概要 視察に参加して「緑にふれあう機会を増やしたい」 が82%,「緑の効果がわかった」・「機会があれば園芸療 法にチャレンジしたい」が64%と,緑や植物への興味が高 まったことが確認できた. 図-6 農地の有無による延焼遮断効果 64% 58% 45% 図-5 視察に参加した感想 【農地あり】 (4) とりまとめ 今後,園芸療法の観点を市民農園や農に関連したイベ ントに取り入れる事で,農地の持つ福祉・医療分野にお ける機能を活用できる.園芸療法の指導者の確保やプロ グラムの作成,前項で示した学校教育との連携の可能性 等を検討していくことが課題である. 【農地なし(宅地化)】 図-7 360 分までの着火建物の分布 (4)とりまとめ 今回のシミュレーションでは,一定の農地の延焼遮断 効果が確認できた.今後,延焼遮断効果以外の農地の持つ 防災機能に着目し,農地保全の一方策を検討することが 必要である. 6 しての利用を可能にする「防災協力農地」といった農地 認定に向けた検討・提案を行う.併せて,市民が気軽に農 業に参画することができる市民農園の量的・質的拡充と 農地の保全の対策として,営農意欲の低い農地の市民農 園への転換や現在の市民農園の改善を検討する. (3)連携・協働のしくみづくり 今後,高石市において農地保全のための政策を提案・ 実施することをめざしているが,それを実現するために は,推進体制の整備が必要不可欠である. 来期の研究においては市民等を対象としたアンケー ト調査を実施し,具体のニーズを把握する.併せて,今期 の研究成果を広く市民に周知し,農地保全等に向けた機 運を高めるためのシンポジウムを企画・実施する. 8.ヒートアイランド緩和機能の調査・分析 (1)ヒートアイランド緩和機能の概要 農地の持つ多面的価値として,ヒートアイランド緩和 機能(気候緩和機能)がある.農地で栽培される作物は 蒸発散によって熱を吸収し,気温を下げる働きがある.特 に水田地帯では,水面からの水分の蒸発や作物からの水 分の蒸散により空気が冷却され,この冷涼な空気が風に よって市街地に運ばれ市街地を冷却するとされている. (2)調査方法 土地利用状況を勘案し,住宅地(計画的な住宅市街地 と密集住宅市街地),都市計画道路,グラウンド,農地の5 地点において,直射日光を避け,地上1.2m付近に温度計を セットし計測した.計測期間は,平成25年9月3日から10月 23日の30日間であり,9時30分から18時30分までの間で1時 間毎とした. (2)調査結果 調査地点のうち,農地の気温が最も低く,また都市計画 道路や住宅地と比較して1~2度程度低く抑えられており, 農地の気候緩和機能が発現していることが確認された. 気 10.おわりに (1)シンクタンク的な役割について 本研究は,高石市経済課農水振興室と共同研究の覚書 を締結し,シンクタンク的な立場で進めた. そのメリットを以下に示す. ・市職員と対等な立場で課題を共有しながら検討を行い 技術的なアドバイスや提案を実施することができた ・通常の業務のように仕様書に縛られることなく,ベス トマッチな提案を行うことができた ・後述するネットワークを活かしながら多様な提案をす ることができた ・市職員単独で実施するよりも速やかに課題解決を図る ことができた ・市長や副市長といった市のトップレベルの意思決定者 との議論の場が確保でき,スムーズな対応が可能であ った 一方,デメリットを以下に示す. ・資料の印刷や実費が必要となった場合の費用の分担が 不明瞭であった ・提案や企画に対しての実務の担保が不明確であった ・提案や実施内容に対する市の評価基準が曖昧であった 以上,共同研究を通じて,市単独で実施するよりも質の 高い調査や事業を実施することが可能であったと考えら れるが,それらを評価するシステムや,成功報酬として金 額に変換する仕組みが存在しないため,ビジネスモデル として構築するのはこれらの課題解決が必要であると考 えられた. (2)「農」を活用した新規ビジネスの可能性 本研究では,都市内農地の多面的機能を明らかにする とともに,「農」を中心としたまちづくりへの展開を検 討した. 国の調査「集約型都市形成のため計画的な緑地環境形 31.0 30.5 30.6 30.0 29.5 29.0 29.7 29.6 29.4 29.2 28.5 住宅地( 密集) 農地 グラウンド 都市計画道路 住宅地( 計画) 28.0 (度) 図-7 地点別日最高気温(期間平均値) 9.本研究の成果と今後の課題 (1)多面的機能について 農地の多面的機能として,レクリエーション,教育,福祉, 防災,ヒートアイランドについて具体的な調査・分析等 を明確化することができた. 高石市では,防災に対する意識が高く,農地の持つ防災 機能を積極的に活用していく事が求められた.そのため, 来年度は農地の持つ貯留機能に着目した検討や実証実験 を行い,農地の持つ防災機能について検証を進める. (2)具体の政策提案の実施 モデル事業の効果を計測するために参加者へのアンケ ート調査を実施する等,本年度の調査・研究成果を具体 の政策に展開するための基礎的調査を実施した. 来期は,本研究の成果をふまえた具体的な政策提案を シンクタンク的に実施する.具体的には,農地の公益性を 評価し,農家と契約を結び災害時の待機所や防災空間と 7 ことが本研究の成果の一つといえる. (3)農業関連分野のネットワークの構築 本研究は,大阪府立大学生命科学研究科をアドバイザ ーに進めた.さらに,兵庫県立淡路景観園芸学校や新潟大 学の学識経験者,関西を中心に活動する若手の農業従事 者や食育や農に関連した NPO 等,農業に関連した様々な 分野の知見者とのネットワークを構築することができた. また,これらのネットワークを活かして研究を進め,市に 提案を行うことができた.今後も本研究を通じて,これら のネットワークを広げていきながら,領域拡大をめざす. 成実証調査」が立ち上がり,遂行を高石市が行うことに より,その一部の業務が高石市から受注したことから,本 業務にはその成果を含めた記述をしているが,国の動向 を見て,今後,農地を都市の貴重なオープンスペース・緑 地空間として捉え,「農」を活用した都市づくりが進む ものと考えらえられる. 併せて,農業関連ビジネスへの展開として,市民農園,栽 培指導,防災協力農地といった,都市内農地からのアプロ ーチの可能性が示唆された.㈱CTI フロンティア等と連携 しながら,農産物の生産だけでなく,農業・農地の多面的 機能を活用したビジネスモデル構築の可能性が高まった STUDY ON THE GREEN SPACE CONSERVATION BASED ON THE MULTIFUNCTIONAL ROLES OF THE URBAN AGRICULTURAL LANDS Hiroaki TKEBAYASHI Fumi TAKAHASHI Hiroe FUKUDA Hirofumi FUKUTOMI Yoshiyuki AOU Kunihiko HARADA Tatushi KIMURA It is necessary to create more open green spaces and redirect the layout of the land used appropriately when promoting the Compact City Policy from a landscaping point of view. In this paper, the research was produced in co-operation with Takaishi city, Osaka, and the multifunctional roles of the agricultural land in urban district were examined; such as roles in recreation, education, welfare, disaster prevention, and mitigation of the heat island effect. Proposals and supports were given to the local government to conserve and utilize the agricultural land in urban areas from the point of view of a think tank. Also, the further direction of the policy toward concrete measures and the emerging roles of civil engineering consultants as a new business model were discussed. 8 地域管理におけるコミュニティビジネスの 可能性に関する研究 是枝伸和1・小原裕博2・山本大樹3・藤原正明4,中村翔一5,高木雄基6 1技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: koreeda@ctie.co.jp 2技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: obara@ctie.co.jp 3技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: h-yamamoto@ctie.co.jp 4技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: fujiwara-masaak@ctie.co.jp 5技術士補(建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail: s-nakamura@ctie.co.jp 6技術士補(建設部門) 株式会社建設技術研究所 都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)E-mail:y-takagi @ctie.co.jp 人口減少や地方財政の悪化等の地域環境のなかでエリアマネジメントの導入により地域活力の維持・回 復・創出等への期待が高く,今後は法人格を有した組織活動の需要が高まることが予見される. 本研究は,埼玉県本庄市との共同研究を行い,実際のコミュニティエリアでのフィールドワークを通じて, 建設コンサルタントにおける新事業として関心を集めている包括管理業務等への進展においてコミュニテ ィ・ビジネスの可能性を確認するため2か年の調査を実施するものである. 1年目の研究では,対象地区の住民や既存まちづくり活動団体,自治体との意見交換等を重ね,まちづくり の経緯や現状の整理,課題と各種エリアマネジメントの適合性を検討した.その結果,住民と行政との地域管 理の志向の相違点などが明らかになったことから,新たな事業モデルの適用や民間参入事業としての成立 要件に関する検討をする必要があることが確認できた. 1. はじめに ュニティ・ビジネスであり,その分野は,医療,福祉,健康,教 育,環境,文化,まちづくりなど多岐に渡っている. コミュニティ・ビジネスは,①地方公共団体による画 一的な行政サービスでは地域固有の課題解決のために不 十分であること,②成熟社会の到来により地域住民のニ ーズが一層高度化・多様化しており,これらへの対応が 困難となってきていること,③このような事業分野は,営 利を目的とする民間企業では採算確保が困難なため,サ ービスが十分に供給されないこと などの理由から,多く の自治体や地域まちづくりの場で注目を集めている. 地域が抱える課題に対して,地域住民が全面的なボラ ンティアで解決していくことは,その安定性・継続性の 面で困難であり,利益が薄くともビジネスとして実施さ れれば,安定的・継続的な取り組みとなり,課題解決と行 政コストの縮減に資することから,コミュニティ・ビジ ネスを支援する地方公共団体も増加してきている. コミュニティ・ビジネスの担い手は,株式会社か 近年,わが国においては少子高齢社会が進行するとと もに人口の減少期を迎え,市街地において空家・空地が 目立ち地域の安全や活力などの低下が懸念されるととも に,良好なコミュニティの維持・管理における問題の顕 在化が指摘されている. また,財政の厳しい状況等を背景として,指定管理者制 度を代表に,公共施設の民間による適正かつ効率的な維 持・管理などが積極的に導入されている1). このような現状において,地域の課題に対応し,住民や 土地所有者による地域の維持・管理(エリアマネジメン ト)に関して,自治会,NPO法人,任意の協議会等により,必 ずしも行政に頼らない形で,居住地等において,さまざま な取り組みがなされている. さらに,地域住民が地域を活性化したり,地域の課題を 解決するために,有償で,自ら取り組んでいる事業がコミ 9 ら,NPO法人,組合,任意の団体,個人まで様々な形態を取り 得るが,新たなエリアマネジメントの担い手が,コミュニ ティ・ビジネスとしてエリアマネジメントに取り組めば, 活力ある豊かな地域社会の形成に大いに資することとな ると考えられる1). 者・住民等へのヒアリング調査を実施し,まちづくりの 課題の検討や,対応策として想定するエリアマネジメン ト手法の検討のためのデータなどを収集した. 5) エリアマネジメントの検討(適用の課題整理) 4)の調査結果から,本庄早稲田の杜地区におけるエリア 以上の観点から,本研究は,①当社がコミュニティ・ビ ジネスの事業主体として参画した場合の地域づくりに資 するサービス提供の内容の整理及び事業展開の可能性 (新規業務分野の開拓),ならびに,②自治体が地域づく りを推進するにあたって,エリアマネジメントの導入に 対するニーズ調査や計画作成支援内容のシーズの確認 (コンサルタント業務の事業メニューの展開),について研 マネジメントの適用とその課題について考察する. 次年度では,これらを踏まえ,コミュニティ・ビジネス としての成立のための課題などについて研究を進める予 定である. 平成 25 年度の研究 (1)研究準備1:テーマの調査(既往文献より) 究する. 以下,本研究では,2.において本研究の方法や進め方を 示す.次に,3.においてエリアマネジメントに関する動向 や定義を整理する. 4.では本研究の大きな特徴である共同研究について,5. (2)研究準備2:自治体プロジェクト参画条件の検討,調 整 (3)対象地区のまちづくりの経緯および現状の整理 では研究対象地区である埼玉県本庄市の本庄早稲田の杜 地区の概要を示し,6.では研究対象地区で行った各種調査 の概要を整理する.7.において,研究対象地区におけるエ リアマネジメント手法の適用の課題を示す.最後に8.にお いて本研究で得られた成果と課題をまとめる. (4)対象地区に関する調査 (5)エリアマネジメントの検討(適用の課題整理) (1)コミュニティビジネス(エリアマネジメント活動支援) の試行に向けた検討 :地域に必要なエリアマネジメント活動の実施ノウハウ の蓄積,効果の検証 2. 研究の概要 (1)研究の方法 本研究は,2か年でエリアマネジメントに関するコミ ュニティ・ビジネスの可能性を検討するものであり,図-1 に示す方法で調査・研究を進めた. 1) テーマの調査(エリアマネジメントに関する動向) 既往文献などから,エリアマネジメントに関する研究 などから現状を整理する. 2) 自治体プロジェクト参加条件の検討,調整 当社の新規事業としてのエリアマネジメントにおけ るコミュニティ・ビジネスを研究するうえで,ステーク ホルダーである自治体やまちづくり活動団体,住民から の意見収集や実態のデータ収集が必要であることから, 自治体との共同研究として実施することを想定し,本庄 市との協議・調整を行った. 3) 研究対象地区でまちづくりの経緯や現状の調査 研究対象地区である本庄早稲田の杜地区(詳細は4章参 照)に関して,これまでのまちづくりの経緯や全市的な位 置づけ,顕在化している課題などについて把握した. 4) 研究対象地区における調査の実施 エリアマネジメントのステークホルダーである本庄 市との意見交換や,既存のまちづくり活動団体によるイ ベント参加者(住民や来訪者)へのアンケート調査,地権 (2) 新たな仕組みづくりの実現に向けた課題の整理 :総合コンサルタントによる支援が可能な業務内容の範 囲の整理と課題解決による発注者メリットの検討 (3)収益性の確保できるエリアマネジメント実現にかかる ビジネスモデルとしての取りまとめ (4)エリアマネジメント実現に向けた広報 :エリアマネジメント支援ビジネスに関するガイドライ ン(ノウハウ集)の検討,論文の作成 等 図-1 本研究の流れ 3. エリアマネジメントに関する動向 (1) エリアマネジメントの巡る背景 エリアマネジメントは地区の課題への対応策として実 施されるものであるが,主に以下の3つの社会的動向が 背景にある.2) ①環境や安全・安心への関心の高まり 身近な環境や地球環境問題,さらに安全・安心等へ の関心が高まっており,住民等による NPO 法人の設立 10 このような観点から,エリアマネジメントは,以下のよ うに定義されており,本研究でも,このような取り組みを 対象とする. やボランティア活動への興味・関心の高まりなど,地 域を,自分達の力で変えていこうとする気運が高まっ ている. ②維持管理・運営の必要性の高まり 成熟社会への移行に伴い,従来の開発(ディベロッ プメント)だけを目的としていた地域づくりから,つ くる段階から維持管理・運営(マネジメント)までを 考えた開発をしていく必要性が認識されるようになっ た. また,行政においては,限られた財源の中で,公共施 設等の新たな整備には限りがあり,そのため既存スト ックの有効活用,維持管理・運営コストの低減や効率 的管理に目を向けることが必要になっている. ③地域間競争の進行に伴う地域の魅力づくりの必要性の 高まり 活力に富む地域を持続させていくための地域間競 争が進みつつあり,他より優位な地域とそうでない地 域が現れてはじめ,他の地域との優位性を保つための 手法として,自らの価値を高めるために魅力づくりを することの重要性が地権者や行政等に認識されはじ めている.また,地域全体の価値が高まることにより, 資産価値の維持・向上という相乗効果を期待できる. エリアマネジメントの定義2) 地域における良好な環境や地域の価値を維持・向 上させるための,住民・事業主・地権者等による 主体的な取り組み また,「良好な環境や地域の価値の維持・向上」では, 何かを魅力的なものをつくることだけではなく,人をひ きつけるブランド力,安全・安心,良好なコミュニティの 形成,地域の伝統・文化の継承等のソフトな領域のもの も含まれる. (3) エリアマネジメントの項目と内容 既往の研究や事例 3)から,エリアマネジメントの対象 となる項目と取り組みの例を表-1 に示す. 生活環境の維持・向上のなかには,道路や公園などの公 共施設等の維持・管理なども対象となっている. これらの項目・内容の実施において,図-2 に示す 4 つ の要素を満たすように,住民・行政・エリアマネジメン トの担い手の関係性の構築することが重要である. (2) エリアマネジメントの定義 (1)で見た動向は,厳しい財政状況の下で自治体(市等) が市域全体へ同等の投資を行うことが困難であることが 明らかになったなかで,生活環境や土地等の資産の維 持・向上のために,自らが関係する一定の地域(エリア) におけるサービスについて,自ら積極的に管理(マネジメ ント)に参画する必要性が認識されはじめていることに よると考えられる. 図-2 エリアマネジメントの4つ要素 表-1 エリアマネジメントの項目と内容 11 (4) エリアマネジメントの事例整理 国内のエリアマネジメントの先進事例の中から地域 の拠点を形成し,収益性の確保を目指しているものに着 目して整理を行った. これらの事例は,5.に示す本庄早稲田の杜地区の市街 地状況や想定されるまちづくり課題を解決するために即 効性と直接的な課題解決の方策として活用できるもので はないが地域組織の成り立ちや,地域活力の向上に向け た目標設定の方法などについて参考にすべき点として整 理した. ①業務・商業集積地 【事例 1】東京都千代田区大手町・丸の内・有楽町地区 a)地区の概要 本地区は,東京駅を中心とした業務・商業地であり,近 年,再開発が進んでいるエリアである.大企業を中心とす る民間主体と行政とが協調してまちづくりを進めている. 東京都の中心にある国際的なビジネス拠点という立 地を活かし,業務地としてだけでなく,来街者が集まる都 市観光地としての魅力向上に向けて,戦略的なエリアマ ネジメント活動を推進している. b)エリアマネジメントの内容 ・協議会:地権者間の調整・協議 ・懇談会:官民の協議 ・NPO 法人:地区内のイベント実施,ソフト面のマネ ジメント c)組織 ・大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会 (協議会) ・大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり懇談会(懇談 会) ・特定非営利活動法人大丸有エリアマネジメント協会 (NPO 法人法人) d)共同研究における活用可能な内容 協議会,懇談会といったステークホルダーを二層に区 分してワーキングを行うことで実効性を高めている点は 調査研究対象地区においても関係者間の合意形成を高め る上で活用できる. ②土地区画整理事業による新市街地 【事例 2】東京都港区 汐留地区:シオサイト a)地区の概要 汐留地区は,東京都心の南部に位置し,JR新橋駅に近 接する旧国鉄汐留貨物駅跡地からJR浜松町駅付近まで 広がる施行面積約30.7haの地区である.地区内には 鉄道発祥の地として名高い旧新橋停車場跡地があり,地 区の東側には広大な浜離宮庭園が隣接するなど,都心に 12 あって歴史的景観と自然が残る数少ない地域の一つであ る. 本地区は,業務及び商業が高度に発展した都心部と,新 たな副都心として発展が期待されている臨海部との中間 に位置し,都心部と臨海部を結ぶ重要な交通結節点でも ある. b)エリアマネジメントの内容 区画整理事業段階に,街づくり協議会が管理組織とし ての中間法人を立ち上げ,公共施設等の維持管理を実施 c)組織 ・汐留地区まちづくり協議会(形態:まちづくり協議会) 事務局に,都市計画・まちづくりの専門家が関与し,協議 会案の作成,行政との交渉,協議会メンバーへの説明など の活動をサポート ・汐留シオサイト・タウンマネジメント(形態:中間法 人・公共施設の維持管理受託のため法人格を取得) d)共同研究における活用可能な内容 共同研究者が最終的に地域住民に期待を寄せる身近 な公共施設の維持管理を実施している法人格の設置は今 後の地権者を交えた事業推進に役立つものとして整理を 行った. ③土地区画整理事業による商業地 【滋賀県彦根市】 a)地区の概要 本町市場商店街は,「街なか再生土地区画整理事業」 により区画道路にかかる移転移設費などの整備費が事業 対象になったことから実現可能な計画づくりが行われ, 「四番町スクエア」という新しい街の名前で住民の自ら の手によりまちづくりが推進された. b)エリアマネジメントの内容 ・まちづくり協定委員会を立ち上げ,マスターアーキテ クトを招聘し,デザインルールを策定しデザインコント ロールを実施 ・商店街組合が通路等の維持・管理を実施 c)組織 まちづくり支援会社が初動活動から地区に入り,住民 啓発や事業推進などを継続的にサポート ・(株)四番町スクエア(形態:株式会社) ・四番町スクエア協同組合(形態:商店街組合) d)共同研究における活用可能な内容 地域活力の向上に向けて地権者等を巻き込む仕組み は調査研究対象地区にとって理想的な将来像の一つであ ることから,これを参考に本庄早稲田の杜地区にふさわ しいモデルの構築について引き続き研究を進める. の立場でコンサルタント個人としての意見交換が実 施でき,地域住民と自治体とのまちづくりに関する各々 の意向を把握した(6.で詳述). 4. 自治体プロジェクト参加条件の検討,調整 エリアマネジメントにおけるコミュニティ・ビジネ スを研究するうえで,ステークホルダーである自治体や まちづくり活動団体,住民からの意見収集や実態のデー タ収集が必要であることから,本庄市との協議・調整を 行い,「本庄早稲田の杜」地区を対象として,共同研究に ついて合意した. 5.研究対象地区の概要 (1)本庄市の概況 本庄市は,東京から80㎞圏にあり,関越自動車道や国道 17号,上越新幹線を軸に都市機能が高度に集積している. 共同研究に関する覚え書(抜粋) 【研究内容】 ( 1 ) 本庄早稲田の杜地区における持続可能なエリ アマネジメントの内容及び手法等の検討 ( 2 ) 住民及び事業者等の主体的な参画を図り,交流 を増進するエリアマネジメント組織の検討 ( 3 ) 前2号に関連する事項 【成果】 本共同研究の成果は,甲乙共有するものとし,甲又は 乙は,本共同研究により得られた成果を自由に利用す ることができるものとする. 【有効期限】 本覚書の有効期間は,平成25年8月 日から平成2 7年3月31日までとする.ただし,期間満了の3か 月前までに甲乙協議の上1年間延長することができ るものとする 広域的な連携交流の要として「前橋・高崎(広域連携拠 点)」「熊谷・深谷(業務核都市)」をつなぐ重要な位 置にある北関東の玄関口である. 自治体との共同研究形式とすることで,本研究では地 域住民と”行政側と市民“という立場ではなく,第三者 図-3 本庄市の広域的な位置 図-4 人口動向から見た本庄市の構造上の課題 (本庄市資料) 13 な住宅地の形成を図り「職・住・遊・学」の機能を備え た魅力ある街づくりを行うことを目的としている 4). 土地区画整理事業としては,減歩率 42.75%と高く,道路等 の公共空間が充実した地区が整備されている 2006年(平成18年)に, (旧)本庄市,児玉郡児玉町と 新設合併し,新たに本庄市となった. 本庄駅北口,本庄早稲田駅の市街地,旧児玉町の中心部 が3つの拠点を形成しているが,図-4に示す人口動向から 見た本庄市の課題として,近年,市街地整備した地区では 人口増がみられる一方で,旧市街地を含むその他の地区 では人口減少や高齢化が進んでいる. また,人口減少と市街地の拡散の傾向があり,若者の流 出や高齢化の進行,児玉郡市地域の中心市としての求心 力の低下や購買力の流出が市街地構造上の課題となって いる. 表-2 区画整理事業の概要(本庄市資料) (2)「本庄早稲田の杜」地区の概要 a) 土地区画整理事業 本庄早稲田の杜区域は,本庄地方拠点都市地域(平成 5 年 8月地域指定,平成 7年 3月基本計画承認)の拠点地区 に位置づけられており,新幹線新駅の開設,早稲田リサー チパーク地区の整備及び土地区画整理事業により,本地 域の経済,社会の中心として発展が期待されている. この事業では,駅前広場,幹線道路,公園等の公共施設の 整備を行うとともに,早稲田リサーチパーク地区と連携 しつつ,業務施設,広域的な行政文化施設の立地及び良好 .b)地区の現在の姿 地区の中央にスーパーマーケットやホームセンター, 本屋などの大規模商業施設がオープンし,ガソリンスタ ンドやコンビニなどが営業している.戸建住宅も順次建 本庄早稲田駅周辺地区の先行整備街区 約 65ha が宅地化を進行 図-5 本庄早稲田の杜の土地利用計画 14 主な設問として「まちづくりに関する活動について 参加意欲」に関して確認した結果,活動自体への関わり を期待すると答えた割合は 8 割を超えており,このうち 4 割以上の方がまちを美化する清掃活動といった実益を選 択している. 設され,市内だけでなく市外・県外からも居住者が移転 してきている. その一方で,整備された道路沿道の土地利用はまだ少な く,低未利用地もある状況である. c)エリアマネジメントを検討するうえでの周辺地区と の留意事項 土地区画整理事業は,図-5で白地の事業未着手である 新田原本田地区,東富田久下塚地区,栗崎地区も含めるエ リアで地権者とまちづくりの合意がとれている計画(本 庄新都心地区 154ha)となっているが,本庄早稲田駅周辺地 区の先行整備街区約 65ha が宅地化を進行している. このため,全体地区でのまちづくり協議会と意見交換 などを行っている. また,「まちづくりの進め方で気になっている点」に ついても美化に関連する雑草の駆除や,ごみのポイ捨て 防止などが半数近くを占めており,新市街地を大切にし ている地域住民の姿が浮き彫りになっている. d)本庄早稲田まちづくり活動勉強会 エリアマネジメントの内容と,エリアマネジメントを 行うことによる地域のメリット等について,勉強や実際 のまちづくり活動を通じて理解を深めることを目的とし て,「本庄早稲田まちづくり勉強会」が活動している.将 来的には,本庄早稲田駅周辺地区を対象とした「まちづ くり活動組織」を立ち上げることを目指している. 本庄早稲田まちづくり活動勉強会の目的 (1)市民主体によるまちづくり活動のあり方の検討 (目的・活動メニュー・組織体制・活動資金等) (2)まちづくり活動の試行実施と機運醸成 (3)上記を通した,まちづくり活動のリーダー育成 月に一度まちづくり活動勉強会を実施しており,まち づくり活動勉強会の試行活動として,公共空間を活用し てイベント(ハロウィン,そうめん流しなど)を企画し ている.また,月に一度「まちみがき(美観活動)」を実 施している. (2)まちづくり活動団体との意見交換 調査の対象地区には,任意の団体組織であるまちづく り活動勉強会が設置されており平成 21 年 3 月から活動 を実施している. 活動概要は,毎月 1 回程度話し合いを行い「まちづく り活動のあり方検討」,「活動の施行実施と機運醸成」, 「まちづくり活動のリーダー育成」などに取り組んでい る. 組織の中心は,子育て世代を中心とした比較的若い年 代であり,土地区画整理事業の地権者の相続対象者であ るため地権者が自らの土地,建物といった資産の保全を 優先した考えを持っているのに対して,まち全体の活力 の向上や,まちづくりに関する参加者が増えることにつ いて重要視していることが意見交換を行ったことで確認 することができた. 一方,まちとしては比較的新しいことから住宅の立地 が少なく,居住者もまばらなことからまちづくり活動勉 6.対象地区におけるエリアマネジメントに関する 調査 (1) イベント参加者へのアンケート調査 調査対象地区では,年間を通して「まちなかの美化や, 防犯活動」,「ハロウィンに併せたイベント・イルミネ ーションの実施」など地域住民にまちづくり活動勉強会 の活動による地域の活力の向上に関する情報の提供を行 っている. 今年,8 月には土地区画整理区域内の地権者に関連性の 高い飯玉神社の境内において地域住民向けに「流しソー メンと夏祭り」を実施,参加者にアンケート調査を行っ た. 15 ・ 新市街地での商業の集積等は,従来市街地との競争 であり,市全体が活性化するイメージは持ちにくい 強会への参加者も少ないことが当面の課題であり,参加 者を増やすため様々なイベントを企画,運営することに 注力している.長期的な視点で組織の強化を図る必要が ある. (3)地権者へのヒアリング調査 本庄早稲田の杜の土地区画整理事業に係る地権者に 直接お話を伺った.ヒアリング対象者は,事業地区内に居 住地があって事業地区内に移転した方,事業地区に隣接 する地区に居住していて事業地区内の土地をお持ちの方, 市内で事業地区とは離れた地区に居住して地区内に土地 をお持ちの方など,事業による生活への影響の度合いが 異なる方々に,以下について意見を聞くことが出来た. ①まちづくりに関する現状の問題意識について ・ 近隣居住者は,商業施設等の利便性向上に対して好 意的である.また賑わいを感じている人もある. ・ 隔地居住者は,他の商業集積地との差別化の面で高 い評価ではない. ・ 近隣居住者に対して,交通量の増加による安全等の 影響を尋ねた.道路が整備されていることで特に問 題は感じていない. ・ もっと一気にまちが出来上がると思っていた人がい る.一方でこの時勢にしては順調だと思っている人 もいる. ②周辺まちづくりの取り組みについて ・ まちづくり勉強会の活動の認知は十分とは言えな い.(ヒアリング対象者はお知らせなどが来ているが, 周辺の住民は知らない模様とのこと) ③まちづくりに活動に期待する内容について ・ 人の交流,世代の交流,近隣地区との交流が期待され ている. ・ 自治会活動などで,現在も地元はがんばっている.一 方で住民の活動には限界がある.専門家の力も借り て,若い新しい行動を起こしてほしいと期待してい る. ・ 人的交流のためのイベント,施設,空間活用などのサ ービス充実を期待している. ④まちづくり活動に参画する条件について ・ 地域住民から積極的に迎える姿勢をとることで,新 住民ともうまくいっている. ⑤その他(本庄市のまちづくりに関する姿勢について) ・ 換地によってこれまで農業をやっていた人が急に不 動産屋になるような状態に.納得はしているがもっ とアフターフォローがあると期待していた. ・ 区画整理に関しては一定の評価をしている.一方で, 行政の顔が見えないと感じている人もいる. 16 (4)行政との意見交換 本庄市は,財政状況において現状では歳出と歳入のバ ランスは図られているものの人口減少,特に,生産年齢人 口の減少の傾向が顕著になりつつある. 市の財政方針からは「社会保障関連経費の増加や老 朽化してきている公共施設の維持・更新に対応しつつ, 将来にわたり持続可能なまちづくりを進めることが重要 な課題」であることが位置づけとして確認できている. 本庄市では,平成 21 年から調査対象地区においてエリ アマネジメントを導入することを検討しており「周辺地 域との差別化を図り活力を向上」,「地域資源の保全に 向けた自主的な管理組織の構築」,「地域をけん引する オピニオンリーダーの育成」などを目指している. 特に,地域住民への活動状況に関する情報発信にはま ちづくり活動勉強会の事務局を務める市担当者の工夫が 随所に見受けられている.従来のニューズレターの発行 に加えて,頻繁に SNS(Facebook)を活用して地域住民の関 心を高めることに取組んでいる. なお,調査の対象地区が含まれる区画整理予定区域 154ha の当初計画では県の行政サービス施設を中心に公 益施設の誘致が計画されていた.しかし,先行して整備が 進行している 64.6ha の施行区域では公益施設用地に農協 が移転してくる計画となっている. 本庄市としては,本庄早稲田駅周辺のまちづくりの吸 引力を高める方策として厚生福祉施設について区画整理 予定区域内(駅の北東部)にある市民文化会館や公民館, 病院,法務局などを移転させることを検討しているが移 転時期や移転手法についての目途はない. また,エリアマネジメントの手法を検討する過程にお いて区画整理区域内の公共施設(歩道や河川等)の維持 管理費程度は捻出できるような収益性を確保を目指して いる. (5)地域管理に関する意向のとりまとめ エリアマネジメントの動機となるまちづくりの課題 認識について,各ステークホルダーへの意見収集から,以 下を把握した. a)行政・地権者の共通する問題意識 ・ 既存の活動を活性化させたい ・ 地区内だけでなく,他地区も含めた“人の交流”を 活性化させたい b)行政・地権者の問題意識のずれ ・ インフラの管理などについて,地域の関わり方 ・ まちづくりの進捗状況に関する住民評価 地元(組合,住民等)や民間事業者の各々に対し,地域コ ミュニティを活用した公共施設の運営や,地域イベント の創出について NPO 法人を立ち上げを支援するなどマ ネジメントを実施してきた. 当該地区において,これらの我が社の経験を踏まえ,本 庄早稲田地区におけるエリアマネジメントによるメリッ トを提示していくことが期待されている. ここでのメリットは,行政による支援事業等の金銭的 なものだけでなく,地域の自立と継続というエリアマネ ジメントに最も重要な視点となるものである. 一方,地権者の意見として土地活用方策等について,不 動産経営のアドバイスを求める声がある.このような要 望に対して,エリアマネジメント組織が個別地権者から の土地活用の相談に応じることを想定した場合,主体的 に個別地権者に開発事業を提案することが想定され,こ のようなエリアマネジメントを実施する組織をコミュニ ティ・ビジネスととらえた場合は、開発事業等をリード できる組織がエリアマネジメント組織の要件となる. 区画整理後における支援のイメージは,個別の地権者 に代わってテナントリーシングやファイナンス機能,資 金を貸与する機能を有する事例(市街地再開発事業にお ける権利者法人)を参考に提案メニューを整理する必要 がある. ・ 行政の事業への関わり,住民の声の届き具体の認識 ・ 新市街地の拠点としてのまちづくりの先にある,市 の活性化イメージ c)エリアマネジメントの推進体制構築に関する課題 ・ 地権者間におけるまちづくり活動勉強会の組織とし ての認知度が低く,行政に依存した体質からの脱却 を図る必要がある. ・ 通年で活動する地域イベントが定着しておらず限ら れた関係者の範囲での活動に止まっている. ・ 地元企業と地権者の交流を促す場と機会の提供が不 足している. 6.エリアマネジメント手法の適用の課題 関係者間との意見を集約すると,エリアマネジメント を目指した活動では,地域に根ざした活動でありながら 共通の取り組みや課題が多く山積している.一方で,調査 の対象地区では,課題の共有が十分ではなく地権者全体 が住民参加を行う連携を生み出すことにつながる状況に はない. また、調査の対象地区では,区画整理事業の完了を控 えており,地権者の多くは新しい生活を送るためのスタ ート地点に立っていると認識すべきである.こうした地 権者が求めているものは,区画整理事業後,将来に亘って 安心できる生活環境を確保することである. エリアマネジメントを持続可能にするためには,地権 者の利益向上に資する仕組みを構築することが重要なポ イントとなる. 調査対象地区において想定される地権者の利益は, 「エリアマネジメントの結果として得られる商業・住環 境の向上,資産価値の向上」,「活動や寄付によってまち づくりに貢献する達成感・誇り」などが想定される.ま た,エリアマネジメントを実現には,地権者が区画整理事 業の進展だけでなく,市街地整備後の生活環境を具体的 にイメージして地域全体で共有していく必要がある. したがって,エリアマネジメントを通じて地区の活力 が向上するためには,課題の解決に向けて,まちづくりに 関わる幅広い関係者が議論・検討する場と機会を設ける ことが重要である. 本庄市を取巻く社会経済状況と市のまちづくりの将 来像を勘案すると,これまでの行政や一部の開発事業者 等が強力に牽引するまちづくりでは,持続可能性を担保 することが難しい. 地域の自立を促し,まちづくりを継続する観点で行政 と住民ならびに民間企業が各々の役割や特性を捉え,こ れらが連携・協調することを提案していく必要がある. 我が社では,埼玉県内において秩父市や松伏町などで 7.結論 以上から,2 年目となる次年度では,郊外部で施行され た土地区画整理事業の事業完了後を想定した考察や試案 の検討を行っていく. また,本庄早稲田地区で直面している課題への対応と し、市街地整備後の社会資本のストックを活用した新た な公的サービスの提供についても研究を加え,例えば,既 成市街地における資産価値(ブランド力)の向上を視野 に入れたエリアマネジメントのあり方を研究する. 謝辞:本研究に際し,本庄市拠点整備推進課、ならびに 共同研究の進め方に対して国土文化研究所から有益な助 言を賜りました.ここに記して,深く感謝申し上げます. 参考文献 1) 新たな担い手による地域管理のあり方検討委員会「新たな担 い手による地域管理のあり方について」,pp. 17,2007. 2) 国土交通省土地・水資源局「エリアマネジメント推進マニュ アル」,pp7-10,2,008 3)東京都都市整備局「市街地整備におけるエリアマネジメント の手引き」,pp2 4)UR 都市機構「本庄早稲田駅周辺土地区画整理事業」ホーム ページhttp://www.ur-net.go.jp/honjo/detailmap.html (2013. 12. 20 受付) 17 STUDIES ON THE THINK TANK OF LOCAL GOVERNMENT IN HONJYO CITY Nobukazu KOREEDA and Yasuhiro OBARA and Hiroki YAMAMOTO Masahiro FUJIWARA and Syouich NAKAMURA and Yuki TAKAGI With recent population reduction and financial deterioration of the local government, expectations for area management to create, maintain and revitalize local capabilities are growing. In the future, the demands for incorporated institutions’ activities are forecasted to increase. This study is conducted by collaborating with Honjyo city of Saitama prefecture for two years. Through the field work in the community area, the study will examine if our new comprehensive management business is feasible as a community business. In the first year study, we had meetings with residents, community development groups and local government to explain the background and current issues of city development and discussed the possibilities to introduce various area management systems. As a result, we found a gap between our views and the residents and governments’ needs concerning area management. In the next year, further discussions will be necessary to create a new business model and to identify the necessary conditions for private-sectors to enter the area management business. 18 コンパクトシティに関わる政策研究 (世代別の転居につながる誘導方策の研究) 土屋 信夫1・長谷川翔生2・川上哲生3・是枝伸和4 1技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail: tsuchiya@ctie.co.jp 2技術士補(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail: k-hasegawa @ctie.co.jp 3技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社PFI・PPP室 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail: t-kawakami@ctie.co.jp 4技術士(総合技術監理部門・建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail:koreeda@ctie.co.jp 我が国においては,今後,人口減少や超高齢化に伴う財政規模の縮小や社会保障費用が増大する中で, コンパクトなまちづくりあるいは歩いて暮らせるまちづくりの推進が必要であり, これらを都市経営的な 視点で考えていくことが重要である.その中で, これまでのような画一的・網羅的なコンパクト施策の展 開ではなく, 多様化するニーズに対応したきめ細かい施策の展開が必要になってきたといえる. こうした状況を鑑み,本論文では, これまでビジョンや理念で語られることの多かったコンパクトシテ ィを,今後,本格的に実現に向かわせていくため,富山市をケーススタディとして,都市経営上, 行政が 意図するコンパクトシティの形態(お団子と串の都市構造)への転居を促すための世代別の転居への抑止 力及び誘発要因を把握し, その上で「転居につながる誘導方策」を提案するものである. Key Words : compact city , Sustainable Development ,population migration , policy study 1. はじめに 研究では,クラスター型コンパクトシティの代表都市で ある富山市をケーススタディとして,富山市がめざすコ ンパクトシティを実現するためにどのような方策が必要 なのかを提案したものである. (1) 本研究の目的 わが国では,これまで都市計画マスタープランにお けるビジョンや理念で語られることの多かったコンパク トシティであるが,人口減少や超高齢化に伴う財政規模 縮小,社会保障費用が増大する中で,特にその傾向が顕 著な地方の中小規模の自治体において今後,本格的にコ ンパクトシティの実現が求められている. そこで,本研究では,コンパクトシティを本格的に 実現していくための実現方法等を政策研究としてとりま とめることを目的とする. なお,本研究は4ヶ年の計画で実施している3ヶ年 目の研究である. これまでの研究では,コンパクトシティの系譜や事 例都市研究を通じて,クラスター型のコンパクトシティ を目指していくことが望ましいことを述べた.今年度の (2) 富山市におけるコンパクトシティの取組み 富山市では,人口減少と高齢化,中心市街地の魅力 喪失,割高な都市管理の行政コスト,CO2の排出量の増 大などの課題を解決するため,鉄軌道をはじめとする公 共交通を活性化させ,その沿線に居住・商業・業務・文 化等の都市の諸機能を集積させる「公共交通を軸とした 拠点集中型のコンパクトなまちづくり(お団子と串の都 市構造)」の実現をめざしている. その中で,富山駅を中心とした都心地区及び公共交 通沿線居住推進地区(以下,「沿線居住地区」という) への居住者に対して,様々なインセンティブを与える誘 19 一極集中型 クラスター型 図-1 富山市が目指す「お団子と串の都市構造」 (出典)富山市資料を一部加筆 図-2 富山市の人口動態 導施策を実施しているとともに,持続可能な道路・公園 等の社会資本整備・管理のあり方についての見直し検討 を行っている状況である. る.しかし,1970年代以降から現在までは1960年代に経 験した人口の社会減少と同様の現象は生じておらず,地 方都市から大都市への人口移動は安定化してきていると いえる.図-2に富山市における人口の伸び率と転入人口, 自然減少の人口量を示した.この点を踏まえると今後, 人口移動そのものは静的になることが考えられ,かつて みられたような人口の大都市への流出(社会減少)によ る人口の減少は徐々に弱まっていくことが考えられる. さらに,今後の人口減少は,加齢に伴う死亡等の自然減 少に由来したものへ移行していくことが考えられる. 以上を踏まえ,富山市の居住特徴は,住民の世代・ ライフステージによって異なり,その世代に応じた居住 地の特徴をふまえた人口誘導方策の導入を検討すること がコンパクト化につながることを仮説とする. 分析は,本市の人口動態を考慮し,国勢調査の調査 項目の内,人口・年齢構成,家族構成,居住形態,居住 年数,職業(500mメッシュデータ)を用いて分析する. (3) 本研究で明らかにしたいこと コンパクトシティの実現に向けては,多様化する市 民ニーズに的確に応えていくことが重要である.そのた め以下の2つの仮説の立証を通じて施策を提案すること とした. 一つ目は,世代によって,居住する地域が異なるの ではないかということである.二つ目は,世代やライフ ステージよって,転居の要因やその抑止力(転居を思い とどまらせる力)が大きく異なるのではないかというこ とである. これらが意味することは,コンパクト施策を画一 的・網羅的に市全域に展開するのではなく,世代やライ フステージに着目し,きめ細かく施策を立案していくこ とが,コンパクトシティ実現により一層寄与するのでは ないかということである. そのため,本研究では,世代ごとの居住特性を明ら かにすること,世代ごとの転居への抑止力・誘発要因を 明らかにすること,以上の2点を踏まえた世代別の転居 につながる誘導方策を提案することとしたい. (2)富山市の長期時系列人口分析 我が国の人口移動は高度経済成長期の1960年代をピー クにその後安定化傾向にあることとされている.図-3は, 今回,研究の対象とした富山市における長期時系列の人 口増減量である. 1960年に10~14歳(いわゆる団塊の世代)が1970年に 2. 世代ごとの居住特性分析 20~24歳になる際に減少している.これは,高度成長に (1) 調査・分析方針 伴う全国的な人口減少と同じ傾向である.しかし,この 今後の我が国の都市政策においては,人口減少時代 世代が1980年になる際に再度1960年並みの人口規模に戻 に対応したコンパクトで効率的な都市づくりの実現が不 している点(Uターン)が確認できる点で,いわゆる高 可欠である.そのため,まちなかなど公共交通が便利な 齢化と人口減少により衰退していった他の地方市町村と 地区へ人口が移動し定住することがコンパクトシティ実 異なっているといえる. 現に向けて重要と考えて,以下の分析を行うものとする. さらに2010年の人口規模に着目すると,団塊の世代で まず,我が国の人口移動の特徴として,1960年代の高 ある60~64歳の子供といえる35~39歳(いわゆる団塊のジ 度経済成長期に東京を中心とした3大都市圏への移動 ュニア世代)が確認できる.一方で,団塊のジュニア世 (地方都市から見ると東京圏などへの流出)があげられ 代の子供らと考えられる0~14歳世代にはかつてほどの人 20 五福周辺 古沢 周辺 図-3 富山市の長期時系列年齢別人口規模 口規模が確認できず,晩婚化・少子化の影響を表してい ることが推察できる.その他の世代においても極端な人 口減少は確認できない点で,先に述べた社会減少による 流出が必ずしも生じていないことが考えられ,かつてに 比べ人口移動が激しくないことが考えられる. 図-4 年代別人口の分布(20代) (3)国勢調査結果を用いた居住特性分析 本研究では,国勢調査のデータを500mメッシュで示 したデータを用いて地域別に分析する.分析に用いたデ ータは,地域の居住特性を象徴することが重要であるた め,大きく人口・年齢構成,家族構成,居住形態,居住 年数に着目した. 特に,富山市においては,3世代同居の世帯が多いこ とや県庁所在地であることから企業立地が進んでいるこ とを受け,居住年数や居住形態を考慮した分析を行う. また,富山市は,平成の大合併に伴い,旧富山市と 周辺中山間地域を取り込んでいるため,多様なライフス タイルを考慮した分析を行う. つばめ野周辺 豊田本町周辺 新根塚町 周辺 響の杜 山室周辺 周辺 珠泉東町周辺 (4)居住特性分析結果 ここでは,(3)で示した分析内容のうち,人口・年齢 構成,家族構成,居住形態,居住年数に着目し,分析の 結果が特徴的であったものを示す. a)人口・年齢構成 人口・年齢構成について20歳代~70歳代までを分析し た.図‐4は20歳代の分布である.富山大学が立地する 五福周辺に集中しており,富山大学(杉谷キャンパス) に近い古沢地区にも集積が確認できる. 一方で,70歳代は都心居住の比率が最も高い点が特徴 的である. b)家族構成 家族構成別で最も特徴的だった6歳未満世帯員がいる 世帯数を図-5に示す.これらの世代は郊外居住を行って いることが多く,居住地としては,響の杜,豊田本町, 図-5 家族構成別人口の分布(6歳未満世帯がいる世帯) 山室,珠泉東町の他,土地区画整理事業で整備された子 育てタウンつばめ野タウンが多い.図には示していない が高齢夫婦世帯や高齢単身世帯は,都心居住の比率が最 も高くなった点も興味深い結果となった. c)居住形態 居住形態では,持ち家の戸建住宅は,ライトレール レール沿線に最も多く,郊外部にも広く点在している. 一方,共同住宅は,都心地区や富山大学周辺に集積 していることが分かった. d)居住年数 居住年数では,最も特徴的であった居住年数20年以上 の人口分布を図-6に示す.都心地区及びライトレール沿 線が多く,地域の生活拠点である北代(呉羽),水橋, 上滝,八尾などにも集積していることが分かった. 一方,居住年数が5年未満では,五福や響の杜などの 21 米田すずかけ台周辺 60歳以上は,都心エリアと郊外部への居住の2極化し ていることが確認できた. 豊若町周辺 3. 世代ごとの転居への抑止力・誘発要因の把握 (1) 検討方針 世代ごとの転居への抑止力・誘発要因を把握にあた っては,居住者の意識や生活行動に着目する必要あるこ とから,既存の市民意識調査を活用して調査・分析を行 うものとする. a) 検討対象 本検討にあたっては,以下に示す市民意識調査結果 を富山市より,データ提供頂いた. ・富山市意識調査(2010.7調査) ・富山市住生活基本計画策定のための住まい・住環 境に関する市民意識調査(2011.9調査) b) 検討内容 検討は,以下の3つの視点から実施するものとする. ・世代別の居住特性の把握 ・世代別の転居への抑止力・誘発要因の把握 ・世代別の転居を誘発する機会の把握 c) 検討方法 検討対象で挙げた2つの調査の設問項目のうち,市民 の居住意識や生活行動に関する設問を抽出し,年齢構成 (世代)とのクロス分析により世代別の転居への抑止 力・誘発要因を明らかにする. また,転居意識への影響が考えられる「居住形態」 「居住年数」「職業」「居住地域」についても補足的に 上記の設問項目とのクロス分析を行う. 粟島町周辺 栄町周辺 清水町周辺 図-6 居住形態別人口の分布(一戸建て世帯) 北代周辺 豊若町周辺 粟島町周辺 北新町周辺 高屋敷周辺 図-7 居住年数別人口の分布(20年以上) (2) 検討結果 a) 世代別の居住特性 世代別の居住特性を明らかにするために,年齢構成 と家族構成,居住形態,居住年数,職業,居住地域との 関係性を分析した.その結果,世代別の居住特性は, 「家族構成」「居住形態」「居住年数」で大きく異なる 結果となった. 郊外エリアへの居住も多いことが分かった. (4)世代別の居住特性のまとめ これまでの分析より人口移動に有効な施策を検討す るため,世代別の居住地特性の把握を試みた.世代別の 居住エリアを考察し,家族形態や居住形態を把握したう えで,地域の実態を整理した. 結果として,世代により居住特性が大きく異なるこ とを明らかにできた. 20代の居住エリアは市内でも特に富山大学キャンパス 周辺に集中しており,世代の特性として独身世代の一人 暮らしであるケースが多い.居住形態は,民間の共同住 宅(借家)に居住し,居住期間は5年未満が多い. 30~50代の居住特性は類似する点が多くある.居住エ リアは都心エリアと郊外部への居住の2極化しており, 世代の特性として6歳未満の子供をもつファミリー層が 多い. 0% 20% 40% 60% 80% 100% 29歳以下 30~39歳 単身 夫婦のみ 夫婦と子供 40~49歳 女親または男親と子供 夫婦と親 50~59歳 夫婦と子供と親の三世代 60~69歳 70歳以上 図-8 世代別家族構成 22 0% 20% 40% 60% 80% 0% 100% 20% 40% 60% 80% 100% 持ち家一戸建 29歳以下 持ち家一戸建 30~39歳 持ち家共同住宅 (分譲マンション) 持ち家共同住宅(分譲マンション) 住み続けたい できれば住み続けたい 40~49歳 借家一戸建 50~59歳 公的賃貸住宅 公的賃貸住宅(市営住宅・ 県営住宅・雇用促進住宅等) (市営住宅・県営住宅 ・雇用促進住宅等) 民間賃貸住宅 借家一戸建 いずれは転居したい すぐにでも転居したい 民間賃貸住宅 60~69歳 社宅 社宅 70歳以上 図-9 世代別居住形態 0% 20% 40% 60% 80% 図-12 居住形態別定住意向(抑止力) 0% 100% 20% 40% 60% 80% 100% 1年未満 29歳以下 1年未満 30~39歳 1~3年未満 住み続けたい 1~3年未満 3~5年未満 40~49歳 できれば住み続けたい 3~5年未満 いずれは転居したい 5~10年未満 5~10年未満 すぐにでも転居したい 10~20年未満 50~59歳 10~20年未満 20~30年未満 30年以上 60~69歳 20~30年未満 70歳以上 30年以上 図-10 世代別居住年数 図-13 居住年数別定住意向(抑止力) 家族構成は,50代以下では3世代同居している人が多 く,60年代以上は夫婦のみ,単身者が急増している.居 住形態は,全体として,持ち家率が約90%と非常に高い なかで,高齢者になるほど持ち家一戸建の割合が高く, 若年層ほど,民間賃貸住宅の割合が多い傾向となった. また,居住年数は,高齢者になるほど長い傾向を示した. b) 世代別の転居への抑止力・誘発要因 世代別の転居への抑止力・誘発要因を明らかにする ために,世代別の定住意向及び現在の居住地への不満度, 住宅に求めるものを把握するものとした.また,各世代 でどのようなまちづくり施策に関心を持つのかも合わせ て把握することで,施策提案に向けての参考資料とした. ⅰ) 転居への抑止力 転居への抑止力については,定住意向が高いほど抑 止力が高くなるものと考え,分析を行った.その結果, 年齢が高くなるほど,居住年数が多くなるほど抑止力が 高くなる傾向が見られた.また,居住形態としては,持 ち家一戸建て,持ち家マンション,公営賃貸住宅,民間 賃貸住宅の順で抑止力が低くなる傾向が見られる結果と なった. 0% 20% 40% 60% 80% 100% ⅱ) 転居への誘発要因 転居への誘発要因については,現在の居住地への不 満点や転居したい理由(転居につながる要因)と居住地 に求めるもの(転居先に求めるもの)の2つの視点から 分析を行った.その結果,全体では,公共交通の利便性 や地震・火災への安全性,歩行時の安全性への不満が多 く,通勤・通学や買い物の利便性,住環境のよさを求め ていることが示された.世代別に見ると,20代では,通 勤・通学や公共交通の利便性が,30代では,利便性と合 わせて子どもの教育環境や地域の愛着が転居の要因とな りうるといえる. また,高齢者になるにつれ,老後の生活不安が増大 し,地震や火災への安全性,医療・福祉施設の利便性が 転居の要因になりうるといえる. 住宅周辺環境の 総合評価 近所づきあいの状況 建て込み状況 (隣家との距離) 緑・水辺など 自然の豊かさ 12 10 8 6 4 まちの景観 通勤・通学の 便利さ 30~39歳 公共交通の 利用の便利さ 地震や火災に関する 安全性、避難のしやすさ 0 40~49歳 50~59歳 2 29歳以下 29歳以下 医療、福祉 サービスの便利さ 60~69歳 70歳以上 30~39歳 住み続けたい 騒音・大気汚染などの 公害の状況 食料品など日常的な できれば住み続けたい 40~49歳 いずれは転居したい すぐにでも転居したい 50~59歳 まわりの道路の 歩行時の安全性 子供の教育環境 (小学校や中学校等) 子育て環境 (保育所や子育て 支援施設の利便) 文化施設やスポーツ 施設など余暇や 趣味活動のしやすさ 公園、子供の 遊び場の便利さ 60~69歳 70歳以上 図-14 世代別の現在の住環境への不満度 図-11 世代別定住意向(抑止力) 23 地域になじみや 愛着が無いので 公共交通の 利便性が悪いので 子育て環境の充実 30 15 30~39歳 老後の生活が 不安なので 10 50~59歳 0 60~69歳 緑や自然環境に 乏しいので 住宅に不満なので ごみや下水道など 衛生環境が悪いので 70歳以上 実家や 親戚宅が近い 住環境が良い (日当たり、無公害) 市民の自主的な 学習環境の充実 5 個性や能力を生かした 多様な雇用機会の創出 社会参加と生きがいづくり 活動への支援 勤労者福祉の向上 健康づくり 活動の充実 図-18 世代別まちづくり施策への関心度(1) 災害に強い まちづくり 自然が豊かである 25 生態系の保護・回復 29歳以下 雪に強い まちづくり 20 30~39歳 29歳以下 消防・救急 体制の整備 15 森林機能の再生・強化 40~49歳 街の雰囲気が良い 50~59歳 60~69歳 70歳以上 通勤・通学に便利 市民・企業・行政の 協働による環境負荷低減 への取り組み 50~59歳 5 交通安全対策の充実 0 70歳以上 循環型まちづくりの 基盤整備 医療・福祉施設の 利用に便利 20% 40% 60% 80% 安全・安心な 消費生活の推進 図-19 世代別まちづくり施策への関心度(2) 賑わいと交流の 都市空間の整備・充実 ⅲ) まちづくり施策の認知度・関心度 まちづくり施策の認知度については,コンパクト施 策の推進エリアの認知度より分析を行い,20代の認知が 他の世代の認知度に比べて概ね15%程度低い結果となっ た。 また,まちづくり施策の関心度については,20代,30 代では,子育て環境やにぎわいと交流に関する施策,防 犯・防災などの子どもの安全に関する施策への関心が高 い傾向を示した.40代以上では,高齢者・障害者への支 援や保険・医療・福祉の充実等の施策への関心が高くな る傾向を示した. 世代共通では,雪に強いまちづくり,拠点を結ぶ交 通体系の再構築への関心度が高い結果となった. 0% 安全で快適なまちづくり 快適な生活 環境づくり 買い物等の 生活に便利 図-16 世代別の住宅地に求めるもの 60~69歳 防犯・防災 体制の充実 公共交通の 利用に便利 文化施設やスポーツ 施設が充実している 30~39歳 40~49歳 10 エネルギーの有効活用 子供の教育環境が 充実している 70歳以上 スポーツ・レクリエーション 活動の充実 介護予防活動の充実 住宅価格や家賃、 地価が適当 防犯・防災上の 安全性 50~59歳 60~69歳 0 住宅そのものの 質の高さ 16 14 12 10 8 6 4 2 0 30~39歳 40~49歳 10 保健・医療・福祉の 連携、充実 買い物や医療など 日常生活が不便なので 図-15 世代別の転居したい理由 友人・知人が多い 高等教育の推進 15 高齢者・障害者への 支援 通勤・通学に 不便なので 都市基盤の整備など 生活環境が悪いので 29歳以下 20 コミュニティの再生 40~49歳 5 学校教育の充実 25 29歳以下 20 教育環境が 悪いので 30 家庭・地域における 教育力の向上 隣近所のつきあいが わずらわしいので 25 30 地域を結び生活を支える 道路網の整備 25 地域の個性と特性を 生かしたまちづくり 29歳以下 20 拠点を結ぶ 交通体系の再構築 ふるさと景観の保全・形成 15 公共交通の 利用促進 30~39歳 40~49歳 10 ゆとりが感じられる 都市生活基盤の整備 5 0 50~59歳 60~69歳 70歳以上 地域の生活拠点 地区の整備 水辺環境の 保全・育成 まちなか居住の推進 公園・緑地の整備 歩いて暮らせる まちづくりの推進 中山間地域の振興 図-20 世代別まちづくり施策への関心度(3) c) 世代別の転居を誘発する機会 転居を誘発する機会については,現在の住宅への住 替え理由や今後の住替え意向により,世代別に転居を誘 発するライフステージを分析した. 100% 29歳以下 就職・就学のため 25 30~39歳 40~49歳 良好な 居住環境を求めて 知っている 20 転勤・転職のため 15 知らない 30~39歳 40~49歳 10 以前の住宅が 痛んでいたため 50~59歳 29歳以下 結婚による 世帯独立のため 5 0 50~59歳 60~69歳 70歳以上 60~69歳 親・子供等と 同居するため 以前の住宅が 狭かったため 70歳以上 老後に備えるため 図-17 世代別コンパクト施策推進エリアの認知度 子供の成長に 備えるため 図-21 現在の住まいへの住み替え理由 24 結婚等による 世帯分離・独立のため 老後に備えるため 子供の成長に 備えるため 35 30 4. 世代別の転居につながる誘導方策の提案 就職・転職・転勤のため 25 29歳以下 親または子供と 同居するため 20 30~39歳 15 40~49歳 10 耐震性を確保するため 家や土地を相続するため 5 50~59歳 60~69歳 0 70歳以上 より良い住環境を求めて 住宅が狭いため 通勤・通学・買い物等の 利便性を良くするため 台所や浴室などの 設備が不十分なため 家賃が高いため 住宅が傷んでいるため 住宅ローンの返済の 負担が重いため 図-22 現在の今後の住み替え意向(理由) その中で,20代,30代では,結婚や子どもの成長に備 えること,50代以上では,老後に備えることが特徴とい える.また,世代共通では,住宅の老朽化に合わせた住 み替えやより良い住環境を求めて住み替えを行うことも きっかけとなるといえる. その結果,転居を誘発する機会としては,世代ごと に異なり,ライフスタイルに大きく影響を受けていると いえる. (2) コンパクトなまちづくりに向けて想定される転居イ メージ これまでの研究内容を踏まえ,各世代に望まれる転 居イメージと留意点を整理した. 20代では,結婚を契機に富山西部(五福・古沢地区) などの郊外から都心地区へ転居することで中心市街地の にぎわいを創出することが望まれる.その際には,特に 都心の利便性をアピールすること,経済的な支援をする ことが必要である. 30代では,現状において,郊外エリアで居住している 人たちが非常に多いことが特徴である.そのため,子育 てのスタイルに応じた多様な住み替えを支援するため, 都心居住あるいは沿線居住地区への永住を推進するとと もに,子育てを郊外でのびのび行いたい人に対して,郊 外の戸建てを借家できるしくみを用意することが必要で ある. 60代では,定年退職や子どもの独立により転居の自由 度が高まることから,このような機会を契機として都心 居住を推進する. 70代では,配偶者との死別により独居化が進行するこ とから,独居を契機として都心居住を推進する. 特に60代以上では,老後の不安が誘発要因となること から,都心の利便性を享受できること,人のつながりを つくるしくみを用意することで都心居住の推進が可能と なるといえる.ただし,転居の阻害要因としては,郊外 の大きな持ち家の存在があることから,その対応も必要 である. 以上の世代別の転居イメージをライフスタイルに応 じてタイプ分けを行うと図-23に示すとおり,5タイプ に分類できる. (3) 世代別の転居への抑止力・誘発要因のまとめ 以上の結果より,転居の抑止力や誘発要因は世代に よって大きく異なることを明らかにすることができた. また,世代によって転居のきっかけとなる機会が異 なることも明らかにできたといえる.これらの検討結果 を表-1に整理した. 表-1 世代別の転居への抑止力・誘発要因のまとめ 世代 転居の機会 抑止力と影響要因 誘発要因 ・結婚による世 帯独立 ・就職・就学に よる独立 ・抑止力は小さい -親との同居、賃貸住宅 居住者 -居住年数が浅い ・コンパクト施策の認知度 が他の世代に比べ、極端 に低い ・他の世代に比べ、住宅価 格への反応が敏感 ・抑止力は小さい -賃貸住宅居住者 ・公共交通への利便性を重 視(通勤・通学への利便 性) ・にぎわいや交流に関する 施設への関心が高い 20 代 30 代 40・ 50 代 60 代 70 代 ・結婚による世 帯独立 ・子どもの成長 に備えるため の住み替え ・良好な環境を 求めての住み 替え ・転勤・転職に よる住み替え ・退職を契機に 良好な環境を 求めての住み 替え ・子どもの独立 に合わせた住 み替え ・配偶者との死 別を契機とし た住み替え ・抑止力は中程度 -よりよい生活環境を求 める人は、抑止力が小 さい -その他は、外部要因に よるもの ・抑止力は大きい -居住年数に応じた地域 への愛着度の高まり -持ち家の存在 ・抑止力は大きい -居住年数に応じた地域 への愛着度の高まり -持ち家の存在 (1) 対象とすべき世代の設定 転居につながる誘導方策については,どのようなラ イフステージで転居するのかを想定した上で,対象とす べき世代の設定を行った.ライフステージについては, 世代との関係が明確であり,転居を誘発できる主要なラ イフステージ(機会)として「結婚」「子育て」「子ど もの独立」「独居」の4つと捉えるものとした.そのた め,対象とすべき世代は,各々のライフステージに対応 する20代(結婚),30代(子育て),60代(子ども独 立),70代(独居)の4世代を対象とした. ・子育て環境の充実を重視 -教育環境(小中学校) -道路の安全性(防犯) -子育て支援やコミュニ ティづくり ・通勤や買い物等の利便性 を重視 ・受け皿づくりができれば 転居は可能(郊外部を受 け皿にしない施策も必 要) ・老後への不安から日常生 活(買い物、医療など) の利便性を重視 ・家の老朽化もきっかけと して、郊外エリアには住 まない施策の推進も必要 ・老後への不安から日常生 活(買い物、医療など) の利便性を重視 ・家の老朽化もきっかけと なる ・友人・知人などのつなが りを求める人も多い 25 るといえる. そのため,既に市で取り組みがみられる都心地区へ 郊外戸建住宅 1 都心の分譲マンションを購入あるいは賃貸への永住 親と同居 の小学校の集約化や賃貸住宅の整備推進を行っていくと あるいは郊外 2 公共交通沿線の戸建住宅を購入・賃貸 の 賃 貸 住 宅 へ 都心の賃貸 ともに,郊外住宅のマイホーム借り上げ制度などの創設 マンションへ の居住 転居 により,都心居住を促しつつ,郊外住宅の活用も組み込 3 都心のマンションを購入・賃貸 郊外の戸建 借家に転居 ※高齢者住宅 んでいくことも必要である. 都心で住宅を k を借家 4 シェア 例としては,名古屋市で検討している24時間体制の保 都心で住宅を 5 シェア 育所や川西市の賃貸住宅建設への固定資産税・都市計画 図-23 ライフステージに応じた転居パターン 税の免除などが参考となる. c) 60 代への誘導方策 (3) 世代別の転居につながる誘導方策(提案) 60代になると,定年退職により居住への制約が少なく ここでは,前述の転居パターンを実現するための誘 なること,子どもの独立により,郊外の持ち家に夫婦2 導方策の提案を行う.提案にあたっては,富山市での導 人暮らしになることが想定される. 入を視野に入れて,富山市で既に実施している施策,他 また,老後への不安から買い物や医療・福祉施設へ の自治体で実施している施策あるいは新規のアイデアベ の利便性を求める一方で持ち家があること,地域への愛 ースのものという3つの視点から検討を行った.具体的 着が高まり転居への抑止力が高いことが課題となる. には,世代別に以下のような提案を行った. そのため,20代,30代で提案した都心地区へのインセ a) 20 代への誘導方策 ンティブを与える方策だけでは転居を促すことは難しい 20代では,他の世代に比べてコンパクト施策に対する といえる. 認知度が低いこと,経済的な理由により郊外を選択して 一方,本研究により得られた人口分布(量)を見る いることが課題となる.一方で,にぎわいや交流への関 と,団塊の世代を抱えるこの世代を転居させることが, 心が高く,通勤・通学への利便性を求めていることが本 施策の効果が最も高いといえる. 研究より明らかになっている. そのため,都心地区内の公共交通を無料にする施策 また,居住年数が浅い居住者が多く,転居への抑止 や郊外の持ち家に対する維持管理支援といったインセン 力が低いことから,何らかのインセンティブを与えるこ ティブの施策と合わせて,郊外部の公共施設管理水準の とで都心地区への誘導は可能であると考えられる. 適正化など今後増大する社会資本整備や維持管理費用の そのため,20代に対しては,コンパクト施策に関する 増大を抑えるようなマイナスを抑制する施策も実施して 情報発信の充実や若者向け住み替え助成,24時間営業の いく必要がある. 商業施設入り住宅の整備,エコ通勤者へのインセンティ マイナスを抑制する施策については,未だ事例とし ブの付与など,経済的な支援・優遇措置,都心地区の魅 てはないが,今後,検討していく必要がある分野である 力や利便性を高める施策を推進することが有効である. といえる. 例としては,宇都宮市や小樽市が実施している若年 d) 70 代への誘導方策 夫婦世帯を対象とした家賃助成やシャープの境事業所が 70代になると,配偶者の死別や知り合いの減少により, 実施している公共交通機関沿線物件の社宅借り上げと通 人とのつながりが非常に少なくなってしまうことが想定 勤シャトルバスの導入などが参考となる. される.その上,健康不安も増大し,都心での便利な暮 b) 30 代への誘導方策 らしとともに,人とのつながりを求めていることが本研 30代では,子育てや教育環境の向上が課題となる.特 究の中で明らかになっている. に富山市は,子どもの教育に熱心であることが本研究の 一方,60代と同様に,地域への愛着による転居への抑 結果からも明らかである.そのため,都心地区における 止力が高いこと,持ち家の存在も転居を阻害する要因で 子育て・教育環境を充実することが転居への大きな誘発 あるといえる. 要因となる. そのため,60代で提案したマイナスを抑制する施策を ただし,現状の居住特性を見ると郊外部で子どもを 実施するとともに,人とのつながりを都心地区で持てる 育てたい意向も多くあり,子育て期間に限定して郊外で しくみを用意することで,都心居住を誘導することが可 暮らすことを容認する施策を用意することも必要である. 能であると考えられる.具体的には,看護系・福祉系の また,富山市は全国でも持ち家率がトップクラスで 大学生と同じ共同住宅に住むシェアハウスの整備や大学 あるとともに,住宅規模も大きい(延床面積が150~199 生による高齢者の見守り,都市公園のコミュニティガー ㎡の住宅が最も多い)こと,高齢者になっても住み替え デン化による農作業を通じた交流,大学生と歩く街歩き が行われていないことが転居を阻害する大きな要因であ ツアーの実施などが有効である. タイプ 結婚 子育て 子独立 独居 26 e) 誘導方策のまとめ 本研究では,世代別の居住特性及び転居への抑止 力・誘発要因の把握を通じて,世代別の違いを明らかに した上で,転居につながる誘導方策の提案を行った. 結果として,世代の特性を捉えた誘導方策の提案が できたといえる. また,施策の実施にあたっては,世代だけでなく, ライフスタイルによって転居のパターンが異なること から,ライフスタイルの5つのタイプでどのような施策 が必要なのかも含めて,表-2として整理した. 表-2で示すように今後,転居をうながすためには,住 宅施策だけではなく,都市・交通施策をはじめ,情報発 信,商業活性化,教育・福祉など幅の広い施策の組み合 わせを行っていくことが重要であるといえる. 表-2 世代別の転居をうながす誘導方策一覧表 世代 施策名 施策の特徴 参考事例 コンパクト施策への 情報発信の充実 ・他の世代に比べ,20代のコンパクト施策に対する認知度が低い. ・若者が多く居住する地域や新築が多い地域への情報発信や企業への情報発信により,着実に情報が行き渡るよう に工夫する. ○緊急速報(エリアメール)の活用(京都市・名古屋市) ○モビリティ・マネジメントを活用した情報発信(新潟市など) 若者向け住み替え助 成 ・20代は特に,住宅価格への反応が敏感. ・都心居住については,世代を問わず,購入者については助成措置(まちなか居住推進事業)があるが,賃貸者につ いてはないため,新婚あるいは若年夫婦が居住する場合の助成措置を新たに行う. ○若年夫婦世帯家賃助成制度(宇都宮市) ○若年者定住促進家賃(小樽市) 若者の住宅購入者に対 ・新婚世帯に対して,都心地区に住宅を購入した場合に限り,住宅ローンの割引や建築後一定年間の固定資産税(家 ○新婚・子育て世帯を対象とした住宅ローン金利割引(茨城 する定住支援 屋分)の免除を行う. 県常陸太田市) ○若者世帯の新築住宅固定資産税の免除(大阪府熊取市) 24時間営業の商業施設 入り住宅の整備 20 シェアハウス・ソーシャ ルアパートメントの整備 促進 30 ・20代はにぎわいへの要望も高く,いつでも利用できる商業施設を併設したビル型住宅を整備することで,まちのにぎ わいと利便性の向上を図る. ・20代は経済的な理由から郊外を選択する意向が高いことから,経済的な負担を減らすシェアハウスを整備する.整備 にあたっては,都市の一戸建てをリフォームすることも想定. ・プライバシーは確保しながら,人とのつながりや交流を楽しむソーシャルアパートメントを整備促進することで,人との つながりを求める若者の受け皿をつくる. ・基本的には,独身・学生など結婚前の人を対象とし,都心への関心を喚起するきっかけにする. ○低層階商業利用のビル型住宅の整備(富山市) 1 2 ● ● ● ● ● ● エコ通勤者への特典ポイント付与(名古屋市など) エコ通勤者へのインセン ・20代は,通勤・通学への利便性への感度が高く,経済的なメリットにも敏感. ○ ティブの付与 ・そのため,これまで都心部へ車で通勤していた人を対象として,エコ通勤者へのインセンティブを付与することで都心 ○公共交通機関沿線の物件を寮・社宅として借上げし,エコ 地区及び沿線居住地区内への転居をうながす. 通勤しやすい環境を整備し,通勤シャトルバスの導入,路線 バス化などを実現(シャープ(株)堺事業所) ● ● 自転車ステーション付き ・20代は,通勤・通学への利便性への感度が高いことから,都心地区のどこからでも自宅まで自転車で利用できる環 マンションの整備促進 境づくりを行う. ・ しくみとしては,自転車市民共同利用システムと連携し,またはポート無でもシェアが可能なマンションにおいても導 入できる次世代サイクルシェアリングシステムを応用し,まちなかでの快適な移動を実現化する. ○自転車市民共同利用システム(富山市) ○サイクルシェアリング(首都圏の分譲タワーマンション) ○次世代サイクルシェアリングシステム(NTT DoCoMoの新技 ● ● 術) 都心への小学校の集約 ・富山市では子どもの教育に非常に熱心であり,特に30代は教育環境の向上を望む声が多い. 化・教育水準の向上 ・一方,市内の児童数は減少していることから,都心地区の小学校を集約化し,その小学校に対し,ネイティブスピー カーの英語教師の配置や優秀な教職員の配置等による教育水準の向上(差別化)を図る. ○集約化した小学校の教育水準向上による移住を誘導(富山 市) ○統合小中学校(府中学園)の開設による学区内(中心市街 ● 地区域)への転入希望者が増加(広島県府中市) ○富山型デイサービス(富山市) 民営事業所における住 ・30代では,子育て支援に対する感度も高い. 宅型デイサービスの推 ・そのため,民営の事業所において,高齢者,障碍者,児童を区別せず,家庭的な住宅型施設でサービスする「富山型 ○室蘭市共生型施設「八丁平共生型センターはっち」(室蘭 市) デイサービス」を都心地区に集中的に整備する. 進 ● 24時間体制の保育所設 ・30代では,共働き夫婦も多く,出張や残業など一時的に子どもを預からなければならないケースもある. 置の推進 ・そのため,都心地区に,未就学の子どもを24時間いつでも預けることができる緊急保育所を設置することで,子育て 支援サービスの充実を図る. ● ○24時間体制の保育所(名古屋市で検討中) ・今後,多様なライフスタイルに応じた暮らし方を模索するなかで,戸建て主義から賃貸住宅への定住にシフトすること ○賃貸住宅建設への固定資産税・都市計画税補助(兵庫県 川西市) で,転居しやすい環境をつくることも必要である. ・そのため,都心地区及び沿線居住地区において,賃貸住宅を建設した個人や事業者に対し,一定年間,固定資産税 及び都市計画税を免除する. ● ● ○空き家解体による土地の固定資産税の減免(新潟県見附 都心地区,沿線居住地 ・都心地区及び沿線居住地区においては,住宅等を整備する用地が不足していることが問題となる. 区における低未利用地 ・そのため,放置されて危険な空き家の有効活用を図るため,空き家解体後の固定資産税の減免を行う.これにより, 市) 都市活動に伴う開発用地の確保を行う. の解消 ● ● マイホーム借り上げ制 度 ・郊外の高齢者が都心への転居を阻害する要因として,持ち家の存在が挙げられる. ・一方,子どもをのびのび郊外で育てたいニーズも高いことから,郊外に存在する高齢者住宅を子育て世代の30代に 貸し出す. 5 ● ● ○まちなか及び沿線居住地区内の一戸建てリフォーム補助 (富山市) ○空き家や空き部屋のリフォームによるホームシェア(NPO 法人ハートウォーミング・ハウス) ○ソーシャルアパートメント(グローバルエージェンツ) 賃貸住宅の整備推進 タイプ 3 4 ○高齢者の持ち家活用による住み替え支援(富山市) ○マイホーム借上げ制度(社団法人 移住・住みかえ支援機 構) ● ● 公共交通機関の乗車割 ・65歳以上で発地・着地が市街地なら,公共交通機関が一定料金となる定期券を導入する. 引乗車券の導入 ・都心居住を推進するため,都心居住者でかつ都心地区を発地・着地の移動であれば,さらなるインセンティブを付与 する. ○おでかけ定期券(富山市) 高齢者運転免許自主返 ・65歳以上で運転免許を自主的に返納させる人に対し,公共交通乗車券を支給し,公共交通への利用転換を図る. ・さらに,都心地区に居住した人に対しても,公共交通利用に対するインセンティブを与える. 納支援制度 ・民間企業の協賛・サポートを集い,返還者へ一定の特典を与えることも検討. ○高齢者運転免許自主返納支援制度 ○高齢者運転免許自主返納サポート制度の実施と協力企業 の募集(大阪府) ● ● ● ● ● ● 60 郊外持ち家に対する維 ・郊外の持ち家について,貸家への抵抗が強いため,持ち家のまま,残しつつ,都心居住を図るしくみが必要となる. ○空き家維持管理隊(秋田県) 持管理支援 ・そのため,市が持ち家の維持管理の支援(固定資産税の減免あるいは維持管理の実施)をすることで,持ち家を維持 しつつ,都心の生活を送れるようにする. 冬季の都心暮らし体験 ・積雪の多い冬季に,都心暮らし体験を行うことで,都心居住のよさを実感し,都心居住への関心を喚起させる. 郊外部の公共施設管理 水準の適正化 郊外部の除雪頻度の適 60 正化 ・ 公共施設等の維持管理 70 の負担 郊外住宅への維持管理 の負担 孫世代と住むシェアハ ウス ● ● ● ○既往の事例はない ● ● ● ・都心地区と比べ一人当たりの公共施設維持管理費が高額となる郊外部について,道路,公園等の整備水準・維持管 ○既往の事例はない 理水準を適正化することで,都心地区への人口誘導を図る. ・都心地区と比べて一人当たりの機械除雪費用が高額となる郊外部について,除雪頻度を適正化することで,都心地 ○既往の事例はない 区への人口誘導を図る. ・郊外部においては,生活道路の舗装等,軽微な土木作業については,住民自らが行うことを促す. ○建設資材支給事業(長野県下條村) ・実施にあたっては,資機材を市より提供を図る. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ・郊外住宅について,適正な維持管理がされていない場合には,市が直接,維持管理を行い,その費用を所有者に負 ○既往の事例はない ● ● ● 担してもらうことで,郊外住宅の減少を図る. ・独居老人については,今後の健康不安などに起因して友人・知人とのつながりや他の人とのつながりを求める傾向 ○IGHシェアハウス(単身シニア・シングルマザーを繋ぐ新しい 助け合い型居住空間) が強い. ・そのため,都心地区において,看護系・福祉系の大学生と同じ住宅に住むことができるシェアハウスの整備を促進す ● ● ● ることで,都心居住への誘導を図る. ・また,大学生については,低家賃で住める一方で,定期的に独居老人への訪問などを行うものする. 都市住民と郊外住民の ・老朽化した都市公園の有効活用として,農作物を育てるコミュニティガーデン化し,そこでの活動を通じて都市住民と ○街区公園コミュニティガーデン事業(富山市) 農業による交流事業 郊外で農作業に従事していた独居老人の交流を図る. ・実施エリアとしては,沿線居住地区だけでなく,都心地区においても展開を図る. 70 世代間交流支援事業 ・高齢者の外出の機会を促進し,世代間交流を通じて家族の絆を深めるために,祖父母と孫(ひ孫)が一緒に来館され ○孫とおでかけ支援事業(富山市) た場合に観覧料を全額減免する. ・世代交流を広げるために,都心居住者については,シェアハウスで同居する孫世代との外出についても同様の措置 をする. 高齢者の交流機会創出 ・中心市街地にある介護予防施設を核として,高齢者等が,安全・安心・快適に生活できる歩行者ネットワークを形成 事業 し,高齢者の外出・交流機会の充実を図る. ・特に,都心でシェアハウスに居住する高齢者を対象に定期的なイベント化を図る. 27 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ○女子大生と行く秋のまち歩きツアー(富山市) ● ● ● ● 5. まとめ 本研究では,世代とライフステージに着目し,世代 によって居住特性が異なること,世代やライフステージ によって転居への抑制力と誘発要因が異なることを明ら かにした.その上で,転居を促す誘導方策を提案できた. 今後,本研究で得られた成果を他の市町村へ展開す る上での知見を整理することで本研究のまとめとしたい. まず,「世代別の居住特性」については,世代によ って居住地域や形態が異なることを示した. 国勢調査で調べられているデータをGIS上で500mメッ シュにて利用することで,富山市以外にも我が国の市町 村において同様の分析が可能という点は重要である. 特に,市街地が低密度に拡大する都市や過疎化が進 む地方市町村にとって,人口のまちなかへの誘導を適切 に行うことは,コンパクトシティ政策にとって不可欠な 面もある.本研究では,人口を世代に分けて地域別に分 析を行うことで,誘導に関する抑止力とあわせて,人口 移動の要因を検討し,一定の知見を得た. 今後,人口の減少と高齢化が進む中では,本研究で 見た団塊の世代や若年世代等の特定世代の居住特性を考 慮した,将来の人口移動をふまえた政策展開は,一層重 要となると考えられる. 次に「世代ごとの転居への抑止力・誘発要因」の把 握にあたっては,新たな意向調査を実施しなくても既往 の調査で把握できることが分かった.今回は,総合計画 及び住生活基本計画の策定に先立ち実施した市民意識調 査を活用したが,回答者の属性及び定住意向,居住地へ の不満度,現在の居住地への転居理由と今後の転居意向 が把握できれば他の市町村においても適用可能である. 最後に,「誘導施策」については,本研究ではアイ デア提案に留まったため,次年度の研究にて,その有効 性について検証し,他市町村への適用ができる世代別・ 地域別のコンパクト誘導施策の検討を行っていきたい. また,まちなか居住の推進の際に必要となる,住宅政策 についてもあわせて検討していく必要がある. 6. 謝辞 本研究を進めるにあたって,富山市副市長神田氏に は多忙の中,複数回の意見交換の機会を頂いた.また, 富山市建設部建設政策課の金山氏,都市整備部都市政策 課の黒崎氏には,富山市で実施した市民意識調査等のデ ータについて,本研究で活用が可能な範囲でご提供いた だいた.ここに感謝の意を表す. 参考文献 1) 富山市:富山市民意識調査結果報告書,2010.2. 2) 富山市:富山市市民意識調査結果データ,2010.7 3) 富山市:富山市住生活基本計画,2012.3 4) 富山市:富山市住生活基本計画策定のための住ま い・住環境に関する市民意識調査結果データ (2011.9調査) 5) 富山市:環境モデル都市行動計画 6) 富山市:まちなか居住推進計画,2005.3 7) 長谷川翔生・森地茂・他:地方都市における持続可 能な地域社会形成に関する研究,第47回土木計画学 研究発表会,2013.6 8) 海道清信:名古屋・駅そば生活圏構想と実現への道, 都市計画v303,2013.6 9) 早坂進:空き家所有者の民意を資源とした空き家, 空き地の集約化によるまちなか居住の再編,都市 計画v303,2013.6 10) 野嶋慎二:田舎の暮らしから考える地方都市周縁 部のまちづくり,都市計画v303,2013.6 11) 東洋大学PPP研究センター(編書):公民連携 白書2013―2014(省インフラ),2013.12 POLICY STUDY FOR COMPACT CITY Research of the guidance which leads to migration Nobuo TSUCHIYA ,Kakeo HASEGAWA, Tetsuo KAWAKAMI and Nobukazu KOREEDA In Japan, associated with population decrease and ageing, squeeze of government finance and growth of social welfare expenses are supposed to occur. According to this situation, the promotion of compact urban development that allows people live in the sphere of walking distance is in the spotlight. Therefore, it is significant to consider these issues from city management perspective in order to response diversified demands deploying city policies on every detail. The goal of this study is to propose the direction measure of migration to stimulate toward the realization of compact city as a government’s intent. Herewith this, the purpose of this study is to grasp the deterrents and impulses for population migration by age bracket. 28 地域に根ざした河川再生の共創アプローチ 水辺からの都市再生を核とするアジアのネットワーク研究(その2) 和田 彰1・木村 達司2・宇井 正之3・稲葉 修一4・若杉 耕平5 1技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所 (〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-15-1 フジタ人形町ビル6階) E-mail: a-wada@ctie.co.jp 2技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 E-mail: tt-kimur@ctie.co.jp 国土文化研究所(同上) 3技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社水システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワー) E-mail: ui@ctie.co.jp 4株式会社建設技術研究所 東京本社環境部 (〒330-0071 埼玉県さいたま市浦和区上木崎1-14-6 CTIさいたまビル) E-mail: inaba@ctie.co.jp 5技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 E-mail: wakasugi@ctie.co.jp 東京本社河川部(同上) 本研究は,当社が公益を目的に事務局を共同運営する「日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)」を活 用しながら,国内外の河川再生に関わる情報・知見の普及・啓発を促進し,各地域に相応しい河川再生の 技術や仕組みづくりの発展に寄与する持続可能なネットワークを構築するものである.本稿では,2013年 の主な研究活動と今後の展開,またネットワークの持続的発展に向けた当社の役割について紹介する. Key Words : River Restoration, Network, Knowledge Sharing, Partnership, CSV 1. はじめに る環境保全や水防活動を自発的に取組む民間団体の急速 な増加が挙げられる.各地域に相応しい河川環境の創造 に向け,河川管理者とこれら団体が連携して河川の整備 や管理を担うことで,身近な川への関心の高まりや河川 環境の理解の促進,更には健全な水利用や防災意識の向 上にも寄与することが強く期待されている. こうした中,当社は,地域に根ざした川づくりを支 える中間支援機能である「日本河川・流域再生ネットワ ーク(JRRN)」の事務局運営を設立当初より担っている. JRRNでは,河川の自然の営みや流域全体の風土・歴 治水・利水・環境の総合的管理が河川法の目的に位 置付けられてから15年余りが経過した.2006年からはす べての河川管理が多自然川づくりを基本に実施され, 2009年にはまちづくりと一体となった河川整備を一本化 して「かわまちづくり」が制度化されるなど,かつての 治水中心の河川整備から,健全な水循環や良好な河川環 境の創造,更には市民協働型のまちづくりや地域活性化 と連携した川づくりが全国で進められている. また,2013年7月には「水防法及び河川法の一部を改 正する法律」(以下「改正法」と呼ぶ)が施行された. この改正法は,水防活動への多様な主体の参画,河川管 理施設の老朽化対策,民間による河川環境保全等の活動 促進に向けた河川協力団体制度の創設,また従属発電の ための登録制導入の4つを柱としており1) ,災害リスク が益々増大する中で,水防や維持管理,環境保全やエネ ルギー転換を持続発展的に推進するための河川管理への 民間活用(市民や企業の参加)を主な狙いとしている. 上記の背景には,1997年の河川法改正前後を契機とす 史・文化,周辺地域の経済活性化などを視野に入れた安 全で潤いある豊かな川づくりを「河川再生」と定義し, ウェブサイトや刊行物発行,交流行事等を通じて河川再 生に関わる情報・知見を国内外に普及し,河川再生に携 わる国内外関係者との情報共有や専門性の底辺拡大に取 組んでいる.(図-1)2) 本稿は,各地域に相応しい河川再生の技術や仕組み づくりの発展を目的とした,河川再生分野の知見,技術, 意識共有を産学官民連携で創り出す持続可能なネットワ ーク構築の取組みについて紹介するものである. 29 海外との連携 表-1 JRRN及びARRNの主な刊行物 情報の循環 ウェブサイト運営(日アクセス 約2000人) アジア河川再生ネットワークとの連携 ネットワークの拡大 CRRN(中国) 2013年12月現在 JRRN個人会員: 約640人 JRRN団体会員: 約50 団体 KRRN(韓国) 信頼ある組織確立(自立化) No 刊行物タイトル 1 2 3 アジアに適応した河川環境再生の手引き ver.1 よみがえる川~日本と世界の河川再生事例集 アジアに適応した河川環境再生の手引き ver.2 PRAGMO 日本語版~河川及び氾濫原再生の 順応的管理に向けたモニタリングの手引き 川を活かす・守る ~河川再生事例集 地域で取組む河川環境の評価 ~河川再生の 順応的管理に向けたモニタリング事例集 2013.4-新組織体制 (理事会設置・定款制定) TRRN(台湾) ARRC(豪州) タイ・マレーシア・フィリピン etc. 欧州等河川再生ネットワーク連携 ニュースレター発行(月1回・78号) 4 ニュースメール配信(週1回・563号) RRC(英国) 再生事例集発刊 再生手引発行 ECRR(欧州) 5 コミュニティの構築 協働事業実施 6 イベント企画・開催 日中韓による河川再生手引き作成活動 PRAGMO日本語版作成活動 河川再生モニタリング事例集作成活動 水の巡回展ネットワーク(jawanet) 大学院「水環境分野」講義担当 卒論・修論支援、インターンシップ受入・支援 年次水辺・流域再生国際フォーラム開催(10回) 河川環境ミニ講座開催(9回) 海外技術交流会開催(30回) 調査手引発行 発行 年月 2009.3 2011.3 2012.2 2012.11 2013.2 2014.2 ※予定 各種講演録発行 ①仕組みづくり JRRNソーシャルメディアでの交流 産官学民の協働基盤構築 社会的価値向上のレベル (社会貢献の難易度) 図-1 日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)の活動概要 2013 (ネットワーク活性化・連携促進・組織化) 新秩序創出(ステップV) 啓発・研修・教育(ステップIV) 事務局運営 組織基盤確立(ステップIII) 連携・協働 知的財産蓄積 ・普及(ステップII) 情報基盤整備・交流促進 (ステップI) 価値創造過程 2007年 (1年目) 社会的課 題の認知 2010年 (4年目) ステイクホル ダーとの協働関 係構築 2013年 (7年目) 社会関係 や制度の 変化 テーマに関連する情報や知見の整備及びそれらの循環を促す機会の創造(=共有基盤づくり) <ステップII > 組織固有の知的財産の蓄積・普及 上記情報に付加価値を添えた専門的な情報・技術・知見(事例集や技術指針)に加工し普及 安定と信頼ある組織基盤の確立 組織力の強化(ガバナンス・収益性・継続性) <ステップIV > 社会啓発、研修、教育の推進 社会啓発や研修・教育等に関わる公益活動を通じて人材育成に寄与し、意識共有や技術向上を図る <ステップV > 河川再生のアウトリーチ 日本の河川再生の見える化 (市民啓発・技術普及・環境教育) (実績発信・技術普及・研修受入) 川再生に関わる事例集や手引きとして国内外へ普及する とともに,諸活動の更なる発展に向けた組織基盤強化に 取組んできた.特にネットワーク固有の普及・啓発ツー ルの制作過程では,ネットワーク会員及び関係者が連携 して新たな価値を生み出すことを基本に活動を展開し, JRRN 及び ARRN による協働活動の推進に努めてきた. (表-1) 研究着手から 7 年目となる 2013 年は,各地域に根ざ した河川再生の技術や仕組みづくりの更なる発展に向け, ネットワーク活動を持続発展的に展開するための JRRN 及び ARRN の組織体制の強化(ステップ III)を図ると ともに,ネットワーク会員協働による国内外河川再生分 野の社会啓発や技術普及,及び研修・教育に資する活動 (ステップ IV)を重点的に取組んだ. 新たな社 会的価値 の広がり <ステップI> 情報基盤整備と関係者の交流促進 <ステップIII > ③国際貢献(海外) 図-3 2013年の3つの研究テーマ 2016年 (10年目) 社会事業の開 発・提供と、 市場社会から の支持 ②社会貢献(国内) 新秩序を創出する機能へ 政策提言等を通じ、新たな制度や法令、新秩序を生み出す組織体へ発展 図-2 ネットワークの段階的発展プロセス 2. 既往研究と本研究の位置づけ 本研究では,図-2 に示す段階的発展プロセスに基づ きネットワーク構築に取組んでいる. JRRN 設立(2006 年 11 月)後の 2007 年から 3 年間は, 「国際人材ネットワーク基盤研究」3) として JRRN 及び JRRN 上位組織であるアジア河川・流域再生ネットワー ク(ARRN)の事務局運営に携わり,河川再生に関わる国 内外ネットワークを通じた情報循環と人材交流の活動基 盤整備を進めてきた.また 2010 年から 2012 年にかけて は,「水辺からの都市再生を核とするアジアのネットワ ーク研究」4) として,JRRN 及び ARRN の活動成果を河 30 3.2013年の研究活動報告 (1) 3つの研究テーマと主な活動内容 前述の研究経緯を踏まえ,2013 年は図-3 に示す 3 つ の重点テーマを設けて本研究に取組んだ.各テーマの主 な活動内容を表-2 に示す. ① 仕組みづくり(産官学民の協働基盤構築) ② 河川再生のアウトリーチ(国内向け啓発・普及) ③ 日本の河川の見える化(日本の知見の国際展開) (2) 【テーマ2】河川再生のアウトリーチ: 市民によ る河川再生の順応的管理に向けた取組み 本テーマは,河川再生分野の情報循環,市民啓発, 技術普及,人材育成等に資する諸活動を様々なセクター (産官学民)と協働 で実施し,河川再生への社会の関 心を高めながら市民参加を促し,更には既存の活動を応 援し活性化する狙いがある. 本年はこの一環として,全国で市民が主体的に取組 む河川再生に向けたモニタリング活動の特徴や課題の共 有を目的とする調査研究を実施した.本調査では,全国 約 50 団体に協力頂いたアンケート調査よりモニタリン グの現状や課題を分析し(図-4),また全国 8 河川の市 民団体や河川管理者へのヒアリング調査を通じて,市民 が中心に行うモニタリング活動の更なる推進に向けた 様々な助言を集約した.これら調査の整理・分析結果は, 「地域で取組む河川環境の評価~河川再生の順応的管理 に向けたモニタリング事例集(仮題)」として 2014年 3 月に JRRN より発行し,全国に普及を予定している. 表-2 各研究テーマに関わる2013年の主な活動内容 研究テーマ 【テーマ 1】 仕組み づくり 【テーマ 2】 (国内向) 河川再生の アウトリーチ 【テーマ 3】 (海外向) 日本の 河川再生の 見える化 活動内容 (国内ネットワーク:JRRN) ・組織体制検討(法人格・資金源 etc.) ・JRRN年次報告 2012発行(3月) ・理事会設立及び定款策定(4月) ・JRRNニュースレター発行(毎月・全 12回) ・JRRNニュースメール発行(毎週・全 51回) ・JRRNウェブサイト運営(通年) ・JRRN会員の各種要請支援(通年) (アジアネットワーク:ARRN) ・ARRN年次報告 2012発行(5月) ・第 8回 ARRN運営会議参加(9月) (活性化策・事業メニュー・資金源 etc.) ・ARRNウェブサイト運営(通年) ・川を活かす・守る-~河川再生事例集~発刊 (2 月) ・「市民による河川環境の見かた・調べかた~ 英国 PRAGMOに学ぶ」講演録発行(2月) ・桜のある水辺風景 2013写真集発行(6月) ・「遠賀堀川再生シンポジウム」企画運営支援 (5月-7月) ・「地域で取組む河川環境の評価~河川再生の 順応的管理に向けたモニタリング事例集 (仮題)2014 年 2 月発行予定」制作に向けたア ンケート・ヒアリング調査(6月-12月) ・応用生態工学会第 17 回大会「住民参加型の 都市河川再生に向けた環境教育アプローチ ~マレーシア・ウェイ川における WATER Projectの調査事例~」ポスター発表(9月) ・大学院「水環境分野」講義担当(9月-11月) ・水の巡回展ネットワーク運営協力(通年) ・「国際河川賞 2013 応募要領」作成・公開・ 勧誘(1月-3月) ・諸外国来日視察団の支援・技術交流(2 月-香 港政府) ・2013 年度河川技術に関するシンポジウム「国 内外の河川再生ネットワークを活用した日 本の国際貢献に関する研究」論文発表(6 月) ・第 10 回 ARRN 水辺・流域再生にかかわる国 際フォーラム参加(9月) モニタリングの対象(縦軸:回答団体数) 目的共有 5 次活動反映 意識向上(自分) 4 3 2 環境改善寄与 意識向上(地域) 1 0 調査精度確保 参加者増加 専門知識向上 ※上記表内の 斜体 は次節での具体紹介事例 行政連携強化 モニタリング活動に対する自己評価平均値 (5:満足, 4:やや満足, 3:そう思う, 2:やや不満, 1:不満) 仕組みづくりについては,個々の活動主体(団体・ 個人)を横断的に結び,それぞれの知見を共有しながら 諸活動推進の効率化を図るというネットワーク本来の触 媒的機能が発揮される JRRN 及び ARRN のあり方を検討 し,各種媒体の改善と組織体制の強化を図った. また,この仕組みを活動基盤に,国内を対象には河 川再生分野の社会啓発や技術普及活動,更に海外向けに は日本が培った知見の普及促進に向けた取組みを,ネッ トワーク関係者の協働を基本に企画・実施した. 2013 年に特に注力した国内向け河川再生アウトリー チ及び海外への日本の河川再生の見える化に関わる活動 について,経緯や今後の展開を含め次節に詳しく示す. 30 25 20 15 10 5 その他 結果の評価・ 活用 専門知識・ 技術 関係者連携 調査精度 継続性 要員体制 活動資金 0 モニタリングを実施する上での課題(縦軸:回答団体数) 図-4 モニタリング活動に関わるアンケート分析結果の一例 31 表-3 過去の国際河川賞受賞河川と主な特徴 2012年 年 英国河川再生センターRRC発行「PRAGMO: 河川再生の順 応的管理に向けたモニタリング手引き」の日本語版制作。 目 的 日本のモニタリング質向上 市民参加型モニタリング推進 JRRN会員・RRC連携強化 実施体制 企画調整:JRRN事務局 翻訳: JRRN会員ボランティア 協力: RRC / 筑波大学 資金: 河川整備基金助成事業 成 果 講演会開催 2012.12 手引発行2012.11 2013年 河川名 主な特徴 (キーワード等) ケニア 統合的水資源管理、環境保全、農家・市民・NGO連携 2012 Willamette川 アメリカ 水質改善、協働、氾濫原再生、地域活性化 2011 Charles 川 アメリカ 半世紀に及ぶ面的汚染源除去の流域仮、水質改善、各種専門家連携 2010 テムズ川 イギリス 60年に及ぶ死の川からの環境再生、マルチセクター協働、異常気象対応 2009 Simcoe湖 カナダ 流域レベル環境保全、流域住民連携、流入河川管理 2008 St. Johns 川 アメリカ 湿地再生、氾濫原再生、表流水・地下水管理 2007 ドナウ川 オーストリア 国境河川の監視強化と水管理、協働、水質改善 2006 Sha 川 中国 都市河川の水質改善、洪水防御、景観再生、自治体連携 2005 The Drôme 川 フランス 20年に及ぶ水質改善、生物多様性、洪水防御、泳げる川再生 2004 Siuslaw 川 アメリカ サーモン回帰、マルチセクター協働、自然再生、浸食防止、流域保水 2003 Alexander 川 イスラエル 政情不安定下での計画立案、協働、水質改善、環境配慮型河川公園 2002 メコン川 メコン委員会 国際河川の統合的水資源管理、環境保全、持続的開発 2001 Blackwood 川 オーストラリア 統合流域水管理計画、土地利用者連携、水質改善、植生再生 2000 Grand 川 カナダ 半世紀に及ぶ協働型河川再生、水質改善、魚類再生、土砂管理 1999 マージ川 イギリス 25年スパン再生計画遂行、水質改善、マルチセクター協働、都市再生 表-4 国際河川賞の一般的な応募手順 「地域で取組む河川環境の評価~河川再生の順応的管理に向 けたモニタリング事例集(仮題)」を制作・普及。 目 的 市民・行政連携型モニタリングの国内事例把握と普及 市民参加型の河川再生モニタリングの更なる推進 全国市民団体及び河川管理者とJRRNの関係強化 実施体制 企画調整: JRRN事務局+筑波大学白川(直)研究室 協力: 全国の河川市民団体及び河川管理者 資金: 河川整備基金助成事業 実施手法 1. 全国85団体アンケート送付。約50団体回答を整理・分析。 2. 市民団体+河川管理者へヒアリング調査。 3. アンケート・ヒアリング結果をPRAGMOと比較分析 4. 「モニタリング事例集」として整理・発行・全国普及 成 果 『河川再生モニタリング事例集』発行(2014年2月頃予定) No. 段階 時期 1 応募準備 秋・冬頃~ 方法・要する準備等 2 一次応募 3月 3 一次審査発表 4月中旬 4 二次応募 5月 5 二次選考発表 7月上旬 6 最終発表準備 7月~8月 7 最終発表会 (自己PR) 9月頃 ・国際河川シンポジウム参加 ・約20分のpptによる口頭発表と質疑応答 8 最終審査 受賞式典 9月頃 ・最終発表会(兼・祝賀会)参加 ・(受賞の場合)スピーチ+翌日口頭発表 ・応募申請の簡易web手続き ・申請様式のweb入力 ・申請様式をweb最終申請 ・申請様式のweb入力 ・添付資料類の作成 ・上記一式をweb最終申請 ・動画素材収集、撮影 →事前提出 ・会議参加登録、出張手配(航空券等) ・最終発表ppt資料作成 (3)【テーマ3】日本の河川再生の見える化: 国際河 川賞応募を通じた日本のプレゼンス向上への取組み 地球規模での気候変動や急速に進む国際化の中,日 本が培った経験や技術の共有が世界で益々期待されてお り,これは河川再生分野でも例外ではない.6) 本テーマ は,日本が培った河川再生に関わる実績・知見・技術等 に対し,海外関係機関が言語の壁なく容易にアクセスで きる環境を整え,本分野の日本の経験に対する海外の関 心を高め,国際交流を促進することを狙いとしている. 2013 年は,本テーマの一環として,オーストラリア に拠点を置く国際河川財団が主催する国際河川賞 (International Riverprize) を日本のプレゼンス向上の貴重な 機会と位置付け,国際河川賞への日本の河川の応募促進 に向けた積極的支援を JRRN として取組んだ. まず,主催者である国際河川財団の公開情報 7) に基 づき過去の受賞河川の特徴(表-3)や応募プロセス(表 -4)を詳しく整理するとともに,応募に際し参考となる 資料一式をとりまとめ,「日本が誇る河川再生の経験を 世界に伝えよう!”国際河川賞 2013”応募要領(日本語 版)」として公開・普及した. 次に,国際河川財団事務局より日本の河川応募に向 けた様々な助言を頂くとともに,その内容を踏まえ,日 本国内の市民団体や行政機関へ国際河川賞への応募を提 案し,各団体が培った河川再生の実績 PR に向けた議論 を重ねた. 今後の展開 「市民が取組む河川再生の順応的管理に向けたモニタリング手 引き」日本版を制作。 目 的 モニタリングレベルの向上 市民参加型モニタリング推進 国内関係団体の連携強化 JRRNの信用確立 国名 2013 Mara川 実施体制 企画調整: JRRN事務局 他 協働: JRRN会員 他 資金: 助成金・寄付金・受託 実施手法 モニタリング事例集に対する評価結果を踏まえて定める。 成 果 PRAGMO日本版『市民向けモニタリング手引き』を発行 図-5 市民による河川再生の順応的管理推進に向けた取組み なお,本年の調査及び事例集制作は,2012 年に実施 した英国河川再生センター発行「PRAGMO: 河川再生の 順応的管理に向けたモニタリング手引き」5) の日本語版 制作の一連活動に位置付けられる.今後は,JRRN によ る日本の河川に相応しい PRAGMO(日本版)を制作・ 普及することを目標に,市民が取組むモニタリング活動 の普及に貢献しながら,本テーマの河川再生のアウトリ ーチを推進していければと考える.(図-5) 32 2012年 第15回国際河川シンポジウムに参加し、国際河川賞への日本 の応募に向けた予備調査実施。 活動内容 日本の河川再生事例を論文発表し、参加者に日本の実績PR。 国際河川賞の全選考過程に参加し、概要を理解。 主催者代表や選考委員等と意見交換し、日本の応募に向けた 助言を取得。 2013年 国際河川賞2013への日本からの応募促進に向けた環境整備 、及び関係機関への勧誘活動を実施。 活動内容 過去の受賞河川、応募方法等の詳細を調査 主催者より日本からの応募に際しての助言獲得 日本語での「国際河川賞募集要領」を公開 日本の応募候補団体への勧誘(自治体、NPO等) 国際河川賞2013選考結果の現地レポート紹介 図-7 JRRNの新組織体制図(2013年~) 内発的財源(安定的・小口収入) 会費 寄付(定常的) 応募要領公開 応募作戦会議 支援性財源 (運動性・非課税) 補助金(行政) 助成金(財団) 協賛金(企業) 寄付(一時的) フォローアップ 今後の展開 対価性財源 (事業性・課税) 行政・企業からの委託事業収入 (指定管理、調査業務等) 外発的財源(変動的・大口収入) 国際河川賞2014 or 2015への日本からの応募実現と支援。 活動内容 応募関心団体との協議。 申請(毎年3月末)に向けた準備支援。 申請後フォローアップ。 主催者諸調整、ロビー活動支援。 選考会プレゼンの支援。 対価性会費(サービス利用料) 行事参加収入、出版収入 講師派遣収入 図-8 非営利活動の様々な資金源 (2) ネットワーク発展に向けた当社の役割 本研究を通じた JRRN 事務局運営に携わり約 7 年が経 過した.ネットワークの持続的発展に向けては,他の機 関と連携し,活動を連動させることで,互いの機能を補 完することが効果的な戦略と言え,その主体はネットワ ーク会員に他ならない.一方,成功を収めるネットワー クに共通する特徴の一つに,事務局がネットワークを適 正に管理しながら会員間の結びつきを促進し,また会員 ニーズと社会の需要動向に応えながら活動プログラムを 継続的に改良し,それにより新たな資金を引き寄せる役 割を担っていることが挙げられる.8) 会員同様に事務局 が果たすべき役割も小さくなく,今後も理事会及び会員 の支援をはじめとする機動的な事務局運営を担っていく. なお,当社の企業活動を通じては,社会課題の解決 と企業の利益・競争力向上の両立を目指しており,それ を実現するためのコンセプトの一つに社会と企業の両方 に価値を生み出す共通価値の創造(CSV: Creating Shared Value:)がある.9) , 10) 本ネットワーク活動では,河川再 生の意義を広く社会に伝え,そのために必要な知識や技 術などの新たな価値を共に創造しながら,本分野の幅広 い人材の育成を目指している.この過程は,当社の生産 性の源泉を正しく理解することにつながるだけでなく, 健全な事業環境の醸成にも寄与するであろう.今後も本 研究を通じて JRRN の発展に貢献し,当社の社会的価値 と事業価値の共創を目指しながら,安全で潤いある豊か な社会づくりに挑戦していきたい.(図-9) 日本の河川の優勝へ 図-6 日本の河川再生のプレゼンス向上に向けた取組み 応募を検討する関係者との意見交換の中で,英語力 や動機づけ(=費用対効果)などが日本からの積極的応 募の障壁となっていることが明らかになり,2013 年の 応募は残念ながら実現しなかった.しかし,今後も JRRN 活動を通じて日本の河川再生の担い手に応募を働 きかけながら,これまで培った貴重な経験を熱意を込め て世界に向け広報し,本分野の日本のプレゼンス向上に 努めていく.(図-6) 4.ネットワークの発展に向けた今後の取り組み (1) ネットワーク運営基盤の更なる強化 2013 年は,JRRN のガバナンス強化を目的に,6 年間 に及ぶ事務局によるネットワーク運営から,理事会及び 定款を新たに設け,JRRN 運営面の透明性確保,及び社 会的信用力や資金の調達・管理力の強化を進めていると ころである.(図-7) 今後は,図-8 に示す様々な資金の獲得を可能とし, これらを活用しながら河川再生に関わる非営利活動を幅 広く展開する透明性と中立性の高い組織を目指し,ネッ トワーク運営基盤の更なる強化を図っていく. 33 JRRN基幹事業 支援者 行政 JRRN会員 (補助金) 社会 貢献 (市民団体、学 協会、行政機関、 企業等) 企業等 (協賛金) その他 (寄付金) 官公庁 地方自治体 Web運営(日本語) 情報DB(行事・書籍・ニュース等) 技術・事例DB ニュースメール、広報誌等定期配信 各種加工情報の提供 講演会・セミナー開催 研修・教育 出版(事例集・手引き・翻訳本) 各種行事支援 -個人会員 -団体会員 財団・基金 (助成金) 協働 公益法人 民間企業 研究機関 市民団体 (委託費) 海外顧客 (運営者) 理事会・事務局 社員参加 - 常勤 - ボランチィア - インターン - その他 ( 人件費・活動費) 社会ニーズの深 い理解による品 質向上と事業環 境イノベーション 国際 貢献 【2】国際貢献事業(海外) 日本の情報発信・知見普及 講師派遣、研修・視察受入 Web運営(英語) 各種連携の促進・支援 アジア非会員 欧米豪連携機関 援助機関 社内 連携 本業を通じた社会還元 参考文献 国内顧客 【1】啓発・技術普及・教育事業(国内) (委託費) ネットワーク活動成果はすべて社会還元 【凡例】 情報・労力・ 価値の流れ 資金 の流れ 図-9 共創アプローチによるネットワーク展開図 5.おわりに 2020 年にはオリンピック・パラリンピックが東京に やってくる.東京のみならず全国にたくさんの外国人が 訪れ,暑さも手伝い,陸から,船から,水辺と触れ合う 訪問客も少なくないだろう.ふと立ち寄った川に心地よ さを感じ,日本の水辺の素敵な思い出を持ち帰ってもら えれば幸いである. 我が国には,前回の東京オリンピック開催前後から 約半世紀に及ぶ世界に誇れる河川再生の歩みがある.今 回の五輪招致決定は,長年に渡る地域と川の関わりを丁 寧に振り返り,未来の川の姿を考え直す絶好の機会とも 言え,本研究テーマである河川再生のアウトリーチや日 本の河川再生の見える化に向けた取組みが,7 年後の日 本の川の更なる魅力向上にも寄与することを期待したい. 最後に,JRRN 事務局は,「アジア河川・流域再生ネ ットワーク構築と活用に関する共同研究」の一環として, 公益財団法人リバーフロント研究所と株式会社建設技術 研究所国土文化研究所が公益を目的に運営を担っている. 1) 特集「戦略的な河川維持管理」,河川 69巻 第 9号, 2013. 2) 和田彰・伊藤一正・佐合純造・沼田彩友美・後藤勝洋:河川 再生に向けた国際的な産学官民ネットワークの構築, 河川技 術論文集 第 16巻, pp.541-546, 2010. 3) 和田彰:国際人材ネットワーク基盤研究, 国土文化研究所年 次報告 Vol.8, pp.72-81, 2010. 4) 和田彰・木村達司:水辺からの都市再生を核とするアジアの ネットワーク研究, 国土文化研究所年次報告 Vol.11, pp.35-42, 2013. 5) River Restoration Centre , Practical River Restoration Appraisal Guidance for Monitoring Options (PRAGMO), 2011 6) 和田彰・木村達司・佐合純造・柏木才助・伊藤将文・後藤勝 洋:国内外の河川再生ネットワークを活用した日本の国際貢 献に関する研究, 河川技術論文集 第 19 巻, 2013. 7) International Riverfoundation , River Journeys II, 2010 8) 前田利蔵:環境管理能力向上のための都市間ネットワーク- ネットワーク機能により地域の取り組みを強化する方策とは, IGES白書 IV 2012,2012. 9) マイケル.ポーター:戦略と競争優位, Harvard Business Review, pp.8-31, ダイヤモンド社, 2011. 10) マーク・フィッツァー他:「共通価値」を創出する 5 つの 要素, Harvard Business Review, pp.111-121, ダイヤモンド社, 2014. (2013. 12. 20 受付) 謝辞:JRRN の諸活動に日々ご協力頂いている関係者各 位に対し,深く感謝を申し上げます. DEVELOPMENT OF RIVER RESTORATION NETWORK BASED ON PARTNERSHIP AND CREATING SHARED VALUE APPROACH Akira WADA, Tatsushi KIMURA, Masayuki UI, Shuuichi INABA and Kouhei WAKASUGI Japan River Restoration Network (JRRN), which is one of national networks of Asian River Restoration Network, was established in 2006, and CTI Engineering Co., LTD. has been in charge of JRRN secretariat since its establishment. This paper reports major activities and achievements by JRRN in 2013, and proposes the sustainable organizational framework of river restoration network for promoting effective knowledge and technical transfer based on partnership and Creating Shared Value approach. 34 「まちニハ」実現化に向けた基礎的研究 ~日本橋浜町・人形町界隈を対象として~ 飯田哲徳1・水場牧子2・鵜野勝巳3・是枝伸和4・中村良夫5 1 技術士補(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワー,E-mail: y-iida@ctie.co.jp) 2 技術士補(建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワー,E-mail:mizuba@ctie.co.jp) 3 技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワー,E-mail: k-uno@ctie.co.jp) 4 技術士(総合技術監理・建設部門) 株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワー,E-mail: koreeda@ctie.co.jp) 5(共同研究者) 工学博士 東京工業大学名誉教授 本研究では,「生態・社会複合文化系の再構築に関する研究(平成22~24年実施)」で示された「まち ニハ」の概念を用いて,浜町緑道とその界隈の空間のあり方を捉えなおし,「まちニハ」実現化に向けた 課題と実現化方策について検討し,密集度の高い都市部における「まちニハ」実現性を検証することを目 的としている. 平成25年は,「まちニハ」の概念・成立条件を整理し,評価軸を明確にした上で,浜町緑道とその界隈 を対象として「まちニハ」の現状評価を行った.また,「まちニハ」の考え方を適用したケーススタディ の提案を行ない,「まちニハ」の具体化に向けた課題を提示した. Key words: Machiniwa, field, body, eco-symbolism, field survey, public-private ambiguity 1.研究概要 (2)研究目的・成果 本研究では,浜町緑道とその界隈の空間のあり方を捉 えなおし,「まちニハ」実現化に向けた課題と実現化方 策について検討し,密集度の高い都市部における「まち ニハ」実現性を検証することを目的とする. 平成 25 年は,「まちニハ」の概念・成立条件を整理 し,評価軸を明確にした上で,浜町緑道とその界隈を対 象として,「まちニハ」の考え方を適用したケーススタ ディの提案を行い,その評価を試みるとともに,「まち ニハ」の具体化に向けた課題を提示した.尚,平成 26 年は,実現化方策の検討を行い,「まちニハ」実現に向 けたノウハウ集をとりまとめる予定である. (1)研究背景 「生態・社会複合文化系の再構築に関する研究」1)で は,自然と社会が渾然一体となった「生態社会複合文化 系」の再構築を実現するための空間として「まちニハ」 の概念が示されている.中村が,その著書2)において 「現代都市を組み替えながら,蘇らせる知恵が求められ る.それには,細分化した敷地をそれぞれ勝手にいじく りまわす乱雑な密集ではなく,もっと公共的に都市が運 営されなければならない.」と記しているように,これ までのような河川,道路など事業ベースでの検討では, 境界部分は境界条件としてしか捉えられず,事業の枠を 越えた「まちニハ」空間の創出は困難である. 都市の中に「まちニハ」を創出するには,場の表情, 賑わい性,公私の境界のあいまい性(半公半私),居心 地の良い場所からの眺めなどが条件となることが示され ており,例えば,事業の境界部分を「まちニハ」創出の 可能性のある空間として捉えなおし,その周辺部分も読 み込んだ計画が必要である.河川,道路など事業ベース で実施していることによる壁(境界)を取り払い,民間 の協力を得ながら,いかに「まちニハ」空間を具体化す るかが問題となる. 図-1 江戸期の江戸のまちなみの様子 35 (1)生態社会複合文化系の再構築に関する研究 平成 22~24 年に実施された「生態社会複合文化系の 再構築に関する研究」は,「自然(生態系)」と「コミ ュニティ(社会)」の概念を取り込んだ社会システムの 概念化を試みたものであり,「まちニハ」は,図-4 に 示す関係図の中心に近い位置にあり,生態・社会複合文 化系の再構築をしていくための要であるとされた. (3)研究フロー 「まちニハ」実現化研究の平成 25 年~26 年の研究フ ローは,下図に示すとおりである. 本研究の対象 【平成 25 年】 1. 既往研究の整理 2.「まちニワ」提案に向けた基礎調査 3.「まちニワ」のフィールドサーベイ ・文献資料(古地図、古写真等)の収集 ・対象地周辺のフィールドサーベイ ・対象地の歴史的変遷の整理 ・「まちニハ」の現状評価(カルテ) ・上位、関連計画の整理 ・「まちニハ」MAPの作成 4. 浜町川緑道におけるデザインスタディ ミニ発表会の開催 5. 「まちニワ」実現化の課題抽出 6. 平成 25 年報告書作成 8. 「まちニワ」実現化方策の検討 地域連携 7. 「まちニワ」実現化の方向性検討 (小学校等) 【平成 26 年】 ミニ発表会の開催 9. 「まちニワ」実現化に向けたとりまとめ 10. 論文発表 図-4 生態・社会複合文化系の概念図 11. 平成 26 年報告書作成 図-2 研究フロー(平成 25 年~26 年) (2)「まちニハ」概念の整理 「まちニハ」は,「まち」と「ニハ」の合わせた造語 であり,「いえニワ(庭)」と対比して使うために, 「ニハ」と記述している.中村が「屋敷うちに閉じ込め られ,私物化された,自然と人の親しい縁を,ふたたび 塀の外へ解き放って,都市のなかにしつらえれば,至る ところにまちニハのある山水都市が立ち現れるだろ う.」3)と記しているように,現代の「ニワ(庭)」は, 一般的に家の敷地内に閉鎖的に設えられている場合が多 い.一方で,『字通』4)によると,「場」の古訓に「ニ ハ」があり,第一義に「神を祭るところ,祭壇のあると ころ」とあり,続けて,「とりいれば,はたけ」とある ように,「ニハ」は,元来,祭事空間や作業場など公共 的性格を持った空間であったことが伺える. (4)本研究の対象エリア 本研究は,密集度が高い都市部を対象としており,3 章以降は,「まちニハ」のケーススタディとして,人形 町駅,浜町駅,水天宮前駅周辺に広がる界隈性を考慮し て,下図に示すエリア(人形町 1~2 丁目,浜町 1~3 丁 目,蠣殻町 1~2 丁目,久松町,富沢町,堀留町 1~2 丁 目の地区程度)を対象エリアとして設定した.(※ 次 年度以降の当社の地域貢献活動への寄与を意識したもの としている.) 自然 社会 公 私 私 私 まちニワ 図-3 本研究の対象エリア 公 私 2.既往研究の整理(「まちニハ」概念の整理) 図-5 「まちニハ」の表出する場のイメージ 36 c)居心地のよい縁からの眺め 内と外の境界部分に居心地のよい場所(例:庇,縁台, テラス,四阿)が確保され,眺望(視点場と視対象の関 係)が確保されていることである. 「山水の気配」が感じられるものや「賑わい」が感じ られるものが視対象になるため,視対象となり得る他の 条件が成立していることが必要になる. 物理的な指標:視点場の有無,視対象の有無 心理的な指標:快適性,心地よさ (3)「まちニハ」の成立条件 「まちニハ」が空間に成立する条件と,それぞれの条 件が意図するところを以下に示す.これらの成立条件を 取り込む程度を向上させることにより,「まちニハ」度 の高い空間になると考えることができる. · 山水の気配 · 半閉鎖自由空間 · 居心地の良い縁からの眺め(身体感覚と軒先景) · モノの形というより,場の表情 · 人の気配,賑わい(社交性) · 回遊による読み取り · 公私のあいまい性 · 持続的な維持の仕組み a)山水の気配 「山気水脈」というように山の気配を感じ,水の流れ を感じられる空間であることである. 都市の中に取り込まれた自然は,程度の違いはあるが, 自然を象徴化したものである.都市内の緑と水辺を見る と下図のような関係を見ることができる. 図-7 居心地のよい縁からの眺めの例 人間(象徴的)← →自然(原生的) 緑:盆栽・鉢植え‐庭‐公園・緑地‐里山‐奥山 水: 遣り水 ‐ 水路 ‐ 中小河川 ‐ 大河川 (事例:京都市高瀬川) d)モノの形というより,場の表情 一つ一つの造形(デザイン)が洗練されていることは 重要ではなく,むしろ個々の造形が統合されてできる空 間の雰囲気とも言えるものが備わっていることが必要で ある.そこには,「二十四節気,七十二候」というよう に日本人特有の季節感や一日の時間変化,天候の変化に 対する繊細な感覚が生きていると考える. オギュスタン・ベルク5)は,日本人の敏感な感受性に ついて,たとえば「雨」は単なる降水という現象ではな く,ある雨は,ある特定の季節にしか降らないし,特定 の時間にしか降らないと言い,小雨,大雨,氷雨,地雨, 俄雨,時雨,五月雨,豪雨,白雨,梅雨などがあること を挙げ,「特定の,他のものでは置き換えられない雰囲 気をかもし出す喚起作用」があることを指摘している. 物理的な指標: 季節感,時間を演出するものの有無 心理的な指標:季節感,時間の感受 e)人の気配,賑わい(社交性) 社交性とは,「個人が集まって社会をつくろうとする 人間の特性」6)とされており,人の気配,賑わいが感じ られる空間であることであり,日常的に人が居れる場所 としての空間であることである.例えば,縁台や四阿, カフェテラスなどの装置を設えたり,社寺の祭礼や地域 のお祭りや音楽イベントなど非日常的な空間の演出など によりもたらされる. 物理的な指標: 利用者数,イベント等の有無 心理的な指標: 人の気配,賑わいの感受 物理的な指標:緑量,緑被率,緑の所有者(公・民) 心理的な指標:自然の感受 図-6 絵図に見る「まちニハ」空間 (橋上,橋詰,店端など至るところに自然を取り入れ,人 の居られる空間が生まれている様子が描かれている.) b)半閉鎖自由空間 自由でありながら,空間として適度な囲われ感が感じ られることである.実際には利用の制約を受けていたと しても,行動をアフォードされることにより,制約を受 けていると感じない空間であることである. また,一般に開かれた場所であり,誰もが自由に使え る空間であることの意も含まれる. 物理的な指標:人が移動できる物理的空間スケール 心理的な指標:囲われ感(囲繞感) 37 表-1 「まちニハ」の創出手法の例 f)公私のあいまい性 「公」領域で「私」的な利用がされていること,ある まちニワの成立条件 条件を満たす手法 具体的内容 ・ 居心地の良い縁からの眺め ・ 居場所をつくる ・ 縁側 いは,「私」領域で「公」的な利用がされていることに ・ 芝生、ベンチ ・ 建物の縁を開放する ・ 軒下開放、雁木 より,公私の領域と利用があいまいになることである. ・ カフェ(公への眺め) ・ 眺めを提供する ・ 眺めの良い場所を選ぶ(選地) また,利用の仕方や境界部分の設えにより,見えとして ・ 眺めの保全 ・ 眺めを意識付け 「公」と「私」の境界があいまいであることも含まれる. ・ 半閉鎖自由空間 ・ 仕切る(囲われ感をつくる) ・ 壁面、ガラス窓 ・ ふすま、障子 物理的な指標: 視覚的な境界の有無 ・ ついたて、暖簾 ・ 結界 ・ 庭石 心理的な指標: 境界の感受 ・ 植栽、生垣 ・門 ・ 山水の気配 生態象徴 Eco-symbolism ・ 程よいスケールをつくる ・ 対人距離(程良く離れる) ・ 水の流れを取り込む ・ 遣り水 ・ 湧水 ・ 河川・・ ・ 緑を取り込む ・ 縮景(盆栽、植木鉢、築山、流れ・・) ・ 借景 ・ 見越しの松 ・ 表出する自然を保全する ・ 地形を保全する ・ 崖線の緑 ・ 尾根道、谷道 ・ 自然発生的な道 ・ 賑わい(社交性)があること ・ 自然を崇拝する ・ 塞の神(稲荷、地蔵、道祖神、庚申塚) ・ 賑わう場をつくる ・ 盛り場 ・ 祭り、イベント ・ 神事 ・ 場所の表情があること ・ 季節、時間 ・ 桜、紅葉、雪 ・ 早朝(朝焼け)、夕暮れ時(夕焼け) ・ 天候 ・ 雨(時雨、にわか雨、梅雨、霧雨・・) ・ 雲(すじ雲、うろこ雲、ひつじ雲、雨雲、入道雲・・) ・ 風(そよ風、北風、春一番、木枯らし、からっ風・・) ・ 季節感を演出する ・ 歳時記(季節のイベント) ・ 風鈴 ・ 俳句、和歌など 図-8 公私のあいまい性を演出している例(中央区人形町) ・ 回遊による読み取りで理解の ・ ネットワークする 深まる場所であること ・ まちの奥行きをつくる (境界部分の遮蔽(植木鉢,行燈),壁面の奥行き感 ・ 意味づけをする ・ 公私のあいまい性 (のれん,木窓)が効果的) ・ 名付け ・ 境界をぼかす ・ 植栽でぼかす(かくす) ・ 境界をデザインする ・ 表面(舗装)の素材を統一する ・ 境界をはみ出す ・ 盆栽、植木鉢 ・ 見越しの松 ・ 私を公に開く ・ オープンカフェ ・ オープンガーデン ・ 軒下開放 ・ 通りニワ 3.「まちニハ」提案に向けた基礎調査 「まちニハ」提案を実施するための基礎調査として, 文献資料(古地図,絵図,古写真等)の収集,対象地の歴 史的変遷の整理,上位,関連計画の整理を行なった. (1)文献資料の収集 文献資料として,古地図,古写真等を収集した.収集 文献の一覧は,表-2 に示すとおりである. 清洲橋通り 浜町川緑道 人形町通り f)回遊によるよみとり 公共的・大規模な「まちニハ」から私的・小規模な 「まちニハ」まで様々な属性(型,公私,スケール)の 「まちニハ」が存在することにより,まちに奥行き感が 生まれ,ネットワーク化されることにより,まちの回遊 性は向上すると考えられる. たとえば,研究対象エリアは,大通りに挟まれたグリ ッド状の街区で奥行きに乏しい街並みと評価されがちで あるが,街区の内側には小さな路地や商店,社寺が残っ ており,「まちニハ」として息づいている. 物理的な指標: ネットワーク性 心理的な指標: ― 表-2 収集文献資料一覧 NO 資料名 分類 NO 1 江戸東京市街地図集成1657-1895(明治9) 2 江戸東京市街地図集成Ⅱ1887-1959 (昭和31年~34年) 地図 3 江戸明治重ね地図 新大橋通り 図-9 研究対象エリアにおける「奥行き感」のイメージ 資料名 分類 16 水のまちの記憶~中央区の堀割をたどる~ 17 中央区の橋・橋詰広場 書籍 18 中央区の昔を語る 4 20世紀の東京 日本橋区之部(明治38年刊) 19 中央区沿革図(日本橋編) 5 記念まちの俤(昭和2年刊) 20 中央区基本計画2008 6 大東京冩眞案内(昭和8年刊) 21 中央区基本計画2013 7 大東京觀光アルバム(昭和12年刊) 22 中央区住宅マスタープラン 8 中央区 町会・自治会ネット 23 中央区商店街振興プラン 9 中央区三十年史(昭和55年史) 24 中央区水辺利用の活性化に関する方策 計画 写真 (2)「まちニハ」の創出手法 「まちニハ」の成立条件について,具体化を図るため, それらを満たすための想定される手法を表-1 に示す. 10 中央区史(昭和33年刊) 25 中央区総合交通計画 11 東京市内商店街ニ関スル調査 26 中央区耐震改修促進計画 12 日本橋区史参考画帖(大正5年刊) 27 中央区緑の基本計画 13 日本地理大系3(昭和5年刊) 14 日本地理風俗大系 大東京 豆南諸島 委任統治南洋(昭和14年刊) 15 日本之名勝(明治33年刊) 38 28 東京都市計画区域マスタープラン 29 神田祭巡行路 パンフ レット (2)歴史的変遷の整理 a)浜町・人形町界隈 図-10 より江戸期と現代の街路形状を比較すると,町 人地では,江戸時代のグリッドパターンの地割が現代に も活かされていることがわかる.一方,江戸時代にT字 路やL字路で構成される武家地は,明治時代には,町人 地のグリッドの軸が延伸した街区形状となっている.さ らに,図-11 に示すように震災復興事業で大きく区画整 理(道路新設,道路幅員の拡幅など)がなされ,現在の 都市の骨組みが出来上がった.昭和 16 年(戦災前)か らの大きな区画の変更はない. 昭和 26 年(1951)5 月に現在の日本橋久松町付近の 小川橋より北西側部分の埋立完了. 昭和 49 年 5 月に残りの南東側部分が埋立完了し,宅 地・公園・道路になった. 浜町川の橋は,緑道を横断する道路となっている. 図-10 浜町・人形町界隈の歴史的変遷‐江戸・昭和重ね図7) ①現清洲橋通り新設 ②菖蒲橋・浜洲橋新架 ③浜町川の各橋改架 ④久松橋廃橋 ⑤浜町公園の拡張 図-12 江戸時代から現代に至る浜町川周辺の変遷9)10)11) c)浜町川沿いの生活景 埋立以前の浜町川沿いの生活の様子について,「浜 町緑道は,昔,掘割になっていて浜町川と呼ばれてい ました.川の左右には釣り船屋さんや網屋さんが有っ て,天気の良い日には川べりに沿ってスノコに貼られ た板海苔が干され,近くを通るとほのかに潮の香がし ました.」12)という記述があるように,浜町川は箱崎 川,隅田川をつたって,海・川(自然)をまちに引き 込んだ生活の舞台であったことが伺える. ※ 道路の斜線部分:区画整理前 塗りつぶし部分:区画整理後 図-11 帝都復興事業区画整理対象図(1930 年)8) b)浜町川 浜町川は,現在の日本橋小伝馬町 19 番付近で龍閑川 から南東に流れ,箱崎川にそそぐ川であった.浜町緑 道に至るまでの変遷は,以下に示すとおり. 元和年間(1615~23)に箱崎川から東日本橋三丁目 辺りまで開削. 元禄 4 年(1691)に拡幅・延長され,龍閑川と合流. 明治 16 年(1883)に神田川まで延長され合流.(延 長は約 1003 間(1,825m),幅員平均約 8 間(15m)) 明治 40 年(1907)には,箱崎川河口から川口橋・蛎 図-13 埋立以前の浜町川沿いの様子13) 浜橋・久松橋・小川橋・高砂橋・栄橋・千鳥橋・汐 (中央に見える橋は,甘酒横丁の通りに架かる蛎浜橋) 見橋・緑橋・鞍掛橋・竹森橋が架かる. 39 4.「まちニハ」のフィールドサーベイ b)「まちニハ」の型 上記のフィールドサーベイに加えて,研究会メンバー による独自調査を実施し,研究対象エリアの「まちニ ハ」らしい空間を抽出し,写真記録した.その結果を整 理すると,以下に示す 7 つの「まちニハ」の型に分類す ることができた. (1)フィールドサーベイの概要 基礎調査を踏まえ,対象地における「まちニハ」のフ ィールドサーベイを行った.概要を以下に示す. 表-3 フィールドサーベイ概要 日時 7月10日 7月19日 10月30日 概要 【参加】研究メンバー 【目的】・基礎調査により明らかになった橋 跡,吉原跡,裏河岸跡,緑道の確認 【参加】研究メンバー,学識者 【目的】・基礎調査により明らかになった橋 跡,吉原跡,裏河岸跡,緑道の確認 ・対象地内の「まちニハ」の型,分 の確認 【参加】研究メンバー 【目的】・対象地内の「まちニハ」の型,分布 の確認 表-5 「まちニハ」の型 NO マップ での表示 型 写真 公園型 1 緑 公園内に形成されているもの 境内型 2 赤 神社周辺の空間に形成されているもの 公開空地型 3 再開発により創出された空間に形成されているもの オレンジ 緑道型 4 黄緑 緑道内に形成されているもの 街路型 (2)フィールドサーベイの結果 フィールドサーベイの結果は以下に示すとおりである. a)土地の履歴の確認 フィールドサーベイでは,基礎調査により明らかにな った橋跡,旧吉原跡,河岸跡等があった場所について, 現状の確認を行った. 表-4 土地の履歴の確認状況 場所 蛎浜橋跡 小川橋跡 旧吉原跡 小川橋よ り上流 水色 一般の街路空間に形成されているもの 路地型 6 青 狭小道路と建築の間に形成されているもの 店先型 7 ピンク 店舗と街路の間の空間に形成されているもの c)「まちニハ」のスケールと公共性 「まちニハ」のスケールと公共性の観点で,「まちニ ハ」型は下図のように整理できる. · 面的まちニハ:公園型,公開空地型 · 線的まちニハ:街路型,緑道型,路地型 · 点的まちニハ:神社境内型,軒先型,店先型 街路型 大 緑道型 スケール 裏河岸 竃河岸 現況 浜町緑道と甘酒横丁の交差点に位置する.微地形の 起伏から,橋の名残が感じられる. 現在の久松町交差点に位置する.明治19年に浜町河岸 で殉職した小川警部補の碑が残る. 江戸時代初期に吉原ができた場所で,明暦大火後に 浅草周辺に移設され,旧吉原と言われた.現在も産 土神である末広神社が近くに残る. 町人地と武家地を分かつ水路であった.現在,水路 は埋め立てられ,水跡両側にあった道路空間にも建 物が立ち並ぶ. 江戸期には西緑河岸,東緑河岸であり,明治期以降 には,水路沿いに建物表記あり.現在,下流側の浜 町緑道に対して,幅員の小さい道路が残るのみ. 5 小 公開空地型 店先型 路地型 私 公園型 神社境内型 公共性 公 図-15 「まちニハ」のスケールと公共性 d)「まちニハ」の性質 その他,確認できた「まちニハ」の性質を示す. · 「まちニハ」の中にさらに小さな「まちニハ」がある というように,「まちニハ」は入れ子状である. · 社寺の敷石や塀に真・行・草という形式が見られる14) ように,「まちニハ」にも格が存在する.例えば,緑 には生態象徴性-生物多様性があり,水には遣水(親 水緑道・公園)-小水路-中小河川-大河川,道には 露地-路地-緑道-街区道路-幹線道路がある. · まちなかに点在する様々な型の「まちニハ」は,ネッ トワークすることにより,まちに奥行きが生まれる. 図-14 浜町緑道周辺の整理図 40 5.「まちニハ」のスタディ b)「まちニハ」カルテの作成 a)項で整理した基本条件と成立条件を元に,浜町・人 形町界隈の「まちニハ」を評価するため,図-16 に示す 「まちニハ」カルテ(案)を作成した. (1)浜町・人形町界隈の「まちニハ」の現状評価 a)「まちニハ」評価の指標整理 「まちニハ」空間を評価するために,下表に示すとお り,スケール,所有形態,緑や水の所有,利用や維持管 理の主体を「まちニハ」の物理的な基本要件を示す指標 として整理し,3 章で整理した「まちニハ」の成立条件 を「まちニハ」の質を評価する指標とした. 表-3 「まちニハ」の評価指標 まちニハ基本条件 まちニハ成立条件 物理的な空間評価として 共通に整理できる事項 評価者の記述のみでしか 表現できない事項 条件 スケール 内容 小 ⇔ 大 所有 公・私 緑 公の緑の割合 私の緑の割合 水 公の水の割合 私の水の割合 利用の主体 維持管理の主体 条件 1.居心地のよい縁からの眺め 視点場、私対象の関係の成立 2.半閉鎖自由空間 視点場の充実(身体性) 3.山水の気配 緑の量、質 地域住民 オフィスワーカー 来訪者 4.場の表情 地域住民 ビル管理者 公共 5.賑わい、社交性 季節性、歴史性 6.回遊による読み取り c)「まちニハ」マップの作成 浜町・人形町界隈「まちニハ」マップを作成した. 図-16 「まちニハ」カルテ(案) 図-17 作成した「まちニハ」マップ 41 (2)「まちニハ」スタディの成果 「まちニハ」マップの作成により,「まちニハ」型ご との分布特性を明らかにした.その成果を表-6 に示す. 大スケールの「まちニハ」は,隅田川沿いや再開発さ れた区画に多く分布し,一方,スケールが小さく「ま ち」の奥とも言える場所にある「まちニハ」は,浜町緑 道を隔て,両側に広く分布している.浜町緑道は,浜 町・人形町界隈において,浜町南北方向のネットワーク の一つとして,重要な役割を担っていると考えられる. 緑道内のせせらぎは稼働停止中 桜の季節の様子 (夜は,花見が開催される) 表-6 「まちニハ」の分布の特徴 まちニハの型 01:公園型 まちニハ 02:境内型 まちニハ 03:公開空地 型まちニハ 04:緑道型 まちニハ 05:街路型 まちニハ 06:路地型 まちニハ 07:店先型 まちニハ 分布の特徴 数は多くないが,スケールが大きいものが多 く,対象地の周縁に分布している. スケールは小さく,対象範囲全体にまんべん なく多数分布している. スケールは大小様々であり,分布には規則性 がみられない. 主に,浜町緑道と浜町公園前の緑道を指す. 浜町緑道が対象地を分断するかたちとなって いる. 主に,甘酒横丁と新大橋通りを指す.対象地 を分断し,浜町緑道と交差する. スケールは小さく,浜町緑道と人形町通りに 挟まれた地域に集中して分布している. スケールは小さく,人形町通り,甘酒横丁沿 いに集中している. 緑道脇の駐停車の様子 甘酒横丁と緑道の交差部 (緑道の動線は分断される) 図-18 浜町緑道の現状 (2)「まちニハ」の提案・実現化の課題整理 「まちニハ」の創出に向けて,人の居れる場づくり (歩行者優先の道づくり,みんなに優しい公園づく り)が必要である. ここでは,前節の課題に対応して,浜町緑道のポテ ンシャルを活かして,図-19 に示すとおり,「まちニ ハ」空間を創出する提案を行った.また,実現化に向 けた視点を図-20 に整理した. 6.「まちニハ」実現化の課題整理 浜町公園との連携 (1)浜町緑道の現状と課題 浜町・人形町界隈において,「まちニハ」のネットワ ークにおいて重要になる浜町緑道を対象に,「まちニ ハ」創出における現状と課題を整理した.結果を,表-7 に示す. 歩道に面した緑地の連続性 甘酒横丁+浜町緑道 交差点スペースを 生かす コミュニティ道路化 (車のスピード制限) 歩道部と緑道の一体化 一体化 表-7 「まちニハ」の成立条件から見た浜町緑道の現状と課題 歩行者優先 成立条件 課題 モノの形というより, 場の表情 ○ 浜町川の名残(線形,道路構造,橋梁位置(現在は道路) はあるが,明示的ではない. ○ 様々な植栽による季節感の演出(キンモクセイ等) 人の気配,賑わい (社交性) × 保育所の散歩コースであり,親子連れの散歩や休憩, 朝や昼の食事などにも利用されるが,利用される時間は 限定的で,平時は,周辺に比べて人通りが少なく,賑わ いは感じられない. (特に,夜間は暗がりが多く,人の気配は少ない.) ○ 桜まつりの時期には,夜間に花見客で賑わいを見せる. 山水の気配 ○ 地域の中でも樹種,緑量は豊富 × 緑化の質は低い.往時の水の気配は感じられない 半閉鎖自由空間 ○ 中高木や四阿が,半閉鎖的な空間を創出 × 横断防止柵で横断方向の移動に制約。 (主要道からのアクセスに限定) 居心地の良い縁 からの眺め (身体感覚と軒先景) ○ 緑道の中にベンチや四阿があり,居れる空間はある. × 眺める対象としての山水,人の気配の質が不足. 回遊による読み取り ○ 地下鉄3路線3駅を利用可能でグリッド状の街区パターン であるため,個々の目的地へ様々なアクセスルートがあ る。(回遊しやすい) × 緑道でアクセスが制限され,地域の回遊性が低減する. 公私のあいまい性 ○ 枝張りのある高木が空間をつなぐ役割を担っている. × 公-私の領域,公-公の領域が明確に仕切られている. (領域のあいまいな場所が存在しない.) ぬけ道をつくる 図-19 「まちニハ」創出方法の一提案 運営・維持管理の仕組み 公(道路)-私(民地)の境界 公(道路)-公(緑道)の境界 利用形態の再配分 水の引き込み 図-20 「まちニハ」実現化の視点 42 とするとともに,実現化に向けて一般化した方策を検討 し,「まちニハ」実現化のノウハウ集としてとりまとめ ていく必要がある. (3)「まちニハ」実現化に向けた課題整理 「まちニハ」空間創出の実現化に向けた課題として, 以下のものが挙げられる. 表-8 「まちニハ」実現化の手法(課題) 視点 公‐公の境界 の改善 公‐私の境界 の改善 利用形態の再 配分 水の引き込み 運営・維持管 理の仕組みづ くり 手法(課題) · 浜町緑道の交差点部の連続性確保 · 緑道に交差する動線の確保 謝辞:本研究は,中村良夫先生(東京工業大学名誉教 授)との定期的な研究会の場で議論を継続することによ り,「まちニハ」概念の深化を重ねることができた. ここに,共同研究者としてご指導いただいた中村良夫先 生に心からお礼申し上げる. · 民地の歩道に面した緑地の連続性確保 · 民地前面の公共的利用(人が溜まれる 設え,見られる設えづくり) · 車道,歩道,緑道の再配分 (車道幅員の減少) · コミュニティ道路化 · 浜町川を偲ぶせせらぎの創出 · 水源確保 · 地域住民(自治会等)が管理する仕組 み(ex. まちかど花壇など) · 地元企業の参画できる仕組み 参考文献 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 7.今後のすすめ方 8) 今年度は,「まちニハ」の概念を整理した上で,浜 町・人形町界隈の「まちニハ」の状況を整理してきた. これらの成果は,この界隈を活動圏とする筆者らが,大 人の視点で抽出してきたものである.一方で,この界隈 を生活圏とする居住者や生業を営む商業者,小学校・中 学校に通う子どもたちが,どのような場所でコミュニテ ィを形成しているかを把握し,「まちニハ」の成立する 場を検証するために,多様な視点で評価していく必要が あると考える. また,まちニハ空間創出の提案をより具体性あるもの 9) 10) 11) 12) 13) 14) 岡村幸二ら:生態・社会複合文化系の再構築に関する研 究,国土文化研究所基礎研究,2012 中村良夫:都市をつくる風景‐「場所」と「身体」をつ なぐもの,藤原書店,2010 2)と同じ 白川静:字通,平凡社,1996 オギュスタン・ベルク,『風土の日本』,ちくま学芸文 庫,1992 デジタル大辞泉 DVD-ROM版 江戸明治東京重ね地図‐江戸東京検索データ・ ブック【増補改訂版】,2004 中央区教育委員会:中央区沿革図集: 日本橋篇,東京都 中央区京橋図書館, 1995 7)と同じ 地図資料編纂会編:5千分の1 江戸-東京市街地図集成 第 1期,柏書房,1988 地図資料編纂会編:5千分の1 江戸-東京市街地図集成 第 2期,柏書房,1990 中央区町会・自治会ネットHP, http://genki365.net/gnkc08/pub/sheet.php?id=280 9)と同じ 山田圭二郎:間と景観,技報堂出版,2008 A FUNDAMENTAL STUDY ON THE METHOD OF CREATING “MACHI-NIWA” - FOCUSED ON NIHONBASHI-HAMACHO AND NINGYOCHO Yoshinori Iida1), Mizuba Makiko2), Katsumi Uno3), Nobukazu Koreeda4), Yoshio Nakamura5) In reference to the concept “Machi-niwa”, which was proposed in previous study “A study on Socio-Ecological Cultural Complex in urban Milieu (2010~12)”, the objectives of this study are following three topics: 1. To recapture the state of being of the space in and around “Hamacho-gawa pedestrian path”. 2. To discuss the propositions and methodologies aimed at realization of thus concept. 3. To look into the feasibility of “Machi-niwa” in denselypopulated urban areas. In the year of 2013, we began with clarifying of the concept, conditions and evaluation axis. On that basis, evaluation of the current condition of “Hamacho-gawa pedestrian path” and its neighborhood was conducted. Moreover, we provided the case study which applied thus concept “Machi-niwa”, and the issues for crystallization of it. Key words: Machiniwa, field, body, eco-symbolism, field survey, public-private ambiguity 43 地中構造物周辺空洞化に伴う リスク定量評価手法の研究 (一連堤防としての安全性照査手法の事例検討) 蛯原 雅之1 1技術士(総監・建設) 博(工) 株式会社建設技術研究所 東京本社水システム部下水道室 (〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1) E-mail: ebihara@ctie.co.jp 河川堤防の質的整備の一環として浸透に対する安全性照査が行われているが,その対象は土堤の堤防一 般部に限られ,樋門設置部等の特殊部は対象外となっている.また,数百m~数kmの細分区間毎に代表断 面を設定して照査し,その結果を細分区間の縦断方向全体に適用して補強対策等を行っているため,対策 区間が必ずしも必要十分とは限らず,対策範囲設定の精度向上やコスト縮減の余地がある. 本稿は,昨年度報告した『地中構造物周辺空洞化に伴うリスク定量評価手法の研究』に関する事例検討 であり、開発した解析ツールおよび考案した堤防安全性照査手法を用いて,A川左岸をフィールドとする 事例検討を行い,実務への適用性について検証を行ったものである. Key Words : continuous levee, sluice pipe, cavity, numerical simulation, risk assessment 1. 概要 このような「量的議論と質的議論の乖離・アンバ ランス」,「一連堤防としての安全性照査の必要 河川堤防の詳細点検や設計では,図-1,図-2 に示 すように土堤の堤防一般部を対象に,数百 m~数 km の一連区間(細分区間)毎に代表断面を設定し,有 限要素法断面二次元浸透流解析や円弧すべり計算等 による「浸透に対する質的安全性照査」1) が『堤防 の質的評価』として行われている. 一方,河川改修の優先区間の議論等では,『河道 の量的評価』として,図-3 に示すように細かい縦断 性」等の問題提起と対応方法の提案・検証を目的と して,以下の事例検討を行った. ①定期横断測量(またはLP(レーザプロファイラ)デー タ)と土質想定縦断図を活用する縦断分析手法 の考案と縦断分析ツールの開発,および[堤防 一般部]を対象とする堤防安全性の縦断分布評 価(2 章) ピッチ(例えば 0.2km 毎の横断面)で流下能力等を ②LPデータと土質想定縦断図を活用し,樋管や 評価するものの,質的な安全性の縦断分布はそこま 樋管周辺空洞化の影響を考慮する縦横断(三次 で細かくは考慮していない.また,既存の代表断面 元)解析ツールの開発,および樋管部等の[特 モデルは河川縦断における位置付けが一定ではない 殊部]を対象とする樋管周辺取付部堤防の質的 ため,安全性分布や弱点部の検討に適さない場合が 安全性照査(3 章) ある. さらに,樋管部や弱堤部等は質的安全性照査の対 象外であり,樋管等の周辺堤防は外観・函内観察や 連通試験等による変状調査・補修により,対症療法 的な管理がされている 2)3) . 44 ③堤防安全性縦断分析に関して,対象区間を一級 河川の全区間に拡大した場合のフィールド適用 性検討(A川,左岸側約 70km)(4 章) 代表断面の選定例 ・河川改修等の議論では、流下能力等を、 細かい縦断ピッチ(例えば0.2km毎)で評価 流下能力(m3/s) 下流側 各断面の特性 整備計画目標流量 距離標(km) 図-3 流下能力の縦断分布評価例 2. 質的な安全性縦断分布評価手法の事例検討4) 細分区間 質的安全性の縦断分布評価を行うため,『縦断分 ←代表断面 析の観点で質的安全性を評価する横断簡略化モデ ル』を考案し,『安全率を満たす限界河川水位(以 上流側 下,質的な許容外水位)の縦断分析』を行った. 図-1 堤防照査代表断面の設定例 (1) 横断簡略化モデルの考案および実用性検証 課 題 ・樋門設置部等の特殊部は照査対象外 ・樋門等隣接の弱堤部も照査対象外 ・細分区間を、最も弱い(旧河道・平均動水勾配・ 被災履歴etc)断面等で照査して、全体を要対策 代表断面で照査 柱状図 DB 等から作成した「土質想定縦断図(天 端川表沿い・裏のり尻沿い)」を定期横断測量デー タに重ねた簡略化モデル(図-4)を用いて浸透流解 析を行い,既往堤防詳細点検時の代表断面(10 断 本当の最弱部は こちらでは? 面)における解析結果と比較した. ここでは,物性設定による解析結果への影響を把 旧河道部の可能性があり、川筋 も近く、堤防断面が薄い樋管隣 接弱堤部は照査対象外 握するために感度分析を行った.透水係数等は表-1, 照査結果を、一連の細分区間に フィードバック ⇒要対策区間等 図-5 に示す 5 パターンで設定し,結果の比較は図-6 に示す「裏のりすべり安全率」「局所動水勾配」 図-2 代表断面照査の課題 「G/W(被覆土重/揚圧力)」について行った. 既 往 資 料 地質想定縦断図 定期横断測量データ (又はレーザプロファイラデータ) より断面形状を確認 断面位置の土質区分・層厚を確認 断面形状を設定 土質想定縦断図より粘性土・砂質土・礫質土の区分・層厚を設定 裏のり尻 川表のり肩 堤体 左岸 9.025km 断面 左岸 9.025km 断面 止水対策 止水工はのり肩で考慮 基礎地盤第一透水層 水平設定 水平設定 深部不透水層 粘性土層は土質想定縦断図 の作成段階で省略 既存資料のみで作成する横断簡略化モデル 堤防詳細点検で作成されたモデルの例 図-4 横断簡略化モデルの設定仕様 45 厳密 パターン a 簡略 パターン 堤体 全 て 試 験 値 c パターン 試 験 値 一 般 値 e 全 て 一 般 値 表-1 浸透流解析の物性値設定パターン パターンa 堤体・基礎地盤の全層が代表断面と同等の試験値等 パターンb 深部不透水層のみ一般値を適用 パターンc 深部は一般値で,基礎地盤第一透水層まで試験値等 パターンd 基礎地盤全層を一般値とし,堤体のみ試験値等 パターンe 堤体・基礎地盤の全層を一般値 ※透水係数一般値は,砂質土層を 1E-5(m/s),粘性土層を 1E-7(m/s)と設定 簡略化モデル解析結果 G/W (被覆土重量/揚圧力) (全パターン) (感度解析:有限要素法 簡略化モデル) 図-5 各パターンの概要(パターン a,b,c の例) 4.00 3.50 3.00 2.50 2.00 一致ライン(照査基準>1.0) 全層が既往設定値 深部不透水層のみ一般値 第一透水層まで既往設定値 堤体のみ既往設定値 全層が一般値 a b c d 安全性を e 過大評価 ↓ 1.50 既存解析で 安全率>2 1.00 0.50 0.00 既存解析よ り厳しい 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 代表断面の既存解析結果 G/W (被覆土重量/揚圧力) ここで,パターン a は全層に対して既往点検時と同 (既往解析:有限要素法 詳細モデル) G/W(被覆土重/揚圧力)(全パターン) 図-7 既存解析と簡略化モデルの比較(G/W) 等の試験値等を与えることから最も厳密であり,一 方,パターン e は全層に一般値を与える最も簡略な設 浸透破壊指標(局所動水勾配,G/W)は特に裏 定である. 簡略化モデル解析結果 裏のりすべり安全率 (パターンc) (感度解析:有限要素法 簡略化モデル) のり尻付近の水頭分布に依存し,法すべりの安全率 は堤体および基礎地盤浅部の地盤特性や浸潤状況に 4.00 3.50 依存することから,基礎地盤第一透水層まで試験値 3.00 2.50 等を考慮する「パターン c」により「パターン a,b」と同様 安全性を 過大評価 ↓ 2.00 1.50 1.00 の照査結果が得られた(図-7). 既存解析で 安全率>2 また,既存解析と比較した結果,「裏のりすべり 既存解析よ り厳しい 0.50 0.00 安全率」「局所動水勾配」「G/W」のいずれも, 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 裏のりすべり安全率 代表断面の既存解析結果 (既往解析:有限要素法 詳細モデル) 第一透水層まで既往設定値 照査基準付近の安全性過大評価は 10 断面中 1 断面 と限定的であった(図-6). 簡略化モデル解析結果 局所動水勾配 (パターンc) (感度解析:有限要素法 簡略化モデル) 裏のりすべり安全率(パターンc) 0.80 0.70 0.60 以上より,基礎地盤第一透水層まで試験値等を考 既存解析よ り厳しい 慮すれば,『横断簡略化モデル』が縦断分析におい 0.50 0.40 0.30 既存解析で 安全率>2 0.20 て実用性を有すると判断した. 安全性を 過大評価 ↓ (2) 縦断分析で考慮する外力および指標 0.10 0.00 質的許容外水位を算出するにあたり,降雨による 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 簡略化モデル解析結果 G/W (被覆土重量/揚圧力) (パターンc) (感度解析:有限要素法 簡略化モデル) 局所動水勾配 代表断面の既存解析結果 (既往解析:有限要素法 詳細モデル) 第一透水層まで既往設定値 4.00 影響と河川水位による影響とは区別する必要がある. 局所動水勾配(パターンc) そこで代表断面に対して,表-2 の感度分析を行い, 3.50 本対象区間における以下の傾向を確認した. 3.00 2.50 2.00 1.50 安全性を 過大評価 ↓ 1.00 0.50 0.00 ・裏のりすべり安全率は,「堤体が粘性土で基礎 既存解析で 安全率>2 地盤が砂質土」の場合に河川水位の影響を受け るが,安全率は十分に安全となる.(図-9) 既存解析よ り厳しい ・局所動水勾配は,「堤体が砂質土」では降雨に, 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 G/W (被覆土重量/揚圧力) 代表断面の既存解析結果 (既往解析:有限要素法 詳細モデル) 第一透水層まで既往設定値 「堤体が粘性土で基礎地盤が砂質土」では河川 水位に影響される.また,G/Wは河川水位に G/W(被覆土重/揚圧力)(パターンc) 影響される.(図-10) 図-6 既存解析と簡略化モデル(パターン c)の比較 46 1) に準拠 この縦断分析により,代表断面がNGの細分区間 する洪水時河川水位波形」を外力,「局所動水勾 全体を要対策範囲とする一般的な方法に対し,対策 配」と「G/W」を指標とし,河川水位の影響を受 範囲の絞り込み(コスト縮減)や適正な対策実施範 けると想定される土質構成【堤体が粘性土で基礎地 囲の設定等で寄与できると考えられる. 以上より,「河川堤防構造検討の手引き 盤表層が砂質土層,または基礎地盤が表層から順に 表-2 外力条件等による感度分析の概要 粘性土層・砂質土層】の区間を分析の対象とした. (3) 考案モデルによる縦断分析 簡略化モデルとはいえ,有限要素法の断面メッシ ュモデルを多数構築する作業負荷は大きい.そこで, 「横断測量データ」「土層区分・層厚」「河川水位 波形」の数値入力のみで,自動的に格子モデルを生 成するサブルーチンを整備した上で計算を行った. 降雨量 (mm) 分析結果(図-11)から以下の新たな知見を得た. ・既存の照査結果に加えて,縦断分析より 9.4km 河川水位 (m) と 17.2km の付近も要注意と示唆された. (4) まとめ 経過時間(hr) 縦断分布評価により,代表断面照査で把握仕切れ 図-8 外力条件: 降雨と河川水位波形の組合せ例 2) 基準値 外力なし(平常時) Bs/Ac 4.00 河川水位波形 Bs/As 降雨による 降雨波形 河川水位波形+降雨波形 Bc/Ac 降雨による Bc/As 河川水位によるが 影響小・安全 2.00 (Bs/Ac は、堤体:砂質土/基礎地盤浅部:粘性土) 13 .50 (現況) 11 .75 (現況) 1 6.7 25(止水低下) 16.725 (現況) 12.93(止水低下) 12 .93 (現況) 22.60(止水低下) 22 .60 (現況) 19.80(止水低下) 19 .80 (現況) 18 .96 (現況) 21.00(止水低下) 21 .00 (現況) 10.65(止水低下) 10 .65 (現況) 9.2 05(止水低下) 0.00 9.205 (現況) 裏のりすべり安全率 ない弱点部の抽出が可能となる. 断面 外力な し(平常時) 河川水位波形 降雨波形 河川水位波形+降雨波形 Bs/Ac Bs/As 降雨による Bc/As 河川水位による 0.5 河川水位波形 2.0 G/W Bs/Ac 河川水位波形+降雨波形 Bc/Ac Bs Bc/Ac /As Bc/As 1.0 22.60(現況) 断面 図-10 感度分析の結果(左:局所動水勾配,右:G/W) 18 縦断分析でNG区間評価 ⇔ Y.P.m 16 14 天端高(Y.P.m) HWL(Y.P.m) 許容外水位(本検討) 既存代表断面の照査結果 ↑ ↑ 縦断分析で 既往の代表断面 照査でNG 新たな懸念箇所発見 12 10 ↑ 8 縦断分析で新たな懸念箇所発見 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 図-11 浸透破壊に対する質的許容外水位の縦断分布 47 22 22.60(止水低下) 21.00(止水低下) 19.80(止水低下) 19.80(現況) 18.96(現況) 13.50(現況) 10.65(止水低下) 10.65(現況) 9.205(止水低下) 9.205(現況) 16 .7 25 (止水低下) 1 6.7 25 (現況) 11 .75 (現況) 2 1.00 (止水低下) 21 .00 (現況) 1 0.65 (止水低下) 9 .2 05 (止水低下) 断面 0.0 12.93(止水低下) 河川水位による 0.0 12.93(現況) 1.0 質 標高(Y.P.m) 的許容外水位 局所動水勾配 図-9 感度分析の結果(裏のりすべり) km 23 距離 24 3. 樋管部等の質的安全性照査手法の事例検討5) 一連堤防としての安全性照査を行うには,一連の 堤防一般部だけではなく,樋管設置部や近傍の弱堤 川表側 部を含めた評価を行う必要がある.また,樋管設置 川裏側 設置年 :昭和 12 年 主な応急対策工事:門柱付け替え(S60) グラウト対策(S62,H11) 函体構造:0.6m(管径)×1 連×18.0m(長) 基礎形式:函体 木杭 4.0m 門柱 支持杭 17.0m 図-12 対象樋管の外観・諸元 部に関しては樋管周辺空洞化や遮水工の劣化の影響 にも配慮した照査が望ましい. そこで,空洞化履歴のある樋管を対象に事例検討 を行った. 150m (1) 対象樋管および隣接堤防の概要 検討対象は,設置後 70 年以上が経過した小規模 排水樋管である(図-12).過去に門柱を付け替え た際に門柱部分を支持杭基礎とし,門柱下部に長さ 3m の止水矢板を設置した経緯があり,空洞化対策と して 2 度のグラウト充填を行っている. また,当樋管取付部の堤防は,図-14 に示すよう に,上下流の堤防一般部と比べて堤体や高水敷が薄 図-13 断面形状の抽出位置 標高(Y.P.m) く,一連堤防としての弱点となる可能性がある. 15 14 13 12 11 10 9 8 7 川裏側 堤内地盤 川表側 周辺堤防一般部 取付護岸端部 樋管直近 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 横断座標(m) 図-14 樋管周辺堤防の断面変化(LP データより作成) (2) 解析ツールの概要(付記参照) 開発ツールにおけるモデル化作業の具体的な流れ, 開発・適用した解析ツールの概要を図-15 に示す. および解析条件等の入出力の流れを図-16,17 に示す. 樋管周辺空洞の有無による浸透流動や圧力伝播へ の影響を適切に考慮するため,土中の水の流れには ダルシー式を適用する一方,空洞内には開水路運動 方程式の拡散波近似モデルを圧力単位式として導入 し,従来の浸透流解析の機能を拡張している . (3) モデル化の手順・仕様 現地の堤体形状や地盤高の縦横断分布はLPデー タを用い,土質構成(堤体:粘性土,基礎地盤浅部: ・有限要素法に比べて計算負荷が小さく,縦横断 (三次元)解析でも比較的計算所要時間が短い. ・要素メッシュ分割の必要が無く,入力データをテ キストエディタ,エクセル等で簡便に作成できる. ・遮水矢板を格子間の透水性で設定できる等,対策 工の配置変更に伴う要素メッシュ再設定等の計算 ケース毎のモデル修正が不要化・簡便化される. ・出力はエクセル,MicroAVS 等の汎用ツール対応. 砂質土,深部:粘性土)と層厚は周辺の既存柱状図 から設定した.また,計算格子(グリッド)モデル の離散化は,以下の格子幅を目安に差分展開してい る. 計算格子(グリッド)幅の設定概要 鉛直:堤体付近 50cm・深部 40cm~2m・樋管下部 1~3cm 横断:堤体付近 50cm・堤内地 1~5m・堤外側 1.5~5m 縦断:樋管付近 50cm~3m・堤防一般部 4~10m 図-15 解析ツールの概要図および特徴 48 堤防の薄い 弱堤部 レーザープロファイラデータ等 から地表面高をピックアップ テキストデータで、 横断座標Xと高さYを入力 樋門隣接区間(数十m)では 縦断線形は直線とみなす 解析モデルの 自動設定 出力 近隣の柱状図等を参考に土質構成を想定し、 対象区間内では、縦断方向に水平と見なす ・浸透破壊指標 「局所動水勾配」 の縦断分布 テキストデータで、 土層境界高、 物性値等を入力 ・円弧すべり解析 の浸潤面データ 図-16 開発ツールにおけるモデル化作業の流れ 従来の断面二次元 程度の手間による 三次元モデル化 水頭 a~f (m) 9 8 7 6 モデル 自動作成 0 360 720 1080 裏のり尻の局所動水勾配 3 1440 時間(分) d21o 22n 22c 22o 22樋門なし 22o(川表連通) 2.5 2 局所動水勾配 堤体諸元等 ・堤防幅、天端幅、堤体高 ・透水性(堤体、基礎地盤) ・浸透能(表面被覆) 樋門諸元等 ・函体高さ、幅、長さ ・遮水工有無、位置 a b c d e f 10 1.5 計算実行 出力 22c(中央のみ) 1 22樋門なし 局所動水勾配基準値=0.5 0.5 22n(空洞無し) 0 0 外力条件等 ・河川水位、降雨等 空洞等想定条件 ・空洞分布、連通状況 出力位置 ・水圧(水位)出力箇所 手入力(エディタ・エクセル) 60 120 180 240 300 360 420 時間(分) 480 540 600 660 720 ・指定箇所の洪水時水圧変動グラフ ・裏のり局所動水勾配グラフ etc 入出力条件 ・局所動水勾配分布図 ・飽和度分布、浸潤線図 etc ※MicroAVSに対応 ツール内部処理 分析等に活用 図-17 開発ツールにおける解析条件等の入出力の流れ 洪水時の解析を行う際,透水係数の設定や空洞・ 【再現設定概要(下線:連通・空洞評価部分)】 連通状況を適切に考慮する必要がある.そこで,樋 ・透水係数 堤体:1.0e-5cm/secで固定 (近隣11.75km地点資料より粘性土層を想定) 基礎地盤:2.5e-3cm/secに設定 (砂質土、1.0~5.0e-3cm/secで試行計算) ・空洞 空洞高:1cmに設定 (グラウト実績有り、1~5cmで試行計算) 空洞幅:門柱部の函体横断方向3mの範囲に設定 (0.2~5mで試行計算) ・止水矢板 打設深さ:2mと想定 打設幅:門柱部の函体横断方向4mの範囲と想定 遮水性:厚さ1cmに対しk=2.0e-3cm/sec相当に設定 (k=1.0e-7~1.0e-2cm/secで試行計算) ・既設グラウト・・・考慮外 管部における既存の水位計測データ(連通試験デー タを活用)の再現計算を行い,物性条件等の設定調 整(モデル同定)を行った上で予測解析を行った. 参照した連通試験データの概要を図-18 に,再現 計算値と実測値の比較を図-19 に示す. ここで,下部空洞の無かったNo.3孔からの注水が 実質的に基礎地盤の浸透実験と考えられたことから, この注入量の再現を最優先として基礎地盤の透水性 を調整した. モデル設定条件の調整結果を右に示す. 49 (過去の連通試験時のデータを利用) No.2 No.3 No.1 注入量 11.2㍑/分 注入量 1.1㍑/分 観測水位 (m) 観測側の水位上昇量 (m) 注入量12.3㍑/分 観測水位 反応無し 注入側の水位上昇量 (m) (約 0.7mに固定) 測定時間 (時) No.1⇔No.2 間は 約0.25~0.4m上昇 図-18 モデル同定に用いた連通試験データの概要 No3 注入量 No2 注入量 No3 注入量 実測:1.1㍑/分 実測:12.3㍑/分 実測:11.2㍑/分 計算:1.1㍑/分 計算:10.2㍑/分 計算: 7.3㍑/分 実測:上昇無し 実測:約0.4m上昇 実測:約0.25m上昇 計算:上昇無し 計算:約0.5m上昇 計算:約0.54m上昇 影響しない状況である.当樋管の止水矢板は,土粒子の 移動・流失等を直接的に防ぐ位置付けと分かる. また,縦横断モデルとしたことにより,堤防の薄い樋 管付近に加えて,樋管から下流に 40m の付近も,局所的 な窪地による相対的弱点部と推定された. いずれも照査基準(<0.5)は満たすが,最大で基準値 の 8 割まで上昇するため,『空洞・連通に伴う水頭伝播 状況の変化を察知するための水圧継続モニタリング』等 の安全管理が有用と考えられる. (4) 洪水時の予測解析 樋管下部の空洞・連通による[裏のり尻の浸透破壊指 標に対する影響に着眼し,以下の 4 ケースを想定して洪 水時の予測解析を行った. 予測解析ケース ケース1:現況(門柱付近で空洞・連通,連通試験時) ケース2:空洞化無し・止水機能維持(樋管設置時点) ケース3:空洞拡大時(天端下部まで空洞・連通拡大) ケース4:空洞拡大時(裏のり尻付近まで拡大) 裏のり尻の鉛直方向局所動水勾配の縦断分布をみると (図-20),空洞が川表から裏のり尻付近まで堤体幅全 体に拡大するケース4では,ケース1(現況)やケース 2(樋管設置時点)より樋管位置の局所動水勾配が上昇 する.一方,空洞が川表から天端下部までのケース3で はほとんど変化しない.これは,高透水性基礎地盤のた め川表からの浸透流動や伝播圧力が河川縦断方向に消散 し,空洞や止水矢板の有無が裏のり尻の局所動水勾配に 局所動水勾配(鉛直) 図-19 再現計算値と実測値の比較 ケース1:現況 ケース3:空洞拡大時(天端下部まで) 0.5 下流側 ケース2:空洞化無し・止水機能維持 ケース4:空洞拡大時(裏のり尻付近まで) 樋管位置 上流側 0.4 0.3 堤内に窪地あり ↓ 0.2 安全基準:0.5未満 0.1 0.0 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 縦断距離(m) 図-20 局所動水勾配(鉛直)の縦断分布 (5) まとめ 従来,概ね 5 年毎の詳細点検で空洞化を確認してグラ ウト充填等を行っているが,実際には空洞化と充填を繰 り返している樋管が多数存在する. 空洞は破堤要因になり得ることから,樋管部のような 特殊部も質的評価の対象とし,既往最大空洞履歴等を考 慮した洪水時の安全性照査を行うことは,一連堤防とし ての安全管理に資すると考えられる. 50 4. 河川全区間を対象とした場合の適用性検討 50 10 10 0 0 1 2 G/W 0 0 0.5 1 51 局所動水勾配 以上は,横断簡略化モデルを用いた傾向分析であるが, 地質想定縦断図の精度向上や,既往対策工等の適切な考 慮により,従来の概略点検と詳細点検の中間的な活用を 期待できる場合もあると考えられる. 図-22 A川左岸におけるG/W 縦断分析の結果 40 20 30 左岸(km) G/W(被覆土重/揚圧力) 図-21 A川左岸における局所動水勾配 縦断分析の結果 20 局所動水勾配(水平) 局所動水勾配(鉛直) 30 左岸(km) 40 局所動水勾配(水平)・参考(水路有) (2) 結果概要 局所動水勾配が基準値を超えてNGとなるのは,0.8 ~2.8k,7.2~14.8k,58.4~60.4k の各区間と 30.4k,40k と なったが,これらの多くは裏のり尻に水路・擁壁・土留 め等が設置されている箇所であり,それらを除くと 7.2k,40.0k,60.2k のみと懸念箇所は限定的となる.ここ で,横断簡略化モデルは裏のり尻の形状は反映しても構 造・材料は考慮出来ていない点が局所動水勾配を評価す る上で課題となった. また,既存の止水対策工は,表のり尻高から矢板打設 長を考慮した深さまで設定し,当該区間は川表遮水シー トも想定したが,現地条件と整合しない箇所もあると考 えられる. G/Wは堤内地盤で最も低い箇所で照査したため各断 面の堤内微地形の影響を大きく受け,縦断方向の連続性 に乏しく全体的に厳しめの結果となった.しかし,51k より上流はほぼ全ての断面で基準値を満たさずNGとな り,相対的に盤膨れを生じやすい区間と考えられる. よって,裏のり尻近傍だけではなく,基礎地盤内の被 圧水頭伝播による堤内地での噴出(ガマ)や,噴出を発 端とする進行性破壊(例:H24 矢部川の堤防決壊)の可 能性も含めて照査する必要があると示唆される. 50 局所動水勾配(鉛直)・参考(水路有) (1) 検討条件 検討対象はA川左岸の全区間とした.(但し,既往資 料の都合上,解析対象は 0~68k となった) 基礎地盤の縦断分布は,既往資料において試行的に作 成された地質想定縦断図を参照・活用した.横断簡略化 モデルは 200m ピッチで作成し(340 断面),各断面にお ける設定透水係数等は最も近傍で実施された地質調査結 果又は既往詳細点検時の解析条件をもとに設定した.ま た,降雨波形は計画降雨量により設定し,河川水位波形 は最も近傍の既往詳細点検断面の波形をもとに計画高水 位のみを対象断面位置の水位に変更して用いた. 60 60 前述の 2 章で示した質的縦断分析手法を,長大な一級 河川の全区間に適用する場合の適用性・課題を確認する ため,A川左岸を対象とするフィールド検討を行った. 付記:解析ツールの概要 a) 堤防縦断方向及び堤体内構造物の考慮 一連堤防の中での樋門設置部の安全性を検討する点, 及び縦断方向における堤防断面や土質分布の変化,樋 門・樋管,橋台,遮水矢板等の堤体内構造物の空間配置 等も考慮できることを考慮したモデルとした. 空洞分布は,空洞調査結果や沈下計算結果に基づく範 囲・形状設定を想定しており,また,任意の箇所で水頭, 間隙水圧・空気圧,流速ベクトル,動水勾配等の時間変 化を出力できる仕様としている. b) 樋門周辺空洞等の考慮 空洞の有無による浸透流動や圧力伝播への影響を適切 に考慮するため,土質内及び土質と空洞間の流れには式 (1)に示す一般化ダルシー流れの式を適用する一方,空 洞内には開水路運動方程式の拡散波近似モデルを式 (2) に示す圧力単位の式に変換して導入し,従来の飽和不飽 和解析の機能を一部拡張している. M p ,x ρ p K x k rp,x μp M w_DW ,x ρw Ax ∂Ψ p R 2 3WHS w n ρw g ∂x Ψw x (1) (2) ∂Ψw ∂x ここで,添え字 p は水相 w または気相 g を示し, M p ,x は流体相 p の質量流速[kg/s], ρ p は密度[kg/m3], K x は絶対浸透率[m2], μ p は粘性係数[Pa・s], k rp ,x は p 相の x 方向相対浸透率, Ax [m2]は流動断面積, n は マニング係数, R [m]は径深, H [m]は空洞高, S w は 飽和率である.また,Ψ p は圧力単位の水理ポテンシャ ル[Pa]である. これらと質量保存則により式 (3a)及び式 (3b)の支配 方程式を得て,陰的に連成(カップリング)して解く. ∑ k x , y ,z αM w,k βM w _ DW ,k ρws qws ΔV Δt ρ φS w t Δt ρ φS t 0 w w w (3a) ∑ k x , y ,z α β M g ,k ρgs q gs ΔV Δt ここで, α 及び β は以下の定義による指標, ΔV は微 小領域の体積, q ps は格子からの標準状態の流出入量, φ は間隙率である. 0 : 空洞 α 1:地盤 0 : 地盤 β 1:空洞 c) 解析精度の確保と計算負荷・モデル化負荷の低減 三次元解析を想定すると,実用上,計算負荷やモデル 化負荷を軽減することが望ましいため,有限差分法を適 用し,特に以下の点で負荷の軽減を図った. ・有限要素法に比べて計算負荷が小さく,三次元解 析においても比較的計算所要時間が短い. ・要素メッシュ分割の必要が無く,入力データをテ キストエディタ,エクセル等で簡便に作成できる. ・遮水矢板を格子間の透水性で設定できるため,矢 板配置変更等に伴う要素メッシュの再設定等の計 算ケース毎のモデル修正が不要. 謝辞: 事例検討にあたり,国土交通省関東地方整備 局下館河川事務所より既往調査資料等を閲覧・参照させ て頂きました.ここに厚く謝意を表します. 参考文献 1) 財団法人国土技術研究センター:河川堤防の構造検討 の手引き,2002. 2) 国土交通省:樋門等構造物周辺堤防点検要領,2012. 3) 中山他:連通試験法を適用した樋門周辺堤防の漏水危 険度の検討,河川技術に関する論文集,Vol.6,2000. 4) 巽他:河川堤防における一連堤防としての安全性照査 手法に関する研究(その1),土木学会年次学術講演 会,2013. 5) 蛯原他:河川堤防における一連堤防としての安全性照 査手法に関する研究(その2),土木学会年次学術講 演会,2013. RESEARCH ON QUANTITATIVE RISK ASSESSMENT OF THE CAVITY AROUND UNDERGROUND STRUCTURE Masayuki EBIHARA For the purpose of ensuring the safety of the river embankment, we have confirmed the safety to penetration by the numerical analysis. At that time, we are only interested in the embankment general section. On the other hand, we have excluded the embankment around sluice pipe. Moreover, due to only the result of the analysis to be carried out in one section of about several kilometers hundreds or meters We have evaluated the embankment all sections. Thus, the interval to implement measures to penetration is not necessarily appropriate. There is room for review measures section. In this paper, through a case study that targets the Kokaigawa left bank, we verified the usefulness of the analytical methods and development tools. 52 (3b) ρg φS g t Δt ρg φS g t 0 Stations for people – recent developments in railway station design 「人々のための駅・最新の鉄道駅デザインの開発」 木戸エバ Ewa Maria KIDO 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所 (〒103-8430 東京都中央区日本橋人形町2-15-1-6F) E-mail: kido@ctie.co.jp Travel by railways is now more popular, than it was several years ago. Since 1980s, railways and rail architecture have been experiencing “station renaissance”. Along with this trend, many new stations have been built and many historical stations have been refurbished, upgraded and developed. Stations have become more user-friendly, satisfying many needs and various additional functions. This paper examines recent evolution of railway stations in Europe and Japan, as well as the process, within which stations have become more designated for people than, like before, for trains. Design of meaningful stations can popularize railways. Beautiful stations can attract people and station development can improve the urban areas around the stations. Keywords: Railway station; station building; architecture; aesthetics; station renaissance; renewal. 1. Introduction In Europe since 1980s, after introduction of high-speed trains (HST), travel by rail has been again gaining popularity and railway stations have experienced the most notable development since the introduction of railways in 19 century. In Japan railways have had always strong popularity, although the motorization of the country and urban migrations had also influenced the travel by train. Currently, both in Europe and in Japan, stations are important urban infrastructure and their design has a big influence on transportation, on urbanscape and on people. Station design is closely related to the way people can feel about stations. Considered and meaningful stations designed for people could become important urban junctions that will shape the urban centers and neighborhoods [1]. The 2013 has been in Japan the year of renewal, particularly of cultural monuments. Such prominent buildings, as the Ise and Izumo Shrines, Kabukiza in Ginza, Tokyo Central Post Office have been rebuilt. Among several projects there was also a prominent railway station – Tokyo Station, which Yaesu side has been completed in September. In Europe, the trend of preservation has been very strong since the revival during Post-Modernism. The paper analyzes recent trends in station design in Europe and Japan in various aspects related to amenity, such as station function and form, including aesthetic. Aesthetics is important not only in visual perception of station but also in its function and relation with urban environment. The paper describes such aspects, as transportation function (accessibility, information, quality of station building, quality of station entrance, quality of station hall and concourse, quality of station platform), commercial function (shops, advertisements), and cultural function (public art). In regard to form, the paper discusses various aesthetic criteria (size and scale, proportions, form and shape, space, visual weight, light, texture, color, composition, movement and rhythm, details, image-based elements and landmarks). The conclusion is that both in Europe and Japan many factors of station design can attract people and make travel by rail popular but they are some differences in priorities. In Europe the attention is put on larger-scale elements, such as shape of buildings and overall architecture, interchanges promoting Park & Ride, distinction of functions, careful distribution of signs, inclusion of art and nature. In Japan there is also a lot of care of efficient information and smaller-scale elements, e.g. amenities (clean station facilities). Japanese stations tend also to maintain links through their design and function with local communities. The message of this paper is that new architecture and renewal should be dedicated to people who will be the users. The 53 paper stresses the need of design of “stations for people” and describes in this aspect examples of new and refurbished railway stations in Europe and Japan. 2. Revival of railways at end of XX century - “station renaissance” The trend that brought the revival of railways – “station renaissance” both in Europe and Japan has influenced the development of new generation of stations. These stations include completely new infrastructure, as well as modernized existing, and extended. “Station renaissance” brought the attention not only to the quality of stations, but also to station users. By improving buildings and introducing new functions to the stations, they have become more attractive for people in general, not only for passengers. Railway operators realized that the design and renewal of railway stations needs to satisfy not only the requirements of railways but also of passengers. Therefore beyond technological requirements and commercial answer, the stations need to be sustainable infrastructure and provide friendly environment for people. 2.1 “Station renaissance” in Europe The railways have been at the stage of recuperating their previous glory since 1980s, particularly due to the development of high-speed trains, greatly improving travel by train. Therefore the first important reason of the revival of railways was the introduction of the HST. Sophisticated trains required various modern stations, thus originating new trends in station design. “Station renaissance” promoted by railway operators to enliven railways included wide range of activities and policies related not only to new railway stations and lines, but also to station refurbishments. The aim of the rail operators was to promote a new image of railway travel, of station and of the rail operators themselves. Station development, construction of new high-speed stations and development of light rail transit (LRT) were also closely related to urban renewal and reflecting growing environmental concern. As Thorne [2] noted: “It has been commonly observed that railway architecture has been experiencing a “renaissance” since the 1980s” and as a result, station architecture has been very much improved. German Deutsche Bahn Aktien Gesellshaft (DB AG), French Societe Nationale des Chemins de fer Francais (SNCF), Network Rail (NR) in United Kingdom, and other European operators put “renaissance” of stations on the top of their policies and started to realize improvement of stations, along with technological improvements of trains and tracks. 2.1.1 Deutsche Bahn and “station renaissance” in Germany In Germany, national railways Deutsche Bahn AG were privatized in 1994. In 2011 DBAG was divided into five main operations groups: Arriva, DB Bahn, DB Dienstleistungen, DB Netze, and DB Schenker. These subsidiaries are companies in their own right, although most of them are 100% owned by DBAG. Among them, DB Stations & Service, belonging to DB Netze, manages passenger operations and stations. Since 2007, DB Netze is responsible for infrastructure and operations. Its business areas include DB Netze Fahrweg, DB Netze Energie, DB Netze Personenbahnhöfe, DB ProjektBau and DB Station & Service. The new strategy provides a framework approach that brings economic, social, and environmental issues together, in order to ensure sustainable company success. “Station renaissance” in Germany, which has been based on DB comprehensive station development program – “Emergency Program” (2002), was established on the assumption that each station is a “visiting card” of the city and responsible for conveying their identity. The program had at that time three goals – quality, economy and brand products. DB placing particular emphasis on insuring and improving customer satisfaction and product quality initiated numerous measures aimed at improving customer focus and quality. The “Emergency program” was mainly related to the renovation and beautification of railway stations, such as modernization and refurbishment of station buildings, concourses and facilities; adjustment of platforms for high-speed trains; implementation of new corporate design (in graphics, platform furniture); construction of new urban stations and new HST and airport stations. Among the first most successful projects were renovation and development of Leipzig Hauptbahnhof (1997) and Dresden Hauptbahnhof (2006), as well as construction of the major transportation hub in Berlin – Berlin Hauptbahnhof (2006). Current “DB 2020 Strategy” is based on three dimensions: customer and quality (long-term enhancement of the attractiveness and value of stations – expanding accessibility and improving the overall appearance of selected stations, development of passenger information services and the creation of customer-oriented control systems to 54 increase customer satisfaction); profitable growth; top employer; and eco-pioneer (the “green station” concept will be implemented at the stations in Kerpen-Horrem and Lutherstadt Wittenberg). Current station projects include controversial “Stuttgart 21” (completion planned around 2020), which involves replacing of historical terminal station – Stuttgart Hauptbahnhof and moving station underground. Among others, five stations were constructed in recent years on the new ICE line – New Cologne–Rhine/Main line: Frankfurt am Main Flughafen Fernbahnhof (2000), Koln/BonnFlughafen Bahnhof (2003), Bahnhof Limburg Sud (2003) connecting the Lahn area of Western Hesse; Montabaur Bahnhof (2002) connecting Koblenz, the capital of Rhineland-Palatinate in the Rhine valley; and Bahnhof Siegburg/Bonn (2002) connecting Greater Bonn. Osnabruck Hauptbahnhof concourse has been modernized (2012). Bahnhof Greifswald has completely renovated station building (2012). DB Netze station business unit specifies that the stations are not only the gateways to the world of rail transport, but also a platform for connecting different modes of transport, a marketplace and calling cards for cities and regions. The activities of business units encompass the operation of the passenger stations as traffic stations as well as the development and marketing of train station areas. DB Netze feels responsible for ensuring non-discriminatory access to their infrastructure [3]. Along with the network extension (in 2017, the Halle/Leipzig–Erfurt–Nuremberg line will go into service), new stations will be constructed. 2100 stations will be modernized with funds from the economic stimulus packages [4]. DB is also optimizing infrastructure by construction of “green stations”. The first green station is under construction in Kerpen-Horrem. The heating and cooling systems are to be regulated by a geothermal system, electricity will be provided by a photovoltaic plant installed on the roof, and warm water will be produced from solar energy. All this will result in the station operating without producing any carbon emissions. The strategy pursued by DB Station & Service focuses on continually improving satisfaction among all station customers – passengers, visitors, tenants and railway undertakings – and providing efficient station operations. Long-term agreements, with currently eleven Federal Laenders, provide planning certainty for investments in the renewal and modernization of stations for regional transport services in particular. Station funding is the joint responsibility of the German Government, the Federal Laender and Deutsche Bahn [4]. The aim of improvement has been to uplift the image of railway operator. Therefore the company established a concept of corporate design. It has been realized through the reliance on aesthetic features, overall unity and diversity of elements [5]. Corporate design approach replaced former non-consistent approach of the various railway brands using various individual products – with a reliable railway product as a harmonized design for all railway sections. Through the concept of a “forum station” – a station fulfilling a function of a stage for public life and an attraction, DB emphasized the importance of aesthetic experience – something that previously was disregarded. DB provided through architecture and interior design aesthetic spaces at the station buildings, realizing their goal of “well-being feeling stations”. 2.1.2 French Railways and “station renaissance” in France In France, railways have also gone through the process of restructuring, particularly by splitting-off infrastructure and operation [6]. The SNCF (Societe Nationale des Chemins de fer Francais) operates the country's national rail services, including the TGV, France's high-speed rail network. Its functions include operation of railway services for passengers and freight, as well maintenance and signaling of rail infrastructure owned by RFF (Réseau Ferré de France). French Infrastructure Authority RFF, which since 1997 has been operating national infrastructure, is responsible for nationwide rail development, including construction of new TGV lines based on plans jointly programmed with SNCF. SNCF is the only national rail operator for intercity railways, responsible for administration and maintenance of infrastructure based on the agreement with RFF. As of 2012, the SNCF consists of five divisions: SNCF Infra, SNCF Proximités, SNCF Voyages, SNCF Geodis and Gares & Connexions. Gares & Connections was created in April 2009 for station management, land management, and land development in France. The division manages 3000 stations in France, as well as multidisciplinary operations – buildings and outfitting facilities through Groupe AREP (Civil engineering), Groupe A2C (real estate management) and Parvis. According to the policies of refurbishment many stations have been modernized, and among them main terminals in Paris: Gare d’Austerlitz (1989), Gare Montparnasse (1990), Gare de Lyon (1994), Gare du Nord 55 (2001), Gare de’l Est (2007), Gare Saint-Lazare (2012), and many projects still are going on. While station renewal was based on careful studies on historical architecture, new stations, such as the Lyon Gare de Saint-Exupéry TGV (1994) or Gare Lille-Europe (1994), have been designed as innovative buildings with an airport terminal-like image due to expressive, light-weight structures. Particularly, new developments were concerning new TGV stations, e.g. Valence, Avignon and Aix-en-Provence (2001), as well as many other new stations, which are planned or under construction or have been built along the prolongation of the TGV Atlantique route from Paris to Tours, extension of the TGV Atlantique right from Bordeaux through to Spain, new TGV Est from Paris to Baudrecourt, extension of the TGV line that currently runs from Paris to Le Mans, through to Rennes, also TGV Est from Villers-les-Pots (to the East of Dijon) to Petit-Croix (2011). Groupe AREP designed many new stations, including TGV stations and renovated historical terminals. Among new stations are: Gare de Champagne Ardenne TGV (2007), Gare Bezannes (2007), Gare Meuse TGV Voie Sacrée (2007), Gare Bellegarde TGV (2009), and Gare de Besancon TGV (2011). Development of stations includes design and construction of new ones, such as: Gare Lorraine TGV, Jean Macé Gare in Lyon (2011), Gare Pompadour (RER Line D) (2013), and Rosa Parks Station (RER E) (2015). Many historical stations required renovation and also extension to fulfill contemporary functions. Among stations renovated in recent years are: Gare de Strasbourg (2007), Gare de l'Est, Gare de Marseille St-Charles (2007), Gare de Vichy (2008), Gare de Perpignan (2012), Gare Saint-Lazaire (2012) and Gare de Lyon (2013) in Paris, Gare Bruxelles-Schuman (2014 u.c.), Nice Thiers Multimodal Hub (2015 uc), and Gare Juvisy-sur-Orge (2017 uc). SNCF has already expanded its “station renaissance” policies through strengthened corporate design, vigorous station renewal and introduction of new type of amenity, combining transportation function with city services, such as recreation and retail. It also introduced certification for stations, which comprise of 45 criteria, including aesthetics. New approach that has been applied in recent years, based on “Station Organization Plan” (POG) (Plan d’Organisation des Gares) – which is a comprehensive plan for intermodal transport and commercial development, is to develop special methods related to spatial positioning of transport-related fixtures and fittings and the pedestrian routes, which as result are defined and integrated into one coherent network. In the course of a station project such program has been followed by commercial development plan, which determinate the location of commercial facilities. 2.1.3 Network Rail and “station renaissance” in the United Kingdom In the United Kingdom, like in Germany, national railways have been divided and privatized in 1994. Infrastructure has been separated from operation, and since 2002, Network Rail has owned and managed railway facilities, while passenger operations have been franchised under the Private Finance Initiative (PFI), and have been operated by various Train Operating Companies (TOCs). UK government has been committed to work with community and national partners to meet local transport needs that not only deliver real benefits to passengers but also improve the network. The funds, managed by Network Rail, are provided after local authorities, train operating companies and developers are invited to bid for funding towards the construction costs of brand new stations. The new station announced in 2013 included Newcourt Station in Devon, Ilkeston Station in Derbyshire, Lea Bridge Station in London and Pye Corner Station in Newport [7]. The last decade has seen unprecedented growth in demand for rail travel. One million more trains run every year than ten years ago. Therefore the infrastructure at the stations has been improved and transformed. Since privatization, “station renaissance” has been reflected in diversification and expansion of station trading and in new commercial developments in newly created station spaces. Stations also have been better prepared to match their social context – through provision of parking lots for cars and bicycles, better accessibility, provision of services in accordance to local needs, and through better quality of operations, services and design that includes such principles, as public involvement, competitions, and aesthetic guidelines. In order to achieve a new image of station – safe, configured to seamless process, comfortable, enjoyable, preserving historical heritage – NR has promoted new railway station’s goals, such as: quality (improvement and renewal); operation (balanced services); and access (provision of interchanges, barriers-free). Polices boosting new image of railway have been reflected in NR guidelines, such as “Developing modern facilities at stations”, “NR heritage guidance”, “Way finding and signing guidance”, and “Advertising design 56 strategy”. Polices related to improvement included major stations renewal program – “Station 2000” and construction of new stations. Implementation of these policies and recent demand for rail travel have been reflected in refurbishment of historical stations (St Pancras, 2007; King’s Cross, 2012), and in realization of new ones (Stratford Regional, 1999; Manchester Piccadilly, 2002). Fourteen historical terminals in London have been modernized in collaboration with TOCs and municipal government, as a part of urban development projects. Historical terminals have been upgraded to accommodate platforms for HST, larger interchanges and new facilities, including shopping and food outlets (Waterloo International, 1994; Paddington, 1998 and 2012; King’s Cross, 2012). In 2012 redevelopment project for the London Bridge Station was unveiled and is now under the way. WSP, Hyder (UK engineering and design consultancies) and arch. Sir N. Grimshaw are leading the design. When completed in 2018, the concourse there will be the biggest in the UK, fully accessible with lifts or escalators, with new retail and station facilities and will have a connection to Crossrail services at Farringdon. The concourse will unify the station for the first time so that passengers can access all platforms from one place. In Birmingham, the New Street Station is under redevelopment and in 2013 first half of the new station was opened. Refurbished stations have shown integration with other public and environmentally benign transportation modes and became attractive modern additions to historical buildings. 2.2 East Japan Railways and “station renaissance” in Japan Japan National Railways have been privatized and divided into seven companies in 1987. Currently, Japan Railways Group consists of seven operating companies, including six passenger operators. Unlike in Europe, Japanese railways are divided by regions, not by operation and infrastructure – therefore they are willing to expand and profit from related business fields. East Japan Railway Company (JR Higashi Nihon) is operating in Tōhoku and Kantō, including Tokyo and Kōshin'etsu. JR has been promoting “station renaissance” since 1990s with the aim to attract more customers by improving railways through better services and attractive appearance of stations. New Frontier 21”, formulated in November 2000 as JR East Group’s medium-term management plan, defined “thorough customer orientation” as an important objective. One of its strategies – “station renaissance” – is a program which recognizes the stations used by around 16 million customers per day as important management assets, and conducts zero-based reviews and reallocation in a thoroughly customer-oriented manner. The scope of “station renaissance” has included refurbishment of existing major terminal stations with more than 200,000 p/d according to “Cosmos Plan” (Ueno (2002); Tsudanuma; Shinagawa (2004); Omiya (2005); Tachikawa (2007); Nishi-Funabashi; and Tokyo (2013)). The refurbishment of Ueno Station in 2002 was the first project within “station renaissance” program, and began with the improvement of the station’s exteriors and restrooms, followed by the renovation of its grand concourse and commercial facilities (Atré Ueno). This has completely transformed the previously gloomy image of the station. Renewal and construction of more than 360 urban stations, serving more than 30,000 people/day, has been realized under the “Sunflower Plan”. Under the plan, JR East carried out few hundred development projects, for example in fiscal 2003, it undertook projects at 67 locations, including Mejiro station, Osaki station, Sakuragicho station, Hashimoto station and Hachinohe station. Some new station buildings with office space and shopping centers, such as Meguro Station (2002) containing JRE and Tokyu Corporation lines, have been constructed as a result of joint ventures between railway operators. JRE has been continuously modernizing its station spaces and putting a lot of attention on development and restructuring of retailing and restaurants. On the top of company’s activities is promotion of cultural events, such as exhibitions and concerts held at Tokyo station. Improved facilities using IT technology such as Suica, the development of station buildings such as “Atré” and “Ecute” and the evolution of Ekinaka business have completely transformed stations from places that people visited solely to take or change trains to one where they can meet, enjoy shopping or do many other things. “Station renaissance” program is still under implementation. Now, in line with social changes accompanied by the increasingly high standard expected of railway stations and networks by local communities, the focus has been shifted from improving stations – to cooperation with local communities on “machi-zukuri” city planning. Revitalization of existing retail venues, renewal of retail zones, opening new shopping centers and remodeling are important non-transportation operations. Among other projects, JR East plans to enhance the competitive strength of the “Station Space Utilization“ segment by applying “station renaissance” program at Oyama and Kichijoji Stations and by 57 raising appeal of other railway stations [8]. Since the beginning of “station renaissance”, some new stations, such as on Yamagata shinkansen (1999), have been designed in cooperation with local governments in regard to their location, use and influence on the growth of the cities (e.g. Akayu Station; 1993, arch. E. Suzuki). Since 2000, “station renaissance” has focused for about a decade upon maximizing the value of the stations by implementing zero-based reviews of the layout of their existing facilities while in the process of transforming them into barrier-free and earthquake-proof station buildings. Following the completion of this task, and in view of changes in social environment (such as a decreasing, ageing population), accompanied by the increasingly high standards expected of railway networks and stations by local communities, JR concentrated more attention upon “machi-zukuri”– a city planning in cooperation with local communities and joint projects. Tokyo Station, after restoration of Marunouchi building and construction of the GranRoof has been completed, the plazas only are still under construction. Combined with Ekinaka business, hotels, offices, commercial facilities and educational/research functions, all of which have long tradition and innovativeness, Tokyo Station will play a prime role as a core facility in the city plan. Among recent projects strengthening local communities are “JR Kanda Manseibashi Building” (2013), and a river-front deck “mAAch Ecute Kanda Manseibashi” (2013), located on the site of former Manseibashi Station. In close cooperation with local communities, other development projects using local resources are also under way, such as for example the conversion of a station building into a hotel. Hotel R-Mets Utsunomiya guides customers to surrounding tourist spots by utilizing local resources, such as interior décor using local oya stone and displays of prefectural traditional handicrafts. City planning around the station, including the construction of station forecourt and service roads requires co-operation with local governments and communities, therefore station can maintain close links with local communities. While some JR stations have been upgraded, some have been built new. Kanazawa Station, which was completely rebuilt in 1990 and developed with new shopping center in 1991, has boosted its image in 2005 by a “Grand Tsuzumi Gate” and “Motenashi Dome”. Other stations built by other JR companies from the JR Group include also stations with outstanding architecture, such as Kyoto (1997), Nagoya (1999), Iwamizawa Station (2009), Hakata Station City (2011), and Osaka Station City (2011). 3. What is a railway station today? A railway station can be defined as a place where trains load or unload passengers and recently very rarely – goods. It usually consists of the combination of a platform and a station building or shelter, or only one of either. Usually every station has a platform to allow the passengers to get on and off the train but smaller station may not have a station building or shelter. In the past, large railway halls for the train terminals built in all major European cities were top achievements among engineering structures that flourished in 19th century. Today, along with “station renaissance”, some of these splendid stations have been modernized and adapted for HST. Also, the last two decades saw a development of impressive large-size stations that have been built to respond to the re-urbanization of cities and the development of HST train network. Such stations have become big architectural achievements. Current multi-modal stations, often resembling air terminals, must respond to different requirements than before. They provide access for air, other rails, bus, underground and LRT services, and a part of a new urban and commercial center accommodate businesses, hotels, and shopping centers. Station buildings must include all facilities arranged for ticketing, waiting, transfer, and also other facilities – for shopping, recreation, and administration. Nowadays, stations include completely modern facilities realized in recent years and also refurbished stations. Historical stations that underwent renovations often combine historical architecture with new extensions, which are structurally and functionally innovative. Railway stations, being visible engineering structures in urbanscape, need to have aesthetic qualities. Therefore their structures often satisfy the requirements of structural. Stations are also buildings designed for people, to enable them to feel comfort at the railway stations. There are several factors that “stations for people” need to consider and solve. 58 4. Factors of “stations for people” 4.1 Function Railway stations are important public buildings, which besides giving an access to train, perform a variety of functions – meeting places, shopping centers and urban landmarks. How the station affects the landscape depends on its functional type. In theory there are several types, such as suburban station (small, interchanges), city center terminal, interchange (rail to rail or bus to rail), small station (often modular), airport station and LRT station – but as many writers note that currently the station has become more complex and some of them may fulfill more than one functional role [9], [10]. Complexity of contemporary stations is reflected in their spatial conception, which is a combination of a building with a train shed or canopies, with concourses, and the outdoor environment. Obviously for a station the transportation function is the most essential one. Although the function of a building is mainly transportation, in Japan station spaces designed for passenger transit have been transformed into multifunctional spaces serving a variety of purposes [11]. Japanese stations have a tradition of multiple functions and even some writers observed that combination of various functions at the station was a unique feature, not to be found in other countries [12]. Recently also European stations have acquired this multifunctional image. They do not only provide a link with other modes but also serve as shopping and entertainment centers. Edwards [9] has listed out major elements in practical consideration of station design: External circulation – convenient approach to station and architecturally marked station entrance, segregation of movement at large stations, zoning – circulation reflects architectural quality of station building, tickets and information, waiting areas to platforms and trains; circulation should achieve ease of movement, comfort of movement and speed. Ticket offices – spacious, comfortable, easy available and convenient in use. Commercial areas – well-balanced, organized in appropriate space, without disturbing the movement along concourses and without allowing use of space outside the retail units. Waiting rooms – amenity spaces for relaxation before and during travel, equipped seats, with train departure and arrival monitors, clock, bins, telephones, public address system and other amenities. Platform shelters – glazed roofs providing water and protection; their structure gives station distinctive image. Toilets – with natural light and ventilation. Barrier-free access – elevators, lifts, ramps with appropriate texture of paving, directional signs, with additional handrails for staircases, proving special tickets, desks, telephones, toilets. Information signs – timetable information on posters and electronic screens showing train movement, by voice announcements. Signs should be located near station entrance, at concourses and at platforms. 4.1.1 Transportation function Accessibility Railway stations should be accessible to all potential users; therefore universal design is very important. Nowadays stations are equipped with barrier-free access through escalators, elevators, signs for visually impaired and various verbal announcements. Facilities responding to universal design should also have aesthetic values – e.g. colorful glass elevators, interesting forms of ramps, etc. Very often glass is adopted for elevators, which gives them, and the station itself, very modern look (Fig.1). Information In spite of verbal announcements, there is plenty of information which is visual, e.g. various signs, posters, plasma displays, etc. It is very important that the information signs have clear messages, easy to understand, and that their size is appropriate. Renovated Marunouchi Building at Tokyo Station has plasma display screens located at the top of the walls, under the balcony. While the screens are well visible, information about the station is very nicely designed (Fig. 2). Such information adds additional quality to station design. 59 Fig. 1 Meitetsu Gifu Station – glass Fig. 2 Marunouchi Building of Tokyo 2007, Elevator Station, 2012 – information screens Fig. 3 St Pancras International, arch. Sir N. Foster Quality of station building Main station components include: station building, station entrance, station hall and circulation areas, such as concourses, platforms with train sheds or canopies, various facilities including shops, shopping malls, post office, etc., and outdoor environment – such as station plaza and street in front of station. Within the history of station architecture, the buildings were changing. Both in Europe and Japan there were times when station architecture was particularly impressive and times of stagnation of railways and not interesting stations. Station building, or station entrance in case of subways, should be clear and station name and logo of rail operator should be visible. If station is original, it can become a local landmark, important place, even meeting place for local community and its importance as a transportation node would be signaled by the architecture. Modern railway stations often resemble airport terminals but unlike airports, railway stations do not segregate arrival and departure levels. Railway station has all the attitudes to become a bustling urban space, even more vigorous that an airport. Railway terminals are important expression of national and corporate prestige. Edwards [9] observed that for example Canary Wharf DRL Station in London (1999; arch. I.M. Pei) and Sloterdijk in Amsterdam (1996; arch. H. Reijndersof, Holland Railconsult) proclaim of using good design for the benefit of passengers. Buildings of a big terminal or airport station have particular meaning of urban gateways and landmarks. Smaller stations are suitable for serving a community needs by attaching a particular value to design supporting architectural dignity of railway station and its functions. At modern multi-functional stations, sometimes the functions are complex and diverse and it is difficult to distinguish station building from attached functions. Edwards [9] noticed that therefore there is need for architects to ensure that stations will have clarity and will carry the visual and formal codes of railway architecture. But in future these codes may become more fluid and already railway stations have been undergoing transformation towards more multifunctional and multimodal transportation nodes. Nevertheless, the clarity of function of modernized or modern station building must be maintained. In Europe there are many historical stations among which large terminals have very distinguished architecture, such as renovated London’s St Pancras International (2007; Fig. 3). In Japan, stations were rebuilt after earthquakes and after the last war, and there are only few original historical stations. Some station buildings built since 1960s have more clear facades and recognizable form, particularly smaller stations, but most of them are system-buildings built according to standard design, such as for example: Sakata Station in Yamaguchi Prefecture, Masuda Station in Yamaguchi Prefecture, and Aomori Station in Aomori Prefecture. They represent neither a diversity of styles nor a perceptible house-style, or integration with urban environment. Many medium–size stations and large are very complicated buildings without clear form, and often covered by the advertisements (Shinjuku Station, Shibuya Station, Ikebukuro Station). Only, when one looks closer, one can find a name of the station on the bottom of department store. However recently there have been more meaningful station buildings designed, for example Iwamizawa Station (2009), Kochi Station (2009), Asahikawa Station (2011), Hakata Station (2011), Osaka Station City (2011) and renovated Tokyo Station (2013; Fig. 4). 60 Quality of station entrance In Europe, station building has usually clear design and well visible entrance. Architecturally they are sometimes better, sometimes also standardized but they are always well visible. Entrances to elevated stations are visually exposed – therefore they should be harmonized with their surroundings. Sometimes such elevated stations are rather typical, or not particularly aesthetically pleasing, such as some stations on Tokyo’s Yamanote Line which was constructed in 1885. Nowadays, many stations in Tokyo are under renovation. In case of subways, entrances are even more important because there is not often station building. In case when there is a building, it is difficult to find an appropriate design connecting building with the subway station. But when the design is good, such station entrance can be very well distinguished (Fig. 5). Some subway entrances emphasize the company logo – like at London’s Underground, some other have very careful design reflecting total concept of the subway lines – like Art Deco entrances in Paris. Also in Japan, some recent entrances, such as at Omotensandō, have interesting design and show well subway operator’s logo. Some station entrances are very distinguished architecturally and have the quality of urban landmarks that identify particular city very well (e.g. stations on subway at Bilbao – Metro Bilbao, 1995; Fig. 6). Fig. 4 Yaesu side of Tokyo Station, Fig. 5 Iidabashi Station, Tokyo, 2000, Fig. 6 Plaza Moyua Station, Bilbao, 2013, arch. Helmuth Jahn arch. M. S. Watanabe 1995, arch. Sir N. Foster In front of station entrance should be located a plaza, which provides direct vehicular access to station by private vehicles, by forms of public transportation and for passengers arriving on foot. Station entrance often provides a shelter for people waiting for a bus or taxi. Therefore the front of the station is important because the station plaza, canopy, entrance and concourse are all related elements in the progression from the city to the train. The station entrance should be designed as practical – to enable traffic flow, and also as symbolic element of the station – to mark the starting point of the journey. The large glass entrance provides good orientation and ease of movement. From architectural and aesthetic point of view, the entrance can be larger than estimation would indicate. Quality of station hall and concourse Generally all elements of station, such as station building with entrance, station ticket halls and concourses, platforms, and station plaza should be located without obstruction or ambiguity. The progression through all the elements should be clearly defined, and they should be easily found by travelers. The circulation through the station should be achieved with ease of movement, comfort and speed. Station hall and concourses are the main areas of circulation. The design of circulatory spaces usually depends upon number factors – density of use, type of trains, fluctuation during peak hours, barrier-free access, etc. The location of commercial facilities at circulation areas often runs counter the efficient flow of passengers and can trigger the problems of safety and orientation. Except retail, there are other facilities located at the station, such as, cafes, bars, bookstalls, toilets, telephones, internet facilities, railway information, tourist information, hotels, offices, museums, etc. Station hall includes circulations areas, ticket sales and retail space, and post office at large stations. Station halls and concourses are the areas where there is a lot of activity and they need appropriate dimensions to allow the visibility and orientation – passengers need to know how to move around and how to disembark from the train and how to go to the platform. At most of European station these requirements of space, 61 visibility and orientation have been satisfied at new stations, and at the recently modernized historical terminals, such as London’s St Pancras International (Fig. 7). In Japan, these requirements have been sometimes problematic because of relatively smaller spaces available and large number of passenger using metropolitan stations. According to Ross [10], there are three goals in planning of space within stations: the avoidance of congestion, resilience to surges in demand for trains or disruption of service, and capacity for evacuation in some non-usual situations. Particularly nowadays, stations have to be safe and prepared to deal with terrorist attacks. Station design should promote circulation at the station – both the flow of passengers through station concourses and other public spaces and comfort in waiting areas through provision of furniture, amenities and through separation from main passengers flow area. Station design should naturally lead the passengers to pass facilities and timetables, ticket-selling facilities, etc., in particular order associated with the process of travel. Walking routes at concourses should be free from constrictions. There is usually a pressure to insert as much as possible commercial uses, which may affect the adequate space, needed for passengers activities. Retail or leisure activities should be the secondary, the ticket sales points need to have primacy in the term of station layout, because passengers first have to buy tickets than, while waiting, they may involve in other activities. Shops, kiosks, cafes and other facilities should be rather located at the fringes of the station hall or at different levels, such as at the entresol at the Liverpool Street Station in London, or underground, such as at the 3-storeys underground shopping mall “Promenaden” at the Leipzig Hauptbahnhof. Fig. 7 London St Pancras International, TGV, 2007, arch. Sir N. Foster Fig. 8 Osaka City Station, 2011 Fig. 9 Gare de Saint-Exupéry Lyon, 1994, arch. S. Calatrava Quality of stations platform There are two basic types of station in regard to rail tracks and platforms: terminals – where trains begin and end their journeys, and through stations – where trains stop or pass through on their way from one place to another. Many city center terminals are quite literally the end of the line. Such terminals are for example all major stations in London and Paris, and in German cities (Leipzig, Frankfurt-am-Main and Stuttgart). In Japan, many private lines have terminals at the city centers (Seibu-Ikebukuro Line and Tōbu Tōjo Line at the Ikebukuro Station; Odakyū and Keiō Lines at Shinjuku Station). Through stations are the most popular. These stations in Europe are descendants of the roadside points, where stagecoaches called and replaced the coaching inns. In Japan through stations are descendants of the ancient Edo post-stations (shukuba), where the travelers often traveling on foot had to submit to control and could stay overnight in nearby inns (yadoya). Most of railway stations in Japan are through stations. At large stations in Tokyo or Osaka less lines terminate than in large European stations. Osaka Station was initially designed by foreign engineers in Meiji Period as the starting point – a type of terminal station but later the project was changed into through station [13]. Even though some terminals in Tokyo (e.g. Ueno) are starting and ending points for some railway lines, they are other lines running through them. Only one station in Tokyo – Asakusa Station (1931) is a real terminal station for Tōbu Isesaki Line offering service to Nikkō. Tōbu-Asakusa Station has developed according to popular scheme of private railway companies, which constructed department stores in the city centers and leisure facilities at the end of line. Asakusa Station had the first in Tokyo department store. While planning of platforms determinates the type of station, the platforms themselves can have two types of 62 the layouts. They may be planned of the side or as an island type. When there are more platforms at the station, an “island” platform is in the middle. Platforms are important and sensitive part of the station; they are accumulation areas, when passengers wait for their trains. They must be planned for the anticipated passengers’ number to avoid crowds. Platforms also have access from and to the concourses. Platforms need to be provided with effective arrangement of exists and entrances. This is particularly important at the subway stations that passengers can enter or leave the stations easily even during rush hours. In deep underground, interconnecting passageways can largely separate longitudinal flows of passengers from waiting areas. Platforms are usually fixed elements in architectural design, however their width greater than estimated is making the space visually safer and more convenient. Fig. 10 Franklyn Roosevelt Station, Fig. 11 Berlin Hauptbahnof, 2006, Fig. 12 Meiji-jingūmae Station, Paris arch. M. von Gerkan, Marg & Partners Tokyo, 2008 Platforms perform circulatory function, which depends on their accessibility. Accessibility means convenient, step-free access for mobility-impaired people. Platforms length is generally determined by train length, while the width is calculated according to the number of passengers (for example, 1 passenger per 1.0 m2 in the UK). Platform design should be harmonized with other parts of the station, to provide total design and high quality of stations spaces (Fig. 9). The design is particularly important for subway stations, which are in confined environment. At the railway stations the best solutions are glass walls to see through the station and surrounding landscape. At the subway stations, composition of station walls – arrangement of advertisements, stations names, information signs – are the elements that contribute to station visual appeal. At Paris Métro and London Underground or other European subways, and on recent subway lines in Tokyo, these elements on the wall are usually well coordinated and good composition of the walls is a common sight (Fig. 10). In Japan however, station platforms have sometimes too many obstructive elements. 4.1.2 Commercial function Shops Commercial function is important at the station, in spite of its main transportation function. It brings revenue to rail operators. Shops and other services need to be clearly distributed in regard to station space and accessibility to trains. Along with the process of evolution of railway stations, more functions have been added, such as retail, hotels, restaurants, and leisure. Ross [10] has listed forms of retail that include: small shops, small size walk-in units, kiosks often located at the platforms, trade stands, vending machines, public telephones, ATMs, promotional activities and internet facilities. Shopping malls and convenience stores have been often installed around stations concourses. Stations have become transportation nodes offering many attractions and experiences as a part of efforts of changing railway companies trying to improve their products to reflect their corporate prestige. The problem of separation of transportation and commercial function and at the same time making commercial facilities easily available is difficult to solve at modern and renovated stations. Commercial developments can be designed as “concentrated shopping malls” integrated with public areas of the station and distinguished from other services for passengers or as “lines of shops” usually developed in the form of corridors of retail surrounding the main operation areas. One of the ways to separate the functions is to locate commercial facilities at different levels than transportation ( Leipzig Hauptbahnhof; Berlin Hauptbahnhof, Fig. 11). 63 Advertisements Commercial advertising has been source of income of railway companies in Europe from the early days. However there was care and control of the quality posters and billboards located at the stations. Currently, advertising is a source of several percent of income for Japanese and European rail operators and because of this income, there is a strong tendency to include more advertisements, like to include other commercial functions at the stations. Treatment of advertisement reflects approach to aesthetics in public spaces. A wide range of advertising media is available, such as various kinds of posters – traditional, illuminated, back-lit posters in illuminated casing, which are often applied at the subway platforms. It also includes moving displays, TV and plasma displays, and other displays at the staircases and along escalators, on the train bodies, inside the trains, branding the entire stations to one advertiser, various sales and campaigns installations. Advertisements are inevitable and their design should be a part of total design concept. For example, it can be associated with the context of the station environment, have a reference to healthy lifestyle products, or culture, etc. – to enhance the value of the station image. Particularly sensitively should be handled the advertisements at historical stations, where they should be well integrated with station architecture. Careful design management is required for railways, if the railway corporate image is not to be lost in the flood of advertising material. Ross [10] pointed out that the regulation of visual environment is required to establish priorities in which the corporate design and graphics takes the highest place. There should be a balance between corporate graphics including information, building aesthetics and other users’ graphics, which includes commercial advertising and retail spaces graphics and arrangement. In Japan the trend to place many advertisements at public spaces is very strong. It is because of social acceptance for strong rights of the owners. Aesthetics of public facilities has been weak here since the post-war economic development, and followed by the destruction of landscape since 1970s, when stations displayed lack of architecture, and according to Ashihara “despite their public character, station buildings are literally covered with so much commercial advertising that it is often difficult to tell whether they are station facilities or commercial buildings” [14]. Railway stations have been often virtually covered by advertisements. Even modernized elevation of Shibuya Station (2003, arch. Kengo Kuma) has been covered with large advertisement panels. 4.1.3 Cultural function Public art Public art is well perceived by passengers and may play a significant role in enhancing image of railways. Railway companies understand the importance of introducing a design and culture into stations. Art has become a part of cultural value of the rail brand design. In Europe, some transport agencies have introduced a “percent for the art” policy, based on a fixed percentage (from 0.5% to about 1%) of all budgets for new developments allocated to the purposes of art. The issue of the art and design at public transportation has been discussed for the first time at the International Union of Public Transport (Union Internationale des Transport Publics – UITP) Congress in 2001. In Newcastle, in the effect of collaboration with private sector, the city developed a “percent for art” policy which gives up to 1% of their annual capital construction program on arts projects. In the course of the program which has been running for 26 years, at the beginning mostly permanent art works were installed at the stations but later more often temporary works such as lighting installations and live art events were installed and organized. In Europe, public art projects are often financed by government; for example the art program run in Brussels is financed by a government body set up in 1990 by the Public Works Ministry and it is related to artworks at all transit facilities. In Japan art is also applied at many stations – for at station halls and concourses are works conceived by local artists (stained-glass artworks at the Ueno Station, artworks at stations at the Minato Mirai Line, Fukutoshin Line; Fig. 12). 4.2 Form 4.2.1 Aesthetics criteria Aesthetics of railways can be defined as a balance between exterior and interior of station, between building architecture, engineering structure and transportation function – in consideration of its planning, layout, details and context. Aesthetic factors of station design include objective qualities, such size and scale, 64 proportion, form and shape, space, visual weight, light, texture, color, composition, movement and rhythm [15]. In subjective response to built form, there are image-based elements related to design context, representation of the image of railways, of a brand of train operators, landmarks features, and to inclusion of artistic elements. These are related to transportation and commercial station function. Size and scale The size of station building and its interiors affects emotional response and visual weight generated by their impression. Large stations have more spacious interiors but might be also overwhelming and produce feelings of anxiety. Large European railway terminals, like London’s St Pancras, Paddington or Victoria – were designed not only to provide adequate space for passengers but also to impress by their large scale. Such stations like Gothic cathedrals had many meanings – political, social and urban. Smaller stations were designed more in relation to human scale. The light contributes to the perception of scale – even if the station is small, impressive lighting design can make station visually more spacious. Large scale stations are accompanied by human-scale elements, which produce more familiar atmosphere. Proportion Station building should have harmonious shape achieved by good proportions. Proportion is related to shape – for example slender or squat, and to scale. In the history of built forms, there have been favored proportions, such as 1.6 to 1 – the so called “golden mean”, developed in ancient architecture by architects and aestheticians, or in modern times – based on the analysis of buildings which are generally considered as beautiful, such as “modulor” system by Le Corbusier [16]. Modern architecture offers sometimes completely different proportions than in the past because aesthetic taste is changing in time. It is probably good, if the proportions of station building delivered from the geometry are based on the laws of nature. Form and shape There is a slight difference between “form” and “shape”. While “form has more solid meaning, shape is more outline of the object. Buildings are three-dimensional and there are some clues that are relevant to their perception, like distance, angle, colors, and amount of textural details. Complex forms can be identified through relationship to simpler forms. According to Ching, forms are built of primary elements: points, lines, planes, and volumes [17]. Such arrangements can be centralized, linear, radial, clustered, or grid-like. Station building should be recognizable and therefore it needs a comprehensive form. Space Station buildings cover particular space. According to some concepts, space exists between objects and permeates them (Plato). Ching envisages a relationship between form and space as a “unity of opposites” [17]. Space may posses a “direction”, particularly when in a sequence, one space comes after another. Such sense of directionality is important at the railway stations. Space is an essential factor for railway stations because it enables users to move through it, to wait, to purchase tickets, to prepare before embarking for a travel and after arriving at the destination. Appropriate and well-designed space provides security and well-being. Glass, which is recently often used in architecture, encloses spaces but leaves their visual connections. Such space can be “permeable”. Glass elevators decrease the feeling of confinement, and as a part of universal design provide convenient access for physically challenged passengers. Transparency of glass creates station more spacious and understandable. Depending on the surface design, it is possible to speak about the “degree of permeability” and the “degree of closure”. Visual weight “Visual weight” is often referred to when we speak about the lightness of structures. As Holgate [15] points out, visual “weight” of areas and volumes is of major importance in the unity, balance, and composition of built forms. It is influenced by light, color, and texture. Modern frame and shell structures at the stations tend to look “light” and nowadays it is synonymous with “beautiful”. Light The nature of the form is emphasized through the light and shadow. Light can also distinguish the texture and color. The quality of space is affected by changes in the angle and color of the daylight. Light at the station is necessary. Brighter stations are livelier and probably safer. Design of lighting may create desirable atmosphere. At large stations, where the role of architecture and structure is paramount, the admission of daylight can increase the expression of structure which can become a landmark feature. Daylight in daytime 65 is preferable; therefore a provision of glazing increases the possibility of natural light’s penetration inside the station. Artificial lighting is functional as well, and it can increase visual expression of the station. Top lights create secure environment and enhance architectural features of the interior. Lighting has also informative function – properly lit signs, information posters, stations names, etc., enable passengers to move in right direction easily and safely. Successful lighting depends on combination of lighting levels and types of lighting fixtures. Texture Texture is an additional value of the surface. It is the nature of the surface – size and organization of the particles constituting a surface. The texture can be smooth or rough; can be also rich by the repetition of small design elements and can have a pattern. Texture has a great effect on visual weight. Objects with smooth surfaces are perceived less “heavy” than those which have rough surfaces. Color Perception of color is subjective and influenced by size, other colors and light. Colors may have also influence on the “visual weight”. Some colors, which are “warm”, make spaces visually smaller, while “cool” colors make them visually larger. At the station, color can be created by using colorful materials and colorful artificial lighting. Bright colors visually increase space; warm colors increase the feelings of safety. Colors are also used to express the design concept. They can be also used as a guiding or safety tool – for example by emphasizing railings or elevators by particular color. Colors combined with light can be used for aesthetic and functional arrangement at the station, to underline particular functional elements or to show directions. Composition Composition may provide balance, unity, and harmony. “Balance” in built forms provides comprehensive equilibrium between visual forces. “Unity” is sometimes equaled with “beauty” of built form. In complex composition it can be referred to situation when all elements are grouped together or descend in some direction, or are integrated through broader outlines, through texture, colors and details. It is related to “harmony”, which means that all elements fit to each other and to their context, wider surrounding, etc. Composition is a very important factor of railway stations, because it also guarantees solving out functional issues. Movement and rhythm It is affected by human eye-sight and brain. Impression of “movement”, for example by use of columns, can help to direct flow of passengers. At the stations, rhythm of some facades can underline main entrance and main station hall and distinguish them from other spaces. Image-based elements Image illustrates the design idea. Built forms often express their association with certain location – “sense of place” (genius loci). In case of railway stations, which are gateways to particular cities, they might express the image of the city. Image of railways can be created for example through marking station entrances with company logo. The logo applied by many European operators has an informative, decorative and signature values. Outstanding elements – landmarks Stations are perceived as landmarks, if they are visible and their image-based elements are strongly related to their urban, historical, cultural, and social context. Historically, main railway stations in Europe were landmarks, distinguished by their elaborated large forms and by prominent location, since they were often facing the main street and had a plaza in front of the main entrance. 5. Recent trends in station design Trends in station design in last twenty years can be observed on the example of several mega-stations in Europe and Japan: Leipzig Hauptbahnhof, Berlin Hauptbahnhof, Dresden Hauptbahnhof, St Pancras Station, Kings’s Cross, Nagoya Station, Osaka Station City, Hakata Station, and Tokyo Station City, as well on the examples of medium and smaller stations (including new HST stations), such as Gare de Saint-Exupéry TGV, 66 Gare Lille Europe, Iwaki-Hanawa Station, Akayu Station, Asahikawa Station, etc. Many of new and renovated stations are large urban transportation hubs that except of railways connect to subways and other transportation modes. They are for both conventional and HST stations. European stations have domestic and international services, while Japanese stations are for international links well connected with international airports. This chapter shows the examples of stations in Europe and Japan realized in last few years. 5.1 New stations in Europe and Japan 5.1.1 New stations in Europe In Europe, great historical stations and yards have been often part of redevelopments projects, which objectives were not only to emphasize the importance of preservation of railway heritage but also to effectively modernize such historical buildings and construct new extensions, as achievements of contemporary architecture [18], [19], [20]. Stewart [21] noticed that with most large modern stations, the tendency has been to dispense any type of train shed, locating trains on many underground levels. He states, “This fact alone has deprived arriving and departing passengers of any immediate contact with a great soaring overhead space”. Such large spaces reappeared again at airport terminal, and then at the stations for high-speed trains built within last twenty years, e.g. Gare Lille Europe (1994), Bahnhof Düsseldorf Flughafen (2000), Berlin Hauptbahnhof (2006). In regard to successful European stations, design competition or appointment of leading architects resulted in designs expressing new concepts, such as “complete creation” – impressive, symbolic structures that create new landscape (e.g. Gare de Saint-Exupéry TGV – 1994; competition won by an architect-engineer Santiago Calatrava) or “harmony and meditation” – through designs adjusted to scenery, regional history and culture (e.g. London St Pancras (2007)); Leuven Station in Belgium – 2007; competition won by an architect Nicholas Grimshaw), and “new urban core” – through designs related to urban renewal of industrial areas, such as waterfronts (e.g. Canary Wharf Station in London’s Docklands – 1999; an architect Sir Norman Foster was appointed for the project) and Berlin Hauptbahnhof (2006), which has been a part of the rehabilitation project of abandoned areas during division of the city and has reshaped the transportation network in the city (2006; competition was won by Meihard von Gerkan, Marg & Partners). Among the newest European stations are large urban stations, medium size stations, local stations revitalizing their surrounding and stations on new local lines. Montabaur Bahnhof (2002) It is a new station at the the Köln-Frankfurt high-speed railway and on the Limburg–Siersbahn railway (Lower Westerwald Railway) in the German state of the Rheinland-Pfalz. It is conveniently located near the expressway and park & ride parking. The station is served by regional and long-distance passenger services and freight traffic. The central bus station Montabaur was built nearby, as a result of the new ICE railway station, on the city side of station forecourt. The urban design is the result of a competition in 1998 (1st prize arch. Stefan Schmitz, Cologne Graf + Graf Architects). The steel structure of the roof has been technically determined but also with aesthetics in mind. It does not look fashionable but interesting and functional (Fig. 13). The aim of the design was an easy and transparent construction that sets the special mark in the center of the station forecourt. Such transparent station is easy to understand by the users. Station as through a “new urban core has modern design related to surrounding. Fig. 13 Montabaur Bahnhof, 2002 Fig. 14 Bahnhof Limburg Sud, 2003, arch. Schuster Architekten 67 Fig. 15 Congress Station, 2007 arch. Zaha Hadid Architects Bahnhof Limburg Sud (2003) As planned in 1995, Limburg Süd and Montabaur are being among five stations on the new Köln-Rhein /Main line. Deutsche Bahn, the town of Limburg and the State of Hesse ran a competition for the design of the station and its environment in 1997. In early 1997, the jury chose from 35 proposals received a "flying carpet" design from the Düsseldorf architecture office of Schuster Architekten. The name "flying carpet" referred to a 16 m wide bridge that would be built over the tracks, appearing from the distance to float (Fig. 14). The jury praised the design as creative and economically convincing. The design was modified in some respects before the start of construction. South Limburg Station building was completed in 2003. The station is served exclusively by long distance trains. In regard to new station, it was determined that 2002-2006 there had been additional economic growth of 2.7 percent in the catchment area of the new stations of Limburg and Montabaur [22]. Station as “new urban core” connect local areas to HST and gives a comfortable access to the platforms and trains. Nordpark Cable Railway stations (2007) The station in Innsbruck was designed by Zaha Hadid Architetcs. The 1.8 km long Nordpark Cable Railway, comprised of four new stations and a cable-stayed suspension bridge over the Inn River, connects the center of Innsbruck to the top of the mountain in less than half an hour. The design for each station adapts to the specific site conditions at various altitudes, whilst maintaining the coherent overall architectural language of fluidity. This approach was critical to the design for the railway, and demonstrates the seamless morphology of Hadid's most recent architecture as she pushes the boundaries of design and construction technology. These stations, although not large in size, can be categorized as “complete creations” because they are the global benchmark for the use of double-curvature glass in construction. Starting at the underground Congress Station (Fig. 15) in the center of the city, the railway travels through a tunnel to Loewenhaus Station by the river. After crossing the Inn River on Hadid's suspension bridge, held by steel cables from concrete pylons, the car starts its steep ascend on the Nordkette Mountain side to Alpenzoo Station. The final station is at Hugerbur Station (Fig. 16) at Hungerburg village, 288 meters above Innsbruck, where passengers can join the cable-car to the summit of the Seegrube Mountain. A high degree of flexibility enables the shell structures to adjust to various parameters whilst maintaining a coherent formal logic. Two contrasting elements "shell & shadow" generate each station's spatial quality, with lightweight organic roof structures of double-curvature glass "floating" on top of concrete plinths, creating an artificial landscape that describes the movement and circulation within. New production methods such as CNC milling and thermoforming guaranteed a very precise and automatic translation of the computer generated design into the built structure. The architects used state-of-the-art design and manufacturing technologies developed for the automotive industry to create the streamlined aesthetics of each station. Nordpark Cable Railway continues Hadid's quest for architecture of seamless fluidity, representing Zaha Hadid Architects' very latest contribution to the current global architectural discourse in digital design and construction. Leuven Station 2007 In 1999, the NMBS (Nationale Maatschappij der Belgische Spoorwegen) arranged an architectural competition for the construction of a new platform covering for Leuven Station. The winning project of Philippe Samyn and Partners is a case study in which the appropriate integration of the surroundings, a minimal use of material, and an optimum comfort for travelers stands paramount. The canopy, which is a futuristic steel and glass structure, is covering all the platforms behind the historical station building built in 1875 in an Eclecticism style. “Harmony and meditation” category relies on the coordination of new and historical architecture. 68 Fig. 16 Hungerburg Station, 2007 Station arch. Zaha Hadid Architects Fig. 17 Leuven Station, 2007, arch. Samyn and Partners Fig. 18 Amsterdam Bijlmer Arena 2007, arch. Grimshaw Architects Amsterdam Bijlmer Arena Station (2007) The Amsterdam Bijlmer Arena Station is situated southeast of the city on the line that links Amsterdam with Utrecht. Originally opened station in 1971, has been rebuilt in 2007. The new station was designed by Grimshaw Architects of London in association with Arcadis Architecten. The station is located between commercial development area punctuated by the newly built Amsterdam Arena and large residential area, which are connected by a 70m wide pedestrian boulevard aligned diagonally to the railway tracks. The complex which arches over the Arena Boulevard is almost 100 meters long, 70 m wide, and 30 m tall. It is mostly transparent, to blend in with the rest of the Boulevard. The redeveloped station was designed with the priorities on strong relation to surrounding and existing architecture, reflecting the qualities of “harmony and creation” type. The design by Grimshaw and Arcadis Architecten added four extra tracks to the station. Each 20m span of the roof covering platforms was supported at each end on just one column via an integrated cantilevered saddle. Arrays of columns were then aligned on axis with the boulevard to maximize visual connectivity from east to west. The most important decision concerned the roof design in general and its soffit treatment in particular. It was the modulation of its surface, its ribbons of roof glazing and its acoustically absorbent Oregon pine surfaces that convey civility from the perspective of the boulevard and the platforms below. The base-element of the roof structure is a "V" shaped continuous hollow steel girder with steel arms cantilevered on either side to support all the roof glazing (Fig. 18). The combined assembly is supported on a series of tubular "A" frames with only a single deep longitudinal stabilizer near the south end. The station is designed to provide a high level of social security both during the day and at night. Long voids are cut into the platforms to break down the overshadowed sections of the 100 m wide area below the viaducts. These voids improve the sense of safety through visual contact between the platform and ground level areas. They also permit the boulevard and bus station areas to be flooded with natural light. The hall and platforms are also designed for maximum transparency to improve the orientation of travelers within the building. Escalators, stairs and glazed lifts lead the public from the central ticket hall up to the platforms. Bellegarde TGV Station (2009) The Bellegarde multi-modal transport hub is located on the banks of the Valserine Gorge, at the bottom of a steep-sided valley, and includes an urban thoroughfare connecting the upper and lower towns, drop-off points for private cars and taxis, and a station building. Connection of both side of the station and convenient access give the station quality of “new urban core” type. The circular building is structured around two concentric rings. The first ring is clad with wood and comprises the central passenger concourse. The second features, on the ground floor, services, concessions and double entrance doors, with operational premises on the upper level. The whole is topped with a translucent cupola (Fig. 19). The station meets the latest sustainability requirements (High Environmental Quality (HEQ)), notably as regards energy consumption, with optimized heat exchange processes, supplemented by heat pumps, solar panels, ground-coupled heat exchangers and high-performance insulation. The building makes extensive use of wood, which is present in both roof structures, the cupolas and for general cladding. The site has undergone extensive remodeling with intensive management of run-off water. Some 40,000 m2 of rock was quarried to increase site accessibility in order to optimize accessibility for people with reduced mobility, between the car parks, the station building itself, and the platforms. 69 Liège Guillemins Station (2009) In Belgium, Liège, new high speed rail station – Liège-Guillemins TGV (2009) that serve to further connect Northern Europe’s rail lines, was designed by Santiago Calatrava. Station building, a “complete creation” type, is a glass and steel construction that is distinguished by its transparent exterior that enables an elegant transition between the city and the station. The new station is made of steel, glass and white concrete. It includes a monumental, 160 meters long and 32 meters high arc. The train station is meant to be one that, as a commuter passing through Liège, will grab the attention. The concept was that the station was art, and, as a gathering place, it should be a cultural and artistic place. Calatrava’s vision for the station was a building without a facade that provides greater connectivity within the city. The platforms on the top levels are enclosed by glass and steel framing, and the entire station makes great use of natural daylight (Fig. 20). The new Liège Guillemins station links two very distinct areas of Liége, previously divided by the railway tracks, the north side towards the city – a typical run-down 19th century urban area, and the Cointe Hill to the south – a landscaped residential area. The concept for the design was transparency and urban dialog with the city. Transparency is translated by the monumental vault, constructed of glass and steel, with its soaring canopies extending 145 meters over the five platforms. The huge glass building replaces the traditional facade and establishes a seamless interaction between the interior of the station and the city. The station is organized vertically: Towards station plaza – the “Place de la Gare” – the rail platforms and the access footbridge stack over 3 levels. Towards Cointe Hill, 10 meters above, there are five levels; three parking levels, a vehicular access deck linking with the footbridge, and a raised pedestrian walkway. At the station plaza level, reinforcing the urban streetscape, is a continuous strip of commercial units. Pedestrian bridges and walkways under the tracks allow for fluid communication between the two sides of the station. The grand Passenger Hall and the SNCB ticketing area are located on the main axis. The project has no facade in the traditional sense, since the interaction between interior and exterior is seamless. The monumental roof becomes, in effect, the project's facade. From any vantage point, the station building looks transparent. Newport Station (2010) Newport is the first city reached by passengers between England and Cardiff. The station is a highly visible structure providing a gateway not only to Newport, but to Wales herself. The redesign of Newport Station in Wales, UK, is part of a citywide regeneration masterplan by Newport Unlimited; the building was designed by Nicholas Grimshaw & Partners. Distinguished by a high-tech design and universal design qualities, can be categorized as a “complete creation” type (Fig. 21). As a result of Newport being bisected by the railway tracks, each half of the city has developed its own character. Grimshaw's design embraces this divide, creating two major new concourses. The North Concourse is on the civic side of the city and focuses on the needs of commuters. The South Concourse, on the commercial side, is for connecting travelers, day trippers and tourists. Each terminal's function is reflected in the distribution of ancillary facilities around the station. Ticket facilities and platform access are split equally between the two terminals. The spiral form of the station mirrors the journey taken within and helps to ease traffic flow by guiding the passenger from ground level up to the connecting bridge and back down onto the platforms. A yellow circular lift shaft acts as a central hub, integrating signage and train timetable data. All the main facilities at both terminals are housed in continuous ETFE (a fluorine based plastic) and aluminum clad spirals. The geometry and application of materials blur the boundaries between wall and roof, as the primary cladding materials have been used for both purposes. New station is aesthetic; it improves an access to the trains and connections to the city. Fig. 19 Bellegarde TGV Station, 2009, Fig. 20 Liège-Guillemins TGV, 2009, Fig. 21 Newport Station, 2010, arch. AREP Partners arch. S. Calatrava 70 Wales, arch. Nicholas Grimshaw & Birmingham New Street Station (2013, 2015) Birmingham New Street has more passengers per year (31.2 millions) than Glasgow Central (26.6 millions) to be the busiest station outside London, taking eighth place in the GB rankings. The redevelopment project – “Gateway Plus” by Network Rail is under the way and first half of the brand new station was opened on April 2013. Among submitted proposals, design by Foreign Office Architects had been chosen. The redevelopment will include a new concourse, a new exterior facade, and a new entrance on Stephenson Street, and is expected be completed in 2015 (Fig. 22). After completion, the station will be enclosed by a giant atrium, allowing natural light throughout the station and to all 12 refurbished platforms. The new concourse will be 3.5 times bigger giving more space for the 140,000 passengers who use the station every day. There will be better pedestrian links to and through the station, with new entrances and a new public square improving connections across the city. It has been forecasted that improved transport connections will stimulate regeneration in the area and the stunning station will add to Birmingham's reputation for good design and transform New Street into a world class destination. The redeveloped Pallasades Shopping Centre will be completely transformed and will be rebranded as Grand Central Birmingham when it opens in 2015, anchored by John Lewis' full line department store. Fig. 22 Birmingham New Street Station, Fig. 23 Ryūō Station,Yamanashi Fig. 24 Hōshakuji Station, Tochigi 2013, arch. Foreign Office Architects Pref., 2008, arch. T. Ando Pref., 2008, arch. K. Kuma 4.2.2 New stations in Japan After the last war, stations in Japan were mostly conceived as standardized buildings for trains and rail passengers. Since the 1970s, during the rapid economic growth of the country, stations acquired more functions, including department store integrated with passenger facilities in the city center, and amusement park or other recreation facility at the rural end of the line. Stations became larger complexes during the first wave of station development (1971-1987). During the second wave (1987-present), station complexes consisting of office tower, shopping mall block and platform for transportation became more original. After construction of Kyoto Station (1987; Hiroshi Hara, West Japan Railway Company), the trend to design more meaningful station buildings has been continued. As it expressed architect Kengo Kuma – “standardization has produced too many bland, unresponsive structures, meaning stations are unable to reflect the character of the areas they serve” [23]. During last twenty years, there have been built plenty of stations in Japan with good design, often done by well-known architects. To such original stations belong: Yufuin (1990, arch. A. Isozaki); Iwaki-Hanawa (1993, arch. K. Ito); Akayu (1993, arch. E. Suzuki); Keihan-Ūji (1995, H. Wakabayashi); Yabuki (1995, arch. I. Shibata); Tawazako (1997, arch. S. Ban); Shinjō (1999, arch. K. Yamashita); Akatsuka (1999); Ōishida (1999, arch. T. Fujiki); Sakuranbo-Higashine (1999, arch. T. Honma); Nagoya (2000, arch. Kohn, Pedersen Fox Assoc.); Saitama Shintoshin (2001, arch. E. Suzuki); Hachinohe (2002, arch. S. Okada); Hakodate (2003, Hokkaido Nikken Architects); Kagoshima-Chuo (2004); Fukui (2005); Hyuga-shi (2008, H. Naito); Ryūō (2008; arch. T. Ando), Iwamizawa (2009, arch. H. Nishimura); Kōchi Station (2009, arch. H. Naito); Asahikawa Station (2011, arch. H. Naito); Hakata Station City (2011; Kyushu Railway Company) and Osaka Station City (2011, West Japan Railway Company, JR West Japan Consultants Company, Nikken Sekkei and Yasui Architects & Engineers). Three types of station building can be distinguished in recent stations in Japan. “Station-tower” is characterized by high-rise station building. “Station-city” – has a large block-type multifunctional station building. Even smaller stations, for example Tokyo metropolitan stations, have often high-rise station 71 buildings, which include station and hotel, offices, and shops. Typical tower-type is Nagoya Station (1999). Station building here, with distinguishing twin towers, became city’s modern landmark equivalent to Nagoya castle. One of the newest high-rise station buildings is Hikarie (2012) at Shibuya Station. The second type – “station-city” has many facilities – like a city – above the ground and underground, and other urban functions accommodated in large station complex, with station squares on both sides. An excellent example of such type is Osaka Station City (2011). “Station-city” may also include high-rise buildings, like Shibuya Station, which is under redevelopment and new buildings will be constructed. Both types include new or renovated historical buildings – preserved or rebuilt due to consideration of their structure and seismic standards. Third representative type characteristic for many stations in Japan, mainly local, is “station-gate to town” – a medium-size building with original design suiting local surrounding, and with purpose to play various functions addressed for local residents. Examples of such station include Ryūō (2008), Hyūga-shi (2008), Hōshakuji (2008), Kōchi (2009), Iwamizawa (2009) and Asahikawa (2011). Ryūō Station (2008) Ryūō Station is a local railway station located in newly established Kai-city in Yamanashi Prefecture. The building was designed by architect Tadao Ando. The concept is based on the development of the station building around connecting corridor (jiyu tsuro). The building consists of geometrical volumes; each is assigned to different function. This is a successful example of “total design”, because all parts of the stations are designed in similar style, including platforms. Geometrical volumes intersect at various angles; these edges are emphasized by special lighting, as well by day-lighting coming into the building. The station is spacious, functional, and easy to understand. New station, a “gate-to town” type, has become a symbol for a new city. At the second stage of the project, station plazas on both sides of the station have been realized (Fig. 23). They provide relaxing atmosphere and comfortable access for pedestrians, and by bicycles, bus, taxi and private car. Hyūga-shi Station (2008) It is another local station with distinctive design. Architect Hiroshi Naito (Naito Architect & Associates) has designed several railway stations in Japan and Hyūga-shi in Miyazaki Prefecture is one of them. The hybrid structure is based on steel frames and laminated wood made of locally produced cedar wood (sugi). It covers the space of main terminal, which is 110 m long and 18 meters wide. The wood has been also adopted for details at the building and at the station plaza, therefore the border between the building and its surrounding, including approaching road, has been fluid. The platforms under the roof are located on the second floor. The exterior walls are filled with glass therefore the platforms are very bright. At night the building is illuminated and the structure looks very ornamental. Such bright and spacious station with local wood reflecting local traditional architecture, a “gate-to town” type, is very pleasing and convenient. Such kind of aesthetic station is a “station for people”. Hōshakuji Station (2008) Another local station is located in Takanezawa-machi, Tochigi Prefecture. The building was designed by architect Kengo Kuma (Kengo Kuma & Architects (KKAA), JR East Design Corporation). To connect the east and west sides of the town of Takanezawa, which had been divided by the railroad, architect opened the east exit of the station giving access to the “Chokkura Plaza” and shelters also designed by Kengo Kuma. Having decided to preserve an abandoned rice storage house constructed of Ōya ishi stone, the architect transformed the “pores” which occur in this stone into the a new structural system, in which steel frame and Ōya ishi are combined diagonally, and added the system to the warehouse. He then extended the diagonal skin to the other “pore” or “aperture” – the station. Ōya ishi is an unique stone and has all the softness of soil. The design focused very much on the ceiling. On the upper concourse the ceiling depth is at its most shallow, creating a generous lofty space, while toward the edges and at the base of the stairs the ceiling drops to create enclosure and foil the deepest structural members. There are approximately 1,500 diamonds in total, that in plan share the same size and proportion, with cross-axial dimensions from point to point of 900-1,820 mm (Fig. 24) [23]. The design not only linked the station's east and west exits, but also the station and its location. The concept of the “station-gate to town” was to restore the community by meaningful design related to locality. For the structure of the station, in order to reduce the weight, plywood was used instead of Ōya stone. By using wood the architect revived the warm atmosphere of station and connected the station building to the landscape of paddy fields and wooden houses in the town of Takanezawa. Architect created a varied spatial 72 experience by applying a diamond plywood motif to an otherwise steel station bridge. As a “station for people”, it combines aesthetics, locality and function considering local demands. Kōchi Station (2009) This local station in Kōchi was designed by architect Hiroshi Naito (Naito Architect & Associates, Shikoku Railway Company, Shikoku Kaihatsu Corporation). The station was built as a part of the project of the elevation of railway line, which improved transportation here at the north-south direction. The main part of the station is a huge roof built of steel structure and arches made of laminated wood of locally produced cedar wood (sugi). It cover station hall which is 38.5 m wide and 60.0 m long. The design of station hall and platforms is completely unified – as a total design. It is linked will to local community, “gate-to town” type – serving as a “station for people”. Iwamizawa Station (2009) The station located in Iwanizawa city on Hokkaido was designed by architect Hiroshi Nishimura and Workvisions Architects Office, who won the competition. The exterior and interior walls of the building with RC structure are finished with local brick. The brick is combined with glass, giving the station light and familiar appearance. The concept was to produce an image of huge traditional paper lantern, which would be well distinguished. The building combines tradition and modernity with the local characteristics. The project won in 2009 a prestigious „Good Design Grand Award”. With such aesthetic qualities and local characteristics, the station is certainly a “station for people”. Akihabara Station – „Akihabara Crossfield” (2006) and „Atre Akihabara” (2011) Akihabara Station consists of high-rise buildings and is an example of “station-tower”. Akihabara is ninth metropolitan station serving more than 460,000 people/day. In recent years Akihabara Station has undergone renovation and extension. The station is location at the intersection of railway lines, therefore its layout is on various levels and complicated. The complex „Akihabara Crossfield”, designed by the Kajima Corporation, consists of two buildings – 31-story „Akihabara Daibiru” (2005), where the research center is located and – 22-story „Akihabara UDX” (2006), which contains shops, restaurants, multifunction rooms, multilevel parking, etc. (Fig. 25). On the other side of the railway line is located a new station building „Akihabara Atre”. Like usually, this type of station-tower contains in lower part station facilities and commercial functions, in the upper offices (Fig 26). A station with all facilities easily accessible for people is convenient. Additionally these new buildings are modern, nice and friendly for people. Fig. 25. Akihabara Station – “Akihabara Fig. 26. Akihabara Station 2011, Crossfield”, Tokyo, 2006 – “Akihabara Atre”, Tokyo, 2011 Fig. Osaka City Station, – „Clock Square” Asahikawa Station (2011) Asahika Station, designed by architect Hiroshi Naito (Naito Architect & Associates), is a local station in Asahikawa city in Hokkaido. Like other stations designed by Naito, it has been conceived with the use of local wood. The building with transparent walls has been designed in harmony with surrounding, including the Chūbetsu River and surrounding greenery, as a “station-gate to town”. The structure is made of RC; the wood has been used for windows, railings, benches, and various finishes. In the evening the light coming out of curtain walls gives the building organic character. Osaka Station City (2011) Osaka Station City is one of the largest stations in Japan (395,000 people/day; 2010). New station building 73 was designed by West Japan Railway Company, JR West Japan Consultants Company, Nikken Sekkei and Yasui Architects & Engineers. The concept was to design building that will unify its north and south side. On the northern side was constructed a high-rise, 28-story „North Gate Building”, and on the southern side existing building was developed as a 16-story tower. The buildings are connected through a large roof with dimensions of 180 m and 100 m (Fig. 8). The structure is made of steel frame, RC and filled with glass. The total floor space of the new station (without towers) is 42,300 m2. New 5-story station building contains station functions and commercial. North tower has shops, cinemas, sport facilities, station facilities and offices. South tower contains shops, hotel and parking. The station designed as a “station-city”, has like a city also eight plazas. One of the plaza, located centrally, is the „Clock Square” (Toki no hiroba) (Fig. 27). Osaka Station City has become modern facility with recreation spaces – thus a “station for people”. Hakata Station – “JR Hakata City” (2011) Hakata Station was refurbished in 2011, when a new station building was constructed – “JR Hakata City”, which is an urban transportation and commercial complex. The station was prepared for the opening of Kyushu Shinkansen. The station serves 96,500 people/day (2009). New complex designed by Kyushu Railway Company 11-story building, which was planned bigger than before, to make multifunctional station that can revive the city. The concept of a new station was „a gate” and „a new energetic urban space”. Except transportation function, it has also commercial function, including department store and restaurants, cultural (cinemas) and hotel. Various functions at the station and a presence of large multifunctional building qualify it to “station-city” type. The station has also been conceived to become an urban landmark. Two sides of the railway are connected by a corridor (jiyu tsuro). The building has glass curtain walls and large canopy with glass cladding. There are also locally produced tiles „Arita” used for a composition made of drawings by various authors. It is so callled „urban forest”. Local motifs make the station more familiar for local residents. There are observation decks, large station plaza partly covered by large steel and glass roof. A great clock of about six meters in diameter, which is installed on the fifth floor of the elevation and lit with LED lighting, has become a symbol of the station. Shibuya Station – „Hikarie” (2012) Shibuya is third busy station in Japan (805,000 people/day). It is currently under the development and when it will be completed, it will contain several high-rise buildings. But because of the size of the station complex and its multifunctional character, such station can be qualified as a “station-city” with high-rise buildings. One of the buildings already completed is “Hikarie”, designed by Nikken Sekkei i Consulting Office of Tokyu Corporation (Fig. 28). The construction of the building was associated with the construction of Fukutoshin Line and the move of Tokyu Station underground in 2013 to connect with subway. Currently the „Hikarie” contains the entrance to Fukutoshin Line. The building is connected with existing station by new “deck” designed by arch. Hiroshi Naito. “Hikarie”, which is 182.5 m high, has become a landmark in Shibuya. This new generation station building combines transportation with various services, such as commerce, services, culture, education, information technology, sport, etc. located on many floors. The total floor area is 144,000m2. Station functions, shopping center, theatre, art gallery, multifunction rooms and offices are located on 34 floors above ground and 4 underground. Above parking, on lower floors (B3-5F) is located shopping center „ShinQs”, and above (6F-7F) coffee shops and restaurants. The are around 200 stores and 26 restaurants. At 8 floor (8F) called „8/” (hachi) there are art galleries and creative studios „Hachi”. They are designed for workshops, exhibitions, short movie presentations to serve people to communicate and to initiate a dialog between creators and public. On the next floor is located „Hikarie Hall” (9F), a musical theatre with 2000 seats – „Tokyu Theatre Orb” (11F-16F); and above are offices (17F-34F). An observation deck – „Sky Lobby” is located on the 11th floor. “Hikarie” was designed according the concept of multifunctional center reflecting our age of information technology. It has been shown in the functional scheme and interior design. The outstanding feature is its technology, as well as creativity. “Hikarie” is a very modern building and it is surely a “station for people”, where out of mainstream art and design can be promoted. 74 Fig. 28 Shibuya Station – „Hikarie”, Fig. 29 Paddington Station – “The Lawn”, Fig. 30 St Pancras Station, 2012 1998, arch. Nicholas Grimshaw and Partners 2007, arch. Sir N. Foster 5.2 Refurbished stations in Europe and Japan 5.2.1 Refurbished stations in Europe Many of refurbished European stations are large terminals that consist of historical buildings and new extensions. Usually these extensions are respectfully connected with preserved historical buildings into “integrated stations” of “harmony and meditation” type. Such stations express many aesthetic qualities, coming from the past and present achievements. Among European stations that have undergone refurbishment are: Madrid Atocha (1985; arch. Rafael Moneo); Leipzig Hauptbahnhof (1997; ECE Projektmanagement); Gare du Nord (2001; SNCF Gares & Connexions and AREP); Dresden Hauptbahnhof (2006; arch. Sir Norman Foster (Foster and Partners)); St Pancras International (2007; arch. Sir Norman Foster, Alistar Lanley, Arup); Gare de Strasbourg (2007; SNCF Gares & Connexions and AREP, arch. Jean-Marie Duthilleul, Michel Desvigne); Paris Gare de l'Est (2007; SNCF Gares & Connexions and AREP); Bahnhof Greifswald (2009); London Waterloo (1993; 2003; 2012; arch. Nicholas Grimshaw & Partners); Paris Gare Saint-Lazaire (2012; SNCF Gares & Connexions, DGLa, and AREP); King’s Cross Station (2012; arch. John McAslan & Partner); Paris Gare de Lyon (2013; SNCF Gares & Connexions, AREP / Design office: J.M. Duthilleul, E. Tricaud); Bruxelles-Schuman Station (2014 uc; arch. AREP Ville) and Paddington Station (1999, 2012, 2017; arch. Nicholas Grimshaw and Partners). Among these projects, Leipzig Hauptbahnhof (1997) is one of the most successful renovation projects realized with respect to cultural heritage and the requirements of modern railway stations. Dresden Hauptbahnhof (2006), originally one of the most impressive late-nineteenth-century railway stations in Europe, has been reconstructed now has spectacular glass dome. This redevelopment has restored the integrity of the original design with modern means. St Pancras International (2007) is a historical London terminal that has been completely renovated, upgraded and transformed into the Eurostar terminal. One of the largest Europe’s reneval projects is the “Stuttgart 21”. It will see the train tracks that cut through the center of the southern German city placed underground, creating entire new neighborhoods. First conceived in 1988, the project has become controversial and gone through several permutations, but three key elements remain: creating a high-speed railway connection to the city's airport; transforming its main railway station from a terminus station to a through station; and creating a 60-kilometer high-speed rail line between Stuttgart and Ulm. After many delays related to legal, financial, administrative and other factors, the plan was approved in 2007 and construction, which is expected to last up to a decade, began in February 2010. Paddington Station (1998; 2012; 2017) This station in London has undergone renewal several times, including extension of the station concourse and London Underground ticket offices, and improvement of signage and customer information systems. The station has also received a facelift as part of an improvement program. The improvement was designed by Nicholas Grimshaw and Partners and the most recognizable part of it has been “The Lawn” – restaurant corner behind the glass wall (Fig. 29). The fourth span was renovated in 2011, involving repair and restoration of the original Edwardian glazed roof. 75 Currently, the station is undergoing the most significant redevelopment since the historic station was completed. Local firm Weston Williamson is in charge of the renovation, which calls for a number of new sections to be constructed as well as retrofitting the older ones to accommodate increased ridership and new London Crossrail line, which now under construction. The Grade I listed station is considered for the UNESCO World Heritage Site list. At such historical and valuable station the design balances many issues, like heritage, conservation, transport integration, way-finding, orientation, servicing and security. The renovation will create a new great space that responds to Brunel’s original concept of a “great interior”. New ticket hall will have a glass canopy. Renovations are currently underway and are expected to be complete in 2015 and by 2018 the new London Crossrail line should be in operation. The project known as the Paddington Integrated Project (PIP), involves construction of a new station. The station will be built by Crossrail, a subsidiary of Transport for London (TfL), which was set up to develop a new infrastructure to address congestion and capacity improvement on London's existing railway network. New Crossrail stations, designed by renowned architects will be constructed along the central route at Paddington, Tottenham Court Road, Bond Street, Farringdon, Liverpool Street, Whitechapel and Canary Wharf. The project of rebuilding the Paddington Station has a target completion date of 2017. Paddington Station modernized and adjusted to contemporary needs and having such heritage is a “station for people” – to enjoy historical architecture and modern amenities. St Pancras International (2007) St Pancras International in London, neglected through many years, is very distinguished station, often termed in history as the “cathedral of the railways”. It was designed by an architect Sir George Gilbert Scott and completed in 1868. A single-span iron-and-glass train shed with beautiful and biggest of its kind for decades arch roof was designed by William Henry Barlow and Rowland Mason Ordish. When the station was first opened in 1868, a 74 m-wide train shed was a spectacular structure that held the world record for the largest enclosed space. It has recognizable red brick façade with neo-gothic arched windows and clock tower. St Pancras was successfully refurbished and developed and still remains one of the greatest Victorian buildings in London. The master plan for the extension was originally created by Sir Norman Foster and developed by Alistar Lanley and Arup. After a decade-long project the station was officially re-opened as the St Pancras International in 2007. It serves as a final destination for Eurostar and high-speed rail in the UK. After opening of the station, the number of Eurostar passengers increased for about 20%. Annually, the station is used by more than 6.6 million passengers (2008). One of the structural-artistic features of the restored station is its roof which has been fitted with 14,080 glass panels giving a total area of nearly 10,000 m2. The extension has been designed as a new and modern structure covering all 13 platforms. It has an aluminum-clad louver-blade and light glass roof floating above the platform deck. A glass roof allows natural light to penetrate the high-speed trains’ platform on the upper level (Fig. 30). Street level provides approach to the trains and it is housing ticket offices and shops. “The Arcade” – independent and boutique retailers are located on the first floor, beneath the Victorian brick arches. The old and new structures are separated by a glass transept of more than 100 m (Fig. 3). The various domestic service platforms, both above and below ground level, are accessed via a street-level domestic concourse, named ”The Market”, that runs east to west at the point where the old and new parts of the station meet – the domestic and international concourses meet at a right angle, forming a “T” shape. The main pedestrian entrance to the station is at the eastern end of this domestic concourse opposite the recently renovated and extended King`s Cross Station. Restoration of the station has been accomplished with modern interventions that have been designed to be subservient to the original architecture whilst enhancing its grandeur. The train shed has been restored to as near original conditions as possible and the disused formerly industrial space has become a new 21 century feature – a vibrant public space within international terminal. The total design concept was to express the beauty of glass arched roof, its painted ironwork, in combination with red brick and modern materials such as glass railings, elevators and walls. The artistic beauty of engineering has been enhanced by well done coordination with architectural details, finishes and art. Station is lit with light, spacious and elegant. Blue-painted newly extended train shed carries the artistic image of historical engineering with contemporary one, and a good sense of total coordination between the past the present. Several artworks have been installed at the station, including a 9-metre statue – “The Meeting Place”, designed by British artist Paul Day, which stands beneath the station clock (Fig. 7). The station, which is spacious, with well-designed 76 information signs, with comfortable platform for Eurostar, is a “station for people” – where people can feel well. Gare de Strasbourg (2007) Gare de Strasbourg in Strasbourg is a historical and the second largest train station in France. It was opened in 1846. In 1883 it was rebuilt according to design of architect Johann Jacobsthal. It serves also TGV lines, since 2012 – Frankfurt-Strasbourg-Marseille. To adjust station quality to TGV services, in 2007 the station has reshaped in into an intermodal transportation hub. Restructuring of the station involved creation of a transport gallery added to the historic façade (site surface: 32,000 m²; design: SNCF, AREP / Design office: arch. Michel Desvigne). Historical building was framed by a 120 m long glass shell designed by Jean-Marie Duthilleul, the architect for the SNCF (Fig. 31). The four hectares of a square in front of historical station, edged by a series of imposing buildings with the pink sandstone station facade and its long enclosing glass gallery serving as the main backdrop, have been transformed into a garden. The 25-metre high “winter garden” serves as the entrance building and as the link between train tracks and trains, trams, buses, taxis as well as the underground. In this project by AREP, landscape design was done by an architect Michel Desvigne. The refurbished station is distinguished by its form combining historical building and new glass extension, and it won the Brunel Award in 2008. Such station performing the balance between new and heritage, with pleasant intermediated space under the glass roof is a “station for people”. Fig. 31 Gare de Strasbourg, 2007, Fig. 32 Gare Saint-Lazaire, 2012 – Fig. 33 Paris Gare de l'Est, 2007, arch. SNCF, AREP / arch. Michel Desvigne “Salle des Pas Perdus”, arch. SNCF, AREP arch. SNCF, AREP Paris Gare Saint-Lazaire (2012) The very first French railway station, built in 1837, Gare Saint-Lazare had subsequently been extended by a succession of ill-assorted buildings which had remained untouched for many years. The project was done by the SNCF Gares & Connexions, DGLa, and AREP. The remodelling of the station, which concerns the Metro, street and platform levels, has been designed to improve clarity and fluidity of movement, to create new areas for shops and services, and to provide passenger signage. A well has been created in the renovated Salle des Pas Perdus waiting hall and equipped with stairs and escalators delivering natural light to the underground, Metro-level interchange area (Fig. 32). The forecourt, which stands on SNCF land, has been cleared and redeveloped to optimise taxi and private car drop-off and bus stops. Paris Gare de l'Est (2007) Restructuring of the Paris Est station (Site surface: 33,100 m²) coincided with the launch of TGV services. The project was done by SNCF Gares & Connexions and AREP. The original glass-tile roof vault spanning the left-luggage area, which was located in the centre of the 1930 building, has now regained its original function as a "light vault" housing the new passenger hall leading to the three metro lines. The vertical access ways leading to the metro have been modified, as have numerous existing areas which before had not been utilised well. Now new shops and services have been designed in unused areas. Some 2,000 m² of additional sales surfaces and a supply centre have also been created. Car traffic has been regulated on the station forecourt and station plaza has been redesigned (Fig. 33). All these transformations have created an image of a functional multi-modal transport hub, a “station for people” that blends sensitively with an outstanding site, in accordance with passenger expectations. 77 King’s Cross Station (2012) King’s Cross Station is a historical London terminal, which was completed in 1852. It was designed by an architect Lewis Cubitt for Great Northern Railway, who also designed a nearby Great Northern Hotel. The restoration project started in the 1980s, with a plan by Foster & Partners, which strengthened connections with neighbouring St Pancras International. Around 60 % passengers at King’s Cross, change trains between train and Tube, or between King’s Cross and St Pancras. In an effort to return the station to former glory and provide comfortable environment for 47 million annual passengers, Network Rail undertook in 1990s a conservation and redevelopment project by architect John McAslan & Partners. King’s Cross Station renewal combined three different approaches of historical conservation: re-use, restoration and new build. The train shed and range buildings have been adapted and re-used. The station’s obscured Grade I listed façade has been very precisely restored. To deliver an efficient space, the new development included the insertion of a semi-circular building with glass façade – Western Concourse – that provided better environment for the purpose of an interchange (Fig. 34). The project including also re-glazing of the arched roof and various repair works, was opened in 2012. The area between St Pancras and King’s Cross stations was covered by new structure with a stunning roof. Historical heritage architecture has been exposed and ticket office retained its original decorations. The space is modern, bright and with an array of food and retail outlets has an image of an airport rather than a conventional station facility. It is spacious and easy to understand. The final phase ended in 2013 with the creation of a new public square – King's Cross Square in front of the station (the landscape design by Stanton Williams Architects). The square has granite benches, stunning lighting, trees and an area dedicated to art. The two Underground entrances in the square are being upgraded; a glass canopy provides covered access from the station. The regeneration of King’s Cross Station has affected positively improving neighboring areas. Fig. 34 King’s Cross Station, 2012, Manseibashi Arch. Sir N. Foster Fig. 35 Bruxelles-Schuman Station, 2014, SNCF, AREP / J.M. Duthilleul, E. Tricaud Fig. 36 JR Kanda Building, 2013 and preserved remains of Manseibashi Station Paris Gare de Lyon (2013) Refurbishment included refitting of the existing hall and creation of two halls (design: SNCF Gares & Connexions, AREP / Design office: J.M. Duthilleul, E. Tricaud). For the increase of traffic planned with the arrival of the Rhine-Rhône TGV, the platform have been re-sized to accommodate the space and increase travelers’ facilities (35 millions of annual travelers for main lines). In echo in the architectural vocabulary of the restored existing hall, and so as to form a coherent group, two additional halls are realized in the tradition of the big botanical greenhouses of the 19-th century. Transparent contemporary façade of the new hall allows a consequent spatial reorganization with a harmony with existing building. Bruxelles-Schuman Station (2014 uc) Station is located at the heart of the “European district”, which is gearing up for major urban development, and located at the intersection of a new railway and metro line. The station upgrading coincided with the arrival of a second railway line. Renovation included creation of two new station halls (design: AREP Ville/Design Office: Van Campenhout). New concourses have been built to organize exchanges between the various networks. One concourse, lit by light wells and clad in sand-colored ashlar, houses services and shops, and signposts access to platforms and the district's prestige buildings. The other envelops the old 78 concourse with a glass roof structure and, by becoming the station's stand-out feature, asserts its presence in the urban setting (Fig. 35). New convenient station with increased space will serve as “station for people”. 5.2.2 Refurbished Stations in Japan Refurbishment and redevelopment of Tokyo Station, completed in 2013, included restoration of historical building and construction of new buildings. In Japan many historical stations are being rebuilt from the beginning and their preservation is related to their essence or elements rather, than a whole. One of successful projects undertaken by JR East was Ueno Station (2002). Historical modernist building of 1932 was preserved; station hall was refurbished, added glass roof and connected with concourses with food and retail at the “Atre Ueno”. New roof structure fitting well to historical building, makes it more attractive. Many elements emphasizing the location and history, including art, have been installed at the station. Manseibashi Station (former site) – “JR Kanda Manseibashi Building” (2013) and “mAAch Ecute Kanda Manseibashi” (2013) At Manseibashi, between Kanda and Ochanomizu stations on the Chūō Line, an environmentally-friendly office building – “JR Kanda Manseibashi Building” was constructed on the site of the old Transport Museum, and a new walking route was constructed by building a river-front deck, while the remains of the Manseibashi Station building and the red-brick viaduct have been conserved (Fig. 36). Using valuable community resources, this project was designed to revitalize communities by providing a place where people from the Akihabara, Kanda Sudachō and Awajichō areas can meet, and by reminding them of the old Manseibashi Station. Another building along the Kanda River, made by reclamation of the platforms and staircases of the old Manseibashi Station, with original arches, is the “mAAch Ecute Kanda Manseibashi” – a commercial facility and a front deck using old Manseibashi Bridge. The concept for this renovation project was “Manseibashi Salon” – consisting of various stores and an observation deck. The old platform of Manseibashi Station is positioned at one end with an observation deck named “2013 Platform”. The deck and nearby café are situated between the inbound and outbound lines of the Chūō Line, giving users a unique up-close view of passing trains. Such restoration and construction enabled the revival of the atmosphere of historical station. Tokyo Station City (2013) Tokyo Station is historical main terminal in Tokyo and the eighth busiest stations in Japan (180,000 people/day). Annually, the station is used by more about 14 mln passengers. It has two different sides: Marunouchi with neo-renaissance “Marunouchi Building” (1914) designed by architect Kingo Tatsuno; and Yaesu with new office towers and new entrance portion with a roof. JRE, along with four other companies including Mitsui Fudosan, have been redeveloping Tokyo Station since the 2004, as a part of efforts to revitalize the heart of the capital. Tokyo Station has been refurbished and developed according to a new concept of a conglomerate “station city”. Tokyo Station City consists of historical and modern buildings developed on both sides of the railway track. On Yaesu side, the “Sapia Tower” with offices, Hotel Metropolitan Marunouchi and conference facilities, and the “GranTokyo” twin south and north 200-meters high-rise towers designed by Helmuth Jahn, housing the Daimaru department store, were completed in 2007 – and they symbolize future. Central part on Yaesu side have been replaced by a lower than before structure, with a 240-meter-long pedestrian deck under large dynamic and airy canopy covering outdoor and loading areas and of 10,700 m2 plaza (2013). The deck designed by Helmuth Jahn is covered by a huge white roof – “GranRoof” – that resembles a sail (Fig. 4). Shops have been positioned along the deck overlooking the spacious plaza, which currently is under construction (Fig. 37). On the Marunouchi side, a red brick “Marunouchi Building” has been demolished and restored again to its original shape from before wartime damage and in consideration of seismic standards – and it symbolizes past (2012; Fig. 38). Original bricks and stones have been re-used. Third story was added and octagonal domes have been rebuilt into original form. In the interiors, relief decoration was restored and existing structure was utilized (Fig. 2). The surrounding area is being converted into w station square giving more space for pedestrians and extending towards wide walkway to Imperial Palace (scheduled for completion in 2013). In 2013, JR opened Marunouchizaka Area as a new addition to GranSta in Tokyo Station. Another zone – Central Street, in the central concourse on the ground floor, was launched to coincide with the grand re-opening of historical Tokyo Station building. 79 In spite of new buildings, also underground space have been developed and upgraded – “Tokyo Station Media Court” (2000), “Silver Bell” (2002) – a recreation space designed by an architect Edward Suzuki, “Kitchen Street” (2004) – a mall with restaurants, and a “GranSta” (2009) – “a stage” created for people to rest and enjoy various facilities that has been opened on the first basement (Fig. 39). Rich station environment with various facilities underground and above ground level dedicated for convenience of people, make the Tokyo Station City a “station for people”. Fig. 37 Tokyo Station – Yaesu side “Kitchen 2013 Fig. 38 Tokyo Station – Marunouchi Fig. 38 Tokyo side, 2012 Street”, 2004 Station – CONCLUSIONS It has been widely recognized that railway stations are designed not only for trains, they are designed for people. Railway companies in Europe and Japan conduct policies that aim to revive railways. They develop railway stations as multifunctional facilities, aesthetic and convenient. In Europe there are either new or redeveloped large urban stations designed by best architects as “complete creation”, “harmony and meditation” or “new urban core”. The attention is put on their architectural form. There are also medium-size stations, sometimes designed with the use of new computer technologies that give the buildings sophisticated design. The beauty of such stations has been achieved by outstanding architecture and innovative structures. Designers consider their location and link stations with their communities. The trend here is to preserve historical buildings and stations are part of them. In Japan the way of preservation of monuments is different than in Europe because of different circumstances – many buildings are completely rebuilt. The attention here is focused on details and amenities. New or renovated stations in Japan have three basic forms – “stations-cities”, “station-towers” and “stations-gate to town”. Some station-cities include also high-rise buildings. Smaller stations in Japan, similarly to Europe tend to be more original reflecting local communities and linked to community town planning. “Stations for people” are important elements of urbanscape, with rich aesthetic and cultural values, both – as modern buildings, or upgraded, or preserved historical remains. References [1] KIDO E.M., Elements of the urbanscape in Tokyo, Teka Commission of Architecture, Urban Planning and Landscape Studies, Polish Academy of Science, Vol. 8/1, 2012, pp. 75-92. 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Key Words : Earthquake fire, Pilot project, NPO 1. はじめに 我が国は,高温多湿のアジア・モンスーン気候に 属しており,天より授かる豊富な雨水は豊かな水と 緑をもたらし,先人達は長い歴史を通じて世界でも 類を見ない「木の文化」を育んできた.その結果生 み出された,日本の木造建造物とこれで構成される 伝統的な町並みは,いまや人類にとってのかけがえ のない文化的資源となっている. 一方で,木は燃えやすいという危険性を持つ.特 に地震等に起因する同時多発火災に対する脆弱性 は,既に歴史が証明するところとなっている. しかし,文化遺産をはじめとする伝統的な木造文 化の様式を,火災に弱いという理由だけで早計に世 から消し去ってしまうことは,文化的多様性や地球 環境の保全という視点から見ても,人類にとって計 り知れない損失となる.木造文化の都市をまもるた めには,建造物を不燃化する方向性だけではなく, 「万一燃えてもすぐ消すことのできる安全な環境 を実現する」ための,消防戦略を考慮した環境づく りが重要である. 阪神淡路大震災後に,上記の観点から,国に対し て,日本の文化をまもる取り組みを行政に働きかけ, 近く起こるとされる東南海・南海地震等が発生す る前に ,早期に実現するための活動組織として , 「地震火災から文化財を守る協議会」が平成9年 に設立され,当社は協議会の事務局として活動して きた. 82 協議会活動から,日本の歴史や文化の象徴である 京都を国家財産として守り活かす「京都創生」と して,京都市と連携し,清水地域の「文化財とその 周辺地域を守る防災水利モデル整備」(パイロッ ト事業)が完成した.この施設は市民が日頃から利 用できるようになっており,現在運用を行っている ところである. 本論では,「地震火災から文化財を守る協議会」 の事務局としての,当社の活動について,紹介する ものである. 2. 既往調査研究 文化財防災として,国土交通省,内閣府,京都市か ら,研究開発費や業務を受託し,当社は京都大学等 の協議会関係者と連携,協力しながら下記に示す報 告書のとりまとめを行い,防災水利整備事業の推進 に大きく寄与してきた. (1)国土交通省「H13 年度建設技術研究開発費補 助金」研究報告書(H13 年度) (2)内閣府「文化財保護と防災まちづくりに関す る 調査業務」(H15 年度) (3)内閣府「災害から文化遺産と地域をまもる検 討調査業務」(H16 年度) (4)国土交通省「文化遺産を核とした地域の防災 力向上の取組みによる地域の活性化」による 検討(H16 年度) (5)京都市「自然流下式消防水利システムの研究 いる. 調査業務」(H17 年度) (6)京都市「清水地域の防災水利整備事業に関す る研究調査業務」(H17 年度) (7)京都市「清水地域の地域特性に応じた消化シ ステムに関する研究調査業務」(H18 年度) 平成13年度の研究報告書は,地震火災から木造都 市を守る環境防災水利整備に関する研究開発とし て,①地震火災の特徴を踏まえた環境防災水利整備 の基本理念導出,②事例調査に基づく環境防災水利 整備のための技術情報データベースの構築,③京都 市を事例とした地震火災の危険地域推定手法の開 発と水利整備指針の導出,④ケーススタディ地域に 対する環境防災水利整備計画と支援システムの開 発についてとりまとめを行った. 平成15~16年度は,平成13年度の研究成果を踏 まえ,内閣府の委員会において,地震災害から文化 遺産と地域をまもる対策のあり方をとりまとめた. これらの成果を受け,災害から文化遺産と地域をま もるための今後の展開として,①防災基本計画等に おける文化遺産の防災対策の位置づけ,②地域にお ける事業の早期実現(パイロット事業の取り組み 支援),③地方公共団体への文化遺産の防災対策の 意識の普及,④指定文化財等における総合的な防災 対策の推進(文化財所有者への防災対策支援),⑤ 自主防災組織の活性化(防災まちづくりに対する 支援)が位置づけられた. 内閣府の委員会において,「地震災害から文化遺 産 と 地 域 をま も る 対 策の あ り 方 」( 平 成 16 年 7 月)がとりまとめられた結果,京都市の清水寺地域 におけるパイロット事業を国が支援することとな った.パイロット事業の計画・設計に関連する業務 が発注され,清水寺地域における防災水利整備事業 について検討を行い,延焼防止放水システムの配置 設計等を実施した. 図-1は清水寺地区の文化財の地震火災による 焼失を防ぐために設置する延焼防止放水システム の配置を示したものである.山裾の標高の高い位置 に,防火水槽を設置し,自然の力で,放水を可能とし ており,水量については,延焼シミュレーションを 実施し,延焼時間や延焼幅や延焼防止に必要な単位 水量等より算出している. 現在,延焼防止放水システムについては,使用水量の削 減,放水範囲の拡大等の改善に取り組んでいるところで ある. 当社の協議会活動については,幹事会の運営,広報活動 (フォーラム開催)を主体に,活動全般の支援を行って 図-1 清水寺地区文化財延焼防止放水システム配置図 3.フォーラム開催 地震火災から文化財を守る協議会では,文化財を まもる意義や地域と一体となって守る必要性を市 民に広く伝えるために,年に1回のペースで,フォ ーラムを平成9年から開催してきた. 今年度は松本市教育委員会,毎日新聞社の共催で, 文化庁,長野県,長野県教育委員会,松本市,信州大 学,立命館大学歴史都市防災研究所の後援を得て, あがたの森文化会館講堂にて,平成 25 年 11 月 2 日(土)にフォーラムを開催した. フォーラムの概要は以下のとおりである. 「第 17 回地震・火災フォーラム」 文化財の健康寿命って何ですか ~松本の文化財は,私たちの誇りです~」 ○開会挨拶 菅谷松本市長 ○活動報告 土岐災 NPO 理事長 ○基調講演「松本の災害と文化財」 笹本 正治 (信州大学副学長) ○パネルディスカッション パネリスト 梅津 章子(文化庁文化財調査官) 串田 和美(俳優・演出家・舞台美術家) 後藤 芳孝(松本城管理事務所研究専門員) 梅干野成央(信州大学工学部助教) 83 コーディネーター 土岐 憲三(立命館大学教授,NPO 理事長) 図-3 第 16 回フォーラムチラシ(裏面) 4.情報ネット NPO 法人「災害から文化財を守る会」から情報 ネットを季刊紙として会員(300 名弱)に配布し ている. 情報ネットでは,フォーラム開催内容の報告や地 域拠点,学識経験者からの投稿記事を掲載しており, 地域拠点での活動の呼びかけている. 広報活動を通じて,協議会活動の地方拠点(NPO) は広がっており,奈良をはじめ,金沢,山口にも拠点がで きつつあり,会員の増員を期待しているところである. 当社は上位組織の事務局として,NPO 法人を支援 しており,情報ネットについては,学識経験者への 原稿依頼やフォーラムの原稿作成等も行っている. 29 号の情報ネットの表紙を図-4 に示す. 図-2 第 16 回フォーラムチラシ(表面) 図-4 情報ネット 29 号表紙 5.おわりに 平成9年に発足した「地震火災から文化財をま もる協議会」の事務局として活動を行ってきた成 果として,現在京都市清水地区において,産寧坂伝 統的建造物群保存地区の無電柱化事業とあわせた 地震火災延焼防止放水システムを設置するパイロ ット事業が実施され,完成した. 84 延焼防止システムの開発ポイントは,①少量の水 で延焼を防止することができ,②平時には景観面に 配慮したコンパクトなシステムとすることである. 機能面,景観面については,現在メーカーで鋭意改 良検討が進めているところである. この放水システムは,平時の利用も想定しており, 地域住民の手でいつでも利用でき,いざというとき には住民の手で通常火災にも使えるシステムとし ており,日頃より地域住民に活用されることが期待 されている. 当社は協議会の事務局として,継続的に活動を行 ってきた.近未来に予想される関東直下型地震や東 南海・南海地震等を考えると,協議会活動をさらに 活発にしていく必要があり,協議会活動の支援を積 極的にも行っていく予定である. 参考文献 1) 「地震災害から文化遺産と地域をまもる対策のあり方」 http://www.bousai.go.jp/oshirase/h16/040708bunkaisan.html 図-5 無電柱化事業(産寧坂伝統的建造物群保存地区) STUDY ON TECHNIQUE FOR SAFEGUARDING CULTURE ASSETS AGAINST EARTHQUAKE FIRE Kenji YAMABE Downsizings Kyoto City began construction of the disaster prevention water supply maintenance in Kiyomizu district in 2006. This research is what the NPO Engineering Department association of incorporated nonprofit organization "NPO for Protection of Cultural Heritages from Disaster " executed it to be effectively and appropriately enforceable of the disaster prevention water supply maintenance plan And corporate public relations activities NPO, held a forum every year, doing a paper published quarterly. 85 国土文化研究所年次報告 VOL.12 May.’14 平成 26 年 5 月 29 日 発 行 編集・発行 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所 住所 東京都中央区日本橋人形町2-15-1 6F 〒103-0013 TEL 03-3668-0451(大代表)
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