Colin Information Service Vol.40 脈波バージョン 暑さ厳しい折から、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。平素は格別のお引き立てを賜りありがとうございます。 今回は、慢性腎臓病CKDのステージ評価の重要な指標(糸球体濾過量GFR)と ABIの有用性についてご紹介 させていただきます。 腎機能が低下した患者に、ABIのスクリーニングを! 第11回臨床血圧脈波研究会 推定糸球体濾過量(eGFR)は末梢動脈疾患の独立した予測因子である 信州大学医学部附属病院 循環器内科 山崎佐枝子先生 【目的】 慢性腎臓病は、心血管疾患の危険因子であることは広く知られているが、末梢動脈疾患との関係について の報告は少なく、日本人における検討はあまりなされていない。末梢動脈疾患は、心血管疾患との合併が 多いため、早期の末梢動脈疾患のスクリーニングとリスク管理が重要である。そこで我々は、慢性腎臓病の 指標とされる推定糸球体濾過量(eGFR)を用い、eGFRの低下により末梢動脈疾患が予測できるか検討した。 【方法】 入院時にABI測定を行っている603人(平均年齢68歳、男性426人)を対象に解析を行った。末梢動脈疾患 はABI 0.9未満と定義した。解析項目はABI、eGFRの他、LDL-C、HbA1cなどの冠危険因子とした。 【結果】 平均のABIは、1.07±0.17で、ABI<0.9の症例は70名、11.6%含まれていた。循環器内科入院患者の 為、カテーテル検査入院を含めた虚血性心疾患患者が55.2%と最も多く、血管疾患と合わせ、動脈硬化性 疾患が約6割であった。eGFR<60の群は全体の35.2%であり、eGFR≧60の群と比べて、有意にABIが低 かった(p<0.001)。慢性腎臓病のステージ分類(eGFR分類)、年齢、性別、収縮期血圧、HbA1cの5項目 を共変量として多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、慢性腎臓病のステージ分類は末梢動脈疾患の 合併を予測する独立危険因子であった(OR 2.055、95% Cl 1.547-2.730、p<0.001)。 【結論】 eGFRの低下、特にeGFR<60は、独立した末梢動脈疾患の予測因子である。eGFRが低下した患者に対し、 ABIによる末梢動脈疾患のスクリーニングを行い、早期に発見し、リスク管理をしていく事が重要である。 オムロンは、閉塞性動脈硬化症 早期診断の普及を目的に、専門研究講座を支援しています。 信州大学寄附講座 閉塞性動脈硬化症先端治療学講座 【わが国初の閉塞性動脈硬化症に特化した講座】 教授:池田 宇一先生 講師:宮下 裕介先生 閉塞性動脈硬化症に関する最先端の治療をより多くの患者さんに提供するとともに専門医 を育成し、長野県全体の循環器診療のレベルアップを計ることになります。 カ ス タ マ ー サ ポ ー ト 通 信 vol. 40 フリーダイヤルでお問い合わせ頂くご質問等をQ&Aにまとめてご案内致します。 Q: ASO早期スクリーニングにABIは有用ですが、判別値といわれているABI0.9以上でもASO患者が存在 します。診断する際に注意すべき点を教えてください。 A: 奈良県立医科大学放射線医学 吉川公彦先生 動脈の石灰化が高度であるとマンシェットによる血管圧迫が十分に得られないため、有意な動脈閉塞病変 が存在してもABIが0.9以上を示す事があり、注意が必要です。こうした場合には、より末梢の循環を評価す る足趾/上腕血圧比(TBI)測定が有用です。TBIの正常値は0.7以上です。このようにABIとTBIを組み合わ せることにより、より正確な末梢循環障害の評価が可能になります。 また、ASOが存在しても、側副血行路が発達している場合や狭窄の程度が軽度な場合はABIが0.9以上を 呈することがあります。MR angiography(MRA)所見を完全閉塞・50%以上狭窄・50%未満狭窄・狭窄な しの4段階に分けて、ABI値0.9以下との相関を調べたところ、ABIによる検出感度は、完全閉塞:84%、 50%以上狭窄:83%と高いのですが(図1)、50%未満狭窄では36%と低く、ABI単独ではASOの早期の 変化がなかなか検出できないことがわかりました。 そこでformの診断サポートシステムを用いて、PVR(脈波)波形解析の結果をABI値に加えて評価すると、 完全閉塞:94%、50%以上狭窄:94%、50%未満狭窄:44%といずれの群でもASOの検出感度が上昇す ることが確認できました(図2)。このようにABIが0.9以上でも波形解析を併用することにより、ASOを拾い上 げることができます。 図1 formとMRAの比較‐ABI単独による評価 100% 閉塞 50%以上 狭窄 MRA 50%未満 狭窄 狭窄所見 なし ABI値 0.9≦ <1.0 0.5< 0.5≦ <0.8 0.8≦ <0.9 10 15 1 10 5 2 1 83% 7 4 8 13 36% 1 5 1 図2 formとMRAの比較‐診断サポートシステムによる評価 フォルム診断サポート 重度 中度 軽度ASO 狭窄所見 ASO ASO ASO疑い なし 100% 2 11 18 閉塞 50%以上 1 1 14 2 狭窄 MRA 50%未満 18 1 8 5 狭窄 狭窄所見 6 なし 1.0≦ ≦1.3 1.3< エラー 感度 1 1 3 84% エラー 100% 感度 特異度 94% 94% 44% 100% 本社:〒112-0002 東京都文京区小石川1-12-14 日本生命小石川ビル ホームページ:http://www.colin.omron.co.jp/ ご相談ホットライン 0120-088-203 is@colin.omron.co.jp お気軽にお問い合わせ下さい カスタマーサポートセンター (24時間受付) 特異度
© Copyright 2024 Paperzz