地域パートナーHOT 情報 〔岡山県〕 ぶらり“おかやま”vol.6 ~笠岡諸島・北木島~ 写真 長尾博行(経営支援課長) nagao-hiroyuki@meti.go.jp TEL 082-224-5658 (広報で 挿入) この夏、笠岡諸島の北木島を訪問する機会がありましたのでご紹介します。 北木島(島の東側上空から西方向を眺める) 北木島への陸側の玄関は笠岡・伏越港。JR笠岡駅から徒歩で約 10 分、そこから船で さらに 50 分かけて島を目指します。私はいわゆるポンポン船に近い小型船を想像してい たのですが、写真のとおり立派なフェリーでした。 しかし港には待合室のような建物 こそあるものの切符売り場が見当た りません。とりあえず乗船して、ど こで切符を買うのかと尋ねると、真 っ黒に日焼けした船員さんが屈託の ない笑顔で「ウチは原始的にやっと りますけん、どうぞ乗ってつかーさ い」と。原始的ってなに?? 出発 後にお客さんのところへ料金をもらいに回るという意味だったのですが、船員さんの「原 始的にやっとる」という何気ない言葉は、初めての北木島への訪問をわくわくした気分に 盛り立ててくれました。 旬レポ中国地域 2016 年 9 月号 1 北木島のある笠岡諸島について簡単にご紹介します。岡山県西部の笠岡市沖の瀬戸内海 に浮かぶ大小約 30 の島から成るのが笠岡諸島です。このうち有人島は今回訪問する北木 島のほか、真鍋島、白石島など 7 島。島には本土との橋も架かっておらず、笠岡から 1 日 数便の定期船を利用するしかありませんが、この不便さが笠岡諸島の魅力の一つでもあり ます。こうした不便な島々にも、近年はUIターンで移住される方や外国人が訪れ数日滞 在するということもあるようです。 今回訪れた北木島はこの笠岡諸島の島々の中で面積、人口とも最大です。島の周囲は約 18 キロメートル、人口は 1 千人弱。高齢化率は 60%を超えています。主要産業は採石・石 材加工業と漁業です。特に採石は瀬戸内の銘石の四大産地(庵治、大島、青木、北木)の一 つで、良質な花崗岩が産出することから、古くから「石の島」として知られています。 江戸時代には大阪城の桜門に、採掘が本格化した明治以降では日本銀行本店、三越本店、 靖国神社の大鳥居などにここ北木島から切り出された石が使われたそうです。最盛期の 昭和 30 年代には島内に 127 の採石場が、また昭和 50 年代には加工会社が 100 社を超 え、当時の島は大変繁栄していたそうです。島には映画館などの娯楽施設もありまし た。地元の方の説明では、当時島全体で年商が約 200 億円、こうした時代が約 50 年続 いたとのこと。しかし海外から安価な石が輸入されるようになり、これに次第に市場を 奪われると、高齢化による後継者不足なども相俟って島の採石・石材加工産業は一気に衰 退の途を辿りました。現在では採石業者がわずか 2 社(専業は 1 社のみ) 、加工業者も若 い後継者がいた 10 社程度が残るのみです。 100 名以上収容可能な当時の映画館内部 島内の至る所に採石跡が残る 北木石は、石材として極めて光沢があり、ねばりもあることから加工がし易いとの評価 で、9 割程度が墓石用に加工されているそうです。現在は採石された石の多くが、一度中 国に輸出され、現地で加工を施し、日本に逆輸入されているそうですが、輸入時には他の 産地の石と区別なく輸入されることから北木島産の石であることは誰にもわからないそ うです。北木石のブランドが十分に守られていないのは少し残念な気がします。 旬レポ中国地域 2016 年 9 月号 2 (写真左)稼働中の採石場。重機のある位置が大体標高 0m。断崖の高さは約 120m (写真中央)石を切り出す現場。海面下 30-40m まで掘削。奥の雨水の水深も 40mとか。 (写真右)切り出した石。一部は国内加工業者へ出荷されるが、大半は中国で加工される。 近年、かつて繁栄を極めた採石場の跡地の話題などに加え、北木島出身のお笑いコンビ 「千鳥」の大悟氏による活躍により、島が様々な場面で取り上げられるようになったこと から、島を訪れる方が少しずつ増えているそうです。また昨年、島に残る多くの採石場の 跡地などが笠岡市の景観ブランドに選ばれたこともあり、この景観を活かして観光客を呼 び込もうと地元有志の方々が取り組みを始められました。今春には旅行会社と提携して 40-50 人の団体ツアーを開催し、採石場跡地の見学、石割体験などを実施したところ盛況 であったとのことです。 これまで採石場は様々な危険と隣り合わせの場所ということもあり、こうした観光ニー ズには全く対応できていなかったようですが、景観ブランドに選定されたことから市の補 助金を活用して見学者用の専用展望施設を設置するなど安全対策を講じ、今後、島観光の 目玉スポットにしていきたいとのことです。 採石跡地に水が溜まりすばらしい景観に 旬レポ中国地域 2016 年 9 月号 北木のベニス 3 今回初めて北木島を訪問しましたが、個人的には、島内の移動手段がほぼ皆無であるこ とから、自転車をレンタル、あるいは持ち込んで島内を巡り楽しんでもらうのがよいと思 います。また、現在は、気軽に食事ができる場所がほとんどなく、コンビニもありません ので、これから少しずつ観光客の受入施設や体制を整備していく必要があります。いきな り多くの観光客が訪れることを期待するのは現実的ではないですが、容易に訪問できない 瀬戸内海の秘境の地であることを逆手にとって、採石場跡など貴重な島の観光スポットを 発信することで、島に少しでも賑わいが戻り、かつてブランド力があった北木石の再興に も繋げて頂ければと思います。また北木島と周辺の真鍋島や白石島などとの周遊観光を楽 しめるような取り組みも期待したいと思います。 地域産業資源の活用を推進する立場の者として地域の方をしっかり応援していきたい と思います。 夜にライトアップするときっとすばらしい! 残念石(スペア用に切り出され たが残念ながら日の目をみなか った石) ■笠岡諸島を紹介する映像がご覧頂けます(リンク先:笠岡市ホームページ) https://www.city.kasaoka.okayama.jp/site/islands/prvideo-island.html ■今回ご案内頂いた「鶴田石材株式会社」さんのホームページ 北木島の産業、歴史が詳しく紹介されています。 http://kitagi.jp/ 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2016 年 9 月号 Copyright 2016 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 4
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