16.既製品が安く手に入る時代で、ミシンのない家庭も多くなっています。ミシン縫いを学習さ せる意義はあるのでしょうか? ■被服製作学習、ミシン学習の意義 ✎衣服や袋物など、安価で質の良い物が容易に入手できるようになり、授業でも、いわゆる「被服製 作」の扱いは縮小されてきています。しかし、製作活動は、ものづくりに多くの時間と技術が費やされ ていることを知り、自分の身の周りの物を改めて見直すことができる貴重な体験です。製作を体験する ことで、衣服購入などの際にも、素材や縫製などに関心を持って検討することができるようになります。 また、自分の手によって素材が変化していくことが実感できることで、自己有能感が高まり、達成感 も得られます。ものづくり体験が、将来の進路選択の手がかりとなることもあります。手縫いなどの技 能習得は、衣服の補修などに用いることで、資源の活用や環境問題と関連した指導も可能です。 また、ミシンについては、小学校家庭科では、 「内容(3)生活に役立つものの製作・活用」に、 「ミ シンを用いた直線縫いができること」と示されています。 家庭で使用される機器類は、どんどん簡便化され操作が容易になっています。その中にあってミシン は、未だ使用者の技能習練が必要とされる、唯一と言ってよい機械です。ミシンを使うことによって、 手縫いでは難しい速さや強度、美しさを得ることができ、人間が生み出した機械・技術のすばらしさも 体感することができます。 ■実態調査から ✎島根県内の小学校6年生を対象とした調査(「小学校家庭科における布を用いた製作活動の学びの 実態」巻末参考資料参照)では、被服製作が「好き」「どちらかというと好き」と答えた子どもは全体 の8割であり、この題材の中で今後さらに学習したい内容で最も多かったのはミシン縫いで、男子56. 6%、女子84.7%と、他の内容と比べて群を抜いて高い割合でした。 また、同調査では、製作活動を不得意と答える子どもが半数で、そのうち6割が最も苦手な製作活動 が「ミシンの上下糸セット」であるという結果も見られます。製作活動を行う際には、教材や用具の点 検など、十分な支援準備が必要でしょう。 ■スムーズなミシン実習のための一口メモ(平成 17 年度小学校家庭科教育講座より) ✎実習用のミシン針は11番か14番が一般的ですが、特殊な布を使うことの少ない実習などでは、 折れにくく針穴も大きい14番が扱いやすいと思います。針が曲がっていたり、針先が磨耗していたり すると、目とびなどの原因になります。ミシン糸はポリエステル60番、ボタン付けなどの手縫い糸で はカタン30番などが、扱いやすく活用範囲も広いと思います。 また、布押さえを下ろした状態で上糸を通すと、糸が正しい場所に納まらないため、糸がからんだり、 縫い目が浮いてタオル目になることがあります。必ず押さえを上げて上糸を通します。 全国高等学校家庭科被服製作技術検定 4級(右図)は、ミシン縫い(直線縫い, 角縫い,曲線縫い,端ミシン,返し縫い)と 手縫い(なみ縫い,まつり縫い,半返し縫い, ボタン付け)の技能が盛り込まれ、技能の 習得や確認に有効です。 細かい評価基準(採点基準)もあります ので、指導者自身の技能の確認などにも使 えます。
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