・・・…… チャイナ・ウオッチ ・・・・・・…・・・・・・・…・・…・ China Watch (株)共同通信社国際情報センター© 禁転載・複製 お問い合わせ:kki.chinawatch@kyodonews.jp fax: 03(6252)6084 tel:03-6252-6067 2016年10月28日(金) 目 次 <焦点:6中総会が閉幕> ........................................................................... 1 ◎習氏の「1強体制」確立=党「核心」初めて位置付け 集団指導転換か .............. 1 ◎「解説」高まる独裁への懸念=さらに権力集中 ..................................................... 1 ◎「大型サイド」権力闘争、人事争い激化も=共産党大会まで1年 ........................ 2 ◎6中総会のポイント ................................................................................................. 3 ◎習指導部の反腐敗の経過 .......................................................................................... 3 ◎「ズーム」中国共産党中央委員会総会 .................................................................... 4 【関連ニュース】 ........................................................................................................ 4 ◎一党執政の課題「権力監督」に共産党が解答=新華社解説 ................................... 4 ◎「指導中核」の重要性指摘=新華社6中総キーワード解説 ................................... 6 <日比関係と南シナ海問題> ........................................................................ 6 ◎「大型サイド」米国離れ自主外交アピール=中国接近、日本とも良好 ................. 6 ◎比大統領の立場に変化なし=南シナ海問題で中国 .................................................. 7 【中国紙の論調】 ........................................................................................................ 7 ◎「日比南シナ海合意」などあるわけない=環球時報社説 ....................................... 7 【台湾紙の論調】 ........................................................................................................ 9 ◎ドゥテルテは南シナ海に新局面=台湾経済日報 ..................................................... 9 <中国アラカルト> ....................................................................................11 ◎卵チャーハン .......................................................................................................... 11 <台湾アラカルト> ....................................................................................11 ◎「活字」再発見= 鉛のぬくもり静かなブーム .................................................... 11 <政治・外交> .......................................................................................... 12 ◎マレーシア首相、月末訪中 .................................................................................... 12 1 ◎被爆者交流の奨励決議採択=国連で日本主導、中国反対 ..................................... 12 <軍事・科学> .......................................................................................... 13 ◎国産空母の船体完成=中国初、年内にも進水か ................................................... 13 <経済> .................................................................................................... 13 ◎日中韓、自由貿易確認へ=東京で29日に担当相会合 ......................................... 13 ◎初のPHVをラインオフ=一汽大衆...................................................................... 14 ◎「アジア株式まとめ」総じて小安い...................................................................... 14 <社会・文化・スポーツ> ......................................................................... 15 ◎国家核安全局、寧徳原発など16の原発事故公表 ................................................ 15 ◎中国の要介護老人、4年後に4200万人に ....................................................... 15 <香港・マカオ> ....................................................................................... 16 ◎元裁判官が出馬表明=来春の香港行政長官選 ....................................................... 16 ◎食や観光の現状体験=香港メディアが福島訪問 ................................................... 16 ◎「中国侵略に不満」と報道=三笠宮さま、香港メディア ..................................... 17 <台湾> .................................................................................................... 17 ◎日台海洋対話31日東京で=漁業協力など議題に ................................................ 17 <日中関係> ............................................................................................. 17 ◎中国紙、 「和平派」と紹介=江沢民氏への謝罪も言及 .......................................... 17 【在日中国人】 .......................................................................................................... 18 ◎誘拐予備罪の中国人に実刑=水戸地裁 .................................................................. 18 <北朝鮮> ................................................................................................. 18 ◎北朝鮮核に共同対処=日韓、軍事機密共有へ 年内締結目指す ........................... 18 ◎金正恩氏制裁に強い不満=北朝鮮「核抑止力が必要」 ......................................... 19 ◎金正恩氏「輸入病なくせ」=労働団体大会で書簡 ................................................ 20 ◎「北朝鮮の核放棄ない」=オバマ氏任期中と報道官 ............................................ 20 <資料> .................................................................................................... 21 ◎中国共産党18期6中総コミュニケ全文 3回続きの(1) .............................. 21 ◎第8回BRICS諸国首脳会議ゴア宣言 4回続きの(3) .............................. 23 2 <焦点:6中総会が閉幕> ◎習氏の「1強体制」確立=党「核心」初めて位置付け 集団指導転換 か 【北京共同】中国共産党の重要会議、第18期中央委員会第6回総会(6 中総会)は27日、習近平総書記(国家主席)を初めて公式に「核心」と 位置付けるコミュニケを採択して閉幕した。中国国営通信、新華社が伝え た。ほかの最高指導部メンバー6人との間に明確な格差を付け、習氏の「1 強体制」が確立した。話し合いで主要政策を決めてきた「集団指導体制」 が事実上転換される可能性がある。 総会は最高指導部人事が焦点となる第19回党大会を来年後半に開催 すると決定。習氏が今回「核心」と位置付けられたことで、習氏の権力基 盤の強固さを示した。党内の一部にあった権力集中への反対論を抑え込ん だ形だ。 習氏が今後の人事争いで主導権を握りやすくなるほか、対日を 含めた外交政策で独自色を発揮する余地も拡大する。歴史問題や海洋権益 を巡り日中対立が続く中、習氏の出方が注目される。 共産党は毛沢東、故鄧小平氏、江沢民元総書記を「核心」と呼び、集団 指導体制を重視した胡錦濤前総書記は核心との呼び方をしなかった。 総会は「厳格な党の統治」を議題に討議。習指導部発足後の反腐敗運動 を通じ「党中央は民心を得た」と評価した。「党内に腐敗分子が身を隠す 場所はない」と表明し、今後も反腐敗を続ける姿勢を強調した。 党内活動の規律を定めた「新しい情勢下の党内政治生活に関する若干の 準則」と「党内監督条例」も策定。習氏が政敵排除に使ってきた反腐敗運 動の制度化が完成した。 コミュニケは「党内民主」や「集団指導体制」の堅持を形式的に掲げて はいるが「全党は思想や行動において党中央との高度な一致を自覚しなけ ればならない」と強調。習氏への絶対的服従を迫る色合いが濃いものとな った。 総会は汚職で失脚した中央委員・中央委員候補4人の党籍剥奪を承認、 委員候補2人を中央委員に昇格させた。 ◎「解説」高まる独裁への懸念=さらに権力集中 【北京共同】27日閉幕の中国共産党第18期中央委員会第6回総会(6 中総会)で、習近平総書記が党の「核心」に位置付けられたことは、習氏 への一層の権力集中を意味し、 「集団指導体制」は大きな転換点を迎えた。 権力集中により国内外で山積する課題への対応はスピードアップが可能 となる一方、独裁への懸念が高まることは確実だ。 中国では毛沢東への個人崇拝によって大規模政治運動「文化大革命」 (1 966~76年)が起きたことへの反省から、80年に主要政策について 「集団での協議によって決定し、個人の専断にしてはいけない」との党内 1 規則を決め、集団指導体制を明確にした。 改革・開放政策を主導した故鄧小平氏は、民主化運動を武力弾圧した8 9年の天安門事件直後に異例の抜てきで党トップに就任した江沢民元総 書記に箔を付けるため「革命第1世代の核心は毛主席、第2世代の核心は 私、第3世代の核心は江同志だ」と発言した。 江氏には毛、鄧両氏のような権力はなかった。集団指導体制を尊重した 胡錦濤前指導部では胡氏を核心と呼ばず、習氏も受け継いだことで、同体 制が根付くとの見方もあった。 だが共産党機関紙、人民日報(電子版)は27日、習氏が核心と位置付 けられたことは「全党、全軍、全国各民族人民の共同の願いだ」と強調。 今後、メディアを通じて習氏への個人崇拝を推進するキャンペーンを展開 する可能性は高い。コミュニケは「集団指導体制を堅持する」と言及した ものの、政治局常務委員7人で構成する最高指導部の形骸化が進みそうだ。 ◎「大型サイド」権力闘争、人事争い激化も=共産党大会まで1年 中国共産党第18期中央委員会第6回総会(6中総会)が27日閉幕し た。最高指導部メンバーが入れ替わる第19回党大会まで約1年となり、 党内の権力闘争や人事争いが激化する可能性もある。トップの習近平総書 記(国家主席)=(63)=とナンバー2の李克強首相(61)の確執を 受け、首相交代説までささやかれ始めた。総会で「核心」と位置付けられ た習氏に対する反発が強まるかどうかが鍵となる。 ▽李氏外し 「国有企業に対する党の指導を強化する。国有企業をより強く、優秀に、 大きくする」 今月前半に北京で開かれた党の経済関連会議で、習氏は居並ぶ国有企業 幹部の前で力説し、民間企業の役割増大を目指す李氏との違いを際立たせ てみせた。 会議には序列6位で習氏の腹心の党中央規律検査委員会トップ、王岐山 書記(68)らも出席したが、李氏の姿はなかった。首相が担ってきた経 済運営分野でも習氏への集権が進み、李氏の権限は大幅に縮小されている。 2013年の3中総会では「資源配分において市場に決定的な役割を担 わせる」との方針を打ち出した。李氏に近い改革派の主張が盛り込まれ、 市場ルールを重視する経済自由化が進むとの期待が高まったが、その後、 徐々に後退。習氏の目指す国家主義的な主張が色濃く出るようになった。 ▽定年延長 中国共産党の組織は完全なピラミッド構造だ。6中総会に出席した現在 約200人の中央委員から25人の政治局員を選出し、この25人から選 ばれた政治局常務委員7人が最高指導部を構成。トップの習氏が約9千万 2 人の党員を束ねている。 明文規定はないが「党大会時に68歳に達していれば引退」との慣例が ある。慣例通りなら、19回党大会では習、李両氏を除く5人の常務委員 が引退し、後釜を目指す熾烈な闘いが繰り広げられる。 「習氏は李氏を1期5年で交代させ、王岐山氏を後任に据える」。関係 者の間ではこうした臆測も広がっている。 だが、王氏は来年夏の時点で69歳。引退の壁を克服するため、習氏を 中心に「引退慣例」問題を重要議題とし、定年延長を模索する動きが出て いるとの見方がある。仮に定年延長に成功すれば、22年の第20回党大 会時に69歳になる習氏にとっても3期目への道が開けることになる。 一方、李氏を支える幹部の間では、習氏側の動きに反発する声が強いと される。李氏の首をすげ替える事態になっても、副首相経験者が後任に就 くのが慣例だと主張。李氏と同じ党青年組織、共産主義青年団(共青団) 出身の汪洋副首相(61)の名が一部で取り沙汰されている。 (北京共同) ◎6中総会のポイント 【北京共同】中国共産党第18期中央委員会第6回総会が採択したコミ ュニケのポイントは次の通り。 一、習近平同志を核心とする党中央が反腐敗の取り組みを進めた。 一、党中央は民心を得て、国家の新たな事業を切り開く重要な保証をも たらした。 一、反腐敗運動を継続。腐敗分子が党内で身を隠す場所はない。 一、断固として党中央の統一した集中的な指導と党の全面的な厳しい統 治を継続する。 一、第19回党大会を2017年後半に北京で開催する。 ◎習指導部の反腐敗の経過 習近平指導部発足後の反腐敗運動を巡る経過は次の通り。 2012年11月 習指導部発足 12 税金の浪費などを戒める「8項目の規定」決定 14・12 習氏の政策指針をまとめた「三つの全面」に「厳格な党の 管理」を加え「四つの全面」に 15・10 より厳格に改正した「中国共産党規律処分条例」と全党員 に規範順守を求めた「党廉潔自律準則」を発表 16・7 党幹部の指導責任を追及する「党問責条例」を発表 8 幹部選抜法を定めた「問題のある幹部の抜てき防止に関する意見」 を発表 10・27 6中総会で「新しい情勢下の党内政治生活に関する若干の 準則」と「党内監督条例」を策定 (北京共同) 3 ◎「ズーム」中国共産党中央委員会総会 中国共産党中央委員会総会 5年に1回開かれる党大会の職権を代行 する党中央委員会が年1回程度開く全体会議。6中総会は直近の党大会後、 6回目の総会を指す。今回は2012年11月の党大会で選ばれた中央委 員205人と中央委員候補171人のうち、失脚したメンバーを除く委 員・委員候補に出席資格がある。憲法上は全国人民代表大会(国会)が最 高の国家権力機関とされるが、党の指導が優先するため、総会は中国政治 を左右する重要な会議と位置付けられている。15年の5中総会は「一人 っ子政策」の撤廃を決めた。 (北京共同) 【関連ニュース】 ◎一党執政の課題「権力監督」に共産党が解答=新華社解説 北京25日発新華社電は「中国焦点」で「中国共産党が長期にわたる一 党執政の『権力監督』という課題に解答」と題する解説記事を配信した。 内容次の通り。 欧米の主流を行く一部の政治学者はかつて複雑な理論体系を用い、「長 期にわたる一党執政は必然的に『監督のない権力』をもたらし、深刻な腐 敗を生む」と説明した。しかし現在、中国共産党は次々と事実を通じ、共 産党は「一党による執政――独裁による権力乱用――必然的な腐敗」とい う政治の悪循環を断ち切ることができることを証明しつつある。 北京で開会中の中国共産党第18期中央委員会第6回総会(18期6中 総)は党内制度・法規の完備を一段と追求するため、新たな情勢の下にお ける党内政治生活の若干の準則を制定し、「中国共産党党内監督条例(試 行) 」を改正する予定だ。 権力の変質を防止するため、中国共産党は創設初期に「党内監督」を強 調し始め、 「批判と自己批判」を定期的に繰り広げるよう提唱した。 「中国共産党規約」は党内監督を繰り広げるための根本的な拠り所であ り、党規約のこれまでの改正により、党内監督は絶えず制度化、メカニズ ム化、規範化され、それによって「党が党を管理し」 、 「厳しく党を治める」 ことを保障・実現している。 例えば、早くも延安整風(運動)の時期に、中国共産党は党内監督を通 じて、党内の悪しき風潮と腐敗の兆しを制止、抑制し、中国共産党の党員 幹部が絶えず治に居て乱を忘れず、言行を慎むようにさせてきた。 現在、党規約と党規律の規定に基づき、監督の主体は組織内部で検査、 督促、評価、摘発、通報、処理などの方式を通じ、客体を監督しており、 これは党組織と党員の制度的制約と自己制約である。 理論のロジックと歴史の実践から見ると、党内監督を強めることはマル クス主義政党に対する一貫した要求であり、また「全面的な厳しい党管理」 4 を実現するための重要な取っ掛かりでもある。同時に、この「自己による 自己監督」も時代と共に進んでいかなければならない。 習近平総書記は党創設95周年の演説の中で、次のように強調した。先 進性と純潔性はマルクス主義政党の本質的な属性であり、われわれが党の 建設を強化する時は先進性を弱め、純潔性を損なうすべての問題と闘い、 病を除いて傷を癒し、悪を退けて善を称えなければならない。全党は自己 革命の政治的勇気を持ち、党自身に存在する際立つ問題を重点的に解決し なければならない。 「党規約のほか、さらに各種の監督業務を具体的に統轄する党内専門法 規制度が必要で、これは権力の運用を規範化し、権力の変質を防止するカ ギとなる」 、中国浦東幹部学院法律・人文総合教研部の劉哲昕主任はこう 述べた。 2003年に起草、討議、公布・実施された「中国共産党党内監督条例 (試行)」も10年余りの歳月を経て、新しい情勢に適応する必要性と切 迫性がクローズアップされてきた。 復旦大学政党建設・国家発展研究センターの鄭長忠主任は、国内外環境 の複雑な変化を前に、中国共産党内部の組織体系における従来の監督職責、 監督制度、監督保障、特に監督制度と監督方法は新たな情勢に順応し、新 たな挑戦(試練)に対応しなければならないと述べた。 18期4中総は党内法規・制度づくりを強化することを打ち出したが、 党内法規は党を管理し党を治める重要な拠り所であり、また社会主義法治 国家を建設する有力な保障でもある。 18期6中総は長期にわたる一党執政下での「権力監督」という課題に 一歩踏み込んだ解答を示すことになろう。これは必ず党内法規・制度の完 備を通じて実現されなければならない。 鄭長忠氏は次のように述べた。今総会で審議されている2本の重要な党 内法規制度は中国共産党の党内監督を新たな歴史的高みに押し上げるも のであり、民主集中制を基礎とする党内監督は国の公共事務に基づく立法 と法執行監督、即ち党外監督、人民監督など共に完備した有効な権力監督 システムを作り上げることになろう。 習近平氏は党創設95周年の演説の中で強烈なシグナルを伝達した。そ れは即ち「人治」から脱却し、「法治」を確立するという中国共産党の決 意である。習氏は、社会全体で憲法と法律の権威をしっかりと確立し、憲 法の精神を発揚しなければならず、いかなる組織、個人といえども必ず憲 法と法律の範囲内で活動しなければならず、憲法と法律を超越した特権を 持ってはならないと述べた。 中国共産党中央党学校党建設教研部の戴焔軍副主任は、これは法に基づ く執政という中国共産党の決意を再度はっきりと示しており、「法に基づ く執政」は「規約、規則、規律に基づく党管理」と共に権力運用を規範化、 5 制約する強固な保障システムを構成するものだと述べた。 「18期6中総は中国共産党の法治思考と法治精神を一段と体現するこ とになり、その重要な体現の一つとは『権力の監督』である。共産党はさ らに党内監督でその他各レベルの権力監督をリードし、権力監督システム を絶えず強化、充実させる考えだ」 、戴氏はこう述べた。 (中国通信=共同) ◎「指導中核」の重要性指摘=新華社6中総キーワード解説 北京27日発新華社電は中国共産党第18期中央委第6回総会(18期 6中総)のキーワードを紹介し、その中で「指導中核」について専門家の 解説として中央党学校の辛鳴・教授の次のような見方を伝えた。 コミュニケの中のこの重要な表現の意義は重大かつ深遠で、中央の権威 の確立、全党のより一層の団結・統一に役立ち、結集力と戦闘力を強める ものである。中国共産党が創設以来ずっと大衆の擁護・支持を受け、革命 闘争の中で勝利を収めてきたのは、わが党に堅固な指導中核があり、全党、 全国人民をリードして大きな発展を収めてきたことに源がある。 コミュニケは次のように述べている。党の指導を堅持するとは、まず党 中央の集中的統一的指導を堅持することだ。一つの国、一つの政党にとっ て、それを指導する中核は極めて重要なものだ。全党の同志は習近平同志 を中核とする党中央の周りに固く団結し、今総会の精神を全面的に深く貫 き、政治意識、大局意識、中核意識、一致意識をしっかり確立しよう。 (中国通信=共同) <日比関係と南シナ海問題> ◎「大型サイド」米国離れ自主外交アピール=中国接近、日本とも良好 来日したフィリピンのドゥテルテ大統領が27日、帰国の途に就き、中 国、日本への相次ぐ公式訪問を終えた。南シナ海問題を棚上げし、日中と の友好姿勢を打ち出す一方、「米国離れ」を鮮明化。従来の外交政策を大 きく転換させ、米中両大国の覇権争いに巻き込まれないよう自主外交を進 める姿勢を積極的にアピールした。 「(米国との)決別路線は憲法に規定されている。わが国は独立した外 交政策を取らなければならない」 来日初日の25日、東京都内のホテルの大広間。ドゥテルテ氏が、詰め 掛けた千人以上の在日フィリピン人らを前にまくし立てると歓声と拍手 が湧き上がった。 ドゥテルテ氏は18~21日に中国、25~27日に日本を初めて公式 訪問。相次ぐ外遊で明確になったのは、旧宗主国で同盟国の米国に背を向 ける姿勢と、南シナ海問題を巡り対立が続いていた中国との雪解け、日本 との友好関係の維持だ。 6 地政学上、南シナ海問題の最前線に位置するフィリピン。アキノ前政権 時代、米国や日本と足並みをそろえて中国の強引な海洋進出に対峙(たい じ)してきたが、領有権争いは行き詰まり、中国から農産物輸入禁止とい う経済制裁を受ける「報復」も受けていた。 ドゥテルテ氏の就任を機に関係改善を目指す中国は、習近平国家主席ら 共産党序列1~3位が個別に会談する厚遇ぶり。フィリピンには南シナ海 における中国の主権主張を否定した仲裁判断という「カード」があったが、 ドゥテルテ氏はこれを封印する見返りに、2兆5千億円というフィリピン 国家予算の4割近い経済協力を引き出した。 中国訪問に同行したペルニア国家経済開発長官は21日、記者団に「大 統領は『リバランス』すると言っている。中国との関係をより強めるべき だ」と語った。 一方、ドゥテルテ氏は来日後、「日本は最大の支援者。悪く言うところ は何もない」と強調。東・南シナ海問題では「必ず日本側に立つ」と表明 するなど、日本との友好関係を維持する方針を強調した。 米国とフィリピンの同盟関係にひびが入る中、日本は「橋渡し役」に努 める方針だ。安倍晋三首相は26日、ドゥテルテ氏との会談で対米融和を 呼び掛けたが、嫌米を隠さないドゥテルテ氏は日米の間に線引きして対応 しており、日本は今後も難しい立ち位置を迫られそうだ。(共同) ◎比大統領の立場に変化なし=南シナ海問題で中国 【北京共同】中国外務省の陸慷報道局長は27日の記者会見で、26日 の日比首脳会談での南シナ海問題を巡る議論に関連し「(ドゥテルテ大統 領の日本滞在中の)態度表明と、訪中期間中に示した態度の精神は、基本 的に一致している」と強調し、ドゥテルテ氏が問題での対立を棚上げする 意向であることに変わりはないとの認識を示した。 陸氏は「南シナ海情勢は緩和の方向に向かっている」と表明。 「(日本が) 現実離れした幻想を抱いているなら早く捨て去るよう忠告する」と述べ、 日本による南シナ海問題への介入をけん制した。 【中国紙の論調】 ◎「日比南シナ海合意」などあるわけない=環球時報社説 27日付環球時報は、日本メディアが吹聴する「日比南中国海合意」な どあるわけないと題する社説を配信した。内容次の通り。 共同通信社など複数の日本メディアは26日夜、日本を訪問中のフィリ ピン大統領が安倍首相と南中国海仲裁の結果を尊重することで合意に達 したと報じた。日本メディアの最初の反応は非常に興奮したもので、米国 など西側メディアも、ドゥテルテ大統領が中国を訪問したのは「経済のた め」と述べたことをクローズアップした。こうした報道は、フィリピン大 7 統領には対中関係全面改善の意思がないという印象をつくりあげようと しており、まるでフィリピンが引き続き南中国海問題で中国との衝突を続 けるかのようだ。 しかし、これまでに明らかにされたドゥテルテ大統領と安倍首相の談話 の内容、大統領が東京のその他の会見で公に述べたコメントを細かく見る と、そこには日比の南中国海問題についての協調と「合意」など存在せず、 安倍首相が南中国海仲裁を強調したため、ドゥテルテ大統領がホストの顔 を立て、それに一言二言付き合ったに過ぎないのが実情だ。 ドゥテルテ大統領は東京で、フィリピンは「(仲裁の)判断の範囲以外 の立場をとることはない」と述べ、さらにフィリピンは「日本側に立つ」 として安倍首相を安心させたが、これらはまやかしだ。大統領はそれ以上 に本心からの、重要なコメントを行っている。 それは、安倍首相の前で述べた、中国と南中国海紛争を「平和的に解決」 することを望んでおり、「必ず中国と対話を行う」というコメントだ。ま た26日、東京の講演で再び米国を非難し、「外国の軍隊が2年以内にフ ィリピンから離れることを希望する」というコメントもある。後者はフィ リピンからの米軍撤退のスケジュールを初めて述べたものだ。 大統領は同じ講演で「憲法にはフィリピンが独立した外交政策を行うこ とができると明記されている。私は近隣国と争うことはなく、中国の友人 でありたい。私は武器はいらない。わが国にミサイルはいらない。爆撃機 が使うための飛行場はいらない。われわれは米国の助けがなくても生きて いける。生活は少し悪くなるかもしれないが、今述べたように、われわれ は生きていける」と述べている。 こうした見解はドゥテルテ大統領に対する東京の期待と大きな隔たり がある。日比の関係は確かに良好だが、南中国海政策でドゥテルテ大統領 と安倍首相の進む路線は異なり、相手を前にした際の社交辞令と真の「合 意」を同列に論じることはできない。 安倍首相はフィリピンが引き続き米日の南中国海戦略の駒の一つとな ることを望んでいるが、ドゥテルテ大統領が求めているのはマニラの独立 外交であり、フィリピン自身の国益だ。双方の戦略は出発点からしてほと んど真逆である。 真の合意はドゥテルテ大統領が北京で中国の指導者と達成したもので あり、なおかつ重要なのは、大統領が東京で「北京との共通認識(コンセ ンサス)」を堅持したことだ。その核心の内容は、中比が友好協力の道に 戻り、南中国海の係争を棚上げし、南中国海でのライバルを協力パートナ ーに変え、互恵ウィンウィンを実現することだ。 中国と米日は現在フィリピンを取り合っているが、中国の主体性は、フ ィリピンとの同盟を望まず、米国との対抗に期待せず、中国との友好関係 発展、南中国海問題の二国間対話実施、大国間で矛盾のある面で、できる 8 限り中立を保つことだけを望む点にある。これはドゥテルテ大統領の望む ところであり、フィリピンの国益と高度に合致する。 一方、米日はフィリピンに難儀を強い、マニラに北京との衝突を続ける ようあおっている。米日が躍起になってあおる南中国海仲裁は道具にすぎ ず、フィリピンに仕掛けた罠である。ドゥテルテ大統領はこの点を見透か しており、大統領に子供だましを仕掛けても「合意」などあるわけない。 (中国通信=共同) 【台湾紙の論調】 ◎ドゥテルテは南シナ海に新局面=台湾経済日報 台湾紙「経済日報」は26日、南シナ海をめぐる国際司法裁判所の裁定 を実質的に棚上げしたフィリピンのドゥテルテ大統領の訪中について「ド ゥテルテは南海(南シナ海)情勢に新局面をもたらした」と題する社説を 掲載した。要旨は次の通り。 フィリピンは国際司法裁判所の7月の仲裁結果を棚上げし、南海の紛争 について中国と直接交渉することを宣言、中国も中比関係が「全面回復」 段階に入ったと表明した。すなわち、米国がもともとこの仲裁をもってフ ィリピンにボールを投げたのだが、結果的にドゥテルテはそのボールを米 国に返すことになってしまった。 今回の比中米関係が微妙に変わったゲームの中で米国は多くの誤りを 犯した。 第一に、すべてのフィリピンの政治家が米国に対して生まれながらの忠 誠を有していると誤認したことだ。米国の植民地時代にフィリピンに対し て行った残虐な統治、特にミンダナオ島ではフィリピン人を「褐色の弟」 とあざ笑い、ドゥテルテ本人も中学時代に米国人牧師からセクハラされた。 米国は選択的に植民時代の暴行を忘却したが、被害者とその子孫は簡単に は忘れていないのだ。 第二に、オバマは「アジア回帰」戦略を掲げて中国を包囲しようとする が、実際には言葉ばかりで行動は少ない。特に経済面でそうだ。フィリピ ンは2012年に中国と関係が悪化して以来、ずっと中国から軍事的、経 済的な圧力を受けてきた。米国はいまフィリピンの転向が必然であること を認め、アジアの盟邦にさらに大きな承諾を与えるべきだ。 第三に、国際司法裁判所の7月の仲裁は、島嶼の主権には触れておらず、 米比は効力が有限であることを知っている。仲裁によれば、フィリピンは もともと黄岩島(スカボロ-礁)付近の漁業権を有している。米国はフィ リピンと中国が自ら交渉して紛争を解決するよう奨励したが、これはフィ リピンが交渉する前に先に譲歩したに等しい。米国は軍事あるいは外交上 でも、継続する行動をとっていない。これでは、ドゥテルテは米国が真剣 に南海の法治を擁護しようとは思っていないと考えないわけにはいかな 9 い。 最も重要なことは、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は「アジ ア回帰」戦略の経済的基礎であるが、現在TPPを進めていく可能性はほ とんどない。ドゥテルテは経済を発展させようとしているが、特に資金投 入が必要なインフラ建設に中国は低利で借款と投資を提供できる。フィリ ピンは輸出拡大を望んでおり、中国は市場開放できる。ドゥテルテは反薬 物闘争に声援を得ることを望んでおり、中国の企業家は大規模な薬物治療 センターを建設中だ。フィリピンの漁民は漁場に戻る事を望み、中国は交 渉してもよいと表明した。2012年から中国大陸の旅行客の訪問が減っ たが、中国はフィリピン観光への警告を取り消す構えだ。中国の提供する 経済的利益はフィリピンを抗いようのないものにしており、米国は経済面 で力のふるいようがない。 ドゥテルテは現在、明らかに米国と中国の間で「バランス」をもてあそ ぶ手法をとっている。彼が言いたい放題でも米国は激烈な反応を取らない とドゥテルテは踏んでいるのだ。米国はまもなく大統領選挙が行われ、そ の後、政権は交代するため、大きな動きはあり得ず、これはドゥテルテに とっても機会となっている。米国は現在、「その言動を見守っている」と ころだが、ドゥテルテが共同軍事演習の取り消しを決定したりすれば、お そらくただでは済まないだろう。 中国にすれば、フィリピンと直接、島嶼について交渉することは、国際 司法裁判所によってつぶされた面子を取り返し、米国の「アジア回帰」政 策にくさびを打ち込むことができる。借款の提供やインフラ投資は、中国 の資金に投資の機会を見つけ、中国の過剰な生産能力に新たな出口を提供 するもので、 「ウィンウィン」なのだ。 中国はフィリピンにいくつかの島嶼の主権を放棄するよう求め、中国の 金銭提供の前金とするだろうと見る向きもあるが、実際にはそうでないだ ろう。中国の最大の目的は、米国に南海に介入させず、周辺国との間の領 土紛争を棚上げすることなのだ。 フィリピンの「脱米親中」は冷戦後のアジアの地政学の最も重大な再編 だ。中国は全過程において強硬な立場を見せ、一方でソフトな実力も発揮 した。中国の南海の紛争で一貫して主張してきたの、当事国が個別交渉を 行い、米国は口をはさまず、あるいは東南アジア諸国連合(ASEAN) とは集団交渉するということだった。 現在、中比は二国間交渉に同意、これはマレーシア、ベトナム、タイ、シ ンガポール、インドネシアにシグナルを送ったことにほかならず、中国に とっては「各個撃破」の目的を達成する機会を得た。TPPの後ろ盾がな ければ、東南アジア各国は中国の経済攻勢に抵抗することは難しい。いっ たんドミノ効果を引き起こせば、米国の「アジア回帰」戦略は歴史の一部 になってしまうことになる。 10 <中国アラカルト> ◎卵チャーハン 北朝鮮との国境の町、中国遼寧省丹東を約5年ぶりに訪れた。北朝鮮の 「衛星発射場」がある東倉里から北西に約50キロ。中朝貿易の7割が通 過するとされ、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を行うたびに記者団が 押し寄せ「国際的にネガティブな印象を持たれがち」(住民)な町だ。 中国でも今や語る人は少なくなったが、66年前の1950年10月、 この地から中国人民義勇軍が国境を流れる鴨緑江を渡り、朝鮮戦争に参戦 した。毛沢東の長男、毛岸英も身分を隠して軍総本部のロシア語通訳とし て従軍、約1カ月後に米軍機が投下したナパーム弾に焼かれて戦死した。 まさに中朝の「血で固めた同盟」を象徴するエピソードだ。 「実はこれには裏話がある」と、ある住民が教えてくれた。 「毛岸英の身分は司令官ら一握りの幹部だけが知っていた。ある日、北 朝鮮の金日成から貴重な卵が差し入れられた。毛岸英はその卵でチャーハ ンを作っている時、煙を探知した米軍の爆撃を受けたのだ」 住民は「だから地元では『ありがとう卵チャーハン、ありがとう米軍パ イロット』と言われている」と続けた。 驚いて、どういう意味かと尋ねると、毛岸英が生きていたら権力が世襲 され、中国も北朝鮮のような国になっていたかもしれないからとの答えが 返ってきた。 中国らしいブラックジョークで、ネット上でも折に触れ話題になる。卵 チャーハンを巡る話はどこまで本当か分からないが、北朝鮮の核開発を巡 りぎくしゃくしている中朝間の「因縁の歴史」を物語っている気がした。 (丹東共同) <台湾アラカルト> ◎「活字」再発見= 鉛のぬくもり静かなブーム 台北市の問屋街の一角で唯一、台湾や香港などで使われる繁体字中国語 の鉛活字を販売する「日星鋳字行」が元気だ。台湾で最後まで残った活字 屋に対する活版印刷の需要こそ途絶えたが、好みの活字を買い求める若者 や観光客でにぎわっている。 店主の張介冠さんは活字そのものを「メタルスタンプ」としてよみがえ らせ、自由に組み合わせた文字を印鑑として販売している。 恩師への贈呈用に、鉛活字の印鑑をオーダーすることにした。とはいえ 姓名だけでは三文判のようで味気ない。思案してみても「人生就是一場旅 程(人生は旅だ) 」くらいしか思い浮かばない。 こちらの傍らで、20代の若者が「春天逐光風和心暖(春の日差しが風 11 と心にぬくもりを) 」 「心眼遼闊日安喜樂(おおらかな心が日々の安らぎを 招来)」などといった文字を選んでいる。台湾ではスマホ世代でも、即興 で風雅な文字を表現する漢詩の素養は当たり前のように持っているのか とうならされた。 中には上海から取り寄せたものや、日本統治下で使われていた平仮名も。 張さんは自ら活字の製作を手掛けるかたわら、若手デザイナーの監修によ る新しい活字を創作したり、台湾中を巡回して活版印刷教室を開いたり、 活字の楽しさの啓発活動に忙しい。張さんいわく、テクノロジーの進化に 比例してアナログが醸すぬくもりに引かれる人が増えているという。 張さんの情熱に触発された楊忠銘さんは、念願かなって日星鋳字行の真 向かいに活字と版画の店「324版画工作房」を開いた。楊さんも自ら鉛 活字を創作し、わざわざ取り寄せた戦前の活版印刷機で味わい深い創作絵 はがきを刷る。こちらにもファンは多い。(NNA台湾) <政治・外交> ◎マレーシア首相、月末訪中 【クアラルンプール共同】マレーシア政府は27日、同国のナジブ首相 が31日から11月6日に中国を公式訪問し、習近平国家主席や李克強首 相と会談すると発表した。北京市、天津市、河北省張家口市などを訪れる 予定。 教育や防衛、農業、貿易などの分野での協力が議題となるという。ナ ジブ首相の中国公式訪問は2009年以降、3回目。マレーシアにとって 中国は最大の貿易相手国。 ◎被爆者交流の奨励決議採択=国連で日本主導、中国反対 【ニューヨーク共同】国連総会第1委員会(軍縮)は27日、日本主導 の核兵器廃絶決議案を賛成多数で採択した。世界の指導者らに被爆者との 交流を通じた被爆の実相への認識を深める取り組みを促し、オバマ米大統 領の5月の広島訪問を歓迎したのが柱。歴史認識問題で対立する中国は昨 年に引き続き反対した。 日本主導の同種決議採択は23年連続。採決では、昨年は棄権した米国 をはじめ167カ国が賛成。中国と北朝鮮、ロシア、シリアの4カ国が反 対し、英国やフランスなど17カ国が棄権した。 中国の傅聡軍縮大使は反対理由について、共同通信の取材に「(日本が 加害者ではなく)戦争の犠牲者との印象を広める戦略だ」と指摘。日中間 の歴史問題の対立が、決議の趣旨である被爆の惨状を訴え、核軍縮を進め る取り組みにも影響を及ぼす事態が続いている。 議は核兵器使用による非人道的な結末に「深い懸念」を表明し、オバ 12 マ氏の広島訪問を「歓迎する」と明記。核拡散防止条約(NPT)体制の 強化への決意を確認し、2020年のNPT再検討会議成功に向け最大限 の努力を促した。 北朝鮮による最近の核実験や弾道ミサイルの発射を最も強い言葉で非 難し、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の履行を各国に求めた。全 ての関係国に対し、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉の 早期開始も促した。 <軍事・科学> ◎国産空母の船体完成=中国初、年内にも進水か 【北京共同】中国国防省の呉謙報道官は27日の定例記者会見で、建造 を進める初の国産空母について「船体の建造が既に終了し、現在は装備な どの取り付け作業を行っている」と明らかにした。完成時期などは明らか にしなかった。 「海洋強国」建設を掲げる習近平指導部は外洋展開能力を高めるため、 空母戦闘群の整備を急いでいる。中国の軍事専門家は地元メディアの取材 に、国産空母は最大で40~50機の飛行機が搭載可能で「建造のスピー ドが速く、年末か来年初めには進水できるのではないか」と指摘した。 建造は遼寧省大連市の造船所で行われており、インターネットでは最近、 組み立てられた船体の画像が多く出回っていた。 これまでの発表によると、国産空母は排水量5万トンクラス。中国はウ クライナから購入した空母を修復、2012年から「遼寧」(排水量約6 万7千トン)として訓練や研究目的で運用し、技術などを国産空母の建造 にも生かしているという。 <経済> ◎日中韓、自由貿易確認へ=東京で29日に担当相会合 世耕弘成経済産業相は28日の閣議後の記者会見で、日本と中国、韓国 の3カ国の経済貿易担当相会合が29日に東京都内で開かれると発表し た。「世界では保護主義的な動きがみられる。3カ国で自由貿易体制の大 切さを確認する場にしたい」と意欲を示した。中国は高虎城商務相、韓国 は周亨煥産業通商資源相が参加する予定。会合は昨年10月以来。 会合では2012年に交渉が始まった日中韓自由貿易協定(FTA)の 交渉加速を打ち出す。3カ国に加え、東南アジア諸国連合(ASEAN) やインド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国で構成する東ア ジア地域包括的経済連携(RCEP)についても先導的役割を果たすこと を確認する方向だ。電子商取引(EC)拡大も議論される見通し。 13 日中、日韓の2カ国の会談も予定されている。中国とは鉄鋼の過剰生産 能力の問題に関して協議される見通しで、韓国とは液化天然ガス(LNG) の輸入国として協調を確認する見込みだ。 12月初旬を軸に日中韓首脳会談を日本で開催する方向で調整に入っ ており、今回の会合は地ならしをする意味合いもあるとみられる。 ◎日中韓会合議論のポイント 日中韓経済貿易担当相会合で想定される議論のポイントは次の通り。 一、世界的な保護主義の高まりをけん制し、自由貿易の推進を確認。 一、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉を加速。東アジア地域包括的 経済連携(RCEP)の協議を先導する役割を果たす。 一、電子商取引(EC)の拡大で協力。 一、中国と鉄鋼の過剰生産能力問題を協議。 一、液化天然ガス(LNG)輸入国としての日韓の協調。 ◎初のPHVをラインオフ=一汽大衆 中国自動車大手の中国第一汽車集団(吉林省長春市、一汽集団)と、ド イツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の合弁である一汽大衆汽車(同、 一汽大衆)はこのほど、初のエコカー量産モデルとして、アウディブラン ドのプラグインハイブリッドカー(PHV) 「A6L e―tron」をラ インオフした。 A6L e―tronは、アウディのセダン「A6L」のPHVモデル。 アウディブランドで初めて、電気モーターのみを使った電気自動車(EV) モードでの走行を可能にした。EVモード走行での航続距離は 50 キロメ ートル、ハイブリッド(通常)モード走行での航続距離は 860 キロ。走行 距離 100 キロ当たりのガソリン消費量は 2.3 リットルに抑えた。 発売日や価格は明かされていないが、自動車情報サイトの新浪汽車によ ると、11 月に発売される可能性もある。 VW中国のジョケム・ヘイズマン最高経営責任者(CEO)は、今年4 月に開かれた自動車展示会「北京国際モーターショー(第 14 回北京国際 汽車展覧会) 」で、エコカーの現地生産に着手する方針を示した。A6L e ―tronに加え、まずVWブランドのPHV車種の中国生産を実現し、 その後は「ゴルフ」ブランドなどのEVを開発していく目標を掲げている。 ■一汽集団、1~9月の新車販売は 225 万台 央広網によると、一汽集団の1~9月の新車販売台数(小売りベース) は、前年同期比 11.8%増の 225 万台だった。9月単月の販売台数は前年同 月比 20.6%増の 29 万 1,000 台。 (NNA) ◎「アジア株式まとめ」総じて小安い 27日のアジア各国の株式市場は総じて小安い。取引材料不足から方向 14 感を欠く展開になった。主力の上海市場は2日続落。 主な市場の終値は以下の通り。カッコ内は前営業日比変動幅。▲は下落。 上海総合株価指数 3112・350(▲3・962) 香港ハンセン指数 2万3132・35(▲193・08) 韓国総合株価指数 2024・12(10・23) <社会・文化・スポーツ> ◎国家核安全局、寧徳原発など16の原発事故公表 26日の中国新聞電子網によると、環境保護省(国家核安全局)は25 日、いくつかの原子力発電所で最近、運転中に作業員が誤って触れたり、 操作したりするなどして異常が発生又は事故が起こり、さらには原子炉が 停止したと報告した。国家核安全局は16の事故を報告し、複数の原発名 を公表した。25日付法制日報が伝えたもの。 報告によると、▽寧徳原発の作業員が誤って弁を開けたため、排気筒の 総ベータ線測定値が短時間で化学技術基準の許容値を上回った▽寧徳原 発の化学作業員が誤ってサンプル採取したことで電圧レギュレータ液相 中のホウ素濃度の定期モニタリングができなくなった▽陽江原発の調整 試験作業員が共用装置を誤って操作し、防火エリアの通気口の作動ボタン を押したため、稼働中の装置のヨウ素換気回路が使用できなくなった―― など、作業員が手順を守らずに誤って稼働させた事故が複数の原発で発生 した。 このほかにも複数の原発で作業員の操作ミスによる事件が発生した。国 家核安全局が明らかにしたところによると、田湾原発の足場を組み立てる 作業員が蒸気タービン燃料系統の石油排出調節弁に誤って触れたため、原 子炉が停止した。防城港原発で清掃員が主蒸気隔離弁に誤って触れたため、 原子炉が停止したという。 (中国通信=共同) ◎中国の要介護老人、4年後に4200万人に 天津26日発新華社電によると、全国高齢者工作委員会弁公室政策研究 部の李志宏副主任は26日開かれた2016年(初回)京津冀(北京・天 津・河北)養老フォーラムで、4年後の2020年、中国の「失能老人」 (注)は4200万人、80歳以上の高齢者の数は2900万人に達する と明らかにした。 現在、中国は高齢化が日ましに厳しくなっており、それに伴い失能、空 巣(子女が独立して独りまたは夫婦で暮らす高齢者)、独居など、介護サ ービスの重点対象も大幅に増えている。 試算によると、失能老人は今後も増加し、2020年に4200万、3 0年に6168万、50年に9750万に達するという。また80歳以上 15 の高齢者は20年に2900万、30年に4300万、50年に1・08 億、空巣、独居老人は20年に1・18億、30年に1・8億、50年に 2・62億に達する。 「こうしたすう勢は中国の社会的介護サービス事業と産業にとって事業 の発展を迫る基礎的原動力であり、産業の発展を後押しする最大のチャン スでもある」と李副主任は話す。 同時に次のように指摘した。スマート化社会の到来に伴い、スマート科 学技術と社会的介護サービスは融合発展の良い局面を迎えている。社会的 介護サービスのスマート化が高齢化の急速に進む中国で、介護サービス情 報の非対称性、需給構造のアンバランス、労働集約型介護サービスの多く の困難を解決するための重要な選択肢になり始めている。(中国通信=共 同) (注)自分一人では生活ができず、他人の助けを必要とする高齢者を指す。 <香港・マカオ> ◎元裁判官が出馬表明=来春の香港行政長官選 【香港共同】香港の元裁判官、胡国興氏(70)は27日に記者会見し、 来年3月の行政長官選挙に出馬すると発表した。長官選出馬を表明した候 補は初めて。 胡氏は現職の梁振英行政長官を「社会の分裂を解消できなかった」など と批判。自身が無党派であることを強調し「政党間の対立を緩和できる」 とした。 行政長官選は各業界団体から選出され、親中派が大半を占める「選挙委 員会」(1200人)の投票で決まる。2014年に行政長官選挙制度の 民主化を求める大規模デモが起きたが、失敗に終わった。 梁氏は来年の選挙で、再選を模索しているとされる。 ◎食や観光の現状体験=香港メディアが福島訪問 東京電力福島第1原発事故からの復興を目指す福島県の農産物や観光 の現状を知ろうと、香港を拠点とするメディア関係者4人が福島県を訪問、 27日に同県二本松市のワイン醸造所などを見学した。 香港は原発事故前、同県産農産物の輸出量の約8割を占める主要な輸出 先だったが、野菜や果物は現在も輸入停止措置が継続。風評払拭に向けた 取り組みが急務となっている。 4人は香港の日刊紙記者やコラムニストらで、県が招待した。二本松市 の醸造所では、地元農家らが連携してワインなどの生産に取り組む様子を 見て回り、リンゴを発酵させたお酒「シードル」も試飲した。 4人は26日から3日間にわたって県内を巡り、コメの全量全袋検査の 16 様子や日本酒の蔵元なども視察。参加者の1人で、福島訪問は4回目だと いうコラムニストのメイ・ラムさんは「福島の食の安全への取り組みを、 ネットや記事を通じて発信したい」と話した。 ◎「中国侵略に不満」と報道=三笠宮さま、香港メディア 【香港共同】香港公共ラジオ(電子版)は27日、三笠宮さまの逝去を 報じ、太平洋戦争中に中国・南京の総司令部の参謀だったことを紹介、戦 時中に「日本軍の中国侵略に不満を持っており、日本軍の暴行を指摘して いた」などと伝えた。 <台湾> ◎日台海洋対話31日東京で=漁業協力など議題に 【台北共同】台湾の李大維外交部長(外相)は27日、日本と海洋問題 を協議する第1回「日台海洋協力対話」を31日に東京で行うと発表した。 漁業問題を中心に討議し、海難救助、海洋科学研究での協力も議題となる。 立法院(国会)で記者団の質問に答えた。 一度は7月末の開催が決まったが、「台湾内の調整に時間が必要」とし て延期になっていた。蔡英文総統は10月中に開催したいとの意向を示し ていた。 4月、東京都・沖ノ鳥島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)で海上保 安庁が台湾漁船を拿捕したことに対し、当時の馬英九政権は、沖ノ鳥島は 「島でない」として日本のEEZを認めずに反発。現場海域に巡視船を派 遣して日本と対立した。 しかし民主進歩党(民進党)の蔡政権は発足直後の5月下旬、「新政府 はこの問題で法律上、特定の立場を取らない」として前政権の立場を軌道 修正。日本とこの対話枠組みを決め、巡視船を引き揚げた。 李部長は、対話で沖ノ鳥島付近での漁業の継続を求めていく考えを示し た。 <日中関係> ◎中国紙、 「和平派」と紹介=江沢民氏への謝罪も言及 【北京共同】中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は2 7日、日本メディアを引用しながら、三笠宮さまの逝去を報じた。日中戦 争時に南京に駐屯していた一方、「和平派」として東条英機らに反対して いたことを紹介した。 江沢民元国家主席が訪日した1998年11月には「中国人民に謝罪し たい」と述べたことにも触れた。 17 中国の通信社、中国新聞社も27日、明治以降「最長寿の皇族」だった と伝えた。 ◎尖閣周辺に中国船3隻=5日連続 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で28日、中国海警局 の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で 中国当局の船が確認されるのは5日連続。 第11管区海上保安本部(那覇)によると、3隻は海警2306、海警 2308、機関砲のようなものを搭載した海警31239。領海に近づか ないよう、巡視船が警告している。 【在日中国人】 ◎誘拐予備罪の中国人に実刑=水戸地裁 男子中学生を連れ去り現金を要求しようとしたとして、身代金目的拐取 予備や強盗致傷などの罪に問われた、いずれも中国籍で無職の李強被告 (26)=水戸市=ら2人の裁判員裁判で、水戸地裁は27日、それぞれ 懲役4年6月(求刑懲役8年)の判決を言い渡した。 小笠原義泰裁判長は判決理由で「身代金の受け渡しなどについて具体的 な計画を立てていた」と認定。「相当程度の危険性が認められる準備がす でに整っていたと言える」と述べ、予備罪が成立するだけの危険性はない とした弁護側の主張を退けた。 判決によると、男子中学生を誘拐して現金3千万円を要求しようと計画 し、昨年8月~11月ごろ、男子中学生の自宅付近で登校状況を数回下見 したり、金属製の手錠などを入手したりした。また昨年11月10日、知 人の男性の両手足を縛って車に押し込み、財布を奪おうとしてけがを負わ せた。 <北朝鮮> ◎北朝鮮核に共同対処=日韓、軍事機密共有へ 年内締結目指す 日韓両政府は27日、安全保障分野の機密情報共有を可能にする軍事情 報包括保護協定(GSOMIA)締結交渉を再開する方針を決めた。年内 締結を目指し、2012年以来中断している政府間交渉を11月にも再開。 米国を含めた3カ国の防衛協力を進め、金正恩体制で核・ミサイル開発を 加速させる北朝鮮への共同対処を深化させる。 12月上旬にも想定される朴槿恵大統領の初来日と、安倍晋三首相との 首脳会談での締結を見据え、政府間協議を進める方針。朴氏は親友への機 密資料提供疑惑で支持率が急落しており、歴史的な経緯から日本との安保 分野での協力に批判的な国内世論を抑えられるかが焦点になりそうだ。 18 菅義偉官房長官は27日の記者会見で「北朝鮮の核・ミサイル問題の対 応について日韓が協力していくのは極めて重要だ。協定の早期締結を含め、 安保分野での協力を推進したい」と述べた。 韓国国防省当局者も同日、「交渉時間は長くかからない。できるだけ早 く行う」と強調。12年までの交渉で「(協定の)基本文案は作られてい る」と述べた。日本が提案してきた交渉の再開を韓国が受け入れた形だ。 これに関し、日米韓3カ国は同日、東京都内で開催した外務次官協議で 北朝鮮への圧力を強化する方針を確認。対北朝鮮を想定した、3カ国によ る弾道ミサイルの探知追跡演習や、大量破壊兵器を積んだ船舶の識別訓練 といった防衛協力を進めることで一致した。 出席した杉山晋輔外務事務次官は協議後、記者団に「今の東アジアの安 保環境では、GSOMIAに限らず、日韓や日米韓のさまざまな協力は非 常に重要だ」と語った。 日本政府は07年の米国を皮切りに、北大西洋条約機構(NATO)や オーストラリア、インドなどと同様の協定を締結した。韓国とは11年1 月の防衛相会談で締結交渉開始を確認。12年6月の署名直前に、当時の 李明博政権が日本側に延期を申し入れ、棚上げになっていた。 ◎金正恩氏制裁に強い不満=北朝鮮「核抑止力が必要」 【ワシントン共同】北朝鮮の韓成烈外務次官らと先週接触した米国の元 朝鮮半島大使、デトラニ氏は26日、共同通信の取材に応じ、北朝鮮側が 米政府による金正恩・朝鮮労働党委員長への制裁発動は「無礼だ」などと 一連の制裁強化に強い不満を示し「安全保障上の懸念から核抑止力を必要 としている」と述べたと明らかにした。 米国の圧力を理由に核開発に固執する北朝鮮の姿勢が改めて浮き彫り になった。北朝鮮の5回目の核実験を受け米国はさらなる制裁強化を図っ ており、核問題の解決に向けた米朝間の公式対話を行うのは難しそうだ。 デトラニ氏は同じく元朝鮮半島大使のガルーチ氏らと共に21、22両 日にマレーシアのクアラルンプールで韓氏らと面会し、朝鮮半島情勢につ いて意見を交わした。 北朝鮮側は米軍が核搭載可能なB52戦略爆撃機を韓国に展開させた ことや、米韓両軍が合同演習を重ねていることについて「(北朝鮮の)体 制転換を狙う意図だと感じている」とデトラニ氏は指摘。米朝が信頼関係 を築く必要性があるとの米側の主張に北朝鮮側は理解を示しつつも、核実 験やミサイル発射を「やめるような姿勢は見られなかった」という。 米側は「朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化」の重要性を訴え、北朝 鮮の核放棄を明記した2005年の6カ国協議共同声明に従うよう求め た。北朝鮮側は日本や中国には言及しなかった。 デトラニ氏は接触の内容を米政府当局者に伝える考えで、今後も接触を 19 続けるとしている。 国務省のカービー報道官は今回の接触について「米政府は関与していな い」と強調している。 米政府は7月、北朝鮮で処刑や強制労働などの人権侵害に関与したとし て、金正恩氏を初めて金融制裁対象に指定した。 ◎金正恩氏「輸入病なくせ」=労働団体大会で書簡 【北京共同】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は25日、労働団体「朝 鮮職業総同盟」の大会参加者に書簡を送り「全てのものを自分の手で人よ り立派につくり上げることで、輸入病という言葉自体をなくすべきだ」と、 経済の対外依存を減らす必要性を強調した。朝鮮中央通信が27日報じた。 北朝鮮の核開発に対する国際社会の制裁が強まる中、北朝鮮は「自強力 第一主義」をスローガンに外国に頼らない経済構造の構築を試みている。 金氏は書簡で「党の唯一指導体系を徹底的に確立すべきだ」とも指摘。 「資本主義の毒素に汚染されないよう」同盟の構成員に対する思想教育を 強化すべきだと強調した。 党の外郭団体である総同盟の大会は1981年以来で、25~26日に 平壌で開かれた。北朝鮮は今年5月に36年ぶりの党大会を開くなど党中 心の国家運営体制の整備を進めており、今回の大会もその一環とみられる。 ◎「北朝鮮の核放棄ない」=オバマ氏任期中と報道官 【ワシントン共同】アーネスト米大統領報道官は27日、クラッパー国 家情報長官が北朝鮮非核化の見込みはないと発言したことに関して、現在 の米戦略では「オバマ大統領の任期中に北朝鮮が核開発計画を断念するこ とはない」との考えを述べたものだと説明した。 クラッパー氏は25日の講演で、北朝鮮の核戦力を制限する政策への転 換が現実的だと指摘。オバマ政権は北朝鮮を核保有国と認めないとの見解 を維持しており、米情報機関を統括する立場のクラッパー氏の発言は政府 方針と矛盾するとして議論を呼んでいた。 アーネスト氏は「北朝鮮に国際的な義務を順守させるため国際社会と連 携して圧力をかけていく」と強調。対北朝鮮政策に変更はないと主張した が、クラッパー氏の発言は否定しなかった。 一方で、来年1月に就任する次期大統領が異なる政策を採用するのであ れば、 「それは、新政権次第だ」とも述べた。 その上で、対立関係にあるロシアなどとも協力して北朝鮮に対処してき たとして、オバマ政権の政策は「一定程度の成功を収めた」と強調。今後 も米主導で北朝鮮の脅威に対抗していく意向を表明した。 20 <資料> ◎中国共産党18期6中総コミュニケ全文 3回続きの(1) 北京27日発新華社電によると、中国共産党第18期中央委員会第6回 総会で同日採択されたコミュニケの全文は次の通り。 中国共産党第18期中央委員会第6回総会(18期6中総)は2016 年10月24日から27日まで北京で開かれた。総会には、中央委員19 7人、同候補151人が出席した。中央規律検査委員会委員と関係方面の 責任者が会議に列席した。第18回党大会代表中の一部の末端幹部と専門 家・学者も列席した。 総会は中央政治局が主宰した。習近平中央委員会総書記が重要演説を行 った。総会は習総書記が中央政治局の委託を受けて行った活動報告を聴取、 討議し、「新たな情勢下の党内政治生活に関する若干の準則」と「中国共 産党党内監督条例」を審議、採択し、「党第19回全国代表大会の開催に 関する決議」を審議、採択した。習総書記が「準則(討議稿)」と「条例 (討議稿) 」について総会で説明した。 総会は18期5中総以降の中央政治局の活動を十分に評価し、一致して 次のことを確認した。複雑な国際・国内情勢を前にして、中央政治局は中 国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、マルクス・レーニン主義、 毛沢東思想、鄧小平理論、 「三つの代表」 〔注1〕の重要思想、科学的発展 観を導き〈指針〉に、第18回党大会と18期3、4、5中総の精神を全 面的に貫き、習近平総書記の一連の重要演説の精神と国家統治・政権運営 の新しい理念・思想・戦略を徹底して貫いた。そして時代の大勢をつかみ、 実践の要請に応え、全党・全国の各民族人民を団結させ、引っ張って、心 を一つに協力し、懸命に着実にやり、 「五位一体」 〔注2〕の全体的配置を 統一的に推し進め、 「四つの全面的」 〔注3〕の戦略配置をつり合いよく推 し進め、 「両学一做」 〔注4〕学習教育を繰り広げ、改革の全面的深化、供 給サイドの構造改革、国防・軍隊改革で大きな一歩を踏み出し、党と国家 の諸活動で新たな、大きな進展がはられた。 総会は全面的な厳しい党管理で得られた成果を高く評価し、次のように 確認した。第18回党大会以降、習近平同志を中核とする党中央は身をも って実践し、率先垂範し、全面的な厳しい党管理を揺るぎなく推し進め、 思想による党建設と制度による党管理の緊密な結合を堅持し、党風を整頓 し、腐敗を厳しく処罰し、党内の政治生態〈政治環境〉を浄化した。党内 の政治生活は新たな気運をみせ、党の心と人民の心をかちとり、党と国家 の事業の新局面を切り開くための重要な保証を与えた。 総会はわが党の党内政治生活の歴史的経験を総括し、全面的な厳しい党 管理の直面する情勢と任務を全面的に分析し、次のことを確認した。中国 の事をしっかりやるためのカギは党にあり、党が党を管理し、党を厳しく 治めることにある。多くの新たな歴史的特色をもつ偉大な闘争をよりよく 21 行い、党建設の新たな偉大な建設工事を推し進め、中国の特色ある社会主 義の偉大な事業を推し進め、「4大試練」に耐え、「4種の危険」〔注5〕 を克服するには、新たな情勢下の党内政治生活の準則を定める必要がある。 総会は次のように強調された。新たな情勢の下で党内政治生活を強化、 規範化するには党規約を根本的拠り所とし、党の政治路線、思想路線、組 織路線、大衆路線を堅持し、党内政治生活の政治性、時代性、原則性、戦 闘性の強化に力を入れ、党の自己浄化、自己整備、自己革新、自己能力向 上の強化に力を入れ、党の指導レベルと執政レベルの向上、腐敗・変質を 拒否し、リスクを抑える能力の強化に力を入れ、党中央の権威を守り、党 の団結統一を保証し、党の先進性と純潔性を維持することに力を入れ、全 党に集中もあれば民主もあり、規律もあれば自由もあり、統一の意思もあ れば個人の心が伸び伸びとし、生き生きとして活発な政治局面を形成する ため努力しなければならない。 総会で次のように強調された。新たな情勢の下、党内政治生活の強化、 規範化の重点は各級指導機関と指導幹部であり、カギは高級幹部、特に中 央委員会、中央政治局、中央政治局常務委員会の構成メンバーである。高 級幹部、特に中央指導層の構成メンバーは自ら手本を示し、党規約、党規 則を模範的に順守し、党の政治規律と政治規範を厳守し、初心を忘れず、 前進を続けることを堅持し、率先垂範と上級が下級を引っ張ることを堅持 し、全党、全社会に対し、模範を示されなければならない。 総会で次のように提起された。共産主義の遠大な理想と中国の特色ある 社会主義の共通の理想は中国共産党員の精神的支柱であり、政治的魂であ り、党の団結統一を維持する思想的基礎でもある。理想・信念を固めるこ とを党内政治生活における第一に重要な任務としなければならない。全党 の同志はマルクス主義に対する信仰、社会主義と共産主義に対する信念を 生涯追求するものとし、中国の特色ある社会主義の道に対する自信、理想 に対する自信、制度に対する自信、文化に対する自信を固めなければなら ない。指導幹部、特に高級幹部は実際の行動で党員と大衆が理想・信念の 強大な力を感じるようにしなければならない。全党はマルクス主義の指導 思想を揺るぎなく堅持し、党の各級組織は理論武装にたゆまず力を入れ、 広範な党員、幹部、特に高級幹部は自覚して学習に力を入れ、党員として の自覚の修養を強化しなければならない。=続く= 〔注1〕 「三つの代表」=先進的生産力発展の要請、先進的文化の前進 方向、最も広範な人民の根本的利益の三つを代表すること。 〔注2〕 「五位一体」=経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、エ コ文明建設の五つを統一的に進めること。 〔注3〕 「四つの全面的」=小康社会の全面的完成、改革の全面的深化、 全面的な法に基づく国家統治、全面的な厳しい党管理の四つを指す。 〔注4〕 「両学一做」=党の規約・規則を学習し、一連の演説を学習し、 22 適格な党員になること。 〔注5〕 「4大試練」「4種の危険」=執政の試練、改革・開放の試練、 市場経済の試練、外部環境の試練と精神的たるみの危険、能力不足の危険、 大衆から遊離する危険、消極的腐敗〈例えば、自分から求めないが、人か ら物を贈られれば拒まない〉の危険をさす。2011年7月1日、胡錦濤 総書記〈当時〉が中国共産党創立90周年祝賀大会の演説で指摘した。 ◎第8回BRICS諸国首脳会議ゴア宣言 4回続きの(3) 46、われわれはBRICS諸国工業閣僚会議の開催などを含む、生産 能力協力強化の重要性を強調する。これは経済の急速で持続可能な発展実 現、全方位の工業協力関係強化、革新推進と雇用創出に寄与し、BRIC S諸国人民の生活の質を高める。 47、われわれは国連工業開発機関(UNIDO)設立50周年を祝い、 同機関が包摂的で持続可能な工業の発展促進と加速で果たした独自の職 責およびアフリカの工業化促進で果たした貢献を再確認した。われわれは UNIDO・BRICS諸国技術プラットホームが収めた進展に留意して いる。 48、われわれは各国の税関部門がBRICS諸国税関協力委員会を設 立し、税関協力のための法律的基礎の構築、税関監督監理プロセスの円滑 化など、今後の一層の協力強化の方式を模索していることを称賛する。わ れわれは「BRICS諸国税関協力委員会規約」の締結が「BRICS諸 国経済パートナー戦略」実施と税関部門のインタラクティブ(相互作用) 強化にプラスとなることを認識している。 49、われわれはBRICS諸国指導者が「フォルタレザ宣言」で、B RICS諸国の保険、再保険市場協力の大きな潜在力を認識し、関連機関 に当該分野の協力強化の模索を指示したことを再確認した。この作業を加 速させることを希望する。 50、われわれは世界的範囲で公平で現代的な税収体系の実現に力を尽 くすことを再度表明し、国際的に認可された基準の有効で広範な執行が進 展を収めることを歓迎する。われわれは各国の実情を尊重することを前提 に、税源浸食と利益移転プロジェクトを展開することを支持する。われわ れは国と国際組織が発展途上国の税収能力建設強化を支援することを歓 迎する。 51、われわれは、過激な税収計画と措置が平等な発展と経済成長を損 なうことに留意している。税源浸食と利益移転の問題は有効な対応が必要 だ。われわれは経済活動の発生地と価値の創造地で利益に課税すべきこと を強調し、税収情報自動交換共通報告基準を含む、この分野での国際協力 への支持を再度表明する。 52、われわれは現在の国際税収問題に関する議論に留意しており、 「ア 23 ディスアベバ行動目標」および同目標で強調された各国税収当局の包摂的 協力と対話の実施、発展途上国の参加強化、適切で公平な地域分配の反映、 さまざまな税収体系を代表することを再確認した。 53、われわれはBRICS諸国腐敗防止作業部会の仕組みを含む、国 際腐敗防止協力と逃亡犯・不法資金追跡活動の強化を支援する。われわれ は、違法な資金流動と海外に隠された違法所得などの腐敗はグローバルな 試練であり、経済成長と持続可能な発展にマイナスの影響をもたらすと認 識している。われわれはこの分野での協調強化に努力し、「国連腐敗防止 条約」とその他の関連国際法に基づき、腐敗の防止と取り締まりの面でよ り強力な国際的取り決めが結ばれるよう奨励する。 54、われわれは原子力の利用が、一部のBRICS諸国の2015年 気候変動「パリ条約」の約束実行と温室ガスの長期的な排出削減の面で重 用な役割を果たすことを認識している。われわれは、BRICS諸国の持 続可能な発展実現に寄与する民用原子力能力拡大のための技術と資金の 導入では予測可能性が非常に重要であると強調する。 55、われわれは宇宙について、国際法に基づくことと平等を基礎とし て、各国が自由に平和開発、利用するべきであると再度表明する。宇宙空 間においていかなる武器も所有、使用するべきでないことを再度表明し、 宇宙空間での軍備競争を防ぐための一つあるいは複数の国際協定を締結 することを強調する。これは軍縮交渉会議の優先任務であり、中国とロシ アが交わした「宇宙空間の武器配備、宇宙空間内物体に対する武力使用あ るいは武力使用の威嚇防止条約」の更新草案などを基礎として、実質的作 業を開始することを支持する。われわれは同時に、宇宙空間において武器 の先制配備をしない政治義務に関する国際イニシアチブに注意を払う。 56、宇宙空間活動の長期的な持続可能性の確保と、子孫、後世のため の宇宙空間保護の方式と方法の模索がわれわれの優先課題である。われわ れは、これも国連の宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)アジェ ンダの重要目標であることを認識している。われわれは最近終了したUN COPUOS科技委員会宇宙空間長期持続可能性に関する作業部会の最 初の指導原則交渉が、各方面に対し2018年までに前言とその他の指導 原則で合意に達し、それにより国連の宇宙空間平和利用会議50周年を記 念することを呼びかけたことを歓迎する。 57、われわれは、インドなどのBRICS諸国で最近発生した襲撃事 件を強く非難する。われわれはあらゆる形式、方法のテロを強く非難し、 イデオロギー、宗教、政治、人種、民族、その他のいかなる原因も、テロ 正当化の理由にならないと強調する。われわれは二国間と多国間のプラッ トホームで強力を強化し、国際テロを取り締まることに同意する。 58、われわれは化学、バイオテロの脅威に対応するため、軍縮交渉会 議などの場で化学・バイオテロ行為阻止に関する国際条約の多国間交渉を 24 開始する必要があることを支持し、強調する。これを背景として、われわ れは大量破壊兵器とテロが混在する試練に対応する国際社会の決意の強 化を目的として2018年に会議を開催するというインドの申し出を歓 迎する。 59、われわれはすべての国が総合的な施策を講じ、テロリズム、過激 化および、外国のテロ作戦要員を含むテロリストの募集と移動を助長する 暴力過激主義を取り締まることを含め、テロリズムを取り締まり、マネー ロンダリング、麻薬密売、刑事犯罪などの方式による組織犯罪を通じたも のを含め、テロリズムの資金調達ルートを断ち、テロ組織の拠点を壊滅さ せ、またテロ組織がソーシャルメディアを含む最先端の情報通信技術を乱 用するのを取り締まるよう呼びかける。テロリズムの取り締まりを成功さ せるには全面的施策が必要となる。すべての対テロ措置は国際法を堅持し、 人権を尊重しなければならない。 60、われわれは最近開催されたBRICS安全保障事務ハイレベル代 表会議に留意しており、BRICSテロ対策作業部会が設置され、201 6年9月14日にニューデリーで第1回会議が開かれたことを歓迎する。 これはBRICS間のテロ対策問題での対話と理解および、テロリズムの 災いに協調して対応する努力を一段と後押しするものだとわれわれは信 じている。 61、われわれは、国際テロリズム、特に「イラク・レバントのイスラ ム国」 ( 『イスラム国』 、 『ダーイシュ』とも呼ぶ)およびその付属テロ組織 および個人は、国際平和・安全にとってグローバルな、未曽有の脅威とな っていることに同意する。国連が対テロの多国間協力を調整する中心的な 役割を担っていることを強調すると同時に、われわれはすべての国が国連 安保理の関連決議を効果的に実行に移すよう促すものであり、また、われ われが国連による対テロ枠組みの有効性を高めることに尽力しているこ とを重ねて表明する。われわれはすべての国に対し、引き延ばすことなく、 国連総会で「包括的対テロ条約」を早期に採択するため共に努力するよう 呼びかける。われわれおよびすべての国は自国の領土内でテロ行為を防止 する責任がある。 62、われわれはアンチマネーロンダリング金融活動作業部会(FAT F)のマネーロンダリングおよびテロリズムと拡散金融の取り締まりに関 する国際基準への約束を重ねて表明し、FATFのテロ資金調達取り締ま りに関する総合戦略(そのオペレーション計画を含む)を速やかに、効果 的かつ普遍的に実行するよう呼びかける。われわれはFATFおよび類似 の地域機構との協力を強化することに努める。 63、われわれは2016年4月19日から21日までニューヨークで 開かれた国連薬物特別総会の成果文書を歓迎する。われわれは国際および 地域の協力と協調を強化し、麻薬の不法製造・販売・運搬、特にアヘン薬 25 物が国際社会にもたらす脅威に対応するよう呼びかける。われわれは麻薬 密売、テロリズム、マネーロンダリング、組織犯罪間の関係が日増しに緊 密化していることに留意し、これに対する深い憂慮の念を表明する。BR ICS各国の麻薬取り締まり部門間の協力を称賛するとともに、2016 年7月8日にニューデリーで開かれたBRICS第2回麻薬取り締まり 作業部会での討議を歓迎する。 64、われわれは、情報通信技術(ICT)の幅広い応用は持続可能な 発展を実現し、国際の平和と安全を守り、人権を保障するカギとなる推進 力であることを重ねて表明する。われわれは共同の努力を払い、ICTの 使用面でのセキュリティーを強め、ICTを利用した犯罪やテロ活動を取 り締まり、ICT、法執行、研究開発と革新および機構の能力開発面での 協力を深めることで合意した。われわれは多次元、包摂的な措置を講じ、 先進国と発展途上国間のデジタルデバイド、テクニカルデバイドの解消に 断固尽力すべきであると確認した。これらの措置はアクセスに対する理解 を深め、アクセスの質を高めることを含めるべきだ。 65、われわれは広く認められている「国連憲章」を含む国際法の原則 を踏まえ、国際・地域協力を通してICTを使用、開発することを重ねて 表明する。これらの原則には政治的独立、領土保全、国の主権と平等、平 和的手段による紛争解決、他国への内政不干渉、人権、基本的自由および プライバシーの尊重などが含まれる。これは平和、安全、開放のネット空 間を守る上で非常に重要なことである。 66、ICTを乱用したテロ活動がますますはびこり、国際平和・安全 にとって脅威となっている。われわれは国際協力を強化し、ICTを利用 したテロ・犯罪活動の実行を取り締まらなければならないと強調し、ダー バン、フォルタレザ、ウファの各宣言の中で明確に述べられている全体方 針を重ねて表明する。われわれは、国連がICTの安全利用にかかわる問 題を処理する上でカギとなる役割を果たすことを重ねて表明する。われわ れは引き続き協力し、国連サイバー政府専門家会合(UNGGE) のプロセスなどを通じ、責任ある国の行為のルール、規範、原則を定めて いく。われわれは、各国がICT使用の安定性と安全性を確保する面で指 導的役割を果たすことを確認した。 67、われわれは公開、統一、安全のインターネットを構築することを 主張し、インターネットがグローバル資源であることを重ねて表明する。 各国はグローバル・ネットワークの進歩と運営に平等に参加すべきであり、 また、関連のステークホルダー(利害関係者)が各自の役割と職責に基づ きその中の必要な事柄に参加することを考慮すべきである。 68、われわれは、経済の持続可能な発展を確保することに対する省エ ネ・効率向上の重要性を確認し、関連の了解覚書の調印を歓迎する。 69、われわれは、発電能力と高効率電力分配の拡大面で直面する試練 26 および、低炭素燃料とその他クリーンエネルギーの拡大面で解決案を示す 必要性を確認するとともに、再生可能エネルギーに必要な投資規模を確認 した。われわれは、この分野における国際協力はクリーンエネルギーの技 術とファイナンスに焦点を集めるべきであると信じている。われわれは、 持続可能な発展、エネルギー・アクセスおよびエネルギー・セキュリティ ーが地球の共同の繁栄と未来にとって非常に重要であるとの点に留意し、 すべての人がクリーン・再生可能エネルギーを消費する能力を持つべきだ と考える。 70、われわれは、天然ガスをより経済的、クリーンな燃料として幅広 く使用するとともに、気候変動の「パリ協定」に基づき、温室効果ガスを 減らすことを支持する。=続く= (完) 27
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